文中における将来に関する事項の記載は、本書提出日(2025年6月25日)現在において当社グループが判断したものです。
(1)経営方針
当社グループは、「我々は勇敢に技術革新を追求し 人格を養い能力を高め社会の発展に寄与する」という創業の精神(綱領)に基づきながら、時代時代で生まれてくるお客さまの製品と同様に、当社グループも常に、新しい技術への挑戦と革新を続けることで、時代の変化に対応してきました。また、新しい市場、お客さま、製品技術に関わることで、当社グループの成長につなげるとともに、世界中での仕事を通じて個人の見聞を広げ、個人の能力を高め、世界で競争できる能力を高めてまいりました。
2022年度以降は、長期的な経営方針として、「人技幸献」というスローガンを掲げております。これは「Hirataに関わるすべての人を幸福にするとともに、社会に技術で貢献する」という意味であり、 Hirataは技術があってこそ、技術は人があってこそ、Hirataは働く社員の幸せがあってこそ存在するということを表現したものでもあります。さらに、2025年度から始まる新中期経営計画(2025-2027年度)においては、お客様の次世代製品に対応し、お客様と当社双方の利益の最大化を目指す「設備革新による利益の最大化」をスローガンとして掲げております。
このような経営方針のもと、今後もあらゆるステークホルダーの皆さまとのコミュニケーションを深めながら、企業の持続的な成長に向けて取組んでまいります。
(2)外部環境認識
当社グループが成長市場と位置付けている市場への設備投資は、足元の変動はありながらも拡大傾向にあります。自動車市場については、EV投資に減速感が見られるものの、各自動車メーカーの全方位的な戦略により、ICE(内燃機関)への継続的な設備投資や国内市場におけるEV向けバッテリーへの設備投資は活発化しています。半導体市場については、生成AI関連の需要が牽引し、技術の急速な進化に伴う高集積化などにより、市場の拡大が続くと見込まれます。これらの外部環境を踏まえ、自動化・省人化ソリューションに対する期待はさらに高まると認識しておりますが、米国政権によるインフレ抑制法(IRA)に基づく支出の見直しや関税政策の変更などが今後の設備投資に与える影響は不透明です。
そのような市場変化の一方で、エネルギー価格の高騰や物価上昇、為替変動の影響は、当社事業における調達品価格と人件費の上昇、人材確保に影響を及ぼしており、収益性の向上に向けた重要な事項と認識しております。持続可能な経済社会の実現に向けた対応策として、調達品価格の上昇に対してはサプライヤーさまとの共存共栄を目指し価格転嫁を受け入れるとともに、受注価格に対しては付加価値向上に見合った適正価格の実現や適正な取引関係の構築に取組んでおります。また、人件費の上昇、人材確保については、物価高騰を上回る賃金改定を実施し、事業戦略を支えるための人的資本への積極的な投資を推進しております。
(3)中期経営計画の取組み
①中期経営計画(2022年度~2024年度)の実績
中期経営計画(2022年度~2024年度)においては、当社グループとしての経営基盤を固め、既存事業で利益を出しながら、成長市場でのビジネス拡大を図る3年間と位置付け、2025年3月期の売上高1,000億円、営業利益100億円、営業利益率10%、ROE11%を数値目標に掲げてきました。本中期経営計画の数値目標に対して、当期は売上高884億83百万円、営業利益68億98百万円、営業利益率7.8%、ROE7.2%となりました。なお、加重平均資本コスト(WACC)6.0%に対して投下資本利益率(ROIC)は4.6%となり、前期に比べ、営業利益は増加し売上債権は減少したものの、資本コストを上回る改善には至りませんでした。セグメント別の実績は、次のとおりです。
2022~2024年度セグメント別の売上高・営業利益の目標と実績 (単位:億円)
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セグメント |
中計最終年度 目標 (2024年度) |
1年目実績 (2022年度) |
2年目実績 (2023年度) |
最終年度実績 (2024年度) |
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売上高 |
自動車関連 |
400 |
302 |
369 |
430 |
|
半導体関連 |
400 |
289 |
273 |
301 |
|
|
その他自動省力機器 |
200 |
169 |
160 |
130 |
|
|
その他(消去含む) |
22 |
23 |
21 |
||
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合計 |
1,000 |
784 |
828 |
884 |
|
|
営業利益 (営業利益率) |
自動車関連 |
20 (5%) |
15.5 (5.1%) |
16.5 (4.5%) |
41.9 (9.7%) |
|
半導体関連 |
60 (15%) |
34.4 (11.9%) |
44.5 (16.2%) |
28.5 (9.5%) |
|
|
その他自動省力機器 |
20 (10%) |
9.3 (5.5%) |
1.1 (0.7%) |
△1.0 (△0.8%) |
|
|
その他(消去含む) |
△0.1 (△0.7%) |
△1.7 (△7.3%) |
△0.5 (△2.4%) |
||
|
合計 |
100 (10%) |
59.2 (7.5%) |
60.4 (7.3%) |
68.9 (7.8%) |
各セグメントの業績について、自動車関連では、EVおよびICE双方において変動する需要を取込むことで、売上高・営業利益ともに数値目標を達成しました。しかしながら、高い利益率を維持しつつ、さらなる成長を実現することが重要な課題であると認識しております。一方で、半導体関連においては、市場における需要増加に対応するための生産体制の整備が遅れた結果、十分な量産効果を得ることができませんでした。加えて、原価上昇の影響も重なり、売上高・営業利益ともに数値目標を下回る結果となりました。今後は顧客価値の最大化に向けたより一層の生産体制の強化が喫緊の課題となっております。その他自動省力機器においても、顧客による投資延期等の影響を受け、売上高・営業利益ともに目標達成には至りませんでした。これらの課題を踏まえ、短中期的に高利益体質を実現し、ビジネス領域を拡大する戦略を新中期経営計画として策定しました。
(注)当社ではこれまで投下資本利益率(ROIC)の分子を営業利益ベースで算出しておりましたが、資本効率を評価する上でNOPAT(税引後営業利益)ベースがより適切であると判断し、2025年3月期以降はNOPATベースを採用することとしました。
②新中期経営計画の策定
高利益体質の実現とビジネス領域の拡大を図り、持続的・安定的な利益創出を目的とした、2025年度を開始年度とする新中期経営計画(2025-2027年度)を策定しました。2028年3月期の営業利益100億円以上、ROE9.3%以上の達成に加え、計画期間中において売上高年平均成長率(CAGR)6~8%の実現を目指す目標を掲げております。また、事業戦略の着実な遂行に向け、人事・知財・IT/DX・ガバナンス・サステナビリティの各機能の充実を本中計期間内で図っていきます。
<本中計の位置づけ>
当社グループは「設備革新による利益の最大化」をスローガンに掲げ、お客様の次世代製品に確実に対応するための革新を推進します。自動車セグメントでは全方位的なニーズに応え、半導体セグメントでは製造技術の進化に柔軟に対応することで、お客様と当社双方の利益を最大化することに全力を尽くします。設備革新は私たちの成長の原動力であり、未来の製造業の発展に寄与するものと考えております。
新中期経営計画の実現に向けた5つの戦略の柱は以下のとおりです。
1)半導体関連事業における事業規模の拡大
