第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針

当社グループ(JCM)は、これまで金銭に関わる事業を通じて、日本及び世界の貨幣の法的秩序を保つこと(治安維持貢献)を存在意義と位置付け、真に顧客やユーザーの視点に立ったモノづくりやサービスの提供により、貨幣流通において市場と価値を創造し続ける真のグローバル企業を目指しておりました。この度、中期経営計画「JCM Global Vision 2032」の策定において、外部環境・内部環境が大きく変化し複雑化するなかで、JCMの存在意義を見つめ直し、議論を進めてまいりました。

その結果、創業者の想い「仕事のはじめに、人間ありき」を元にこれを再定義し、JCMに根付く企業文化・理念を「JCM Spirit」(JCMスピリット)、社会の中の役割・存在意義を「Purpose」(パーパス)、Purposeを実現するための使命を「Mission」(ミッション)で構成したうえで、Missionを成し遂げた先の目指す社会・ありたい姿を「Vision」(ビジョン)として、「JCM Global Vision 2032」を策定することにいたしました。

「幸せを世界に弘める」JCMは、モノづくりやサービスを通じて、豊かで持続性のある社会を実現し、グローバルに貢献する企業を目指します。

 

JCM Spirit

  社是

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 行動指針

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Purpose

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Mission

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Vision

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(2)経営戦略等

当社グループは、2023年5月に2025年度(2026年3月期)を最終年度とする中期経営計画「JCM Global Vision 2032」を下記のとおり策定いたしました。

 

基本方針

①多様化するマネートランザクション(代金決済)分野において、お客様へ信頼を提供し続ける企業であり続け

 る。

 ⇒これまでの当社の強みである「貨幣処理機器市場というニッチな市場で、高いシェアを獲得する」

②新たな事業領域においてもブランドカンパニーたる地位の確立を目指す。

 ⇒昨今の大きな流れである「キャッシュレス」時代に向け、新たなニッチ市場の獲得に挑戦する

 

重点施策

①新たな事業領域を構築するための礎(先行投資)を確立

②既存技術・製品の他市場への積極展開

③海外コマーシャル市場の更なる拡大

④多様化するマネートランザクションへの対応

⑤既存事業領域の収益性の改善

⑥最適な経営資源の傾注

 

(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

本年5月に公表しました次期(2026年3月期)の連結業績予想数値が、現在進行中である中期経営計画「JCM Global Vision 2032」の最終年度(2026年3月期)の数値目標を下回る状況にあることから、現在、当該中期経営計画の見直し、あるいはローリングによる更新の検討を進めており、新たな目標数値を策定次第、速やかに公表いたします。

 

(4)経営環境

次期(2026年3月期)における当社グループを取り巻く事業環境については、地政学リスクや物価上昇等の継続に伴う欧州を中心とした海外景気の減速に加え、米国の通商政策等による影響が景気の下振れリスクとして想定されることから、先行きは依然として不透明な状況が続くことが予想されます。また、当社グループの市場環境については、海外では特に欧州における景気の減速感の広がりが懸念されるとともに、国内の各市場においては当期業績に大きく寄与した新紙幣の改刷需要の一巡に伴い、貨幣処理機器への設備投資意欲は抑制傾向となることが予想されます。

 

(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当社グループでは、地政学リスクや物価上昇等の継続に伴う欧州を中心とした海外景気の減速に加え、米国の通商政策等の影響による景気の下振れリスクなど、不確定要素の多い事業環境の中、世界各地域の動向等を絶えず注視するとともに、既存市場での販売努力や新市場開拓に向けた各種施策を進めてまいります。

 販売面では、ゲーミング市場において、カジノホテルのバックオフィスでの現金処理プロセスの自動化及び省力化に資する新製品と既存主力製品とのシナジーを最大限発揮した提案活動等を実施することで、市場シェアの維持・拡大に取むとともに、海外コマーシャル市場においては、当該市場向け事業を当社の主力事業であるゲーミング市場向けと並び立つ事業とすべく、北中南米地域の市場開拓に向けた新製品開発や販路拡大等を加速させるとともに、アジア地域の未開拓国への積極的な営業活動に努めてまいります。なお、今後の当社業績の牽引役とすべく積極的な人的、物的両面での先行投資を進めている北中南米コマーシャル市場の事業としての収益面の立ち上がりは、当初想定していた時期よりもやや遅れる見込みであります。

 さらに、当社グループの中長期的な課題である新たな柱となり得る新事業領域の獲得に向けた研究開発活動や、当社のコアテクノロジーを応用した技術や製品の他市場展開等においても、引き続き積極的に推進することで当社グループのさらなる成長を目指してまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

   当社グループのサステナビリティに関する取組は、以下のとおりであります。

   なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

   当社グループは、「JCM Global Vision 2032」を通じて「豊かで持続性のある社会の実現」を目指すという経営方

  針に基づきサステナビリティに関する課題に対処しております。この豊かで持続性のある社会を実現するために「環

  境への負荷低減」、「多様な人材が働きやすい職場環境づくり」などを、マテリアリティ(重要課題)として認識し

  ております。

 

