(1)経営の基本方針
当グループは、「優れた自主技術・製品の開発を通じて社会に貢献する」を企業理念として、顧客に対し、より高い価値をもたらす競争力のある製品・サービスを提供することで、一層の発展を遂げることをめざしています。当グループでは、グループ内の多様な経営資源を最大限に活用するとともに、事業の見直しや再編を図ることで、競争力を強化し、グローバル市場での成長を実現し、顧客、株主、従業員を含むステークホルダーの期待に応えることにより、株主価値の向上を図っていくことを基本方針としています。
(2)経営環境及び対処すべき課題
①当グループの経営環境及び対処すべき課題
現在の世界は、将来の予測が立てにくい時代です。気候変動や資源不足、高齢化による人口構造の変化、都市化の問題など様々な変化が生じており、さらに、ウクライナ情勢や世界的なインフレの加速などにより、世界各国の経済が深刻な悪影響を受けています。一方で、複雑化する社会課題を解決するためのイノベーションが世界中で起きています。
かかる経営環境において、当グループは、2022年4月に策定した「2024中期経営計画」の下、データとテクノロジーでサステナブルな社会を実現して人々の幸せを支えることをめざしています。「デジタル」「グリーン」「イノベーション」の3つを成長の柱とし、グループ一体となったOne Hitachiでのグローバルな成長により、めざす社会を実現すべく、以下の施策に注力しています。
i) Lumadaの価値協創サイクルの強化と展開
お客さまの経営課題を理解した上で、その解決方法を設計・実装し、運用・保守するとともに次の課題解決に取り組むという、Lumadaにおけるお客さまとの価値協創サイクルを強化しています。DX(デジタルトランスフォーメーション)・GX(グリーントランスフォーメーション)需要の高まりも追い風に、エネルギーや交通、産業など、当グループのあらゆる事業と連携して、Lumadaソリューションを展開していきます。
ii) 環境課題解決のイノベーターをめざして
当グループは、ステークホルダーとの協創による社会イノベーション事業を通じて、環境課題の解決と人々の生活の質の向上の両立に取り組んでいます。
特に脱炭素化に向けた取り組みを加速しており、環境長期目標「日立環境イノベーション2050」では、2030年度までに日立の事業所での、2050年度までにバリューチェーン全体でのカーボンニュートラルを目標としています。この実現に向けて、日立におけるCO2排出量削減は目標を上回るペースで進捗しており、エネルギー消費量の削減や再生可能エネルギーの活用等によって削減をさらに推進するとともに、環境に配慮した効率的な製品によるソリューションを提供してお客さまのCO2排出量削減を支援していきます。
iii) 成長に向けたイノベーションの創生
当グループは、グローバルな事業成長へ向けてイノベーション創生を推進しており、先端研究を含めた研究開発投資に加え、スタートアップ企業との協業のためのコーポレートベンチャリング投資も拡大を図っています。社会やお客さまの課題を探索し、その課題解決に向けたイノベーションを創生していくことで、次世代まで続く持続的な成長を実現していきます。
これらにより、資源価格高騰や世界的なインフレ継続など不安定な経営環境でも安定してキャッシュを創出できるよう、事業の成長を図るとともに、拠点統廃合等の合理化推進によるコスト構造改革にも取り組んでいきます。キャッシュ創出力を高める一方で、成長に必要な投資は、厳選して迅速に実行するとともに、株主還元も安定的に実施していきます。
②注力分野における経営環境及び対処すべき課題
注力分野であるデジタルシステム&サービス、グリーンエナジー&モビリティ及びコネクティブインダストリーズの3セクターにおける経営環境及び対処すべき課題は、以下のとおりです。
デジタルシステム&サービス
不確実な社会・経済情勢において複雑化する経営課題に対して、AI、IoT等のデジタル技術やサービスの活用が求められるとともに、深刻な社会課題を背景に環境問題やSDGsへの取り組みが加速しています。そのような中、デジタル技術で企業経営や社会の変革を図るDXはグローバルで市場の拡大が続いています。
デジタルシステム&サービスセクターでは、そのようなグローバルDX市場において、2021年7月に買収を完了したGlobalLogic社のデザインやデジタルエンジニアリング力を活用し、日立のOT×IT×プロダクトを組み合わせて価値を創造し、お客さまや社会の課題解決を加速するとともに、日立グループ他セクターのLumada事業成長を牽引していきます。具体的には、お客さまとの協創の深化による継続的な価値提供、高付加価値なソリューションの横展開、お客さまやパートナーとのエコシステム構築による新市場創生などにより、Lumadaのスケールを加速させます。
デジタルシステム&サービスセクターは、これらの取り組みを支えるデジタル人財の育成・拡充など経営基盤の強化にも取り組みながら、社会や国内外のお客さまの課題解決パートナーとして継続的に価値を提供し、Lumada事業のサステナブルな成長を実現します。
グリーンエナジー&モビリティ
気候変動や地政学リスクの高まりを背景に、エネルギー転換が急速に進展し、市場が拡大しています。具体的には、バスや鉄道などのモビリティの電動化や、電源構成の多様化・分散化によるマイクログリッドの拡大に加え、従来の社会インフラ事業のサービス化や脱炭素社会実現に向けたGXなどにより、新たな事業機会が世界各地で生まれています。
グリーンエナジー&モビリティセクターでは、グローバルトップレベルの製品群とインテグレーション力でサステナブルな社会インフラの実現に貢献し、地球環境に優しいグリーンなエネルギーとモビリティで世界中の人々の生活の質の向上に貢献していきます。具体的には、パワーグリッド、再生可能エネルギーシステム、原子力発電システム、鉄道システムなどにおいて、「OT×IT×プロダクト」の強みを生かした製品やサービス、ソリューションを提供していきます。エネルギー分野では、日立エナジー社の持つパワーグリッド技術とLumadaを活用したデジタル技術との融合を通じた新たなソリューションの提供やクリーンエネルギー事業の推進により、脱炭素社会の実現に貢献するサービス・ソリューションの提供を拡大していきます。鉄道システム分野では、交通ネットワークをデジタルでつなぎ、データを活用した鉄道運行サービス等の展開を加速させていきます。
これらの取り組みを通じ、グリーンエナジー&モビリティセクターは、2024中期経営計画の3つの成長の柱であるグリーン価値の創出の中核をなす事業として、脱炭素化やエネルギーの安定供給、安全・安心・快適な鉄道システムの提供など、ウェルビーイングの実現に貢献していきます。また、日立エナジー社や、買収を予定しているタレス社の鉄道信号関連事業がグローバルに有するインストールベースを活用し、高収益事業への転換を加速させていきます。
コネクティブインダストリーズ
地政学リスクの高まりや気候変動による自然災害の増加など社会環境の不確実性が急増していることに加え、デジタル技術の急速な進展に伴い、人々の生活様式や企業活動は大きく変容し、新たなDX・GXへのニーズがこれまで以上に高まっています。こうした中、組織や企業間、さらには分野を越えたトータルな「際」の課題解決が求められています。
コネクティブインダストリーズセクターでは、昇降機、家電、計測・分析装置、医療機器、産業機器などの競争力の高いプロダクトを集結させ、それらをデジタルでつなぎ、ソリューションとして提供し、サステナブルな価値を創出していきます。
具体的には、お客さまの事業構想・課題分析により目的や施策を具現化するためのフロント・エンジニアリング力を強化していくとともに、Lumadaを活用し、リアル空間とサイバー空間をデジタルでつなぐことで、経営から現場、サプライチェーン、異業種の間に存在する「際」の課題を解決し、全体最適化を実現するトータルシームレスソリューションを、産業分野からアーバン分野、ヘルスケア分野、さらにグリーン領域へ進化・拡大しています。また、コネクテッドプロダクトが創出するデータを活用したアフターサービスや、お客さまの新たな課題解決ニーズの深耕により、継続的・循環的に価値を提供するリカーリングビジネスを強化します。
さらに、グローバル成長に向けて、特に注力地域である北米では、2022年に、MES(製造実行システム)・SCADA(監視制御システム)などのOT領域に強みを持つFlexware Innovation, Inc.とプロダクト領域のマーキングシステムを手掛けるTelesis Technologies Inc.を買収しました。これらの事業に加え、JR AutomationによるロボティクスSI、Hitachi Global Air Power(Sullairより社名変更)による空気圧縮機、半導体製造・計測装置、粒子線治療システムなどとデジタルの融合を強化することで、北米でのトータルシームレスソリューションの展開を加速していきます。
コネクティブインダストリーズセクターでは、「つないでいく。データを、価値を、産業を、そして社会を。」をパーパスとして定め、お客さまとの協創を通じて「サステナブル バリュークリエーター」をめざしていきます。
(3)中期経営計画における経営指標
2024中期経営計画においては、以下の指標を経営上の業績目標としています。
なお、上場子会社の非連結化や今後予定している日立Astemo㈱の非連結化に伴い、コア・フリーキャッシュ・フロー(3年累計)を1.4兆円から1.2兆円に変更しました。
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2024年度目標 |
選定した理由 |
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売上収益年成長率(2021年度-2024年度 CAGR)(注)1、2 |
5-7% |
成長性を測る指標として選定 |
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Adjusted EBITA率(注)3 |
12% |
収益性を測る指標として選定 |
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EPS成長率(2021年度-2024年度 CAGR)(注)1、4、5 |
10-14% |
収益性及び株主価値を測る指標として選定 |
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コア・フリー・キャッシュ・フロー (3年間累計)(注)6 |
1.2兆円 |
キャッシュ創出力を測る指標として選定 |
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投下資本利益率(ROIC)(注)7 |
10% |
投資効率を測る指標として選定 |
(注)1.CAGR(Compound Average Growth Rate)は、年平均成長率です。
2.上場子会社を除いて算出しています。
3.Adjusted EBITAは、調整後営業利益に、企業結合により認識した無形資産等の償却費を足し戻した上で、持分法による投資損益を加算して算出した指標です。Adjusted EBITA率は、Adjusted EBITAを売上収益の額で除して算出した指標です。
4.EPS(Earnings Per Share)は、一株当たり当期利益です。
5.2021年度の当期利益については、一過性の影響を除いて算出しています。
6.コア・フリー・キャッシュ・フローは、フリー・キャッシュ・フローから、M&Aや資産売却他に係るキャッシュ・フローを除いた経常的なキャッシュ・フローです。
7.ROIC(Return on invested capital)は、「ROIC=(税引後の調整後営業利益+持分法損益)÷投下資本×100」により算出しています。なお、「税引後の調整後営業利益=調整後営業利益×(1-税金負担率)」、「投下資本=有利子負債+資本の部合計」です。
また、上記の経営目標の他、お客さまや社会への価値提供と人的資本の充実に向け、以下の項目を中期経営計画の重点項目として取り組んでいきます。
日立は、サステナビリティを事業戦略の中核に据えた「サステナブル経営」を実践しており、社会イノベーション事業を通じたサステナブルな社会の実現に向けて取り組んでいます。
日立のサステナビリティに関する考え方及び具体的な取り組みは以下のとおりです。
(1)ガバナンス及びリスク管理
日立は、2022年4月から、当社経営における重要事項について審議する経営会議の中に、「成長戦略会議」、「リスクマネジメント会議」及び「人財戦略会議」を設け、それぞれ以下の重要事項について審議しています。このうち、リスクマネジメント会議においては、執行役社長を議長、CRMO(Chief Risk Management Officer)を副議長として全社的リスクに係る重要事項の議論・決定を行っており、リスクを一元的・横断的に把握することで、成長戦略と連携した盤石な経営基盤の実現をめざしていきます。また、人財戦略会議は、組織・人財に関する決裁における執行役社長の諮問機関であり、日立グループの成長に向けた組織・文化の醸成及び人財の確保・育成のために必要な事項の議論をする場として開催されています。
サステナビリティに関する重要事項はこれらの会議体での議論を経て、経営会議で審議・決定され、必要に応じて取締役会に附議されます。
また、Chief Sustainability Officer及び各ビジネスユニット(BU)、主要グループ会社・地域統括会社のサステナビリティ責任者などをメンバーとするサステナビリティ全体に関する会議等を通じて、サステナビリティ経営の深化に努めています。
カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミー、人権デュー・ディリジェンス(HRDD)、ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DEI)、労働安全衛生、サプライチェーン、品質保証などの個別のサステナビリティテーマについては、各BU及び主要グループ会社等の責任者をメンバーとする会議体を設け、グループ横断での施策の検討や情報共有などを通じて日立グループ全体のサステナビリティを推進しています。
さらに、執行役の報酬においては、サステナビリティに関する定量又は定性的な目標に対する成果を評価基準として導入しています。
(2)重要課題に対する取組
2024中期経営計画においては、「データとテクノロジーでサステナブルな社会を実現して人々の幸せを支える」ことをめざす姿として新たに掲げました。
日立は、地球を守ることと、一人一人が快適で活躍できる社会が両立する未来を実現するための社会課題の解決をめざし、サステナビリティに関する取り組みを推進していきます。
サステナビリティ重要課題である「脱炭素・気候変動」及び「人的資本」に関する日立の取り組みは以下のとおりです。
①脱炭素・気候変動に関する取り組み(TCFDに基づく開示)
