(1) 経営の基本方針
当社グループは、変化する事業環境の中で、世界に点在する当社グループ企業の全従業員が、共通する使命感、価値観のもとでグループとしての一体感を高めていくことを目的に、Mission、Vision、Values、いわゆるMVVを制定しております。
世界水準のエンジニアリングの提供によって、多様な顧客各社の課題を総合的に解決し、顧客ニーズの充足を実現するとともに、エネルギー・素材等の供給と環境保全を調和させ、持続性のある地球社会の実現に貢献します。
◆グループ・ビジョン(目指す企業像):“Global Leading Engineering Partner”
世界第一級のエンジニアリング企業グループとして、顧客の立場に立脚し共に課題を解決することによって、品質、HSE(健康・安全・環境)、納期、価格等を含む総合的な価値を提供し、顧客にとって最も信頼できる継続的なパートナーとなります。
東洋エンジニアリンググループで働く一人ひとりの役職員は、これらの価値観を共有して行動します。

上記の経営方針に基づき、当社グループは、5つの強み(プロジェクトマネジメント力・技術力・アライアンス構築力・総合エンジニアリング力・グローバル対応力)を発揮し、「EPC強靭化」戦略と「新技術・事業開拓」戦略を軸として、多様化、個別化する顧客の課題に対し、最適なソリューションを提供しています。
(2) 経営環境
当連結会計年度における世界経済は、ロシア・ウクライナ情勢ならびに本情勢に起因するインフレの加速や欧米の金融引き締め、また、中国におけるコロナ感染症対策が、コロナ後の景気持ち直しのペースを鈍化させることとなりました。一方で、これらの複合的な要因により深刻化したグローバルサプライチェーンは徐々に正常化の様相を見せ、中国の「ゼロコロナ」政策の解除や、エネルギー需給ギャップの改善もあり、年度後半には景気の持ち直しの動きも見られました。
引き続き、インフレ抑制を目的とする欧米による金融引き締めの長期化や、不動産不況に伴う中国の成長失速、そしてロシア・ウクライナ情勢や台湾を巡る米中対立などの経済安全保障上の下振れリスクには注視が必要な状況であります。
このような中で当社グループの事業環境としては、顧客である石化メジャーによる再生可能エネルギー投資や二酸化炭素回収・貯留技術(CCS)および既存石化設備の温室効果ガス(GHG)削減への投資が見込まれ、肥料に関しても、人口増加に伴う堅調な需要の増加に伴う投資が見込まれております。また、浮体式海洋石油・ガス生産貯蔵積出設備(FPSO)では、複数の有望案件の引き合いがあります。そして、カーボンニュートラル分野では、燃料アンモニアに関して、北米・豪州・中東・チリなどにおける引き合いがあり、持続可能な航空燃料(SAF)に関しては、今後市場の拡大、設備投資の増加が見込まれます。
当社グループは、2018年度からの再生計画を経て、企業価値の更なる向上を目指し、2021年度から、ポストコロナとカーボンニュートラルへの移行を見据えた中期経営計画(2021~2025)を展開しています。「EPC強靭化」戦略と「新技術・事業開拓」戦略の2つの戦略を軸に、2022年度までの2年間を「進化期」、2023年度からの3年間を「浸透期」と位置づけ、2026年度以降の「飛躍期」へと繋がる基盤の強化・整備を推進しています。
① 中期経営計画前半の進捗状況
2021~2022年度は、カーボンニュートラル領域を新たな事業の軸とすべく、燃料アンモニアやSAFなどの事業化調査(FS)を推進し、更に一部の案件では基本設計(FEED)案件等を遂行し、次なるEPC(設計・調達・工事)フェーズへの展開に向けた取り組みを進めています。このような展開の一環で日揮ホールディングス株式会社との燃料アンモニアや、日揮株式会社との国内におけるSAFに関するアライアンスの締結等、他社とのパートナリングを通じた取り組みを進めております。
また、当社の従来からの事業の軸であるハイドロカーボン領域においては、昨年、三井海洋開発株式会社(MODEC)とFPSOのEPCI(設計・調達・工事・据付)案件を遂行するための合弁会社であるOFS(Offshore Frontier Solutions Pte. Ltd.)を設立いたしました。同社では既にFPSO案件のFEED業務を遂行しており、EPCIの受注に向けて鋭意取り組み中です。
当社は、今後も自社のプロジェクトマネジメント力・技術力を活かし、多様な企業との連携・協調も図りながら事業基盤の更なる強化と拡大に努めていく予定です。
② 今後の中期経営計画に関する重点課題
(事業領域の拡大と収益性の向上)
2023年度からの3年間においては、カーボンニュートラル領域への更なる事業展開と収益化を推し進め、既存事業分野のリスクマネジメントを徹底するとともに、特にEPC統合デジタルツインの一環であるAWP(Advanced Work Packaging)を実際のプロジェクトで適用開始しており、DXoT(Digital Transformation of TOYO)ツールの使用案件を本格的に拡大して、収益性を向上し、自己資本の拡充を図り、2025年度までの復配を目指します。
(リソース配分の全社最適化とグループ間連携の推進)
当社は本年4月に大規模な組織改正を行い、カーボンニュートラル社会に向け急激に変化するビジネス環境において機動的に顧客ニーズに応えられるよう、長らく続けてきた事業本部制を解消し、全社的観点から要員リソースをプロジェクトや事業アクティビティに配分する体制としました。また当社グループは、自律的にEPC案件を受注して遂行できる国内外のEPC拠点を有していることが大きな強みであり、様々なEPC知見を有する拠点人財をグループレベルで活用できるよう、各拠点との連携も推進しています。
当社は今般、社長の諮問機関である経営執行会議の付属委員会として事業ポートフォリオ委員会を新たに設置し、これらの実行体制を整えました。また全社的な最適なリソース配分では、社員一人一人がその潜在能力をいかんなく発揮し充実したキャリアを積むことは育成と個々人のモチベーションの観点からも重要であり、人事評価・処遇制度の見直しも行い、社員と当社がともに成長できる環境の構築を目指し、人的資本経営を更に深化させていく予定です。
(4) 2024年3月期連結業績予想
受注高については、「(2)経営環境」および「(3)優先的に対処すべき事業上および財務上の課題」に記載した全般的状況を踏まえて算出しました。持分法適用関連会社の当社持分相当の受注目標2,000億円を含めますと、受注目標は3,200億円となります。
[本業績見通しにおける想定為替レート]
1米ドル=133円
