第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1)会社の経営の基本方針

 当社グループは、社会の一員として健全な倫理・価値観を社会と共有しながら、法令・定款・社会規範を遵守し、株主、顧客、従業員とその家族、取引先、債権者などの当社グループの利害関係者と良好な関係を構築するとともに、人々の良質な暮らしの実現のために、他にない技術の提供を通じて、原油・天然ガス生産業をはじめとする流体を扱う多様な産業、航空宇宙、透析医療などの暮らしの根幹分野で創造的な貢献を果たすことを経営の理念とし、当社グループの持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を目指します。

 このような経営の理念の下、それぞれの事業分野において、独創的な技術を活かし、市場のニーズに応えた特長ある製品、サービスを提供することにより社会に貢献することを、経営の基本方針としています。

 

(2)目標とする経営指標

 当社グループは、2020年度を初年度とする6ヵ年の中期経営計画「Nikkiso 2025」(対象期間:2020年~2025年)を推進しています。「Nikkiso 2025」では、前半の3ヵ年は「事業基盤の強化」を主眼とし、技術力の向上と生産体制の再編、並びに国内と海外で一体となったグローバルベースでの事業推進体制の強化を実現します。後半の3ヵ年はその成果を結実させる時期と位置付け、「Nikkiso 2025」の最終事業年度である2025年12月期には、売上収益 2,500億円、営業利益 200億円の達成を目指しています。

 

(3)中長期的な会社の経営戦略

 当社グループは、収益力の指標として営業利益を重視しています。同時に、特定の指標に過度に依存することなく、収益力、効率性、成長性、安定性等の面で全体としてバランスのとれた姿を目指します。

 

(4)経営環境及び対処すべき課題

 新型コロナウイルスの世界的な感染拡大の状況下において、世界各地での事業活動への直接的な影響や、物流の混乱による輸送コストの高騰、原材料価格の高騰により、先行きが不透明な状況が継続しています。特に、各産業における生産活動の停滞やそれに伴う設備投資の先送り感が強まることで、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼすことが想定されます。

 一方で、エネルギー転換を目指す動きが世界的に拡大しており、新たな成長分野におけるビジネスの獲得や、サステナビリティを巡る取り組みをはじめ、企業に求められる社会的責任がますます高まっています。

 このような先行きの予断を許さない経営環境下において、当社グループは、産業、医療を支えるインフラとして社会的に確固たるニーズと解決されるべき社会的課題のある事業を通じて、その使命を果たし続けるとともに、エネルギー転換に向けた世界的な動きに対応し、社会のニーズに応えるべく、「Nikkiso 2025」の推進をはかっていきます。短期的には、健全な収益性と資金流動性を維持しながら厳しい経営環境への柔軟かつ機動的な対応を図っていくものの、新型コロナウイルス収束後には、各事業領域とも継続的な需要と事業成長を見込んでいます。

 

2【事業等のリスク】

 当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」)の状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクを記載します。なお、以下の記載はすべてのリスクを網羅したものではありません。想定できないリスクや重要性の低いと判断した他のリスクの影響を受ける可能性も否定できません。また、当社グループは、以下記載の主要なリスクに対して、実効的と判断する対応策を継続的に実施しているものの、これらの対応策によっても当社グループの経営成績等に悪影響を及ぼすことを完全に防止できるわけではありません。以下の記載中の将来に関する事項は、本有価証券報告書作成時における当社グループの判断によるものです。

 

1.政治・法律・制度的環境要因

(1)医療保険行政に関するリスク

<想定されるリスク> メディカル事業は、人工透析関連をはじめとした医療市場を主要な販売先としており、医療保険行政の規制を受けています。したがって、メディカル事業の製品の市場と価格は、直接・間接にその影響を受けます。今後の規制の動向により、市場の縮小や価格の下落などが起きる場合には、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

<現在の対応策> 医療保険行政について、短期的、中長期的な規制動向をできるかぎり的確に把握、予測するために、さまざまな角度から情報収集に努め、生産、営業計画に活かしています。

(2)税務に関するリスク

<想定されるリスク> 当社グループは、グローバルに生産・販売拠点を有しており、グループ会社間の国際取引も多く発生しています。グループ会社間の国際的な取引価格に関しては、適用される各国の移転価格税制等の観点からも適切な取引価格となるよう細心の注意を払っています。しかしながら、税務当局または税関当局との見解の相違等により、追加の税負担が生じる可能性があります。また、世界各国の租税法令の発効、施行、導入及び改廃等により、当社グループの税負担が増加する可能性があります。

