第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年6月26日)現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営の基本方針

NTNグループは、企業理念の実践を通じて、「なめらかな社会」の実現を目指します。ステークホルダーをはじめとした社会から信頼され必要とされる企業として、人権の尊重とコンプライアンスを重視し、事業活動に取組んでまいります。

※「なめらかな社会」:人と自然が調和し、人々が安心して豊かに暮らせる社会

 

<企業理念>

新しい技術の創造と新商品の開発を通じて国際社会に貢献する

 

1.独創的技術の創造

2.客先及び最終消費者に適合した付加価値技術及びサービスの提供

3.着実な業績の伸長の下での社員の生活向上、株主への利益還元、社会への貢献

4.グローバリゼーションの推進と国際企業にふさわしい経営・企業形態の形成

 

<ステークホルダーへの姿勢>

従業員

顧客

取引先

地域社会

株主

環境

多様性と個性を尊重し、従業員が安全で健康的に働き、活躍できる職場環境づくりに努めます。

お客様と誠実に向き合い、安全・安心で信頼性の高い商品・サービスを提供することにより、お客様の満足を追求します。

公正で自由な環境のもと、取引先との相互信頼に基づく良好なパートナーシップを構築し、共に成長・発展をはかります。

事業を行う地域の文化や慣習を尊重し、事業活動を通じて、地域社会の期待に応え、長期的な信頼関係を構築します。

持続的な利益の創出による株主への利益還元に努め、積極的なコミュニケーションを通じて、長期的な信頼関係を構築します。

事業活動において自然との調和をはかり、環境負荷低減に寄与する技術と商品・サービスの提供を通じて、地球環境に貢献します。

 

 

(2) 経営戦略及び優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

「なめらかな社会」の実現に向けて、当社グループが優先的に取組むべき13項目のマテリアリティを特定し、対応施策の策定を行い、その進捗状況を定期的に確認しています。

昨年4月、当社は約10年後に目指す姿として、新たに「2035年度の姿と目標指標」を設定しました。OEMと補修の両輪で安定的に稼ぐ事業構造へ変革することで、景気変動下においても株主資本コストを安定して上回るROEの継続と、カーボンニュートラルの達成及び豊かな人づくりの実現を目指します。これらの「経済的価値」と「環境・社会的価値」を当社グループのステークホルダーとともに向上させることで企業価値を高め、ステークホルダーをはじめとした社会から信頼され、必要とされる企業を目指してまいります。

 

[中期経営計画「DRIVE NTN100」Finalの概要]

昨年4月から3年間の中期経営計画「DRIVE NTN100」Finalを開始しました。「事業構造の変革(Transformation)の加速」という前中期経営計画の基本方針は変えず、前中期経営計画で果たせなかったNTNの再生を完了させる期間と位置づけています。NTNの再生のために、生産再編を中心とする事業構造改革を実行するとともに、「SQCCD」の強化を通じて「稼ぐ力」の向上に注力しております。

※ Safety(安全)、Quality(品質)、Compliance(法令遵守)、Cost(コスト)&Cash(キャッシュ)、

   Delivery(納期)&Development(開発)

 

1.基本戦略

(1) デジタル技術と経営資源の融合

AIをはじめとするデジタル技術は更に進化し、ビジネスへの活用も拡大しています。それらのデジタル技術と当社が培った経営資源を融合し、事業構造の変革を加速することで、NTNの再生を成し遂げます。

 

(2) 生産再編

本中期経営計画の3年間で、事業構造改革に繋がる生産再編の企画、具体化及び実行を進め固定費圧縮と競争力の向上を目指します。生産再編に必要な構造改革費用を確保するとともに、株主還元、債務返済等に適切に資金を配分した上で、2035年度に向けた成長が加速できるよう成長投資、カーボンニュートラル、情報化投資等に資金を振り分けます。

 

(3) 「安全、品質、法令遵守、コスト・キャッシュ、納期・開発」に関する企業理念の定着化推進

「創業者の精神」、「企業理念」、「NTNスピリット」に代表される当社グループの企業理念体系を従業員に定着させるため、「安全、品質、法令遵守、コスト・キャッシュ、納期・開発」の頭文字をとった「SQCCD」を事業運営の柱となるポリシーと位置づけ、日頃から全世界の従業員が身近な心構えとして活用できるように徹底しています。

 

2.事業別戦略

OEM向け利益率向上と補修向け供給力強化を目的に、昨年4月に市場軸組織から商品軸組織へ大幅な組織変更を行いました。これまで市場軸組織で分散していた軸受事業を集約することでOEM向けと補修向け一体で稼ぐ事業へ変革するとともに、当社グループの売上の6割を占める自動車向け等速ジョイント(CVJ)とアクスル軸受の利益体質の強化を図ります。

また、持続的成長を実現するため、「新たな領域への展開」に関わる研究開発組織を集約し、「コア技術を活かした他社優位性商品の実現」を活動軸に、マーケティングから開発、生産を一気通貫で運営する「未来創造開発本部」を昨年4月に設置しました。市場・顧客ニーズに合致した商品・サービスの創出を加速します。

(1) 軸受他事業

自動車OEMや産業機械OEM、補修向け等様々な市場に販売している軸受製品を、商品軸で管理する事業組織に集約、変更することで、OEMと補修一体で稼ぐビジネスモデルへ変革します。OEM向けと補修向けの生産能力の最適配分、及び資産効率の最大化を図り、事業構造の変革を進めることで、補修向けの販売拡大と軸受事業の利益拡大を推進します。また、電動化・EV用新商品開発による利益ある新規案件の獲得や、お客様の設備の状態監視ビジネスの拡大等、新たな領域における事業拡大を通じて、ハードの売り切りからソフト・サービスを加えたビジネスへ変革を目指します。

また、成長分野である、次世代モビリティ・モジュール、ロボット周辺モジュール、自然エネルギー商品を基軸に、市場ニーズに合致した、機能・品質・コストに優れたモジュール商品、ユニット商品を開発し、新事業となる商品の創出と育成を加速します。

<取組み状況>

補修市場への供給強化に向けて、当社和歌山製作所や株式会社NTN三重製作所に整備した生産ラインを利益率の高い補修向け製品の生産に活用するとともに、汎用品在庫即納システム「FIRST」の完成品在庫を拡充し、世界中のお客様への迅速な納入につなげています。

産機OEMビジネスは、主力8業種を拡大、維持に分類するとともに、新たに挑戦する業種を設定しました。拡大業種は生産能力の強化と販売促進、維持業種は原価及び売価の改善、挑戦業種は市場調査に基づき、ターゲット地域・顧客の選定、アプローチ等を推進しています。加えて、多面的な顧客分析を実施のうえ重要顧客を設定し、最大利益が得られる生産能力配分を決定する仕組みの構築に取組んでいます。

自動車OEM向けでは、電動化・EV用として、従来より高水準の高速、低トルク、耐電食性等の各ニーズに適応する軸受開発を進め、これらの量産を順次開始しています。

内燃機関(ICE)車向け軸受の需要が減少する一方で、上記の高付加価値軸受やモジュール商品・ユニット商品の開発と拡販が全体の利益改善に寄与しています。

  ※ 拡大業種:工作機械、回転電気(モーター)、航空・宇宙

     維持業種:建設機械、農業機械、変減速機、鉄道車両、風力発電

 

 

(2) CVJアクスル事業

設計改革、調達・物流改革、事業再編に取組むことで筋肉質な事業基盤を構築するとともに、自動車の駆動領域の要となるCVJとアクスル軸受の両製品を扱う強みを活かして、電動化をはじめ新たなニーズに対応した事業展開を加速します。調達・物流・もの造り改革による原価低減とグローバル供給体制・サプライチェーン再構築等の活動を通じて技術力と価格競争力の両立を追求します。販売ではお客様に寄り添った提案と適正価格の販売に拘り、顧客満足度と利益率の向上を図ります。

また、拡大するEV市場に対しては、大型/高角・高効率/軽量化/低フリクション化等のニーズを捉えた差別化商品の開発とスピーディな市場への投入を行います。部品・完成品の調達・供給網再構築による利益の最大化を目指す一方で、生産再編等を推進します。

<取組み状況>

CVJとアクスル軸受の利益体質を強化すべく、欧州・中国・カナダにおいて工場の統廃合等の再編計画を既に実行段階に移しており、また米国においても2025年度より実行に移していきます。