中長期的な半導体需要の拡大による、お客様の生産拠点のグローバル化に追従すべく、当社グループでの営業、生産、販売、サービス体制の強化と、半導体業界の技術革新を見据えた製品開発を推進し、さらなる事業規模の拡大を図る。
半導体関連事業の基本戦略
A.需要増に応え得る高品質な量産製品の安定供給
B.既存顧客への当社設備の採用・範囲拡大に向けた営業推進
C.市場の技術進化に応じた対応領域の拡充
半導体関連事業の2027年度目標
・生産能力 50%増(各製品の台数ベース)
・海外での生産拠点 +2拠点(2024年度対比)
2)受注生産ビジネスにおける収益性の強化
培ってきた強みを活かし、地域や案件の選択と集中、エンジニアリングを重視したビジネスの展開、資本効率の改善によって、受注生産ビジネスにおいての収益性を強化する。
自動車関連事業の基本戦略
A.案件・地域の選択と集中
B.エンジニアリング中心の業務へのシフト
自動車関連事業の2027年度目標
・自動車セグメントの連結営業利益率10%以上
・CCC 20%短縮(2024年度対比)
3)収益基盤のさらなる強化
コスト構造の最適化や経営・財務基盤強化を推進し、中長期的に高いROEを実現させる。
A.経営基盤強化
利益率向上に寄与するKPIを高頻度で確認し改善を講じる。
B.財務基盤強化
営業キャッシュ・フローの改善を図ることで、成長投資確保と株主還元拡大を両立させる。
<2025-2027年度(3か年合計)のキャッシュ・アロケーション方針>
・R&D投資前営業キャッシュ・フロー150億円
・成長投資として設備投資60億円、R&D投資50億円
・連結配当性向の目安35%
さらに、持続可能な成長投資と中長期的な企業価値向上を実現するため、資本効率を意識したバランスシートを構築することを目指す。
C.コスト構造の最適化
コストダウン活動が全社として推進され、削減効果がモニタリング出来ている状態を目指す。
4)量産ビジネスの拡大
当社の技術資産を活用して、幅広い産業の顧客ニーズに応える量産製品を創出、販売することで、既存事業の高収益化と新規事業創出を目指し、これらを実現するための部門横断体制の強化を図る。
A.製品の標準化推進に向けた体制・プロセスの整備
B.量産製品の拡充に向けた開発の促進
5)新規ビジネスの事業部化
Hirataの培ってきたノウハウ・強みをベースに、M&Aや戦略的なアライアンスを選択肢の一つとし、新規ビジネスの確立を目指す。
A.2027年度までに各分野で売上高50億円以上を目指す事業として、バッテリー事業、制御盤事業、電動化部品事業
B.新規ビジネスとして育む分野として、生物遺伝資源、集束超音波(HIFU)がん治療装置
当社は、事業を通じて持続可能な社会の実現に寄与することを使命と認識し、すべてのステークホルダーに対する社会的責任を果たしながら、事業成長し続けるという両立視点を起点としたサステナビリティ基本方針を策定しております。この方針の下に、「気候変動への対応」、「持続可能な社会の構築」、「人を活かす」、「経営基盤の強化」のテーマにおいて、マテリアリティを特定し、取組みを推進しております。
<サステナビリティ基本方針>
Hirataグループは、当社に関わるすべての人を幸福にし、持続可能な社会の構築に貢献することを目指しています。そのために、私たちは、創業の精神「綱領」に基づく、人間尊重の精神と地球環境に配慮した製品・サービスの提供を通じ、経営の透明性と健全性を確保しながら、事業成長と社会課題解決の両立に取組みます。
2023年度からサステナビリティに関する取組みを本格稼働し、各マテリアリティにおける2030年目標達成に向け取組んでまいります。
サステナビリティに関わる活動については、ESG全般の取組みについての外部評価機関「EcoVadis」や国際的な環境非営利団体(NGO)である「CDP」による定期的な評価を受けることで、進捗の客観的評価を確認しております。
なお、EcoVadisによる2024年サステナビリティ調査において、「シルバー」評価(総合得点:69点)を獲得しました。
(1)サステナビリティ
①ガバナンス
当社はサステナビリティ基本方針に基づき、気候変動を含むサステナビリティ経営を推進するために、サステナビリティ推進委員会を設置しております。代表取締役社長が委員長を務め、適宜社外取締役や外部有識者の意見も取入れるとともに、委員会の下にワーキンググループ(以下、WG)を立ち上げ、当社グループのサステナビリティ活動の推進を図っております。事務局は経営企画部が担当し、原則、年に2回以上開催します。2024年度はサステナビリティ推進委員会を4回開催し、2025年度も年に4回の開催を予定しております。サステナビリティ推進委員会は当社のサステナビリティに関する目標・方針の策定および課題についての審議、活動に対する進捗状況の確認をおこない、マテリアリティの取組み推進は、取締役会重点テーマの一つとして取締役会の監督を受けております。
なお、役員報酬につきましても「ESG指標の達成度」に連動させることを2025年5月9日の取締役会において決議しており、2025年6月26日開催の株主総会の議案として付議する予定です。
役員報酬の詳細につきましては、「
<サステナビリティ推進委員会体制>
(注)2025年3月末時点
<当社のサステナビリティに関する主な議論>
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会議体 |
2024年度実績 |
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議論回数 |
主な議論内容 |
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取締役会 |
6回/13回(注) |
・サステナビリティ推進委員会の決議・議論内容報告 ・各マテリアリティに関連する方針・宣言に対する決議 人を活かす:健康宣言、健康経営推進 サプライチェーン:責任ある鉱物調達方針 |
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サステナビリティ推進委員会 |
4回/4回 |
・各マテリアリティの目標・KPIの見直し案決議 ・各マテリアリティの目標・KPIに対する進捗状況確認 ・中長期・単年度の活動計画の決議 ・グループ展開についての計画の審議 ・当社におけるサステナビリティ活動の位置づけの再認識 ・新中期経営計画におけるサステナビリティ戦略の策定 ・ESG外部評価機関の結果共有 |
(注)取締役会開催回数における、サステナビリティに関する議論を実施した回数
②戦略
前中期経営計画(2022年度~2024年度)では、全社的なサステナビリティ活動を推進するため、体制の整備、WGの立ち上げ、各マテリアリティに対する目標および計画の緻密化、ならびに各部門の活動計画への落とし込みをおこない、サステナビリティを経営の中核に据えた取組みを推進してまいりました。
一方で、新中期経営計画(2025年度~2027年度)においては、「サステナビリティ戦略」を全社で推進する機能戦略の一つとして位置づけており、これは経営戦略と一体的に推進していくという当社の基本姿勢を反映したものです。今後も引き続き4テーマ・10項目から成るマテリアリティに対して、サステナビリティ推進委員会が主導して目標および指標を設定し、進捗を確認してまいります。
<マテリアリティ>
中長期的には、2030年において当社グループでサステナビリティへの取組みが定着し、事業課題と社会課題解決の両立という経営が成り立っていること、2050年にはサプライチェーン全体を巻き込んだサステナビリティ推進により、当社に関わるすべての人の幸福と持続可能な社会の構築に貢献していることを目指す姿としております。
また、2015年のパリ協定採択を機に気候変動問題に関する世界的な関心が急速に高まる中、綱領において「社会の発展に寄与すること」を使命とする当社は、2016年に環境方針を改定し、CO2排出量削減や環境負荷低減に貢献する商品の普及を通じた社会の発展と、気候変動問題をはじめとする環境問題解決の両立を目指しています。
