第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1)経営方針

  [経営理念]

   富士電機は、地球社会の良き企業市民として、

   地域、顧客、パートナーとの信頼関係を深め、誠実にその使命を果たします。

 

   ●豊かさへの貢献

   ●創造への挑戦

   ●自然との調和

 

  [経営方針]

   1.エネルギー・環境技術の革新により、安全・安心で持続可能な社会の実現に貢献します。

   2.グローバルで事業を拡大し、成長する企業を目指します。

   3.多様な人材の意欲を尊重し、チームで総合力を発揮します。

 

(注)本有価証券報告書における「富士電機」の表現は、当社並びに子会社及び関連会社から成る企業集団を指します。

 

 

(2)経営環境及び優先的に対処すべき課題

 当社は2026年度を最終年度とする3カ年の中期経営計画において「利益重視経営による更なる企業価値向上」を基本方針に掲げ、営業利益率11%超、純利益率7%超、ROE12%以上、ROIC10%以上堅持を重要経営目標として定めています。持続的成長に向けた「経営基盤の強化」に取り組み、企業行動基準に基づき、ESG(環境、社会、ガバナンス)主要課題に対して、グローバルに活動を推進します。

<2025年度経営計画>

〔取り巻く事業環境〕

 当社を取り巻く事業環境は、AIデータセンターや半導体工場の新増設を背景にしたエネルギー需要の増大により、エネルギーの脱炭素化と安定供給、需要家の省エネ、電化のニーズが拡大しています。急速に進む少子高齢化、労働力不足への対応として、デジタル技術と生成AIの活用による事業機会が期待できます。

 

〔基本方針〕

・不確実性が増大する中で、変化への適応力を磨き、中期経営計画で掲げた利益重視の経営を推し進めます。

・需要の変化に適応した生産体制構築、生産能力向上へ向けた最適かつタイムリーな投資の実行、デジタル技術の活用による生産性向上に取り組みます。

 

〔経営計画〕

 中期経営計画の中間年度にあたる2025年度は売上高11,400億円、営業利益1,180億円、親会社株主に帰属する当期純利益810億円を経営目標に掲げ、各事業で以下のとおり取り組みます。なお、2025年度はセグメントを変更します。エネルギー事業に設備工事を編入しプラントシステム事業の強化、インダストリー事業に器具を編入しFAコンポーネントとのシナジーの創出に取り組み、両事業が核となり業績をけん引します。

 

2024年度

実績

2025年度

経営計画

増減

売上高

11,234億円

11,400億円

+166億円

営業利益

1,176億円

1,180億円

+  4億円

親会社株主に帰属する

当期純利益

922億円

810億円

△112億円

 

〔事業セグメント別の重点施策〕

■エネルギー

 お客様の脱炭素化のニーズ、エネルギー需要拡大や再生可能エネルギーの普及に欠かせない系統安定化市場の伸長が期待されており、発電プラント、変電システム及び、脱炭素ソリューションであるエネルギーマネジメントシステム、蓄電池システムで受注拡大を図ります。

 生産面では、無停電電源装置の新棟建設による生産能力増強、変電システムは、生産拠点最適化と早期の生産能力増強を図るとともに、デジタル技術を活用した生産性向上に取り組みます。

 

■インダストリー

 コンポーネント事業分野は、製販一体化による体質強化を図り、経営のスピードアップによる収益力向上を図ります。顧客価値創出を軸にした製品企画力を強化し、中長期的な成長を目指します。

 プラントシステム事業分野は、電気・熱エネルギーの省エネや電化を実現するソリューションを提供し受注拡大を図ります。

 高成長が続くインドで、新たにスマートメータ事業に参入し、事業拡大を図ります。

 

■半導体

 電装分野では、急拡大してきた電動車(BEV)市場の伸長が足元で鈍化していますが、中長期的には脱炭素化ニーズは拡大し、モビリティの電動化は成長することが期待できます。需要に対応した生産能力増強投資を推し進めます。

 産業分野は、伸長している再生可能エネルギー分野での売上を拡大し、原価低減による収益力向上を図ります。

 顧客の潜在ニーズを発掘し、従来顧客に加えて、新顧客へのスペックインを強化・加速します。

 

■食品流通

 環境負荷の高まりや労働力不足などの社会課題に対し、省エネ性能の向上やデジタル技術を活用した自販機オペレーションの効率化、需給状況に応じて商品価格を変動させるダイナミックプライシング対応機の展開により、お客様への提供価値を高め、商材の高付加価値化を進めます。

