第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末(2025年3月31日)現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)グループビジョン「At your side 2030」

ブラザーグループは、1908年にミシンの修理業からはじまり、115年以上にわたって、時代や環境の変化に合わせ自らを変革し、お客様のニーズにあった価値を提供し続けてきました。昨今、デジタル化や自動化などの加速によるお客様の購買行動の変化、新型コロナウイルス感染症による社会変容、地政学リスクの顕在化など、ブラザーグループを取り巻く事業環境も大きく、かつ急速に変化しています。

こうした変化の激しい環境に対応しながら、持続可能な成長を実現していくために、2030年に向けたブラザーグループビジョン「At your side 2030」を新たに策定し、2022年度よりスタートしました。

 

「At your side 2030」は、2030年に向けてお客様にどのような価値を提供していくのか考え、ブラザーの存在意義を再定義した「あり続けたい姿」を起点に、どのような方法で価値を提供するのか(「価値の提供方法」)、何を実現するのか(「注力領域」)を示しました。

 

 

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1)あり続けたい姿

ブラザーが何のために存在し、どのようにあり続けたいかについては、「世界中の“あなた”の生産性と創造性をすぐそばで支え、社会の発展と地球の未来に貢献する」と定義しました。ブラザーは、世界中に存在する、お客様をはじめとした、価値創出を行い進歩し続けたいと願うすべての人々を“あなた”と位置付け、その人々の願いを叶えるための存在であり続けたいと考えます。そして、社会の持続的な発展の実現に貢献しながら、地球環境への責任を果たしていきます。

 

2)価値の提供方法

価値の提供方法については、「多様な独自技術とグローバルネットワークを強みに、お客様の成功へのボトルネックを見つけ解消する」と定義しました。ブラザーグループは創業以来、さまざまな事業を生み出し、グローバルに展開してきました。40以上の国と地域に広がる生産・販売・サービス・開発拠点のネットワークをベースとするグローバル複合事業企業ならではの強みを生かし、お客様や取引先など外部からの学びを得ながら、国や地域、事業を越えて優れた価値を迅速に提供します。また、お客様のバリューチェーンに向き合い、ボトルネックとなるものを見つけ、解消します。さらにモノづくりにとどまらないデジタル技術の活用などの“コト”も含めて、お客様への価値提供の幅を広げます。

 

3)注力領域

上記の価値を発揮することにより、産業用領域とプリンティング領域を2030年までの注力領域と位置づけ、特に強化していきます。産業用領域での飛躍と、プリンティング領域の変容により事業ポートフォリオを変革し、複合事業体として成長し続けます。産業用領域は、ブラザーの強みが活きるビジネス領域において、生産性の向上に加え、働く人々や地球環境の課題を解決することで、ベストパートナーとしての信頼を確かなものにします。プリンティング領域は、オフィスワークやプリンティングを取り巻く環境が大きく変わる中にあっても、働く人々の期待に応え続けるとともに、これまでの事業の枠を超えて新たな柱を築きます。

 

 

 

 

(2)中長期的な経営戦略

◆中期戦略「CS B2027」(2025~2027年度)

ブラザーグループビジョン「At your side 2030」の実現を見据え、2025年に中期戦略「CS B2027」を策定しました。CS B2027では、「挑む。未来へ、大胆に」をテーマに、長期的な企業価値向上に向け、事業ポートフォリオの変革を加速し、利益創出力を高めていきます。

 

◆CS B2027の概要

CS B2027では、事業の役割を明確化し、事業ごとに設定された重点指標に基づいた戦略を遂行することで、売上収益1兆円、及び最優先指標である営業利益額1,000億円を目指します。ROE目標は10%、産業用領域の売上比率は40%を掲げます。また、資本コストと株価を意識した経営を推進し、TSR*1は対TOPIXで100%以上を目指します。投資に関しては、3年間でM&A・アライアンスを中心とした2,000億円規模の成長投資を確実に実行し、産業用領域の成長を推進します。そして変革を支える経営基盤をより強固なものとするための投資も継続して進めます。株主還元については、3年間で600億円の自己株式取得を含む1,400億円の還元を予定するなど、大幅に強化していきます。

 

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これらの目標を確実に遂行するために、以下の4つの重点テーマを掲げています。

 

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◆事業別戦略

ブラザーグループの事業を4つに分類し、それぞれの事業の役割と重点指標を明確化します。投資・リソースは役割に応じて配分し、各事業は重点指標に基づいた戦略を遂行することでCS B2027の目標達成を目指します。

 

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1)成長事業

ブラザーグループとして大きく伸ばしていく事業を成長事業として位置づけます。具体的には、産業機器事業、ドミノ事業と産業用プリンター事業を含むインダストリアル・プリンティング事業、新規事業、そしてプリンティング&ソリューションズ事業(以下、P&S事業)内の業務用ラベリングです。将来の利益成長に向け、この3年間での重点指標は売上収益とします。これらの事業に対しては、M&Aを含めた成長投資を積極的に検討して非連続成長を実現し、将来の柱にしていきます。また人的リソースも優先的に配分します。

 

2)コア事業

業務用ラベリングを除くP&S事業については、売上・利益額を最大化し、全社での収益基盤を支えるコア事業に位置づけます。市場におけるポジショニングのさらなる強化とビジネスモデル変容のための投資を行っていきます。P&S事業に関してはこの3年間での重点指標は営業利益額とします。

 

3)収益性追求事業

パーソナル&ホーム事業、ニッセイ事業は、売上と利益のバランスを取りながら収益力を高め、全社に利益貢献することをミッションとする収益性追求事業に位置づけ、収益力を強化します。これらの事業については、営業利益率を重点指標とします。

 

4)収益性改革事業

工業用ミシン事業、ネットワーク&コンテンツ事業は、収益性改革事業に位置付け、着実に利益貢献ができるよう収益構造を徹底的に見直し、安定した利益を創出できるように改革を進めます。これらの事業については、営業利益率を重点指標とし、利益率の向上を図ります。

 

◆財務戦略

資本コストと株価を意識した経営を推進し、継続的に株主価値を向上させ、企業価値の最大化に取り組んでいきます。事業成長から創出される営業キャッシュ・フローと有利子負債を活用し、成長投資を実行するとともに、株主還元を大幅に強化していきます。

 

・成長投資

M&A・アライアンスを中心とした2,000億円規模の成長投資を実行していきます。M&A・アライアンスについては、マシナリー・ファクトリーオートメーション、インダストリアル・プリンティング、業務用ラベリング、そして新規事業をターゲット領域と定め、積極的に機会を探索します。その中で、産業用領域におけるソリューション提供力、モノ+コト売りを加速するための組織能力、新規事業を新しい柱へと成長させるための基盤を重点投資対象とします。

 

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・株主還元

配当については、1株当たり年間100円の配当を下限とし、配当性向40%を目安として還元します。これまでの増配・維持の流れを引き継ぎ、安定的かつ継続的な株主還元を実施する基本方針の下、さらに強化していく予定です。また、CS B2027の期間中に合計600億円の自己株式の取得を予定します。加えて、業績等の状況に応じて追加還元も検討していきます。

 

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◆未財務目標

財務目標との関わりが深い3つのマテリアリティを未財務目標として定め、活動を推進していきます。

 

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CS B2027のテーマは、「挑む。未来へ、大胆に」です。ここには、現状に安住せず、大胆な行動で未来を切り開く意思を込めています。ブラザーグループは、CS B2027で、事業ポートフォリオ変革を加速させ、これを確実に実行することで利益創出力を高め、長期的な企業価値の向上を図ります。

 

 

*1:TSR(Total Shareholder Return)

株主総利回り。投資家に対する総合的なリターン(値上がり益+配当金)を測定する指標

*2:LTV(Life Time Value)

顧客生涯価値。製品・サービス利用期間全体におけるお客様にとっての価値及び企業にもたらされる収益

*3:売上高原単位

売上収益に対するCO₂排出量を示す指標

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティ

 

 ①ガバナンス

 「サステナビリティ基本方針」※に基づく各種活動を推進することを目的として、2022年4月にサステナビリティ委員会を設置しました。サステナビリティ委員会は代表取締役社長を委員長とし、常務以上の執行役員、事業統括執行役員、その他必要な機能として委員長が指名する者により構成されています(以下、当委員会の委員長を「サステナビリティ委員長」といいます)。

 サステナビリティ委員会の傘下に特定分野ごとの各種サステナビリティ活動を推進することを目的として、分科会を設置しています。各分科会には、分科会活動を統括する者として、分科会オーナーを置いています。分科会オーナーには、サステナビリティ委員長が指名する執行役員または関連性の高い機能を担う部門の部門長が就くものとしています。各分科会は、該当する分科会オーナーの招集により、適宜開催されます。

 分科会を新設・改廃する場合には、サステナビリティ委員長の判断でサステナビリティ委員会を開催のうえ、その目的や役割、必要に応じ分科会オーナーや構成メンバー等の必要事項を明確にした上で、委員長の決裁により行うものとしています。

 サステナビリティ委員会の開催には定例会と臨時会があります。臨時会は必要に応じてサステナビリティ委員長が招集するものとしています。毎年度の年間計画立案時には、ブラザーグループとして取り組むべき重点課題・施策をサステナビリティ委員会で審議したうえで、各組織・部門の年間計画へ展開すること、その進捗についてはサステナビリティ委員会にて報告するとともに、目標変更が必要な場合にはサステナビリティ委員会での審議・承認を受けることとしています。

 以下の重要事項を策定、改訂する場合には、サステナビリティ委員会または分科会で検討のうえ、社長、及び役付執行役員で構成される戦略会議で審議し、取締役会で決議を行います。

・サステナビリティ基本方針の策定、改訂

・マテリアリティの特定、変更

・サステナビリティ目標の策定、変更

・その他、サステナビリティに関する重要な事項

 サステナビリティ委員長またはその指名を受けた者は、定期的に取締役会において、サステナビリティ委員会の活動計画及び活動実績について報告を行っています。

 また、統合報告書の開示に関しては、投資家を中心としたステークホルダーへの説明責任を適切に果たすため、企画と最終的な開示の二段階において、サステナビリティ委員会が内容について報告を受けます。加えて、企画・制作・開示のすべての段階にわたって、開示プロセスが適切であるかどうかを内部監査部門がモニタリングをします。

 

     サステナビリティ推進体制

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※「サステナビリティ基本方針」

ミシンの修理業から始まったブラザーは、働きたい人に仕事をつくるために輸入産業を輸出産業にするという志のもと、ミシンの生産を始めました。壊れにくい国産ミシンを作ろうという思いは、お客様を第一に考える“At your side.”の精神として、すべての活動の礎である「ブラザーグループ グローバル憲章」に受け継がれ、お客様への価値提供を増大させ、そこから生まれる成果をステークホルダーや地球環境への貢献に活かすことで企業価値を高めてきました。

ブラザーグループはこれからも、お客様の課題、ひいては社会の課題に向き合い、取り組むべきマテリアリティ(重要社会課題)を定め、解決することで、「世界中の“あなた”の生産性と創造性をすぐそばで支え、社会の発展と地球の未来に貢献する」というブラザーグループビジョン「At your side 2030」の実現、及び国連が定めた「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成を目指してまいります。

 

 ②戦略

 ブラザーグループは、“At your side.”の精神のもと、持続的なお客様への価値提供と、事業を通じた社会課題の解決を図るべく、サステナビリティを重視した経営を実践しています。

 ブラザーグループビジョン「At your side 2030」においては、当社グループのあり続けたい姿を「世界中の“あなた”の生産性と創造性をすぐそばで支え、社会の発展と地球の未来に貢献する」と定めています。この“社会の発展”と“地球の未来”への貢献に向けて、重要な社会課題として2022年に5つのマテリアリティを特定しました。その後、環境の変化などを踏まえてマテリアリティを見直し、2025年に6つのマテリアリティに再定義しています。

