第2 【事業の状況】

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1) 経営方針

 三菱電機グループは、「企業理念*1」及び「7つの行動指針*2」に基づき、CSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)を企業経営の基本と位置付け、「成長性」「収益性・効率性」「健全性」の3つの視点による「バランス経営」を継続し、強固な経営基盤の確立と持続的成長を追求してまいります。

 また、コーポレートステートメント「Changes for the Better」に基づき、変革に挑戦し、常により良い明日への探求を続け、「社会」「顧客」「株主」「従業員」をはじめとするステークホルダーから信頼と満足を得られるよう取り組んでまいります。

 

(2) 経営環境及び対処すべき課題

 世界経済の先行きは、総じて緩やかな回復基調にあるものの、米国の通商政策や英国のEU離脱影響などの不確実性が継続する中、米中貿易摩擦に起因する各国・地域の輸出や投資の減速等で成長が鈍化することを見込んでおります

 かかる中、三菱電機グループは、「企業理念」及び「7つの行動指針」に基づき、CSRを企業経営の基本として活動しております。環境問題や資源・エネルギー問題等の社会課題に対し、製品・システム・サービスを組み合わせたソリューションの提供に取り組み、「持続可能性と安心・安全・快適性の両立」をはじめとする価値創出を、ライフ、インダストリー、インフラ、モビリティの4つの領域において、より一層推進してまいります

 また、価値創出の推進にあたっては、「バランス経営」の3つの視点(「成長性」「収益性・効率性」「健全性」)に基づきつつ、経営基盤(顧客との繋がり、技術、人材、製品、企業文化等)の強化とあらゆる連携の強化による「技術シナジー・事業シナジー」の進化に加え、事業モデルの変革を進めてまいります。なお、三菱電機グループは「連結売上高5兆円以上」「営業利益率8%以上」を2020年度成長目標としておりますが、足元の経済成長の鈍化に伴い事業環境が厳しさを増す中、2019年度はこれまでの投資成果と収益性改善の進捗状況を見極めつつ、その達成並びにその後の持続的成長に向けて引き続き取り組んでまいります。あわせて、継続的に達成すべき経営指標として、「ROE10%以上」「借入金比率15%以下」の達成にも努めてまいります。なお、2018年度の業績は、売上高は4兆5,199億円、営業利益率は6.4%、ROE9.7%、借入金比率は6.9%となりました

 持続的成長に向けては、成長牽引事業を中心とした事業競争力を強化するとともに新たな事業を継続的に創出してまいります。そのために、開発投資や設備投資などにおける資源投入の継続に加え、製品・技術等の補完や新地域・新市場での販売網・サービス網の確保、人的資源の獲得を目的とした協業・M&Aなどに取り組み、成果を最大化してまいります。グローバル及びグループトータルでの最適な事業推進体制を構築・強化し、欧米や中国における事業競争力を強化するとともに、インド・東南アジア・中南米等の成長市場における需要獲得に注力してまいります。あわせて、資本コストを意識した経営を進めていく中で、事業の継続的な新陳代謝を通じた経営資源の最適な配分、「ものづくり力」の強化に資する開発・生産力の強化、開発設計段階からの品質作り込み、間接部門における業務効率化も含むJust In Time改善活動を通じた生産性向上、人材構造適正化及び最適配置、更なる財務体質の改善等に引き続き取り組むとともに、事業別資産効率指標として導入した三菱電機版ROIC*3を継続的に運用し、中長期視点で、総合的な事業効率性を向上させ、「質のよい」成長を実現してまいります