 また、外食や食品、流通業などの新しい分野にコア技術を活用した新商材をタイムリーに展開します。

 ものつくりでは、プラットフォーム設計の展開や内製化の拡大等による原価低減に加え、デジタル技術を活用した生産性向上により、更なる収益力の強化を図ります。

 

 

(3)2026年度中期経営計画の経営目標(連結)

 当社は、2026年度を最終年度とした3ヵ年中期経営計画「熱く、高く、そして優しく2026」を策定し、「利益重視経営による更なる企業価値向上」を基本方針に掲げ、「収益力の更なる強化」、「成長戦略の推進」、「経営基盤の強化」の重点戦略に取り組んでいます。

 本中期経営計画の経営目標(連結)は、次のとおりです。

 

2026年度中期経営計画

売上高

12,500億円

営業利益

1,400億円

営業利益率

11.2%

親会社株主に帰属する当期純利益

900億円

純利益率

7.2%

                     ※前提為替レート:1US$=140円、1EURO=150円、1人民元=19.5円

 

〔財務指標〕

ROE(自己資本利益率)

12%以上

ROIC(投下資本利益率)

10%以上

自己資本比率

50%程度

ネットD/Eレシオ

0.2倍程度

配当性向

30%目安

 

 

 (注)上記のうち、将来の経営目標等に関する記載は、本有価証券報告書の提出日現在において当社が合理的と判断した一定の前提に基づいたものであります。これらの記載は、実際の結果とは実質的に異なる可能性があり、当社はこれらの記載のうち、いかなる内容についても、確実性を保証するものではありません。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

富士電機のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、本有価証券報告書の提出日現在において当社が判断したものであります。

 

(1) ガバナンス

 富士電機は、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の経営理念、経営方針の実践により、安全・安心で持続可能な社会の実現に貢献します。その実現に向けて、ガバナンス全般は、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」に記載のとおりですが、サステナビリティ関連については、以下の体制で推進しています。

 環境、人権・人財活躍推進、持続可能なサプライチェーンの課題については、SDGs推進委員会において、半期に1回、方針・施策の審議、推進管理、評価、取締役会への報告を行います。また、コンプライアンスについては、遵法推進委員会において、半期に1回、コンプライアンス・プログラムの実施状況及び計画の審議を行い、審議内容を、年1回、取締役会に報告します。その他の課題については、各委員会において、方針・施策を審議し推進しています。

 

サステナビリティ課題の取組推進体制

 

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 ※「SDGs推進委員会」は2025年4月1日付で、「サステナビリティ委員会」に改称しております。

 

(2) 戦略

 サステナビリティに係る経営の重要課題(マテリアリティ)を「エネルギー・環境事業の推進」、「環境ビジョン2050の推進」、「ウェルビーイングの実現」、「ガバナンスの更なる徹底」と定め、事業を通じたSDGsの発展、脱炭素化などサステナブルな社会への貢献と企業価値向上を目指し、グローバルに活動を推進しております。

 なお、取り組み状況の詳細は、ホームページ及び統合報告書で開示しております。

 サステナビリティサイト:https://www.fujielectric.co.jp/about/csr/index.html

 統合報告書(富士電機レポート):https://www.fujielectric.co.jp/about/ir/library/index09.html

 

経営の重要課題(マテリアリティ)

エネルギー・環境事業の推進

「成長戦略の推進」

・新製品投入を核にした売上拡大

・海外事業の拡大

「収益力の更なる強化」

・デジタル活用による生産性向上

環境ビジョン2050の推進

温室効果ガス排出量の削減

サーキュラーエコノミーの推進

ウェルビーイングの実現

人権尊重

多様な人財の活躍推進

働きがいの向上

ガバナンスの更なる徹底

コーポレート・ガバナンスの実効性向上

グローバルコンプライアンスの徹底

リスクマネジメントの強化

 

■ 気候変動関連

気候変動関連については、地球環境保護への取り組みを経営の重要課題の一つと位置づけ、1992年に環境保護基本方針を制定・開示しています。地球環境保護に貢献する製品・技術の提供、製品ライフサイクルにおける環境負荷の低減、事業活動での環境負荷の削減などを規定し、社長COOがコミットしています。

 

