第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは「豊かな創造力と誇れる品質」を経営理念とし、顧客をはじめ社会や社員に対し「信頼と満足」を普遍的に提供することを経営の基本方針としております。また事業領域を「快適環境の創造」と定義し、業務用空調機器を中核にしながら、建物に関わる各種事業へ業容拡大を目指しております。

 

(2) 経営環境

① 当社の主力事業領域

空調システムは、大きく家庭用と業務用に分けることができます。業務用は、事務所、工場、病院、ホテル、商業施設などを指し、建物の規模によって空調方式を使い分けます。

大規模な建物で採用されるセントラル空調は、建物を一体のシステムと捉える空調方式です。熱源機器を集中設置してまとめて熱を作り、建物全体に循環させて空調します。それに対し中小規模の建物で採用される個別空調は、各部屋に室外機、室内機をセットで設置して、個々で熱を作って空調します。当社は両空調方式において、居室の温度、湿度、気流、清浄度をコントロールする業務用の空調機器のメーカーです。

 


 

② 各方式の特徴と動向

空調方式は、建物の規模や運用によって最適なものが選択されます。熱源機器を大型化して効率を上げ、システムを一括で制御するセントラル空調は、建物全体の管理や省エネルギーに適しています。一方、熱源機器を集中しても効率化されない規模の建物では、個々に制御でき、システムが簡易で利便性が高いと言われる個別空調が採用されます。

 

1) セントラル空調(大規模建物)

大規模建物においては、エネルギー効率の面から古くよりセントラル空調が採用されてきました。近年、その簡易性から個別空調の採用が増加していましたが、「2050年カーボンニュートラル」に代表される地球環境の面から、セントラル空調が改めて注目されております。

セントラル空調の最大のメリットは、熱の搬送にフロンガスを使わず水を使用するため、地球環境にやさしいということにあります。空調分野において、熱の移動を媒介する冷媒ガス(以下、冷媒)には、古くはアンモニアや二酸化硫黄、20世紀半ば頃からは高効率かつ不燃性で毒性もないフロンが利用されておりました。ところが、フロンによるオゾン層破壊問題がクローズアップされ、1987年のモントリオール議定書によって特定フロンが規制されると、オゾン層を破壊しない代替フロンへの転換が始まりました。しかしその後、新たに地球温暖化問題が顕在化し、1997年の京都議定書では先進国が、2015年のパリ協定では発展途上国を含む全ての国が温室効果ガスの削減に取り組むこととなり、全世界で代替フロンに対する規制が進んでおります。

セントラル空調には、その他にも、フロンガスにはできない精緻な温度・湿度制御ができる、上質な空気質を作ることができる、熱源をまとめて大型化するためエネルギー効率の高い運転ができる、機器がまとまって設置されているため保守性がよいなど、多くのメリットがあります。

 

2) 個別空調(中小規模建物)

中小規模の建物においては、簡易性、利便性に加え、エネルギーの効率からも個別空調が採用されており、今後も続くものと思われます。

個別空調で使用される機器についても高効率化は進んでおり、省エネルギーを意識したシステムにはなっているものの、今後は地球温暖化係数の低い冷媒への転換に加えて、フロンガスの使用量を削減するようなシステム設計が進められる見込みです。

 

③ 当社製品の役割

当社の主力製品は、セントラル空調で使用されるエアハンドリングユニット(AHU)、ファンコイルユニット(FCU)です。大型のAHUはフロア全体の換気・空調を、小型のFCUは各部屋の空調を行います。セントラル空調は建物用途に合わせて個々に設計されるため、そこで採用される製品もその要求仕様に合わせて一品一様で設計・製造されますが、当社は特にAHUに強みを持っております。

また個別空調で使用されるヒートポンプ式エアハンドリングユニット(HP-AHU)も主力製品の一部です。セントラル空調と比べると簡易的なシステムが構築されるため、採用される製品も汎用品が多くなりますが、建物の換気・空調を行うHP-AHUには固有の要求仕様が多く、当社がセントラル空調分野で蓄積してきたノウハウを存分に活かすことができます。

 


 

