(1)経営の基本方針
当グループは、「優れた自主技術・製品の開発を通じて社会に貢献する」を企業理念として、顧客に対し、より高い価値をもたらす競争力のある製品・サービスを提供することで、一層の発展を遂げることをめざしています。当グループでは、グループ内の多様な経営資源を最大限に活用するとともに、事業の見直しや再編を図ることで、競争力を強化し、グローバル市場での成長を実現し、顧客、株主、従業員を含むステークホルダーの期待に応えることにより、株主価値の向上を図っていくことを基本方針としています。
(2)経営環境及び対処すべき課題
①日立グループの経営環境及び対処すべき課題
現在の世界は、将来の予測が立てにくい時代です。気候変動や資源不足、高齢化による人口構造の変化、都市化の問題など様々な変化が生じており、さらに、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の流行やウクライナ紛争は、世界規模で社会、経済などに劇的な変化をもたらし、世界各国の経済が深刻な悪影響を受けています。一方で、このような変化により生じた社会課題を解決するためのイノベーションが世界中で起きています。
かかる経営環境において、当グループは、2022年4月に新たに策定した「2024中期経営計画」の下、プラネタリーバンダリー(地球の限界)を超えないように地球環境を守りつつ、社会の一人一人が快適で活躍できるウェルビーイング(人々の幸せ)が保たれた、サステナブルな社会の実現に貢献していきます。
具体的には、以下の施策に注力していきます。
i) グローバルな成長に向けた取り組み
「デジタル」「グリーン」「イノベーション」の3つを成長のドライバーとして、グローバルな成長をめざします。それぞれの戦略については、以下の通りです。
デジタル
顧客の経営課題を理解した上で、その解決方法を設計・実装し、運用・保守するとともに次の課題解決に取り組むというお客さまとの価値協創のサイクルにより、お客さまの事業価値の向上に貢献していきます。
このようなLumada事業のサイクルを、デジタル技術を活用して回し、サイクル全体で収益を拡大することで、社会イノベーション事業の高収益化を図り、グローバルに成長を実現していきます。
グリーン
エネルギー転換、電動化、省エネ、自動化で世界のGXをリードし、サステナブルな社会の実現に貢献します。2024年度に年間約1億トンのCO2排出削減貢献量を実現すべく、グリーン分野の投資を積極的に行うとともに、バリューチェーン全体でのカーボンニュートラルの2050年までの実現を掲げる「日立環境イノベーション2050」の達成に向け、脱炭素化を推進していきます。その過程で得られたノウハウも活用し、各事業領域・地域に合わせた環境価値を提供することで、サステナブルな社会と日立の成長を図ります。
イノベーション
2050年の世界の姿を見据えて日立が取り組むべき研究開発分野を特定し、社会課題の解決に貢献する革新的な技術・製品の創生を図るとともに、有望なスタートアップ企業や官学との連携を更に加速することで、イノベーションを加速していきます。
また、経営の効率化とスピードアップのため、事業特性の近い事業をまとめ、「グリーンエナジー&モビリティ」「デジタルシステム&サービス」「コネクティブインダストリーズ」の3つのセクターへと組織をシンプル化しました。これらにオートモティブシステム事業(日立Astemo)を加えた事業体制で、お客さまに価値を提供していきます。各事業における事業戦略は、「②注力分野における経営環境及び対処すべき課題」を参照ください。
ii) サステナブルな経営の深化
重要な事業リスクに関する情報を集約し、リスクに先行して対応するグローバルなリスクマネジメント体制を通じてリスク発現による影響を最小化していきます。また、デジタル人財の獲得・育成や従業員のエンゲージメント強化、組織を超えた協力を支えるダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンの向上に努めます。こうした取り組みを通じ、持続可能な成長のためのサステナブルな経営を深化します。
これらの施策によって、キャッシュ創出力を高め、さらなる成長のための投資も行いつつ、株主の皆さまへの還元拡大も実現していきます。
日立グループを取り巻く経営環境の変化は目まぐるしく、世界経済の先行きは依然として不透明ですが、新しい中期経営計画の下、サステナブルな社会の実現に努めてまいります。
②注力分野における経営環境及び対処すべき課題
注力分野であるデジタルシステム&サービス、グリーンエナジー&モビリティ及びコネクティブインダストリーズの3セクター並びにオートモティブシステムにおける経営環境及び対処すべき課題は、以下のとおりです。
デジタルシステム&サービス
不確実な社会・経済情勢においても、AI、IoT等のデジタル技術で企業経営やビジネスモデルなどの変革を図るデジタルトランスフォーメーション(DX)及び環境問題やSDGsへの取り組みは加速し、グローバルで大きく市場が拡大しています。
デジタルシステム&サービスセクターでは、そのようなグローバルDX市場において、2021年7月に買収を完了したGlobalLogicのデジタルエンジニアリング力を活用し、日立のOT×IT×プロダクトを組み合わせて価値を創造し、お客さまや社会の課題解決を加速するとともに、日立グループ他セクターのLumada事業成長を牽引していきます。また、お客さまとの価値協創の深化、実績あるソリューションの横展開、お客さまやパートナーとのエコシステム構築の3つのアプローチでLumada事業のスケールを加速させます。
デジタルシステム&サービスセクターは、これらの取り組みを支えるデジタル人財の育成・拡充など経営基盤の強化にも取り組みながら、「社会インフラDXのグローバルリーダー」をめざし、社会や国内外のお客さまの課題解決パートナーとして継続的に価値を提供し、Lumada事業のサステナブルな成長を実現します。
グリーンエナジー&モビリティ
人口増加や経済成長に加え、AIやビッグデータの利活用などによるデータセンターの規模拡大や脱炭素化に向けた産業の電動化、EV(Electric Vehicle)導入の拡大などの社会イノベーションを背景に、世界のエネルギー需要は拡大し続けています。また、気候変動への対応を背景に、CO2排出量の削減や脱炭素化へ向けた動きが世界的に加速し、再生可能エネルギーの普及の加速や脱炭素モビリティとしての鉄道への期待が高まっています。また、COVID-19の拡大を経て、経済の低迷・設備投資の減退による産業構造の変化(電動化・デジタル化)や、グリーン政策と連動した経済回復政策の推進、SDGs経営への変革の動きが加速しています。
グリーンエナジー&モビリティセクターでは、世界トップの製品とインテグレーション力でサステナブルな社会インフラの実現に貢献し、地球環境に優しいグリーンなエネルギーとモビリティで世界中の人々の幸せを支えていきます。具体的には、パワーグリッド、再生可能エネルギーシステム、原子力発電システム、鉄道システムなどにおいて、「OT×IT×プロダクト」の強みを生かした製品やサービス、ソリューションを提供していきます。エネルギー分野では、日立エナジー(旧日立ABBパワーグリッド)の持つパワーグリッド技術とLumadaを活用したデジタル技術との融合を通じた新たなソリューションの提供やクリーンエネルギー事業の推進により、脱炭素社会の実現に貢献するサービス・ソリューションの提供を拡大していきます。鉄道システム分野では、交通ネットワークをデジタルでつなぎ、データを活用した鉄道運行サービス等の展開を加速させていきます。
これらの取り組みを通じ、グリーンエナジー&モビリティセクターは、2024中期経営計画の3つの成長の柱であるグリーン価値の創出の中核をなす事業として、脱炭素社会の実現やエネルギーの安定供給、安全・安心・快適な鉄道システムの提供など、QoLの向上に貢献していきます。
コネクティブインダストリーズ
COVID-19インパクト、自然災害や地政学リスクの増加など社会環境の不確実性が急増していることに加え、デジタル技術の急速な進展に伴い、人々の生活様式や企業活動は大きく変容し、新たなDXへのニーズがこれまで以上に高まっています。こうした中、組織や企業間、さらには分野を越えたトータルな「際」の課題解決が求められています。
コネクティブインダストリーズセクターでは、産業機器や昇降機、計測・分析装置、医療機器、家電などの競争力の高いプロダクトを集結させ、それらをデジタルでつなぎ、ソリューションとして提供し、サステナブルな価値を創出していきます。
具体的には、Lumadaを活用し、リアル空間とサイバー空間をデジタルでつなぐことで、経営から現場、サプライチェーン、異分野の間に存在する「際」の課題を解決し、全体最適化を実現するトータルシームレスソリューションをさらに進化・拡大しています。また、コネクテッドプロダクトの拡大・機能強化により、データを活用した保守や予防保全などのサービスを継続的・循環的に提供していくリカーリングビジネスを強化します。
さらに、グローバル成長に向けて、特に注力地域である北米では、買収したJR AutomationによるロボティクスSIとデジタルの融合を強化するとともに、買収したSullairによる空気圧縮機や、半導体製造・計測装置、粒子線治療システムなどのプロダクト事業のコネクテッド化により、現地でのトータルシームレスソリューションを立ち上げ、さらに事業を拡大していきます。
コネクティブインダストリーズセクターでは、「つないでいく。データを、価値を、産業を、そして社会を。」をパーパスとして定め、お客さまとの協創を通じて「サステナブル バリュークリエーター」をめざしていきます。
オートモティブシステム
日立Astemo㈱及びそのグループ会社で構成されるオートモティブシステム事業が手掛ける自動車・モーターサイクル業界では、環境負荷の低減や快適性のさらなる向上、安全性向上による交通事故の低減等の社会ニーズの高まりを背景に、100年に一度と言われる大変革時代を迎えており、CASE(「C: Connected(つながる)」「A: Autonomous(自動運転)」「S: Shared(共有)」「E: Electric(電動化)」)の各分野で、競争がさらに激化しています。
こうした中で、オートモティブシステム事業では、パワートレイン&セーフティシステム事業をはじめ、シャシー事業、モーターサイクル事業、ソフトウェア事業、アフターマーケット事業の5つの事業ポートフォリオを軸に、お客さまのニーズにお応えし、世界をリードする先進的なモビリティソリューションの提供を通じて、持続可能な社会とQoLの向上に貢献していきます。
具体的には、「グリーン」、「デジタル」、「イノベーション」の社会課題に対する解決手段の提供において、排出ガスを低減する高効率な内燃機関システムと電動システムでより良い地球環境に貢献し、自動運転や先進運転支援システム、先進シャシーシステムで安全性・快適性を向上させていきます。また、Lumadaを活用することで、高度化するお客さまのニーズに応えるコネクテッドソリューションを提供することはもちろん、将来、クルマの機能をソフトウェアが担うソフトウェア・ディファインド・ビークル化に対応していくため、ソフトウェアの開発力も強化していきます。
これらの取り組みとともに、モビリティ業界のグローバルメガサプライヤーとして、経営基盤と企業体質をより一層強化し、更なる収益拡大をめざしていきます。
(3)気候変動による財務関連情報開示
日立は、2018年6月、金融安定理事会(FSB)「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言に賛同を表明し、TCFDの提言に沿って気候変動関連の財務関連の重要情報を開示しています。
なお、本項目は抜粋のため、詳細は日立サステナビリティレポートをご参照ください。
①ガバナンス
日立は、気候変動を含む環境課題への対応を重要な経営課題の一つと認識しています。
取締役会では経営戦略にかかわる重要事項として、気候変動対策も含む「サステナビリティ戦略」についての審議を行っています。CO2排出量削減目標を含む環境長期目標「日立環境イノベーション2050」は、策定及び改訂の際にも、取締役会への報告を経て策定、公表されています。
また、年1回、社外取締役によって構成される監査委員会が、サステナビリティ関連業務についての業務監査を実施し、気候変動に関する重要事項についても担当執行役から報告を行っています。
②戦略
日立は、2016年度に「環境ビジョン」を策定し、このビジョンのもと、IPCC 第5次評価報告書の「RCP2.6シナリオ(注)」「RCP8.5シナリオ(注)」などを踏まえて、世界全体で求められるCO2削減量を参考に、グローバル企業に求められる脱炭素社会実現への貢献を果たすため、環境長期目標「日立環境イノベーション2050」を策定しました。さらに、IPCC「1.5℃特別報告書」を踏まえて気温上昇を1.5℃以内に抑えるため、2020年度に、日立の事業所(ファクトリー・オフィス)において2030年度までにカーボンニュートラル達成、2021年度には、バリューチェーンにおいて2050年度までにカーボンニュートラル達成、という目標に改訂しました。グローバルでの脱炭素社会の実現に向けて、より高い目標を表明し、脱炭素社会の実現に貢献していきます。
