第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

  

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1)会社の経営の基本方針

当社は、以下の経営理念のもと、経営を遂行しております。

① 個人の尊重

当社は、社員一人一人の権利を尊重し、個人が意義のある文化的な人生と、生き甲斐を追求できる企業でありたい。一人一人の向上心を信じ、自立的な活動を援助し、仕事を通して能力が最大限に発揮できる環境を作り、能力や業績に報う企業とする。

② 存在意義のある企業

当社は、存在意義のある、優れた企業として認められることを望む。独創性を発揮し、個性と特徴をもち、経営の基盤を、絶えることのない研究開発活動と品質優先に置く経営を貫く。全ての組織が全力を尽くすことに生き甲斐を感ずる企業とする。

③ 共存共栄

当社は、社員、顧客、株主、材料部品の購入先、協力会社、取引先などの多くの人々に支えられている。当社は、これら関係者の全てに満足してもらえるように魅力ある製品、サービス、報酬、環境、取引関係を作り上げるよう最善の努力を払う。

④ 社会への貢献

当社は、社会の良き一員として企業活動を通じ、広く社会や産業界に貢献して行く。我々が提供する製品やサービスが、直接的間接的に広く社会の向上に役立ち、属する地域社会の環境や質の向上に役立つ企業を目指す。

 

 

 (2)当社グループの事業と製品

当社グループは、トータル・モーション・コントロールを提供する技術・技能集団として、技術者・技能者という人的資源を中核に、トータル・モーション・コントロールを構成するコア技術を高度に応用することによって、お客様が求める“動き”の実現に貢献できる製品を提供しております。
 当社グループでは、ハーモニックドライブ®、アキュドライブ®、ハーモニックプラネタリ®といった高精度減速機に、モーター、センサーなどを組み合わせたアクチュエーター、さらにはその性能を引き出すドライバー、コントローラー、その他システム要素を組み合わせ、他社製品とは差別化された高付加価値製品を提供しております。
 

 

 (3)当社グループの強みや特長

① 波動歯車装置に係る技術・技能の蓄積

当社グループは、波動歯車装置との運命的な出会いを契機に、創業以来50年以上にわたって無限に広がるこの減速装置の可能性を追求してきました。これまでに蓄積した開発技術、生産技術、加工・組立の技能、生産システムは、当社グループのかけがえのない財産であり、最大の強みと考えております。

② 小型・軽量・高精度を提供する製品群

当社グループが製造・販売するメカトロニクス製品と減速装置は、高度なモーション・コントロールや各種装置のコンパクト化・軽量化を求めるお客様にご採用いただいております。なかでも、小型、軽量、高精度を特長とするハーモニックドライブ®は、自動車、デジタル機器、半導体ウェハー、フラットパネルディスプレイなどの製造工程で使われる産業用ロボットの関節部に組み込まれ、世界市場で高いシェアを獲得しています。さらに、工作機械、計測試験装置、人工衛星、先進医療機器、車載などの幅広い用途において、他の機構では実現の難しい差別化された付加価値を提供しています。

③ 「トータル・モーション・コントロール」の提供を可能とするコア技術

当社グループは、減速機のほか、モーター、センサー、ドライバー、コントローラー、その他システム要素に関する研究開発とものづくりを通じて、これらの技術・技能を蓄積してきました。このようにして培ったコア技術に係る有形・無形の技術と技能は、お客様が求める高度なモーション・コントロールを提供するために不可欠なものであり、当社グループの競争力の源泉と考えております。

④ 営業・製造・開発が一体となった事業運営

当社グループは、お客様のニーズをものづくりや製品開発に生かすため、営業部門、製造部門、技術・開発部門が密接な関係をもった事業運営を行っています。例えば、長野県の安曇野市にこれらの主要部門を集中させ、引合いから技術検討、試作、受注、製造、出荷までの業務プロセスを効率的に進める体制を構築しています。お客様のニーズや技術者の発想を素早くものづくりに反映し、新たなモーション・コントロールをタイムリーに提供できる体制も当社グループの強みのひとつと考えております。

⑤ 国際的な事業展開

当社グループは、日本、米国、ドイツ、韓国、中国、台湾に事業拠点を展開し、各地域の特性に合わせた事業戦略を推進するとともに、各拠点が相互に連携しながら世界的に広がるお客様に対し最適な製品・サービスの提供を進めております。

 

 

(4)中長期的な当社グループの経営戦略

 当社グループは、「モーションコントロール技術で社会の技術革新に貢献する」という不変のミッションを推進しております。当社グループが手掛けるメカトロニクス製品、精密減速装置は、EV化、手術支援ロボットなど、新たな「社会の技術革新」に大きく貢献しており、今後もその需要は拡大していくことが予想されます。また、世界的な人手不足が顕在化するなか、自動化が加速しており、協働ロボットに加え、新たな市場として「AI・ヒト型ロボット」の需要増加が見込まれております。当社グループはこのような成長機会を確実に取り込むための経営基盤をより強固なものにするとともに、現中期経営計画(2024年度~2026年度)に基づき、グループ一体となって持続可能な社会の実現に向け活動を推進してまいります。さらに、ミッション・長期ビジョンの達成に向け、攻めと守りのバランスを勘案した経営戦略を遂行することにより、中長期的な企業価値向上を図ってまいります。

 

 

■サステナビリティ基本方針

私たちは、「個人の尊重」「存在意義のある企業」「共存共栄」「社会への貢献」という4つの柱で構成された経営理念に基づき、トータル・モーション・コントロールを提供する技術・技能集団として、社会をより良くするための技術革新に貢献することで、持続可能な社会の実現と企業価値の向上を目指します。

 

■当社グループのミッション

モーションコントロール技術で社会の技術革新に貢献する
 

■長期ビジョン

未来と調和するトータル・モーション・コントロールのベストプロバイダー

 

■マテリアリティ

 ・人的資本の価値最大化

 ・お客様の期待値に応えるQCDSの実現

 ・環境の変化に適合した新技術・新技能への挑戦と創出

 ・企業活動を通じて持続可能な社会に貢献する

 ・時代に調和した経営基盤の構築

 

■中期経営計画(2024年度〜2026年度)

 ~「価値創出と変革」への挑戦~

(基本方針)

 ① 収益性を重視した全事業の持続的な成長

  ・新たな成長ドライバーの開拓

  ・顧客期待値に応えるQCDS+Speedの徹底

 

 ② 環境変化に適合できる経営資源(ひと、もの、かね、情報)の強化

  ・個の成長と多様な脳力が発揮され、尊重される組織の実現

  ・資本効率を意識した成長投資

  ・財務基盤及びガバナンス強化

 

 ③ 未来に続く企業価値向上への取り組み

  ・ネットゼロの推進

  ・多様な人財の登用、採用

  ・お客様の環境負荷低減を促進する製品の開発

 

(5)経営環境と対処すべき課題

 2025年度の当社グループの事業環境は、労働人口減少を補うためのロボットをはじめとする自動化投資の拡大、データセンターの拡充及び生成AIに必要な先端半導体の需要拡大に伴う設備投資増等により、前期に引き続き受注が回復基調になると見込んでいます。しかしながら、国際情勢の不安定化による資源・原材料価格の高止まり、為替相場の変動に加えてトランプ関税により、世界経済は一層不透明感が増し、当社グループを取り巻く事業環境は予断を許さない状況が続くものと予想されます。このような事業環境に対応すべく、現中期経営計画(2024年度~2026年度)の施策を着実に推進してまいります。高い生産能力と品質の維持、サプライチェーン体制の強化による安定した部材調達、並びにITの積極投資による生産性向上と業務効率の改善をさらに加速させることで、一層の製品力の向上、コスト低減、リードタイム短縮に取り組んでまいります。加えて、営業・開発技術一体によるお客様の課題解決力向上と対応の迅速化を推進し、更なる競争優位性の拡大に傾注してまいります。

 

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループは、様々な社会課題を解決し、社会をより良くするための技術革新に事業を通じて貢献していくことを使命としております。この使命を果たすにあたって基盤としているのが、当社の創成期に作られ現在も当社グループの企業文化として受け継がれている経営理念です。当社ではこの経営理念に基づいて2022年3月25日開催の取締役会において策定したサステナビリティ基本方針に則り、戦略的にサステナビリティの推進を図ってまいります。 

 

 

サステナビリティ基本方針

私たちは、「個人の尊重」、「存在意義のある企業」、「共存共栄」、「社会への貢献」という4つの柱で構成された〝経営理念″に基づき、トータル・モーション・コントロールを提供する技術・技能集団として、社会をより良くするための技術革新に貢献することで、持続可能な社会の実現と企業価値の向上を目指します。

 

 

 

(1)サステナビリティ全般

 

 1)サステナビリティ・ガバナンス

 当社グループでは、サステナビリティの取り組みを経営上の重要課題と認識し、サステナビリティ委員会を中心とするガバナンス体制を構築するとともに、取締役会による監督を行っております。執行側については、サステナビリティ委員会の事務局であるサステナビリティ推進室が、関係部署の執行役員及びグループ会社社長と連携してサステナビリティ上のリスクと機会に取り組む体制としております。

 

① 取締役会による監督体制

 当社グループのサステナビリティに関するリスクと機会の監督に対する責任と権限は取締役会が有しております。取締役会は、サステナビリティ委員会で協議・決議された重要事項について報告を受け、サステナビリティに関するリスクと機会への対応方針や実行計画等について審議・監督を行っております。

 

② サステナビリティに係る経営者の役割

 当社グループのサステナビリティに係る経営判断の最終責任は代表取締役社長が有しております。

 

③ サステナビリティ委員会

 当社では、グループ全体のサステナビリティ推進体制を強化するため、グループサステナビリティ全般を推進・統括・管理する組織としてサステナビリティ委員会を2023年4月1日付で設置いたしました。本委員会の委員長は代表取締役社長が務め、メンバーは業務執行取締役で構成されております。

  サステナビリティ委員会の主な役割は以下の通りです。

  ・サステナビリティ関連方針・戦略の策定・改定

  ・サステナビリティに関するマテリアリティの特定

  ・サステナビリティに関する長期目標・KPIの策定・進捗管理

  ・サステナビリティ推進活動の企画・報告

  ・サステナビリティに関するリスクと機会の特定及び管理

  ・取締役会への提言・基本方針等の上程、重要なサステナビリティ事項の報告 等

 

