第2 【事業の状況】

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1)会社の経営の基本方針

   アイシングループ経営理念

 

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(2)目標とする経営指標

 当社グループは、「アイシングループビジョン2030」において、2030年度の経営目標を営業利益率8%、ROIC(投下資本利益率)13%としています。

※ROIC(投下資本利益率):税引後営業利益÷(棚卸資産+有形固定資産+無形資産)

 

(3)中長期的な会社の経営戦略及び会社の対処すべき課題

 新型コロナウイルス感染症は次第に収束に向かいつつあるものの、地政学的な緊張感は依然高く、世界経済の見通しは不透明なままです。自動車業界においては、長期化する半導体不足等により市場の回復が遅れると同時に、中国・欧州を中心にBEVをはじめとする電動車の比率が年々増加しています。また、気候変動対応や人的資本に対する投資拡大など社会課題の解決に向け企業に対する社会からの期待も大きくなっています。

 このような産業構造・事業環境の速く大きい変化に対応していくために、当社グループは「将来に向かって、大きく経営の舵をきる」「企業基盤を強化し、収益体質を上げ、将来投資にまわす」を経営の柱に据え、様々な変革に取り組んでいきます。

① 将来に向かって、大きく経営の舵をきる

 地域によって異なるエネルギー事情を考慮し、当社グループはフルラインアップの電動ユニットの開発を進めています。その中でもBEV向けのeAxleを最重要製品と位置づけ、既に量産している第1世代のeAxleを更に高効率化・小型化・高出力化した第2世代・第3世代の開発をしていきます。またモビリティに対するヒトの価値観や社会の変化に合わせて、当社グループのセンシングやAIソフト技術を活用し、安心・快適・利便をより充実させる車内外システムの開発も強化していきます。カーボンニュートラルでは、厳格化されるエネルギー・資源循環の規制に追従し、2035年に生産カーボンニュートラルを、2040年にはゼロエミ工場達成に向けて取り組んでいきます。

② 企業基盤を強化し、収益体質を上げ、将来投資にまわす

 引き続き厳しい事業環境が続く中、電動化商品の増加に加え、変化対応力の強化、既存商品の収益体質改善・構造改革を加速させ、収益体質の向上を図っていきます。そして、このような活動を経て生まれたリソーセスを次世代・新規領域へとシフト・最適配分し、将来に向かって持続的に成長できる経営を目指していきます。

 以上のような課題認識のもと2025年までを、「中身」を変え「力」をつける「フルモデルチェンジ」の3年と位置づけ、あらゆるステークホルダーとの連携を深めながら次の経営方針を全力をあげて取り組んでいきます。(2023年度より単年の方針ではなく、中期を見据えた2025年経営方針に変更)

 

「2025年 グループ経営方針」

カンパニー・機能・地域・グループ会社が一体となり、

「中身」を変え「力」をつける「フルモデルチェンジ」の3年に。

 

<すべての基本>安全・健康・コンプライアンスの最優先、ステークホルダーとの連携

方針1.成長領域への挑戦

    グループ内外の技術・事業を融合しお客様のニーズを先取りする製品の提供

方針2.事業の収益性向上

    競争力と成長性を見極めた事業ポートフォリオの入れ替えと原価にこだわった製品の作りこみ

方針3.持続可能な社会への貢献

    事業活動を通じたSDGs7つの優先課題とCN目標の達成

方針4.生き残りへの足元固め

    いかなる変化にも揺るがない強固な経営基盤の構築と品質の向上

方針5.働きがいと会社成長の両立

    「プロ人材」の育成とチャレンジを促進する職場風土づくり

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループは、「”移動”に感動を、未来に笑顔を。」の経営理念に基づき、私たちの商品・サービスによって、環境・社会課題に具体解を示し、人々の笑顔あふれる持続的な社会をつくっていきたいと考えています。このような価値観は、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」と親和性が高く、事業活動を通じてSDGsの達成に貢献できると考えています。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1) ガバナンス

 ステークホルダーの期待・要望と当社グループの経営課題や重要性から、経営会議・取締役会での議論を経て、グループとして注力する優先課題(マテリアリティ)を選定し、取り組んでいます。

 SDGsをはじめとするESG戦略に関する活動の方向性を毎年サステナビリティ会議で議論・決定し、取締役会・執行会議等で監督・進捗確認をしています。

 

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(2) 戦略、(3) リスク管理、及び、(4) 指標及び目標

 取締役会から承認を得た優先課題(マテリアリティ)に対し、収益機会拡大とリスク減少に向け、「事業活動を通じた社会課題の解決」と「活動を支える経営基盤」の2軸でKPIと2030年度目標を設定し、具体的な活動計画へ落とし込むとともに取り組みを推進、改善しています。

 中でも気候変動と人的資本は、中長期的な企業価値向上に影響を与える重要なサステナビリティ課題と認識し、2023年3月のサステナビリティ会議にて議論し、更なる活動に向けて取り組んでいます。詳細の取組みは各項目をご参照ください。

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※KPI・2030年度目標は、「AISIN GROUP REPORT 2022」34~35頁にて公開

(https://www.aisin.com/jp/sustainability/report/)

 

①気候変動への対応(TCFD提言への取り組み)

 当社グループは、2019年11月にTCFD(気候関連財務情報タスクフォース)へ賛同し、TCFDの提言に基づきシナリオ分析を実施しています。気候変動がもたらす事業活動へのリスクと機会を明確にしてその対応を経営戦略に盛り込むとともに、関連情報を開示しています。

(ⅰ)ガバナンス

 気候変動への対応を重要な経営戦略と位置付け、経営会議・取締役会での議論を経て、「地球温暖化防止への取り組み」を注力する優先課題(マテリアリティ)に選定しています。

 取締役会(2022年度13回開催)において、各気候関連会議である「サステナビリティ会議」、「環境委員会」、「カーボンニュートラル推進会議」を通じて提案・報告される気候関連の重要事項の審議を行い、必要に応じて事業戦略・計画を修正しています。

 

(ⅱ)戦略

 カーボンニュートラルを喫緊のグローバル課題として捉え、「生産」と「製品」の両軸で2050年カーボンニュートラル社会の実現を目指しています。生産面では、当社グループ全体の戦略の立案、再生エネルギーの導入や調達、社外との連携を通じた技術開発や事業化を担う「カーボンニュートラル推進センター」と、製品面では、EV商品開発ロードマップ・開発戦略の策定、EV向け商品の先行開発の強化、カンパニー・グループ会社横断プロジェクトの推進を担う「EV推進センター」を社長直轄で設立し、カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みを強力に推進しています。

 また、TCFD提言が推奨する定義を踏まえた気候変動に伴う移行・物理的リスク、機会を分析し、定期的に対応を決定しています。

<気候変動のリスクと機会、当社グループの対応>

区分

リスク/機会

の種類

影響段階

当社グループへの影響

時間的視点

短・中・長

事業/財務影響

大・中・小

対応

移行

リスク

市場

上流

低炭素原材料の需要が高まり、多くの企業が求めるため、必要な原材料の価格高騰による調達コストの増加

・製品設計時点での軽量化や材料置換による使用原材料の削減

・サーキュラーエコノミーの推進による購入原材料の削減

新たな規制

直接操業

炭素税や再生可能エネルギー導入等の政策によるコストの増加

・エネルギー使用ミニマム化に向けた省エネ活動の推進

・地域ごとの特徴を生かした再生可能エネルギー導入の一括管理

製品需要

電動化の推進で、電動車向け製品需要が拡大する一方、ガソリン車向け製品需要の減少

・2030年までにパワートレインユニット販売台数の電動化率60%以上を目標に設定し、製品構成を電動車向けへシフト

・高効率&小型化の電動ユニット、回生協調ブレーキ、熱マネジメントや空力など、幅広い製品によるモビリティの電動化とエネルギーソリューションでカーボンニュートラルへ貢献する製品の拡販を強化

