文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社は、「ものづくりの世界の発展に貢献する」という会社の使命のもと、企業価値の向上に努めることを最重要課題と考えております。そして、長期ビジョンとして、「成長企業への挑戦、夢をかなえるものづくり企業へ」を掲げ、経営基盤の強化にとり組んでおります。
(2) 目標とする経営指標
当社グループは、長期ビジョンの実現を目指し、そのマイルストーンとして、海外事業の拡大により、海外売
上高比率60%、営業利益率10%を掲げ、海外売上高比率と営業利益率を経営指標としております。
(3) 経営環境および対処すべき課題
当社グループをとり巻く事業環境は、当社の主要な事業領域である自動車分野では、新興EVメーカーの台頭や、自動車メーカーの再編が進んでおります。さらに、カーボンニュートラルに向け、自動車分野においては、EV化に向けたとり組みが着実に進んでおり、産業機械分野を含め、ものづくりのDX・AIによる商品開発や生産性向上、SDGsをはじめとした社会・環境問題への対応の要求などが高まっております。
当社グループといたしましては、このような産業構造の大変革に対し、総合機械メーカーとしての独自性を活かし、新しいビジネスチャンスを創出してまいります。とくに海外市場に向けては、営業・サービス、製造・調達、研究開発の各面で体質を強化して、市場の動き・ニーズを捉え、ロボットを核に全部門の技術を連携・結集した競争力のある商品・サービスを拡販してまいります。さらに、需要の変化に対応する世界の工場再編や、自動化・合理化により生産性を高め、業績の一層の向上に努めてまいります。そして、事業活動を通して、環境・社会・ガバナンスなどの課題にとり組み、持続的な企業成長を目指してまいります。
文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
[サステナビリティ全般]
当社は、グローバルで事業を展開するなか、環境負荷の削減、社会的課題の解決、経済活動を通じた社会貢献等、サステナビリティに関するとり組みを重要な経営課題と位置付けております。
(1) サステナビリティの基本方針
当社のサステナビリティの基本方針は、次のとおりです。
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当社は、会社の使命「ものづくりの世界の発展に貢献する」に基づき、持続可能な社会の実現と企業価値の 向上に努めてまいります。 |
(2) ガバナンス
当社は、サステナビリティ(環境・社会・経済の持続可能性)に関するとり組みの推進・進捗に向けて、具体的な対応と充実した情報開示を進めるため、2023年11月に「サステナビリティ委員会」を発足いたしました。同委員会は、代表取締役 社長執行役員(以下、社長)を委員長とし、経営企画部が事務局を務め、TQC・TPM推進本部、財務部、人事部等とともにサステナビリティに関する課題や重要施策などを審議し、活動を定期的に取締役会へ報告しております。
■サステナビリティ推進体制図
(3) リスク管理
当社では、気候変動や人的資本などサステナビリティのとり組みを推進するため、サステナビリティ委員会において当社事業活動への影響(リスク・機会)を特定・評価したうえで、経営戦略に反映するとともに、その内容を対外的に発信・開示しております。
全社のリスクを統括しているリスク管理委員会はサステナビリティ委員会と連携し、サステナビリティ関連リスクを把握したうえで、リスク管理委員会にて全社のリスクの重要度を総合的に評価し、優先的なとり組み方針を策定しております。
また、リスク管理委員会は優先的にとり組む内容や進捗状況を取締役会に都度報告し、取締役会は報告された内容に基づき、サステナビリティ委員会およびリスク管理委員会を通じて各部門・グループ会社の業務を監督し、効率性・適正性を加味して、とり組みの見直しを適宜指示しております。
■リスク管理体制図
[気候変動およびTCFDへの対応]
当社にとって気候変動問題は、環境・社会および企業活動に重大な影響を及ぼす経営上の重要課題の一つとして捉えております。
(1) ガバナンス
気候変動問題に関し、サステナビリティ委員会で審議・検討したとり組み内容やその進捗は、定期的に取締役会へ報告し、その対応方針の最終的な意思決定が行われます。承認された方針・とり組みの実行にあたっては、サステナビリティ委員会が各部門およびグループ会社の進捗状況を把握したうえで、監督する体制となっております。
(2) 戦略
気候変動対策の立案においては、事業活動全体における気候変動関連のリスク・機会の把握が重要であると認識しております。そのため当社では、異常気象などによって生じる物理リスクと脱炭素社会への移行リスクの2つの側面に沿って、当社のバリューチェーン全体におけるリスク・機会の特定および財務的影響の評価を行いました。具体的なプロセスでは、産業革命時から比較し、2100年時点に気温上昇が1.5℃以下に抑えられる「1.5℃シナリオ」と成り行きで平均気温が4℃上昇する「4℃シナリオ」の複数のシナリオを用いて、当社グループ会社(全事業)を対象に想定されるリスク・機会の分析を行っています。また、リスク・機会が生じる範囲によっては、製造段階、資材調達や製品輸送段階に注目しています。リスク・機会の分析にあたっては、国内外の全事業を対象とし、短期~長期の時間軸を考慮して、定性的に各項目におけるリスク・機会の影響を評価しております。
■シナリオ群の定義
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項目 |
1.5℃(2℃以下)シナリオ |
4℃シナリオ |
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参照シナリオ |
(1.5℃シナリオ) IEA Net Zero Emissions by 2050 Scenario (2℃シナリオ) IEA Sustainable Development Scenario、 IPCC RCP2.6 |
(4℃シナリオ) IEA Stated Policies Scenario、IPCC RCP8.5 |
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想定される 世界観 |