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) サステナビリティ全般
① ガバナンス
サステナビリティを巡る課題への対応は、リスクの減少のみならず収益機会にも繋がる重要な経営課題であると認識し、中長期的な企業価値の向上の観点から、自社のサステナビリティを巡る取組みについて「サステナビリティ基本方針」(以下参照)を策定し、取締役会が適切に監督を行うための体制を構築しております。
気候変動関連をはじめサステナビリティ全般について、経営執行会議の諮問機関である「サステナビリティ委員会」にて検討・推進・モニタリングを行い、基本方針や重要事項は経営執行会議での審議を経て取締役会に付議・報告の上、決定しております。

○「サステナビリティ基本方針」
当社グループは、“Engineering for Sustainable Growth of the Global Community(エンジニアリングで地球と社会のサステナビリティに貢献する)”というミッション(使命)のもと、企業価値の持続的向上と地球社会のサステナビリティに貢献していきます。
これは多種多様な課題に対し、地球と社会の持続的成長に不可欠であるエネルギー・素材等の供給と環境保全の調和を重視した解決策を提供することがエンジニアリング会社の役割であり、その役割を果たす決意を示したものです。
当社グループは、「環境調和型社会を目指す」「人々の暮らしを豊かにする」「多彩な人がいきいきと働く」「インテグリティのある組織を作る」の4つのマテリアリティ(重要経営課題)を指針に、環境(E)、社会(S)、ガバナンス(G)の課題解決、サステナビリティに取り組んでいきます。
② リスク管理
「内部統制システムの基本方針」に基づき、事業環境の変化を含めリスクの可能性のある事象を識別し、リスクの分類、分析、評価、対応を行うプロセスおよびその所管部門、関連規程等を明確化しリスク管理体制を整備・実行しております。潜在リスクを可及的速やかに把握し対応するために、定期的に見直しを行った上で、重点リスク項目を洗い出しリスク管理を実施しております。
③ 戦略および指標・目標
「エンジニアリングで地球と社会のサステナビリティに貢献する」ことをミッションに掲げ、以下の項目を重要経営課題(マテリアリティ)として定めております。各項目において特定したリスクと機会を中期経営計画(2021~2025)に反映し、サステナビリティ課題への対応を推進しております。また、サステナビリティに向けた進捗度合いを計るため、マテリアリティごとに指標と目標を掲げ取り進めております。
(注)「役職員調査」に関する指標は、提出会社の数値です。
金融安定理事会(FSB)「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言に賛同を表明し、同提言も踏まえ戦略策定、取組みを推進しております。
① ガバナンス
気候変動に関するガバナンスについても、サステナビリティ全般でのガバナンスに組み込み、推進しております(上記「(1)サステナビリティ全般」「①ガバナンス」参照)。
② リスク管理
気候変動に関するリスク管理についても、サステナビリティ全般でのリスク管理に組み込み、推進しております(上記「(1)サステナビリティ全般」「②リスク管理」参照)。
③ 戦略
気候変動に関してTCFDの提言に沿って、主に2つのシナリオ(注)のもと、移行リスク(政策/法規制・技術・市場・評価)と物理リスク(急性・慢性)に大別、事業に影響を及ぼす重要な要因を選定・分析し中期経営計画などの戦略策定に反映・活用しております。
特に技術、製品・サービスや市場については、①中長期的には、クリーン燃料への転換による石油ガス関連や石化関連での従来型プラントの機会の減(短中期的には、トランジッションでの機会増)の一方、新製法等による非従来型プラントの機会の増、②アンモニア・水素/合成ガス技術/CO2資源化等のノウハウ・実績を活用した機会の増(短中期的には実証、中長期的には本格実装)、③省エネ、廃プラ・再生プラ等の循環型分野や高機能素材分野への機会の増(短中長期)と捉えております。
(注)主に国際エネルギー機関(IEA)による①2.6℃シナリオ(気候変動の公表政策ベースSTEPS)と②1.5℃シナリオ(2050年ネットゼロ達成ベースNZE)参照のもと分析しております。
④ 指標と目標
GHG排出量削減に関し、以下の目標を掲げ取り組んでおります。
2022年の排出量(Scope1&2)は2.17t-CO2/人(約13,700t-CO2)であり、海外拠点での旺盛な活動を主因に基準年2021年比で約16%増加となっておりますが、各種取組みにより目標達成に向け努力していきます。
(注)2021年の基準年含め、当社ブラジル拠点の持ち株比率を考慮した排出量を集計しております。
(3) 人的資本に関する取組み
①人材の育成および社内環境整備に関する方針、戦略
<人的資本に関する基本的な考え方>
当社中期経営計画の両輪の戦略である「新技術・事業開拓」戦略と「EPC強靭化」戦略においては、これまでのEPCで培った知見と経験に加え、多様なバックグラウンドやノウハウを持つ人財の確保・育成が不可欠であると認識しております。このため、当社では人財を最も重要な経営資源と位置付けるとともに、マテリアリティの1つである「多彩な人がいきいきと働く」組織を目指しております。
<多様性に関する方針>
当社はこれまでも事業環境の変化や市場の動きに対応するため、多様な人財の確保・育成に取り組んでまいりましたが、上記の中期経営計画の戦略を推進し課題を実現するため、下記の通り女性、外国人、キャリア採用者の管理職への登用等、中核人財の多様性に関する指標を設けるとともに、多彩な人財が活躍できる環境の整備に取り組んでまいります。
<環境整備に関する方針>
当社では、社員に対してチャレンジングな業務の付与やキャリアプランに基づく異動による経験の拡大を促進し、成果に対しては賞与、抜擢昇格、表彰等によって報いることで「やりがい」を提供する一方で、リモートワーク制度や育児・介護休業制度など多様な働き方に応じた環境の整備により「働きやすさ」を確保することで社員のエンゲージメントを高め、社員が持続的に能力を発揮できる環境の整備に努めていきます。
<採用活動>
社内では得られない知見を持った人財を獲得するため、従来重視してきた新卒採用に加えて近年ではキャリア採用に注力しております。また、入社後の迅速な活躍やエンゲージメント向上のため、キャリア採用者を対象に最長1年間のオンボーディングプラン(早期定着・戦力化のための支援プログラム)を実施しております。採用活動は特定の国籍、性別、言語に偏重することなく、本人の個性、能力、キャリア志向等に基づき実施することを重視しております。
