当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、多様化する「食」に対するニーズの変化に対応し、お客様のみならず社会に貢献できる「進化する企業」を目指し、これを満たすため、独自の技術に基づくオリジナル製品を創造し、より快適でより効率的な食環境へ向けての新たな提案と迅速かつ高品質なサービスを提供することをグループの経営理念に掲げ、その実現・実行を目指しております。
このため、遵法はもとより社会と社員から信頼される会社づくり、透明性のある経営、議論のできる経営の実践、事業活動と環境との調和、働きやすい職場環境の実現に向け、努力してまいります。
(2)中長期的な会社の経営戦略
長期的なありたい姿の実現に向け、持続可能な事業モデルへの変革を推進し、将来の事業成長加速の基盤となる経営ビジョンを策定し、経営戦略及び目標とする経営指標の水準を定めております。
長期的なありたい姿としては、「これから伸び行く新たな市場並びに未開拓市場で先手を取り、存在感を高めることで、世界No.1を目指す」ことと、「『食』に関わるお客様及び社会の課題を、製品・サービスの提供を通して解決することで、地球の未来に貢献する」ことを掲げております。
今後の戦略の方向性としましては、多様化する顧客ニーズ及び社会から要請される課題解決に向けて積極的な取り組みを強化するとともに、持続的成長を可能とするグローバルな事業基盤と安定的な収益基盤を構築していきます。
日本においては、既存飲食市場を深掘しつつ、成長を求め飲食外市場開拓を一段と強化します。具体的には環境変化が速い飲食市場及び多様な顧客を有する飲食外市場の顧客に対応するため、新たな販売モデルを確立することを目指します。また、海外においては、既存市場の成長を最大化しつつ、伸び行く新興市場への他社に先行した進出と事業拡大を行っていきます。
(3)目標とする経営指標
当社グループでは、2022年度を初年度とする5ヵ年経営ビジョンを策定し、経済価値及び社会・環境価値それぞれの継続的な向上を目指し、目標とする経営指標を定めております。経済価値向上に向けては、連結売上高及び連結売上高営業利益率を重要な経営指標と捉え、それらの継続的な向上を目標としております。目標とする経営指標の水準として、2026年度連結ベースでは売上高4,500億円、売上高営業利益率14%以上(M&Aのれん償却前)を掲げ、ROE、ROIC等の資本効率の向上を図りながら、持続的成長と企業価値向上を目指していきます。社会・環境価値向上に向けては、世界的な環境問題解決の実現に貢献すべく、CO2排出削減の目標を掲げております。また、全ての社員が多様な価値観を共有し、誇りを持って働くことができる活力ある職場風土への進化を目指し、女性役職者の育成・登用の目標を掲げるとともに、社員の働きがい向上に継続的に取り組んでまいります。
(4)対処すべき課題
フードサービス業界を取り巻く環境は、新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大による経済・社会活動の停滞を乗り越え、人の流れが活発化しインバウンド需要も回復するなどの明るい動きも見られます。一方で、今後も業界の垣根を越えた競争の激化、人手不足や人件費の上昇、原材料費や物流費の高騰などの懸念材料については継続が予想されます。
このような環境のもと、当社グループは、以下6つの課題に取り組んでまいります。
①気候変動への対応
日本政府は2020年10月に「2050年カーボンニュートラル宣言」を発表しました。2050年までに日本全体の温室効果ガス排出を実質ゼロにすることを掲げたこの宣言の実現に向けて、多くの企業が温室効果ガス排出量削減の取り組みを加速しています。
気候変動が社会に与える影響は大きく、当社グループとしても取り組むべき重要な社会課題だと捉えています。当社は脱炭素社会の実現に向け、2030年の中間目標として事業活動からの二酸化炭素排出量(スコープ1&2)の50%削減(2014年実績比)を目指します。2050年のカーボンニュートラルに向けて環境負荷低減を実現する製品・サービスの提供、環境技術の開発を推進していきます。2022年2月にTCFD提言への賛同を表明し、ステークホルダーとの良好なコミュニケーションのため、TCFDフレームワークに基づく情報開示を進めてまいります。
②持続可能なサプライチェーンマネジメント
企業がサプライチェーンを通じて、間接的にでも途上国の環境破壊や人権侵害に加担しているとされれば、ネガティブキャンペーンの対象となり、消費者からボイコットされるなどのレピュテーションリスクやブランドリスクにつながる可能性がますます高まってきております。グローバル企業として、その活動がサプライチェーンに及ぼしている影響の大きさを理解し、サプライチェーンが抱える社会的課題の解決に取り組むことが今後の当社グループの持続的な成長に不可欠と考えています。
また、健全なサプライチェーンのもとでこそ、消費者により安全・安心な製品・サービスをお届けできると考えています。
当社グループは、法令を遵守し、環境や人権に配慮したサプライチェーンにより、廃棄物を最小限に抑え、健康で安全な労働条件を促進してまいります。
③新たな顧客価値の創造
先進国の経済・社会構造は、モノ中心からサービスや情報中心に大きく変わろうとしています。お客様が望む価値を確実に提供し続け、お客様との関係をより長期的かつ強固なものにすることで顧客満足を獲得し、当社グループは成長を持続することが可能になります。新たな顧客価値の創造のために、お客様の声に耳を傾け、顧客ニーズを把握し、最適なソリューションの提案や製品・サービス開発を行っています。
当社は国内において、2023年5月に普及価格帯の業務用自然冷媒冷蔵庫・冷凍庫計68機種の発売を開始しました。2024年末までには自然冷媒冷蔵庫・冷凍庫をフルラインナップ化し、その後も冷機器の自然冷媒化を促進します。製氷機においても、特注機だけでなく、当社として国内で初めて標準モデルに自然冷媒を採用しました。2024年1月5日より順次、販売を開始しており、6月までに14機種を発売します。
国内市場においては、既存の飲食市場を深掘りしつつ、積極的に飲食外市場を開拓しています。戦略的な他社との協業による製品機能の補完や新たな販売体制の構築などにより、多様な業種ならびにニーズを有する飲食外市場のお客様の課題解決に取り組んでいます。
④安全・安心な食環境づくりへの新たな提案
私たち人間が生きていくためには食が欠かせませんが、近年、急速な経済発展に伴い、我が国の生活水準が向上すると共に、社会経済構造や国民の食に関する価値観など「食」をめぐる状況が変化し、食生活のあり方も多様化してきています。このような中、核家族化の進展や地域社会の弱体化などにより、食の大切さに対する意識が希薄化すると共に、健全な食生活や古くから各地で育まれてきた多彩な地域の食文化が失われつつあることが危惧されています。「食べる」ことは人間が生きるために不可欠な行為ですが、社会情勢や経済状況、地域の文化の影響を色濃く受けるものでもあります。
当社グループは、世界各地でより良い製品やサービスを提供することにより、食文化を支え守ることに貢献し、どのような状況においても、より良い状態で食を届けることを使命と考えております。
⑤社員の働きがいの向上
事業を通じてお客様・社会に貢献し、会社と社員が共に進化・成長し続けるためには、社員の働きがいの向上が大切です。当社グループでは、活力にあふれる社員がポテンシャルを最大限に発揮する会社であり続けるために、「社員一人ひとりの成長に向けた機会づくり」「活力あふれる職場風土づくり」を通じ、社員の働きがいの向上に取り組んでいます。
「社員一人ひとりの成長に向けた機会づくり」としては、次世代経営者育成研修、論理的思考力強化研修、英語力強化研修等のOff-JTを通じた能力開発と共に、一人ひとりの「将来ありたい姿」の実現に向けたキャリア開発を進め、成長を実感できる機会及び場の提供に取り組んでいます。
「活力あふれる職場風土づくり」としては、多様な人材が個性や能力を発揮できる環境の創出に向け、多様な人材の採用、働きやすい職場環境づくりを進めています。
様々なライフステージ・生活スタイルの社員が働きやすいように人事制度を整えると共に、職場内コミュニケーションの更なる活性化、互いを尊重する風土づくりに取り組んでいます。定期的に社員満足度調査を行い、現状を確認すると共に課題を明確にし解決することにより、今後も継続して社員の働きがいの向上に取り組んでまいります。
⑥経営基盤の強化