2022年に「気候変動関連財務情報開示タスクフォース」(Task Force on Climate-related Financial Disclosures:TCFD提言)に賛同を表明しました。気候変動が経営にもたらす「リスク」「機会」について特定・分析・評価するとともに、株主・投資家をはじめとするステークホルダーの皆さまとのエンゲージメント(建設的な対話)に資する情報開示の充実に取組んでいます。
当社グループでは、シナリオ分析を通じ、IEAなどの科学的な情報に基づく1.5℃/4℃シナリオにおける2030年、2050年での当社グループとお客さまの業界への変化を把握し、気候変動リスク・機会を分析しました。
分析の結果、1.5℃上昇の将来社会像を踏まえ、当社グループでは省エネ製品の需要増加によるビジネス機会が大きくなる一方で、4℃では物理的リスクの影響が大きくなると認識しています。
これらの分析結果を踏まえ、当社グループは認識したリスクに対処しながら機会を最大化するための取組みを実現性の高いものから順次検証し、経営戦略への反映・統合を推進していきます。
気候変動への対応については、以下をご参照ください。
https://www.hirata.co.jp/sustainability/esg/climate
1)当社の経営戦略とサステナビリティ課題の連動
当社は、持続可能な社会の実現と企業価値の向上を重要な機会と捉え、主に以下3つのマテリアリティにおいて経営戦略と連動した取組みを推進しています。
製品・サービスを通じたカーボンニュートラルへの貢献
お客さまをはじめとしたステークホルダーからの環境配慮に関するニーズも高く、カーボンニュートラル市場の拡大を機会と捉え、製品・サービスを通じたカーボンニュートラルや持続可能なものづくりに貢献します。具体的には、人と環境にやさしいHirataのオール電動搬送システム「エコ電動シリーズ」の既存のラインナップ強化に加え、成長分野向けの拡充やキーデバイスの応用に取組むことで事業成長と持続可能な社会への両立を目指します。
社会変化に伴う新たな顧客ニーズの創出
EV・半導体市場の需要増や脱炭素等の社会変化に伴う顧客ニーズに対し、事業分野の伸長やカーボンニュートラルに寄与する製品の創出による競争力強化の向上のため、製品・サービスの開発に取組んでまいります。これにより、社会課題の解決と新市場の創出を両立し、持続的な成長を図ります。
デジタル化の進展への対応
生成AIなどの先端技術を活用し、当社の業務効率化とお客さまの生産現場のデジタル化支援を推進してまいります。デジタル技術を活用した新たな市場トレンドの把握にも取組んでおり、変化の激しい市場環境において競争優位性を確保していきます。
これらの取組みは、サステナビリティ課題への対応にとどまらず、当社の中長期的な競争力強化と企業価値の最大化に直結するものと考えています。
2)CO2排出量削減への対応
当社は、2050年サプライチェーンも含めた事業全体でのカーボンニュートラルを目標としております。その目標を達成すべく、2023年1月にサステナビリティ推進委員会にてScope1,2についての目標を設定しました。目標につきましては、「④指標及び目標」に記載しております。
また、サプライチェーンも含めたカーボンニュートラルを達成すべく、Scope3の現状把握にも注力しております。当社では15のカテゴリのうち大部分を占めるカテゴリ1(購入した製品サービス)、カテゴリ11(販売した製品の使用)を最優先(注)とし、WG活動の中で排出量の把握、削減目標策定などを検討してまいります。
(注)概算で算出したデータに基づく優先順位を設定しております。
<CO2排出量>(注)1
単位:t-CO2
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2021年度 |
2022年度 |
2023年度 |
2024年度(注)2 |
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Scope1 |
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算出中 |
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Scope2 |
|
|
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算出中 |
|
合計 |
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算出中 |
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生産高比(注)3 |
0.1369 |
0.1026 |
0.1185 |
算出中 |
(注)1.平田機工単体のデータです。
2.2024年度実績については、2025年7月頃に算出を完了する予定としております。
3.CO₂排出量原単位(t-CO₂/百万円)
2023年度の実績としましては、エネルギー使用量の削減を進めたものの、電力会社のCO₂排出係数(基礎排出係数)の増加により、実質生産高比では2022年度に比べてCO₂排出量が15.5%増加しました。
今後もサステナビリティ推進委員会において中長期の取組みを議論し、具体化した施策に取組んでまいります。
③リスク管理
当社グループでは、サステナビリティ推進委員会が中長期の気候変動に関するリスク・機会の識別・評価、管理をおこないます。シナリオ分析において、関連するパラメータを抽出してリスク・機会を識別し、定期的に評価を実施します。また、各リスク・機会の財務的インパクトを定量的に評価することで、リスク・機会の管理をおこないます。
さらに、全社的なリスク管理体制を統括するリスク管理委員会では、社内外の要因により、当社グループの事業目標の達成または持続的な経営に影響する可能性がある事象に対処するため、サステナビリティ関連リスクを含む全社的なリスクについて包括的な評価をおこない、その対応計画を承認するとともに、定期的なモニタリングをおこなっております。
なお、全社的なリスク管理の概要につきましては、「
④指標及び目標
2023年1月のサステナビリティ推進委員会において、マテリアリティに対する指標及び目標を決議しております。
<マテリアリティ、目標・KPI>
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テーマ |
マテリアリティ(重要課題) |
主な取組み |
2030年目標・主なKPI(注)1 |
2024年度実績 |
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気候変動への対応 |
①自社およびサプライチェーン上の環境負荷低減 |
・環境負荷の低減 ・温室効果ガス排出量の削減 ・資源循環社会の推進 |
・カーボンニュートラル達成(Scope1,2) ・水使用量を実質生産高比1%/年以上の削減 |
(算出中) (注)2 |
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②製品・サービスによるカーボンニュートラルへの貢献 |
・カーボンニュートラル市場の拡大 |
・エコ電動シリーズにおける売上貢献額拡大 |
・好調な北米の大型案件に注力したものの、エコ電動シリーズの採用が伸びず、比較的導入が進んでいる国内の顧客からの受注が減少した結果、売上貢献額が縮小 |
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持続可能な社会の構築 |
③社会変化に伴う新たな顧客ニーズの創出 |
・社会変化に伴う新たな顧客ニーズの探索や改良の取組み |
・バッテリーおよび燃料電池関連での売上拡大 ・半導体関連の売上拡大 |
