第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1) 会社の経営の基本方針

 当社グループは、1923年の創業以来、品質と信頼を至上とするものづくりの原点にこだわり、印刷機械メーカーとしてまい進してまいりました。その活動の中で、「感動 = Beyond Expectations」は国内外で共感を持ってグループ社員に迎え入れられてきました。これからも当社グループは「感動創造活動」を通して、「感動企業の実現」への努力を重ねることで、企業としての社会的責任・使命を全うしてまいります。

 また、株主の皆様やお客様をはじめ、取引先、地域社会、社員とその家族等、全てのステークホルダーの信頼と期待に応えるとともに、共存共栄を図ることを行動指針として活動しております。

 

(2) 会社の対処すべき課題及び中期的な会社の経営戦略と目標とする経営指標

 当社グループの事業環境につきましては、依然として不確実が高く、地政学リスクや経済の変動に対して都度、迅速な判断、軌道修正が必要となります。印刷業界においては、出版印刷分野や商業印刷分野で印刷物の減少が予測されるものの、高付加価値印刷やパッケージ印刷の需要は堅調に推移することが予測されております。特にアジア地域においてはパッケージ印刷を中心に需要が高まっており、好調に推移することが予測されます。一方で、材料費や物流費の高騰、労働力不足、気候変動対策に伴う温室効果ガス排出量削減等の課題が依然として存在しており、これらの課題に対する迅速な取組みが求められています。ワンパス両面機、多色機、検査装置等の高付加価値機能による生産性向上の取組みや、消費電力低減等の環境性能向上の取組みがより一層求められております。

 このような事業環境の中、2026年3月期は第7次中期経営計画の中間年であり、その基本骨子であるサステナブルな経営体質に向けた事業変革と経営基盤強化を推進してまいります。オフセット事業においては、環境性能向上とともに、生産性、操作性を高めた「リスロンGX/GアドバンスシリーズEXエディション」を昨年市場投入しましたが、さらなる高付加価値印刷実現に向けた両面コーター、疑似エンボス等の要素技術の市場投入を進めてまいります。また、「KP-Connect」を中核としたスマートファクトリー構想の具現化を進めており、生産現場の「見える化」「自動化」「整流化」を実現し、生産性の最大化、環境、人財不足への対応に取り組んでまいります。一方、DPS事業については、B2サイズではクラス最速となる、片面印刷毎時6,000枚の印刷速度を実現するB2枚葉UVインクジェットデジタル印刷機 「J-throne 29」を市場投入し、デジタル印刷の常識を覆す圧倒的なスピードとパフォーマンスで、世界最高クラスのROIを実現します。また、証券印刷事業については、今まで培ってきた銀行券印刷のセキュリティ印刷技術をさらに強化するとともに、国・企業・個人のアイデンティティーを守る新しいソリューションの提供を目指してまいります。PE事業は、迅速に技術開発を進めるためにパートナー企業との共同開発や産学連携によるオープンイノベーションを推進し、新たなアプリケーション開発を進めてまいります。第7次中期経営計画の骨子、財務方針、目標としている経営指標は以下のとおりです。

 

① 第7次中期経営計画の骨子

a. 事業ポートフォリオ転換に向けた取組み強化(事業変革)

 i).  基盤事業(オフセット事業/証券印刷事業)の付加価値強化による収益力向上

 ii). 成長事業 (DPS事業/PE事業) の技術基盤強化による2桁成長

b.  経営基盤強化(戦略投資)

 i).  新規市場・成長市場の獲得へ向けた要素技術開発投資の拡大

 ii). グローバル化が進む事業環境に合わせた事業体制の刷新とグローバル人財活用

c. 筋肉質な経営体質への転換(経営体質改善)

 i).  事業別製販技サービス一体体制の本格運用と資産圧縮・効率化

 ii). 販売/サービス顧客管理システム、人事システム、管理システムのグローバル対応

 

② 第7次中期経営計画の財務方針

a. 資本コストや株価を意識した経営の実現のため、経営資源の適切な配分を実施

b. ROE向上のため総還元性向を50%とし、成長投資への配分比率を高める

(収益向上・成長・サステナビリティへの積極投資)

c. 第7次中期経営計画期間中は新たに最低配当額(40円)を導入し安定配当を継続するとともに、総還元性向(50%)は維持し株主還元を重視

 

③ 第7次中期経営計画の目標とする指標(2027年3月期)

 長期ビジョン「KOMORI 2030」に沿って、2030年までに2段階でROE向上を図り、第7次中期経営計画ではその1段階目として『成長投資』と『収益確保』のバランスをとってまいります。

 第7次中期経営計画最終年度の経営目標は以下のとおりです。

a. 営業利益率: 7.0%以上

b. ROE:     6.0%以上

 

 

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

当社グループは、プリントテクノロジーを通じて社会文化を支えることにより、全てのステークホルダーに対して常に満足と感動をお届けし、経営理念である「感動企業の実現」を達成することを目指す姿としています。私たちは社会や外部環境の変化に柔軟に対応し、社会課題解決と持続発展可能な社会の創造に貢献していきます。

 


◇事業活動におけるマテリアリティ

・環境負荷の低い生産ソリューションの提供

・自動化、情報化、省人化ソリューションの提供

・社会の多様性に対応したソリューションの提供

◇企業活動におけるマテリアリティ

・持続可能な環境・社会の実現

・従業員エンゲージメントの向上

・ステークホルダーの期待に応えるコーポレート・ガバナンス

 

 

 

 

 (1) ガバナンス

当社グループは、経営の健全性及び透明性の向上を目的とするガバナンスの強化は重要な経営課題であると認識し、積極的に取り組んでおります。取組みの詳細については「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」をご参照ください。

 

 (2) 戦略

(気候変動に関する情報開示の取組み)

当社グループでは、気候変動による事業への影響を考察するために、「国際エネルギー機関(IEA)」や「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」等外部機関が公表している気候関連シナリオを参考に、シナリオ分析を行いました。分析では、「KOMORIエコビジョン」で定める2030年時点の気候変動による影響を定量・定性の両面で評価を行っております。なお、分析にあたって使用したシナリオ及び分析の結果は以下のとおりです。

 

4℃シナリオ

1.5℃(2℃未満)シナリオ

概要

21世紀末において、産業革命期頃の世界平均気温と比較して、3.2℃~5.4℃(約4℃)の気温上昇が想定されるシナリオであり、風水害等の物理的な影響が拡大及び激甚化することが想定される世界観

21世紀末において、産業革命期頃の世界平均気温と比較して、1.5℃未満(2℃未満)の気温上昇に抑えられることが想定されるシナリオであり、脱炭素化に向けた、政策規制や技術革新が進むことが想定される世界観

参考シナリオ

IEA

・Stated Polices Scenario IPCC

・RCP8.5

IEA

・Sustainable Development Scenario

・Net Zero Emissions by 2050 Scenario

IPCC

・RCP2.6

 