<現在の対応策> 移転価格税制に関しては、グループ会社間取引金額の大きい会社との取引には移転価格ポリシーを定めて運用を行なっている他、各国の法令に従って移転価格文書を作成して価格の妥当性の検証を行なっています。また、組織再編など重要な取引については専門家の助言を得ながら関係各国の法令への準拠性を高めています。

※2021年7月8日、2017年8月に買収したCryogenic Industries グループの外国子会社3社に対してタックス・ヘイブン対策税制の適用を受けることになり、同外国子会社の親会社となる日機装インターナショナル株式会社の2018年度事業所得金額について、その税額の更正通知書を受領しました。本件について、当社グループは意図的な租税回避行為を行なっておらず、税務当局も同様に認識していますが、当社グループと税務当局との間で見解の相違が生じています。当社グループとして更正処分に係る追徴税額を一旦納付した上で、審査請求等を含め正当性を主張してまいります。

2.経済的環境要因

(1)為替変動に関するリスク

<想定されるリスク> 当社グループは、世界の様々なマーケットにおいて製品及びサービスを提供しています。主な通貨は米ドルとユーロであり、これらの通貨の為替変動が当社グループの業績と財務状態に影響を及ぼす可能性があります。当社グループ全体では、外貨建売上が外貨建仕入を上回り、また外貨建資産が外貨建負債を上回るため、これらの通貨に対する円高が当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

<現在の対応策> 外貨建資産・負債残高について継続的にモニタリングを実施し、必要に応じ一部を円貨へ転換するなど為替リスクの抑制に努めています。

(2)資金調達に関するリスク

<想定されるリスク> 当社グループは、金融市場の状況を踏まえた最適な手段により外部から資金を調達しており、現時点においては主に銀行からの借入による資金調達を実施しています。このため金融市場の不安定化や当社グループの信用状況が悪化した場合などには、資金調達コストの上昇や資金調達自体が困難となり、当社グループの経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

<現在の対応策> 長期金利の動向を踏まえ、適切な時期に借入の固定金利化を実施し金利変動リスクの低減を図っています。

3.社会的環境要因

(1)国内血液透析患者数の減少に関するリスク

<想定されるリスク> 国内の血液透析患者数は中長期的には減少に転ずると予想されます。国内血液透析市場が減退する速度が当社グループの想定以上に早い場合には、新たな事業展開の準備が整わない結果、国内血液透析事業の経営成績等が悪化する可能性があります。

<現在の対応策> 治療の安全性や利便性ならびに経済性に寄与する血液透析装置や当社血液透析装置との組み合わせで付加価値を提供できる血液回路などお客様のニーズに応える製品を提供しつづけることで国内血液透析市場のシェア拡大に努めています。また、海外市場は、透析医療の普及と市場拡大が続く中国での拡販や、2022年には透析大国である米国での本格展開を計画しており、今後グローバル展開をさらに加速していきます。

(2)気候変動、脱炭素化社会への移行に関するリスク

<想定されるリスク> 中長期的なLNG需要の増加や脱炭素社会への移行に伴う次世代エネルギーとしての水素などの利用が活発化する場合には、この分野で強みを発揮するCE&IGグループ(米国)の製品需要が増加する可能性があります。

<現在の対応策> インダストリアル事業は、CE&IGグループを中核に位置付け、中長期的に需要増加が見込まれるLNG関連市場、次世代エネルギーとしての水素を乗用車、商用車向けに供給する水素ステーション市場など、脱炭素社会の到来を見据えた事業領域に展開します。

4.技術革新・事業展開の遅れに関するリスク

<想定されるリスク> 技術的な進歩が速く、市場の変化を適切に予測できず、顧客のニーズに合致した新製品をタイムリーに開発できない場合には当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。また、開発期間の長期化に伴い費用の増加あるいは開発資産の減損損失が発生する可能性があります。当社グループは、生産能力、品質、生産性向上などのため生産設備などの設備投資や成長に向けたM&Aを継続的に行なってきました。その結果、当連結会計年度末において、のれん 50,661百万円(総資産の16.9%)、有形固定資産 55,209百万円(総資産の18.4%)、関係会社株式及び関係会社出資金 90,179百万円(総資産の40.7%)を計上しています。今後、事業展開の遅れ等により、これらの資産が十分な将来キャッシュ・フローを生み出さないと判断される場合には減損損失を認識する必要性が生じます。多額の減損損失を認識した場合、当社グループの経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