<人財育成>
社員の多角的な視点や幅広い分野での経験を重視する観点から、各人のキャリアプランに基づく若手・中堅のローテーションを促進しているほか、一定期間ごとにマネージャー層とキャリアに関しての面談を実施し、主体的なキャリアの選択・開発を後押ししております。特に若手に対しては、講義形式の研修や建設現場・海外グループ拠点への派遣による知識・経験の付与に加えて、入社後一定期間のメンタリングの機会を設けることで日々の業務を通した早期育成を図っております。
② 人材の育成および社内環境整備に関する方針に関する指標の内容並びに当該指標を用いた目標および実績
投資者の判断に重要な影響を与える可能性のあるリスクの内容および程度につき当社グループが認識している事項は以下のとおりであります。但し、列挙した項目は例示であり、限定的なものではありません。また、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。
当社グループの事業遂行に当たっては、適正な仕事量を確保するために受注活動を行い、プロジェクトの損失を防止するために、見積り段階から受注プロジェクトの完了の過程に至るまで、様々な形でのリスクマネジメント体制を、コーポレートガバナンスの一環として構築、維持しておりますが、以下のような事態が発生すると、それに起因して受注額が大きく減少したり、プロジェクトの中断、中止、あるいはプロジェクト採算の著しい悪化によって、当社グループの経営成績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
① 業務実施国、地域での、戦争、内乱、暴動、テロ、著しい治安悪化等の非常事態の発生、伝染病の蔓延、天変地異、異常気象等の不可抗力事由
② 許認可、通関、出入国管理、為替制度、通信、税務等、現地国の通商、貿易、金融政策の著しい変更
③ 為替レートの著しい変化
④ 機器・資材調達、輸送、工事等に係る価格の著しい高騰、需給ひっ迫
⑤ プロジェクトの主要発注先あるいは契約パートナーの信用不安
⑥ 当社グループの事業分野における投資活動の世界的規模での大幅な縮小、競合激化による受注機会の急激な減少
当社グループはこのようなリスクに対して、事前の情報収集を密にして事態の把握に努めることによって可能な対応策を検討するとともに、貿易保険の付保、為替予約、顧客との契約条件の設定(契約形態の多様化、契約建値の設定、支払い条件、顧客とのリスク分担条項等)、機器・資材の調達先や工事発注先の分散化等、可能な対策を講じて、リスクの軽減に努めております。
特に新型コロナウイルス感染症は世界的に収束してきていますが、新たな変異株や、新規感染症のリスクが発生した場合は、当社グループのエンジニアリング事業の遂行に影響を与える可能性があります。感染症が発生した場合、当社グループは、協力会社を含めた従業員およびその家族、更に地域の方々の安全を最優先とし、テレワークや時差出勤の推奨、事業所および建設現場内での感染拡大防止対策に取り組み、また事業活動に与える影響を最小限とすべく、事業構造の変革、新規事業機会の創出、サステナビリティの強化といった施策に取り組んでまいります。
当社グループは、グローバルに事業活動を行っているため、国際紛争によって、様々な影響を受ける可能性があります。特に現下のロシア・ウクライナ情勢および関連するロシア経済制裁は、引き続き原材料価格の上昇や供給物流面での制約等が発生しており、国や地域、案件によって状況は異なりますが、当社グループでは、その影響を最小限に留めるべく種々の施策を講じてリスクを最小限にするよう努めております。工事原価については、個別に状況を精査した上で想定される影響額を織り込んでおります。また当社グループは、各国のロシア制裁法を順守するとともに、ロシア以外のビジネス機会の多いインド、中国、ブラジル、シンガポール、日本といった重点地域に経営資源を振り向け、地政学要素を見極めながら安定的な事業運営に向けて取り組んでおり、業績への悪影響を最小限に留めるよう努めております。北朝鮮や台湾情勢については、引き続き状況を注視しております。
(4) コンプライアンスに関するリスク
当社ビジネスは、国内外の労働法規、個人情報保護制度、税法、輸出入管理規制、不正競争防止法等の広範な法律や規制に服しており、これらの法令の変更、予測しえない解釈等により、法令遵守対応の負担が増加する可能性があります。法令に違反する行為または疑義を持たれる行為が万が一発生した場合、当社グループに追加の負担、営業の中断や信用の低下等が発生し、当社グループの業績に悪影響を及ぼす恐れがあります。当社グループはこのようなリスクに対して、役職員行動規範、コンプライアンス・マニュアル等の周知徹底、当社グループ統一の内部通報制度の整備・運用、および、Chief Compliance Officer(CCO)を委員長とするコンプライアンス委員会を中心とした啓蒙・推進活動の実施により、法令遵守体制の強化に努めております。
(5) 情報セキュリティに関するリスク
当社グループは、当社グループおよび当社グループと取引関係にある法人または個人の技術上および営業上その他の業務上の企業秘密情報および個人情報を保持・管理しておりますが、コンピューターウイルスの感染、外部からの不正アクセスやサイバー攻撃等によりシステム障害、情報の漏洩、破壊または改ざん等があった場合には、当社グループの業績に悪影響を及ぼす恐れがあります。当社グループは、情報資産マネジメント規程およびHSE・品質・情報セキュリティ基本方針に従い、事業継続のために必要な情報セキュリティに関する管理計画の策定・維持、SQE統括担当部門による各部門の情報セキュリティマネジメント活動の推進、情報セキュリティマネジメントに関する啓発教育、各部門の情報セキュリティマネジメント活動の監査および監査結果のICT委員会への報告等を行い、リスクの軽減に努めております。
当社グループは、新会社の設立や事業会社の買収等の事業投資を行うことがあります。それらの事業投資において多額の資本拠出や投資先に対する貸付・保証等の信用供与を行う場合がありますが、事業環境の変化等により、業績の停滞等に伴い投資にかかわる損失が発生するリスクがあります。当社が出資しているグループ各社の事業運営に関しては、グループ経営管理部門がグループ会社の状況を適時に把握するよう努めており、上述のようなリスクが起こらぬよう努めております。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社および持分法適用関連会社)の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」と記載します。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態および経営成績の状況