④ 執行役員会議

当社グループでは、執行の立場からサステナビリティを実現するために、サステナビリティ推進担当執行役員が、サステナビリティの取り組み状況やサステナビリティ関連の動向等を、取締役・監査役も出席する月次の執行役員会議で都度報告し、様々な観点から議論を行っております。

 

 

⑤ サステナビリティ推進に係る所管部署

 サステナビリティ推進担当執行役員のもと、サステナビリティ推進室がサステナビリティ委員会の事務局を務めるとともに、当社グループのサステナビリティ全般に係る推進を担っております。また、サステナビリティに係るマテリアリティやリスクと機会への対応等についてサステナビリティ委員会に提言するとともに、適宜当社各部門並びにグループ会社へ展開し、グループ全体のサステナビリティ活動を推進いたします。

 

⑥ サステナビリティ推進体制

 当社グループのサステナビリティ推進体制は以下の推進体制図の通りです。

 また、より実効性のある体制とするため、2025年度からは主要なサステナビリティ事項に分科会を設置して取り組むことを2025年3月7日開催のサステナビリティ委員会で決定いたしました。各分科会責任者はサステナビリティ委員会にも出席し、議論に参加することで当社グループのサステナビリティ推進を加速させてまいります。

 

 

グループサステナビリティ推進体制図


 

 

2024年度のサステナビリティに関する主な議論

開催年月日

主な協議内容

サステナビリティ委員会

2024年6月20日

2024年3月期有価証券報告書のサステナビリティ記載内容について

2024年9月9日

・2024年度サステナビリティ推進進捗報告及び2023年度の課題に基づく取り組みの概要

・グループ人権方針案の策定

・2025年ネットゼロ目標に向けた気候移行計画の検討

2024年11月14日

グルー人権方針の取締役会附議について

2025年3月7日

2024年度サステナビリティ推進統括及び2025年度推進計画

取締役会

2024年11月20日

グループ人権方針の策定

執行役員会議

2024年5月14日

2023年度のサステナビリティ格付け機関の評価結果報告及び2024年度の推進案

2024年8月9日

2024年度サステナビリティの具体的な施策及びスケジュール

2025年2月12日

2024年度サステナビリティ推進進捗報告

※執行役員会議には執行役員に加え、取締役及び監査役も出席するため、取締役への報告も兼ねる。

 

 

 

2)戦略

 当社グループは経営理念をベースとし、ミッションである「モーションコントロール技術で社会の技術革新に貢献する」ことで持続可能な社会の実現と事業の成長を目指しております。短・中・長期的な機会とリスクに柔軟に対応し、事業の成長と社会課題の解決に貢献していくため、優先的に取り組むべき事項として、マテリアリティを特定し、事業戦略に組み込んで中長期的な視点で取り組んでいます。マテリアリティの特定にあたっては、当社グループの持続的成長へのインパクトと社会の持続可能性に対するインパクトの両面から検討し、且つ経営理念との整合性についても考慮したうえで、評価を行っております。

 当社グループでは、2024-2026中期経営計画の策定に伴い、サステナビリティ委員会で議論を重ねてマテリアリティを見直し、2023年11月20日開催の取締役会で議論のうえ、新たに「目指す姿の実現に向けたマテリアリティ」として5つを特定しました。この5つのマテリアリティは、長期ビジョンである「未来と調和するトータル・モーション・コントロールのベストプロバイダー」の実現に向けて優先して取り組むべき重要課題であり、2024-2026中期経営計画を策定する際のベースとしています。

 

              マテリアリティ抽出・特定のプロセス

Step1

サステナビリティ課題の抽出

当社グループの事業戦略における課題に加え、バリューチェーン企業を中心とした他社事例調査及びISSB・GRI・SASBスタンダード等の国際的なフレームワークを参照し、有識者の意見も参考にしたうえでサステナビリティ課題を網羅的に抽出

Step2

各課題のインパクト評価

Step1で抽出した課題を、サステナビリティ委員会で「社会の持続可能性に対するインパクト」と「当社グループの持続的成長へのインパクト」の両面から評価し、マテリアリティ・マトリックスを作成。その中から特にインパクトが強い課題項目を選定

Step3

マテリアリティの特定

Step2のマテリアリティ・マトリックスを基にサステナビリティ委員会で議論を行い、当社グループの事業戦略を踏まえて5つのマテリアリティとして整理・統合

Step4

取締役会による承認

2023年11月20日開催の取締役会で、Step3で整理したマテリアリティについて議論のうえ承認

 

 

                 マテリアリティ・マトリックス


 

          HDSグループの「目指す姿の実現に向けたマテリアリティ」


 

 「人的資本の価値最大化」で掲げている人的資本は、企業活動において最も重要な経営資本であり、その他のあらゆる経営資本(製造資本、知的資本、社会関係資本、財務資本、自然資本)の土台となります。経営理念の最重要項目である「個人の尊重」とも整合しております。恐れず挑戦できる企業風土の醸成、働きがいのある職場環境の整備、人事制度や能力開発の見直し・拡充など、人的資本の価値最大化に取り組んでおります。 

 「お客様の期待値に応えるQCDSの実現」は、中期経営計画の中核である「収益性を重視した全事業の持続的な成長」の達成に向けた重要課題です。Q(品質)、C(価格)、D(納期)、S(サービス)に加え、もうひとつのS(スピード)の改善にグループ全体で取り組んでおります。 

 「環境の変化に適合した新技術・新技能への挑戦と創出」は、ミッションである「モーションコントロール技術で社会の技術革新に貢献する」の達成に必要不可欠な要素です。技術革新や市場変化の早い現在においてはさらにその重要性が高まっていることから、先を見据えた中期的な視野で価値創造に取り組んでおります。

 「企業活動を通じて持続可能な社会に貢献する」ことは、地球、社会、そして当社グループの持続可能性を共に高め合うために欠かせない取り組みです。地球環境、従業員を含むあらゆるステークホルダーとの調和を目指し、サステナビリティへの取り組みを推進してまいります。 

 「時代に調和した経営基盤の構築」は、これらのマテリアリティを実現するための基軸となるものです。財務基盤、ガバナンス・経営体制の持続可能性をさらに高めることを目指して取り組んでまいります。

 

経営資本と価値創造の関係図


 

※ マテリアリティと価値創造プロセスについては、当社WEBサイトに掲載

(https://www.hds.co.jp/csr/hdsreport/)の統合報告書「HDS REPORT 2024」も併せてご参照ください。

 

3)リスク管理

リスクと機会については、マテリアリティの特定、中期経営計画の策定、年度計画の策定において、各部門責任者、サステナビリティ委員会、取締役会で検討・議論したうえで、社長が決定した経営方針(課題)に基づき、部門責任者が各部門のマネジメントプログラムで展開し、活動しております。

リスクについては、「危機・リスク管理規程」に則り、「全社リスク」と「業務プロセスのリスク」に分類し、年に1回リスクを特定・評価・対応する体制も構築しております。

「全社リスク」については経営企画担当執行役員及び経営企画部門が把握・分析・評価を実施しており、「業務プロセスのリスク」については、各部門がリスクを抽出・特定し、リスクマネジメント本部が短・中・長期の時間軸で発生頻度と損害規模の観点からリスク評価基準を定めるとともに、法令と人命の観点からも方針を定め、それらを合わせて総合的にリスクを評価し、リスクマネジメント担当執行役員が評価結果をもとに優先順位付けを行ったうえで、代表取締役社長が承認します。

その後、各部門において、部門責任者がリスク管理目標を設定するとともに、リスク内容に応じて回避、受容、低減、移転等を判断し、各リスクに見合った低減活動を実施します。実施状況については、リスクマネジメント担当執行役員が年に1回進捗をレビューし、代表取締役社長がレビューをもとに次年度の方針を示し、各部門に展開しております。

機会は、事業の成長に直結していることから、半年ごとに実施される社長のマネジメントレビューにおいて、目標に対する達成度合、課題についての報告、社長からのアウトプットに基づき対応策を実施することで目標を達成する体制を構築しております。

 

 

(2)気候変動

 当社グループは、気候変動に係る対応を経営上の重要課題と認識し、サステナビリティ委員会を中心に推進しております。

 

 1)ガバナンス

 当社グループの気候変動に関するガバナンスは、サステナビリティ全般のガバナンスに組み込まれております。詳細については、「(1)サステナビリティ全般 1)ガバナンス」を参照ください。

 

 2)戦略

 当社グループの事業に影響を与えると想定される気候関連リスク・機会を特定した上で、国際エネルギー機関(IEA)や気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が公表する複数のシナリオを参照の上、パリ協定の目標である「産業革命前からの気温上昇を1.5℃未満に抑える」ことを想定した政策移行への影響が大きいシナリオ(1.5℃シナリオ)、及び環境規制が強化されず物理リスクが高まるシナリオ(4.0℃シナリオ)それぞれの世界観においてTCFDが提言するシナリオ分析を実施し、顕在化時期の時間軸を短・中・長期として、各リスクと機会の事業への影響度と発生可能性を分析しております。また、各リスクと機会への対応戦略を短期と中長期の時間軸で検討し、リスクを最小化することに加え、機会にも注目・転換することで、事業機会を拡大・創出し、何れの気候変動シナリオ下でも、当社グループのレジリエンスの向上と持続的成長を実現できるように取り組んでまいります。

<気候シナリオ分析の前提>

対象範囲

事業拠点

国内外グループ会社の全事業拠点(連結売上高カバー率100%)

製品

減速装置、メカトロニクス製品(連結売上高カバー率100%)

バリューチェーン

上流(サプライヤー様)、直接操業(当社グループ会社)、下流(お客様)

時間軸の定義

短期:0~3年、中期:3~10年、長期:10~30年、超長期:31年以上

 

 