4℃シナリオでは、風水害等の物理的な影響が拡大、激甚化することが想定されます。当社グループの各拠点に対しても物理的な被害が発生することを想定しており、直接的な被害及び被災による営業停止については定量的な分析を実施の上、被害規模を分析評価しています。また、平均気温の上昇により、当社グループで使用する空調設備使用によるコストの増加も考えられます。

このような物理的な影響が想定される中、当社グループでは風水害等の影響を受けやすい拠点の移転や空調設備の省エネルギー化を進め、リスクの低減を図っております。

1.5℃シナリオでは、脱炭素化に向けた政策規制や技術革新の進展がそれらに伴う操業コスト及び対応コストの発生が想定されます。また、エネルギー政策の実施に伴うエネルギー需要の変化によって生じる電力価格の上昇、脱炭素への移行に伴うサプライチェーン全体での対応コストの価格転嫁から、当社グループの支出増へつながる可能性を評価しています。

このような脱炭素化に伴う影響が想定される中で、当社グループではScope1+2や製品のCO2排出量削減目標の設定をはじめとする脱炭素化に向けた取組みを行い、リスクの低減を図っております。例えば、空調や照明設備の省エネ化や太陽光発電設備、製品の脱梱包化の取組みは、電力価格の上昇や省エネ・再エネ政策、プラスチック規制の導入に対応しております。また、当社グループの製品の省エネ性能の向上やダウンサイジングを進めていることは、当社グループの製品に対する需要変化に対応しております。

その他事業機会となり得る事項として、従来型の印刷機から環境性能の高い印刷機やデジタル印刷機への移行というのは当社グループにとってリスクであるとともに、顧客ニーズの掘り起こしによる需要拡大につながると考えております。また、デジタル化の進展による電子部品の需要増加はプリンテッドエレクトロニクス分野の発展につながります。製品の研究開発への注力がリスクの低減及び事業の拡大や売上の増加といった機会につながると考え、引き続き取組みを推進してまいります。

 

区分

要因と事象

評価

当社グループの取組み状況
⇒:直近の取組み

4℃シナリオ

1.5℃シナリオ

リスク

機会

リスク

機会

・リスク対応 

〇機会対応 

●リスク/機会対応

脱炭素社会への移行に伴う影響

カーボンプライシング*

炭素税の導入をはじめとする事業コストの増加

・Scope1,2の削減目標の設定と実行
⇒Scope2マーケット基準の算定方法の採用、GHG排出量算定システム導入及びグループ管理体制の強化
・2050年カーボンニュートラルに向けた取組み

省エネ・再エネ政策

省エネルギーや再生可能エネルギーに関する政策への対応

・太陽光パネルの設置
⇒2023年MBOポルトガル工場に設置、2025年小森机械(南通)有限公司に設置予定、2026年つくばプラントに増設予定
・再生可能エネルギー由来の電力の導入

⇒2024年本社、営業・サービス拠点に導入
〇製品開発時の省エネ性能の訴求

⇒2024年印刷機本体の稼働電力を従来比約18%低減するリスロンGX/Gアドバンス EXエディションをリリース

エネルギーコストの変化*

再生可能エネルギー由来の発電方法に切りかわること等による電力価格の上昇

・製品製造時の空調及び照明設備の省エネ化
⇒つくばプラントにて空調設備の更新及び大規模なLED照明を導入
〇省エネ性能の高い製品の開発
⇒インキ供給、紙搬送装置において、消費電力を削減する要素技術を搭載

次世代技術の進展

デジタル化の進展による印刷機器の需要の変化

大~中

大~中

・製品の生産性向上によるダウンサイジング
●環境性能の高い印刷機やデジタル印刷機への移行

⇒2024年デジタル印刷機の新製品J-throne29を開発

〇プリンテッドエレクトロニクス分野における環境負荷の小さい製品の開発

⇒2023年つくばプラントにPE要素技術開発センター(PEDEC)を設立、ペロブスカイト太陽電池向け塗膜塗工装置の事業化への取組み

原材料コストの変化*

鉄の精錬方法の変化による鋳物・鋼材価格の上昇

・サプライヤーとの対話を通した代替品の調査・検討

⇒鋳物・板金の最適構造化により、製品の軽量化・コスト抑制を図る研究開発を実施中

レピュテーションリスク

気候変動への取組み状況の如何による企業評価への影響

・適切な情報開示とステークホルダーとのコミュニケーション
⇒CDP質問書(気候変動)スコアの維持・向上、統合報告書・ウェブサイト等による情報開示と投資家との対話を実施

気候変動による物理的な影響

異常気象の激甚化*

気象災害による自社拠点及びサプライチェーンの被災

・ハザードリスクのある事務所の移転と対策
・BCP対策の強化
⇒リスクマネジメント委員会のリスク管理項目に本社機能、生産拠点に係るリスクを追加 

●リスク管理項目である「本社機能、生産拠点に係るリスク」対応として、本社・サービス部門に安否確認システムを先行導入済、災害対策マニュアルも再整備中

平均気温の上昇*

気温の上昇に伴う空調設備使用による事業コストの増加

・省エネ性能の高い空調設備の導入
⇒2026年つくばプラントにエネルギー使用量を削減する省エネ型空調用熱源機の追加導入を予定

 

(注) 1.*箇所は2022年3月期の営業利益実績に対しての影響がある(考えられる)項目に対して以下の基準で定量的な評価を実施しております。

⇒大:5%以上、中:1%以上~5%未満、小:1%未満

2.定量的な評価を行っていない影響については、定性的な考察を踏まえて評価しております。

 

 

(人財の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略)

当社グループにおける、人財の多様性の確保を含む人財の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針及び戦略は、以下のとおりであります。

 

・従業員エンゲージメントの向上

当社グループが持続的に企業価値を向上し続けるためには、人財を最も重要な「資本」として位置づけ、「従業員感動」の実現を通して、従業員エンゲージメントを向上させる取組みが必要不可欠であると考えており、その根幹を"厳しくともやりがいのある"「KOMORI流働き方改革」と位置づけています。

当社グループでは「KOMORI流働き方改革」を「K-Work」と名付け、段階的に改革を実行し、グループ全体で人的資本の強化に努めています。

 

《「K-Work」の三本柱》

① 働きやすい職場環境の整備

健康で、柔軟に働くことができる職場環境

② 人財マネジメントの強化

労働意欲と能力を高める人事・教育制度

③ ダイバーシティの推進

ライフイベントに沿った両立支援及び多様な人財の登用

 

《「K-Work」の活動実績》

① 働きやすい職場環境の整備 

当社では、これまでの柔軟な働き方の取組みをさらに進化させ、2024年度にはリモートワーク及び時差出勤制度を正式に規程化しました。これにより、従業員が多様なライフスタイルや業務特性に応じて継続して働くことができる環境を整備し、働きやすさと生産性の両立を図っています。また、部門を超えた連携を促進するオフィスレイアウトの見直しや、ハイブリッドワークに対応したICT環境の整備も継続的に推進しています。