・バッテリーおよび燃料電池関連での売上 前年度比 11%増 ・半導体関連の売上 前年度比 10%増 |
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④デジタル化の進展への対応 |
・デジタル化の進展への対応 ・スマート社会に向けた基盤の整備 |
・基幹システム入替による業務の効率化(30%削減) ・一人当たりの年間業務時間3%削減 |
・一人当たりの年間業務時間9.8時間(0.5%)削減 |
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テーマ |
マテリアリティ(重要課題) |
主な取組み |
2030年目標・主なKPI(注)1 |
2024年度実績 |
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人を活かす |
⑤人材確保・育成 |
・人材確保・育成 ・DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン) |
・エンゲージしている人の割合20% ・女性従業員に占める管理職比率を男性従業員に占める管理職比率と同等にする ・障がい者雇用率 法定雇用率+0.3% |
・エンゲージしている人の割合 8% ・女性従業員に占める管理職の割合 6.6% ・障がい者雇用率 2.14% |
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⑥多様で安全安心な職場づくり |
・ワークライフバランスの向上 ・安心して働ける安全な職場づくり |
・健康経営の取組み強化(ホワイト500の取得) ・労働災害度数率0.4以下 |
・労働災害度数率 0.62 |
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経営基盤の強化 |
⑦製品安全・品質の向上 |
・製品安全・品質の向上 |
顧客満足度調査にて ・回答回収率90%以上 ・調査結果の加重平均4.5点以上 ・製品による重大事故発生0件の継続 |
・回答回収率 76% ・調査結果の加重平均3.94点 ・製品による重大事故発生0件 |
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⑧サプライチェーンマネジメント |
・サプライチェーンマネジメント |
・CSR調達アンケート3.7点未満のサプライヤー数ゼロ(取引額上位90%) |
・CSR調達セルフアセスメント3.7未満のサプライヤー数131社 |
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⑨コーポレート・ガバナンスの強化 |
・ステークホルダーエンゲージメント ・コーポレート・ガバナンスの強化 |
・重大な法令違反件数ゼロ ・コンプライアンス重点項目に対する違反件数ゼロ |
・重大な法令違反件数ゼロ ・コンプライアンス重点項目に対する違反件数4件(注)3 |
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⑩リスクマネジメント |
・公正な取引に向けたコンプライアンス遵守 ・リスクマネジメント ・財務資本の健全性の維持 |
(注)1.本書提出日(2025年6月25日)時点では、平田機工単体を対象としております。今後は連結子会社も含めた目標・KPIの検討をおこなう予定です。
2.2024年度実績については、2025年7月頃に算出を完了する予定としております。
3.2024年度のコンプライアンス重点項目は、児童労働・強制労働、資金洗浄、利益相反、不正会計、汚職・贈収賄、ハラスメントを設定しており、ハラスメント項目での違反件数が4件発生いたしました。
(2)人的資本
①戦略
<人材育成方針>
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当社では、会社が目指す姿として策定したスローガン「人技幸献」のもと、主体的に学び、一丸となって挑戦し続ける人材の育成を目指しています。 具体的には、従業員一人ひとりが自身の専門性や個性を最大限に活かして挑戦できるよう、経験やスキルに応じた階層別研修や技術専門研修を実施しています。 今後は、長期的な視点で当社の成長に必要な人材育成を目指し、多様な人材のキャリアを支援する研修プログラムや人事異動の活性化や適正な評価の推進などにより、高い技術力・専門性を持った人材に加え、グローバル人材、マネジメント人材の持続的な育成を推進してまいります。また、自己啓発支援制度の充実により、従業員一人ひとりが自己の夢や目標に向かって、自己の人格や能力を高め、自身の可能性へ挑戦し続ける環境・風土の醸成に、積極的に取組んでいきます。 |
<社内環境整備方針>
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当社では、多様なキャリア・社会的背景(性別、年齢、国籍、障がいの有無、ライフスタイル等)を持つ従業員が、仕事を通じて成長を実感し、やりがいや誇りを持って働き、幸せを感じられるような環境づくりを目指しています。 また、従業員の主体的なキャリア形成支援に向けた、ジョブローテーションの活性化推進、従業員が働きがいややりがいを実感できる評価・報酬制度の構築、健康経営を目指した取組みとして、時間外労働の削減等を通じたワークライフバランスの実現や、健康管理センターの体制強化など、多角的な環境づくりに取組んでまいります。 |
従業員エンゲージメントの向上
上記社内環境整備方針を実現するためには、現状や課題を把握する必要があり、客観的なデータを取得するため、「従業員エンゲージメント調査」を毎年実施しております。2024年度は、約1,200名の従業員を対象に調査を実施し、84%の従業員から回答を得ました。
2023年度以降、調査結果のフィードバックを実施すると共に、部門毎に結果を踏まえた取組みを検討するなど、対応を強化しており、エンゲージしている人の割合は前年度調査結果の4%から8%に向上いたしました。今後も全社および各組織の課題を把握し改善していくことで、従業員一人ひとりが成長を実感し、やりがいや誇りを持って働ける風土や環境づくりを目指してまいります。
ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)
当社は、挑戦する一人ひとりが、「個性」を認められ、互いに尊重しあい、成長を実感し、人生が輝くような企業集団を目指し、DE&I推進の取組みを強化しております。2030年に向けては、ジェンダーおよび障がいのある社員に関する目標を設定しております。
2024年度はジェンダーに関する施策として、役員向けDE&I研修の実施、女性従業員の交流の場作りを実施し、目標としていたえるぼし(3つ星)認定を取得いたしました。また、障がい者採用についても、推進体制の構築、採用活動の強化などを実施することで、一定の成果を出しており、2025年度も引き続き、各種施策に取組んでまいります。
②指標及び目標
当社は上記「①戦略」において記載した、人材育成方針および環境整備方針について、次の指標を掲げており、目標・実績は以下のとおりです。
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指標 |
目標( |
実績(2024年) |
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エンゲージしている人の割合 (心理的に「当事者意識」を持ちパフォーマンスと革新を推進し、組織を前進させている人の割合。) |
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男性従業員に占める管理職の割合と同等 |
女性 男性 20.2%
(参考:女性管理職比率 7.1%) |