物理的

リスク

緊急性

直接操業

気象災害(大雨、台風、洪水等)の発生頻度の増加や規模の拡大による被災時のサプライチェーン寸断の発生や一時的操業の停止

・異常気象発生時における行動基準及びルールの策定

・調達物流のBCP高度化

・リスクのある拠点を抽出して定期的にモニタリング

・浸水対策計画の策定・実施

事業機会

製品需要

製品・

サービス

電動化の推進により、アイシン製電動ユニット関連製品の需要拡大

・高効率&小型化により電費向上した製品のスピーディな市場投入

・車種別ユニット共通化、材料費低減によるコスト低減

・回生協調ブレーキのシステム進化による電動車の航続距離向上

・関連製品の生産能力拡大

カーボンニュートラルを目指すため、排出したCO₂を吸収する製品のニーズ増加

・当社グループが保有する技術を活用したカーボンリサイクル・コンクリートの新規ビジネス拡大

・CO₂の回収、利活用技術の開発と社会実装

省エネルギーかつ低炭素排出の製品需要の拡大

・高効率で安定したエネルギー供給や、停電時の自立発電機能によるレジリエンス向上に貢献する家庭用燃料電池コジェネ「エネファーム(SOFC)」のさらなる高効率化と拡販

・自治体と協業で脱炭素事業を推進し、街づくりへ貢献

 (注) <時間的視点> 短:~2025年度、中:2030年度、長:~2050年度

<事業/財務影響> 小:小さい影響が想定される、中:中程度の影響が想定される、大:大きな影響が想定される

 

(ⅲ)リスク管理

 気候変動に起因する移行・物理的リスクを特定し、リスク評価と管理の枠組みを構築しています。当社グループに影響を与える重大なリスクに対しては、サステナビリティ会議等で定期的にモニタリング・管理しています。また、各国の法規制、ステークホルダーとの対話、CDPなどの外部評価、顧客動向を受け、必要に応じて特定したリスクを見直しています。

(ⅳ)指標と目標

<2030年度目標>

・生産CO₂排出量(スコープ1,2): 2013年度比50%以上削減

・ライフサイクルCO₂排出量(スコープ1,2,3): 2019年度比25%以上削減

<2035年度目標>

・生産CO₂排出量(スコープ1,2): カーボンニュートラル

<2050年度目標>

・ライフサイクルCO₂排出量(スコープ1,2,3): カーボンニュートラル

<指標>(2021年度実績※)

・生産CO₂排出量(スコープ1,2):256.5万t-CO₂(2013年度比10%削減)

・ライフサイクルCO₂排出量(スコープ1,2,3):1,752.8万t-CO₂(2019年度比2%削減)

※2022年度実績は、第三者検証後に当社サステナビリティサイト

(https://www.aisin.com/jp/sustainability/)にて公開予定

 

②人的資本

 アイシングループでは、働く仲間一人ひとりが主役であり、働く仲間こそが強みであるとの考えから、意思を持って経営理念の提供価値の最初に「働く仲間」を位置づけています。

 以下の目指す人材マネジメントの実践を通じて、新たな価値を創出し、働く仲間へ働きがいと人生の幸せを提供します。

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当社グループの人材マネジメント

 

(ⅰ)チャレンジする人・職場づくり

 人材マネジメントの実践の全ての土台として、「チャレンジする人・職場づくり」をキーワードとして風土そのものの変革に取り組んでいます。

 

<階層間・組織間での本音の対話、全員当事者のアクション推進>

 社員一人ひとりから経営に至るまで、全員が当事者意識を持って変革に取り組むべく、労使トップが職場風土について本音で話す「労使協議会」や、経営トップと社員が直接対話する「タウンホールMTG」を実施しています。全150部署が「部・工場労使懇」を毎月行い、チャレンジに向けた職場課題の解決を推進しています。また、職場風土づくりの基盤として「ATBA活動(Aisin Team Building Activity)」を全社で実施しており、約1,500グループがカエル会議(チーム全員の定例会)と1on1を通じた、心理的安全性の構築と関係の質向上を推進しています。

 

<チャレンジの適正評価、メリハリある処遇ができる人事制度>

 役員においては、業績連動のみならず、毎期の業績査定を大きく反映し、一人ひとりの成果に応じた報酬適用を徹底しています。当事業年度からは360度評価を導入し更なる変革行動につなげていきます。

 社員に対しては、一人ひとりが主体的に新しい価値を生み出せるよう、個人の夢・志と、組織の課題・挑戦をすり合わせて業務テーマへ落とし込むことを徹底しています。2022年度は全管理職への評価制度説明会を複数回行うとともに、評価面談実施状況を労使双方で確認し、好事例の展開や課題のある職場への支援を実施しています。

 また、チャレンジを阻害する人事制度課題を解決し、更にチャレンジを促進するため、管理職層は2023年度下期、組合員層は2024年度上期からの制度改定を予定しています。制度コンセプトとして、①加点主義(高い目標へのチャレンジ、失敗からの学びを評価)、②時価主義(今の職責・成果に報いる)、③流動性・外向きの加速(視野の拡大)を掲げ、改定議論を進めています。

 

(ⅱ)グループ・グローバル連結で変化に機敏に対応できる人・組織の構築

<電動化へのリソーセスシフト・リスキル>

 2022年度から、アイシングループの強みを生かした車両全体でのEV向け商材拡充をねらいにEV推進センターを設置、カンパニー・グループ横断で先行開発を強化し、アイシンらしい魅力あるEV向け商品の開発を進めており、センター発足2022年4月から2022年度末時点までに、150人が異動しました。

 電動化の重点技術であるモーター、熱マネジメント技術者育成に向けては、既存領域人材が数カ月間技術習得に専念し即戦力として配置転換するプログラムを展開しており、2022年度末までに250人が受講しました。技能人材育成においても、電動化製品の技術進化サイクルを踏まえて教育体系を刷新し、電動化製品生産に特化した教育を推進しています。2022年度末には延べ1,429人が受講しています。

 

<既存事業の基盤強化>

 アイシンの収益構造強化に向けて、既存事業においても従来延長の仕事のやり方を変えることが必要です。経験ベースでの仕事の仕方を見直し、事実ベースで現状を正しく把握し、お客様目線であるべき姿を描き、課題解決に向けて自ら行動する「問題解決的な働き方」を改めて徹底することが重要です。問題解決的な働き方を労使重点課題として取り上げて職場での議論・アクションを推進するとともに、問題解決力の底上げに向けて、職場を巻き込んだ実践的研修や上司向け研修の導入などを推進しています。

 

<グループ・グローバルでのリーダー人材育成>

 候補人材を経営幹部が直接発掘し、選抜人材に対して経営上影響度の大きい重要テーマや国内・海外ポストの任用を積極的に行っています。また、自身の価値観を磨き上げ、より高い人間力・視座を得るため、専門家とのコーチング、経営知識の習得、他流試合などを、一人ひとりの特性を考慮して個別に実施しています。

