第2 【事業の状況】

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1)会社の経営の基本方針

当社グループは、常に高品質で価値ある商品とサービスの提供を通じて社会・文化の向上に貢献するべく、法令等遵守のもと、各ステークホルダーの皆様と健全で良好な関係を維持しつつ、適正で効率的な経営に努めております。

また、当社グループは外部環境の変化に対応した強固な収益体質の構築を目指し、効率的な経営、生産効率の向上、研究・開発体制及び販売・サービス体制の強化等を行ってまいります。

 

(2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標

当社グループは「企業価値の向上」を経営方針の一つに掲げており、株主・従業員を含む全てのステークホルダーとのより一層良好な関係を構築し、企業価値を高める為、収益構造の改善と企業体質の強化に努めてまいります。

なお、2025年5月9日に公表した2026年3月期から2028年3月期までの中期経営計画「Move! 2027」において売上高435億円、営業利益率9.2%、ROE8.1%を中期目標としております。

(注)上記業績予想につきましては、現時点で入手可能な情報に基づき作成しており、実際の業績は今  

   後様々な要因によって予想数値と異なる場合があります。

 

<中期経営計画「Move! 2027」の基本方針と長期ビジョン>


 

(3)当社グループの中長期的な経営戦略及び対処すべき課題ならびに経営環境

当社グループは、持続的に成長する企業集団を目指しております。短期的に会社の規模や売上高の増大を求めるのではなく、商品とサービスのご提供を通じて社会・文化の向上への貢献に堅実に取り組みながら、そこで得られた利益が次の成長に繋がるような持続的成長企業となることが目指すべき目標であり、また課題であると考えております。企業が成長するための要素は様々ですが、当社の強みは創業以来培ってきた「信用」であり、またこれを支えているのは当社製品の「品質」への評価であると考えています。引き続き、これに満足することなく、品質の維持・向上に努めてまいります。

 

①サステナビリティ・ガバナンス経営の推進

「持続的(=サステナブル)」は、当社の事業経営・ビジネスモデルが持続可能とすることを指すのは勿論ですが、同時に当社が存在し活動する基盤となる社会・環境・経済が持続可能であることは、その前提であると考えており、その中で当社グループは、持続的企業価値の向上を目指しております。

当社グループはこれまでも、ESGの重要性を鑑み持続可能な社会の実現に貢献することが、企業の社会的責任であるとの認識の下、ESGのそれぞれの視点に立った事業活動を通じ、SDGsの各目標のうち持続的成長に向けた重要課題(マテリアリティ)を選定し、その達成に取り組んでまいりました。引き続きこの姿勢は堅持しつつ、社会や環境に対し負荷を与えないような事業活動を目指すことに止まらず、広く持続可能な社会や環境に貢献するためにできることは何か、という課題に使命感を持って向き合い、自社の持続的企業価値の向上と一体的に取り組んでまいります。

 

②中期経営計画

当社は、2025年度から2027年度までの3カ年を対象とした新しい中期経営計画「Move! 2027」を策定しました。前中期経営計画「Reborn 2024」では、基本方針「持続可能な成長に向けてサステナブル経営を推進する」に基づき、「サステナブルな製品供給の推進」、「サプライチェーンの強化」、「重要市場への積極的な進出」の3点を掲げて事業を推進しました。事業戦略の多くは着実に遂行してまいりましたが、一部には課題の残る結果となり、かつ長期化するウクライナ情勢、緊迫する中東情勢や中国の需要回復の遅れといった外部環境の大きな変化もあり、目標とした売上、利益水準、ROE共に未達となりました。

新中期経営計画では、「Reborn 2024」での課題認識を踏まえた取り組みを継続し、さらにこれを進化させる形での利益成長を目指していく考えです。具体的には、

1)家庭用機器事業における、成熟市場でのブランドアイデンティティの確立・強化を通じた付加価値の提供、及び成長市場での製品の投入によるシェアの拡大

2)産業機器事業における重要市場であるインド及び中国への注力と高付加価値製品の販売強化

3)IT関連事業におけるサービスの拡充とこれに伴う他事業とのシナジー創出

4)上記を支える組織体制の強化に向け、働きがいの向上と事業推進力の強化の好循環を構築

また、利益成長のみならず、株主還元の充実及び資本効率の向上によりROE8%を達成することを目標にし、資本コストや株価を意識した経営の実現を図ってまいります。

 

③家庭用機器事業

近年の家庭用ミシン市場におきましては、ミシンキルトなどの趣味を楽しむユーザー層を中心に、高機能、高付加価値モデルが広く受け入れられている一方で、インターネット通販の拡大に伴い、低価格帯モデルの定着も進行しております。

ミシンに関する多様なニーズや楽しみ方を的確に把握するため、当社では展示会や各種イベントを開催し、お客様との交流の機会を積極的に設けております。これにより、長年ハンドメイドに親しんでおられる熟練のご愛用者様から、ミシンを始められたばかりの初心者の方々に至るまで、幅広いお客様との貴重なコミュニケーションの場を実現しております。さらに、こうした取り組みは、モノづくりの楽しさを改めて実感していただく契機ともなっており、ハンドメイド文化の裾野は着実に広がりを見せているものと確信しております。あわせて、ウェブサイトやSNSを活用した情報発信も継続的に推進し、お客様との多様なコミュニケーションの構築に一層注力してまいります。これにより、国内外におけるソーイング文化の一層の浸透と深化に、さらには潜在的な需要の掘り起こしにも寄与できるものと考えております。

海外市場におきましては、北米および欧州市場を重要な戦略地域と位置付け、当社の強みである高付加価値製品を中心に、売上の拡大を図っております。その他の地域におきましても、市場ごとの特性やニーズを的確に把握し、サービス・サポート体制の強化とブランド浸透を通じて、着実な普及を推進しております。一方、国内市場におきましては、各販売店との関係強化をはじめ、SNSを活用した情報発信や展示会・講習会の開催を通じて、お客様の多様なご要望にお応えしております。今後も、業界のリーディングカンパニーとしての責任を果たしながら、「手づくりの楽しさ」と「ミシンの魅力」の発信に注力し、継続的かつ長期的な取り組みを推進してまいります。