 かかる三菱電機グループの取り組みの中で、「環境」については、低炭素社会や循環型社会の形成等に貢献すべく、創立100周年の2021年を目標年とする「環境ビジョン2021」の下、製品使用時におけるCO2排出量の30%削減(2000年度比)と、グループ全体での製品生産時のCO2排出総量の30%削減(1990年度比*4)を目指してまいります。2018年度の実績は、製品使用時のCO2排出量は削減率36%、製品生産時のCO2排出総量の削減率は51%となりました。引き続き、目標年での達成に向けて取り組んでまいります。「倫理・遵法」については、仕様不適合品の出荷等の品質問題も踏まえ、コンプライアンス方針の再徹底、内部統制の強化、教育を核としたコンプライアンス活動による一層の意識浸透にグループ全体で真摯に取り組んでまいります。あわせて、コーポレートガバナンス・コードへの適切な対応を図るなど、「コーポレート・ガバナンス」の継続的な向上策に取り組み、社会・顧客・株主等とのより高い信頼関係の確立に一層努めてまいります

 三菱電機グループは、上記施策を着実に展開することにより、更なる企業価値の向上を目指します

 

  *1 「企業理念」:三菱電機グループは、技術、サービス、創造力の向上を図り、活力とゆとりある社会の実現に貢献する。

 

  *2 「7つの行動指針」:

   ・「信頼」:社会・顧客・株主・社員・取引先等との高い信頼関係を確立する。

   ・「品質」:最良の製品・サービス、最高の品質の提供を目指す。

   ・「技術」:研究開発・技術革新を推進し、新しいマーケットを開拓する。

   ・「貢献」:グローバル企業として、地域、社会の発展に貢献する。

   ・「遵法」:全ての企業行動において規範を遵守する。

   ・「環境」:自然を尊び、環境の保全と向上に努める。

   ・「発展」:適正な利益を確保し、企業発展の基盤を構築する。

 

  *3 三菱電機版ROIC(投下資本利益率):各事業部門での把握・改善が容易となるように、「資本」「負債」ではなく、資産項目(固定資産・現預金等)に基づいて算出。

 

  *4 削減目標の基準年度:当社単独1990年、国内関係会社2000年、海外関係会社2005年

 

2 【事業等のリスク】

 三菱電機グループは、重電システム、産業メカトロニクス、情報通信システム、電子デバイス、家庭電器、その他の広範囲の分野にわたり開発、製造、販売等の事業を行っており、またそれぞれの事業は国内及び北米、欧州、アジア等の海外において展開されています。そのため、様々な要素が当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります

 具体的に当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性がある要因のうち、主なものは以下のとおりですが、新たな要因が発生する可能性もあります

 

(1) 世界の経済状況・社会情勢及び規制や税制等各種法規の動向

 世界の経済状況・社会情勢及び規制や税制等各種法規の動向は、当社グループの経営全般に影響を及ぼす可能性があります

(2) 為替相場

 為替相場の変動は、主に当社における米ドル建てもしくはユーロ建て輸出売上や輸入部材購入、アジア地域の製造拠点における当該地国以外の通貨建て輸出売上や輸入部材購入について影響を及ぼす可能性があります

(3) 株式相場

 株式相場の下落は、当社グループが保有する市場性のある株式の価値の減少や、年金資産の減少をもたらす可能性があります

(4) 製品需給状況及び部材調達環境

 製品需給状況の変動による価格の下落や出荷数量の減少及び部材調達環境の悪化による原価の上昇は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります

(5) 資金調達環境

 特に円の金利上昇は、当社の支払利息の増加をもたらします

(6) 重要な特許の成立及び実施許諾並びに特許関連の係争等

 重要な特許の成立及び実施許諾並びに特許関連の係争等が起こった場合は、当該案件の関係する事業へ影響を及ぼす可能性があります

(7) 環境に関連する規制や問題の発生

 環境に関連する規制の動向や問題の発生は、損失の計上や規制に対応するための費用等の増加を伴う可能性があります。また、当社グループの生産活動をはじめとする企業活動全般に影響を及ぼす可能性があります

(8) 製品やサービスの欠陥や瑕疵等

 製品やサービスの欠陥や瑕疵等により、損失計上を伴う場合があります。また、当社グループの製品やサービスの品質に対する評価の低下は、経営全般に影響を及ぼす可能性があります