取締役会の実効性向上や内部統制の強化・充実等により、コーポレートガバナンスの実効性向上に努めます。また、コンプライアンスに関するリスクの予防措置や教育等の施策を実施し、法令遵守と風通しの良い企業文化の醸成を図ることで、持続的成長と社会からの信頼性の向上に努めます。
お客様に安全と安心を提供することは企業の社会的責任であり、当社グループは、製品に関わる法令遵守と製品事故の撲滅に取り組むことで、安全性の高い製品を提供し、競争力の強化と社会からの信頼性向上に努めます。
当社グループはもとより、パートナーやサプライチェーン全体に対して、企業の社会的責任を強く意識した事業運営を促すことで、サプライチェーン上の環境・人権等のリスク低減を図ります。
当社グループは、取締役会の承認を得て、以下の「サステナビリティ基本方針」を掲げています。
サステナビリティ基本方針
「当社グループは、経営理念にある「お客様のみならず社会に貢献できる『進化する企業』であること」という基本的考えのもと、事業活動を通じた持続可能な社会の実現と企業価値の向上を目指します。
●多様な人材が生き生きと活躍できる環境を実現し、常に「進化する企業」として、お客様のみならず社会への価値
創造に貢献します。
●グローバル企業としてサプライチェーン全体での人権の尊重、環境負荷低減に努め、地球環境及び未来を担う世
代に貢献します。
●すべてのステークホルダーとの対話と連携を通じ、公正かつ透明性の高い経営を目指します。」
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)サステナビリティ
①ガバナンス
社長を委員長、管理部門の担当常務執行役員を副委員長とするサステナビリティ委員会を2022年6月に設置しています。定期的に開催される委員会では、議論するテーマに応じて事業部門の責任者も加えて、サステナビリティ課題を横断的に検討・議論していく体制を整えています。
サステナビリティ委員会は四半期に1度を目途に開催され、その審議結果を含めて経営会議及び取締役会に都度進捗報告を行います。サステナビリティに関する事業リスクはコンプライアンス・リスク管理委員会と共有しており、適宜必要に応じて取締役会に上申されることとなっております。
サステナビリティ委員会の傘下には、2022年に抽出・特定したマテリアリティ(重要課題)の解決推進を目的として、2023年よりマテリアリティごとにワーキンググループを設置しています。各ワーキンググループの責任者は原則として執行役員が就くものとし、サステナビリティ委員会にて決定しています。
②戦略
当社グループは様々な社会課題を議論・検討し、「(1)サステナビリティ ④指標及び目標」に記載の6つのマテリアリティを特定しています。各マテリアリティに対してはKPIを設定し、課題解決に向けた施策を実行することで経営ビジョン及び長期的にありたい姿の実現を目指します。
気候変動を中心とした環境への取り組みに関しては、TCFDに沿った情報開示の充実を図るとともに、廃棄物の発生抑制、環境負荷低減や省エネ製品の開発など環境マネジメントを推進しています。スコープ3に関しては、当社グループの取り組みをお客様と取引先様へ理解していただくための啓発活動を進め、今後開示の拡充を目指します。
社会への取り組みとしては、社員の働きがいの向上の実現に向けて、女性の活躍推進を図りつつ、人的資本の充実を図ります。
持続可能なサプライチェーンの構築に向けては、取引先様との密なコミュニケーションを図りながら、環境保全、人権・安全な労働条件などの調査により、サプライチェーンマネジメントの強化を目指します。
お客様に対しては、他社に先行した環境に優しい自然冷媒冷蔵庫・冷凍庫の国内販売を本格化させるとともに、飲食外市場の積極的な開拓を進めることで新たな顧客価値創造を進め、全国を網羅する拠点を活かしたサービス活動でお客様へ安心・安全を提供します。
経営基盤の強化に関しては、2022年に設置した指名・報酬委員会及びサステナビリティ委員会により、ガバナンス推進体制を強化しています。
マテリアリティの抽出・特定プロセス、KPIの選定プロセスについては、統合報告書のP25、26をご覧ください。
統合報告書:https://www.hoshizaki.co.jp/ir/library/pdf/integrated_report2023_a3.pdf
③リスク管理
各マテリアリティに対応したリスクと機会の抽出を行い、設定したKPIの適時モニタリング及び関連各部署と自社の強みと弱みを加味した対策を講じ、リスクの最小化と機会の最大化を目指します。なお、事業活動に関するリスク管理に関しては、每月開催されるコンプライアンス・リスク管理委員会の場で、リスク管理の徹底と迅速な対応を行っています。
④指標及び目標
サステナビリティ活動の推進に向けたKPIに関しては、各マテリアリティに紐付いたKPIを設定し、活動を強化することで、実効性を高めています。
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マテリアリティ |
ありたい姿との関連性 |
目標 |
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気候変動への対応 |
世界的な気候変動問題に対し、快適 な食環境の提供(ビジネス)を通じて、環境課題解決に貢献 |
KPI |
脱炭素社会の実現に向け、事業活動からの二酸化炭素排出量削減 |
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目標値 |
CO2排出量(スコープ1&2) 2014年度比50%削減(2030年) ※当社本社工場及び島根工場 |
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持続可能なサプライチェーンマネジメント |
環境や人権に配慮したサプライチェーンにより、廃棄物を最小限に抑え、健康で安全な労働条件を促進 |
KPI |
・環境保全(廃棄物等)、人権・労働(安全)等を含むサステナビリティに関する調達先調査 ・取組成果向上のための調達先との持続的なコミュニケーション |
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目標値 |
・調査質問票を策定(2023年)重要取引先様回答回収率95%以上(2026年)(当社) ・工場方針説明会への重要取引先様出席率95%以上(2026年)(当社) |
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新たな顧客価値の創造 |
お客様を取り巻く環境変化を迅速に キャッチし、変化へ柔軟に対応したモノづくり、サービスビジネスを創造 |
KPI |
今後拡大を目指す、多様な飲食外市場のお客様への貢献 |
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目標値 |
飲食外売上高1,000億円(2026年)(国内) |
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安心・安全な食環境づくりへの新たな提案 |
多様化する食環境の変化に対して、安全、安心な製品やサービスを提供し、人々の豊かな暮らしに貢献 |
KPI |
全国を網羅する拠点数の強みを生かした製品保守、サービスコール対応を通じたお客様への安心、安全の提供 |
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目標値 |
サービス売上高522億円(2026年)(国内) |
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社員の働きがいの向上 |
すべての社員が多様な価値観を共有 し、互いに尊重しあい、誇りを持って働く、活力あふれる職場風土への進化 |
KPI |
女性管理職の育成と次期女性管理職候補の育成確保 |
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目標値 |
女性管理職(課長相当職以上)50名、女性役職者(係長相当職以上)300名(2025年)(国内) |
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経営基盤の強化 |
コーポレートガバナンスの強化及び徹底したコンプライアンス遵守により、社会から信頼される経営の実践 |
KPI |
・コンプライアンス経営の基盤強化 ・社員への網羅的なコンプライアンス教育の継続 |