日立は、2018年6月、金融安定理事会(FSB)「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言に賛同を表明し、TCFDの提言に沿って気候変動関連の財務関連の重要情報をサステナビリティレポートにおいて開示しています。
本項目は、抜粋を掲載しています。
(イ)ガバナンス
気候変動に関するガバナンスは、前項のガバナンス及びリスク管理に準じて実施しています。
日立は、気候変動を含む環境課題への対応を重要な経営課題の一つと認識しています。
気候変動対策を含む「サステナビリティ戦略」についての重要事項は、経営会議にて審議・決定され、必要に応じて取締役会に附議されます。CO2 排出量削減目標を含む環境長期目標「日立環境イノベーション2050」は、策定及び改訂の際にも、取締役会への報告を経て策定、公表しています。
(ロ)戦略
日立は、2016年度に「環境ビジョン」を策定し、このビジョンのもと、IPCC 第5次評価報告書の「RCP2.6シナリオ(注)」「RCP8.5シナリオ(注)」などを踏まえて、世界全体で求められるCO2削減量を参考に、グローバル企業に求められる脱炭素社会実現への貢献を果たすため、環境長期目標「日立環境イノベーション2050」を策定しました。その後のIPCC「1.5℃特別報告書」を踏まえて気温上昇を1.5℃以内に抑えるため、日立の事業所(ファクトリー・オフィス)において2030年度までにカーボンニュートラル達成、バリューチェーンにおいて2050年度までにカーボンニュートラル達成という目標に改訂しました。グローバルでの脱炭素社会の実現に貢献するため、より高い目標を策定し、目標達成に向け推進しています。
(注)RCP2.6シナリオ:産業革命前に比べて21世紀末に世界平均気温の上昇幅が2℃未満に抑えられるシナリオ
RCP8.5シナリオ:産業革命前と比べて4℃前後上昇するシナリオ
気候変動関連のリスク(日立グループ)
気候変動に関するリスクは、「脱炭素経済への移行リスク(主に1.5℃シナリオに至るリスク)」及び、「気候変動の物理的影響に関連したリスク(4℃シナリオに至るリスク)」に分類されます。
(ⅰ)脱炭素経済への移行リスク(主に1.5℃シナリオに至るリスク)
脱炭素社会への移行リスクは、炭素税、燃料・エネルギー費への課税、排出権取引などの導入に伴う事業コスト負担増や、脱炭素社会に向けた製品・サービスの技術開発の遅れによる販売機会の逸失などが想定されます。
このリスクは、「脱炭素社会が実現した世界では、現状のままで存続できない事業」において存在し、化石燃焼が使えなくなるリスクに該当します。現在の日立の事業では、電気をエネルギー源とするものが多いため、脱炭素社会に移行することに起因する重大なリスクは、ほとんど見つかりませんでした。
また、脱炭素社会にむけた製品開発の遅れのリスクについては、機会と表裏一体であり、脱炭素社会に貢献する事業をすすめることで、リスク回避が可能です。
(ⅱ)気候変動の物理的影響に関連したリスク(主に4℃シナリオに至るリスク)
気候変動に関する物理的リスクに関しては、気候変動の影響と考えられる気象災害、例えば台風や洪水、渇水などの激化(急性リスク)や、海面上昇、長期的な熱波など(慢性リスク)による事業継続のリスクが考えられます。
こうしたリスクの回避としては、工場新設時には洪水被害を念頭に置いて立地条件や設備の配置などを考慮する対策を行っています。
気候変動関連の機会(日立グループ)
日立グループでは、気候変動に関連する多くの機会が考えられます。
環境長期目標や「2024中期経営計画」に掲げたCO2排出量の削減目標を達成するには、事業所の脱炭素化はもちろん、バリューチェーン全体の排出の多くを占める、販売された製品・サービスの使用に伴うCO2排出の削減が重要です。省エネルギー化等による、CO2削減に貢献する製品・サービスの開発・提供は、お客さまニーズへの対応であり、社会の脱炭素化への貢献になります。また、お客さまとの協創によるカーボンフリーソリューションやサービスの普及のような脱炭素化に貢献するビジネスの拡大にも機会があります。GX(グリーントランスフォーメーション)への取り組みは、日立の経営戦略として推し進めている「社会イノベーション事業」の大きな柱であり、短・中・長期にわたる大きな事業機会になります。
日立グループの気候変動関連のリスクと機会について
これらのリスクと機会の検討の結果から、日立では気候変動関連の重大で対応が困難なリスクは現段階では見つかりませんでした。
1.5℃及び4℃いずれのシナリオ下においても、市場の動向を注視し柔軟かつ戦略的に事業を展開することで、日立は、中・長期観点から、脱炭素社会への移行において高いレジリエンスを有していると考えています。
(ハ)リスク管理
日立は、気候変動関連リスクについては、BU及びグループ会社ごとに環境負荷などを把握し、評価・査定しています。評価結果は、当社サステナビリティ推進本部にて集約し、日立全体として特に重要と認識されたリスクと機会がある場合には、経営会議で審議・決定され、必要に応じて取締役会で審議されます。
(ニ)指標と目標
日立は、環境長期目標「日立環境イノベーション2050」において、「中期目標:日立の事業所(ファクトリー・オフィス)において2030年度までにカーボンニュートラル達成」、「長期目標:バリューチェーンにおいて2050年度までにカーボンニュートラル達成」を掲げています。
さらに、環境長期目標の実現に向けて、中期経営計画の期間(3年間)にあわせた指標と目標を設定した「環境行動計画」を策定し、進捗管理しています。
気候変動の緩和と適応に関する指標のうち、ファクトリー・オフィスにおけるCO2排出量総量削減率に関する目標と実績は以下のとおりです。
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指標 |
目標 |
2022年度 実績 |
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2030年度(中期) |
2024年度(短期) |
2022年度 |
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ファクトリー・オフィスにおけるCO2排出量総量削減率 (2010年度比) |
100%削減 (カーボンニュートラル) |
50%削減 |
32%削減 |
40%削減 |
(注)本目標は、2024環境行動計画の目標です。詳細はサステナビリティレポート2023で公開予定です。
日立グループのCO2排出量 (2022年度)
Scope1 459kt-CO2
Scope2 1,079kt-CO2
※ Scope1:日立グループ内での燃料使用による直接排出
Scope2:日立グループが購入した電気・熱の使用に伴う間接排出
※ Scope1、2ともに、日立グループのなかで環境負荷が大きいA区分事業所及び影響の大きい自動車部品系会社を対象としています。日立は、日立の定める「環境管理区分判定基準」に基づき、日立グループ全事業所をA・B・Cの3区分に分類して管理しています。また、当連結会計年度末時点(2023年3月末)において在籍している会社を集計対象としています。
②人的資本・多様性に関する取組
(イ)戦略
日立は、人的資本、すなわち人こそが価値の源泉であると考えており、世界中の従業員の力を結集することでお客さまと社会に価値を提供し、サステナブルな社会の実現に貢献することをめざしています。
多様な人財が国・地域・事業体を越えてOne Teamでプロアクティブに業務遂行をし、変化が絶えない世の中に速やかに適応できる人財・組織を求めており、その実現に向けて、以下の方針のもと人財の育成と社内環境の整備に取り組んでいます。
ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンの推進
日立は、事業のサステナブルな成長に向け、経営戦略としてDEI(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)を実践しています。
日立のDEI戦略では、バックグラウンド、年齢、性別、セクシャリティ、家族構成、障がい、人種、国籍、民族、宗教など、あらゆる多様性を尊重しており、特にグローバルに共通する下記の3つのグローバルDEIテーマに注力していきます。
日立のグローバルDEIテーマ:
1. ジェンダーバランス:女性リーダーの育成支援等、グループ全体で女性活躍を推進
2. 文化的多様性:グローバルな人財の文化的多様性を反映した組織づくり
3. 世代の多様性:年齢に関係なく、コンピテンシーに基づいて従業員を評価
グローバル人財マネジメント
社会イノベーション事業を推進するためには、お客さまや社会の課題を探索し、これまでになかった新しいソリューションをお客さまと協創していくことが重要です。2024中期経営計画に基づいて策定した「2024人財戦略」では、社会貢献を志向する人財が集まり、生き生きと活躍する組織となるために、グローバル市場における“Employer of choice(選ばれる会社)”となることをビジョンに掲げ、その実現に向け、「People」 「Mindset」「Organization」の3つの戦略の柱と「Foundation」を定め、以下施策を推進しています。
・デジタル人財の確保・育成
デジタル技術を活用した社会イノベーション事業を加速し、日立の成長のドライバーであるLumada事業の成長を実現するために、デジタルトランスフォーメーション(DX)をけん引する人財(デジタル人財)の確保と育成に力を入れています。デジタルエンジニアリングサービスのリーディングカンパニーであるGlobalLogic社などにおけるグローバルでの人財獲得に加え、日立独自のDX研修体系や実務経験を通じた育成プログラムの拡充などによる内部人財育成により、事業成長に必要なデジタル人財の強化を加速していきます。
・従業員エンゲージメントの向上
日立の持続的な成長には従業員のウェルビーイングが不可欠であるという考えのもと、人的資本経営の一環として、従業員エンゲージメントの向上をひとつのKPIとして定めています。グローバル従業員サーベイ「Hitachi Insights」を通じて従業員エンゲージメントを毎年モニタリングし、その向上に向けた人財マネジメント施策の企画・推進に取り組んでいます。具体的には、経営層及び各職場のマネージャーが、自組織のサーベイ結果をメンバーと共有して組織課題を把握し、対策となるアクションの立案・実行を通じたPDCAサイクルを継続することで従業員エンゲージメントの改善につなげています。グローバルにより適切なマネジメントを行っていくために、今後も従業員サーベイを活用していきます。
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・経営リーダー層の育成 |
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日立は、経営トップと指名委員会を中心に、変化・変革をけん引する経営リーダーの中長期的な育成(Global Leadership Development Program: GLD)に取り組んでいます。次期・次々期のCEO、事業部門長など経営リーダー候補の育成にあたっては、世界中の日立グループの人財から数百名の候補を選抜し、タフアサインメントを取り入れたOJT(On-the-job Training)及びOff-JT(社外トレーニング・コーチング)を実施しています。 さらに、経営リーダー候補のタレントプールである「GT+」、若手優秀層を選抜した「Future 50」プログラムによって、経営者ポジションを含むアサインメント、社外取締役と直接議論する機会の提供などによる集中的な教育を実施しています。 |
・人財統合プラットフォームによる適所適財の人財配置
日立は、グローバルに最適な人財の確保・配置・育成を行うため、グローバル共通の人財マネジメント統合プラットフォームの構築を進めてきました。本プラットフォームを通じて、従業員のスキルやキャリア志向などの最新の人財情報データをクラウドシステムで共有しています。グローバルでの人財検索や情報の収集、チームマネジメントへの活用、パフォーマンス管理や育成計画・キャリア開発など、さまざまなプロセスを一元管理でき、その運用範囲をグローバルに順次拡大しています。
・グローバルでの日立カルチャーの醸成
日立は、近年の複数の大型M&Aにより約10万人の仲間を新たに迎えました。この新たに加わった仲間と日立のMission・Values(創業の精神)を共有するとともに、それぞれの良さ・強みを融合していくことで成長・イノベーションを実現する、グローバル日立カルチャーの醸成に取り組んでいます。特に、経営層と従業員が直接対話し、双方向での理解を深めるための機会として、経営陣幹部(執行役社長、執行役副社長、BUや各事業部門の責任者、連結子会社社長)によるタウンホールミーティングを継続的に実施しており、2022年度においては、計277回実施しました。2024中期経営計画の達成に向けて、各事業部門が主体となって事業戦略を推進していきます。
・ジョブ型人財マネジメントへの転換
日立では職務(ジョブ)と必要なスキル・経験を明確化し、その職務を担える人財を、本人の意欲・能力に応じて登用する「ジョブ型人財マネジメント」への転換を日本においても加速させています。従業員一人一人の能力や意欲に応じた適所適財の人財配置を実践することで、個人と組織のパフォーマンスの最大化とエンゲージメント向上につなげ、イノベーションを生み出す組織と人財の実現をめざしています。具体的には、各従業員の適性やキャリア志向を踏まえた配置・育成を検討する「タレントレビュー」や「ジョブディスクリプション(職務記述書)」を導入しています。また、2022年度からは自律的なキャリア形成を支援する取り組みとして、新キャリア研修の展開や「学習体験プラットフォーム(LXP)」を導入する等、「制度・仕組みの整備」及び「意識・行動の変容」の両面で取り組みを進めています。
心身の健康と安全の確保
日立は、「安全と健康を守ることは全てに優先する」を基本理念とする「日立グループ安全衛生ポリシー」を世界の全グループ会社と共有し、コントラクターや調達パートナーを含む関係するすべての会社と連携しながら、グループ一丸となって事業活動に関わる全ての人にとって安全・ 安心・快適で健康な職場づくりに努めています。
日立は、事故のない安全な職場の構築をめざし、事業に適した労働安全衛生マネジメントシステムの構築・導入、定期的なリスクアセスメントや監査の実施、労働安全衛生に関する教育の展開等にグローバルで取り組んでいます。
(ロ)指標及び目標
人的資本・多様性に関する取り組みにおける、日立の主な指標及び目標と当年度の実績は以下のとおりです。
なお、「役員層における外国人比率」及び「従業員サーベイにおける従業員エンゲージメントの設問に対する肯定的回答率」については、当年度において前倒しで目標を達成することができました。今後もさらなる向上を図るべく、継続して取り組んでまいります。
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指標 |