(注)RCP2.6シナリオ:産業革命前に比べて21世紀末に世界平均気温の上昇幅が2℃未満に抑えられるシナリオ
RCP8.5シナリオ:産業革命前と比べて4℃前後上昇するシナリオ
気候変動関連のリスク(日立グループ)
当グループ全体の、①1.5℃シナリオにおけるリスクと、②4℃シナリオにおけるリスクは以下のとおりです。日立の業態では、これらの気候変動に関するリスクは、対策が可能なものであることが分かります。
気候変動関連の機会(日立グループ)
環境長期目標や「2024中期経営計画」に掲げたCO2排出量の削減目標を達成するには、事業所の脱炭素化はもちろん、バリューチェーン全体の排出の多くを占める、販売された製品・サービスの使用に伴うCO2排出の削減が重要です。使用時にCO2を排出しない、またはなるべく排出しない製品・サービスの開発・提供は、お客さまニーズへの対応であり、社会が求めるCO2排出量削減への貢献です。これは、日立の経営戦略として推し進めている「社会イノベーション事業」の大きな柱であり、短・中・長期にわたる大きな事業機会になります。
③リスク管理
日立は、気候変動関連リスクについて、3年ごとに策定する「環境行動計画」に基づき、環境に関するリスクと機会の影響評価の中で、BU及びグループ会社ごとに、評価・査定しています。評価結果は、当社サステナビリティ推進本部にて集約し、サステナビリティ推進委員会で重要性を確認します。日立全体として特に重要と認識されたリスクと機会がある場合には、経営会議で審議・決定され、必要に応じて取締役会で審議されます。
④指標と目標
日立は、中・長期の指標と目標は、環境長期目標「日立環境イノベーション2050」で定めており、さらに、短期の指標と目標を、「環境行動計画」で詳細に定めて管理しています。
気候変動の緩和と適応に関する指標は、CO2排出量総量や、CO2排出量原単位削減率を採用しています。お客さまや社会に対し、よりCO2を排出しない製品・サービスを提供する指標を設定し、その推進に重点を置いています。併せて、自社の事業所で発生するCO2排出量については、CO2削減に寄与する設備投資にインセンティブを与える「日立インターナルカーボンプライシング(HICP)」制度を活用しながら、削減を進めていきます。
(4)中期経営計画における経営指標
2024中期経営計画においては、以下の指標を経営上の業績目標としています。
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2024年度目標 |
選定した理由 |
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売上収益年成長率(2021年度-2024年度 CAGR)(注)1、2 |
5-7% |
成長性を測る指標として選定 |
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Adjusted EBITA率(注)3 |
12% |
収益性を測る指標として選定 |
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EPS成長率(2021年度-2024年度 CAGR)(注)1、4 |
10-14% |
収益性及び株主価値を測る指標として選定 |
|
コア・フリー・キャッシュ・フロー (3年間累計)(注)5 |
1.4兆円 |
キャッシュ創出力を測る指標として選定 |
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投下資本利益率(ROIC)(注)6 |
10% |
投資効率を測る指標として選定 |
(注)1.CAGR(Compound Average Growth Rate)は、年平均成長率です。
2.上場子会社を除いて算出しています。
3.Adjusted EBITAは、「Adjusted EBITA=調整後営業利益-買収に伴う無形資産等の償却費+持分法損益」により計算しています。Adjusted EBITA率は、Adjusted EBITAを売上収益の額で除して算出した指標です。
4.EPS(Earnings Per Share)は、一株当たり当期利益です。
5.コア・フリー・キャッシュ・フローは、フリー・キャッシュ・フローから、M&Aや資産売却他に係るキャッシュ・フローを除いた経常的なキャッシュ・フローです。
6.ROIC(Return on invested capital)は、「ROIC=(税引後の調整後営業利益+持分法損益)÷投下資本×100」により算出しています。なお、「税引後の調整後営業利益=調整後営業利益×(1-税金負担率)」、「投下資本=有利子負債+資本の部合計」です。
また、上記の経営目標の他、お客さまや社会への価値提供と人的資本の充実に向け、以下の項目を中期経営計画の重点項目として取り組んでいきます。
(1)リスクマネジメントについて
当社では、日々変化する経営環境を把握・分析し、社会的課題や当社の競争優位性、経営資源などを踏まえ、当社として備えるべき様々な「リスク」とさらなる成長「機会」の両面からリスクマネジメントを実施し、リスクをコントロールしながら収益機会の創生に努めています。
かかる多様なリスクに関して、各担当部署がリスクと機会の適切な把握・対応に努め、経営幹部への報告・経営戦略への反映を行っています。
特に、2022年4月から、当社経営における全社的リスクに係る重要事項の議論・決定の場として執行役社長を議長、CRMO(Chief Risk Management Officer)を副議長とする「リスクマネジメント会議」を新設しました。リスクを一元的・横断的に把握することで、成長戦略と連携した盤石な経営基盤の実現をめざしていきます。
(2)リスク要因
当グループは、幅広い事業分野にわたり、世界各地において事業活動を行っています。また、事業を遂行するために高度で専門的な技術を利用しています。そのため、当グループの事業活動は、多岐にわたる要因の影響を受けています。その要因及び各リスク要因に対する対応策の主なものは、次のとおりです。
なお、これらは当有価証券報告書提出日現在において合理的であると判断している一定の前提に基づいています。また、これらの対応策は各リスク要因の影響を完全に排除するものではなく、また、影響を軽減する有効な手段とはならない可能性があります。
①経済環境に係るリスク
経済の動向
当グループの事業活動は、世界経済及び特定の国・地域の経済情勢や地政学的情勢の影響を受けます。各国・地域や日本の景気が減速・後退する場合は、個人消費や設備投資の低下等をもたらします。また、ウクライナ情勢に代表される国家間紛争、緊張の高まりにより、特定の地域での経済活動の制約や停止を余儀なくされることも考えられます。その結果、当グループが提供する製品・システム又はサービスの一部制限や需要の減少などにより、当グループの事業、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
かかるリスクへの対応として、当グループは、様々な事業分野・地域において、多様な特性を持つ社会イノベーション事業を組み合わせる経営をしています。また、リスク評価等を通じて地政学的情勢の変化への迅速な対応を図っています。
為替相場の変動
当グループは、取引先及び取引地域が世界各地にわたっているため、為替相場の変動リスクにさらされています。当グループは、現地通貨建てで製品・サービスの販売・提供及び原材料・部品の購入を行っていることから、為替相場の変動は、円建てでの売上の低下やコストの上昇を招き、円建てで報告される当グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。当グループが、売上の低下を埋め合わせるために現地通貨建ての価格を上げた場合やコストの上昇分を吸収するために円建ての価格を上げた場合、当グループの価格競争力が低下し、それに伴い、経営成績は悪影響を受ける可能性があります。また、当グループは、現地通貨で表示された資産及び負債を保有していることから、為替相場の変動は、円建てで報告される当グループの財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
2022年3月31日時点における2023年3月31日に終了する連結会計年度の為替感応度(見通しの為替レートから1円変動した場合の業績影響額)の見積りは、以下のとおりです。
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通貨 |
見通し |
為替感応度(億円) |
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|
売上収益 |
Adjusted EBITA |
||
|
ドル |
120円/ドル |
195 |
15 |
|
ユーロ |
130円/ユーロ |
70 |
5 |
かかるリスクへの対応として、当グループでは、先物為替予約契約や通貨スワップ契約等の為替変動リスクのヘッジや製品・サービスの地産地消戦略の推進等を実行しています。
資金調達環境
当グループの主な資金の源泉は、営業活動によるキャッシュ・フロー、銀行等の金融機関からの借入並びにコマーシャル・ペーパー及びその他の債券、株式の発行等による資本市場からの資金調達です。当グループは、事業活動のための費用、負債の元本及び利子並びに株式に対する配当を支払うために、流動資金を必要とします。また、当グループは、設備投資及び研究開発等のために長期的な資金調達を必要としています。当グループは、営業活動によるキャッシュ・フロー、銀行等の金融機関からの借入及び資本市場からの資金調達により、当グループの事業活動やその他の流動資金の需要を充足できると考えていますが、世界経済が悪化した場合、当グループの営業活動によるキャッシュ・フロー、業績及び財政状態に悪影響を及ぼし、これに伴い当社の債券格付けにも悪影響を及ぼす可能性があります。債券格付けが引き下げられた場合、当社が有利と考える条件による追加的な資金調達の実行力に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社は、資金調達を銀行等の金融機関からの借入に依存することにより金利上昇のリスクにさらされています。また、外部の資金源への依存を高めなければならなくなる可能性があります。負債への依存を高めることにより、当社の債券格付けは悪影響を受けることがあり、当社が有利と考える条件による追加的な資金調達の実行力にも影響を及ぼす可能性があります。かかる資金調達ができない場合、当グループの資金調達コストが上昇し、当グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。当グループでは、金利上昇のリスクを軽減するための施策として、主に金利スワップ契約を締結しています。
また、当グループの主要な取引金融機関が倒産した場合又は当該取引金融機関が当グループに対して融資条件の変更や融資の停止を決定した場合、当グループの資金調達に悪影響を及ぼす可能性があります。
株価等の価格の下落
当グループは、他社との事業上の関係等を維持又は促進するため、株式等の有価証券を保有しています。かかる有価証券は、価値の下落リスクにさらされています。株式の市場価格等の価値の下落に伴い、当社及び連結子会社は、保有する株式等の評価損を計上しなければならない可能性があります。さらに、当社及び連結子会社は、契約その他の義務により、株価の下落等にかかわらず、株式等を保有し続けなくてはならない可能性があり、このことにより多額の損失を被る可能性もあります。
当事業年度末において、当社が保有している投資株式の銘柄数及び貸借対照表計上額は、以下のとおりです。
|
|
銘柄数 (銘柄) |
貸借対照表計上額の合計額 (百万円) |
|
非上場株式 |
152 |
23,341 |
|
非上場株式以外の株式 |
46 |
251,129 |
かかるリスクへの対応として、当社は、取引や事業上必要である場合を除き、投資株式を取得・保有しないことを基本方針とし、既に保有している株式についても、保有意義や合理性が認められない限り、売却を進めています(保有目的が純投資以外の目的である投資株式の保有方針及び保有の合理性の検証について、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (5) 株式の保有状況」参照)。
②サプライチェーンに係るリスク
原材料・部品の調達