④ 業界構造

一定以上の規模の業務用建物の工事において、空調機器は建築工程に合わせて納入、設置されます。発注主としてディベロッパーなどの施主、建物の設計をする設計事務所、建築工事として全体を束ねるゼネコン、設備工事を請けるサブコンを中心に多くの企業が関わり、工事が進められます。サブコンにはそれぞれの専門分野があり、熱源、空調、計装の各メーカーは、空調設備工事を担当するサブコンに対して製品を納入します。

従いまして当社の事業は、主にサブコンから発注を受け、製造した空調機器を建物の工期に合わせて建築現場に納入するという流れで進められます。

 


 

 

⑤ 今後の業務用空調市場

国内市場

新型コロナウイルス感染症の再拡大が懸念される中、様々な防疫措置が実施され、経済活動の抑制が続くと考えております。ワクチン接種が徐々に普及し、収束に向かうものと期待しておりますが、2021年度においては設備更新計画の見送りとそれに伴う価格競争の激化など一定の影響が想定されます。直近では需要端境期や感染症による景気減退の影響が残るものの、2023年度頃には東京、大阪を中心とした大型再開発などで新築物件の回復が見込まれ、2025年度頃からは納入後20~30年が経過したAHUの更新需要を中心としたストックビジネスへの移行が予測されます。

更新物件については、高度経済成長期に建設された高層ビルの建て替えや1980~1990年代に建てられた施設の設備更新の時期が到来しております。例えば建設後50年が経過し、3度目の大規模更新を迎えた日本初の超高層ビルとして知られる霞が関ビル、1990年前後にオープンしたランドマークタワーや東京ドームなどは当社が継続的にAHU更新を行ってきた大規模建物の一例になります。また既設機器の保守サービスについて、これまでは都市圏での引合いが中心でしたが、需要は地方にも広がっております。その中には、過去に撤退した大手電機メーカー製AHUも多く含まれており、これまで以上に個々の現場に合わせた柔軟性と技術力が求められる状況になっております。

 

アジア市場

アジア最大の市場である中国では、国内外の感染の動向や金融資本市場の変動等の影響を注視する必要はあるものの、固定資産投資は持ち直しており、景気は緩やかに回復しております。当面は危機対応からの脱却を図りつつ、米国との対立を見据えた「科学技術の自立自強」のための政策を背景に、ハイテク分野の投資が加速することが見込まれ、製造業を中心に内需の拡大が予測されます。

 

(3) 中長期的な会社の経営戦略

当社グループは、社会が直面する少子高齢化に伴う労働者不足、時代の要請であるESG経営・SDGsに対応し、持続的に発展できる企業グループへ更なる成長を遂げるため、2021年度からはじまる4ヶ年の中期経営計画を策定いたしました。中長期的な経営戦略を次の項目として、2025年3月期に連結売上高520億円(当連結会計年度比32.7%増)、連結営業利益75億円(当連結会計年度比14.2%増)を目指してまいります。

① SIMAを軸にした新しい製販体制

空調事業の抜本的な変革をテーマに据え、業務のデジタル化によって労働集約的な生産体制から脱却する「SIMA(SINKO Innovative Manufacturing of AHU)」プロジェクトを推進してまいります。

これは従来からの顧客要望やそれに伴う設計・製造指示、カスタマイズに必要な各種ノウハウをデジタル化し、上流からの情報の一気通貫による設計と生産を融合した、革新的な空調機生産方式を目指すもので、既に3D CADシステムの開発、生産工数を自動予測する人工知能(AI)の開発、セル生産方式が中心だった製品組立工程への「ライン生産方式」の導入などを進めております。

製品データベース(BOM)を中心としたデジタル設計・生産体制の構築と需要予測の精度向上・インパクト営業の確立を両輪とする業務プロセスのイノベーションを通じて、個別受注対応と生産効率を両立することで、企業間競争による低価格化の進行、原材料価格・労務費の上昇によるコストの高騰等に対応し、中長期的に事業の発展性・収益性を高めてまいります。

 

② 重点取組項目

1) AHU強化

需要予測の精度向上とインパクト営業の確立、情報の一気通貫による生産効率の向上などSIMAプロジェクトの効果をフル活用することで個別受注対応と生産効率を両立し、基盤事業の圧倒的な競争優位の維持・向上を目指してまいります。