2100年時において、産業革命時期と比較して1.5℃未満の平均気温上昇が想定されるシナリオ。これに対応するため、カーボンニュートラルの実現を目指し、現行以上に厳格な政策や法規制等が導入される。 |
2100年時において、産業革命時期と比較して、3.2℃~5.4℃(約4℃)の平均気温上昇が想定されるシナリオ。気候変動を緩和する政策や法規制の整備が進まない成り行きの世界観。平均気温の上昇に伴い、異常気象が激甚化する。 |
■想定されたリスク・機会一覧
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分類 |
項目 |
内容詳細 |
時間軸 |
影響度 |
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4℃ |
1.5℃ |
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物 理 リ ス ク ・ 機 会 |
平均気温の |
リスク |
▪ オフィスや工場での冷房コストが上昇する。 ▪ 労働環境が悪化し、熱中症となる従業員が増え、作業に障害が発生する。 |
短期 ~長期 |
大 |
中 |
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機会 |
▪ 製造現場における自動化のニーズが高まり、人力の代替である産業用ロボットの需要が増加する。 |
中 |
中 |
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異常気象の 激甚化 (台風、豪雨、 土砂、高潮等) |
リスク |
▪ 気象災害の激甚化による拠点の被災や、サプライチェーンの寸断による損害や営業停止による損失が発生する。また、災害対策・復旧費用が発生する。 |
短期 ~長期 |
大 |
小 |
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移 行 リ ス ク ・ 機 会 |
原材料コストの 変化 |
リスク |
▪ 製造方法の転換により、製造の原材料となる鉄鋼・鋳物の原価が高まり、製造コストが増加する。 |
中期 ~長期 |
- |
大 |
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重要商品の 需要変化 |
リスク |
▪ エンジン車からEVへの変換や省エネ・再エネの製造機器への切り替えなどの市場傾向に対応するためには、従来の化石燃料に依存する製品の需要が減少し、適応できる材料や部品、設備の開発が必要となる。これらへの対応不足や遅れが生じると、既存事業の縮小により売上が減少する。 |
短期 ~長期 |
- |
大 |
|
|
機会 |
▪ 低炭素技術に適応するため、電力や燃料使用量を削減できる材料、部品および加工設備の開発に注力している。またEV製造向けやAI・自動化に伴う電気・電子部品の組付け増加に伴うロボットや油圧ユニットをはじめとした環境配慮型商品へのニーズが一層高まり、売上が増加する。 |
- |
大 |
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|
エネルギー |
リスク |
▪ 再生可能エネルギー発電のための設備投資等のコストが電力価格に転嫁され、操業コストが増加する。 |
短期 ~長期 |
- |
大 |
|
|
機会 |
▪ 太陽光発電をはじめとした再生エネルギーの導入を拡大し、エネルギーコストの増加を抑制する。 |
- |
中 |
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|
顧客行動変化 |
リスク |
▪ 顧客の環境に配慮した商品へのニーズに応えられなかった場合、売上が減少する。 |
中期 ~長期 |
- |
大 |
|
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機会 |
▪ 顧客のニーズに合わせた、環境に配慮した製品の開発によって売上が増加する。 |
- |
大 |
|||
|
投資家の 評判変化 |
リスク |
▪ 環境配慮・情報開示が不十分な場合、調達資金の減少および資金調達コストが増加する。 |
中期 ~長期 |
- |
大 |
|
|
機会 |
▪ 環境に配慮したとり組みや環境レポート等環境情報開示を積極的に行うことで投資家からの評価がさらに向上し、資金調達等が円滑に進む。 |
- |
大 |
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炭素税の導入 |
リスク |
▪ 事業活動に伴うGHG排出量に対して炭素税が課され、操業コストが増加する。 |
中期 ~長期 |
- |
大 |
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(注)時間軸 短期:0~3年、中期:4~10年、長期:11年~
■リスク・機会の定性分析結果
物理リスクについては、4℃シナリオおよび1.5℃シナリオのどちらにおいても、異常気象の激甚化による営業停止とサプライチェーンの寸断が重大な財務損失となる可能性があると分析しました。一方で、平均気温の上昇による労働環境の悪化から、製造現場における省人化・自動化ニーズが高まり、当社の産業用ロボットの需要が増加すると判断しております。さらに、1.5℃シナリオでは、省エネ政策に対応するために省エネ油圧ユニットをはじめとした当社の省エネ商品の需要拡大が見込まれます。
炭素税の導入が想定される1.5℃シナリオにおいて、当社のGHG排出量(Scope1+2)の排出量によっては重大な操業コストが発生する可能性があります。また、当社の事業は鉄鋼や鋳物に大きく依存しているため、脱炭素社会への移行に伴う、再生可能エネルギー電力への切り替えや金属の精錬方法の転換などにより、鉄鋼価格が大きく変わると判断しております。
また、脱炭素社会を目指した日進月歩の技術革新が進む中、EVやAIをはじめとする次世代技術の進展が特に注目を浴びております。現状と将来の傾向を考慮したうえで、当社の大きな顧客群である自動車企業に対し、適応できる材料・部品・設備の開発は喫緊の課題であると認識しております。