当グループの生産活動は、サプライヤーが時宜に適った方法により、合理的な価格で適切な品質及び量の原材料、部品及びサービスを当グループに供給する能力に依存しています。需要過剰の場合、サプライヤーは当グループの全ての要求を満たすための十分な供給能力を有しない可能性があります。原材料、部品及びサービスの不足は、急激な価格の高騰を引き起こす可能性があります。また、米ドルやユーロをはじめとする現地通貨建てで購入を行っている原材料及び部品については、為替相場の変動の影響を受けます。石油、銅、鉄鋼、合成樹脂、レアメタル、レアアース等の市況価格の上昇は当グループの製造コストの上昇要因であり、当グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。一方、原材料及び部品等の商品価格が下落した場合には、棚卸資産の評価損等の損失が発生する可能性があります。さらに、自然災害等により、サプライヤーの事業活動やサプライチェーンが被害を受けた場合、当グループの生産活動に悪影響を及ぼす可能性があります。また、サプライヤーにおいて児童労働や強制労働などの労働者の権利侵害事象等を含む法令違反等が発生した場合、発注元としての当グループの評判の低下や、当該サプライヤーからの安定した原材料・部品の調達に支障が生じ、当グループの事業、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
かかるリスクへの対応として、当グループは、複数のサプライヤーとの緊密な関係構築や製品・サービスの地産地消戦略の推進による各地域における需要変動への適切な対応、国内及び主要海外拠点における事業継続計画(BCP)の策定による事業中断リスクへの対応力強化、グループ全体としての調達機能の活用・強化等を実行している他、サプライヤーにおける法令違反等の発生を防ぐため、質問票を用いた自己点検や監査、理解促進の取組みを実施しています。
取引先の信用リスク
当グループは、国内外の様々な顧客及びサプライヤーと取引を行っており、売掛金、前渡金などの信用供与を行っています。取引相手の財政状態の悪化や経営破綻等が生じた場合、当グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに悪影響を及ぼす可能性があります。
かかるリスクへの対応として、当グループでは、定期的な信用調査や信用リスクに応じた取引限度額の設定など、信用リスクの管理のための施策を実施しています。
③地政学に係るリスク
海外における事業活動
当グループは、事業戦略の一環として海外市場における事業の拡大を図っており、これを通じて、売上の増加、コストの削減及び収益性の向上等の実現をめざしています。これらの多くの市場において、当グループは、潜在的な顧客と現地企業との間の長期にわたる関係等の障壁に直面することがあります。さらに、当グループの海外事業は、事業を行う海外の各国において、以下を含む様々な要因による悪影響を受ける可能性があります。
・投資、輸出、関税、公正な競争、贈賄禁止、消費者及び企業に関する税制、知的財産、外国貿易及び外国為替に関する規制、人権や雇用・労働に関する規制
・契約条項等の商慣習の相違
・労使関係、労働慣行の変化
・対日感情、地域住民感情の悪化、各種団体等による批判やキャンペーン
・ウクライナ紛争の長期化
・国家間紛争の拡大と頻発
・その他の政治的及び社会的要因、経済の動向並びに為替相場の変動
これらの要因により、当グループが、海外における成長戦略の目的を達成できる保証はなく、当グループの事業の成長見通し及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
かかるリスクへの対応として、当グループは、グローバルな政治・経済情勢などを定常的に把握して事業に及ぼす影響を分析し、海外リスク資産の移転を行うなど、グループ全体での対応を実行しています。
④環境に係るリスク
気候変動対策に関する規制強化等(脱炭素社会への移行リスク)
当グループは、炭素税、燃料・エネルギー消費への課税、排出権取引などの導入に伴う事業コストの負担増、製品・サービスの技術開発の遅れによる販売機会の逸失、化石燃料を使用する一部の事業が使用しない事業へ転換することの遅れ、投資家や社会に当グループの気候変動問題への取り組み姿勢が評価されない場合に、当グループの事業活動、経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
かかるリスクへの対応として、環境長期目標「日立環境イノベーション2050」を掲げ、カーボンニュートラルを実現するための様々な取り組みを進めており、今後も目標達成に向けた取り組みをさらに加速していきます。事業所においては2030年度カーボンニュートラルをめざしており、日立インターナルカーボンプライシング導入等による省エネ機器・再生可能エネルギーによる発電の導入の推進、生産・輸送のさらなる効率化、非化石エネルギー由来の電力利用の促進などにより、炭素税等の事業コスト負担増加などの回避・軽減や評価リスクの低減を図っています。事業においてはCO2排出量削減につながる革新的製品・サービスの開発・拡販、エネルギー削減につながる省エネルギー製品の開発、現在化石燃料を使用する製品の電気エネルギーへの転換などをめざしています。
⑤テクノロジーに係るリスク
情報システムへの依存
当グループの事業活動において、情報システムの利用とその重要性は増大しています。コンピュータウイルスその他の要因によってかかる情報システムの機能に支障が生じた場合、当グループの事業活動、経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。また、リモートワークの拡大は、情報漏洩などの新たなセキュリティリスクを生じさせる恐れがあります。
かかるリスクへの対応として、当グループは、継続的にサイバーセキュリティ対策等を推進しており、また、リモートワークに適用される技術・製品・利用手順などを厳格に定めて運用していますが、従来にないサイバー攻撃を受けた場合や当社管理外のシステムに脆弱性があった場合には有効な手段とはならない可能性があります。
人材確保
当グループの競争力を維持するためには、事業遂行に必要な優秀な人材を採用し、確保し続ける必要があります。特に、当グループは、現在、グローバルに活躍できる人材や顧客に近いところでニーズをくみ取り、最適なソリューション・サービスを提供することができるフロント人材、デジタルトランスフォーメーションを牽引するデジタル人材等を求めています。しかしながら、優秀な人材は限られており、かかる人材の採用及び確保の競争は激化しています。当グループがこのような優秀な人材を新たに採用し、又は雇用し続けることができる保証はありません。
かかるリスクへの対応として、当グループは、国内外で必要な人材をタイムリーに確保するため、海外におけるデジタル人材の直接採用を拡大するとともに、多様な人材が働きやすい職場づくりの推進、グローバル共通の人事制度による優秀なグローバル人材の確保、グループ・グローバル共通のラーニングマネジメントシステムの活用や社内教育プログラムの実践による優秀な人材の確保・育成等を図っています。
急速な技術革新
当グループの事業分野においては、新しい技術が急速に発展しています。先端技術の開発に加えて、先端技術を継続的に、迅速かつ優れた費用効率で製品・システム・サービスに適用し、これらの製品等のマーケティングを効果的に行うことは、競争力を維持するために不可欠です。例えば、現在、デジタル化・ロボット等による自動化、電動化、脱炭素や資源循環等の環境への技術革新への対応等が重要となっています。このような変化の潮流を捉え、お客様に価値を提供し続けるために、自社内の研究開発及びコーポレートベンチャーファンドを通じたスタートアップへの投資に対して多くの経営資源を投入しております。これらの先端技術の開発が予定どおり進展しなかった場合、当グループの事業、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
かかるリスクへの対応として、当グループは、産官学によるオープンイノベーションやデジタル人材の確保・育成、Lumadaによる協創プロセスを通じた顧客ニーズの把握のほか、これらを通じたイノベーションエコシステムの形成を図っています。
⑥パンデミック・自然災害に係るリスク
COVID‐19
COVID-19の流行は、移動の制限・生産活動の制約、個人消費や設備投資等の減少、サプライチェーンの混乱による原材料価格の高騰や半導体不足、供給制約によるインフレなどの世界経済の悪化を招いており、当グループの事業の財政状態及び経営成績を悪化させています。COVID-19との共存を前提とした新たなフェーズに移行しつつありますが、今後の状況によっては、更なる悪影響を及ぼす可能性があります。
かかるリスクへの対応として、当グループは、Lumadaを活用したサービス型のデジタル事業の強化等による安定的な収益の拡大、安全確保を前提とした生産活動の継続、デジタル環境の強化によるリモートワーク等を活用した多様な働き方の拡充、キャッシュ・マネジメントの強化やサプライチェーンの強靭化、事業構造改革によるコスト低減等を図っています。
大規模災害及び気候変動による物理的影響等
当グループは、日本国内において、研究開発拠点、製造拠点及び当社の本社部門を含む多くの主要施設を有しています。過去において、日本は、地震、津波、台風等多くの自然災害に見舞われており、今後も、大規模な自然災害により当グループの生産から販売に至る一連の事業活動が大きな影響を受ける可能性があります。また、海外においても、アジア、米国及び欧州等に拠点を有しており、各地の自然災害によって、当グループの事業拠点のほか、サプライチェーンや顧客の事業活動にも被害が生じる可能性があります。さらに、気候変動に起因して、渇水や海面上昇、長期的な熱波や洪水等の大規模な自然災害が、今後より一層深刻化する可能性があります。かかる大規模な自然災害により当グループの施設が直接損傷を受けたり破壊された場合、当グループの事業活動が中断したり、新たな生産や在庫品の出荷が遅延する可能性があるほか、多額の修理費、交換費用その他の費用が生じる可能性があり、これらの要因により多額の損失が発生する可能性があります。大規模な自然災害により当グループの施設が直接の影響を受けない場合であっても、流通網又は供給網が混乱する可能性があります。また、感染症の流行や、テロ、犯罪、騒乱及び紛争等の各国・地域の不安定な政治的及び社会的状況により、当グループの事業活動が混乱する可能性があり、当グループの従業員が就労不能となったり、当グループの製品に対する消費者需要の低下や販売網及び供給網に混乱が生じる可能性があります。さらに、全ての潜在的損失に対して保険が付保されているわけではなく、保険の対象となる損失であってもその全てが対象とはならない可能性があり、また、保険金の支払いについて異議が申し立てられたり遅延が生じる可能性があります。自然災害その他の事象により当グループの事業遂行に直接的又は間接的な混乱が生じた場合、当グループの事業活動、経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
かかるリスクへの対応として、当グループは、BCPの策定による事業中断リスクへの対応力強化等を図っており、また、工場新設時における洪水被害を想定した建設・工場内設備の配置等を行っています。
⑦その他会社経営全般に影響を及ぼすリスク
長期請負契約等に係る見積り、コストの変動及び契約の解除
当グループは、インフラシステムの建設に係る請負契約をはじめ多数の長期契約を締結しており、かかる長期請負契約等に基づく収益を認識するために、当該契約の成果が信頼性をもって見積ることができる場合、工事契約の進捗に応じて収益及び費用を認識しています。収益については、主に、見積原価総額に対する実際発生原価の割合で測定される進捗度に基づいて認識しています。また、当該契約の成果が信頼性をもって見積ることができない場合には、発生した工事契約原価のうち、回収される可能性が高い範囲でのみ収益を認識し、工事契約原価は発生した期間に費用として認識しています。長期請負契約等に基づく収益認識において、見積原価総額、見積収益総額、契約に係るリスクやその他の要因について重要な仮定を行う必要がありますが、かかる見積りは変動する可能性があります。当グループは、これらの見積りを継続的に見直し、必要と考える場合には調整を行っています。当グループは、価格が確定している契約の予測損失は、その損失が見積られた時点で費用計上していますが、かかる見積りは変動する可能性があります。また、コストの変動は、当グループのコントロールの及ばない様々な理由によって発生する可能性があります。さらに、当グループ又はその取引相手が契約を解除する可能性もあります。このような場合、当グループは、当該契約に関する当初の見積りを見直す必要が生じ、かかる見直しは、当グループの事業、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
かかるリスクへの対応として、当グループは、契約締結前からリスクの把握・管理を行い、契約締結後も継続的に事業部門と財務部門間で管理・共有し、適時に正確な見積りができるよう努めています。
競争の激化