また建設業の人手不足等の要因で建て控えが生じていたデータセンター市場は、クラウドサービス需要の拡大や東京オリンピック特需の終焉を背景に、投資が活発化することが見込まれます。当社はデータセンターでの実績も多く、例えば、データセンター銀座と呼ばれる千葉県印西市周辺では、国内企業を中心に約半数の建物で採用されてきました。海外企業の進出が進むなか、サーバーの高性能化が進むことによる1台当たりの発熱量の増加から、大容量で性能の高い空調機器が求められており、AHUの成長分野として注力してまいります。

2) HP-AHU強化

感染症の拡大によって換気の重要性が再認識され、特に中小規模の建物で需要が高まっております。また冬期の加湿不足という慢性的な課題を抱えており、安定した湿度コントロールを行う大風量・大容量タイプのHP-AHUの要望は根強く存在しております。

セントラル空調分野で蓄積したノウハウを存分に活かし、パートナーとの共同開発でHP-AHUの製品ラインアップを拡充させ、市場シェアの拡大を目指してまいります。

 

3) 工事事業強化

工事事業については、AHUの施工、保守・整備を中心とした独自性を武器に収益の改善が進んでおります。近年はHP-AHUへ技術の幅を広げておりますが、更なる成長を見据えて、空調工事業へ拡張することを目指してまいります。また、空調機器の省エネ性や快適性の維持・向上、耐用年数の延長、故障の予防などを目的とした保守ニーズは確実に存在しており、メーカーの強みを活かした保守サービス体制の充実を図ってまいります。

4) 中国事業強化

中国市場においては、ここ数年、当社グループの強みが活かせない汎用品の安値受注競争に巻き込まれ、利益の低下を招く要因となっておりましたが、計画段階から高機能型AHUを提案することにより価格競争を回避し、採算性重視の販売戦略を徹底することで収益の改善が進んでおります。

「科学技術の自立自強」を背景とした製造業や社会インフラへ向けた採算性重視の販売戦略と原価管理を徹底することで、継続的に利益を確保できる体制構築を進めてまいります。

5) 技術深耕・品質向上

長年培ってきた実績・経験・ノウハウを活用し、引き続きコア技術(送風機・熱交換器)の高効率・コンパクト化の研究開発に注力し、環境負荷低減・CO2削減・省エネルギー化のニーズに応えてまいります。また施工現場、生産現場での人手不足に対応するため、分割搬入・現地組立が可能な製品の設計やAIなどを活用した現場省力化の技術開発に努めてまいります。

 

③ ESG経営の推進、SDGsへの貢献

環境面において、塗装や溶接の削減など生産工程での環境負荷低減を進めるほか、現場の省力化や省エネルギーを可能にする製品開発を進めてまいります。また社会面において、ワーク・ライフ・バランスを実現する働き方改革などを進めるほか、空調機器メーカーとして抗菌・抗ウイルスや熱中症対策などの環境構築による社会貢献を目指してまいります。併せて、内部統制システムの整備やリスク管理とコンプライアンスの徹底を通じてガバナンスを強化いたします。

 

(4) 目標とする経営指標

当社グループは需要を見据えた製品開発と販売戦略及びコストダウンなどを通じた、連結営業利益を経営指標としております。

 

(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

事業上の強み

当社はAHUのメーカーとして、AHU市場では国内トップシェアを長年維持しております。今後の経営戦略を遂行する上で核になる当社の強みとして下記が挙げられます。

① 需要予測に基づく受注生産力

一品一様で設計されるAHUは、完全な受注生産品です。部材手配からラインの組み換えまで、生産現場が柔軟に対応する必要があり、量産メーカーにとっては高い障壁となりますが、それ以上に困難なことは、月によって出荷のバラつきが大きく、生産量を安定させられないことにあります。

当社は、建物の計画段階から設計を手伝う業界最大の上流営業部門を構え、案件情報を早期に獲得することで需要予測を行うとともに、これまで納入してきた多くのストックからの更新案件や小口案件を取り込むことで生産量を安定させ、工場をフル稼働させる運営システムを構築しております。この結果、当社の更新案件比率は約50%と大変高くなっております。