他方、ウクライナ情勢の長期化や中東地域における緊張の高まりといった地政学的リスクに加え、米国の通商政策がもたらす世界経済への下押し圧力などにより、足元の経営環境には依然として不透明感が漂っております。当社グループは、北米、欧州、大洋州をはじめ、中南米、アジア、中東など、世界各国において幅広く販売活動を展開しておりますが、こうした外部環境の影響を十分に見据えつつ、未開拓市場および成長が見込まれる有望市場への進出を積極的に推進しております。なかでもインド市場においては、耐久性に優れた当社製の軽合金ミシンの販売拡大に注力し、市場基盤の強化を図ることで、地政学的リスクの分散とさらなる事業成長の実現を目指してまいります。

ミシンは、家庭における唯一の生産財とも称され、手づくりによるリメイクやリユースといった取り組みを通じて、エシカル消費にも寄与する存在であり、製品そのものがサステナブルかつ環境負荷の低減に貢献し得るものと認識しております。このように、環境への配慮が消費行動に直結する時代においては、ミシンが持つサステナビリティの価値を積極的に発信していくことにより、とりわけこれまでミシンに親しむ機会の少なかった若年層を中心に、裾野のさらなる拡大が期待されます。モノづくりを通じて人々の暮らしに豊かさをもたらすとともに、ミシンという製品の価値そのものを改めて見直していただける契機となるものと考えております。

 

④産業機器事業

産業機器事業は、直交型ロボット(卓上ロボットを含む)、サーボプレス、ダイカスト製品を主力とし、ミシン事業に次ぐ第二の柱として位置付けております。

直交型ロボットは、ねじ締め、塗布、はんだ付けなど多様な作業に対応し、工場内の様々な工程で活用されています。サーボプレスは、位置制御、荷重管理、トレーサビリティ機能に加え、電動化による環境優位性を有し、生産現場で広く使用されています。ダイカスト製品は、精密な加工が求められる産業用・協働ロボット、精密機器、自動車関連などで採用されています。

脱炭素社会の実現、省力化・電動化の進展により市場拡大が見込まれる一方、特定市場への依存や長納期部品の調達難、在庫最適化、生産体制の強化といった課題にも直面しております。

こうした中、当社は技術力・開発力の向上と並行し、有望・未開拓市場での販売・サービス拠点の拡充を図るとともに、パートナー企業との連携強化や新たな用途提案による提案型営業を進めてまいります。

中国市場ではローカル自動車メーカーからの引き合いが増加しており、当期に販社を設立したインドでも本格稼働に移行しています。

主力市場である自動車産業の変化に柔軟に対応し、既存顧客にとらわれず新規開拓を進めることで、産業機器事業の早期黒字化を目指してまいります。

 

⑤IT関連事業

情報サービス産業におきましては、IoT、AIなどの「デジタルトランスフォーメーション(DX)」による「第4次産業革命」が徐々に社会に浸透してきております。これにより、企業などの生産者側からは、これまでの財やサービスの生産・提供の在り方が大きく変化し、生産の効率性が飛躍的に向上する可能性が指摘されており、かつその対象領域も広がりを見せることが期待されています。企業における競争力強化や生産性の向上のためのIT投資は引き続き堅調に推移している一方で、人材不足が顕在化しており、技術者の増強と育成が重要な社会的課題となっております。

その中で当社は、社内のコンピュータシステム導入による電算処理のノウハウを活かし外部に提供できるよう、1970年にグループ会社である㈱蛇の目電算センター(現㈱ジャノメクレディア)を設立いたしました。それから50年以上、目まぐるしく変化し続けるIT業界において自らも進化しながら時代に対応し、お客様に確かな技術とサポートをお届けしてまいりました。その結果、当社の主要事業セグメントとなる程の成長を遂げました。現在のジャノメクレディアの強みは自社運用型サーバを基幹とするシステム構築・管理です。一方で企業ではクラウド型サーバの導入が進む中、DX化の急激な波が押し寄せるなど、IT企業に求められるスキルも変化及び多様化してきております。IT企業として更なる成長を目指すためには、時代に必要とされる技術を先読みし、これらの分野の経験を積む必要があります。現状を好機と捉え、まずは当社グループ内でDX化のためのシステム構築経験を蓄え、そのノウハウを強みとして外部へ向けて提供し、更なる収益増、及び事業拡大を図ります。

 

⑥研究開発・生産体制

当社は、国産初のミシンメーカーとして創業して以来、技術の改良を重ね、革新的機能の開発には常に先進的役割を果たしてまいりました。また、産業機器分野には、ミシンメーカーとして培った技術を応用・発展するなどして、高機能・高性能の商品開発を実現し、市場に送り出してまいりました。

「品質のジャノメ」として、世界のお客様に高い評価をいただいておりますが、今後もより高品質で耐久性に優れた商品を開発・生産し、信頼あるものづくりを行ってまいります。新たな価値創造の実現のため、先進デジタル技術の導入や、改善活動をキーワードに開発効率・スピードの向上に努めている他、新規要素の開発、各子会社との連携に取り組んでおります。また、市場のニーズを的確に捉えた魅力ある商品をスピーディーにご提供してまいります。さらには、適地適産化や部品の社内加工化を念頭に、原価低減・生産性向上を推し進め、機動的な生産体制を構築するとともに、社会的要請が高まる環境に配慮した製品の開発や製造工程における環境負荷低減にも一層取り組んでまいります。

 

⑦人的資本

当社では、働く全ての社員が社業の発展に向けて主体的・意欲的に取り組むことで、企業競争力や労働生産性を向上させ、それと同時に私生活も充実して過ごせるようにすることが目指すべき働き方であると考えております。当社は、業務への取り組み方や勤務態勢の見直し、時間外労働の縮小、年次有給休暇の積極的取得を一層進め、これらにより労働生産性を向上させ、ワーク・ライフ・バランスの充実を図ってまいります。