新製品ではCFJ(高効率固定式等速ジョイント)の量産が欧州でも立ち上がり、更なる販売拡大を図るため、原価低減活動に取組んでいます。CVJアクスル事業の顧客戦略の一つであるパートナーシップ強化についても順調で、国内顧客の内製CVJの引き受けが完了した他、新規プロジェクトにおける新製品の共創活動や、成長市場であるインドにおける研究開発体制の強化を進めています。

一方、EVシフトの鈍化やグローバル市場の景気低迷により、足元の利益改善が停滞している状況です。急速に変化する事業環境に対応すべく昨年より継続している材料価格等のコスト上昇分を確実に売価転嫁することを徹底するとともに、生産再編を早期に完了させることで、より強固な事業基盤の形成を図ります。

 

(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

① 長期ビジョン及び中期経営計画に関する目標

約10年後に目指す姿として、新たに「2035年度の姿と目標指標」を設定しました。OEMと補修の両輪で安定的に稼ぐ事業構造へ変革することで、景気変動下においても株主資本コストを安定して上回るROEの継続と、カーボンニュートラルの達成、並びに豊かな人づくりの実現を目指します。それに向けて、2024年4月から開始した中期経営計画「DRIVE NTN100」Finalでは、最終年度の目標として下表のとおり目標値を設定しております。

 

目標とする経営指標(連結)

2025年3月期実績

2027年3月期目標

売上高

825,587百万円

830,000百万円

営業利益

22,959百万円

50,000百万円

営業利益率

2.8%

6.0%

特別損益

△19,068百万円

△5,000百万円

当期純利益

△23,801百万円

21,500百万円

棚卸資産回転率

3.4回

4.5回

ROIC

2.6%

6.2%

ROE

△9.6%

8.0%

自己資本比率

27.2%

30.0%

ネットD/Eレシオ

1.0

0.7

 

 

② CO2排出量削減に関する目標

「2.サステナビリティに関する考え方及び取組 (1) サステナビリティ全般[指標及び目標]」に記載のとおりであります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、以下のとおりであります。

なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年6月26日)現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) サステナビリティ全般

[ガバナンス]

当社グループは、経営の基本方針に掲げる、「なめらかな社会」の実現に向けて、当社グループ並びに役員及び従業員が実践する以下①、②の活動をサステナビリティ活動と定め、その取組みを推進しています。

① 社会課題に向き合い、社会から信頼され必要とされる企業として、環境・社会的価値を創出する活動

② 摩擦を減らすことでエネルギー消費を抑える製品・サービスを提供することにより、企業価値を向上させ、当社グループを持続的に成長させる活動

当社グループは、ESG推進部を担当する執行役(サステナビリティ活動の統括責任者)を委員長とする「サステナビリティ委員会」を設置し、年2回以上開催しています。当委員会では、主に「なめらかな社会」の実現に向けてのリスクと機会の分析に関する事項やマテリアリティの特定に関する事項など、「なめらかな社会」の実現に向けた課題とその解決に向けた必要なサステナビリティ活動に関する審議を行い、その内容を定期的に取締役会に報告する体制を構築しています。

また、執行役の年次インセンティブ(賞与)につきましては、各執行役の重点目標にESG項目も含まれ、報酬委員会で審議の上、個人別の支給額にも反映されています。役員の報酬等の額又はその算定方法等の具体的な内容は「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等(4)役員の報酬等」に記載しております。

 


 

 

[戦略]

当社グループが「なめらかな社会」の実現(SDGsの実現を含む)に向けて優先的な対応を必要とする課題を「マテリアリティ」と定義し、現在13項目のマテリアリティを特定しています。特定されたマテリアリティについては項目ごとに年度での対応施策を策定し、「なめらかな社会」の実現に向けた取組みを推進しています。

 


 

 

[リスク管理]

サステナビリティに関連するリスクと機会の取組みについては、サステナビリティ委員会で審議を行い、取組みの状況は、リスクと機会に紐づけられたマテリアリティの対応施策として、定期的に確認しています。また、サステナビリティに関連するリスクについては、リスク管理委員会においてより具体的に対応策を報告・審議する枠組みとしています。

リスクの未然防止と危機発生時の被害極小化を図ることを目的として、ESG推進部を担当する執行役(リスク管理統括責任者)を委員長とするリスク管理委員会を設置し、当社グループの事業を取り巻くさまざまなリスクの「特定」、「分析」、「評価」、「対応」を定期的に確認しています。リスクは、外部要因、内部要因からなる以下20のリスクに分類した上でリスク低減に取組んでおり、リスク管理委員会で報告・審議した内容は、年2回取締役会に報告しています。

 


 


 

(気候変動(気温上昇)対応)

グローバルでのカーボンニュートラルの実現に向けた取組みとして執行役社長を委員長とするカーボンニュートラル推進委員会及び各地区担当執行役を会長とするグローバル各地区のメンバーで構成される地区部会を設置・開催し、好事例や課題の情報共有、グローバルでの横展開・相互啓発を図っています。

カーボンニュートラル推進委員会は半期に1回開催し、その内容を取締役会に報告しています。2024年度に開催したカーボンニュートラル推進委員会では、グローバルのCO2排出量の推移、カーボンニュートラル予算の立案・執行状況・効果確認、カーボンニュートラルロードマップ及び各地区部会の活動状況について報告し、情報共有や課題の解決に向けた施策・支援策等を討議しました。

 


 

 

<シナリオ分析>

2021年5月に「TCFD提言」への賛同を表明し、気候変動が事業にもたらすリスクと機会を把握し、サステナビリティ活動に反映させています。

気候変動(気温上昇)による影響について、21世紀中の気温上昇を「4℃」、「1.5℃未満」としたシナリオ分析結果から想定されるリスクと機会は以下のとおりです。

気温上昇

想定されるリスク

想定される機会

4℃

(現状のまま、

世界がCO2を排出)

・異常気象(大雨、洪水、暴風)による自社工場及びサプライチェーンの操業停止

・工場等従業員の熱中症リスク

自然災害による電力の遮断を防ぐライフラインの確保(定置型独立電源装置、移動型独立電源装置の市場提供)

1.5℃未満

(脱炭素社会へ

移行)

・炭素税等による調達や操業コストの増加

・脱炭素社会に向けた軸受による機械装置 省エネルギー化への貢献(基盤製品によるCO2削減)

・脱炭素社会に向けた風力発電装置の安定稼働への貢献(風力発電向け大形軸受、CMSサービスの提供)

・脱炭素社会に向けた水素エネルギー活用、普及への貢献(水素エネルギーに関わる装置への軸受類の製品技術開発と市場提供)

・自動車EV,CASEに対応する製品開発を通じた安全・快適な自動車社会への貢献(電動モジュール製品の製品技術開発と市場提供)

 

 

[指標及び目標]

上記のリスクと機会は、13項目のマテリアリティのうち、「エネルギーロスの低減」及び「気候変動への対応」等に結びついており、それぞれ対応施策を策定しています。

このうち、「気候変動への対応」の長期的目標を「2035年度カーボンニュートラル(サプライチェーンを含めて2050年度)」、2022年度以降のKPI(管理指標)として「2018年度比で、2030年度に事業活動におけるCO2排出量50%削減」を設定し、段階的に脱炭素化する計画(カーボンニュートラルロードマップ)を作成しました。

2023年4月にカーボンニュートラル推進の専任組織であるカーボンニュートラル戦略推進部を設置し、長期的目標達成のために必要な諸施策の推進を強化しています。

 

 


 

 

<当社グループのCO2排出量の実績>

 

2018年度実績

(基準)

2023年度

実績

2024年度

実績

CO2排出量(万トン)

72.8

53.6

46.6

 

当事業年度のCO2排出量実績は、基準年度である2018年度比で約35.9%※の削減となり、長期的目標達成に向け計画どおりの進捗となりました。今後も、カーボンニュートラル達成のために必要な諸施策を着実に推進してまいります。

※上記実績は、有価証券報告書提出日までに入手した情報に基づく第三者検証前の見込値を記載しています。

 

 

(2) 人的資本

当社グループでは、ESG課題の一つとして「豊かな人づくり」を掲げています。従業員が事業活動を通じて「成長」し、「イキイキと働く」ことができる企業グループであり続けるように企業文化を育み、人事制度や職場環境を整え人的資本の価値を最大限引き出し、成長させることで持続的に企業価値を向上させます。この「人的資本経営」の実践を通じて、様々な社会課題を解決し経済的価値、環境・社会的価値の向上に取組む組織風土を醸成し、働きがいをもって仕事に取組める多様な人材を育成することで「豊かな人づくり」の実現を目指します。