② オーダーメイドに応える設計力

セントラル空調は建物毎に機器に求められる要件が異なりますが、その中でもAHUは、同一の建物内でも1台毎に要求される仕様・能力・サイズが異なるため、全数について顧客と打合せを繰り返し、要望に合わせて設計する必要があります。当社は業界屈指の規模の研究所を構え、製品開発に力を入れるだけでなく、セントラル空調特有の「オーダーメイドの要求」に応えきる製品設計について長年の納入実績に裏打ちされたノウハウを有しております。

③ 品質管理・トラブル対応力

多くの現場に様々な空調機を納めてきた実績と蓄積された現場経験値が当社の製品品質を支えており、トラブルが発生した場合の営業から技術、製造、サービスまで一体となって迅速に動く対応力で、要求の厳しい建築現場におかれているお客様に安心を感じていただけるよう努めてまいりました。

 

 

対処すべき課題

当社グループは、事業環境の変化に耐えうる利益体質の構築と事業基盤の強化を経営課題としております。国内では、新型コロナウイルスの影響の他、人口減少や働き方改革を背景にした労働者の不足・労務費の上昇が顕著になっております。アジア市場においては、新型コロナウイルスに加えて、米中の覇権争いに伴う経済への影響は予断を許さず、厳しい事業環境が続くものと思われます。

このような背景を受け、当社グループが取り組む重要課題は以下のとおりであります。

① 生産方式の進化

1) 業務のデジタル化

労働者の不足・労務費の上昇は技術・製造分野で顕著になっております。また近年の生産現場は外国人労働者が増加し、伝統的な阿吽の呼吸によるものづくりは限界を迎えております。当社が強みとするオーダーメイド要求への対応力をさらに高めるには、個人の習熟度合いに左右されない業務体制の確立が急務であり、そのためには顧客要望やそれに伴う設計・製造指示、カスタマイズに必要な各種ノウハウなどのデジタル化による業務プロセスのイノベーションが必須になります。SIMAプロジェクトを確実に推進し、設計工程の見直し、造り方改革、生産管理を効率化するAI開発などを通して、労働集約型工場からの脱却を進めてまいります。

2) 幹部人財の育成

当社グループの事業運営において、根幹をなす空調機器の販売・製造を束ねる幹部人財の育成が成長のカギになります。特に製造側では、需要予測に基づく営業情報を踏まえつつ、生産計画、工程設計や設備配置を含む現場管理、品質管理、デジタル技術の活用など、高度で幅広い知識・経験を有する全体感のある人財が求められております。設計、積算・購買、製造、品質保証など幅広い知識・経験を持った幹部人財の育成に注力し、グループの組織力の強化を進めてまいります。

3) 総合品質の向上

製品品質の更なる追求に加え、多種多様な要望に対応する個別設計・生産、建築現場の要望に沿った納期対応、納品後の保守サービスなど、グループを挙げて総合的な品質を向上させ、お客様に対しより大きな安心を提供できるよう努めてまいります。

② 海外事業の安定化

アジア市場において、中国現地法人では採算性を重視した販売戦略への切り替えや原価管理の強化によって、収益の改善が進んでおります。継続的に利益を確保できる体制構築を進めるため、国内事業で蓄積してきたノウハウを現地ニーズに合致・深化させ、現地法人の技術者の育成など、事業基盤の安定に注力してまいります。

 

 

 

2 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には以下のようなものがあります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 特に重要なリスク

① 経済・景気に係るリスク

当社グループの営業収入は、大規模の事務所、工場、病院、ホテル、商業施設等の建築設備投資に依存しており、国内の経済情勢、特に民間企業及び公的機関による建設投資需要の影響を受けます。海外事業としては中国における収益が主な割合を占めており、同国の経済情勢等の影響を受けます。

当社グループでは、各国の経済動向を注視し、直接的に景気の影響を受けやすい民間の新築物件に依存せず、官民の更新比率を高めるほか、中小規模の建物向けの市場展開を進めることでリスク対策を講じておりますが、景気後退及びそれに伴う需要の縮小は、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

② 経営戦略に係るリスク

市場競争の激化

当社グループは、国内事業が売上の約87%を占めております。主要市場であるAHU市場は、大手を含め複数の企業が競合しております。また海外企業が参入してくる可能性もあり、今後とも激しい競争が予想されます。

