文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
これからもMVV(Mission, Vision, Value)を企業経営の軸とし、モノづくりとモノづくり設備で培ってきた強みを結集して、グループの総力を最大限発揮する「全員参加」により、社会に最適なソリューションを提供し続けてまいります。
(2) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標
当社グループは、効率性と収益性を重視した経営を実現するため、ROE、PBR、事業利益率を経営上の目標の達成状況を判断するための重要指標と位置づけております。また、経営状況を把握する指標として、売上収益、事業利益、損益分岐点売上比率、棚卸資産回転数、NET DEレシオ、ROA、ROIC等の実績を用いております。
(3) 長期的な会社の経営戦略
社会を取り巻く環境は、温暖化等に代表される環境問題やエネルギー資源の枯渇、新興国の経済発展・人口増加に伴う水・食料の不足、先進国での高齢化等、様々な課題が顕在化しております。各産業分野で社会の持続的な成長に向けてテクノロジーにより社会的課題の解決が図られている中で、当社グループの売上収益の約8割を占める自動車産業においても、100年に一度の大変革期と言われているとおり、自動運転や電動化等CASEに代表される技術革新が急速に進んでおります。環境規制は更に強化され、カーボンニュートラルに向けた再生エネルギーの活用や水素社会の実現に向けた取組みも着実に進んでおります。
これらの取り巻く環境の変化に対応し、社会課題の解決を通して企業を成長させるため、2024年に第二期中期経営計画をスタートさせるとともに、2030年の目指す姿として「JTEKT Group 2030 Vision」を策定いたしました。

<中期経営計画>
2021年から2030年までの10か年を、3年、3年、4年の三期に分け、第二期中期経営計画期間に当たる2024~2026年度は、「既存事業の成長と新規事業の育成」をテーマに各施策を進めております。既存製品の高付加価値化により成長への原資を生み出し、その原資をもとに新領域へチャレンジするという両輪で、企業価値向上を実現いたします。そのための重点施策と位置付けた「ソリューションの創出力強化」、「競争力の強化」、「グローバル体制の再構築」により、成長への足場固めを図ります。加えて、経営基盤を強化するために、「人と現場中心の経営」、「カーボンニュートラルの推進」、「キャッシュアロケーション・株主還元」にも注力してまいります。
当社は、2030年に目指す姿を実現するためのメインドライバーは「ソリューションプロバイダーへの変革」であると捉えております。ソリューションを創出できる仕組みづくりを着実に進め、グループ全体が持つ技術や社員一人ひとりの強みを掛け合わせたジェイテクトならではのソリューションで社会に貢献してまいります。
(4) 経営環境
当連結会計年度の世界経済には底堅い成長が認められましたが、当社の事業領域においては、自動車生産台数の伸び悩みや農建機を中心とした産機市場の冷え込み等、次第に不透明感が強まってまいりました。地域別には、特に欧州や中国で想定以上に景気停滞が深刻化し、成長を下押しする要因となりました。
(5) 優先的に対処すべき課題
当社は、中長期的な目標であるJTEKT Group 2030 Visionで「モノづくりとモノづくり設備でモビリティ社会の未来を創るソリューションプロバイダー」を目指すことを掲げました。自動車部品や軸受のモノづくり技術と、工作機械というモノづくり設備に強みをもつ当社だからこそ実現できる、画期的なソリューションで社会に貢献していきたいと考えております。そのためには、コア技術やコンピタンスを掛け合わせることで、既存製品の付加価値を高めていくとともに、新たな領域へチャレンジし成長事業へと育てていくことが不可欠となります。その先進的な事例として、主力製品の電動パワーステアリングの補助電源装置として開発された高耐熱リチウムイオンキャパシタ「Libuddy®」が、当社の持つ様々なコンピタンスと掛け合わさり、多方面へ新たなソリューションを提供しつつあります。例えば、電動パワーステアリングで培ったモーター制御技術や安全設計技術等のコンピタンスとLibuddy®を融合させ、ドローンの姿勢制御システムの開発に着手しております。更なる開発・検証を重ね、次世代のモビリティであるドローンの性能向上への貢献を目指します。このように当社がこれまで積み重ねてきた多岐にわたる技術や強みを活用し、積極的に新領域開拓に挑んでまいります。
人やモノが自由に移動できるモビリティ社会のなかで、当社が存在価値を発揮していくためには、これまでの受動型のビジネスからソリューション型ビジネスに大きく転換しなければなりません。その第一歩として、コアコンピタンスプラットフォーム(以下「ココプラ」)と呼ばれる、グループのコア技術やスキルを持つ人財を集約したプラットフォームの構築に注力しております。また、新たに設置したソリューション共創センター(以下「ソリセン」)では、お客様や社内が抱える課題を受け付け、ココプラをつなぎ合わせた最適なソリューションの創出を目指します。まずはココプラやソリセンの活用事例を社内で蓄積し、ソリューション型ビジネスの土台を築いてまいります。この仕組みをブラッシュアップしていくことで、全てのビジネスをソリューション型へと転換させ、ソリューションプロバイダーへと変革してまいります。
加えて、ソリューションプロバイダーへの飛躍を支える経営基盤の強化のため、不要なコストや固定費の徹底的な削減、構造改革や業務の見直し・効率化にも覚悟を持って取り組んでまいります。特に足元では北米において、Covid19蔓延以降の熟練技能者の離職増加や人員不足の顕在化による生産性悪化や不要なコスト増加が課題となっております。生産体制の正常化、コストの最小化のため、タスクフォースチームを現地に派遣して収益性改善に努めております。北米地域に限らず会社全体で不要なコストを極小化させ、健全に収益を生み出すことができる体制を固めてまいります。
また、「安全第一・品質第二」を旨とする当社は、「Yes for All, by All! ~みんなのためにみんなでやろう~」という価値観のもと、安全の確保や不正を起こさない職場風土の醸成といったガバナンスの強化を一層推し進め、社会から信頼される会社であり続けるよう、絶え間ない改善を続けてまいります。
文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。なお、各項目の目標については、達成を保証するものではありません。
(1) 当社のサステナブル経営
当社の事業活動は、株主のほかお客様、仕入先、従業員や地域社会のみなさまといった多くのステークホルダーに支えられております。加えて、当社がこれからも安定して事業活動を展開していくためには、人々が安心して生活できる豊かな地球環境が大前提にあるものと考えております。そこで当社は「技術をつなぎ地球と働くすべての人を笑顔にする」という当社のMission(存在意義)にのっとり、事業活動を通じて当社のステークホルダーが直面する社会課題の解決に取り組むことで、社会とともに持続的な成長を遂げたいと考えております。
また、当社が変化の激しい外部環境の中でも企業として成長を続け、上記のような社会課題の解決に貢献していくためには、その源となる人的資本や知的資本等、非財務資本の増進を図ることが不可欠であります。
当社は、このように社会課題の解決と非財務資本の増進によって企業価値の長期的な向上を目指す、サステナブル経営を推進してまいります。
① サステナビリティ推進体制
当社は、取締役会を頂点とするコーポレート・ガバナンスの体制を構築しておりますが、サステナビリティに関する活動方針の決定、社内取組みの監督と助言については、社外役員を含む取締役会構成員全員に加えて経営役員及びCxO(社内各機能の最高責任者)を委員とするサステナビリティ委員会において主に行っております。
サステナビリティ委員会で議論されたテーマは、関連する業務を行う主管部署において取組みとして具体化され、事業活動に反映されております。これらの事業活動は
これらの情報開示の主要なものは、経営管理本部の関係部署を中心として運用される情報開示委員会において、ステークホルダーに適時適切かつ過不足なく伝わるかという観点から、内容や表現の適否について議論した上で社外へと開示されます。開示された情報に対するステークホルダーからのフィードバックはサステナビリティ委員会において報告され、次なる取組みの基盤としております。

② マテリアリティの特定
当社は、2020年度に実施した長中期経営計画の立案プロセスにおいて、マテリアリティを特定いたしました。また当年度にはJTEKT Group 2030 Vision及び第二期中期経営計画の策定を受けて、ダブルマテリアリティの考え方に基づき、それぞれの社会課題が当社に与える影響と当社がそれぞれの社会課題に関して社会に与える影響の両面から重要性を評価することで当社のマテリアリティを見直し、具体化いたしました。これらマテリアリティは、様々な社会課題の中でも当社が事業活動を通じて優先的に解決に貢献したいと考えるものであります。
なお、当社は社会の一員として多くの責任を負っているとともに、積極的に社会の発展に貢献したいと考えており、マテリアリティに挙げた以外の社会課題についても主体的に取組み、サステナブル経営を推進してまいります。

以下では、このような当社マテリアリティを中心としたサステナブル経営のテーマを環境、社会、ガバナンスの観点から整理して記載しております。
(2) 環境
当社は「未来の子どもたちのために豊かな地球を守る」ことを経営上の重要なテーマとしており、2016年に策定した「環境チャレンジ2050」では「製品・技術」「低炭素社会の構築」「循環型社会の構築」「自然共生・生物多様性」「環境マネジメント」として環境経営に関する行動計画の5つの柱を明記いたしました。本項では、これらの取組みのうちマテリアリティとしている地球温暖化防止(低炭素社会の構築)、循環型経済への貢献に加えてモノづくり企業としての社会的責任である環境負荷物質削減について取り上げております。
① 地球温暖化防止
地球温暖化による気候変動は、氷河の融解や海面水位の変化、洪水や干ばつ等の影響、食料生産や健康等、人間への影響だけでなく陸上や海の生態系にも影響を及ぼしております。当社は、このような気候変動による負の影響を緩和するため、事業における中長期の気候関連リスクと機会を特定して影響を定量的に把握し、事業戦略に反映していくことが持続的に成長できる企業の条件であると考え、マテリアリティの1つである「低炭素社会の構築」に取り組んでおります。
なお、当社は、2018年に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」への賛同を表明いたしました。以下TCFDの考え方に基づいて開示いたします。
(a) 戦略
当社は、「環境チャレンジ2050」に基づき、5年ごとに「環境行動計画」を策定し、毎年の会社目標へ反映させる形で活動を推進しております。これら一連の数値目標は中長期的な環境経営の根幹となっております。