目標 |
2022年度 実績 |
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① |
役員層における女性比率及び外国人比率 (グローバルDEI目標)(注)1 |
2024年度までにそれぞれ15% |
女性比率:11% 外国人比率:20% |
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② |
デジタル人財数 |
2024年度までに97,000人(注)2 |
83,000人 |
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③ |
従業員サーベイにおける従業員エンゲージメントの設問に対する肯定的回答率 |
2024年度までに68% |
69.5% |
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④ |
死亡災害件数 |
年間0件 |
5件 |
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⑤ |
TRIFR(総災害発生率)(注)3 |
2024年度までに2021年度比半減(注)4 |
0.26 |
(注)1.当社単体の目標及び実績
2.日立Astemoは除きます
3.TRIFR:Total Recordable Injury Frequency Rate(20万労働時間当たりの死傷者数)
4.2021年度実績:0.27
(1)リスクマネジメントについて
当グループでは、日々変化する経営環境を把握・分析し、社会的課題や当グループの競争優位性、経営資源などを踏まえ、当グループとして備えるべき様々な「リスク」とさらなる成長「機会」の両面からリスクマネジメントを実施し、リスクをコントロールしながら収益機会の創生に努めています。
かかる多様なリスクに関して、各担当部署がリスクと機会の適切な把握・対応に努め、経営幹部への報告・経営戦略への反映を行っています。
特に、2022年4月から、当グループ経営における全社的リスクに係る重要事項の議論・決定の場として執行役社長を議長、CRMO(Chief Risk Management Officer)を副議長とする「リスクマネジメント会議」を新設しました。リスクを一元的・横断的に把握することで、成長戦略と連携した盤石な経営基盤の実現をめざしていきます。
(2)リスク要因
当グループは、幅広い事業分野にわたり、世界各地において事業活動を行っています。また、事業を遂行するために高度で専門的な技術を利用しています。そのため、当グループの事業活動は、多岐にわたる要因の影響を受けています。その要因及び各リスク要因に対する対応策の主なものは、次のとおりです。
なお、これらは当有価証券報告書提出日現在において合理的であると判断している一定の前提に基づいています。また、これらの対応策は各リスク要因の影響を完全に排除するものではなく、また、影響を軽減する有効な手段とはならない可能性があります。
①経済環境に係るリスク
経済の動向
当グループの事業活動は、世界経済及び特定の国・地域の経済情勢や地政学的情勢の影響を受けます。各国・地域や日本の景気が減速・後退する場合は、個人消費や設備投資の低下等をもたらします。また、ウクライナ情勢に代表される国家間紛争・緊張の高まりにより、特定の地域での経済活動の制約や停止を余儀なくされることも考えられます。その結果、当グループが提供する製品・システム又はサービスの一部制限や需要の減少などにより、当グループの事業、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
かかるリスクへの対応として、当グループは、様々な事業分野・地域において、多様な特性を持つ社会イノベーション事業を組み合わせる経営をしています。また、リスク評価等を通じて地政学的情勢の変化への迅速な対応を図っています。
為替相場の変動
当グループは、取引先及び取引地域が世界各地にわたっているため、為替相場の変動リスクにさらされています。当グループは、現地通貨建てで製品・サービスの販売・提供及び原材料・部品の購入を行っていることから、為替相場の変動は、円建てでの売上の低下やコストの上昇を招き、円建てで報告される当グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。当グループが、売上の低下を埋め合わせるために現地通貨建ての価格を上げた場合やコストの上昇分を吸収するために円建ての価格を上げた場合、当グループの価格競争力が低下し、それに伴い、経営成績は悪影響を受ける可能性があります。また、当グループは、現地通貨で表示された資産及び負債を保有していることから、為替相場の変動は、円建てで報告される当グループの財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
2023年3月31日時点における2024年3月31日に終了する連結会計年度の為替感応度(見通しの為替レートから1円変動した場合の業績影響額)の見積りは、以下のとおりです。
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通貨 |
見通し |
為替感応度(億円) |
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売上収益 |
Adjusted EBITA |
||
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ドル |
130円/ドル |
135 |
15 |
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ユーロ |
140円/ユーロ |
70 |
5 |
かかるリスクへの対応として、当グループでは、先物為替予約契約や通貨スワップ契約等の為替変動リスクのヘッジや製品・サービスの地産地消戦略の推進等を実行しています。
資金調達環境
当グループの主な資金の源泉は、営業活動によるキャッシュ・フロー、銀行等の金融機関からの借入並びにコマーシャル・ペーパー及びその他の債券、株式の発行等による資本市場からの資金調達です。当グループは、事業活動のための費用、負債の元本及び利子並びに株式に対する配当を支払うために、流動資金を必要とします。また、当グループは、設備投資及び研究開発等のために長期的な資金調達を必要としています。当グループは、営業活動によるキャッシュ・フロー、銀行等の金融機関からの借入及び資本市場からの資金調達により、当グループの事業活動やその他の流動資金の需要を充足できると考えていますが、世界経済が悪化した場合、当グループの営業活動によるキャッシュ・フロー、業績及び財政状態に悪影響を及ぼし、これに伴い当社の債券格付けにも悪影響を及ぼす可能性があります。債券格付けが引き下げられた場合、当社が有利と考える条件による追加的な資金調達の実行力に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社は、資金調達を銀行等の金融機関からの借入に依存することにより金利上昇のリスクにさらされています。また、外部の資金源への依存を高めなければならなくなる可能性があります。負債への依存を高めることにより、当社の債券格付けは悪影響を受けることがあり、当社が有利と考える条件による追加的な資金調達の実行力にも影響を及ぼす可能性があります。かかる資金調達ができない場合、当グループの資金調達コストが上昇し、当グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。当グループでは、金利上昇のリスクを軽減するための施策として、主に金利スワップ契約を締結しています。
また、当グループの主要な取引金融機関が倒産した場合又は当該取引金融機関が当グループに対して融資条件の変更や融資の停止を決定した場合、当グループの資金調達に悪影響を及ぼす可能性があります。
株価等の価格の下落
当グループは、他社との事業上の関係等を維持又は促進するため、株式等の有価証券を保有しています。かかる有価証券は、価値の下落リスクにさらされています。株式の市場価格等の価値の下落に伴い、当社及び連結子会社は、保有する株式等の評価損を計上しなければならない可能性があります。さらに、当社及び連結子会社は、契約その他の義務により、株価の下落等にかかわらず、株式等を保有し続けなくてはならない可能性があり、このことにより多額の損失を被る可能性もあります。
当事業年度末において、当社が保有している投資株式の銘柄数及び貸借対照表計上額は、以下のとおりです。
|
|
銘柄数 (銘柄) |
貸借対照表計上額の合計額 (百万円) |
|
非上場株式 |
136 |
21,768 |
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非上場株式以外の株式 |
41 |
213,017 |
かかるリスクへの対応として、当社は、取引や事業上必要である場合を除き、投資株式を取得・保有しないことを基本方針とし、既に保有している株式についても、保有意義や合理性が認められない限り、売却を進めています(保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式の保有方針及び保有の合理性の検証について、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (5) 株式の保有状況」参照)。
②サプライチェーンに係るリスク
原材料・部品の調達
当グループの生産活動は、調達パートナーが時宜に適った方法により、合理的な価格で適切な品質及び量の原材料、部品及びサービスを当グループに供給する能力に依存しています。需要過剰の場合、調達パートナーは当グループの全ての要求を満たすための十分な供給能力を有しない可能性があります。原材料、部品及びサービスの不足は、急激な価格の高騰を引き起こす可能性があります。また、米ドルやユーロをはじめとする現地通貨建てで購入を行っている原材料及び部品については、為替相場の変動の影響を受けます。石油、銅、鉄鋼、合成樹脂、レアメタル、レアアース等の市況価格の上昇は当グループの製造コストの上昇要因であり、当グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。一方、原材料及び部品等の商品価格が下落した場合には、棚卸資産の評価損等の損失が発生する可能性があります。さらに、自然災害等により、調達パートナーの事業活動やサプライチェーンが被害を受けた場合、当グループの生産活動に悪影響を及ぼす可能性があります。また、調達パートナーにおいて児童労働や強制労働などの労働者の権利侵害事象等を含む法令違反等が発生した場合、発注元としての当グループの評判の低下や、当該調達パートナーからの安定した原材料・部品の調達に支障が生じ、当グループの事業、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
かかるリスクへの対応として、当グループは、複数の調達パートナーとの緊密な関係構築や製品・サービスの地産地消戦略の推進による各地域における需要変動への適切な対応、国内及び主要海外拠点における事業継続計画(BCP)の策定による事業中断リスクへの対応力強化、グループ全体としての調達機能の活用・強化等を実行している他、調達パートナーにおける法令違反等の発生を防ぐため、質問票を用いた自己点検や監査、理解促進の取組みを実施しています。
取引先の信用リスク
当グループは、国内外の様々な顧客及び調達パートナーと取引を行っており、売掛金、前渡金などの信用供与を行っています。取引相手の財政状態の悪化や経営破綻等が生じた場合、当グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに悪影響を及ぼす可能性があります。
かかるリスクへの対応として、当グループでは、定期的な信用調査や信用リスクに応じた取引限度額の設定など、信用リスクの管理のための施策を実施しています。
③海外事業における地政学等のリスク
海外における事業活動
当グループは、事業戦略の一環として海外市場における事業の拡大を図っており、これを通じて、売上の増加、コストの削減及び収益性の向上等の実現をめざしています。当グループの海外事業は、事業を行う海外の各国において、以下を含む様々な要因による悪影響を受ける可能性があります。
・投資、輸出、関税、公正な競争、贈賄禁止、消費者及び企業に関する税制、知的財産、外国貿易及び外国為替に関する規制、人権や雇用・労働に関する規制、環境及び資源・エネルギーに関する規制
・取引条件等の商慣習の相違
・労使関係、労働慣行の変化
・対日感情、地域住民感情の悪化、各種団体等による批判やキャンペーン
・国家間や国内における紛争の拡大と頻発、ウクライナ情勢の動向
・国家の安全保障や外交政策の変化
・各国の経済安全保障政策の強化
・その他の政治的及び社会的要因、地政学リスク、経済の動向並びに為替相場の変動
これらの要因により、当グループが、海外における成長戦略の目的を達成できる保証はなく、当グループの事業の成長見通し及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
かかるリスクへの対応として、当グループは、グローバルな政治・経済情勢などを定常的に把握して事業に及ぼす影響を分析し、海外リスク資産の移転を行うなど、グループ全体での対応を実行しています。
④環境に係るリスク
気候変動対策に関する規制強化等(脱炭素社会への移行リスク)
当グループは、炭素税、燃料・エネルギー消費への課税、排出権取引などの導入に伴う事業コストの負担増、製品・サービスの技術開発の遅れによる販売機会の逸失、投資家や社会に当グループの気候変動問題への取り組み姿勢が評価されない場合に、当グループの事業活動、経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
かかるリスクへの対応として、環境長期目標「日立環境イノベーション2050」を掲げ、脱炭素社会の実現に向けた様々な取り組みを進めており、今後も目標達成に向けた取り組みをさらに加速していきます。事業所においては2030年度カーボンニュートラルをめざしており、日立インターナルカーボンプライシング導入等による省エネ機器・再生可能エネルギーによる電力の導入の推進、生産・輸送のさらなる効率化、非化石エネルギー由来の電力利用の促進などにより、炭素税等の事業コスト負担増加などの回避・軽減や評価リスクの低減を図っています。バリューチェーンにおいては2050年度のカーボンニュートラルをめざし、CO2排出量削減につながる革新的製品・サービスの開発・拡販、エネルギー削減につながる省エネルギー製品の開発などをめざしています。
⑤人的資本に係るリスク
人財確保
