(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、下記の基本方針にもとづき、株主、投資家及びお客様満足度の向上を図ることで企業価値を高めてまいります。
①顧客満足の増進
複雑化、高度化するお客様の課題に対し、技術、価格、納期、アフターサービスなどに迅速かつ柔軟に対応し、お客様満足度の向上を目指します。
②生産技術の革新
製造業の基本であるコスト競争力を高めるため、製造装置の標準化(モジュール化、ユニット化)を中心とした継続的な生産技術の革新を行います。
③独創的な商品開発
競合他社が真似することのできない最先端の独創技術を商品化し、開発型のソリューションを提供する企業を目指します。
④自由闊達な組織
経営方針や情報が迅速に伝わる風通しのよい組織と企業風土を継続して形成します。
⑤企業価値の向上
株主価値の向上にとどまらず、技術の総合利用を通じて産業と科学の発展に貢献することを目指します。
(2)経営環境
当連結会計年度における世界経済は、穏やかな回復基調で推移しましたが、欧米における高い金利水準の継続や中国における景気減速懸念に伴う海外景気の下振れリスクが意識される等、先行きに対する不透明感が高まりました。
当連結会計年度における当社グループを取り巻く事業環境は、半導体業界では、スマートフォンやパソコン等の需要減速に伴う短期的な半導体メーカーの設備投資の鈍化がみられますが、中長期的には、生成AIへの期待等による半導体需要拡大が引き続き見込まれるとともに、地政学的リスク等に対応した世界各地での半導体工場新増設計画が進められています。また、エレクトロニクス業界では、グリーンエネルギー政策等に基づくEV導入促進政策の継続的な進展等に伴うパワーデバイス投資、スマート社会化構想等に基づくデジタル化の促進やメタバースの実現等に向けた各種電子デバイスの技術革新や増産のための投資、中国におけるエレクトロニクスの国産化政策に基づく投資等の継続的な拡大が続いています。そして、フラットパネルディスプレイ(FPD)業界においては、引き続き、タブレットやパソコン用のITパネルが液晶から有機ELへ転換する過渡期にあり、大型基板の有機EL投資が引き続き期待されます。また、産業用電池業界においても、EVバッテリーの小型大容量化や安全性向上の実現に向けた量産投資の本格化の兆候が引き続き認められています。
(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループは、「互いに協力・連携し、真空技術及びその周辺技術を総合利用することにより、産業と科学の発展に貢献することを目指す」という経営基本理念のもと、真空及びその周辺技術を、装置、材料、成膜加工、分析、カスタマーサポートといった幅広い事業領域において取扱うことで生み出されるシナジー効果を強みとした事業経営を行っております。また、このシナジー効果をより効果的に発揮できるよう、当社グループ間の連携強化や世界の多様な企業や研究所等とビジネスパートナーシップの形成を推進することで、よりグローバルに事業を展開し、更なる持続的成長と企業価値向上を実現する高い収益性を有する企業集団となることを目指しています。
また、当社グループは、「真空技術及びその周辺技術の総合利用により、経済価値、社会価値、環境価値を創造する」というサステナビリティ方針に基づき、当社グループの事業活動を通して、幅広いステークホルダーとともに、産業と科学の発展に貢献し、環境負荷の低減や健康と幸せの創造により適正な利潤を追求し、気候危機や資源不足等地球の持続可能性を脅かす環境問題の解決に向けての取組みも推進しております。
これらの当社グループの経営基本理念やサステナビリティ方針を踏まえ、当社グループは、“Vision2032”「未来につながる『可能性の場』であり続ける」を策定して開示しました。この“Vision2032”は、当社グループの10年後の理想像を、当社創業時から受け継がれてきた企業文化や価値観を未来志向に変換した姿とすることを目指したもので、当社グループは、この“Vision2032”の実現に向けて当社グループが取組むべき重要課題(マテリアリティ)を念頭においた経営に、グループ一丸となって引き続き取組んでおります。
〈当社グループが取組むべき重要課題(マテリアリティ)〉
・真空技術をコアとしたイノベーションの創出・共創の推進
・多様な人財の育成と活躍推進・レジリエントな組織づくり
・バリューチェーンにおける人権尊重・責任ある行動
・持続可能な地球環境への貢献
そして、この重要課題(マテリアリティ)に取組むため、当社グループは、2024年6月期を初年度とする3年間(2024年6月期~2026年6月期)の中期経営計画を策定して開示しました。当社グループは、この中期経営計画の基本方針、重点戦略と具体的取組み及び数値目標(連結)を堅持し、引き続き中期経営計画の目標達成に努めております。
中期経営計画の概要は次のとおりです。
①基本方針
・真空技術による社会的価値創造
・利益・資本効率重視の経営
②数値目標(連結)
|
指 標 |
2026年6月期目標 |
〈参考〉2024年6月期実績 |
|
売上高 |
3,000億円 |
2,611億円 |
|
売上総利益率 |
35% |
30.9% |
|
営業利益率 |
16% |
11.4% |
|
営業キャッシュ・フロー(3年間累計) |
630億円 |
(初年度実績)172億円 |
|
ROE(自己資本利益率) |
14% |
9.7% |
③重点戦略と具体的取組み
|
1.成長事業における製品競争力の強化 |
共創によるイノベーションの推進 |
各分野における世界のリーディング企業、大学等との最先端技術の共同開発を推進することで、技術革新に対応した製品開発力を強化し、併せてグローバル開発体制の強化に努める |
|
半導体及び電子部品事業の拡大 |
①半導体:先端ロジックにおける当社グループの技術力や当社グループが採用された製造工程の実績をもとに、メモリー及びレガシー半導体分野においても当社グループがその製造工程での採用を獲得することを目指し、更なる拡販活動を強化し、事業拡大に努める |
|
|
②電子部品:当社グループが注力する主要5分野(パワーデバイス、オプトデバイス、通信デバイス、電子部品、実装)において、当社グループの主力製品の性能や納期等の側面における差別化を目指し、更なる拡販活動を強化し、事業拡大に努める |
||
|
カスタマーサービス事業の強化 |