多様性の観点では、女性・外国人・中途採用者・障害者などの多様なバックグラウンドを持つ人財の積極的な登用を進めてまいります。そしてそれらの人財が働きがいを持って能力を発揮し、自らのアイデンティティが組織の成果達成に効果的に機能しているという実感を伴うよう、一体感を醸成してまいります。従来にない文化や価値観、考え方、新しい発想を尊重し、時に健全なコンフリクトも厭わずに取り入れていくことで、革新的なイノベーションの創出に繋げてまいります。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

  当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)当社グループのサステナビリティ基本方針

当社グループは、「世界の人々の豊かで創造的な生活の向上を目指す」「常に価値ある商品とサービスの提供を通じて社会・文化の向上に貢献する」という企業理念と、同理念に基づく「企業価値創造プロセス」による事業活動を通じて、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。

企業価値創造プロセス:https://www.janome.co.jp/company/process.html)

〈環境〉世界の人々の豊かで創造的な生活環境を守るべく、当社グループの企業活動における環境負荷の低

    減を推し進めるとともに環境保全に努めます。

〈社会〉製品・サービス等の創造的な価値提供により、様々な社会課題の解決に応え、企業価値を高めま

    す。

〈人財〉従業員一人ひとりが人権を尊重し、多様性を認め合い、かつ働きがいも感じられる組織作りを通じ

    て、持続可能な社会の実現に貢献します。

 

<マテリアリティ>


 

(2)ガバナンス

当社グループは、経営の意思決定において、サステナビリティの観点を取り入れ、持続可能な社会の実現と中長期的な企業価値向上の両立を目指しております。SDGsなど社会的課題への取り組みに対しては、代表取締役社長を委員長に社内横断的メンバーで構成されたサステナビリティ推進委員会が当社グループの活動全般を統括いたします。サステナビリティ推進委員会は、定期的に開催し、サステナビリティに係る重要事項の審議および課題・目標ならびに施策の決定とその実践の評価・推進等を担います。また、執行部門の目線だけでなく、客観的視点から当社グループのサステナビリティに関する様々な重要テーマを審議していくため、議長には社外取締役を置きます。サステナビリティ推進委員会における審議内容は年2回以上取締役会に報告し、取締役会は、同報告を受けグループ全体の環境活動を監督するとともに、気候変動に係る重要な方針等を決定し、経営計画をはじめとする事業戦略に組み込むなど、グループ全体で取り組みます。

 


 

(3)リスク管理

リスクを把握し事前に対応すること、またリスクが顕在化した場合、その影響を最小限にとどめ業務の早期復旧を図ることを目的として、リスク管理委員会を設置しています。同委員会は、取締役を委員長に部長職以上で構成され、グループリスク管理体制の整備や教育、情報の収集などを行うとともに、当社及びグループ各社のリスク評価を行い情報を共有し、その管理・低減に努めております。また、コンプライアンス委員会をはじめとする各種委員会を設置し、グループ全体のリスクを総合的にマネジメントする体制を構築しております。リスク管理体制については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)ガバナンス」をご参照ください。リスク管理委員会は、各事業部門やグループ子会社からの報告またはヒアリングにより、グループ全体のリスク・機会の把握と適切な対応を審議し、取締役会に報告します。サステナビリティに関連するリスク・機会は、サステナビリティ推進委員会においても共有され、重要度や具体的対応策について審議・決定し、その内容を取締役会に報告します。取締役会は、リスク管理委員会およびサステナビリティ推進委員会より、サステナビリティに関連するリスク管理の状況等について報告を受け、監督します。

 


 

(4)戦略

前中期経営計画「Reborn 2024」では、「持続可能な成長に向けてサステナブル経営を推進する」の基本方針の下に、当社の3つの事業領域で「サステナブルな製品供給の推進」、「サプライチェーンの強化」、「重要市場への積極的な進出」を掲げ、各事業での施策を着実に遂行してまいりました。新中期経営計画「Move! 2027」では前中期経営計画での課題認識を踏まえた取り組みを継続し、特定したマテリアリティへの取り組みを経営戦略に反映し、推進してまいります。また、ミシンは、古くより家庭にある唯一の生産財と呼ばれ、手作りによるリメイクやリユースなど、産業機器製品と共に「環境にやさしい、環境に配慮した」製品自体がサステナブルでエコに貢献できるものと認識しております。企業としての社会的使命および社会的課題の解決に向けた積極的な取り組みを継続することで、自らの持続的成長の実現と企業価値向上を目指してまいります。

 

(5) 気候変動への取り組みとTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への対応

当社グループは社会の一員として、温室効果ガスの排出削減をはじめ、環境問題に積極的に取り組んでまいります。サステナビリティ推進委員会では、重要課題の一つとしてこの課題を大きく取り上げており、同委員会が中心となって、当社グループの気候変動に係るリスクと機会を評価し、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に基づく情報開示の充実に向けて取り組んでおります。

 

① ガバナンス

「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)ガバナンス」をご参照ください。

② リスク管理

「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (3)リスク管理」をご参照ください。

③ 戦略

当社グループは、TCFD提言に基づき、将来の2℃及び4℃の気温上昇を想定したシナリオ分析を実施し、組織の気候関連リスクと機会を特定し、財務影響等について検証いたしました。

4℃シナリオでは、低炭素・脱炭素化は推進されず、異常気象が激甚化し、自然災害の増加に伴う設備への被害やサプライチェーンへの影響など顕在化する物理的リスクへ対策が重要であることを確認いたしました。

2℃シナリオでは、炭素税やプラスチック規制等の法規制の強化やエネルギー価格をはじめとしたコストの増加など、生産・調達の面で影響が大きいことが分かりました。一方、脱炭素社会が進むことで環境配慮製品への置き換え需要が進み、低炭素素材、省電力化など環境にやさしい製品に対する消費者ニーズの高まりなどが機会であることを確認いたしました。


 

④指標及び目標

当社グループは、グローバルに事業を展開する企業として、地球規模の気候変動への対応を社会的責任と捉え、環境問題の解決に積極的に取り組んでおります。また、気候変動によるリスクと影響への対策は、事業の持続的成長に不可欠な経営課題と位置づけています。