当グループの競争力を維持するためには、事業遂行に必要な優秀な人財を採用し、確保し続ける必要があります。特に、当グループは、現在、グローバルに活躍できる人財や顧客に近いところでニーズをくみ取り、最適なソリューション・サービスを提供することができる人財、デジタルトランスフォーメーションを牽引するデジタル人財等を求めています。しかしながら、優秀な人財は限られており、かかる人財の採用及び確保の競争は激化しています。当グループがこのような優秀な人財を新たに採用し、又は雇用し続けることができる保証はありません。
かかるリスクへの対応として、当グループは、国内外で必要な人財をタイムリーに確保するため、ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンの推進、多様な人財が働きやすい職場づくりの推進とエンゲージメントの向上、グローバル共通の人事制度、人財プラットフォームの活用、社内教育プログラムの実践による優秀な人財の確保・育成等を図っています。
⑥テクノロジーに係るリスク
情報システムへの依存
当グループの事業活動において、情報システムの利用とその重要性は増大しています。コンピュータウイルスその他の要因によってかかる情報システムの機能に支障が生じた場合、当グループの事業活動、経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。また、リモートワークの拡大は、情報漏洩などの新たなセキュリティリスクを生じさせる恐れがあります。
かかるリスクへの対応として、当グループは、継続的にサイバーセキュリティ対策等を推進しており、また、リモートワークに適用される技術・製品・利用手順などを厳格に定めて運用していますが、従来にないサイバー攻撃を受けた場合や当社管理外のシステムに脆弱性があった場合には有効な手段とはならない可能性があります。
急速な技術革新
当グループの事業分野においては、新しい技術が急速に発展しています。先端技術の開発に加えて、先端技術を継続的に、迅速かつ優れた費用効率で製品・システム・サービスに適用し、これらの製品等のマーケティングを効果的に行うことは、競争力を維持するために不可欠です。例えば、現在、デジタル化・ロボット等による自動化、電動化、脱炭素や資源循環等の環境への技術革新への対応等が重要となっています。このような変化の潮流を捉え、お客様に価値を提供し続けるために、自社内の研究開発及びコーポレートベンチャーファンドを通じたスタートアップへの投資に対して多くの経営資源を投入しています。これらの先端技術の開発が予定どおり進展しなかった場合、当グループの事業、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
かかるリスクへの対応として、当グループは、産官学によるオープンイノベーションやデジタル人財の確保・育成、Lumadaによる協創プロセスを通じた顧客ニーズの把握のほか、これらを通じたイノベーションエコシステムの形成を図っています。
⑦パンデミック・自然災害に係るリスク
COVID‐19
COVID-19の流行からの正常化の進展が見込まれ、共存を前提とした新たなフェーズに移行しておりますが、今後の状況によってはサプライチェーンの混乱による原材料価格の高騰や半導体不足、供給制約によるインフレなどが当グループの事業の財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
かかるリスクへの対応として、当グループは、Lumadaを活用したサービス型のデジタル事業の強化等による安定的な収益の拡大、安全確保を前提とした生産活動の継続、デジタル環境の強化によるリモートワーク等を活用した多様な働き方の拡充、キャッシュ・マネジメントの強化やサプライチェーンの強靭化、事業構造改革によるコスト低減等を図っています。
大規模災害及び気候変動による物理的影響等
当グループは、日本国内において、研究開発拠点、製造拠点及び当社の本社部門を含む多くの主要施設を有しています。過去において、日本は、地震、津波、台風等多くの自然災害に見舞われており、今後も、大規模な自然災害により当グループの生産から販売に至る一連の事業活動が大きな影響を受ける可能性があります。また、海外においても、アジア、米国及び欧州等に拠点を有しており、各地の自然災害によって、当グループの事業拠点のほか、サプライチェーンや顧客の事業活動にも被害が生じる可能性があります。さらに、気候変動に起因して、渇水や海面上昇、長期的な熱波や洪水等の大規模な自然災害が、今後より一層深刻化する可能性があります。かかる大規模な自然災害により当グループの施設が直接損傷を受けたり破壊された場合、当グループの事業活動が中断したり、新たな生産や在庫品の出荷が遅延する可能性があるほか、多額の修理費、交換費用、その他の費用が生じる可能性があり、これらの要因により多額の損失が発生する可能性があります。大規模な自然災害により当グループの施設が直接の影響を受けない場合であっても、流通網又は供給網が混乱する可能性があります。また、感染症の流行や、テロ、犯罪、騒乱及び紛争等の各国・地域の不安定な政治的及び社会的状況により、当グループの事業活動が混乱する可能性があり、当グループの従業員が就労不能となったり、当グループの製品に対する消費者需要の低下や販売網及び供給網に混乱が生じたりする可能性があります。さらに、全ての潜在的損失に対して保険が付保されているわけではなく、保険の対象となる損失であってもその全てが対象とはならない可能性があり、また、保険金の支払いについて異議が申し立てられること等により遅延が生じる可能性があります。自然災害その他の事象により当グループの事業遂行に直接的又は間接的な混乱が生じた場合、当グループの事業活動、経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
かかるリスクへの対応として、当グループは、BCPの策定による事業中断リスクへの対応力強化等を図っており、また、工場新設時における洪水被害を想定した建設・工場内設備の配置等を行っています。
⑧その他会社経営全般に影響を及ぼすリスク
長期請負契約等に係る見積り、コストの変動及び契約の解除
当グループは、インフラシステムの建設に係る請負契約をはじめ多数の長期契約を締結しており、かかる長期請負契約等に基づく収益を認識するために、当該契約の成果が信頼性をもって見積ることができる場合、工事契約の進捗に応じて収益及び費用を認識しています。収益については、主に、見積原価総額に対する実際発生原価の割合で測定される進捗度に基づいて認識しています。また、当該契約の成果が信頼性をもって見積ることができない場合には、発生した工事契約原価のうち、回収される可能性が高い範囲でのみ収益を認識し、工事契約原価は発生した期間に費用として認識しています。長期請負契約等に基づく収益認識において、見積原価総額、見積収益総額、契約に係るリスクやその他の要因について重要な仮定を行う必要がありますが、かかる見積りは変動する可能性があります。当グループは、これらの見積りを継続的に見直し、必要と考える場合には調整を行っています。当グループは、価格が確定している契約の予測損失は、その損失が見積られた時点で費用計上していますが、かかる見積りは変動する可能性があります。また、コストの変動は、当グループのコントロールの及ばない様々な理由によって発生する可能性があります。さらに、当グループ又はその取引相手が契約を解除する可能性もあります。このような場合、当グループは、当該契約に関する当初の見積りを見直す必要が生じ、かかる見直しは、当グループの事業、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
かかるリスクへの対応として、当グループは、契約締結前からリスクの把握・管理を行い、契約締結後も継続的に事業部門と財務部門間で管理・共有し、適時に正確な見積りができるよう努めています。
競争の激化
当グループの事業分野においては、大規模な国際的企業からスタートアップを含む専業企業に至るまで、多様な競合相手が存在しています。先端的な製品・システムやサービス等においても汎用品化や低コストの地域における製造・開発・サービス提供やクラウド化・自動化が進んでおり、価格競争を激化させています。かかる状況下で競争力を維持するためには、当グループは、その製品等が価格競争力を有するものでなければならないと考えています。かかる製品等の汎用品化は、当グループの価格決定力に影響を及ぼします。当グループが競合相手の価格と対等な価格を設定できない場合、当グループの競争力及び収益性が低下する可能性があります。一方で、競合相手の価格と対等な価格を設定することにより、その製品等の販売が損失をもたらす可能性があります。また、当グループの製品等は、技術、品質及びブランド価値の面においても競争力を有するものでなければなりません。当グループは、かかる製品等を適時に市場に投入する必要がありますが、当グループが提供する製品等が競争力を有する保証はなく、かかる製品等が競争力を有していない場合、当グループの事業、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
かかるリスクへの対応として、当グループは、研究開発によるイノベーションの強化やLumada事業の拡大、顧客との協創、製品等の高付加価値化を図っています。
需要の急激な減少
当グループが他社と競合する市場における急激な需要の減少と供給過剰は、販売価格の下落、ひいては売上の減少及び収益性の低下を招く可能性があります。加えて、当グループは、需要と供給のバランスを取るため、過剰在庫や陳腐化した設備の処分又は生産調整を強いられる場合があり、これにより損失が発生する可能性があります。例えば、情報機器、昇降機や半導体、自動車機器等の市場における需要と供給のバランスが崩れ、市況が低迷した場合、当グループの事業、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
かかるリスクへの対応として、当グループは、製品等の競争力の強化に加え、需要予測に基づく製品等の供給・在庫の管理等を図っています。
コスト構造改革への取組み
当グループは、事業全体のバリューチェーンにおける各活動について、グループ横断でコスト構造を抜本的に改革する「Hitachi Smart Transformation Project」を実施しています。当グループは、かかる施策により、経営基盤強化による収益性の安定化とキャッシュ・フローの増強をめざしていますが、当グループが現在期待している効果を得られない可能性があります。また、かかる施策によって、当グループが収益性の維持又は向上を実現できる保証はありません。
社会イノベーション事業強化に係る戦略
当グループは、事業戦略として、主に社会イノベーション事業の強化によって、成長性が高く、安定的な収益を得られる事業構造を確立することをめざしています。当グループは、社会イノベーション事業を強化するため、設備投資や研究開発等の経営資源を重点的に配分することを計画しているほか、企業買収・新規プロジェクトへの投資も行っています。また、市場の変化に応じて社会イノベーション事業を効果的に展開するため、適切な事業体制の構築を図っています。かかる戦略を実行するため、当グループは、多額の資金を支出しており、今後も継続する予定です。かかる戦略のための当グループの取組みは、成功しない、又は当グループが現在期待している効果を得られない可能性があります。また、かかる取組みによって、当グループが収益性の維持又は向上を実現できる保証はありません。
かかるリスクへの対応として、当グループは、各ビジネスユニット(BU)においてフェーズゲート管理を行っています。加えて、市場動向、他社動向、技術動向及び潜在リスクなど様々な視点からの分析・議論についても、投融資戦略委員会、経営会議、取締役会及び監査委員会において実施しています。
企業買収、合弁事業及び戦略的提携
当グループは、各事業分野において、重要な新技術や新製品の設計・開発、製品・システムやサービスの補完・拡充、事業規模拡大による市場競争力の強化及び新たな地域や事業への進出のための拠点や顧客基盤の獲得等のため、他企業の買収、事業の合弁や外部パートナーとの戦略的提携に一定程度依存しています(当グループの経営成績及び財政状態に重大な悪影響を及ぼす可能性がある案件について、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 注5.事業再編等」参照)。このような施策は、事業遂行、技術、製品及び人事上の統合又は投資の回収が容易でないことから、本質的にリスクを伴っています。統合は、時間と費用がかかる複雑な問題を含んでおり、適切な計画の下で実行されない場合、当グループの事業に悪影響を及ぼす可能性もあります。また、事業提携は、当グループがコントロールできない提携先の決定や能力又は市場の動向によって影響を受ける可能性があります。これらの施策に関連して、統合に関する費用や買収事業の再構築に関する費用など、買収、運営その他に係る多額の費用が当グループに発生する可能性があります。これらの費用のため、大規模な資金調達を行う場合、財政状態の悪化や資金調達能力の低下が発生する可能性があります。また、投資先事業の収益性が低下し、投資額の回収が見込めない場合、のれんの減損など、多額の損失が発生する可能性があります。当連結会計年度末時点で、デジタルシステム&サービスセグメントにおいて1,269,171百万円、グリーンエナジー&モビリティセグメントにおいて589,011百万円、コネクティブインダストリーズセグメントにおいて220,688百万円ののれんを計上しています(セグメント別ののれんの金額について、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 注4.セグメント情報」参照)。これらの施策が当グループの事業及び財政状態に有益なものとなる保証はなく、これらの施策が有益であるとしても、当グループが買収した事業の統合に成功し、又は当該施策の当初の目的の全部又は一部を実現できない可能性があります。
かかるリスクへの対応として、当グループは、各ビジネスユニット(BU)におけるフェーズゲート管理に加え、市場動向、業界動向、戦略、買収価格、PMI(ポスト・マージャー・インテグレーション)プロセス及び潜在リスクなど様々な視点からの分析・議論を、投融資戦略委員会、経営会議、取締役会及び監査委員会において実施しています。
事業再構築
当グループは、以下の事業ポートフォリオ再構築の取組み等により、成長性が高く、安定的な収益の得られる事業構造の確立を図っています。
・不採算事業からの撤退
・当社の子会社及び関連会社の売却
・製造拠点及び販売網の再編
・資産の売却
当グループによる事業再構築の取組みは、各国政府の規制、雇用問題又は当グループが売却を検討している事業に対するM&A市場における需要不足等により、時宜に適った方法によって実行されないか、又は全く実行されない可能性があります。事業再構築の取組みは、顧客又は従業員からの評価の低下等、予期せぬ結果をもたらす可能性もあり、また、過去に事業再構築に関連して有形固定資産や無形資産の減損、在庫の評価減、有形固定資産の処分及び有価証券の売却に関連する損失などが生じましたが、このような多額の費用が将来も発生する可能性があります。現在及び将来における事業再構築の取組みは、成功しない、又は当グループが現在期待している効果を得られず、当グループの事業、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