(9) 訴訟その他の法的手続き

 当社グループに対する訴訟その他の法的手続きは、当社グループの経営全般に影響を及ぼす可能性があります

(10) 急激な技術変化や、新技術を用いた製品の開発、製造及び市場投入時期

 急激な技術変化や、新技術を用いた製品の開発、製造及び市場投入時期は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります

(11) 事業構造改革

 事業構造改革の実行内容によっては、損失計上を伴う場合があります

(12) 情報セキュリティー

 当社グループの保有する個人情報や当社グループの技術・営業等の事業に関する機密情報等が、コンピューターウイルスの感染や不正アクセスその他不測の事態により、滅失もしくは社外に漏洩した場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります

(13) 地震・台風・津波・火災等の大規模災害の発生

 地震・台風・津波・火災等の大規模災害の発生は、当社グループの生産活動をはじめとする企業活動全般に影響を及ぼす可能性があります

(14) テロ・戦争、新型インフルエンザ等の感染症の流行等による社会的・政治的混乱の発生

 テロ・戦争、新型インフルエンザ等の感染症の流行等による社会的・政治的混乱の発生は、当社グループの経営全般に影響を及ぼす可能性があります

 なお、上記における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2019年6月27日)現在において当社が判断したものです

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

三菱電機グループが当連結会計年度中にとった主な施策及び翌連結会計年度以降に向けての施策については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」などに記載のとおりですが、これらの施策の実施状況を踏まえた当連結会計年度に関する財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの分析は以下のとおりです。

なお、当社の連結財務諸表は、当連結会計年度よりIFRSに基づいて作成しています。これに伴い、前連結会計年度の連結財務諸表もIFRSに組み替えて比較分析をしています。当社は連結財務諸表の作成において資産、負債、収益及び費用の金額に影響を及ぼす判断、見積り及び仮定を行っており、実際の業績がこれらの見積りと異なる場合があります。主要な会計方針の要約は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 (連結財務諸表注記)」に記載しています。

 

(1) 業績概要

 当連結会計年度の景気は、米国では堅調な拡大が続いた一方、中国ではやや減速しました。また、日本や欧州では総じてみれば緩やかな回復基調で推移したものの、足元では輸出や生産など一部に減速感がみられました。為替については、対米ドルでは前連結会計年度並みとなり、対ユーロをみると8月以降は円高基調で推移しました。

 かかる中、三菱電機グループは、これまでの事業競争力強化・経営体質強化に加え、自らの強みに根ざした成長戦略の推進に、従来以上に軸足を置いて取り組んでまいりました。

 この結果、当連結会計年度の売上高は、重電システム部門、産業メカトロニクス部門及び家庭電器部門の増収などにより、全体では前連結会計年度比102%の4兆5,199億円となりました。

 営業利益は、産業メカトロニクス部門、電子デバイス部門の減益により、全体では前連結会計年度比89%の2,904億円となりました。

 税引前当期純利益は、前連結会計年度比89%の3,159億円となりました。

 親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度比89%の2,266億円となりました。

 

事業の種類別セグメントの業績は、次のとおりです

① 重電システム

 社会インフラ事業は、受注高は前連結会計年度並みとなりましたが、国内・海外の交通事業や国内の電力事業の増加などにより、売上高は前連結会計年度を上回りました。

 ビルシステム事業は、中国の新設事業が減少しましたが、国内のリニューアル事業などが増加したことにより、受注高・売上高とも前連結会計年度並みとなりました。

 この結果、部門全体では、売上高は前連結会計年度比103%の1兆2,967億円となりました。営業利益は、売上高の増加などにより、前連結会計年度比170億円増加の825億円となりました。

② 産業メカトロニクス

 FAシステム事業は、国内需要は堅調に推移しましたが、海外の有機ELやスマートフォン関連の設備投資が減少したことから、受注高・売上高とも前連結会計年度を下回りました。

 自動車機器事業は、国内・欧州・アジア向けの増加に加え、グローバルで市場が拡大している車両電動化関連製品の販売増加などにより、受注高・売上高とも前連結会計年度を上回りました。