当社はTCFD提言に基づき、脱炭素社会への移行による影響が想定される1.5℃(2℃未満)シナリオと、気候変動が進展し、物理的な影響が顕著になる4℃シナリオという複数のシナリオを使用し、分析を行いました。分析にあたっては、CO2排出量を2013年度比60%削減とする目標年の2030年度と、「環境チャレンジ」の目標年である2050年度における事業への影響を予想し、項目別にリスク・機会として特定いたしました。これらのリスクの最小化、機会の最大化を図るため戦略へ反映しております。
■使用したシナリオ
■リスク機会一覧
(注)1 時間軸 短期:現在~2025年 中期:2030年 長期:2050年
2 影響度評価は以下のとおり設定しております。
大: 影響額が100億円超のもの
中: 影響額が10億円~100億円以内のもの
小: 影響額が10億円以内のもの
1.5℃(2℃未満)シナリオにおいて想定される主なリスクとして、炭素税をはじめとする規制の導入・強化を背景とした操業費の増加や、自動車の燃費・排ガス規制の強化による内燃機関車向け製品の売上減少等を特定いたしました。これらのリスクを回避するために、生産プロセスの省エネ化や物流の改善、製品開発の加速等を行う必要があると考えております。一方、内燃機関車からBEV(電気自動車)やFCEV(燃料電池車)への移行は、当社事業の機会としても捉えております。当社は現在、電動車向けベアリングや耐水素ベアリング、次世代車と内燃機関車に共通する製品であるステアリングシステムや駆動部品を展開しております。特に、2022年10月にリリースした超幅狭軸受「JTEKT Ultra Compact Bearing®」は軸受の幅寸法を極限までコンパクト化することに成功し、ユニットの小型化、軽量化への貢献が可能となりました。今後はこれらの製品の販売や新製品の研究開発に一層注力し、市場拡大を図ります。
(b) ガバナンス
当社では、取締役社長が委員長を務める「ジェイテクト環境委員会」を中心とした環境経営の推進体制を構築しております。「ジェイテクト環境委員会」は年2回開催し、会社方針に基づいて目標値を設定するほか、方策の審議・決定及び進捗状況の管理を行っております。同委員会での審議の結果は、内容に応じて「サステナビリティ委員会」に報告され、監督を受けるとともに、対策に予算措置が必要な場合は経営役員会、取締役会に上程し、経営陣の審議を経て経営戦略に反映しております。
また、「ジェイテクト環境委員会」の下部組織には環境専門部会を設置し、省エネ/資源循環/生産技術革新/エネルギーインフラ/物流/技術・研究/バリューチェーン等、スコープ3排出量の削減も含めた気候変動への対応について、各分野における実務的な検討、評価を行っております。工場レベルの体制としては、各工場において工場長を委員長とした「工場環境保全委員会」を組織しており、隔月の委員会においてCO2排出量をモニタリングしております。
その他グループを横断した環境取組みを実現するため、グローバルジェイテクトグループ環境連絡会を設置しており、国内・海外グループ各社の取組みの振り返りや次年度の取組み計画の審議、環境マネジメントに関する意見交換等を行っております。さらに2021年度からは社長直轄の「カーボンニュートラル戦略室」を設置し、事業本部間の意思疎通の円滑化を進めておりましたが、2025年度より「CN・CE戦略室」に組織改正し、サーキュラーエコノミーに関しても戦略立案・推進を行っております。
(c) リスク管理
当社は、環境リスクを全社レベルのリスクマネジメント体制へ統合し、管理しております。環境リスクについては、「サステナビリティ委員会」が特定・評価・管理のプロセスを担っております。「サステナビリティ委員会」では、「ジェイテクト環境委員会」や顧客からのニーズや社外評価、社会動向等から発生したリスクの識別・評価を行い、影響度、重要性、脆弱性、発生可能性の観点から優先順位付けした上で、回避・軽減等の対策を決定・登録・管理しており、今後の取組みについて全部署へ共有しております。また、重要リスクについては定期的に取締役会に報告しております。
(d) 指標と目標
当社は「環境チャレンジ2050」で掲げている環境負荷の極小化に向け、2035年までに生産(スコープ1+スコープ2)におけるCO2排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を設定しております。また、中期目標の「2030年マイルストーン」としてCO2排出量を60%削減(2013年度比)するとともに、国内外のグループ会社を含め、当社グループ全体でCO2低減活動を進めております。
この中期目標はパリ協定が求める水準と整合しており、科学的な根拠に基づく目標設定が認定されるSBT(Science Based Targets)認定を2024年7月に取得しております。
■中長期目標
■スコープ別CO2排出量 (単位:千t-CO2)
※本年度より、国内グループ17社、海外グループ31社に加えて、その他関連会社を含めて算出しております。
当社は、気候変動への対応に関する取組みが高く評価され、国際環境非営利団体CDPによる「2024年気候変動」部門の調査において8段階評価中、最上位の評価となるAに2年連続で認定され、リーダーシップレベルの評価を獲得いたしました。
② 循環型社会への貢献
循環経済ビジョン2020(経済産業省)では、従来の「環境活動としての3R(リデュース・リユース・リサイクル)」から、設計や仕組みづくりにアプローチし、廃棄物が出ないようにする「経済活動としての循環経済」への転換を推し進めていくことが求められております。また、欧州では「ELV指令(ELV: End-of-Life Vehicles)」と「型式認証の再使用、再利用、再生の可能性に関する指令(3R指令)」を1つにまとめて規則化したELV規則案が2023年に発表され、自動車は再生材の使用促進や廃棄時の環境負荷低減が求められております。当社では、これまでも環境配慮設計や自社製品のリビルド活動、産業廃棄物のリサイクル化を通じて循環型経済の構築に取り組んでまいりました。今後は、循環性の高いビジネスモデルへの転換は事業活動の持続可能性を高め、中長期的な競争力の確保にもつながると考え、環境活動としての3Rの延長ではなく経済活動としての循環経済につなげる取組みとして、より一層の製品の小型・軽量化、製品原材料の再生材使用率向上、廃棄物のマテリアルリサイクル化の推進等、サーキュラーエコノミーの実現に貢献してまいります。
当社は、このような考え方のもと、「循環型経済への貢献」を低炭素社会の構築に並ぶマテリアリティとしております。
(a) 戦略
当社では、「環境チャレンジ2050」に基づき、5年ごとに「環境行動計画」を策定し、毎年の会社目標へ反映し、廃棄物及び水使用量の削減活動を推進しております。
世界的な人口増加や経済成長に伴う消費拡大により世界の資源採掘量及び廃棄物量は増加傾向にあり、その枯渇も懸念されております。このような状況において、当社の継続的な事業活動のためには生産に必要な副資材使用量及び廃棄物の削減が不可欠と考え、特に排出量の多い汚泥、廃油を重点品目に指定し、優先的に改善を行うとともに金型の長寿命化の取組みを行い、副資材使用量の削減活動を推進しております。
また、事業を継続する上で必要な良質な淡水は、その利用が制限された場合には当社の生産工程である熱処理、洗浄工程等の稼動に多大な影響を与える可能性があるため水使用量削減に向けた取組みが必要となります。当社は、特に水ストレス地域であるインド・メキシコに対して水使用量の削減目標を設定する等、取組みを進めております。
さらに、こうした従来からの取組みに加えて、より一層の製品の小型・軽量化、製品原材料の再生材使用率向上、廃棄物のマテリアルリサイクル化の推進等の取組みを進めるために、2030年を目標年とする新たな「環境行動計画」の作成を通じて検討を進めております。
(b) ガバナンス
当社では、取締役社長が委員長を務める「ジェイテクト環境委員会」を中心とした環境経営の推進体制を構築しております。「ジェイテクト環境委員会」は年2回開催し、会社方針に基づいて目標値を設定するほか、方策の審議・決定及び進捗状況の管理を行っております。同委員会での審議の結果は内容に応じて「サステナビリティ委員会」に報告・審議されるとともに、対策に予算措置が必要な場合は経営役員会に上程し、経営陣の審議を経て経営戦略に反映しております。
また、廃棄物のマテリアルリサイクル化の推進や水使用量の削減については、「ジェイテクト環境委員会」の下部組織である環境専門部会の一つである「生産環境改善部会」、より一層の製品の小型・軽量化、製品原材料の再生材使用率向上については、「環境対応製品対策部会」や「バリューチェーン部会」を担当部会とし、経営役員である全社環境総括役員を筆頭として、取組みの進捗確認、議論、審議等を行っております。
(c) リスク管理
「①地球温暖化防止(c)リスク管理」の記載をご参照ください。
(d) 指標と目標
当社は「環境チャレンジ2050」で掲げている環境負荷の極小化に向け、内製生産高当たり廃棄物量/水使用量の原単位削減目標を設定し、2025年までに2018年度比7%削減を目標として取り組んでおります。加えて、これまでサーマルリカバリーが進められてきたプラスチック廃棄物について、更なる環境負荷の低減/資源の有効活用を図るため、2025年までにプラスチック廃棄物のマテリアルリサイクル率を35%とする目標を立てております。
また、5年ごとに「環境取組みプラン」を策定し、毎年の会社目標へ反映させる形で、活動を推進しております。
さらに、製品原材料については、当社製品の主原料である鉄を中心に、事業活動の持続可能性や競争力の観点も考慮したうえで、再生材の比率を高めていきたいと考えております。
このような取組みが高く評価され、国際環境非営利団体CDPによる「2024年水セキュリティ」部門において、上位2番目の評価となるA-に認定されました。
③ 環境負荷物質削減
地球の生態系や人の健康に悪影響をおよぼす環境負荷物質に対しては、その使用・排出規制が強化されており、企業には生産から廃棄に至るまで、全ての段階において徹底した環境負荷物質管理と削減対策、そして各種規制の遵守が求められております。モノづくりの企業である当社にとっての環境負荷物質削減は重要な社会的責務であると考え、精力的に取り組んでおります。
(a) 戦略
当社は製品含有化学物質管理において製品を提供する上での法的・社会的責任を果たすため、各種法令規制や要請を遵守することを企業活動における重要な方針としております。
(b) リスク管理
当社の製品含有化学物質管理が抱える社会・お客様へのリスクは、環境負荷物質の流出による法的責任の発生と、世の中からの信頼失墜が生じることであります。また、社内管理が不十分であると国内外の規制変更や厳格化に対応できず、当社製品の使用が制限されることがあります。これにより製品の供給・販売が困難となり、回収や切り替えコストの発生による価格競争力の低下がリスクとして懸念されます。
上記リスク回避のため、化学物質の安全性に関する最新の情報収集や、適切な規制遵守、社内外への製品含有化学物質管理の重要性周知等、製品含有化学物質管理の強化と改善を継続いたします。具体的な一例として、製品の研究や設計段階から、原材料や部品の調達時に化学物質の安全性や使用量を確認、成分表示を明確にした上で、必要に応じて顧客へ正確な情報を提供するようにしております。
(c) ガバナンス
当社では、研究開発本部副本部長が委員長を務める「製品環境委員会」を中心とした製品含有化学物質管理体制を構築しております。同委員会は年2回開催され、会社方針に基づいて課題の明確化と目標設定をするほか、方策の妥当性協議及び決定、進捗状況の管理を行っております。
