第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1) 会社の経営の基本方針

イ.社是

われわれは「三力」をもって生産に励み、社運の伸展につくし、企業を通じて社会の平和と繁栄に寄与せんことを期する。

知力 価値を生み出すのは知力である

全知をつくして方法を考え力強く実行しよう

努力 一歩前進するにも努力がいる

苦難を克服し向上発展の道を一すじに進もう

協力 ひとりの力には限界がある

みんな力を出しきり一つに結ぼう

 

ロ.経営理念

「プラスチックをはじめとする粉粒体による製品製造現場において、省力化機器のスペシャリストとして、お客様のニーズにマッチした、品質の高い、他社の追随を許さないオンリーワン製品をお届けすることにより、社会に貢献する」

1.市場が求めるものを常に探求し、お客様に喜ばれる製品・サービスを提供する。
2.お客様が製造する消費財・生産財を通じて、世界の人々のより豊かで安全な暮らしに貢献する。
3.従業員の自主性と働きがいを重視し、会社を持続的に成長させる。
4.株主、取引先、地域社会の皆様から、「いい会社」と呼ばれる会社になる。

 

ハ.サステナビリティに関する考え方及び取組み

詳細につきましては「第2事業の状況 2サステナビリティに関する考え方及び取組」を参照ください。

 

ニ.基本方針

当社グループは、プラスチック成形工場における合理化機器システムの製造販売に長年携わっております。製造工程の省力化と加工材料のロス低減による環境への負荷軽減を理念とし、チャレンジCES(低コスト(C)、省エネ(E)、省スペース(S))を製品開発指針として、当業界のリーディングカンパニーとして、高機能かつ操作性に優れた独自製品を開発し新技術を世界に発信し続けるとともに、現場力を一層強化し収益力の向上を図っております。更に、プラスチック成形関連分野で培った技術、ノウハウを応用して、電池、食品、化粧品等の新規販売分野を開拓・拡大していくことにより、市場対応力のある企業として成長を続け、企業価値・株主価値を高めていくことを基本方針としております。

 

(2) 経営環境、中長期的な経営戦略、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当社グループの主力納入先であるプラスチック成形加工業界は、国内外での激烈な技術革新と品質・価格競争の中にあります。

当社グループでは、かかる環境下、コア事業におきまして、生産拠点(日本、中国、東南アジア)及び営業・サービス拠点(日本、中国、台湾、東南アジア、北中米)相互の連携を強固にし、品質、コスト、納期、アフターサービスでの競争力を一層強化することにより、グローバル化するユーザーニーズへ対応しマーケットシェアの拡大と収益力の向上を図ってまいります。

当連結会計年度においては、電気自動車(EV)向けのリチウムイオン電池関連の売上が増加したこと及び前連結会計年度に受注した大型案件の売上が計上されたこと等により、売上高は計画値を上回りましたが、損益面では、大型受注案件の増加に伴う製品構成比率の変動等により売上総利益率が悪化したことに加え、人件費を中心として販売費及び一般管理費が増加したことにより営業利益は計画値を下回りました。また、受注面では、国内外の自動車業界向けを中心とした射出成形機の受注低迷の影響が大きく、射出成形機の周辺機器の受注が減少したことに加え、リチウムイオン電池関連並びにスマホ・VRレンズ関連の受注に一服感が見られたことなどにより、受注高及び受注残高は前連結会計年度と比較して減少しました。

上記の状況を踏まえ、当社グループでは、2024年5月10日開催の当社取締役会において中期経営計画(2024-2026年度)の更新を行いました。概要は以下に記載のとおりでありますが、新規市場、成長分野における事業展開の強化や経営基盤の強化、ESG経営の強化等に取り組み、当社グループの継続的な成長と企業価値の更なる向上に努めてまいります。

また、当社グループは、コーポレート・ガバナンスの強化、コンプライアンスの徹底、人材の育成と強化等により、経営体質の一層の強化と透明性の向上を図ることを、経営上の重点課題と位置付けております。なお、コーポレート・ガバナンスの詳細につきましては、㈱東京証券取引所に「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」を提出するとともに、当社ホームページ(https://www.kawata.cc/)に、社是・経営理念、サステナビリティに関する考え方及び取組み、コーポレート・ガバナンス基本方針、社外役員独立性基準、グループ行動指針、環境方針、経営方針、中期経営計画等を開示しております。

 

(中期経営計画)

① 事業環境

・中国の成長力の陰りや、欧米でも金融政策転換まで大幅な景気回復が見込まれないなど、世界経済は当面低成長にとどまることが見込まれ、IMF公表の世界の実質GDPも、2023年に続き2024年も3.1%と緩やかな伸びとなることが予測されている。

・また、ロシア・ウクライナ、中東、東アジアの情勢や2024年に予定されている主要国での選挙など、地政学的リスクの高まりから、景気の下振れも懸念される。

・一方、先進国を中心に生産年齢人口の減少を補うための省人化、省力化に向けた取組みや、生産設備の老朽化に伴う買替需要には期待感があり、中長期的には機器販売並びにサービスが回復するものと思われる。