 この結果、部門全体では、売上高は前連結会計年度比102%の1兆4,676億円となりました。営業利益は、機種構成の変動や素材価格の上昇に加え、成長事業への先行投資などにより、前連結会計年度比447億円減少の1,425億円となりました。

③ 情報通信システム

 通信システム事業は、通信インフラ機器の需要減少などにより、受注高・売上高とも前連結会計年度を下回りました

 情報システム・サービス事業は、受注高は前連結会計年度並みとなりましたが、システムインテグレーション事業の増加により、売上高は前連結会計年度を上回りました

 電子システム事業は、受注高は宇宙システム事業などの減少、売上高は防衛システム事業などの減少により、前連結会計年度を下回りました

 この結果、部門全体では、売上高は前連結会計年度比97%の4,262億円となりました。営業利益は、売上案件の変動などにより、前連結会計年度比9億円増加の122億円となりました

④ 電子デバイス

 電子デバイス事業は、通信用光デバイスの需要減少などにより、受注高は前連結会計年度を下回り、売上高は前連結会計年度比99%の1,999億円となりました。営業利益は、売上高の減少や機種構成の変動などにより、前連結会計年度比127億円減少の14億円となりました。

⑤ 家庭電器

 家庭電器事業は、国内・欧州・北米向け空調機器の増加により、売上高は前連結会計年度比102%の1兆740億円となりました。営業利益は、売上高の増加などにより、前連結会計年度比39億円増加の594億円となりました

⑥ その他

 物流の関係会社での増加などにより、売上高は前連結会計年度比103%の6,767億円となりました。営業利益は、売上高の増加などにより、前連結会計年度比1億円増加の241億円となりました

 

顧客の所在地別の売上高の状況は、次のとおりです

① 日本

 社会インフラ事業、自動車機器事業及び空調機器の増加などにより、前連結会計年度比105%の2兆5,566億円となりました

② 北米

 自動車機器事業の減少などはありましたが、社会インフラ事業、FAシステム事業及び空調機器の増加などにより、前連結会計年度比102%の4,294億円となりました

③ アジア

 FAシステム事業、電子デバイス事業及び空調機器の減少などにより、前連結会計年度比93%の1兆138億円となりました

 アジアのうち中国については、社会インフラ事業、電子デバイス事業及び空調機器の減少などにより、前連結会計年度比89%の4,864億円となりました。

④ 欧州

 社会インフラ事業、自動車機器事業及び空調機器の増加などにより、前連結会計年度比105%の4,537億円となりました

⑤ その他

 その他の地域にはオセアニアなどが含まれており、前連結会計年度並みの661億円となりました

 

(2) 生産、受注及び販売の実績

① 生産実績

 当連結会計年度における生産実績を事業の種類別セグメントごとに示すと、次のとおりです

事業の種類別セグメントの名称

生産高(百万円)

前連結会計年度比(%)

重電システム

869,133

103

産業メカトロニクス

1,371,800

99

情報通信システム

363,830

99

電子デバイス

161,747

94

家庭電器

805,964

106

その他

1,817

105

3,574,291

101

(注) 上記金額は、仕込製品については仕切予定価格、注文製品については受注価格で示しています

受注実績

 当連結会計年度における受注実績を事業の種類別セグメントごとに示すと、次のとおりです。

事業の種類別セグメントの名称

受注高(百万円)

前連結会計年度比(%)

重電システム

1,299,659

100

産業メカトロニクス

1,432,338

101

情報通信システム

418,414

88

電子デバイス

199,200

96

(注) 1 当連結会計年度より連結での受注高を開示し、前連結会計年度比も連結での受注高で表示しています。

 2 「家庭電器」「その他」については受注生産形態をとらない製品が多いため、受注規模を金額で示していません。

 

③ 販売実績

 当連結会計年度における販売実績を事業の種類別セグメントごとに示すと、次のとおりです

事業の種類別セグメントの名称

販売高(百万円)

前連結会計年度比(%)

