第2 【事業の状況】

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1)会社の経営の基本方針

   アイシングループ経営理念

 

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(2)目標とする経営指標

 当社グループは、「アイシングループビジョン2030」において、2030年度の経営目標を営業利益率8%、ROIC(投下資本利益率)13%としています。

※ROIC(投下資本利益率):税引後営業利益÷(棚卸資産+有形固定資産+無形資産)

 

(3)中長期的な会社の経営戦略及び会社の対処すべき課題

 新型コロナウイルスの終息は未だ見えず、今後の見通しは不透明な中、今、自動車メーカーや他のサプライヤーが自動車業界の大変革期での生き残りに向けて、大規模な合併や提携等の動きを加速させており、競争環境は厳しくなる一方です。また、世界各国が、環境規制の強化やカーボンニュートラルへの取り組みを次々と表明してきており、自然との調和を保ち、社会課題の解決に貢献する中で、生き残るための戦いに取り組むことが求められています。

 こういった厳しい状況の中、「CASEに対応する企業構造の改革」と「企業体質の強化」の2つの変革を、新会社アイシンを核にグループの総力をあげて構造改革をやり切ることで、次の成長に向けた競争力を高めていきたいと考えています。

 CASE領域では、重点商品にリソーセスをシフトするとともに、安心・快適な移動に向けた車両運動システムの技術開発を加速させていきます。また、ITの急速な進化をはじめとする社会構造変化や、自動車業界における事業構造転換の動きを捉え、グループ独自の技術やノウハウを活かしながら、お客様の期待を超える新しい価値を届けることのできる新技術・ビジネスモデルの創出と推進をはかります。

 企業体質の強化では、前年度は構造改革と緊急対策により固定費を低減することができましたが、この固定費の水準を恒久的な体質として定着できるように改革を引き続き推進していきます。またデジタルトランスフォーメーションへの取り組みを加速し、あらゆる業務プロセスの革新を実現するデジタル経営基盤を確立するとともに、グループ全体視点で保有資産・経営資源の有効活用を進め、企業価値の向上をはかっていきます。

 新型コロナウイルス感染症の1日も早い終息を願いながら、新生“アイシン”の始動を契機に、グループ一丸となって“移動”に感動を、未来に笑顔を届けることをめざします。

 当社グループは、“We Touch the Future”をスローガンに、誰もが安心・快適な未来を創るために、次の4つの方針を重点に、全力をあげて取り組んでいきます。

 

≪すべての基本≫ 事業活動の前提となる優先すべき事項の徹底

 ①安全・健康・コンプライアンスの最優先と品質の早期立て直し

 ②持続可能な社会の実現に貢献する企業行動の実践〔SDGs・ESG〕

 

 

≪未来への挑戦≫ 生き残りをかけた重点領域での成長戦略の加速

① 社会課題解決に向けた成長戦略の描き切りとCASE領域を軸とする重点商品の拡販加速

② 「走る」「曲がる」「止まる」「快適」を支える車両運動システムの技術開発の加速と市場投入

③ お客様の期待を超える新しい価値を届ける新技術・ビジネスモデルの創出と推進

 

  ≪持続的成長≫ 既存事業の競争力向上

① 成長商品へのリソーセス集中と不採算商品のスクラップによる収益構造転換

② グループ経営視点での拠点・機能集約のやり切りと徹底的な固定費削減によるリーンな体制の定着

③ グローバルベストを活かした生産性向上・原単位改善等による商品競争力・低コスト競争力の強化

 

≪足元固め≫ 持続的成長を支える経営基盤の強化

① デジタルトランスフォーメーション推進による業務プロセスの革新とデジタル経営基盤の確立〔DX〕

② 自己の成長と働きがい向上に向けた改革の推進〔人材育成、ATBA〕

③ グループ資産(ヒト・モノ・カネ・情報)の有効活用による資本効率の向上

※ATBA:Aisin Active Team Building Activity

 

 

2 【事業等のリスク】

 当社グループでは、グループ主要4社の取締役社長が参画する「リスクマネジメント委員会」において、企業経営に重大な影響を及ぼす様々なリスクを洗い出し、グループ各社が連携してリスクマネジメント体制の強化やリスク対応力の向上に努めています。また、経営会議においては、事業・投資リスクの多面的な検討を行っています。

 当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性のあるリスクのうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のあると考えられる主な事項を以下に記載しています。なお、以下は当社グループに関するすべてのリスクを網羅したものではなく、記載した以外にも投資家の判断に影響を及ぼす事項が発生する可能性があります。また、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。

 

(1) 社会的課題への対応

 当社グループは、自動車部品関連、住生活・エネルギー関連などの事業領域で多様な製品・サービスを提供していますが、国際社会で持続可能な社会を目指す動きが加速する中で、気候変動、資源枯渇、環境汚染、事故・災害など将来予想される社会課題に対する意識の高まりは、市場動向や顧客ニーズに変化をもたらす可能性があります。こうした事業環境の変化に適切に対応できない場合、競争力や企業価値の低下などにより、当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、“移動”に感動を、未来に笑顔を届けるため、社会課題を解決するソリューションを提供し、安心・快適な“移動”を実現することで、ステークホルダーの皆さまからパートナーと呼ばれる企業グループをめざし、持続可能な社会の実現に貢献する企業行動の実践を推進しています。このような価値観・取り組みは、2016年1月に発効した国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」と親和性が高く、今後も、事業活動を通じ、SDGsの達成に貢献できると考えています。これらの活動を加速していくため、当社グループとして注力していく7つのマテリアリティ(優先課題)に対し、KPI(重要業績評価指標)と2030年度目標を設定し、社長を議長としたサステナビリティ会議にて当社グループの取り組みを議論しています。今後もステークホルダーの皆さまに積極的に情報発信するよう努めていきます。