また、同委員会の下部組織には、7つのワーキング・グループを設け、製品含有化学物質管理に関する全社方針の策定、国内外の体制構築、社内外の教育・監査、製品含有化学物質変更の際の設計変更や製品の切り替え推進について、役割分担と責任の所在を明確化した上で、活動を進めております。

図 製品環境委員会の組織と役割
(d) 指標と目標
当社は、2025年度に製品環境委員会のビジョンを改訂いたしました。2023年度までは顧客要求に追随するため、年2回以上の製品含有化学物質管理リストを更新することをはじめ、根幹規程の刷新と社内外への浸透を進めてまいりました。その結果、規格不適合の可能性が生じた際も、円滑な調査対応が可能となり、お客様への影響を最小限に抑えることができるようになりました。さらに、2024年度以降は化学物質の安全性に関する最新の情報収集の強化や、サプライチェーンを含む関係会社の教育活動や支援、監査体制を強化し、社内外における意識の向上と風土の醸成に取り組んでおります。今後2029年度までには、ジェイテクトグループとして「国内外統一の仕組み」「意識・風土の醸成」「システム導入」による盤石な管理体制の構築をすすめ、お客様に選ばれ続ける安心・安全・品質の提供を目指しております。

図 製品環境委員会のビジョン(2025年度改訂)
(3) 社会
当社は、「自己実現できる人づくり」「挑戦を楽しめる職場づくり」をマテリアリティに掲げており、その具体化のための社内環境整備、人財育成及び多様性の確保と尊重に関する様々な取組みを行っております。
社内環境の整備については、従業員の安全を第一としております。機械製造業を主要な事業とする当社においては、工業機械や化学物質の取扱いにあたって従業員の安全・健康への危険が伴います。このような危険から従業員を保護し、安心して働ける環境を維持することは、人づくり、職場づくりの前提として重視しております。また、従業員のモチベーションやパフォーマンス向上にも従業員の健康が欠かせないものと考え、より積極的な健康経営を推進しております。
また人財育成については、個々の能力向上に加えて、取り巻く環境の変化に対応できるよう様々な育成プログラムを提供するとともに、人財の多様性を確保し誰もが活躍できる組織を目指します。
本項では、このような考え方に沿って「労働安全衛生」「健康経営」「人財育成」と「ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン」に加え、昨今サステナブル経営において重視される「ビジネスと人権」の取組みについて取り上げております。
① 労働安全衛生(社内環境整備①)
当社は「自己実現できる人づくり」「挑戦を楽しめる職場づくり」というマテリアリティの前提として「安全第一・品質第二」を掲げ、価値ある製品を提供するための基盤となる従業員の心身の安全(労働安全衛生)をサステナブル経営上の重要テーマの1つとしております。
(a) 戦略
当社グループでは「全ての災害は必ず防ぐことができる」を安全衛生理念とし、全従業員が一体となって全員参加の安全衛生活動や快適な職場環境づくりに取り組んでおり、安全衛生理念を表したグローバルメッセージ"All for One in Life"のもと、命と健康を中心に置いた活動を通じて災害ゼロ実現を目指しております。

(b) ガバナンス
当社は、健康で安全・安心な働きやすい快適な職場環境づくりを目指して、取締役社長を委員長とし、経営層を含めた各工場・事業所の安全衛生業務事務局メンバーで構成された「全社安全衛生委員会」を設け、国内外のグループ会社を含めた安全・衛生の一元管理体制を構築しております。この「全社安全衛生委員会」は、期央・期末の年2回開催され、安全スコアの振り返りや従業員の声に基づき、安全・衛生・防火に関する方針展開と進捗状況の確認を実施し、その結果は全従業員に展開されております。
また、「全社安全衛生委員会」の活動を補う組織として、「安全衛生推進会議」を毎月開催し、安全に関するトップメッセージ、年度方針の進捗状況のフォローに加え、災害事例の情報共有や再発防止対策の検討や展開も行っております。さらに工場を含む各事業所においては、事業所長を委員長にした各事業所単位での安全衛生委員会を設置し、各種安全衛生活動の実施・確認や、労使の協力による課題の対策を積極的に行っております。

(c) リスク管理
当社は、従業員の労働災害や業務上の疾病による労働損失、職場環境の不安全や管理不足による評価の悪化、さらには従業員のモチベーション低下を重要なリスクと捉えております。このため、労働災害の根絶に重点を置いた取組みを実施しております。
全社的には災害件数や休業度数率を災害の程度に応じて分類・管理し、個別の災害についてはその要因を分析しております。重大な怪我に結び付きやすい災害を重点6災害として分類し、重点的に対策を行っており、中でも「挟まれ・巻き込まれ」による災害は発生頻度が高く、特に対策を進めております。リスクがある設備に対しては、リスクレベルによるランク付けとラベル表示を行い、現地現物でリスクの明確化を推進しております。また、リスクレベルの高い設備については、改善に向けた計画の立案から推進まで全社一丸となって継続的且つ計画的に取り組んでおります。
さらに、労働災害発生時の対応については、展開方法や宛先等の具体的な手順を社内規程で定め全社的に共有することで、報告の漏れを防ぎ、徹底した情報共有を迅速に行っております。
各工場では「労働安全衛生マネジメントシステム(OSHMS)」の考え方に基づき管理体制を構築し運用するとともに、各現場単位でリスクアセスメントによるリスク管理を行い、労働災害の未然防止に取り組んでおります。

(d) 指標と目標
当社では、前述の「全ての災害は必ず防ぐことができる」という安全衛生理念に基づき、事業活動における重大災害(死亡災害)をはじめとするあらゆる災害の予防を目標としており、重大災害(死亡災害)の件数及び、休業度数率(休業1日以上を計上)を指標として定めております。
② 健康経営(社内環境整備②)
当社では、従業員の健康づくりに投資することが従業員のエンゲージメントやパフォーマンス向上につながり、結果的に企業の持続的成長による企業価値の向上につながると考え、「自己実現できる人づくり」「挑戦を楽しめる職場づくり」という当社のマテリアリティに基づく重要なテーマの1つとして「従業員の心身の健康増進」を設定して健康経営を推進しております。
(a) 戦略
当社は、「健康宣言」に基づき、「従業員の心身の健康増進」を重要な経営戦略の一つに設定し、健康習慣等の実践状況と休職状況等の両面で総合的に評価し、PDCAサイクルを回す取組みを実践しております。

(b) ガバナンス
当社は、取締役社長を責任者とする経営層が中心となり、人事機能部署、ジェイテクト労働組合、健康保険組合で組織する「健康経営推進体制」を中核に、関係者が一体となって健康経営を推進しております。また、取締役社長を委員長とする「全社安全衛生委員会」では健康経営施策の計画・結果等を報告し、各施策について承認を得た上で、各職場や従業員に展開しております。
健康経営推進体制

(c) リスク管理
当社は、従業員の健康問題による労働損失を重要なリスクと捉え、アブセンティーズム(健康問題による欠勤)の低減に重点を置いた取組みを実施しております。具体的には私傷病による休務者数・休務日数で評価を行い、メンタルヘルス不調者対応や生活習慣病の予防・改善、健康意識向上に注力しております。これら各施策を通じて、従業員一人ひとりが健康にいきいきと働ける会社を目指します。
(d) 指標と目標
当社では、健康経営の取組みにあたって様々な管理指標を設定しておりますが、その成果を測る指標としては健康経営度調査の結果を採用しております。健康経営度調査とは経済産業省主催で毎年実施している健康経営の取組み状況に関する調査で、自社の健康経営に対する客観的な評価を確認することができると考えております。
当社では2025年度までにこの調査で上位評価である500位以内に入り、「健康経営優良法人 ホワイト500」の認定を取得することを目標に掲げて活動を進めた結果、2024年度に「健康経営優良法人2025 ホワイト500」を取得することができました。

③ 人財育成
当社は、競争環境、労働環境をはじめとした取り巻く環境が急速に変化していく中で、これらの環境変化に対応しつつ組織として成果を出し続けるためには、従業員一人ひとりが自ら学び、主体的に成長することが必要であると考え、人財育成を「自己実現できる人づくり」というマテリアリティに基づく重要なテーマの1つに設定して取組みを行っております。
(a) 戦略
人財育成方針
<事技職従業員の人財育成>
OJT、Off-JT、キャリア開発の3つの柱で構成しており、OJTでは、対話と実践を通じてメンバーの主体性を引き出すための定期的な面談やOJTトレーナー制度を実施しております。Off-JTでは、当社の仕事の基本である「問題解決力」を強化する研修を軸として、職位別、年齢別、テーマ別研修等、体系的に実施するとともに、自発的な学びの促進のため、e-ラーニングによる選択型教育を実施しております。また、JTEKT Group 2030 Visionの実現に向け、2025年4月より事技職新入社員向けのモノ作り研修を導入いたしました。この研修を通して全ての事技系社員がモノ作りの基礎を学ぶことにより、お客様の困りごとに寄り添ったソリューションの提案ができる人財づくりを推進いたします。キャリア開発では、従業員の自己実現のため、キャリア面談やサクセッションプラン、社内公募制度があり、従業員の価値観に応じて自発的なキャリア選択が可能な環境を整備しております。
<技能職従業員の人財育成>
全社教育、職場教育、自己啓発の3つの柱で構成しております。全社教育では、高等学園での教育を基礎とするキャリア開発プログラム(階層別教育)のほか、職場リーダー養成のためのTWIトレーナー(監督者訓練指導員)・リーダー養成講習、新任監督者に向けた研修では、生産調査部と連携しトヨタ生産方式(TPS)の実践訓練を実施する等、理解度向上に力を入れております。また自己啓発では、国家技能検定、QC検定、自主保全士等の取得に挑戦できるよう支援しております。
(b) ガバナンス
人財育成に関する取組みの状況や課題については「サステナビリティ委員会」にて報告をし、社外役員を含めた取締役、監査役及び経営役員らによる監督・助言を受けております。
(c) リスク管理
日本国内における少子化、要求される人財の高度化や雇用の流動化の中で事業活動に必要かつ有用な人財の確保は困難の度を増しており、当社は、人財の育成は事業継続の根本的な課題の一つと認識しております。このような考え方のもと、当社は心身両面での人財の育成に取り組んでまいります。
<高いモチベーション維持と能力向上>
人財育成、評価、処遇の3要素を有機的に結びつけ、入社から退社まで高いモチベーションを維持しながら能力向上を図れるよう、各種人事制度を関係づけて構築しております。
(d) 指標と目標
当社は、環境の変化に対応し、未来志向をもってお客様のニーズに応えるために必要なものとして、従業員一人ひとりの問題解決力を特に重視しております。そのため、Off-JTである問題解決研修を入社以降の複数年と主任(係長級の役職)登用時に対象従業員の全てに受講させることとしており、人財育成の主要な指標・目標として同研修への参加率を掲げております。
④ DE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)