 

② 基本的な考え方

・中長期的視点で見ても、プラスチックは世界の人々の生活にとって欠かすことのできない素材であり、今後もさまざまな分野で需要の伸長が期待される。

・自動車関連、電子部品関連業界は、裾野も広く今後も伸びが期待できる業界であり、引き続き当社の主力業界として取り組む。特に、自動車の電動化、自動運転化、車体の軽量化、一体成形化(ギガキャスト)等の流れに対しては積極的に技術や資源を投入する。

・社会の変化に伴うタブレット、PC、スマホ、VR等の通信機器拡大、AI、IoT、5G等のデジタル化推進の動きに的確に対応する。

・地球レベルでの環境問題(脱炭素、使い捨てプラスチックの削減)に対しては、お客様の生産現場や自社の事業活動において、また、お客様が生産する製造物を通じて、社会へ貢献していく。特に、省エネルギー、バイオプラスチック、リサイクルの分野は当社にとってビジネスチャンスになり得ると考える。

 

③ 中期経営方針

~世の中から必要とされる「優良企業」を目指す~

   「より強靭な事業体の構築」

aESG経営の強化

・環境・社会への貢献

・透明性の高い企業統治(コーポレート・ガバナンス)の実現

・全てのステークホルダーへの配慮

 (株主、従業員、販売先、仕入先、金融機関、政府・自治体、地域社会)

b少数精鋭かつ高収益体質の確立(地に足を付けた持続的な成長を図る)

・人的資本への投資(人材確保、研修体系の確立と運用)

・研究開発、技術力向上のための投資

・事業所等の最適配置と更新、能力増強、効率化のための投資

・省力化、省人化、システム化の推進

・資本効率の向上(適正な棚卸資産の維持と有利子負債の削減)

・安定的に当期利益10億円以上、ROE8%以上の確保により、DOE2.5%以上

 

④ 中期経営戦略の骨子

a新規市場、成長分野における事業展開の強化

(お客様のニーズや成長分野の拡がり等に対応するための取組み)

(a) プラスチック成形関連分野で培った技術、ノウハウを応用して、電池、食品、化粧品等の新規販売分野を開拓・拡大する。特に「混ぜる工程」に焦点を定め、高速混合機単品か、もしくはその前後を含めた「輸送・計量工程」をシステムとして提案する。

(b) 高速混合機を軸としたプラスチック以外の業界(食品、新素材)に対しての具体的な用途開発及び人材の確保と育成

(c) EV関連業界向けの新たな取組み

・LIB関連(粉体関連、フィルム関連(材料輸送・供給、温度調節))

・一体成形化(ギガキャスト)関連

・全固体電池実用化に向け、微粒子コーティング技術の製品化推進

 

b既存市場、既存分野での販売拡大と収益力向上

(既存の市場や分野でのお客様を堅守、拡大のための取組み)

(a) 標準機(輸送機、計量混合機、高速混合機、乾燥機、金型温度調節機、チラー、プラスチック粉砕機)の販売拡大を目標とする。特に、省スペース・省エネルギー実現に向けた操作性に優れた新機種開発と既存モデルの改善・改良、サービス対応力の強化により差別化を図り、同業他社からのブランドチェンジを推進する。

(b) 省スペース・省エネルギーなどお客様に分かりやすく訴求しやすい提案資料やデータの作成に会社として取り組む。(グループの財産とするための整理)

(c) 押出成形分野を始めとするシステム案件への取組みを積極的に推進し、売上高並びに利益の増加を目指す。

(d) 先進国を中心とした生産年齢人口の減少に伴い、今後の省人化投資、生産効率化投資へ適切に対応するとともに、ユーザーの既納入機の買替需要を取り込む。

c経営基盤の強化

(持続的成長を図るための経営基盤への取組み)

(a) 透明性の高い企業統治(コーポレート・ガバナンス)の実現

(b) コンプライアンス意識の徹底による誠実な企業活動

(c) リスク管理の取組み強化とBCP対策への取組みの推進

(d) 人的資本経営の推進

・優秀な人材・適正人員の確保

・心理的安全性の確保

・育成方針に基づく教育研修制度の充実

・カワタテクニカルセンターを活用した教育や人材育成

・ダイバーシティ(多様性)への取組み強化

(e) グループの相乗効果(シナジー)の発揮

・事業所等の最適配置と再構築

・各部門におけるグループ相互の連携強化

・グローバル人材育成のための制度・運用とグループ間人材交流の強化

d資本収益性を意識した経営の推進

安定的に当期利益10億円以上、ROE8%以上を確保することを目標として、収益力向上と資産効率改善の両面からの取組みを進め、資本収益性を高めていく。

(a) 収益力向上

・上記 a新規市場、成長分野における事業展開の強化並びに b既存市場、既存分野での販売拡大と収益力向上の取組みを加速させることによる利益改善の前倒し

・グループ各社の収益力向上と収益安定化に向けた事業運営面の改革の検討

(b) 資産効率改善

・売掛債権の回収早期化や大型案件における前受金取引の拡大、在庫の適正化、生産リードタイムの短縮など経常運転資金の圧縮

・グループ内資金の有効活用なども含め、有利子負債の適正水準を維持

 