さらに、従業員の声を経営に反映させる仕組みとして、2024年度には初めてエンゲージメントサーベイを実施しました。得られたフィードバックをもとに、組織風土の改善や人財育成施策の強化に取り組んでいます。

健康経営においても、従業員一人一人の心身の健康が持続的な企業成長の基盤であるとの認識のもと、健康維持・増進に向けた施策を戦略的に展開しています。今後も、ウェルビーイングの向上を目指し、働く環境のさらなる充実を図ってまいります。

・健康経営

従業員感動を実現するためには、社員一人一人が心身共に健康で、生き生きと仕事に取り組むことが不可欠なため、当社は健康経営に取り組んでおります。具体的には、適正な労働時間管理、定期健康診断受診の徹底、特定保健指導参加の徹底、ラジオ体操実施等の健康増進、インフルエンザワクチンの職域接種による感染症対策等を実施しています。これらの取組みが評価され、「健康経営優良法人2025(大規模法人部門)」に認定されました。2023年から3年連続での認定となります。

今後も引き続き従業員の健康管理を経営的な視点で捉え、取組みの継続的な効果検証や見直しを図りながら、様々な健康課題の解決や、従業員と家族の健康維持・増進に努めてまいります。

② 人財マネジメントの強化

当社グループは、多様な人財一人一人が自律的に成長・活躍し続けられる組織を目指しています。そのために、従業員それぞれのキャリア志向に応じた成長の場を提供するとともに、やる気を引き出すことで従業員の成長を促し、それにより組織の成長へ繋げたいと考えています。当社グループは、実力と自主性を重視し、意欲さえあれば何度でも挑戦できる仕組み・環境づくりを行っています。

・グローバル人財育成の強化

当社グループではグローバル化が進む事業環境に合わせたグローバル人財活用を重点テーマとして位置付け、グローバル人財育成に取り組んでいます。年1回、執行役員、本部長クラスが出席する「グローバル人財育成協議会」を開催し、各本部の育成状況を確認、議論することで、継続的な人財育成を目指しています。また、幹部社員、中堅社員を対象とした選抜研修を実施し、「異文化適応力」と「経営管理能力」の強化を図っています。

一方で、海外現地法人を対象とした人財状況に関するヒアリングを実施し、次世代の幹部候補となる人財の発掘、特定に努めています。

・キャリア開発・評価

当社では、従業員一人一人が経営目標の一端を担っているという自覚を持ち、自らの役割と成果に責任を持って取り組めるよう、目標管理制度を運用しています。半期ごとに目標管理シートを活用し、目標設定及び評価のタイミングで上長との面談を実施することで、目標の整合性を図るとともに、評価の透明性・公正性を担保しています。これにより、従業員の成長と組織の成果を両立させる仕組みを構築しています。

また、従業員のキャリア志向を把握するために、自己申告制度を活用し、本人の意向も確認しながら、組織全体での最適な人員配置を行っています。さらに、2024年度には、社員が自らのキャリアを主体的に切り拓くことを支援する仕組みとして、社内公募制「キャリアチャレンジ制度」を導入しました。この制度は、従業員の挑戦意欲を引き出すとともに、社内における人財の流動化と組織の活性化を促進することを目的としています。

・研修・教育

当社では、「感動創造人財」「変革推進人財」「グローバル人財」という3つの人財像を掲げ、それぞれに求められるコンピテンシー(達成志向性、変革・創造力、交渉・連携力、分析的思考力、統率力、感動実践力等)を育成の軸としています。これらの人物像に基づき、従業員が自律的に成長し、企業理念である「感動企業の実現」に貢献できるよう、体系的な人財育成を推進しています。

多様な職種・年齢層の従業員が活躍する中で、各人のキャリアステージに応じたOJTや目標管理を通じた育成を行うとともに、階層別・選抜型・テーマ別の研修プログラムを整備しています。これにより、業務遂行に必要なスキルや専門知識の習得に加え、マネジメント力やリーダーシップ、グローバル対応力等、将来を見据えた能力開発を支援しています。具体的には、新入社員から経営幹部までの階層別研修、選抜型のリーダー育成研修、EQ教育、女性キャリア研修、グローバル人財育成を目的とした「グローバル小森塾」等を実施しています。これらの取組みを通じて、従業員一人一人が自らの可能性を広げ、変化の時代(VUCA)においても挑戦し続ける力を育んでいます。

・女性キャリア教育

当社では、女性従業員のキャリア形成支援を重要な人財戦略の一つと位置づけ、管理職としての役割認識やリーダーシップの醸成を目的とした「女性キャリア研修」を実施しています。本研修では、キャリアプランの策定、リーダー・マネージャーとして求められる能力や考え方の理解、自己評価と他者評価の比較、社内外の女性活躍事例の共有等を通じて、女性が自らのキャリアを主体的に描き、組織内でのステップアップを目指すための知識と意識の醸成を図っています。

また、2024年度には、女性取締役による講演会を開催しました。講演では、取締役自身のこれまでのキャリアの歩みや意思決定の背景、困難を乗り越えた経験等が語られ、参加者にとってロールモデルとしての気づきや意識改革の機会となりました。こうした取組みを通じて、当社は多様な人財が活躍できる組織風土の醸成と、女性リーダーの育成を継続的に推進しています。

 

③ ダイバーシティの推進

当社は、両立支援、次世代育成をDE&I推進の重点施策の一つと位置付け、ライフイベントに沿った制度の拡充を進めています。「仕事と育児を両立している従業員が働きやすく、やりがいを感じられる職場環境を提供することで、その従業員が保有している能力を最大限に発揮できる」という考えから、様々な取組みを行っています。

・シニア人財の活用

当社では、「常に挑戦意欲と実行力を持ち、経営課題に対し、自律・変革対応型の行動ができる人財を育成する」を人事施策としています。

適正な目標設定、業務配置及び適正な評価を行うことで、社員の能力開発と成長を支援します。

役職定年後や再雇用においても「会社が求める役割」を明確にするとともに、メリハリのある「評価(処遇面を含む)」を行うことで、意欲・能力のある社員に活躍していただきたいと考えています。

・くるみん認定

当社は、ダイバーシティ推進の一環として女性活躍推進を実施しており、2021年4月「子育てサポート企業」として、厚生労働大臣より、「くるみん」の認定を受けました。

 

 (3) リスク管理

 当社では、「リスクマネジメント規程」に基づき、経営戦略や事業戦略に想定される様々なリスクについて、CSR委員会の下部組織である「リスクマネジメント委員会」を設置し、各本部のリスク担当者と連携して取り組んでおります。リスクの特定と評価に際しては気候関連を含む経営環境のあらゆる側面リスクを抽出した上で、リスクの発生頻度と影響度で評価を行っております。リスク管理の活動計画及び評価は各本部のリスク担当者が実行し、活動進捗についてはリスクマネジメント委員会で討議され、特に重要とされたリスクはCSR委員会及び取締役会に報告・協議されます。これらのプロセスを通して特定したリスクについては個別に担当部署を定め、対策及びその実行計画を検討しリスクの未然防止や発生時の影響緩和を図ることとしており、その活動についてはリスクマネジメント委員会により進捗及び対応状況の管理を行っております。