当グループの事業分野においては、大規模な国際的企業からスタートアップを含む専業企業に至るまで、多様な競合相手が存在しています。先端的な製品・システムやサービス等においても汎用品化や低コストの地域における製造・開発・サービス提供やクラウド化・自動化が進んでおり、価格競争を激化させています。かかる状況下で競争力を維持するためには、当グループは、その製品等が価格競争力を有するものでなければならないと考えています。かかる製品等の汎用品化は、当グループの価格決定力に影響を及ぼします。当グループが競合相手の価格と対等な価格を設定できない場合、当グループの競争力及び収益性が低下する可能性があります。一方で、競合相手の価格と対等な価格を設定することにより、その製品等の販売が損失をもたらす可能性があります。また、当グループの製品等は、技術、品質及びブランド価値の面においても競争力を有するものでなければなりません。当グループは、かかる製品等を適時に市場に投入する必要がありますが、当グループが提供する製品等が競争力を有する保証はなく、かかる製品等が競争力を有していない場合、当グループの事業、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
かかるリスクへの対応として、当グループは、研究開発によるイノベーションの強化やLumada事業の拡大、顧客との協創、製品等の高付加価値化を図っています。
需要と供給のバランス
当グループが他社と競合する市場における急激な需要の減少と供給過剰は、販売価格の下落、ひいては売上の減少及び収益性の低下を招く可能性があります。加えて、当グループは、需要と供給のバランスを取るため、過剰在庫や陳腐化した設備の処分又は生産調整を強いられる場合があり、これにより損失が発生する可能性があります。例えば、情報機器、昇降機や半導体、自動車機器等の市場における需要と供給のバランスが崩れ、市況が低迷した場合、当グループの関連事業の財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
かかるリスクへの対応として、当グループは、製品等の競争力の強化に加え、需要予測に基づく製品等の供給・在庫の管理等を図っています。
コスト構造改革への取組み
当グループは、事業全体のバリューチェーンにおける各活動について、グループ横断でコスト構造を抜本的に改革する「Hitachi Smart Transformation Project」を実施しています。当グループは、かかる施策により、経営基盤強化による収益性の安定化とキャッシュ・フローの増強をめざしていますが、かかる施策は、当グループが現在期待している効果を得られない可能性があります。また、かかる取組みによって、当グループが収益性の維持又は向上を実現できる保証はありません。
社会イノベーション事業強化に係る戦略
当グループは、事業戦略として、主に社会イノベーション事業の強化によって、成長性が高く、安定的な収益を得られる事業構造を確立することをめざしています。当グループは、社会イノベーション事業を強化するため、設備投資や研究開発等の経営資源を重点的に配分することを計画しているほか、企業買収・新規プロジェクトへの投資も行っています。また、市場の変化に応じて社会イノベーション事業を効果的に展開するため、適切な事業体制の構築を図っています。かかる戦略を実行するため、当グループは、多額の資金を支出しており、今後も継続する予定です。かかる戦略のための当グループの取組みは、成功しない、又は当グループが現在期待している効果を得られない可能性があります。また、かかる取組みによって、当グループが収益性の維持又は向上を実現できる保証はありません。
かかるリスクへの対応として、当グループは、各ビジネスユニット(BU)においてフェーズゲート管理を行っています。加えて、市場動向、他社動向、技術動向及び潜在リスクなど様々な視点からの分析・議論についても、投融資戦略委員会、経営会議、取締役会及び監査委員会において実施しています。
企業買収、合弁事業及び戦略的提携
当グループは、各事業分野において、重要な新技術や新製品の設計・開発、製品・システムやサービスの補完・拡充、事業規模拡大による市場競争力の強化及び新たな地域や事業への進出のための拠点や顧客基盤の獲得等のため、他企業の買収、事業の合弁や外部パートナーとの戦略的提携に一定程度依存しています(当グループの経営成績及び財政状態に重大な悪影響を及ぼす可能性がある案件について、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 注5.事業再編等」参照)。このような施策は、事業遂行、技術、製品及び人事上の統合又は投資の回収が容易でないことから、本質的にリスクを伴っています。統合は、時間と費用がかかる複雑な問題を含んでおり、適切な計画の下で実行されない場合、当グループの事業に悪影響を及ぼす可能性もあります。また、事業提携は、当グループがコントロールできない提携先の決定や能力又は市場の動向によって影響を受ける可能性があります。これらの施策に関連して、統合に関する費用や買収事業の再構築に関する費用など、買収、運営その他に係る多額の費用が当グループに発生する可能性があります。これらの費用のため、大規模な資金調達を行う場合、財政状態の悪化や資金調達能力の低下が発生する可能性があります。また、投資先事業の収益性が低下し、投資額の回収が見込めない場合、のれんの減損など、多額の損失が発生する可能性があります。当連結会計年度末時点で、ITセグメントにおいて1,137,719百万円、エネルギーセグメントにおいて513,616百万円、インダストリーセグメントにおいて168,475百万円ののれんを計上しています(セグメント別ののれんの金額について、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 注4.セグメント情報」参照)。これらの施策が当グループの事業及び財政状態に有益なものとなる保証はなく、これらの施策が有益であるとしても、当グループが買収した事業の統合に成功し、又は当該施策の当初の目的の全部又は一部を実現できない可能性があります。
かかるリスクへの対応として、当グループは、各ビジネスユニット(BU)におけるフェーズゲート管理に加え、市場動向、業界動向、戦略、買収価格、PMI(ポスト・マージャー・インテグレーション)プロセス及び潜在リスクなど様々な視点からの分析・議論を、投融資戦略委員会、経営会議、取締役会及び監査委員会において実施しています。
事業再構築
当グループは、以下の事業ポートフォリオ再構築の取組み等により、成長性が高く、安定的な収益の得られる事業構造の確立を図っています。
・不採算事業からの撤退
・当社の子会社及び関連会社の売却
・製造拠点及び販売網の再編
・資産の売却
当グループによる事業再構築の取組みは、各国政府の規制、雇用問題又は当グループが売却を検討している事業に対するM&A市場における需要不足等により、時宜に適った方法によって実行されないか、又は全く実行されない可能性があります。また、当社は、上場子会社を有しており、上場子会社の株主の利害と当グループの利害が衝突する可能性もあります。かかる利害衝突によって、上場子会社が当事者となる合併、会社分割その他のこれに類する取引を含むグループ全体の方針を適時に実行することが困難になる可能性があります。事業再構築の取組みは、顧客又は従業員からの評価の低下等、予期せぬ結果をもたらす可能性もあり、また、過去に事業再構築に関連して有形固定資産や無形資産の減損、在庫の評価減、有形固定資産の処分及び有価証券の売却に関連する損失などが生じましたが、このような多額の費用が将来も発生する可能性があります。現在及び将来における事業再構築の取組みは、成功しない、又は当グループが現在期待している効果を得られず、当グループの事業、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
かかるリスクへの対応として、当グループは、市場動向、業界動向、戦略、売却価格、プロセス及び潜在リスクなど様々な視点からの分析・議論を、投融資戦略委員会、経営会議、取締役会及び監査委員会において実施しています。
持分法適用会社の業績の悪化
当社及び連結子会社は、多数の持分法適用会社を有しています。持分法適用会社の損失は、当社及び連結子会社の持分比率に応じて、連結財務諸表に計上されます。また、当社及び連結子会社は、持分法適用会社の回収可能価額が取得原価又は帳簿価額を下回る場合、当該持分法適用会社の株式について減損損失を計上しなければならない可能性もあります。
当連結会計年度末において、持分法で会計処理されている投資は、以下のとおりです。
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(単位:百万円) |
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セグメント |
2022年3月31日 |
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IT |
50,397 |
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エネルギー |
49,854 |
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インダストリー |
23,789 |
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モビリティ |
31,055 |
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ライフ |
124,750 |
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オートモティブシステム |
10,271 |
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日立建機 |
26,661 |
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日立金属 |
11,611 |
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その他 |
3,778 |
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小計 |
332,166 |
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全社及び消去 |
79,035 |
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合計 |
411,201 |
かかるリスクへの対応として、当グループは、投下資本利益率(ROIC)を用いた投資収益管理を推進し、収益性・成長性の高い分野へ投資を集中させるとともに、投資した持分法適用会社については投資実行後も事業計画の達成状況や財務状況を把握し、低収益事業や将来の競争力に懸念のある投資先については売却を行うなどの施策を行っています。
訴訟その他の法的手続
当グループは、事業を遂行する上で、訴訟や規制当局による調査及び処分等に関するリスクを有しています。訴訟その他の法的手続により、当グループに対して巨額又は算定困難な金銭支払いの請求又は命令がなされ、また、事業の遂行に対する制限が加えられる可能性があり、これらの内容や規模は長期間にわたって予測し得ない可能性があります。過去、当グループは、一部の製品において、競争法違反の可能性に関する日本、欧州及び北米等の規制当局による調査の対象となり、また、顧客等から損害賠償等の請求を受けています(当グループの経営成績及び財政状態に重大な悪影響を及ぼす可能性がある案件について、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 注30.コミットメント及び偶発事象」参照)。これらの調査や紛争の結果、複数の法域において多額の課徴金や損害賠償金等の支払いが課される可能性があります。かかる重大な法的責任又は規制当局による処分は、当グループの事業、経営成績、財政状態、キャッシュ・フロー、評判及び信用に悪影響を及ぼす可能性があります。
さらに、当グループの事業活動は、当グループが事業を行う国々で様々な政府による規制の対象となります。かかる政府による規制は、投資、輸出、関税、公正な競争、贈賄禁止、消費者及び企業に関する税制、知的財産、外国貿易及び外国為替に関する規制、人権や雇用・労働に関する規制、環境及びリサイクルに関する規制を含みます。これらの規制は、当グループの事業活動を制限し又はコストを増加させ、また、新たな規制又は規制の変更は、当グループの事業活動をさらに制限し又はコストを増加させる可能性もあります。さらに、規制違反に係る罰金又は課徴金など、規制の執行が、当グループの経営成績、財政状態、キャッシュ・フロー、評判及び信用に悪影響を及ぼす可能性があります。また、個人データ保護規制等への対応についても、事業に悪影響を及ぼす可能性があります。
かかるリスクへの対応として、当グループは、規制の適用を受ける業務の特定、リスク評価、リスクに応じた措置の実行及び従業員に対する教育等を実施しています。
製品の品質と責任
当グループの製品・サービスには、高度で複雑な技術を利用したものが増えています。また、部品等を外部のサプライヤーから調達することにより、品質確保へのコントロールが低下します。当グループの製品・サービスに欠陥等が生じた場合、当グループの製品・サービスの質に対する信頼が悪影響を受け、当該欠陥等から生じた損害について当グループが責任を負う可能性があるとともに、当グループの製品の販売能力に悪影響を及ぼす可能性があり、当グループの経営成績、財政状態及び将来の業績見通しに悪影響を及ぼす可能性があります。