当リスクは随時発生する可能性があるため、当社グループは、オーダーメイドという市場要求に応える最適な組織運営を行うほか、SIMAプロジェクトを推進し、個別設計・生産の対応力を更に強化することで圧倒的な競争力の確保を目指しておりますが、これらの取り組みが予測通りの成果をあげられない可能性や、価格競争の激化等で当社グループの売上高の成長が鈍化する可能性があり、これらが当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

製品需要の変化

市場において競争優位を保持するためには、社会の需要に即した製品開発が不可欠です。当社グループは、事務所、工場等の空調機器を製造・販売する事業を行っているため、例えば省エネルギー関連法令等の改正など大規模建物に係る環境規制による市場要求等の変化に大きな影響を受けます。

当リスクは随時発生する可能性があるため、当社グループは、定期的に部門横断的な委員会を開催し、将来の社会需要及び動向を予測して研究開発を進めるほか、パートナーとの共同開発によって、外部の技術も活用することで製品開発を加速させておりますが、予測を超える需要の変化があった場合は、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

原材料の価格変動

製品を構成する主要原材料は、国際的な経済情勢等の影響を受けるため、当社製品に使用される銅、アルミニウムは常に価格変動リスクを抱えております。

当社グループは、主要な原材料について先物取引を分散して行うことで、急激な価格変動など不確実性の低減に努めておりますが、恒久的な価格高騰や当該コストの製品価格への適切な反映など有効な対応ができない場合は、当社グループの収益性を圧迫し、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

労働力不足

国内の生産年齢人口は減少を続けており、労働者の不足・労務費の上昇は技術・製造分野で顕著になっております。またそうした背景を受け、近年の生産現場は外国人労働者が増加し、伝統的な阿吽の呼吸によるものづくりが転換期を迎えるなど、人手不足による各種影響の長期化が見込まれます。一般社団法人日本建設業連合会の調査では、2025年に77~99万人の新規技能労働者数が不足すると指摘されており、予断を許さない状況となっております。

当社グループは、SIMAプロジェクトを核にした業務プロセスのイノベーションを通じて、生産性向上と各工程の省力化を進めるなど対策に努めておりますが、人手不足による人件費の上昇または当該コストの製品価格への適切な反映など有効な対応ができない場合は、当社グループの収益性を圧迫し、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 

品質クレーム

当社グループは、品質管理体制を整え、厳格な品質基準に基づいて製品を製造しておりますが、当リスクは随時発生する可能性があり、全ての製品について欠陥がなく、クレームによる費用が発生しないという保証はありません。

当社グループは、合併により製販の連携を深めて品質管理体制を更に強固にすることに加え、製造物責任賠償については保険に加入しておりますが、大規模なクレームが発生した場合には、多額のコストや当社グループの評価に重大な影響を与え、業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

国際情勢等

当社グループの海外事業は中国を中心にアジア地域で営業展開し、売上の約13%を占めております。今後、アジア地域で国際紛争、テロ事件、政情不安や大規模デモ、感染症などが発生した場合や、それらの影響による社会的混乱の拡大から従業員の活動が制限され、現地の生産もしくは工事が大幅に遅れるなど経済活動に波及する場合は、当社グループの戦略遂行に影響を与え、業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

③ コンプライアンスに係るリスク

当社グループは企業倫理の確立による健全な事業活動を遂行するため、内部統制システムを整備するとともにコンプライアンス室を設置し、コンプライアンス体制の構築・維持に努めております。また法令・定款及び社会規範に違反する行為の発生または発生する恐れを発見した際の相談窓口を設置し、役員・従業員への啓発活動を実施するなど、企業倫理の向上及び法令順守の強化に努めております。

しかしながら、コンプライアンス上のリスクを完全には回避できない可能性があり、法令等に抵触する事態が発生した場合、当社グループの社会的信用に重大な影響を与え、その対応費用を含め当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 情報セキュリティに係るリスク

当社グループは、事業活動を通して、顧客や取引先の営業上・技術上の機密情報を有しています。当社グループでは、情報セキュリティ管理室を設置し、これら情報の取り扱いに関する規程類の整備や従業員への周知徹底を図るなど、情報セキュリティを強化しております。