当社では、気候変動課題への対策として、自動化や省エネに対応する商品開発や再生可能エネルギー電力の利用などに、積極的にとり組んでおります。また、サステナビリティ課題についてステークホルダーと誠実に対話できるように、環境レポートと合わせ、TCFDの情報開示を通じて、とり組みの実施状況および排出量の実績をさらに透明化していきます。
(3) 指標と目標
日本政府が掲げた「2030年度に温室効果ガス排出量を2013年度比で46%削減する」目標を受け、経済産業省は「産業部門」において「2030年度に温室効果ガス排出量を2013年度比で38%削減する」目標を設定しております。
当社では、GHGプロトコルに基づき、当社事業活動によるGHG排出量を算定し、把握したうえで、経済産業省の削減方針に準拠して、気候変動を緩和・適応するとり組みを実施しております。
なお、当社では環境マネジメントシステムの国際規格であるISO14001認証を取得しております。また、グローバルな事業展開をさらに加速していくため、積極的な情報開示を含め、低炭素技術への対応および再生可能エネルギーへの切り替えが必要と考えております。
こうした中、国内においては、富山事業所と滑川事業所の3カ所に太陽光発電設備を設置し、太陽光による発電量合計は2,342.86kWとなりました。これにより、年間約1,000tのCO2削減を見込みます。引き続き再生可能エネルギーの導入・普及などを通じ気候変動への対応を推進し、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
[人的資本]
(1) 戦略
当社グループは、企業理念である「人材 企業は人なり」のもと、「企業と人は一体、人材は価値を生み出す
源泉」であると考えております。
この企業理念のもと、グループとしての長期ビジョンを実現するための経営指標である海外売上高比率と営業利益率の拡大に向けて、社員一人ひとりが意欲をもち、求められる役割を発揮して人材価値を向上することが重要であると認識しております。
また、自動車のEV化の進展、DX・AIによる商品開発や生産性向上など、今後のものづくりの大きな変革などに対して果敢に挑戦する人材が必要になると考えております。
こうした背景を踏まえ、会社として人材に対する次の3つの考え方を基本に各施策を実施しております。
① 経営戦略の実現に必要な多様な人材をグローバルで確保する
② 会社の成長を牽引する人材(ジェネラルマネージャー、以下GM)を育成する
③ 持続的に人が育つ、働きがいのある企業風土をつくる
① 経営戦略の実現に必要となる多様な人材をグローバルで確保する … [多様性]
事業の構造改革を推進し、これまでの既成概念を打ち破る新商品の開発を行うため、様々な従業員の考え方や専門性を持ち寄り、活発な議論やコミュニケーションを通じて新しい価値を創出し、会社と個人が成長することを目指しております。
こうした観点から、新卒採用においては全国から多様な人材を安定的・継続的に採用するとともに、様々なキャリア、専門性を持つ人材を通年で採用し必要な分野や職種へ投入しております。
新卒の技術系の採用選考においては、各自の専門性や専攻、志望が活かせるよう、事業部ごとの採用を実施し入社時の配属を決定しております。
また、女性社員の活躍推進は重要課題の一つとして捉えており、計画的な採用、グローバルな活躍を見据えた育成に取り組んでおります。
[2024年度の取り組み実績]
・技術系学卒新入社員の専攻、専門性を活かすための事業部別採用の継続
・女性社員を対象としたキャリア・マネジメント研修の実施
[今後の課題]
女性社員のグローバル人材育成の仕組みを検討し、60歳以降の継続雇用者の働き方について協議していきます。
② 会社の成長を牽引する人材(GM)を育成する … [人材育成]
人材の育成は、会社の成長を牽引し課題を解決するために不可欠と考えております。
人材育成の方針として、(a) 人材教育(座学:知識)と(b) ローテーション(実学:経験)の2本柱で行うことを基本とし、必要な知識と経験を備え、各階層に求められる役割を発揮するよう全員のレベルアップを図っており、従業員一人ひとりのキャリアアップにつなげております。
人材教育は、「階層別教育」と「専門教育」を基本に体系的な教育を実施しています。基礎教育を徹底するとともに、外部の専門家等の知見を活用した応用・実践教育を展開しております。
さらには、将来経営を担う人材を育成するためにGMに必要な職種へのローテーションを行い、併せてGM育成の研修も実施しております。
とくに海外展開にあたっては、当社の戦略として米国、インドを成長市場として位置づけており、グローバル人材の育成の強化(グローバルマインドの醸成、英語力の向上)として、大卒新入社員全員を対象に入社後2か月間の海外語学留学を行っております。
また、ものづくりや営業の知識、スキルの向上に加え、DX人材の育成を目的としたDX研修の一つとして、高卒新入社員の選抜者によるソフト・情報系専門学校への社会人留学を継続しております。
加えて、当社は若手の技術者育成を目的に、1937年に不二越工業高校を設立し実践的な教育に力を入れており、2024年度には文部科学省からDXハイスクール推進校の指定を受け、情報教育を拡充しております。
[2024年度の取り組み実績]
・GM育成研修、フォロー研修の強化
・GM必須職種を経験させるための若手・中堅社員のローテーション実施
・海外語学留学の継続実施(2012年~)
・DX系教育の充実(データドリブン研修、AI-IoTの研修の実施)
・高卒新入社員の選抜によるソフト・情報系専門学校への社会人留学の継続実施(2018年~)
[今後の課題]
若手・中堅社員のローテーションの促進とモニタリングを行うとともに、必要なスキルの教育を実施し、役職者への早期登用をはかることで多くのGM候補者の輩出を進めていきます。また、引き続きグローバル人材と専門人材の育成に注力していきます。
③ 持続的に人が育つ、働きがいのある企業風土をつくる … [職場環境整備]
やりがいのもてる挑戦的な風土づくりと職場の環境・労働条件を改善し、従業員が仕事と生活の両立をはかり、安心して働きやすい環境づくりを推進しております。
モチベーションを高める施策として「自己申告制度」を実施しており、社内でのマッチング支援を強化しております。また、入社5年までの若手社員に対しては毎年人事部の役職者との昼食会や個人面談を実施しております。
安全衛生については、「安全と健康は全てに優先する」を基本理念に、すべての人が安全・安心で明るく活気のある職場づくりに努めており、安全衛生委員会を通じて労働災害防止や健康保持促進などに関する各施策を推進しております。