 

 

(2) 経済状況

 当社グループの連結売上収益のうち、重要な部分を占める自動車関連製品の需要は、当社グループが製品を販売している国又は地域の経済状況の影響を受けます。したがって、日本、北米、欧州、中国、タイ、インドネシア、インドなど当社グループの主要市場における経済や景気及びそれに伴う自動車需要の縮小は、当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

 こうしたリスクに対処するために、当社グループでは、グローバルでの経済状況の変化や自動車需要の動向を常に注視するとともに、需要変動に対応した柔軟な生産体制づくりの推進やリーンな企業体質への変革を進めています。リーンな企業体質に向けては、市場の激しい変化に耐えうるよう、固定費の削減を徹底して進め、「スクラップ&ビルド」「分社経営からグループ経営」をキーワードに、事業、組織、業務のそれぞれにおいて改革を進めています。また、デジタルトランスフォーメーションへの取り組みを加速し、あらゆる業務プロセスの革新を実現するデジタル経営基盤を確立するとともに、グループ全体視点で保有資産・経営資源の有効活用を進め、さらなる企業価値の向上をはかっていきます。

 

(3) 為替レートの変動

 当社グループは、海外連結子会社の財務諸表を連結財務諸表作成のため円貨換算しており、現地通貨建ての項目は、現地通貨における価値に変動がない場合も、換算時の為替レートにより円貨換算後の価値が影響を受ける可能性があります。また、当社グループが行う外貨建取引から生ずる費用・収益及び外貨建債権・債務の円換算額は、為替レートの変動の影響を受ける場合があり、当社グループが日本で生産し、輸出する取引における他の通貨に対する円高は、当社グループ製品のグローバルベースでの相対的な価格競争力を低下させるなど、当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、通貨別に為替リスクを測定したうえでヘッジ効果とヘッジコストを勘案し、許容可能な為替リスク量まで為替リスクを軽減するため、資金事務手続規定におけるデリバティブ取扱要領に従い、為替予約、通貨スワップ、通貨オプションを利用してヘッジをしています。

 

(4) 金融市況の変動

 株式市況の低迷等により当社グループの保有する株式等の価値変動が生じ、当社グループの財政状態や経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは純投資目的での株式は保有していませんが、当社グループの企業価値を中長期的に維持・向上させることを目的とする政策保有株式を保有しています。政策保有株式については、毎年の取締役会で保有の適否を判断しており、中長期的な企業価値の維持・向上に資すると認められない株式がある場合は、縮減を検討します。

 また、市場の金利状況により、資金運用・資金調達の受取・支払利息が増減し、当社グループの経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、資産と負債の統合管理をはかるとともに、金利スワップ等により金利変動によるリスクを軽減するための対策を講じています。

 当社グループの確定給付制度債務の算出において前提条件とした割引率・制度資産などについて、金融市況の悪化により、実際の結果が前提条件よりも低下・減少することで当社グループの確定給付制度債務が増加するなど、当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、企業年金の積立金の運用が、従業員の安定的な資産形成に加えて自らの財政状態にも影響を与えることを踏まえ、運用にあたる適切な資質を持った人材の計画的な登用・配置などの人事面や運営面における取り組みにより、企業年金が運用の専門性を高めてアセットオーナーとして期待される機能を発揮できるよう努めています。また、政府の規制や人材戦略・人事制度を踏まえ、適宜制度の見直しを検討、実施しています。

 

 

(5) 原材料や部品の調達

 当社グループは、製品の製造に必要な原材料や部品を複数のグループ外供給元から調達しています。これらのグループ外供給元とは、取引基本契約を結び、安定的な取引を行っていますが、需要の急激な変化や供給元が災害等により被災するなど供給能力の制約により、当社グループの生産に必要な量を確保することが困難となった場合、当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループが調達している原材料や部品の価格が高騰し、内部努力や販売価格への転嫁などにより影響を吸収できない場合には、当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、得意先への製品の継続的な供給と急激な需給変動の要請に応えられるよう、供給元とのコミュニケーションを強化するとともに、供給元と一体になった新材料・新工法開発や徹底的なムダ排除を観点とした工程改善による原価低減活動を積極的に推進することなどにより、確実な納期の確保、安定的かつ柔軟な供給体制の構築、最適な価格の維持に努めています。また、安定的な生産や調達活動に影響を及ぼす自然災害や火災などへの対応として、平時から災害に備えるとともに、サプライチェーン情報管理システムを整備するなど有事の際の迅速な初動・復旧を確実に実行できるよう取り組んでいます。

 

(6) 得意先への依存

 当社グループの連結売上収益の大部分を占める自動車部品事業は、世界の主要自動車メーカーを得意先としています。当社グループの業績は、各自動車メーカーの業績や販売・生産動向の変動など当社グループが管理できない要因により影響を受ける可能性があります。また、当社グループの連結売上収益に占めるトヨタグループに対する連結売上収益の割合は、当連結会計年度において60.7%を占めており、トヨタグループの事業戦略や購買政策等は、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、これまで培ってきた専門性の高い技術をベースとして、電動化や自動運転をはじめとするCASE領域を中心とした社会課題の解決に貢献するソリューション型商品の開発や世界のどの地域でも高品質な製品を生産できるグローバル生産体制の整備を推進し、新興国での新たな需要の発掘や世界中の自動車メーカーへの拡販活動を強化しています。