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法定雇用率+0.3% |
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(注)1.いずれも提出会社における目標および実績数値です。
2.障がい者雇用率の実績は、「障害者雇用状況報告書」の最新値(2025年6月1日現在)で示しております。
(3)人権尊重の取組
当社グループは、自国および事業をおこなう国・地域に適用される法令を遵守し、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」のほか、人権尊重に関する国際規範等を支持、尊重します。
<人権方針>
1.強制労働の禁止
私たちは、強制労働を行わず、労働者が雇用を自ら終了する権利を守ります。また、人身売買を含む、いかなる形態の現代奴隷も許容しません。
2.児童労働の禁止
私たちは、最低就業年齢に満たない児童が働くことを認めません。また、18歳未満の若年労働者を健康や安全が損なわれる可能性のある危険業務に従事させません。
3.労働時間への配慮
私たちは、従業員の働く国・地域での法令を遵守したうえで、国際的な基準を尊重し、労働時間・休日・休暇を適切に管理します。
4.適切な賃金と手当
私たちは、各国・地域の最低賃金、時間外労働賃金、法定給付を含む従業員の報酬に関するすべての法令を遵守します。
5.非人道的な扱いの禁止
私たちは、従業員の人権を尊重し、従業員に対する精神的・肉体的な虐待、ハラスメントなどの非人道的な扱いならびにそのような可能性のある行為の発生を防止し、発生した場合には迅速に適切な対応をとります。
6.差別の禁止
私たちは、人種、肌の色、年齢、性別、性的指向、性自認、民族、国籍、障がいの有無、妊娠、宗教、政党・政治的見解、組合員であるかどうか、軍役経験の有無、保護された遺伝情報、結婚歴の有無、疾病の有無などにもとづく、あらゆる差別を禁止します。
7.結社の自由と団体交渉権
私たちは、各国・地域の法令を遵守したうえで、労働環境や賃金水準などの労使間協議を実現する手段として、従業員の結社の自由と団体交渉権を尊重します。
8.労働安全衛生
私たちは、従業員の働く国・地域での法令を遵守したうえで、国際的な基準を尊重し、従業員の業務に伴うケガや心身の病気を最小限に抑え、安全で衛生的な作業環境を整えます。
①ガバナンス
2023年度より、人権尊重のための体制づくりとして、熊本(および東京オフィス)、関東、関西の3拠点にそれぞれ人権啓発推進責任者、人権啓発推進担当者を選任し人権啓発推進体制を構築しました。なお、2023年度設置した人権尊重WGはHirataグループ内の「人」に関する活動を総括する目的で、2025年2月より人を活かすWGのテーマの一つとして推進することをサステナビリティ推進委員会にて決議いたしました。引き続き当社グループおよびサプライチェーンでの取組強化に努めます。
<人権尊重推進体制>
②戦略
当社グループは、サステナビリティ基本方針に基づき、事業に関わるすべての人の基本的人権を尊重するために、2022年度にグローバルで実践する人権方針を制定しました。人権方針は、取締役会決議を経て定め、当社グループのすべての役員・従業員に適用します。また、人権方針に基づく人権尊重の取組みについては、JEITA「責任ある企業行動ガイドライン」などを参考に、人権尊重に向けた「人権方針」ガイドラインを制定し、サプライヤーさまを含むすべてのビジネスパートナーの皆さまにも賛同と実践をお願いしています。
当社グループは、グローバルに事業を展開しており、国内外のステークホルダーの人権に配慮した事業活動が重要であると認識しており、人権デュー・ディリジェンスによる人権リスクの把握、予防・軽減をおこなってまいります。
③リスク管理
人権デュー・ディリジェンスの取組み
当社では毎年人権教育を実施し、2025年度は「人権アセスメント」の実施を予定しております。また、2024年度は国内連結子会社および一部サプライヤーさまを対象とした人権アセスメントを実施しました。2025年度は海外連結子会社を対象に同様のアセスメントの実施を予定しております。なお、当社の人権アセスメントは、強制労働の禁止、児童労働の禁止、労働時間への配慮、適切な賃金、非人道的な扱いの禁止、差別の禁止、従業員の団結権、安全・健康な労働環境をアセスメント項目としております。
なお、当社における人権アセスメントは隔年で実施する予定です。
人権相談窓口
各拠点の人権啓発推進担当者は社内での人権相談窓口も兼ねており、すべての従業員が人権に関する相談を気軽におこなえる風土づくりに努めています。それぞれの通報窓口は「改正公益通報者保護法」に準拠した体制を整備し、通報情報者の守秘義務や通報を理由とする不利益な取扱いの禁止を定めています。
[リスク管理の方針・概要]
当社グループは、全てのステークホルダーのご期待に応えるため、また企業としての社会的責任に応えるため、事業活動に関わる種々のリスクを的確に把握し、適時適切に対応することで経営への影響を低減することが肝要と考えております。
なお、リスク管理の概要につきましては、「第4 提出会社の状況 4.コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要 ③ 企業統治に関するその他の事項」に記載しております。
[主要なリスク]
本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響をおよぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。
また、文中における将来に関する事項の記載は、本書提出日(2025年6月25日)現在において当社グループが判断したものです。
(1)市場環境等の変化に係るリスク
当社グループは、EV(電気自動車)をはじめとする自動車関連・半導体関連・その他自動省力機器など多分野にわたる製品の生産企業から生産システムを受注しております。そのため、国内外の経済動向の変化、顧客製品のライフサイクルが下降トレンドに入ること等によって、これら顧客の設備投資状況に変化が生じた場合、当社グループの業績および財務状態に影響をおよぼす可能性があります。
また、原材料の供給不足による生産計画の遅延、資源価格や原材料価格の上昇、人材不足による労務コスト上昇などが発生した場合、当社グループの業績および財務状態に影響をおよぼす可能性があります。
当社の技術力は顧客から高い信頼を得ておりますが、予想を超える急激な技術革新に適切に対応できないような事態が発生した場合、受注が確保できないおそれがあり当社グループの業績および財務状態に影響をおよぼす可能性があります。
当社グループでは、これらのリスクへの対策として、あるひとつの事業分野が好調であっても、その事業のみに資本を集中させることを避け、複数の事業を並行して推進することによって、特定の事業分野における製品のライフサイクルの循環等による経営への影響を低減させております。
また、当社グループでは、知財マインドを向上させ技術革新を図るための施策として、各種知財教育や各種報奨制度を設けております。各種報奨制度では、出願・登録時での報奨や優良発明に対する報奨、ライセンス収入時における報奨等によって技術者の発明に対するモチベーションを高め、顧客ニーズに見合った付加価値のある製品の開発をおこない、他社との競争に勝ち抜く体質の強化を進めております。
(2)法規制等に係るリスク
当社グループは、海外でも事業活動を展開するにあたり、日本のみならず各国・地域の各種法規制に適切に対応するよう努めております。
しかし、行政当局等との法令解釈の相違等によって、違反行為を犯したと判断が下された場合、過料や課徴金等による損失によって当社グループの業績や財務状態およびそれに伴う企業イメージに悪影響を与える可能性があります。