「豊かな人づくり」を実現するための人材戦略として、「変革に挑戦する次世代を担う人材の確保」「社員の多様性を尊重した働きがいのある環境づくり」「職場の学ぶ文化と育成する風土の醸成」「安全・健康に働きイノベーティブな発想ができる職場環境の実現」「人権の尊重」を5つの柱としています。

具体的な施策として、中期経営計画の基本方針である「事業構造の変革の加速」及びその変革を支える取組みを実行し、当社グループとして目指す姿を実現するため、「人材獲得と育成」と「組織風土醸成」の両面から人材戦略を策定し、「経営戦略実現のために求められる専門能力の向上」、「グループ経営をリードする経営人材の育成」、「自律的成長とキャリア自律の実現」、「ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン」、「挑戦し、やりきる職場風土への変革」、「NTNスピリットに基づくマインド変革」を重点に、それぞれの取組みを推進しています。

 


 

 

[戦略]

人材戦略の5つの柱のもと、中期経営計画達成に向けて重点とする取組みは次のとおりです。

「経営戦略実現のために求められる専門能力の向上」

事業構造を変革(事業ポートフォリオの変革)するには、ビジネスの構造を変えるような抜本的かつ主体的な行動や新領域へのチャレンジが必須であり、戦略実現に求められる組織能力や人材も変化しています。中期経営計画の基本方針である事業構造の変革や、それを支える戦略を達成するためには、それぞれに必要となる組織能力を獲得することが重要です。人材育成や適所への人材配置、採用の仕組みの強化、多角化による外部人材の獲得を組み合わせることで、組織能力の獲得を推進しています。

具体的な取組みとして、年齢・性別を問わず多様な人材、また、専門性・独自性を活かして事業に貢献する人材の活躍を推進するために、2024年4月より、管理職層の人事制度を人の能力を基準とした制度から仕事を基準とした制度へ変更するとともに、多様な人材の活躍推進と高い専門性を持つ人材の確保、育成を図ることを目的に、組織運営を担うマネジメント人材(組織の長)と特定分野・領域の専門性を磨く人材がそれぞれ活躍できるよう、各々のコースを設定しました。

今後は、この新人事制度の定着と若年層から専門能力を高めることが出来る人事制度や仕組みの確立等に取組むことで、従業員の高度な専門性獲得に向けた主体的な行動や新領域へのチャレンジを引き出し、組織能力の獲得を推進します。

[具体的な取組み(実績)]

・専門系コース(エキスパート)の手挙げによる主体的行動の引き出し

・新卒採用における職種限定採用、配属先確定採用の拡大(6職種、18人採用)

・技術系スペシャリスト人材育成制度の導入(3領域、11人実施)

 

「グループ経営をリードする経営人材の育成」

不確実な時代に経営戦略を実現するためには、当社グループをリードできる経営者を計画的に育成していくことが重要と考えています。成果を上げている人材を経営人材候補として人材プールを形成し、経営トップ層と人事部門が一体となった育成を行うほか、若手層を含む管理職を対象に経営者育成プログラムを実施し、中長期的な観点から経営者の育成を図っています。

具体的な取組みとして、若手管理職を選抜し、経営に必要な思考・知識を体系的に学習するカリキュラム「NTN Next Leader Program」を実施するなど、経営人材を安定的に輩出できるようサクセッションプランに基づく候補者の選抜と育成に取組んでいます。目標数に近い候補者を確保できている一方、年齢や職種、育成施策に偏りが生じており、最適な候補者プール構築に向け、経営層に必要なスキルの定義、早期の選抜や継続的な育成に計画的に取組んでまいります。

[具体的な取組み(実績)]

・執行役候補者の選抜によるサクセッションプランの定着

・経営層候補者の拡大と早期育成を目的とした選抜型研修(NTN Next Leader Program)の充実

 2024年度27人修了(累計138人修了)

・担うべき役割と職務の価値・報酬をリンクさせた管理職人事制度の定着

 

「自律的成長とキャリア自律の実現」

自律的なキャリア展望やキャリア開発に基づく成長と、キャリア展望を実現できるように支援することで、従業員と組織の持続的成長を実現します。

具体的な取組みとして、2024年4月より、課長や部長といったポストにチャレンジする従業員を募集する「ポストチャレンジ・プログラム」を実施しております。この制度は、従業員が希望するキャリアや働く場所を自ら選択できる機会を提供し、従業員のモチベーションを高め、組織の活性化を促すことを目的としています。2024年度には5名がこの制度を利用し、新たなキャリアに挑戦しています。また、若年層から中高年層まで幅広い年代層を対象に、自身のキャリアを考えるキャリア研修を実施しています。さらに、上司向けのキャリア支援教育も実施し、キャリアを考える機会と支援体制を充実させております。

今後は、キャリアコンサルティング体制の確立や、手挙げ式の施策の拡充など、従業員がキャリアを考える機会と自ら望むキャリアを実現するための制度を充実させ、従業員と組織の成長に繋げてまいります。

 

[具体的な取組み(実績)]

・ポストにチャレンジする従業員を募集する「ポストチャレンジ・プログラム」の導入

・社外への転進を支援する制度「ネクストライフ支援制度」の導入

・年代別キャリア研修(20歳台から50歳台)と上司向けキャリア支援教育の実施

・従業員が自律的に学ぶことが出来る人材育成プログラム(AI等に関するWeb研修)の充実

・部下の職務能力の育成を目的とした考課者訓練の充実(毎年実施)

 

「ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン」

多様な専門性と経験を持つ人材で組織を構成し、その違いを力に変え、多様な視点や仮説を通じてイノベーションや日常的な価値創造を実現するために、個々人の能力を最大限発揮できる「従業員の多様性を尊重した働きがいのある環境づくり」に取組んでいます。

具体的な取組みとして、多様な専門性と経験を持つ人材の獲得を目的に、中途採用の拡大に取組んでおり、2021年度に6.7%だった中途採用比率を、2024年度には17.3%まで拡大してきました。女性管理職比率を増やす施策として、育児期の従業員が管理職昇格を目指しやすいようにしています。具体的には、柔軟な勤務時間や短時間勤務、在宅勤務、勤務地の限定などの選択を継続したまま昇格できるようにし、昇格者に占める女性比率を20%まで引き上げました。

今後は、更なる中途採用の拡大や、多様な人材を国内外の拠点の責任あるポジションに積極的に登用できる環境や制度を整備し、個々の属性や価値観の違いを認め合い尊重し、一人ひとりが挑戦することができ、能力を十分に発揮できる環境づくりを推進します。

[具体的な取組み(実績)]

・中途採用の拡大による様々なキャリアバックグラウンドを持つ人材確保の強化(アルムナイ、リファラルなどの採用手法の充実化検討)

・LGBTQガイドブックの発行、LGBTQに関するeラーニング講座開催

・従業員のライフスタイルの変化や個々の価値観に応じた選択ができる人事制度の充実

・従業員の介護リテラシー向上に向けたセミナーの開催、介護の基礎知識を学ぶeラーニング実施や「仕事と介護の両立支援ハンドブック」発行

 

「挑戦し、やりきる職場風土への変革」

厳しい環境のもとで競合優位性を維持・向上させ、持続的に成長するには、これまで以上に独創的な価値の創出が必要となり、過去の成功や前例にとらわれることなく、常に新しい発想で挑戦する姿勢とそれを可能にする職場風土が重要と考えています。

具体的な取組みとして、管理職層の新人事制度において、目標管理制度におけるチャレンジ目標の設定や適時フォローの制度化を行い、新しい評価制度や仕組みを浸透させる活動に取組んでまいりました。

今後は、挑戦をサポートする施策のより一層の充実や、新しい目標管理制度や評価制度及び会社業績と個人の業績評価を連動させる仕組みを定着させることで、挑戦意欲のある人材が働きがいを感じながら挑戦し続けられる組織へ変革してまいります。

[具体的な取組み(実績)]

・新しい目標管理制度、評価制度の浸透活動

・個人の業績管理と分配のあり方の見直し(業績連動による報酬(賞与)制度導入)

 

 

「NTNスピリットに基づくマインド変革」

長期戦略の実現には、優秀な人材を惹きつけることが不可欠であり、そのためにはエンゲージメントの高い企業風土を醸成することが重要です。目指すべき意識・行動を明文化した「NTNスピリット」を従業員全員で共有し、自社がどのように在りたいか、何のために存在するか、一人ひとりが働く意義を見出すことで、自ら考え自ら行動する従業員を増やし、変革への本気の挑戦を生み出すことが、企業価値向上に繋がることはもちろん、従業員の成長や組織の一体感、そしてエンゲージメントの向上に繋がると考えています。