かかるリスクへの対応として、当グループは、市場動向、業界動向、戦略、売却価格、プロセス及び潜在リスクなど様々な視点からの分析・議論を、投融資戦略委員会、経営会議、取締役会及び監査委員会において実施しています。
持分法適用会社の業績の悪化
当社及び連結子会社は、多数の持分法適用会社を有しています。持分法適用会社の損失は、当社及び連結子会社の持分比率に応じて、連結財務諸表に計上されます。また、当社及び連結子会社は、持分法適用会社の回収可能価額が取得原価又は帳簿価額を下回る場合、当該持分法適用会社の株式について減損損失を計上しなければならない可能性もあります。
当連結会計年度末において、持分法で会計処理されている投資は、以下のとおりです。
|
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(単位:百万円) |
|
セグメント |
2023年3月31日 |
|
デジタルシステム&サービス |
51,997 |
|
グリーンエナジー&モビリティ |
88,003 |
|
コネクティブインダストリーズ |
162,248 |
|
オートモティブシステム |
11,406 |
|
日立建機 |
- |
|
日立金属 |
- |
|
その他 |
4,017 |
|
小計 |
317,671 |
|
全社及び消去 |
160,949 |
|
合計 |
478,620 |
かかるリスクへの対応として、当グループは、Adjusted EBITA (Adjusted Earnings before interest, taxes and amortization)(注)及び投下資本利益率(ROIC)を用いた投資収益管理を推進し、収益性・成長性の高い分野へ投資を集中させるとともに、投資した持分法適用会社については投資実行後も事業計画の達成状況や財務状況を把握し、低収益事業や将来の競争力に懸念のある投資先については売却を行うなどの施策を行っています。
(注)Adjusted EBITAは、調整後営業利益に、企業結合により認識した無形資産等の償却費を足し戻した上で、持分法による投資損益を加算して算出した指標です。
訴訟その他の法的手続
当グループは、事業を遂行する上で、訴訟や規制当局による調査及び処分等に関するリスクを有しています。訴訟その他の法的手続により、当グループに対して巨額又は算定困難な金銭支払いの請求又は命令がなされ、また、事業の遂行に対する制限が加えられる可能性があり、これらの内容や規模は長期間にわたって予測し得ない可能性があります。過去、当グループは、一部の製品において、競争法違反の可能性に関する日本、欧州及び北米等の規制当局による調査の対象となり、また、顧客等から損害賠償等の請求を受けています(当グループの経営成績及び財政状態に重大な悪影響を及ぼす可能性がある案件について、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 注29.コミットメント及び偶発事象」参照)。これらの調査や紛争の結果、複数の法域において多額の課徴金や損害賠償金等の支払いが課される可能性があります。かかる重大な法的責任又は規制当局による処分は、当グループの事業、経営成績、財政状態、キャッシュ・フロー、信用及び評判に悪影響を及ぼす可能性があります。また、当グループに対する法的責任が認められず、規制当局による処分や損害賠償金等の支払いが課されなかった場合であっても、当グループの信用及び評判に悪影響を及ぼす可能性があります。
さらに、当グループの事業活動は、当グループが事業を行う国々で様々な政府による規制の対象となります。かかる政府による規制は、投資、輸出、関税、公正な競争、贈賄禁止、消費者及び企業に関する税制、知的財産、外国貿易及び外国為替に関する規制、人権や雇用・労働に関する規制、環境及び資源・エネルギーに関する規制を含みます。これらの規制は、当グループの事業活動を制限し又はコストを増加させ、また、新たな規制又は規制の変更は、当グループの事業活動をさらに制限し又はコストを増加させる可能性もあります。さらに、規制違反に係る罰金又は課徴金など、規制の執行が、当グループの経営成績、財政状態、キャッシュ・フロー、信用及び評判に悪影響を及ぼす可能性があります。また、個人データ保護規制等への対応についても、事業に悪影響を及ぼす可能性があります。
かかるリスクへの対応として、当グループは、規制の適用を受ける業務の特定、リスク評価、リスクに応じた措置の実行及び従業員に対する教育等を実施しています。
製品の品質と責任
当グループの製品・サービスには、高度で複雑な技術を利用したものが増えています。また、部品等を外部の調達パートナーから調達することにより、品質確保へのコントロールが低下します。当グループの製品・サービスに欠陥等が生じた場合又は品質に関する不適切行為があった場合、当グループの製品・サービスの質に対する信頼が悪影響を受け、当該欠陥等から生じた損害について当グループが責任を負う可能性があるとともに、当グループの製品の販売能力に悪影響を及ぼす可能性があり、当グループの経営成績、財政状態及び将来の業績見通しに悪影響を及ぼす可能性があります。
かかるリスクへの対応として、当グループは、事故未然防止活動、技術法令の遵守活動、リスクアセスメントの徹底、品質・信頼性や製品事故発生時の対応に関する教育等を行っています。さらに、過去の当社子会社における品質に関する不適切行為を受け、当グループでは、事業部門内の品質保証部門を設計部門、製造部門から独立させ、お客さまの安全と安心を第一に行動できる体制としてきましたが、加えて、事業部門からも品質保証部門を独立させ、より独立性を強化しています。また、事業部門を担当する品質保証部門と本社の品質保証統括本部とのレポートラインを強化し、品質保証部門間で密な情報共有を図る仕組みを構築しています。
機密情報の管理
当グループは、顧客から入手した個人情報並びに当グループ及び顧客の技術、研究開発、製造、販売及び営業活動等に関する機密情報を様々な形態で保持及び管理しています。かかる情報が権限なく開示された場合、当グループが損害賠償を請求され又は訴訟を提起される可能性があり、また、当グループの事業、財政状態、経営成績、信用及び評判に悪影響を及ぼす可能性があります。
かかるリスクへの対応として、当グループは、機密情報管理に関する規則・運用を定め、暗号化や認証基盤の構築によるID管理とアクセス制御等を行うとともに、調達パートナーに対しても情報セキュリティ状況の確認・審査等を行っています。
知的財産
当グループの事業は、製品、製品のデザイン、製造過程及び製品・ソフトウェアを組み合わせてサービスの提供を行うシステム等に関する特許権、意匠権、商標権及びその他の知的財産権を日本及び各国において取得できるか否かに依存する側面があります。当グループがかかる知的財産権を保有しているとしても、競争上優位に立てるという保証はありません。様々な当事者が当グループの特許権、意匠権、商標権及びその他の知的財産権について異議を申し立て、無効とし、又はその使用を避ける可能性があります。また、将来取得する特許権に関する特許請求の範囲が当グループの技術を保護するために十分に広範なものである保証はありません。当グループが事業を行っている国において、特許権、意匠権、著作権及び企業秘密に対する有効な保護手段が整備されていないか、又は不十分である可能性があり、当グループの企業秘密が従業員、契約先等によって開示又は不正流用される可能性があります。
かかるリスクへの対応として、当グループは、出願前に公知例調査を行うことで、権利の成立可能性の向上及び事業に即した権利の取得を図っています。また、知的財産の保護手段が整備されていない、又は、不十分な国においては、従業員や契約先との契約等により、不正利用の抑制を図っています。
当グループの多くの製品には、第三者からライセンスを受けたソフトウェア又はその他の知的財産が含まれています。当グループは、競合他社の保護された技術を使用することができない、又は不利な条件の下でのみ使用しうることとなる可能性があります。かかる知的財産に関するライセンスを取得したとしても経済的理由等からこれを維持できる保証はなく、また、かかる知的財産が当グループの期待する商業上の優位性をもたらす保証もありません。
かかるリスクへの対応として、当グループは、当該第三者と契約・交渉により良好な関係を維持し、知的財産の実施権の確保を図っています。
当グループは、特許権、意匠権及びその他の知的財産に関して、提訴され、又は権利侵害を主張する旨の通知を受け取ることがあります。これらの請求に正当性があるか否かにかかわらず、応訴するためには多額の費用等が必要となる可能性があり、また、経営陣が当グループの事業運営に専念できない可能性や当グループの評判を損ねる可能性があります。さらに、権利侵害の主張が成功し、侵害の対象となった技術のライセンスを当グループが取得することができない場合、又は他の権利侵害を行っていない代替技術を使用することができない場合、当グループの事業は悪影響を受ける可能性があります。
かかるリスクへの対応として、当グループは、新たな製品の販売やサービスの提供開始前に、当該製品やサービスについて他社特許クリアランスを実施するとともに、必要な場合には製品やサービスの設計変更を行うこと等で、他社との係争の回避を図っています。
退職給付に係る負債
当グループは、数理計算によって算出される多額の退職給付費用を負担しています。この評価には、死亡率、脱退率、退職率、給与の変更及び割引率等の退職給付費用を見積る上で利用される様々な数理計算上の仮定が含まれています。当グループは、人員の状況、市況及び将来の金利の動向等の多くの要素を考慮に入れて、数理計算上の仮定を見積る必要があります。数理計算上の仮定の見積りは、基礎となる要素に基づき、合理的なものであると考えていますが、実際の結果と合致する保証はありません。数理計算上の仮定が実際の結果と異なった場合、その結果として実際の退職給付費用が見積費用から乖離して、当グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。割引率の低下は、数理上の退職給付に係る負債の増加をもたらす可能性があります。また、当グループは、割引率等の数理計算上の仮定を変更する可能性があります。数理計算上の仮定の変更も、当グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
かかるリスクへの対応として、2019年4月1日から日立企業年金基金に加入する当グループの従業員を対象として、従来の確定拠出型企業年金制度からリスク分担型企業年金制度への移行を進めてきました。2022年4月1日に連結子会社43社が新たにリスク分担型企業年金制度を導入し、ほぼ全ての日立企業年金基金加入会社の制度移行が完了しました。リスク分担型企業年金への移行を通じ、当社及び日立企業年金基金に加入する連結子会社の掛金負担を固定化することにより、資産運用リスク等を低減し、また退職給付に係る負債の認識を中止することにより財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼすリスクを低減しています。
株式の追加発行に伴う希薄化
当社は、将来、株式の払込金額が時価を大幅に下回らない限り、株主総会決議によらずに、発行可能株式総数のうち未発行の範囲において、株式を追加的に発行する可能性があります。将来における株式の発行は、その時点の時価を下回る価格で行われ、かつ、株式の希薄化を生じさせる可能性があります。
(1)経営計画の進捗
①経営上の目標として掲げた指標の状況
「2024中期経営計画」において、経営上の目標として用いた主な指標の当連結会計年度における状況は次のとおりです。
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当連結会計年度(2022年度) |
2024年度目標 |
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売上収益(注)1 |
76,382億円 |
(2021~2024年度 CAGR) 5%-7% |
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Adjusted EBITA率(注)1 |
9.5% |
12% |
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投下資本利益率(ROIC)(注)2 |
7.6% |
10% |
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EPS(注)2 |
684円 |
(2021~2024年度 CAGR) 10%-14% |
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コア・フリー・キャッシュ・フロー(注)2 |
(2022年度)4,164億円 |
(3年累計) 1.2兆円 |
(注)1.連結合計からオートモティブシステム、日立建機及び日立金属セグメントの合計を差し引いて算出しています。
2.連結合計で算出しています。
②成長に向けた事業強化
当期は、「デジタル」「グリーン」「イノベーション」の3つを柱に、グローバルな成長をめざす「2024中期経営計画」の初年度として、主に以下の取組みを行い、成長モードへのシフトを推進しています。
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・DX(デジタルトランスフォーメーション)・GX(グリーントランスフォーメーション)需要の高まりに応えるデジタル事業のグローバルな成長 |
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DX需要がグローバルに高まっているデジタル事業の加速に向け、北米に日立デジタル社を発足しました。同社を中心に、Lumadaをはじめとする日立グループ横断でのデジタル戦略を推進しており、GX需要の高まりも受けて、日立エナジー社や日立レール社などで受注を拡大しています。 また、成長を続けるGlobalLogic社は、日本にも拠点を設けて、その開発手法を日立の国内プロジェクトにも適用するとともに、ルーマニア及びウルグアイのデジタルエンジニアリング会社を買収し、欧州やラテンアメリカにおける新たな拠点や顧客、人財の獲得を図ることで、さらなる成長を見据えています。
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・成長を支えるグローバルリスクマネジメント