加えて、就業・生活環境の支援として、企業内保育所「あじさい保育園」と企業内病院である「不二越病院」を運営しており、グループ従業員の仕事と家庭の両立支援に加え、地域住民に対して育児や医療サービスを提供し地域への貢献をはかっております。
[2024年度取り組み実績]
・仕事と家庭の両立支援として時短勤務の延長
・自己申告制度のマッチング支援の強化
・ストレスへの気付き、予防・対処として、管理者に対するメンタルヘルス教育の継続実施
・セルフケアとしてメンタルヘルスのセルフチェック項目や外部相談窓口の情報を社員全員へ提供
・産業医の職場巡視に合わせた、健康相談
・あじさい保育所、不二越病院による就業・生活環境支援
[今後の課題]
若手社員のローテーションに対して会社のサポートが必要と考え、環境変化等に対する定期的なフォローアップを実施していきます。
(2) 指標と目標
上記方針およびとり組みに関する主な指標と目標は以下のとおりであります。
■経営戦略の実現に向けて、多様な人材をグローバルで確保する … [多様性]
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2024年11月実績 |
目標 |
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■会社の成長を牽引する人材(GM)を育成する … [人材育成]
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2024年11月期実績 |
目標 |
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( |
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2024年11月期実績 |
目標 |
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■働きがいのある環境づくり … [職場環境整備]
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2024年11月実績 |
目標 |
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(注) 上記指標の対象は、特に指定のない限り当社単体であります。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
当社は、「リスク管理委員会」において、「リスク管理規程」などに基づき、環境、安全、災害、情報、セキュリティなどのリスクについて、定期的あるいは随時把握し、報告される体制を整備し、全社横断的にリスクを回避・軽減するための措置を講じております。
(1) 経済情勢・需要変動について
当社グループは、自動車・自動車関連、一般産業機械、電機・電子等の分野において事業を展開しており、また、国内のほか、米州、欧州、アジア市場で事業活動を行っております。このため、当社グループの経営成績、財政状態およびキャッシュ・フローは、各製品を製造・販売している特定の国、地域の経済状況の変動や取引先が属する産業の景気変動の影響を受ける可能性があります。
とくに、自動車・自動車関連産業向けの売上高が約5割を占めており、その需要動向やEV化の進展が当社グループの業績および財務状況に大きく影響を及ぼす可能性があります。当社としましては、顧客の自動車生産計画や、中長期的なEV化の進展見通しなどに基づき、経営資源の効率的な投入を行い、また、需要の裾野が広い産業機械分野、電機・電子分野への新商品開発・販売拡大などを進めております。また、生産体制の整備、サプライチェーンの確保、手元流動性の確保などを進めております。
(2) 海外事業展開について
当社グループは、国内のほか、米州、欧州、アジア地域など、グローバルな事業展開を行っており、世界各地に販売会社と生産会社を設立しております。連結売上高に占める海外売上高の割合は約5割となっており、世界市場での事業拡大に向けた営業・生産体制の拡充を進めております。各国および地域の経済環境の動向や保護主義政策、法規制等の予期せぬ変化が、当社グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
これらに対し、特定の地域に偏重することなく、バランスのとれた事業展開に努め、また、各地との緊密な連携をとることで、遅滞なく危険情報を取得し対処しております。
(3) 外的要因が財務状況に与える影響について
海外子会社の現地通貨建ての経営成績及び財務状態は、連結財務諸表の作成のために円換算されており、現地通貨における価値が変わらなくとも、当社グループの連結財務諸表は為替レートの変動による影響を受けます。また、外貨建ての商取引により、為替レートの変動が当社グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。また、金利の上昇により支払利息が増加する可能性があります。
当社グループは、為替変動や金利変動の影響を軽減するため、為替予約、現地生産・調達等の施策を含めてリスクヘッジを進め、また、有利子負債の削減を中心に財務体質の強化に努めております。
(4) 価格競争について
当社グループの主力需要先である自動車・自動車関連産業は競争が激しく、同業界からの価格引き下げ要請への相応の対応が不可避であります。また、新興国による製品の台頭により、一部商品では市場価格の下落が生じております。一方で、原材料の一部に価格の上昇がみられ、当社グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
これらに対し、当社は、VA・VE活動の強化や基幹部品の内製化などにとり組むとともに、原材料の購入量ならびに在庫量の最適化や、設計・部品の標準化による調達コストの低減、生産性の向上など、原価低減活動に加え、原材料価格上昇分の取引先への転嫁を継続的に実施しております。
(5) 原材料や部品の調達について
当社グループは、原材料および部品を複数の供給元から調達し、取引基本契約に基づき安定的な取引を行っております。しかしながら、市況の変化による原材料および部品の価格高騰や品不足、供給元の生産能力不足や品質不良、火災や地震等の自然災害、倒産その他の理由により、原材料および部品の調達が困難となり、取引先への製品供給に支障をきたすリスクがあります。かかる場合には、当社グループの業績および財務状況は影響を受ける可能性があります。