<現在の対応策> これまで当社グループは、エネルギー転換などその時々の環境変化に順応し、事業機会を創出してきました。今後、新たな事業機会の創出を見据え、液化水素・アンモニアなど次世代エネルギーに向けたポンプの要素技術と実用化技術の開発を加速します。また、事業環境の変化等を予測し、時機を失わずに事業ポートフォリオの組み換えも実施していきます。

5.災害

(1)自然災害や大規模災害等に関するリスク

<想定されるリスク> 国内においては、南海トラフ地震、首都圏直下型大地震の発生により、当社グループの国内生産・販売拠点、研究開発拠点、本社機能の弱体化、稼働停止など、当社グループの事業の継続に支障をきたす結果、当社グループの経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。海外においても、当社グループが展開する地域において、地震、津波、洪水、火災などの自然災害の発生により、様々な物的・人的被害が生じ、円滑な事業活動が阻害されるおそれがあります。

<現在の対応策> 国内の主要な生産拠点を大地震の発生する可能性の比較的低いとみられる、石川県と宮崎県に移転しています。また、本社その他の国内拠点において、適正な備蓄品の確保を含む防災対策を継続的に実施し、事業の継続性確保に向けた計画の策定と適時の見直しを実施しています。

(2)新型コロナウイルス感染症に関するリスク

<想定されるリスク> 新型コロナウイルスなどの感染症が拡大した場合には、従業員の感染、隔離措置、職場感染防止のため出社抑制措置などにより、生産性が悪化する結果、当社グループの経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

<現在の対応策> 2020年と2021年の新型コロナウイルス感染症拡大の際、当社グループでは、陽性者や濃厚接触者に対する迅速な隔離措置、職場感染拡大防止のための出社抑制と在宅勤務の拡大、社内外でのアルコール消毒液による手指消毒とマスクの常時着用の励行、職域接種の実施などにより、業務・生産効率の低下を最小限に抑えることに努めました。引き続き、従業員の健康と安全の確保と各拠点における感染拡大防止の対策を最優先に対応します。

 

≪事業別の新型コロナウイルス感染症に関するリスク≫

●航空宇宙事業

<想定されるリスク> 2020年と2021年は、新型コロナウイルス感染症拡大により、世界規模での移動制限が長期に及んだため、航空機需要が大きく減退した結果、製品出荷が大幅に減少しました。今後、新型コロナウイルス感染症が終息しない場合や、新たな変異株または他の強力なウイルス感染症が拡大した場合には、再び世界規模での移動制限が長期化することで航空宇宙事業の経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

<現在の対応策> コロナ禍の影響、脱炭素化の世界的な流れを見据え、民間航空機部品の製造で蓄積した経営資源を活用し、衛星事業、eVTOL*、水素燃料航空機など、従来の民間航空機部品の製造にとどまらない事業展開を確実に進めていきます。

*eVTOL(イーブイトール):垂直に離着陸し、ヘリコプターやドローン、小型飛行機の特徴を併せ持つ電動の機体。政府が2030年代の本格導入を目指す「空飛ぶクルマ」の主流になると言われています。滑走路が不要で騒音が少ないのが特徴。駆動時に温暖化ガスを出さず、整備コストがヘリコプターと比べ安いといったメリットもあります。

●メディカル事業

<想定されるリスク> 当連結会計年度は国内外ともに医療機関への訪問が厳しく制限されることが長期に及んだ結果、営業活動の制約を受けました。また、一部の部品や製品の生産拠点であるベトナムにおいて都市封鎖などにより当該地域の社会経済活動が大幅に制限され、当該地域における当社グループの生産拠点における稼働の縮小などが発生した結果、当社製品の製造販売の減少・停止などに波及しました。さらに、代替品調達に伴う追加費用の負担が発生しました。加えて、当該地域におけるサプライヤーの生産の縮小・停止なども発生し、調達部品の価格高騰や納期遅延による緊急輸送のための追加物流費用が発生しました。今後、新型コロナウイルス感染症が終息しない場合や、新たな変異株または他の強力なウイルス感染症が拡大した場合には、再びメディカル製品の出荷が減速、後退する可能性があり、当社グループの経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