重電システム

1,296,745

103

産業メカトロニクス

1,467,633

102

情報通信システム

426,269

97

電子デバイス

199,908

99

家庭電器

1,074,044

102

その他

676,736

103

消去

△621,414

-

4,519,921

102

(注) 各種類別セグメントの金額には、セグメント間の内部売上高(振替高)を含めて表示しています

(3) 資産及び負債・資本の状況分析

総資産残高は、前連結会計年度末比506億円増加の4兆3,562億円となりました。現金及び現金同等物が849億円減少した一方、棚卸資産が828億円の増加、契約資産が267億円、売上債権が155億円それぞれ増加したことがその主な要因です。

負債の部は、社債及び借入金残高が前連結会計年度末比135億円減少の2,984億円となり、借入金比率は6.9%(前連結会計年度末比△0.3ポイント)となりました。また、買入債務が199億円、契約負債が150億円それぞれ減少したこと等から、負債残高は前連結会計年度末比633億円減少の1兆8,450億円となりました。

資本の部は、配当金の支払い858億円による減少及び株価下落・為替円高等を背景としたその他の包括利益累計額456億円の減少がありましたが、親会社株主に帰属する当期純利益2,266億円の計上等により、親会社株主に帰属する持分は前連結会計年度末比1,057億円増加の2兆3,999億円となり、親会社株主帰属持分比率は55.1%(前連結会計年度末比+1.8ポイント)となりました。

 

(4) 経営成績の分析

① 売上高

当連結会計年度の売上高は、4兆5,199億円と前連結会計年度比754億円の増収となりました。これは、重電システム、産業メカトロニクス及び家庭電器等のセグメントにおいて増収となったことによるものです。

② 営業利益

売上原価は、前連結会計年度比964億円増加の3兆1,868億円となり、売上高に対する比率は1.0ポイント悪化の70.5%となりました。販売費及び一般管理費は、前連結会計年度比219億円増加の1兆432億円となり、売上高に対する比率は0.1ポイント悪化の23.1%となりました。その他の損益は、前連結会計年度比58億円改善の7億円の利益となりました。

この結果、営業利益は、前連結会計年度比369億円減少の2,904億円となり、セグメントにおいては、産業メカトロニクス及び電子デバイスで減益となりました

③ 税引前当期純利益

金融収益は前連結会計年度比11億円増加の97億円、金融費用は前連結会計年度比24億円減少の43億円となりました。持分法による投資利益は、前連結会計年度比38億円減少の201億円となりました。

この結果、税引前当期純利益は、前連結会計年度比372億円減少の3,159億円(売上高比7.0%)となりました。

④ 親会社株主に帰属する当期純利益

親会社株主に帰属する当期純利益は、税引前当期純利益の減少等により、前連結会計年度比291億円減少の2,266億円(売上高比5.0%)となりました。

 

(5) キャッシュ・フロー

当連結会計年度は、営業活動によるキャッシュ・フローが2,398億円の収入となった一方、投資活動によるキャッシュ・フローが2,106億円の支出となったため、フリー・キャッシュ・フローは前連結会計年度比546億円減少の291億円の収入となりました。これに対し、財務活動によるキャッシュ・フローは1,120億円の支出となったこと等から、現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末比849億円減少の5,142億円となりました。

営業活動によるキャッシュ・フローは、買入債務の支払いの減少はあるも、当期純利益の減少や契約資産の増加等により、前連結会計年度比259億円の収入減少となりました。

投資活動によるキャッシュ・フローは、有価証券等の売却収入の減少等により、前連結会計年度比286億円の支出増加となりました。

財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払いの増加等がある一方で、長期借入金の調達の増加等により、前連結会計年度比377億円の支出減少となりました。

 

(6) 資本の財源及び資金の流動性

三菱電機グループは、健全な財務体質を維持しつつ、成長資金の調達余力を確保することを基本方針としています。

運転資金需要のうち主なものは、生産に必要な材料購入費の他、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であり、投資を目的とした資金需要は、設備投資、M&A等によるものです。