 ブラザーグループは今後も、これらのマテリアリティを解決することで、サステナビリティを重視した経営の更なる高度化を目指します。

 

 ③リスク管理

 ブラザーグループは、グループの経営に大きな影響を与える恐れのあるリスクを低減することを目的として、代表取締役社長を委員長とするリスク管理委員会を設置し、「ブラザーグループリスク管理規程」に基づく総合的なリスク管理体制を構築しています。当社グループの各組織及び各子会社はリスクとその発生可能性を把握し、影響の軽減または回避策の実施などのリスク管理に努め、その実施状況については定期的に取締役会に報告を行う体制をとっています。コンプライアンス・製品安全・輸出管理・情報管理・環境法規・安全衛生・防災・サプライチェーンに関するリスクを常に認識し対応することに加え、危機発生時の事業継続の強化や永続可能な価値創造の仕組みの見直しなど、従来以上に中長期的かつ戦略的な観点でリスクを認識し対応していくことを目指します。(詳細な内容に関しては「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要 5)内部統制システムの整備の状況 3.リスク管理体制」を、具体的なリスクの内容、対応策に関しては、「3 事業等のリスク」をご参照下さい。)

 また、ブラザーグループビジョン「At your side 2030」達成に向けたサステナビリティの推進やそのリスク管理を目的に、リスク管理委員会と同じく代表取締役社長を委員長とするサステナビリティ委員会を設立し、マテリアリティの解決に必要な問題を特定した上で適切な対策を決定、実行し、その進捗状況を定期的にモニタリングしています。

 今後は、サステナビリティ委員会及び各分科会において、多様な人々の活躍、責任あるバリューチェーンの追求、CO₂排出削減、持続可能な資源活用、価値創造を支えるガバナンスなどを始めとしたサステナビリティに関するリスク及び機会の識別、評価、適切な対応指示についての議論をさらに深め、対応を強化します。

 

 ④指標及び目標

 ブラザーグループは、ブラザーグループビジョン「At your side 2030」達成のために特定したマテリアリティ解決に向けて、「CS B2024」期間中におけるサステナビリティ目標を設定し、重要な経営課題として活動を推進してきました。2024年度の取り組みの実績は以下の通りです。

 

 

マテリアリティ

2024年度目標

2024年度実績

社会

の発展

人々の

価値創出の
支援

産業機器事業におけるお客様の生産性向上、CO₂排出削減に貢献するための製品性能の優位性確保

・2022年度以降、高い環境性能と生産性を誇る、SPEEDIOシリーズの新製品計15機種を発売

P&S事業におけるお客様のLTV*1向上に向けたお客様と直接「つながる」ための基盤の構築

・各地域におけるサブスクリプションサービスをはじめとするお客様と双方向でつながるための取り組みを引き続き強化

多様な人々が

活躍できる
社会の実現

グローバルベースでの従業員エンゲージメントの可視化と調査スコアの向上

・従業員エンゲージメント調査の対象をグループ全体に拡大し、拠点ごとに自律的な取り組みを実施中

海外拠点責任者の現地登用を促進するための人財育成及びガバナンスの強化

・海外主要拠点における幹部人財の育成推進、サクセッションプランを継続実施

管理職の健全なジェンダーバランスに向けたパイプラインの強化及び多様な働き方を実現する環境整備*2

・女性管理職候補育成プログラムの継続実施*2

・障がい者の活躍の場を拡大するための理解促進運動を実施*2

責任ある

バリュー

チェーンの

追求

サプライヤーに対する人権リスク評価の拡大

・サプライチェーン上流に対する人権デュ一デリジェンスの実効性向上のために25社に対して監査を実施、重大なリスクがないことを確認

・サプライチェーン上流以外に対する人権デューデリジェンスを48社に対して実施、重大なリスクがないことを確認

・1次サプライヤーに対し、人権リスクをテーマとした教育活動を実施

・責任ある鉱物調達のための活動を継続実施

RBA*3ゴールド認証を取得したグループ製造拠点数 3拠点

・2023年度に中国深圳工場*4、及びフィリピン工場*5においてRBAプラチナ認証を取得

・2024年度に星崎工場、ベトナム工場*6においてRBAプラチナ認証を取得

地球

の未来

CO₂排出削減

[スコープ1,2]*7 2015年度比47%削減
(2022~2024年度の3年間で9%を削減)
参考)2030年度目標:2015年度比65%削減

[スコープ3]*7 自助努力での15万t削減対策の実施
参考)2030年度目標:2015年度比30%削減

(2025年3月3日付中期目標改定前)

・[スコープ1・2]

電力使用の効率化や太陽光発電の導入などの省エネ・創エネ施策を実施し、2024年度目標(CO₂排出量の2015年度比47%削減)を達成

・[スコープ3]

製品の小型・軽量化、消費電力の削減などの施策を実施し、2024年度目標(15万tのCO₂排出削減施策の実施)を達成

資源循環

製品に投入する新規資源率 81%以下

参考)2030年度目標:65%以下

(2025年3月3日付中期目標改定前)

・段ボール及び、鉄鋳物のサプライヤーでの再生材使用率が向上し、2024年度(製品に投入する新規資源率81%以下)を達成

 

 

 なおマテリアリティに関しては、環境の変化などを踏まえて、2025年に6つのマテリアリティに再定義しています。ブラザーグループビジョン「At your side 2030」達成のために特定した6つのマテリアリティ解決に向けて、「CS B2027」期間中におけるサステナビリティ目標を設定し、重要な経営課題として活動を推進しています。

 

2027年度目標

・人々の価値創出の支援

・マシナリー事業:マシニングセンタSPEEDIOシリーズの顧客基盤の拡大

・インダストリアル・プリンティング事業:ライフサイクル価値提供型ビジネスの拡大

・プリンティング&ソリューションズ事業:お客様のLTV*1向上に向けたつながるビジネスの拡大

・多様な人々の活躍

・グローバルベースでの従業員エンゲージメントの向上

・各拠点、地域の状況や課題に即した多様な人財の活躍促進

・重点分野における人財ポートフォリオの強化

・責任あるバリューチェーンの追求

・バリューチェーン全体に対する人権リスク評価の実効性向上

・主要工場におけるRBA*3認証の継続的な取得

・CO₂排出削減

・[スコープ1・2]*7 2015年度比56%削減

・[スコープ3]*7 売上高原単位*8の2022年度比25.2%削除

・持続可能な資源活用

・売上高原単位*9の2022年度比16.9%削減

・価値創造を支えるガバナンス

・事業ポートフォリオの変革を後押しするためのガバナンス改革

 

*1:Life Time Valueの略称。顧客生涯価値。製品・サービス利用期間全体におけるお客様にとっての価値及び企業にもたらされる収益

*2:ブラザー工業株式会社において実施

*3:Responsible Business Allianceの略称。製造業のサプライチェーンにおいて、労働環境が安全であること、そして労働者が敬意と尊厳を持って扱われること、さらに製造プロセスや調達が与える環境負荷に対して、企業が責任を持っていることを確実にするための基準を規定したもの

*4:ブラザーテクノロジー(深圳)

*5:ブラザーインタストリーズ(フィリピン)

*6:ブラザーインダストリーズ(ベトナム)

*7:温室効果ガスの排出源の区分け。スコープ1は事業者自らによる温室効果ガスの直接排出、スコープ2は他者から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出、スコープ3はスコープ1、スコープ2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他者の排出)

*8:売上収益に対するCO₂排出量を示す指標

*9:売上収益に対する新規資源使用量を示す指標

 

 なお、上記のうちCO₂排出削減(スコープ1・2)については、その目標達成度を役員に対する株式報酬における業績連動指標として採用しています。(詳細に関しては「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (4)役員の報酬等」をご参照下さい。

 

(2)人的資本

 

◆戦略及び指標と目標

 

 ブラザーグループの持続的な成長のために最も重要な基盤は、人財です。ブラザーグループは、「多様な人々の活躍」をマテリアリティとして定め、2025年度目標として「グローバルベースでの従業員エンゲージメント※の向上」「各拠点・地域の状況や課題に即した多様な人財の活躍促進」「重点分野における人財ポートフォリオの強化」を掲げています。中期戦略「CS B2027」で掲げた「事業ポートフォリオ変革を加速するための人財基盤の強化」に向けて、ブラザーグループは、チャレンジを奨励する組織文化の醸成、リーダー人財への育成投資等を進めるとともに、従業員一人ひとりが働きやすい環境づくりを行うなど、人的資本をさらに強化するための活動を今後も推進していきます。

 ※ 従業員と会社が相互に対等で、互いに価値を提供しあう関係のこと

 

<多様性の確保についての考え方>

 ブラザーグループは、ビジネスや市場環境に大きな変化が起こっている昨今、多様な人財を確保し、多様な働き方やキャリアの形成を支援することがますます重要性を増していると考えております。

 ブラザーグループにおいては、「ブラザーグループ グローバル憲章(以下、グローバル憲章)」の「基本方針」に掲げた「従業員の多様性を重視し、さまざまな能力を発揮できる職場環境とチャレンジングな仕事への機会を提供する。そして、努力と成果に対しては、公正な評価と正当な報酬で応える」という考え方があり、グローバル憲章の行動規範では「常に一人ひとりの人格、多様性を尊重し、信義と尊敬を持って行動する」ことを定めております。

 ブラザーグループはこれまでも、女性、外国人、さまざまな職歴をもつ経験者採用者など、多様な人財の採用、管理職への登用を積極的かつ継続的に行いつつ、個々の能力を最大限に発揮できる職場環境の整備、新入社員から管理職層まで各階層教育などの取り組みを進めております。ただし、事業活動を行う地域における関連法規、文化、社会慣習等が異なり、すべての会社における画一的な目標値は有していないため、代表として連結グループの主要事業を営む提出会社の取り組みを記載しております。

 

<多様性の確保の目標・多様性の確保の状況>

(ⅰ)女性の管理職への登用

 ブラザー工業は、女性活躍推進法に基づき「女性活躍推進に関する行動計画」を策定し、2025年度末に女性の上級職(管理職相当及びそれと同等の処遇を受ける専門職)を60名以上にすることを目指しており、2024年度末時点では60名となっております。育成の視点では、性別に関わらず従業員の成長を支援しておりますが、ライフイベントとキャリアの意識醸成や管理職というポジションを身近にする環境整備のため、社内の女性管理職のキャリアを紹介する座談会や有識者を招いた講演会、社外女性従業員とのキャリア研修、管理職候補者に対する外部カウンセリング機会の提供等、学ぶ機会を提供しております。2022年度より計5期実施している「女性リーダー育成研修」にはこれまでに101人が参加しました。他にも、フレックスタイム制度のコアタイム廃止や、在宅勤務制度等、安心して働ける環境を整備しております。

 

(ⅱ)外国人の管理職への登用

 ブラザー工業は、事業の中核を担う人財確保のために、国籍に関係なく採用・登用を行っております。2025年3月末時点の外国籍従業員比率は1.4%、管理職比率は0.5%となっております。また、当社の執行役員に占める外国籍従業員比率は2024年3月末時点で9.5%、2025年3月末時点で9.1%です。各国・地域のグループ会社の幹部社員は、国籍を問わず適任者を登用し、地域に密着した経営を目指すこととし、統括拠点であるアメリカ及び中国の販売拠点の社長を含め、ブラザーグループの各拠点では現地スタッフを積極的に経営幹部に登用しております。海外拠点責任者の現地従業員率は、2019年度の62%から、2024年度には67%に上昇しております。このような状況から、現在のブラザーグループにおける外国人の人財登用は十分な水準にあると認識しており、当社における外国人の管理職への登用に関する目標設定は行っておりません。

 