a. 財政状態
(流動資産)
当連結会計年度末における流動資産の残高は2,227億円で、前連結会計年度末から159億円増加しております。現金預金が163億円増加したことなどが主な原因であります。
(固定資産)
当連結会計年度末における固定資産の残高は335億円で、前連結会計年度末から4億円減少しております。無形固定資産が12億円増加した一方で、投資その他の資産が26億円減少したことなどが主な原因であります。
(流動負債)
当連結会計年度末における流動負債の残高は1,747億円で、前連結会計年度末から154億円増加しております。未成工事受入金が163億円増加したことなどが主な原因であります。
(固定負債)
当連結会計年度末における固定負債の残高は324億円で、前連結会計年度末から45億円減少しております。長期借入金が52億円減少したことが主な原因であります。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産の残高は491億円で、前連結会計年度末から45億円増加しております。親会社株主に帰属する当期純利益を16億円計上したほか、為替換算調整勘定が25億円増加したことなどが主な原因であります。
b. 経営成績
(完成工事高)
当連結会計年度における完成工事高は、主に複数の国内向けバイオマス発電所、インド向けアンモニアプラント、インド向け石油化学プラント等のプロジェクトの進捗により構成されていますが、一部プロジェクトの進捗が若干想定を下回った結果、前連結会計年度比100億円(5.0%)減の1,929億円となりました。
(完成工事総利益)
当連結会計年度における完成工事総利益は、完成工事高は減少した一方、完成工事総利益率が向上した結果、前連結会計年度比34億円(16.5%)増の242億円となりました。
(営業利益)
当連結会計年度における営業利益は、販売費及び一般管理費は増加した一方、前述の完成工事総利益が増加した結果、前連結会計年度比18億円(60.8%)増の47億円となりました。
(経常利益)
当連結会計年度における経常利益は、為替差損を計上した一方、前述の営業利益が増加した結果、前連結会計年度比7億円(24.4%)増の38億円となりました。
(税金等調整前当期純利益)
当連結会計年度における税金等調整前当期純利益は、前連結会計年度比7億円(24.4%)増の38億円となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
当連結会計年度における親会社株主に帰属する当期純利益は、子会社等の税金費用を22億円計上した結果、前連結会計年度比0.2億円(1.6%)増の16億円となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」と記載します。)は、前連結会計年度末と比較し60億円増加し、958億円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益38億円の計上、未成工事受入金の増加などにより、結果として155億円の資金増加(前連結会計年度は67億円の資金減少)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、定期預金の預入による支出、無形固定資産の取得による支出などにより、94億円の資金減少(前連結会計年度は78億円の資金減少)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金の収支などにより、15億円の資金減少(前連結会計年度は76億円の資金増加)となりました。
③ 生産、受注および販売の実績
a. 受注実績
当連結会計年度における当社および当社の連結子会社の受注実績は次のとおりであります。
(注) 1 期中完成工事高は、外貨建受注工事高のうち期中完成工事高に係る為替差分(前連結会計年度7,523百万円、当連結会計年度6,486百万円)を含んでおります。
2 次期繰越工事高は、前期以前に受注した工事の契約変更等による調整分(前連結会計年度△7,742百万円、
当連結会計年度△7,378百万円)を含んでおります。
3 ※印は、外貨建契約に関する為替換算修正に伴う増減額を示しております。
(参考情報) 当連結会計年度における持分法適用関連会社の当社持分相当の期中受注工事高は43,229百万円、次期繰越工事高は43,273百万円であります。
当連結会計年度の受注実績は、インド向け石油精製プラント、国内向け医薬関連製品製造プラント、中国向け石油化学プラント等を受注したものの、受注高は2,110億円(前連結会計年度比23.1%減)に留まり、期初の受注目標2,500億円を下回る結果となりました。なお、持分法適用関連会社の当社持分相当の受注高432億円を含めますと、2,542億円となりました。
なお、提出会社における受注実績は次のとおりであります。
(注) 1 期中完成工事高は、外貨建受注工事高のうち期中完成工事高に係る為替差分(前事業年度1,606百万円、当事業年度2,742百万円)を含んでおります。
2 次期繰越工事高は、前期以前に受注した工事の契約変更等による調整分(前事業年度△6,874百万円、当事業年度△6,495百万円)を含んでおります。
3 ※印は、外貨建契約に関する為替換算修正に伴う増減額を示しております。
b. 売上実績
当社グループはEPC事業のみの単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
主な相手先別の売上実績および総売上実績に対する割合は、前連結会計年度、当連結会計年度ともに当該割合が100分の10以上を占める相手先が存在しないため、記載を省略しております。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
a. 財政状況
概要は「(1)経営成績等の概要 ①財政状態および経営成績の状況 a.財政状態」に記載したとおりです。
現金預金等の増加の影響等により、総資産の残高は2,563億円となり、前連結会計年度末から154億円増加しました。総負債につきましても、未成工事受入金等の増加に伴い、残高は前連結会計年度末から109億円増加の2,072億円となりました。純資産につきましては、親会社株主に帰属する当期純利益16億円の計上による株主資本の積み上げ、その他の包括利益累計額において為替換算調整勘定等の増加に伴い、残高は前連結会計年度末から45億円増加の491億円となりました。この結果、自己資本比率は19.1%となり、前連結会計年度の18.4%から若干改善しました。