 海外拠点リーダー人材育成に向けては、グローバル共通指標でポストの見える化、重要ポスト選定を行う「AG2(アイシングローバルグレーディング)」を導入し、サクセッションプランの策定、経営人材としての教育実施など計画的な育成を推進しています。これらの取り組みを通じ、2030年海外拠点幹部現地社員比率目標40%に対し2021年度末時点で35.4%に到達しています。

 

<成長市場の海外事業を支える人材の育成>

世界で戦えるものづくりの現場と人を構築するために、職場目標を達成するための課題要因を「人:標準作業」「製品:加工点マネジメント」「設備:自主保全」の3本の柱に層別して評価しレベルアップしていく3本柱活動をグローバルに推進しています。

ものづくり現場のリーダー育成に向けては、企業内訓練校「アイシン学園」をグローバルに運営し、実践的な技能教育とリーダーに必要な心身教育を実施しています。日本のアイシン学園では、海外からの研修生を受け入れており、現時点で累計11か国35拠点435人を育成しています。さらに、2023年度からは海外拠点の現地監督者を対象とした「管理監督者コース」を設置します。現地役割に特化した専門能力を育成し、海外拠点で現場をリードできる人材を育成しています。また、中国(蘇州)及びタイでもアイシン学園を設立し、中国で累計270人、タイで36人を育成しています。

 

(ⅲ)全員活躍・どこよりも人が育つ

 正解のない時代において、既存延長では解決できない課題に取り組むためには、社内の前例や経験に捉われない、新しい発想が求められます。そのため、属性に拠らず、多様な個人、全員が「プロ人材」として活躍・成長できる機会を提供します。そして、日本の労働人口減、人材流動性の高まりの中、「どこよりも人が育つ」会社として選ばれ続ける会社を目指します。

 

<プロ人材の育成>

 環境変化をチャンスに変えていくには、事実を正しく把握し、課題を描き、解決に向けて自ら行動する「問題解決力」を基盤に、変化を牽引する「変革力」、周りの共感を引き出す「人間力」が必要です。それらの能力向上に向けて、外を知り視点を変えるため「社内外出向を含むローテーション」、社外者と社会課題解決に取り組む「越境学習」(2022年度27人から2023年度250人へ拡大予定)、課題創造力・マネジメント力向上のため自己理解に基づく意識・行動変革を促す「内省研修」など、人材育成の仕組みを大幅に見直し、積極的な投資を行います。また、グループ全体の底上げのため、2021年度より国内生産会社15社を重点として教育体系の共通化や協業によるリソース連携を推進しています。

 

<自律的キャリア支援>

手上げ式教育の拡充に加え、2021年オープンエントリー制度(累計114人異動)、2022年副業制度(累計202人実施)などを通じて自律的なキャリア形成を支援しています。このような取り組みが評価され、2021年に第3回「プラチナキャリア・アワード」(主催:三菱総合研究所)で最優秀賞を受賞しました。

 

<ダイバーシティ&インクルージョン>

 「キャリア支援」と「仕事と家庭の両立支援」に向けて、現場の生の声を吸い上げ施策検討する「きらりプロジェクト」、ダイバーシティ&インクルージョンを踏まえたマネジメントができる上司を育成する「イクボス塾」(累計779人受講)、「休職中のキャリア意識啓発」、「キャリアメンター制度」(現在メンター65人)、などに継続して取り組んでいます。こうした取り組みが評価され、「なでしこ銘柄」(主催:経済産業省、東京証券取引所)に3年連続選定されています。

3 【事業等のリスク】

(1) 基本的な考え方

 当社グループは、持続的成長と安定を目指す上で、リスクマネジメントを重要な経営課題と認識しています。大規模地震や気象変動に伴う河川氾濫などの自然災害、半導体や材料などの逼迫、工業用水や電力、通信ネットワークなどインフラ停止やサイバー攻撃、さらには米中対立などの地政学に起因するリスクといった外部環境に起因するリスクは非常に多様化しており、自社への影響はより甚大になってきています。そのような成長を阻害する可能性のある「リスク」を常に把握し、被害の最小化と事業継続の両面から、リスクマネジメントに取り組んでいます。

 

(2) リスクマネジメントの体制と取り組み

 当社グループは、当社の社長をはじめCxO、監査役、本部長及びグループ各社の社長が参加するリスクマネジメント委員会のもと、リスク対策における平時及び有事の対応に取り組んでいます。平時対応では、各機能部門がリスクの洗い出し、分析・評価、優先付けを行い、リスクマネジメント委員会で重点リスクとして決定しています。重点リスクは各種委員会・リスク機能主管部署がリスク対策(抑止・軽減)、教育訓練・標準化を行っています。これらリスク対策の実施状況は、リスクマネジメント委員会が進捗を管理しています。有事対応では、危機レベルに応じた対策本部を立ち上げ、初動対応から復旧対応等の手順を計画し、早期復旧への対応力を強化しています。

 

リスクマネジメントプロセス                                          リスクマネジメント体制図

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(3)重点リスクの選定

 リスクレポート件数、リスクアセスメントインタビュー結果などの内部環境変化、またESG投資家や専門機関のリスク評価などの外部のリスク評価を加味し「重点リスク」を選定しています。また、影響度、発生確率をマッピングし、その上で経営層及び実務責任者の認識をもとに当社グループ経営において極めて重要度が高いリスクを「最重点リスク」と設定しています。リスクは取り巻く環境変化と対応策の進捗について随時モニタリングし、年2回定期的に実施されるリスクマネジメント委員会で見直されます。

 

重点リスク選定フロー

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(4) 事業等のリスク

 当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性のあるリスクのうち、投資家の判断に重要な影響を 及ぼす可能性のあると考えられる主な事項を以下に記載しています。なお、以下は当社グループに関するすべてのリ スクを網羅したものではなく、記載した以外にも投資家の判断に影響を及ぼす事項が発生する可能性があります。また、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。

 

①社会的課題への対応

 当社グループは、自動車部品関連、エナジーソリューション関連などの事業領域で多様な製品・サービスを提供していますが、国際社会で持続可能な社会を目指す動きが加速する中で、気候変動、資源枯渇、環境汚染、事故・災害、人権保護など将来予想される社会課題に対する意識の高まりは、市場動向や顧客ニーズに変化をもたらす可能性があります。こうした事業環境の変化に適切に対応できない場合、競争力や企業価値の低下などにより、当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは2021年4月の経営統合を機に策定したグループ経営理念「“移動”に感動を、未来に笑顔を。」に基づき、私たちの商品・サービスによって、環境・社会課題に具体解を示し、人々の笑顔あふれる持続可能な社会をつくっていきたいと考えています。このような価値観・取り組みを軸に社会の一員として社会課題の解決に寄与するため、経営課題や重要性からマテリアリティ(優先課題)を絞り込み、解決に向けた具体解としてSDGs2030年目標・KPIを設定した活動へと落とし込んでいます。目標値・KPIに関してはサステナビリティ会議を通じ、取締役社長を議長としてフォローを行っています。また、変化の激しいサステナビリティを巡る課題についても共有を行い、適切な対応に向けた議論を行っています。これらの目標値・KPIは2021年4月の経営統合を機に策定したアイシングループビジョン2030とも連動しています。このような長期ビジョンの実現に向けては、人的資本、知的財産、研究開発費をはじめとする経営資源の適正な配分や事業ポートフォリオに関する戦略策定を中期計画検討会にて議論し、中期経営計画に落とし込んでいます。各年度では、中期経営計画を踏まえた経営方針及び利益計画の達成状況を、取締役会・執行会議等で監督・進捗確認しています。