(ⅲ)経験者採用者の管理職への登用

 ブラザー工業において、2024年度の経験者採用者比率は40%、管理職の経験者採用者比率は28%となっております。経験者採用者数は労働市場環境に左右される面もあるため、管理職への登用に関する目標設定は行っておりませんが、今後積極的に事業ポートフォリオの変革を実現していくために、外部からの専門人財の登用を積極的に行っていきたいと考えております。

<多様性の確保に向けた人財育成方針、社内環境整備方針とその状況>

 ブラザー工業は、多様性の確保に向けた人財育成方針として、従業員の多様性と個性を尊重し、優れた価値を提供できるグローバルな人財を育てることを掲げております。そして、従業員が挑戦と成長を続けることが当社の成長につながるという考えのもと、キャリア・オーナーシップの実現を支援する施策として、階層別研修、テーマ別研修、キャリア開発支援などを提供することで、多様なキャリアの実現、市場価値を意識した専門性向上、挑戦・成長機会の創出に努めております。また、当社では、社内環境整備方針として、多様な人財が活躍できる基盤づくりを掲げ、2024年度は多様性の理解促進を目的に障がい者雇用及びLGBTQに関する社内講演会を実施し延べ800名以上が参加しています。このように、当社は多様な人財が活躍できるための基盤づくりとして、社員が高いモチベーションを持ち、多様なキャリアパスや一人ひとりの社員がより柔軟な働き方を実現できる取り組みを進めることを、社内環境整備方針としております。

 

 <従業員エンゲージメントの向上>

 ブラザーグループは、ビジョン達成に向けた変革の実現と従業員のチャレンジ行動促進を目的に、2027年度サステナビリティ目標として「グローバルベースでの従業員エンゲージメントの向上」を掲げており、従業員と会社が共に成長し貢献し合う関係を目指しています。ブラザー工業では従業員意識調査を2008年度から毎年行っていますが、2022年度には「従業員エンゲージメント調査」を新たに実施しました。調査の結果、組織からの「成長支援」を感じ、「組織への共感」「貢献感」が高い従業員が約半数を占めており、全体としてエンゲージメントが高い状態であるといえることがわかりました。また、2023年度はグローバルで90%以上の拠点、2024年度にはグローバルすべての拠点において従業員エンゲージメント調査を実施し、従業員エンゲージメントの状況を把握しました。今後も「ブラザーグループ グローバル憲章」の共有活動などと並行して、一人ひとりの目標設定の質を高める取り組みや、自律的なキャリア開発を促進する取り組みを実施するほか、グローバル各拠点における従業員エンゲージメント向上に向けて、情報共有の場づくりを推進するなど、ブラザーグループ全体でのエンゲージメント向上を図る予定です。

 

<健康経営の推進>

 ブラザーグループは、従業員が長期にわたり才能とスキルを発揮するためには、一人ひとりの健康管理が重要であると考えています。ブラザー工業は2016年9月に、ブラザーグループ健康経営理念を制定、従業員が生き生きとさまざまな能力を発揮するために、喫煙率10%未満やがん検診二次検査の受診率90%以上など2025年までに達成すべき長期目標「健康ブラザー2025」を定めました。そして、ブラザー工業の代表取締役社長を最高健康責任者とした健康経営推進体制を構築し、会社・労働組合・健康保険組合が三位一体となり、運動習慣者比率をさらに向上させる取り組みなどを進めています。また、健康経営における課題とその解決に向けた取り組みなど一連の流れを可視化できる健康経営戦略マップを作成するなど、従業員の健康保持・増進に戦略的に取り組んでいます。その結果、ブラザー工業は2024年、9年連続で健康経営優良法人(ホワイト500)に選定されました。また、国内グループ会社14社も共に健康経営優良法人に選定されております。

 

 

(3)環境への取り組み

 

◆ブラザーグループ 環境ビジョン2050

 

 エネルギーや資源を使用し、紙や糸、布などの生物由来の物を使用する製品を提供する企業として、ブラザーグループはCO₂排出削減、資源循環、生物多様性保全を3本柱とする「ブラザーグループ 環境ビジョン2050」を2018年に策定しています。この環境ビジョンは、気候変動や資源枯渇、環境汚染、生態系破壊といった社会的な重要課題をブラザーグループの事業上のリスクとして捉え、長期的かつ継続的にその解決に取り組むことを明確にしたものです。

 今回、国際社会における気候変動対応の加速が急務となっている状況を踏まえ、スコープ3のCO₂排出削減における2030年度中期目標を2022年度比で28.5%削減と、従来より厳しい目標に改定しました。

 資源循環については、プリンティング・アンド・ソリューションズ事業(以下、P&S事業)、マシナリー事業、パーソナル・アンド・ホーム事業(以下、P&H事業)を対象に再生材の活用などの取り組みを進め、マシナリー事業とP&H事業の合算において新規資源率65%以下となりました。今後は、スコープ3のCO₂排出削減や、生物多様性保全などの環境負荷軽減につながる新規資源の絶対量の削減を目指し、グループ全体の新規資源量の80%以上を占めるP&S事業の、包装材を含めた製品に投入する新規資源量を2022年度比で25%削減する目標に改定しました。

 

目標・ありたい姿

2030年度中期目標

CO₂排出

削減

グループ全体で、あらゆる事業活動のカーボンニュートラルとバリューチェーン全体のCO₂排出最小化を目指し、脱炭素社会の形成に貢献している

 

(主な取り組み)

太陽光発電の導入、空調設備の更新、生産設備の更新・省エネ化など

・[スコープ1・2]

2015年度比で65%削減する

・[スコープ3]C1・11・12

2022年度比で28.5%削減する

 

※「2030年度中期目標」は、温室効果ガスの排出削減目標を達成するために設立されたイニシアチブ「Science Based Targets initiative(SBTi)」より、科学的根拠に基づいた目標(1.5℃目標)として認定されています。(2025年5月12日現在)

 

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資源

循環

2050年に向けて、グループ全体で資源循環の最大化により、資源の持続可能な利用と廃棄物による環境負荷の最小化を目指す

 

(主な取り組み)

製品・部品のリユース、リサイクル材使用など

・循環経済型ビジネスの拡大と資源の再生利用により、2030年度までに製品※1に投入する新規資源量を2022年度比で25%※2削減する

 

・グループ生産拠点において継続的に水資源の効率的な利用と適正処理による排水に努めている

 

※1包装材を含む

※2対象は、プリンティング・アンド・ソリューションズ事業

生物

多様性

保全

グループ全体で事業活動が生態系へ与える環境負荷を最小化し、環境負荷を上回る修復・保全活動をしている

 

(主な取り組み)

生物多様性保全活動、CO₂排出削減、資源循環の推進

・事業活動が生態系に与える環境負荷及び、その修復・保全活動の影響を評価し、生態系への環境負荷の回避、低減に取り組んでいる

 

・グループ全体の生産・販売拠点において、各地域の状況に応じた自主的な生態系の修復・保全活動をしている

 

◆2023年度までのCO₂排出量の実績(2025年3月3日付中期目標改定前)

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※2023年度は、販売会社の在庫適正化により製品本体の販売台数が一時的に減少した影響でスコープ3のカテゴリー1・11・12において大幅な減少となりました。

 

◆TCFDへの対応

 

 ブラザーグループは社会の発展と地球の未来に貢献するため、解決すべき重要な社会課題の一つとしてCO₂排出削減をマテリアリティに特定し、サステナビリティ目標としてCO₂排出削減目標を設定しています。2020年2月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言への賛同を表明しました。

 このTCFD提言に基づき2021年度に、プリンティング・アンド・ソリューションズ事業、マシナリー事業、パーソナル・アンド・ホーム事業及び新規事業について、気候変動が事業に及ぼすリスクと機会を分析し、関連する情報を開示しました。2024年度には分析対象とする事業範囲を拡大してブラザーグループのすべての事業*について分析し、その分析結果を2025年度に開示予定です。今後も情報開示の充足に努めるとともに、脱炭素社会の形成に貢献するため、より一層の気候変動対策を推進していきます。

 

*プリンティング・アンド・ソリューションズ事業、マシナリー事業、ドミノ事業、ニッセイ事業、パーソナル・アンド・ホーム事業、ネットワーク・アンド・コンテンツ事業及び新規事業

 

①ガバナンス

 ブラザーグループは「(1)サステナビリティ ①ガバナンス」及び「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要」で記載の取締役会、戦略会議、サステナビリティ委員会を設置しています。気候変動を含む環境分野のサステナビリティ活動の推進においては、気候変動対応戦略部長を分科会オーナーとする気候変動対応分科会を設置し、サステナビリティ目標の進捗管理及び活動推進を行っています。

 気候変動を含む環境関連の重要事項を策定、改訂する場合には、サステナビリティ委員会または気候変動対応分科会で検討のうえ、戦略会議で審議、取締役会で決議を行います。またサステナビリティ委員長またはその指名する者は、定期的にサステナビリティ委員会及び取締役会において、サステナビリティ委員会の活動計画及び活動実績について報告を行っています。

 

②戦略(シナリオ分析)

 ブラザーグループは、「ブラザーグループ 環境ビジョン2050」でCO₂排出削減を重要項目の一つに掲げています。世界的に深刻化する気候変動を社会的な重要課題と認識するとともに、ブラザーグループの事業上のリスクと機会として捉え、長期的かつ継続的にその解決に取り組んでいます。

 2024年度はTCFD提言に基づき、ブラザーグループすべての事業について2024年から将来までの間に事業に影響を及ぼす可能性がある気候関連のリスクと機会の重要性を評価しました。それぞれのリスクと機会に対して、『世界で温暖化対策が進み、脱炭素社会の実現に近づくという1.5℃シナリオ』と『世界で現状を上回る温暖化対策がとられず、気温上昇がさらに進むという4.0℃シナリオ』に基づき、6つの重要なリスクと機会を特定し、自社の事業や財務に及ぼす影響を評価しました。

 1.5℃シナリオ及び4.0℃シナリオではIEA(International Energy Agency)のWEO2023 APSシナリオ/NZEシナリオ、IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change)のSSP5-8.5シナリオ、Aqueduct(水リスク評価ツール)などを参照しました。

 今回の分析の結果、リスクと機会の両面において、ブラザーグループにとってカーボンニュートラルの推進が重要である事が再確認されました。今後はさらなるCO₂排出削減活動などの取り組みを強化していきます。

 

移行リスク(政策・法規制リスク、市場の変化)

外部環境の変化

財務

影響

想定時期

ブラザーグループへの影響

対応策

炭素税導入または炭素税率向上

長期

調達:原材料コストの高騰

製造:エネルギーコストの増加

販売:運送燃料コストの増加

緩和

・事業所におけるCO₂排出削減*1

 各拠点での省エネ施策の推進、再生可能エネルギーの活用

 

・製品におけるCO₂排出削減*2

 製品の小型化・軽量化、省エネ性向上

 部品点数の削減、梱包材の削減

 取引先との協働による原材料に関わるCO₂排出削減

省エネ・低炭素規制の強化

中期

長期

製造:設備投資、再エネ電力切替えコスト、サステナビリティ関連規制/開示要求対応コストの増加

緩和

・将来規制動向の調査

 欧州における環境規制動向の情報収集と製品開発や設備計画への反映

環境・社会に配慮した製品需要の高まり

中期

長期

販売:お客様の環境配慮製品志向、エシカル消費志向に対応できない場合の売上減少リスク

緩和

・廃棄物削減と新規資源削減*3

 製品のリサイクル材の使用や回収製品のリユース

 梱包材へのリサイクル可能な緩衝材の使用

 製品の耐久性の向上・長寿命化

 

 

物理リスク(急性)

外部環境の変化

財務

影響

想定時期

ブラザーグループへの影響

対応策

異常気象の激甚化と頻度の上昇

短期

長期

洪水の影響による生産停止

適応

・一時的な生産停止に耐えうる部品在庫の確保

 

・複数拠点生産によるリスク対応の実施(一部モデル)