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目標値 |
・重大なコンプライアンス違反なし(グロ ーバル) ・社員全員へのコンプライアンス教育実施(グローバル) |
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(2)環境への取組
(TCFDへの対応)
気候変動が社会に与える影響は大きく、当社グループとしても取り組むべき重要な社会課題だと捉えています。
脱炭素社会の実現に向け、当社は2030年の中間目標として事業活動からのCO2排出量(スコープ1&2)の50%削減(2014年実績比)を目指します。2050年のカーボンニュートラルに向けて環境負荷低減を実現する製品・サービスの提供、環境技術の開発を推進しています。2022年2月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言への賛同を表明しており、気候変動にかかるリスク及び収益機会が当社グループの事業活動や収益等に与える影響等については、統合報告書のP58をご覧ください。
①ガバナンス体制
気候変動対応を含む社会・環境全般に関わる課題対処を推進する機関として「(1)サステナビリティ ①ガバナンス」に記載のサステナビリティ委員会を設置しています。気候変動に関するサステナビリティ活動は、マテリアリティ「気候変動への対応」ワーキンググループにおいて、担当執行役員の責任の下、目標達成に向けた活動推進を行っております。気候変動に関する事業リスクはコンプライアンス・リスク管理委員会と共有しており、適宜必要に応じて取締役会に上申されます。
②戦略(シナリオ分析)
当社では、将来における気温上昇のシナリオとして、2℃と4℃の温度帯を想定し、2030年および2050年におけるシナリオ分析を実施しています。
財務影響度はリスク・機会の期間収益への影響度と発生可能性によりそれぞれ3段階で評価しています。
なお、具体的な取り組みについては「(2)環境への取組(気候変動への対応)、(環境性能を高めた製品開発への取組)、(廃棄物の発生抑制や水資源保護への取組)」をご覧ください。
気候変動リスク・機会が財務に及ぼす影響と対応策
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影響度 |
発生 可能性 |
対応策 |
実績 |
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2 ℃シナリオ |
リスク |
原材料調達コストの上昇 |
大 |
中 |
・ VA (Value Analysis)コストダウン活動(部品点数の削減、部材・部品の見直し) ・調達先分散化、戦略的製品価格改定 |
・継続的コストダウン活動による部材価格高騰影響の低減 ・戦略的価格改定 ・電力削減に向けた設備投資計画の策定(24年本社工場および島根工場にソーラーパネル設置予定、計画的設備更新による省電力化) ・国内市場に自然冷媒冷蔵庫リリース |
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冷媒規制の強化対応、製品の脱炭素向上のための研究開発費・設備投資額負担の増加 |
中 |
中 |
・自然冷媒製品のラインナップ拡充(冷蔵庫、製氷機などの主要機種をはじめ、冷媒使用製品の自然冷媒化を推進) ・開発リードタイム短縮活動 ・自然冷媒製品の研究開発への計画的な投資と製品設計 |
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再生エネルギー・代替燃料調達コストの上昇 |
小 |
中 |
・工場の電力使用量削減活動(ソーラーパネルなど自家発電設備への計画的投資) ・外部電力の再生可能エネルギーの使用比率向上 |
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機会 |
自然冷媒、脱炭素製品への入れ替え需要拡大 |
大 |
中 |
・自然冷媒製品の開発およびラインナップ拡充 ・製品の脱GHG・脱炭素化(原料調達、製造過程、使用過程含む) |
・国内市場に自然冷媒冷蔵庫リリース ・海外での自然冷媒化製品比率向上 ・ブレマ買収による製氷機市場拡大 |
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気温上昇による食品冷蔵、食用や業務用の氷の需要増加 |
大 |
低 |
・気温上昇による影響度が高いエリアへのコールドチェーン製品拡充および進出 |
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影響度 |
発生 可能性 |
対応策 |
実績 |
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2 ℃シナリオ |
機会 |
省エネ製品の需要増加 |
中 |
髙 |
・モデルチェンジなどでの製品の電力使用量削減(製氷機、冷蔵庫など) ・使用水量削減(製氷機、 食器洗浄機など) |
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可燃性自然冷媒を使用しているため、客先における可燃性ガスの漏えいモニタリング、点検サービスの需要増加 |
小 |
中 |
・可燃性ガス取扱資格者の増 員 ・修理用器具設備手配、サービス開発 |
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4 ℃シナリオ |
リスク |
猛暑、感染症拡大による外食市場の縮小 |
中 |
中 |
・顧客チャネル拡大(飲食外市場、特に流通販売業、加工販売業、基幹産業、病院・老健に注力) |
・飲食外市場のカバレッジ拡大施策の推進(他社協業、製品開発、国内販売会社の組織変更など) ・部材調達リスク発生時の代替品採用における設計・調達体制の確立 ・部材調達リスクに対応した製造・販売の連携体制確立 ・部材の適正在庫量の見直し、確保 |
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サプライチェーン寸断による原材料調達コストの上昇 |
中 |
低 |
・部材調達先の分散化・リスク軽減(複数購買、予備調達先、代替品対応など) ・製造拠点間のKD部品ノックダウン率適正化による調達リスク減 ・調達リスクに備えた部品在庫量の適正化 |
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事業継続計画(BCP)対策費用の増加 |
小 |
低 |
・グローバル拠点(製造、販売)におけるBCPの明確化 ・部材調達面でのBCPとしての調達先分散化 |
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機会 |
気温上昇による食品冷蔵、食用や業務用の氷の需要増加 |
大 |
中 |
・未進出国などへのコールドチェーン製品販売の拡大 ・販売エリア拡大に伴うサービス網の充実 |
・海外展開(M&A含む)の拡充 ・HACCP資格者数の拡充 ・ホシザキコネクトWi-Fiのサービス開始(24年) ・コネクテッドロボティクスとの協業 ・サービス人員の拡充と生産性向上施策 |
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衛生製品の需要増加 |
中 |
中 |
・衛生製品ラインナップおよびサービスの充実 ・HACCP対応の強化 |
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猛暑による厨房環境悪化、人手不足による厨房自動化、リモート操作・サポート需要の増 |
中 |
中 |
・自動化、ロボティクス、リモート操作製品、サービスの開発、省力化製品の拡大 |
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災害などによる製品メンテナンス需要増加 |
中 |
中 |
・サービス事業の生産性向上 ・ITを活用したリモート機器診断などの新たなサービスオプション開発 |
③リスク管理
気候変動に関する企画・立案、管理については、マテリアリティ「気候変動への対応」ワーキンググループを中心として、サステナビリティ委員会がこれを行い、全社的な気候変動への対応を推進しています。