かかるリスクへの対応として、当グループは、品質保証体制の強化に加え、事故未然防止活動、技術法令の遵守活動、リスクアセスメントの徹底、品質・信頼性や製品事故発生時の対応に関する教育等を行っています。
機密情報の管理
当グループは、顧客から入手した個人情報並びに当グループ及び顧客の技術、研究開発、製造、販売及び営業活動等に関する機密情報を様々な形態で保持及び管理しています。かかる情報が権限なく開示された場合、当グループが損害賠償を請求され又は訴訟を提起される可能性があり、また、当グループの事業、財政状態、経営成績、評判及び信用に悪影響を及ぼす可能性があります。
かかるリスクへの対応として、当グループは、機密情報管理に関する規則・運用を定め、暗号化や認証基盤の構築によるID管理とアクセス制御等を行うとともに、サプライヤーに対しても情報セキュリティ状況の確認・審査等を行っています。
知的財産
当グループの事業は、製品、製品のデザイン、製造過程及び製品・ソフトウェアを組み合わせてサービスの提供を行うシステム等に関する特許権、意匠権、商標権及びその他の知的財産権を日本及び各国において取得できるか否かに依存する側面があります。当グループがかかる知的財産権を保有しているとしても、競争上優位に立てるという保証はありません。様々な当事者が当グループの特許権、意匠権、商標権及びその他の知的財産権について異議を申し立て、無効とし、又はその使用を避ける可能性があります。また、将来取得する特許権に関する特許請求の範囲が当グループの技術を保護するために十分に広範なものである保証はありません。当グループが事業を行っている国において、特許権、意匠権、著作権及び企業秘密に対する有効な保護手段が整備されていないか、又は不十分である可能性があり、当グループの企業秘密が従業員、契約先等によって開示又は不正流用される可能性があります。
かかるリスクへの対応として、当グループは、出願前に公知例調査を行うことで、権利の成立可能性の向上及び事業に即した権利の取得を図っています。また、知的財産の保護手段が整備されていない、または、不十分な国においては、従業員や契約先との契約等により、不正利用の抑制を図っています。
当グループの多くの製品には、第三者からライセンスを受けたソフトウェア又はその他の知的財産が含まれています。当グループは、競合他社の保護された技術を使用することができない、又は不利な条件の下でのみ使用しうることとなる可能性があります。かかる知的財産に関するライセンスを取得したとしても経済的理由等からこれを維持できる保証はなく、また、かかる知的財産が当グループの期待する商業上の優位性をもたらす保証もありません。
かかるリスクへの対応として、当グループは、当該第三者と契約・交渉により良好な関係を維持し、知的財産の実施権の確保を図っています。
当グループは、特許権、意匠権及びその他の知的財産に関して、提訴され、又は権利侵害を主張する旨の通知を受け取ることがあります。これらの請求に正当性があるか否かにかかわらず、応訴するためには多額の費用等が必要となる可能性があり、また、経営陣が当グループの事業運営に専念できない可能性や当グループの評判を損ねる可能性があります。さらに、権利侵害の主張が成功し、侵害の対象となった技術のライセンスを当グループが取得することができない場合、又は他の権利侵害を行っていない代替技術を使用することができない場合、当グループの事業は悪影響を受ける可能性があります。
かかるリスクへの対応として、当グループは、新たな製品の販売やサービスの提供開始前に、当該製品やサービスについて他社特許クリアランスを実施するとともに、必要な場合には製品やサービスの設計変更を行うこと等で、他社との係争の回避を図っています。
退職給付に係る負債
当グループは、数理計算によって算出される多額の退職給付費用を負担しています。この評価には、死亡率、脱退率、退職率、給与の変更及び割引率等の退職給付費用を見積る上で利用される様々な数理計算上の仮定が含まれています。当グループは、人員の状況、市況及び将来の金利の動向等の多くの要素を考慮に入れて、数理計算上の仮定を見積る必要があります。数理計算上の仮定の見積りは、基礎となる要素に基づき、合理的なものであると考えていますが、実際の結果と合致する保証はありません。数理計算上の仮定が実際の結果と異なった場合、その結果として実際の退職給付費用が見積費用から乖離して、当グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。割引率の低下は、数理上の退職給付に係る負債の増加をもたらす可能性があります。また、当グループは、割引率等の数理計算上の仮定を変更する可能性があります。数理計算上の仮定の変更も、当グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
かかるリスクへの対応として、2019年4月1日から当社の従業員を対象として、従来の確定拠出型企業年金制度からリスク分担型企業年金制度に移行し、当社の掛金負担を固定化することにより、資産運用リスク等を低減しています。
株式の追加発行に伴う希薄化
当社は、将来、株式の払込金額が時価を大幅に下回らない限り、株主総会決議によらずに、発行可能株式総数のうち未発行の範囲において、株式を追加的に発行する可能性があります。将来における株式の発行は、その時点の時価を下回る価格で行われ、かつ、株式の希薄化を生じさせる可能性があります。
(1)経営計画の進捗
①経営上の目標として掲げた指標の状況
「2021中期経営計画」において、経営上の目標として用いた主な指標の当連結会計年度における状況は次のとおりです。
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当連結会計年度(2021年度) |
2021年度目標 |
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売上収益年成長率 |
18% |
(2018~2021年度 CAGR) 3%超 |
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調整後営業利益率 |
7.2% |
10%超 |
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営業キャッシュ・フロー |
(2019~2021年度累計) 20,840億円 |
(2019~2021年度累計) 25,000億円超 |
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投下資本利益率(ROIC) |
7.7% |
10%超 |
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海外売上比率 |
59% |
60%超 |
当連結会計年度は、「2021中期経営計画」の最終年度でしたが、COVID-19の拡大等による厳しい経営環境により、調整後営業利益率、営業キャッシュ・フロー、ROICなどの目標は未達となりました。しかしながら、コスト構造改革や収益力強化の取組み、事業ポートフォリオの再編の成果等により調整後営業利益率は前年度よりも1.5%増加して7.2%となりました。このように、社会イノベーション事業でグローバルリーダーになることを掲げた「2021中期経営計画」の最終年度として、次期中期経営計画である「2024中期経営計画」における成長の基礎を築くことができました。
②成長に向けた事業強化
・社会インフラのDX(デジタルトランスフォーメーション)を加速する事業ポートフォリオ改革
昨年7月に買収を完了したGlobalLogic社は、新たに開設した「Lumada Innovation Hub Tokyo」などを活用して、様々な協創を開始しており、その高いデジタルエンジニアリング力と豊富な顧客基盤を活かし、Lumada事業の世界展開を加速しています。また、パワーグリッド事業は、日立エナジー社(旧Hitachi ABB Power Grids社)を中心に、持続可能なエネルギーの実現へ向けて、積極的に事業を展開しています。さらに、鉄道事業でも、デジタル技術を活用した鉄道システム及びソリューション提供の強化を目的にThales(タレス)社の鉄道信号関連事業等の買収を決定しました。
一方で、日立建機株式の一部譲渡を決定したことにより、日立グループにおける全ての親子上場関係の解消が実現されます。
「2021中期経営計画」を経て、日立の事業ポートフォリオは改革が推進され、社会イノベーション事業の更なる成長を実現するための土台が強化されました。
・Lumada事業の進展
当連結会計年度におけるLumada事業の売上は、全セグメントにおいて前年度よりも増収したことに加え、ABB Ltdのパワーグリッド事業やGlobalLogic社の買収影響等により1兆6,090億円となりました。
(2)経営成績の状況の分析
①業績の状況
売上収益は、前年度に比べて18%増加し、10兆2,646億円となりました。COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の影響により悪化していた市況の回復や為替影響に加えて、日立Astemo㈱に係る経営統合(日立オートモティブシステム㈱と㈱ケーヒン、㈱ショーワ及び日信工業㈱の経営統合)やABB Ltdのパワーグリッド事業買収、GlobalLogic社の買収等により増収となりました。
売上原価は、前年度に比べて18%増加し、7兆7,059億円となり、売上収益に対する比率は、前年度と同水準の75%となりました。売上総利益は、前年度に比べて17%増加し、2兆5,586億円となりました。
販売費及び一般管理費は、前年度に比べて7%増加し、1兆8,203億円となり、売上収益に対する比率は、前年度より1%減少し、18%となりました。
調整後営業利益は、売上収益の増加等により、前年度に比べて2,430億円増加し、7,382億円となりました。
その他の収益は、前年度に比べて3,477億円減少して1,283億円となり、その他の費用は、前年度に比べて884億円減少して839億円となりました。主な内訳は、以下のとおりです。
・固定資産損益は、前年度に比べて19億円増加し、180億円の利益となりました。
・減損損失は、前年度にオートモティブシステム事業における固定資産の減損損失や日立金属における磁性材料事業の収益性低下等による減損損失を計上していたこと等により、前年度に比べて739億円減少し、350億円となりました。
・事業再編等損益は、Arcelik Hitachi Home Appliances B.V.株式の一部売却による売却益を計上したものの、前年度に日立化成㈱株式売却やライフセクターにおける画像診断関連事業の売却、Agility Trains East (Holdings) Limited株式の一部売却に伴う売却益を計上していたこと等により、前年度に比べて3,502億円減少し、1,021億円となりました。
・特別退職金は、前年度に比べて109億円減少し、87億円となりました。
金融収益(受取利息を除く)は、前年度に比べて139億円増加して279億円となり、金融費用(支払利息を除く)は、前年度に比べて13億円減少して97百万円となりました。
持分法による投資損益は、前年度に比べて16億円改善し、404億円の利益となりました。
これらの結果、EBIT(注)は、前年度に比べ6億円増加し、8,509億円となりました。
(注)EBIT (Earnings before interest and taxes)は、受取利息及び支払利息調整後税引前当期利益であり、継続事業税引前当期利益から、受取利息の額を減算し、支払利息の額を加算して算出した指標です。EBIT率は、EBITを売上収益の額で除して算出した指標です。
受取利息は、前年度に比べて14億円減少して154億円となり、支払利息は、前年度に比べて43億円増加して271億円となりました。
継続事業税引前当期利益は、前年度に比べて51億円減少し、8,393億円となりました。
法人所得税費用は、事業再編に伴う税金費用の影響等により、前年度に比べて1,567億円減少し、1,684億円となりました。
非継続事業当期利益は、前年度に比べて6億円減少し、0百万円となりました。
当期利益は、前年度に比べて1,523億円増加し、6,708億円となりました。
非支配持分に帰属する当期利益は、前年度に比べて704億円増加し、873億円となりました。
これらの結果、親会社株主に帰属する当期利益は、前年度に比べて818億円増加し、5,834億円となりました。
②セグメントごとの業績の状況
セグメントごとに業績の状況を概観すると次のとおりです。各セグメントの売上収益は、セグメント間内部売上収益を含んでいます。なお、各表内の内数は、各セグメントの主な事業等の業績を表しており、それらの合計額は、セグメント全体の業績と一致しない場合があります。
(IT)
※GlobalLogicの買収に伴う無形資産等の償却費はITセグメント合計に含まれています。