 

 

 (4) 指標及び目標

(気候変動関連)

 当社グループは温室効果ガス(GHG)排出量の削減目標を2015年から公表しており、Scope1,2,3のGHG排出量を2018年から公表しております。従来より、Scope1+2排出量は2011年3月期を基準年として、2023年3月期には38.4%削減を達成しました。2024年3月期には、2050年カーボンニュートラル達成に向けて「KOMORIエコビジョン」を改定し、Scope1+2の排出量は2023年3月期を基準年として2031年3月期26%削減を目標として取り組んでおります。2024年3月期の排出量は、目標ベースを上回る前年比11.5%削減を達成しました。なお、Scope3の2024年3月期排出量は1,090ktとなっております。

 

 


※買収した企業のGHG排出量を買収以前に遡りGHG排出量を補正しています。

 

(人財の育成及び社内環境整備に関する方針に関する指標の内容並びに当該指標を用いた目標)

また、当社は、上記「(2)戦略」において記載した、人財の多様性の確保を含む人財の育成に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標は、次のとおりであります。

 

指標

目標

管理職に占める女性労働者の割合

2031年3月まで6

女性教育訓練受講者

2027年3月まで40以上

年次有給休暇取得率

2027年3月まで70以上

 

(注)1.労働者の男女の賃金の差異については、上位役職者が少ないことが主な理由となっております。当社はこれを課題として認識し、引き続き、現在注力している女性の活躍を推進し、多様性の確保を図ってまいります。

2.管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異についての実績は、「第1 企業の概況 5 従業員の状況 (4)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異」に記載しております。

 

 

3 【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 事業環境に関するリスク

 

① オフセット印刷市場が縮小するリスク 

 当社グループは、これまで出版、商業印刷向けオフセット印刷機を主軸に事業を展開してきましたが、印刷業界は、インターネットや電子書籍の浸透によって、特に欧米・日本では書籍、商業印刷の需要が縮小しており、商業印刷向けオフセット印刷機の売上高が減少してきております。今後、電子媒体の増加が新興国を含め世界的に急速に浸透することによって書籍、商業印刷の需要がさらに縮小した場合には、出版、商業用印刷向けオフセット印刷機の需要も縮小し、当社グループのオフセット事業の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
 一方、厚紙(加飾、医薬、中間箱)、段ボール、ラベル、軟包装等といったパッケージ市場は持続的に成長していることから、パッケージ印刷はこれからも成長が見込まれます。当社グループは、今後、オフセット事業の主力分野を商業印刷からパッケージ印刷市場への対応を強化し、製品戦略としてROIを軸とした製品ポジショニングの見直しによる競争力向上と生産体制の再構築を行い、差別化商品の市場投入、ブランド認知度の向上、ソリューション提案による領域の拡大等の施策を行ってまいります。

 

② 欧米の現地法人の収益力が弱体化するリスク

 現地法人では、電子媒体の増加に伴い、販売主力機である商業印刷向けオフセット印刷機の需要が減少傾向にあり、収益力が弱体化する可能性があります。
 そのため、オフセット印刷機の入れ替え需要の獲得、部品販売や保守サービスの推進、さらに資材及び機材販売の強化に乗り出しておリます。また、商業印刷向けオフセット印刷機の需要は漸次減少しつつも、一定の入れ替え需要は存在しております。しかしながら、印刷会社においてコスト競争力の強化が必須になっており、印刷工程の省力化、スキルフリー化が求められております。その対策として、当社グループが開発したKP-ConnectやDPSを活用し、リカーリングインカムの増大を構築すべく工程最適化ソリューションの提案による商機拡大を図ってまいります。

 

③ 海外事業に伴うカントリーリスク

 当社グループは、海外事業の展開に伴い、外国企業に対する暴動、内乱、テロ、戦争、自然災害、感染症の発生等、予測困難な外的要因により、財政状態及び経営成績に悪影響を受ける可能性があります。加えて、特定国における通商政策の変更、特に米国における関税措置(いわゆる「トランプ関税」等)や輸出入規制の強化は、当社グループの調達・販売活動に影響を及ぼすリスク要因となります。これにより、コスト構造の変動や市場アクセスの制限が生じる可能性があります。

 当社グループでは、こうしたハザードリスクや政策リスクに対し、全社的な対応方針を定め、客先対応ルールの整備、定期的な市場調査情報の取得とリスク評価を通じて、中期計画への影響分析を行う等、リスクの最小化に努めています。

 

④ サプライチェーンリスク

 当社グループでは、原材料・エネルギー、その他物価上昇に伴う値上げリスクについて、原材料やエネルギー価格の変動が事業運営に与える影響を注視しています。近年、国際情勢や為替の変動、物流費の上昇等を背景に、調達コストが高止まりする傾向が続いており、製品の価格設定や収益性に影響を及ぼす可能性があり、環境対応や制度変更に伴うコスト増加も想定され、これらが中長期的な経営資源の配分に影響を与えるリスクも存在します。当社グループは、調達先の見直しや省エネ施策の推進、製品設計の工夫等を通じて、影響の最小化に取り組んでいます。

 また、労働人口減少による廃業・事業譲渡に伴う供給リスクについては少子高齢化や人手不足の影響により、取引先の廃業や事業譲渡が増加しており、安定的な部品・資材の調達に支障をきたす可能性があります。特定の供給先への依存が高い場合、代替確保に時間を要し、生産や納期に影響を及ぼすリスクがあります。

 当社グループでは、調達先の分散や在庫管理の見直し、新規サプライヤーの開拓等を通じて、供給の安定化に取り組んでいます。

 

⑤ 製品の品質クレームにより損害が生じるリスク

 当社グループが製造・販売する製品に販売、製造、サービスに起因する製品の品質クレームが発生した場合は、補修等の損失や損害賠償による損失が発生し、さらには信用問題とともにブランドが毀損する可能性があります。
 そのため、当社グループは、「顧客視点」の総合的な品質管理として知覚品質管理を実施しております。この知覚品質管理は、「ブランド管理」を軸にし、「総合製品品質管理」、「顧客対応品質管理」、「見栄え品質管理」を行っており、顧客視点での品質保証体制を整備しております。また、グローバルCRMを活用したサービスケースの迅速な対応を体制強化してまいります。

 

⑥ 情報セキュリティの侵害に係るリスク

 情報セキュリティが侵害され、情報漏洩、データの破壊や改ざん、業務やサービスの停止等の被害が発生した場合、当社グループの業績に影響を与えるのみならず、当社グループへの信用失墜に繋がる可能性があります。
 そのため当社グループは、情報セキュリティの推進に係るポリシーを「情報セキュリティ基準」や具体的な利用・運用ルールの要領として定めるとともに、推進組織として情報セキュリティ委員会を設置し、国内外グループ会社を含めセキュリティ体制の構築、維持、整備を行っております。また、定期的な脆弱性診断やリスクアセスメントを実施することにより、リスクを早期に発見し、対策を講じる体制を構築しております。また、一般従業員向けメール訓練や教育も実施する等のリスクを未然に防ぐ対応も実施しております。
 今後も脅威動向の変化を捉え、サイバーセキュリティ対策への取組みを継続してまいります。