 

(7) 価格競争

 当社グループの連結売上収益の大部分を占める自動車部品事業におけるグローバルでの価格競争は、大変厳しいものとなっています。得意先からの価格引き下げ要請や、新しい競合先の台頭や既存の競合先間の提携などにより、価格競争力や製品の優位性が維持できない場合には、当社グループ製品に対する需要の低下及び製品価格の低下を通じて、当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、高い技術開発力、圧倒的なものづくり力、グループの総合力により、高品質で高い付加価値を有する自動車関連製品をグローバルで供給し続けることで優位性を確保するとともに、事業環境を見極めたグローバルでの効率的な事業体制の構築やグローバルベストを活かした生産性向上・原単位改革による商品競争力・低コスト競争力の強化など既存事業の更なる競争力向上に取り組んでいます。

 

 

(8) 新商品開発

当社グループは、新しい価値を提供し豊かな社会づくりに貢献できるよう、未来を見据えた新商品開発に努めています。今後も、環境・燃費、安全・安心、快適・利便を追求した独創的な魅力ある新商品を開発できると考えていますが、最先端の新商品開発と販売のプロセスは、その性質から複雑かつ不確実なものであり、以下をはじめとする様々なリスクが含まれます。

①新商品や新技術への投資に必要な資金と資源を、今後十分充当できる保証はありません。

②長期的な投資と大量の資源投入が、成功する新商品又は新技術の創造へつながる保証はありません。

③当社グループが市場からの支持を獲得できる新商品又は新技術を正確に予想できるとは限らず、またこれらの商品の販売が成功する保証はありません。

④新たに開発した商品又は技術が、独自の知的財産権として保護される保証はありません。

⑤技術の急速な進歩と市場ニーズの変化により、当社グループの商品が時代遅れになる可能性があります。

⑥現在開発中の新技術の商品化遅れにより、市場の需要についていけなくなる可能性があります。

   上記のリスクをはじめとして、当社グループが業界と市場の変化を十分に予測できず、魅力ある新商品のタイムリーな開発と市場への投入ができない場合には、将来の成長と収益性を低下させ、財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

   当社グループは、持続的な成長と持続可能な社会の実現に向け、CASE領域を中心とした社会課題の解決に貢献するソリューション型商品の拡充に取り組んでいます。電動駆動ユニットや駐車支援システムなど、商品ラインアップの拡充に向けて、競争力が弱く、成長が望めない商品への開発リソーセスをCASE領域へシフトするとともに、デジタル開発による効率化をはかり、商品開発を加速していきます。また、あらゆる領域で自前主義にこだわらずパートナーとの技術連携を積極的に取り入れ、新規事業の開拓も加速していきます。

 さらに、当社グループは、CASEに対応する企業構造への変革を進めており、電動駆動モジュールの開発・拡販強化に向け、株式会社デンソーと合弁で株式会社BluE Nexus(ブルーイーネクサス)を2019年4月に設立するとともに、自動運転や車両運動制御等に必要な統合制御ソフトウェアの開発を行うJ-QuAD DYNAMICSを当社、株式会社アドヴィックス、株式会社ジェイテクト、株式会社デンソーの4社で2019年4月に設立するなど、CASE領域での開発、販売、生産体制の強化にも積極的に取り組んでいます。

 

(9) 海外事業展開

   当社グループは、世界の主要自動車メーカーの近くで多様なニーズに対応し、高い付加価値を有する製品を開発、提供できるよう、グローバルな供給体制を構築しています。当社グループが事業を展開している国又は地域における事業運営には以下のようなリスクが内在しており、これらの事象が発生した場合には当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

①予期しえない法律・規制、不利な影響を及ぼす租税制度の変更

②社会的共通資本(インフラ)が未整備なことによる当社グループの活動への悪影響

③不利な政治的又は経済的要因の発生

④人材の採用と確保の難しさ

⑤テロ、戦争、疾病その他の要因による社会的混乱

当社グループは、国内グループ会社に加え、北中南米、欧州、豪亜、中国、インドを統括する各地域統括本部長が、グループに共通する経営上のリスクと国や地域によって異なるリスクの情報を共有することによって効果的な対策を推進しており、グローバルな視点でリスクマネジメントを強化しています。また、当社グループが事業展開する国又は地域の経済・政治・社会的状況に加えて、事業に関連する各国の環境関連規制、製品の安全性・品質関連規制、輸出入関連規制の情報をタイムリーに収集し、適時適切な対応をとっています。

 

 

(10) 事業投資

当社グループは、グローバルでの事業拡大に向け、成長領域や需要の拡大が見込まれる事業への設備投資等の事業投資を行い、更なる企業価値の向上に努めています。しかしながら、投資判断時に想定していなかった水準で、市場環境や経営環境が悪化し、事業計画との乖離等により期待されるキャッシュ・フローが創出できない場合、設備投資により計上した有形固定資産の減損処理などにより、当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。また、当社連結子会社において経営環境の著しい悪化や収益状況の悪化等が将来にわたって見込まれる場合、繰延税金資産の回収可能性の判断、当社が保有する関係会社株式や当社連結子会社への貸付金の評価などに影響を及ぼす可能性があり、当社、当社連結子会社の財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、事業軸での6つのカンパニーが、グループ全体視点から将来を見据えた開発のさらなる加速や持続的な事業価値の最大化、重点事業課題への対応等を担っており、中長期目線で事業の方向性を示すプレジデント及び統括役員が意思決定を行っています。また、当社グループの中長期の方向性及びグループを含めた意思決定については、取締役会運用基準に則り、取締役会にて審議・決議するとともに経営会議、執行会議、各種機能会議等で、当社グループ各社の業績や重要な投資に対してのモニタリングを実施し、今後の方向性や業績改善のための対策を検討しています。