当社では、多様な人財の誰もが公平な機会を持ち、組織の中で必要とされていると感じ、それぞれの能力を発揮できることは、倫理的観点だけでなくイノベーション創出や競争力向上等、企業の持続的成長においても欠かせないものであると考え、「挑戦を楽しめる職場づくり」というマテリアリティに基づく重要なテーマの1つとしてダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(以下DE&I)の取組みを進めております。
(a) 戦略
当社では、従業員の誰もが公平な機会を持ち、組織の中で必要とされていると感じ、その中でそれぞれの能力を最大限に発揮できるようにするため、職場環境や柔軟な働き方の整備に取り組んでおります。
年齢、性別、人種等の表層的な多様性だけでなく、価値観やスキル、経験、文化、性的指向、性自認等の深層的にも多様な人財が働きやすい職場づくりに努めております。
特に両立支援に注力しており、介護や育児等のライフイベントによりキャリアを中断することのないよう仕事と家庭の両立支援制度の充実に取り組んでおります。具体的には、法定以上の育児短時間勤務制度の整備や託児所支援、ベビーシッター補助制度、カムバックサポート制度(配偶者の転勤や介護、不妊治療等で退職した社員の復職制度)等を整備しております。また、両立支援ガイドブックの作成や全従業員に向けた両立支援研修も実施しており、ライフイベントとキャリアを両立しやすい職場風土の醸成にも力を入れております。
具体的な2024年度の活動としては、ジェンダーギャップの改善のために、労使一体となって男性の育児休業取得を推進するための議論、ジェンダーバイアスへの気づきを促す職場対話等を実施しております。柔軟な働き方への対応としては、転勤しなくても働き続けられるようにスーパーリモートワーク制度を導入するなど従業員の生活やキャリア形成に寄り添った制度づくりを進めております。
また、現在は「D&I方針」に基づいて活動を進めておりますが、「DE&I方針」として方針内容の見直しを進めております。これまでも公平性を意識して取り組んでまいりましたが、方針として「Equity(公平性)」を明示することで当社の姿勢をより明確に示し、公平で柔軟な職場づくりを一層推進することを目的としております。
D&I方針
(b) ガバナンス
DE&Iに関する状況や課題については、「サステナビリティ委員会」にて報告し、その監督・助言を受け、取組み状況の進捗については経営管理本部長に適宜報告をしております。また、女性管理職人数、男性の育児休業取得率等の重要指標については適切に対外公表を行っております。
(c) リスク管理
グローバルに多様な製品を展開する当社において、同質性の高い組織や偏った視点による意思決定はイノベーション創出や競争力において影響を及ぼすだけでなく、いわゆるグループシンク(集団浅慮)を招き品質への影響や市場機会の見逃しといった経営リスクに繋がる可能性があります。DE&I推進は、このようなリスクを回避し、組織の健全性を高める経営リスク管理の一環と位置付けております。そのため、心理的安全性が高く、多様な意見を尊重する風土の醸成やハラスメント防止の取組み、柔軟な働き方の整備等、リスク発現の予防にも継続的に取り組んでおります。
(d) 指標と目標
当社は、上記のとおり様々な観点からDE&Iに関する取組みを行っておりますが、特に仕事と家庭の両立支援を重視する立場から、ジェンダーに関わらず活躍できる環境整備を進めております。そのため、女性管理職人数と男性の育児休業取得率をDE&Iの主要な指標と定め、2026年度時点での目標を掲げております。
⑤ ビジネスと人権
人権の尊重はサステナブル経営に不可欠であり、また従業員エンゲージメント等にも直結する重要な要素と考えております。そのため「自己実現できる人づくり」「挑戦を楽しめる職場づくり」「持続可能なバリューチェーンの維持」といったマテリアリティの要としてビジネスと人権の課題に取り組んでまいります。
(a) 戦略
当社では、「ジェイテクトグループ人権方針」に基づき、人権教育や啓発活動、サプライヤーとの連携、人権デュー・デリジェンス体制の構築を進めております。この方針の策定にあたって人権インパクト・アセスメントを実施した結果、「強制労働・奴隷的拘束」「児童労働」「差別」「ハラスメント」の4つを当社グループにとって最優先で対応すべき人権リスクとして特定し「重点取組み課題」としております。
具体的な活動としては、社内、連結子会社のほか国内の主要仕入先に対して人権リスク調査とそのフィードバックを実施しており、人権リスクの調査を行っております。
また、2024年度には国内全従業員に対し「おたがいを尊重しよう月間」と題して、全ての職場で「アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)」について対話する研修を実施いたしました。これはアンコンシャス・バイアスが「重点取組み課題」に挙げられた人権リスクである「差別」「ハラスメント」に繋がりかねないことを理解し、日常業務の中で人権について配慮した判断や行動ができる企業風土の醸成を狙ったものであります。
(b) ガバナンス
当社の人権の尊重に関する取組みについては、「サステナビリティ委員会」にて報告・審議をしており、取組み状況の進捗については経営管理本部及び調達本部の本部長に適宜報告をしております。
(c) リスク管理
あらゆる人権リスクにおいて、対応が不十分な場合にはレピュテーションリスクや調達取引への負の影響、各国の法務リスクや人財の確保・定着へ悪影響が生じることを認識しております。またグローバルに事業を展開する当社においては、地域や業種によって異なる人権リスクが存在することも把握しております。そのため、人権方針に基づき人権デュー・デリジェンスを適切に実施し、人権リスクの把握、予防、是正に努めております。
人権取組みの全体図

(d) 指標と目標
当社は、人権デュー・デリジェンス等により人権侵害の発見と予防に取り組んでおり、当社事業活動に関連する重大な人権侵害の発生を指標として、これを発生させないことを目標としております。
(4) ガバナンス
当社は、非財務資本を適切に増進し、ステークホルダーの抱える社会課題の解決に貢献するサステナブル経営にあたって経営戦略に基づく事業プロセスが正常に機能し、不正を起こさないことが大前提と考えて「ステークホルダーに誠実な企業文化」をマテリアリティとしております。この観点から、経営基盤としてリスク管理とコンプライアンス(法令及び社内規程等の事業活動に関わるルールの遵守)を重視しております。
また、複雑化する社会において適切に自社の状況を把握し、効率的に経営にフィードバックするとともに業務の改善につなげるためには事業のデジタル化が不可欠と考えております。デジタル化に伴い今後さらにリスクとして注視が必要になる情報セキュリティについても重視しており、「デジタル化と情報セキュリティ」をマテリアリティに掲げております。
① コンプライアンス
当社は、コンプライアンスが企業価値を支える前提・基礎であり、「JTEKT Group 2030 Vision」を実現するために不可欠なものであると位置づけ、「ステークホルダーに誠実な企業文化」というマテリアリティに基づく重要なテーマに位置付けております。
(a) 戦略
当社では、「JTEKTグローバル・コンダクト・ガイドライン」を役職員の行動指針として、継続的なコンプライアンス・プログラムを実施しております。このコンプライアンス・プログラムにおいては、毎年の実施計画に基づき、全ての役職員に対し、時々の事例をもとにしたコンプライアンス教育、啓発活動を行うとともに、各階層及び役割に応じた教育を実施しております。また、社内各部署及び国内外のグループ会社におけるコンプライアンスの体制整備、運用、各施策の実施等の状況を定期的にモニタリングしております。さらに、社内各部署の従業員に対し、継続的に品質不正やハラスメント等のコンプライアンス違反に関するアンケートを実施し、一つ一つの声に対し丁寧に対応することで、早期対策と未然防止に努めております。
当社は、これらの成果をもとに次年度の実施計画を立案するというプロセスを繰り返すことで、コンプライアンス違反のない事業活動を目指しております。
(b) リスク管理
当社の多岐にわたる事業活動においては各種法令による規制を受けるほか、社会の一員として要求される社会規範のレベルは高いものであり、これらに違反する事態の発生は大きなリスクであると理解しております。その中でも、主力製品の性質及び多くの国と地域に顧客をはじめとするステークホルダーを有することに鑑み、公正な取引慣行の遵守が強く求められているとの考えから、当社は、カルテル行為と腐敗行為(贈収賄や横領等)の防止及び下請取引を含む取引適正化に特に重点を置いております。
当社は、これらリスクの顕在化を未然に防止し、早期に発見するため、前述のコンプライアンス・プログラムの実施に加え、当社グループの誰もが利用できるグローバル内部通報制度を整えるとともに、社外ステークホルダーからの苦情等を受け付ける各種窓口を設置することで、日々リスク管理に努めております。
(c) ガバナンス
以上のコンプライアンスに関する取組みの状況及び課題については、内部監査部門及び監査役による監査を受けるとともに、取締役をはじめとする経営層が出席する経営会議において報告され、確認を受けております。
(d) 指標と目標
当社は、継続的な施策の実施によって違反行為の発生リスクを低減し、独自に設定する重要法令違反(カルテル行為、腐敗行為等を含む当社が独自に設定する事項)を発生させないことを目標としております。
② 情報セキュリティ
当社は、会社情報、お客様情報の取扱いに対し、様々な情報技術ネットワークやシステムを利用しております。また、グループ製品には、モビリティの運転支援機能や各種サービスに貢献する様々な情報技術システムが利用されております。今後、当社の長期的な成長には経営と事業のデジタル化が不可欠であるとの認識のもと、その裏返しともいえる、これらの情報技術ネットワークやシステムに対するサイバー攻撃に対処し、当社やお客様、バリューチェーンの安全と事業継続を確保するため、情報セキュリティを重視しております。
(a) 戦略
当社は、情報セキュリティの継続的な対策強化に取り組むとともに、安心安全なITデジタル基盤の醸成を目指し、「ジェイテクトグループ 情報セキュリティに関する方針(ポリシー)」を策定しております。当該方針に基づき、グループを含めたセキュリティガバナンスの強化、グローバル標準への対応、セキュリティ人財育成により、情報セキュリティ体制の維持・構築とセキュリティレベルの向上を推進しております。

(b) ガバナンス
当社は、CISO(最高情報セキュリティ責任者)を任命し、IT・デジタル本部内に情報セキュリティ推進部を設置しております。このCISOと情報セキュリティ推進部が中心となり、経営管理本部や各事業本部、生産技術本部等の社内機能と連携して様々な情報技術システムの利用や、製品に搭載される情報技術システムに対する安全性確認、及びその脅威に対する情報収集・展開をグループ全体で実施し、早期検知及び対応できる体制の構築に努めております。
(c) リスク管理
企業に対するサイバー攻撃による情報リスクへの脅威は増加しており、いくら安全対策が施されていても、情報システムの障害発生や機密情報が外部流出するリスクは排除できません。さらには、バリューチェーンを含めた事業活動が一時的に中断するリスクも存在いたします。このような事態となった場合には、グループの事業活動の停滞や社会的信用低下により、グループの財務状況及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