 

(2) 成長事業に関するリスク

 

① DPS事業の拡大が停滞するリスク

 印刷業界では、印刷品質と生産性の両面においてデジタル印刷機への需要が根強く、当社グループとしても引き続きプロユース向けデジタル印刷機の商品化に取り組んでおります。

 コニカミノルタ社と共同開発したB2サイズのデジタル印刷機「Impremia IS29」については、技術課題を克服し、製品としての完成度が向上しております。B2サイズ市場は登場から約10年が経過し、競合他社による次世代機の開発計画や新規参入の動きも見られることから、当社グループとしても次世代製品の開発を進めております。その一環として、オフセット印刷機の高速・高精度な搬送技術を応用した次世代型B2枚葉UVインクジェット印刷機「J-throne 29」を開発し、販売を開始いたしました。これに伴い、製品改良や新規開発に向けた開発投資が発生する可能性があります。
 また、B1サイズの次世代デジタル印刷機「Impremia NS40」については技術課題に対応し、早期市場投入に向けて準備をしております。

 

② PE(プリンテッドエレクトロニクス)事業における、対象分野の変動リスク

 市場変化のスピードに追随できず、事業収益を大幅に低下するリスクがある成長事業の一つの柱であるPE事業では、開発対象分野の技術革新の影響より収益が見込めると判断した分野が急速に収縮したり、他の分野が急速に立ち上がったり等の環境に置かれています。

 従って新しい市場開拓に時間を要し、対象分野の急速な市場変化により想定した事業拡大等ができず、事業収益が大幅に低下するリスクがあります。

 当社グループは市場調査を徹底し事業推進体制による商品化機能を強化しております。さらに次世代プリンテッドエレクトロニクスのイノベーションを推進するために、山形大学と包括的な連携協定を締結いたしました。今後は市場変化を見極めながら次世代プリンテッドエレクトロニクスの開発を推進してまいります。

 

 

(3) 財務に関するリスク

 

① 為替レート変動によるリスク

 当社グループの主要な海外市場は、欧州、北米、中国を含むアジアであり、海外売上高比率は全体の60%超となっております。円以外の主要な取引通貨はドル、ユーロであり、為替変動の影響を受けやすい構造となっており、想定為替レートに対し急激な円高が発生した場合は売上高、利益の減少等収益に影響を与えます。
 為替レート変動によるリスクを軽減するため、当社グループは原材料や部品の海外調達や、一部製品の海外生産を実施しております。また、円建て契約を優先するほか、先物為替予約等でヘッジすることにより短期のリスクの合理的な軽減を図っております。しかしながら、大幅な変動が生じた場合には、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

② のれんの減損が顕在化するリスク

 当社グループは、印刷需要が伸びている新興国市場でのシェア拡大を目的とした企業買収を行っております。この企業買収に伴い、のれんを計上しておりますが、買収後の事業が計画に対して実績が下回る等により、その乖離が継続して生じた場合は、のれんの減損損失の発生等により、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
 当社グループは、企業買収に当たりましては、企業価値算定、投下資金の回収見込み、買収金額の妥当性、リスク等について取締役会で十分な審議を行った上で意思決定を行っております。また買収後は出向者の派遣及び連携の強化等を通じて、管理及び事業の推進体制を整え、リスクの軽減に努めております。

 

③ 棚卸資産の過多によりキャッシュ・フローが悪化するリスク

 当社グループが販売予測の前提条件と実績の乖離により過剰な製品在庫を生じさせた場合は、生産調整にとどまらずキャッシュ・フローを悪化させる可能性があります。
 そのため、過剰な製品在庫を生じさせない対策として、適正在庫の全社目標を設定するとともに、関係会社ごとに売上水準に合わせた在庫目標を設定し、月次で乖離を管理しております。一方で、昨今の電子部品等の供給リスクに対しては、中長期的な販売予測を元に部品毎に適正在庫量を設定することで、棚卸資産の管理と安定供給生産の両立を目指してまいります。

 

(4) 災害等によるリスク

 

  緊急事態における本社機能、製造拠点の集中に係るリスク

 当社グループは、地震・風水害・感染症の拡大等の緊急事態に備え、本社機能及び生産拠点の事業継続計画(BCP)を整備しています。これらの事象は、業務の中断や物流の停滞を引き起こし、事業活動に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、近年の通信インフラの早期復旧傾向を踏まえ、代替拠点の確保に代えて、クラウド環境の活用やリモートアクセス体制の強化を進めています。また、災害時における従業員の安全確認と迅速な初動対応を目的として、安否確認システムを導入し、情報収集と社内連携の円滑化を図っています。

今後も、定期的な訓練や体制の見直しを通じて、BCPの実効性向上に努めてまいります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度の末日現在において判断したものであります。

 

(1) 経営成績

 当連結会計年度における世界経済は、緩やかな回復傾向が見られましたが、ウクライナや中東での地政学リスクの長期化に加えて、米国大統領選後の不確実性が影響し、先行きに対する不透明な状況が続きました。

 印刷機械の市場動向は、日本においてはエネルギーコストや印刷資材・物流コスト・労働コストの上昇や人材不足が継続し、これを解決するための印刷価格への転嫁や、生産性向上・省人化等の合理化投資を進める動きが続いておりますが、売上高は生産に時間のかかる多色機や両面印刷機等の受注が多く収益認識が翌連結会計年度となるものが増えたため、前連結会計年度をわずかに下回りました。北米においては、紙幣をはじめ諸証券印刷設備の受注獲得が寄与し受注高が増加しましたが、大統領選後の金利の高止まりと、通商政策の不確実性が影響して、オフセット印刷機への設備投資に慎重な姿勢が見られたことや、受注が第4四半期に集中したこと等から売上高は前連結会計年度を下回りました。欧州ではインフレ率の鈍化や政策金利の引き下げにより景気の回復傾向が見られた中、2024年5月にドイツで開催された世界最大の印刷機材展である「drupa2024」に省エネ性能の高いモデルを開発・出展した効果もあり、売上高は前連結会計年度を上回りました。中華圏では、海外企業によるサプライチェーン見直しや、不動産不況等により内需が低迷し、商業印刷では厳しい状況が続いています。一方で、パッケージ印刷では、大手印刷会社を中心に、深刻化する労働力不足や人件費の上昇に対処するため、省人化・自動化を目的とした設備更新が進められており、売上高は前連結会計年度を上回りました。アセアンやインドを含むその他の地域では、サプライチェーン見直しによる中国からの生産拠点移転の恩恵を受け、好調な経済環境を背景にオフセット印刷機の需要拡大が続き、売上高は前連結会計年度を上回りました。