 

・部品調達先の複線化

 

機会(製品とサービス)

外部環境の変化

財務影響

想定時期

ブラザーグループへの影響

対応策

顧客のCO₂排出量削減ニーズの増加

長期

販売:省エネ・創エネ・循環型関連の製品・サービスの需要・売上増加、電動化、燃料転換需要の増加

・EV向け及び非自動車市場向け小型工作機械の開発*4

 高い環境性能と生産性を誇るSPEEDIOシリーズの新製品開発

 

・スポットクーラーPureDriveや燃料電池の販売拡大

 

・将来環境技術情報収集のための投資

 未来創生3号ファンド、WiL Ventures Ⅲに出資

環境・社会に配慮した製品需要の高まり

長期

販売:脱炭素貢献(環境ラベル認定)製品・サービスの売上増加、環境対応可能な商品需要の増加

・ブルーエンジェルやEPEAT、SuMPO EPDなどの環境ラベル取得製品の拡大

 

・耐久性の高い製品や継続的なサービスの提供

 

・循環経済型ビジネスの拡大*5

 

 ※財務影響度 小:10億円以内/中:10億円~100億円/大:100億円超

  想定時期  短期:会計年度をベースとする1~2年/中期:中期経営戦略を含む3~4年/長期:長期グループビジョンを含む5年以上

 

*1

■事業所におけるCO₂排出削減の取り組み

 事業所内の省エネルギー活動(高効率機器の導入など)の推進、再生可能エネルギーの活用に取り組んでいます。これらのCO₂排出削減の取り組みに加え、次の製造拠点については残りの排出量をカーボンクレジットで相殺したことにより、ブラザーグループの海外の製造拠点(BROTHER INDUSTRIES (U.K.) LTD.とBROTHER INDUSTRIES (SLOVAKIA) s.r.o)がPAS 2060:2014※1の検証を完了、また国内の製造拠点の刈谷工場がISO 14068-1:2023※2の検証を完了し、カーボンニュートラルを実現しました。

 ※1Publicly Available Specification 2060:2014 カーボンニュートラルを実現していることを証明する国際的な規格

 ※2ISO 14068-1:2023:組織や製品において、定量化、削減、オフセットを通じてカーボンニュートラルを達成・実証するための原則、要求事項、ガイダンスを提供した国際規格

 

*2

■製品におけるCO₂排出削減の取り組み

 製品のライフサイクルのステージごとに、工夫の積み重ねや技術革新を組み合わせることにより、CO₂排出の削減に取り組んでいます。

<レーザープリンター>

 2023年に発売開始されたカラーレーザープリンター製品において、従来製品よりも小型軽量化を実現し、待機時(スリープモード時)の消費電力も大幅に低減することでCO2排出量削減に貢献しました。また、ベトナムにおける当社の生産拠点1つ(BROTHER INDUSTRIES (VIETNAM) LTD.)で生産されているレーザープリンターにおいて、部品サプライヤーと協働し、部品生産時に使用される電力に再生可能エネルギーを導入することによって、部品生産時のCO2排出量を削減する活動を開始しました。

 

<ガーメントプリンターGTXproシリーズ>

 消耗品インクを従来のカートリッジ交換方式からパウチ交換方式やボトル供給方式に切り替えることで、消耗品のプラスチックや梱包材の削減を実現し、CO₂排出削減に貢献しています。

 

*3 *5

■環境・社会に配慮した製品需要の高まり

 ブラザーグループは製品における廃棄物の削減、新規資源の投入抑制に加え、循環経済型ビジネスの実現・拡大に向けて「プリンターの消耗品であるトナー・インクカートリッジの回収・再生の拡大」、「製品のリユース促進」、「耐久性の高い製品や持続的なサービスの提供」の三つをリスクと機会の両面における主要な取り組みとして位置づけ、資源の有効利用、資源循環のさらなる推進を通じて、CO排出削減に貢献しています。

 

<トナーカートリッジの再生>

 回収された使用済みトナーカートリッジは、ブラザーグループの再生拠点で新製品と同一品質を持つトナーカートリッジへと再生され、再び、お客様に届けられます。このように「クローズドループ」で再生を行うことによって、廃棄物の削減による天然資源の有効利用につながり、CO排出削減に貢献しています。

 

※ 再生   :使用済みのカートリッジに清掃・検査などの工程を加え、新品と同一品質のカートリッジを作ることを指す

  リサイクル:使用済みカートリッジを破砕し素材の原料やエネルギー源を再利用することを指す

 

*4

■EV向け及び非自動車市場向け小型工作機械の開発の取り組み

 需要が増加しているEV向け部品で求められる大型のアルミ部品(インバーターケース、バッテリーケース、ポンプハウジング、大型バルブなど)や、さまざまな加工ニーズに応えることができる工作機械“SPEEDIOシリーズを開発することで、EV部品加工ソリューションを提供し、自動車産業が内燃機関からEVにシフトする際の機会に対応しています。

 “SPEEDIOシリーズでは、工具交換などの非切削時の時間短縮によるサイクルタイムの削減、高効率主軸モータや電源回生システムによる動作時の消費電力削減、自動消灯機能による非動作時の消費電力削減などにより高い生産性と省エネ性を実現し、加工時のCO排出削減に貢献しています。

 

③リスク管理

 ブラザーグループでは、2022年度に気候変動対応を含むサステナビリティの推進とリスク管理を目的に設置した代表取締役社長を委員長とするサステナビリティ委員会、並びにサステナビリティ委員会の下部組織として設けられた気候変動対応分科会において、気候変動リスクを識別、評価し、重要な気候変動リスクを特定した上で適切な対策を決定、実行し、進捗状況を定期的にモニタリングしています。

 

④指標と目標

 「ブラザーグループ 環境ビジョン2050」のCO₂排出削減では、2050年度までにあらゆる事業活動のカーボンニュートラル*1と、バリューチェーン全体のCO₂排出最小化を目指すことを掲げています。また、そのマイルストーンとなる「2030年度 中期目標」を設定し、2030年度までにブラザーグループから排出するCO₂(スコープ1・2)を2015年度比で65%削減、バリューチェーンの中でも特に排出量の多い製品の調達・使用・廃棄の各ステージで排出されるCO₂(スコープ3のC1・11・12)を2022年度比で28.5%削減することを目標としています。

 このCO₂排出削減に関する「2030年度中期目標」は、国際的なイニシアチブ「Science Based Targets initiative(SBTi)から、パリ協定の「1.5℃目標」達成のための科学的根拠に基づく削減目標として認定されています。(2025年5月12日)

 

 さらに「2030年度 中期目標」達成に向けたマイルストーンとして「ブラザーグループ中期環境行動計画2027」において2027年を目標年度とする短期目標を設定し、活動を推進しています。

 

*1:ブラザーグループから排出するCO₂を全体としてゼロにする

 

 

2027年度目標

2024年度実績

CO₂

排出削減

[スコープ1・2]

CO₂排出量の2015年度比56%削減
 

[スコープ3]

売上高原単位*2の2022年度比25.2%削減

[スコープ1・2]

電力使用の効率化や太陽光発電の導入などの省エネ・創エネ施策を実施し、2024年度目標(CO₂排出量の2015年度比47%削減)を達成

 

[スコープ3]

製品の小型・軽量化、消費電力の削減などの施策を実施し、2024年度目標(15万tのCO₂排出削減施策の実施)を達成

 

*2:売上収益に対するCO₂排出量を示す指標

 

 また、上記のうちCO₂排出削減(スコープ3)目標達成に寄与する重要施策と位置付けられる“製品に投入する新規資源量の削減”に関しては、マテリアリティとして特定している“持続可能な資源活用”の項目の下で2027年度目標を設定し、削減に取り組んでいきます。(詳細に関しては「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)中長期的な経営戦略」をご参照下さい。)

 なお、上記のうちCO₂排出削減(スコープ1・2)については、その目標達成度を役員に対する株式報酬における業績連動指標として採用しています。(詳細に関しては「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (4)役員の報酬等」をご参照下さい。)

 

 

 

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下の通りであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

項 目

リスクの内容・可能性・時期・影響の程度

対応策

1.通商・地政学リスク

当社グループはグローバルに事業活動を展開しており、中国・アジアを中心とした生産拠点や、世界各地に販売会社を有しております。このため、米中関係やロシア・ウクライナ情勢、中東情勢などの国際情勢の変化は、当社の事業運営に大きな影響を及ぼすリスクとなります。特に、米国の関税政策は既に一部で発動されており、今後さらなる強化や対抗措置が講じられる可能性も懸念されます。これにより、追加関税や新たな規制が発動された場合、輸入コストの上昇やサプライチェーンの混乱を招く恐れがあります。また、各国の貿易政策やエネルギー政策の変更、予期しない法制度や規制の改定なども、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、グローバルでの国際情勢を注意深く見守り、懸念されるリスクに対して組織横断での連携を実施し、当社現地法人からの情報収集を通じて、機動的な対応を行っております。米国の関税政策変更に伴うコスト増加リスクに対しては、関税動向や規制変更を常に注視し、追加関税が発動された際には迅速に影響を分析いたします。関税増加分については、製品価格への適切な転嫁やコスト削減を進めることで、収益への影響を緩和いたします。さらに、今後の関税リスクや市場環境の変化を踏まえ、生産拠点の最適化も継続的に検討してまいります。これらの取り組みにより、関税リスクによる事業への影響を最小限に抑えるよう努めてまいります。問題が長期化しているロシア・ウクライナ情勢に対しては、各国の経済制裁や規制強化をはじめ、さまざまな国際情勢の動向を常に情報収集し、状況に応じた適切な判断を行ってまいります。中東情勢悪化に伴うスエズ運河の航行リスクに対しては、各生産拠点における利用航路・港の複線化を進めてまいります。

2.プリンティング市場の縮小

オフィス・ホーム向けのプリンティング市場は、デジタル化の加速や働き方の多様化を背景に、プリントボリュームの減少が続いており、今後も市場全体の緩やかな縮小が予想されます。プリンティング・アンド・ソリューションズ事業は、売上収益・営業利益ともに当社グループの半分を超える規模を占めているため、全社業績への影響が大きい事業領域です。そのため、市場環境の変化に迅速かつ的確に対応できない場合、当社グループ全体の経営成績や収益基盤に影響が及ぶ可能性があります。

プリンティング市場の縮小リスクに対応し、既存事業の収益力強化とともに、事業ポートフォリオの変革を進めてまいります。オフィス・ホーム向けには、契約型サービスやサブスクリプションなど「つながるビジネス」を拡大し、顧客との継続的な関係構築と顧客生涯価値(LTV)の向上を目指します。業務用ラベリング事業では、用途に応じた最適なソリューション提供を強化し、事業拡大に注力しております。また、ドミノ事業と産業用プリンター事業を含むインダストリアル・プリンティング事業では、アナログからデジタルへの移行や自動化ニーズの高まりを背景に成長が続いており、これまでの技術を活かして、産業用印刷市場でのさらなる成長と収益性向上、持続可能な事業構造への転換を目指しております。

3.企業間競争

当社グループはプリンティング・アンド・ソリューションズ事業を始めとして、多くの市場において他社との激しい競争にさらされております。当社グループよりも多くの経営資源を有している企業との競合や、新興国の地場メーカーの台頭、あるいは競合先間の提携が行われ、市場競争が激化することが想定されます。企業間競争が激化すると、販売価格の低下や現在の市場シェアを維持できなくなることにより、当社グループ全体の経営成績や収益基盤に影響が及ぶ可能性があります。

各市場において顧客価値を実現する製品の提供に加え、当社の強みである各地域の販売会社や販売チャネルネットワークを活用したサービス展開に取り組んでおります。また、業務効率化を推進し、手戻りの少ない開発や製造コスト削減を実践することで、スピードとコスト競争力を兼ね備えた事業運営基盤の構築を進めております。さらにサステナビリティの観点から、製品の環境性能向上や消耗品カートリッジの回収・リサイクル拡大など、循環経済型ビジネスの推進にも積極的に取り組み、持続可能な成長を目指してまいります。