サステナビリティ委員会は、気候変動に関する自社への影響を評価・識別し、管理しています。また、特定した気候変動への影響については、必要に応じてコンプライアンス・リスク管理委員会と情報共有することで、気候変動の影響を全社リスクに統合する役割を担っています。
④指標と目標
当社グループは、2050年に事業活動からのCO2排出量(スコープ1&2)を実質ゼロとすることを目指し、徹底した省エネ活動や再生エネルギーの積極的な利活用を推進していきます。気候変動への対応については統合報告書のP57をご覧ください。
(気候変動への対応)
ネットゼロエミッションへの挑戦
①フロンガス規制の進展
1970年代にフロンガスによるオゾン層破壊のメカニズムが科学的に解明され、1987年のモントリオール議定書が採択されたことで、特定フロン(CFC、HCFC)を冷媒として使用する製品の生産や消費量が段階的に制限され、オゾン層を破壊しない代替フロン(HFC)の使用拡大が進みました。その後、2016年のモントリオール議定書改正採択(キガリ改正)によって、代替フロンも地球温暖化を促進することから、生産および消費量の段階的削減義務が課され、温室効果の小さい代替物質(自然冷媒※含むノンフロン)への転換が気候変動への対応として大きな課題となっています。
※自然冷媒:自然界にもともと存在する物質を使って冷凍用や空調用の冷媒に使用できる物質。オゾン破壊係数(ODP、Ozone Depletion Potential)がゼロ、かつ、地球温暖化係数(GWP、Global Warming Potential)が非常に低く地球に優しい冷媒。
②当社グループの対応
冷媒選択の考え方として、環境性(GWP、ODP)、安全性(燃焼性、毒性)、経済性(省エネ、コスト)の3つの観点から次世代の冷凍冷蔵機器の開発を行ってきました。フロン規制で先行する欧米市場においては、2015年に代替フロンへの規制が強まるのに先立って、2009年に自然冷媒(プロパン)を採用した製氷機の納入を始めており、以降、自然冷媒を使用した製品の拡充に努めております。
2022年には欧州でのフードサービス機器の販売・保守サービスを行うHoshizaki Europe B.V.でのHC冷媒※1を採用した製品の販売台数※2に占める割合は、90%に達しています。
※1 自然冷媒の内、プロパンやイソブダンなどの炭化水素系冷媒
※2 製氷機、業務用冷蔵庫、ネタケースの合計台数
③国内向け全ての業務用冷凍冷蔵庫を自然冷媒へ変更
当社は、日本国内において、冷媒を代替フロンから自然冷媒に代えた業務用ノンフロンの冷蔵庫を2022年5月より、冷凍庫を2022年8月より受注開始しました。2023年もラインナップを追加し、2024年末までに全て※の国内向け業務用冷凍冷蔵庫の冷媒をノンフロンである自然冷媒に変更します。
自然冷媒製品は、フロン排出法規制対象外となるため、フロンの簡易点検や漏えい時の報告などが不要となり導入先の負担軽減も期待できます。
※ 一部の派生機種(通常の冷凍冷蔵庫とは用途が異なる特殊な機種)を除く。
(環境性能を高めた製品開発への取組)
当社グループは、積極的に環境配慮型製品の開発やラインナップの拡充に取り組んでいます。取り組みの一例として、当社では、2023年に食器洗浄機の主要3タイプのモデルチェンジを行い、ノズル構造の見直しなどにより、すすぎ水量を従来機の2リットルから1.8リットルへ※10%削減をするなど、省エネ性能を向上させました。
ホシザキアメリカでは、消費電力を抑制した省エネ性能の高い製氷機および温室効果ガスの排出を抑制した環境配慮型の業務用冷蔵庫のラインナップ拡充に取り組んでおります。この取り組みなどが評価され、ENERGY STARの「Partner of the Year - Product Brand Owner Award」を12年連続で受賞するとともに、受賞企業の中で選出される最高位の賞である「Partner of the Year - Sustained Excellence Award」を9年連続で受賞しました。
※一部の特定用途向けの派生機種を除く。
(廃棄物の発生抑制や水資源保護への取組)
廃棄物の発生抑制は金属作業屑やプラスチック材料作業屑などの歩留まり向上、製造工程での不良品削減活動、在庫管理の徹底、3R (リデュース・リユース・リサイクル)を実施しており、当社では再利用率の促進で99.0%以上を達成しています。水資源も使用量は限られますが、水道水・工業用水・地下水を適時使用し、保護に努めています。
(3)人的資本
①人的資本の基本方針
当社グループは、「夢を持とう」から始まる「ホシザキ・イズム」を社員一人ひとりが意識し、行動すべき指針を定めています。すべての社員が最大限に個々の能力を発揮して、意欲とやりがいを持って働くことができる職場環境の整備や人材育成制度、ワークライフバランスの実現に向けた取り組みを強化しています。世界No.1の実現に向けたグローバル人材育成プログラムに加え、女性の活躍推進を始めとする多様性を重視したダイバーシティ活動の推進や、社員一人ひとりの人権を尊重することによって、真のグローバル企業として、社員の成長を通じた企業価値の向上を目指します。
②当社グループの人的資本
2023年12月末の連結社員数は前年度末比90名増加の13,361名(連結グループ会社数57社)、内訳は日本8,698名(ホシザキ+グループ会社数20社)、米州2,623名(グループ会社数18社)、欧州・アジア2,040名(同19社)となっています。ホシザキと国内販売会社合計の社員数7,725名に対する女性社員比率は5年前と比べて+2.1%の17.6%に上昇しています。また、係長相当職以上の女性役職者数は、5年前と比較して95名増加の219名となり、役職者比率は8.7%に伸長しています。
③変化対応力の高い人材の育成
当社グループでは、経営ビジョンと長期的にありたい姿の実現に向け、「ホシザキ・イズム」を体現できるプロフェッショナルな人材の育成に取り組んでいます。まず、採用においては、定期の新卒採用をベースとして安定的な要員確保を図るとともに、経営ビジョン達成に向けた必要な資質を持った人材については、キャリア採用を併用して積極的な人材補強を行っています。そして、社員の階層などに応じて必要な教育・研修の受講機会を提供しつつ、コンテンツや教育体系自体も拡充・見直しを行うことで、組織的な能力開発の強化を図っています。
④多様性の推進と働きがいの向上
多様性の推進活動も強化しており、特に、国内の女性活躍推進に関しては、最優先課題として注力しています。2022年には、過去10年間継続してきた女性活躍推進プロジェクトを発展させるかたちで「かがやき委員会」を発足させるとともに、正式な組織として当社内に「ダイバーシティ推進センター」を設置しています。また、社員一人ひとりが働きがいを実感しながら、前向きに仕事へ取り組むことができるよう、働く環境整備にも継続的に取り組んでいます。ワークライフバランスを考慮した労働時間適正化の取り組みに加え、リモートワーク制度、育児・介護と仕事の両立サポート、単身赴任者も家族と多くの時間を過ごせるための支援制度など、様々な人事制度の拡充・見直しを行っています。現在、国内販売会社の人事制度改革に着手しており、社員が公平さと働きがいを感じることができ、同時にガバナンス強化にもつながるような新たな人事制度の導入を目指しています。
⑤社員満足度調査による改善
年1回、無記名式で行われる社員満足度調査の結果を分析し、アクションプランを作成・実行するというPDCAを通じて、社員満足度や働きがいの向上、人事制度の改善に繋げています。社員満足度調査の数値データのみならず、定性的な自由コメントの一つひとつに目を向けることで、数値では測れない現場の課題を理解し、対応策を強化しています。今後は社員満足度調査を海外へ展開する予定です。
⑥指標と目標
人的資本のKPIとしては、2025年に「①女性管理職人数を2020年対比で4倍の50名とする」、「②係長相当職以上の女性役職者数を2020年対比で1.5倍の300名とする」ことを設定しています。人的資本投資による経済価値創造リターンのKPIに関しては、国内販売会社において1人当たり売上高目標などを掲げていますが、経営ビジョンで掲げる数値目標の達成に向けた全社ベースのKPI設定は今後の課題です。
1.当社のリスク管理体制
当社は、当社グループの事業活動に関するリスク管理を所管するコンプライアンス・リスク管理委員会を設置し、毎月1回開催することにより、リスク管理のグループへの推進と情報の共有化を図り、リスクへの迅速な対応とリスク顕在化の回避及び軽減等の決定を行っております。委員は、社外取締役を含む全取締役で構成されており、取締役会が定めたリスク管理規程に従って、事務局である法務部を所掌する執行役員がコンプライアンス・リスク管理統括責任者に指名されリスク管理体制の運用に当たっています。