(1)気候関連に対する取組

  国内外のサステナビリティ開示で広く利用されている「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言に基づき取組を開示いたします。

 ①ガバナンス

 当社グループは、サステナビリティに関する活動を全社的な視点から統括し推進するための委員会として「リスク管理委員会」と「環境委員会」を「経営会議」の下に設置し、「経営会議」がサステナビリティを巡る課題に主体的に取り組む体制としています。

 「経営会議」において、「リスク管理委員会」及び「環境委員会」より報告を受けた経営上のリスク及び機会について対応方針を決定し、特に重要な経営上のリスク及び機会については「取締役会」に上申して判断を仰ぎます。

 また、「経営会議」は、「リスク管理委員会」及び「環境委員会」を通じて各グループ会社各部門に気候変動関連等のリスクへの対応を指示します。

 「取締役会」は、「経営会議」より定期的に報告を受け、上程された議題に関して決定を下し、「経営会議」に指示します。

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 ②戦略

 当社グループは、企業活動で起こりうる環境負荷に対し、全ての事業において、「4℃シナリオ(世界の平均気温が4℃以上上昇する)」、「1.5℃シナリオ(世界の平均気温が1.5℃未満に抑えられる)」という2つの気候変動シナリオでリスクと機会を分析しました。

 4℃シナリオでは自然災害の激甚化による生活活動停滞が、1.5℃シナリオでは炭素税の導入や調達コストの増加が事業に大きな影響を与えることを認識しました。また機会については、低炭素製品・サービスの需要増加に対応した製品開発に機会があると認識しました。

 当社グループは、リスクへの対応を進めるとともに気候変動対応を含む社会課題解決に貢献する製品・サービスの開発による機会の最大化に努めてまいります。

 

評価結果

シナリオ

リスク

区分

事象

インパクト

算出対象

算出の考え方

発現時期と損益影響度

短期

中期

長期

4℃

シナリオ

物理的

リスク

自然災害の激甚化・感染症の拡大による生産活動への影響

サプライチェーンの分断、生産拠点の被害

海外生産拠点(フィリピン工場)の操業停止による生産品目の販売機会の喪失についての算出

1.5℃

シナリオ

移行

リスク

原材料価格の高騰

原材料価格の高騰に伴うコストの増加

原油価格高騰からプラスチック製品の仕入価格上昇額を算出

市場の変化

燃料・電力のコスト上昇

価格上昇率から燃料・電力コストを算出

法規制の強化

炭素税・EU国境炭素調整導入に伴うコストの増加

予想炭素価格から炭素税額を算出

(注) 時間軸 短期(~2025年度)、中期(2026~30年度)、長期(2031~50年度)

   損益影響度評価基準 コロナ禍前(2014~2018年3月期)の5年間の平均営業利益1,575百万円を基準と

             し、営業利益に対して「10%以上」の影響が想定される場合を「大」、「5%以上、

             10%未満」の影響が想定される場合を「中」、「5%未満」の影響が想定される場合

             を「小」、発現の可能性が低い、または影響が軽微な場合を「-」と判定した。

 

 

4℃シナリオにおけるリスクへの対応

シナリオ

リスク

区分

事象

リスクへの対応

4℃

シナリオ

物理的

リスク

自然災害の激甚化・感染症の拡大による生産活動への影響

販売機会の喪失に伴う影響額が大きいことから、在庫を多めに持つことや重要部品については複数の調達先を持つように努めるとともに、中長期的にはグローバルでの最適生産体制の構築に向けても取組を進めていく。

 

1.5℃シナリオにおけるリスク及び機会への対応

シナリオ

リスク

区分

事象

リスクへの対応

機会への対応

1.5℃

シナリオ

移行

リスク

原材料価格

の高騰

「原材料価格の高騰に伴うコストの増加」による影響が想定されることから、再生プラスチック等の代替品への転用の可能性の検討を進めていく。

気候変動を含む社会課題解決の視点を製品開発に取り入れ、販売機会の増加と企業ブランドの価値向上につながる社会的価値の高い製品・サービスの開発に取り組む。

市場の変化

「炭素税導入等に伴うコストの増加」及び「燃料・電力のコスト上昇」による影響額は小さいとみているが、2025年度に向けて原燃料の再エネ導入、省エネ促進を進めるとともに、中長期的にはGHG排出量の確実な削減を推進していく。

法規制の強化

顧客ニーズ

の変化

気候変動に対応した製品・サービスの開発

 

 

 ③リスク管理

 当社グループは、リスクを全社的に管理する体制を構築することが重要であるという認識に基づき、「リスク管理委員会」を設置し、気候変動リスクを含む経営上のリスクを統合的に識別・評価・管理をしております。

 「リスク管理委員会」は、社内外環境の分析や各グループ会社各部門からの報告をもとに、網羅的にリスクを選別します。また、事業及び財務への影響度を「発生時の損益影響度」の観点で評価し、重要な経営上のリスクを特定します。気候変動リスクについては、複数の気候変動シナリオを採用してシナリオごとに移行リスクと物理リスクを識別し発生時の損益影響度に加えて発現予想時期の観点で評価し、重要な経営上のリスクを特定します。