製品ライフサイクル全体をカバーすることを当社グループにおけるビジネス機会と捉え、当社グループが特に注力すべき地域におけるサポート体制の強化や当社グループから顧客に対する提案型での既存装置の改良や改善といったビジネスの推進を目指すことで、更なる当社グループの総合的なサービス力強化に努める |
|
2.グローバル生産性の向上 |
モノづくり力強化 |
当社グループの売上総利益率の更なる向上を目指し、計画的生産の拡充を推進し、技術設計から購買・生産体制まですべての工程における生産性向上の推進に努める |
|
①技術設計強化:当社グループにおける各ビジネスプロセス(開発、営業、技術設計、購買、製造等)の連携を強化し、当社グループの販売製品のモジュール化、標準化を更に推進し、製品企画力強化に努める |
||
|
②購買体制強化:当社グループにとってのキーサプライヤーとの連携を強化し、当社グループの販売製品の計画的生産に対応した戦略購買力の更なる強化に努める |
||
|
③生産体制強化:当社グループの販売製品毎の最適拠点での生産を進めるとともに、当社グループにおける事業間の経営資源の再配分を柔軟に行うことで、更なる生産性の向上に努める |
||
|
デジタル化の推進 |
当社グループにおける効率的な生産を更に推進するために業務プロセスの見直しを実施するとともに、当該推進を目的とした各種情報システムの導入を進めることで、当社グループにおけるグローバルな生産性の更なる向上に努める |
|
|
3.経営基盤の強化 |
ESG経営の強化 |
①当社グループの事業活動におけるCO2排出の削減に継続して取組むとともに、気候危機等の社会的課題の解決に貢献する環境配慮型製品の更なる開発と拡販に努める |
|
②当社グループのみならず当社グループの取引先といったステークホルダーに至るまで、当社の推進する人権に配慮した事業運営についての理解を共有するとともに、労働環境をはじめとする人権尊重の推進の更なる実現に努める |
||
|
③当社グループの持続的な成長を実現するために、実効性、透明性の高い経営体制の強化に最適な見直しに継続的に取組むことにより、コーポレート・ガバナンス体制の更なる維持強化に努める |
||
|
財務基盤の強化、キャッシュ・フローマネジメントの強化 |
当社グループの更なる成長に向けた十分な開発投資資金を確保し、当社事業をとりまく外部環境変化への迅速な対応を実現する強固な財務基盤の構築を更に進めるとともに、キャッシュ・フローマネジメントの更なる強化により、資本効率の一層の改善に努める |
|
|
人財経営の推進 |
当社グループにおいて多様な人財が活躍できる環境を整備することで従業員エンゲージメントを高めるとともに、次世代リーダーとなる中核人財の育成プログラムを再構築することで当社グループの人的資本の更なる強化に努める |
当社グループは、サステナビリティをめぐる課題への対応が、中長期的な企業価値の向上と持続的な成長のために重要であると認識し、経営基本理念に基づきサステナビリティ方針を定め、真空技術及びその周辺技術の総合利用による経済価値、社会価値、環境価値の創造を目指しております。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。
(1)ガバナンス
当社グループは、社長直轄のサステナブル経営推進室を設置し、グループ全体でサステナビリティの取組みを推進しています。年2回開催されるサステナビリティ推進委員会では、社内取締役、執行役員及び部署長が参加し、サステナビリティに関する目標設定・進捗管理、方針の検討、重要テーマへの取組みなどについて討議を行っています。重要案件については、取締役会の決定した経営方針に基づいて重要な業務執行に関する事項について審議を行う機関である経営会議等で適宜報告や決議を実施しています。また、サステナビリティ担当執行役員は、サステナビリティ推進委員会の内容及びグループ全体のサステナビリティの取組みについて取締役会に報告し、取締役会は業務執行状況を的確に把握し、適切に監督しています。
(2)戦略
当社グループでは、2050年にありたい姿「真空技術で世の中のためになる価値をパートナーとともに生み出し、人と地球の未来に貢献し続けている企業」及び“Vision2032”「未来につながる『可能性の場』であり続ける」の実現に向けた当社グループ固有の経営課題を「マテリアリティ」と定義し、「ステークホルダーにとっての重要度」と「事業への影響度」の2軸で評価し以下の4項目を特定しています。特定したマテリアリティに取組み、経営基盤を強化するとともに、真空技術で社会的価値を創造し人と地球の未来に貢献し続けている企業を目指します。
①真空技術をコアとしたイノベーションの創出・共創の推進
当社グループのあらゆる事業活動の中核には「真空技術及びその周辺技術の総合利用」があります。近年深刻化する気候変動、資源の枯渇といった地球規模の課題に対し技術力を駆使してイノベーションの創出を目指します。そのために、顧客や取引先、関係各所と先端技術の研究開発や新たな取組みを推進します。さらに、人財育成、知的財産戦略の強化など、多角的に推進の基盤を強化してまいります。
新中期経営計画で掲げている「成長事業における製品競争力の強化」においては、次世代のインフラの中核となる半導体・電子デバイスや大容量バッテリーを実用化する技術・製造装置の開発を関連企業・研究機関と進めます。これにより社会基盤、カーボンニュートラル、新エネルギー分野での課題解決型事業を強化・創出するとともに、利益・資本効率重視の経営を推進することで、飛躍の土台を築き上げます。
②多様な人財の育成と活躍推進・レジリエントな組織づくり(多様性の確保に向けた人財育成方針と社内環境整備方針)
当社グループは、世界の半導体メーカー・電子デバイスメーカーやパネルメーカーが集中する日本・中国・韓国・台湾など東アジアを中心に、幅広い顧客基盤、先端研究機関とのネットワーク、開発・営業・カスタマーサポート拠点、製造拠点、サプライヤー網を持っており、グローバルに事業展開する多数のグループ会社から形成されています。「アルバックグループは、互いに協力・連携し、真空技術及びその周辺技術を総合利用することにより、産業と科学の発展に貢献することを目指す」という経営基本理念を実践・実現していくためには、当社が企業倫理行動基準の中に定めた「社員の人格・個性の尊重」「人権の尊重とあらゆる差別的取扱の禁止」を遵守し、グローバルに活躍する従業員の個性を尊重し、多様性を受け入れ活かすことが大きな原動力になります。