当社グループは、リスク・リストを定め、各リスク分野を所掌する部署は、各々の職務分掌に基づいて担当職務ごとにこれらのリスクを管理(リスク・マッピング)し、重要度と脆弱性が高いと分類されたリスクについては、優先的に対策を立案し、随時実践して行くこととしています。
また、リスク管理規程に基づくリスク管理情報報告の制度の下、日常の事業活動の中で各部署あるいは各グループ会社で認識されたリスクは、随時コンプライアンス・リスク管理統括責任者に報告されることとしています。認識されたリスクについては、コンプライアンス・リスク管理委員会にて社外取締役からも助言や指導を得て、対策の立案と推進に活かしています。
2.事業等のリスク
当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況等に重要な影響を与える可能性のある主要なリスクは以下のとおりです。これらは必ずしも全てのリスクを網羅したものではなく、想定していないリスクや重要性が低いと考えられる他のリスクの影響を将来的に受ける可能性もあります。また、特定された主要なリスクに対して講じている各々の対応をしても全てのリスクの発生を排除することができず、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。
なお、記載事項のうち将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において入手可能な情報等に基づいて、当社グループが判断したものです
(1)気候変動に関連するリスク
気候変動にかかるリスク及び収益機会が当社グループの事業活動や収益等に与える影響等については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)環境への取組」をご覧ください。
(2)天候・災害等について
当社グループの主力製品は、製氷機、冷蔵庫等ですが、用途の特性上需要期の天候が業績に影響を及ぼします。また、地震・風水害等の大規模自然災害、テロ等の人為的災害及び感染症等が発生した場合、当社グループの設備、情報システム、取引先等の操業等に影響が出る可能性があります。このような災害発生時には、当社グループの生産活動及び販売活動に大きな影響を与え、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。
また、新型コロナウイルス感染症などの重大な感染症が拡大した場合、当社グループの生産・営業活動等に影響を与え、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。
(リスクへの対応)
自然災害等への備えとして、BCP(事業継続計画)を策定すると共に必要な保険を付保して、災害等発生時にも事業及び財政状態等への影響を最小限に抑えています。
感染症に対しては、コロナ禍での学びも活用して感染防止に努めると共に、生活様式やマーケットの変化に対しては新たな市場や需要の開拓により対応することにより、経営成績等への影響の極小化、ひいては好影響を与えられるように引き続き努めていきます。
(3)製品の品質について
当社グループが生産している製品及び他社仕入商品については、高品質な製品を安定供給するという基本方針の下、厳重な品質管理をして出荷しています。しかしながら、万一、市場クレームの発生等によって想定を超える品質問題が発生した場合には、製品・部品の不具合点検と交換による費用が発生することに加え、企業イメージや社会的評価が低下する可能性があり、その場合には当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。
(リスクへの対応)
当社は、品質保証部が、全社的立場から品質改善や品質管理を徹底・強化すると共に、グローバル製造部による海外各国の製造拠点に対する製造品質支援も定着し、さらなる品質向上に努めています。万一品質問題が発生したときは、品質保証部、法務部その他の関係部署が連携して解決に万全を期す体制を整備すると共に、PL保険(生産物賠償責任保険)を付保して財政状態等への影響を軽減する措置を取っています。また、海上輸送や国内輸送中に生じ得る製品等の毀滅リスクを低減すべく、保険会社の知見を活用したloss prevention(損失予防)活動を強化しています。
(4)原材料・部品の調達について
当社グループの製品における原材料、部品等は、市況の変動等により調達価格が高騰した場合は製造コストに影響を及ぼします。製造コストの低減や製品価格への転嫁が困難な状況においては、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。
加えて、新型コロナウイルス感染拡大で顕在化した世界的サプライチェーンの混乱や中国ロックダウン等に起因する部材の調達難が起こった場合には、当社の製品製造にも相当の影響を及ぼす可能性があります。
また、当社のサプライチェーンにおいて不適切な対応に基づく環境や人権問題が発生した場合、顧客との取引の停止や行政罰、また、社会的信頼の喪失につながる可能性があります。
(リスクへの対応)
当社グループは、市況の変動等による原材料価格の変動リスクを吸収し得る製造原価低減策やIT投資による製造業務効率化施策及びその他の経費節減を継続し、高利益体質への強化を引き続き図ってまいります。
また、半導体等部材の調達懸念に対しては、代替可能材料や部品を積極的に取り入れています。その調達先も複線化する等グローバルで見直し、部品の確保等により需要回復に対応した増産に努めています。また、部材価格や物流費の高騰に対しては予実管理を強化すると共に、自社努力のみでは収益性の改善は困難と判断した場合は、製品価格の改定を実施していきます。
当社グループは対処すべき重要な課題の一つに持続可能なサプライチェーンマネジメントを掲げ、環境や人権に配慮した責任ある調達活動を目指しています。また、EUを始め各国で制定されつつある人権デュー・ディリジェンスの法令化に対応し、契約への反映等コンプライアンスの徹底を目指しております。
(5)価格競争について
当社グループを取り巻く事業環境は、フードサービス産業における競争が激化するなか、競合他社との競争が大変厳しくなっております。当社のコスト低減レベルを超えて低価格競争が激化した場合、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。
(リスクへの対応)
当社グループは、製品の品質、コスト(労務費、物流コスト等を含む)、技術・サービス等のあらゆる面で、継続的かつ積極的に競争力の向上に努めています。特に、より高品質で独創的な、環境保護性能に優れた製品(例:自然冷媒を使用した業務用冷凍・冷蔵庫)や省エネ・省力化に寄与する製品(例:「ホシザキ コネクトWi-Fi」等)の提供により他社との差別化を推進し、市場シェアの拡大を目指しています。また、各地域の需要動向、製造コスト等を総合的に勘案した上で、製造拠点や供給方法の最適化を進めていきます。
(6)情報セキュリティについて
当社グループは、事業活動を通じて、取引先等の個人情報あるいは機密情報を入手することがあります。これらに加え、技術、契約、人事等に関する当社グループの機密情報について、サイバー攻撃等による不正アクセスや保存情報の破壊、漏洩等が発生した場合には、当社グループの事業継続に支障が生じる等により、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。
(リスクへの対応)
当社は、情報セキュリティ管理について、適切な技術対策、社内管理体制の整備、社員への教育等の対策の実施を進めています。技術的には、従来の入口対策(不正アクセスや不正ソフトウェア等の侵入を防ぐ対策、暗号化通信によるネットワーク環境の提供、会社指定デバイス以外からのネットワークへの接続を制限するなどの対策)に加えて、システム・ネットワーク監視や出口対策(機密情報等の外部流出防止対策)を導入し運用しています。また、標的型攻撃メール等のセキュリティ・インシデントを想定した訓練を実施しています。2022年以降新たにグローバルでのサイバー保険を付保し、インシデント発生時にも事業及び財政状態等への影響を最小限に抑えています。
(7)法的規制等について