 このような市場環境のもと、オフセット事業では環境性能向上や生産性向上等の社会課題解決を実現する印刷機である「リスロンGX/Gアドバンス EXエディション」を「drupa2024」にて発表しました。同機は、環境配慮仕様の採用により最大18%の消費電力を削減することができ、損紙削減や生産性向上を実現することで顧客への訴求力を高め、当連結会計年度の受注拡大に寄与しました。

 証券印刷事業では、コロナウイルス感染症の影響で中断していた入札が再開され、大型受注を獲得しました。当社の持つ高い技術と品質に加え、長期にわたりサービスの安定供給を担保する当社の財務基盤が高く評価され、2023年4月から2024年6月までに合計10ヶ国の入札で200億円超の受注を獲得し、これらの結果、当連結会計年度における工事進行に伴い計上される売上高が増加しました。また、その後も順調に受注を増やし、米国ドル紙幣を印刷するBureau of Engraving and Printing(アメリカ合衆国財務省印刷局)からの受注獲得に成功しました。

 以上の結果、当連結会計年度における受注高は130,897百万円前連結会計年度比32.1%増加)となり、売上高は111,050百万円前連結会計年度比6.5%増加となりました。売上原価率は、品目別売上構成の違い等により、前連結会計年度に比べ良化しました。販売費及び一般管理費は、前連結会計年度に比べ、5月に国際展示会が開催され広告宣伝費が増加したこと、売上高の増加に伴う販売手数料が増加したこと、企業結合等により増加しました。その結果、営業利益は7,118百万円前連結会計年度比45.3%増加)となりました。経常利益は7,617百万円前連結会計年度比12.1%増加)、税金等調整前当期純利益は9,163百万円前連結会計年度比57.8%増加)、親会社株主に帰属する当期純利益は7,248百万円前連結会計年度比56.2%増加)となりました。

 また、海外売上高は77,128百万円(前連結会計年度比10.7%増加)で、売上高に占める割合は69.5%となりました。

 

 

 地域別連結売上高の概況は以下のとおりです。

(単位:百万円)

 

前連結会計年度
(2023.4.1~2024.3.31)

当連結会計年度
(2024.4.1~2025.3.31)

増減率

(%)

売上高

104,278

111,050

6.5%

内 訳

日本

34,578

33,922

△1.9%

北米

11,683

9,248

△20.8%

欧州

22,754

24,718

8.6%

中華圏

18,316

19,182

4.7%

その他地域

16,944

23,978

41.5%

 

 

 日本市場はオフセット枚葉印刷機で合理化投資の動きが見られ、補助金による投資促進効果も後押しとなり高い水準の受注が続いています。一方で、生産に時間のかかる多色機や両面印刷機等、高付加価値機の受注が多く、翌連結会計年度の売上となる割合が増えたため、売上高は前連結会計年度比1.9%減少33,922百万円となりました。

 北米市場では、証券印刷機の大型受注により受注高が大きく伸びました。オフセット印刷機の受注高は、金利の高止まりの影響で設備投資に慎重な姿勢が見られましたが、高付加価値機の大型受注があり前連結会計年度を上回りました。当連結会計年度に受注した証券印刷機の売上の多くが翌連結会計年度以降に予定されていることや、オフセット印刷機の受注が第4四半期に集中したこと等の影響により、売上高前連結会計年度比20.8%減少9,248百万円となりました。

 欧州市場では、5月にドイツで開催された展示会「drupa2024」の効果に加え、政策金利の低下がプラスに働き、ウクライナ情勢やインフレの影響を受けて停滞していた設備需要が動き出し受注高が増加しました。欧州子会社で生産している紙器印刷機の売上増加も寄与し、売上高は前連結会計年度比8.6%増加24,718百万円となりました。

 中華圏市場では、海外企業によるサプライチェーンの見直しや不動産不況等による内需低迷の影響で、商業印刷を中心に厳しい状況が続いている一方で、パッケージ印刷では収益改善を進める合理化投資が継続し、高付加価値機の需要が増えていること等から受注高は増加傾向にあります。その結果、売上高は前連結会計年度比4.7%増加19,182百万円となりました。

 その他地域では、海外企業のサプライチェーンの見直しにより中国から生産拠点移転の恩恵を受け、好調な経済環境を背景にオフセット印刷機の設備需要が増加したことにより、受注高が増加しました。また、証券印刷設備の大型契約を受注したことにより、工事の進行に伴い計上される売上高が増加しました。その結果、売上高は前連結会計年度比41.5%増加23,978百万円となりました。

 

 セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。

 a. 日本

 セグメントの「日本」には、日本の国内売上高と、日本から海外の代理店地域や海外証券印刷機の直接売上高が計上されております。同代理店地域には、中華圏の一部を除くアジアと中南米等が含まれております。上記記載のそれぞれの地域での業績を反映した結果、セグメントの「日本」の売上高は82,736百万円前連結会計年度比7.6%増加)となり、セグメント利益は7,033百万円前連結会計年度比58.8%増加)となりました。

 b. 北米

 セグメントの「北米」には、米国の販売子会社の売上高が計上されております。地域別売上高の概況で述べました北米の状況の結果、セグメントの「北米」の売上高は9,295百万円前連結会計年度比20.5%減少)となり、セグメント利益は8百万円前連結会計年度比98.9%減少)となりました。

 c. 欧州

 セグメントの「欧州」には、欧州の販売子会社、欧州の紙器印刷機械製造販売子会社グループ及び欧州の印刷後加工機製造販売子会社グループの売上高が計上されております。地域別売上高の概況で述べました欧州の状況の結果、セグメントの「欧州」の売上高は25,190百万円前連結会計年度比7.8%増加)となりましたが、展示会「drupa2024」による広告宣伝費の増加等により、セグメント損失は776百万円前連結会計年度は168百万円)となりました。

 

d. 中華圏

 セグメントの「中華圏」には、香港、中国深圳市、台湾の販売子会社及び中国南通市の印刷機械装置製造販売子会社の売上高が計上されております。地域別売上高の概況で述べました中華圏の状況の結果、セグメントの「中華圏」の売上高は15,991百万円前連結会計年度比3.2%減少)となりましたが、セグメント利益は259百万円前連結会計年度は230百万円の損失)となりました。

 e. その他

 「その他」には、インド、シンガポール及びマレーシアの販売子会社の売上高が計上されております。地域別売上高の概況で述べましたその他地域の状況の結果、売上高は5,892百万円前連結会計年度比30.9%増加)となり、セグメント利益は411百万円前連結会計年度比28.6%増加)となりました。

 

(2) 財政状態

(資産)

 当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ5,327百万円増加して172,915百万円前連結会計年度比3.2%増加)となりました。資産の主な増加要因は、現金及び預金の増加8,358百万円リース資産の増加1,125百万円機械装置及び運搬具の増加1,050百万円退職給付に係る資産の増加949百万円のれんの増加811百万円等であります。主な減少要因は、投資有価証券の減少3,966百万円受取手形、売掛金及び契約資産の減少3,923百万円等であります。