具体的な取組みとして、従業員と経営層とのコミュニケーションを深めることを目的に、タウンホールミーティングを継続して実施しております。2024年度は、国内(26拠点)、海外(33拠点)でそれぞれ2,000人を超える従業員が参加し、社長や執行役が会社の目指す姿や何に注力していくかを説明し、コミュニケーションを深めました。また、従業員エンゲージメント調査の結果等を用いた職場改善活動においては、好事例の横展開を行い、会社全体でエンゲージメント向上に取組んでいます。

特に、組織の一体感醸成に課題を感じており、今後は、部署間のコミュニケーションを活性化させる仕組みの導入や、タウンホールミーティングの継続による従業員との対話などの活動を通じて、従業員がNTNで働くことに誇りを持ち、「イキイキと働く」ことができるよう、企業理念の更なる浸透とエンゲージメント向上を強化していきます。

[具体的な取組み(実績)]

・社長や執行役が各拠点を訪問し従業員との対話を深めるタウンホールミーティングの継続実施

・従業員エンゲージメント調査を活用した職場改善活動の横拡げ

 

また、これらの中期経営計画実現に向けて重点とする取組みを推進していくためには、従業員の心身の安全と健康が確保されていることが不可欠です。当社グループで働くすべての人の安全と健康の確保は、経営の基盤としてあらゆる事業活動に優先する最も大切な価値であり、この基本姿勢のもと、「安全・健康に働きイノベーティブな発想ができる職場環境の実現」を目指しています。

[具体的な取組み(実績)]

・安全を支える仕組みづくりとしての労働安全衛生マネジメントシステムの有効な運用による安全性の強化

・リスクアセスメント研修、危険予知研修による安全に強い人づくりの継続実施

・労働災害防止のため、現場の安全管理状態を確認指導する安全監査の継続実施

・従業員の健康増進と疾病予防や活力ある職場環境の実現に向けた、若年層メタボ対策、禁煙施策、ストレスチェック等の継続実施

・健康経営の普及に向けた取引先との健康経営セミナーの共同実施

 

これらの取組みの結果、「健康経営優良法人大規模法人部門」の上位500法人に与えられる「ホワイト500」に2021年度から5年連続で認定されております。

 


 

[ガバナンス]

当社グループの人的資本経営の実行体制として、重要な人事事項・人事施策は、取締役会や、経営層が参加する社内重要会議、人事委員会などの場で定期的に報告し議論しています。また、重要な人事施策に関しては経営会議の審議を経て、決裁しています。また、従業員エンゲージメント調査等を活用して職場の状況をモニタリングする体制を整え、持続的な企業価値向上の推進力を高めていきます。

 

[リスク管理]

日本国内における、少子高齢化による労働力人口の不足に加え、変化が激しく不確実性の高い時代背景から、多様な人材の確保が年々困難の度を増しており、当社では事業継続におけるリスクと認識しております。こういったリスクに対応するために、多様な働き方やワークライフバランスを実現するための「働きやすさ」と「やりがい」を高める施策を充実させてきました。今後は、従業員一人ひとりが今まで以上に「働きがい」をもって仕事に取組むための施策を充実させることで、多様な人材の獲得と定着に繋げてまいります。

また、当社の人員構成は年齢別にみると逆ピラミッド型、男女別にみると男性中心の人員構成となっており、これらの人員構成の偏りも事業継続におけるリスクとして認識しております。これらのリスクに対応するため、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの各種施策を推し進め、多様な人材が「イキイキと働く」ことができるような環境構築を進めてまいります。

人権については、当社グループの事業活動が影響を及ぼし得る当社グループ内及びサプライチェーン上のどの国、地域においても人権尊重に努めるべく、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に掲げられた「尊重」と「救済」の2つの観点に基づき、「従業員における人権リスク対応」、「サプライチェーンにおける人権リスク対応」、「救済へのアクセスの構築」に優先的に取組んでいます。具体的な取組みとして、当社グループの事業活動における人権リスクを特定するため、当社の海外関係会社を対象に定期的な調査を実施しております。また、法令や業務行動規準、社内規程に違反する行為に関する相談を広く受け付ける相談窓口を社内・社外に設置し、運用しています。今後も計画的に人権デューデリジェンスや人権啓発活動に取組んでまいります。

 

 

[指標及び目標]

中期経営計画実現に向けて重点とする取組みに関する指標及び目標は次のとおりです。

いずれの指標も目標に対して概ね計画通りに進捗していると認識しております。計画に対して未達となっている指標についてはその要因を検討のうえ必要な対策を講じ、「豊かな人づくり」に向けて取組みを進めてまいります。

 

中期経営計画実現に向けて
重点とする取組み

指標

2022年度

2023年度

2024年度

目標

指標の

選定理由

人材獲得
と育成

経営戦略実現
のために
求められる
専門能力の向上

エキスパート
コース人数
(エキスパート:
高度専門人材)
(当社)(注2)

6名

8

施策を導入して間もないため、今後目標を定めます

専門能力向上を測る指標として、エキスパートの育成状況を採用しております

グループ経営
をリードする
経営人材の
育成

サクセッション
プラン候補者数

19名

24名

25

30

2026年度

経営人材の育成状況を測る指標として採用しております

自律的成長と
キャリア自律の
実現

従業員一人あたり
研修時間
(当社)

16.2時間

11.9時間

21.0時間

対前年比増加

従業員の自律的成長を支援する教育訓練の実績を指標として採用しております

従業員一人あたり
研修費用(当社)
(注3)

19,180円

32,671

 

組織風土
醸成

ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン

女性管理職比率

(当社)

4.4%

4.5%

4.2

5

2026年度

男女が性差なく「イキイキと働く」ための環境づくりの指標として採用しております

男性育児休業取得率

(当社)

37.2%

62.8%

73.0

100

2026年度

中途採用比率

(当社)

19.0%

21.3%

17.3

30

2026年度

多様な人材が活躍できるキャリアや雇用制度、環境づくりの指標として採用しております

障がい者雇用率

(当社)

2.57%

(法定
雇用率:
2.3%)

2.57%

(法定
雇用率:
2.3%)

2.50

(法定
雇用率:
2.5%)

その時点の
法定雇用率
以上

挑戦し、
やりきる職場
風土への変革

従業員エンゲージメント調査における「挑戦」や「変革」に関するスコア
(当社)
(注4)

学びある失敗が許容される組織がある

(2021年度:
肯定的回答率

58%)

肯定的

回答率

50%

肯定的回答率

80%

2026年度

従業員の挑戦や変革に対する思いを測る指標として採用しております

新しい方法の提案が奨励される職場環境である

(2021年度:
肯定的回答率

45%)

肯定的

回答率

42%

私は期待以上の成果を上げようと挑戦する

(2021年度:
肯定的回答率

76%)

肯定的

回答率

65%

 

 

 

中期経営計画実現に向けて
重点とする取組み

指標

2022年度

2023年度

2024年度

目標

指標の

選定理由

組織風土
醸成

NTNスピリットに基づくマインド変革

従業員エンゲージメント調査における「企業理念」と「協力」に関するスコア

(当社)
(注4)

NTNスピリットが実践されている

(2021年度:
肯定的回答率

62%)

肯定的

回答率

51%

肯定的回答率

80%

2026年度

企業理念の浸透による組織の一体感の醸成を促進する指標として採用しております

自分自身が働く意義を理解している

(2021年度:
肯定的回答率

74%)

肯定的

回答率

55%

お互いを尊重した部署間の協働がある

(2021年度:
肯定的回答率

32%)

肯定的

回答率

29%

人権

人権教育受講者数

(延人数)(当社)

1,354名

1,443名

1,812

対前年比増加

人権に関する認識と理解の徹底をはかる人権教育を指標として採用しております

健康経営

適正な体重者の比率(BMI18.5 以上25 未満
の割合)
(当社)

65.4%

66.0%

65.5

70.0

2026年度

従業員が安全に健康で長く働き続けていくための指標として採用しております

高ストレス者の割合

(当社)

8.6%

9.0%

8.7

7.0

2026年度

労働災害(休業)
発生件数
(当社)
(注5)

4件

2件

0

0

 

(注) 1.上記指標の対象は、特に指定の無い限り当社及び連結子会社であります。

2.エキスパートコースが2023年度に新設した制度であるため、それ以前には対象者が存在しておりませ

    ん。なお、人数はエキスパートコースとして認定され、就任を予定する人数であります。

3.研修費用の実績は2023年度から調査を開始しております。

4.従業員エンゲージメント調査は隔年で実施しているため、2022年度及び2024年度には調査を実施しておらず、次回調査は2025年度に実施を予定しております。また、2021年度及び2023年度に実施した従業員エンゲージメント調査は、一部の従業員を対象としたものであります。