このようなダイバーシティを尊重し、インクルージョンを推進することによりイノベーションを創出し、顧客や社会の課題を解決することで、従業員それぞれの成長につながる新しい価値を生み出し続けることを目指します。このような考えに基づき、変化の激しいビジネス環境を勝ち抜いていく上で、外部環境の変化に強くグローバルに活躍できる人財の育成を強化するため、働きがいのある職場環境や人事諸制度の整備、教育機会の創出に努めます。
③バリューチェーンにおける人権尊重・責任ある行動
「国連グローバル・コンパクト」に署名し、人権・労働・環境・腐敗防止の4分野で企業が遵守すべき普遍的原則である「国連グローバル・コンパクトの10原則」に基づき、各分野における取組みを推進しています。当社グループにおいては、「企業倫理行動基準」を定め、自らの業務が人権を侵害していないかを判断するための指針としています。さらに、国際連合の「ビジネスと人権に関する指導原則」をはじめとする国際規範を踏まえた「ULVAC人権方針」を策定し、事業に反映することで、人権に関する重要な課題を特定し、その取組みを明らかにしています。
当該方針に従い、人権デューデリジェンスのプロセスを構築し、企業活動を通じて人権に与えうる影響の認識、防止、対処に向けた取組みを進めています。そして、このプロセスを通じて生じる問題に対する救済メカニズムの充実にも努めています。
また、当社グループでは、エレクトロニクス業界を中心としたCSR推進団体であるRBA(Responsible Business Alliance)の行動規範の遵守に努めています。その原則を基に、主要生産拠点での自己評価調査を定期的に行っています。取引先に対してもこれらの規範の遵守を求めています。
④持続可能な地球環境への貢献
地球環境の保全が重要課題の一つとしてとらえ、環境に配慮したビジネス活動を展開し、気候変動対応や水資源の有効活用など資源循環への取組みを加速し住みよい地球と豊かな社会の発展に貢献していきます。
中でも、気候変動の取組みについては、重要な経営課題の一つとして位置付けています。
IEA(国際エネルギー機関)等が発表する「世界の平均気温が4℃以上上昇する」「世界の平均気温がパリ協定で合意した2℃未満の上昇に抑えられる(一部1.5℃以内)」のシナリオで、気候変動が中長期的に事業に影響を及ぼすリスク・機会を以下のとおり特定しており、「カーボンプライシング」「台風や豪雨等の異常気象による災害発生による事業継続リスク」「パワーデバイスの市場機会の拡大」について、リスクと機会を分析し事業への定量的な影響について評価しました。今後事業への影響の定量化の範囲を拡大するとともに、具体的な施策の検討を更に進めてまいります。
主なリスク
|
カテゴリー |
要素 |
施策 |
|
市場 |
顧客の行動変化による事業コストの増加 |
事業活動における再生可能エネルギーの導入や省エネルギー施策の徹底 |
|
政策及び法規制 |
カーボンプライシング |
|
|
技術 |
既存製品・サービスを排出量の少ないものに置換 |
各分野の技術革新に貢献する製造装置等の製品・サービスの研究開発及び製品の低消費電力化の推進 |
|
急性・慢性 |
台風や豪雨等の異常気象による災害発生による事業継続リスク |
自然災害時における事業継続計画の策定、対策の実施 |
主な機会
|
カテゴリー |
要素 |
施策 |
|
製品・サービス |
低消費電力デバイス、パワーデバイス、リチウムイオン電池に寄与する装置や技術への期待の高まり、低消費電力型製品へのニーズの拡大 |
各分野の技術革新に貢献する製造装置等の製品・サービスの研究開発及び製品の低消費電力化の推進 |
責任ある社会の一員として積極的に取組んでいくため、当社グループは事業活動における中長期の温室効果ガス排出量削減目標として、2030年に40%削減(2020年比)、2050年には実質ゼロを定め、国内外における省エネルギーに対する取組み努力、太陽光発電設備の設置、再生可能エネルギーの導入を積極的に推進するとともに、環境配慮型製品の開発等あらゆる活動を通じて温室効果ガス排出量抑制に努め、気候変動対策に取組んでまいります。
(3)リスク管理
経営に重大なダメージを与える全てのリスクについては経営企画室を所管部署として定め、当該リスクの特定とその対策の立案を社内関係部署やグループ会社に指示しています。これにより、リスクの識別と全社的な対応の推進を行い、結果をリスクマネジメント委員会に報告しています。同委員会では、これらのリスクの詳細な洗い出しや特定、さらには事業報告や改善策の検討を行い、モニタリングを通じて早期検出や報告、対処を実施しています。
また、中長期的なサステナビリティリスクについてはサステナブル経営推進室を所管部署として定め、サステナビリティに関連するリスクの特定を社内関係部署やグループ会社に指示し、その結果をサステナビリティ推進委員会に報告しています。同委員会では中長期的なリスクに対する取組みの進捗を管理しています。最終的に、取締役会はこれらの委員会からの報告を受け、リスクの管理状況を監督しています。当社グループは、これらの体制を通じて、経営の安定と持続可能な成長を目指します。
|
機関・組織 |
機能・役割 |
|
取締役会 |
リスクの管理状況について、サステナビリティ推進委員会及びリスクマネジメント委員会より報告を受け、監督 |
|
サステナビリティ推進委員会 |
中長期的なサステナビリティリスクの重要性評価をマテリアリティ特定・見直しのプロセスにおいて実施、取組み進捗を管理 |
|
リスクマネジメント委員会 |
経営に重大なダメージを与える全てのリスクの洗い出し、特定、事業報告及び改善策の検討、モニタリングによる予兆・早期検出・報告・対処を実施 |
|
サステナブル経営推進室 |
社内の関係部署及びグループ会社にサステナビリティに係るリスクの特定を指示、リスクを識別し全社的な対応を推進、サステナビリティ推進委員会へ報告 |
|
経営企画室 |
社内の関係部署及びグループ会社に経営に重大なダメージを与えるリスクの特定と対策立案を指示、リスクを識別し全社的な対応を推進、リスクマネジメント委員会へ報告 |
なお、重大なリスクの詳細については、「
(4)指標及び目標
中長期的な企業価値向上及び持続的な成長において、財務のみならず非財務における指標の達成は重要であり、今後も当社グループ全体で活動してまいります。当社グループのサステナビリティに関する主な指標及び目標は次のとおりであります。
・環境に関する主な指標
|
指標 |
目標 |
|