当社グループは、事業活動を行う国や地域において、食品衛生規制、環境保護規制、贈収賄防止法、投資許認可、安全規制、輸出入規制、人権や労働関係法制等の様々な政府規制の適用を受けています。また、経済関連法令の主なものとして、独占禁止法、知的財産権に関する法令、法人税、関税、付加価値税等多岐に渡るものがあげられます。とりわけ環境保護関係では、大気汚染、水質汚濁、土壌汚染、有害物質の使用、廃棄物処理、製品リサイクル等を規制する様々な法令の適用を受けております。
このような規制を遵守できなかった場合、当社グループの事業活動が制限され、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。
(リスクへの対応)
当社ではコンプライアンスをコア・バリューの一つと位置付け、法務部を中心に法令遵守を徹底する活動に力を入れています。万一、法令違反、不適合等の問題が発生した場合には、適切に解決する体制を強化する一方、毎年、強化すべきトピックスを取り入れたコンプライアンス研修を当社グループ全社員向けに実施しています。また、法制動向をタイムリーに把握して法改正時には関係者に要点を周知徹底することによって意識と知識の向上に努めています。なお、法令違反や不適合などの行為については内部通報制度などでこまめに拾うことによって、人づくり・仕組みづくりに生かしています。
(8)知的財産権について
当社グループが生産・販売する製品に関連して保有する知的財産権を、第三者が不正に使用して類似製品を製造、販売することを完全には防止できない可能性があります。一方、当社グループが製品を開発する際は、第三者の知的財産権を侵害しないよう細心の注意を払っていますが、第三者から侵害訴訟を提起された場合、当社グループの信用低下や損害賠償責任の発生等により、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。
(リスクへの対応)
当社グループは、技術企画部が中心となって知的財産権を管理し、当社の知的財産を保護し、第三者の知的財産権の侵害を防止する体制を取っています。特に当社グループの製品や技術の模倣に対しては、特許、意匠、商標などの知的財産権の活用及び不正競争防止法等に基づく排除も含め、厳正に対応しています。2023年には、中国で発見された当社製品の模倣品について、当局より当社ロゴに類似したロゴの使用中止命令を含む行政処分が下されました。
(9)重要な訴訟事件等について
当社グループの事業活動に関して重要な訴訟その他の法手続が提起又は開始されるリスクは皆無ではありません。当報告書作成の時点では、重要な訴訟等はありませんが、万一、将来提起された訴訟等において不利な判断がなされた場合、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。
(リスクへの対応)
当社では、法務部にグローバル法務の豊富な知見を有する人材を採用、配置し、紛争処理、紛争予防及び渉外法務を3本柱として法務体制を強化しています。
(10)企業買収等について
当社グループは、既存の事業基盤の拡大やシナジーを創出するため、あるいは新たな事業分野への進出のために、企業買収や事業提携を行うことを成長戦略の一つとして位置付けております。その実施に際しては十分な検討を行いますが、買収後の事業計画が当初の計画通りに進捗しない場合には、のれん等の減損処理あるいは多額の資金投入が発生し、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。
(リスクへの対応)
当社グループは、企業買収等を行う場合、買収前には、外部専門家によるデュー・ディリジェンスの実施や事業計画の妥当性検証を十分に行うことによってリスク軽減を図るとともに、買収後には、想定した効果を創出すべく組織力を積極的に発揮し、PMI(post-merger integration)を推進して事業計画の達成に取り組んでおります。
(11)政治経済の状況について
当社グループが事業活動を行う主要な市場における政治経済の状況や変動は、当社グループ製品の主な販売先であるフードサービス産業、流通業界等の企業業績動向に影響を及ぼします。特に、ロシアのウクライナ侵攻やパレスチナ情勢を始めとした米州、欧州、アジア各国における地政学リスクの高まりや、各国の物価上昇や金融・経済政策の影響による経済環境の悪化等は、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。
(リスクへの対応)
当社グループは、国内及び海外における政治、経済及び社会のリスクをグループ会社ごとに見える化し、各種のリスクに適時適切に対応することにしています。
(12)為替相場の変動について
当社グループは需要地生産を中心としているため、輸出入取引に係る為替相場の変動による影響は限定的ですが、部材の調達等を外貨建てで取引しているものもあり、為替動向によっては製造コストや売上高に影響を及ぼす可能性があります。また、連結財務諸表の作成にあたって、各グループ会社の現地通貨建ての売上、費用、資産、負債等の項目を円換算しているため、換算時の為替レートによりそれらの項目の円換算額が影響を受けます。加えて、当社が保有する外貨建預金や海外の関係会社に対する投資を換算する際の為替相場の変動は、当社グループの財政状態、包括利益を含む経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。
(リスクへの対応)
当社が保有する外貨建預金や海外の関係会社に対する投資については、主要な通貨別の為替換算による影響額を継続的にモニタリングし、ポジションを見直す等随時必要な措置を取って為替リスクの低減を図っています。
(13) 人材確保、育成について
当社グループは、2023年12月末現在において内外拠点に研究開発人員を約550名、国内販売会社に営業人員約2,900名、サービススタッフ約2,600名を擁し、グローバルに技術、製造、販売、サービスの各部門に配置するプロフェッショナル人材及び経営人材を重要な人的資本と位置付け、その育成、拡充に力を入れております。労働人口が減少傾向にあるわが国を始め、関係各国の労働市場において人材の確保のための競争は激化しており、優秀な人材の採用や育成、雇用の継続が困難になった場合は、結果として当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
(リスクへの対応)
人材確保、育成にかかるリスクへの対応については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (3)人的資本」をご覧ください。
(1)経営成績等の状況の概要
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における日本経済は、5月に新型コロナウイルス感染症が5類感染症に位置づけられるとともに、円安、インバウンド需要等、飲食・サービス業界への追い風があった一方、物価上昇、人手不足といったマイナス要因の影響も受け、緩やかな回復を継続しました。海外では、消費や雇用には底堅い動きがみられたものの、物価上昇の継続や、金融引き締めの長期化による景気減速、中国の経済成長の鈍化による世界経済への影響リスク等、先行き不透明な状況が継続しました。
このような環境下、当社グループは、国内では前年に発生した部材調達難による供給制約は解消した中、飲食市場への拡販及び流通販売業や加工販売業等の飲食外市場への拡販と新規顧客の開拓に注力いたしました。また、ノンフロン自然冷媒の国内製品への採用加速や、機器にWi-Fiモジュールを取り付け、稼働・温度データをクラウドサーバで管理する新サービスの提供開始を発表するなど、新たな顧客価値の創造に向けた取り組みを推進いたしました。
海外では、堅調な需要の継続に対して製品供給に注力するとともに、物価上昇に対応する製品価格の改定は随時実施する等、収益性の向上にも努めました。また、前年に買収した企業による業績貢献がありました。
イ.経営成績
当連結会計年度の業績は、売上高は3,735億63百万円(前期比16.3%増)、営業利益は435億20百万円(同59.0%増)となりました。経常利益は受取利息及び為替差益を計上したこと等により503億22百万円(同35.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は328億35百万円(同36.9%増)となりました。
セグメントごとの業績は、次のとおりであります。
1.日本