短期運転資金は、自己資金と金融機関からの短期借入等により、設備投資や長期運転資金は、自己資金の活用を図りつつ金融機関からの長期借入及び社債により調達を行っています。

なお、当連結会計年度末における現金及び現金同等物残高は5,142億円、社債及び借入金残高は2,984億円であり、内訳は、短期借入金が555億円、社債及び長期借入金が2,203億円、リース債務が224億円です。また、当連結会計年度末において、未使用のコミットメントライン残高は827億円であり、契約している金融機関から短期資金を調達することができます。

 

4 【経営上の重要な契約等】

(1) 技術導入契約

相手方の名称

契約の内容

契約締結日

期限

ノースロップ・グラマン・

インターナショナル・

トレーディング社

航空機用電子機器の製造技術使用許諾

  2014.10.17

2023. 7.31

 (注) 1 上記契約は、当社を契約会社としています。

2  上記契約に基づく報償料は、所定金額を支払います。

(2) 技術供与契約

相手方の名称

契約の内容

契約締結日

期限

三菱電機コンシューマー・

プロダクツ(タイ)社

ルームエアコン・パッケージエアコン

製造技術使用許諾

1990. 6. 1

自動延長

上海三菱電機・

上菱空調機電器有限公司

ルームエアコン・パッケージエアコン・換気扇の製造技術使用許諾

2010. 6.25

2020. 6.25

三菱電機(広州)圧縮機有限公司

空調用圧縮機の製造技術使用許諾

2011.12.28

自動延長

三菱電機

エア・コンディショニング・

システムズ・ヨーロッパ社

空調機の製造技術使用許諾

2005.10. 1

自動延長

サイアム・コンプレッサー・

インダストリー社

空調用圧縮機の製造技術使用許諾

2002. 4. 1

自動延長

三菱エレベーター・アジア社

昇降機の製造技術使用許諾

1992. 6.15

自動延長

三菱電機自動化機器製造(常熟)

有限公司

サーボモーター製造技術使用許諾

2013. 1. 1

自動延長

 (注) 1 上記契約は、すべて当社を契約会社としています。

2  上記契約に基づく報償料は、売上に応じた金額を受領します。一部の契約については所定金額を受領します。

5 【研究開発活動】

研究開発については、成長戦略を推進する要として、短期・中期・長期のテーマをバランスよく遂行してまいります。

現在の事業の徹底強化と変革に向けた開発を推進するとともに、様々な技術、事業を持つ当社の強みを生かした技術シナジー・事業シナジーを通じた更なる価値の創出や、未来技術の開発による持続的成長の実現にも取り組んでまいります。

これらを支えるため、当社製品の競争優位性の源泉となる共通基盤技術の継続的深化を行ってまいります。

また、大学など社外研究機関とのオープンイノベーションで外にある技術を積極的に活用し、開発効率化に繋げてまいります。当連結会計年度における三菱電機グループ全体の研究開発費の総額は2,127億円(前連結会計年度比101%)であり、事業セグメントごとの主な研究開発成果は以下のとおりです。

 

(1) 重電システム

発電機・電動機などの回転機、開閉機器・変圧器などの送変電機器や受配電機器、交通システム、昇降機などの基幹製品の競争力強化に向けた開発を行うとともに、監視制御システム、電力情報システム、ビル管理システム、映像情報システムなどIT応用システムの開発を行っています。当該分野における研究開発費は347億円であり、主な成果は以下のとおりです。

① 電力用ガス絶縁開閉装置向け遮断・絶縁技術

高電圧の電力系統に用いられるSF6*1ガス絶縁開閉装置の電流遮断性能を25%向上させる「アーク冷却促進技術」と、絶縁性能を30%向上させる「高電圧導体の高密度絶縁コーティング技術」を開発しました。開閉装置の小型化を推進し、地球温暖化係数が高いSF6ガスの使用量の削減に貢献します。