5.労働災害(休業)発生件数について、2024年度は2023年12月16日から2024年12月15日を同事業年度に係る集計対象期間としており、2023年度以前の事業年度に係る集計対象期間もそれに準じております。

 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年6月26日)現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 外部事業環境に関するリスク

1) 経済状況

当社グループ商品の製造拠点、販売拠点はグローバルな国と地域に及び、取引先も多岐の産業分野に亘っておりますため、特定の国や地域の経済状況の変動や取引先が属する産業の景気変動などにより、財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を及ぼす可能性があります。

 

2) 為替レートの変動

当社グループの連結売上高に占める海外売上高の割合は50%を超えており、今後もグローバルな事業展開を加速させることにより、海外売上高の割合は増加の見込みであります。

海外子会社の現地通貨建ての経営成績及び財政状態は、連結財務諸表の作成のために円換算されております。また当社が海外の顧客等に輸出する場合、その取引の多くは外貨建てで行われております。当社グループでは為替予約や現地調達の拡大によってリスクヘッジを実施しておりますが、現地通貨と円貨の為替レート変動による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローへの影響を完全に回避できるものではありません。

 

3) 市場価格の低下

当社グループの製造活動や販売活動における競争環境はグローバル規模で厳しさを増しております。中国をはじめとする新興国製品の台頭により軸受の一部では市場価格が下落してきております。また当社グループの売上の半分以上を占める自動車業界ではグローバルな価格競争を背景に価格引き下げ要請が厳しさを増しております。当社グループでは原価低減の継続的推進と同時に高品質、高付加価値の新商品開発を実施しておりますが、市場価格の低下圧力が財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を及ぼす可能性があります。

 

4) 原材料価格、物流コスト、関税率の上昇

当社グループは、外部より様々な原材料の調達を行っております。特に材料費のなかで大きなウエイトを占める鋼材の価格上昇に対しては製品価格への反映や歩留り向上、VA・VE活動による材料コスト低減を図っております。

また、当社グループは製品・半製品を海上輸送によって海外に輸出しており、海上運賃等の物流コストが高騰した場合や関税率に変動があった場合、製品価格への反映やサプライチェーンの見直し等によって利益影響の低減を図っております。原材料価格や物流コスト、関税率の想定を超える上昇が発生した場合、財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を及ぼす可能性があります。

 

5) 災害の発生や感染症の蔓延のリスク

当社グループ及び当社グループ取引先の事業拠点が、地震、洪水などの天災、火災や感染症の蔓延等による被害を受ける可能性があります。当社グループでは、大規模災害の発生に備え、安否確認システムの導入や防災訓練を実施し、感染症の蔓延対策においてはマスクなどの備蓄等の各種対策を講じております。危機発生時において即座に初動措置を行うことによって被害を最小限に止めるよう備えておりますが、完全なリスク回避は困難であり、結果として当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を及ぼす可能性があります。

 

 

6) 気候変動リスク

当社グループが拠点を有する国と地域における気候変動(気温上昇)に伴う異常気象(大雨、洪水、暴風などによる操業、営業の停止等)や環境規制の強化(炭素税の導入による原材料、エネルギーの調達コスト増加等)などにより、財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を及ぼす可能性があります。

なお、気候変動(気温上昇)による影響について、TCFD提言に沿ったシナリオ分析の結果は「2.サステナビリティに関する考え方及び取組 (1) サステナビリティ全般[リスク管理]」に記載のとおりであります。

 

(2) 事業運営に関するリスク

1) 特定業界への依存

当社グループの販売は、軸受部門の約半分が自動車業界向けであり、等速ジョイント部門は、自動車の駆動輪へ動力を伝達するための部品で、その大半を自動車業界向けに販売しており、自動車業界への依存度が高くなっております。軸受や精密機器商品につきましては産業機械分野への販売拡大も進め、販売構成のバランスを常に考えた施策を推進しておりますが、自動車分野における急激な需要変動があった場合、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を及ぼす可能性があります。

 

2) 製品の不具合

当社グループは、品質の確保を図るため、顧客の要求機能・仕様を満足し、かつ安全性に配慮した適正品質の追求に努めており、グローバルベースで品質管理の徹底を図っております。しかし製品に重大な不具合が存在し、重大な事故やクレーム、リコール等の起因となった場合、多額の製品補償費用等の発生により、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を及ぼす可能性があります。当社グループはグローバルな製造物責任保険に加入しておりますが、損害賠償等の損失についてその全てを担保するものではありません。

 

3) 知的財産権

当社グループは、新商品開発を通じて多くの新技術やノウハウを生み出しており、経営資源として活用しております。しかし第三者から当社グループの知的財産権侵害、または予期せず、第三者の知的財産権の侵害等が発生する可能性があります。特許出願による権利保護等の知的財産権マネジメントの徹底を図っておりますが、上記のような知的財産権の侵害が発生した場合、財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を及ぼす可能性があります。

 

4) グローバル事業展開

当社グループは、グローバルに事業を展開しており、連結売上高に占める海外売上高は50%を超えております。海外での事業展開に伴い次のようなリスクがあります。

① 各国間もしくは各国税制の予期せぬ変化に伴うリスク

② 米国通商政策等、国際貿易政策の予期せぬ変化に伴うリスク

③ 各国法規制の予期せぬ変化に伴うリスク

④ 人材確保の困難性

⑤ 新興諸国における未成熟な技術水準や不安定な労使関係

⑥ 各国での政情不安

これらのリスクに対しては、グループ内での情報収集等を行い、その予防及び回避に努めておりますが、これらの事象が発生した場合、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を及ぼす可能性があります。

 

5) 情報セキュリティ

当社グループは、社内規程整備に加え、従業員教育を通じて、適切な情報管理方法の周知・徹底に努めております。しかしながら、サイバー攻撃、不正アクセス、コンピューターウィルス侵入等により、万一これら情報が流出した場合や重要データの破壊、改ざん、システム停止等が生じた場合には、当社グループの信用低下や生産及び販売活動などに支障をきたし、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を及ぼす可能性があります。

 

 

6) 法的規制等

当社グループは、事業活動を行っている国及び地域で各種の法令・規則(租税法規、環境法規、労働・安全衛生法規、独占禁止法・アンチダンピング法・贈収賄関連法規等の経済法規、貿易・為替法規、証券取引所の上場規程等)の適用を受けております。

当社グループは、これらの法令・規則を遵守し公正な企業活動に努めておりますが、万一法令・規則違反を理由とする訴訟や法的手続において、当社グループにとって不利益な結果が生じた場合、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、これらの法令・規則が変更された場合や、予想できない新たな法令・規則が設けられた場合、財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を及ぼす可能性があります。

なお、当社グループが受けている訴訟については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結貸借対照表 注記事項(連結貸借対照表関係)3偶発債務等(訴訟等)」に記載のとおりであります。

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度における世界経済は、一部の地域において足踏みがみられたものの、持ち直しが継続しました。日本経済については、個人消費で一部足踏みが残りましたが、設備投資、雇用情勢は持ち直しまたは改善の動きがみられ、景気は緩やかに回復しました。海外においては、米国経済は、通商政策など政策動向による影響が懸念されたものの、景気は拡大しました。中国経済は、政策効果により生産が持ち直しているものの、景気は足踏み状態となり、アジアのその他新興国経済は、タイや韓国で景気の弱含みがみられましたが、緩やかに回復しました。欧州経済は英国やドイツなど一部に景気の足踏みがみられたものの、持ち直しの動きがみられました。

かかる状況下、2024年4月から開始した中期経営計画「DRIVE NTN100」Finalで掲げた「事業構造の変革(Transformation)の加速」の継続とNTN再生の完了を目指し、生産再編を中心とする事業構造改革の実行と、「SQCCD」の強化を通じた「稼ぐ力」の向上に注力してまいります。

Safety(安全)、Quality(品質)、Compliance(法令遵守)、Cost(コスト)&Cash(キャッシュ)、Delivery(納期)&Development(開発)

 

当連結会計年度の売上高は825,587百万円(前連結会計年度比1.3%減)となりました。損益につきましては、営業利益は売価転嫁や比例費の削減などはありましたが、規模減の影響などによ22,959百万円(前連結会計年度比18.4%減)となりました。経常利益は、為替差損計上の影響などにより10,475百万円(前連結会計年度比47.6%減)、親会社株主に帰属する当期純損失は、特別損失の計上や税効果の影響などにより23,801百万円(前連結会計年度は10,568百万円の親会社株主に帰属する当期純利益)となりました。