<現在の対応策> 海外の生産拠点における都市封鎖などのリスクを見据え、当社グループ独自の調達ルートを活用し、代替品確保の体制を整備して対応します。さらに、国内透析市場に対して責任ある製品提供を継続的に実施するために、宮崎に新たな血液回路工場を建設することを決定しました。新工場は2024年に稼働する計画です。

6.製品・サービスの品質に関するリスク

<想定されるリスク> 当社グループは、各種製品・サービスについて、欠陥が発生しないように万全の品質管理基準のもとに生産しています。しかしながら、万一リコールや製造物責任につながるような重大な欠陥が発生した場合には、多額のコスト発生に繋がり、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

<現在の対応策> 「技術の日機装」を掲げている当社グループにとって、品質問題は経営の根幹に関わる重大な課題と認識し、全社を挙げて品質保証体制の強化に取り組んでいます。

①当社グループの技術標準・固有技術・ノウハウについて、設計管理システムを用いて技術の継承や人材育成に活用しています。また技術者に対する体系的な教育プログラムを2019年から実施しています。これらにより技術者のスキル向上による設計品質の向上を図っています。

②部品購入を行なう取引先に対し、課題を可視化して改善を図る活動を全社で標準化し運用しています。これにより取引先の品質保証体制を強化し、製品・サービス品質のさらなる安定化を進めます。

7.サプライチェーンに関するリスク

<想定されるリスク> 当社グループの生産活動には、種々の原材料を使用しており、原材料ソースの多様化に

より安定的な調達に努めていますが、これらについて供給の逼迫や遅延、供給国の通商政策の変更、また、それ

らに伴う価格上昇等が生じる可能性があります。また、原材料等の調達リスクが顕在化することにより、製品・

サービスの供給が途絶する事態が生じ当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

<現在の対応策> 急激な需給の変動に適切に対応できるように調達先の多様化を図っていきます。また、供給

面においては、当社グループの海外工場に依存していた血液回路生産を国産化する計画を進めており、カントリーリスクを排除し、国内血液透析市場への安定供給体制を構築していきます。

8.人事採用・確保と人材育成に関するリスク

<想定されるリスク> 当社グループは、生産・開発・販売、その他専門分野に携わる優秀な人材を幅広く採用・育成することで、グローバルな事業活動の推進と競争力の維持向上を図っています。しかしながら、人材の獲得競争の激化や社員の退職等によって十分な人材の確保・育成ができなかった場合、競争力の低下に繋がる可能性があります。また、当社グループの中長期的な成長は各従業員の能力に依存する部分が大きく、特に、高い技術力と技量を有する従業員の確保・技能の伝承は、当社グループの経営課題の一つです。このようなキーパーソンとなりうる人材を確保・育成できない場合には、当社グループの競争力が減退し、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

<現在の対応策> 非連続な未来に向けた持続的な成長を遂げるために、当社グループの企業風土と役員・従業員の意識の変革を促す取組みを行なっていきます。具体的には次に取り組んでいきます。

①多様な人材の獲得のために新卒採用や経験者の通年採用を積極的に展開しております。国内においては、優秀で多様な学生や経験者にアプローチし、オンライン面接を導入し、コロナ禍の状況においても積極的に採用活動を行なっています。

②目標管理・評価・所属長と従業員とのフィードバック面談を通じた職場における人材育成、従業員の能力向上のための階層別研修、各事業分野における専門的知識・技能を習得するためのスキル研修のほか将来の経営層候補に対する研修などを実施しています。

③在宅勤務やフレックスタイムなど働く時間と場所を柔軟に選択できる「新しい働き方制度」を導入し、従業員の仕事と家庭生活の調和にも配慮し従業員の定着を図っています。

④従業員のエンゲージメント向上のため、役割・責任に応じた処遇となるよう人事制度の改定と競争力のある報酬水準の実現に向けた検討を進めています。

9.情報セキュリティに関するリスク

<想定されるリスク> 当社グループは、事業全般においてITシステムを活用していますが、システムに対するサイバー攻撃や、自然災害などの不測の事態によって、システムの長期間停止や、データ滅失が発生することで、安定した業務の継続が困難になる結果、当社グループが担う社会的使命を果たすことができず、グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