② 鉄道事業者向け車両情報監視・分析システム「TIMA*2

当社最新の車両制御情報管理装置で収集した運行中の車両情報を、IoT技術の活用により可視化・分析するシステムを開発しました。ビッグデータの活用により、旅客サービス向上や運行支障時の対応の迅速化、定期検査・部品交換周期の最適化を推進し、鉄道のさらなる安全・安定運行に貢献します。

③ 高層ビル向けエレベーター用ロープ制振装置

強風や長周期地震動発生時に起きる高層ビルのエレベーターロープの揺れを抑制するロープ制振装置を開発しました。ロープの揺れによるエレベーターの運行休止頻度を低減することで安定運行を実現し、利用者の利便性の向上に貢献します。

 

(2) 産業メカトロニクス

FA制御システム機器、サーボモータなどの駆動機器、配電制御機器、メカトロ機器、産業用ロボット、電動パワーステアリングなどの自動車用電装品、カーマルチメディア機器、予防安全(自動運転)・運転支援系システムなどの競争力強化に向けた開発を行っています。当該分野における研究開発費は708億円であり、主な成果は以下のとおりです。

① 産業用PC「MELIPCシリーズ」

FA分野での制御用途およびエッジコンピューティング用途向けの産業用PC「MELIPCシリーズ」としてフラグシップモデル「MI5000」、ディスプレイ一体型パネルコンピュータ「MI3000」2機種、ミドルレンジモデル「MI2000」、小型・低コストモデル「MI1000」の計5機種を開発しました。生産現場のリアルタイムなデータ収集やITシステムとの連携、さまざまなデータを見える化することで生産現場のIoT化を実現し、生産性の向上に貢献します。

② ドライバーモニタリングシステム(DMS)

カメラで運転者・助手席搭乗者をモニタリングするDMSに個人認識判定の機能を搭載しました。個人を特定することで車内のHMI(Human Machine Interface)や機器設定をユーザーに合わせて最適化でき、快適な運転環境を提供することで安心・安全・快適な運転に貢献します。

 

(3) 情報通信システム

情報通信インフラやネットワークソリューション機器及び宇宙関連システムなどの開発を行っています。当該分野における研究開発費は153億円であり、主な成果は以下のとおりです。

① モービルマッピングシステム「MMS-G」

自動運転に用いる3次元地図作成やインフラ管理などで活用される高精度3次元移動計測装置であるモービルマッピングシステム(MMS)の新製品を開発しました。小型・軽量化により輸送や着脱が容易で、自動車、鉄道、船舶や台車などを用いた多くの計測用途に活用できます。

② IoTシステム対応三菱通信ゲートウェイ「温度拡張型IoT GW」

2017年に製品化した標準型IoT GWをベースに、無線WAN(Wide Area Network)通信機能、SDカードスロットを搭載しつつ、動作温度上限を55℃に拡張し、平置き設置を可能にした温度拡張型IoT GWを開発しました。

③ 電子署名クラウドサービス「MELSIGN」

HPKI(Healthcare Public Key Infrastructure)カードを用いて電子化された医療関連文書に対してオンラインでの署名や改ざん検知を可能とする機能を開発し、電子署名クラウドサービス「MELSIGN」としてサービスを開始しました。

 

(4) 電子デバイス

様々な事業分野を支える半導体デバイスなどの開発を行っています。当該分野における研究開発費は141億円であり、主な成果は以下のとおりです。

① 高性能パワー半導体モジュール

最新第7世代Siチップを搭載し、リフローはんだ付け実装に対応した表面実装パッケージ型IPM「MISOP」や、インバーターシステムの低損失化・小型化に寄与する「3.3kVフルSiCモジュール」を開発しました。

② 第5世代移動通信システム基地局対応の光・高周波デバイス

移動通信システムの高速大容量化・低消費電力化に寄与する、光通信用デバイス「25Gbps EML CAN」や、複数の周波数帯に1台で対応可能な「超広帯域デジタル制御GaN増幅器」を開発しました。

 

 