 

(11) 製品の品質不具合

当社グループは、お客様に高い品質を確保した商品を提供するため、厳格な品質管理体制や品質管理基準に従い、グローバルで各種製品を製造していますしかしながら、すべての製品について品質不具合がなく、将来にリコールが発生しないという保証はありません。また、製造物責任賠償については保険に加入していますが、この保険が最終的に負担する賠償額を十分にカバーできるという保証はありません。大規模なリコールや製造物責任賠償につながるような製品の品質不具合は、多額のコストや当社グループの評価に重大な影響を与え、当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、徹底したTQM(Total Quality Management 総合的品質管理)活動を続け、開発から生産にいたるまで、厳格な品質保証体制を構築しています。企画、製品設計、生産準備から量産にいたる各段階において節目管理を実施するとともに、サイマルテニアス・エンジニアリング(SE)活動により製品設計段階から、技術、生産技術、工場、仕入先企業が一体となって品質の向上につなげています。量産にあたっては、「ジャストインタイム」と「自働化」によるトヨタ生産方式に基づいた生産を行なうとともに、各種品質管理手法を用いて工程を維持・管理し、お客様の信頼に応えるものづくりを実践しています。また、仕入先企業に対するリスク評価及びモニタリング、仕入先企業の能力向上に向けた様々な取り組みにより、仕入先企業の品質レベル向上をはかっています。

 

 

(12) 災害等による影響

当社グループは、大規模地震、自然災害、火災・爆発等の事故、感染症など災害等の発生により、グループ会社に人的・物的被害が生じるリスクを想定しており、当社グループの工場、又はその周辺地域での大きな事故の発生や、大規模地震、自然災害、感染症の蔓延等による操業停止で、得意先への製品供給に支障をきたした場合、財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。特に当社グループの国内工場や取引先は、中部地区をはじめ国内外に所在しており、これらの地域で大規模な災害等が発生した場合、生産・納入活動が遅延・停止する可能性があります。

また、新型ウイルス等の感染症の発生及び感染拡大による影響が長期化、深刻化した場合、個人消費の低迷、国内外のサプライチェーンの停滞、当社グループの事業活動の停滞など、当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

こうしたリスクに対処するために、当社グループ全てを対象としたリスクマネジメント委員会においてリスクの顕在化と未然防止をはかり、危機に強い企業づくりに取り組んでいます。当社グループでは、平時(リスク発生前)から緊急時(リスク発生時)の対応に関する実践要領をまとめた「危機管理ガイド」に基づき、一人ひとりの従業員がリスク発生時に的確な行動をとれるよう教育・啓発活動に取り組み、災害に強い企業づくりをグループ一体となって推進しています。また、地震など大規模災害に備えて、1.「人命・安全」、2.「地域貢献」、3.「生産復旧」を基本方針として、災害発生時の対応力を強化しています。

新型ウイルス等の感染症への対応では、当社グループが事業を展開している国・地域において、現地の政府及び自治体等の指導に沿った対応をしています。また、新型ウイルス等の発生及び感染拡大に対して、当社グループの従業員及びその家族の健康に配慮し、国内外の出張や渡航の制限など管理強化をするとともに、在宅勤務の推奨や、テレビ会議の活用等の感染防止策に取り組むなど、事業への影響を最小限に抑えるよう日々努めています。

 

(13) 気候変動

当社グループは、「"移動"に感動を、未来に笑顔を。」をアイシングループ経営理念の基本とし、自然と調和し、誰もが安心して暮らせる社会の構築をめざして、2050年カーボンニュートラルの実現など、環境貢献の取り組みを全方位で加速しています。当社グループは、気候変動への対応を注力していくマテリアリティ(優先課題)の1つとして選定し、グループの総力を結集して中長期の削減シナリオづくりや生産技術の確立を進め、排出量低減に努めています。また、2019年11月にTCFDに賛同し、TCFD提言に沿ったシナリオ分析の実施により、リスクと機会を明確にし、企業の強靭性を開示しています。

脱炭素社会への移行リスクとして、炭素税導入や再生可能エネルギーへの代替などに伴う製造コストの増加や、市場・顧客ニーズに適切に対応できず競争力や企業価値の低下につながる可能性があります。また、物理的リスクとして、局地的な暴風雨や干ばつなど異常気象の深刻化により、当社グループの生産オペレーションやサプライチェーンに悪影響を及ぼし、生産能力の低下や製品供給の遅延といった事態を引き起こす可能性があります。

当社グループは、気候変動をリスクとしてだけではなく、機会としても捉え、事業活動を通じて気候変動に関する社会課題を解決してくことをめざしています。当社グループは、脱炭素社会への移行リスクに対処するため、CO₂削減に寄与する電動化商品の売上高比率を2030年には50%以上とする目標を掲げ、電動化商品の商品ラインアップの拡充に向けた開発の加速や電動化商品の拡販に向けた世界各地域での生産体制の強化に取り組んでいます。また、エネルギー関連商品の需要拡大に向けて、事業の柱であるエネファームの新モデルを2020年4月から市場投入するなど、CO₂削減に貢献するクリーンエネルギー関連商品の開発・販売に取り組んでいます。物理的リスクへの対応としては、上記、「(5)原材料や部品の調達」、「(12)災害等による影響」に記載のとおり、サプライチェーンに対するリスクマネジメントの強化などに取り組んでいます。