温室効果ガス排出量 |
2030年の温室効果ガス排出量を2020年比40%削減(Scope1、2) |
|
2050年の温室効果ガス排出量実質ゼロ |
GHG排出量の削減実績の詳細な情報については、下記の当社ウェブサイトにおいて公開している環境データをご参照ください。
https://www.ulvac.co.jp/sustainability/environment/edata/index.html
人財育成及び社内環境整備に関する方針については、「
・人的資本に関する主な指標
|
指標 |
目標 |
実績 |
|
|
|
|
「サステナビリティに関する考え方及び取組」に関する詳細な情報については、下記の当社ウェブサイトにおいて公開しているULVAC VALUE REPORTをご参照ください。2024年版については2025年1月に公開予定です。
https://www.ulvac.co.jp/sustainability/index.html
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。
①市場変動による影響
当社グループは、特に半導体及び電子部品、FPD等の製造工程で使われる真空装置の分野において、独自技術の開発を行い市場に投入しています。この分野におけるシェアを獲得し、成長してまいりましたが、顧客である半導体及び電子部品メーカー、FPDメーカーの市況変化による設備投資の大幅な縮小や顧客の財務状況の悪化が発生した場合には、当社グループの経営成績や財政状態に悪影響が及ぶ可能性があります。
当社グループは、2024年6月期を初年度とする中期経営計画において、「真空技術による社会的価値創造」と「利益・資本効率重視の経営」の2つの基本方針を定めております。この2つの方針のもと、市場変動の中でも生産性向上による利益率の改善を図り、成長領域における開発に集中することで、持続的成長を実現してまいります。また、幅広い分野で使用される多様な製品により、特に半導体や電子部品の分野における収益の安定基盤を築き、市場変動への対応力を高めております。
②研究開発による影響
当社グループは、積極的な研究開発投資を継続して行うことにより、最先端技術を使用した新製品を市場に投入し続けてまいりました。しかしながら、開発の著しい遅延を余儀なくされ、新製品の市場への投入の遅れが生じた場合、当社グループの経営成績や財政状態に悪影響が及ぶ可能性があります。
成長のために必要な開発について、投資の選択と集中によりスピードアップを図るとともに、定期的なモニタリングを実施して著しい遅延が生じないよう、その進捗を管理しております。
③グローバルな競争環境の影響
当社グループは、グローバルに事業を展開し、世界各国・各地域の顧客に向けて製品を提供しております。しかし、競合他社もグローバルに展開しており、新規参入もある競争環境の中で、製品の性能のみならず価格面での競争も激化しております。このような競争環境により、当社グループの経営成績や財政状態に悪影響が及ぶ可能性があります。
当社グループは、顧客の製造工程で必要とされる製品に対して、最先端技術を用いた製品を適時に投入することで、競争力を維持し、競争環境に対応してまいります。
④人財の確保に関する影響
当社グループがグローバルな事業環境の中で成長を続けるために、人財の確保は最も重要なことと位置付けております。事業の成長に必要な人財を確保し続けることができない場合、競争力の低下を招くこととなり、当社グループの経営成績や財政状態に悪影響が及ぶ可能性があります。
当社グループは、人材を「人財」として捉え、多様な人財が挑戦し続ける場の創出に努めています。人財の採用・育成を推進し、多様な人財が心身ともに健康で活気に満ち、個人の能力が最大限に発揮できるように、健康経営等を通して推進することで働く環境を整え、必要な人財を確保しております。
⑤サプライチェーンに関する影響
当社グループは、製品を生産するための部品需給の逼迫による部品価格の高騰、供給の遅延が発生した場合や、大規模な災害などによるサプライチェーンの障害などにより生産活動の停止、遅延が発生した場合、当社グループの経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、仕入先との協力体制構築や早期の部品手配などにより、必要な部品の確保に努めております。
⑥法令、規制に関する影響
当社グループは、グローバルに事業を展開しており、各国・各地域において、輸出入規制、競争法、汚職・贈賄、労働法、環境法、移転価格税制等の様々な分野の法令や規制の適用対象となります。そこで、当社グループは、これらの法令や規制の遵守に務めております。もし、これらの法令や規制への抵触が認められた場合には、当社グループの社会的信用の低下はもちろんのこと、課徴金や損害賠償責任が発生する可能性があり、また、各国の安全保障上の政策に基づく規制、その他、将来において予期せぬ法令や規制の改正や強化が生じた場合、その対応や対応に不備があった場合の是正措置に関する費用負担や事業活動の制限等が発生する可能性があります。
当社グループは、企業倫理行動基準を定めて各種法規制遵守の重要性を国内外グループ会社に啓蒙するとともに、社内外の内部通報制度を活用して、法令等の違反の早期発見と対策に務めています。また、当社グループ各社に設置するコンプライアンス委員会やリスクマネジメント委員会においても、法令や規制への抵触のおそれがある行為の内容についての報告を実施し、適宜必要な対応がとれる体制をとっております。また、とりわけ重要な法令や規制への対応は当社経営会議で報告の上、当社役員の主導でグループ各社へ展開する体制をとっております。
⑦品質に関する影響
当社グループは、国際規格であるISO9001の認証取得を含む品質保証体制を確立し、高レベルのサービスを提供し続けてまいりました。しかしながら、常に最先端技術を利用した製品を提供していることから開発的要素も多く、予期せぬ不良が発生し、追加原価の発生・損害賠償や信頼低下による売上高減少を招いた場合、当社グループの経営成績や財政状態に悪影響が及ぶ可能性があります。
当社グループは、2024年6月期を初年度とする中期経営計画において、モノづくり力強化を進めており、コスト、信頼性、規格仕様が決定される上流工程の業務を強化しております。製品の完成度を高めるバリューエンジニアリング、不適合内容の水平展開など品質向上の仕組みを盛り込むとともに、再発防止策の実施・徹底を進めております。
⑧資金調達に関する影響