b. 経営成績
概要は「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)経営環境」および「(1)経営成績等の概要 ①財政状態および経営成績の状況 b.経営成績」に記載したとおりです。
当期の期初に公表した業績見込みとの比較は以下のとおりです。
持分法適用関連会社の当社持分相当の2023年3月期受注実績は432億円となりました。
完成工事高につきましては、期初業績予想値2,100億円に対し、170億円減収の1,929億円となりました。円安による若干の増収があった一方で、一部案件の受注時期の遅れ、一部プロジェクトにおいて期初時点で想定していた進捗率を若干下回ったことによるものです。
営業利益につきましては、完成工事高の減収による減益影響がある一方で、円安による増益、主に海外子会社が手掛ける複数プロジェクトにおける採算の改善により、総利益率が上がったこと、販管費の改善等により、期初業績予想値20億円に対し、27億円増益の47億円となりました。
経常利益につきましては、為替変動リスクのヘッジ目的で締結している為替予約において円安の影響により営業外損益段階で為替評価損の発生があったこと、持分法適用会社が手掛ける一部プロジェクトにおいて期初時点で想定していた進捗率を下回ったことから、営業外損益段階では13億円の減益となり、結果として、円安による損益影響が相殺され、期初業績予想値25億円に対し、13億円増益の38億円となりました。
親会社株主に帰属する当期純利益につきましては、海外子会社の収支向上に伴う税金費用を計上した結果、期初業績予想値15億円から1億円増益の16億円となりました。
経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「3 事業等のリスク」に記載したとおりです。
当社グループは、2021~2025年度の5年間にわたる中期経営計画を推進しており、「EPC強靭化」と「新技術・事業開拓」の2つの戦略を軸に、段階的な取り組みを進めております。
また、当社グループの経営成績における先行指標となります受注実績の概要につきましては、「(1)経営成績等の概要 ③生産、受注および販売の実績」に記載のとおりです。「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)経営環境」に記載した状況を受けて、当連結会計年度の受注実績は2,110億円に留まり、期初の受注目標2,500億円を下回る結果となりました。なお、持分法適用関連会社の当社持分相当の受注高432億円を含めますと、2,542億円となりました。
分野別では、「化学・肥料」分野の受注実績が804億円(受注実績合計に対して38.1%)と最も大きく、以下、「石油・ガス」分野の受注実績が611億円、「石油化学」分野の受注実績が264億円となりました。
なお、当社グループはEPC事業のみの単一セグメントであり、セグメント別の記載を省略しております。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に関わる情報
a. キャッシュ・フローの分析
当連結会計年度における現金及び現金同等物の期末残高(以下「資金」と記載します。)は、主に営業活動による資金の増加155億円、投資活動による資金の減少94億円等の影響により、前連結会計年度末から60億円増加し、958億円となりました。
概要は「(1)経営成績等の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載したとおりです。
営業活動による資金の増加の主な要因は、進行中の一部のプロジェクトにおいて顧客からの入金が先行したことなどによるものです。
b. キャッシュ・フロー指標のトレンド経営成績
(注) キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い
* 各指標はいずれも連結ベースの財務数値により計算しております。
* キャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フローを使用しております。
* 有利子負債は連結貸借対照表に計上されている負債のうち、利子を支払っている全ての負債を対象と
しております。
c. 資本の財源および資金の流動性に関わる情報
当社グループは、現金及び現金同等物ならびに営業活動によるキャッシュ・フローを資金の源泉としております。資金需要の主なものは、進行中プロジェクトの遂行に関わる機器資材の購入や外注費等の費用、従業員給料手当等の人件費、営業費用・DX・研究開発に係る活動費といった販売費及び一般管理費、IT基盤の充実に関わる設備投資等となります。将来の成長のため、財務規律の徹底を図りつつ、DX・研究開発に係る活動費および投資支出の拡大を計画しております。
当社グループは、円滑な事業活動のための適切な資金調達、適切な流動性の維持および健全な財務状態の維持を財務方針としており、資金需要に対して必要充分な水準の手元流動性を確保すべく、自己資金のほか、銀行からの借入による資金調達を行っております。当連結会計年度末の資金残高は958億円となり、必要な流動性水準を維持しました。
なお、安定的な経常運転資金枠の確保、マーケット環境の一時的な変化等の不測の事態への対応手段確保の観点から、取引銀行10行と総額90億円の貸出コミットメント契約を締結しております。なお、これら契約に基づく当連結会計年度末の借入実行残高はありません。
当社グループの財務上の喫緊の課題は、第一に自己資本をいち早く回復させ、企業価値向上への安定成長軌道に乗せることです。総合エンジニアリング会社として、EPC事業を行う上でのリスクに充分耐えうる財務基盤が必要です。この観点から、自己資本比率は25%超、自己資本は2013年度末頃の水準の600~750億円のレンジまで積み上げることが当面の目標です。
また、持続的な企業価値向上の観点から資本効率を重要課題と認識し、ROEについては2025年度以降、安定的に10%超とすることを目標としております。
③ 重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、経営者による会計方針の選択や適用、また、資産、負債、収益および費用の報告額に影響を与える見積りおよび仮定を用いております。経営者は、これらの見積りおよび仮定に基づく数値について過去の実績や状況に応じ合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性が存在する為、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。