(3) 目標とする経営指標

当社グループは、株主の皆様への還元を充実させる一方で、高付加価値製品の開発や新規販売分野・地域の拡大、新規事業開発や戦略投資等にも積極的に経営資源を投下することにより、市場対応力のある企業として成長を続け、企業価値・株主価値を高めていくことを基本方針としております。経営指標としては、(2)に記載の中期経営計画を着実に推進することにより、中長期的には、株主資本と負債のバランスを適切な水準に維持しつつ、安定的に当期利益10億円以上、自己資本利益率(ROE)8%以上の確保により、自己資本配当率(DOE)2.5%以上確保することを目標としております。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループは、「社是」、「経営理念」を継続的に推進・実行することで、環境、社会、経済の各課題に真摯に取り組み、国連サミットで採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成に貢献します。

また、会社を持続的に成長させるためには、優秀な人材の確保と人材育成が重要な経営課題の一つとして捉えています。 従業員の自主性を尊重し、働きがいのある会社として、お客様に喜ばれる製品・サービスを提供することを目指します。

 

(1)ガバナンス

当社グループは、環境問題をはじめとするサステナビリティを巡る課題に適切に対応し、課題への対応状況等については、取締役会に適宜報告することとしており、現時点におけるサステナビリティを巡る課題は、以下のとおりであります。

 

1.人材の多様性の確保

当社グループは、ダイバーシティへの更なる取組みの強化を図るべく、役員・従業員を、国籍、人種、民族、信条、宗教、性別、年齢などで差別することなく、誰もが継続的に活躍できる環境を提供し、人材の多様性を確保することを重点課題の一つとしております。

2.環境保全

当社グループでは環境保全を経営方針の一環として掲げ、以下の環境方針を策定し、これを遵守・実践することとしております。

1)お客様の生産現場における生産性の向上と省力化・省エネルギー・省資源化に貢献するとともに、お客様の生産する製品を通じて、社会全体の環境保全に貢献する。

2)自社の事業活動において、生産性の向上と省力化・省エネルギー・省資源化に取り組み、社会全体の環境保全に貢献する。

 

  提出日現在において、サステナビリティに特化した委員会は設置しておりませんが、上記の各課題に関して、担当執行役員を中心に問題点を取り纏め、解決に向けた取組みに関しては、社外取締役を含め多様な視点から検証・協議を実施し、取締役会全体として監督を行っています。翌連結会計年度以降、サステナビリティに対する取組みへの一層の強化を図るべく、社内体制の整備に努めてまいります。

 

(2)人的資本に関する戦略並びに指標及び目標

1.戦略

当社グループは、「企業の成長」と「個人の成長」を目的として、自ら考え行動できる自律型人材を支援し、育てることを方針として、人材育成プログラムを実施しており、併せて、人的資本への積極的な投資の一環として、以下の社内環境整備を行っております。また、海外連結子会社においては、属する国の文化や慣習、労働環境、法制度にも配慮した組織運営を図っております。

今後とも従業員一人ひとりの自主性と働きがい、個性を大切にし、職場の安全と心身の健康を守るとともに、人権を尊重し、差別のない健全な社内環境の整備に取り組んでいきます。

1)幅広い知見・経験やチャレンジ精神を持った「自ら考え行動できる」人材の育成を主眼とし、従業員の向上心に応え、成長を支える教育制度と質の高い教育を従業員に提供し、自律的に学び、成長できる環境を創ります。

現在、専門分野、一般マネジメント分野の二軸での能力向上を図っていくべく、階層別の体系立てた教育研修システムを構築し、運用を行っております。

2)当社グループ内の人材交流の活性化、グループ内人材(海外拠点のナショナルスタッフを含む)に対する技術・技能の伝承を始めとした人材育成の場をより充実させることを狙いとしてカワタテクニカルセンターを建設し、技術研修会等で活用しています。

3)従業員一人ひとりが主体的に業務を遂行できる心理的安全性の確保を、経営課題の1つに掲げ、更なる改善に取り組んでおります。

具体的には、従業員意識調査を毎年年1回実施し、その調査結果に基づき、部門・部署単位で課題や問題点の洗い出しを行い、改善策を策定し、その進捗状況を定期的にフォローしていく形で取り組んでおります。

4)当社は、「健康経営優良法人 2024」の認定を受けております。当社グループでは、従業員の健康を重要な経営資源と捉え、健康管理、安全管理に重点を置いた取組みを推進し、健康維持増進に繋げます。

具体的な取組みは、以下のとおりです。

a. 定期健診、ストレスチェックの実施による体調、メンタル不調の未然防止

b. 産業医と保健師との連携による特定保健指導の実施

c. 健康やメンタルの不安に対応する産業医・保健師のカウンセリング窓口の設置

d. ハラスメント相談窓口の設置

 