 このような取り組みを通じて、より大きく進化した価値を社会に提供し、事業を通じたサステナビリティ課題に対して適切な対応を行って貢献していきます。

 

②経済状況

 当社グループの連結売上収益のうち、重要な部分を占める自動車関連製品の需要は、当社グループが製品を販売している国又は地域の経済状況の影響を受けます。したがって、日本、北米、欧州、中国、タイ、インドネシア、インドなど当社グループの主要市場における経済や景気及びそれに伴う自動車需要の縮小は、当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

 こうしたリスクに対処するために、当社グループでは、グローバルでの経済状況の変化や自動車需要の動向を常に注視するとともに、需要変動に対応した柔軟な生産体制づくりの推進や、材料・エネルギーの使用量削減など、中長期目線で外部環境の変化に強い収益体質とするべく、構造改革・原価低減活動を加速させています。

 また、アイシングループの中核2社の経営統合によるグループ共同活動、効率化の成果をさらに拡大するとともに、恒久的に効果の発生する仕組みにしていきます。

 

③為替レートの変動

 当社グループは、海外連結子会社の財務諸表を連結財務諸表作成のため円貨換算しており、現地通貨建ての項目は、現地通貨における価値に変動がない場合も、換算時の為替レートにより円貨換算後の価値が影響を受ける可能性があります。また、当社グループが行う外貨建取引から生ずる費用・収益及び外貨建債権・債務の円換算額は、為替レートの変動の影響を受ける場合があり、当社グループが日本で生産し、輸出する取引における他の通貨に対する円高は、当社グループ製品のグローバルベースでの相対的な価格競争力を低下させるなど、当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、通貨別に為替リスクを測定したうえでヘッジ効果とヘッジコストを勘案し、許容可能な為替リスク量まで為替リスクを軽減するため、資金事務手続規定におけるデリバティブ取扱要領に従い、為替予約、通貨スワップ、通貨オプションを利用してヘッジをしています。

 

④金融市況の変動

 株式市況の低迷等により当社グループの保有する株式等の価値変動が生じ、当社グループの財政状態や経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは純投資目的での株式は保有しておらず、また、当社グループの企業価値向上に必要不可欠と認められる場合を除き、原則として政策保有株式を保有しない方針です。政策保有株式については、毎年の取締役会で保有の適否を判断しており、中長期的な企業価値の維持・向上に不可欠と認められない株式がある場合は、対象企業との対話を通じて継続的に縮減を進めています。

 また、市場の金利状況により、資金運用・資金調達の受取・支払利息が増減し、当社グループの経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、資産と負債の統合管理をはかるとともに、金利スワップ等により金利変動によるリスクを軽減するための対策を講じています。

 当社グループの確定給付制度債務の算出において前提条件とした割引率・制度資産などについて、金融市況の悪化により、実際の結果が前提条件よりも低下・減少することで当社グループの確定給付制度債務が増加するなど、当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、企業年金の積立金の運用が、従業員の安定的な資産形成に加えて自らの財政状態にも影響を与えることを踏まえ、運用にあたる適切な資質を持った人材の計画的な登用・配置などの人事面や運営面における取り組みにより、企業年金が運用の専門性を高めてアセットオーナーとして期待される機能を発揮できるよう努めています。また、政府の規制や人材戦略・人事制度を踏まえ、適宜制度の見直しを検討、実施しています。

 

⑤原材料や部品の調達

 当社グループは、製品の製造に必要な原材料や部品を国内・海外の複数のグループ外供給元から調達しています。これらのグループ外供給元とは、取引基本契約を結び、安定的な取引を行っていますが、昨今の半導体部品に代表されるように需給バランスの急激な変化や、地政学の影響や需要の急激な変化、供給元が災害等により被災するなど供給能力の制約により、当社グループの生産に必要な量を確保することが困難となった場合、当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。また、資源やエネルギー費などの高騰により当社グループが調達している原材料や部品の価格が上昇し、内部努力や販売価格への転嫁などにより影響を吸収できない場合には、当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、得意先への製品の継続的な供給要請に応えられるよう、供給元とのコミュニケーションを強化し、確実な納期の確保、安定的かつ柔軟な供給体制の構築に努めています。安定的な生産や調達活動に影響を及ぼす自然災害や火災などへの対応として、平時から災害に備えるとともに、サプライチェーン情報管理システムを整備するなど有事の際の迅速な初動・復旧を確実に実行できるよう取り組んでいます。また、供給元と一体になった新材料・新工法開発や徹底的なムダ排除を観点とした工程改善による原価低減活動を積極的に推進することなどにより、最適な価格の維持に努めています。

 

⑥得意先への依存

 当社グループの連結売上収益の大部分を占める自動車部品事業は、世界の主要自動車メーカーを得意先としています。当社グループの業績は、各自動車メーカーの業績や販売・生産動向の変動など当社グループが管理できない要因により影響を受ける可能性があります。また、当社グループの連結売上収益に占めるトヨタグループに対する連結売上収益の割合は、当連結会計年度において64.6%を占めており、トヨタグループの事業戦略や購買政策等は、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、これまで培ってきた専門性の高い技術をベースとして、電動化や自動運転をはじめとする次世代・新規領域を中心とした社会課題の解決に貢献するソリューション型商品の開発や世界のどの地域でも高品質な製品を生産できるグローバル生産体制の整備を推進し、新興国での新たな需要の発掘や世界中の自動車メーカーへの拡販活動を強化しています。

 

⑦価格競争

 当社グループの連結売上収益の大部分を占める自動車部品事業におけるグローバルでの価格競争は、大変厳しいものとなっています。得意先からの価格引き下げ要請や自動車メーカーによる部品の内製化、新しい競合先の台頭や既存の競合先間の提携などにより、価格競争力や製品の優位性が維持できない場合には、当社グループ製品に対する需要の低下及び製品価格の低下を通じて、当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、高い技術開発力、圧倒的なものづくり力、グループの総合力により、高品質で高い付加価値を有する自動車関連製品をグローバルで供給し続けることで優位性を確保するとともに、事業環境を見極めたグローバルでの効率的な事業体制の構築やIoTやAIを活かした生産性向上・原単位改革による商品競争力・低コスト競争力の強化など既存事業の更なる競争力向上に取り組んでいます。

 

⑧新商品開発

 当社グループは、新しい価値を提供し豊かな社会づくりに貢献できるよう、未来を見据えた新商品開発に努めています。今後も、環境・燃費、安全・安心、快適・利便を追求した独創的な魅力ある新商品を開発できると考えていますが、最先端の新商品開発と販売のプロセスは、その性質から複雑かつ不確実なものであり、以下をはじめとする様々なリスクが含まれます。