売上収益は、Lumada事業やGlobalLogic社が堅調に推移したこと等により、前年度に比べて増収となりました。
調整後営業利益は、前年度に比べて減益となりました。半導体不足の影響やGlobalLogic社買収に伴う無形資産等の償却費、統合に向けた一時的費用等の関連費用の計上等により、減益となりました。
EBITは、前年度に比べて減益となりました。調整後営業利益が減益となったことに加え、GlobalLogic社買収に伴うアドバイザリー費用の計上等により、減益となりました。
(エネルギー)
※関連費用には、パワーグリッド事業買収に伴う無形資産等の償却費のほか、PMIに係る費用等が含まれています。
売上収益は、前年度に比べて増収となりました。原子力事業が、作業高減少により減収となったものの、ABB Ltdのパワーグリッド事業の買収影響により、増収となりました。
調整後営業利益は、前年度に比べて増益となりました。原子力事業の売上収益が減少となったものの、エネルギー事業において一部案件の対策強化が終了したことや、原子力事業及びエネルギー事業での原価低減や固定費圧縮等により増益となったこと、また、ABB Ltdのパワーグリッド事業買収による増益等により、増益となりました。
EBITは、調整後営業利益の増加等により、前年度に比べて増益となりました。
(インダストリー)
売上収益は、前年度に比べて増収となりました。市況の回復に伴って、インダストリアルプロダクツ事業が増収となり、産業・流通事業も、デジタルソリューション事業の売上増加等により増収となりました。また、水・環境事業は、空調システム事業の売上増加等により、増収となりました。
調整後営業利益は、売上収益の増加に加えて、産業・流通事業におけるデジタルソリューション事業の収益性改善やコスト低減等により、前年度に比べて増益となりました。
EBITは、調整後営業利益の増加等により、前年度に比べて増益となりました。
(モビリティ)
売上収益は、前年度に比べて増収となりました。鉄道システム事業は、COVID-19の制限緩和による、アジア事業や欧州事業を中心とした作業高の増加に加え、為替影響等により、増収となりました。ビルシステム事業は、中国における事業拡大や2020年10月に永大機電工業股份有限公司を連結化したことの影響に加え、為替影響等により、増収となりました。
調整後営業利益は、前年度に比べて増益となりました。ビルシステム事業における部材価格高騰等の影響があったものの、売上収益が増加したこと等により、増益となりました。
EBITは、前年度に比べて減益となりました。調整後営業利益が増加したものの、鉄道システム事業におけるAgility Trains East (Holdings) Limited株式の売却益の影響に加え、ビルシステム事業が、前年度に事業再編等利益を計上していたこと等により、減益となりました。
(ライフ)
※ライフセグメントの実績には、ヘルスケア他の売上収益・調整後営業利益・EBITが含まれています。
売上収益は、前年度に比べて減収となりました。画像診断関連事業の売却に伴う減収に加え、生活・エコシステム事業(日立グローバルライフソリューションズ)における海外家電事業の売却影響等により減収となりました。また、計測分析システム事業(日立ハイテク)は、市況回復等に伴いアナリティカル・ソリューション事業が増収となったものの、インダストリアル・ソリューション事業における一部事業撤退の影響等により減収となりました。
調整後営業利益は、前年度に比べて減益となりました。計測分析システム事業は、アナリティカル・ソリューション事業の売上収益増加等に伴い増益となったものの、生活・エコシステム事業における売上収益の減少等により、減益となりました。
EBITは、生活・エコシステム事業が、Arcelik Hitachi Home Appliances B.V.株式の一部売却に伴う事業再編等利益の計上により増益となったものの、前年同期に画像診断関連事業の売却益を計上していたこと等により、前年度に比べて減益となりました。
(オートモティブシステム)
売上収益は、半導体不足に伴う自動車メーカーの減産やCOVID-19拡大によるインドのロックダウンに伴う部品供給減少等の減収要因があったものの、日立Astemo㈱に係る経営統合や前年度にCOVID-19拡大によって悪化した操業度の改善に伴う増収等により、前年度に比べて増収となりました。
調整後営業利益は、半導体不足に伴う自動車メーカーの減産や部材価格の高騰等の影響があったものの、売上収益の増加等により、前年度に比べて増益となりました。
EBITは、半導体不足に伴う自動車メーカーの減産や部材価格の高騰等の影響があったものの、売上収益の増加等により、前年度に比べて増益となりました。
(日立建機)
売上収益は、中国を除く市況回復に伴う増収や米州での価格調整及び為替影響等により、前年度に比べて増収となりました。
調整後営業利益は、鋼材価格の高騰等の影響があったものの、売上収益の増加等により、前年度に比べて増益となりました。
EBITは、調整後営業利益の増加やDeere & Company社との提携解消に伴う株式譲渡益の計上等により、前年度に比べて増益となりました。
(日立金属)
売上収益は、自動車向け製品等の市況の回復に伴う増収等により、前年度に比べて増収となりました。
調整後営業利益は、売上収益の増加等により、前年度に比べて増益となりました。
EBITは、調整後営業利益の増加に加え、前年度に磁性材料事業における減損損失を計上していたこと等により、前年度に比べて増益となりました。
(その他)
売上収益は、前年度に比べて2%増加し、4,563億円となりました。
調整後営業利益は、前年度に比べて22億円増加し、234億円となり、EBITは、前年度に比べて72億円増加し、325億円となりました。
③地域ごとの売上収益の状況
仕向地別に外部顧客向け売上収益の状況を概観すると次のとおりです。
国内
国内売上収益は、前年度に比べて増収となりました。これは主として、ライフセクターにおける画像診断関連事業の売却による減収や㈱日立ハイテクのインダストリアル・ソリューション事業における一部事業撤退の影響等があったものの、日立Astemo㈱に係る経営統合や市況の回復によるオートモティブシステムの増収、日立金属の増収等によるものです。
海外
海外売上収益は、前年度に比べて増収となり、売上収益全体に占める比率は、前年度に比べて7%増加し、59%となりました。各地域の状況は、以下のとおりです。
(北米)
前年度に比べて増収となりました。これは主として、オートモティブセクター、日立建機及び日立金属等が増収となったことによるものです。
(欧州)
前年度に比べて増収となりました。これは主として、エネルギーセクター、モビリティセクター及び日立建機等が増収となったことによるものです。
(アジア)
中国及びASEAN・インド他から成るアジアは、前年度に比べて、増収となりました。これは主として、ライフセクターにおける海外家電事業の一部売却による減収等があったものの、オートモティブセクター及びモビリティセクター等が増収となったことによるものです。
(その他の地域)
前年度に比べて増収となりました。これは主として、エネルギーセクターや日立建機等が増収となったことによるものです。
(3)財政状態及びキャッシュ・フローの状況の分析
①流動性と資金の源泉
財務活動の基本方針
当社は、現在及び将来の事業活動のための適切な水準の流動性の維持及び機動的・効率的な資金の確保を財務活動の重要な方針としています。当社は、運転資金の効率的な管理を通じて、事業活動における資本効率の最適化を図るとともに、グループ内の資金の管理を当社や海外の金融子会社に集中させることを推進しており、グループ内の資金管理の効率改善に努めています。
当社は、経営管理指標にROICを導入し、資本効率の向上と収益性の高い事業の成長を経営として推進しています。ROICは、事業に投じた資金(投下資本)によって生み出されたリターンを評価する指標で、税引後の事業利益を投下資本で除すことで算出します。リターンを上げるためにはROICが投下資本の調達コストである加重平均資本コスト(WACC)を上回る必要があります。
また、2022年度からは、収益性を図る主要な指標として、これまでの調整後営業利益からAdjusted EBITA(調整後営業利益から買収に伴う無形資産等の償却費を減算し、持分法損益を加算したもの)へ変更しました。
今後は、Adjusted EBITA12%及びROIC10%をめざすとともに、事業買収における投資判断の基準としてもAdjusted EBITA及びROICを用いることで、投資判断の規律を徹底し、収益力の強化と事業資産の効率向上をさらに図っていきます。
資金需要の動向
当社の主要な資金使途は、成長に向けたM&A、人財への投資、設備投資や研究開発投資、株主還元等です。コア・フリーキャッシュ・フロー及び資産売却で得た資金を、これらの成長投資や株主還元にバランスよく配分していきます。
主なM&A等の案件については、「第5 経理の状況 連結財務諸表注記 注5.事業再編等」に、設備投資の実績及び計画については、「第3 設備の状況」に、株主還元の方針及び実績については、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」に記載しています。
資金の源泉
当社は、営業活動によるキャッシュ・フロー並びに現金及び現金同等物を内部的な資金の主な源泉と考えており、短期投資についても、直ちに利用できる財源となりうると考えています。また、資金需要に応じて、国内及び海外の資本市場における債券の発行及び株式等の資本性証券の発行並びに金融機関からの借入により資金を調達することが可能です。設備投資やM&Aのための資金については、主として内部資金により充当することとしており、必要に応じて社債や株式等の発行により資金を調達することとしています。借入により資金を調達する場合には、D/Eレシオ、有利子負債/EBITDA倍率等の財務規律に照らし、適正な財政状態を維持する方針としています。当社は、機動的な資金調達を可能とするため、3,000億円を上限とする社債の発行登録を行っています。
当社及び一部の子会社は、資金需要に応じた効率的な資金の調達を確保するため、複数の金融機関との間でコミットメントラインを設定しています。当社においては、契約期間1年で期間満了時に更新するコミットメントライン契約と、契約期間3年で2022年7月29日を期限とするコミットメントライン契約を締結しています。2022年3月31日現在における当社及び子会社のコミットメントライン契約に係る借入未実行残高の合計は6,319億円であり、このうち当社は5,367億円です。
当社は、ムーディーズ・ジャパン㈱(ムーディーズ)、S&Pグローバル・レーティング・ジャパン㈱(S&P)及び㈱格付投資情報センター(R&I)から債券格付けを取得しています。2022年3月31日現在における格付けの状況は、次のとおりです。
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格付会社 |
長期会社格付け |
短期会社格付け |
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ムーディーズ |
A3 |
P-2 |
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S&P |
A |
A-1 |
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R&I |
AA- |
a-1+ |
当社は、現在の格付け水準の下で、引き続き、国内及び海外の資本市場から必要な資金調達が可能であると考えており、格付け水準の維持・向上を図っていきます。
②キャッシュ・フロー
(営業活動に関するキャッシュ・フロー)
当期利益は前年度に比べて1,523億円増加しました。買入債務が前年度の318億円の減少に対して1,564億円の増加となったものの、売上債権及び契約資産が前年度の897億円の減少に対して332億円の増加となったこと、棚卸資産の増減による支出が前年度に比べて2,822億円増加したことに加え、法人所得税等の支払いが前年度に比べて595億円増加したこと等により、営業活動に関するキャッシュ・フローの収入は、前年度に比べて631億円減少し、7,299億円となりました。
(投資活動に関するキャッシュ・フロー)
有価証券及びその他の金融資産(子会社及び持分法で会計処理されている投資を含む)の取得による支出が、前年度にはHitachi Energy Ltd株式を取得した一方、当連結会計年度にはGlobalLogic Worldwide Holdings, Inc.株式を取得したこと等により、前年度に比べて721億円増加したこと、固定資産関連の純投資額(注1)が前年度に比べて405億円増加して3,300億円の支出となったことに加え、前年度には日立化成㈱株式や画像診断関連事業の売却をしたこと等から、有価証券及びその他の金融資産(子会社及び持分法で会計処理されている投資を含む)の売却による収入が5,135億円減少したこと等により、投資活動に関するキャッシュ・フローの支出は、前年度に比べて5,900億円増加し、1兆488億円となりました。