(負債及び純資産)

 当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ4,294百万円増加して57,416百万円前連結会計年度比8.1%増加)となりました。負債の主な増加要因は、契約負債の増加4,152百万円未払法人税等の増加1,288百万円固定負債その他の増加1,077百万円等であります。主な減少要因は、繰延税金負債の減少1,776百万円等であります。

 当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ1,032百万円増加して115,499百万円前連結会計年度比0.9%増加)となりました。純資産の主な増加要因は、自己株式の消却1,947百万円、利益剰余金の増加1,873百万円退職給付に係る調整累計額の増加988百万円であります。主な減少要因はその他投資有価証券評価差額金の減少3,480百万円等であります。

 

 この結果、自己資本比率は前連結会計年度末の68.3%から66.8%(前連結会計年度比1.5ポイント減少)となり、1株当たり純資産額は前連結会計年度末の2,157.34円から2,176.81円(前連結会計年度比19.47円の増加)となりました。

 

 

(3) キャッシュ・フロー

 当連結会計年度における現金及び現金同等物は、前連結会計年度に比べ7,736百万円増加し、57,400百万円前連結会計年度比15.6%増)となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度が8,051百万円の資金減少であったのに比較し、当連結会計年度は、前連結会計年度に比べ25,069百万円増加し、17,018百万円の資金増加となりました。資金増加の主な内訳は、税金等調整前当期純利益9,163百万円売上債権の減少額8,590百万円減価償却費2,297百万円等であり、資金減少の主な内訳は、投資有価証券売却益1,764百万円法人税等の支払額1,358百万円等であります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度が483百万円の資金増加であったのに比較し、当連結会計年度は、前連結会計年度に比べ5,265百万円減少し、4,781百万円の資金減少となりました。資金減少の主な内訳は、事業譲受による支出2,569百万円有形及び無形固定資産の取得による支出2,276百万円定期預金の預入による支出2,138百万円投資有価証券の取得による支出1,066百万円等であり、資金増加の主な内訳は、投資有価証券の売却による収入1,878百万円定期預金の払戻による収入968百万円有形及び無形固定資産の売却による収入443百万円等であります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度が4,874百万円の資金減少であったのに比較し、当連結会計年度は、前連結会計年度に比べ564百万円減少額が縮小し、4,310百万円の資金減少となりました。資金減少の主な内訳は、配当金の支払額3,461百万円短期借入金の純減額407百万円リース債務の返済による支出353百万円等であります。

 

(4) 生産、受注及び販売の状況

a.  生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

生産高(百万円)

前期比(%)

日本

70,308

+3.3

欧州

11,862

+22.9

中華圏

2,290

△8.5

合計

84,461

+5.2

 

(注) 1. セグメント間取引については、相殺消去しております。

   2. 金額は平均販売価格で表示しております。

 

b.  受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

受注高(百万円)

前期比(%)

受注残高(百万円)

前期比(%)

日本

53,317

+11.1

31,933

+4.5

北米

18,195

+86.9

12,239

+248.8

欧州

28,444

+31.8

13,393

+37.1

中華圏

18,672

+45.6

10,256

+30.3

その他

12,266

+75.1

8,737

+46.9

合計

130,897

+32.1

76,559

+32.8

 

(注) 1. セグメント間取引については、相殺消去しております。

   2. 受注残高には、見込み受注分は含まれておりません。

 

c.  販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

販売高(百万円)

前期比(%)

日本

55,287

+8.9

北米

9,285

△20.5

欧州

24,718

+8.6

中華圏

14,268

△2.8

その他

5,723

+29.6

調整額(注2) (注3)

1,766

合計

111,050

+6.5

 

(注)1.  セグメント間取引については、相殺消去しております。

  2.  報告セグメントにおいて代理人として処理した取引のうち、他の当事者がセグメント間に存在するため、連結損益計算書上は本人として処理される取引であります。

  3.  履行義務の充足に係る進捗度に基づいて、一定期間にわたり収益を認識する取引のセグメント間取引に係る進捗度の調整であります。

 

 

(5) 経営成績に重要な影響を与える要因

 当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因としては、「3 事業等のリスク」に記載した項目が挙げられますが、特に影響が大きい要因は次のとおりであります。

 当社グループの総売上高に占めるオフセット印刷機事業の割合は大きく、景気動向や法律・規制の施行、税制等の変更等に起因するオフセット印刷機の需要環境変動が、当社グループの経営成績に大きな影響を及ぼす可能性があります。当連結会計年度のオフセット印刷機の需要環境は、地政学リスクの長期化や、米国大統領選挙後の不確実性が増す中で、地域によりばらつきはあるものの、総じて引き続き改善を見せました。一方で、電子媒体の増加が新興国を含め世界的に急速に浸透していますが、今後において人々の行動が変化して書籍、商業印刷の需要がさらに縮小した場合には、出版、商業用印刷向けオフセット印刷機の需要も縮小し、当社グループのオフセット事業の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。これに対応した戦略として、米国のロータリーダイツールの事業譲受やカナダのフレキソ印刷機メーカーの買収によりパッケージ印刷向けの事業強化を図るとともに、DPS事業やPESP事業等の成長事業や、MBOグループの印刷後加工機の事業とのシナジー効果を拡大し収益源の多様化・安定化を進めております。このように、オフセット事業以外の事業についても成長を促進することにより、個別事業の需要環境変動が発生したとしても経営成績への影響度を低減できるように図ってまいります。

 次に、当社グループの海外売上高比率は全体の60%を超えており、かつ製造拠点が日本に集中していることから、為替変動の影響を受けやすい構造となっております。当社グループはこの為替変動リスクに対応すべく、円建て契約を優先するほか、先物為替予約で短期の変動リスクをヘッジする一方、部材等の海外調達比率を高め、また、一部製品の製造を海外製造子会社へ移管するとともにM&Aで海外生産を強化すること等により為替エクスポージャーを低減する努力を続けております。

 足元では、半導体不足をはじめとした電子部品供給のリスクが改善し、納期が正常化しつつありますが、継続して電子部品や一般市販部品のメーカーとの連携強化を図り適正な在庫確保を図るとともに代替可能部品の選定等対策を進めてまいります。今後とも、「3 事業等のリスク(4)災害等によるリスク」に記載した適正な部品在庫を確保するための対策を講じて安定稼働に努めてまいります。

 

(6) 資本の財源及び資金の流動性

 当社グループは、経済・金融環境の変化に伴う需要変動リスクに備えて十分な手許流動性を確保することにより、安定した財務基盤の維持に努めております。運転資金及び事業投資資金については主として内部資金により調達しておりますが、財務運営の安定性を増すため、2020年10月に普通社債100億円を発行しております。今後の運転資金及び事業投資資金の需要については内部資金の範囲内と認識しておりますが、内部資金を超過する大型戦略投資資金が必要となる際には、借入金や社債により調達する可能性があります。なお、当社は格付け機関である格付投資情報センター(R&I)より長期格付けA-を取得しております。