本方針は、ホームページで開示しております。https://www.fujielectric.co.jp/about/csr/global_environment/protection_policy.html

 

2019年度には中長期的な環境活動の道標である「環境ビジョン2050」を制定し、脱炭素社会、循環型社会、自然共生社会の実現を柱として、グローバルに環境活動に取り組んでいます。2050年にサプライチェーン全体でカーボンニュートラルを目指すことを掲げ、2030年にはサプライチェーン全体の温室効果ガス排出量46%超削減、生産時の温室効果ガス排出量46%超削減を目標として定め、具体的な取り組みに着手しています。

※2019年度比

 

環境ビジョン2050

富士電機の革新的クリーンエネルギー技術・省エネ製品の普及拡大を通じ

「脱炭素社会」「循環型社会」「自然共生社会」の実現を目指します

脱炭素社会の実現

サプライチェーン全体でカーボンニュートラルを目指します

循環型社会の実現

ライフサイクル全体で環境負荷ゼロを目指し、グリーンサプライチェーンの構築を推進します

自然共生社会の実現

企業活動により生物多様性に貢献し生態系への影響ゼロを目指します

 

 2020年6月にはTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明しております。

 TCFD提言に沿って、気候変動に起因する重要なリスク・機会、適応策について毎年評価を行い、開示しています。

 2024年度は、温室効果ガス排出量の削減に必要な環境投資額等を見直すとともに、エネルギーの脱炭素化・分散化などの成長領域・新領域を事業機会として反映させました。

 なお、TCFDが推奨する4つの開示項目「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」及び取り組み状況の詳細は、ホームページで開示しております。

 サステナビリティサイト:https://www.fujielectric.co.jp/about/csr/index.html

 統合報告書(富士電機レポート):https://www.fujielectric.co.jp/about/ir/library/index09.html

 

■ 人的資本

 企業行動基準において、「富士電機とその社員は、企業活動にかかわるすべての人との関係において、人権を尊重します。加えて、多様な人財の活躍を推進し、一人ひとりが働きがいを持って、健康と安全に配慮した職場づくりに取り組みます。」と定めており、①「世界人権宣言」など人権に関する国際規範及び、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」を踏まえ、人権に関する悪影響を事前に認識し、防止し、対処するために人権デュー・デリジェンス、②多様な人財の就労や活躍を可能にする人事・処遇制度の構築及び、社員一人ひとりの成長とチームの総合力の発揮を実現する人財育成の強化、③社員の健康と安全を最優先し、効率的で働きやすい職場環境づくりに積極的に取り組んでおります。

 

 

(3) リスク管理

 「富士電機リスク管理規程」に基づきリスクを体系的、組織的に管理しています。同規程のもと、適切に管理・対処することでリスクの顕在化を未然に防止し、リスクによる影響の最小化を図っています。

 同規程に定めるリスク管理プロセス(PDCAサイクル)は以下のとおりです。

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 なお、富士電機の経営成績及び財務状況に影響を及ぼす可能性のある主要なリスクは、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりです。

 

(4) 指標・目標

 上記「(2)戦略」において記載したサステナビリティに係る経営の重要課題の推進の取り組みの方向性を明確にし、的確な進捗管理を可能とするための、具体的な指標・目標を設定し、取り組みを着実に実行しております。

 なお、「サステナビリティに係る経営の重要課題の推進」に関する指標・目標と実績の詳細は、ホームページ及び統合報告書で開示しております。

 サステナビリティサイト:https://www.fujielectric.co.jp/about/csr/index.html

 統合報告書(富士電機レポート):https://www.fujielectric.co.jp/about/ir/library/index09.html

 

■ 気候変動関連

 2050年にサプライチェーン全体でカーボンニュートラルを目指すことを掲げ、2030年度にはサプライチェーン全体の温室効果ガス排出量46%超削減、生産時の温室効果ガス排出量46%超削減、製品による社会のCO2排出量削減5,900万トン超/年、を目標として定め、具体的な取り組みに着手しています。2024年度は、サーキュラーエコノミーのグローバルな動向に合わせて、新たな2030年度目標「エコデザイン規則に適応した環境配慮型製品への移行」「廃棄物最終処分率(廃プラ含む)0.5%未満」を設定しました。

 