そのため、情報技術ネットワークやシステム利用においては、必要な防御策を施した上で、攻撃による侵入や不正通信を監視し、万が一の場合に対応できる体制を整備するとともに、最新の脅威に柔軟に対応するため、脅威インテリジェンスの導入や業界組織及び官民連携組織からの情報入手に努めております。また、当社製品の開発においてもサイバー攻撃等のリスクを考慮した設計、開発を行なっており、脆弱性等のリスクが発見された場合に対応できる体制も整備しております。
なお、バリューチェーンも含めたリスクに対しては、2022年より仕入先との対話を通じた対策強化の取組みを継続して実施しております。
(d) 指標と目標
事業継続・生産計画への影響、損害額、社会に対するインパクト等を勘案した独自の基準に基づく「重要インシデント」を指標として設定し、これを発生させないことを目標としております。
(5) サステナビリティに関する指標と目標
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が中・長期的観点も含め連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があると認識している重要なリスクは、次のとおりであります。
なお、将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、長期・中期計画の達成を妨げるリスクをグループ全体で統合的に管理することを目的に、リスク管理の最高責任者であるCRO(チーフリスクオフィサー)を議長とするリスク管理委員会を設置しております。具体的には、国内外のグループ会社までを対象とした「リスク管理規則」に基づき、事業軸・機能軸・地域軸の観点から、外部及び内部の環境変化を踏まえたリスクアセスメントを年1回以上実施しております。その中で、以下の5つのカテゴリーに関連するリスクを洗い出しております。
1.法規制・関連違反
2.信用・信頼棄損
3.オペレーション
4.戦略
5.ガバナンス
これらのリスクについては、リスク対策を講じていない場合の影響度に、これまでの対策によるリスクの抑制・軽減効果を加味した「重要度」と、リスクの「発生可能性」の2軸で評価を行い、総合的な優先度に基づいて、管理レベルを複数段階に分けて対応しております。評価結果はリスク管理委員会で審議され、特に対応が必要とされるリスクは以下の「(1)最重点リスク」として特定しております。特定した最重点リスクには、それぞれ統括責任者を任命し、組織横断的なリスク対応を推進するとともに、定期的に進捗状況を確認しております。
加えて、「(1)最重点リスク」以外の事業上のリスクについても把握に努め、リスクの低減を図っております。これらのリスクのうち主要なものについては「(2)その他の主要なリスク」として後述しております。
なお、前述の「(1)最重点リスク」と「(2)その他の主要なリスク」に対して、以下に記載する種々の対策を講じておりますが、それらが有効に機能しない場合等には、リスクが解消できず、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
リスクヒートマップ

① 市場及び事業に関するリスク
(自動車業界及び自動車市場への依存)
当社グループは、ステアリングシステム、駆動部品、ベアリング及び工作機械等の製造販売を主な事業としております。
このうち、ステアリングシステム及び駆動部品は、ともに大半を自動車業界向けに製造販売しております。ベアリングは各産業において広く使用される部品でありますが、当社グループでは、その売上収益の過半が自動車業界向けであります。また、工作機械につきましても、その受注は自動車業界からのものが中心であります。なお、当社の筆頭株主であるトヨタ自動車株式会社との取引金額は、連結売上収益の20.3%を占めております。このような当社グループの事業構造から、当社の売上収益及び事業利益は自動車市場の需要動向によって影響を受ける関係にあります。
当社グループは、日本をはじめグローバルな自動車の需要見通し及び顧客より提示される自動車の販売見通し等を総合的に検討・判断した上で経営資源の効率的な投入を行っております。また、ベアリング及び工作機械における自動車業界以外の幅広い顧客層の維持に努めているほか、現代において解決が求められる社会課題に対し、当社グループがこれまで培ってきた技術の活用を提案するために、様々な新規事業を企画し、自動車以外の業界に対しても展開しております。しかし、これらの取組みが必ず功を奏する保証はなく、当社グループの売上収益減少や投下資本の回収の遅れにつながることがあります。
これらのことから自動車業界及び自動車市場の動向は、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
(価格競争)
当社グループ製品の市場における価格競争は大変厳しいものとなっております。特に中国自動車メーカーの車両の過剰生産や低価格攻勢は、世界市場における価格競争を一段と激化させております。
このような状況下でも、当社グループは、「JTEKT Group 2030 Vision」のもと、既存製品の高付加価値化や、新領域への挑戦を推進し、技術開発力とコスト競争力の両立に努めております。また、当社グループが大切にする価値観である「本気」と「対話」を通じて顧客の「潜在ニーズ」を発掘し、絶え間ない技術革新と製造原価低減を図っております。
しかし、自動車業界における車両の電動化の進展や環境規制の強化、関税政策の変動等、外部環境の変化は当社グループの競争力にさらなる影響を及ぼす可能性があり、当社グループが競争力を維持できない場合、市場シェアの喪失や収益性の低下に直結する可能性があります。
(新製品開発)
当社グループは、斬新で魅力ある新製品・新技術の開発に邁進し、顧客からの支持をいただいてまいりました。今後も製品開発力の強化はもちろんのこと、生産準備期間の短縮、コストの低減、品質の向上等、様々な面から施策を講じて顧客の要求を満たすために努力してまいります。
しかし、これら開発には多くの資金と資源を投入する必要がある一方で、顧客からの支持を得て売上につながる確実な保証はありません。また、顧客からは一層の技術の高度化、開発期間の短縮等を求められ、当社グループは同種製品を扱う競合先との激しい開発競争に晒されております。そのため、当社の施策が将来にわたって常に競合先を上回る競争力を保持し続けることができるという保証はありません。
当社グループが業界と市場の変化に対応しきれず、あるいは必要十分な資源を投入することができないことにより、競合先よりも魅力ある新製品を開発できない場合には、中長期的な市場シェアの縮減や製品の売上減少につながり、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、製品の製造に使用する原材料や部品その他の多くを外部の事業者からの供給に頼っております。
そのため、これら供給元の生産能力不足や廃業、市況の変化等による価格の高騰や品不足、工場火災のような事故や地震のような自然災害の発生等の様々な要因により、半導体その他の主要な原材料や部品の調達に支障をきたすことがあります。
このようなリスクを回避するため、当社グループでは、各種の原材料や部品等を複数の事業者から調達し、安定的な供給の維持を図っております。
しかし、供給元の選択肢は限定的である場合もあり、供給が不安定となるリスクを完全に払拭できるものではありません。このようなリスクが顕在化した場合、製品の生産不能による売上収益の減少や顧客に対する供給責任の履行困難、製造原価の上昇による収益性の低下等により、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、「品質」を経営の最重要事項の一つとして掲げ、顧客から認められた世界水準を満足する品質管理基準に則って製品を製造しております。また、品質問題の発生に備え、製品保証引当金による会計上の手当、保険加入による製造物責任等のリスクヘッジも行っております。
しかしながら、製品の開発・製造等における品質上のリスクの全てを将来にわたって完全に排除することは困難であり、また、リスクヘッジのための諸施策をもってしても、大規模なリコール等への対応や製造物責任等に基づく高額の賠償請求に対して、その全てをカバーできないことも想定されます。さらには、製品の品質不良が原因となって災害や人身事故等が発生した場合には製品、ひいては当社グループ自体の社会的信頼の低下を招き、顧客との取引停止等につながることがあります。
これらに伴う支出及び品質問題に起因する社会的信頼の低下や顧客との取引停止等は、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、これまでの製品開発において蓄積してきた技術・ノウハウを当社の知的財産権として適切に保全、活用しております。しかしながら、これらの技術・ノウハウは、特定の国・地域においてはその法制度上の制限等により、知的財産権としての完全な保護を受けることが困難な場合があります。このような場合には、第三者が当社グループの知的財産権を使って類似した製品を製造する等の行為を十分に阻止できない可能性があります。
また、当社グループは第三者の知的財産権を尊重し、紛争等に巻き込まれることを防止するため、第三者知的財産権の事前調査等の対策を行っております。しかしながら、全世界の全ての権利を完璧に把握することは困難であり、将来的に当社グループの製品において第三者の知的財産権が発見され、製品の製造販売に支障をきたす可能性は排除できません。
これら知的財産権に内在する問題に起因する、製品販売の機会喪失や、第三者からの損害賠償請求等に基づく支出によって、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、事業拡大や競争力の強化等を目的として、M&Aや資本参加、資本提携等を行うことがあります。これらの企画においては事業戦略上の意義を確認し、リスクを踏まえた慎重な検討により最善と考える方法を選択し、また、実現した後は当初の目的を達成できるよう努めておりますが、その全てが計画通りに成功を収める保証はありません。
これら企画の目標達成が遅延、不可能となった場合には、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、多様な顧客のニーズに対応し、また、事業活動上のリスクを分散するため、グローバルな事業展開を行っており、連結売上収益に占める海外売上収益の割合は60.8%を占めております。米州、欧州、アジア等多くの国・地域で製品の生産と販売活動を行っており、また、取引先も多岐の産業分野に属しているため、グローバルベースの経済状況変化は勿論のこと、当社グループが生産、販売を行っている特定の国・地域の経済状況の変動や、取引先の属する産業の景気変動が、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
連結財務諸表作成にあたり、現地通貨で作成される海外関係会社の財務諸表を円換算しているため、現地通貨における価値が変わらなくとも、当社グループの連結財務諸表は為替レートの変動による影響を受けます。