(ⅰ)新商品や新技術への投資に必要な資金と資源を、今後十分充当できる保証はありません。

(ⅱ)長期的な投資と大量の資源投入が、成功する新商品又は新技術の創造へつながる保証はありません。

(ⅲ)当社グループが市場からの支持を獲得できる新商品又は新技術を正確に予想できるとは限らず、またこれら

   の商品の販売が成功する保証はありません。

(ⅳ)新たに開発した商品又は技術が、独自の知的財産権として保護される保証はありません。

(ⅴ)技術の急速な進歩と市場ニーズの変化により、当社グループの商品が時代遅れになる可能性があります。

(ⅵ)現在開発中の新技術の商品化遅れにより、市場の需要についていけなくなる可能性があります。

   上記のリスクをはじめとして、当社グループが業界と市場の変化を十分に予測できず、魅力ある新商品のタイムリーな開発と市場への投入ができない場合には、将来の成長と収益性を低下させ、財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

   当社グループは、持続的な成長と持続可能な社会の実現に向け、社会課題の解決に貢献するソリューション型商品の拡充に取り組んでいます。電動駆動ユニットや駐車支援システムなど、商品ラインアップの拡充に向けて、競争力が弱く、成長が望めない商品への開発リソーセスを次世代・新規領域へシフトするとともに、デジタル開発による効率化をはかり、商品開発を加速していきます。また、あらゆる領域で自前主義にこだわらずパートナーとの技術連携を積極的に取り入れ、新規事業の開拓も加速していきます。

 さらに、カンパニー・グループ会社横断での電気自動車(BEV)向け商品の開発強化に向け2022年4月に設置した「EV推進センター」を中心に、車両全体目線で新たな製品の開発を強化しており、当社グループの持つ様々な技術を結集し、さらに機動的な社外連携も実施しながら、圧倒的に高効率・小型なeAxleなど、アイシンらしい魅力あるBEV向け商品の開発を強力に進めていきます。

 

⑨海外事業展開

当社グループは、世界の主要自動車メーカーの近くで多様なニーズに対応し、高い付加価値を有する製品を開発、提供できるよう、グローバルな供給体制を構築しています。当社グループが事業を展開している国又は地域における事業運営には以下のようなリスクが内在しており、これらの事象が発生した場合には当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

(ⅰ)予期しえない法律・規制、不利な影響を及ぼす租税制度の変更

(ⅱ)社会的共通資本(インフラ)が未整備なことによる当社グループの活動への悪影響

(ⅲ)不利な政治的又は経済的要因の発生

(ⅳ)人材の採用と確保の難しさ

(ⅴ)テロ、戦争、疾病その他の要因による社会的混乱

当社グループは、国内グループ会社に加え、北中南米、欧州、中国、アセアン・インドを統括する各地域統括本部長が、グループに共通する経営上のリスクと国や地域によって異なるリスクの情報を共有することによって効果的な対策を推進し、グローバルな視点でリスクマネジメントを強化しています。2022年4月には地政学リスクの高まりや複雑化を踏まえ、全社横断的な会議体として「経済安全保障委員会」を設置し、経営トップを中心にレピュテーションを踏まえた高度な判断を必要とする経済安全保障リスクに対応していく体制を構築しています。また、当社グループが事業展開する国又は地域の経済・政治・社会的状況に加えて、事業に関連する各国の環境関連規制、製品の安全性・品質関連規制、輸出入関連規制の情報をタイムリーに収集し、適時適切な対応をとっています。

 

⑩事業投資

当社グループは、グローバルでの事業拡大に向け、成長領域や需要の拡大が見込まれる事業への設備投資等の事業投資を行い、更なる企業価値の向上に努めています。しかしながら、投資判断時に想定していなかった水準で、市場環境や経営環境が悪化し、事業計画との乖離等により期待されるキャッシュ・フローが創出できない場合、設備投資により計上した有形固定資産の減損処理などにより、当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。また、当社連結子会社において経営環境の著しい悪化や収益状況の悪化等が将来にわたって見込まれる場合、繰延税金資産の回収可能性の判断などに影響を及ぼす可能性があり、当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、変化の激しい事業環境の中、成長領域へ戦略的に資源配分を行い、既存領域事業では集中と選択によって競争力を高め、持続的な成長に向けた事業ポートフォリオ構築に努めています。具体的には、事業軸での6つのカンパニーが、グループ全体視点から将来を見据えた開発のさらなる加速や持続的な事業価値の最大化、重点事業課題への対応等を担っており、中長期目線で事業の方向性を示すプレジデント及び統括役員が意思決定を行っています。また、当社グループの中長期の方向性及びグループを含めた意思決定については、取締役会運用基準に則り、取締役会にて審議・決議するとともに経営会議、執行会議、各種機能会議等で、当社グループ各社の業績や重要な投資に対してのモニタリングを実施し、今後の方向性や業績改善のための対策を検討しています。

 

⑪製品の欠陥

 当社グループは、お客様に高い品質を確保した商品を提供するため、厳格な品質管理体制や品質管理基準に従い、グローバルで各種製品を製造しています。しかしながら、すべての製品について欠陥がなく、将来にリコールが発生しないという保証はありません。また、製造物責任賠償については保険に加入していますが、この保険が最終的に負担する賠償額を十分にカバーできるという保証はありません。大規模なリコールや製造物責任賠償につながるような製品の欠陥は、多額のコストや当社グループの評価に重大な影響を与え、当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、徹底したTQM(Total Quality Management 総合的品質管理)活動を続け、開発から生産にいたるまで、厳格な品質保証体制を構築しています。企画、製品設計、生産準備から量産にいたる各階段の節目管理にて、お客様の要求や法規動向及び、未然防止事項の盛り込みを審議・評価するとともに、サイマルテニアス・エンジニアリング(SE)活動により製品設計段階から、技術、生産技術、工場、仕入先企業が一体となって品質の向上につなげています。量産にあたっては、「ジャストインタイム」と「自働化」によるトヨタ生産方式に基づいた生産を行うとともに、各種品質管理手法を用いて工程を維持・管理し、お客様の信頼に応えるものづくりを実践しています。また、仕入先企業に対するリスク評価及びモニタリング、仕入先企業の能力向上に向けた様々な取り組みにより、仕入先企業の品質レベル向上をはかっています。

 

⑫災害等による影響

 当社グループは、大規模地震、自然災害、火災・爆発等の事故、感染症、災害等の発生により、グループ会社に人的・物的被害が生じるリスクを想定しており、これらリスクの発生による操業停止で、顧客への製品供給に支障をきたした場合、財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。特に当社グループの工場や取引先は、国内外に所在しており、これらの地域で大規模な災害等が発生した場合、生産・納入活動が遅延・停止する可能性があります。

 こうしたリスクに対処するために、当社グループ全てを対象としたリスクマネジメント委員会においてリスクの顕 在化と未然防止をはかり、危機に強い企業づくりに取り組んでいます。当社グループでは、平時(リスク発生前)か ら緊急時(リスク発生時)の対応に関する実践要領をまとめた「危機管理ガイド」に基づき、一人ひとりの従業員が リスク発生時に的確な行動をとれるよう教育・訓練を実施するなど啓発活動に取り組み、災害に強い企業づくりをグループ一体となって推進しています。また、地震など大規模災害に備えて、1.「人命・安全」、2.「地域貢献」、3.「生産復旧」を 基本方針として、災害発生時の対応力を強化しています。

 働く人々とその家族、顧客を始めとする全てのステークホルダーの皆さまの健康と安全確保を最優先に考え、様々なリスクに対し代替生産やバックアップなどあらゆる手段で顧客への製品・サービスの供給継続に努めています。

 