気候変動の取り組みとして当社グループは、GHGプロトコルに基づいて事業活動におけるCO2排出量の算定を行っており、算定対象範囲は、Scope1,2,3全てにおいて当社および連結子会社となります。また、CO2排出量の可視化を促進するために数値算定のDX化を進めております。CO2排出量に関する算定データについては、サステナビリティ推進委員会を中心に定期的な検証を行っており、今後、具体的な削減目標およびその達成に向けた施策の策定を予定しております。

当社グループは、より一層環境に配慮した事業活動に取り組み、持続可能な社会の実現と会社の企業価値向上を図ってまいります。

 

 CO2排出量の推移(3年間)                           排出量(t-CO2)

 

 

2021年度

2022年度

2023年度

前年比(%)

Scope1

直接排出量

4,341

3,996

3,439

86%

Scope2

間接排出量

12,280

8,559

8,098

95%

Scope3

Scope1、2以外の間接排出量

113,567

166,965

175,700

105%

合計

サプライチェーン

排出量

130,188

179,520

187,238

104%

 

 ※2021年度のScope3の算定範囲は本社のみ

 ※2023年度のScope3の増加の主な要因はカテゴリ1(購入した製品・サービス)で、生産工場の材

  料仕入の増加(為替の影響を含む)によるものであります。

 

(6)人財育成及び社内環境整備に関する方針

当社グループは、「人こそが最大の経営資源である」との基本理念のもと、人的資本の価値を継続的に高めることにより、従業員の働きがい向上と企業の事業推進力の強化という好循環の創出を目指しています。この方針に基づき、人事戦略を構築・実行しております。

 

<中期経営計画における人事戦略>


 

①戦略

 当社グループは、企業価値の源泉たる人的資本を着実に深化させることで、従業員一人ひとりの働きがいを高め、組織全体の事業推進力を強化するという好循環を構築することを基本方針としています。人事戦略は、Ⅰ.優秀な人財の確保と最適配置、Ⅱ.働きやすく安心できる職場環境の整備、Ⅲ.多様なキャリア形成機会の提供、Ⅳ.成果に応じた公正な評価・報酬制度の確立という4つの視点に基づいて設計されており、制度と施策の両面から人的資本経営を推進しています。これらの取り組みにより、外部環境の変化にも柔軟に対応できる、強靭かつしなやかな組織体制の構築を目指しています。

〈人財育成方針〉

 当社グループは、企業が持続的に成長し、社会的価値を創出していくうえで、人の力が最大の推進力であるとの考えのもと、人を「最も重要な基幹」であり「資本的存在」として位置付けています。人件費や労務費といった費用概念にとどまらず、長期的視点での投資対象である「人財」として捉え、経営の中核に据えております。

 中期経営計画「Move!2027」においては、ポテンシャルを重視した新卒採用、多様な経験を持つ中途人財の登用、グローバル人財の育成・活用、キャリア志向に応じた育成プログラムの整備などを通じて、タレントマネジメントを軸とした人財開発を進めています。加えて、目標管理制度や階層別教育体系の再構築を通じて、従業員の自律的成長と組織への貢献の両立を支援しています。

1)採用

 当社は、人的資本価値の深化に向けて、企業理念への理解と実践力を有し、企業とともに持続的に成長できる優秀な人財の確保を重視しています。新卒定期採用を基本とし、ポテンシャル重視の視点から、将来的に基幹人財として多方面での活躍が期待される人財を広く受け入れています。高校卒業者から大学院修了者まで幅広い層を対象とし、それぞれの修得知識・教養・技能を生かした育成と配置を進め、より多面的かつ機能的な人財構成を目指しています。

 同時に、中途採用についても積極的に推進しており、外部での業務経験や専門性を新たな発想の源泉と位置付け、イノベーションの創出に繋げています。また、スペシャリストや海外拠点におけるグローバル人財の登用にも注力し、タレントマネジメントの観点から最適な配置を行っています。即戦力となる人財には、初期導入教育を一部省略する一方で、能力を早期かつ最大限に発揮するためには、企業文化や組織との親和性が極めて重要であると考えています。当社では、個人よりもチームとしての成果を重視する文化が根付いており、多面的なコミュニケーションを前提とした協働体制が、インクルージョン推進にも寄与しています。

2)育成

 当社グループは、価値ある商品およびサービスの提供を通じて社会に貢献するため、「人」が最も重要な経営資源=人的資本であるという考えのもと、全従業員を対象に継続的かつ戦略的な教育・研修を推進しています。人財育成は経営理念の体現および企業競争力の強化に直結するものであり、経営トップを含めた全社的な関与のもとで実施すべき重要な経営課題と位置付けています。「中期経営計画Move!2027」では、キャリアパス形成の支援、多様な価値観への対応、成果に応じた評価との連動など、育成を軸とした好循環の構築を掲げており、当社はこの方向性に沿って育成方針を策定しています。

 基本方針は次の通りです。①社員個々が持つ、「成長への意欲」「変化の必要性」に対し、会社はこれに報いる機会を提供し、かつ支援する。社員一人ひとりは、主体的・意欲的に自己成長・自己変革を目指す。②成長度合いが上がるにつれて、徐々に「教わる」教育から「学ぶ」教育、さらに「考える」教育へと段階を進める。社員には、自らを客観的に見つめ、多様な観点から振り返り、気づき、そして自律的成長を図るよう促す。③仕事を通じて体験(経験)するという学習が人の成長に大きな影響をもたらすことから、会社は、社員が有益な体験を積む機会が得られるように努める。社員はこれを無為とすることなく、課題感を持ち、失敗に臆することなく取り組む。④教育課題の中には、緊急性・即効性を要するものもあるが、総じて人財教育は、短期間で成果を出すものではなく、継続的な取り組みが必要である。人と人とがしっかりと対峙して、継続的に共に育ち(共育)続け、高め合うことが要諦と考えています。

 主たる教育領域としては、まずは①行動改革を促す長期的人財開発があり、これには、理念浸透及び行動憲章理解(会社全体の理念・指針の下で、自らの業務を行う目的・方向性についての意識を保持するための教育)、管理職教育、階層別教育、目的達成志向が含まれます。次に、②業務スキルや知識を習得する中期的訓練があり、これにはビジネスマナーや労務知識、法務知識、英会話等の継続的に必要な業務スキルや知識の習得が当たります。最後に、③緊急的課題解決を要する短期的教育があります。