不透明な経営環境が続く中、事業の成長とともに増大するリスクへの対応として、グローバルなリスク情報を一元的に把握するとともに、リスクに先行して対応する体制を構築しました。物価高騰や地政学リスク、大規模災害リスクなど、日立グループに影響を及ぼすリスクを把握し、優先リスクを迅速に見極めた上で、日々変化する事業環境に先行した対応を図っています。
・オートモティブシステム事業の再編
大変革期を迎えている自動車・二輪車業界において、日立Astemo㈱の持続的成長と企業価値向上を実現するため、同社株式の一部譲渡などを決定しました。この取引の実行により、同社は当社の持分法適用会社となります。日立は、新たな共同パートナーも加えて成長する同社との電動化・自動運転分野を中心とした連携を続け、ともに成長していきます。
(2)経営成績の状況の分析
①業績の状況
売上収益は、前年度に比べて6%増加し、10兆8,811億円となりました。日立建機㈱株式の一部売却や日立金属㈱(現㈱プロテリアル)株式の売却に伴う減収要因があったものの、為替影響に加え、パワーグリッド事業や鉄道システム事業の堅調な推移、自動車メーカーの生産量回復を受けた日立Astemo㈱の増収、GlobalLogic社の増収等により、増収となりました。
売上原価は、前年度に比べて6%増加し、8兆1,920億円となり、売上収益に対する比率は、前年度と同水準の75%となりました。売上総利益は、前年度に比べて5%増加し、2兆6,890億円となりました。
販売費及び一般管理費は、前年度に比べて7%増加し、1兆9,409億円となり、売上収益に対する比率は、前年度と同水準の18%となりました。
調整後営業利益(売上収益から、売上原価並びに販売費及び一般管理費の額を減算して算出した指標)は、売上収益の増加等により、前年度に比べて99億円増加し、7,481億円となりました。
持分法による投資損益は、前年度に比べて123億円増加し、528億円の利益となりました。
これらの結果、Adjusted EBITA(Adjusted Earnings before interest, taxes and amortizationの略であり、調整後営業利益に、企業結合により認識した無形資産等の償却費を足し戻した上で、持分法による投資損益を加算して算出した指標)は、前年度に比べて292億円増加して8,846億円となりました。
その他の収益は、前年度に比べて1,738億円増加して3,021億円となり、その他の費用は、前年度に比べて1,610億円増加して2,450億円となりました。主な内訳は、以下のとおりです。
・固定資産損益は、前年度に比べて157億円減少し、22億円の利益となりました。
・減損損失は、急激な金利上昇等による割引率の上昇に伴う日立エナジー社ののれんの減損損失の計上に加えて、デジタルシステム&サービスセクターにおいてもERPオンプレミス型事業を非注力分野に位置づけたことに伴いのれんの減損損失を計上したこと等により、前年度に比べて948億円増加し、1,298億円となりました。
・事業再編等損益は、㈱日立物流株式及び日立金属㈱株式の売却に伴う売却益を計上したこと等により、前年度に比べて1,952億円増加し、2,973億円の利益となりました。
・特別退職金は、前年度に比べて5億円増加し、93億円となりました。
・リスク分担型企業年金制度への移行に伴う損失として、511億円をその他の費用に計上しました。
金融収益(受取利息を除きます。)は、前年度に比べて200億円減少して78億円となり、金融費用(支払利息を除きます。)は、前年度に比べて203億円増加して204億円となりました。
EBIT(受取利息及び支払利息調整後税引前当期利益)は、前年度に比べ53億円減少し、8,456億円となりました。
受取利息は、前年度に比べて101億円増加して256億円となり、支払利息は、前年度に比べて242億円増加して513億円となりました。
税引前当期利益は、前年度に比べて193億円減少し、8,199億円となりました。
法人所得税費用は、前年度に比べて523億円減少し、1,161億円となりました。
当期利益は、前年度に比べて330億円増加し、7,038億円となりました。
非支配持分に帰属する当期利益は、前年度に比べて326億円減少し、547億円となりました。
これらの結果、親会社株主に帰属する当期利益は、前年度に比べて656億円増加し、6,491億円となりました。
②セグメントごとの業績の状況
セグメントごとに業績の状況を概観すると次のとおりです。各セグメントの売上収益は、セグメント間内部売上収益を含んでいます。また、当連結会計年度の期首より、報告セグメントの区分を、デジタルシステム&サービス、グリーンエナジー&モビリティ、コネクティブインダストリーズ、オートモティブシステム、日立建機、日立金属、その他の7セグメントへ変更しており、比較する前年度の数値も新区分に組み替えています。なお、各表内の内数は、各セグメントの主な事業等の業績を表しており、また、売上収益については当該事業間の内部売上を含んでいるため、それらの合計額は、セグメント全体の業績と一致しない場合があります。
(デジタルシステム&サービス)
※前年度までサービス&プラットフォームに計上されていた制御システム事業の数値は、当連結会計年度よりフロントビジネスに計上されています。デジタルシステム&サービスセグメントの対前年度比較は、この変更を前年度に遡及した数値と比較しています。
売上収益は、為替影響に加え、Lumada事業やGlobalLogic社が堅調に推移したこと等により、前年度に比べて増収となりました。
Adjusted EBITAは、売上収益の増加等により、増益となりました。
(グリーンエナジー&モビリティ)
※関連費用には、パワーグリッド事業PMIに係る費用等が含まれています。
売上収益は、為替影響や日立エナジー社及び鉄道システム事業が堅調に推移したこと等により、前年度に比べて増収となりました。
Adjusted EBITAは、エネルギー事業での一部プロジェクトにおけるコスト増等による減益があったものの、売上収益の増加や鉄道システム事業における収益性の改善等により、前年度に比べて増益となりました。
(コネクティブインダストリーズ)
売上収益は、為替影響や半導体製造装置及び生化学免疫自動分析装置等の販売が増加した計測分析システム事業及びビルサービス事業が拡大したビルシステム事業が堅調に推移したこと等により、前年度に比べて増収となりました。
Adjusted EBITAは、生活・エコシステム事業での部材価格高騰の影響やインダストリアルデジタル事業における成長投資・拡販活動に伴う販売費の増加があったものの、売上収益の増加等により、前年度に比べて増益となりました。
(オートモティブシステム)
売上収益は、半導体不足及び中国におけるサプライチェーンの混乱による操業度悪化の影響等の減収要因があったものの、為替影響や自動車メーカーの生産量の緩やかな回復等により、前年度に比べて増収となりました。
Adjusted EBITAは、売上収益の増加等により、前年度に比べて増益となりました。
(日立建機)
売上収益は、日立建機㈱株式の一部を2022年8月に売却したことにより、従来日立建機セグメントに含めていた日立建機㈱が当社の持分法適用会社となったことから、前年度に比べて減収となりました。
Adjusted EBITAは、上記の日立建機㈱株式の一部売却の影響により、前年度に比べて減益となりました。
(日立金属)
売上収益は、日立金属㈱株式を2023年1月に売却したことにより、従来日立金属セグメントに含めていた日立金属㈱が当社の関係会社ではなくなったことから、前年度に比べて減収となりました。
Adjusted EBITAは、上記の日立金属㈱株式の売却の影響があったものの、コスト削減施策による収益性の改善等により、前年度に比べて増益となりました。
(その他)
売上収益は、前年度に比べて4%増加し、4,730億円となりました。
Adjusted EBITAは、前年度に比べて80億円減少し、155億円となりました。
③地域ごとの売上収益の状況
仕向地別に外部顧客向け売上収益の状況を概観すると次のとおりです。
(注)( )内の数値は、各地域の売上収益の売上収益合計に占める割合です。
国内
国内売上収益は、前年度に比べて減収となりました。これは主として、コネクティブインダストリーズセクターの増収に加え、自動車メーカーの生産量の緩やかな回復を受けたオートモティブシステムやデジタルシステム&サービスセクターにおける㈱日立システムズ及び日立チャネルソリューションズ㈱の増収影響等があったものの、日立建機㈱株式の一部売却及び日立金属㈱株式の売却により減収となったことによるものです。
海外
海外売上収益は、前年度に比べて増収となり、売上収益全体に占める比率は、前年度に比べて3%増加し、62%となりました。各地域の状況は、以下のとおりです。
(北米)
前年度に比べて増収となりました。これは主として、日立建機㈱株式の一部売却による減収影響等があったものの、市況の回復を受けたオートモティブシステムの増収、グリーンエナジー&モビリティセクターにおけるパワーグリッド事業の増収、デジタルシステム&サービスセクターがGlobalLogic社の買収等により増収となったことによるものです。
(欧州)
前年度に比べて増収となりました。これは主として、日立建機㈱株式の一部売却による減収影響等があったものの、グリーンエナジー&モビリティセクターにおけるパワーグリッド事業及び鉄道システム事業やコネクティブインダストリーズセクターにおける計測分析システム事業等が増収となったことによるものです。
(アジア)
中国及びASEAN・インド他から成るアジアは、前年度に比べて増収となりました。これは主として、日立建機㈱株式の一部売却及び日立金属㈱株式の売却による減収影響等があったものの、市況の回復を受けたオートモティブシステムの増収、コネクティブインダストリーズセクターにおけるビルシステム事業及び計測分析システム事業やデジタルシステム&サービスセクター等が増収となったことによるものです。
(その他の地域)
前年度に比べて増収となりました。これは主として、日立建機㈱株式の一部売却による減収影響等があったものの、グリーンエナジー&モビリティセクターにおけるパワーグリッド事業及び鉄道システム事業やオートモティブシステム等が増収となったこと等によるものです。
(3)財政状態及びキャッシュ・フローの状況の分析
①流動性と資金の源泉
財務活動の基本方針
当社は、現在及び将来の事業活動のための適切な水準の流動性の維持及び機動的・効率的な資金の確保を財務活動の重要な方針としています。当社は、運転資金の効率的な管理を通じて、事業活動における資本効率の最適化を図るとともに、グループ内の資金の管理を当社や海外の金融子会社に集中させることを推進しており、グループ内の資金管理の効率改善に努めています。
当社は、経営管理指標にROICを導入し、資本効率の向上と収益性の高い事業の成長を経営として推進しています。ROICは、事業に投じた資金(投下資本)によって生み出されたリターンを評価する指標で、税引後の事業利益を投下資本で除すことで算出します。リターンを上げるためにはROICが投下資本の調達コストである加重平均資本コスト(WACC)を上回る必要があります。
また、2022年度からは、収益性を図る主要な指標として、これまでの調整後営業利益からAdjusted EBITA(調整後営業利益に、企業結合により認識した無形資産等の償却費を足し戻した上で、持分法による投資損益を加算して算出した指標)へ変更しました。
今後は、Adjusted EBITA率12%及びROIC10%をめざすとともに、事業買収における投資判断の基準としてもAdjusted EBITA率及びROICを用いることで、投資判断の規律を徹底し、収益力の強化と事業資産の効率向上をさらに図っていきます。
資金需要の動向
当社の主要な資金使途は、成長に向けたM&A、人財への投資、設備投資や研究開発投資、株主還元等です。コア・フリーキャッシュ・フロー及び資産売却で得た資金を、これらの成長投資や株主還元にバランスよく配分していきます。
主なM&A等の案件については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 注5.事業再編等」に、設備投資の実績及び計画については、「第3 設備の状況」に、株主還元の方針及び実績については、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」に記載しています。
資金の源泉
当社は、営業活動によるキャッシュ・フロー並びに現金及び現金同等物を内部的な資金の主な源泉と考えており、短期投資についても、直ちに利用できる財源となりうると考えています。また、資金需要に応じて、国内及び海外の資本市場における債券の発行及び株式等の資本性証券の発行並びに金融機関からの借入により資金を調達することが可能です。設備投資やM&Aのための資金については、主として内部資金により充当することとしており、必要に応じて社債や株式等の発行により資金を調達することとしています。借入により資金を調達する場合には、D/Eレシオ、有利子負債/EBITDA倍率等の財務規律に照らし、適正な財政状態を維持する方針としています。当社は、機動的な資金調達を可能とするため、3,000億円を上限とする社債の発行登録を行っています。
当社及び一部の子会社は、資金需要に応じた効率的な資金の調達を確保するため、複数の金融機関との間でコミットメントラインを設定しています。当社においては、契約期間1年で期間満了時に更新するコミットメントライン契約と、契約期間3年で2025年7月29日を期限とするコミットメントライン契約を締結しています。2023年3月31日現在における当社及び子会社のコミットメントライン契約に係る借入未実行残高の合計は5,130億円であり、このうち当社は5,050億円です。
当社は、ムーディーズ・ジャパン㈱(ムーディーズ)、S&Pグローバル・レーティング・ジャパン㈱(S&P)及び㈱格付投資情報センター(R&I)から債券格付けを取得しています。2023年3月31日現在における格付けの状況は、次のとおりです。
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格付会社 |
長期会社格付け |
短期会社格付け |
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ムーディーズ |
A3 |
P-2 |
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S&P |
A |
A-1 |
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R&I |
AA- |
a-1+ |
当社は、現在の格付け水準の下で、引き続き、国内及び海外の資本市場から必要な資金調達が可能であると考えており、格付け水準の維持・向上を図っていきます。
②キャッシュ・フロー
(営業活動に関するキャッシュ・フロー)