<現在の対応策> コンピューターウイルス対策などの外部攻撃から情報資産を防御するための技術的仕組みを導入し、サイバー攻撃によるシステム停止リスクを低減しています。ミッションクリティカルなITシステムは、立地、建造物、電源、空調等ファシリティに安全面の考慮と各種対策を施したデータセンターに設置された機器を用いて稼働しており、停電や自然災害によるシステム停止リスクを低減しています。業務上重要なシステムやデータは、遠隔地に設置されたバックアップ装置にコピーを保管し、機器の物理的破壊やプログラム・データの滅失があっても、代替機を用意することで、システムやデータが復旧できるよう対策を講じています。

10.コンプライアンスに関するリスク

<想定されるリスク> 当社グループの事業活動は地理的にますます拡大し、法規範や社会規範はさらに高度化し、複雑多岐にわたるうえ、社会の価値観は常に変化し続けます。当社グループは、国籍、人種、文化、信仰する宗教の異なる従業員で構成されています。当社グループの継続的なコンプライアンス活動の効果が及ばない場合には、これらのグループ内外の事情が当社グループの経営成績等や評価に悪影響を及ぼす可能性があります。

<現在の対応策> 当社グループが事業活動を展開する国、地域における法規範、社会規範を遵守し、社会の期待に応えること、多様な価値観を許容することは当社グループの企業価値向上にとってもっとも重要な課題であるとの認識のもと、日機装グループ・グローバル行動規範の制定、反贈収賄規程の制定、内部通報制度の拡充、コンプライアンス教育の継続などコンプライアンスに関する具体的な活動を継続します。

 

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)業績等の概要

① 財政状態及び経営成績の状況

 2021年の世界経済は、新型コロナウイルス感染症の再拡大のなかにおいてもワクチンの普及とともに経済活動が段階的に再開されたことで、全体としては回復基調となりました。一方、経済活動の再開に伴う需要の急増により、半導体などの部材不足、原油・天然ガスなどの資源価格の上昇、サプライチェーンの混乱による調達、物流コストの高騰など、当社グループの経営環境は大変厳しいものとなりました。

 インダストリアル事業では、経済活動の再開で原油・天然ガスの価格は上昇したものの原油採掘の投資の動きは鈍く原油・ガス採掘などの上流分野の需要回復は遅れています。一方、産業ガスやLNG向け設備投資は動き始めており、海洋環境規制の高まりを背景とした船舶向けLNG燃料供給システムの受注が大幅に拡大しています。航空宇宙事業は人の移動の再開に伴い小型機(単通路機)を中心とした民間航空機需要が回復し始めてきたことで製品出荷は徐々に回復しています。中・大型機の部品生産の回復は当面見込めないものの、コロナ禍を受けて航空機産業のサプライチェーンの見直しや部品製造の素材、製法の見直しが本格的に進もうとしており、当社グループの技術開発力や生産能力に期待した新規の引合いが増加しています。業績は2021年を底に回復に転ずると見込んでいます。医療部門では、国内の血液透析装置需要が引き続き活発に推移し、海外市場でも装置需要の回復が見られた一方で、供給面においては、ベトナム・ホーチミンの当社血液回路工場が、2021年7月以降ホーチミン市における新型コロナウイルス感染症蔓延による当局の指導により稼働の制限を余儀なくされました。2021年末までに、当工場の稼働率はほぼ正常な水準まで回復できたものの、他社品調達に伴う調達コストの増加や、航空便利用による物流費の高騰の影響を受け、医療部門の営業利益は大きく減少することとなりました。ヘルスケア事業は、据置型空間除菌消臭装置の国内需要の伸びが一服する中、他社類似製品の市場参入やその価格競争など競争環境の激化に加えて、海外市場進出の遅れもあり、前年を下回る業績となりました。

 この結果、当連結会計年度の当社グループ業績は、受注高185,249百万円(前年同期比15.0%増)、売上収益167,759百万円(同5.8%増)、営業利益3,125百万円(同69.4%減)と、増収減益となりました。税引前利益は、主に為替相場が米ドル、ユーロとも円安基調で推移したことに伴う外貨建て資産・負債の評価による為替差益の計上により3,952百万円(同56.3%減)となりました。また、当連結会計年度に税務当局からの更正処分による追徴税額1,768百万円を法人所得税費用に計上したことなどにより、親会社の所有者に帰属する当期利益は221百万円(同96.6%減)となりました。