<気候シナリオの概要>

シナリオ

シナリオの概要

主要な

参照シナリオ

1.5℃

シナリオ

<世界観>

・規制強化により気候変動が沈静化し、低炭素型の市場や技術進歩が進展する。

・サステナビリティ志向の浸透により、各所でコストが増加、企業では調達・生産・製造・物流・販売等の側面からの事業の見直しに直面する。

<主な仮定・パラメーター>

・炭素税額の上昇などにより再エネ利用や高効率化が進展

・省エネ、脱炭素製品向け部品の需要が増加

・政策における脱炭素や循環型経済が推進・拡大

・2050年には90%の電気が再生可能エネルギー由来に

・再生材のニーズが増加

・低炭素化に向けた研究開発やプロセス改善が促進

・温室効果ガス排出量等の情報開示要請の加速

・GHG排出企業からの投資引き上げが進む 等

<IEA>

 NZE2050

(Net Zero Emissions by 2050 Scenario)

4.0℃

シナリオ

<世界観>

・化石燃料への依存が継続する中で、洪水・台風等自然災害が頻発化する。

・気温・海面上昇等の不可逆変化により企業の生産活動が不安定化する。

<主な仮定・パラメーター>

・低炭素化が進まず大量の温室効果ガスを排出

・自然災害により企業活動が停滞、生産・調達等が遅延

・2100年には、猛暑日(最高気温 35℃以上の日)が現在よりも20日前後増加

・降水パターンの変化で、干ばつや季節による降雨量の差が拡大し、操業に必要な水の確保が困難に

・2050年で約20cm、2100年頃には約70cm海面が上昇する 等

<IPCC>

RCP8.5(Representative Concentration Pathways 8.5)

 

 

<1.5℃シナリオで識別したバリューチェーン上の気候関連リスク・機会と対応策>

リスク/機会

顕在化時期

発生可能性

対応戦略

要因

事業への影響

(財務・非財務)

時間軸

主な施策

移行リスク

法規制

規制強化

サステナビリティ関連法規制の拡大・厳格化に伴う対応負荷の増加、対応を怠ることで取引制限、罰則等に発展する可能性

短期

短期

・関連規制の動向調査と事業への影響評価を実施し、早期から対応策を実施

・連結グループでのサステナビリティ情報管理・開示体制の強化

中長期

・サステナビリティ情報管理の効率化、IT基盤をグループ全体で構築

・新たな規制への早期準備し、対応することで事業機会損失を防止

原材料

価格高騰

電化や脱炭素に伴う原材料価格の高騰(鋼材・アルミ・鋼・レアアース等)

中期

短期

・原材料価格上昇による財務的影響を評価

中長期

・新素材の利用可能性の研究を推進

・使用済自社製品の回収・リサイクルシステムの構築を検討・実施

規制強化

カーボンプライシングにより排出に伴う支出(課税)が増加

 

※28ページ<気候及び水関連リスクの財務影響評価>を参照

中期

短期

・カーボンプライシング(炭素税)による事業への影響評価、対応策実施

中長期

・電化、再エネ転換を推進し、GHG絶対排出量を削減

・電化が困難な設備は、低炭素燃料(バイオマス・水素等)への燃料転換を推進

技術

低炭素技術の開発

低炭素製品の開発競争が激化し、対応が遅れた場合、製品の競争力が低下

中期

短期

・低炭素製品に関するお客様および技術の動向を調査し、ニーズに応える製品・サービスの提供に向けた戦略を策定

・製品LCA(ライフサイクルアセスメント)を実施し、環境性能を可視化・改善

中長期

・環境配慮設計の推進

・調達先と協働して、サプライチェーン(調達部材)の低炭素化を推進

省エネ技術の普及

排出削減に向けた設備投資や省エネ化の負担増

短期

短期

・定期的にGHG排出削減対策のコスト効果を詳細に分析し、ネットゼロ移行計画を改定

・ICP(社内炭素価格)導入により、省エネ設備投資の経済的優位性を可視化し、省エネ設備投資を検討・実施

中長期

・省エネ設備投資に係る補助金制度を活用し、イニシャルコストを削減

 

 

リスク/機会

顕在化時期

発生可能性

対応戦略

要因

事業への影響

(財務・非財務)

時間軸

主な施策

移行リスク

市場

エネルギー価格の

高騰

再生可能エネルギーの導入に伴うエネルギー価格の高騰

短期

短期

・エネルギー消費量削減につながる設備更新等により、GHG排出量削減を推進

・再エネ価格変動の予測分析に基づき、戦略的に再エネ転換を推進

中長期

・電力価格予測に基づき、PPAによる価格固定化を検討

・適格カーボンクレジットの活用

原材料の

価格高騰

電化や脱炭素に伴う原材料価格の高騰(鋼材・アルミ・鋼・レアアース等)

中期

短期

・原材料価格上昇による財務的影響を評価

中長期

・新たな素材(他の金属・樹脂等)の利用可能性を検討

・使用済自社製品の回収・リサイクルシステムを構築

低炭素技術の開発

低炭素材料(グリーン材料・リサイクル材料)への切り替えのための技術開発費増加

短中期

短期

・低炭素材料に関する規制、市場動向、技術動向を調査し、研究開発を推進

中長期

・低炭素材料の調達コスト低減および安定供給に向け、調達先と協働

既存技術の需要減

石油・天然ガス・紙の需要減少に伴う関連用途向け製品の売上減

中期

短期

・市場、お客様、技術動向の調査に基づき、事業戦略を構築・展開

中長期

・市場、お客様動向に沿った新製品・サービスの開発、販売を推進

評判

企業イメージの

低下

気候変動対応が不十分と判断されることによるレピュテーションリスク(社会、消費者、従業員)

中期

短期

・気候移行計画、目標に対する進捗などの気候関連情報開示を強化

中長期

・地球環境、事業環境の変化に応じた気候移行計画の見直し・遂行

・2030年度のGHG排出量を、2022年度比30%減目標達成

・2050年ネットゼロ目標の達成

 

 

リスク/機会

顕在化時期

発生可能性

対応戦略

要因

事業への影響

(財務・非財務)

時間軸

主な施策

機会

資源効率

省エネ技術の普及

低GHG排出設備への更新の結果、エネルギーコストの削減や炭素税の負担が軽減

中期

短期

・GHG排出削減対策のコスト効果を詳細に分析し、ネットゼロ移行計画を改定

・ICP(社内炭素価格)を導入し、省エネ設備投資による経済的効果を可視化することで、省エネ設備投資を促進

中長期

・省エネ設備投資に係る補助金制度を活用し、イニシャルコストを削減

製品とサ|ビス

低炭素技術の普及

社会の低炭素志向が促進されることによる低炭素製品関連への売上増加

中期

短期

・低炭素製品の市場動向を調査し、新たな用途開拓を推進

中長期

・ハーモニックドライブ®の小型・扁平という特長を活かし、低炭素社会のニーズに応える製品を開発、販売

低炭素技術の開発

 

低炭素材料に対する需要拡大

中期

短期

・低炭素材料に関する規制、市場動向、技術動向を調査し、研究開発を推進

中長期

・調達先との協働で、低炭素材料の低コスト化および安定供給を推進

 

 

<4.0℃シナリオで識別したバリューチェーン上の気候関連リスク・機会と対応策>

リスク/機会

顕在化時期

発生可能性

対応戦略

要因

事業への影響

(財務・非財務)

時間軸

主な施策

物理リスク

急性

自然災害の激甚化

自然災害(台風・豪雨等)の激甚化・頻発化により、サプライチェーンの混乱が生じ、原材料の調達遅延や停止が発生

短期

短期

・調達先/原材料のリスク評価を実施し、被災時の代替策を検討

中長期

・調達部材の内製化を検討

・リスク分散の観点から調達先の多様化を推進

自然災害の激甚化・頻発化により、事業拠点の損壊や操業停止、生産量の減少が発生

 

※28ページ<気候及び水関連リスクの財務影響評価>を参照

短期

短期

・国内外グループ全拠点の被災リスク評価を実施

・観測史上最大レベルの自然災害を想定し、事業拠点およびグループ全体のBCPを見直す

中長期

・製造拠点被災時の代替生産計画を策定

・浸水防止設備の設置

・被災リスクや影響が大きい事業拠点の移転を検討・実施

慢性

水不足

降水パターンの変化により水利用可能性が低下、取水制限等が実施されることで操業停止が発生、水価格高騰により生産コストが増加

中長期

短期

・グループ全拠点の水リスク評価を実施し、高リスク拠点における対策を実施

中長期

・生産プロセスにおける水使用効率の改善、水リサイクルシステムの導入等により水使用量を削減

・水リスクが高い事業拠点の移転を検討・実施

海面上昇

海面水位上昇による沿岸部事業拠点の浸水被害増加

超長期

短期

・沿岸部事業拠点を対象に、長期的な海面水位上昇のリスク評価を実施

中長期

・海面水位上昇による影響が懸念される事業拠点の移転を検討・実施

気温上昇

気温上昇により労働生産性が低下

中期

短期

・熱中症防止施策の徹底

・従業員教育などによる救護体制の強化

中長期

・空調設備システムの見直し・導入

・高温となる時間帯を考慮した勤務時間や勤務ローテーションを実施

気温上昇に対応するため、事業拠点の冷房設備の増設・更新費用、空調費用が増加

中期

短期

・ICP(社内炭素価格)導入により、省エネ設備投資の経済的優位性を可視化し、省エネ設備投資を促進

中長期

・省エネ設備投資に係る補助金制度を活用し、イニシャルコストを削減

・空調システムの高効率化、事業拠点の断熱性能向上により、空調費用を削減

 

 

リスク/機会

顕在化時期

発生可能性

対応戦略

要因

事業への影響

(財務・非財務)

時間軸

主な施策

機会

レジリエンス

製造拠点の分散

製造拠点の分散等により、自然災害にレジリエントな物流を可能にすることで、お客様からの信頼性が高まる。

短期

短期

・グループ全拠点の被災リスク評価を実施

・観測史上最大レベルの自然災害を想定し、事業拠点およびグループ全体のBCPを見直し、強化

中長期

・製造拠点被災時の代替生産計画を策定

・浸水防止設備の設置

・被災リスクや影響が大きい事業拠点の移転

調達先の分散

調達先の分散等により自然災害にレジリエントな物流を可能にすることでお客様からの信頼性が高まる。

短期

短期

・調達先/原材料のリスク評価を実施し、被災時の代替策を検討

中長期

・調達先多様化によるリスク分散

・リスク分散の観点から調達先の多様化を推進

 