なお、営業利益の主な増減要因は、以下のとおりであります。

規模効果    △34,031百万円

人件費       2,678百万円

比例費       4,729百万円

売価レベル      13,154百万円

為替        5,962百万円

経費他        2,316百万円

 

セグメントの業績につきましては、以下のとおりであります。

1) 日本

販売につきましては、軸受他事業においては、補修市場向けで減少し、OEM市場向けでも産業機械向けおよび自動車向けともに減少しました。CVJアクスル事業においては、自動車のOEM市場向けでは客先需要の回復などにより増加しました。全体としては、売上高は354,480百万円(前連結会計年度比2.7%減)となりました。セグメント損益は売価転嫁や為替の影響などはありましたが、販売規模減の影響などがあり11,207百万円のセグメント利益(前連結会計年度比26.4%減)となりました。

2) 米州

販売につきましては、軸受他事業においては、補修市場向けで増加し、OEM市場向けでは産業機械向けで増加し、自動車向けで減少しました。CVJアクスル事業においては、自動車の補修市場向けおよびOEM市場向けともに客先需要の低減などにより減少しました。全体としては、売上高は271,889百万円(前連結会計年度比1.6%減)となりました。セグメント損益は売価転嫁や比例費の削減などはありましたが、販売規模減の影響などがあり、395百万円のセグメント損失(前連結会計年度は198百万円のセグメント損失)となりました。

3) 欧州

販売につきましては、軸受他事業においては、補修市場向けで減少し、OEM市場向けでも産業機械向けおよび自動車向けともに減少しました。CVJアクスル事業においては、自動車の補修市場向けおよびOEM市場向けで客先需要の回復などにより増加しました。全体としては、売上高は190,517百万円(前連結会計年度比1.5%減)となりました。セグメント損益は売価転嫁や比例費の削減などはありましたが、固定費の増加や販売規模減の影響などがあり、4,163百万円のセグメント損失(前連結会計年度は2,227百万円のセグメント損失)となりました。

4) アジア他

販売につきましては、軸受他事業においては、補修市場向けで減少し、OEM市場向けでも産業機械向けおよび自動車向けともに減少しました。CVJアクスル事業においては、自動車の補修市場向けおよびOEM市場向けともに客先需要の低減などにより減少しました。全体としては、売上高は168,557百万円(前連結会計年度比3.2%減)となりました。セグメント損益は比例費の削減などがありましたが、販売規模減の影響などがあり、14,757百万円のセグメント利益(前連結会計年度比6.6%減)となりました。

 

 

② キャッシュ・フローの状況

営業活動の結果得られた資金は45,623百万円(前連結会計年度比19,480百万円29.9%の減少)となりました。主な内訳は減価償却費42,379百万円の収入、法人税等の支払額10,793百万円の支出であります。

投資活動の結果使用した資金は25,960百万円(前連結会計年度比990百万円、4.0%の増加)となりました。主な内訳は有形固定資産の取得による支出23,535百万円であります。

財務活動の結果使用した資金は18,708百万円(前連結会計年度比11,504百万円、38.1%の減少)となりました。主な内訳は長期借入金の返済による支出46,723百万円に対して、長期借入れによる収入34,000百万円であります。

これらの増減に換算差額△508百万円を算入しました結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物は127,712百万円となり、前連結会計年度末に比べ445百万円(0.3%)の増加となりました。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

1) 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメント別に示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

生産高(百万円)

前年度比(%)

日本

314,456

97.0

米州

202,549

91.2

欧州

133,740

99.1

アジア他

78,734

92.6

合計

729,480

95.2

 

(注) 上記金額は平均販売価格により表示しております。

 

2) 受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメント別に示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

受注高

(百万円)

前年度比(%)

受注残高

(百万円)

前年度比(%)

日本

217,205

99.7

44,433

104.6

米州

258,478

92.3

113,664

95.8

欧州

189,835

99.5

42,297

113.7

アジア他

148,304

90.8

52,192

93.1

合計

813,824

95.5

252,586

99.3

 

(注) 上記金額は平均販売価格により表示しております。

 

 

3) 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメント別に示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年度比(%)

日本

354,480

97.3

米州

271,889

98.4

欧州

190,517

98.5

アジア他

168,557

96.8

セグメント間取引消去

△159,857

92.9

合計

825,587

98.7

 

(注) 相手先別の販売実績は、総販売実績の100分の10以上の相手先がないため、記載を省略しております。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

当社グループに関する経営成績等の状況の分析・検討内容は原則として連結財務諸表に基づいて分析した内容です。

なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年6月26日)現在において当社グループが判断したものです。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成しております。この連結財務諸表の作成に当たりましては、会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に与える見積りを必要とします。これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況」 1 (1) 連結財務諸表 の「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しておりますが、特に以下の項目が連結財務諸表の作成に影響を及ぼすと考えております。

1) 収益の認識基準

当社グループの顧客との契約から生じる収益は、約束した財又はサービスを顧客に移転することにより履行義務を充足した時に又は充足するにつれて収益を認識しております。

2) 貸倒引当金の計上基準

当社グループは、売上債権等の貸倒損失に備えて、回収不能となる見込額を貸倒引当金として計上しております。将来、顧客の財務状況が悪化し支払能力が低下した場合には、引当金の追加計上又は貸倒損失が発生する可能性があります。

3) 有価証券の減損処理

当社グループは、金融機関や販売又は仕入に係る取引会社の株式を保有しております。これらの株式は、株式市場の価格変動リスクを負っているため、合理的な基準に基づいて減損処理を行っております。将来、株式市場が悪化した場合には、有価証券評価損を計上する可能性があります。

4) 繰延税金資産の回収可能性の評価

当社グループは、繰延税金資産の回収可能性を評価するに際して、将来の課税所得を合理的に見積もっております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積額が減少した場合は繰延税金資産が減額され、税金費用が計上される可能性があります。

 

5) 退職給付費用及び負債の前提条件

当社グループは、退職給付費用及び債務を割引率、将来の報酬水準、退職率、直近の統計数値に基づいて算出される死亡率、及び年金資産の期待運用収益率などに基づいて合理的に見積もっております。これらの前提条件が変化した場合には、実際の結果が見積りと異なる可能性があります。その影響は発生の都度、負債に計上され、将来にわたって規則的に費用計上されるため、費用及び負債に影響を及ぼす可能性があります。

6) 固定資産の減損処理

当社グループが有する固定資産のうち、「固定資産の減損に係る会計基準」において対象とされるものについては、損益報告や経営計画などの企業内部の情報、経営環境や資産の市場価格などの企業外部の要因に関する情報に基づき、資産又は資産グループ別に減損の兆候の有無を確認し、企業環境の変化や経済事象の発生によりその帳簿価額の回収が懸念されているかなど、減損損失の認識を判定しております。

この判定により減損損失を認識すべきと判断した場合には、その帳簿価額を回収可能価額まで減損処理を行っております。経営・市場環境といった企業外部要因等の変化により、回収可能価額が変更された場合には、減損損失の金額の増加又は新たな減損損失の認識の可能性があります。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

1) 売上高の分析

当連結会計年度の売上高は825,587百万円となり、前連結会計年度に比べ10,698百万円(1.3%)減少しました。為替の影響による増加額26,442百万円を考慮しますと、実質では37,140百万円の減少となりました。なお、海外売上高は614,912百万円となり、前連結会計年度に比べ11,348百万円(1.8%)減少しました。売上高に占める海外売上高の割合は74.5%(米州33.1%、欧州20.3%、アジア他21.1%)となり、前連結会計年度に比べ0.4ポイント低下しました。

2) 売上原価、販売費及び一般管理費の分析

当連結会計年度の売上原価は684,221百万円となり、対売上高比率は82.9%と前連結会計年度に比べ0.3ポイント上昇しました。

また、販売費及び一般管理費は118,406百万円となり、対売上高比率は14.3%と前連結会計年度に比べ0.3ポイント上昇しました。

3) 営業利益の分析

当連結会計年度の営業利益は22,959百万円となり、前連結会計年度に比べ5,190百万円(18.4%)減少しました。売上高営業利益率は2.8%となり、前連結会計年度に比べ0.6ポイント低下しました。

4) 営業外収益及び費用の分析

当連結会計年度の営業外収益及び費用は、12,485百万円の費用超過となりました。収益は受取利息1,898百万円、持分法による投資利益856百万円、受取配当金101百万円などにより5,896百万円となり、前連結会計年度に比べ284百万円の増加となりました。費用は支払利息8,968百万円、為替差損4,397百万円などにより18,381百万円となり、前連結会計年度に比べ4,621百万円の増加となりました。