 

 セグメントの業績(内部取引控除前)は次のとおりです。

工業部門

<インダストリアル事業>

 経済活動の段階的な再開のなか、移行エネルギーとして急拡大するLNG需要ですが、中長期的にも新興国中心にその拡大は継続すると見込んでおり、また石油化学市場などの下流分野も中国などが依然活況を見せています。

 産業ガス・LNG関連事業のClean Energy&Industrial Gasグループ(CE&IGグループ)は、海洋の環境規制強化に伴う世界的なLNG燃料船の需要増加を捉えLNG燃料船関連の受注を大きく伸ばせたことで、過去最高の受注額を達成しました。一方、売上収益はアフターサービスなどで増加したものの、増産に備えた体制構築費用や次世代エネルギーに向けた研究開発費用など経費支出の増加、2020年に一部事業の売却益を計上したこともあり、前年同期比では増収減益となりました。また、LEWA社は、上流分野向けの売上収益の落ち込みがあるものの、下流分野の石油化学市場やアフターセールスの強化などへの事業ポートフォリオの転換が奏功し、石油化学市場向けの販売好調や、アフターセールス事業の下支えで、LEWA社全体では減収となるも前年並みの営業利益を維持しています。

 インダストリアル事業全体では、市場が拡大するLNG燃料船ビジネスの大きな受注により、受注額は大きく拡大していますが、2022年以降の売上収益に寄与する受注が多いことや宮崎インダストリアル工場稼働に伴う減価償却費の増加等が影響し増収減益となりました。その他、電子部品製造機器事業は、スマートフォンや電気自動車向け需要が右肩上がりで伸長しており、事業規模は小さいながら中国、台湾市場を中心にMLCC向け装置の受注は好調に推移しています。

 中長期的には、石油関連事業については、グループ・協力会社の販売網を生かしつつ、下流分野や医薬など新たな分野への事業領域の拡大とアフターセールスの強化に継続して取り組んでまいります。産業ガス・LNG関連事業は、2021年受注済のLNG動力船関連の着実な生産・出荷とさらなる受注獲得に取り組みながら、中国、アジアの受入基地や中東、ロシアの液化・輸出基地への投資に向けて、宮崎のクライオジェニックポンプ試験設備の活用、当社グループ内の協業を更に進めながら、ビジネスの拡大を図ってまいります。また、宮崎工場では、設計・調達・生産プロセスの改善を通じて生産性向上と収益性改善へ取り組んでまいります。脱炭素社会の到来を見据えた事業領域の創出に向けては、当社グループが先行する液化水素・アンモニアなど次世代エネルギーに向けたポンプの要素技術と実用化技術の開発を加速し、合わせて米国市場における乗用車・商用車向け水素ステーションビジネスの事業拡大を着実に進めてまいります。

<航空宇宙事業>

 Withコロナでの経済活動の再開が進む中、民間航空機需要は、小型機(単通路機)の回復が顕著となっています。一方、中・大型機(双通路機)の需要は依然低調であるため、サプライチェーンを含めた航空機産業の生産構造の見直しが迫られています。こうしたなか、当社ベトナム・ハノイ工場の実績・生産能力が高く評価され、従来、中・大型機向け部品製造が中心であった当該工場を活用した小型機向けの新規部品製造の引合いや受注が増加しています。

 当社グループでは、市場の変化が著しいなかにあってもその変化に迅速に対応しながら、航空機メーカーと共同で次世代機用の材料や製法開発を進めるとともに、次世代交通手段eVTOLや水素を燃料とする航空機の実用化、小型人工衛星といった新市場創出へ向けた取組みを開始しています。

 事業基盤の強化については、国内生産機能の宮崎への集約は計画通り完了し、収益力改善に向けたコスト削減や生産効率化を更に進めていくとともに、宮崎・ベトナムにおける生産体制の再構築等、事業体質の強化を引き続き図ってまいります。

 

 以上の結果、工業部門の受注高は112,939百万円(前年同期比21.2%増)、売上収益は96,547百万円(同5.2%増)、セグメント利益は4,315百万円(同33.5%減)となりました。

 