 

2.指標及び目標

上記戦略に関連して、次の指標を設けております。なお、国内連結子会社は、いずれも法律の規定による公表義務の対象ではなく小規模な組織であるため、提出日現在における指標は、提出会社のものとなっておりますが、今後、サステナビリティの更なる推進を図っていくべく、連結グループを含めた数値的開示項目の選定並びに目標設定を行っていきたいと考えております。

①男性育休取得率

2023年度の実績は、当社目標15%に対しまして44.4%です。

今後更に取得率を高めていけるよう、環境改善も含め取り組んでまいります。

②男女間賃金格差

当社では、同一等級・同一区分においては、男女間の賃金格差はないものと認識しております。

③女性管理職比率

現在当社では目標の設定を行っておりませんが、女性管理職は1名です。

今後、多様な人材の強みを生かせる風土づくりへの取組みを含め、女性管理職の登用を積極的に推進してまいりたいと考えております。

 

(3)リスク管理

当社グループは、サステナビリティに関するリスクを含む事業等のリスク及び機会に対応するためリスクマネジメント基本方針を定めており、リスクマネジメントの実践を通じ、事業の継続・安定的発展を確保していくこととしております。また、リスクマネジメントを推進するためリスク審査委員会を設置し、リスクマネジメントの個別検討課題ごとに当該委員会の構成員である担当執行役員が具体策を検討・実行することとしております。

リスク審査委員会及び担当執行役員により検討されたリスクマネジメントに関する事項については、職制を通じて従業員に周知徹底を図り、取組みを実行しています。

想定されるリスクに関しては、「第2事業の状況 3事業等のリスク」に記載の9種類について、「発生可能性」及び「影響度」を検討し、リスクマップで(A)回避 (B)移転 (C)低減 (D)保有の4つに分類した上でリスクの低減を図ります。

 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期並びに顕在化した場合における当社グループの経営成績等の状況に与える影響の内容については、合理的な見積もりを行うことが困難であるため記載しておりませんが、企業経営に対する重大なリスクに適切かつ迅速に対応するためにリスク審査委員会を編成し、発生頻度の可能性や経営に与える影響度に応じたリスク情報の収集と分析を行っております。併せて、その予防と緊急時の対応策整備、当社グループ全体のリスクの統括的管理を行い、取締役会において、連結子会社を含めたグループ全体の最新状況を共有し、管理、監督の徹底に努めております。

今後の見通しとしては、世界経済は、中国の成長力の陰りに加え、ロシア・ウクライナ、中東、東アジアの情勢や主要国での選挙など、地政学的リスクの高まりから、景気の下振れが懸念されます。一方、先進国を中心に生産年齢人口の減少を補うための省人化、省力化に向けた取組みや、生産設備の老朽化に伴う買替需要には期待感があります。

このような状況を総合的に勘案した上で、より強靭な事業体を構築し、世の中から必要とされる「優良企業」を目指すべく、「第2事業の状況 1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(2)」に記載の中期経営計画を策定しました。

翌期につきましては、大型受注案件の売上が一巡したことと、日本や中国における射出成形機の受注低迷の影響を受けたことによる受注残高の減少により減収、減益を見込んでおりますが、中期経営計画に定めた諸施策の実行等により、翌々期以降は増収、増益を見込んでおります。

現時点においては、損益及び財政状態に重大な影響を与えるリスクの存在はないと認識しておりますが、万一、当社グループに重大な影響を及ぼす事象が発生した際は、速やかに関係者に対する通知並びに開示等の適切な対応を行います。

 

(1) 特定事業分野への集中リスク

当社グループのコアビジネスはプラスチック製品製造機器事業であり、中でも、自動車関連や電子部品関連業界向けの高機能合理化機器の売上高構成比が高くなっております。当社グループは、今後も継続して新規販売分野の開拓・拡大や、新製品・新技術の開発等に注力してまいりますが、国内外のプラスチック成形加工業界の設備投資額が景気動向等により低下した場合や、当該業界を取り巻く技術革新や事業環境の変化に対応できなかった場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 原材料価格の上昇リスク

当社グループの製品の原材料には、鋼材等、市況変動の影響を受けるものがあります。種々の原価低減策を上回る原材料価格の上昇が生じた場合は、可能な範囲で販売価格へ転嫁するよう努めますが、価格転嫁が十分にできなかった場合は、利益率が低下する可能性があります。

 

(3) 価格競争激化のリスク

当社グループの主力納入先であるプラスチック成形加工業界は、国内外での激烈な技術革新と品質・価格競争の中にあり、設備投資に関する要求水準が厳しくなっております。当社グループでは、高付加価値製品の開発や品質・納期・価格面での競争力強化に努めておりますが、想定を上回る価格競争が生じた場合には、利益率が低下する可能性があります。

 