 

 

(14) 知的財産権

当社グループは、他社製品と差別化をはかるため、独自の技術とノウハウ等を蓄積し知的財産を適切に保護するとともに、第三者の知的財産権侵害のリスク軽減に努めています。しかし、特定の国及び地域においては、法的要件により、知的財産の完全な保護が不可能又は限定的にしか保護されない可能性があります。また、保有する知的財産権が無効となる可能性があります。そのため、第三者による当社グループの知的財産権の不正使用あるいは権利侵害を防ぐための手段が有効に機能しない可能性があります。

また、当社グループの製品は広範囲にわたる技術を利用しているため、将来的に知的財産権を侵害したとして第三者から訴訟を提起されることにより訴訟費用が発生する可能性があります。

こうしたリスクに対処するために、当社グループでは、知的財産管理の専門部署を設け、関係部門と連携して、特許をはじめとする各種知的財産権により技術と知的財産の保護を行うとともに特許調査等を行い第三者の知的財産権の侵害予防に努めています。

 

(15) 情報セキュリティ

当社グループでは、日々巧妙化するサイバー攻撃等の脅威や「会社情報」「得意先・お客様情報」等の情報漏洩から守る事は、リスク管理上の重要課題と捉え、情報セキュリティの強化に取り組んでいます。しかしながら、サイバー攻撃を含む意図的な行為や過失等により、情報システム等に障害が生じる場合や、機密情報及び個人情報が外部に流出する可能性があります。また、サプライチェーン等の事業活動が一時的に中断する可能性があります。このような事象が発生した場合、当社グループの事業活動の停滞や社会的信用の低下等により、当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、「アイシングループ情報セキュリティ基本方針」を基本に、お客様や取引先からお預かりした、又は当社グループが保有する事業活動に関わる情報資産は、当社グループの重要な資産であるとの認識に立ち、組織的かつ継続的に情報セキュリティ対策に取り組んでいます。また、アイシングループ全体のサイバー攻撃や内部不正等のリスクから企業を守るため、2020年4月よりアイシングループ全体のコーポレートセキュリティガバナンスを強化しました。CDO(Chief Digital Officer)やセキュリティ専門組織であるGA-CSC(Global AISIN-Corporate Security Center)を任命・設置し、GA-CSCではアイシングループ全体からセキュリティ関連情報の収集・展開とインシデント対応を行い、早期検知と迅速な対応に努めています。

 

(16) コンプライアンス

当社グループは、事業活動を遂行するうえで、コンプライアンスを基本においていますが、規制当局による措置その他の法的手続きに関するリスクを有しています。これらのリスクにより、当社グループに対して損害賠償請求や規制当局による金銭的な賦課を課され、又は事業の遂行に関する制約が加えられる可能性があります。また、社会情勢の変化、価値観や働き方などの多様化に伴い、ハラスメント等のリスクが増加する可能性があります。当社グループが重大なコンプライアンス違反を起こした場合は、当社グループの社会的信用の失墜による事業への悪影響などにより、当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、グループ全役職員の行動規範となる「アイシングループ企業行動倫理憲章」及びその具体的な行動基準となる「社会的責任を踏まえた行動指針」を策定しています。また、コンプライアンスに関わる方針・体制を決める会議体として、「企業行動倫理委員会」を設置しています。グループ主要4社の取締役社長と担当役員が、法令遵守を含むコンプライアンスの活動状況を確認すると共に、次年度の活動方針、重点活動分野(独占禁止法、腐敗防止、ハラスメントなど)を承認しています。さらに、コンプライアンス活動を推進するのはあくまで人であると考え、各種教育活動を継続的に行い、従業員一人ひとりのコンプライアンス意識向上に努めています。

 

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度の自動車業界を取り巻く事業環境は、新型コロナウイルスの感染拡大により世界経済が大きく停滞しました。自動車市場は、第2四半期以降回復が見られたものの、中国を除く北米、欧州などすべての主要市場で前年度割れとなり、前年度に引き続き非常に厳しい状況となりました。

 このような状況の中、当社グループは緊急対策を実施するとともに、「CASEに対応する企業構造の改革」と「企業体質の強化」の2つの変革を前倒しし、自動車業界の大変革期を乗り切る体制の構築と競争力の強化を推進しました

 売上収益については、第2四半期以降に市場環境が回復したものの、第1四半期での新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、前連結会計年度(3兆7,845億円)に比べ6.8%減の3兆5,257億円となりました。

 利益については、売上収益の減少の影響があったものの、構造改革の前倒しによる、固定費削減効果・原価低減活動の強化により、営業利益は前連結会計年度(561億円)に比べ158.9%増1,453億円、税引前利益は前連結会計年度(533億円)に比べ大幅に増加し、1,675億円となり、親会社の所有者に帰属する当期利益は前連結会計年度(240億円)に比べ大幅に増加し、1,056億円となりました。

 また、当連結会計年度末の資産については、非流動資産のその他の金融資産の増加などにより、前連結会計年度末(3兆9,926億円)に比べ0.9%増の4兆271億円となりました。負債については、繰延税金負債の増加などにより、前連結会計年度末(2兆1,969億円)に比べ3.3%増の2兆2,684億円となりました。資本については、前連結会計年度末(1兆7,956億円)に比べ2.1%減の1兆7,586億円となりました。