しかしながら、情報セキュリティ上のリスクを完全には回避できるものではなく、コンピュータウィルスの感染や不正アクセス、その他不測の事態により、これら情報が流失した場合や重要データの破壊、改ざん、システム停止などが生じた場合には、当社グループの社会的信用に重大な影響を与え、その対応費用を含め当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ 大規模災害や重大な伝染病等に係るリスク

当社グループは、セントラル空調機器メーカーとして国内で唯一、製造拠点を2拠点保有するなど、大規模な自然災害に際し復旧が可能となる業務体制としております。また、伝染病等への対策については、部門をチームに分け勤務エリアを分散する、出社が困難な時には遠隔操作ツールを活用して在宅勤務をするなど、事業継続計画を策定しております。

しかしながら、当リスクの発生可能性を合理的に見積もることは困難であり、想定を超える規模の災害や重大な伝染病等が発生した場合、出社が制限される可能性があるほか、サプライチェーンが途絶し外部から調達している原材料などの入手ができず生産が停滞する、建築現場が閉所され製品の出荷が滞るなど製品供給に重大な影響を与え、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)重要なリスク

① 為替変動に係るリスク

当社グループの事業には、中国等アジア地域における製品の販売が含まれております。各地域における売上、費用、資産を含む現地通貨建ての項目は、連結財務諸表の作成のために円換算されております。これらの項目は、換算時の為替レートにより円換算後の価値が影響を受ける可能性があり、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

② 固定資産評価に係るリスク

当社グループの保有する資産又は資産グループについて、「固定資産の減損に係る会計基準」に基づき、減損損失を認識すべきであると判定した場合にはそれぞれの固定資産について回収可能性を測定し、回収可能価額が帳簿価額を下回る場合その差額は減損損失として当該期の損失とすることとなり、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 

③ 有価証券の時価変動に係るリスク

当社グループは、主に営業上、財務上の取引関係等の円滑化や提携関係の維持による事業基盤の強化のため、有価証券を保有しております。

株式市況の急激な悪化や取引先の経営破綻等が発生した場合、当該期の損失とすることとなり、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 企業買収に係るリスク

当社グループは、事業基盤の強化及び成長維持のために、企業買収を実施しております。企業買収においては、法令の変更、業界動向の不確実性、商慣習の違いなど、買収後の事業統合リスクに直面する可能性があり、その結果、当初想定した買収効果や利益が実現されない場合は、のれんの減損などの発生によって、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ 環境規制に係るリスク

当社グループは、研究開発及び製造過程で発生する有害物質、廃棄物等について、さまざまな環境保護に係る法的規制を受けております。当社グループは、主に国内製造拠点及び研究開発拠点においてISO14001認証を取得し、製造過程等における環境負荷の低減と環境汚染の予防に努めております。

しかしながら、環境規制は一般的に強化傾向にあり、今後環境等に関する新たな国内外の法的規制が制定される可能性があります。そのような場合は、当社グループにおいて費用負担や事業活動の制限等が発生することとなり、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥ その他の公的規制に係るリスク

当社グループの事業は、日本をはじめとし事業展開する各国において、事業・投資の許可または輸出入に関する規制のほか、独占禁止、特許、租税、社会保険、為替管制など様々な規制の適用を受けており、それらの法令順守に努めております。法令・規制を順守できなかった場合は、当社グループの活動が制限される可能性があり、また費用の増加につながる可能性があります。したがいまして、これらの規制は当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 新型コロナウイルス感染症に係るリスク

① 景気減退による需要縮小

当社製品が設置される主な建物は、大規模の事務所、工場、病院、ホテル、商業施設などになります。緊急事態宣言の発令に伴う休業や外出自粛などの長期化から、建物のオーナーやテナント企業の財政状態が悪化し、新築、更新の延期及び設備投資などが縮小された場合、今後の業績が下振れする可能性があります。

② 建築現場閉所による納品停滞

当社製品は、建物の工期に合わせて建築現場に納入されます。従いまして、緊急事態宣言を受けて、ゼネコン等によって建築現場が閉所される場合、当社製品の納期が延期となるなどの影響が出る可能性があります。当社としましては、自社内での防疫措置等の対策を徹底して製品供給体制を維持し、得意先の要望に応え、市場縮小の局面においても機会損失がないよう引き続き事業体制を整えてまいります。