 リスクの対応は各グループ会社各部門が担当し、「リスク管理委員会」が推進状況とモニタリングを行い、必要に応じて対応の見直しを指示します。

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 ④指標及び目標

 当社グループは、気候関連のリスク及び機会の管理に用いる指標と目標を設定し、これらを中期経営計画の非財務指標として位置付け、進捗管理を進めてまいります。

 温室効果ガス排出量について当社の認識は、全排出量におけるScope3の比率が高いこと、販売した製品の使用により消費する電気由来の温室効果ガス排出量の占める比率が高いこと、海外売上比率が高いことによる海外での排出量割合が挙げられます。これらの当社の特性に合わせた適切な取組を推進してまいります。

 

温室効果ガス排出量(2023年度)                           (単位:t-CO₂)

項目

区分

排出量

構成比

事業活動による

温室効果ガス排出量

Scope1

    229

   0.2%

Scope2

    380

   0.4%

            計

    610

   0.6%

サプライチェーンにおける

温室効果ガス排出量

購入した製品・サービス

   36,509

   37.1%

資本材

    3,116

    3.2%

販売した製品の使用

   55,561

   56.5%

その他

    2,601

   2.6%

Scope3        計

   97,787

   99.4%

排出量(t-CO₂)合計

 

   98,397

  100.0%

(注) 各スコープの集計対象は以下のとおりです。

    「Scope1、Scope2:国内拠点、海外生産子会社」

    「Scope3:カテゴリ1、2、3、5、6、7、9、11、12、連結」

 

 

 当社グループは、Scope1、Scope2について、2025年度までに温室効果ガス排出量30%削減(2018年度比)を目指し、様々な削減対応を実施した結果、2023年度において目標を達成したことから、Scope1、Scope2について、2025年度までに温室効果ガス排出量40%削減(2018年度比)を目指してまいります。

 

気候関連リスク及び機会の管理に用いる指標

分類

指標

リスク管理

温室効果ガス排出量(Scope1、Scope2の合計)

 

温室効果ガス排出量実績及び目標                         (単位:t-CO₂)

2018年度

実績

(基準年)

2025年度

目標

2018年度

実績比

削減に向けた対応

2022年度

実績

(参考)

2023年度

実績

(参考)

1,071

640

△40.0%

・カーボンニュートラル都市ガスの導入検討

・長浜工場における太陽光パネルの設置検討

・東京本社および長浜工場、その他事務所での再生可能エネルギーの導入検討

970

610

(注) 目標の設定にあたり、2018年度を基準年としております。

 

 Scope3について、当社グループの主要な排出源は、カテゴリ1(購入した製品・サービス)、カテゴリ2(資本材)及びカテゴリ11(販売した製品の使用)です。カテゴリ1については仕入先に協力をいただくことが必要となり、カテゴリ2については購入する資本材に関する排出係数の可視化・統一された算定基準の策定、カテゴリ11については製品の設計見直しや設備投資が必要となることから、Scope3の目標設定と排出量削減に向けた対応については中期的な課題として取り組んでまいります。

 

GHG排出量削減に向けた取組

 Scope1、2について、当社は排出割合の低い事業環境ではありますが、当社グループ各拠点の省エネ推進および再生可能エネルギーへの転換を一層進めてまいります。

 また、Scope3について、サプライチェーン全体でのGHG排出量の削減に向け、製品設計を見直して製品の省エネ化・環境に負荷のかからない新しい製品の開発に取り組みます。

 

 (2)人的資本に関する取組

   ①人的資本関係

 当社グループの人的資本に対する基本方針は、従業員は「お互いを尊重し合い、個性を発揮しながら仕事を通じて人として成長し続けること」、会社は「人が成長し続ける機会を、仕事を通じて提供していくこと」で、従業員一人ひとりが家庭と職場に良い影響を与え、それらが集結することで継続的に価値を創造し続ける企業であり続けることが出来ると考えております。

 今後一層事業のグローバル化が進む中、人事戦略の世界基準となっている「ダイバーシティの拡充」、「中核人材の育成」、「多様な働き方の実現」を当社の人材戦略の中心とし、その取組を推進してまいります。

 

②人材育成方針

 当社グループの新入社員は、入社後約3ヶ月かけて国内主要3拠点を移動し全部門でOJT方式の研修を実施しています。お互いを尊重し合いながら仕事を進めていける「JCM Spirit」を学び、理解する重要な研修となっております。

 また、中核人材の育成として、当社グループは、次世代・次々世代の役員候補者に対して、専門分野のみでなく、経営視点で物事を考え、決断できる人材へ育成するために社内取締役、執行役員を中心とした「経営会議」に部長職社員が参加し、自部門の議案等の提案を行い、取締役、執行役員との意見交換や議論を通じて、経営視点で検討する際に必要な情報はどのようなものか実学を通じて育成しております。

 

③社内環境整備方針

 当社グループは、グループ経営理念の実現と当社グループの成長を追求し続けるための基盤は、従業員とその家族の心身の健康であると考え、従業員が安心して業務に従事できる環境の構築を目指しています。

 