4.世界経済状況の変動

当社グループはグローバルに事業を展開しているため、世界経済の変動が関連市場の需要に影響を与える場合、当社グループの経営成績等に影響することが想定されます。

例えば、プリンティング・アンド・ソリューションズ事業の製品・サービスはオフィス・ホーム・業務用向けとして幅広いお客様にご利用いただいており、インダストリアル・プリンティング事業とマシナリー事業の製品・サービスは消費財の包装、自動車、アパレルなど多様な製造業のお客様にご利用いただいております。

したがって、世界経済の変動によってお客様の経営状況が悪化し、当社の製品・サービスへの投資が抑制される場合、当社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

短期的な経済変動に左右されにくい安定した収益基盤の確立を目指し、高付加価値の製品・サービスを提供するとともに、開発からアフターサービスまで一貫した機能強化に取り組んでおります。

プリンティング・アンド・ソリューションズ事業では、A4機を主力としたSOHO(Small Office・Home Office)市場向け製品や、成長分野である業務用ラベリングに注力し、ストレスフリーな印刷体験の提供や消耗品自動配送など「つながるビジネス」の拡大によって収益力を強化してまいります。

インダストリアル・プリンティング事業では、新製品投入やサービス・ソリューション事業の強化、事業基盤の最適化を進めております。自動化やデータ分析など高付加価値サービスの提供を通じて、顧客の生産性向上と市場競争力の強化を図ります。

マシナリー事業では、高生産性・省エネ製品の展開やグローバルな販売・サービス体制の強化により、お客様の競争力向上とCO2排出削減に貢献し、加えて固定費や原材料費の削減を進めることで、経済変動に強い収益構造を構築してまいります。

また、当社グループは日本、アジア、米州、欧州地域でバランスの取れた売上構成を持ち、特定地域の景気変動リスクが抑制されております。今後もグローバルネットワークを活かし、各地域での事業展開を推進してまいります。

 

 

 

 

項 目

リスクの内容・可能性・時期・影響の程度

対応策

5.サプライチェーン

・サプライチェーンの断絶

・CSR調達

・サプライチェーンの断絶

当社グループは、生産・販売拠点をグローバルに展開しております。主要な生産拠点はベトナム・フィリピン・中国等であり、販売拠点は世界各国に広がっております。国や地域における経済的な対立や戦争、大規模火災、台風、巨大地震、地球温暖化に伴う異常気象、感染症の再拡大に加え、お取引先の事業ポートフォリオの見直し(事業採算悪化、設備の老朽化等)により重要部材の継続調達が困難になる等、部材調達・生産面で支障が発生するリスクがあります。

また、国際物流が混乱し船のスペース不足やコンテナの滞留、航路制限が発生すると、部品輸入遅延や出荷遅延及び運賃コスト高騰リスクがあります。

結果として市場への商品供給不足による販売機会の損失や顧客流失により経営成績に影響を与える可能性があります。

 

・CSR調達

当社グループは、その生産拠点の多くを海外に置いており、主要な生産拠点はベトナム・フィリピン・中国等となっております。これら諸拠点では部品調達先との取引関係がありますが、その調達先を含むサプライチェーンで発生する人権問題、例えば強制労働や児童労働などがあった場合、お客様からの信頼を失うだけでなく、当社とお客様のお取引に影響が出る可能性があります。また、調達先のさらにその先をたどっていくと、原材料に行き着きます。その原材料となる鉱物の取引において、アフリカなどの紛争地域及び高リスク地域産出の一部の鉱物の取引が当地の武装勢力の資金源となり、紛争の助長、人権侵害、労働問題、環境破壊などに関与していることが判明した場合にも、同様にお客様からの信頼を失う可能性が出てきます。

・サプライチェーンの断絶

生産体制については、主要な消耗品を複数拠点において生産するほか、予備の生産設備を保有するなどのリスク対応策を実施しております。部品に関しては、調達先の複線化や重要部材の戦略的な在庫保有を進め、特定の国やサプライヤーへの依存度を下げる活動を推進しております。販売拠点においては、欠品を防ぐための在庫水準の適正化を継続的に行ってまいります。物流面においては、生産拠点所在地域において自社倉庫や外部倉庫による製品や部材の在庫保管スペースの確保及び利用航路・港の複線化を進めております。

また諸拠点においては、防火対策や地震・台風等の自然災害に対する一定の防災・減災施策を講じております。本社機能が位置する日本でも南海トラフ地震を想定した防災危機管理体制を確立しております。

・CSR調達

リスク低減に向け、当社は「CSR調達方針」を制定し、ホームページでの開示の他、取引先説明会、書面などで調達先の皆様へ方針説明をおこなうとともに、主要事業の一次サプライヤーに対して人権への取り組みを要請しております。また、その上流のサプライヤーに対しても一次サプライヤーを通じて同様の取り組みを要請することで、サプライチェーンにおける責任ある調達を目指しております。また、人権への取り組みをより推進するために「ブラザーグループ人権グローバルポリシー」を制定し、当社の役職員及び製品・サービスの全ての関係者の皆様に同ポリシーの理解及び当社の取り組みへのご協力を要請しております。さらにRBA(Responsible Business Alliance)に加盟し、RBA行動規範の遵守をサプライヤーに対し要請することで、人権問題だけでなく、安全衛生・地球環境への影響を削減するなど、サプライチェーンにおけるリスク評価と是正への体制を強化しております。責任ある鉱物調達については、「責任ある鉱物調達方針」を制定し、ホームページに開示するとともに、鉱物の使用状況について調査を実施し、調達先の皆様と連携を図りながらサプライチェーンにおける鉱物調達の透明性確保及び紛争鉱物の使用回避に向けた調達活動に取り組んでおります。

 

 

項 目

リスクの内容・可能性・時期・影響の程度

対応策

6.部材に関するリスク

当社グループの製品に使用されている調達部材について、お取引先での火災・地震等の自然災害や、お取引先の事業環境変化・ポートフォリオの見直しによる事業撤退から、部材調達困難な状況が新たに発生するリスクがあります。

また、カーボンニュートラル、再生材料利用率向上といったサステナブル対応に伴う対応費用や各国法規制対応の為の価格転嫁、地政学リスク対策の為の調達先の限定、通商問題による部材入手困難、原材料価格の上昇、エネルギーコストの高騰、人件費の上昇等、さまざまな複合要因により価格上昇が発生しており、その状況が高止まりするリスクがあります。

これらの影響を製品の販売価格に転嫁できない、あるいは経費削減、能率改善でコストを十分に吸収できない場合、将来の収益性に一定の影響を及ぼすことが想定されます。

部材の調達難に対しては、代替え困難な部品の長期在庫確保、調達の複線化、現地化などのBCP対策を継続するとともに、お取引先における電気設備点検等の防災活動を推進することで、強靭なサプライチェーンの構築を推進します。

部材価格の高騰に対しては、樹脂材料・電子部品、鋼板や銅などの原材料やエネルギーコストの価格高騰リスクを計画時点でも織り込むことで想定収益への影響を低減しております。通商問題に対しては、変化する状況に素早く対応する事により生産活動に影響が出ない様に部材調達を進めます。一方、調達コストの低減においては、各市況の変化を正確に把握することで、お取引先に対し適切なタイミングにおける値戻しを依頼していきます。併せて、お取引先と連携したVA提案活動を推進します。

7.品質・製造物責任

すべての製品に対し欠陥がなく、将来に製品安全問題や品質問題が発生しないという保証はありません。それらの重大な問題が発生した場合の可能性として、多額のコストを要するほか、ブランドイメージや社会的評価が低下し、顧客の当社グループ製品への購買意欲を減少させ、当社グループの経営成績等が影響を受けることがあります。

当社グループは、高品質の魅力ある製品を提供するため、厳格な品質管理基準に従って生産管理体制を確立し、製品の製造を行っております。製造委託先から供給を受ける製品に対しても、適正な品質レベルであることを検証しております。また、仮に製品起因の事故が発生した場合には、被害者への対応を第一優先に行うとともに情報公開、官公庁への報告など被害拡大の抑制に取り組んでいきます。

 

 

項 目

リスクの内容・可能性・時期・影響の程度

対応策

8.法規制

・コンプライアンス全般

・税制

・コンプライアンス全般

当社グループは、事業活動を行っている各国・地域において、さまざまな法令や規制の適用を受けております。各国・地域の法令・規制の新設・変更によって、当社グループの事業活動が大きく制限され、法令や規制対応のために多額の費用負担が発生する可能性があり、意図せずに法令・規制に違反した場合には、当社グループの経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、従業員による不正行為によって当社グループにおいて損害が発生し、当社グループの事業活動に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

主要なコンプライアンスとして「不正会計・横領」「不公正な取引方法(競争法違反)」「贈収賄(腐敗リスク)」「品質不正」の4つを特定しております。

不正会計については、各国・地域の法令や当社グループの会計ルールなどに反する会計処理によって決算の修正やステークホルダーからの信頼失墜につながるリスクがあります。また、役職員の横領によって会社の財産が棄損されるリスクがあります。

不公正な取引、贈収賄については、各国・地域の競争法・反腐敗法に違反する事業活動によって、競争法当局からの罰金や当社グループの事業活動への制限がかけられるなどのリスクがあるほか、法令や規制対応のために多額の費用負担が発生する可能性があります。

品質不正については、当社製品の開発や製造・検査上の不正(性能や検査に関するデータ改ざん等)によって製品のリコールやそれに伴う多額の費用負担、ブランドイメージの低下などのリスクがあります。

上記のリスクが顕在化した場合、当社グループの事業活動に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 

 

 

 

 

 

 

・コンプライアンス全般

当社グループでは、コンプライアンス(法令・倫理の順守)は、さまざまなリスクを回避する上で経営上不可欠なものであると考えております。グループ全体でコンプライアンスを徹底するために「ブラザーグループ グローバル憲章」の行動規範のひとつである「順法精神・倫理観」と、企業としての責任を明確に定義し行動していくための「ブラザーグループ社会的責任に関する基本原則」に基づいて、従業員の行動基準を定めております。

当社では、コンプライアンス委員会の設置や相談通報窓口(ヘルプライン)を設けて不祥事の未然防止や早期対応、再発防止に努めております。海外を含むグループ各社でも個別にコンプライアンス委員会・部門やコンプライアンスヘルプラインを設置して対応しております。

重要なコンプライアンス案件については、グループ各社のコンプライアンス委員会・部門だけでなく、当社のコンプライアンス委員会にも通知され、グループ一体となって対応する体制を築いております。

 

主要なコンプライアンスリスクに関する対応状況は以下の通りです。

・不正会計・横領:当社グループ会社の決算を分析し、不正の兆候の有無を把握するとともに、必要に応じ個別に調査を実施しております。

 

・不公正な取引(競争法違反):日本国内においては、サプライチェーンのお取引先や価値創造を図る事業者の皆さまとの連携・共存共栄を進めることを明示した「パートナーシップ構築宣言」を公表するとともに、下請法の順守体制を構築しております。特に、下請業者からの労務費上昇に基づく価格交渉については、下請事業者から協議の申入れがあった場合には、労務費上昇分の影響を考慮するなど下請事業者の適正な利益を含むよう、十分に協議することとしております。また、グループ会社(欧米、アジア)の役職員に対して競争法リスクに対する意識向上のための定期的な教育を実施しております。

 

 

 