これらに対し、グローバルで新規調達先の開拓・育成、最適な調達先の選定、調達先の分散化などを継続的に実施し、サプライチェーンの強化に努めております。
(6)研究開発について
当社グループは、事業基盤の一層の拡充を目的として、新商品開発に向けた研究開発活動を進めております。これらの研究開発は、多額の費用と期間を要するため、研究開発が計画どおり進まず商品化の機会を喪失したり、市場ニーズとのアンマッチから市場投入に至らなかったり、商品化しても十分な成果が得られなかったりした場合には、当社グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
これらに対し、多様な市場分野において、顧客との緊密な関係性の構築によるニーズの発掘やシーズ技術を活かした独自の商品開発による差別化、大学・研究機関などとの積極的な連携によりリスクの低減に努めております。
(7) 品質問題について
当社グループは、世界的に認められている品質管理基準に従い各種製品を製造しております。しかしながら当社グループの製品が予期せぬ不具合を起こした場合には、多額の費用発生や社会的な信用低下等により、業績に影響を及ぼす可能性があります。
これらに対し、品質保証を最重要課題の一つとして位置付け、商品開発から設計・製造・サービスに至るまでの品質向上を目指したプロセス管理の強化など、グループをあげて品質管理の徹底を図っております。
(8) 環境・安全対策について
当社グループでは、環境負荷の低減に努めており、これまで重大な環境問題が発生したことはありません。しかしながら、将来において気候変動に起因する災害など環境問題が発生した場合には、多額の対策費用が発生し、当社グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。また、脱炭素社会に向けた環境問題への対応については、その課題解決への取り組みが成果につながれば、当社グループの業績に好影響を及ぼす可能性がある一方、対応を誤れば将来にわたり悪影響を及ぼす可能性があります。
これらに対し、カーボンニュートラルに向けて、環境に配慮した新商品の市場投入を進めるとともに、生産工程において、温室効果ガス、廃棄物、環境負荷物質などの発生を極力抑えるよう、設計・生産の各段階で対策を講じております。なお、製造設備等の主要施設については、火災等により生産活動や製品供給に支障をきたすことがないよう、災害発生防止対策に努め、また、ハードおよびソフト面で安全対策の基本方針を定め、労働災害の発生防止も進めております。
しかしながら、完全なリスク回避は困難であり、重大な災害等が発生した場合や、カーボンニュートラルへの対応が不十分と評価された場合には取引の継続にも関わる可能性があり、当社グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(9)災害・テロについて
当社グループおよび当社グループ取引先の事業拠点が、地震、洪水などの天災、火災や、新型コロナウイルス感染症のような疾病発生などの災害、またはテロ攻撃や政情悪化に伴う物的・人的被害が生じる可能性があります。当社グループではリスク管理体制を構築し、被害を最小化するための事前対策・初動措置および事業継続に向けた対策を実施しておりますが、完全なリスク回避は困難であり、結果として、当社グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
なお、ウクライナ情勢の長期化や中東紛争などにより地政学的リスクが高まった場合には、今後、当社グループの業績および財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。
(10)情報セキュリティについて
当社グループは、業務を通じて入手した取引先の機密情報や個人情報等を多数保有しております。これらの情報を保護するため、管理体制の整備や教育、情報セキュリティシステムの構築などを行い、情報漏えいの防止に努めております。しかしながら、コンピュータウィルスの感染、不正アクセスや盗難、その他不測の事態により機密情報が消失、もしくは社外に漏洩した場合には、当社グループの業績や信用・評判などに影響を及ぼす可能性があります。
(11) 知的財産権について
当社グループはこれまでの製品開発において蓄積してきた技術を知的財産権として、権利保護の徹底と経営資源としての活用をはかっております。しかし、特定の国および地域においては、知的財産権の保護が必ずしも十分でないため、当社グループの知的財産権を侵害して類似した製品を製造する行為を効果的に排除できない場合など、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性を完全に排除できるものではありません。
また、当社グループは、第三者の知的財産権を侵害することのないよう、細心の注意を払っておりますが、当
社グループが第三者から知的財産権の侵害を主張された場合には、当社グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(12) 業務・事業提携について
当社グループは、海外企業を含めた複数の会社との業務提携や、合弁事業またはM&A等の資本提携を行い、相互の経営資源の有効活用をはかるとともに、技術開発、生産活動、営業活動等において提携効果の創出にとり組んでいます。しかしながら、提携先の経営方針・戦略の変更、財務状況の悪化等により期待した効果を実現できない場合には、当社グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(13) 人材確保について
当社グループは、競争力を維持するため、国内外の優秀で多様な人材を継続的に確保・採用し、その教育と
ローテーションによりリーダーの育成に努めておりますが、少子高齢化を背景として有能な人材確保に向けた競争は高まっており、当社グループが人材を確保・育成できない場合には、当社グループの中長期的な業績に影響を及ぼす可能性があります。
(14) コンプライアンスについて