 

 

<気候及び水関連リスクの財務影響評価>

シナリオ分析で識別した気候及び水関連リスクのうち以下2つのリスクについて、当社グループへの財務影響額を試算した結果は以下の通りです。

リスクの概要

財務影響額(試算)

財務影響額試算の前提

1.5℃シナリオにおける移行リスク

「2030年 炭素税によるコスト増大」

コスト増加

約2.5億円

前提① 2030年の炭素税価格を16,800円に設定

IEA NZEシナリオで示されている2030年の炭素価格(先進国※)などの将来予測を参照し、当社独自で設定した。

※IEA NZEシナリオの先進国における炭素税参照の理由は、当社

 グループのGHG排出量の99%以上が先進国(日本・ドイツ・米

 国・韓国)の製造工場から排出されているため

 

前提② 2030年にかけて平均気温の上昇が継続

IPCC第6次評価報告書で示されたGHG排出が非常に少ないSSP1-1.9シナリオ下においても、2030年にかけて平均気温は上昇すると予測されている。

財務影響額試算では、気温上昇による冷却エネルギー(炭素税)の増大を考慮した。

 

前提③ 2030年にかけて事業成長により生産量が増加

2030年にかけて当社グループの事業成長による生産量増加に伴い、エネルギー消費量も増加

財務影響額試算では、生産量増加により、2030年にかけて毎年一定の割合で消費エネルギー(炭素税)が増加することを想定

4.0℃シナリオにおける物理リスク

「自然災害激甚化による浸水被害」

売上高減少

約0.8億円~1.6億円

前提① 浸水被害の影響が大きいと特定した1事業拠点が評価対象

WRI(World Resources Institute:世界資源研究所)が提供する水リスク評価ツール「Aqueduct」と国土交通省の「浸水ナビ」を使用し、連結グループ全拠点の水リスクを評価した。浸水した場合に、当社グループ事業への影響が大きいと思われる拠点を財務影響額試算の対象としていた。

 

前提② 国土交通省「浸水ナビ」の最大浸水深(48cm)を想定

豪雨・洪水の激甚化による当該拠点における被害規模として、国土交通省「浸水ナビ」で示された最大浸水深(48cm)の浸水を設定

 

前提③ 浸水による生産停止期間を2週間~4週間に設定

浸水により生産設備が損害を受け、2週間から4週間に渡り生産が停止することを想定

 

 

 3)リスク管理

 気候変動に関するリスクと機会については、サステナビリティ全般のリスク管理(「(1)サステナビリティ全般 3)リスク管理」をご参照ください。)に含めて管理するとともに、会社全体で包括的に環境に係るリスクと機会を掌握しております。全社環境目標設定時に気候変動に係るリスクと機会を検討の上、環境マネジメントプログラムで全社へ展開し、各部門責任者は、環境マネジメントプログラムに基づき、各部門で把握した環境側面などから具体的な部門活動に取り組んでおります。

 

 

 4)指標及び目標、実績

 

① 指標及び目標

 当社グループでは、気候変動に関する長期的な指標として「2050年ネットゼロ」を目指しております。また、2030年度に2022年度比で連結グループのGHG排出量を30%削減することを中期目標としております。

 

② GHG排出量実績

 2025年3月期のGHG排出量実績は現在算定中のため、2024年3月期の排出量を以下に記載しております。2025年3月期のGHG排出量実績には、算定出来次第当社WEBサイトのサステナビリティデータ集(https://www.hds.co.jp/csr/esg/)に公表いたします。

 

  当社連結グループのスコープ1とスコープ2の排出量                          (単位:t-CO2)

 

2022年3月期

2023年3月期

2024年3月期

スコープ1

スコープ2

スコープ1

スコープ2

スコープ1

スコープ2

日本

80

13,394

81

15,418

54

12,792

アジア(日本除く)

16

416

14

264

0

287

欧州

197

2,349

103

2,494

72

2,168

米国

205

783

145

474

82

361

合計

498

16,942

342

18,650

209

15,609

 

※1.スコープ2は、ロケーション基準の排出量です。

※2.2024年3月期のスコープ1,2は、DNVビジネス・アシュアランス・ジャパン株式会社による独立した第三者検証

   を取得しております。

 

  当社連結グループのスコープ3の排出量                               (単位:t-CO2)

 

カテゴリー

No.

カテゴリー名

2022年3月期

2023年3月期

2024年3月期

1

購入した商品・サービス

198,899

358,792

289,079

2

資本財

17,054

11,237

12,441

3

スコープ1,2に含まれない燃料及びエネルギー関連活動

899

18,329

21,589

4

上流の物流

3,951

8,466

6,568

5

操業で発生した廃棄物

455

1,322

1,067

6

出張

104

702

1,301

7

従業員の通勤

212

613

694

8

上流のリース資産

-

-

-

上流合計

221,574

399,461

332,739

9

下流の物流

-

3,837

2,287

10

販売製品の加工

-

-

-

11

販売製品の使用

-

3,428,809

666,566

12

販売製品の廃棄

-

1,400

272

13

下流のリース資産

-

270

286

14

フランチャイズ

-

-

-

15

投資

-

-

-

下流合計

-

3,434,316

669,411

スコープ3合計

221,574

3,833,776

1,002,150

 

 ※1.2022年3月期のカテゴリー1,4,5,6,7の対象範囲は、当社単体になります。

 ※2.2023年3月期のデータから新たにカテゴリー9,11,12,13を算定しております。

 ※3.カテゴリー11,12,13は、2024年3月期に算定方法を見直しました。この変更により、比較可能性の確保を目的

    として、2023年3月期についても同様の算定方法で再算定しております。

 

(3)人的資本・多様性

 

 1)人財の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略

 当社グループは、現行のマテリアリティの最初に「人的資本の価値最大化」を掲げております。人的資本は、企業活動において最も重要な経営資本であり、その他のあらゆる経営資本の土台となるものです。また、経営理念の筆頭にも「個人の尊重」を掲げており、従業員一人一人の権利を尊重し、個人が意義のある文化的な人生と生き甲斐を追求できる企業であること、一人一人の向上心を信じ自立的な活動を援助し、仕事を通して能力が最大限に発揮できる環境を作り、能力や業績に報う企業であることを理念とし、人的資本に関する各方針・制度を整備しております。

マテリアリティについては、19ページの「2)戦略」、経営理念については、12ページの「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題 (1)会社の経営の基本方針」を参照ください。

 

① 人財育成方針

 当社では、「経営理念」を実現できる人財の育成を基本方針としており、以下3段階に分けた人財育成方針に基づき、育成しております。

 

 第一段階:教育・育成段階

  「求める人財像」の基本の徹底

 第二段階:実践段階

主に実務を通して能力向上、専門性の確立を図る中で、個人の取り組みを支援し、自主成長を促す。また、戦略的に将来の幹部候補の育成を行う。<社内一流>

 第三段階:専門性発揮段階

マネジメント力、専門技能技術等これまで培ってきた能力・経験を発揮するとともに、多能工化にも取り組む。また、部門運営・後進育成に貢献する。(育成する側となる)<社外一流>

 

② 社内環境整備に関する方針

 当社グループでは、個々人が意欲的に活躍する組織を構築するため、多様な人財が活躍できる職場環境の整備に取り組んでおります。

 

多様性の確保に関する考え方

当社グループは、性別、国籍、年齢、障がい等の有無等に関係なく、全ての従業員が持てる能力を発揮し、活躍できる職場環境の構築を目指しております。女性管理職と女性役員については目標人数を設定し、多様な人財の確保に取り組んでおります。また、中途採用者も積極的に管理職に登用しており、2025年3月末日時点の当社単体管理職のうち57.1%が中途採用者であります。

 

当社単体の多様性確保に対する指標の実績

指標

2023年3月期

2024年3月期

2025年3月期

女性従業員比率

17.8%

20.7%

19.4%

外国籍従業員比率

1.2%

1.3%

1.4%

障がい者従業員比率

1.8%

1.9%

2.1%

 

 

 

採用に関する考え方

当社の経営理念を共有でき、当社グループに必要な能力を持った人財を確保するため、新卒を対象とした定期採用に加え、様々な経験、スキル、資格等を有し、即戦力として期待できる中途採用も積極的に実施し、多様性のある組織を目指しております。なお、当社グループでは、従前から新卒採用者、中途採用者の区別なく能力本位で管理職登用を行っており、中途採用者の比率及び管理職数については十分な数となっていることから目標値は設定しておりません。2025年3月末日時点の当社単体従業員の58.7%が中途採用者で構成されております。

 

人事制度

当社グループでは、従業員の能力向上や働く意欲の向上が、経営ビジョンや目標達成を可能にするとの考えのもと人事制度を構築しております。

従業員個々の主体的なキャリア構築と社内の人材流動性を高める部門異動の施策としてジョブローテーション・自己申告制度・社内公募制度を整備しております。さらに、雇用形態に関係なく利用できる育児・介護休業制度など、様々な制度を整備しております。特に、仕事と育児の両立支援を強化するため、出産・育児における休暇・休職・復帰制度、時短勤務、テレワーク等の諸制度で働きやすい職場環境の整備を強化しており、女性活躍及び従業員の働き方改革の一環として、男性従業員の育児休暇制度の利用促進を積極的に推進しております。2025年3月期における当社単体の男性育児休暇取得率は85.7%でした。

 

能力開発制度

当社では、従業員の能力開発にあたり、中長期スパンによる計画的な人財育成計画を立案し、誰もが当社の従業員に求められる能力を効果的・継続的に向上・開発できる制度を構築しております。