③ サプライチェーン途絶による部品供給

当社は、製品生産に必要な原料の他、空調機器に組み込む一部の部品を購入しております。部品調達先は国内が主となり、大きな問題として顕在化する可能性は低いと見込んでおりますが、一部は中国など海外より調達を行っているため、現地の生産及び物流などサプライチェーンが途絶した場合、空調機器に組み込む部品が入手できず、製品の供給に影響する可能性があります。

 

 

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症拡大による東京オリンピック・パラリンピックの延期や2度の緊急事態宣言の発令により、通期に渡り厳しい経済情勢となりました。公共投資は堅調に推移したものの、経済の落ち込みにより民間設備投資は慎重な姿勢が見られ、一部で事業計画が見直されるなど、先行きは依然として不透明な状況が続いております。当業界におきましては、感染症の影響に加え、オリンピック関連需要が一段落したことから、空調機の全国出荷台数が前年同期に比べ約18%減少する厳しい事業環境で推移いたしました。

こうした情勢のもと、当社グループは空調機器及び空調工事の戦略受注、空気中の細菌やウイルスを除去する「健康空調®」シリーズの製品拡充に注力するとともに、SIMAプロジェクトの第1フェーズとして、製品組立工程に従来のセル生産方式に加え「ライン生産方式」を導入いたしました。個別受注対応と生産効率を両立することで、企業間競争による低価格化の進行、原材料価格・労務費の上昇によるコストの高騰等に対応し、中長期的に事業の発展性・収益性を高めてまいります。

 

セグメントの業績は、次のとおりであります。

<日  本>

需要の端境期に入ったことに加え、感染症拡大の影響から宿泊施設や店舗などの着工が大きく減少し、売上高は33,913百万円(前連結会計年度比12.8%減)となりました。利益面におきましては、戦略受注の効果はあったものの、空調機器販売の減少による影響は大きく、セグメント利益(営業利益)は6,608百万円(前連結会計年度比26.9%減)となりました。

 

<アジア>

中国では、国内外の感染の動向や金融資本市場の変動等の影響を注視する必要はあるものの、固定資産投資は持ち直しており、景気は緩やかに回復しております。そうした中、採算性を重視した販売戦略への切り替えや原価管理の強化によって営業面は改善しましたが、貸倒引当金の増加により、売上高は5,288百万円(前連結会計年度比2.0%減)、セグメント損失(営業損失)は89百万円(前連結会計年度はセグメント損失59百万円)となりました。

 

この結果、当社グループの売上高は39,177百万円(前連結会計年度比11.5%減)となり、利益面におきましては、営業利益は6,565百万円(前連結会計年度比27.1%減)、経常利益は6,997百万円(前連結会計年度比26.5%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は5,021百万円(前連結会計年度比16.3%減)となりました。

 

(2) 財政状態の状況

当連結会計年度末の総資産は69,000百万円となり、前連結会計年度末に比べ3,892百万円増加となりました。これは主に、現金及び預金の減少3,461百万円、売上債権の減少1,641百万円、有価証券・投資有価証券の増加6,170百万円及び土地の増加3,069百万円等によるものであります。

負債は18,018百万円となり、前連結会計年度末に比べ834百万円減少となりました。これは主に、有利子負債の増加2,170百万円、未払税金の減少1,479百万円及び退職給付に係る負債の減少877百万円等によるものであります。

純資産は50,981百万円となり、前連結会計年度末に比べ4,726百万円増加となりました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益の計上5,021百万円、剰余金の配当1,514百万円及びその他有価証券評価差額金の増加1,553百万円等によるものであります。

 

(3) キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ3,311百万円減少し、当連結会計年度末には13,985百万円(前連結会計年度比19.1%減)となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況と主な要因は、次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における営業活動による資金の増加は5,623百万円(前連結会計年度比1,620百万円収入の減少)となりました。増加の主な要因は、税金等調整前当期純利益の計上によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における投資活動による資金の減少は9,251百万円(前連結会計年度比5,617百万円支出の増加)となりました。減少の主な要因は、固定資産の取得及び有価証券の取得によるものであります。