 ⅰダイバーシティの推進

  当社グループでは、人材の多様性(ダイバーシティ)を受け入れ、一体感を醸成する(インクルージョン)こ

 とで、従業員同士が相互に信頼でき、尊重する企業文化を構築し、当社グループの一員であることの誇りと責任

 を感じることができる企業グループを目指し、女性活躍の推進に取り組んでいます。

 

 ⅱワークライフバランスへの取組

  当社グループでは、従業員が家事や育児、介護などの家庭の責任を果たしながら仕事で十分に能力を発揮し、

 パフォーマンスを高めるために、育児休業などの制度の充実や多様な働き方を可能とするための在宅勤務やフレ

 ックス勤務制度などさまざまな取組を推進しています。

 

④指標及び目標

 当社グループではサステナビリティ推進にあたり、前述のとおり人的資本を重要視しており、上記各方針の実現に向けて、次の指標を用いており、当該指標に基づく目標及び実績は以下のとおりであります。

 

指標

対象範囲

目標

実績(2025年3月期)

採用に占める女性比率

単体

30以上

52.4

正社員に占める
女性従業員比率

単体

2032年まで20

18.2

なお、「管理職に占める女性労働者の割合」「男性労働者の育児休業取得率」「労働者の男女の賃金の差異」については、「第1 企業の概況 5 従業員の状況」を参照ください。

 

連結会社

「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定による公表義務の対象ではないため、記載を省略しております。

 

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末日現在において当社グループが判断したものであります。

①経済状況

当社グループにおける全体の売上高のうち、重要な部分を占めるゲーミング市場向けの紙幣識別機ユニットの需要は、販売先の国や地域の経済状況の影響を受けます。また、カジノに代表されるゲーミング業界は遊興のための施設であり、ゲーミング市場自体の景況感は、各国の経済状況の他、紛争・テロなどの世界情勢、大規模な地震・風水害・伝染病・事故など、個人の消費マインドを低下させる事象が発生した場合にも当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

②為替の変動

当社グループの販売先は世界各国に及んでおり、全売上高に占める海外向けの依存度は高くなっております。当社グループ内の海外商流の最適化を図り、為替レートの影響を極力低減するとともに、必要な範囲内で為替予約取引を利用することで、将来の為替レートの変動リスクを回避するように努めております。一方で、為替レートの変動による外貨建資産負債の期末差額が営業外損益に計上されることも含め、当社グループの業績は為替変動の影響を受けます。

③特定の製・商品への依存度

紙幣識別機ユニットは、当社グループの全売上高のうち多くを占める主力製品であるとともに、ゲーミング市場向けに占める割合が高くなっております。当社グループは、北米を筆頭に各国のゲーミング市場で高いシェアを確保しておりますが、同業他社との競合により、そのシェアは変動いたします。技術開発競争や価格競争の激化が進んだ場合、将来的に現在のシェアを維持できる保証はなく、適正な販売価格の維持が困難となる可能性があります。また、近時、世界的にキャッシュレス化(電子取引化)が急速に進んでおり、この影響を受けて将来的に当社製品の需要が大幅に変動した場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

④ゲーミングに関する法律に基づく規制

カジノ等のゲーミング業界では、犯罪組織とは関係ない者が、真正なゲーム機によって、偽りなく運営することを確保するため、カジノの運営、ゲーム機の製造販売に関して厳しい法規制が実施されております。これらの法規制により、紙幣識別機ユニットをゲーム機に搭載して販売することについても当局の許可が必要となるとともに、米国の一部の州(又は自治区)では、紙幣識別機ユニットもゲーム機の一部と見なされ、ゲーム機と同様に販売に際しての許可が必要となります。このため、世界各国、州等において、紙幣識別機ユニットの販売に許可が必要な場合はもちろん、紙幣識別機ユニットの販売に対して規制がない場合であっても、スロットマシン等のゲーム機に対する法規制が変更される場合においては、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループでは、これらの許認可を取得するにあたり、会社はもちろんのこと、役員個人についても厳しい審査を受けております。万一、当社や関係会社及び役員個人に刑事犯罪などの法令違反行為があった場合は、許認可を取り消され、製品の販売ができなくなることによって、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

⑤風営法に基づく規制

当社グループの遊技場向機器製品の主な販売先であるパチンコホールは、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(以下「風営法」)の適用を受けております。近年においては、遊技客の射幸心を抑える目的で、新しい法律に基づいた新基準機の導入が義務付けられた結果、業界全体の売上高が縮小し、当社グループの同市場向けの売上高も大幅に減少いたしました。将来的にも遊技機の基準が変更されるなど関連する風営法の改正によって、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

⑥研究開発投資に関するリスク

当社グループでは、時代の変化に伴い多様化するニーズに適応するため、積極的な研究開発投資を継続して行っております。新製品の研究開発にはリスクが伴っているため、開発テーマによっては開発期間の長期化により開発費用が高額となる可能性があり、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

⑦海外事業の展開に関するリスク

当社グループにおける海外での事業展開は、政治情勢や通商問題、事業の許認可や輸出入規制など各種法令の改廃及び新設、各国通貨の切り上げなどといったカントリーリスクの影響を受けます。各国でのカントリーリスクの影響が急激に深刻化した場合には、生産、販売活動等に大きな問題が発生し、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