環境ビジョン2050・2030年度目標と進捗

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※赤枠は、「環境ビジョン2050」の2030年度目標

■ 人的資本

人的資本に関する取組に関する指標としては、毎年実施している社員意識調査における代表設問の回答結果を用いております。

指標

2026年度目標

2024年度実績

会社満足度

3.8pt以上

3.8pt

ウェルビーイング指数

3.6pt以上

3.6pt

※会社満足度:総合的な会社満足度を示す代表設問に対する回答平均値

 ウェルビーイング指数:仕事のやりがい、ワーク・ライフ・バランス、心身の健康、評価の納得度に関する

 設問に対する回答平均値

 (1~5ptの5段階評価、点数が高い方が肯定的)

※調査対象範囲は当社及び国内外連結子会社

 

 (人的資本に関する2024年度の主な取組)

①  人権尊重

・人権啓発活動の推進

・人権・労働アセスメントの実施(計79拠点)

②  多様な人財の活躍推進

・経営人財の育成強化

 - 次世代経営人財登録者数45名(2026年度目標50名)

 - 選抜研修

 - ライン後継者計画制度

・グローバル人財の育成強化

 - 海外拠点のキーポジション見える化・教育付与(7名)

・女性の活躍推進 (注)1

 - 女性採用比率20%(2026年度目標20%以上)

 - 女性役職者数342名(2026年度目標450名)

・シニア社員の活躍推進 (注)1

 - 65歳定年制への変更、処遇の引き上げ(一般社員層) (注)2

・障がい者の職域拡大 (注)3

 - 障がい者雇用率2.95%

③  働きがいのある職場づ

   くり

・キャリア形成支援

 - 世代別キャリア教育のトライアル導入(380名受講)

 - 公募制度の活性化(計28名異動)

・時間外労働縮減・休暇取得日数向上

 - 月当たり平均時間外労働18.6時間(対前年▲1.3時間)

 - 年間の平均休暇取得日数18.3日(対前年+0.2日)

・両立支援

 - 介護・看護事由による在宅の日数上限撤廃

・働きやすい職場環境整備

 - オフィスのフリーアドレス化推進

(注)1.当社並びに当社と同一の人事制度を採用する子会社(6社)

   2.2025年度より適用

   3.特例子会社制度によるグループ適用会社(6社)

 

3【事業等のリスク】

 富士電機は、事業等のリスクに関し、組織的・体系的に管理し、適切な対応を図って、影響の極小化に努めております。現在、富士電機の経営成績及び財務状況に影響を及ぼす可能性のある主要なリスクには以下のものがあります。なお、将来に関する事項につきましては、本有価証券報告書提出日(2025年6月23日)現在において、当社が判断したものであります。

 

 

リスク項目

リスク内容

経営戦略

事業戦略

事業環境

・富士電機は、成長が見込める事業に対し迅速に経営資源を集中させ、事業の拡大・発展を目指し、設備投資、研究開発投資を行っています。多額の資金を必要とする半導体の設備投資については、顧客との物量・価格面での交渉をもとに設備投資の判断を行うとともに、研究開発投資については、事業戦略との整合性や事業への貢献度を重視し、ロードマップに基づき、富士電機の将来を支える基盤・先端技術の研究開発を進め、主要な開発テーマは定期的に経営陣にて審議するとともに、市場の変化に応じてロードマップを随時見直しています。しかし、半導体分野の製品サイクルは短く、また製品需給の変動や競争が激しいことから、投資を回収できない可能性があり、そうした場合には、富士電機の業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

・富士電機は、エネルギー・環境事業を通じ持続可能な社会の実現に貢献して行くとともに、地球環境保護への取り組みを経営の重要課題と位置付け、サプライチェーン全体で脱炭素社会、循環型社会、自然共生社会の実現を目指す「環境ビジョン2050」を推し進めています。また、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に賛同表明し、長期的な視点に立った気候変動によるリスク分析を行っています。しかし、パリ協定等の環境規制の強化や、ESG評価機関からの取り組み評価により、富士電機の一部事業(石炭火力発電事業)への批判が強まった場合は、富士電機の評判や業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

・富士電機は、世界各地に事業拠点を展開し、各地域の市場・顧客に向けて製品・サービスを提供しています。各国において感染症等が拡大し経済活動が制限された場合、営業活動の制約や工場の稼働停止、現地工事の出張規制等、事業活動にさまざまな影響を及ぼすことが懸念され、富士電機の業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