 

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における財務活動による資金の増加は308百万円(前連結会計年度比1,792百万円収入の増加)となりました。増加の主な要因は、借入による資金の調達によるものであります。

 

(4) 資本の財源及び資金の流動性についての分析

当連結会計年度における現金及び現金同等物は、税金等調整前当期純利益の計上等により、前連結会計年度末に比べ3,311百万円減少し、当連結会計年度末の残高は13,985百万円となりました。この結果、正味運転資金(流動資産から流動負債を控除した金額)は27,097百万円となりました。

 

(キャッシュ・フロー指標のトレンド)

回  次

第68期

第69期

第70期

第71期

第72期

決算年月

2017年3月

2018年3月

2019年3月

2020年3月

2021年3月

自己資本比率(%)

62.9

62.4

63.9

67.9

70.9

時価ベースの
自己資本比率(%)

78.8

73.6

62.8

55.9

81.6

キャッシュ・フロー
対有利子負債比率(年)

0.6

0.4

0.6

0.3

0.7

インタレスト・
カバレッジ・レシオ

152.1

224.2

175.6

475.3

201.9

 

自己資本比率:自己資本 / 総資産

時価ベースの自己資本比率:株式時価総額 / 総資産

キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債 / キャッシュ・フロー

インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー / 利払い

 

 (注) 1 各指標は、いずれも連結ベースでの財務数値により算出しております。

2 株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。

3 キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。また、利払いについては連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。

4 第70期の期首より「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」(企業会計基準第28号 平成30年2月16日)等を適用しており、第69期に係る自己資本比率及び時価ベースの自己資本比率については、当該会計基準等を遡って適用した後の指標等となっております。

 

翌連結会計年度の重要な資本的支出として、国内の製造設備への投資を予定しております。また、資金の調達源としては、自己資金を予定しております。

 

(5) 生産、受注及び販売の状況

① 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

日  本

29,028

△13.6

アジア

5,273

△3.0

合  計

34,301

△12.1

 

(注) 1  セグメント間取引については、相殺消去しております。

2  上記のほか建物設備全般の総合管理等を行っている連結子会社があります。

3  金額は販売価格によっており、消費税等は含まれておりません。

 

 

② 受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

日  本

21,830

△2.5

9,380

7.4

アジア

2,444

6.0

655

23.1

合  計

24,274

△1.7

10,036

8.3

 

(注) 1  受注予測に基づく見込生産については、上記受注実績には含めておりません。

2  上記のほか建物設備全般の総合管理等を行っている連結子会社があります。

3  金額には、消費税等は含まれておりません。

 

③ 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

日  本

33,913

△12.8

アジア

5,263

△1.8

合  計

39,177

△11.5

 

(注) 1  セグメント間取引については、相殺消去しております。

2  金額には、消費税等は含まれておりません。

 

(6) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成しております。その作成にあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いております。これらの見積り及び仮定は、過去の実績等を勘案し合理的と考えられる要因等に基づき行っておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果と異なる場合があります。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

また、新型コロナウイルス感染症の影響については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(追加情報)」に記載しております。

 

 

4 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

 

5 【研究開発活動】

当社グループの研究開発活動は、技術本部(SINKOテクニカルセンター)が主体となり、営業・設計・製造・購買など各部門と連携を取りながら、新商品の開発、既存製品の改善、コア技術の研究などを研究課題として取り組んでおります。

主力製品の空調機に関しては、空調機内にUVCランプを搭載し、空気中に潜む細菌やウイルスを除去する空気除菌システム「健康空調®」シリ-ズのラインアップを拡充および、室外機一体型ヒートポンプ空調機「オク-ジオ」のモデルチェンジを行いました。

コア技術の研究に関しては、省エネルギー・環境技術対策品の適用機器とした高効率送風機および高効率熱交換器の拡充を進めております。

中国市場に関しては、現地ニーズに対応した製品開発強化および技術指導・支援を進めております。
今後も、ESG経営・SDGsへ貢献する為の「環境に配慮した製品開発」を目指してまいります。

なお、当連結会計年度における研究開発費は、グループ全体では694百万円であり、セグメント別では、日本478百万円、アジア216百万円であります。