⑧部材調達に関するリスク

当社グループの製品は、主に電子部品、樹脂成型部品、金属加工部品を組み立てることで構成されております。電子部品については、半導体市場の動向によって需要が大きく変化し、またその変化のスピードが速いことが特徴であります。このことに対応するため、複数の入手経路を確保しておりますが、半導体の市場動向により、原材料の調達等に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループが購入する部品は、原油や素材価格の高騰により原価が上昇する可能性があります。さらに、当社グループでは海外での生産比率が高く、各国の経済発展に伴う人件費の上昇によっても原価が上昇する可能性があります。

⑨棚卸資産に関するリスク

当社グループは、市場ニーズに合致した製品をタイムリーに供給するため、一定量の棚卸資産を確保しております。市場の需給バランスを予測し、必要最小限の在庫量を維持する取組を行っておりますが、想定を超えた受注量の増加があった場合においては、あらかじめ確保しておいた在庫品が不足することによる販売機会の逸失等、受注量の減少があった場合においては、過剰在庫の発生にともなう、在庫品の評価損、廃棄損の計上等、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

⑩資金調達に関するリスク

当社グループは、金融機関等からの借入、社債発行による資金調達を行っておりますが、金融市場の環境変化によっては、当社グループの資金調達に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループの業績悪化等により資金調達コストが上昇した場合、当社グループの資金調達に影響を及ぼす可能性があります。

⑪情報セキュリティに関するリスク

当社グループは、事業活動を通じて取引先及び自社の営業情報や個人情報等の機密情報を保有しております。外部からのサイバー攻撃や不正アクセス等により、パソコン・サーバー等から、機密情報が流出し、あるいは消失した場合、事業活動の停止が発生するほか、社会的信用の失墜等により、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

⑫売上債権の貸倒リスク

遊技場(パチンコ)業界では、これまでの商慣習などから、他業種に比べ売上債権の回収期間が長期化する傾向があります。当社グループでは、売上債権に対する与信管理を社内規程に基づき徹底するとともに、一定のルールに基づき貸倒引当金を計上し、貸倒損失が業績に大きな変動を与えないように対処しております。

一方、顧客であるパチンコホールでは、遊技人口の減退とそれに伴うホール数の減少が続いております。このような状況下で、当社グループでは、販売後も顧客の経営状況などを注視し、回収事故が発生しないように努めておりますが、今後の業界の動向によっては、貸倒リスクが高まる可能性があります。

⑬国際税務に関するリスク

移転価格税制に関しては、関係各国の税務当局間であらかじめ当社グループ内における取引価格の設定などについて、事前に承認を受けるAPA(事前確認制度)を申請するなどにより、二重課税などの税務リスクの回避に取り組んでおります。しかしながら、各国の税制の変化並びに各国間の租税条約の締結状況によっては、国際税務に対するリスクが高まる可能性があります。

⑭知的財産権に関するリスク

当社グループが保有する知的財産権については、その保護を積極的に進めております。また、第三者の知的財産権を侵害しないように十分に調査を行ったうえで、製品開発を行っております。しかしながら、各国の法制度の違いなどにより、損害賠償の支払いや製品の販売差止めを求める特許侵害訴訟を受け、又は第三者が当社グループの知的財産権を違法に使用する等により、販売に関する機会損失や賠償金の支払責任が生じる結果として、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

⑮環境等法規制に関するリスク

当社は、各国や地域の環境法規制を遵守した製品作りを行っております。当社グループは、環境への配慮をさらに高める努力を継続しておりますが、環境を含む各種法規制は国や地域によって様々であるとともに、紛争鉱物の問題などその規制対象は拡大する傾向にあります。また、環境対策や法規制に伴う経済的負担は大きくなっており、当社グループ製品が各種法規制を遵守できなかった場合には、一部の地域で製品の販売ができなくなるなど、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

⑯各国紙幣の真偽鑑別に関するリスク

当社グループの紙幣識別機ユニットは、世界140カ国以上の貨幣に対応しております。各国の貨幣は、日本の貨幣に比べ改刷の頻度が多く、偽造が多いことや紙幣識別機ユニットに対する不正が多いことが特徴として挙げられます。当社グループでは、ソフトウェアを迅速に改版し、納入後の製品をサポートしております。しかしながら、近年では偽造紙幣や機器への不正は、より巧妙かつスピーディになっております。それゆえ、それらに対処するための費用の増加や顧客への補償費用等が発生することにより、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

⑰キャッシュレス決済化の急速な進展に関するリスク

当社グループは、貨幣処理機器事業を主要な事業としているため、世界各国において多様化する代金決済手段について短期間に急速なキャッシュレス決済化が進展した場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

⑱退職給付債務に関するリスク

当社グループの退職給付債務等は、数理計算上設定した退職給付債務の割引率及び年金資産の期待運用収益率といった前提条件に基づいて算出しております。しかし、実際の結果が前提条件と異なる場合には、将来にわたって当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