当社グループは、金融機関からの借入金等により資金調達を行っておりますが、市場環境、当社の信用力低下等により、資金調達が困難になる可能性があります。また、当社グループの借入金に係る金融機関との契約には、財務制限条項が付されているものがあり、現状、当社グループの財政状態は当該条項に照らして問題のない水準にあるものの、当該条項に抵触した場合、資金調達に支障が生じる可能性があります。資金調達が想定どおりに行えない場合、当社グループの経営成績や財政状態に悪影響が及ぶ可能性があります。
当社グループは、資金調達にあたって年度別の返済額の平準化に努めており、リファイナンスリスクの低減や返済負担の軽減を図っております。また、社会情勢や経済環境の先行きが不透明な中、不測の事態に備え、十分な手元流動性資金を確保するとともに、コミットメントラインを設定し追加資金を確保できる体制を整えており、当面資金調達リスクは極めて低い状態にあります。事業環境の急激な変化にも対応できるよう、引き続き、適時に必要資金を確保できる体制を維持してまいります。
⑨情報セキュリティに関する影響
当社グループは、事業上の重要情報及び事業の過程で入手した個人情報や取引先等の機密情報を保有しております。これらの情報が意図せず流出した場合、顧客の喪失や社会的信用の低下、損害賠償等が発生する可能性があります。また、盗難・紛失等による第三者の不正流用、サイバー攻撃、その他不測の事態によって重要データの破壊や改ざん、情報漏えいや流出、情報システムの停止等が発生する可能性があります。これらの要因により、当社グループの経営成績や財政状態に悪影響が及ぶ可能性があります。
当社グループは、情報システムやネットワークに対する定期的なリスクアセスメントや監視等のセキュリティ対策を進めております。また、情報管理に関する諸規程のもと、適切な情報管理体制を構築するとともに、社員教育によりその徹底を図っております。
⑩外国為替変動による影響
当社グループは、海外売上高比率が高いものの、原則として円建取引を行っております。しかしながら、当該円建取引では、円高時に海外メーカーと比較して価格競争力の面で不利になることがあります。また、一部外貨建取引もありますが、外貨建取引においては、急激な為替変動による為替リスクが生じる可能性があります。これらの要因により、当社グループの経営成績や財政状態に悪影響が及ぶ可能性があります。
当社グループは、為替予約等によりリスクヘッジを行うことで、為替変動による業績への影響を低減するよう努めております。
⑪知的財産権に関する影響
当社グループは、各種真空装置に関する多数の特許を保有し、積極的に新規権利獲得にも努めております。しかしながら、第三者から不測の特許侵害訴訟が提起された場合、当社グループの経営成績や財政状態に悪影響が及ぶ可能性があります。
これに備えるため、当社グループの製品・技術に関して、定期的に特許調査を行っております。
⑫安全に関する影響
当社グループの製品に関連する安全性等の問題により、顧客への損害発生、損害賠償責任や売上高の減少、社会的信用の低下等につながる可能性があります。また、不測の事態により従業員や施設に影響を与える労働災害が発生し、製品の供給やサービスの提供に支障をきたす事態となった場合、当社グループの経営成績や財政状態に悪影響が及ぶ可能性があります。
当社グループは、「安全第一」を企業経営の基本とし、顧客に利用していただく様々な製品やサービスの安全と、私たち自身が安全で明るく元気に働くことのできる活気ある職場づくりを、リスクアセスメントを中心とした安全管理システムの運用を通じて目指していきます。
⑬環境規制、気候変動への対応に関する影響
当社グループは、地球温暖化防止、水質汚濁、大気汚染、騒音、土壌汚染、廃棄物処理、使用する有害化学物質等に関する国内外の環境法令の遵守に努めております。しかしながら、将来の環境規制への適応が困難な事象や不測の事態が発生した場合、環境対応費用の増加や事業活動停止、社会的信用の低下等の可能性があり、当社グループの経営成績や財政状態に悪影響が及ぶ可能性があります。
気候変動対応に関しては、重要な経営課題の1つととらえ「気候関連財務情報タスクフォース(TCFD)」による提言に賛同するとともにシナリオ分析に基づくリスクと機会を予測し活動を推進しております。さらに、2030年に温室効果ガス排出量を40%削減(2020年比)、2050年の温室効果ガス排出量実質ゼロを目標とし、定期的なモニタリングと進捗管理を行っております。
環境関連法令や規制を遵守するための取組み、環境理念や環境方針に基づいた環境負荷の低減、温室効果ガス排出量削減目標達成に向けた施策を継続的に推進し、環境情報の適切な開示を行ってまいります。
⑭その他リスク
当社グループと同様にグローバルな事業展開や広範な事業展開をしている企業と同じく、各国・各地域における経済環境、自然災害、戦争、テロ、感染症等の諸般の不可抗力要因が、当社グループの経営成績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における世界経済は、穏やかな回復基調で推移しましたが、欧米における高い金利水準の継続や中国における景気減速懸念に伴う海外景気の下振れリスクが意識される等、先行きに対する不透明感が高まりました。
当連結会計年度における当社グループを取り巻く事業環境は、半導体業界では、スマートフォンやパソコン等の需要減速に伴う短期的な半導体メーカーの設備投資の鈍化がみられますが、中長期的には、生成AIへの期待等による半導体需要拡大が引き続き見込まれるとともに、地政学的リスク等に対応した世界各地での半導体工場新増設計画が進められています。また、エレクトロニクス業界では、グリーンエネルギー政策等に基づくEV導入促進政策の継続的な進展等に伴うパワーデバイス投資、スマート社会化構想等に基づくデジタル化の促進やメタバースの実現等に向けた各種電子デバイスの技術革新や増産のための投資、中国におけるエレクトロニクスの国産化政策に基づく投資等の継続的な拡大が続いています。そして、フラットパネルディスプレイ(FPD)業界においては、引き続き、タブレットやパソコン用のITパネルが液晶から有機ELへ転換する過渡期にあり、大型基板の有機EL投資が引き続き期待されます。また、産業用電池業界においても、EVバッテリーの小型大容量化や安全性向上の実現に向けた量産投資の本格化の兆候が引き続き認められています。