(4) 海外事業リスク

当社グループは、プラスチック成形加工業界向けの需要や市場の将来性が見込める海外地域に拠点を展開する方針としており、東アジア、東南アジアでの生産拠点、東アジア、東南アジア、北中米での営業・サービス拠点の強化に努めております。2024年3月期において、売上高に占める海外売上高の割合は37.1%となっており、中でも東アジア(中国、台湾等)の重要性が増しております。当該海外地域での政治的混乱、法律の一方的な改訂、経済状況の変化、宗教問題等、予期せぬ事態が発生した場合には、当社グループの生産・営業活動に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(5) 為替レートの変動リスク

当社グループは、輸送コストや為替の影響を軽減するため、海外生産を中国、インドネシアで行っておりますが、中国人民元、インドネシアルピアの通貨価値の変動により、各製造子会社の外貨建の販売価格、仕入価格に影響を及ぼす可能性があります。外貨建取引については為替先物予約等によるリスクヘッジに極力努めておりますが、急激な為替レートの変動があった場合は、想定以上の為替差損益が発生する可能性があります。また、各海外子会社における売上、費用、資産及び負債については、連結財務諸表作成時に各現地通貨から円換算を行っているため、換算時のレートの変動により、当社グループの損益や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) 人材の確保と育成のリスク

当社グループの事業の発展と成功は、人材の確保と育成にかかっております。中でも海外子会社においては、実務能力に加えて、現地従業員に対するリーダーシップとコミュニケーション能力にたけた人材を十分に確保・育成する必要があります。人材の確保・育成に成功しなかった場合には、当社グループの中長期的な事業戦略に影響を与える可能性があります。

 

(7) 訴訟リスク

当社グループの事業活動において、知的財産、製造物責任、環境保全、労務問題等に関し訴訟を提起される、または訴訟を提起する場合があり、その動向によっては当社グループの損益及び財政状態、社会的信用等に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(8) 自然災害、事故災害、重篤な感染症の流行のリスク

地震、台風等の自然災害や火災等の事故災害が発生した場合、重篤な感染症が流行した場合、直接的または間接的に当社グループの生産・営業活動に影響を及ぼし、損益及び財政状態が悪化する可能性があります。

 

(9) 気候変動によるリスク

気候変動がもたらす大規模災害による生産設備への被害や原材料調達等への影響のほか、世界各国における気候変動に対する規制強化や制度の変化により原材料やエネルギー等に係るコストが上昇した場合には、直接的または間接的に当社グループの生産・営業活動に影響を及ぼし、損益及び財政状態が悪化する可能性があります。

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態、経営成績の状況

a.当連結会計年度の概況

当連結会計年度の世界経済は、コロナ禍からの経済正常化が進む一方、コロナ禍で生じた繰越需要が一巡したことや高インフレと金融引き締めの影響で成長は鈍化傾向にあり、また、国際情勢が一段と不安定化する中、不透明感が高まっております。

わが国経済も、5月に新型コロナウイルス感染症の分類が5類感染症に移行したことなどに伴い経済活動の正常化が進み、景気は回復基調で推移しましたが、設備投資については、資源価格の高止まりや海外経済の減速懸念等により弱含みの状態が続いております。設備投資の動向を知るうえで先行指標の一つである機械受注統計の推移を見ても、製造業の機械受注額は、2023年4月~6月は12,626億円(前年同期比10.5%減)、7月~9月は12,306億円(同10.8%減)、10月~12月は12,207億円(同0.7%減)、1月は3,623億円、2月は3,963億円と、2月に若干持ち直しの動きが見られたものの、前年同期比で見ると減少傾向で推移しました。

このような環境下、当社グループは、プラスチック成形関連のコアビジネスにおきまして、品質の向上、納期の確守、新製品の開発等、競争力強化によるマーケットシェアの拡大を図るとともに、電池、食品、化粧品等の新規販売分野の開拓・拡大に注力してまいりました。

しかしながら、当連結会計年度における受注高は、国内外の自動車業界向けを中心とした射出成形関連の受注が低迷していることに加え、スマホ・VR用レンズ関連の受注に一服感が見られたことなどにより、前年同期比38億2千万円減(同15.9%減)の201億8千8百万円、受注残高は前年同期比32億4千1百万円減(同24.9%減)の97億6千1百万円となりました。一方、売上高につきましては、電気自動車(EV)向けのリチウムイオン電池関連の売上が増加したこと及び前期に受注した大型案件の売上が計上されたこと等により、前年同期比56億6千7百万円増(同30.1%増)の244億9千4百万円となりました。

損益面では、大型受注案件の増加に伴う製品構成比率の変動等により売上総利益率が悪化(28.2%→25.5%)し、人件費を中心として販売費及び一般管理費が増加しましたが、売上高の増加に伴う売上総利益の増加により、営業利益は前年同期比6億1千万円増(同95.6%増)の12億4千9百万円、経常利益は為替差益1億3千9百万円の計上等により前年同期比6億円増(同73.9%増)の14億1千4百万円となりました。