⑬気候変動

 当社グループは全世界で事業を展開しているため、中長期にわたり様々な気候変動に関する影響を受けると認識し、「気候変動への対応」をマテリアリティ(優先課題)の1つとして選定しました。また、TCFD提言に沿ってシナリオを分析し、その対応策を事業戦略に組み込み推進しています。主な脱炭素社会への移行リスクとして、

  (ⅰ)自動車業界でのガソリン車から電動車へのシフトといった市場・顧客ニーズに適切に対応できない

     ことによる競争力の低下

  (ⅱ)燃費・CO₂規制を導入する国や地域の増加に伴う、カーボンプライシング政策の導入による

     コストの増加

  (ⅲ)政策や顧客ニーズ等により、CO₂排出削減や再生可能エネルギーへの代替などに伴う設備投資や

     エネルギーコストの増加

につながる可能性があります。

 こうしたリスクへの対策として、「カーボンニュートラル推進センター」にて、

  (ⅰ)グループ全体のカーボンニュートラル戦略の立案と再生エネルギーの導入や調達

  (ⅱ)生産CO₂削減に向けたテーマの積み上げと実行

  (ⅲ)社外との連携を通じた技術開発や事業化

などのCN関連活動をすべて集約し、強力に推進しています。

 また、電気自動車(BEV)への移行が加速する中、当社グループの持つ様々な技術を結集し、さらに機動的な社外連携も実施しながら、圧倒的に高効率・小型なeAxleなど、アイシンらしい魅力あるBEV向け商品の開発を強力に進めていくため、2022年4月に「EV推進センター」を設置しました。

 高効率な電動ユニット、回生協調ブレーキ、熱マネジメントや空力など、幅広い製品によるモビリティの電動化とエネルギーソリューションでカーボンニュートラルへ貢献する取り組みを強化しています。

 

⑭知的財産権

 当社グループは、新価値を創造して提供する将来事業の優位性・安全性を確保するため、独自の技術とノウハウ等を蓄積し知的財産を戦略的に獲得するとともに、第三者の知的財産権侵害のリスク軽減に努めています。なお、特定の国及び地域においては、法的要件により、知的財産の完全な保護が不可能又は限定的にしか保護されない可能性があります。また、保有する知的財産権が無効となる可能性があります。そのため、第三者による当社グループの知的財産権の不正使用あるいは権利侵害を防ぐための手段が有効に機能しない可能性があります。また、当社グループの製品は広範囲にわたる技術を利用しているため、将来的に知的財産権を侵害したとして第三者から訴訟を提起されることにより訴訟費用が発生する可能性があります。

 こうしたリスクに対処するために、当社グループでは、知的財産管理の専門部署を設け、関係部門と連携して、特許をはじめとする各種知的財産権により技術と知的財産を戦略的に領域を定めて保護するとともに特許調査等を行い第三者の知的財産権の侵害予防に努めています。

 

⑮情報セキュリティ

 当社グループでは、日々巧妙化するサイバー攻撃等の脅威や「会社情報」「得意先・お客様情報」等の情報漏洩から守る事は、リスク管理上の重要課題と捉え、情報セキュリティの強化に取り組んでいます。しかしながら、サイバー攻撃を含む意図的な行為や過失等により、情報システム等に障害が生じる場合や、機密情報及び個人情報が外部に流出する可能性があります。また、サプライチェーン等の事業活動が一時的に中断する可能性があります。このような事象が発生した場合、当社グループの事業活動の停滞や社会的信用の低下等により、当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、「アイシングループ情報セキュリティ基本方針」を基本に、お客様や取引先からお預かりした、又は当社グループが保有する事業活動に関わる情報資産は、当社グループの重要な資産であるとの認識に立ち、組織的かつ継続的に情報セキュリティ対策に取り組んでいます。また、アイシングループ全体のサイバー攻撃や内部不正等のリスクから企業を守るため、2020年4月よりアイシングループ全体のコーポレートセキュリティガバナンスを強化しました。CSDO(Chief Software Digital Officer)の任命とセキュリティ専門組織情報セキュリティ推進室を設置し、情報セキュリティ推進室ではアイシングループ全体からセキュリティ関連情報の収集・展開とインシデント対応を行い、早期検知と迅速な対応に努めています。

 

⑯コンプライアンス

 当社グループは、事業活動を遂行するうえで、コンプライアンスを基本においていますが、規制当局による措置その他の法的手続きに関するリスクを有しています。これらのリスクにより、当社グループに対して損害賠償請求や規制当局による金銭的な賦課を課され、又は事業の遂行に関する制約が加えられる可能性があります。また、社会情勢の変化、価値観や働き方などの多様化に伴い、ハラスメント等のリスクが増加する可能性があります。当社グループが重大なコンプライアンス違反を起こした場合は、当社グループの社会的信用の失墜による事業への悪影響などにより、当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、グループ全役職員の行動規範となる「アイシングループ企業行動憲章」及びその具体的な行動基準となる「社会的責任を踏まえた行動指針」を策定しています。また、コンプライアンスに関わる方針・体制を決める会議体として、「企業行動倫理委員会」を設置し、グループ主要12社の取締役社長、担当役員、常勤監査役が、法令遵守を含むコンプライアンスの活動状況及び当社グループの課題を確認すると共に、次年度の活動方針、実施事項を承認しています。さらに、コンプライアンス活動を推進するのはあくまで人であると考え、各種教育活動を継続的に行い、従業員一人ひとりのコンプライアンス意識向上に努めています。また、問題の早期発見・是正のため、コンプライアンスに関する内部通報窓口を社内外に設置しています。

 

⑰人権

 当社グループは、国内・海外に多くの拠点を保有し、グローバルな事業活動を実施しています。事業活動を遂行するうえで、人権の尊重を基本として活動していますが、サプライチェーンを含めた事業活動が各国・各地域において潜在的又は実際に、人権へ影響を及ぼすリスクがあると認識しています。これらのリスクの顕在化や取組み不足によっては、社会的信用の失墜により、当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、グループ全社員の行動規範となる「アイシングループ企業行動憲章」及びその具体的な行動基準となる「社会的責任を踏まえた行動指針」の中で、人権の尊重を明確に宣言しています。加えて、「国連ビジネスと人権に関する指導原則」に基づき「アイシングループ人権方針」を策定し、アイシングループの事業活動における人権尊重へのコミットメントを行うとともに、サプライチェーンに対しても「仕入先サステナビリティガイドライン」を通じて「アイシングループ人権方針」への理解・支持を求め、人権侵害の未然防止に努めています。また、「人権専門委員会」を設置し、グループ主要12社の取締役社長と担当役員が、主要人権リスク分野のセルフチェック結果等の人権デュー・ディリジェンスの進捗を確認すると共に、今後の活動計画、重点分野(強制労働、海外・サプライチェーンへの展開強化など)を承認しています。さらに、相談窓口の設置・運用、各階層への教育・定着活動や外部専門家との対話、「責任ある外国人労働者受け入れプラットフォーム」の活動への参画等、総合的・継続的に人権への取組みを推進しています。

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度の自動車業界を取り巻く環境を振り返りますと、前連結会計年度から続く新型コロナウイルス感染症の影響による部品供給制約や半導体不足等により自動車メーカーの生産計画に大きな変動が生じました。またウクライナ情勢の悪化等による、原材料価格・エネルギー価格・輸送費の高騰が長期化し、業界全体の収益を圧迫しています。