その結果、当連結会計年度につきましては、受注高は2,581億81百万円(前年同期比109億60百万円(4.4%)増)、売上高は2,611億15百万円(同335億87百万円(14.8%)増)となりました。また、損益面では、営業利益は297億71百万円(同98億25百万円(49.3%)増)、経常利益は297億85百万円(同69億5百万円(30.2%)増)となり、親会社株主に帰属する当期純利益は202億33百万円(同60億64百万円(42.8%)増)となりました。
企業集団の事業セグメント別状況は次のとおりであります。
「真空機器事業」
真空機器事業を品目別に見ますと下記のとおりです。
(FPD製造装置)
ITパネル用液晶ディスプレイ製造装置に関する投資は一段落しましたが、EVバッテリーの小型大容量化や安全性が向上したことによる量産投資が本格化しはじめたため、受注高は前年同期並み、売上高は前年同期を上回りました。
(半導体及び電子部品製造装置)
半導体製造装置については、先端ロジック及びメモリの投資が当連結会計年度の下期より回復したこと、電子部品製造装置については、パワーデバイスの投資が活発化したこと等により、受注高・売上高ともに前年同期を上回りました。
(コンポーネント)
EV用バッテリーや家電製品向けリークテスト装置等が好調に推移し、受注高・売上高ともに前年同期を上回りました。
(一般産業用装置)
高機能磁石製造装置や医療用凍結乾燥装置等が好調に推移し、受注高・売上高ともに前年同期を上回りました。
その結果、真空機器事業の受注高は2,071億56百万円、受注残高は1,259億68百万円、売上高は2,123億14百万円となり、261億46百万円の営業利益となりました。
「真空応用事業」
真空応用事業を品目別に見ますと下記のとおりです。
(材料)
FPD関連製品の工場稼働率の回復等により受注高・売上高ともに前年同期を上回りました。
(その他)
表面分析機器関連の受注高は前年同期を下回りましたが、高精細・高機能ディスプレイ向けマスクブランクス関連等が好調に推移し、売上高は前年同期を上回りました。
その結果、真空応用事業の受注高は510億26百万円、受注残高は190億32百万円、売上高は488億1百万円となり、35億63百万円の営業利益となりました。
また、当連結会計年度末の財政状態は以下のとおりとなりました。
資産合計は、前連結会計年度末に比べ351億79百万円増加し、3,886億53百万円となりました。これは、現金及び預金が20億65百万円減少した一方で、受取手形、売掛金及び契約資産が197億23百万円、棚卸資産が75億37百万円、有形固定資産が101億57百万円それぞれ増加したことなどによります。
負債合計は、前連結会計年度末に比べ123億6百万円増加し、1,609億26百万円となりました。これは、契約負債が39億39百万円、長期借入金が37億14百万円、賞与引当金が18億81百万円それぞれ増加したことなどによります。
純資産合計は、前連結会計年度末に比べ228億73百万円増加し、2,277億27百万円となりました。これは、親会社株主に帰属する当期純利益の計上を主な要因として利益剰余金が148億54百万円、為替換算調整勘定が59億76百万円それぞれ増加したことなどによります。この結果、自己資本比率は56.7%となりました。今後もキャッシュ・フローマネジメントの強化等により、財務基盤の更なる強化を目指してまいります。
②キャッシュ・フロ-の状況
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況は以下のとおりとなりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、運転資金が増加する一方で、税金等調整前当期純利益、減価償却費等を計上したこと等により、171億62百万円の収入となりました。中期経営計画において2026年6月期までの目標として掲げている営業キャッシュ・フロー630億円(3年間累計)の実現に向けて、引き続きキャッシュ・フローマネジメントの一層の強化に努めてまいります。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形及び無形固定資産の取得による支出などにより、195億24百万円の支出となりました。
その結果、フリー・キャッシュ・フローは23億62百万円の支出となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、業績連動配当性向に基づいた配当金の支払などに充当し、27億84百万円の支出となりました。当社は株主の皆様への利益配分を最重要政策の一つと位置づけ、更なる成長により長期的な配当増額を目指しております。この一環として、2024年6月期より業績連動配当性向を引き上げ、35%以上を目途として実施する方針としております。
以上に加え、円安による為替影響23億69百万円を加算した結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ27億76百万円減少し、845億41百万円となりました。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
生産高 (百万円) |
前年同期比 (%) |
|
真空機器事業 |
215,723 |
114.2 |
|
真空応用事業 |
48,842 |
114.1 |
|
合計 |
264,565 |
114.1 |
(注)金額は、販売価格をもって表示しております。
b.受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
受注高 (百万円) |
前年同期比 (%) |
受注残高 (百万円) |
前年同期比 (%) |
|
真空機器事業 |
207,156 |
102.8 |
125,968 |
100.8 |
|
真空応用事業 |
51,026 |
111.6 |
19,032 |
118.8 |
|
合計 |
258,181 |
104.4 |
145,000 |
102.8 |
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
販売高 (百万円) |
前年同期比 (%) |
|
真空機器事業 |
212,314 |
114.9 |
|
真空応用事業 |
48,801 |
114.1 |
|
合計 |
261,115 |
114.8 |