能力開発研修には、役割に求められる能力を発揮するために階層ごとに実施する必修の「階層研修」、業務遂行とキャリア開発のために必要な「基礎研修」、業務における専門性を向上し、キャリア開発のための専門能力を習得するための「専門分野研修」、より高度な経済環境や技術水準、国際化の進展等を踏まえ、国内外の大学等高等教育機関におけるMBAやMOTなどの学位取得をはじめ、海外関係会社での海外研修や海外の大学のAEIプログラムによる語学留学などの従業員自身の自己啓発による一層の能力向上を会社として支援する「特別研修」があります。また、当社の中長期的な成長を支える技術者・技能者に対しては、社内資格制度や外部の技能検定試験の取得を積極的に支援しております。

 

当社単体の能力開発制度に対する指標の実績

指標

2023年3月期

2024年3月期

2025年3月期

大学院・MBA・MOT通学制度利用者

2名

4名

3名

海外留学制度利用者数

0名

1名

1名

通信教育制度利用者数

275名

372名

343名

 

 

 

健康管理の推進

当社では、従業員の健康を重要な経営資源と捉え、安全衛生と健康管理の取り組みを推進しております。具体的な取り組みは以下の通りです。

 ・ 定期健康診断、ストレスチェック等による従業員の体調とメンタル不調の未然防止

 ・ 健康推進に係る専門部署「健康推進センター」の設置と社内産業保健師によるきめ細かな健康相談・

   指導

 ・ 社内・社外にハラスメント等の通報/相談窓口の設置

 ・ テレワーク環境の提供 他

 

当社単体の健康管理の推進に対する指標の実績

指標

2023年3月期

2024年3月期

2025年3月期

ストレスチェック受験率

86.0%

85.0%

84.2%

高ストレス者比率

17.8%

12.5%

15.7%

喫煙率

30.9%

29.8%

28.9%

 

 

 

 

2)人財の育成及び社内環境整備に対する指標の内容並びに当該指標を用いた目標及び実績

指標

目標

実績

2022年
3月期

2023年
3月期

2024年

3月期

2025年

3月期

女性取締役比率

2030年3月期

30%

-

-

10%

10%

女性執行役員(人数)

3

1名

1名

2名

2

女性管理職(人数)

2028年3月期

5

2名

2名

2名

3

男性の育児休暇取得率

90%

55.6%

56.3%

81.8%

85.7%

年次有給休暇取得率

80%

74.6%

73.2%

82.0%

81.1%

 

※1. 上記は、株式会社ハーモニック・ドライブ・システムズ単体の指標及び目標です。

※2. 上記目標(2028年3月期)は2025年4月に、2025年4月1日から2028年3月31日を対象期間として設定したものです。

※3. 連結の指標及び目標については現在精査・調整中であり、策定次第当社WEBサイトに公表いたします。

※4. 上記以外の人的資本に関するデータは、当社WEBサイトのサステナビリティデータ集(https://www.hds.co.jp/csr/esg/)に公表しております。

 

(4)人権尊重の取り組み

 

1)ガバナンス

 人権尊重に関するガバナンスは、サステナビリティ全般のサステナビリティ・ガバナンス(「(1)サステナビリティ全般 1)サステナビリティ・ガバナンス」を参照ください。)に組み込まれているとともに、当社グループの人権に関する具体的な取り組みの指針を明確に示すため、「ハーモニック・ドライブ・システムズグループ人権方針」を策定のうえ運用しております。

 本方針は、国際的な人権規範である国連の「国連ビジネスと人権に関する指導原則」をはじめとする国際指針に基づき、サステナビリティ委員会で策定し、社外の専門家の助言を受けたうえで、2024年11月20日の取締役会で承認されたものです。当社グループの役員、従業員、派遣社員等当社グループの全事業拠点で働く全ての人に対して適用されています。本方針の詳細・全文につきましては、当社WEBサイト(https://www.hds.co.jp/csr/human-rights/)に公表しております。

 

2)戦略

 当社グループでは、全事業拠点で働く全ての人が安心して働くことができる職場環境の整備と、お客様・サプライヤーの皆様が安心して当社グループと取り引きできる人権尊重の体制を構築しております。また、過去から「ハーモニック・ドライブ・システムズ行動規範」において、非合理なあらゆる差別を排除し、プライバシーの保護と基本的な人権を尊重することを明記して人権尊重に取り組んでおります。

 さらに、当社グループは世界的に事業を展開する機械部品メーカーとして、サプライチェーンにおける人権尊重を重要視しており、差別の撲滅、強制労働や児童労働の禁止等について定めた「サステナブル調達方針」を2022年に策定し、サプライヤーの皆様に展開しております。今後はセルフ・アセスメント質問表の範囲を拡大し、サプライヤーの人権および労働環境整備に関する意識のさらなる醸成と取り組み状況の確認を進め、サプライチェーンをも含めた当社グループの人権尊重の取り組みを強化してまいります。

 加えて、今後は当社グループの事業活動による人権に関する負の影響を特定し、その防止および軽減を図るため、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に即した人権デューデリジェンスの仕組みを構築してまいります。

 

3)リスク管理

 人権に関するリスクと機会については、サステナビリティ全般のリスク管理(「(1)サステナビリティ全般 3)リスク管理」をご参照ください。)に含めて管理するとともに、2025年度からサステナビリティ推進室とリスクマネジメント本部が主体となりリスクの低減を図っていく活動として人権・倫理分科会を設置し、グループ全体で包括的に人権に係るリスクと機会を掌握してまいります。

 

4)指標及び目標

指標

2026年3月期

2027年3月期

2028年3月期

人権デューデリジェンスの実施範囲

当社単体

連結子会社

重要サプライヤー

 

 

 

 

 

3 【事業等のリスク】

当社グループの経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性のあるリスクには、以下のようなものがあります。また、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年6月18日)現在において、当社グループが判断したものです。

なお、各リスクが顕在化する時期については、その特定が困難であるため記載しておりません。

 

① 需要変動に関するリスク (発生可能性:高、影響度:大)

当社グループの製品は、産業用ロボット、半導体製造装置、フラットパネルディスプレイ製造装置をはじめとする産業用機械の部品として販売されるものが大半でありますので、設備投資動向が当社グループの業績等に悪影響を及ぼす可能性があります。特に、産業用ロボット、半導体製造装置、フラットパネルディスプレイ製造装置業界向けについては、スマートフォン等の電子機器や半導体デバイス並びにパネル市場の市況好転や製造技術の革新などにより大きな成長を遂げることがある反面、需給調整などによる予期せぬ市場の縮小が起こった場合、当社グループの業績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループは、多様なお客様のニーズに合致した個別仕様にもとづく特殊製品を提供しており、特定のお客様が製造販売する特定の機器(資本財に限らず、自動車等の消費財などを含む)に部品として採用されておりますが、これら機器の販売動向に変化が生じた場合や、生産終了の決定がなされた場合などは、当社グループの業績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

② 個別受注契約に関するリスク (発生可能性:中、影響度:中)

当社グループは、お客様ごとに異なるニーズにきめ細かく対応できるよう、数多くのカスタマイズされた商品を製造・販売しており、当社グループが生産する品目のほとんどは、お客様と個別に受注契約した後に生産する形態としております。受注生産ゆえに納期が見込み生産と比べ相対的に長期化する場合があり、それによる失注のため機会損失のリスクがあります。受注にあたっては、当該製品の製造方法、コスト、納期などについて多面的な検討を実施しておりますが、想定外の経済・政治情勢等の変化、想定を超えるコストの発生、製品性能や納期上の問題等によるペナルティーの支払いなどが生じることがあり、これらが当社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。また、受注後に、お客様による受注契約の取り消しや、製品の仕様変更などが発生し、これに伴うコストの全額を回収できない場合にも、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

③ 研究開発に関するリスク (発生可能性:中、影響度:大)

当社グループは、モーション・コントロール分野における技術・技能集団として、研究開発部門への重点的な資源配分を実施することで、高付加価値で特長ある製品を開発し、市場投入していきます。しかしながら、研究開発への資源配分及び研究開発のための人材確保の努力を継続する一方、技術革新に追い付きお客様や市場の需要を満たす魅力的な新製品を開発できなかった場合または研究開発の成果である新製品の市場投入もしくは市場浸透が遅れた場合、当社グループの業績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

④ 技術革新に関するリスク (発生可能性:低、影響度:大)

当社グループは、メカトロニクス製品、減速装置の開発・製造・販売をコアビジネスとしております。かかる中、当社が手掛ける波動歯車装置、精密遊星減速機、サーボアクチュエーター等を代替するような技術革新が起こった場合や、競合他社において生産技術面における著しい革新が起こった場合などは、当社グループの製品の競争力が著しく低下し、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

⑤ 品質に関するリスク  (発生可能性:高、影響度:大)

当社グループは、お客様満足の向上と市場における優位性を高めるために、ISO9001の認証取得をはじめとして、品質保証体制の強化に努めております。しかしながら、予期せぬ製品の不具合が発生することなどにより、当社グループの業績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥ 外国為替の変動に関するリスク (発生可能性:高、影響度:中)

当社グループは、米国に連結子会社2社、中国に連結子会社1社、韓国に連結子会社1社、欧州に連結子会社9社を有し、事業における積極的な国際化を推進しております。従いまして、為替変動は当社グループの事業活動に悪影響を与えることがあります。また、為替変動は、当社グループの外貨建取引に伴う収益・費用及び資産・負債の円換算額に影響を与え、業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

⑦ 退職給付債務に関するリスク (発生可能性:中、影響度:中)

当社及び一部の連結子会社では、確定給付型の退職年金制度または退職一時金制度を設けておりますが、退職給付債務及び退職給付費用の計算の基礎となる条件の見直しや、年金資産の運用環境悪化等が、当社グループの業績及び財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

なお、2016年12月1日より、確定給付企業年金制度の一部を確定拠出年金制度へ移行しております。

⑧ 生産に関するリスク (発生可能性:高、影響度:大)
当社グループは、生産能力の向上及び増強に努めておりますが、生産能力が計画どおりに向上する保証はありません。また、当社グループは、生産能力を向上させるため、特に国内の工場が位置する地域において生産業務に携わる従業員を雇用する必要がありますが、当社グループがその労働力需要を満たす能力は、多くの外部要因(工場が位置する地域において適切な従業員を確保できる可能性、当該地域の失業率、給与水準及び人口動態等)に左右されます。計画どおりに生産能力が向上したとしても、お客様が求めるQCDS水準またはスピードを満たすよう生産ができる保証はありません。
 他方で、当社グループの商品に対するお客様の需要が当社グループの予想を下回った場合、当社グループの生産能力が十分に活用されず、投下資本等を回収することができないか、または回収できるとしても想定より長い期間を要する可能性があります。
 これらの場合、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
 ⑨ 調達に関するリスク (発生可能性:高、影響度:中)