5) 経常損益の分析

当連結会計年度の経常利益は10,475百万円となり、前連結会計年度に比べ9,526百万円(47.6%)減少しました。売上高経常利益率は1.3%となり、前連結会計年度に比べ1.1ポイント低下しました。

6) 特別損益の分析

当連結会計年度の特別利益は、有形固定資産売却益747百万円を計上し、前連結会計年度に比べ3,817百万円減少しました。また特別損失は、減損損失11,735百万円、事業再編損7,171百万円、独占禁止法関連損失909百万円を計上し、前連結会計年度に比べ11,802百万円増加しました。

7) 親会社株主に帰属する当期純利益の分析

当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純損失は23,801百万円(前連結会計年度は10,568百万円の親会社株主に帰属する当期純利益)となりました。売上高当期純利益率は△2.9%(△は親会社株主に帰属する当期純損失、前連結会計年度の売上高当期純利益率は1.3%)となりました。

 

8) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等についての分析

当社は2024年4月より約10年後に目指す姿として、新たに「2035年度の姿と目標指標」を設定しました。OEMと補修の両輪で安定的に稼ぐ事業構造へ変革することで、景気変動下においても株主資本コストを安定して上回るROEの継続と、カーボンニュートラルの達成、並びに豊かな人づくりの実現を目指します。さらに、それに向けて、2024年4月から開始した中期経営計画「DRIVE NTN100」Finalにおける最終年度の目標値、及び当連結会計年度における実績は下表のとおりであります。

 

目標とする経営指標(連結)

2025年3月期実績

2027年3月期目標

売上高

825,587百万円

830,000百万円

営業利益

22,959百万円

50,000百万円

営業利益率

2.8%

6.0%

特別損益

△19,068百万円

△5,000百万円

当期純利益

△23,801百万円

21,500百万円

棚卸資産回転率

3.4回

4.5回

ROIC

2.6%

6.2%

ROE

△9.6%

8.0%

自己資本比率

27.2%

30.0%

ネットD/Eレシオ

1.0

0.7

 

この結果を受け、中期経営計画最終年度の目標値、さらには2035年度の姿に向けて、翌連結会計年度において比例費の削減や売価転嫁などの施策を推進し、これらの実現に向けて一層注力してまいります。

なお、事業活動におけるCO₂排出量削減の状況については、「2.サステナビリティに関する考え方及び取組 (1) サステナビリティ全般[指標及び目標]」に記載のとおりであります。

 

事業形態別の業績につきましては、以下のとおりであります。

前連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)

(単位:百万円)

事業形態

外部顧客への売上高

営業利益

軸受他事業

346,777

17,699

CVJアクスル事業

489,508

10,449

連結合計

836,285

28,149

 

 

当連結会計年度(自 2024年4月1日 至 2025年3月31日)

(単位:百万円)

事業形態

外部顧客への売上高

営業利益

軸受他事業

340,703

13,680

CVJアクスル事業

484,883

9,279

連結合計

825,587

22,959

 

 

(a) 軸受他事業

客先需要の低減などにより売上高は340,703百万円(前連結会計年度比1.8%減)となりました。営業損益は売価転嫁や配賦方法の見直しによる共通費の減少などはありましたが、販売規模減の影響などにより13,680百万円の営業利益(前連結会計年度比22.7%減)となりました。

(b) CVJアスクル事業

客先需要の低減などはありましたが、為替の影響もあ売上高は484,883百万円(前連結会計年度比0.9%減)となりました。営業損益は売価転嫁や比例費の削減などはありましたが、販売規模減の影響や配賦方法の見直しによる共通費の増加などによ9,279百万円の営業利益(前連結会計年度比11.2%減)となりました。

 

③ 資本の財源及び資金の流動性についての分析

当社では、営業活動で獲得したキャッシュ・フローと、投資活動で支出したキャッシュ・フローを合計したフリー・キャッシュ・フローを重要な指標の1つとしています。この指標を基に成長投資や運転資金への充当、または、負債の返済や新たな資金調達の要否を検討するとともに、フリー・キャッシュ・フロー創出のための施策を立案・推進し、財務体質の強化を図っています。また、財務体質の強化を図る指標として、自己資本比率、ネットD/Eレシオ等を使用しています。

また、当社グループが事業活動を維持拡大するために必要な資金を安定的に確保するため、営業活動で獲得した自己資金と外部資金を有効に活用しています。外部からの資金については、調達コストの低減を図りながら資金調達手段の多様化と資本効率の向上を目的に、金融機関からの借入、社債の発行、営業債権の流動化を行っています。取引金融機関とは長年に亘って築き上げてきた良好な関係を維持しており、資金調達に関しては問題なく実施可能と認識しています。

更に、当社の一部子会社間については、当社グループが保有する資金をグループ内で効率的に活用するグローバル・キャッシュ・マネジメントシステムを金融機関と構築し、2022年9月より運用しております。それにより資金の偏在をならし、資金の効率化や流動性の確保を図っています。

 

1) 財政状態の分析

流動資産は前連結会計年度末に比べ29,067百万円(5.2%)減少し、533,861百万円となりました。これは主に、商品及び製品の減少8,943百万円、受取手形及び売掛金の減少8,592百万円、仕掛品の減少6,333百万円によります。固定資産は前連結会計年度末に比べ24,761百万円(7.1%)減少し、322,563百万円となりました。これは主に機械装置及び運搬具の減少11,196百万円、無形固定資産の減少5,673百万円、建物および構築物の減少5,177百万円、繰延税金資産の減少3,961百万円、投資有価証券の増加965百万円によります。この結果、総資産は前連結会計年度末に比べ53,827百万円(5.9%)減少し、856,425百万円となりました。

流動負債は前連結会計年度末に比べ62,607百万円(17.4%)増加し、422,513百万円となりました。これは主に1年内償還予定の社債の増加40,000百万円、1年内償還予定の転換社債型新株予約権付社債の増加22,035百万円、短期借入金の増加15,578百万円、未払費用などのその他の減少2,664百万円によります。固定負債は前連結会計年度末に比べ84,310百万円(31.3%)減少し、185,213百万円となりました。これは主に社債の減少50,000百万円、転換社債型新株予約権付社債の減少22,084百万円、長期借入金の減少13,599百万円によります。この結果、負債合計は前連結会計年度末に比べ21,704百万円(3.4%)減少し、607,726百万円となりました。

純資産合計は前連結会計年度末に比べ32,123百万円(11.4%)減少し、248,699百万円となりました。これは主に利益剰余金の減少29,383百万円、為替換算調整勘定の減少1,989百万円によります。

 

なお、自己資本比率は27.2%(前連結会計年度末比1.8ポイント低下)となり、期末発行済株式総数に基づく1株当たり純資産額は439.89円(前連結会計年度末比57.94円減)となりました。有利子負債は前連結会計年度末に比べ8,072百万円(2.2%)減少し、353,992百万円となりました。為替の影響による増加額2,157百万円を考慮しますと実質では10,229百万円の減少となりました。なお、有利子負債依存度は41.3%(前連結会計年度末比1.5ポイント上昇)となりました。

正味運転資本は111,348百万円となり前連結会計年度末比91,672百万円減少しました。また流動比率は126.4%(前連結会計年度末比30.0ポイント減少)となりました。

棚卸資産回転率は3.4回(前連結会計年度末比0.2回増加)、総資産回転率は1.0回(前連結会計年度末比0.1回増加)となりました。

2) キャッシュ・フローの分析

営業活動の結果得られた資金は45,623百万円(前連結会計年度比19,480百万円29.9%の減少)となりました。主な内訳は減価償却費42,379百万円の収入、法人税等の支払額10,793百万円の支出であります。

投資活動の結果使用した資金は25,960百万円(前連結会計年度比990百万円4.0%の増加)となりました。主な内訳は有形固定資産の取得による支出23,535百万円であります。

財務活動の結果使用した資金は18,708百万円(前連結会計年度比11,504百万円、38.1%の減少)となりました。主な内訳は長期借入金の返済による支出46,723百万円に対して、長期借入れによる収入34,000百万円であります。

これらの増減に換算差額△508百万円を算入しました結果、当期末における現金及び現金同等物は127,712百万円となり、前連結会計年度末に比べ445百万円(0.3%)の増加となりました。

なお、営業活動による資金と投資活動による資金を合算したフリー・キャッシュ・フローは19,663百万円となりました。また、売上高営業キャッシュ・フロー比率は5.5%となりました。

 

④ 経営成績に重要な影響を与える要因について

「第2 事業の状況」「3.事業等のリスク」及び「4.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」「(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容」の①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定に記載しています。

 

 

5 【重要な契約等】

技術供与契約

 

相手先

国名

契約内容

契約期限

対価

NATIONAL ENGINEERING
INDUSTRIES LTD.