 一例として、階層別教育の一環として、入社3年目の従業員を対象に、これまでの仕事経験を振り返り、自律的キャリア開発の重要性を認識することで自己の強みや能力を明確にし、今後の方向性を決定することを目的とし、「入社3年目研修」を実施しております。その他、自己啓発を促進する取り組みとして、希望者にはオンライン英会話研修や通信教育講座、eラーニングなどを行っております。

 当社の教育研修プログラムは当社ウェブサイト(https://www.janome.co.jp/recruit/careerpath/)をご参照ください。

 

〈社内環境整備方針〉

 当社グループは、従業員の健康・安全を企業経営の土台と捉え、心身ともに健やかに働ける環境づくりに注力しています。定期健康診断やストレスチェックに加え、安全衛生委員会による職場点検やリスク対策の強化を継続的に実施し、労働災害の未然防止に努めております。また、「働きやすい環境の整備」という戦略視点のもと、ノー残業デーや時間外労働抑制策、年次有給休暇の計画取得制度の導入などを通じて、ワーク・ライフ・バランスの実現を推進しています。さらに、ダイバーシティ&インクルージョンの観点から、女性活躍推進や育児・介護と仕事の両立支援、障害者雇用の促進にも積極的に取り組み、誰もが公平に能力を発揮できる職場づくりを進めております。これにより、従業員のエンゲージメントを高め、持続可能な組織基盤の構築を図ってまいります。

1)働き方改革の推進

 当社グループでは、高齢者や障害を持つ方を含む多様な人財が、正社員・非正規社員を問わず就業しており、性別にかかわらず活躍できる環境の整備に取り組んでいます。一人ひとりの社員が、それぞれの持ち場で意欲的に働き、生産性向上に努めつつ、社外における私生活も充実して過ごすことができる状態が、当社が理想とする働き方であると考えています。こうした環境の実現は、人的資本価値の深化とエンゲージメント向上に直結するものであり、「働きやすい環境の整備」という視点に基づき、制度設計と運用を進めています。

 ワーク・ライフ・バランスの実現に向けては、出産・育児・介護などのライフイベントに応じた柔軟な勤務制度を整備し、誰もが安心して働ける職場づくりを推進しています。業務への取り組み方やプロセスの見直しに加え、デジタルツールの導入を進めることで、時間外労働の抑制や年次有給休暇の取得率向上にも注力しています。長時間労働の常態化はないものの、予防措置として毎週水曜日を「ノー残業デー」と定め、始業・終業時に定時退社を促すアナウンスを行っています。さらに、22時以降の勤務を原則禁止とし、月間時間外労働の集計結果に基づき、負荷の高い部署への警告通知を実施するなど、組織的な管理を強化しています。有給休暇取得促進の観点では、連続休暇の取得奨励や、半日・1時間単位での柔軟な取得制度を導入し、働きがいと健康的な労働環境の両立を図っています。

 

2)女性活躍の推進

 当社グループでは、ジェンダーの多様性を尊重し、性別に関わらず全ての社員が能力を発揮し活躍できる職場環境の構築を重要な戦略課題と位置付けています。とりわけ、女性従業員の活躍推進は、組織の持続的成長と人的資本価値の最大化に資するものと認識しており、「多様な人財の確保」および「キャリアパス形成支援」の観点からも、積極的な施策展開を進めています。育児休業制度の充実や、昇給・昇格査定時の性差のない公正な評価は当然の前提とし、個々のライフステージや志向に応じた支援体制を整備しています。

 当社は2020年に「女性の役員・管理職登用に関する自主行動計画」を策定し、現在は「2030年までに本社の女性管理職比率を25%にする」という目標を掲げています。この取り組みの一環として、2024年3月には厚生労働省より「えるぼし(女性活躍推進企業)」認定を取得しました。また、「子育てサポート企業」として2008年に「くるみんマーク」を取得し、育児支援制度の継続的な拡充にも取り組んでいます。育児休業は子どもが満3歳に達するまで取得可能で、分割取得にも対応しています。さらに、産後パパ育休については、当該休業期間中のうち14日間は有給休暇扱いとしています。2024年には「TOKYOパパ育業促進企業登録マーク(ブロンズ)」も取得しました。

 復職後の支援として、子どもが小学2年生の年度末まで短時間勤務を選択できる制度や、小学校3年生の年度末までの看護休暇を1時間単位で取得できる制度も整備しており、多様なライフスタイルに即した働き方を支えるとともに、女性を含む全ての社員が長期的に活躍できる組織づくりを推進しています。

 

3)人権尊重

 当社グループは、人権尊重の徹底は企業の果たすべき基本的責任であるという認識のもと、「誰もが尊重され、安全に働ける職場」の実現を目指しています。この理念に基づき、社内組織として「人権啓発推進委員会」を設置・運営し、差別やハラスメントのない職場風土の醸成に取り組むとともに、全従業員の人権意識の向上を継続的に推進しています。これらの取り組みは、「働きやすい環境の整備」および「インクルージョンの促進」と密接に結びついています。

 施策の一環として、外部講師を招いた人権啓発研修会を定期的に開催しており、加えて、日常的に人権を意識するきっかけとして、人権啓発DVDの上映会も実施しています。毎年12月の人権週間には、従業員およびその家族から人権標語を募集し、社内入選作品を外部団体へ応募するなど、啓発の機会を幅広く設けています。さらに、東京人権啓発企業連絡会をはじめとする企業連携組織にも加盟し、企業の立場からの社会的な人権意識向上にも積極的に参画しています。こうした活動を通じて、社内外における人権尊重の企業文化の定着を目指しています。

 

 

②指標及び目標

当社グループは、2020年に「女性の役員・管理職登用に関する自主行動計画」を策定し、現在は「2030年までに、本社の女性管理職を25%にする」ことを目標として掲げております。また、ワーク・ライフ・バランスの実現に向けたライフイベントに応じた柔軟な勤務制度の整備や、階層別研修などを実施し、女性従業員のキャリア形成を支援しております。

 