連結財務諸表に与える影響が大きいと考えられる項目・事象は以下のとおりです。
なお、なかでも特に重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
(a)完成工事高および完成工事原価
「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り) 1 一定の期間にわたり履行義務を充足し認識する収益」に記載しております。
(b)工事損失引当金
当連結会計年度末において損失の発生が見込まれる未引渡工事に係る将来の損失に備えるため、その損失見込額を計上しています。工事施工の途中において見積りを超える原価が発生した場合、引当金の追加計上、追加損失の計上が必要となる可能性があります。
(c)貸倒引当金
営業債権、貸付金等の貸倒れによる損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率に基づき、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に債権の回収可能性を検討し、回収不能見込額を引当金として計上しています。顧客の財政状況が悪化し、その支払い見通しが変動した場合、引当金の追加計上または貸倒損失が発生する可能性があります。
(d)退職給付に係る資産または負債
退職給付債務および退職給付費用は、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算定しており、これらの前提条件には、割引率、予定昇給率、退職率、死亡率および年金資産の長期期待運用収益率等が含まれます。前提条件の変動により、将来の退職給付に係る資産または負債、および退職給付費用の金額に影響を与える可能性があります。
(e)繰延税金資産
「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り) 2 繰延税金資産の評価」に記載しております。
技術導入契約
次の重要な技術導入契約は形式的には2022年11月にて契約期間が終了しておりますが、両者間にて契約の更新に向けて、交渉が継続しております。
(提出会社)
現在締結している主要な技術導入契約は次のとおりであります。
当連結会計年度において、当社グループは研究開発費
《新たなビジネス・商品開拓》
IoT分野では、デジタル基盤を介したプラント運営支援を目指し、DX-PLANT®のソリューション深化と拡販を進めております。そのためにシステム基盤を構築し、工場オーナーにとって導入しやすく、その要求に柔軟に対応できる体制を整えました。2022年度は新たに、海外の1件の肥料工場への導入を行い、計9件の導入実績となりました。また、尿素プラント向け運転監視・最適化システム(PMOS®)や、エチレン分解炉の運転状態予測・最適化支援システム(RL-Tracker®)など、当社の知見を活かした高付加価値ソリューションの運用を行っております。今後は尿素・エチレン等の化学工場に加え、カーボンニュートラル関連施設にも適用のアプローチを拡げるとともに、更に技術支援サービスにおけるDX(Digital Transformation)技術の活用など新しい顧客支援領域を拡張し、顧客のプラント運営の収益改善に貢献してまいります。
環境・省エネ分野では、脱炭素社会に貢献すべく、革新的省エネルギー蒸留システム“SUPERHIDIC®”に加え、プラントを構成するプロセス系・用役系を省エネ・GHG排出削減の観点から数学的に同時最適化するコンサルタントサービス“HERO(Hybrid Energy system Re-Optimization)”のビジネスを積極的に展開しております。“SUPERHIDIC®”は経済産業省『先進的省エネルギー投資促進支援事業』における先進設備・システムに認定され、国内の製造者により導入頂き易くなりました。“HERO”では国内外の顧客から複数の案件を受注し、優れた投資対効果が期待できるGHG排出削減案を提案しております。2023年度においても両技術を用いた大規模な温室効果ガス削減に繋がる案件が期待されております。
世界的に急速に加速しているGHGのゼロエミッション実現に向け、エネルギー変革も促進される現在、CCUSはCO2排出削減に不可欠な技術となっております。当社は、CO2の分離回収・利用・貯留に関する技術分野において、国内外の協業パートナーと連携を行い、CCUS案件の実現を図っております。当社が推し進めているカーボンニュートラルバリューチェーン事業においては、グリーン燃料に加え、CCS/CO2-EORを組み合わせることにより、CO2オフセットされたブルー燃料の実現を推進しております。2022年度より東証市場再編後のプライム市場上場会社に気候変動によるリスク情報の開示(TCFD提言)が実質的に義務付けられ、今後益々、企業のCO2削減努力が求められていきます。特に、CO2削減に向けた喫緊の対策が必要となる石炭火力、石油精製、金属製錬等の分野の顧客を支援すべく、CCSのみならず、CO2利活用の分野にも取り組んでおります。また、日本CCS調査株式会社への出資・派遣などの対外的な活動も引き続き実施いたします。
次世代環境技術分野では、バイオマス燃料製造において、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託を受け、三菱重工業株式会社、株式会社JERA、および国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)と共同で、木質系バイオマス等を原料としたバイオジェット燃料を合成する一貫製造実証プロジェクトに参画しております。JERA新名古屋火力発電所構内に設置した実証プラントで、当社パートナー企業と共同開発した小型FT(Fischer-Tropsch)合成技術(一酸化炭素と水素から触媒反応を用いて液体炭化水素を合成する)を用いて持続可能な航空燃料(SAF:Sustainable Aviation Fuel)を製造し、世界で初めて商用定期便に供給した実績をもとに、引き続きNEDOの助成を受け、株式会社JERA、三菱重工業株式会社、伊藤忠商事株式会社と共同で、国内における将来のSAF供給の一端を担うべく、商業規模での製造技術確立とサプライチェーン構築検討を進めております。
水素燃料キャリアとしてのアンモニア利用技術開発の一環として、一般社団法人クリーン燃料アンモニア協会(CFAA)に理事会員として参画しており、CO2フリーアンモニアサプライチェーン実証を目的として、石炭火力発電所等でのアンモニア混焼によるCO2排出低減や海外でのアンモニアバリューチェーンの事業化について検討を継続しております。