(5) 家庭電器

空調機器、調理家電、家事家電、照明機器、デジタル映像機器、電材住設機器、太陽光発電システムなどの開発を行っています。当該分野における研究開発費は438億円であり、主な成果は以下のとおりです。

① 三菱ルームエアコン「霧ヶ峰 FZシリーズ」

ルームエアコンの制御において、「おまかせA.I.自動」の機能向上により、少し先の部屋の温度と湿度の変化の予測に基づいて、最適な運転モードと気流に自動で切り替えることで、さらなる快適性と省エネ性を実現しました。この省エネ性能の向上により三菱ルームエアコン「霧ヶ峰 FZシリーズ」は、第1回エコプロアワードおよび平成30年度省エネ大賞を受賞しました。

② 軽量高吸塵コードレススティッククリーナ

小型でありながら業界トップクラス*3の高効率と、毎分12.5万回転の高速回転によるハイパワーを実現した高性能ブラシレスDCブロアーモーター「JCモーター」を搭載したコードレススティッククリーナHC-JXH「iNSTICK ZUBAQ」を開発しました。「JCモーター」の搭載により、高い吸塵性能と軽量化の両立を実現しました。

 

(6) その他・共通(先端技術・共通基盤技術)

社会課題解決による顧客価値の創出を目的として、先端技術の研究開発を推進しています。当該分野における研究開発費は339億円であり、主な成果は以下のとおりです。

① 金属三次元造形を高精度化する点造形技術

空孔がほとんどない高品質な三次元構造を高速で造形するレーザーワイヤーDED*4方式を採用した金属三次元造形装置において、レーザー技術、数値制御技術、CAM*5技術を連携させた、独自の高精度な点造形技術を開発し、従来の連続造形技術に比べ形状精度を60%(当社比)向上させました。

② 樹脂成形導波管スロットアレーアンテナ

樹脂成形とメッキを組み合わせた製造法の採用と独自の構造により、業界トップクラス*6の性能を有し、軽量化・低コスト化も実現した「樹脂成形導波管スロットアレーアンテナ」を開発しました*7。今後は気象レーダーや航空管制レーダー、地表観測用レーダー、衛星通信用アンテナなどの幅広い分野に向けた実用化に取り組みます。

③ シームレス音声認識技術

当社AI技術「Maisart*8」を用いて、世界で初めて*9不特定多数のユーザーが何語を話すか分からない状況でも高精度な音声認識を実現する「シームレス音声認識技術」を開発しました。複数の話者が同時に話し、音声が重なる状況にも対応します。

④ 3D計測データの欠損補完技術

3Dスキャナの計測データを設計に活用するため、データの欠損部分を補完する技術を開発しました。設計図面を入手できない古い他社設備の寸法をパソコン上で正確に抽出できるようにすることで、保守部品の設計を容易にしました。

 

 

*1 六フッ化硫黄。地球温暖化係数がCO2の22,800倍と環境負荷が高い

*2 Train Information Monitoring and Analysis system

*3 2018年4月5日当社調べ、家庭用コードレスクリーナ用途において

*4 DED :Directed Energy Deposition(指向性エネルギー堆積法)

    :集束された熱エネルギーを利用して材料を溶解・積層する造形プロセス

*5 CAM :Computer Aided Manufacturing(コンピューター支援製造)

    :入力された三次元形状データを基に、加工用プログラムの作成などの生産準備全般をコンピューター上で行う技術

*6 2019年1月25日現在。一般のパッチアレーアンテナとの比較において(当社調べ)

*7 国立研究開発法人 科学技術振興機構の研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)「卓越した電波干渉低減能力を有する新リッジ構造の樹脂製導波管アンテナの開発」の助成を受けて実施

*8 Mitsubishi Electric's AI creates the State-of-the-ART in technology

                            :全ての機器をより賢くすることを目指した当社のAI技術ブランド

*9 2019年2月13日現在(当社調べ)

 

 

  (注) 「第2 事業の状況」の各記載金額には消費税等を含んでいません。