2019年度

2020年度

2021年度

2022年度

2023年度

2024年度

女性管理職数

10

12

13

11

12

女性管理職比率

13.4

15.2

17.6

19.4

16.7

15.8

 

 当社グループにおける、管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異についての実績は、「第1 企業の概況 5 従業員の状況 (4) 管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異」に記載しております。

 

3 【事業等のリスク】

[リスク管理体制]

リスクを把握し事前に対応すること、またリスクが顕在化した場合、その影響を最小限にとどめ業務の早期復旧を図ることを目的として、リスク管理委員会を設置しています。同委員会は、取締役を委員長に部長職以上で構成され、グループリスク管理体制の整備や教育、情報の収集などを行うとともに、当社及びグループ各社のリスク評価を行い情報を共有し、その管理・低減に努めております。また、コンプライアンス委員会をはじめとする各種委員会を設置し、グループ全体のリスクを総合的にマネジメントする体制を構築しております。

 

〈リスク管理体制図〉


 

[個別のリスク]

当社グループの経営成績、株価及び財務状況に影響を及ぼす可能性のある主なリスクとして以下のとおり認識し、その発生の回避を図るとともに、発生した場合の影響を最小限にとどめるよう対処してまいります。

また、各事業における個別のリスク及び対応策は「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)当社グループの中長期的な経営戦略及び対処すべき課題ならびに経営環境 ③家庭用機器事業 ④産業機器事業」をご参照ください。その他の各事業共通のリスクは、「(各事業共通のリスク)①~⑮」の記載のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(各事業共通のリスク)

①為替変動がもたらす影響について

当社グループでは、家庭用機器事業及び産業機器事業における海外市場での積極的な営業展開により、連結売上高に占める海外売上高比率が70%前後で推移しております。そのため為替先物予約ならびに当社・子会社間のネッティング決済によって為替リスクを軽減しておりますが、海外売上高の大部分を占める取引を外貨建てで行っておりますので、為替変動により当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

②仕入れコストの上昇について

当社グループでは、日本、台湾、タイに生産拠点を構え、世界市場の需要動向に応じた効率的な生産を行っており、グローバルな視点からの部品の調達により、仕入れコストの安定ならびに低減を図っております。また、当社生産管理本部が国内、海外の生産拠点を統括管理し、グループ全体で、仕入れコストへの影響を最小限に抑える努力を続けておりますが、鉄、アルミニウム、銅、プラスチック(樹脂)など原材料費の上昇により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③カントリーリスクについて

当社グループでは、生産及び販売活動を行っている各国におきまして、政治体制の変化、法規制の変更、政治・経済の変動、地震・台風等の自然災害、戦争・テロ等が発生し、事業活動の継続が困難になるなどの場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。ロシア・ウクライナ情勢の長期化に伴い、ロシア向けの販売は停止していることに重ねて中東情勢の緊迫化の影響から中東全域及びその周辺国においても販売に影響があり、売上が減少するだけでなく、工場の稼働率低下や生産調整などにも支障をきたす可能性があります。このような状況が継続した場合、当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

④品質管理について

当社グループの製品に関しては長年に亘る製造ノウハウを有しております。また、PL(製造物責任)委員会を設置し、製品に関する安全性等について毎月審議するとともに、当社品質保証部を中心に当社グループ全体の品質保証活動の推進をしており、当社及び国内外の関係会社において生産するミシン、産業機器などに対する品質監査と品質状況の把握に努めております。万一、重大な品質問題が発生した場合、リコール費用の発生やブランドイメージの低下により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤法規制等について

当社グループは業務の適正化、財務情報の信頼性を確保するとともに、関連法規・定款等を遵守する経営を行うべく、内部統制の充実に向けた管理体制を確立しております。しかしながら、関連法規や規制を遵守できない事象が発生した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥市場環境について

営業活動を展開するうえで競合他社との競争は避けられませんが、そのような状況に応えるべく開発・製造・販売が一体となって商品・サービスの品質向上に努めております。しかしながら、競争が激化するなど、市場環境が大きく変化した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑦個人情報の管理について

当社グループでは、「個人情報保護方針」及び「個人情報管理規定」等を策定し、個人情報管理委員会を設置するなど、個人情報保護法に基づく社内管理体制を確立しておりますが、万一、顧客情報をはじめ大量の個人情報が漏洩した場合は、当社グループの信用のみならず業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑧金利変動について

当社グループの有利子負債には、金利変動の影響を受けるものがあり、金利上昇による金利負担の増加が当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑨固定資産の減損について

当社グループが所有する有形固定資産、無形固定資産、投資その他の資産等について減損処理が必要となった場合には、当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑩繰延税金資産について

当社グループは、繰延税金資産について適正な金額を計上しておりますが、将来の課税所得の見積り等に大きな変動が生じた場合、あるいは制度面の変更等があった場合には繰延税金資産が減少し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑪退職給付債務について

当社グループは、退職給付債務について数理計算上で設定される割引率等の前提条件に基づき適正な金額を算定しておりますが、この前提条件が大きく変化した場合における退職給付債務の増加が、当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑫借入金にかかる財務制限条項について

当社借入金の一部について、財務制限条項を付されているものがあり、抵触しますと金融機関から当該借入金の期限の利益喪失請求が行われる可能性があります。

 

⑬事業再編等について

当社グループは、不採算事業からの撤退や関係会社の整理等の事業再編を行うことがありますが、かかる事業再編が当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑭自然災害について

当社グループの工場などにおいて、万一大きな自然災害などが発生した場合には、工場設備の被災や原材料調達などサプライチェーンの障害に伴う生産活動の停止による機会損失などによって、当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑮感染症等によるパンデミックについて

新型コロナウイルス感染症のようなパンデミックによるロックダウンにより、取引先、サプライチェーンや物流の停滞・混乱により、売上の消失や製品供給の停滞など、当社グループの財政状態や経営に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループの従業員への集団的感染の場合は、操業の一時的停止など事業活動への影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要及び経営者の視点による分析・検討内容

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要及び経営者の視点による分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 経営成績の状況

(百万円)

前連結会計年度

当連結会計年度

増減

率(%)