また、当社グループが日本で生産し、輸出する事業においては、円高の進行により価格競争力の低下を招く可能性があります。一方、急激な円安進行は、原材料や物流、エネルギー等の調達コスト高騰を招く可能性があります。海外で使用する原材料等の現地調達比率の向上や為替予約等により当該リスクの軽減を図っておりますが、全てのリスクを排除することは困難であります。従いまして、当社グループの財政状態及び経営成績等は、為替レートの変動による影響を受ける可能性があります。
③ 政治・規制・法的手続・災害等に関するイベント性のリスク
当社グループは、東海・東南海・南海地震や暴風、豪雨等の大規模自然災害、世界規模の感染症拡大(パンデミック)の発生等の可能性に備え、これらの災害による被害を最小限に抑えるため、事業活動への影響を考慮し、異常事態への対応体制や緊急時の事業継続計画(BCP)策定・見直し、サプライチェーンの強化、ITインフラの強化等の施策を継続的に講じております。
しかしながら、これら施策によっても災害発生によるリスクを完全に排除することは困難であります。また、顧客又は供給元の罹災等、当社グループによる施策のみでは回避しきれない事象も存在します。
これら災害が当社グループに与える影響は多岐にわたり、顧客の生産停止等による需要の停滞、労働力及び原材料等の不足による供給停止又は世界景気の後退等により、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
加えて、2024年以降も世界各地で自然災害が多発し、気候変動の影響による異常気象や、サイバー攻撃等の新たなリスクも顕在化しつつあります。地政学的には、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化や中東情勢の不安定化、台湾海峡を巡る緊張の高まり等、国際的な紛争リスクが引き続き高い水準にあります。さらに米中間の貿易摩擦や各国の保護主義的な政策の強化、世界的なインフレ・金利上昇の影響も、当社グループの事業環境に不確実性をもたらしております。当社グループでは、様々な施策を講じて従業員の安全確保、生産体制の維持に努めておりますが、今後も自動車業界をはじめとする産業全体の需要の停滞やサプライチェーン寸断等が発生した場合、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。なお、これらのリスクによる具体的な影響額の算定は、現時点では困難であります。
当社グループは、大気汚染、水質汚濁、廃棄物処理、有害物質の排除、土壌・地下水汚染等に関する日本及び諸外国の環境に関する規制を受けており、それらを遵守するために必要な経営資源を投入しております。また気候変動をはじめとした地球環境問題は、その課題の解決に貢献できれば好影響を及ぼす可能性がある一方、対応を誤れば将来にわたり当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性もあります。
当社グループは、製品の生産工程において、温室効果ガス、産業廃棄物、環境負荷物質等の発生を極力抑えるよう設計・製造の各段階で対策を講じておりますが、これらの対策により、現在及び過去の生産活動に関わる環境への影響を完全に排除することは困難であり、規制や市場の要求が厳格化した場合や、当社グループの活動に起因して環境への悪影響が発生したと判明した場合には、必要な対策を講じるために費用負担が増加することが見込まれます。
特にカーボンニュートラルへの対応が不十分と評価された場合には取引の継続にも関わる可能性があり、これらの事態が、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、事業運営に関連して各国の法令の適用を受けており、これらを遵守しつつ企業価値の向上に努めることを責務と考えております。また、事業遂行の過程で関わる顧客をはじめとする第三者との間では、公正で相互利益を基礎とした関係の構築を重視しております。当社グループでは、このような企業としてのあり方の実践のため、法令違反を未然に防止するための仕組みづくり、定期的な社内点検や役職員に対する教育等を継続して実施しております。
しかしながら、これらの取組みをもってしても、当社グループの事業活動に伴い、各国各種の法令等への違反や利害の対立に起因する訴訟紛争が発生する可能性を、完全に排除することはできません。
既存又は将来の法令違反に対する処分及び訴訟紛争により、制裁金等又は損害賠償責任等を負担するに至った場合の支出、さらには法令等に違反したことによる社会的信用の低下に起因する様々な結果は、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの工作機械をはじめとする製品は、多くの国と地域での輸出関連法規により規制される貨物に該当しており、これらの法規制への適切な対応が不可欠となっております。近年、米中対立の激化や経済安全保障政策の強化、半導体・先端技術の輸出管理強化等、各国で規制動向が一層複雑化・厳格化しております。当社グループは、法令遵守の徹底を最優先とし、社内外の専門リソースを活用して最新の規制動向を継続的にモニタリングし、グループ内での情報共有・教育を強化しております。また、輸出管理体制の見直しや、リスクアセスメントの実施、取引先への適切な指導・協力体制の構築等、コンプライアンス強化に努めております。しかしながら、国際情勢の急激な変化や、各国政府による予期し得ない規制強化・新規制の導入、または特定国・地域への輸出制限措置等が発生した場合、当社グループの事業活動やサプライチェーンに影響が及ぶ可能性があります。これにより一部製品の輸出停止や納期遅延、受注減少等が発生し、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
当連結会計年度の世界経済には底堅い成長が認められましたが、当社の事業領域においては、日本での自動車生産台数の伸び悩みや、欧州や中国の景気停滞継続等、次第に不透明感が強まってまいりました。外部環境の厳しさが増すなかではありましたが、2030年までに目指す姿として掲げた「JTEKT Group 2030 Vision」を指針として、「ソリューションプロバイダーへの変革」を実現するための体制づくりに注力いたしました。2030年に向け、既存製品の高付加価値化により成長への原資を生み出し、その原資をもとに新領域へチャレンジするという両輪で、ソリューションプロバイダーへの飛躍を目指します。
当社は、第二期中期経営計画(2024〜2026年度)に基づき、当連結会計年度はその初年度として、本計画に沿った戦略を着実に実行してまいりました。特に、重点施策として位置づけた「ソリューションの創出力強化」、「競争力の強化」、「グローバル体制の再構築」により、成長への足場固めを図りました。加えて、経営基盤を強化するために、「人と現場中心の経営」、「カーボンニュートラルの推進」、戦略的な「キャッシュアロケーション・株主還元」にも注力いたしました。
「ソリューションの創出力強化」につきましては、2025年1月にソリューション共創センター(ソリセン)を開設いたしました。全社を挙げてジェイテクトグループの持つ技術や知見(コアコンピタンス)をプラットフォーム化し、ソリセンは、それらをつなぎながら、社内外から寄せられた課題をともに解決へと導く役割を担います。ソリセンには、すでに100件を超える相談が集まり、中にはお客様満足度向上につながったソリューション創出事例も出始め、着実に成果が現れております。ソリセンの仕組みを活用し、社会や社内の課題解決策の創出を積み重ねることにより、会社全体でソリューションプロバイダーへの変革を実現してまいります。
「競争力の強化」の取組みとして、「自動車事業」においては、お客様のニーズに応えるために「軽量・コンパクト」をコンセプトにしたC-EPSの開発、「良質廉価」なモノづくりをコンセプトにした第2世代のRP-EPSの開発を実施してまいりました。また、将来のビジネスを見据えて、我々のコア技術をベースとしたステアバイワイヤ(自動運転に親和性の高い新ステアリングシステム)の開発に注力しているほか、Pairdriver®(人とシステムがシームレスに調和した自動運転を実現するシステム)をさらに進化させるため、高付加価値化に努めております。
「産機・軸受事業」では、デジタルを活用した開発リードタイムの短縮等、競争優位性の確立に努めてまいりました。軸受設計プロセスにおいては、設計データの管理一元化や、設計者による計算等の作業を自動化するシステムの開発・導入により、設計検討時間を従来比1/4に短縮することを実現いたしました。
「工作機械・システム事業」では、幅広い顧客ニーズにお応えするための研削盤大型モデル、BEV用電池の進化を支える設備の開発を進めました。また、労働力不足や環境対応等の課題解決に貢献するために、自動化・工程集約のご提案や保全業務を効率化するデジタルサービスも強化しております。
「アフターマーケット事業」では、海外新興市場の開拓やお客様の新たなニーズにお応えする商品の開発に注力いたしました。気候変動等により多発する水害の未然防止に貢献するために、耐環境性に優れ、海水域や寒冷地等の悪環境下でも長寿命を実現した水位計「STD series」を発表しております。
また、当社はこれら事業を支えるデジタル基盤強化のため、全社を挙げてITリテラシーの向上や、生産現場でのAI導入・自動化による生産性改善等、デジタルモノづくり改革を推進しております。「デジタル祭り」と銘打った全社活動では、ITデジタルツールを整備するとともに、デジタル活用事例を共有できるサイトの公開やイベントを実施いたしました。これらの活動を通じ、各人が業務内で自発的にデジタル化を進める機運が高まりました。また、生産現場においても、検査工程等においてプログラミング不要で容易に使用できるAI活用プラットフォームを内製する等、着実にデジタルモノづくり改革を進めております。
「グローバル体制の再構築」としては主要地域ごとに戦略を明確化し、グローバルでの企業価値最大化に向けた取組みを実行してまいりました。成長市場と位置付けているインドにつきましては、2024年10月に新工場の設立を決定いたしました。一方、市場低迷が続き収益体質改善が急務である欧州では、構造改革を加速させました。拠点ごとに生産体制の在り方を精査し、油圧ポンプ製造拠点及びニードルローラーベアリング事業の売却を実行しております。欧州では、今後もう一段の構造改革を実行し、早期黒字化を目指してまいります。
人的資本戦略としては「人と現場中心の経営」を掲げ、「チャレンジが人を育て、人が新たなソリューションを生み出す」という考えのもとチャレンジできる風土の醸成を進めてまいりました。また、従業員エンゲージメントの向上がソリューションプロバイダーへの変革の重要ファクターと位置付け、「おもいやりコミュニケーション研修」や「おたがいを尊重しよう月間」等の新たな試みを実施いたしました。
環境に配慮した取組みとしては、「カーボンニュートラルの推進」の一環として刈谷工場内にCNラボを開設いたしました。CNラボは、太陽光発電により水素を生成し、貯めることができるモデルプラントであります。当社では、2035年にグローバルでカーボンニュートラル達成を目指しており、その実現に向けた当社グループの2030年度の温室効果ガス排出削減目標(2021年度比)は、SBT※認定を取得しております。このような気候変動への取組みは、国際環境非営利団体CDPによる最新の気候変動分野の評価で最上位のAを獲得する等、外部からも高く評価されております。また、サーキュラーエコノミーの実現にも一層注力し、資源の再利用や廃棄物の削減等の取組みを進めてまいります。