当期利益は前年度に比べて330億円増加しました。売上債権及び契約資産の増減による支出が前年度に比べて273億円増加し、買入債務の増減による収入が前年度に比べて1,125億円減少したものの、棚卸資産の増減による支出が前年度に比べて858億円減少したことに加え、法人所得税等の支払いが前年度に比べて776億円減少したこと等により、営業活動に関するキャッシュ・フローの収入は、前年度に比べて971億円増加し、8,270億円となりました。
(投資活動に関するキャッシュ・フロー)
固定資産関連の純投資額(注1)が前年度に比べて249億円増加して3,550億円の支出となったものの、有価証券及びその他の金融資産(子会社及び持分法で会計処理されている投資を含みます。)の取得による支出が、前年度にGlobalLogic Worldwide Holdings, Inc.株式を取得したこと等により、前年度に比べて8,271億円減少しました。また、有価証券及びその他の金融資産(子会社及び持分法で会計処理されている投資を含みます。)の売却による収入が日立建機㈱株式、日立金属㈱株式及び㈱日立物流株式の売却等により前年度に比べて4,474億円増加しました。これらの結果、投資活動に関するキャッシュ・フローは、前年度の1兆488億円の支出に対して、1,510億円の収入となりました。
(注)1.有形固定資産の取得及び無形資産の取得の合計額から、有形固定資産及び無形資産の売却を差し引いた額。
(財務活動に関するキャッシュ・フロー)
長期借入債務の純支出額(注2)が前年度に比べて524億円減少したものの、短期借入金の純増減が前年度の6,532億円の収入に対して2,776億円の支出になったことに加え、自己株式の取得による支出が前年度に比べて1,999億円増加したこと等により、財務活動に関するキャッシュ・フローは、前年度の2,027億円の収入に対して、1兆1,429億円の支出となりました。
(注)2.長期借入債務による調達から償還を差し引いた額。
これらの結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前年度末に比べて1,355億円減少し、8,332億円となりました。また、営業活動に関するキャッシュ・フローと投資活動に関するキャッシュ・フローを合わせた所謂フリー・キャッシュ・フローは、前年度に比べて1兆2,970億円増加し、9,781億円の収入となりました。
③資産、負債及び資本
当連結会計年度末の総資産は、為替影響による資産の増加要因があったものの、日立建機㈱が当社の持分法適用会社になったことや日立金属㈱が連結対象外となったこと等により、前年度末に比べて1兆3,860億円減少し、12兆5,014億円となりました。当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前年度末に比べて1,355億円減少し、8,332億円となりました。
当連結会計年度末の有利子負債(短期借入金及び償還期長期債務を含む長期債務の合計)は、前年度末に比べて9,133億円減少し、2兆2,133億円となりました。金融機関からの借入やコマーシャル・ペーパー等から成る短期借入金は、前年度末に比べて4,564億円減少し、7,776億円となりました。償還期長期債務は、前年度末に比べて1,945億円減少し、1,418億円となりました。社債及び銀行や保険会社からの借入等から成る長期債務(償還期を除きます。)は、前年度末に比べて2,623億円減少し、1兆2,938億円となりました。
当連結会計年度末の親会社株主持分は、前年度末に比べて6,010億円増加し、4兆9,428億円となりました。この結果、当連結会計年度末の親会社株主持分比率は、前年度末の31.3%に対して、39.5%となりました。
当連結会計年度末の非支配持分は、前年度末に比べて6,207億円減少し、3,927億円となりました。
当連結会計年度末の資本合計は、前年度末に比べて197億円減少し、5兆3,355億円となり、資本合計に対する有利子負債の比率は、前年度末から0.17ポイント減少し、0.41倍となりました。
(4)生産、受注及び販売の状況
当グループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、また、受注生産形態をとらない製品も多く、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額又は数量で示すことはしていません。長期にわたり収益が認識される契約を有する主なセグメントについては、未履行の履行義務残高を、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 注20.売上収益」に記載しています。また、販売の状況については、「(2)経営成績の状況の分析」において各セグメントの業績に関連付けて示しています。
(5)重要な会計方針及び見積り
IFRSに基づく連結財務諸表の作成においては、期末日における資産・負債の報告金額及び偶発的資産・債務の開示並びに報告期間における収益・費用の報告金額に影響するような見積り及び仮定が必要となります。いくつかの会計上の見積りは、次の二つの理由により、連結財務諸表に与える重要性及びその見積りに影響する将来の事象が現在の判断と著しく異なる可能性があり、当グループの財政状態、財政状態の変化又は経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。第一は、会計上の見積りがなされる時点においては、不確実性がきわめて高い事項についての仮定が必要になるため、第二は、当連結会計年度における会計上の見積りに合理的に用いることがありえた別の見積りが存在し、又は時間の経過により会計上の見積りの変化が合理的に起こりうるためです。見積り及び仮定が必要となる重要な会計方針は、次のとおりです。
長期請負契約等に係る見積り、コストの変動及び契約の解除
当グループは、インフラシステムの建設に係る請負契約をはじめ多数の長期契約を締結しており、一定の期間にわたり製品及びサービス等の支配の移転が行われる取引については、顧客に提供する当該製品及びサービス等の性質を考慮し、履行義務の充足に向けての進捗度を発生原価又はサービス提供期間に基づき測定し収益を認識しています。なお、当該進捗度を合理的に測定することができない場合は、発生したコストの範囲で収益を認識しています。長期請負契約等に基づく収益認識において、見積原価総額、見積収益総額、契約に係るリスクやその他の要因について重要な仮定を行う必要がありますが、かかる見積りは変動する可能性があります。当グループは、これらの見積りを継続的に見直し、必要と考える場合には調整を行っています。当グループは、価格が確定している契約の予測損失は、その損失が見積られた時点で費用計上していますが、かかる見積りは変動する可能性があります。また、コストの変動は、当グループのコントロールの及ばない様々な理由によって発生する可能性があります。さらに、当グループ又はその取引相手が契約を解除する可能性もあります。このような場合、当グループは、当該契約に関する当初の見積りを見直す必要が生じ、かかる見直しは、当グループの事業、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
企業結合
企業結合の会計処理は取得法を用いています。被取得会社の有形資産のほか、技術やブランド、顧客リストといった無形資産も公正価値にて評価を行いますが、かかる評価において、個々の事案に応じた適切な前提条件や将来予測に基づき、見積りを行います。評価は通常、独立した外部専門家が評価プロセスに関与しますが、評価における重要な見積り及び前提には固有の不確実性が含まれます。当グループは、主要な前提条件の見積りは合理的であると考えていますが、実際の結果が異なる可能性があります。
資産の減損
当グループは、保有しかつ使用している資産の帳簿価額について、帳簿価額の回収ができなくなる可能性を示す事象又は状況の変化が生じた場合は、減損の兆候の有無を判定します。この判定において、資産の帳簿価額が減損していると判断された場合は、帳簿価額が回収可能価額を超える金額を減損損失として認識します。各資産及び資金生成単位又は資金生成単位グループごとの回収可能価額は、処分費用控除後の公正価値と使用価値のいずれか高い方で算定しています。
公正価値を算定するために用いる評価技法として、主に当該資産等の使用及び最終処分価値から期待される見積将来キャッシュ・フローに基づくインカム・アプローチ(現在価値法)又は類似する公開企業との比較や当該資産等の時価総額等、市場参加者間の秩序ある取引において成立しうる価格を合理的に見積り算定するマーケット・アプローチを用いています。使用価値は、経営者により承認された事業計画を基礎とした将来キャッシュ・フローの見積額を、加重平均資本コストをもとに算定した割引率で現在価値に割り引いて算定しており、現時点で合理的であると判断される一定の前提に基づいていますが、マーケットに係るリスク、経営環境に係るリスク等により、実際の結果が大きく異なることがありえます。また、使用価値の算定に使用する割引率については、株式市場の動向や金利の変動等により影響を受けます。将来キャッシュ・フロー及び使用価値の見積りは合理的であると考えていますが、将来キャッシュ・フローや使用価値の減少をもたらすような予測不能な事業上の環境の変化に起因する見積りの変化が、資産の評価に不利に影響する可能性があります。当グループは、公正価値及び使用価値算定上の複雑さに応じ、外部専門家を適宜利用しています。
のれんは、事業買収で獲得する市場競争力を基礎とする超過収益力の源泉であり、被取得会社の純資産と、取得の対価の差額の内、無形資産等に計上された額以外をのれんとして計上します。のれんは、IFRSに基づき、償却をせず、減損の兆候の有無にかかわらず、毎年、主に第4四半期において、その資産の属する資金生成単位又は資金生成単位グループごとに回収可能価額を見積り、減損テストを実施しています。また、当初の見積りと直近の見積りを比較するモニタリングを継続し、事業戦略の変更や市場環境等の変化により、その価値が当初の見積りを下回り、帳簿価額が回収不可能であるような兆候がある場合には、その都度、減損テストを実施しています。当該事象や状況の変化には、世界的な経済や金融市場における危機も含まれ、その資産の属する資金生成単位又は資金生成単位グループの帳簿価額が回収可能価額を超える場合には、その超過額を減損損失として認識しています。
減損及びのれんのセグメントごとの内訳は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 注4 セグメント情報」に記載しています。主な内容は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 注9 有形固定資産 及び 注10 のれん及びその他の無形資産」に記載しています。
繰延税金資産
繰延税金資産は、将来の期に回収されることとなる税額であり、実現可能性を評価するにあたり、当グループは、同資産の一部又は全部が実現しない蓋然性の検討を行っています。実現可能性は確定的ではありませんが、実現可能性の評価において、当グループは、繰延税金負債の振り戻しの予定及び予測される将来の課税所得を考慮しています。将来の課税所得の見積りの基礎となる、将来の業績の見通しは、経済の動向、市場における需給動向、製品及びサービスの販売価格、原材料及び部品の調達価格、為替相場の変動、急速な技術革新等予見しえない事象により実際とは異なる結果となり、将来において修正される可能性があります。その結果、認識可能と判断された繰延税金資産の金額に不利な影響を及ぼす可能性があります。繰延税金資産の実現可能性の評価は、各納税地域の各納税単位で行われており、類似の事業を営む場合でも、製品や納税地域の違いにより異なった評価となりえます。同資産が最終的に実現するか否かは、これらの一時差異等が、将来、それぞれの納税地域における納税額の計算上、課税所得の減額あるいは税額控除が可能となる会計期間において、課税所得を計上しうるか否かによります。これらの諸要素に基づき当グループは、2023年3月31日現在で認識可能と判断された繰延税金資産が実現する蓋然性は高いと判断していますが、実際に課税所得が生じる時期及び金額は見積りと異なる可能性があります。
退職給付に係る負債
当グループは、数理計算によって算出される多額の退職給付費用を負担しています。この評価には、死亡率、脱退率、退職率、給与の変更及び割引率等の退職給付費用を見積る上で利用される様々な数理計算上の仮定が含まれています。当グループは、人員の状況、市況及び将来の金利の動向等の多くの要素を考慮に入れて、数理計算上の仮定を見積る必要があります。数理計算上の仮定の見積りは、基礎となる要素に基づき、合理的なものであると考えていますが、実際の結果と合致する保証はありません。数理計算上の仮定が実際の結果と異なった場合、その結果として実際の退職給付費用が見積費用から乖離して、当グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。割引率の低下は、数理上の退職給付に係る負債の増加をもたらす可能性があります。また、当グループは、割引率等の数理計算上の仮定を変更する可能性があります。数理計算上の仮定の変更も、当グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
退職後給付の算定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 注3 主要な会計方針の概要 (11)退職後給付」に記載しています。
(6)将来予想に関する記述
「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」、「3 事業等のリスク」及び「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」等は、当社又は当グループの今後の計画、見通し、戦略等の将来予想に関する記述を含んでいます。将来予想に関する記述は、当社又は当グループが当有価証券報告書提出日現在において合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の業績等の結果は見通しと大きく異なることがありえます。その要因のうち、主なものは以下のとおりです。
・主要市場における経済状況及び需要の急激な変動
・為替相場変動
・資金調達環境
・株式相場変動
・原材料・部品の不足及び価格の変動
・信用供与を行った取引先の財政状態
・主要市場・事業拠点(特に日本、アジア、米国及び欧州)における政治・社会状況及び貿易規制等各種規制
・気候変動対策に関する規制強化等への対応
・情報システムへの依存及び機密情報の管理
・人財の確保
・新技術を用いた製品の開発、タイムリーな市場投入、低コスト生産を実現する当社及び子会社の能力
・COVID-19の流行による社会的・経済的影響の悪化
・地震・津波等の自然災害、気候変動、感染症の流行及びテロ・紛争等による政治的・社会的混乱
・長期請負契約等における見積り、コストの変動及び契約の解除
・価格競争の激化
・製品等の需給の変動
・製品等の需給、為替相場及び原材料価格の変動並びに原材料・部品の不足に対応する当社及び子会社の能力