当社グループは、グローバルな事業展開を行っており、各地域の法令、規制の適用を受けておりますので、コンプライアンス体制の強化が求められています。このため、「不二越企業市民ルール」をグループの行動規範として位置づけて社内教育を実施するなど、コンプライアンス意識の向上をはかっております。また、内部通報制度を整備し、コンプライアンスリスクの未然防止に努めております。しかしながら、コンプライアンスリスクを完全に回避することは困難であり、重大な法令違反等が生じた場合には、当社グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における当社グループをとり巻く環境は、自動車分野を含め経済活動の緩やかな回復が進み、日本・米州をはじめとする先進国経済の持ち直しが見られました。一方で、ウクライナ侵攻や中東情勢の緊迫化、米国の保護主義政策に伴う影響など、先行き不透明な状況が継続していることに加え、中国・欧州経済の低迷など、一部で事業環境の厳しさが増しております。
このような状況のもと、当社グループは、中長期的な脱炭素・EV化をはじめとする産業構造の大変革を見据え、工具、工作機械、ロボット、ベアリング、油圧機器、そして特殊鋼事業をあわせ持つ総合機械メーカーとしての特長を活かし、ユーザーのものづくりに寄与する新商品の開発や技術提案などにより、受注・売上の拡大にとり組んでおります。また、利益の改善に向けて、設備や人員の適正化、標準ベアリングの集約生産、さらには全部門を対象とした合理化、内製拡大など、事業全般の構造改革をより一層推進しております。
以上の結果、当連結会計年度の売上高は、米州の産業機械・市販分野において需要が拡大しましたが、中国および欧州の建設機械・産業機械分野などでの需要減少や国内の一部自動車メーカーでの減産を受け、2,398億92百万円(前期比9.6%減)、このうち、国内売上高は1,174億49百万円(同6.3%減)、海外売上高は1,224億43百万円(同12.6%減)となりました。
利益面につきましては、原材料価格上昇分の販売価格への転嫁や、生産ラインの自動化・合理化、調達コストダウンにとり組み、為替も円安で推移しましたが、ロボット・油圧機器などでの操業度の悪化が大きく影響し、営業利益は66億36百万円(同44.1%減)、経常利益は42億36百万円(同61.6%減)となりました。また、資本効率の向上をはかるために政策保有株式を縮減し、投資有価証券売却益として36億64百万円を特別利益に計上、一方で余剰設備や人員の適正化を推し進め、構造改革費用として42億2百万円を特別損失に計上し、親会社株主に帰属する当期純利益は33億51百万円(同48.2%減)となりました。
セグメントの経営成績につきましては、次のとおりであります。
機械工具事業では、中国自動車メーカーの設備投資計画の見直しに伴うロボット需要の減少や、中国の産業機械分野での工具・工作機械の需要減少により、売上高は775億円(前期比9.3%減)となり、営業利益は操業度の悪化などにより、38億79百万円(同39.4%減)となりました。
部品事業では、中国・欧州の建設機械メーカーの生産調整により油圧機器の需要が減少したことに加え、国内の一部自動車メーカーでの減産、市販代理店の在庫調整に伴い、ベアリング需要が減少した結果、売上高は1,463億98百万円(同10.5%減)となりました。営業利益は油圧機器での操業度の悪化などにより、16億64百万円(同63.0%減)となりました。
その他の事業では、国内での特殊鋼需要の減少を受け、売上高は159億93百万円(同3.1%減)となりました。一方、営業利益は、原材料価格上昇分の販売価格への転嫁などにより、10億70百万円(同10.1%増)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、投資活動および財務活動による支出が営業活動による収入を上回った結果、前連結会計年度末に比べ10億66百万円減少し、317億58百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動により獲得した資金は、前連結会計年度に比べ194億27百万円増加し、314億58百万円となりました。これは、主として、仕入債務の減少65億21百万円、法人税等の支払額25億79百万円などにより資金が減少した一方で、税金等調整前当期純利益47億29百万円、減価償却費200億13百万円、売上債権の減少47億7百万円、棚卸資産の減少130億58百万円などにより資金が増加したことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動により支出した資金は、前連結会計年度に比べ101億43百万円減少し、76億31百万円となりました。これは、主として、投資有価証券の売却47億88百万円などにより資金が増加した一方で、海外における工具、ベアリングの生産体制の構築、日本における工具、ベアリング、特殊鋼の生産能力増強ならびに合理化投資に伴う有形固定資産の取得115億17百万円などにより資金が減少したことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動により使用した資金(前期は31億25百万円の獲得)は、243億59百万円となりました。これは、主として、借入金の純減額187億88百万円、配当金の支払額26億26百万円、自己株式の取得17億50百万円などにより資金が減少したことによるものであります。
(2) 生産、受注及び販売の実績
① 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前年同期比(%) |
|
機械工具 |
52,879 |
△20.3 |
|
部品 |
125,613 |
△13.6 |
|
その他 |
17,697 |
△5.3 |
|
合計 |
196,191 |
△14.8 |
(注)金額は平均販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。
② 受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
受注高 (百万円) |
前年同期比 (%) |
受注残高 (百万円) |
前年同期比 (%) |
|
機械工具 |
77,522 |
△4.8 |
21,061 |
△5.6 |
|
部品 |
142,890 |
△12.2 |
15,730 |
△45.4 |
|
その他 |
15,220 |
△4.3 |