 

 セグメントの業績は、次のとおりです。

 

(ⅰ)アイシン精機グループ

 第1四半期での新型コロナウイルスの感染拡大の影響などにより、売上収益は前連結会計年度(1兆6,857億円)に比べ9.2%減1兆5,308億円となりました。営業利益は売上の減少があったものの、構造改革の前倒しによる、固定費削減効果や原価低減活動の強化などにより、前連結会計年度(302億円)に比べ68.7%増510億円となりました。

 

(ⅱ)アイシン高丘グループ

 第1四半期での新型コロナウイルスの感染拡大の影響などにより、売上収益は前連結会計年度(3,100億円)に比べ10.8%減2,765億円となりました。営業利益は売上の減少があったものの、構造改革・緊急対策による固定費削減などにより、前連結会計年度(67億円)に比べ39.6%増93億円となりました。

 

(ⅲ)アイシン・エィ・ダブリュグループ

 第1四半期での新型コロナウイルスの感染拡大の影響などにより、売上収益は前連結会計年度(1兆6,221億円)に比べ4.7%減1兆5,460億円となりました。営業利益は売上の減少があったものの、企業体質改善努力や構造改革・緊急対策による固定費削減などにより、前連結会計年度(199億円)に比べ大幅に増加し、794億円となりました。

 

(ⅳ)アドヴィックスグループ

 第1四半期での新型コロナウイルスの感染拡大の影響などにより、売上収益は前連結会計年度(5,826億円)に比べ6.4%減5,453億円となりました。営業利益は売上の減少があったものの、構造改革・緊急対策による固定費削減などにより、20億円の営業利益(前連結会計年度営業損失35億円)となりました。

(ⅴ)その他

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響などにより、売上収益は前連結会計年度(656億円)に比べ11.7%減579億円となり、営業利益は前連結会計年度(19億円)に比べ40.2%増26億円となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況について、現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)の残高は、営業活動により3,433億円の増加、投資活動により1,381億円の減少、財務活動により3,738億円の減少、現金及び現金同等物に係る換算差額により136億円の増加の結果、当連結会計年度末には5,200億円となり、前連結会計年度末(6,751億円)に比べ1,551億円(23.0%)の減少となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動により得られた資金は、前連結会計年度(3,275億円)に比べ157億円(4.8%)増加し、3,433億円となりました。これは、営業債権及びその他の債権の増減額が1,347億円増加したものの、税引前利益が1,141億円増加し、棚卸資産の増減額が408億円減少したことなどによります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動により使用した資金は、前連結会計年度(2,738億円)に比べ1,357億円(49.5%)減少し、1,381億円となりました。これは、有形固定資産の取得による支出が1,124億円減少したことなどによります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動により使用した資金は、前連結会計年度(2,753億円の増加)に比べ大幅に増加し、3,738億円となりました。これは、子会社の自己株式取得による支出が2,969億円増加したことや、社債の発行による収入が2,000億円減少し、借入れとその返済による収支が1,763億円減少したことなどによります。

 

生産、受注及び販売の実績

(ⅰ)生産実績

 当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

生産高(百万円)

前期比増減率(%)

アイシン精機グループ

1,539,942

△8.4

アイシン高丘グループ

277,099

△10.5

アイシン・エィ・ダブリュグループ

1,540,915

△6.4

アドヴィックスグループ

547,780

△6.0

その他

58,205

△11.4

合計

3,963,941

△7.5

(注1) 金額は販売価格によっており、セグメント間の内部取引消去前の数値によっています。

(注2) 上記金額には、外部仕入先等からの仕入高が含まれています。

 

(ⅱ)受注実績

 主要な事業である自動車部品製造・販売について、当社グループのすべてのセグメントは、トヨタ自動車㈱をはじめとした大手自動車メーカーより、約3ヶ月前後の予約的発注指示を受け、生産能力を勘案し生産計画を立て、生産を行っています。

 

 

(ⅲ)販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前期比増減率(%)

アイシン精機グループ

1,530,832

△9.2

アイシン高丘グループ

276,527

△10.8

アイシン・エィ・ダブリュグループ

1,546,038

△4.7

アドヴィックスグループ

545,371

△6.4

その他

57,980

△11.7

合計

3,956,750

△7.3

(注1) 金額は販売価格によっており、セグメント間の内部取引消去前の数値によっています。

(注2) 主な相手先の販売実績及び総販売実績に対する割合は、次のとおりです。

なお、割合はセグメント間の内部取引消去後の総販売実績に対して記載しています。

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

販売高(百万円)

割合(%)

販売高(百万円)

割合(%)

トヨタ自動車㈱

1,176,955

31.1

1,065,191

30.2

 

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において判断したものです。

 

① 重要な会計方針及び見積り

 当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和51年大蔵省令第28号)第93条の規定により、IFRS(国際会計基準)に準拠して作成しています。連結財務諸表の作成において、経営者は、会計方針の適用並びに資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす判断、見積り及び仮定の設定を行っています。実際の業績はこれらの見積りとは異なる場合があります。

 見積り及びその基礎となる仮定は継続して見直しています。会計上の見積りの見直しによる影響は、その見積りを見直した会計期間及び将来の会計期間において認識しています。

 上記のうち、当社グループの連結財務諸表で認識する金額に重要な影響を与える見積り及び仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 2.作成の基礎 (4)重要な会計上の判断、見積り及び仮定」に記載しています。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