(注)1.有形固定資産の取得及び無形資産の取得の合計額から、有形固定資産及び無形資産の売却を差し引いた額。
(財務活動に関するキャッシュ・フロー)
長期借入債務の純収入額(注2)が前年度の2,929億円の収入に対して、2,611億円の支出になったものの、短期借入金の純増減による収入が前年度に比べて4,535億円増加したこと、非支配持分株主からの子会社持分取得による支出が、前年度は㈱日立ハイテク株式を取得したこと等から、前年度に比べて5,237億円減少したこと等により、財務活動に関するキャッシュ・フローは、前年度の1,848億円の支出に対して、2,027億円の収入となりました。
(注)2.長期借入債務による調達から償還を差し引いた額。
これらの結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前年度末に比べて470億円減少し、9,688億円となりました。また、営業活動に関するキャッシュ・フローと投資活動に関するキャッシュ・フローを合わせた所謂フリー・キャッシュ・フローは、前年度に比べて6,532億円減少し、3,189億円の支出となりました。
③資産、負債及び資本
当連結会計年度末の総資産は、GlobalLogic社の買収に伴うのれんの増加や、棚卸資産の増加等により、前年度末に比べて2兆346億円増加し、13兆8,875億円となりました。当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前年度末に比べて470億円減少し、9,688億円となりました。
当連結会計年度末の有利子負債(短期借入金及び長期債務の合計)は、短期借入金や買入債務の増加等により、前年度末に比べて7,293億円増加し、3兆1,267億円となりました。金融機関からの借入やコマーシャル・ペーパー等から成る短期借入金は、前年度末に比べて8,174億円増加し、1兆2,341億円となりました。償還期長期債務は、前年度末に比べて620億円増加し、3,364億円となりました。社債及び銀行や保険会社からの借入等から成る長期債務(償還期を除く)は、前年度末に比べて1,501億円減少し、1兆5,561億円となりました。
当連結会計年度末の親会社株主持分は、前年度末に比べて8,163億円増加し、4兆3,418億円となりました。この結果、当連結会計年度末の親会社株主持分比率は、前年度末の29.7%に対して、31.3%となりました。
当連結会計年度末の非支配持分は、前年度末に比べて807億円増加し、1兆134億円となりました。
当連結会計年度末の資本合計は、前年度末に比べて8,970億円増加し、5兆3,552億円となり、資本合計に対する有利子負債の比率は、前年度末から0.04ポイント増加し0.58倍となりました。
(4)生産、受注及び販売の状況
当グループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、また、受注生産形態をとらない製品も多く、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額又は数量で示すことはしていません。長期に亘り収益が認識される契約を有する主なセグメントについては、未履行の履行義務残高を、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 注20.売上収益 」に記載しています。また、販売の状況については、「(2)経営成績の状況の分析」において各セグメントの業績に関連付けて示しています。
(5)重要な会計方針及び見積り
IFRSに基づく連結財務諸表の作成においては、期末日における資産・負債の報告金額及び偶発的資産・債務の開示並びに報告期間における収益・費用の報告金額に影響するような見積り及び仮定が必要となります。いくつかの会計上の見積りは、次の二つの理由により、連結財務諸表に与える重要性及びその見積りに影響する将来の事象が現在の判断と著しく異なる可能性があり、当グループの財政状態、財政状態の変化又は経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。第一は、会計上の見積りがなされる時点においては、不確実性がきわめて高い事項についての仮定が必要になるため、第二は、当連結会計年度における会計上の見積りに合理的に用いることがありえた別の見積りが存在し、または時間の経過により会計上の見積りの変化が合理的に起こりうるためです。見積り及び仮定が必要となる重要な会計方針は、次のとおりです。
長期請負契約等に係る見積り、コストの変動及び契約の解除
当グループは、インフラシステムの建設に係る請負契約をはじめ多数の長期契約を締結しており、一定の期間に亘り製品及びサービス等の支配の移転が行われる取引については、顧客に提供する当該製品及びサービス等の性質を考慮し、履行義務の充足に向けての進捗度を発生原価又はサービス提供期間に基づき測定し収益を認識しています。なお、当該進捗度を合理的に測定することができない場合は、発生したコストの範囲で収益を認識しています。長期請負契約等に基づく収益認識において、見積原価総額、見積収益総額、契約に係るリスクやその他の要因について重要な仮定を行う必要がありますが、かかる見積りは変動する可能性があります。当グループは、これらの見積りを継続的に見直し、必要と考える場合には調整を行っています。当グループは、価格が確定している契約の予測損失は、その損失が見積られた時点で費用計上していますが、かかる見積りは変動する可能性があります。また、コストの変動は、当グループのコントロールの及ばない様々な理由によって発生する可能性があります。さらに、当グループ又はその取引相手が契約を解除する可能性もあります。このような場合、当グループは、当該契約に関する当初の見積りを見直す必要が生じ、かかる見直しは、当グループの事業、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
企業結合
企業結合の会計処理は取得法を用いています。被取得会社の有形資産のほか、技術やブランド、顧客リストといった無形資産も公正価値にて評価を行いますが、かかる評価において、個々の事案に応じた適切な前提条件や将来予測に基づき、見積りを行います。評価は通常、独立した外部専門家が評価プロセスに関与しますが、評価における重要な見積り及び前提には固有の不確実性が含まれます。当グループは、主要な前提条件の見積りは合理的であると考えていますが、実際の結果が異なる可能性があります。
資産の減損
当グループは、保有しかつ使用している資産の帳簿価額について、帳簿価額の回収ができなくなる可能性を示す事象又は状況の変化が生じた場合は、減損の兆候の有無を判定します。この判定において、資産の帳簿価額が減損していると判断された場合は、帳簿価額が回収可能価額を超える金額を減損損失として認識します。各資産及び資金生成単位又は資金生成単位グループごとの回収可能価額は、処分費用控除後の公正価値と使用価値のいずれか高い方で算定しています。
公正価値を算定するために用いる評価技法として、主に当該資産等の使用及び最終処分価値から期待される見積将来キャッシュ・フローに基づくインカム・アプローチ(現在価値法)又は類似する公開企業との比較や当該資産等の時価総額等、市場参加者間の秩序ある取引において成立しうる価格を合理的に見積り算定するマーケット・アプローチを用いています。使用価値は、経営者により承認された事業計画を基礎とした将来キャッシュ・フローの見積額を、加重平均資本コストをもとに算定した割引率で現在価値に割り引いて算定しており、現時点で合理的であると判断される一定の前提に基づいていますが、マーケットに係るリスク、経営環境に係るリスク等により、実際の結果が大きく異なることがありえます。また、使用価値の算定に使用する割引率については、株式市場の動向や金利の変動等により影響を受けます。将来キャッシュ・フロー及び使用価値の見積りは合理的であると考えていますが、将来キャッシュ・フローや使用価値の減少をもたらすような予測不能な事業上の環境の変化に起因する見積りの変化が、資産の評価に不利に影響する可能性があります。当グループは、公正価値及び使用価値算定上の複雑さに応じ、外部専門家を適宜利用しています。
のれんは、事業買収で獲得する市場競争力を基礎とする超過収益力の源泉であり、被取得会社の純資産と、取得の対価の差額の内、無形資産等に計上された額以外をのれんとして計上します。のれんは、IFRSに基づき、償却をせず、減損の兆候の有無にかかわらず、毎年、主に第4四半期において、その資産の属する資金生成単位又は資金生成単位グループごとに回収可能価額を見積り、減損テストを実施しています。また、当初の見積りと直近の見積りを比較するモニタリングを継続し、事業戦略の変更や市場環境等の変化により、その価値が当初の見積りを下回り、帳簿価額が回収不可能であるような兆候がある場合には、その都度、減損テストを実施しています。当該事象や状況の変化には、世界的な経済や金融市場における危機も含まれ、その資産の属する資金生成単位又は資金生成単位グループの帳簿価額が回収可能価額を超える場合には、その超過額を減損損失として認識しています。
減損及びのれんのセグメントごとの内訳は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 注4 セグメント情報」に記載しています。主な内容は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 注9 有形固定資産 及び 注10 のれん及びその他の無形資産」に記載しています。
繰延税金資産
繰延税金資産は、将来の期に回収されることとなる税額であり、実現可能性を評価するにあたり、当グループは、同資産の一部又は全部が実現しない蓋然性の検討を行っています。実現可能性は確定的ではありませんが、実現可能性の評価において、当グループは、繰延税金負債の振り戻しの予定及び予測される将来の課税所得を考慮しています。将来の課税所得の見積りの基礎となる、将来の業績の見通しは、経済の動向、市場における需給動向、製品及びサービスの販売価格、原材料及び部品の調達価格、為替相場の変動、急速な技術革新等予見しえない事象により実際とは異なる結果となり、将来において修正される可能性があります。その結果、認識可能と判断された繰延税金資産の金額に不利な影響を及ぼす可能性があります。繰延税金資産の実現可能性の評価は、各納税地域の各納税単位で行われており、類似の事業を営む場合でも、製品や納税地域の違いにより異なった評価となりえます。同資産が最終的に実現するか否かは、これらの一時差異等が、将来、それぞれの納税地域における納税額の計算上、課税所得の減額あるいは税額控除が可能となる会計期間において、課税所得を計上しうるか否かによります。これらの諸要素に基づき当グループは、2022年3月31日現在で認識可能と判断された繰延税金資産が実現する蓋然性は高いと判断していますが、実際に課税所得が生じる時期及び金額は見積りと異なる可能性があります。
退職給付に係る負債
当グループは、数理計算によって算出される多額の退職給付費用を負担しています。この評価には、死亡率、脱退率、退職率、給与の変更及び割引率等の退職給付費用を見積る上で利用される様々な数理計算上の仮定が含まれています。当グループは、人員の状況、市況及び将来の金利の動向等の多くの要素を考慮に入れて、数理計算上の仮定を見積る必要があります。数理計算上の仮定の見積りは、基礎となる要素に基づき、合理的なものであると考えていますが、実際の結果と合致する保証はありません。数理計算上の仮定が実際の結果と異なった場合、その結果として実際の退職給付費用が見積費用から乖離して、当グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。割引率の低下は、数理上の退職給付に係る負債の増加をもたらす可能性があります。また、当グループは、割引率等の数理計算上の仮定を変更する可能性があります。数理計算上の仮定の変更も、当グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
退職後給付の算定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 注3 主要な会計方針の概要 (11)退職後給付」に記載しています。
(6)将来予想に関する記述
「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」、「2 事業等のリスク」及び「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」等は、当社又は当グループの今後の計画、見通し、戦略等の将来予想に関する記述を含んでいます。将来予想に関する記述は、当社又は当グループが当有価証券報告書提出日現在において合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の業績等の結果は見通しと大きく異なることがありえます。その要因のうち、主なものは以下のとおりです。
・主要市場における経済状況及び需要の急激な変動
・為替相場変動
・資金調達環境
・株式相場変動