2,794 |
△19.9 |
|
合計 |
235,633 |
△9.4 |
39,586 |
△27.5 |
(注)セグメント間の取引については相殺消去しております。
③ 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前年同期比(%) |
|
機械工具 |
77,500 |
△9.3 |
|
部品 |
146,398 |
△10.5 |
|
その他 |
15,993 |
△3.1 |
|
合計 |
239,892 |
△9.6 |
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.主要な相手先別の販売実績および販売実績の総額に対する割合は、次のとおりであります。
|
相手先 |
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
||
|
金額(百万円) |
割合(%) |
金額(百万円) |
割合(%) |
|
|
岡谷鋼機株式会社 |
30,007 |
11.3 |
28,792 |
12.0 |
(3) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの財政状態および経営成績等の状況に関する分析・検討の内容は以下のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年2月27日)現在において判断したものであります。
① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度における当社グループの経営成績の分析は次のとおりであります。
1) 売上高
当連結会計年度の売上高は、2,398億92百万円と前連結会計年度と比べ9.6%の減収となりました。このうち、国内売上高は、1,174億49百万円と同6.3%の減収となりました。これは、国内の一部自動車メーカーでの減産や建設機械・産業機械分野などでの需要減少を受け、ベアリング・油圧機器などの部品を中心に売上高が減少したためであります。また、海外売上高は、1,224億43百万円と同12.6%の減収となりました。これは、中国および欧州の建設機械・産業機械分野などでの需要減少により、ベアリング・油圧機器・ロボットなどで売上高が減少したためであります。
なお、期初に公表した売上高の年度計画2,500億円に対しては、達成率96.0%と未達となりました。これは、国内の一部自動車メーカーの減産や中国および欧州の建設機械・産業機械分野などでの需要減少を受け、売上高が減少したことによります。一方、海外売上高比率は、米州の産業機械・市販分野における需要拡大や国内売上高の減少により、期初計画の50.0%を1.0ポイント上回り、51.0%となりました。
2) 売上総利益
当連結会計年度の売上総利益は502億59百万円と、ロボット・油圧機器などでの操業度の悪化により、前連結会計年度に比べ10.0%の減益となりました。
3) 販売費及び一般管理費
販売費及び一般管理費は、436億23百万円となり、前連結会計年度に比べ3億39百万円減少しました。これ
は、主に売上の減少に伴い荷造運搬費などが減少した結果であります。また、売上高に対する販売費及び一般管理費の比率は18.2%と前連結会計年度に比べて1.6ポイント増加しました。
4) 営業損益
当連結会計年度の営業利益は66億36百万円と前連結会計年度に比べ44.1%の減益となりました。また、売上高営業利益率は2.8%となり、前連結会計年度に比べて1.7ポイント低下しました。
なお、期初に公表した営業利益の年度計画100億円に対しては、達成率66.4%と未達となりました。これは、主としてロボット・油圧機器などでの操業度の悪化によるものであります。今後は、自動車向けベアリングの生産拠点再編、タイ国での集約生産などの構造改革、全部門を対象とした合理化、内製拡大をより一層推進してまいります。
5) 営業外損益
営業外損益(費用)は、24億円の費用(純額)となり、前連結会計年度の8億44百万円の費用(純額)から15億55百万円増加しました。これは、主として、休止固定資産減価償却費が11億45百万円増加したことによるものであります。
6) 経常損益
当連結会計年度の経常利益は42億36百万円と前連結会計年度に比べ61.6%の減益となりました。
7) 親会社株主に帰属する当期純損益
特別利益は、固定資産売却益12億13百万円、投資有価証券売却益36億64百万円の計上で48億77百万円となり、前連結会計年度に比べて48億30百万円増加しました。特別損失は、固定資産売却損1百万円、固定資産除却損24百万円、投資有価証券評価損60百万円、構造改革費用42億2百万円などの計上で43億84百万円となり、前連結会計年度に比べ43億9百万円増加しました。
法人税、住民税及び事業税と法人税等調整額の合計は、19億81百万円となり、前連結会計年度に比べ25億11百万円減少しました。
これらの結果、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は33億51百万円となり、前連結会計年度に比べ31億17百万円の減益となりました。
② 資本の財源及び資金の流動性についての分析
1) 財政状態の状況
当連結会計年度末の資産合計は、3,347億57百万円となり、前連結会計年度末に比べ355億66百万円減少しました。主として、受取手形、売掛金及び契約資産が47億56百万円、棚卸資産が129億67百万円、未収還付法人税等が10億31百万円、有形固定資産が120億56百万円、投資有価証券が70億22百万円減少し、退職給付に係る資産が13億38百万円増加しております。
負債合計は、1,700億91百万円となり、前連結会計年度末に比べ307億12百万円減少しました。主として、支払手形及び買掛金が36億97百万円、電子記録債務が27億16百万円、未払費用が23億55百万円、借入金が187億4百万円、リース債務が10億93百万円、繰延税金負債が16億90百万円減少し、未払法人税等が10億61百万円増加しております。
純資産合計は、1,646億65百万円となり、前連結会計年度末に比べ48億54百万円減少しました。主として、その他有価証券評価差額金が40億48百万円減少しております。また、自己株式の取得により、自己株式が16億62百万円増加しております。
2) キャッシュ・フローの状況