② 経営成績の分析

 当連結会計年度の売上収益は前連結会計年度に比べ6.8%減3兆5,257億円、営業利益は158.9%増1,453億円、税引前利益は213.7%増1,675億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は339.0%増1,056億円となりました。

 以下、連結損益計算書に重要な影響を与えた要因について分析します。

 

(ⅰ)売上収益

 当連結会計年度の売上収益3兆5,257億円を事業の種類ごとに見ると、自動車部品事業では前連結会計年度に比べ6.8%減の3兆4,165億円となりました。その商品分野ごとの内訳としては、エンジン関連では6.0%減の3,465億円、ドライブトレイン関連では4.2%減の1兆6,154億円、ブレーキ及びシャシー関連では7.6%減の6,407億円、ボディ関連では10.1%減の6,908億円、情報関連他では17.1%減の1,230億円となりました。また、住生活・エネルギー関連事業では前連結会計年度に比べ5.8%減の536億円、その他事業では11.6%減の556億円となりました。

 

(ⅱ)売上原価、販売費及び一般管理費

 売上原価は前連結会計年度(3兆4,004億円)に比べ8.2%減3兆1,212億円となり、売上収益に対する割合は89.8%から88.5%に低下しました。これは、固定経費が減少したことなどによります。

 販売費及び一般管理費は、製品保証費や従業員給付費用の減少などにより、前連結会計年度(3,005億円)に比べ9.9%減2,707億円となり、売上収益に対する割合は7.9%から7.7%に低下しました。

 

(ⅲ)その他の収益、その他の費用

 その他の収益は前連結会計年度(261億円)に比べ23.4%増323億円となりました。

 その他の費用は、前連結会計年度(536億円)に比べ61.3%減207億円となりました。これは固定資産減損損失が減少したことなどによります。

 

(ⅳ)法人所得税費用

 当連結会計年度の法人所得税費用は、前連結会計年度(238億円)に比べ140.6%増加し、574億円となりました。

 

(ⅴ)非支配持分に帰属する当期利益

 当連結会計年度の非支配持分に帰属する当期利益は、前連結会計年度(54億円)に比べ18.3%減少し、44億円となりました。

 

(ⅵ)親会社の所有者に帰属する当期利益

 当連結会計年度の親会社の所有者に帰属する当期利益は、前連結会計年度(240億円)に比べ大幅に増加し、1,056億円となり、基本的1株当たり当期利益も89円28銭から391円96銭に増加しました。

 

③ 資本の財源及び資金の流動性

(ⅰ)キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載しています。

 

(ⅱ)資金需要

 当社グループの資金需要の主なものは、新商品・改良商品への投資、生産能力の増強及び新技術・新商品等の研究開発です。さらなるグローバル化の進展、次世代を担う新技術・新商品の開発等による資金需要が見込まれる場合には、長期資金の調達を実行する可能性があります。

 

(ⅲ)財務戦略

 当社グループは、企業価値の最大化を目標として、すべてのステークホルダーとの良好な関係を築き、長期安定的な成長と発展をめざしています。

 当社グループの資本政策は、「財務の安全性」と「資本の効率性」のバランスをとることで、常に低コストで資金調達をできる状態に保ち、企業価値の向上を目指すことを基本方針としています。具体的には、キャピタリゼーション比率(注1)を指標として用い、当該比率が概ね25%~30%となることが最適な資本構成であると考えています。

 「財務の安全性」については、格付会社による評価をひとつの目安とし、高い信用格付を維持することにより、低コストでの資金調達がいつでも可能になるよう努めています。一方、「資本の効率性」については、格付が維持できる範囲で、負債による資金調達を優先し、資本の規模を抑制することで、全体の資本コストの低減をはかっています。また、キャッシュ・マネジメント・システム(CMS)(注2)を導入することで、連結ベースでの財務戦略や当社グループ内での資金の有効活用を実現しています。

(注1) 有利子負債と資本(純資産)のバランスを示す指標です。

(有利子負債 /(有利子負債+資本合計))

(注2) グループ企業の資金を親会社や中核会社が同一銀行内に専用口座を設置して集中管理することにより、効率的な連結運営や資金運用をする手法、又はその仕組みを指します。

 

(ⅳ)資金調達

 当社は、安定的かつ低コストで資金を確保することを基本方針としています。

 資金調達にあたっては、平均残存期間の維持及び返済年限の平準化に資する調達年限を設定し、市場動向等を勘案した最適な資金調達手段を選択・実行しています。また、当社は高い信用格付けを維持するとともに、金融機関や投資家等と幅広く良好な関係を構築しており、競争力のある調達コストの維持・追求に努めています。

 当連結会計年度末の社債及び借入金残高9,250億円のうち、2,725億円は前連結会計年度に調達したハイブリッドファイナンスであり、格付会社より残高の50%である1,362億円について資本性の認定を受けています。

 当社では、経営を取り巻く様々なリスクに対応できるよう、現預金だけでなく、コミットメントライン契約を締結するなど、十分な流動性の確保に努めています。

 

④ 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(2)目標とする経営指標」に記載のとおりです。当連結会計年度においては、第1四半期での新型コロナウイルスの感染拡大の影響による売上収益の減少があったものの、構造改革の前倒しによる、固定費削減効果や原価低減活動の強化などにより、営業利益率は4.1%、ROIC(投下資本利益率)は5.1%となりました。