売上高

36,476

36,340

△135

△0.4

営業利益

1,716

2,224

508

29.6

経常利益

1,763

2,261

497

28.2

親会社株主に帰属する当期純利益

1,131

1,794

663

58.7

為替レート(対USD)

144.62円

152.56円

7.94円

 

 

 

当期における世界経済は、米国では内需の堅調な伸びを背景に景気は底堅く推移し、欧州は低成長が続いているものの、持ち直し基調となりました。一方、中国経済は先行きの不透明感もあり、設備投資への弱い動きや低調が続く雇用情勢など足踏み状態が継続しています。国内経済においては、雇用・所得環境の改善、経済活動が正常化する中で、緩やかな回復傾向が続きましたが、継続的な物価上昇による個人消費の下振れや米国の通商政策による影響など景気を下押しするリスクの高まりが懸念されております。

このような状況の中、当社グループにおきましては、中期経営計画(Reborn 2024)の最終年度として、基本方針である「持続可能な成長に向けてサステナブル経営を推進する」のもと事業運営に取り組みました。販売面では、お客様のニーズに沿った新製品の投入や高付加価値の技術サービスの提供を推し進めました。一方で、製造原価低減を図り、収益の改善に努めましたが、市場は未だ本格的回復の途上にあるなど、当社グループを取り巻く経営環境は厳しい状況が続き、当初予定していた計画値には届きませんでした。

以上の結果、当社グループの当期の売上高は36,340百万円(前期比135百万円減)、営業利益は2,224百万円(前期比508百万円増)、経常利益は2,261百万円(前期比497百万円増)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,794百万円(前期比663百万円増)となりました。

 

セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。

 

・家庭用機器事業

(万台、百万円)

前連結会計年度

当連結会計年度

増減

販売台数

北米、欧州、大洋州

57

58

1

中南米、中東、アジア

27

25

△2

日本

11

7

△4

95

89

△6

売上高

27,706

28,773

1,067

営業利益

1,372

2,159

786

 

 

海外では、中・高級機種の販売に積極的に取り組み、付加価値の高い新製品の投入など、収益性の向上に努めました。地域別では北米や欧州などの先進国では厳しい競争環境から販売は苦戦を強いられましたが、インドをはじめとしたアジア地域では堅調に推移しました。

国内においては、販売機種構成の見直しにより収益性の改善を進める一方で、ワークショップの開催や各種イベントへ出展し、つくる楽しさを広め、さらにSNSでの継続した情報発信を通じて潜在需要の掘り起こしに努めました。また、学校販売においては、積極的な営業活動の推進及び全国の小・中学校の先生方を対象とした「オンラインミシン講習会」の実施など、サポート体制の強化に取り組みました。

この結果、家庭用機器事業全体の売上高は28,773百万円(前期比1,067百万円増)、営業利益は2,159百万円(前期比786百万円増)となりました。

 

・産業機器事業

(台、百万円)

前連結会計年度

当連結会計年度

増減

販売台数

ロボット

1,641

1,295

△346

サーボプレス

882

865

△17

ロボット

サーボプレス

売上高

3,093

2,758

△335

営業利益

△168

△85

82

ダイカスト

売上高

2,685

2,082

△602

営業利益

△100

△337

△236

売上高

5,778

4,841

△937

営業利益

△269

△423

△153

 

 

ロボット・プレス事業においては、新製品の投入や顧客ニーズに合わせたカスタマイズ装置の提供によるラインナップの拡充を通じて、付加価値の高い技術サービスや製品の強化を図り、足元の受注は中国、韓国などアジア向けでは回復傾向が見られます。また、重要市場であるインドでは、販売子会社を設立し、市場拡大に向けて技術サポート体制の構築を図りました。しかしながら、ダイカスト事業においては、世界的な設備投資計画の遅延や、産業用ロボットメーカーの生産計画に連動した需要減といった影響が継続しており、事業環境は依然として厳しい状況です。

この結果、産業機器事業全体の売上高は4,841百万円(前期比937百万円減)、営業損失は423百万円(前期は269百万円の営業損失)となりました。

 

・IT関連事業

(百万円)

前連結会計年度

当連結会計年度

増減

売上高

2,782

2,529

△253

営業利益

487

401

△86

 

 

ITソフトウェア開発や情報処理サービス、システム運用管理においては、顧客のIT投資におけるニーズに対応し、顧客との意思疎通や品質管理の徹底による生産性の向上を図るなど、顧客に満足いただけるサービスの提供や新規顧客開拓などに努め、安定した受注を確保しました。

この結果、IT関連事業の売上高は2,529百万円(前期比253百万円減)、営業利益は過去最高水準の前期に次ぐ401百万円(前期比86百万円減)となりました。

 

② 経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 <前中期経営計画「Reborn 2024」における目標値の達成状況>


※1:2024年5月10日公表の中期経営計画の修正値(括弧書き部分は当初の中期経営計画における計画値)

 

 当社グループは、2023年3月期から2025年3月期を対象とした中期経営計画「Reborn 2024」において、「持続可能な成長に向けてサステナブル経営を推進する」の経営方針に沿って、売上高40,000百万円、営業利益2,500百万円、営業利益率6.3%を目標(KPI)としておりました。「Reborn 2024」において掲げた事業戦略の多くは着実に遂行してまいりましたが、一部には課題の残る結果となり、かつ長期化するロシア・ウクライナ情勢、緊迫する中東情勢や中国の需要回復の遅れといった外部環境の大きな変化もあり、目標とした売上、利益水準、ROE共に未達となりました。

 

<新中期経営計画「Move! 2027」における経営指標>


 

 新中期経営計画「Move! 2027」では、前中期経営計画「Reborn 2024」での課題認識を踏まえた取り組みを継続し、さらにこれを進化させる形での利益成長を目指していく考えです。各事業戦略を着実に実行し、成長戦略と株主還元を両立させながら、持続可能な成長を実現してまいります。また、足元では長期化するウクライナ情勢や中東情勢などの地政学リスク、米国の通商政策による景気への影響などを注視しつつ、事業を推進してまいります。なお、2026年3月期の通期連結業績予想については、売上高は400億円、営業利益は25億円、経常利益は24億円、親会社株主に帰属する当期純利益は15億円としております。