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.主な品目別販売実績及び当該販売実績に対する割合は次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
品目 |
当連結会計年度 |
|
|
販売高 (百万円) |
割合 (%) |
||
|
真空機器事業 |
FPD製造装置 |
55,085 |
25.9 |
|
半導体及び電子部品製造装置 |
95,913 |
45.2 |
|
|
コンポーネント |
39,077 |
18.4 |
|
|
一般産業用装置 |
22,239 |
10.5 |
|
|
計 |
212,314 |
100.0 |
|
|
真空応用事業 |
材料 |
24,224 |
49.6 |
|
その他 |
24,577 |
50.4 |
|
|
計 |
48,801 |
100.0 |
|
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度における当社グループの経営成績は、売上高は2,611億15百万円(前年同期比14.8%増)となりました。半導体及び電子部品製造装置において、先端ロジック・メモリ向けの投資が回復傾向にあることや、日本・中国のパワーデバイス投資活発化、FPD製造装置に含まれる産業用電池業界において、EVバッテリーの小型大容量化・安全性向上に向けた量産投資が本格化しはじめたことが主な要因となります。
営業利益率は11.4%(前年同期比2.6ポイント増)となり前年同期から改善しました。これは売上高の増加に加え、利益率の高い半導体及び電子部品製造装置の売上高が伸びたことが主な要因となります。
なお、研究開発費の総額は133億13百万円となり、前年同期から4億52百万円減少しました。研究開発費の売上高に対する比率は前年同期から1.0ポイント減少し5.1%となりました。研究開発力強化は、中期経営計画における主な取組みのひとつであり、将来の成長に向けた投資を引き続き強化しております。
経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」に記載のとおり、当社グループは2024年6月期を初年度とする3年間の中期経営計画を策定して開示しましたが、この中期経営計画において、「真空技術による社会的価値創造」及び「利益・資本効率重視の経営」の2つの基本方針を掲げております。この方針のもと、売上高、売上総利益率、営業利益率、営業キャッシュ・フロー、ROE(自己資本利益率)を中期経営計画上の財務モデルにおける指標としております。
中期経営計画3年目の数値目標については、売上高3,000億円、売上総利益率35%、営業利益率16%、3年間累計の営業キャッシュ・フロー630億円、ROE14%としております。この財務モデルの達成に向けて、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」に記載した具体的取組みにより、中長期の視点で成長を目指してまいります。
セグメントごとの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
・真空機器事業
当連結会計年度における当セグメントの事業環境は、「(1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
売上高は、前年同期比14.9%増の2,123億14百万円となりました。先端ロジック・メモリ向けの投資が回復傾向にあることや、日本・中国のパワーデバイス投資活発化、FPD製造装置に含まれる産業用電池業界において、EVバッテリーの小型大容量化・安全性向上に向けた量産投資が本格化しはじめたことが主な要因となります。
セグメント利益率については、当連結会計年度は12.3%と、前年同期の9.0%から改善しました。これは売上高の増加に加え、利益率の高い半導体及び電子部品製造装置の売上高が伸びたことが主な要因となります。
・真空応用事業
当連結会計年度における当セグメントの事業環境は、「(1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
売上高は、前年同期比14.1%増の488億1百万円となりました。FPD関連の顧客工場の稼働率回復等や、高精細・高機能ディスプレイ向けマスクブランクス関連等の売上高が好調に推移したことにより、当セグメントの売上高が増加しました。
セグメント利益率については、当連結会計年度は7.3%と、前年同期の7.8%から悪化しました。これは、相対的に利益率の低い製品の売上高増加が主な要因であります。
財政状態の分析は「(1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a.キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況は「(1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
b.資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの主な資金需要は、新たな成長戦略の足がかりとなる研究開発投資や設備投資、事業により生じる運転資金に基づくもので、とりわけ成長事業として強化を図っていく半導体や電子分野の開発投資を拡大する予定です。これらの資金需要につきましては、営業活動によるキャッシュ・フロー及び金融機関からの借入金などにより対応し、資金調達にあたっては、リファイナンスリスクの低減や返済負担の軽減を図るために、年度別の返済額の平準化に努めております。
また、欧米における高い金利水準の継続や中国における景気減速懸念に伴う海外景気の下振れリスクが意識される中、十分な手元流動性資金を確保するとともに、コミットメントラインを設定し追加資金を確保できる体制を整えており、当面安定的な経営が可能な状態にあります。事業環境の急激な変化にも対応できるよう、引き続き、適時に必要資金を確保できる体制を維持してまいります。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りの仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
当連結会計年度において、経営上の重要な契約等は行われておりません。