 そのような中、当社グループは想定以上の生産変動に対応しながら、構造改革とサプライチェーン一体となった体質強化を実行しました。また、自動車産業の大変革期の中で生き残りに向け「アイシングループのフルモデルチェンジ」を成し遂げるため、厳しい経営環境の中でも継続して重点領域へのリソーセスシフトや投資を強化しました。

 

 売上収益については、半導体不足や中国ロックダウンによる車両減産影響があり、前連結会計年度に比べパワートレインユニットの販売台数は減少したものの、円安の影響等により、前連結会計年度(3兆9,174億円)に比べ12.4%増の4兆4,028億円となりました。

 利益については、生産台数の減少や原材料価格の高騰等外部環境の影響、電動化に向けた既存資産圧縮に伴う構造改革費用により、営業利益は前連結会計年度(1,820億円)に比べ68.2%減の579億円、税引前利益は前連結会計年度(2,199億円)に比べ66.5%減の737億円となり、親会社の所有者に帰属する当期利益は前連結会計年度(1,419億円)に比べ73.5%減の376億円となりました。

 また、当連結会計年度末の資産については、前連結会計年度末(4兆2,058億円)に比べ1.7%減の4兆1,358億円となりました。負債については、借入金の減少等により、前連結会計年度末(2兆2,092億円)に比べ2.9%減の2兆1,443億円となりました。資本については、前連結会計年度末(1兆9,965億円)に比べ0.3%減の1兆9,914億円となりました。

 

 セグメント別の業績は、次のとおりです。

 

(ⅰ)日本

 売上収益については、パワートレインユニットの販売台数は減少したものの、円安の影響等により、前連結会計年度(2兆8,524億円)に比べ0.0%増の2兆8,534億円となりました。利益については、企業体質改善努力があったものの、販売台数の減少や原材料価格の高騰等により、45億円の営業損失(前連結会計年度営業利益1,165億円)となりました。

 

(ⅱ)北米

 売上収益については、パワートレインユニットの販売台数の増加等により、前連結会計年度(5,981億円)に比べ38.6%増の8,290億円となりました。利益については、売上収益の増加があったものの、原材料価格・輸送費等の高騰、電動化商品に係る生産準備費用や構造改革費用の計上等により、325億円の営業損失(前連結会計年度営業損失166億円)となりました。

 

(ⅲ)欧州

 売上収益については、円安の影響等により、前連結会計年度(3,420億円)に比べ3.4%増の3,535億円となりました。営業利益については、為替差益や一過性収益等により、前連結会計年度(51億円)に比べ63.9%増の83億円となりました。

 

(ⅳ)中国

 売上収益については、円安の影響等により、前連結会計年度(4,697億円)に比べ16.8%増の5,485億円となりました。営業利益については、原材料価格の高騰や構造改革費用の計上等により、前連結会計年度(349億円)に比べ54.1%減の160億円となりました。

 

(ⅴ)その他

 売上収益については、パワートレインユニットの販売台数の増加等により、前連結会計年度(3,986億円)に比べ32.4%増の5,278億円となりました。営業利益については、売上収益の増加や為替差益等により、前連結会計年度(488億円)に比べ27.5%増の622億円となりました。

 

(注)各セグメントの売上収益の金額は、外部顧客への売上収益に加え、セグメント間の内部売上収益も含めた金額としています。

 

② キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況について、現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)の残高は、営業活動により2,379億円の増加、投資活動により1,868億円の減少、財務活動により1,277億円の減少、現金及び現金同等物に係る換算差額により89億円の増加、売却目的で保有する資産へ15億円の振替の結果、当連結会計年度末には3,176億円となり、前連結会計年度末(3,869億円)に比べ692億円(17.9%)の減少となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動により得られた資金は、前連結会計年度(1,933億円)に比べ446億円(23.1%)増加し、2,379億円となりました。これは、税引前利益が1,462億円減少したことや営業債権及びその他の債権の増減額が1,032億円増加したことによる資金の減少があったものの、棚卸資産の増減額が2,165億円減少したことにより資金が増加したこと等によります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動により使用した資金は、前連結会計年度(2,049億円)に比べ180億円(8.8%)減少し、1,868億円となりました。これは、無形資産の取得による支出が103億円増加したことにより使用した資金が増加したものの、定期預金等の増減額が278億円減少したことにより使用した資金の減少があったこと等によります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動により使用した資金は、前連結会計年度(1,358億円)に比べ81億円(6.0%)減少し、1,277億円となりました。これは、前連結会計年度に社債の償還による支出が170億円あったこと等によります。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

(ⅰ)生産実績

 当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

生産高(百万円)

前期比増減率(%)

日本

2,831,378

△1.5

北米

816,411

30.6

欧州

314,399

△15.4

中国

553,250

15.2

その他

531,013

31.7

合計

5,046,453

6.1

(注1) 金額は販売価格によっており、セグメント間の内部取引消去前の数値によっています。

(注2) 上記金額には、外部仕入先等からの仕入高が含まれています。

 

(ⅱ)受注実績

 主要な事業である自動車部品製造・販売について、当社グループのすべてのセグメントは、トヨタ自動車㈱をはじめとした大手自動車メーカーより、約3ヶ月前後の予約的発注指示を受け、生産能力を勘案し生産計画を立て、生産を行っています。

 

(ⅲ)販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前期比増減率(%)

日本

2,853,419

0.0

北米

829,009

38.6

欧州

353,513

3.4

中国

548,530

16.8

その他

527,835

32.4

合計

5,112,309

9.7

(注1) 金額は販売価格によっており、セグメント間の内部取引消去前の数値によっています。

(注2) 主な相手先の販売実績及び総販売実績に対する割合は、次のとおりです。

なお、割合はセグメント間の内部取引消去後の総販売実績に対して記載しています。

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

販売高(百万円)

割合(%)

販売高(百万円)

割合(%)

トヨタ自動車㈱

1,099,839

28.1

1,174,595

26.7

 

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。

 なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において判断したものです。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和51年大蔵省令第28号)第93条の規定により、IFRS(国際会計基準)に準拠して作成しています。連結財務諸表の作成において、経営者は、会計方針の適用並びに資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす判断、見積り及び仮定の設定を行っています。実際の業績はこれらの見積りとは異なる場合があります。

 見積り及びその基礎となる仮定は継続して見直しています。会計上の見積りの見直しによる影響は、その見積りを見直した会計期間及び将来の会計期間において認識しています。

 上記のうち、当社グループの連結財務諸表で認識する金額に重要な影響を与える見積り及び仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 2.作成の基礎 (4)重要な会計上の判断、見積り及び仮定」に記載しています。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

② 経営成績の分析

 当連結会計年度の売上収益は前連結会計年度に比べ12.4%増の4兆4,028億円、営業利益は68.2%減の579億円、税引前利益は66.5%減の737億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は73.5%減の376億円となりました。

 以下、連結損益計算書に重要な影響を与えた要因について分析します。

 

(ⅰ)売上収益

 当連結会計年度の売上収益4兆4,028億円を事業の種類ごとに見ると、自動車部品事業では前連結会計年度に比べ12.6%増の4兆2,783億円となりました。その事業ごとの内訳としては、パワートレイン関連では9.8%増の2兆4,526億円、走行安全関連では17.0%増の8,970億円、車体関連では14.8%増の8,202億円、CSS関連他では30.2%増の1,084億円となりました。また、エナジーソリューション関連他では5.0%増の1,244億円となりました。