インド

ボールベアリング等の製造に関する技術の供与

2011年11月2日から

2026年12月31日まで

販売価格の一定率

台惟工業股份有限公司

台湾

等速ジョイントの製造に関する技術の供与

2003年3月26日から

2029年2月28日まで

 

 

6 【研究開発活動】

当社グループは、「新しい技術の創造と新商品の開発を通じて国際社会に貢献する」という企業理念の実践を通じて、世界を取り巻く社会課題の解決に貢献し、持続可能な「なめらかな社会」の実現を目指しています。

2024年4月より中期経営計画「DRIVE NTN100」Finalが始まり、「DRIVE NTN100」の基本方針である事業構造の変革(Transformation)を加速するため、事業軸から商品軸の新組織に体制変更し、軸受事業ではOEM・補修が一体となり供給能力の強化やソリューション提案を、CVJアクスル事業は、利益拡大と電動化などの新たなニーズへ対応できる体制にしました。

研究開発では、当社の持続的成長を目的に「基盤商品、基盤技術の強化」と「新たな領域の展開」の二軸で活動し、当社のコアコンピタンスを活かした製品開発に取組んでいます。

なお、研究開発は主として当社(日本)で行っており、当連結会計年度における研究開発活動費はグループ全体で19,656百万円です。

 

(1) 「基盤商品、基盤技術の強化」

持続可能な「なめらかな社会」実現に向けて当社が提供する付加価値は、1)止めない技術2)長寿命化技術3)エネルギーロスの低減です。

1)止めない技術

当社は2035年の姿として、売上高に占める補修事業の売上比率を40%に拡大する目標を掲げています。これを達成するためには、モノ売り(商品提供)だけでなくコト売り(サービス提供)に繋げるビジネスモデルの構築が必要となります。コト売り事例として、風力発電用に軸受状態監視システム(CMS)を開発し、組み込まれている軸受の故障予知診断を行うサービス事業を行っています。日本に設置されている陸上風力発電300機以上に本システムが設置されており、AIも活用し24時間の監視を行っています。

最近では、軸受内部にセンサー、発電ユニットおよび無線デバイスを内蔵した「しゃべる軸受®」の小型化に取組むとともに、工作機用途ではスピンドルの主軸軸受用間座にこれらの機能を内蔵した「センサ内蔵ユニット」を開発中で、軸受の故障予知だけでなく工作機械の加工状態監視にも取組んでいます。今後、更にサービス・ソリューション分野の技術を磨き、モノ売り⇒コト売り⇒モノ売りに繋げる軸受ライフサイクルマネージメントの構築を進めます。

 

2)長寿命化技術

長寿命化技術として特殊熱処理技術「HA-C」を開発しました。本技術は材料に硬く微細な析出物を多数分散させるなどの手法により、非常に高い表面硬さと高負荷容量化を実現し従来品と同等以上の寿命を確保しながら軸受の外径を約15%、幅寸法を約30%、質量を約55%軽量化することが可能になりました。本技術を適用した転がり軸受は、e-Axleなどの自動車用途での過酷な使用環境に適用することが可能です。

また、電動車のモーター用軸受で生ずる問題に電食があります。バッテリーは車の航続距離延長や充電時間の短縮などを目的に高電圧化が進んでおり、将来的には800Vのバッテリー普及が予想されています。バッテリーが高電圧化すると通電による軸受の電食損傷が拡大すると想定しており、この対策として、既にセラミック球入り軸受を量産納入中ですが、コストダウンを図った樹脂モールド絶縁軸受を新たに開発し、2025年3月から量産を開始しました。

 

3)エネルギーロスの低減

エネルギーロスの低減では、工作機械主軸軸受用高速・長寿命グリース、およびグリース潤滑軸受への潤滑油給油ユニットを開発しました。工作機械は加工時間の短縮を目的に、主軸の高速回転化が進んでいます。主軸を支える軸受の潤滑方法にはエアオイル潤滑とグリース潤滑があり、一般的にdmn値※1にして140万を超えるとエアオイル潤滑が用いられる傾向にあります。エアオイル潤滑は長期に安定した潤滑が可能である一方、圧縮空気やエアオイルの供給装置が必要となります。当社はグリースの基油と基油を半固体状に保持する増ちょう剤、添加剤を見直してグリース潤滑でdmn190万の高速回転を可能とすることで、圧縮空気の削減によりコンプレッサの使用を廃止しカーボンニュートラルに貢献します。

自動車分野では、タイヤの回転を支えるハブベアリングにおいて軸受内部およびシールに塗布する低フリクショングリースを新たに開発し「低フリクションハブベアリング」シリーズを拡充しました。また、モーターなどのパワートレインユニットの動力をタイヤに伝えるドライブシャフトにおいても高効率・静粛性が求められており、当社は独自の「スフェリカル・クロスグルーブ構造※2」を採用した高効率固定式等速ジョイント「CFJ※3」と、内部部品の傾きを抑え振動につながるスライド動抵抗を従来比で50%削減した、低振動しゅう動式等速ジョイント「PTJ」の組み合わせを、EV向けに提案を開始しました。

これからも独自の提案で電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV、PHEV)をはじめとする各種車両の省燃費・電動化に貢献します。

※1.軸受の回転性能を表す指標で、軸受ピッチ円径(mm)×回転速度(min-1)

 2.ボールが通る転動溝を内輪・外輪で交差させボールが内部部品を押す力を相殺する構造

 3.第74回自動車技術会 技術開発賞受賞

 

当社が展開している精密機器事業では、業界最速の直進フィーダ「クロスドライブリニアフィーダ」を開発し、その機構の独創性と業界最速の高速搬送速度、および製造現場のコンプレッサのエア使用量削減によるカーボンニュートラルへの寄与が認められ、モノづくり日本会議と日刊工業新聞社が主催する2024年“超”モノづくり部品大賞 奨励賞を受賞しました。

 

(2) 「新たな領域の展開」

中期経営計画「DRIVE NTN100」Finalでは、前中期経営計画に引き続き「モビリティ・モジュール」、「ロボットモジュール」、「再生可能エネルギー(自然エネルギー)」、「ライフサイエンス」、「サービス・ソリューション」および「次世代エネルギー(水素など)」の6分野を、新規事業の候補として事業化を検討中です。

活動の一部として、モビリィリティ・モジュールでは電動車市場の拡大に伴い、電動油圧式ブレーキが伸長し、油圧を送り込む駆動部品としてボールねじの引き合いが増加しています。更に、将来的には電動機械式ブレーキへの移行が想定されており、ボールねじの需要は更なる拡大が予想されています。当社はこの変化に追随すべく、ボールねじの高効率化や小型化の開発に取組んでいます。

ロボットモジュールでは、手首関節モジュール「i-WRIST®」を市場展開しています。自動車の電動化により大型ダイカスト部品の需要が拡大しており、更に部品を集約したギガキャストが将来技術として注目されています。現在、ダイカスト品の外観検査(キズや鋳巣など)は、人手による目視検査が殆どで、労働力不足や生産性の向上を背景に、外観検査の自動化が急務となっています。迅速な動きが特長の「i-WRIST®」は本用途に適しており、多くのお客様から注目を頂き、「i-WRIST®」を搭載した外観検査システムの開発を進めています。

自然エネルギー事業では、当社の移動型独立電源「N3 エヌキューブ」が防災ニーズの高まりから、各省庁・自治体から高評価を得ています。2025年3月期には「N3 エヌキューブ」レストルームモデルの循環式水洗トイレ(通称:空飛ぶトイレ)が、奈良県五條市から能登半島地震で被害を受けた石川県鳳珠郡能登町へ無償貸与されました。また、国土交通省が選定した「防災道の駅」の一つである徳島県の道の駅「いたの」で災害発生を想定した「N3 エヌキューブ」の移動・設置・発電といった一連の動作を実演し検証しました。本検証のほかにも、自治体や防災関連団体と協業の下、「N3 エヌキューブ」の提案を行い、自治体や地域住民の方々に防災意識を高めていただく活動に取組んでいます。当社は、国土交通省がガイドラインを制定し推進する、災害時だけでなく平常時でも有効活用可能な高付加価値コンテナとして「N3 エヌキューブ」を提供し、再生可能エネルギーの普及および安心で安全な社会の実現に貢献してまいります。