当社グループは、幅広いサプライヤーから原材料、部品及び生産設備を購入しておりますが、サプライヤーの供給不足、費用増加またはその他の理由により当社グループの利用量が制限される可能性があります。原材料、部品及び生産設備の価格上昇または利用制限があった場合、当社グループの業績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

 ⑩ 人材の確保に関するリスク (発生可能性:中、影響度:大)

当社グループの事業においては、事業及びノウハウに関する深い知識と高い技術を有する研究者その他の技術者を含む熟練した従業員並びに能力の高い役員を確保する必要があり、かかる従業員または役員を確保できなかった場合、当社グループの業績等に悪影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループの人材が競合他社に流出した場合、当該人材を通じて競合他社に当社グループの技術やノウハウが漏れ、当社グループの業績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 ⑪ 海外事業の展開に関するリスク (発生可能性:高、影響度:中)

当社グループは、グローバルに事業を展開しているため、次のような海外事業展開に関するリスクがあります。

・各国の政治情勢及び経済状況の変化及び社会的混乱

・海外市場の関連産業における景気の減速または後退

・各国の予期しない法律や規制の変更(移転価格問題、当社の在外子会社及び関連会社による送金その他の支払いにかかる源泉徴収その他の税金の賦課または増税等)

・各国における許認可の取得及び維持の困難性及び不確実性

・取引制限または関税の変更

・テロ、戦争、自然災害、悪天候、感染症その他の制御不能な要因

・当社グループが事業を行っている国もしくは地域と日本との間の、またはかかる国もしくは地域間の政治的、経済的関係の悪化

・各国の政府による投資制限及びその他の規制の実施または増加

・人件費の著しい増加及び賃金上昇

・労働紛争、争議行為、ゼネストまたは労働環境におけるその他の障害

・開発途上のインフラによりもたらされる予期せぬ事故(停電等)

・文化の違いやその他の要因による現地の人材及び事業の管理の困難性

・一部の国における限定的な知的財産権の保護

また、海外における事業の展開に際しては、投下資本の回収が当初の計画どおりに進まない場合があり、収益の増加よりも早く費用の増加が生じることがあります。これにより、当社グループの業績及び財政状態に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。

 ⑫ M&A及び事業提携等に関するリスク (発生可能性:中、影響度:大)

当社グループは、ドイツ子会社ハーモニック・ドライブ・エスイーの買収をはじめ、様々な業務及び資本提携並びに合弁事業を行っており、適切な機会があれば、さらなる買収(M&A)や事業提携等を行う可能性があります。これらを行う際は、利益性及び投資利益率の見込みを慎重に検討しますが、実施時に見込んだ計画どおりに進捗しない可能性、シナジー効果を実現できない可能性、買収した事業を成功裏に経営できない可能性があります。これらの場合、買収や事業提携等にかかるのれんや無形固定資産の減損等を通じ、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 ⑬ 固定資産の減損に関するリスク (発生可能性:高、影響度:大)

当社グループは、事業用の資産や企業結合の際に発生する有形・無形の固定資産を保有しております。かかる固定資産について、事業環境の大幅な変動が生じた場合や土地等の固定資産価格が下落した場合には減損損失を計上する必要が生じ、当グループの業績に影響が及ぶ可能性があります。

 ⑭ 事業戦略の実現に関するリスク (発生可能性:高、影響度:大)

当社グループは、良好な財政基盤を維持しつつ生産能力を増強させることを含め、事業戦略を推進しております。しかしながら、事業戦略の実現や目標の達成は様々な要因(当社グループが事業を行う地域における一般的な経済環境及び市場環境、競争や需要の水準等)に左右されるため、当社グループの事業戦略の実施が意図したとおりの効果をもたらさない可能性、実際の数値が事業計画の前提と異なる可能性、設定した目標が達成されない可能性があります。また、かかる目標が将来的にさらに変更される可能性もあります。

 ⑮ 競合に関するリスク (発生可能性:高、影響度:大)

当社グループは、減速装置及びメカトロニクス製品の市場において高い市場占有率を持つ製品を多数保有しております。新規参入者により競争が激化した場合、製品の利益率の悪化や販売の機会損失の発生により、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

⑯ 知的財産に関するリスク (発生可能性:中、影響度:中)
特許及び商標を含む知的財産権並びに企業機密情報を含むノウハウは、当社グループにとって重要な競争力の源泉であり、その保護に努めていますが、当社グループの権利が干渉を受けた場合、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループが事業活動の中で他者の知的財産権を意図せず侵害した場合、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑰ 訴訟その他の法的手続きに関するリスク (発生可能性:中、影響度:大)

当社グループの事業活動において、予期せぬトラブル・問題が生じた場合、当社グループの責任の有無にかかわらずこれらに起因する損害賠償の請求や、訴訟等の提起を受ける可能性があります。かかる訴訟等は、とりわけ製品、環境責任及び特許権侵害の申立て等の知的財産に関する問題に関連して生じる可能性があります。これらの事象が発生した場合は、提訴内容や損害賠償額の状況及びその結果によっては当社グループの社会的信用が低下することに加え、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

⑱ 法令及びコンプライアンスに関するリスク (発生可能性:中、影響度:中)

当社グループの事業活動は、貿易、反トラスト、知的財産、製造物責任、労働関連法令、コーポレート・ガバナンス、個人情報保護、環境法令、政府の許認可、課税、国家間の国家安全保障に関する法令及び国家安全保障のための輸出入の規制を含む、各国における規制の対象となっております。当社グループのリスク管理体制、コンプライアンス体制及び内部統制システムを維持する努力が効果的でないかまたは不十分である場合、当社グループは(従業員または第三者によって行われたかを問わず)不正行為または腐敗行為に関与する可能性があり、また法令を遵守していないとみなされる可能性があります。これらにより、当社グループに制裁または罰金が科せられる可能性があり、また当社グループの事業及びレピュテーションに悪影響を及ぼす可能性があります。さらに、今後、法規制が強化された場合や、事業活動を展開する地域が拡大した場合、法規制への対応に追加費用を要することとなり、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

⑲ 労働災害・火災等のリスク (発生可能性:中、影響度:大)

当社グループは、日本をはじめ、海外にも事業拠点を有しており、各拠点において労働災害、火災等の産業事故や環境汚染が発生し、工場等の操業や地域社会に大きな影響を及ぼした場合、社会的信用の失墜、被災者への補償、復旧費用、生産活動停止による機会損失、顧客に対する補償など、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

⑳ 環境法令及び有害物質に関するリスク (発生可能性:中、影響度:中)

当社グループの事業は、特に製造プロセスにおいて、使用、貯蔵、排出及び廃棄に厳しい規制がかかっている化学物質等の使用を伴うため、当社グループが事業を展開している国々において幅広い環境法令及び規制の対象となっております。また、当社グループは、エネルギー及び資源保護、リサイクル、地球温暖化、汚染防止、並びに環境衛生及び安全性について、様々な法令及び工業規格の対象となっております。環境法令は、今後、規制が強化される可能性があります。その場合に当社グループの一部の生産及び一部の活動が制限もしくは禁止されてしまう可能性、または是正措置命令を受け、これの実行に伴う費用、適用された環境法令に準拠するために必要となる設備投資その他の費用が相当な金額になる可能性があります。これらによって、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

㉑ 資金調達に関するリスク (発生可能性:中、影響度:大)

当社グループのコミットメントライン契約等の一部借入金の契約には、財務制限条項が付されているものがあります。今後、当該財務制限条項への抵触があった場合、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、市場金利の急激な上昇等によって借入金に係るコストが増加した場合にも、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

㉒ 情報セキュリティーに関するリスク (発生可能性:中、影響度:大)

当社グループは、事業活動を通じて、お客様等の個人情報や機密情報を入手することがあるとともに、技術、営業、人事等に係る当社グループの機密情報を保有しています。これらの情報資産について、サイバー攻撃等による不正アクセスや、保有情報の破壊、漏洩等が発生した場合には、当社グループの信用低下や事業継続に支障が生じることなどにより、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。

㉓ その他のリスク (発生可能性:高、影響度:大)

当社グループだけでは避けることのできない、経済や政治環境の変化、テロ、戦争、自然災害、悪天候、感染症その他の制御不能な要因などの予期せぬ事象が発生した場合、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。なお、最近の米国における関税政策の変更は、当社グループに与える直接的な関税費用の増加に加え、当社グループのお客様が販売する製品等の需要変動を経て、間接的に当社グループの受注高・売上高に影響を与える可能性があります。

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度における世界経済は、全体としては回復基調ながら、米国トランプ大統領の保護主義政策、中国の不動産不況と内需の低迷、さらには資源価格・原材料価格の高騰など、先行きの不透明感が根強く残りました。

当社グループの受注環境は、国内では受注の底入れが確認でき、当社製品の在庫が適正化されたお客様からの受注が緩やかながら回復基調となりました。また、ハイエンド志向の中国ローカルロボットメーカーからの受注拡大及び新規のお客様からの案件により、産業用ロボット向けが増加した一方で、車載向けは減少しました。結果として、通期の連結受注高は前期比20.3%増加530億41百万円となりました。

用途別の売上高の動向につきましては、産業用ロボット向けは、主要顧客における在庫調整が進み、お客様の発注が正常化に近づいたことに加え、ハイエンドの中国ローカルロボットメーカー向け及び新規のお客様からの案件獲得により、大幅に増加しました。一方、半導体製造装置向けは、特に最先端分野において、データセンター用途、生成AI関連用途などが需要をけん引したものの、高水準な受注残に支えられた前期に対し、売上高は減少しました。また、車載用途については、お客様の生産調整により売上高は減少しました。