 

(7) 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断する客観的な指標等

 当社グループは、当連結会計年度から第7次中期経営計画(2025年3月期~2027年3月期)に取り組んでおります。同計画の骨子については「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)会社の対処すべき課題及び中長期的な会社の経営戦略と目標とする経営指標」に記載しており、サステナブルな経営体質に向けた事業変革と経営基盤強化を推進し、企業価値向上を目指してまいります。

 第7次中期経営計画の最終年度である2027年3月期の目標と、当連結会計年度の実績は以下のとおりです。

 

 

中期経営計画

最終年度目標

当連結会計年度

実績

営業利益率

7.0%以上

6.4%

ROE

6.0%以上

6.3%

 

 

 

(8) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

 連結財務諸表作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

5 【重要な契約等】

(1) 技術提携契約

 該当事項はありません。

 なお、前連結会計年度まで記載しておりましたランダ社とのデジタル印刷技術のライセンス及び供給契約については、当社の技術集約が進みその重要性が低下したため記載を省略いたします。

 

(2) 販売提携契約

 該当事項はありません。

 なお、前連結会計年度まで記載しておりましたコニカミノルタ株式会社とのデジタル印刷機の販売提携契約については、デジタル印刷機のラインナップ拡充に伴い、その重要性が低下したため記載を省略いたします。

 

 

6 【研究開発活動】

 研究開発は当社グループの事業戦略において重要度の高い活動です。

当社グループは事業戦略上重要な活動として次の研究開発に取り組んでいます。

1.オフセット印刷の品質・生産性向上技術開発

2.紙幣印刷機の関連技術開発

3.高い生産性を有するデジタル印刷機の開発

4.革新的なPE(プリンテッドエレクトロニクス)技術開発

5.環境対応の要素技術開発

 

当連結会計年度における当社グループの重要な研究開発成果は次のとおりであります。

 

1.オフセット印刷の品質・生産性向上技術開発

株式会社SCREENグラフィックソリューションズ(SCREEN GA)と、KP-コネクトアライアンスプログラムのパートナーとして連携強化に合意し、自動化ワークフローの運用を開始しました。製造業の人手不足対策として、人員の最適配置・負荷低減が求められる中、印刷業界でもDX化が急務となっています。印刷前工程のパートナー企業であるSCREEN GAのワークフローRIP「EQUIOS」と「KP-Connect Pro (KP-コネクト プロ)」の連携により、前工程の自動化、省力化、省人化を推進しています。これは、印刷全体の工程最適化と生産性向上に大きく寄与するものです。

つくばプラント内にある小森グラフィックテクノロジーセンター(以下、KGC)をリニューアルし、「印刷工場の仮想スマートファクトリー」 (以下KGCスマートファクトリー)としての活動を開始しました。印刷業界は、小ロット・短納期化をはじめとするニーズの多様化、資材・エネルギーコストの上昇や人材確保の課題に直面しています。当社グループは、機械単体の生産性だけでなく、印刷工場全体の生産性を向上させる「スマートファクトリー化」を推進しています。KGCスマートファクトリーは、「中央管制室」を備え、工場全体の集中監視と作業指示が可能です。「KP-Connect Pro」を中核ソフトウェアとし、スケジューリング、プリプレス、プレス、ポストプレス、カラーマネジメント、品質検査、構内物流に至る全印刷ワークフローの自動連携を可能にします。

菊半裁寸延オフセット枚葉印刷機「 LITHRONE GLX29 advance(リスロンGLX29アドバンス)」(以下、GLX29A)を開発しました。GLX29Aは安定した給排紙性能を備え、厚紙を含めた高速印刷に対応します。メイクレディ時間の短縮、損紙の低減を推し進め、世界最高クラスのROIを実現します。また、オペレーションスタンドのインフォメーション画面を刷新したことで、オペレーターをより強力にサポートし、作業効率を向上させます。環境技術により、電力削減や損紙低減を叶え、温室効果ガス(GHG)の排出量を削減する環境配慮型のオフセット印刷機です。

 

2.紙幣印刷機の関連技術開発

KOMORI 100周年記念ハウスノートが、「High Security Printing EMEA」にて最優秀ハウスノートアワードを受賞しました。ハウスノートとは、本物の銀行券と同じセキュリティープリントテクノロジーを用いて印刷された、特殊印刷サンプルです。当社がこれまで築き上げたセキュリティープリントテクノロジーを結集させたデザインで、オフセット印刷機「CURRENCY LC(カレンシー LC)」、凹版印刷機「CURRENCY IC(カレンシー IC)」、デジタル印刷機「Impremia IS29s(インプレミアIS29s)」にて印刷され、デジタル印刷及びスマートフォンのアプリを使用した認証機能等の最新技術と実績のある偽造防止技術を組み合わせた表現を可能にしており、今後の偽造防止技術の可能性を示しました。

 

3.高い生産性を有するデジタル印刷機の開発

前連結会計年度に開発し、drupa2024にて発表を行った、世界最高クラスのROIを実現するB2枚葉UVインクジェットデジタル印刷機「J-throne 29(ジェイスロン29)」に対する市場の期待は非常に高く、当連結会計年度は円滑な市場投入に向けた最終調整の開発を進めました。「J-throne 29」は、片面毎時6,000枚の印刷スピードを実現しながら、イメージング技術に独自開発の画像形成機能を融合させるとともに、新規開発の専用UVインクによる幅広い印刷適性と高い生産性を備えており、2025年5月に中国・北京にて開催されたChina Print 2025にも出展しました。

 

 

4.革新的なPE(プリンテッドエレクトロニクス)技術開発

国立大学法人山形大学(以下、山形大学)と、基礎学術から事業化・人材育成、交流・施設装置の活用まで範囲を広げた包括連携協定を締結しました。山形大学と当社グループは、これまで有機ELの電極印刷、フレキシブルハイブリッドエレクトロニクス(FHE)での導電配線印刷等の研究開発で連携してきました。今後は新しい技術分野として、微細配線技術に加え薄膜塗工技術を共同で研究開発し、具体的には、次世代太陽電池や次世代二次電池に向けて、印刷材料開発(山形大学)と印刷装置開発(当社グループ)、印刷プロセス開発及び試作品作製(共同)を行っていきます。

 

5.環境対応の要素技術開発

気候変動対策を主軸とした研究開発に積極的に取り組んでいます。

オフセット印刷機の印刷品質と消費電力削減の両立に着目して取り組んでいたインキローラー配列の最適化、エアー源の高効率エアーシステムの開発、給紙部への加湿システムの開発を実用化し、オフセット印刷機への搭載を進めたことにより、消費電力削減による温室効果ガス排出量削減と高い印刷品質、生産性の両立を実現しました。

 

なお、当連結会計年度の研究開発費は、4,043百万円であります。