日本におきましては、深掘りを進める飲食市場、積極的な開拓を進める飲食外市場に向け、冷蔵庫、製氷機、食器洗浄機等主力製品を中心とした拡販を実施いたしました。経済の回復に伴うフードサービス業界の設備投資需要へ迅速に対応するとともに、顧客が直面する様々な課題の解決や安全・安心な食環境づくりへ貢献できる付加価値の提供に、製品、サービスの両面で注力いたしました。その結果、売上高は2,085億77百万円(前期比7.8%増)、セグメント利益は238億32百万円(同23.5%増)となりました。
2.米州
米州におきましては、年初には一部製品の部材調達難が起こったものの徐々に回復し、堅調な需要に応えるべく製造面での生産性向上や顧客開拓・関係強化等に注力しながら、製氷機、ディスペンサ等の拡販に努めました。その結果、売上高は978億円(前期比22.7%増)、セグメント利益は101億56百万円(同86.4%増)となりました。
3.欧州・アジア
欧州におきましては、製氷機、冷蔵庫等の主力製品の拡販に努めるとともに、前年に買収した企業による業績貢献がありました。また、アジアにおきましては、インドを始めとして、冷蔵庫等の販売が堅調に推移しました。その結果、売上高は758億77百万円(前期比32.8%増)、セグメント利益は112億10百万円(同132.6%増)となりました。
ロ.財政状態
2022年7月1日に取得したBrema Group S.p.A.との企業結合及び2022年12月22日に取得した北京東邦御厨科技有限公司との企業結合について前連結会計年度末において暫定的な会計処理を行っていましたが、当連結会計年度に確定したため、前連結会計年度との比較・分析にあたっては、暫定的な会計処理の確定による見直し後の金額を用いております。
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ414億62百万円増加し、4,653億61百万円となりました。
流動資産は、前連結会計年度末に比べ359億4百万円増加し、3,641億45百万円となりました。主な要因は、増益に伴う現金及び預金の増加によるものであります。
固定資産は、前連結会計年度末に比べ55億57百万円増加し、1,012億15百万円となりました。主な要因は、有形固定資産の増加によるものであります。
当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ10億25百万円増加し、1,324億24百万円となりました。
流動負債は、前連結会計年度末に比べ16億51百万円増加し、1,046億38百万円となりました。主な要因は、未払法人税等の増加によるものであります。
固定負債は、前連結会計年度末に比べ6億25百万円減少し、277億85百万円となりました。
当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ404億36百万円増加し、3,329億37百万円となりました。主な要因は、利益剰余金、為替換算調整勘定の増加によるものであります。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ404億3百万円増加し、2,270億72百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、376億98百万円の収入(前期は51億70百万円の収入)となりました。主な要因は、税金等調整前当期純利益が483億78百万円ありましたが、法人税等の支払額142億29百万円あったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、32億86百万円の収入(前期は19億41百万円の収入)となりました。主な要因は、有形固定資産取得による支出61億32百万円ありましたが、一方で定期預金の純減による収入が142億13百万円あったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、103億55百万円の支出(前期は133億49百万円の支出)となりました。主な要因は、配当金の支払額が101億38百万円あったことによるものであります。
③生産、受注及び販売の実績
イ.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年1月1日 至 2023年12月31日) |
前期比(%) |
|
日本(百万円) |
75,438 |
106.4 |
|
米州(百万円) |
78,997 |
114.8 |
|
欧州・アジア(百万円) |
62,080 |
137.2 |
|
合計(百万円) |
216,515 |
117.1 |
(注)金額は、販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。
ロ.商品仕入実績
当連結会計年度における商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年1月1日 至 2023年12月31日) |
前期比(%) |
|
日本(百万円) |
57,198 |
115.1 |
|
米州(百万円) |
1,920 |
60.9 |
|
欧州・アジア(百万円) |
9,070 |
141.3 |
|
合計(百万円) |
68,189 |
115.0 |
(注)金額は、仕入価格によっております。
ハ.受注実績
当社グループは、見込生産を行っているため、該当事項はありません。
ニ.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年1月1日 至 2023年12月31日) |
前期比(%) |
|
日本(百万円) |
202,011 |
108.4 |
|
米州(百万円) |
96,892 |
122.6 |
|
欧州・アジア(百万円) |
74,658 |
133.7 |
|
合計(百万円) |
373,563 |
116.3 |
(注)セグメント間の取引については相殺消去しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。その作成においては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断していますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性の存在により、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりであります。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
イ.経営成績等の分析
1.経営成績
売上高は3,735億63百万円(前期比16.3%増)となりました。セグメントごとの売上高(セグメント間の内部売上高を含む)は、日本は2,085億77百万円(同7.8%増)、米州は978億円(同22.7%増)、欧州・アジアは758億77百万円(同32.8%増)となりました。海外売上高は1,715億51百万円(同27.2%増)となり、連結売上高に占める海外売上高比率は45.9%(同3.9ポイント増)となりました。
売上原価は2,375億1百万円(前期比13.3%増)となりました。売上総利益は1,360億62百万円(同21.8%増)となりました。売上総利益率は36.4%(同1.6ポイント増)となりました。
販売費及び一般管理費は925億41百万円(前期比9.8%増)となりました。販売費及び一般管理費の売上高に対する比率は24.8%(同1.4ポイント減)となりました。営業利益は435億20百万円(同59.0%増)となりました。セグメント利益は日本は238億32百万円(同23.5%増)、米州は101億56百万円(同86.4%増)、欧州・アジアは112億10百万円(同132.6%増)となりました。
営業外収益は受取利息及び為替差益を計上したこと等により84億94百万円(前期比23.1%減)となりました。営業外費用は16億92百万円(同40.6%増)となりました。経常利益は503億22百万円(同35.2%増)となりました。
特別利益は96百万円(前期比18.1%増)となりました。特別損失は減損損失を計上したこと等により20億40百万円(同36.4%減)となりました。税金等調整前当期純利益は483億78百万円(同41.9%増)となりました。
法人税等合計は148億30百万円(前期比55.0%増)となりました。非支配株主に帰属する当期純利益は7億12百万円(同30.2%増)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は328億35百万円(同36.9%増)となりました。