2022年度に「正確な燃料アンモニア関連情報の発信や,安全性などの社会受容性の向上等に向けた広報活動の検討・推進」を目的としてCFAA企画運営委員会に新設された広報WGのリーダーとして燃料アンモニアの早期社会実装に向けた活動も推進しております。
アンモニア利用による化石燃料代替技術として、三井化学株式会社、丸善石油化学株式会社、双日マシナリー株式会社と共同で、エチレン分解炉におけるアンモニア燃料実用化研究開発に取り組んでおります。本開発は、燃料アンモニア利用を促進するとともに、エチレン分解炉のカーボンニュートラル化によって石化セクターのCO2排出量の大幅削減を目指すものであり、グリーンイノベーション基金によるNEDO実証事業として採択されました。2022年4月より共同実施者の双日マシナリー株式会社が分解炉に装着されるアンモニア燃焼バーナーの開発を開始し、同時に当社は小型の分解炉(試験炉)の基本設計に着手し、2022年10月からは実施してきた基本設計をもとに試験炉建設の為の詳細設計に取り組んでおります。
もう一つのエチレン分解炉のCO2排出削減技術として開発を進めていた当社独自の分解炉の電化技術(e-FurnaceTM®)については、NEDOの国際実証事業の第一段階調査事業として技術調査および経済性調査を実施し、本事業を完了いたしました。本調査で得られた知見をもとに、分解炉電化技術の確立と社会実装に向けた検討を加速させてまいります。
2020年度からは、早期水素社会を構築することを目的とした水素バリューチェーン推進協議会に参画し、水素利用の社会実装に向けてプロジェクトの提案、需要創出、法令整備等の政策提言などについて検討しております。
また、NEDOの委託を受けて、海外の水素製造技術の調査を行い、2021年度は中間調査報告書を提出いたしました。2022年度は海外水素ベンチャーの水素製造装置を用いた実証試験を実施する予定でしたが、デモプラント建設の遅延に伴い実証試験は2023年度に実施する予定です。
人工光合成水素を活用するプロセス開発においては、生成ガスを効率的に分離する当社の技術開発が順調に進んでおりましたが、共同研究先の光触媒の早期実用化が期待できないことから、当該開発を一旦凍結することといたしました。なお、今後優れた光触媒が開発され、その生成ガスの分離に関して協力を求められる場合は、当社技術を提供できる可能性があるため、関連技術開発の状況調査は継続いたします。
回収CO2の利活用については、CO2とグリーンH2を原料とする新型メタノール合成やメタネーションを中心としたCO2固定化の検討を続けております。例えば、CO2とH2を原料とするメタノール関連では、当社が保有するメタノール製造技術を活用したg-Methanol®を用いて国内外での具体的な案件に取り組んでおります。また、お問い合わせが多い10t/日から数100t/日までのFeasibility Study結果を数パッケージ取り揃え、多くのお客様に対応できる体制を構築しました。
また、東芝エネルギーシステムズ株式会社、株式会社東芝、出光興産株式会社、全日本空輸株式会社、日本CCS調査株式会社と共同でCO2電解技術とFT合成技術を組み合わせてSAFを製造する炭素循環ビジネスモデルの実現に取り組んでおります。本取組みは、環境省の2021年度採択の委託事業として、脱炭素化の促進と地域振興を両立させるべく検討を進めております。当社は実証および商用プラント建設に備えて2022年度はその基本計画を進めており、2023年度も継続する予定です。
資源循環分野では、世界的なプラスチック廃棄物の問題解決と循環型社会の実現に寄与するために,当社は,廃プラスチックリサイクルの技術開発を進めております。特に、熱分解油化によるケミカルリサイクルを中心に検討を進めており,タイのSCGケミカルズが60%出資しているCircular Plas Company Limited(CirPlas)と同社が保有する混合廃プラスチックの油化技術の商業化に向けた共同検討に関する基本合意書を2022年度に取り交わしました。現在は、CirPlasと共同で実証プラントのスケールアップによる商業化と、外販のためのライセンス供与開始を目指し,技術実証や大型化検討に取り組んでおります。
原子力分野では、廃炉先進国ドイツで使用済燃料や廃棄物の貯蔵技術、同施設運営の実績を有するゲゼルシャフト原子力サービス(GNS)社との協力関係を継続するとともに、英国で廃炉関連実績を有するJacobs社との協力関係を進め、国内の廃炉分野で主にプロジェクト・マネージメント、エンジニアリングサービスに関する共同提案を行うなどの取組みを継続しております。また、廃止措置業務支援として、廃止措置計画、廃棄物管理最適化を含めた全体統合管理システムツール構築を目指し、社内DX技術や社外最新技術情報を入手し、システムの開発を行っております。具体的には、レーザースキャンにより設備を3Dモデル化し視覚的に解体・解体物量集計を行うプラント解体システム開発を進めております。
《各事業のビジネス戦略強化》
尿素プロセス“ACES21®”は、当社が開発した保有プロセスであり、大型化と省エネを図るためのプロセス改良に取り組んでおります。このたび革新的次世代尿素プロセス「ACES21-LP®」を発表しました。ACES21-LP®は、従来のACES21®の特徴を維持しながら、競合プロセスを含め最も低い合成圧力と最も高いCO2転化率を同時に実現する先進的プロセスです。ACES21-LP®は、ACES21®の優れたプロセスコンセプトと最先端の低圧合成技術を組み合わせることで現ACES21®から更なる原料昇圧動力削減・プロセス効率向上によるエネルギー消費減と、合成機器軽量化によるプラントコスト削減を実現し、低コスト尿素製造と地球環境保全に貢献する技術です。本年度はACES21®プロセス案件としてインド向け尿素製造設備(3,850t/日)の性能試験を完了し商業運転を開始いたしました。今後も一層のプロセス改良に取り組むとともに、DX-PLANT®のソリューション深化と展開を図ることによる設備の運転および保全の最適化やカーボンニュートラルに向けた尿素プロセスの開発も推進してまいります。
鉄道分野では、鉄道システムインテグレーター(鉄道SI)を目指して約15年前から本格的な取組みを開始し、当社初の鉄道EPCプロジェクトであるジャカルタMRTが2019年に完工いたしました。本プロジェクトで得た鉄道SI関連技術や経験を活かし、海外鉄道プロジェクトへの取組みを積極的に行なってまいりましたが、当社の目指す鉄道SIに相応しい案件を見出すことが難しく、新規案件への取組みを保留しております。