また、法規制等に改正等が生じた場合、その対応整備のために、多額の費用が発生する可能性があります。その結果、当社グループの業績および財務状態に影響をおよぼす可能性があります。
当社グループでは、Hirataグループ行動規範において、関係法令等を遵守する旨明記するとともに、コンプライアンス委員会の開催、コンプライアンスに関する各種研修および施策の実施、実態調査による確認等により、会社や従業員の法令違反の可能性を低減する取組みをおこなっております。
(3)重要な訴訟の発生に係るリスク
①知的財産権に係るリスク
当社グループが保有する知的財産権について、他社によって当社グループの権利が侵害されるリスクは常時存在し、侵害された場合には、当社グループのビジネスに悪影響を与える可能性があります。また、当社グループが、意図せず他社の知的財産権を侵害した場合には、他社の権利に基づく損害賠償請求や差止請求等の訴訟が発生する可能性があります。その場合には、多額の費用負担が発生し、当社グループの業績および財務状態に影響をおよぼす可能性があります。
当社は知的財産権管理の専任部署である知財部において、設備受注前の引合段階や、受注後の企画、設計および製造等の各段階において、事業部や開発部門と知財部とで連携して先願調査をおこない、当社の製品や製造方法が他社の知的財産権を侵害していないことを確認する等によって、他社が保有する知的財産権の侵害を未然に防いでおります。
②製造物責任に係るリスク
当社は、国際標準化機構(ISO)が定める品質管理基準に基づいて自動省力機器の生産をおこなっており、当該設備を使用する作業者の安全面についても、ハード・ソフトの両面における配慮に努めております。
しかし、万が一当該設備に欠陥が発生し、顧客に損害を与えた場合、製造物責任を追及される可能性があります。その結果、製造物責任訴訟等を提起される可能性があり、多額の費用負担の発生および企業イメージの悪化により、当社グループの業績および財務状態に影響をおよぼす可能性があります。なお、当社グループは企業総合賠償責任保険に加入しておりますが、事故の内容等によっては賠償額を十分に補填できない可能性があります。
当社では、前記の取組みの他、製品の納入先の国や地域が定めるCEマーキング、UL508A等の安全関連の基準を満たす設備を納入するとともに、社員や顧客に対しても安全面にも十分配慮した操作やメンテナンス方法の説明をおこなうことで、事故の発生を未然に防止する取組みをおこなっております。
(4)情報管理に係るリスク
強力なマルウェア(コンピュータウィルス等)の侵入等、予期せぬ事態によって情報漏洩・ランサムウェア等による情報セキュリティインシデントが起こる可能性を完全に排除することはできません。万が一、情報セキュリティインシデントが起きた場合、多額の費用負担の発生および企業イメージの悪化により、当社グループの業績および財務状態に影響をおよぼす可能性があります。
当社は、高度化する情報セキュリティの脅威に対応するため、クラウド環境・ネットワークを含む社内情報システムへの不正アクセスを防止するシステムの導入、情報セキュリティ基本方針、社内規程や対応マニュアルの見直し、当社グループの役員や従業員への教育、サイバー攻撃を想定した訓練、およびマルウェア感染対策の強化等を実施しています。万が一、マルウェア感染などの情報セキュリティインシデントが発生したとしても、迅速で適切な対応ができるようマニュアルを整備しています。
また、当社では、情報セキュリティ統括責任者を委員長とする情報セキュリティ委員会にて情報セキュリティ管理を推進する体制を構築し、定期的なアセスメントを通して、情報セキュリティ管理レベルの維持・向上に努めています。
(5)環境規制および気候変動に係るリスク
当社は、製品の省電力化を通し、設備稼働時のCO2排出量の削減を実現させるなど、環境に配慮した製品開発をおこなうとともに、環境法令を遵守し汚染物質の漏洩防止や廃棄物の減量等、環境負荷の低減に努めております。
しかし、気候変動をはじめとした地球環境問題等による各国の環境規制強化等に適切に対応できなかった場合には、多額の費用負担の発生および企業イメージの悪化により、当社グループの業績および財務状態に影響をおよぼす可能性があります。また、当社が排出した有害物質等によって想定外の環境問題が発生してしまった場合、多額の損害賠償責任の発生および企業イメージの悪化により、当社グループの業績および財務状態に影響をおよぼす可能性があります。一方で、気候変動に対する環境規制強化等に伴い、顧客の工場で電動化と自動化が進み、工場・設備の生産性向上および省エネ性能を高める製品需要増加等の機会も想定されます。
当社は独自に定めた環境方針のもと、経営者、環境管理責任者をトップとした環境マネジメントシステム(EMS)推進体制を構築しております。この体制の下、環境負荷の把握・低減を進めるべく、地球温暖化対策、資源の有効活用、化学物質管理等について目標を定め、それぞれの目標に沿ってエネルギー投入量、水資源投入量、PRTR法対象物質使用量、CO2排出量、産業廃棄物排出量等の環境負荷を測定し、当社ウェブサイトにも結果を掲載しております。
なお、中長期的な気候変動に対する対策については、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照ください。
(6)為替相場変動によるリスク
当社は、海外企業との取引に際し、契約条件によっては米ドルもしくは現地通貨にて会計処理をおこなう場合があり、その結果、円換算時の為替レートにより、為替差損益が発生する場合があり、為替相場の変動が当社グループの業績および財務状態に影響をおよぼす可能性があります。
当社では、海外の顧客との取引開始時点において円貨での取引を提案し、為替相場変動によるリスク回避に努めており、円貨での取引ができない場合には受注時点で為替予約等によるリスクヘッジの取組みをおこなっております。
(7)海外での事業活動に係るリスク
当社グループは、海外において事業展開を推進しております。そのため、現地国の政治動向の急激な変化、地政学的要因、予想しない法規制の変更、テロ・紛争、感染症等による社会的混乱等の影響を受ける可能性があり、その結果、当社グループの業績および財務状態に影響をおよぼす可能性があります。
当社グループでは、定期的に、また必要に応じて当社と国内外の子会社との間で情報交換をおこない、周辺環境の変化等についても積極的に情報の共有を図り、問題の早期把握と対応に注力しております。
(8)災害等に係るリスク
それぞれの事業拠点において大規模な災害等が発生した場合には、工場設備や情報機器の損壊、電力・水道等インフラの停止、物流網の寸断等により事業活動の停止を余儀なくされる可能性があり、その場合、当社グループの業績および財務状態に影響をおよぼす可能性があります。
当社では、予期せぬ災害や大規模な事故発生等の問題が事業の継続を危うくするような事態を避けるために、事前に想定されるリスクを抽出し、そのリスクの防止、防衛、低減を図ることで事業継続、さらに顧客への影響を緩和するとともに短期間での事業回復を図るため、いわゆるBCP(事業継続計画)を設定し、災害等への対応に備えております。
BCP方針に基づき、平常時には、各種訓練や点検、教育等を定期的に実施することで各々の取組みの有効性を確認しており、状況に合わせて適時マニュアル等を改訂する体制を構築しております。
(9)財務制限条項に係るリスク
当社は2025年3月末日現在、多通貨での借入および海外関係会社の安定した資金調達を目的として、銀行1行との間に総貸付極度額45億円のグローバル・コミットメントラインの契約を締結しております。2025年3月末日の実行残高は3億57百万円であります。
同契約には、以下の財務制限条項が付されております。
①国内借入人に関し、2024年3月期末日、およびそれ以降の各事業年度末日における連結貸借対照表に記載される純資産の部の合計金額を、(i)2023年3月期末日における連結貸借対照表に記載される純資産の部の合計金額の70%に相当する金額、または(ⅱ)直近の事業年度末日における連結貸借対照表に記載される純資産の部の合計金額の70%に相当する金額のうち、いずれか高いほうの金額以上に維持すること。