「キャッシュアロケーション・株主還元」につきましては、第二期中期経営計画期間中に1,000億円の株主還元を計画し、着実に施策を実行してまいりました。配当につきましては、安定的な配当を継続する姿勢を明確にするべく還元方針をDOE(親会社所有者帰属持分配当率)2-3%目安に改定し、増配いたしました。加えて、当社としては初の自己株式取得として280億円超の買付けを実施いたしました。今後も企業価値を高めるとともに株主のみなさまへの還元の充実を図ってまいります。
また、政策保有株式につきましてもゼロ化に向けて縮減を着実に進めております。それにより創出された資金は、持続的な成長実現のため人財や研究開発等に積極投資する等、資本効率の最適化に努めてまいります。
※SBT:パリ協定が求める水準と整合した、企業が設定する温室効果ガス排出削減目標
当連結会計年度の連結業績につきましては、次のとおりであります。
前連結会計年度に比べ、売上収益は71億7百万円(0.4%)減収の1兆8,843億97百万円、事業利益は79億60百万円(10.9%)減益の649億38百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益は265億44百万円(65.9%)減益の137億13百万円となりました。
なお、売上収益事業利益率は3.4%と前連結会計年度より0.4ポイント低下しております。
セグメントの業績につきましては、次のとおりであります。
「自動車」におきましては、為替影響はあるものの、欧州や中国での減収が大きく、売上収益は前連結会計年度に比べ112億87百万円(0.8%)減収の1兆3,331億50百万円となりました。事業利益は、為替影響や原価改善の効果はあるものの、減収や北米における生産性悪化の影響等により、66億95百万円(14.9%)減益の383億44百万円となりました。
「産機・軸受」におきましては、為替影響はあるものの、日本や欧州での減収が大きく、売上収益は前連結会計年度に比べ58億8百万円(1.6%)減収の3,522億68百万円となりました。事業利益は、為替影響や原価改善の効果はあるものの、減収の影響が大きく、40億36百万円(31.8%)減益の86億49百万円となりました。
「工作機械」におきましては、為替影響もあり北米や中国を中心に増収となり、前連結会計年度に比べ売上収益は99億89百万円(5.3%)増収の1,989億78百万円となり、事業利益は、為替影響や原価改善の効果等により、26億74百万円(18.1%)増益の174億10百万円となりました。
財政状態につきましては、次のとおりであります。
当連結会計年度末における資産は、現金及び現金同等物や棚卸資産の減少等により、1兆5,653億91百万円と前連結会計年度末に比べ631億22百万円の減少となりました。
負債につきましては、繰延税金負債や退職給付に係る負債の減少等により、7,879億22百万円と前連結会計年度末に比べ178億21百万円の減少となりました。
また、資本につきましては、配当や自己株式の消却による利益剰余金の減少等により、7,774億69百万円と前連結会計年度末に比べ453億1百万円の減少となりました。
なお、1株当たり親会社所有者帰属持分は前連結会計年度の2,300円32銭から2,340円55銭に増加いたしました。
また、社債及び借入金につきましては、2,404億75百万円と前連結会計年度末に比べて14億72百万円減少しました。
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」の「(3) 長期的な会社の経営戦略」や「(5) 優先的に対処すべき課題」に記載しております様々な取組みにより、第二期中期経営計画の目標達成につなげてまいります。
連結キャッシュ・フローにつきましては、次のとおりであります。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前利益の計上等により、当連結会計年度は802億38百万円の資金の増加となりました。(前連結会計年度は1,544億61百万円の資金の増加)
投資活動によるキャッシュ・フローは、投資有価証券の売却による収入があったものの、有形固定資産の取得による支出等により、当連結会計年度は759億36百万円の資金の減少となりました。(前連結会計年度は713億52百万円の資金の減少)
財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金の返済や自己株式の取得、配当金の支払等により、当連結会計年度は520億76百万円の資金の減少となりました。(前連結会計年度は472億24百万円の資金の減少)
これらに換算差額を減算した結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物は1,190億60百万円となりました。
(注) 1 金額は平均販売価格によっております。
2 上記の金額には、外注加工費及び購入部品費が含まれております。
当社グループの販売高の大部分を占める、自動車業界向け部品については、納入先から提示される生産計画を基に、当社グループの生産能力等を勘案して生産を行っております。
なお、工作機械の受注実績は以下のとおりであります。
(注) 主要な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は以下のとおりであります。
文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 重要性がある会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」第312条の規定によりIFRSに準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成にあたって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。
なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要性がある会計方針及び、将来に関する仮定及び報告期間末における見積りの不確実性の要因となる事項は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記」の「2.作成の基礎 (4)重要な会計上の判断、見積り及び仮定」及び「3.重要性がある会計方針」に記載しております。
① 売上収益
当連結会計年度の売上収益は、前連結会計年度に比べ71億7百万円(0.4%)減収の1兆8,843億97百万円となりました。
セグメント別に見ると次のとおりであります。
「自動車」は前連結会計年度に比べ112億87百万円(0.8%)減収の1兆3,331億50百万円となりました。地域別の主な内訳は、日本5,121億33百万円(62億50百万円、1.2%の増収)、アジア・オセアニア3,296億38百万円(136億28百万円、4.0%の減収)、北米2,945億13百万円(153億67百万円、5.5%の増収)であります。
「産機・軸受」は前連結会計年度に比べ58億8百万円(1.6%)減収の3,522億68百万円となりました。地域別の主な内訳は、日本1,495億78百万円(31億94百万円、2.1%の減収)、北米913億1百万円(11億81百万円、1.3%の減収)、アジア・オセアニア568億58百万円(25億28百万円、4.7%の増収)であります。
「工作機械」は前連結会計年度に比べ99億89百万円(5.3%)増収の1,989億78百万円となりました。地域別の主な内訳は、北米995億64百万円(46億77百万円、4.9%の増収)、日本773億40百万円(2億76百万円、0.4%の増収)、アジア・オセアニア206億80百万円(51億8百万円、32.8%の増収)であります。
② 事業利益
当連結会計年度の事業利益は、前連結会計年度に比べ79億60百万円(10.9%)減益の649億38百万円となりました。
セグメント別に見ると次のとおりであります。
「自動車」は、為替影響や原価改善の効果はあるものの、減収や北米における生産性悪化の影響等により、前連結会計年度に比べ66億95百万円(14.9%)減益の383億44百万円となりました。
「産機・軸受」は、為替影響や原価改善の効果はあるものの、減収の影響が大きく、前連結会計年度に比べ40億36百万円(31.8%)減益の86億49百万円となりました。
「工作機械」は、為替影響や原価改善の効果等により、前連結会計年度に比べ26億74百万円(18.1%)増益の174億10百万円となりました。
③ その他の収益・その他の費用
その他の収益は、受取保険料等が増加しましたが、前連結会計年度に製品保証引当金戻入を計上していたこと等により、前連結会計年度に比べ34億41百万円(30.1%)減少の79億96百万円となりました。
その他の費用は、事業構造改善費用の増加等により、前連結会計年度に比べ123億42百万円(55.7%)増加の344億82百万円となりました。
④ 金融収益・金融費用
主に為替影響により、金融収益は、前連結会計年度に比べ106億91百万円(55.6%)減少の85億47百万円となり、金融費用は、前連結会計年度に比べ73億84百万円(75.7%)増加の171億39百万円となりました。
⑤ 親会社の所有者に帰属する当期利益
上記の要因等により、親会社の所有者に帰属する当期利益は、前連結会計年度に比べ265億44百万円(65.9%)減益の137億13百万円となりました。
当社グループは、2030年の目指す姿を達成するための第二期中期経営計画期間の目標を以下のとおりとしております。
第二期中期経営計画(期間:2024~2026年度)の目標及び実績
なお、これらの目標につきましては、達成を保証するものではありません。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、次のとおりであります。
当社グループの資金需要の主なものは、設備投資、投融資、研究開発費等の長期資金需要と、当社製品製造のための材料及び部品購入等の運転資金需要であります。
当社グループは、事業活動のための適切な資金確保、適切な流動性の維持及び健全な財政状態の維持を財務方針としております。
現金及び現金同等物等の流動性資産に加え、営業活動によるキャッシュ・フロー、市場あるいは金融機関からの資金調達を通じ、現行事業の推進と事業拡大に必要となる資金を確保できる状況と考えております。
また、グループ各社に偏在する余剰資金の相互融通を図る等、資金効率の向上に努めております。
当社は、欧州においてニードルローラーベアリング(以下「NRB」)の製造販売を行う連結子会社3社(以下「譲渡対象会社」)を含むNRB事業の譲渡(以下「本件譲渡」)に向け、2025年2月25日付けでドイツの投資会社であるAEQUITAグループと株式等譲渡契約を締結しております。
当社は、2024年度から2026年度の第二期中期経営計画において、グローバル体制の再構築による経営・事業体制の強化を進めております。欧州市場においては事業の整理・統合を進め、収益体質の改善により、黒字化を目指しております。
今後も当社は、各地域の市場環境に応じた最適な戦略と事業編成によって、体質改善を進めるとともにお客様のニーズに応えるソリューションを提案してまいります。