 

(ⅱ)売上原価、販売費及び一般管理費

 売上原価は前連結会計年度(3兆4,689億円)に比べ15.4%増の4兆14億円となり、売上収益に対する割合は88.6%から90.9%に上昇しました。これは、材料費が増加したことなどによります。

 販売費及び一般管理費は、運賃及び荷造費の増加などにより、前連結会計年度(2,924億円)に比べ16.0%増の3,391億円となり、売上収益に対する割合は7.5%から7.7%に上昇しました。

 

(ⅲ)その他の収益、その他の費用

 その他の収益は前連結会計年度(358億円)に比べ25.9%減の266億円となりました。

 その他の費用は、前連結会計年度(98億円)に比べ212.1%増の308億円となりました。これは、固定資産減損損失が増加したことなどによります。

 

(ⅳ)法人所得税費用

 当連結会計年度の法人所得税費用は、前連結会計年度(629億円)に比べ59.0%減少し、258億円となりました。

 

(ⅴ)非支配持分に帰属する当期利益

 当連結会計年度の非支配持分に帰属する当期利益は、前連結会計年度(150億円)に比べ32.1%減少し、102億円となりました。

 

(ⅵ)親会社の所有者に帰属する当期利益

 当連結会計年度の親会社の所有者に帰属する当期利益は、前連結会計年度(1,419億円)に比べ73.5%減少し、376億円となり、基本的1株当たり当期利益も526円66銭から139円77銭に減少しました。

 

③ 資本の財源及び資金の流動性

(ⅰ)キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載しています。

 

(ⅱ)資金需要

 当社グループの資金需要の主なものは、電動化商品の生産に向けた設備投資や社会課題の解決に貢献するソリューション型商品を中心とした新商品開発への研究開発投資です。

 今後の持続的な成長のために必要な設備投資及び研究開発投資による資金需要が見込まれる場合には、長期資金の調達を実行する可能性があります。

 

(ⅲ)財務戦略

 当社グループは、企業価値の最大化を目標として、すべてのステークホルダーとの良好な関係を築き、長期安定的な成長と発展をめざしています。

 当社グループの資本政策は、「財務の安全性」と「資本の効率性」のバランスをとることで、常に低コストで資金調達をできる状態に保ち、企業価値の向上を目指すことを基本方針としています。具体的には、キャピタリゼーション比率(注1)を指標として用い、当該比率が概ね25%~30%となることが最適な資本構成であると考えています。

 「財務の安全性」については、格付会社による評価をひとつの目安とし、高い信用格付を維持することにより、低コストでの資金調達がいつでも可能になるよう努めています。一方、「資本の効率性」については、格付が維持できる範囲で、負債による資金調達を優先し、資本の規模を抑制することで、全体の資本コストの低減をはかっています。また、キャッシュ・マネジメント・サービス(CMS)(注2)を導入することで、連結ベースでの財務戦略や当社グループ内での資金の有効活用を実現しています。

(注1) 有利子負債と資本(純資産)のバランスを示す指標です。

(有利子負債 /(有利子負債+資本合計))

(注2) グループ企業の資金を親会社や中核会社が同一銀行内に専用口座を設置して集中管理することにより、効率的な連結運営や資金運用をする手法、又はその仕組みを指します。

 

(ⅳ)資金調達

 当社は、安定的かつ低コストで資金を確保することを基本方針としています。

 資金調達にあたっては、平均残存期間の維持及び返済年限の平準化に資する調達年限を設定し、市場動向等を勘案した最適な資金調達手段を選択・実行しています。また、当社は高い信用格付けを維持するとともに、金融機関や投資家等と幅広く良好な関係を構築しており、競争力のある調達コストの維持・追求に努めています。

 当連結会計年度末の社債及び借入金残高8,486億円のうち、2,725億円はハイブリッド社債とハイブリッドローンで調達しており、格付会社より残高の50%である1,362億円について資本性の認定を受けています。

 当社では、経営を取り巻く様々なリスクに対応できるよう、現預金だけでなく、コミットメントライン契約を締結するなど、十分な流動性の確保に努めています。

 

④ 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(2)目標とする経営指標」に記載のとおりです。当連結会計年度においては、生産台数の減少や原材料価格の高騰等外部環境の影響、電動化に向けた既存資産圧縮に伴う構造改革費用により、営業利益率は1.3%、ROIC(投下資本利益率)は1.8%となりました。

 当目標の達成に向けた取り組みについては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(3)中長期的な会社の経営戦略及び会社の対処すべき課題」に記載のとおりです。

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

 

6 【研究開発活動】

 「“移動”に感動を、未来に笑顔を。」を経営理念に掲げる当社グループは、事業を通じ技術力やものづくり力を結集することで、社会課題の解決に貢献し持続可能な社会の実現を目指しています。

 カーボンニュートラルの達成に向けた電動車向け製品の開発では、地域によって異なるエネルギー事情を考慮し、eAxle・プラグインハイブリッド・ハイブリッドと電動ユニットをフルラインアップで揃え、お客様の様々なニーズに幅広く対応していく考えです。2022年4月にカンパニー及びグループ会社横断でのEV向け商品の開発強化に向け設置した「EV推進センター」を中心に車両全体目線で新たな製品の開発を強化しており、eAxleを最重点に、電動車の電費向上や自動運転に対応し、乗り心地の改善にも貢献する回生協調ブレーキ、世界最小サイズの冷却モジュール、保有技術を活用した軽量の電池骨格部品、空気抵抗低減に貢献する空力デバイスなど、高効率で小型な魅力ある製品をスピーディーに市場に投入していきます。これらの製品の開発を加速した結果、2025年時点でトータル15%以上の電費向上達成の目途が立ちました。

 “移動”に感動を提供する安心・快適・利便なモビリティの実現では、これまでパワースライドドアやドライバーモニターシステムなどお客様の安心・快適・利便に貢献する商品を多数開発してきました。今後は複数の機能を組み合わせた高度なシステムとして進化させ、ヒトの価値観、社会の変化に合わせたサービスの提供を目指していきます。具体的には、大開口ドアに電動スロープを組み合わせ、ストレスなく車に乗り降りしやすくなるエントリーシステムや、車室内見守り・車室外周辺確認といった車内外のセンシングによる移動の安全支援などを開発・市場投入し、「“移動”に感動を、未来に笑顔を。」の経営理念を具現化していきます。

 当社グループは、フルラインアップの電動ユニットの拡充を加速しており、その中でもBEV向けのeAxleを最重要製品と位置づけ、第1世代のeAxleを更に高効率化・小型化・高出力化した第2世代・第3世代の開発をしていきます。また、モビリティに対するヒトの価値観や社会の変化に合わせて、当社グループのセンシングやAIソフト技術を活用し、安心・快適・利便をより充実させる車内外システムの開発も強化していきます。カーボンニュートラルでは、厳格化されるエネルギー・資源循環の規制に追従し、2035年に生産カーボンニュートラルを、2040年にはゼロエミ工場達成に向けて取り組んでいきます。

 当社グループの研究開発体制は、日本セグメントに所在する当社及び主要子会社が研究開発活動の中心を担っており、海外研究開発拠点及び先端研究機関と連携し、グローバルな研究開発活動を展開しています。

 なお、当連結会計年度の研究開発費は総額2,186億円です。