バイオマス発電分野では、完工済みもしくは現在進行中の複数の50MW/75MW案件の知見・ノウハウを生かし、50MW/75MW案件と同じCFBボイラ(Circulating Fluidized Bed:Andritz社製)とSTG(Steam Turbine Generator:Siemens社製)の組み合わせで112MW案件へのスケールアップへの取組みを開始しております。また、本分野のEPCを行うことで蓄積した技術や知見を活かし、発電事業参画やアフターサービス事業、更には燃料供給事業等への展開も検討し、バイオマスバリューチェーン構築に取り組んでまいります。更に、国内での実績・知見を活かし、当社の海外EPC拠点やローカルパートナーとも連携して、海外でのバイオマス発電案件にも積極的に取り組んでまいります。
海洋資源開発の分野では、近年急速に需要が高まるデジタル機器、再生可能エネルギー設備、ハイブリッド車や電気自動車等の電池材料、磁気材料等に欠かせないレアメタル・レアアース等の鉱物資源を深海から回収する国策技術開発の支援を行ってまいりました。内閣府戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)のもと、国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)が率いる日本勢は、大水深6,000mからレアアースを回収するプログラムを進めております。ここでは、当社はこれまで培ってきた資源開発技術やサブシー技術を活用してレアアース泥回収システムの技術開発に携わっております。具体的には、2019年度の概念設計、2020年度の基本設計に引き続き、2021年度には「レアアース泥回収用解泥・揚泥機の製作」業務をJAMSTECから受託し、2022年度に実証試験の実施をサポートいたしました。従来のメタンハイドレート開発への取組みも継続するとともに、統合的な海洋資源開発に向けたビジネス強化を進めております。
医薬品分野では、テックプロジェクトサービス株式会社(100%出資子会社)が、医薬品製造企業の多様なニーズに応えるエンジニアリングサービスを提供するとともに、将来を見据えた革新的な技術開発を行っております。低分子医薬品向けの原薬連続生産技術開発では、NEDO 戦略的省エネルギー技術革新プログラムにて開発した「再構成可能なモジュール型単位操作の相互接続に基づいた医薬品製造用 iFactory」の初号機が2023年2月に竣工しました。中分子・バイオ医薬品向けには、シングルユース技術を活用した自動化装置開発を行うことで2022年度までに3件の特許を取得し、精製工程連続化の設備開発や不活化、清澄化および無菌ろ過等の各工程省力化システムを納入いたしました。
《EPC事業の基盤強化》
ICT分野では、当社の基幹ビジネスであるEPC遂行力強化や競争力強化を加速するため、2025年に向けたビジョンとロードマップ、それを実現させるためのICT中期戦略を策定いたしました。本ロードマップに基づき、Engineering, Procurement, Construction, Project Managementのそれぞれの分野において、デジタル技術を活用したデジタルツインを構築することによるマネジメント強化、設計品質の向上、納期遵守、工期短縮を図っております。デジタル技術を活用したデータセントリックなプロジェクト実行手法が海外拠点展開を含め徐々に定着してきており、2021年8月1日付で、経済産業省が定めるDX認定制度に基づき、DX認定業者に選定されました。2022年度には、エンジニアリングデータ統合プラットフォームの構築と実証も完了し、ドキュメント中心の業務からデータ中心の業務変革が加速し、更に、プロジェクト、サプライチェーン、工事の各部門が管理するデータとの統合管理によるEPCプロジェクト全体のDX化の取組みと実プロジェクトへの適用が進んでおります。また、データ利活用に関しても、業務提携先であるHEROZ株式会社と共同開発を進めていた、工事段階で発生し得る地下工事におけるスケジュール遅延リスクを3D CADモデルから検知するシステムを開発し、実案件への適用を開始しました。 引き続き、プロジェクトへのAWP(Advanced Work Packaging)実装を深化させ、プロジェクト遂行における一気通貫のデジタル化を目指し、ビジネス改革や提供価値向上を通じて社会に貢献してまいります。
工事技術分野では、上記のAWPや4D(3次元および時間軸)計画情報を使った施工性検討の実用化の他、AIを活用する事によって、地下構造物の施工性の確認や潜在的危険の検知、設計変更による対応、工事シーケンスの見直し等の工事遅延リスクの洗い出しを図っております。また、現場業務のDX化の一環として、溶接管理システムや品質管理システム他、合計11のツール開発を完成させ、実ジョブでの運用を通じ更なる改善を行っております。例えば、工事進捗を容易に把握する事を主眼においた見える化ツールを開発し、各種工事の進捗に関するKPI(Key Performance Indicator)を使用者の意図に応じ容易に更新・可視化できるようにいたしました。この機能を活用することで、問題点分析および対策立案に要する時間やその他のPC作業時間の短縮等を実現させ、現場業務の生産性の向上に寄与する等、2023年度末から適用される働き方改革に対応すべく各種施策に取り組んでおります。
また建設ICT関連技術の深掘りとして3次元レーザー測量技術を中心とした新技術の調査と運用を検討するとともに、従来の部員教育および現場作業で得られた各種知見の集約と水平展開にも注力しております。
調達分野では、品質管理業務の確実性向上とそれに伴う損失コスト極小化を目的として各種新規技術を検証し、活用しております。例えば、3Dレーザー測定技術に関しては、塔槽類の外部取付品への適用化検証および熱交換器管端溶接部の高精度測定への活用を検証しております。また、複数の国内バイオマス発電案件で発生した熱交換器チューブ欠陥による漏れへの対策として、将来的に音響パルスを使用した迅速且つ正確な欠陥検知手法の確立を目指しております。
当社では1990年代当初から、千葉県習志野市のエンジニアリングセンター敷地内に技術研究所を設け自社商品技術やEPC遂行技術の開発および強化に努めてまいりました。今般、新規事業領域での研究開発活動も勘案し、2023年度内に技術研究所を千葉市緑区に移設しその機能を強化いたします。また、新建屋屋上には太陽光発電設備を設置することで、当社の運営におけるカーボンニュートラル化とサステナビリティ推進も図ってまいります。