②国内借入人に関し、2024年3月期末日、およびそれ以降の各事業年度末日における連結損益計算書に記載される営業損益を2期連続して損失としないこと。
また、当社は2025年3月末日現在、多通貨での安定した資金調達を目的として、銀行1行との間に総貸付極度額15億円のコミットメントライン契約を締結しております。2025年3月末日の実行残高はありません。
同契約には、以下の財務制限条項が付されております。
①借入人は、当事業年度末日の連結貸借対照表における純資産の部の金額を、直前の事業年度末日の連結貸借対照表における純資産の部の金額の80%以上に維持すること。
②借入人は、連結損益計算書において、営業損益を2期連続して損失としないこと。
さらに、当社は2025年3月末日現在、資金調達の安定性を高めることを目的として、銀行2行を貸付人として、それぞれ総貸付極度額10億円と20億円のコミットメントライン契約を締結しております。2025年3月末日の実行残高はそれぞれ5億円と3億円であります。
上記の2つの契約には、以下の財務制限条項が付されております。
①借入人は、当事業年度末日の連結貸借対照表における純資産の部の金額を、直前の事業年度末日の連結貸借対照表における純資産の部の金額の70%以上に維持すること。
②借入人は、連結損益計算書において、営業損益を2期連続して損失としないこと。
当社が仮に上記のコミットメントライン契約およびグローバル・コミットメントライン契約の制限条項に抵触し、上記の契約による融資を受けられなくなった場合でも、同契約以外での融資を受けられる環境にあり、ただちに資金繰りが逼迫する事態となる可能性は低いと考えております。しかし、資金運用の効率性や、資金的な緊急事態の発生可能性を考慮すれば、上記の契約による融資は重要であり、それが受けられなくなった場合、当社グループの財務状態に影響をおよぼす可能性があります。当社グループの事業展開において、海外関係会社の安定した資金調達のためにはグローバル・コミットメントラインの契約は重要であり、財務制限条項に抵触する事態が発生しないよう、更なる営業利益の確保、財務体質の強化を図ってまいります。
(1)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
当連結会計年度における当社グループを取巻く経済情勢は、ウクライナ情勢や中東地域における紛争の長期化に伴う地政学リスクの高まりや米国の関税政策の動向などにより、依然として不透明感を払拭できない状況が続いております。米国におきましては、IT関連を中心に設備投資が増加しました。また、良好な所得環境を背景に個人消費が堅調に推移しました。欧州におきましては、製造業の低迷が継続しましたが、インフレ圧力の緩和により個人消費は総じて底堅い動きを見せました。中国におきましては、経済政策が内需を下支えしましたが、不動産市場の不振は継続しました。わが国におきましては、堅調な企業収益を背景に設備投資は底堅く推移しました。また、良好な雇用・所得環境により個人消費も回復基調となりました。
このような経営環境のもと、当社グループは、当連結会計年度を最終年度とする中期経営計画(2022年度~2024年度)におきまして、「成長市場でのビジネス拡大」、「グローバル企業としての競争力強化」、「ESG経営の取組み強化」、「ニューノーマル時代に即した経営の実現」という4つの基本方針を掲げて活動してまいりました。「成長市場でのビジネス拡大」では、持続的な収益拡大のために量産効果が見込める設備の開発・改良、標準モジュールの確立、デジタルトランスフォーメーション(DX)推進による生産能力の向上などに取組んでまいりました。「グローバル企業としての競争力強化」では、海外関係会社との協力・連携体制強化により、現地生産・現地調達による輸送コスト削減、リードタイム短縮に努めてまいりました。「ESG経営の取組み強化」では、中長期的な経営戦略と連動させながら全社的な取組みとして当社グループのサステナビリティ活動を推進しており、「ニューノーマル時代に即した経営の実現」では、エミュレータの活用や新たな情報システムの導入を進め、業務効率の向上や生産手法の最適化、品質向上などに取組んでまいりました。
当連結会計年度におきましては、自動車関連の電気自動車(EV)向け生産設備や内燃機関向け生産設備の売上高が底堅く推移したことに加え、半導体関連のウェーハ搬送設備も売上高を伸ばしたことで、前期から増収となりました。利益面では、半導体関連やその他自動省力機器の利益率が悪化しましたが、自動車関連では前期から大幅な増益となりました。この結果、当連結会計年度の売上高は884億83百万円(前期比6.8%増)となり、営業利益は68億98百万円(前期比14.1%増)、経常利益は68億89百万円(前期比10.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は47億78百万円(前期比10.0%増)となりました。
当社グループの経営方針・経営戦略および経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。
セグメントの状況は以下のとおりであります。
①自動車関連
EV市場の需要拡大が鈍化傾向にある中、当社グループでは、バッテリー充放電関連設備を前期から継続的に受注するなど、EV向け生産設備の売上高が底堅く推移したことで、売上高・利益ともに堅調に推移しました。また、内燃機関向け生産設備の売上高も好調を維持しており、前期から増加しました。この結果、売上高は430億59百万円(前期比16.4%増)、営業利益は41億94百万円(前期比154.0%増)となりました。
②半導体関連
生成AI(人工知能)の普及などによって半導体需要が回復基調にある中、ウェーハ搬送設備の売上高は堅調に推移しました。利益面では、採算性の高い案件が減少したことや一部製品に対して保証費用を引き当てたことで、前期から減益となりました。この結果、売上高は301億86百万円(前期比10.2%増)、営業利益は28億57百万円(前期比35.8%減)となりました。
③その他自動省力機器
フラットパネルディスプレイ(FPD)関連やタイヤなどの物流関連の売上高が前期から減少したことにより、利益も低調に推移しました。この結果、売上高は130億96百万円(前期比18.6%減)、営業損失は1億1百万円(前期は1億19百万円の営業利益)となりました。
財政状態の概況は以下のとおりであります。
(資産)
当社グループの当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末に比べて5億9百万円減少し、1,302億78百万円となりました。その主な内訳は、売上債権の入金による現金及び預金の増加22億29百万円、仕掛品増加による棚卸資産の増加12億45百万円、売上債権等(受取手形、電子記録債権、売掛金、契約資産)の減少29億
42百万円、消費税還付等によるその他流動資産の減少10億48百万円であります。
(負債)
負債につきましては、前連結会計年度末に比べて40億46百万円減少し、614億39百万円となりました。その主
な内訳は、契約負債の減少12億2百万円、有利子負債(短期借入金、長期借入金)の減少28億64百万円でありま
す。
(純資産)
純資産につきましては、前連結会計年度末に比べて35億36百万円増加し、688億39百万円となりました。その
主な内訳は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上47億78百万円および配当金の支払い10億44百万円により利
益剰余金の増加37億33百万円、円安進行に伴う為替換算調整勘定の増加9億50百万円、自己株式の取得による減
少10億円であります。その結果、自己資本比率は前連結会計年度末の49.7%から52.7%となりました。