・原材料・部品の不足及び価格の変動
・信用供与を行った取引先の財政状態
・主要市場・事業拠点(特に日本、アジア、米国及び欧州)における政治・社会状況及び貿易規制等各種規制
・気候変動対策に関する規制強化等への対応
・情報システムへの依存及び機密情報の管理
・人材の確保
・新技術を用いた製品の開発、タイムリーな市場投入、低コスト生産を実現する当社及び子会社の能力
・COVID-19の流行による社会的・経済的影響の悪化
・地震・津波等の自然災害、気候変動、感染症の流行及びテロ・紛争等による政治的・社会的混乱
・長期請負契約等における見積り、コストの変動及び契約の解除
・価格競争の激化
・製品等の需給の変動
・製品等の需給、為替相場及び原材料価格の変動並びに原材料・部品の不足に対応する当社及び子会社の能力
・コスト構造改革施策の実施
・社会イノベーション事業強化に係る戦略
・企業買収、事業の合弁及び戦略的提携の実施並びにこれらに関連する費用の発生
・事業再構築のための施策の実施
・持分法適用会社への投資に係る損失
・当社、子会社又は持分法適用会社に対する訴訟その他の法的手続
・製品やサービスに関する欠陥・瑕疵等
・自社の知的財産の保護及び他社の知的財産の利用の確保
・退職給付に係る負債の算定における見積り
相互技術援助契約
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契約会社名 |
相手方の名称 |
国名 |
契約品目 |
契約内容 |
契約期間 |
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株式会社日立製作所 (当社) |
International Business Machines Corp. |
アメリカ |
インフォメーションハンドリングシステム |
特許実施権の交換 |
自 2008年1月1日 至 2023年1月1日 までに出願された 特許の終了日 |
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〃 |
HP Inc. Hewlett Packard Enterprise Company |
アメリカ |
全製品・サービス |
特許実施権の交換 |
自 2010年3月31日 至 2014年12月31日 までに出願された 特許の終了日 |
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〃 |
EMC Corporation |
アメリカ |
インフォメーションハンドリングシステム |
特許実施権の交換 |
自 2003年1月1日 至 2007年12月31日 までに出願された 特許の終了日 |
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日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (連結子会社) |
GE-Hitachi Nuclear Energy Americas LLC |
アメリカ |
原子炉システム |
特許実施権の交換 技術情報の交換 |
自 1991年10月30日 至 2023年6月30日 |
(1)研究の目的及び主要課題
当グループ(当社及び連結子会社)は、デジタルとグリーンを軸とした社会イノベーション事業に対して重点的に研究開発資源を配分して、DX及びグリーントランスフォーメーション(GX)による価値創成を強化し、事業の継続と将来の成長及びお客さまと社会の課題解決に努めるとともに、人々のQoLを高めることをめざしています。
事業活動のグローバル競争力強化に加え、将来の成長に向けた中長期的な取り組みとして、顧客課題・社会課題解決に向けた協創活動、世界No.1技術及び破壊的技術の創生に投資するとともに、成長エンジンであるLumada事業拡大やグローバル展開を推進するために、デジタル技術基盤の拡大と、海外の研究リソースの強化を図っています。関連するGlobalLogic、日立エナジーや日立Astemo㈱等の各研究開発部門とともに社会イノベーション事業のさらなる進化を加速します。
(2)研究開発体制
当グループの研究開発においては、当社及びグループ各社の研究開発部門が相互に緊密な連携をとりながら、研究開発効率の向上に努めています。さらに、国内外の大学やその他の研究機関との連携に加え、2019年4月にコーポレートベンチャリング室を新設し、2021年10月には第2号ファンドを設立するなど、スタートアップ企業との連携強化にも積極的に取り組んでいます。
当社は、社会イノベーション事業によるグローバルな成長の加速に向けて、北米、欧州、中国、アジア及びインドの研究開発拠点・人員の拡充及び現地主導型研究の拡大により、現地のニーズに迅速に対応できる研究開発の推進を図っています。また、2015年には、国内外の研究開発拠点を再編し、お客さまとともに課題を見出し、新たなソリューションを協創する「社会イノベーション協創センタ」、注力分野の技術基盤を応用・融合することにより革新的な製品やサービスを創出し、新たなソリューション開発を支援する「テクノロジーイノベーションセンタ」、オープンイノベーションを活用し、独創的なビジョンに基づく探索型基礎研究で新領域を開拓する「基礎研究センタ」とする体制としています。2019年には、お客さまやパートナーとのオープンな協創を加速するための研究開発拠点として「協創の森」を開設し、2020年4月には、データサイエンティストのトップクラスの人材を集結させてデジタルソリューションによるさらなる価値向上を図るため、「Lumada Data Science Lab.」を協創の森内に開設しました。
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協創の森(中央研究所)
(3)研究開発費
当連結会計年度における当グループの研究開発費は、売上収益の3.1%にあたる3,173億円であり、セグメントごとの研究開発費は、次のとおりです。
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研究開発費の推移
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(注)( )内の数値は、研究開発費の売上収益合計に占める割合です。 |
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(4)研究成果
当連結会計年度における研究開発活動の主要な成果は、次のとおりです。
①企業内の「ダークデータ」に着目した「データ抽出ソリューション」を提供開始(ITセグメント)
「ダークデータ」と呼ばれる、日々の企業活動で生成・蓄積されるものの有効活用できていない膨大なデータに光をあて、新たな価値を見出す「データ抽出ソリューション」を開発し、提供を開始しました。本ソリューションは、日立が参画する米国スタンフォード大学の企業参画プログラムで開発されたAIを中核としたダークデータ分析エンジンを活用し、請求書や診療明細書といった発行元によって様式や表記が異なる非定型ドキュメントの利活用において、取得したいデータの抽出作業を自動化・高度化するものです。日々蓄積する膨大なダークデータの中から、価値あるデータを導き出し、データ利活用による経営判断の迅速化やビジネスの変革に貢献します。
②「協創の森」で、日立の脱炭素関連技術を活用したエネルギーマネジメントシステム実証環境の運用を開始(エネルギーセグメント)
研究開発拠点「協創の森」に、日立の発電・蓄電・設備保守などの技術を結集させたエネルギーマネジメントシステムの実証環境を構築し、運用を開始しました。本エネルギーマネジメントシステムの効果を国分寺サイトで2020年度に検証した結果、2018年度との比較で、CO2排出量を20%削減しながら、エネルギーコストを30%削減できることを確認しました。今後、日立は本環境を活用し、日立とお客さまのゼロエミッション化を推進するとともに、環境分野での顧客協創を推進し、新たなエネルギーソリューションの創出をめざします。
③製造業・社会インフラ分野のDX推進に向け5G SAとARを活用した組み立て作業支援を実証(ITセグメント、インダストリーセグメント)
製造業や社会インフラ分野でのDX推進に向けたユースケース創出のため、SA(注1)方式の5G環境下で、AR(注2)技術を活用した組み立て作業支援のアプリケーションが安定稼働できるかを確認する実証実験を実施しました。本アプリケーションは、作業現場の映像データをAIでリアルタイムに分析・判断し、作業台上にプロジェクターから作業者がとるべき行動をプロジェクションマッピングで表示することで、的確な作業支援を行うものです。今回、NTTドコモが提供する5Gサービスを用いて実証を行った結果、4G LTEでは満たせなかったアプリケーションの安定稼働のための許容条件をクリアできることを確認しました(㈱NTTドコモとの共同実証)。
(注)1.SA:5G専用の基地局と5G専用のコアネットワークを用いる方式。
2.AR:プロジェクターなどの端末を通して実環境にデジタル情報を重ね合わせる技術。
④標準型エレベーター「アーバンエース HF」が「グッドデザイン賞」「iF DESIGN AWARD」及び「十大新製品賞」を受賞(モビリティセグメント)
標準型エレベーターの新モデル「アーバンエース HF」が、(公財)日本デザイン振興会が主催する「2021年度グッドデザイン賞」、iF International Forum Design GmbHが主催する「iF DESIGN AWARD 2022」及び㈱日刊工業新聞社が主催する第64回(2021年)「十大新製品賞 日本力(にっぽんぶらんど)賞」を受賞しました。「アーバンエース HF」は、「かご内クリーン運転」や「密集回避運転」、「非接触登録装置」などの最新の感染症リスク軽減ソリューション、ビルオーナー・管理者向けダッシュボード「BUILLINK」をはじめとするLumadaのソリューションの適用などによって、ニューノーマル時代のスタンダードとなる安全・安心・快適を提供し、新たなエレベーター利用体験を実現します(㈱日立ビルシステムとの共同受賞)。
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「アーバンエース HF」 |
⑤体内で放射線がん治療を行う「アルファ線内用療法」に必要な材料、アクチニウム225の高効率・高品質な製造技術を世界で初めて確立(ライフセグメント)
放射線がん治療法の一つであるアルファ線内用療法に必要な、アクチニウム225を、高効率・高品質に製造可能な技術を世界で初めて確立しました。アルファ線内用療法は、がん細胞を破壊するアルファ線を放出する物質と、がん細胞に選択的に集積する薬剤を組み合わせた治療薬を患者に投与し、体内からがん細胞を攻撃する新しい治療法です。体内に広く分散したがん細胞など、既存の方法では治療困難ながんにも効果があることが知られ、早期実用化が期待されています(国立大学法人東北大学及び国立大学法人京都大学との共同開発)。
⑥インホイール式EVの実現に向けて小型・軽量のダイレクト駆動システム「Direct Electrified Wheel」を開発(オートモティブシステムセグメント)
脱炭素社会の実現に向けて普及が進むEV向けに、ホイール内部にモーターとインバーター、ブレーキを一体で搭載可能な小型・軽量のダイレクト駆動システム「Direct Electrified Wheel」を開発しました。開発したモーターは、EVの走行に必要となる高い駆動力をホイールに直接伝えるとともに、モーターを軽量化することで、従来のインホイール式で課題だったホイール内の重量増加を大幅に抑制しました。また、小型化したモーターにインバーターとブレーキを一体化することで、サスペンションなどの既存構造を大きく変更せずにホイール内部への搭載を可能としました。本技術の実用化に向けた研究を進め、車内空間やバッテリー設置スペースの拡大が容易なインホイール式のEVの実現に貢献していきます(日立Astemo㈱との共同開発)。
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ダイレクト駆動システム「Direct Electrified Wheel」(赤色部分をホイール内部に搭載) |
「Direct Electrified Wheel」をホイール内部に 搭載したEV(モックアップ) |
⑦サイバー攻撃を受けた際に、機密性を保ちながら対策情報を他組織と迅速に共有可能な技術を開発(ITセグメント、全社(本社他))
サイバー攻撃を受けた際に、機密性を保ちながら、対策情報を他組織の専門家と迅速に共有可能な技術を開発しました。本技術では、攻撃を受けた組織は対策状況を記載したインシデントチケットを作成し、協調防衛に参加する組織ごとの機密管理の信頼度や、チケットを送付することで自組織が得られる利益の期待値に基づき、チケットの記載内容を加工します。攻撃への対処実績がある相手組織にチケットを共有して有用なフィードバックを得ることで、自組織の攻撃対処を円滑に進めることを可能とし、安心・安全なデジタル社会の実現に貢献していきます(慶應義塾大学及び中部電力㈱と共同開発)。