 当目標の達成に向けた取り組みについては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(3)中長期的な会社の経営戦略及び会社の対処すべき課題」に記載のとおりです。

 

4 【経営上の重要な契約等】

当社は、2020年12月22日開催の取締役会において、当社の子会社であったアイシン・エィ・ダブリュ株式会社と経営統合を行うことを決議し、同日付で合併契約を締結し、2021年4月1日付で吸収合併いたしました。

合併の概要は以下のとおりです。

(1)合併の方法

   当社を吸収合併存続会社、アイシン・エィ・ダブリュ株式会社を吸収合併消滅会社とする吸収合併方式

(2)合併の期日

   2021年4月1日

(3)合併に際して発行する株式及び割当

   本合併による株式その他の財産の割当はございません。

(4)引継資産・負債の状況

   当社は、吸収合併の効力発生日をもって、吸収合併消滅会社であるアイシン・エィ・ダブリュ株式会社から

その資産・負債その他の権利義務を合併契約書に従い承継いたしました。

(5)吸収合併存続会社となる会社の概要

   商号   株式会社アイシン

   事業内容 自動車部品、エネルギー・住生活関連製品の製造販売

   資本金  45,049百万円

 

 

 

5 【研究開発活動】

 「“移動”に感動を、未来に笑顔を。」を経営理念に掲げる当社グループは、当社グループの商品・サービスによって、環境・社会課題を解決し、人々の笑顔あふれる持続的な社会をつくっていきたいと考えています。また「100年に一度と言われる大変革期」を乗り切るため、当社グループでは、CASEに対応する企業構造への変革を加速させています。

 当社グループでは、世界各国の純ガソリン車の販売禁止の流れ、燃費規制等を考慮し、2030年には各カーメーカーの電動化比率は、さらに拡大し、60%以上になると予想しています。これをパワートレインの商品に置き換えると、eAxle、ハイブリッドトランスミッションへ、大きく構成が変わると考えています。このような構造変革に向け、従来のトランスミッションの開発・生産の経験・実績を軸に、電動化ユニットの商品ラインアップを拡充するとともに、聖域なきスクラップ&ビルドを進め、今後需要が見込める電動化分野へ経営資源を集中させています。

 電動化対応製品の開発については、トヨタ自動車株式会社の超小型EV車両「C+pod」に当社のEV用駆動ユニットが搭載されました。この商品は主駆動用としての高い出力を確保しつつ、横幅を小型化し、車幅の狭い車両への搭載を可能にしています。さらに、トヨタ自動車株式会社の燃料電池車「MIRAI」にも当社のeAxleが採用されました。今後も当社はクルマの電動化に対応する新たな商品・技術の開発を追求し、持続可能な地球環境に貢献していきます。

 当社グループでは、DXによる業務プロセスの変革やデジタル技術を活用した事業化をより加速するため、DX戦略センターを設置し、デジタル経営基盤の確立を進めています。こうした取り組みが評価され、経済産業省の「DX認定制度」において、認定事業者に選定されました。工場・会社・車両などから得られるIoTビッグデータ、車両ビッグデータをサイバー空間上で分析、シミュレーションを行いデータドリブンマネジメント、3Dバーチャル生産準備、モビリティサービスプラットフォームを活用した新規事業創出を推し進めています。これらの施策を通じて、CASE事業に対応したあらゆるプロセスの変革を加速させ、さらには社会課題の解決につなげていきたいと考えています。

 また、当社CSSカンパニーでは、長年培ってきた道案内、位置情報技術を活用して、「位置情報活用サービス」「ビッグデータ分析」を実現するためのモビリティサービスプラットフォームを構築しています。これらのプラットフォームをベースに様々な事業者と連携し、高齢化や過疎化が進む地域における交通手段の課題や人手不足に悩む物流業界の課題など、社会が抱える課題を解決するサービス・コンテンツを展開しています。課題解決のソリューションを提供するとともに、データ収集、ビッグデータ分析、サービス提供、そして利用していただいたデータを再度収集する位置情報活用のサイクルを回すことで、サービス価値を向上させていきます。

 当連結会計年度の研究開発費は総額1,898億円であり、各セグメントの内訳は次のとおりです。

 

(1) アイシン精機グループ

 「環境・燃費」、「安心・安全」、「快適・利便」を軸とした自動車部品の新技術開発に加え、住生活・エネルギー関連機器の開発、レーザー応用、人工知能等の先端技術研究など、さまざまな分野での研究開発を推進しており、当セグメントにおける研究開発費は757億円です。

 

(2) アイシン高丘グループ

 軽量化や高強度化など、ユーザーからの多彩なニーズに対応するため、自動車鋳造部品技術についての研究開発を推進しており、当セグメントにおける研究開発費は10億円です。

 

(3) アイシン・エィ・ダブリュグループ

 ドライブトレインシステムの多様化やクルマ社会の高度情報化などに対応するため、トランスミッションやナビゲーションといったこれまでに培ってきた商品・技術を基盤に、次世代に先駆けた商品開発を推進しており、当セグメントにおける研究開発費は893億円です。

 

(4) アドヴィックスグループ

 安全・快適で地球環境に優しいクルマ社会の実現に向け、車両運動性能を追求し、ブレーキペダルからパッドまでの開発を手がけるブレーキシステムサプライヤーとして、ブレーキ技術を更に深化させ、機能拡張商品の開発を推進しており、当セグメントにおける研究開発費は220億円です。

 

(5) その他

 その他のセグメントにおける研究開発費は15億円です。