これらの結果、連結売上高は、前期比0.3%減少556億45百万円となりました。

損益面につきましては、全社コスト革新プロジェクトを立ち上げ、製造工法や業務効率を中心に全社を挙げて改革を進めました。上半期は産業用ロボット向け、半導体装置向け製品の受注回復のペースが想定より緩やかであったこと、国内生産工場の操業度も低水準であったことから、営業赤字となりました。一方で下半期は、受注が回復基調となり黒字を計上した結果、通期の営業利益も6百万円の黒字(前期比94.4%減)となりました。また、投資有価証券の売却等で、58億68百万円の特別利益を計上したことにより、親会社株主に帰属する当期純利益は34億73百万円(前期は親会社株主に帰属する当期純損失248億6百万円)となりました。

なお、製品群別の売上高は、減速装置が423億4百万円前期比7.3%増)、メカトロニクス製品が133億41百万円前期比18.5%減)で、売上高比率はそれぞれ76.0%24.0%となりました。

 

報告セグメントの業績は、以下のとおりであります。

 

(日本)

産業用ロボット向け、半導体製造装置向け製品の売上高は緩やかな回復基調となった一方で、車載向け、その他一般産業機械向けの売上高が減少し、売上高は前期比0.4%減少の217億27百万円となりました。また、セグメント利益(経常利益)は、減収の影響に加え、子会社からの受取配当金が19億80百万円減少したことにより、前期比45.6%減少の22億24百万円となりました。

 

(中国)

中国ローカルロボットメーカーからの受注拡大により、売上高は前期比35.1%増加の56億23百万円となりました。また、セグメント利益(経常利益)は、セールスミックスの変化により、前期比6.5%減少の3億2百万円となりました。

 

(北米)

お客様の生産調整により先進医療用途(手術支援ロボット関連)向けが減少したことに加え、半導体製造装置向け需要の回復が遅れていることにより、売上高は前期比12.5%減少116億28百万円となりました。また、セグメント利益(経常利益)は、減収の影響により、前期比67.4%減少5億56百万円となりました。

 

 

(欧州)

為替相場が円安に推移した一方で、欧州経済の低迷により需要が高まらず、売上高は前期比0.8%増加166億66百万円となりました。また、ハーモニック・ドライブ・エスイー株式取得時に計上した無形固定資産に係る減価償却費9億44百万円の負担により、52百万円のセグメント損失(経常損失)(前年同期はセグメント利益2億14百万円)となりました。

 

 

当連結会計年度における財政状態は、以下のとおりです。

総資産は、前連結会計年度末と比較して、55億20百万円減少前期比4.6%減)し、1,136億21百万円となりました。これは、現金及び預金が45億81百万円増加(前期比22.6%増)した一方で、株式を売却したことにより投資有価証券が83億71百万円減少(前期比95.3%減)したこと、有形固定資産が21億87百万円減少(前期比4.5%減)したことが主な要因です。

負債は、前連結会計年度末と比較して、50億62百万円減少前期比12.7%減)し、346億78百万円となりました。これは、短期資金の調達により短期借入金が20億1百万円増加(前期比285.6%増)した一方で、一部借入金の早期弁済の実行により、長期借入金が41億85百万円減少(前期比27.5%減)したことに加え、繰延税金負債が21億21百万円減少(前期比36.3%減)したことが主な要因です。

純資産は、前連結会計年度末と比較して4億58百万円減少前期比0.6%減)し、789億43百万円となりました。これは、為替変動の影響により為替換算調整勘定が26億4百万円増加(前期比20.1%増)したことに加え、主に株式の売却益を計上したことにより利益剰余金が15億73百万円増加(前期比4.2%増)した一方で、その他有価証券評価差額金が41億10百万円減少(前期比96.6%減)したことが主な要因です。

 この結果、自己資本比率は、前連結会計年度末の66.6%から69.5%になりました。

 

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べて39億81百万円増加し、229億23百万円となりました。
 当連結会計年度に係る区分ごとのキャッシュ・フローの状況は次のとおりです。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における営業活動による収入は75億16百万円となりました。(前連結会計年度は127億28百万円の収入

これは、売上債権の増加額が9億44百万円となった一方で、減価償却費を80億23百万円計上したことが主な要因です。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における投資活動による収入は14億80百万円となりました。(前連結会計年度は59億50百万円の支出

これは、有形固定資産の取得による支出を48億81百万円、定期預金の預入による支出を26億59百万円計上した一方で、投資有価証券の売却による収入を83億25百万円計上したことが主な要因です。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における財務活動による支出は58億74百万円となりました。(前連結会計年度は81億22百万円の支出

これは、短期借入れによる収入を46億50百万円計上した一方で、長期借入金の返済による支出を48億24百万円、短期借入金の返済による支出を26億50百万円、配当金の支払を19億10百万円計上したことが主な要因です。

 

 

 

③ 生産、受注及び販売の状況

a. 生産実績

当連結会計年度における生産実績は次のとおりであります。

 

セグメントの名称

生産高(千円)

前期比(%)

日本

減速装置

27,705,895

9.2

メカトロニクス製品

3,964,412

△37.6

中国

減速装置

メカトロニクス製品

北米

減速装置

4,814,908

6.0

メカトロニクス製品

4,134,546

△29.6

欧州

減速装置

9,212,251

△3.4

メカトロニクス製品

5,016,615

2.9

合 計

54,848,630

△3.0

 

 

(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。

2.当社グループの報告セグメントは、所在地別(日本、中国、北米、欧州)に区分しております。

3.当社グループは、製品の種類、性質、製造方法、販売市場等の類似性から判断して、同種・同系列の精密減速機事業を専ら営んでおり、事業の種類別セグメントは単一でありますが、報告セグメントの製品別内訳を区分表示しております。

4.磁気応用機器の開発、製造、販売を営んでいる株式会社ハーモニックウィンベルの生産実績は、メカトロニクス製品に区分、集計し、表示しております。

 

b. 受注実績

当連結会計年度における受注実績は次のとおりであります。

 

セグメントの名称

受注高
(千円)

前期比
(%)

受注残高
(千円)

前期比
(%)

日本

減速装置

20,075,362

22.2

3,914,598

20.6

メカトロニクス製品

2,557,866

78.9

851,662

70.8

中国

減速装置

5,128,002

58.4

899,541

△19.8

メカトロニクス製品

175,543

△24.3

48,092

△8.0

北米

減速装置

5,850,209

23.6

3,916,151

△4.8

メカトロニクス製品

3,804,435

15.7

2,032,703

△39.8

欧州

減速装置

10,681,834

9.4

5,471,411

△9.5

メカトロニクス製品

4,767,860

△4.4

2,116,516

△20.7

合 計

53,041,114

20.3

19,250,679

△8.9

 

 

(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。

2.当社グループの報告セグメントは、所在地別(日本、中国、北米、欧州)に区分しております。

3.当社グループは、製品の種類、性質、製造方法、販売市場等の類似性から判断して、同種・同系列の精密減速機事業を専ら営んでおり、事業の種類別セグメントは単一でありますが、報告セグメントの製品別内訳を区分表示しております。

4.磁気応用機器の開発、製造、販売を営んでいる株式会社ハーモニックウィンベルの受注実績は、メカトロニクス製品に区分、集計し、表示しております。

5.受注残高は、当連結会計年度において日本セグメントを中心に発生した533,794千円の受注取り消し額を差し引いております。

 

c. 販売実績

当連結会計年度における販売実績は次のとおりであります。

 

セグメントの名称

販売高(千円)

前期比(%)

日本

減速装置

19,232,175

1.4

メカトロニクス製品

2,495,218

△12.0

中国

減速装置

5,439,049

46.2

メカトロニクス製品

184,026

△58.4

北米

減速装置

6,270,999

10.1

メカトロニクス製品

5,357,795

△29.4

欧州

減速装置

11,362,050

2.9

メカトロニクス製品

5,304,624

△3.6

合 計

55,645,940

△0.3

 

 

(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。

2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

販売高(千円)

割合(%)

販売高(千円)

割合(%)

日産自動車株式会社

6,547,422

11.7

5,733,870

10.3

 

3.当社グループの報告セグメントは、所在地別(日本、中国、北米、欧州)に区分しております。

4.当社グループは、製品の種類、性質、製造方法、販売市場等の類似性から判断して、同種・同系列の精密減速機事業を専ら営んでおり、事業の種類別セグメントは単一でありますが、報告セグメントの製品別内訳を区分表示しております。

5.磁気応用機器の開発、製造、販売を営んでいる株式会社ハーモニックウィンベルの販売実績は、メカトロニクス製品に区分、集計し、表示しております。

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年6月18日)現在において、当社グループが判断したものであります。

 

① 重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。 詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しております。

 

(繰延税金資産)
 当社グループは、繰延税金資産について、将来の利益計画に基づいた課税所得の発生時期及びその金額を合理的に見積もり、回収可能性があると判断した将来減算一時差異について繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、経営者が見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、翌連結会計年度以降の繰延税金資産が減額され税金費用が増加する可能性があります。
 
 (固定資産の減損処理)
 当社グループは、固定資産について減損の兆候の有無に係る判定を行い、認識及び測定のプロセスを経た上で、減損が必要と認められる固定資産については帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定に当たっては、当該資産の耐用年数、将来の使用目処、将来キャッシュ・フロー、割引率の設定などにおいて、経営者の判断や見積りを用いておりますが、今後の事業計画や市場環境の変化により、当該見積りや判断の前提条件や仮定に変更が生じた場合には減損処理が必要となることがあり、翌連結会計年度以降の財政状態及び経営成績に重要な影響を与える可能性があります。

 

 

 

 

② 当連結会計年度の財政状態及び経営成績の分析

a. 財政状態

 (流動資産)

流動資産は、前連結会計年度末に比べて57億6百万円増加前期比12.0%増)し、531億64百万円となりました。これは、現金及び預金が45億81百万円増加(前期比22.6%増)したことが主な要因です。
 

 (固定資産)

固定資産は、前連結会計年度末に比べて112億27百万円減少前期比15.7%減)し、604億56百万円となりました。これは、株式を売却したことにより投資有価証券が83億71百万円減少(前期比95.3%減)したこと、有形固定資産が21億87百万円減少(前期比4.5%減)したことが主な要因です。