特別損益では、固定資産売却益2百万円を特別利益に、固定資産除売却損3百万円、減損損失1千4百万円を特別損失に計上し、更に法人税、住民税及び事業税4億7千2百万円、法人税等調整額4百万円を計上したこと等により、親会社株主に帰属する当期純利益は前年同期比5億7千7百万円増(同164.5%増)の9億2千9百万円となりました。

 

b.報告セグメント別の概況

日本におきましては、電気自動車(EV)向けのリチウムイオン電池関連の売上が堅調に推移したことに加え、前期に受注したフィルム・シート関連等の大型案件の売上が計上されたこと等により、売上高は前年同期比37億5百万円増(同28.8%増)の165億5千2百万円となりました。損益面では、資源価格の高止まりに加え、大型受注案件の増加に伴う製品構成比率の変動等により売上総利益率が悪化(24.0%→22.4%)し、販売費及び一般管理費も増加しましたが、売上高の増加に伴う売上総利益の増加により営業利益は前年同期比3億5千5百万円増(同53.3%増)の10億2千1百万円となり、セグメント利益(経常利益)は前年同期比3億5千6百万円増(同37.2%増)の13億1千5百万円となりました。

東アジアにおきましては、電気自動車(EV)向けのリチウムイオン電池関連並びにスマホ・VR用レンズ関連の売上が堅調に推移したことにより、売上高は前年同期比15億8千2百万円増(同29.1%増)の70億1千2百万円となりました。損益面においては、売上総利益率は悪化(28.8%→26.0%)したものの、売上高の増加に伴う売上総利益の増加により、営業利益は前年同期比2億8百万円増(同271.5%増)の2億8千5百万円となりました。また、セグメント利益(経常利益)は為替差益が減少したものの前年同期比1億5千6百万円増(同160.5%増)の2億5千4百万円となりました。

東南アジアにおきましては、地域によりばらつきはあるものの、民間設備投資については緩やかな回復が続いておりますが、一部地域で自動車関連の設備投資が伸び悩み、売上高は前年同期比2千2百万円増(同1.2%増)の18億8千4百万円となりました。損益面では、販売費及び一般管理費は増加したものの、売上総利益率の改善(35.1%→36.9%)等により、営業利益は前年同期比1千7百万円増(同78.2%増)の3千9百万円、セグメント利益(経常利益)は前年同期比1千1百万円増(同34.7%増)の4千6百万円となりました。

北中米におきましては、中米では自動車関連を中心とした設備投資が緩やかに回復基調にあり、売上高は前年同期比7千6百万円増(同39.9%増)の2億6千7百万円となりました。一方、損益面では、売上総利益率はほぼ横ばい(32.2%→32.5%)であったものの、販売費及び一般管理費の増加により、営業損失は1億2千1百万円(前年同期は1億8百万円の営業損失)、セグメント損失(経常損失)は9千1百万円(前年同期は8千5百万円の経常損失)となりました。

 

なお、報告セグメントの売上高には、セグメント間の内部売上高を含んでおります。

 
c.資産、負債及び純資産の状況

流動資産は、前連結会計年度末に比べて、受取手形及び売掛金、契約資産、原材料及び貯蔵品等が増加したことにより10億8百万円増加し、200億5千4百万円となりました。固定資産は、前連結会計年度末に比べて、建設仮勘定が減少しましたが、建物及び構築物が増加したこと等により5億6千1百万円増加し、66億8千7百万円となりました。この結果、総資産は、前連結会計年度末に比べて15億6千9百万円増加し、267億4千1百万円となりました。

流動負債は、前連結会計年度末に比べて契約負債が減少しましたが、短期借入金、未払法人税等、その他の流動負債が増加したこと等により、3億3千5百万円増加し、98億3千6百万円となりました。固定負債は、前連結会計年度末に比べて、長期借入金、繰延税金負債、退職給付に係る負債が増加したこと等により3億5千2百万円増加し、42億6千2百万円となりました。この結果、負債合計は、前連結会計年度末に比べて6億8千7百万円増加し、140億9千9百万円となりました。

純資産合計は、前連結会計年度末に比べて、利益剰余金、その他有価証券評価差額金、為替換算調整勘定が増加したこと等により8億8千2百万円増加し、126億4千2百万円となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益が13億9千8百万円となりましたが、売上債権の増加22億1千8百万円、法人税等の支払額3億3千万円等の支出要因が、減価償却費3億6千8百万円、棚卸資産の減少1億8千9百万円等の収入要因を上回り、1億3千9百万円の支出超過(前年同期は5億5千4百万円の収入超過)となりました。

投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出6億9千5百万円、ソフトウェアの取得による支出6千5百万円等により、6億5千3百万円の支出超過(前年同期は10億3千万円の支出超過)となりました。

財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の増加による収入7億5千万円、長期借入金の増加による収入3億7百万円、配当金の支払額2億9千万円等により、7億3千8百万円の収入超過(前年同期は7億6千万円の収入超過)となりました。