・コスト構造改革施策の実施
・社会イノベーション事業強化に係る戦略
・企業買収、事業の合弁及び戦略的提携の実施並びにこれらに関連する費用の発生
・事業再構築のための施策の実施
・持分法適用会社への投資に係る損失
・当社、子会社又は持分法適用会社に対する訴訟その他の法的手続
・製品やサービスに関する欠陥・瑕疵等
・自社の知的財産の保護及び他社の知的財産の利用の確保
・退職給付に係る負債の算定における見積り
相互技術援助契約
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契約会社名 |
相手方の名称 |
国名 |
契約品目 |
契約内容 |
契約期間 |
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株式会社日立製作所 (当社) |
International Business Machines Corp. |
アメリカ |
インフォメーションハンドリングシステム |
特許実施権の交換 |
自 2008年1月1日 至 2023年1月1日 までに出願された 特許の終了日 |
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〃 |
HP Inc. Hewlett Packard Enterprise Company |
アメリカ |
全製品・サービス |
特許実施権の交換 |
自 2010年3月31日 至 2014年12月31日 までに出願された 特許の終了日 |
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〃 |
EMC Corporation |
アメリカ |
インフォメーションハンドリングシステム |
特許実施権の交換 |
自 2003年1月1日 至 2007年12月31日 までに出願された 特許の終了日 |
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日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (連結子会社) |
GE-Hitachi Nuclear Energy Americas LLC |
アメリカ |
原子炉システム |
特許実施権の交換 技術情報の交換 |
自 1991年10月30日 至 2023年6月30日 |
(1)研究の目的及び主要課題
当グループ(当社及び連結子会社)は、「デジタル」「グリーン」「イノベーション」を成長ドライバーとして、社会イノベーション事業のさらなる進化をめざしています。「グローバル事業成長に向けたデジタルによるイノベーション創生の加速」を研究開発のミッションとして掲げ、研究開発資源を、顧客体験を革新するイノベーションや社会の本質課題を捉えたイノベーションの創生に重点的に配分することで、事業の継続と将来の成長及びお客さまと社会の課題解決に努め、プラネタリーバウンダリーを越えない社会の維持と、一人ひとりのウェルビーイングの実現の両立をめざします。
事業活動の競争力強化及び将来の成長に向けた取り組みとして、Lumada成長サイクルの具体化によりお客さまの成長シナリオを策定し、顧客体験起点のDX(デジタルトランスフォーメーション)をOne Hitachiで実現するとともに、2050年からのバックキャストに基づく破壊的イノベーションの創生をグローバル体制で推進しています。そのために、デジタル技術基盤の拡大と、海外の研究リソースの強化を図っています。さらに、グループ横断で成長戦略をリードする日立デジタル社、グローバル環境事業統括本部、イノベーション成長戦略本部と連携し、関連するGlobalLogic社、日立エナジー社等とともに社会イノベーション事業のさらなる進化を加速します。
(2)研究開発体制
当グループの研究開発においては、当社及びグループ各社の研究開発部門が相互に緊密な連携をとりながら、研究開発効率の向上に努めています。また、国内外の大学や研究機関との連携に加え、2019年4月には研究開発グループ国分寺サイトに研究開発拠点「協創の森」を開設し、お客さまやパートナーとのオープンな協創を加速しています。
さらに、コーポレートベンチャリング室を設立し、これまで組成した2つのファンドを通じて、合計21社のスタートアップ企業に出資し、日立の事業とのコラボレーションを通じて各企業の成長を支援しつつ、お客さまに価値を提供することで、DX、脱炭素、ウェルビーイングなどに貢献しています。
社会イノベーション事業によるグローバルな成長の加速に向けて、2022年4月に、研究開発グループの組織を再編しました。これまで、日立のフロントとともに価値起点でのイノベーション創生を担ってきた社会イノベーション協創センタと、価値創生を支える世界No.1技術の開発を担ってきたテクノロジーイノベーションセンタを一体化して、「デジタルサービス研究統括本部」、「サステナビリティ研究統括本部」に再編し、DX及びGX(グリーントランスフォーメーション)による価値創生を強化しました。将来への布石を担う「基礎研究センタ」、北米、欧州、中国、アジア及びインドの海外研究開発拠点とともにグローバル一体となってイノベーション創生を推進しています。
(3)イノベーション投資
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当グループのさらなる成長に向けて、グループ全体のイノベーション投資を拡大します。 2023年4月に、コーポレートベンチャリングリング投資として新たに第3号ファンドを、これまでに設立した第1号、第2号ファンドの2倍に相当する300百万米ドルで組成し、Web3、生成AIをはじめとする最新のデジタルトレンドを牽引するスタートアップ企業への戦略的な投資を行います。また、先端研究については、2024中期経営計画の3年間累積で約1,000億円投資する予定です。これらの投資を通じて、将来の社会課題の解決に向けた破壊的イノベーションの創出、Lumada成長サイクルの実現による当グループの成長への貢献をめざしていきます。 |
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(4)研究開発費
当連結会計年度における当グループの研究開発費は、売上収益の2.9%にあたる3,162億円であり、セグメントごとの研究開発費及び研究開発費の推移は次のとおりです。
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(注)( )内の数値は、研究開発費の売上収益合計に占める割合です。 |
(5)研究成果
当連結会計年度における研究開発活動の主要な成果は、次のとおりです。
①材料開発におけるMI推進に向け、先進デジタル技術を用いた協創を開始(デジタルシステム&サービスセグメント)
新材料開発の加速や研究開発の効率化・高度化をめざして、材料に関するデータとAIなどのデジタル技術を駆使することにより、短期間で効率的に材料特性や知見を見出すことが可能なマテリアルズ・インフォマティクス(MI)の推進に取り組みました。材料の性能予測モデルの構築に量子コンピュータを疑似的に再現する「CMOSアニーリング」を適用することで、機械学習モデルの予測精度を向上させ、材料開発の期間を約20%短縮できる見通しを得ました。今後、Lumadaの「材料開発ソリューション」として、本技術の実用化をめざします(積水化学工業㈱との協創活動における成果)。
②国内初のデジタルな仕組みを用いた環境債「ホールセール向けグリーン・デジタル・トラック・ボンド」の発行に関する協業を開始(デジタルシステム&サービスセグメント)
㈱BOOSTRYが提供するブロックチェーン基盤を活用した社債型セキュリティ・トークンのスキームを利用し、国内初となる公募ホールセール向けグリーン・デジタル・トラック・ボンドの発行に向けて協業を開始しました。本協業では、日立が開発した「サステナブルファイナンスプラットフォーム」の一部が各種環境データを記録・管理する基盤として活用されています。本取組みから得られた学びや洗い出された課題を共有していくことで、社会全体のカーボンニュートラルへの貢献をめざします(㈱日本取引所グループ、野村證券㈱、㈱BOOSTRYとの協業)。
③AI映像解析ソリューションの開発で「第52回 日本産業技術大賞 文部科学大臣賞」を受賞(デジタルシステム&サービスセグメント)
「安心・安全な社会構築を支えるAI映像解析ソリューションの開発」で㈱日刊工業新聞社が主催する「第52回 日本産業技術大賞 文部科学大臣賞」を受賞しました。「AI映像解析ソリューション」は、日立のAI映像解析技術を活用し、数万人規模の映像データから、外見や行動などの特徴を高速に判別して、約1秒で対象人物や物体を見つける「高速検索」と、多数の防犯カメラから位置情報や撮影時刻を使って移動経路を追跡できる「リアルタイム追跡」を特長とするソリューションです。大規模な公共空間における高効率なセキュリティ業務を支援します。昨年、映像中の人物の姿勢の変化や人と物の所有関係を捉える新たなAI技術を開発し、不審行動や荷物の置き去りを早期発見するための機能を拡充したソリューションの提供を開始しました(㈱日立産業制御ソリューションズとの共同受賞)。
④日立が、電力事業者をはじめとした企業向けに、設備の点検・監視・最適化を支援する「Lumada Inspection Insights」を発売(グリーンエナジー&モビリティセグメント、デジタルシステム&サービスセグメント)
電力事業者をはじめとした企業向けに、送電網などの重要設備の点検、監視、最適化のためのデジタルソリューション「Lumada Inspection Insights」を発売しました。「Lumada Inspection Insights」は、日立エナジー社と日立ヴァンタラ社が共同で開発したもので、日立が開発したAI技術が搭載されています。衛星画像や、リモートセンシング技術の一つであるLiDAR、温度分布などの写真や動画をAIで解析することで、お客さまの設備点検の自動化と、安全性の向上、天候に関連するリスクや山火事による環境影響の低減、サステナビリティ目標の達成に貢献します。
⑤半導体測長SEM「CG7300」の開発と高精度化で「第69回大河内記念生産賞」及び「第9回ものづくり日本大賞 経済産業大臣賞」を受賞(コネクティブインダストリーズセグメント)
極端紫外線露光世代の半導体測長SEM「CG7300」の開発と高精度化で、公益財団法人大河内記念会が主催する「第69回大河内記念生産賞」及び経済産業省が主催する「第9回ものづくり日本大賞 経済産業大臣賞」を受賞しました。「CG7300」の製品化に当たり、ナノメートルレベルの極めて小さな回路パターンの寸法を計測するため、高精度なフォーカス合わせを実現する対物レンズ、電子ビーム揺れ抑制技術及び電子ビーム形状補正デジタル処理技術を開発しました。これにより、個別装置間のパターン寸法計測値差(機差)を従来機種比で約10%精度向上(機差:0.10nm以下レベル)に成功し、世界最高水準の半導体パターン検査技術を確立しました。今後も最先端のモノづくり及びデジタル社会を支える産業の持続的発展に貢献していきます(㈱日立ハイテクとの共同受賞)。
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半導体測長SEM「CG7300」 |
⑥日立ブランド 家電5製品が「2022年度グッドデザイン賞」を受賞、さらに上位の「グッドデザイン金賞」に日立グループ初の2製品同時選出(コネクティブインダストリーズセグメント)
日立ブランド 家電5製品が、公益財団法人日本デザイン振興会が主催する「2022年度グッドデザイン賞」を受賞し、そのうち2製品が「グッドデザイン金賞」に選出されました。「グッドデザイン金賞」を受賞したのは、再生プラスチックの使用率を40%以上としたコードレス スティッククリーナー「パワーブーストサイクロン」PV-BH900SKと、生活スタイルや好みに合わせて使える新コンセプト冷蔵庫「Chiiil(チール)」です。「グッドデザイン金賞」のダブル受賞は、日立グループとして初めてとなります。日立の家電は「実用品としての使い勝手」と「生活の邪魔にならない美しさ」の両立を提供すべきデザイン価値の核としています。今後も人々の生活に寄り添い、生活者一人ひとりのQoL(Quality of Life)向上に貢献していきます(日立グローバルライフソリューションズ㈱との共同受賞)。
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⑦小型・省エネルギーを両立するEV向け薄型インバーター技術を開発(オートモティブシステムセグメント)
EV向けの電力変換器(以下、「インバーター」といいます。)として、省エネルギーと小型化を両立した薄型インバーターの基本技術を開発しました。電力供給を制御するパワー半導体をプリント配線基板と一体化して集積することで電力配線を簡素化し、パワー半導体がスイッチ動作する際に発生するエネルギー損失を、従来比で30%低減するとともに、約50%の小型化を実現しました。また、新構造によりパワー半導体や電力配線の溶接工程を不要とするなど、部品数や組み立てに必要な工程を削減し、インバーターの生産工程を含めたライフサイクルでのCO2排出量削減が可能です。今後、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)が推進するグリーンイノベーション基金事業なども活用し、本技術の実用化に向けた取り組みを進め、カーボンニュートラル社会の実現に貢献していきます(日立Astemo㈱との共同開発)。
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⑧脱炭素社会及び循環経済社会の実現に向けて、アカデミアとの連携を加速(全社)
インペリアル・カレッジ・ロンドンと脱炭素・自然気候ソリューションのための共同研究センターを設立しました。気候変動による影響を抑えるには速やかな脱炭素化が不可欠であり、そのためには産業やライフスタイルの変革が必要です。さらに、食料や水を生み、大気中のCO2を除去するなどの不可欠な役割を果たしてくれる自然環境を保護する必要もあります。そこで、本センターでは脱炭素化と気候変動修復の二つに焦点を当て、DAC(Direct Air Capture)や自然の最適化などによるCO2排出量削減に向けた道筋を評価し、必要な社会トランジションを特定していきます。
また、国立研究開発法人産業技術総合研究所と循環経済社会の実現をめざす共同研究拠点「日立-産総研サーキュラーエコノミー連携研究ラボ」を設立しました。ライフサイクルアセスメント、資源回収、モノづくりやサービス工学をはじめとした両者の専門家が集結し、業種を横断したバリューチェーン全体で資源を高効率に利用し合う循環経済社会のあるべき社会像や必要なルール、課題解決策などの共同研究を推進します。
日立は、国内外の大学や研究機関との連携を加速し、サステナブルな社会の実現や脱炭素への貢献をめざします。