(2) 譲渡対象会社の概要
ドイツ拠点
フランス拠点
チェコ拠点
※ 1 当該譲渡対象会社の株式・持分は、現在当社の100%子会社であるオランダのJTEKT BEARINGS EUROPE B.V.が保有しておりますが、本件譲渡に先立ちJTEKT BEARINGS EUROPE B.V.から当社に譲渡され、当社からAEQUITAグループ傘下のAEQH32 GmbHに譲渡される予定であります。
2 ドイツ拠点及びチェコ拠点は有限会社であるため、1株当たり情報の記載を省略しております。
(3) 譲渡する株式数・持分及び譲渡後の出資比率
譲渡対象会社の全株式・持分及び債権等を、備忘価額で譲渡いたします。
譲渡後の当社の出資比率は3社とも0%となります。
当社は、JTEKT Group 2030 Visionで「モノづくりとモノづくり設備でモビリティ社会の未来を創るソリューションプロバイダー」を掲げております。
グループで保有する多様なコア技術やコンピタンスを掛け合わせ、製品やサービスを未来志向のソリューションとして成長市場へ投入することで、より多くのお客様の困りごとを解決するとともに、環境・安全・エネルギー・少子高齢化等の社会課題の解決に貢献しております。
祖業である軸受や工作機械で培った、トライボロジー(潤滑、摩擦)、材料、システム制御、計測・解析、成形・加工等、更には近年注力しているAIやWebアプリ等、多様な基盤技術を融合させ、新しい製品や製品を融合させたシステムやソリューションを発明することで、これからも変化し続ける世の中の多様なニーズに応えてまいります。
また、デジタル技術等を活用し既存領域の開発効率を徹底的に高める一方で、新規・先行領域の研究開発への投資を強化することで、更なる成長を目指してまいります。
なお、当連結会計年度における研究開発費は
自動車事業では、基盤技術を融合させたステアリング及び駆動部品の充実化と、車両(モビリティ)の「走る、曲がる」の領域を包括し、市場の新規ソリューションに繋がるシステムを提供することを目指しております。
ステアリング領域では、モビリティの運転支援・自動運転の高度化するニーズに対応する技術の開発を進めるとともに、商用車を含めた車両の電動化や電費向上に貢献する電動パワーステアリング(EPS)の開発とその小型・軽量化に取り組みました。
駆動領域では、電動車xEV(※1)の「電費向上」、「安全・安心な走りの質向上」に貢献する駆動部品の開発を進めるとともに、モビリティや工場、生活圏内等、さまざまなシーンへの適用を可能にするための高圧水素供給バルブ及び高圧水素減圧弁の開発に取り組みました。当連結会計年度の主な成果としては、以下のとおりであります。
・電動パワーステアリング次世代仕様の拡販(人とくるまのテクノロジー展2024に出展)
小型軽量、グローバル最適生産を実現した次世代仕様のコラムアシストタイプ「C-EPS®」、ラックパラレルタイプ「RP-EPS®」の電動パワーステアリングで、電動化による車両重量の抑制に貢献します。
・リンクレスステアバイワイヤシステム「J-EPICS®」の量産(2025年度に販売開始)
モーター制御、アシスト制御、電源制御やセンシング等、様々な電気・電子・電装技術を融合させたステアリング機能で、手動運転の利便性に加えて自動運転との親和性で安全・安心に貢献します。
・自動操舵制御システム「Pairdriver®」の開発(IEEE国際会議でBest Paper Award(論文賞)を受賞)
EPSで培ったステアリング協調操舵技術ノウハウで、安全・安心・快適な自動運転に貢献します。
・操舵アクチュエータの量産(2025年日本国際博覧会自動運転バスに搭載、日野自動車株式会社の大型観光バス用に採用)
油圧式パワーステアリング(HPS)とEPS制御技術を組み合わせることで、あらゆる商用車に対し、自動運転/運転支援機能、乗用車レベルの高い操舵性能と安全性を実現します。
・低トルクハブユニットの開発(人とくるまのテクノロジー展2024に出展)
ジェイテクトの持つ潤滑技術とシール技術で、ベアリング部の転がり抵抗とシール部の摺動抵抗を低減し、モビリティの低電費・低燃費に貢献します。
・ポータブル水素カートリッジ用バルブの開発(トヨタ自動車株式会社開発の水素カートリッジに採用)
「水素を身近なエネルギーとして手軽に持ち運び、生活圏の幅広い用途で使う」というソリューションを提供し、クリーンで豊かな社会づくりに貢献します。
※1:BEV(Battery Electric Vehicle)等を含めた電動化された自動車の総称
産機・軸受事業では、これまで培ってきた低損失、長寿命、材料・熱処理といった基盤技術を更に進化させることで、自動車や産業機械の小型軽量化、機械効率向上等に向けた様々なソリューションを提供しております。当連結会計年度の主な成果としては、以下のとおりであります。
・設計基幹システムによる設計プロセスの短縮
初期検討から作図までをシームレスに完了できる設計基幹システムを開発。短期製品開発が必要な現在の市場環境に対し、様々なソリューションの早期提供を実現しております。
・ハイアビリーJFAST™
ハイアビリーJFAST™は、グリース潤滑用にPEEK樹脂製の保持器を最適設計した、高速性と低昇温性に優れた工作機械主軸用軸受であります。付加機能により、製造現場のカーボンニュートラル達成に貢献いたします。
・LFT-V 量産開始 ~いすゞ自動車の新型「MU-X」に採用~
低トルク円すいころ軸受LFT®(※2)シリーズにおいて、2020年に開発した最新のLFT-Vは更なる低損失化を達成しております。いすゞ自動車株式会社の「MU-X」(1トン積みピックアップトラック「D-MAX」の派生車)のリアデファレンシャル用軸受として採用されました。新型「MU-X」の低燃費化とCO2排出量削減に貢献いたします。
・ONI BEARING®の技術を用いて ~ロードバイクから競技用車いすへ~
ジェイテクトが世界で初めて実用化したセラミックボール軸受の技術や長年培った知見を活かして開発した、ロードバイク用軸受「ONI BEARING®」。圧倒的な低トルクを誇る「ONI BEARING®」の技術を活用したソリューションを競技用車いすに提供しております。
※2:LFT®:Low Friction Torqueの略で、ジェイテクトの登録商標
工作機械事業では、モノづくりの更なる生産性・付加価値向上に貢献するソリューションを提供することを目指しております。研究開発活動においては、ジェイテクトグループのコンピタンスを活かし、新しいニーズに応え続ける商品・技術開発とデジタル活用による効率化を推進しております。当連結会計年度の主な成果としては、以下のとおりであります。
・小型円筒研削盤「G1 Series Type Bt」を販売開始
円筒研削盤G1 Seriesに、小物量産加工に最適な「Type Bt」を追加。お客様の生産性向上に貢献いたします。
・工作機械ユーザー向け会員WEBサービス「my JTEKT Machinery®」を開設、JIMTOF2024に出展
機械の保全履歴をWEB上で簡単に確認でき、早期の困りごと解決をサポートするDXソリューションによって、機械の長期的な安定稼働に貢献いたします。
・2頭硬脆材料ウェーハ研削盤「DDT832」を開発(株式会社ジェイテクトマシンシステム)
2頭同時加工による生産性向上と高出力スピンドルによる安定した高精度加工を実現。独自設計によるスリム化で機械設置面積の削減に貢献いたします。
SEMICON Japan 2024では、ビトリファイドダイヤモンドホイール「nanoVi®」(株式会社ジェイテクトグラインディングツール)とともに、半導体ウェーハの研削加工に貢献するソリューションを提案いたしました。
・SiCパワー半導体用アニールシステム「RLA-4200-V」、「VF-5300HLP」を開発(株式会社ジェイテクトサーモシステム)
熱処理能力の向上や搬送機構の刷新によりSiCウェーハの生産性向上に貢献いたします。
・「超低電力電磁切換弁HD1Eシリーズ」(株式会社ジェイテクトフルードパワーシステム)と「金属・工業加熱装置向けCNレトロフィットサービス」(株式会社ジェイテクトサーモシステム)が、一般財団法人省エネルギーセンターが主催する2024年度省エネ大賞 製品・ビジネスモデル部門「省エネルギーセンター会長賞」を受賞
カーボンニュートラル達成のための省エネやCO2排出量削減に寄与いたします。
(4) その他新領域
当社は、取り巻く環境の変化を先読みし、持続的な成長を図るために、新しい領域への取組みを継続しております。少子高齢化や環境・エネルギーといった社会課題に対するニーズと、これまで培った技術やノウハウといったシーズをまとめたコアコンピタンス・プラットフォームを掛け合わせ、また、事業性評価、的確な軌道修正を図る仕組みの構築と合わせて、事業の育成、拡大を加速させております。当連結会計年度の主な成果としては、以下のとおりであります。
◆アクティブ・ライフ事業
当社のコア技術である電動パワーステアリングのアシスト制御技術をベースに、医療・介護施設における作業の負担低減という社会課題の解決に貢献。以下、3商品を販売しております。
・介護用アシストスーツ「J-PAS fleairy®(フレアリー)」
介護作業でみられる腰の負担軽減に貢献及び要介護者が安心して身体を預けることが可能であります。また、土木・製造等の荷役作業への展開につきましても模索しております。
・介助用車いす電動アシストユニット「軽e®(かるいー)」
在宅介護での介助の負担軽減に貢献する介助用車いす電動アシストユニット「軽e®(かるいー)」を日進医療器株式会社へ納入し、同社から介助用電動アシスト車いすとして販売しております。
・病院ベッド用搬送アシストユニット「ラクステア®」
株式会社ジェイテクトマシンシステムが、病院ベッド移動を楽にする「ラクステア®」を開発しました。また、ベッドメーカーと共同で、病院での実証を経て、2025年4月より販売を開始しております。
◆蓄電デバイス事業
・高耐熱リチウムイオンキャパシタ「Libuddy®(リバディ)」性能の向上
出力特性や低温特性に影響を与える内部抵抗を半減した次世代Libuddy®を開発、2026年に量産を計画しております。
・カーボンニュートラルラボの電圧安定化電源としての採用とその効果
太陽光発電、LIB、燃料電池等と共有化する直流バスに、電圧安定化用電源としてLibuddy®モジュールを接続し、負荷変動による直流バス電圧変化を抑制し、安定した電力供給を実現いたします。また太陽光発電効率の向上、及びLIBの負荷低減による長寿命化に寄与いたします。
・ドローン用姿勢制御システムとの連携
Libuddy®を搭載することで、限られた空間に配置された主電源からの電力不足を補い、外乱に対する飛行性能向上に貢献いたします。
・NEDO プロジェクトへ参画
2024年から5年間の計画でスタートした、「長距離物資輸送用無人航空機技術の開発・実証」に参画。離着陸時や垂直飛行から水平飛行移行時の高出力をサポートするため、高応答電源制御システム(株式会社ジェイテクトエレクトロニクス)と電源(Libuddy®)をセットで技術提供しております。
◆歯車事業
・自動車事業、産機・軸受事業、工作機械事業、グループ会社で培った歯車関係技術を活用し、歯車装置の小型化、高効率化、静粛性向上に貢献する技術開発を推進。軸受と歯車のコアコンピタンスを活かしたソリューションとして軸受一体歯車(JIGB® : JTEKT Integrated Gear Bearing)の開発を目途付けいたしました。