⑲M&A及び業務・資本提携に関するリスク

当社グループは、M&Aや業務・資本提携を成長戦略のひとつと位置付け、積極的に検討・推進いたしております。これらの施策の実施に当たり、対象企業の財務内容や事業活動等について、デューデリジェンスを行い、事業の将来性やリスク等を把握の上、意思決定を行っておりますが、施策実施後に、事業環境の変化や予期せぬ偶発債務の発生などにより対象企業の業績が悪化し、当初想定した成果が得られない場合には、株式評価額又はのれんの減損損失が発生し、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

⑳感染症拡大に関するリスク

当社グループの役員・従業員に新型コロナウイルス、インフルエンザ、ノロウイルス等の感染が拡大した場合、一時的に事業活動を停止することとなり、それによって当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

なお、上記以外にも様々なリスクがあり、ここに記載されたものが当社グループのすべてのリスクではありません。

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。

①財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度における世界経済は、長期化する地政学リスク、原材料価格の高騰をはじめとする物価上昇に加え、各国の金融政策による不安定な為替変動の影響など、先行きは依然として不透明な状況が続いております。

 当社グループの主力市場であるゲーミング市場においては、世界的な観光需要の増加に伴い、当社の主要顧客であるカジノホテル等のゲーミングエリアへの設備投資意欲は引き続き高い水準で推移いたしました。また、海外コマーシャル市場では、第4四半期を中心に欧州地域での景況感の軟化を受け、同地域の顧客に在庫調整の動きが見られたものの、世界各地におけるセルフレジ精算機の普及拡大に伴う需要は堅調でありました。国内コマーシャル及び遊技場向機器の各市場では、前期後半から継続する新紙幣への改刷に伴う設備更新需要に加えて、流通や交通市場を中心に訪日観光客の増加に応じた貨幣処理機器に対する設備投資意欲も堅調に推移いたしました。

このような状況の下、ゲーミング市場においては、顧客のニーズに沿ったシステム製品や現金処理プロセスの自動化、省力化に資する高付加価値製品等の新製品の販売促進活動に加えて、旧モデルの紙幣識別機ユニットから最新の現行ユニットへの入替提案活動を積極的に実施いたしました

海外コマーシャル市場では、欧州及びアジア地域における当社製品の更なる市場シェアの拡大に向けた各種販売施策の推進に努めるとともに、北中南米地域においては、引き続き市場開拓に向けて各地域のニーズに応じた新製品開発や多角的な提案活動、販路拡大に向けた代理店の拡充による販売体制の構築を図りました。また、国内の各市場においては、新紙幣への改刷に伴う貨幣処理機器の更新需要に留まらず、新紙幣への改刷を絶好の機会と捉え、需要拡大を目指した積極的な提案活動に一層注力いたしました。

さらに、生産面では、海外生産拠点の移管を中国からフィリピンへ概ね完了させたことで効率的な生産体制の整備を図るとともに、市場の需要変動に応じた機動的な生産体制の構築を実現させるなど、製品の安定供給体制の更なる強化と製品在庫の適正化を図り、安定した収益基盤の強化に取り組みました。

以上の結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。

a.財政状態

 当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べて1,686百万円増加し49,385百万円となりました。

 当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べて1,688百万円減少し17,354百万円となりました。

 当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べて3,375百万円増加し32,031百万円となりました。

b.経営成績

 当連結会計年度の売上高は37,815百万円(前連結会計年度比19.6%増)となりました。利益面では、主に新紙幣への改刷対応を中心に、収益性の高い製品の販売が増加したことなどにより、営業利益は4,910百万円(前連結会計年度比73.0%増)、経常利益は4,676百万円(前連結会計年度比31.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は3,810百万円(前連結会計年度比16.1%増)となりました。

 なお、当連結会計年度の平均為替レートは、米ドル152.28円(前連結会計年度141.20円)、ユーロは164.45円(前連結会計年度153.20円)で推移いたしました。また、決算期末の時価評価に適用する期末日為替レートは、米ドル149.53円(前連結会計年度末151.42円)でありました。

 

セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。

<グローバルゲーミング>

 前期前半に顕著に見られた当社製品の供給不足が、当期は概ね解消したことに伴う販売増加に加え、特に北米地域においては旧モデル製品からの積極的な入替促進活動等により、ゲーミングマシン搭載用の紙幣識別機ユニットの販売が増加したことなどから、セグメント売上高は21,477百万円(前連結会計年度比24.3%増)、セグメント利益は4,368百万円(前連結会計年度比56.3%増)となりました。

<海外コマーシャル>

 欧州地域でのセルフレジ精算機や鉄道券売機向けの紙幣還流ユニットの販売が、当期後半の景況感の後退局面において顧客の在庫調整により減少した他、北中南米地域における新規案件の販売実績の獲得に当初想定より時間を要している状況であることなどから、セグメント売上高は5,707百万円(前連結会計年度比3.5%減)となりました。利益面においては、北中南米地域の新市場開拓に向けた新製品の研究開発等の先行投資に注力したことから、セグメント損失は566百万円(前連結会計年度は175百万円の損失)となりました。