当社グループは、真空技術をコアとしたイノベーションの創出・共創の推進を経営の重要な柱に位置付けるとともに、持続可能な社会の実現に向けた技術開発を進めています。気候変動や環境問題などといった社会課題に対応するためには、半導体や高機能な電子デバイスが貢献すると認識しており、当社グループの持つ真空薄膜形成技術がこれらのデバイスを製造するための核心技術となっています。
当連結会計年度においては、先端デバイス及び材料、エネルギー・環境、ヘルスケア領域に注力した研究開発活動を以下のとおり実施しております。
当社グループの開発体制は、グローバルに展開する各開発拠点において顧客密着型の開発を実施し、競合他社に先駆けた独創的な新技術の開発、積極的な応用技術の開発を行っております。真空技術をコアとした製品のうち、主力である半導体、電子部品、FPD製造用スパッタリング装置に加え、スパッタリングターゲット材料の開発などシナジー効果を生かした開発を重点的に行っております。また、省エネルギーに貢献するとして注目されているパワーデバイス向けイオン注入装置の開発を加速しております。
さらに、顧客の近くで製品・技術開発を加速し、コラボレーションと技術サポートを強化することを目的に、韓国 平澤市にTechnology Center PYEONGTAEKを設立いたしました。新たな研究開発拠点の追加により、当社グループの柱と位置づけている半導体事業の更なる成長を目指してまいります。
「真空技術をコアとしたイノベーションの創出・共創の推進」として、次々世代半導体分野においては、スキルミオン技術や光電融合、ヘルスケア分野においては、国立大学法人大阪大学医学部と共同で赤血球の真空凍結乾燥保管技術の開発を行っております。産学連携の取組みの成果としては、大阪大学大学院工学研究科アルバック未来技術協働研究所において、電圧磁性制御による超低消費スキルミオン計算に関する先駆的な研究の取組みが評価され、国際会議MMM2023(*1)にて招待講演を行いました。東京工業大学アルバック先進技術協働研究拠点においては、プロセスプラズマの空間分布診断手法を応用し、国際会議ISPlasma2024(*2)にて「Best Poster Presentation Award」を受賞いたしました。このように、数多くのテーマが表彰されるなど共創による異分野交流から生まれる新しいビジネス創出の場を形成しています。
また、長年にわたり真空技術に関する包括的な知識を提供してまいりました「真空ハンドブック」を、真空産業における最新の規格見直し動向を取り込み、三訂版として刊行いたしました。本書はエレクトロニクス、医療、エネルギー、航空宇宙などの分野で活用されている真空基礎技術や半導体製造、成膜、分析などに関わる真空装置の構築・設計の現場で必要となる技術データの集大成です。
当連結会計年度における研究開発費の総額は
(真空機器事業)
当社の事業の柱である、半導体や高機能電子デバイス、FPDなどの電子デバイス製造装置の各分野に開発投資を行い、新商品や新技術を創出し、高度なお客様のご要求にお応えしております。また、真空ポンプや真空計測機器等各種のコンポーネント分野へも開発投資を行い、真空装置と機器を合わせて開発するシナジー効果を発揮しております。
当セグメントに係る研究開発費は
(1)半導体及び電子部品製造装置
半導体製造装置においては、最先端ロジック分野におけるメタルハードマスク工程の実績をもとに他工程参入を実現するための装置及び成膜プロセス性能向上の開発を行っております。また、メモリ分野においても微細化、高積層化の進むDRAM及び3次元NANDフラッシュメモリでの他工程参入を目指した装置及び成膜プロセス開発も進めております。
電子部品製造装置においては、パワーデバイス、通信デバイス、オプトデバイス、電子部品(MEMS等)及びパッケージングの製造に適した装置及びプロセス開発を行っております。
(2)FPD製造装置
液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ及びフレキシブルディスプレイなどの分野における次世代技術への装置及びプロセス開発を行っております。
有機ELディスプレイにおいては、高精細化プロセスの要求が高まり、製品歩留まりを改善するための開発(スパッタリング装置等における低発塵新搬送機構、マスク合わせ精度向上)や成膜性能を向上する新ユニットの開発、新材料開発など、総合的な成膜技術向上を進めております。さらに、高い水準で面内の均一性を維持管理していくためにAI活用による安定稼働、生産性向上、省人化を実現するための装置を開発しております。
今後採用の拡大が予想される、高移動度の酸化物半導体薄膜トランジスタ(TAOS)向けスパッタリングターゲット材料の開発を行うとともに、スパッタリング成膜プロセス開発も進めております。
(3)コンポーネント
真空装置を構成する主要な機器として、真空ポンプや真空計測機器のほか、直流(DC)電源、真空搬送ロボット、真空バルブ等の開発を行っております。その成果の一例として、一般社団法人日本真空工業会(以下、「JVIA」という。)において、プロセスガスモニタQulee「RGM2-201F」が2023年度のJVIA真空コンポーネント大賞を受賞し、JVIAでは初の4年連続の受賞となりました。
さらに、主に有機ELディスプレイ製造装置に搭載されるクライオポンプ、量子コンピュータや医療関連に使用する極低温冷凍機の開発も進めており、次世代半導体やヘルスケア分野などの幅広い分野に真空機器が貢献しております。
(真空応用事業)
スパッタリングターゲット材料をはじめとする先端材料、表面分析装置やマスクブランクスの開発を行っており、当セグメントに係る研究開発費は
主に、半導体やFPDの高性能化に貢献するスパッタリングターゲット材料等の先端材料、先進的な表面分析装置の開発を行っております。また、半導体やFPDのリソグラフィ工程の重要部材であるマスクブランクスなどの開発を行っております。具体的には、表面分析分野において飛行時間型二次イオン質量分析計(TOF-SIMS:Time-of-Flight Secondary Ion Mass Spectrometry)のフラッグシップモデルとなる「PHI nanoTOF 3+」を開発、2023年10月に販売を開始いたしました。
(*1)The 68th Annual Conference on Magnetism and Magnetic Materials
(*2)16th International Symposium on Advanced Plasma Science and its Applications for Nitrides and Nanomaterials