医療部門

<メディカル事業>

 メディカル事業は、国内血液透析市場において、2019年から販売している主力の高機能血液透析装置の評価が高く、また感染症対策として病室や個室での透析治療の需要が急速に高まったこともあって装置販売が好調に推移しました。また、当社血液透析装置との組み合わせにより付加価値を提供できる血液回路や粉末型人工腎臓透析用剤など消耗品の販売も引き続き堅調です。海外市場では、新型コロナウイルス感染症拡大による血液透析装置の需要停滞からの回復が見られる欧州などで、前年同期比で装置販売は増加、中国市場についても堅調に推移しました。

 一方、営業利益面では、一過性の各国許認可対応費用に加えて、研究開発費、米国市場本格進出に向けた体制構築費など先行投資が増加する結果となりました。加えて、新型コロナウイルス感染症の拡大による世界的なサプライチェーンの混乱と停滞は、部材不足や部材調達費、物流費の高騰をもたらし、当社の事業環境にも大きな影響を与えています。特にベトナム・ホーチミンの当社血液回路工場では、2021年7月以降感染拡大防止に向けた当局の指導により工場稼働の制限を余儀なくされました。2021年末までに、当工場の稼働率はほぼ正常な水準まで回復できたものの、他社品調達に伴う調達コストの増加や、航空便利用による物流費の高騰の影響を受け、医療部門の営業利益は大きく減少することとなりました。こうしたなか、透析医療の生命線とも言える血液回路の供給者としての責務を全うしていくため、当社連結子会社である宮崎日機装に血液回路工場を建設し、製造プロセスの自動化と効率化を行なうことで、国内市場へ高品質な製品を安定供給できる体制を構築することを決定しました。

 深紫外線LED技術を活用したヘルスケア事業は、据置型空間除菌消臭装置のラインアップ拡充やキャンペーンの実施などにより販売活動を強化してきましたが、需要の伸びが一服するなかで、他社類似製品の市場参入やその価格競争など競争環境の激化、海外市場本格進出も各国の規格に対応した製品開発に時間を要していることから、前年同期比で減収となりました。一方、交通機関や建設・不動産などのインフラ市場における事業者との応用開発・協業の引き合いは継続しており、設備組み込み型のビジネスが今後の事業展開の中心となっていく方向が鮮明になりつつあります。このため、直近の需要動向や競争環境の変化を踏まえ、今後の販売予測を保守的に見直した結果、据置型商品について一部棚卸資産の評価損を計上しております。

 

 以上の結果、医療部門の受注高は74,241百万円(前年同期比9.0%増)、売上収益は73,143百万円(同9.2%増)、セグメント利益は3,044百万円(同60.2%減)となりました。

 

 今後、国内血液透析市場においては、高機能血液透析装置「Siシリーズ」の価値訴求による市場浸透とサービス体制の強化を継続し市場シェア拡大を目指します。海外市場においては、中国市場のビジネス拡大に継続して取り組むとともに、2022年下期には米国市場への本格展開を開始します。また、稼ぐ力の強化に向けて、足元の原材料・部品不足や物流費高騰影響の最小化、更なる生産効率化と経費節減に取り組んでまいります。供給面では、コロナ禍によるサプライチェーンの断絶・混乱を踏まえ、血液回路の生産・供給体制の強化・再構築として、2024年稼働を目指して、国内市場向けの宮崎血液回路工場の建設計画を進めております。当工場の設立を通じて、血液回路製品の商品構成を見直し、型式の集約を進め、急激な需給の変動にも対応できる生産体制を構築してまいります。加えて、2022年にはベトナム・クワンガイの新血液回路工場が稼働予定であり、米国市場へ向けた生産体制を整備します。

 ヘルスケア事業は、国内市場の価格戦略を見直し、据置型空間除菌消臭装置の抜本的な販売の立て直しを図ってまいります。組込型空間除菌消臭装置は、鉄道や建設・不動産などインフラ分野の事業者との協業ビジネスに本格参入してまいります。

 

② キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは3,594百万円となりました。税引前利益の計上とたな卸資産の増加が主な要因です。

 当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは△14,557百万円となりました。有形固定資産の取得による支出が主な要因です。

 当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは9,449百万円となりました。借入による収入が借入金の返済による支出を上回ったことが主な要因です。

 これらの結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末に比べて457百万円増加し、29,027百万円となりました。

 

 

(2)生産、受注及び販売の実績

 

① 生産実績

 

 当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

生産高(百万円)