なお、経営成績に影響を与える要因の分析については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況 」もご覧ください。
2.財政状態
財政状態の分析につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況 ロ財政状態」のとおりであります。
3.キャッシュ・フローの状況の分析
キャッシュ・フローの状況の分析につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」のとおりであります。
ロ.資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、原材料の購入費のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資等によるものであります。
また、事業運営上必要な資金を確保すると共に、経済環境の急激な変化に耐えうる流動性を維持することを基本方針としております。事業活動に必要な資金については、主に内部資金を活用しております。また、グループ内余剰資金を活用するためにキャッシュ・マネジメント・システムを導入し、資金効率の向上に努めております。
なお、当連結会計年度末における有利子負債の残高は27億37百万円、現金及び現金同等物の残高は2,270億72百万円となりました。
(株式取得による持分法適用関連会社化)
当社は、2024年2月21日開催の取締役会において、当社の連結子会社である HOSHIZAKI USA HOLDINGS,INC.を通じてパナマ共和国の業務用冷蔵庫メーカーであるFogel Company Inc.の株式の一部を取得し、持分法適用関連会社化することについて決議し、同日付で株式譲渡契約を締結いたしました。
詳細は、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な後発事象)」をご覧ください。
当社グループにおける研究開発活動は、日本では当社等が製品の研究開発を行っており、米州ではHOSHIZAKI AMERICA,INC.、LANCER CORPORATION等が、欧州・アジアではHOSHIZAKI EUROPE LIMITED、Western Refrigeration Private Limited等が行っております。当社グループにおける研究開発部門では、市場情報収集から要素開発、試作、設計、生産フォローアップまでの一貫した研究開発体制を持つことで、最終顧客の多種多様なニーズに対応しております。当連結会計年度は、新規開発及びモデルチェンジを中心とした開発活動と、収益性を向上させるためのコスト低減活動を行っております。
なお、当連結会計年度における当社グループの研究開発費の総額は
(1)日本
①当社
(冷蔵庫)
自然冷媒を使用した冷蔵庫・冷凍庫シリーズを開発し、製品化いたしました。環境に影響を及ぼす特定フロンや代替フロンに代えて自然冷媒を用いることで、従来製品に比べ地球温暖化係数(GWP)を約99%削減しました。2022年に販売開始したホシザキ独自構造による業界規格の安全基準を国内で初めてクリアしたモデルに加え、新たな普及モデルとしてタテ形とテーブル形の冷蔵庫・冷凍庫を追加いたしました。
(製氷機)
自然冷媒を使用したキューブアイスメーカーを開発し、製品化いたしました。環境に影響を及ぼす特定フロンや代替フロンに代えて自然冷媒を用いることで、従来製品に比べ地球温暖化係数(GWP)を約99%削減しました。飲食店等にご使用いただいているアンダーカウンタータイプを先ずは製品化し、順次全シリーズを追加していきます。
産業用大形製氷機シングラスアイスメーカー TMシリーズのモデルチェンジを行い、製品化いたしました。新冷媒としてR448A(GWP 1390)を採用することで低GWP化を実現し、フロン排出抑制法に基づく環境影響度の目標達成をしております。
(洗浄機)
小形ドアタイプ食器洗浄機をモデルチェンジを行い、製品化いたしました。飲食店等にご使用いただいている食器洗浄機で、洗浄力と使いやすさを両立させた新ノズル、及び視認性に優れた液晶パネルを採用し、節水性を向上させ従来製品よりすすぎ水量を10%削減した製品です。
卓上タイプの小形食器洗浄機を開発し、製品化いたしました。業務用としては非常に短い6分間の洗浄コースで、「通常の洗浄機を導入するほどの規模ではないものの、手洗いでは負担が大きい」というお客様や「グラス専用の洗浄機が欲しい」というお客様にご提案できる製品となっております。
(ディスペンサ)
ティーディスペンサー大容量PTEシリーズ、及びティーサーバー大容量ATEシリーズのモデルチェンジを行い、製品化いたしました。標準機の能力では足りないお茶を多量に必要なロケーション向けに連続で約2.2Lの注出を可能としました。
(その他)
プレハブ冷蔵/冷凍用冷却ユニットのモデルチェンジを行い、製品化いたしました。新冷媒としてR448A(GWP 1390)を採用することで低GWP化を実現し、フロン排出抑制法に基づく環境影響度の目標達成をしております。
配膳車MSCシリーズのモデルチェンジを行い、製品化いたしました。形状の異なるトレイを共通で使用可能とし、キャスターの改善を行い、日常の使い勝手も良い仕様となっています。
再加熱カートNWシリーズのモデルチェンジを行い、製品化いたしました。加湿機能を搭載し、食事の仕上がりを向上させるだけではなく、加熱時間も短縮させました。
タテ形・テーブル形解凍庫HDシリーズを開発し、製品化いたしました。主に焼き肉店などを販売先として、温風式の解凍方式による解凍時間の短縮と品質の安定化を実現します。
ディープフリーザーHDFシリーズを開発し、製品化いたしました。超低温-60℃で食材の新鮮さを長持ちさせる製品です。タンパク質の酵素分解や脂肪の酸化を抑制します。また環境にやさしい自然冷媒を使用しています。
液体急速凍結機HLFシリーズを開発し、製品化いたしました。-35℃のエタノールで食材を急速凍結させ、氷結晶の膨張を抑制することで細胞の破壊を防ぎ、食材の新鮮さを保ちます。エタノールの循環速度をアップさせるスピード凍結モードを搭載し、食材をより素早く凍結させられます。
薬用保冷庫HPRシリーズを開発し、製品化いたしました。医療機関や研究機関などで薬品や試薬、ワクチンなどの保管に用いられる保冷庫です。薬品保管時に求められる2~8℃の温度帯を、より正確に制御いたします。
シンガポールを含む東南アジア向けに電気フライヤーFL-20B-SEAを開発し、製品化いたしました。
(2)米州
①HOSHIZAKI AMERICA,INC.
地球温暖化に大きな影響を与える冷媒の使用を制限したFガス規制※に対応した冷蔵庫、製氷機のモデルチェンジを進めています。また今後さらに省エネ規制が厳格化されるため、省エネ性に関する研究開発も並行して進めています。
※Fガス規制…高 GWP(地球温暖化係数)の冷媒を使用する機器の販売を禁止する規制
今期はピザ調理用テーブル形冷蔵庫のモデルチェンジを行いました。冷気分配の効率化や温度調整の自動化により、食材を冷やしすぎることなく、鮮度を維持して保存することが可能です。これらの点が評価され、全米レストラン協会主催のKitchen Innovations(R)賞を、日系メーカーとしては唯一受賞しました。
②LANCER CORPORATION
HOSHIZAKI AMERICA同様Fガス規制に対応した環境配慮型のディスペンサへモデルチェンジを進めています。また外観デザインと視認性、操作性を充実させた大型ディスプレイの採用、さらにネットワークを利用した情報収集と分析が可能なアプリケーションの開発など、ソフトとハードの両面から新製品開発を推進しています。
(3)欧州・アジア
①HOSHIZAKI EUROPE LIMITED
大形クレセントアイスメーカーの販売ラインナップを強化し、本格的に販売を開始いたしました。欧州はFガス規制が世界に先駆けて施行されていますので本製品も同規制に適合した環境配慮型の製品であり、こうした環境負荷低減に効果的な製品は欧州市場で特に高く評価される傾向にあります。
②Western Refrigeration Private Limited
主力の業務用冷蔵ボトルショーケースの新モデル4機種を開発・製品化いたしました。本製品は自然冷媒を採用し、従来製品に比べ消費電力を最大 17.8%低減させており、ユーザーと環境にさらに優しい製品として進化しています。