項 目

リスクの内容・可能性・時期・影響の程度

対応策

8.法規制

・コンプライアンス全般

・税制

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・税制

当社グループは、グローバルに事業活動を展開しており、事業拠点を有する各国・地域における税制の適用を受けております。各国・地域における税制や税率が変更された場合、当社グループの経営成績等にマイナスの影響を与える可能性があります。
また、BEPS問題(税源浸食と利益移転)に対処するため各国・地域の税務当局による取組が強化されており、今後、法規制が変更された場合や税務執行が厳格化された場合、追加課税や国際的な二重課税が発生し、税負担が上昇するリスクがあります。

・贈収賄(腐敗リスク):腐敗リスクが高い国や地域(主にアジア)のグループ会社において、反腐敗に関するポリシーを定めることや、お取引先による腐敗行為の防止に関するスクリーニングなどの活動を行っております。また、役職員の反腐敗意識を高めるために反腐敗に関する教育(E-Learning等)を行っております。

 

・品質不正:品質データ管理システムの導入などデータ改ざんを防ぐ体制、当社グループの主要製造拠点・開発拠点に対する品質不正監査体制の構築活動を進めております。また、品質コンプライアンス意識向上のための教育(E-Learning等)を実施しております。

 

・税制

重要な税務上の事項については、各地域の統括会社を通して、当社税務部門に適宜共有され、税理士法人などの外部専門家のサポートを受けるだけでなく、必要に応じて税務当局ともコミュニケーションを取って対処しております。また、当社グループ間の取引については、独立企業間価格となるように、各国・地域との移転価格を適切に管理しており、移転価格課税リスクの高い取引については、APA(事前確認制度)を活用することで税務リスクを低減しております。

 

 

 

項 目

リスクの内容・可能性・時期・影響の程度

対応策

9.環境

・環境に関する

社会的要請

・環境規制、環

境汚染

・環境に関する社会的要請

グローバルに事業活動を展開する当社グループにとって、次のリスクは現在から将来にわたって極めて重要な課題であり、事業経営に大きな影響を及ぼす可能性があります。

気候変動は、災害等による人的被害、操業の停止、サプライチェーンの断絶など、生産・販売活動に大きな影響を与える物理的リスクに加え、脱炭素社会への急速な移行に伴う法規制強化や対応コスト増、対応遅れによる販売機会喪失などの移行リスクがあります。特にマシナリー事業では自動車産業における内燃機関からEVへの移行リスクがあります。

サーキュラーエコノミーの進展は、欧州各国中心に資源消費を抑えつつ経済発展を目指す政策が推進されており、法規制強化や対応コスト増、対応遅れによる販売機会喪失などの移行リスクがあります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・環境に関する社会的要請

気候変動に対しては、その原因となっている温室効果ガス排出を削減するため、「1.5℃目標」のSBT(Science Based Targets)認定を受けた2030年中期目標を設定しております。この目標の達成に向けて、スコープ1・2については事業所の省エネ及び再生可能エネルギーの積極的な利用等、スコープ3については温室効果ガス排出量の80%以上を占める製品の部材調達、使用、廃棄段階での排出を削減するため、調達する部材の省資源化・再生利用、製品の省エネルギー性能の向上・リサイクル性向上などに注力して取り組んでおります。さらに2023年度からレーザープリンター製品及びインクジェットプリンター製品において、部品サプライヤーと協働し、部品製造時に使用される電力に再生可能エネルギーを導入することにより、部品製造時のCO2排出量を2024年度までの2年間で3.0万t-CO2の削減ができました。またマシナリー事業では内燃機関部品に替わって需要が増加しているEV向け部品で求められる大型のアルミ部品や、さまざまな加工ニーズに応えることができる製品“SPEEDIO”シリーズを開発することで、EV部品加工ソリューションを提供し、自動車産業におけるEVへの移行リスクに対応しております。

サーキュラーエコノミーの進展に対しては、当社グループの資源効率を向上させるため、2030年中期目標(特に資源使用量の多いプリンティング&ソリューション事業を対象にして、製品に投入する新規資源量を25%削減)を設定しております。その達成に向けて「プリンターの消耗品カートリッジの回収・リサイクルの拡大」、「製品のリユース促進」、「サブスクリプションサービス等のお客様とつながり続けるビジネスの拡大」を主要な取り組みと位置付け、資源の有効利用、資源循環を推進し、CO2排出削減にも貢献しております。

また、当社は2020年2月に金融安定理事会が設置した「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」、2025年3月に自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD:Task Force on Nature-related Financial Disclosures)の提言に賛同致しました。TCFDへの対応として、当社グループの全ての事業に対して気候変動が与える財務的な影響の分析を実施し、Web等にて開示しました。TNFDへの対応として、TNFD提言に沿った開示に向けた検討・準備を進めております。今後も情報開示の充足に努めてまいります。

 

 

項 目

リスクの内容・可能性・時期・影響の程度

対応策

9.環境

・環境に関する

社会的要請

・環境規制、環

境汚染

・環境規制、環境汚染

グローバルに事業を展開する当社グループは、世界各国・地域において様々な環境法規制の適用を受けております。中でもEU-RoHS指令をはじめとする製品含有化学物質に関わる法規制は、世界各国・地域において新設及び改正が頻繁に行われております。これら規制に対する違反が発生した場合、製品のリコール、生産・販売の中止、課徴金の負担、刑事罰及び社会的信用の失墜等により、当社グループの事業経営に大きな影響を及ぼす可能性があります。

・環境規制、環境汚染

当社グループは、禁止、制限及び管理対象とすべき化学物質を「ブラザーグループグリーン調達基準書」に明示すると共に、サプライヤーによる部材の適合保証、成分情報の伝達、サプライヤー監査及び納入品の抜き取り検査等を実施することにより、確実な法規制遵守に努めております。

また、環境法規制の新設や改正に対しては、その動向を早期に把握して、製品設計変更を含めた対応をすることで、新規制発行時に確実に順守できるように努めております。

10.安全保障貿易

当社グループは、多種多様な事業をグローバルに展開しております。米中貿易摩擦やロシア・ウクライナ情勢、中東情勢などの地政学的リスクが高まる中、各国で輸出規制や安全保障関連法令の強化が進行しており、今後も短期から中長期にわたり、規制強化が想定されます。特に、当社の工作機械の一部は輸出関連法令の対象となっており、規制がさらに強化された場合、法令違反リスクや事業・業績への影響が増大します。万一、法令違反が発生した場合、法的制裁や行政指導、一定期間の全製品輸出停止、社会的信用の失墜など、当社グループの事業経営に重大な影響を及ぼす恐れがあります。

各国・地域の規制動向を把握・分析し、リスクの重要度や緊急度に応じて、迅速かつ柔軟に管理体制や社内ルールを見直し・強化しております。また、グループ全体での輸出管理体制強化、従業員への教育・研修の徹底、サプライチェーン全体でのコンプライアンス意識向上に取り組んでおります。これにより、法令違反や事業中断リスクの早期発見・未然防止を図り、急激に変化する国際環境下でも持続的な成長と企業価値の最大化を実現します。

 

 

 

項 目

リスクの内容・可能性・時期・影響の程度

対応策

11.情報・システム

・情報セキュリティ

・情報ネットワーク

・情報セキュリティ

何らかの原因で個人情報及び機密情報が外部に漏洩した場合、お客様からの信頼を失うとともに、ブランドイメージの低下を招くなど、当社グループの事業活動や経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、顧客サービスの充実を目指して、製品情報やサポート情報の提供並びに、関連サービスの提供を行っております。このようなWebサイトや関連するシステムにつきましては、安全な情報セキュリティレベルを維持することに努めておりますが、マルウェア感染や標的型攻撃などのサイバー攻撃により、データの破壊や改ざん、サービスの停止などの被害等が発生した場合、事業活動に悪影響を及ぼすことが考えられます。

また、近年は、IoT 製品をターゲットとしたサイバー攻撃の脅威が増大しており、当社製品からお客様の個人情報や機密情報が漏洩した場合、お客様からの信頼を失い、ブランドイメージが失墜し、当社グループの事業活動や経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。各国政府もIoT製品のセキュリティ向上や個人情報保護を目的とした法整備を活発化しており、法令に準拠しない製品は、対象国で販売できなくなる可能性があります。

・情報セキュリティ

当社グループは、情報管理規程を定めると共に情報管理委員会を設け、情報セキュリティ運用ルールを策定しております。また、SNS等のソーシャルメディアの利用に関しても、利用規程を定めております。それらの運用ルールや利用規程に基づくセキュリティ対策や社内教育を行うことで、個人情報及び機密情報の漏洩防止、サイバー攻撃へのグローバルで統一した多層防御対策の強化に努めております。また、近年はスマートフォン等により一部の社内情報の利用が出来ますが、利用端末の制限や暗号化等により管理体制の強化に努めております。さらに、個人情報や機密情報へのアクセスに関しましては、アクセス制御やアクセスログ管理を行っており、不正な取り扱いを回避しております。

当社グループは、お客様に安心して製品をお使いいただくために、「製品情報セキュリティ基本方針」を定め、グループ全体で製品セキュリティの向上を図っております。また、製品に関する脆弱性リスクが発生した場合の報告ルートや製品情報セキュリティ事故の対応体制に関する社内規程を定め、体制を構築することでリスクを最小化する対策を実施しております。各国の法令順守に関しては、海外子会社と連携し、法令等の新設・改訂の情報を察知し、法律の内容を十分に理解したうえでグループのビジネスや製品サービスへ迅速に反映するよう努めております。

 

 

 

項 目

リスクの内容・可能性・時期・影響の程度

対応策

11.情報・システム

・情報セキュリティ

・情報ネットワーク

・情報ネットワーク

当社グループは、生産管理・販売管理及び財務等に関する情報を、ネットワークを通して管理しております。また、近年は外部データセンターやクラウドサービスを活用し、社内のみならず社外に配置した情報システムもネットワークを通して使用しております。万が一ネットワークの切断、システムの停止等が発生した場合、これらは事業活動の阻害要因となり得ます。また、マルウェア感染や標的型攻撃などのサイバー攻撃につきましても、予期し得ない外部からの侵入や攻撃がなされた場合、その内容や規模によっては、事業活動に悪影響を与える可能性があります。

また、財務報告の信頼性を維持し高めることが求められている中、予期し得ない統制上の問題が生じた場合には、財務報告の信頼性を担保できないような状況が起こり得る可能性があります。

・情報ネットワーク

情報の保存、設備の保全等の対策には万全を期しておりますが、サプライチェーンに影響する重要システムは、万が一の故障時にもダウンタイムを最小限にして早期復旧を可能とするシステム構成にしております。

予期し得ない外部からの侵入や攻撃への対策として、グローバルで統一した多層防御に基づくセキュリティ対策の強化を行っており、定期的に見直しを行っております。24時間365日のセキュリティ監視を行うことで、PC、及びサーバ上の不正なふるまいをいち早く検知し、脅威を除去することで高度化するサイバー攻撃への対応も行っております。

上記のように、対応し得る最善の仕組みで対策を行うと同時に、日々進化するITテクノロジーに対応するため、システムを運営、利用する人材を継続的に教育することでレベルアップを図っております。万が一事故が発生した場合に備え、日頃より社内の対応組織の訓練を行い、迅速に対応することで被害を最小限に抑えるよう努めております。

内部統制への対応として、IT全般統制の視点から情報システムの開発・保守・運用業務の品質向上活動を継続し、適正なIT業務運用に努めております。

12.人材

・労働災害、

人的被害

・人材確保

・労働災害、人的被害

当社グループはグローバルに事業拠点を展開しており、多様性や環境、安全に対する意識並びに順守すべき法律も拠点所在国・地域によって異なっております。そうした労働条件において軽微なものから障がいが残る重篤な災害まで多くのリスクが労働環境には潜んでおります。加えて、昨今の想定を超えた天災から生じる被害や機械・設備などが起因となる火災、爆発などの事故で製造拠点の操業を停止することで社会的責任が果たせなくなると共に当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