<国内コマーシャル>

 新紙幣への改刷対応に伴う更新需要が増加したことに加えて、訪日外国人観光客の増加に伴い流通・交通市場において、主に飲食店券売機や駐車場精算機向けの紙幣還流ユニットの販売が増加したことなどから、セグメント売上高は3,805百万円(前連結会計年度比41.4%増)、セグメント利益は1,147百万円(前連結会計年度比119.1%増)となりました。

<遊技場向機器>

 新紙幣への改刷対応に伴う紙幣識別機ユニットや紙幣搬送システム等の周辺機器の販売が増加したことに加えて、スマート遊技機専用ユニットの販売も底堅く推移したことなどから、セグメント売上高は6,824百万円(前連結会計年度比19.2%増)、セグメント利益は1,437百万円(前連結会計年度比43.4%増)となりました。

 

 ②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ、4,934百万円増加し、17,457百万円となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果、得られた資金は7,637百万円(前連結会計年度は4,925百万円の支出)となりました。これは主に税金等調整前当期純利益4,798百万円、売上債権の減少1,590百万円、棚卸資産の減少3,776百万円などにより資金が増加した一方、仕入債務の減少2,823百万円、法人税等の支払1,073百万円などにより資金が減少したことによるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果、支出した資金は390百万円(前連結会計年度は402百万円の支出)となりました。これは主に有形固定資産の売却による収入118百万円などにより資金が増加した一方、有形固定資産の取得による支出432百万円などにより資金が減少したことによるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果、支出した資金は2,789百万円(前連結会計年度は4,116百万円の収入)となりました。これは主に長期借入れによる収入1,200百万円により資金が増加した一方、長期借入金の返済による支出1,380百万円、自己株式の取得による支出1,576百万円、配当金の支払908百万円などにより資金が減少したことによるものであります。

また、これらのほかに、現金及び現金同等物に係る換算差額477百万円の資金の増加がありました。

 

 

③生産、受注及び販売の実績

 a.生産実績

 当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

金額(千円)

前年同期比(%)

グローバルゲーミング

6,414,769

76.5

海外コマーシャル

5,852,068

86.8

国内コマーシャル

3,173,632

125.1

遊技場向機器

4,004,072

142.0

合計

19,444,543

94.9

 (注)セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

 b.製品仕入実績

 当連結会計年度の製品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

金額(千円)

前年同期比(%)

グローバルゲーミング

3,327,123

68.3

海外コマーシャル

1,004,293

206.7

国内コマーシャル

54,671

94.1

遊技場向機器

215,763

108.0

合計

4,601,852

81.9

 (注)セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

 c.受注実績

当社グループの生産は、主として見込み生産によっているため、記載を省略しております。

 

 

 d.販売実績

 当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

金額(千円)

前年同期比(%)

グローバルゲーミング

21,477,477

124.3

海外コマーシャル

5,707,853

96.5

国内コマーシャル

3,805,899

141.4

遊技場向機器

6,824,704

119.2

合計

37,815,935

119.6

 (注) 1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

   2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

Aristocrat Technologies Inc.

3,460,657

11.0

2,958,959

7.8

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中における将来に関する事項は、提出日現在において判断したものであります。

 

①重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況」の「1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

  a.財政状態

当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末に比べて1,686百万円増加し、49,385百万円となりました。

流動資産合計は、前連結会計年度末に比べて1,322百万円増加し、41,465百万円となりました。「現金及び預金」が4,934百万円増加した一方、「受取手形、売掛金及び契約資産」が1,161百万円、棚卸資産が2,502百万円それぞれ減少いたしました。

固定資産合計は、前連結会計年度末に比べて385百万円増加し、7,816百万円となりました。「有形固定資産」が生産用金型等の取得により130百万円、繰延税金資産の計上等により「投資その他の資産」が279百万円それぞれ増加いたしました。

繰延資産合計は、社債発行費の償却により、前連結会計年度末に比べて20百万円減少し、102百万円となりました。

流動負債合計は、前連結会計年度末に比べて1,192百万円減少し、8,068百万円となりました。「1年内返済予定の長期借入金」が240百万円、契約負債の増加などにより「その他」が752百万円それぞれ増加した一方、「支払手形及び買掛金」が2,381百万円減少いたしました。

固定負債合計は、前連結会計年度末に比べて496百万円減少し、9,285百万円となりました。借入金返済により「長期借入金」が420百万円減少いたしました。

純資産合計は、前連結会計年度末に比べて3,375百万円増加し、32,031百万円となりました。自己株式の買付により「自己株式」が1,559百万円増加し、また、親会社株主に帰属する当期純利益の計上などにより「利益剰余金」が2,898百万円、在外子会社の時価評価による「為替換算調整勘定」が2,057百万円それぞれ増加いたしました。

 

  b.経営成績

売上高は37,815百万円(前連結会計年度比19.6%増)となりました。ゲーミング市場では、世界的な観光需要の増加に伴い、カジノホテル等での同市場における設備投資意欲は引き続き高い水準で推移いたしました。海外のコマーシャル市場においては、欧州地域での景況感の軟化を受け、同地域の顧客に在庫調整の動きがみられたものの、セルフレジ精算機の普及拡大に伴う需要は堅調であり、国内コマーシャル及び遊技場向機器市場では新紙幣の改刷に伴う設備更新需要が高まったことから、増収となりました。