 

③ 財政状態

当社グループにおける財政状態の概況は次の通りであります。

当社グループの当連結会計年度末の総資産は、49,629百万円(前期比1,191百万円減)となりました。

資産の部では、流動資産が現金及び預金の減少、受取手形の減少、売掛金の減少等により、25,860百万円(前期比710百万円減)となりました。固定資産は、土地の減少、建物及び構築物の減少、繰延税金資産の増加等により23,769百万円(前期比481百万円減)となりました。

負債の部では、短期借入金の減少、支払手形及び買掛金の減少、未払法人税等の増加等により14,187百万円(前期比1,638百万円減)となりました。

純資産の部(非支配株主持分を含む)は、自己株式の消却、土地再評価差額金の減少、為替換算調整勘定の減少等により、35,442百万円(前期比446百万円増)となりました。

 

④ キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末から375百万円減少し、7,081百万円となりました。

 

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益2,161百万円、減価償却費1,023百万円、法人税等の支払額358百万円等により2,625百万円の資金の増加となりました。(前期は2,068百万円の資金の増加)

 

投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出1,082百万円、無形固定資産の取得による支出120百万円、有形固定資産の売却による収入865百万円等により、373百万円の資金の減少となりました。(前期は230百万円の資金の増加)

 

財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の純増減額の減少1,360百万円、配当金の支払額736百万円、自己株式の取得による支出695百万円等により2,906百万円の資金の減少となりました。(前期は2,432百万円の資金の減少)

 

 

⑤ 生産、受注及び販売の実績

a 生産実績

当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

前期比(%)

家庭用機器事業(百万円)

13,339

7.0

産業機器事業(百万円)

3,882

△13.6

合計(百万円)

17,221

1.6

 

(注) 金額は製造価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

b 受注状況

当社グループの生産は、主として見込み生産によっているため、記載を省略しております。

 

c 販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

前期比(%)

家庭用機器事業(百万円)

28,773

3.9

産業機器事業(百万円)

4,841

△16.2

IT関連事業(百万円)

2,529

△9.1

    報告セグメント計(百万円)

36,144

△0.3

その他(百万円)

195

△6.1

合計(百万円)

36,340

△0.4

 

(注) セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

⑥ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、資産及び負債または損益の状況に影響を与えるような会計上の見積りは、過去の実績等の連結財務諸表作成時に入手可能な情報に基づき合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積もり特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

⑦ 資本の財源及び資金の流動性について

当社グループは、安定した財務基盤を確保した上で、有利子負債を効果的に活用し、資本構成のバランスを図ることで、財務の健全性と資本効率の向上の両立を図ることを財務戦略としています。資本の健全性を維持するとともに、銀行借入を有効に利用することで資本コストの低減を進め、ROEの向上を目指します。

主な資金需要には、部品原材料の購入及び製造費用、販売費及び一般管理費の営業費用と売掛債権の回収までを繋ぐ運転資金や、生産能力・機能の維持・拡大を目的とする設備投資があります。また、新製品や新技術開発のための研究開発費も挙げられます。事業活動により得られた資金は、これらの運転資金の圧縮や生産性向上をもたらす設備投資、更には主力事業である家庭用機器事業と産業機器事業を市場競争力強化に導く研究開発に再投入いたします。

適正な手元現預金の水準につきましては、概ね月商の1.5ヶ月相当としております。これは、可能な限り資金活用の効率化を図ったものですが、当社は主力金融機関によるシンジケーション方式のコミットメントライン(総額100億円)を設定しており、緊急の資金需要が発生した場合も機動的な資金調達が可能なことから、流動性の確保については対処されております。現在、新規の資金調達は、短期資金の銀行融資のみとしておりますが、今後、これとは別に、大型の事業案件などのまとまった資金需要が発生した場合には、株式発行による調達や社債発行などの直接金融による市場からの長期資金調達も含め、資本構成や資本コストへの影響を踏まえて検討してまいります。

株主還元につきましては、2017年3月期決算期の再開以降実施しております配当を安定的に継続し、中長期的な利益成長に応じた増配を目指してまいります。累進配当を意識し、DOE3%以上かつ、連結配当性向40%以上を目安に配当を実施してまいります。また、資本市場の動向を踏まえ、機動的な自己株式の取得を実施してまいります。

<中期経営計画における戦略的アロケーション>


 

 

5 【重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

当社グループの研究開発活動については、顧客本位の価値ある商品とサービスを提供できるように、当社研究開発本部が中心となって、時代を先取りした家庭用ミシンと、ものづくりに必要とされる高機能を備えた産業用機器の開発で世界をリードしています。

電子部品を用いたマイコン制御技術によるミシン・産業用機器の応用開発、各種自動制御機構、金属素材の特殊鋳造加工技術・転写型技術など、あらゆるハイテク分野でその技術を蓄積し、次代を担う新技術・新工法の研究開発に積極的に取り組んでいます。

 

当連結会計年度における研究開発活動をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

(1)   家庭用機器事業

家庭用機器事業では、刺しゅう機能付きコンピュータミシンを始めとする家庭用ミシン、小型ロックミシン及びその関連商品(刺しゅう専用ソフト他)、スマホ・タブレットから操作する刺しゅう専用ミシンの入門機種などの研究開発を行っております。

また、海外生産子会社においても新たな商品開発拠点としての機能をもたせ、開発設計業務のスピードアップを図っています。

当連結会計年度の研究開発費の金額は、1,039百万円であります。

 

(2)   産業機器事業

産業機器事業では、ミシンの生産技術を応用した業界初のサーボプレス(電動モータプレス機)、同じくミシンの研究開発過程でその技術を応用した卓上ロボット、そしてインライン型のサーボスカラーロボットや直交ロボットなどの研究開発を行っております。

その開発手法はサーボプレス、ロボット関連商品それぞれで要素技術をプラットフォーム化した開発を行っており、サーボプレス、ロボットともにそのシリーズ化において、商品開発のスピードアップを図っています。

当連結会計年度の研究開発費の金額は、397百万円であります。

 

以上、その他事業の研究開発費2百万円を含めた当連結会計年度の研究開発費の総額は、1,439百万円であります。