・人材確保

労働市場における人材の獲得競争は激化しており、有能な人材の採用や雇用の継続が困難になった場合は、研究開発に十分な資源を投入できないことによる製品競争力の低下や労働力不足による製品の安定供給への支障など、結果として当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。発生可能性は現時点で低いものの、特にブランドイメージが著しく損なわれた場合に発生することが想定され、影響は案件の内容次第となります。

・労働災害、人的被害

グループ各拠点の安全防災事務局から毎月の事故・災害状況を入手して、発生した災害に関しては原因の究明や再発防止策などの情報を共有し水平展開を図ることで同種・同類災害の再発を防止しております。また、各拠点で実施されている安全防災活動を支援し、工場監査を通じて実施状況の確認を行っております。
なお、火災・爆発のリスクに関しては、2017年に「ブラザーグループ防災体制・管理規程」を制定し、各国の消防法令の枠を超えたグループ標準を設けて遵守事項についての監査を実施しております。

 

・人材確保

当社グループは、グローバルに展開する企画、開発、設計、製造、販売、サービス等の各機能に必要な人材確保に努めております。
人材の定着においては、従業員が長期にわたって活躍できるよう人事制度の進化や職場環境の継続的な改善に取り組むとともにキー人材についてはサクセッションプランの策定を行っております。
またブランドイメージの維持向上については、グローバル憲章による社員啓発や企業広報の強化に取り組んでおります。

 

 

 

 

 

項 目

リスクの内容・可能性・時期・影響の程度

対応策

13.M&A(減損リ

スク)

当社グループは産業用領域のさらなる拡大・新規事業の創出・育成等に向けて、M&Aも含めた成長投資を加速する方針を掲げております。
M&Aなどの実施においては、事業の統合に当初想定以上の負荷がかかることや投資時点において想定した通りに投資先が事業を展開できないこと等により、予想された通りの投資効果が得られないリスクがあります。
当社グループは、2025年3月31日現在の連結財務諸表上、のれんを53,679百万円(総資産の5.8%)計上しており、そのうち、2015年に買収したドミノ事業に関連するのれんが53,214百万円を占めております。上記のリスクが顕在化し将来キャッシュ・フローの見積りが変動した場合、また、将来の金利水準や長期的な市場成長率などの変動が生じた場合、これらののれんや有形固定資産、無形資産等の減損損失が生じ、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

当社グループは中期戦略「CS B2027」において、M&Aを推進する組織能力・体制を大幅に強化する方針を掲げ、機動的な投資実行とガバナンスの強化を両立しながら、PMIにおける本社の積極的な関与と支援を実施してまいります。

また、中期戦略「CS B2027」において、ドミノ事業を含むインダストリアル・プリンティング事業を、ブラザーグループの成長エンジンを担う成長事業と位置付け、「製品及びビジネス領域の拡大」、「サービス・ソリューション事業の強化」、「事業基盤の強化」を重要施策として取り組んでおります。

また、のれんにつきましては少なくとも年に1回、減損の兆候の有無にかかわらず、将来得られるキャッシュ・フロー見積りと、帳簿価額を比較して、のれんの資産価値を確認しており、適正な評価額で計上しております。

14.為替変動リスク

当社グループは、海外での製造・販売比率が高く、外貨建取引に係る為替変動リスクが定常的に発生しております。2025年3月期の実績ベースで試算した場合、対ユーロで円高になると、1円当たり、年間約10億円の利益の減少要因となります。また、対米ドルで円安になると、1円当たり、年間約2億円の利益の減少要因となります。
また、中国・東南アジアなど、主要な製造拠点の所在地域の通貨が上昇した場合、製造・調達コストを押し上げる要因になるなど、中長期的な為替レートの変動が、経営成績等に一定の影響を及ぼすことが想定されます。

海外子会社の保有する現地通貨建ての資産(負債を控除した純額)は、各現地通貨に対して円高になると、円換算後の金額が目減りします。これは直ちに連結損益には影響しませんが、その他の包括利益が減少し、純資産を押し下げる要因となります。

リスク低減のため、外貨建取引における受取と支払のリンク率向上を図る一方で、短期的には為替予約取引を行うなど、リスクを効率的に管理し、回避するよう努めております。

 

 

項 目

リスクの内容・可能性・時期・影響の程度

対応策

15.知的財産

(1)第三者による模倣品の販売など、第三者による当社グループ所有の知的財産権の侵害が発生する可能性があります。この結果、当社グループの経営成績等が悪化したり、信用が低下したりする可能性があります。

 

(2)第三者所有の特許権等について、第三者より当社グループに対し、侵害の訴えが提起される可能性があります。第三者の主張が認められると、製品の販売の差止めや、損害賠償の支払などが求められる可能性があります。

 

(3)当社グループは、必要に応じて、特許権等知的財産権に関するライセンス契約を他社と締結しつつ、事業活動を行っております。しかしながら、ライセンス契約の条件によっては事業活動が影響を受ける可能性があります。

 

 

(4)発明者より、発明の報奨に関する訴えが提起される可能性があります。

(1)当社グループは、第三者による侵害行為に対しては、経営成績等や信用への影響度を考慮しつつ、知的財産権を行使しております。

 

 

 

(2)当社グループは、他社の特許権等の知的財産権を尊重して事業活動を行っておりますが、第三者から侵害の訴えが提起された場合には、内容を精査した上で、防御や和解などの対策を講じております。

 

(3)当社グループでは、研究開発の成果として多数の特許権を取得しております。保有する一部の特許権について相手方へライセンスを供与するなどの対策を講じつつ、事業活動への影響が最小限になるように契約を締結しております。

 

(4)当社グループは、発明報奨規程を設けており、発明者に対する報奨を適切に行っております。

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 

当社グループの財政状態及び経営成績は次の通りです。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、判断したものであります。

なお、当社グループの業績管理は、事業セグメント損益及び営業損益により行われております。事業セグメント損益は、売上収益から売上原価、販売費及び一般管理費を控除して算出しております。

 

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績」という。)の状況の概要は次の通りであります。

 

①経営成績の状況

当連結会計年度における世界経済は、地政学的リスクが長期化していることに加え、各国における金融政策の変化や中国経済の低迷、為替の変動など、先行きが不透明な状況が続きました。

当社グループに関連する事業環境は、プリンティング市場では、欧米及び中国における市況は低調に推移しました。マシナリー事業の関連分野は、産業機器の市況は、一進一退の状況が見られる中でも緩やかに回復し、工業用ミシンはアジアにおけるアパレル向け設備投資需要が回復に向かいました。ドミノ事業の関連分野は、景気減速の影響を受け、設備投資需要が引き続き軟調に推移しました。ニッセイ事業の関連分野は、工場の自動化に向けた設備投資需要の回復が依然として遅れています。家庭用ミシンは、インフレなどの影響を受け市況が軟調に推移しています。国内におけるカラオケ市場は、安定的に推移しています。

このような状況の中、当連結会計年度における当社グループの連結業績は、P&S事業では、通信・プリンティング機器は消耗品の販売が堅調に推移したことにより、増収となりました。マシナリー事業では、設備投資需要の緩やかな回復を受け、産業機器・工業用ミシンともに増収となりました。ドミノ事業では、設備投資需要は軟調だったものの、消耗品の販売が堅調に推移したことにより、増収となりました。ニッセイ事業では、設備投資需要の低迷により、減収となりました。P&H事業では、中高級機を中心に販売が堅調に推移したことにより、増収となりました。N&C事業では、カラオケ機器の販売などが堅調に推移し、増収となりました。

これらに為替のプラス影響が加わり、売上収益は、前期比6.5%の増収となる876,558百万円となりました。事業セグメント利益は、主に販管費が大幅に増加したものの、価格対応の効果に為替のプラス影響などが加わり、前期比2.8%の増益となる77,683百万円となりました。営業利益は、前連結会計年度に計上したドミノ事業におけるのれんの一部の減損損失がなくなったことなどにより、前期比40.4%の増益となる69,888百万円となりました。親会社の所有者に帰属する当期利益は、前期比73.1%の増益となる54,778百万円となりました。

 

*平均為替レート(連結)は次の通りであります。

当期 米ドル :152.48円   ユーロ :163.62円

前期 米ドル :144.40円   ユーロ :156.80円

 

セグメント別の業績は、次の通りであります。

 

1)プリンティング・アンド・ソリューションズ事業

売上収益  544,828百万円(前期比+5.8%)

〇通信・プリンティング機器 475,483百万円(前期比+6.0%)

製品本体は、レーザー複合機・プリンターについては、主に欧州における市況低迷や上期に発生した供給制約の影響を受け販売が減少しましたが、インクジェット複合機については、先進国・新興国ともに伸長しました。消耗品は、価格対応の効果などにより総じて堅調に推移しました。全体では、為替のプラス影響も加わり、増収となりました。

〇ラベリング 69,345百万円(前期比+4.5%)

汎用ラベリングの販売は減少したものの、業務用ラベリングの販売は本体・消耗品ともに堅調に推移したことに加え、為替のプラス影響もあり、増収となりました。

事業セグメント利益 60,986百万円(前期比△2.5%)

営業利益      58,867百万円(前期比△3.5%)

消耗品の価格対応の効果や為替のプラス影響などがあったものの、人件費を中心とした販管費などが大幅に増加したことにより、減益となりました。

 

2)マシナリー事業

売上収益  85,209百万円(前期比+10.1%)

〇産業機器 47,318百万円(前期比+9.8%)

中国・アジアを中心に自動車・一般機械市場向けの設備投資需要が緩やかに回復し、増収となりました。

〇工業用ミシン 37,891百万円(前期比+10.5%)

ガーメントプリンターは、主に欧米での販売が減少した一方、工業用ミシンは、アジアにおけるアパレル向け設備投資需要の回復を受け、販売が好調に推移しました。これらに為替のプラス影響も加わり、全体では増収となりました。

事業セグメント利益 853百万円(前期比△61.4%)

営業利益      804百万円(前期比△65.1%)

増収となったものの、販管費の増加やミックスの変化などにより、大幅な減益となりました。

 

3)ドミノ事業

売上収益  119,396百万円(前期比+8.9%)

景気減速の影響を受け製品本体の販売は減少したものの、為替のプラス影響に加え、消耗品の販売が底堅く推移し、増収となりました。

事業セグメント利益 5,438百万円(前期比+7.2%)

営業利益      3,566百万円(前期 営業損失  24,071百万円)

事業セグメント利益は、人件費や基幹業務システムの刷新費用などの販管費が増加したものの、消耗品の販売が堅調に推移したことに為替のプラス影響も加わり、増益となりました。なお、前連結会計年度の営業損失は、のれんの一部の減損損失を計上したことによるものです。

 

4)ニッセイ事業

売上収益  20,017百万円(前期比△3.9%)

設備投資需要の低迷により、主に減速機の販売が低調に推移し、減収となりました。

事業セグメント利益 474百万円(前期比△53.5%)

営業損失      16百万円(前期 営業利益 991百万円)

事業セグメント利益は、減収影響に加え販管費が増加したことなどにより、大幅な減益となりました。

営業利益は、一部固定資産の減損損失の計上により、赤字となりました。

 

5)パーソナル・アンド・ホーム事業

売上収益  57,150百万円(前期比+13.2%)

インフレや金利高により米国を中心とした高級機の市況は低調に推移したものの、中級機・普及機の堅調な販売や、欧米での高級機の新製品投入効果に加え、為替のプラス影響もあり、増収となりました。

事業セグメント利益 7,315百万円(前期比+190.7%)

営業利益      6,659百万円(前期比+168.7%)

増収効果に加え、工場の操業度の正常化や高級機の新製品投入効果により粗利率が改善したことに伴い、大幅な増益となりました。

 

6)ネットワーク・アンド・コンテンツ事業

売上収益  38,808百万円(前期比+1.9%)

カラオケ機器の販売などが堅調に推移したことにより、増収となりました。

事業セグメント利益 1,924百万円(前期比+18.6%)