上記結果の他に、換算差額が7百万円となり、当連結会計年度末の現金及び現金同等物残高は、前連結会計年度末に比べて4千6百万円減少して、70億4千万円となりました。

 

③ 生産、受注及び販売の状況

a.生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。なお、北中米には生産拠点が存在しないため、記載しておりません。

 

セグメントの名称

生産高(千円)

前年同期比(%)

日本

14,966,044

29.8

東アジア

5,551,861

18.6

東南アジア

429,774

△8.7

合計

20,947,681

25.6

 

(注) 1  セグメント間取引については、相殺消去しております。

2  金額は販売価格によっております。

3  上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

b.受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前年同期比(%)

日本

13,377,341

△16.3

7,234,080

△21.3

東アジア

5,028,265

△18.7

2,079,316

△36.9

東南アジア

1,577,296

△0.6

350,294

△12.7

北中米

205,426

△15.4

97,992

△18.4

合計

20,188,330

△15.9

9,761,683

△24.9

 

(注) 1  セグメント間取引については、相殺消去しております。

2  上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

c.販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

販売高(千円)

前年同期比(%)

日本

15,865,754

33.6

東アジア

6,503,691

32.0

東南アジア

1,874,590

1.7

北中米

250,871

41.4

合計

24,494,908

30.1

 

(注) 1  セグメント間取引については、相殺消去しております。

2  上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

3 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合

相手先

前連結会計年度

(自  2022年4月1日

至  2023年3月31日)

当連結会計年度

(自  2023年4月1日

至  2024年3月31日)

販売高(千円)

割合(%)

販売高(千円)

割合(%)

芝浦機械株式会社

1,491,784

7.9

3,279,212

13.4

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5経理の状況 1連結財務諸表(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.経営成績

受注高は、国内外の自動車業界向けを中心とした射出成形機の受注低迷の影響が大きく、射出成形機の周辺機器の受注が減少したことに加え、電気自動車(EV)向けのリチウムイオン電池関連並びにスマホ・VR用レンズ関連の受注に一服感が見られたことなどにより、年度全体では前年同期比15.9%減となりましたが、売上高は前期に受注した大型案件の売上が計上されたことなどにより、前年同期比30.1%増となりました。これらをセグメント別に見ますと、日本セグメントにおきましては、2022年度後半から続く射出成形機の受注低迷の影響を受け周辺機器の売上は減少しましたが、電気自動車(EV)向けのリチウムイオン電池関連の売上は堅調に推移しました。一方、射出成形機関連の受注低迷に加えリチウムイオン電池関連の受注に一服感が見られたことから、受注は減少しました。東アジアセグメントにおきましては、電気自動車(EV)向けのリチウムイオン電池関連並びにスマホ・VR用レンズ関連の売上は堅調に推移したものの、同業他社との激しい価格競争により受注は伸び悩みました。東南アジアセグメントにおいては、各国の景気回復スピードにはばらつきがあるものの、景気は概ね回復基調で推移しましたが、自動車関連の設備投資はコロナ禍前の水準まで回復するには至らず、売上は横ばいで推移しました。また、北中米セグメントにおいては、中米では自動車関連を中心とした需要は回復しつつあるものの、北米では日系自動車メーカーの設備投資が予想以上に低迷し、受注は低調に推移しました。

売上総利益率は、日本セグメントにおきましては、資源価格の高止まりに加え、大型受注案件の増加に伴う製品構成比率の変動等により、前年度24.0%→当年度22.4%と1.6%悪化しました。東アジアにおきましては、中国子会社における大型受注案件の製品構成比率の変動等により、前年度28.8%→当年度26.0%と2.8%悪化しました。東南アジアにおきましては、売上高は微増でしたが、変動諸経費の減少により、前年度35.1%→当年度36.9%と1.8%改善しました。北中米におきましては、前年度32.2%→当年度32.5%とほぼ横ばいとなりました。

販売費及び一般管理費は、賃上げ等に伴う人件費の増加やコロナ禍後の経済活動正常化に伴う旅費交通費、広告宣伝費の増加等により前年同期比で7.1%増加しました。

営業外損益全体では、為替差益1億3千9百万円、補助金収入5千万円等の計上により1億6千5百万円の利益(前年同期は1億7千4百万円の利益)となりました。

 

特別損益全体では、固定資産売却益2百万円、固定資産除売却損3百万円、減損損失1千4百万円の計上により1千6百万円の損失(前年同期は1億4千6百万円の損失)となりました。

また、法人税、住民税及び事業税4億7千2百万円、法人税等調整額4百万円を計上し、海外子会社の損益の内、非支配株主に帰属する利益としてマイナス8百万円を計上したことにより、親会社株主に帰属する当期純利益は前年同期比5億7千7百万円増(同164.5%増)の9億2千9百万円となりました。