前年同期比(%)

工業部門

85,759

+3.2

医療部門

30,370

△16.8

合計

116,129

△2.9

(注)1.セグメント間取引については、相殺消去しています。

2.金額は、販売価格によっています。

3.上記の金額には、消費税等は含まれていません。

 

② 受注実績

 

 当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

工業部門

111,014

+19.4

64,933

+33.9

医療部門

74,234

+9.0

6,089

+22.0

合計

185,249

+15.0

71,023

+32.8

(注)1.セグメント間取引については、相殺消去しています。

2.上記の金額には、消費税等は含まれていません。

 

③ 販売実績

 

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

工業部門

94,623

+3.3

医療部門

73,136

+9.2

合計

167,759

+5.8

(注)1.セグメント間取引については、相殺消去しています。

2.上記の金額には、消費税等は含まれていません。

 

(3)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。

 

① 重要な会計方針及び見積もり

 本連結財務諸表の作成にあたって採用する重要な会計方針及び見積もりは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記」をご参照ください。

 

② 財政状態

ⅰ)資産

 当連結会計年度末の資産合計は298,963百万円となり、前連結会計年度末に比べて26,068百万円増加しました。有形固定資産の増加が主な要因です。

ⅱ)負債

 当連結会計年度末の負債合計は204,763百万円となり、前連結会計年度末に比べ20,047百万円増加しました。借入金の増加が主な要因です。

ⅲ)資本

 当連結会計年度末の資本合計は94,199百万円となり、前連結会計年度末に比べて6,020百万円増加しました。在外営業活動体の換算差額の影響が主な要因です。

 

③ 経営成績

 当連結会計年度の経営成績の分析につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)業績等の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりです。

 

④ キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況の分析につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)業績等の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。

 

⑤ 資本の財源及び資金の流動性

ⅰ)資金需要

 当社グループの資金需要は、主として、設備新設、改修等に係る投資や、製品製造のための材料及び部品等の製造費用、販売費及び一般管理費等の運転資金です。

ⅱ)資金の源泉

 当社グループは、営業活動によるキャッシュ・フローによって得られた資金の活用及び、金融機関からの借入による資金調達を行なっています。

ⅲ)流動性

 当社グループは、引き続き営業活動によるキャッシュ・フロー、金融機関からの借入による資金調達により、事業の拡大に必要な資金を確保できるものと考えています。

 当社グループの資金管理は、当社が国内子会社を対象とした資金集中管理を実施し、海外子会社も含めたグループ全体の資金効率の向上を図っています。

 

4【経営上の重要な契約等】

 当社は、2022年3月14日開催の取締役会において、当社の連結子会社であるLEWA GmbHおよびGeveke B.V.の全株式を譲渡することを決議し、同日、株式譲渡契約を締結いたしました。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 37 後発事象」に記載のとおりです。

 

5【研究開発活動】

 当社グループは、各事業分野において、独創的な技術を駆使し、顧客ニーズに合わせた新製品、新技術のための研究、開発を積極的に行なっています。

 工業分野では、インダストリアル事業において、LNG液化基地・受入基地向け大型ポンプの機能・効率向上や、石油化学、石油精製、電力、食品、半導体、空調など幅広い分野で使用されるキャンドモータポンプの各国規格対応モデルの開発に加え、燃料電池車向け水素ポンプ、発電所向けアンモニアポンプの開発など、将来のエネルギーシフトを見据えた開発を推進しています。航空宇宙事業においては、民間航空機のジェットエンジン燃料の削減及びCO2削減に貢献する炭素繊維強化樹脂(CFRP)成形製品の新しい用途開発や独自開発・共同研究を通じた新材料(樹脂・繊維)、新製法の開発・製品化にも積極的に取り組んでいます。

 医療分野では、医療機関と患者様に貢献するため、今まで以上に安心・安全・確実な透析医療を提供できる製品の開発を推進しています。次世代の透析治療に対応するための基礎研究を進め、透析装置の機能向上、次期透析装置の開発に取り組んでいます。また、透析医療の代替手段としての腎細胞療法の確立を目指し、iPS細胞から腎前駆細胞を大量に培養するシステムの開発を進めています。ヘルスケア事業においては、深紫外線LED技術を活用した空間除菌製品など様々な社会ニーズに対応した製品開発に取り組んでいます。

 なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は2,454百万円です。