営業利益      1,963百万円(前期比+18.3%)

人件費を中心とした販管費が増加したものの、カラオケ機器の販売などが堅調に推移したことにより、増益となりました。

 

②財政状態の状況

資産合計は、棚卸資産、現金及び現金同等物、繰延税金資産が増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べ36,540百万円増加し、932,650百万円となりました。

負債合計は、営業債務及びその他の債務が増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べ13,189百万円増加し、241,178百万円となりました。

資本合計は、前連結会計年度末に比べ23,350百万円増加し、691,472百万円となりました。

 

当期における期末為替レートは、次の通りであります。

   米ドル : 149.52円   ユーロ : 162.08円

 

③キャッシュ・フローの状況

キャッシュ・フローの状況については、現金及び現金同等物(以下「資金」)は、営業活動により90,023百万円増加、投資活動により48,152百万円減少、財務活動により34,609百万円減少、為替変動の影響により631百万円減少した結果、当連結会計年度末は前連結会計年度末と比べ6,629百万円増加し、172,776百万円となりました。

当期における各キャッシュ・フローの状況とその主な要因は、次の通りです。

 

1)営業活動によるキャッシュ・フロー

税引前利益は74,694百万円で、減価償却費及び償却費52,686百万円、営業債権及びその他の債権の増加による資金の減少5,633百万円、棚卸資産の増加による資金の減少21,822百万円、営業債務及びその他の債務の増加による資金の増加15,631百万円などがあり、法人所得税の支払額23,585百万円などを差し引いた結果、90,023百万円の資金の増加となりました。

 

2)投資活動によるキャッシュ・フロー

有形固定資産の取得による支出35,783百万円、無形資産の取得による支出11,327百万円などにより、48,152百万円の資金の減少となりました。

 

3)財務活動によるキャッシュ・フロー

リース負債の返済による支出8,973百万円、配当金の支払額25,623百万円などにより、34,609百万円の資金の減少となりました。

 

④生産、受注及び販売の状況

1)生産実績

当社グループの生産実績は、販売実績と近似しておりますので、記載を省略しております。

2)受注実績

当社グループの生産活動は、その多くを見込生産で行っておりますので、受注実績は記載しておりません。

3)販売実績

当社グループの販売実績は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記6.セグメント情報」をご参照下さい。

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討事項

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次の通りであります。

 

①重要性がある会計方針及び見積り

 当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和51年大蔵省令第28号)第312条の規定により、IFRS会計基準に準拠して作成されております。

 IFRS会計基準に準拠した連結財務諸表の作成において、経営者は、会計方針の適用並びに資産、負債、収益及び費用の金額に影響を及ぼす判断、見積り及び仮定を行うことが要求されております。当社グループの判断、見積り及び仮定は合理的であると考えておりますが、実際の業績は、これらの見積りとは異なる場合があります。

 なお、当社グループの連結財務諸表において採用する重要性がある会計方針及び見積りは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要性がある会計方針」及び「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載しております。

 

②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

1)当連結会計年度の経営成績

経営成績は、「(1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」をご参照下さい。

 

2)経営成績に重要な影響を与える要因

経営成績に重要な影響を与える要因については、「3 事業等のリスク」をご参照下さい。

 

3)経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標

中期戦略「CS B2024」では、最終年度である2024年度の業績目標を売上収益8,000億円、営業利益率10.0%以上、ROE10.0%以上としていました。

CS B2024期間中に為替が円安に推移したことによるプラス影響もあり、当連結会計年度の売上収益は目標を上回ったものの、産業機器を中心とした産業用領域の成長が遅れ、収益力向上の局面まで至っていないことなどから、営業利益率及びROEは目標を下回りました。

 

 

当連結会計年度実績

CS B2024業績目標

売上収益

8,766億円

8,000億円

営業利益率

8.0%

10.0%以上

ROE

8.1%

10.0%以上

 

 平均為替レート(連結)は次の通りであります。

 当期       米ドル :152.48円   ユーロ :163.62円

 CS B2024 策定時 米ドル :108.00円   ユーロ :125.00円

 

 中期戦略「CS B2027」における、経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標としては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)中長期的な経営戦略」をご参照下さい。

 

4)セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

 事業セグメントごとの経営成績の状況については、「(1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」をご参照下さい。

 

5)当社グループの資本の財源及び資金の流動性

当社グループは、現在及び将来の事業活動のために適切な水準の流動性維持及び、柔軟で効率的な資金の確保を財務活動の重要な方針としております。この方針に従って、当社グループは、グループ会社が保有する資金をグループ内で効率よく活用するキャッシュマネジメントシステムを構築し運用しております。資金の偏在をならし、グループ全体で借入を極力削減する体制を整えております。

流動性管理

当社グループは、現金及び現金同等物を手元流動性と位置付けております。当連結会計年度末現在、当社グループは、売上収益の約2ヶ月分に相当する現金及び現金同等物172,776百万円を保有しております。

当社グループは、当社及び金融子会社などの資金調達拠点を通じたキャッシュマネジメントシステムの活用により、資金の効率化を図り、流動性を確保しております。

これにより、季節的な資金需要の変動、事業環境リスク等を考慮の上、通年にわたり十分な手元流動性を確保していると考えております。

資金調達

運転資金等の短期資金は、原則として期限が1年以内の短期借入金を現地通貨で調達することとし、生産設備等の長期資金は、内部留保資金の他、固定金利の長期借入金及び社債等で調達することを基本方針としております。当連結会計年度末現在、長期借入金の残高は600百万円であり、通貨は日本円であります。

当社は、株式会社格付投資情報センター(R&I)から格付を取得しております。当連結会計年度末現在、発行体格付はA+(方向性「安定的」)であります。金融・資本市場へのアクセスを保持するため、一定水準の格付けの維持は重要と考えております。

当社グループは、営業活動によりキャッシュ・フローを生み出す能力に加えて、手元流動性、健全な財務体質により、当社グループの成長を維持するために必要な運転資金及び設備投資・研究開発資金等を確保することが可能と考えております。

資金の需要動向

中期戦略「CS B2027」では、事業ポートフォリオ変革の加速に向けた大規模な成長投資の実行とともに、株主還元を強化する方針であります。成長投資は、規模を大きく拡大し、2,000億円を想定していますが、内訳は、M&A関連の戦略投資と成長を支える基盤投資(インクジェット開発・生産技術強化、産業用領域の販売・サービス拠点増強、お客様とつながるビジネスの基盤強化、BCPやサプライチェーンの強靭化、AI活用や人財基盤強化による組織能力の強化、延期となっていた新社屋建設など)に分けられ、戦略投資が多くを占めます。株主還元については、大幅に強化し、3年間合計で1,400億円を予定しており、内訳として、配当に800億円、自己株式取得に600億円を計画しています。

事業成長から創出される3年間の実質営業キャッシュ・フロー3,250億円に加えて、自己資金及び有利子負債を活用することで、これらの資金需要に対応してまいります。

 

 

5【重要な契約等】

技術契約

契約会社名

相手先

(国名)

内容

契約期間

当社

キヤノン株式会社

(日本)

電子写真及びその他の印刷装置に関する特許実施権の許諾

2024年10月1日から対象特許の満了日まで

株式会社リコー

(日本)

電子写真印刷装置に関する特許実施権の許諾

2024年10月1日から対象特許の満了日まで

セイコーエプソン株式会社

(日本)

印刷装置等に関する特許実施権の許諾

2018年6月28日から対象特許の満了日まで

 

 

6【研究開発活動】

 当社グループでは、固有の技術を生かしてお客様の求める製品・サービスを生み出すことが真の技術力であると考えております。それは優れた技術も製品に生かされてこそ価値が生まれると考えるためです。お客様に評価され選ばれる製品をご提供するために、当社グループの技術者はお客様と向き合い、お客様の声に真摯に耳を傾けております。そして、お客様が喜ぶ顔をどんな技術で実現するか、どんな製品でお客様の役に立つことができるかを常に考えながら価値創造に取り組んでおります。

 

 試験研究に従事する者は、グループ全体で2,322人であります。

 当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は、49,464百万円であります。

 

 当連結会計年度におけるセグメント別の主な研究開発内容や研究開発成果及び研究開発費は、次の通りであります。

 

(1)プリンティング・アンド・ソリューションズ事業

 レーザーやインクジェットなどのプリンティング技術を追求し、ワークスタイルの革新を提案します。代表的な製品としては、コンパクト性を追求したプリンターのほか、1台にプリンター・ファクス・コピー・スキャナーなどの機能を搭載した複合機、また、使いやすさにこだわったラベルライターがあります。これらの情報通信機器で、SOHO(Small Office・Home Office)やSMB(Small and Medium Business)などで幅広いニーズにお応えします。

 また、海外生産が加速する流れの中で、モノ創り企業としての足腰を固めるため、製造をサポートするための生産技術開発を行い、モノ造りの早い段階での性能・品質の作りこみを目的としたプロセス改革、及び超精密加工技術なども推進しております。

 当連結会計年度の主な成果としては、2インチ感熱ラベルプリンターの新製品として、TD-2Dシリーズ スタンドアロンモデル「TD-2320D」「TD-2350D」の発売をあげることができます。

 当事業に係る研究開発費は、29,383百万円であります。

(2)マシナリー事業

 自動車やIT機器などの部品加工に最適な工作機械、使いやすさ、高品質な縫製、省エネを実現した工業用ミシン、衣料品のデジタル印刷ニーズに応えるガーメントプリンターなどを通じて、お客様の生産性向上と新たな価値創出に貢献しております。

 当連結会計年度の主な成果としては、工作機械の新製品として、5軸加工機「ユニバーサルコンパクトマシニングセンタ SPEEDIO U500Xd2(Uシリーズ)」の発売をあげることができます。

 工業用ミシンの新製品として、センシング技術を用いて、縫製品質に直結する釜まわりの調整状態をデジタル化した「ブリッジ型プログラム式電子ミシン NEXIO BAS-365K/BAS-370K (Kシリーズ)」の発売をあげることができます。

 当事業に係る研究開発費は、5,822百万円であります。

 

(3)ドミノ事業

 各種コーディング・マーキング機器の販売からアフターサービスまでの一貫した提供を通じて、お客様による品質管理やトレーサビリティーの向上などの需要にお応えします。

 また、インクジェット方式のデジタル印刷機、及びそのアフターサービスまでの一貫した提供を通じて、お客様によるラベルなどパッケージ印刷に対する多種少量化・短納期化などの需要にお応えします。

 当事業に係る研究開発費は、8,037百万円であります。

 

(4)ニッセイ事業

 幅広い製品バリエーションを持つギアモータ、産業用ロボットやFA機器の駆動を担う高剛性減速機、高精度・高品質な歯車などを通じて、拡大が予想される自動化・省人化分野など、多様化する顧客ニーズに的確に対応し、お客様の価値創出に貢献しております。

 当事業に係る研究開発費は、896百万円であります。

 

(5)パーソナル・アンド・ホーム事業

 高性能かつ高付加価値の製品を提供できる業界随一の開発力を有しております。特に電子技術の強みを生かした最先端の機能を使いやすい形でお客様に提供することで、市場をリードしております。

 当連結会計年度の主な成果としては、最先端のテクノロジーと洗練されたデザインが融合した家庭用刺しゅうミシン「AVENEER EV1」の発売をあげることができます。

 当事業に係る研究開発費は、2,809百万円であります。

 

(6)ネットワーク・アンド・コンテンツ事業

 通信カラオケ事業において、業務用通信カラオケシステムを提供するとともに、通信カラオケで培ったコンテンツや配信技術を活用し、健康分野に向けたサービスや映像コンテンツの配信など、新たな顧客価値を追求しております。

 当事業に係る研究開発費は、779百万円であります。

 

(7)その他事業

 当事業に係る研究開発費は、1,736百万円であります。