(2)キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当連結会計年度末における現金及び現金同等物残高(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べて22億29百万円増加し、128億82百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動による資金は、94億27百万円の収入(前年同期は45億92百万円の支出)となりました。主な要因は、税金等調整前当期純利益69億4百万円に対して、売上債権及び契約資産の減少54億11百万円、仕入債務の減少16億53百万円等によります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動による資金は、有形固定資産の取得による支出19億72百万円等により、20億23百万円の支出(前年同期は22億33百万円の支出)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動による資金は、55億91百万円の支出(前年同期は58億66百万円の収入)となりました。主な要因は、短期借入金の減少89億32百万円、長期借入れによる収入193億円、長期借入金の返済による支出132億48百万円等によります。
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、建物および機械装置等の設備投資によるものであります。
当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。
短期運転資金は自己資金および金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資や長期運転資金につきましては、金融機関からの長期借入を基本としております。
当連結会計年度末における借入金の残高は341億66百万円、ならびに当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は128億82百万円となっております。
(3)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
文中における将来に関する事項の記載は、本書提出日(2025年6月25日)現在において当社グループが判断したものです。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
(4)生産、受注及び販売の実績
①生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
前期比(%) |
|
自動車関連 (千円) |
43,631,339 |
116.6 |
|
半導体関連 (千円) |
32,939,389 |
119.1 |
|
その他自動省力機器 (千円) |
12,861,856 |
78.8 |
|
その他 (千円) |
2,134,533 |
85.8 |
|
合計(千円) |
91,567,118 |
109.1 |
(注)金額は販売価格および製造原価によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。
②受注実績
当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
受注高(千円) |
前期比(%) |
受注残高(千円) |
前期比(%) |
|
自動車関連 |
34,111,403 |
76.7 |
30,202,316 |
77.1 |
|
半導体関連 |
29,730,188 |
118.4 |
19,013,981 |
97.7 |
|
その他自動省力機器 |
13,351,228 |
93.0 |
6,549,978 |
104.0 |
|
その他 |
2,319,603 |
101.7 |
667,065 |
136.5 |
|
合計 |
79,512,424 |
92.2 |
56,433,341 |
86.3 |
(注)金額は販売価格によっております。
③販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
前期比(%) |
|
自動車関連 (千円) |
43,059,382 |
116.4 |
|
半導体関連 (千円) |
30,186,537 |
110.2 |
|
その他自動省力機器 (千円) |
13,096,551 |
81.4 |
|
その他 (千円) |
2,141,320 |
89.9 |
|
合計(千円) |
88,483,792 |
106.8 |
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
前連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)
|
相手先 |
金額(千円) |
割合(%) |
|
General Motors LLC |
11,954,541 |
14.4 |
当連結会計年度(自 2024年4月1日 至 2025年3月31日)
|
相手先 |
金額(千円) |
割合(%) |
|
General Motors LLC |
12,937,078 |
14.6 |
該当事項はありません。
当社グループの研究開発活動は、自動車関連、半導体関連、その他自動省力機器の生産システムの開発、当社生産システムへの組込みや外販向けの産業用ロボットの開発、新規事業分野に向けた研究開発活動等に関するものであります。
当連結会計年度における研究開発費は、総額
自動車関連では、日本および北米の自動車メーカーからのさらなる受注獲得のため、競争優位性の向上を目指し製品開発に取組んでおります。バッテリー関連設備向けの開発・改良により、開発した設備をラインの一部に組込んだ大型案件において引合い・受注の拡大につながっております。
半導体関連では、生成AI関連や車載用途への投資活発化に伴い、半導体製品の需要は増加傾向にあり、このような市場環境の変化を見据えた装置開発に取組んでおります。ロードポート、大気・真空対応のウェーハ搬送ロボット、それらを統合したEFEMやPLP関連装置などにおいて、お客さまごとのニーズや仕様、さらにはSEMI規格等にも対応した付加価値の高い製品の開発に注力しております。
医療・理化学機器では、既存のバイオ関連分析機器などの医療機器に加えて、新分野としてがん治療を目的とした医療機器の開発に取組んでおります。具体的には集束超音波を照射するデバイスを搭載したロボットを医師が操作しながら、がんを焼灼できるシステムを開発しました。現在は量産用装置の開発を進めております。
電動化製品開発分野では、お客さま工場の環境負荷低減および低推力による高い安全性を実現する、人と環境に優しい「エコ電動シリーズ」の製品開発および製品ラインアップの拡充に取組んでおります。「エコ電動シリーズ」においては、独自に開発した小型・高効率のブラシレスDCモータ「HIRATA BLUE MOTOR」を組込んだコンベア等の搬送機器や制御基板等につきましても開発・改良を進めております。
産業用ロボット分野では、協働ロボットの開発に取組んでおります。成長市場である電気自動車(EV)・半導体関連において、さらなる生産性向上を実現するために、人とロボットが協働できるようロボットの安全機能の拡充を進めております。
新規事業分野では、生物遺伝資源(主に植物遺伝資源)ビジネスに向けた研究開発に取組んでおります。2024年以降、海外の植物遺伝資源を利用した製品開発支援サービス「ぷらんつプロ」や新たな多変量解析法「HIGOMARIⓇ」を用いた受託解析サービスを開始しました。完成したラボおよび独自開発の解析技術を用いて、生物遺伝資源を活用した研究開発を継続してまいります。