「(1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
3) 資金需要
当社グループの資金需要は、仕入、生産及び販売活動に必要な運転資金、販売費及び一般管理費等の営業活動費用、研究開発費によるもののほか、投資活動において、機械保全、品質向上および生産能力の増強と生産ラインの合理化を目的とした設備投資などであります。これらの資金需要に対しては、安定した収益基盤を確立し一層の利益追求をはかると同時に、売上債権、棚卸資産、仕入債務の適切な管理に加えて、固定資産の効率的活用などにとり組んでおります。また、不足分の資金は、有利子負債による調達を基本にしており、取引金融機関との安定した調達体制の維持に努めるとともに、調達手段の多様化による財務基盤の安定に向けたとり組みを進めております。なお、当社および主要なグループ会社間でキャッシュ・マネジメント・システム(CMS)を導入しており、グループ内の資金効率化に努めております。
当連結会計年度末における借入金およびリース債務を含む有利子負債の残高は、943億59百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は317億58百万円となっております。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
該当事項はありません。
当社グループは「成長企業への挑戦、夢をかなえるものづくり企業へ」という長期ビジョンのもと、材料から工具、機械設備、量産部品の生産までをカバーする総合機械メーカーとして、ロボットを核に、世界最高水準の技術をもって、新商品、特に他社にないオンリーワン商品を開発して市場に投入し、ものづくりの革新をリードしてまいります。
自動車のEV化や、ものづくりのAI化の動きを機敏に捉え、市場の変化に対応した商品開発を進めていきます。
開発にあたっては、市場の動きを注視し幅広く情報を集め、従来分野にこだわらず、新規市場・新規分野を含め、将来性のある新規開発テーマの発掘を強力に進めています。
また、オープンイノベーションを志向し、顧客やサプライヤー、大学・研究機関との共同開発を推進することで、開発のスピードアップを図っております。
さらに、開発テーマとそのプロセスにAIの活用を積極的に取り入れ、商品の付加価値向上と開発業務の効率化に取り組みます。
これらの活動に伴う当連結会計年度の研究開発費は、機械工具事業で
当連結会計年度の主な活動状況および開発成果は、次のとおりであります。
(1)機械工具事業
ロボットでは、主力である小型ロボットMZシリーズの拡充を図りました。まず、協働ロボット「CMZ05」のシリーズ機として12kg可搬の「CMZ12」を、また標準型のMZについては、電子基板の搬送やマシンローディングなどに適した高速型搬送ロボット「MZ12W」および「MZ15H」を新たに市場投入しました。さらに、MZ25の強化型として「MZ35S」を加え、ラインナップを拡充しました。
今後も協働ロボットを中心に拡充を図るとともに、AI技術を取り込んだ使いやすいロボット機能とシステムを提案し、幅広い自動化ニーズに応えてまいります。
工具では、加工後のバリの発生を極小化した「バリレスシリーズ」を市場に投入いたしました。「切削加工でバリが出るのは当たり前」、「加工後のバリ取り作業は不可欠」とされていたこれまでの常識を覆し、バリ取りや検査の工程を削減することで、大幅なコストダウンと時間短縮が図れたことが市場から高く評価されました。また、2024年11月からは、非鉄金属加工用もラインアップに加え、EVなど高まっている需要が高まっているアルミ加工にも対応しました。なお、本製品は、ものづくり日本会議/日刊工業新聞社主催の2024年「“超”ものづくり部品大賞」で「モノづくり日本会議 共同議長賞」を受賞しております。
工作機では、2024年10月に歯車研削盤「GSGT260」を市場投入いたしました。さらに、高能率・高精度な歯車複合加工機「スカイビングギヤシェープセンタ」のシリーズ拡充、拡販に取り組んでいます。
今後も、機械・工具の双方を提供できる世界でも類のないメーカーである特長を活かし、更なる高精度・高効率な歯車へのとり組みや、仕上加工分野など、ユーザの要望に応えた工作機械の開発を進めてまいります。
(2)部品事業
ベアリングでは、自動車分野に対して、EV化で新たなニーズがある小型軽量化、低損失化、高速化、耐電食に対応した軸受を開発し、市場投入しています。また、産業機械分野に対しては、多点接触玉軸受や薄肉軸受の展開により、機器の省スペースおよび小型軽量化に貢献しています。
油圧では、工作機械分野向けに、油圧ユニットNSシリーズ「type-S」を市場投入しました。これは、IPMモータを搭載した省エネ性の高いユニットであり、さらに無線通信式の電磁比例弁との併用により、工場のIoT・DX化による効率化に対応した商品となっています。なお、本製品は、日刊工業新聞社主催の第67回十大新製品賞「日本力(にっぽんぶらんど)賞」を受賞しております。
カーハイドロリクスでは自動車用のソレノイドバルブ、アクチュエータ、ポンプの技術を基盤としたEV、産機用商品の開発を進めています。得意とする小型化技術と、漏れ低減や消費電力低減などの高効率化技術により商品の機能を高め、用途拡大とラインナップ拡充に努めます。
(3)その他の事業
マテリアルでは、材料の面から不二越全社の新商品開発を後押しすべく、切削工具向けの高性能な超硬合金や、ベアリング、アクチュエータ部品に使用される高機能材料の開発を進めています。また、基礎開発を続けてきた摩擦かくはん接合(FSW)技術を用い、異なる金属が接合された新しい部材の開発へ展開、今後の拡大が見込まれるEV市場に向けた商品化を進めるなど、市場のニーズに応える新素材開発を進めております。
サーモテックでは、ヒートポンプを採用した省エネ真空脱脂洗装置「NVD-10HP」を2024年11月に市場投入いたしました。また、2024年2月に市場投入しましたフッ素樹脂に特化した射出成形機「NIF-20Ⅴ」につきましては、今後シリーズ化を進め、顧客のニーズに応える商品を開発していきます。
これら社内製造ラインで培った真空・熱処理・コーティング技術を基盤とした装置開発に取り組んでおります。熱処理装置関連では、真空浸炭炉、真空脱脂洗浄装置の更なる省エネ化を進め、脱炭素社会に向け貢献できる商品開発を引き続き行ってまいります。