売上原価は、22,474百万円(前連結会計年度比15.7%増)となり、売上原価率は、前連結会計年度比2.0ポイント減少し、59.4%となりました。新紙幣の改刷対応を中心とした収益性の高い製品の販売が増加したことなが、原価率が改善する要因となりました。

売上総利益は15,341百万円(前連結会計年度比25.9%増)となりました。

販売費及び一般管理費は10,430百万円(前連結会計年度比11.6%増)となりました。

営業利益は4,910百万円(前連結会計年度比73.0%増)となりました。

営業外収益は受取預金利息の計上などにより、152百万円となりました。

営業外費用は円高の進行に伴う為替差損の計上などにより386百万円となりました。

経常利益は4,676百万円(前連結会計年度比31.1%増)となりました。

税金等調整前当期純利益は4,798百万円(前連結会計年度比32.0%増)となりました。

法人税等合計は、988百万円となりました。繰延税金資産の計上に伴い、法人税等調整額△165百万円を計上いたしました。

以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は、3,810百万円(前連結会計年度比16.1%増)となりました。

 

  c.キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッ
シュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

  d.資本の財源及び資金の流動性

当社グループの主な資金用途については、顧客への当社製品の安定供給を第一とした事業活動に要する運転資金のほかに、生産用金型やものづくりの機能強化を主とした設備投資資金が必要であります。その資金確保については、自己資金ならびに金融機関からの借入金を基本としており、企業買収などの投資については、自己資金や金融機関からの借入金のほか、資本調達などによって資金を確保しております。

当連結会計年度末の有利子負債残高はリース債務を含めて10,860百万円となり、前連結会計年度末に比べ234百万円減少いたしました。これは主に、銀行借入を返済したこと及びリース債務の支払を行ったことによるものです。

 

  e.経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

本年5月に公表した次期(2026年3月期)の連結業績予想数値が、現在進行中である中期経営計画「JCM Global Vision 2032」の最終年度(2026年3月期)の数値目標を下回る状況にあることから、現在、当該中期経営計画の見直し、あるいはローリングによる更新の検討を進めており、新たな目標数値を策定次第、速やかに公表いたします。

 

5【重要な契約等】

(固定資産の譲渡)

 当社は、2025年3月31日開催の取締役会において、当社が所有する固定資産の譲渡について決議いたしました。詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (追加情報)」に記載のとおりであります。

 

6【研究開発活動】

(1)研究開発活動の方針

 当社グループは、JCM Spirit を構成する行動指針のひとつに「自主創造:独創的な商品とサービスを世界の人々に提供しよう」を、Missionには「変わりゆく世界のニーズに応え、社会に貢献し続ける」、「コアテクノロジーを革新させ、新たな価値を創造し続ける」として、モノづくりやサービスに係る使命を掲げております。多様化する社会情勢や顧客ニーズに合致した、市場適合性の高い製品やサービスを迅速に製品化すると共に、コアテクノロジーを革新させ、潜在ニーズを満たす新たな価値創造をし続けることで、Purposeである「幸せを世界に弘める」ことが実現し、当社の活動そのものが人と人の信頼関係の発展に資するものとなることを願っております。

 

(2)研究開発活動

 世界各国の貨幣に対応した鑑識別・搬送・集積・還流等を中心とした貨幣処理技術を追求するとともに、これらの技術・ノウハウを応用・発展させたシステム製品開発にも注力しており、潜在的な顧客ニーズを引出し、新たな市場開拓に向けた活動を活発化させております。また、製品開発を進める上で、知的財産権の権利化の促進や有効活用にも注力しております。

 当連結会計年度における当社グループ全体の研究開発費は、1,718百万円でありました。

 

①グローバルゲーミング

 当連結会計年度は、カジノバックヤード向け自動化機器の正式導入が決定しました。約1年に及ぶフィールドテストにおいて大きなトラブルも無く、当社製品のセキュリティ性や効率化、品質が市場で認められた結果になりました。引き続き更なる品質向上に努め、市場拡大に注力してまいります。

 

②海外コマーシャル

 当連結会計年度は、グローバル流通市場に向けた製品開発を完了しております。充実した製品ラインナップと市場ニーズにマッチしたオプションを取り揃えることにより、既存市場だけではなく未開拓市場への展開も図ってまいります。

 

③国内コマーシャル

 当連結会計年度は、ガソリンスタンド向け両面対応紙幣ユニットやロングセラー製品の後継機である流通・交通市場向け紙幣還流機が完成し市場導入が進んでおります。識別性能や処理スピード向上など機能性をアップしたことにより、各市場において高いパフォーマンスを発揮し高評価を得ております。

 

④遊技場向機器

 当連結会計年度は、遊技媒体の玉/メダル貸出システムに構成される預り金精算機や、賞品交換におけるキャッシュディスペンサーに搭載される紙幣投出機の開発を完了しました。従来機との互換を維持しつつ、新紙幣の対応及びメンテナンス性の向上を図っております。また次期開発製品への搭載について検討を進めております。