 この結果、総資産は前連結会計年度末に比べて55億20百万円減少前期比4.6%減)し、1,136億21百万円となりました。

 

 (流動負債)

流動負債は、前連結会計年度末に比べて21億76百万円増加前期比18.6%増)し、138億96百万円となりました。これは、短期資金の調達により短期借入金が20億1百万円増加(前期比285.6%増)したこと、未払法人税等が11億82百万円増加したことが主な要因です。

 

 (固定負債)

固定負債は、前連結会計年度末に比べて72億38百万円減少前期比25.8%減)し、207億81百万円となりました。これは、長期借入金が41億85百万円減少(前期比27.5%減)したことに加え、繰延税金負債が21億21百万円減少(前期比36.3%減)したことが主な要因です。

 この結果、負債合計は前連結会計年度末に比べて50億62百万円減少前期比12.7%減)し、346億78百万円となりました。

 

 (純資産)

純資産合計は、前連結会計年度末に比べて4億58百万円減少前期比0.6%減)し、789億43百万円となりました。これは、為替変動の影響により為替換算調整勘定が26億4百万円増加(前期比20.1%増)したことに加え、主に株式の売却益を計上したことにより利益剰余金が15億73百万円増加(前期比4.2%増)した一方で、その他有価証券評価差額金が41億10百万円減少(前期比96.6%減)したことが主な要因です。

この結果、自己資本比率は、前連結会計年度末の66.6%から69.5%になりました。

 

 

 

b. 流動性および資金の源泉

 (キャッシュ・フロー)

キャッシュ・フローの状況につきましては、「第2 事業の状況 4経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

 (資金需要)

当社グループの運転資金需要のうち主なものは、製品製造のための材料の購入や外注加工費の支払いのほか、製造費、販売費及び一般管理費などの営業費用に係るものです。また、当社グループの研究開発費は研究開発に携わる従業員の人件費が主要な部分を占めております。

設備投資、M&Aなどに係る投資資金需要に対しましては、自己資金の充当を優先した上で、不足する資金については直接金融、間接金融など多面的な調達方法を検討し実行いたします。なお、当連結会計年度における設備投資のうち主なものは、工作機械等の製造装置、各種検査装置、切削工具、治具の取得などでありますが、これらへの投資にあたっては、有形・無形固定資産の購入とする方法と、リース取引による方法とを併用しております。

 

c. 経営成績

 (売上高)

売上高は、前連結会計年度に比べて1億50百万円減少前期比0.3%減)し、556億45百万円となりました。これは、国内では受注の底入れが確認でき、当社製品の在庫が適正化されたお客様からの受注が緩やかながら回復基調となった一方で、北米において先進医療機器向け、半導体製造装置向けの売上高が減少したことが主な要因です。

 

 (営業利益)

営業利益は、前連結会計年度に比べて1億17百万円減少前期比94.4%減)し、6百万円となりました。これは、上半期は産業用ロボット向け、半導体装置向け製品の受注回復のペースが想定より緩やかであったこと、国内生産工場の操業度も低水準であったことから、営業赤字となった一方で、下半期は受注が回復基調となり、上半期の赤字を打ち消したことによるものです。

 

 (営業外損益)

営業外収益は、前連結会計年度に比べて10百万円増加前期比1.2%増)し、8億80百万円となりました。これは、為替差益が1億29百万円減少した一方で、受取利息が2億19百万円増加したことなどが主な要因です。

営業外費用は、前連結会計年度に比べて3億11百万円増加前期比73.5%増)し、7億35百万円となりました。これは、為替差損が2億35百万円増加したことなどが主な要因です。

 これらの結果、経常利益は前連結会計年度に比べて4億19百万円減少前期比73.5%減)し、1億51百万円となりました。

 

 (特別損益)

特別利益は、前連結会計年度に比べて58億59百万円増加し、58億68百万円(前連結会計年度は8百万円)となりました。これは、前述の株式売却に伴う投資有価証券売却益を58億65百万円計上したことが主な要因です。

特別損失は、前連結会計年度に比べて269億46百万円減少前期比95.6%減)し、12億39百万円となりました。

 

 (親会社株主に帰属する当期純利益)

上記の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は34億73百万円(前連結会計年度は親会社株主に帰属する当期純損失248億6百万円)となりました。

 

d. 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、目標とする経営指標を売上高営業利益率:20%以上、自己資本当期純利益率(ROE):10%以上としております。また、2024年度を初年度とする中期経営計画(2024-2026年度)において、2026年度における財務目標を連結売上高 900億円、売上高営業利益率 15%~20%、ROE10%以上と掲げております。しかしながら、初年度にあたる当連結会計年度の実績(売上高556億45百万円、売上高営業利益率0.0%)は、受注の回復が低迷している影響を受け、大幅な未達となりました。2025年度の当社グループの事業環境は「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、前期に引き続き受注が回復基調になると見込んでいる一方で、世界経済は一層不透明感が増し、楽観は許されない状況が続くものと想定しています。これらの見通しをもとに中期経営計画最終年度となる2026年度における財務目標を達成するための取り組みを進めてまいります。

なお、連結売上高、売上高営業利益率、ROEの過去5年間の推移は以下のとおりです。

 

2020年度

2021年度

2022年度

2023年度

2024年度

連結売上高

370億34百万円

570億87百万円

715億27百万円

557億96百万円

556億45百万円

売上高営業利益率

2.3%

15.3%

14.3%

0.2%

0.0%

ROE

0.7%

6.6%

7.5%

△27.1%

4.4%

 

 

 

5 【重要な契約等】

(コミットメントライン契約及びタームローン契約)

当社は、財務上の特約が付されたコミットメントライン契約及びタームローン契約を締結しております。契約に関する内容等は、以下のとおりであります。

 

1.コミットメントライン契約(リボルビング・クレジット・ファシリティ契約)

当社は、2020年3月26日付でシンジケート方式によるコミットメントライン契約を締結しておりますが、その後、当該契約は一部を変更しており、変更後の契約における主な内容は以下のとおりであります。

①参加金融機関    都市銀行、地方銀行計6行

②変更契約日     2025年3月31日

③貸付限度額     85億円

④コミットメント期限 2028年3月30日

⑤借入金残高     20億円

⑥返済期限      2025年6月23日(上記⑤の借入金残高に係る返済期限)

⑦担保        無担保

⑧財務制限条項   (1)各連結会計年度末日における連結貸借対照表及び単体の貸借対照表における純資産の部の金額を、当該決算期の直前の決算期末日の金額または2024年3月期末の金額のいずれか大きい方の70%以上に維持すること。

(2)各連結会計年度末日における連結損益計算書及び単体の損益計算書上の経常損益につき2期連続して損失を計上しないこと。

2.タームローン契約

当社は、2022年3月28日付でシンジケート方式によるタームローン契約を締結しておりますが、その後、当該契約は一部を変更しており、変更後の契約における主な内容は以下のとおりであります。

①参加金融機関    都市銀行、地方銀行計6行

②変更契約日     2025年3月31日

③借入金残高     77億円

④返済期限      3ヶ月ごとに返済(最終返済日2032年3月31日)

⑤担保        無担保

⑥財務制限条項  (1)各連結会計年度末日における連結貸借対照表及び単体の貸借対照表における純資産の部の金額を、当該決算期の直前の決算期末日の金額または2024年3月期末の金額のいずれか大きい方の70%以上に維持すること。

(2)各連結会計年度末日における連結損益計算書及び単体の損益計算書上の経常損益につき2期連続して損失を計上しないこと。

 

 

6 【研究開発活動】

 当社グループは、「モーションコントロール技術で社会の技術革新に貢献する」というミッションを推進し、未来と調和するトータル・モーション・コントロールのベストプロバイダーであり続けることを目指しております。そのために基礎研究の推進による次世代製品の開発とお客様のニーズを製品に反映させる応用開発の両面を追求しております。減速装置分野においては、より小型・軽量・高精度・高トルク容量比となる機構を追求し、メカトロニクス製品分野においては、これら減速装置分野の成果と、独自のモーター、センサー、制御技術等を応用し、各種アクチュエーター及びコントローラーの研究開発に注力しております。当社グループの研究開発はグループ内の独自技術によって行うことを中心にしておりますが、外部研究機関との共同研究にも力を入れ、次世代のモーションコントロールに必要となり得る要素開発と製品化に取り組んでまいりました。その成果として、先進医療(手術ロボット)、ヒト型ロボット、モビリティ、航空・宇宙などの用途への採用が進んでおります。

 当社グループ内において、研究開発の主たる部分は当社が担っております。カタログ標準製品の開発やお客様の要求に基づく開発設計を行う「開発・技術本部」、新しい自由な発想に基づいて現有製品の枠組みを超える新しい原理や機構を追求する「新原理機構研究室」、ハーモニックドライブ®の基礎技術を深耕し、性能向上の可能性を見出す「ハーモニックドライブ研究所」の3本部体制を設けております。米国シリコンバレーには、調査・研究を目的としたオフィスを設け、世界最先端のIT技術やロボット技術が集積する同地における足掛かりを築いております。これにより、様々なお客様の要求に応じるのはもとより、将来を見据えた先行的な研究開発や全ての研究開発の基本となる基礎技術の追求、さらには将来的にお客様に革新的な価値を提供できるような新原理や新機構の研究にも積極的に取り組み、加速する時代の変化にも対応してまいります。また、穂高工場敷地内の研究棟において、超精密な製品を生産・測定するための生産技術及び技能の研究を行っております。

 特に新規開発案件では、最新の軽量化技術と工法開発を適用した提案を行い、お客様の技術革新に貢献しました。また、メカトロニクス製品の分野におきましても、既存の当社サーボドライバ-の後継として大幅な性能向上を実現し、自動調整やモニタリング機能を新規搭載したACサーボドライバ-HA-900Aシリーズを市場導入しました。加えて、他社製品よりも省スペース化を実現する精密遊星減速機タイプのサーボアクチュエーターの開発に注力し、高付加価値メカトロニクス製品の強化・拡大を図りました。

 なお、当連結会計年度における研究開発要員は148名であり、研究開発費として3,776百万円を投下しております