 

b.財政状態

当社グループの経常運転資金(売上債権+棚卸資産-仕入債務)は、概ね月商の4~5か月程度であり、機械製造業として適正であると考えております。現預金残高は、大型案件の受注や売上時期が必ずしも毎月一定額とはならない当社の事業形態を考慮して、概ね月商の2~3か月程度を適正水準としております。また、海外子会社においては、資金の現地調達事情や緊急時の手元流動性をある程度考慮するようにしております。当年度においては、コロナ禍からの経済正常化に伴い現預金残高の圧縮を進めてまいりましたが、期末残高としては適正水準より若干高い水準となっております。また、当年度においては、売上高の増加に伴う売掛金残高の増加等により経常運転資金が増加したことから、有利子負債(長短期借入金)が増加しております。現在の各勘定科目の水準は、現状の受注状況や、効率性と安全性の両面から考えると適正であると判断しており、今後も自己資本比率45%程度、現預金は月商の2~3か月程度、有利子負債は月商の4か月程度をひとつの目途値と考えております。

当社は、今後も棚卸資産の削減、売掛金の早期回収等により営業キャッシュ・フローの拡大を図るとともに、事業投資は営業活動によるキャッシュ・フローの収入超過額の枠内とすることを原則といたしますが、株主価値を持続的に向上させるため、新規事業開発や海外展開、戦略投資等には積極的な投資を実施していく予定です。

一時的に営業活動によるキャッシュ・フローの収入超過額が不足する資金需要については、事業投資資金は長期借入金や社債により、運転資金は短期借入金により安定的に調達することを基本方針としております。また、現時点では具体的な予定はありませんが、大型の設備投資やM&A等の戦略投資の際には、エクイティファイナンスも今後は選択肢のひとつとして検討する可能性があります。

 

c.経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

「第2事業の状況 1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)目標とする経営指標」に記載のとおり、当社グループは、中長期的には、株主資本と負債のバランスを適切な水準に維持しつつ、安定的に当期利益10億円以上、自己資本利益率(ROE)8%以上の確保により、自己資本配当率(DOE)2.5%以上確保することを目標としております。

当連結会計年度におきましては、利益剰余金の増加等により自己資本比率(前年度45.8%→46.4%)が上昇しました。これに対し、売上高の増加による売上総利益の増加等により収益性(売上高当期純利益率:前年度1.9%→3.8%)が改善し、自己資本利益率(ROE)は7.8%と前連結会計年度の3.1%と比較して4.7%改善いたしました。配当については、自己資本配当率を安定して確保する観点から1株当たり年間41.0円(中間配当20.5円、期末配当20.5円)の配当を実施させていただくことにより、自己資本配当率(DOE)は2.4%(前年度は2.6%)となりました。

中長期的な目標の達成に向け、適正な販売価格の維持と製造工程における業務効率化並びに中期経営計画、優先的な対処課題の着実な推進により、継続的な企業価値の向上と事業体質の更なる強化に努めてまいります。

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

 

6 【研究開発活動】

当社グループは「業界トップ技術」のカワタグループとして、「高機能かつ操作性に優れた」プラスチック加工合理化機器の独自製品の研究開発を進めるとともに、長期成長の基盤となるべき新技術の基礎的研究と新規分野製品の開発に取り組んでおります。

当連結会計年度における研究開発費の総額は226,475千円であり、主として日本及び中国(東アジア)において研究開発活動を行っております。その主な内容は、次のとおりであります。

 

(1) 日本

当該セグメントにおける研究開発費の金額は213,926千円であり、主な内容は次のとおりであります。

①  新型熱風乾燥機ADHの開発・シリーズ化が完了しました。業界トップクラスの省スペース、選択可能な乾燥性能、イージーメンテナンスを実現しました。さらに、省エネと軽量化によりCO2排出削減に貢献しております。

②  トレサビリティの向上に貢献できる樹脂材料サンプリング装置を完成しました。既設乾燥機への取付が可能であり、樹脂乾燥進行度合いを確認するためのサンプル採集が容易になりました。

③  全固体リチウムイオン電池の早期量産化に対応するため、微粒子表面コーティング装置の大型化と自動化を中心に開発を進めています。

④  IoT対応への取組みである「Kawata-Smart-Link」の通信機能については、各成形機メーカーと連携し、新たにリリースされた材料供給システム用EUROMAP規格対応を進めています。

⑤  新型2系統冷温調機(新型コントローラG03搭載)の開発を進めています。

⑥  水冷チラーのインバータ化の開発を進めています。

 

(2) 東アジア

当該セグメントにおける研究開発費の金額は12,549千円であり、主な内容は次のとおりであります。

①  質量計量機に知能機能を搭載したKシリーズ製品(WK-50-KS、WK-100-KS)の開発を進めています。Kシリーズは川田機械製造(上海)有限公司製の新型コントローラとIoT通信機能を搭載し、ホスト、クライアントMESシステム、クラウドプラットフォーム(K-CLOUD)間の連携を実現し、工場のスマート化に貢献できます。

②  川田機械製造(上海)有限公司製計量混合機に搭載する新型コントローラ(KMS-M02)の開発を進めています。