コーポレート・ガバナンス

・4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要に記載のとおり、富士電機は、平時より経営の透明性や監査機能の向上を図ることにより、コーポレート・ガバナンスの強化に取り組んでいますが、予期せぬ事態の発生により、内部統制や監査機能に不備が生じ、コーポレート・ガバナンスが機能不全に陥った場合は、経営に混乱をきたす等、富士電機の業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

事業再編・

提携・撤退

・富士電機は、各事業分野における競争力強化のため第三者とのM&A・合弁・業務提携等の協業に積極的に取り組んでおり、事業戦略、技術、製品及び人事等の統合に向け、経営理念や経営方針、企業行動基準、経営計画や事業戦略等を共有するとともに、経営会議等により緊密なコミュニケーションを図ること等により、良好な関係構築に取り組んでいますが、制度、文化面などの相違から十分な成果が得られない場合は、富士電機の業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

マーケティング・営業・受注

・富士電機は、国内市場のみならず海外市場への積極的な展開を図っており、特に中国をはじめとしたアジア市場向けの販売拡大に注力しています。富士電機は世界の各市場に営業拠点を展開して顧客動向を把握し、その情報を一元管理して分析と対策の検討を行う等、機会損失を回避する取り組みを行うとともに、海外及び国内の市場動向による業績影響の極小化に向け、コストダウンや総経費の圧縮に努めておりますが、民間設備投資や公共投資をはじめとする各国における市場環境の悪化、各市場における製品需給の急激な変動や競争の激化、及びそれらに伴う価格レベルの大幅な下落があった場合は、富士電機の業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

・富士電機は、エネルギー分野、インダストリー分野等において、大型プラント案件の受注活動を行っており、各案件において適正な利益を確保できるよう、受注時における見積りの精度向上、受注後のプロジェクト管理の強化等に取り組んでおりますが、受注後の予期せぬ仕様変更、工程遅延や自然災害等による採算悪化により、富士電機の業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

リスク項目

リスク内容

開発・設計

エンジニアリング

・富士電機は、研究開発を加速するため研究開発体制を整備し、常に市場・顧客のニーズや最新の技術動向を見極めつつ、パワーエレクトロニクス技術やパワー半導体技術を中心に強いコンポーネントとシステムを創出する研究開発、及び要素技術の複合により顧客価値を生むソリューションの研究開発に注力しています。しかし、急速な技術の進歩により他社に優位性を奪われたり、計画どおりに開発が進まずに適切な時機に市場への製品投入ができない可能性があり、そうした場合には、富士電機の業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

調達・手配

・富士電機は、原材料価格高騰リスクに対して商品スワップ取引を行う等、リスクの軽減に努めていますが、円安を背景とした原材料・部品価格の上昇に加え、新興国の急激な需要増等の情勢変化によっては素材・原材料の需給逼迫が見込まれ、これらの価格が大幅に上昇した場合には、富士電機の業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

生産・製造

出荷・物流

据付・引渡

サービス

・富士電機は、経営会議での営業部門と事業部門の情報共有等により、常に最新の物量動向を把握するとともに、生産性向上や地産地消の推進等で物量変動に対応できる最適な生産管理体制を構築していますが、予期せぬ事態により、製品需要の増(減)など物量動向の変化への対応が遅れた場合には、在庫不足(過剰)を招き、富士電機の業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

・富士電機は、サプライチェーン改革活動に基づく地産地消での「地域完結型」ものつくりの推進、グローバル調達の推進等に取り組んでおりますが、予期せぬ事態により、ヒト・モノの移動が制限され物流網が寸断された場合、サプライチェーンが機能せず、納期遅延等により富士電機の業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

品質保証

・富士電機は、生産・販売する製品・サービスについて、品質管理体制を整備し、高い品質水準の確保に努めるとともに、必要な保険に加入しておりますが、予期せぬ事態により品質問題が発生した場合、富士電機の業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

人的資源・

労務

・富士電機の事業活動は人財に大きく依存しており、技術・生産・販売・経営管理などの各分野において優秀な人財の確保・育成に向け、グローバル競争力強化につながる「プロフェッショナルな人財の育成」に注力し、積極的に社員の教育・研修を実施するとともに、キャリア採用拡大等により、優秀人財の確保に取り組んでいますが、そうした必要な人財を確保・育成できない場合、富士電機の業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

10

財務・会計・税務

・富士電機は、資金調達コストを最小化するべく、社債・CP・短期借入・長期借入の最適ミックスを常に検証し、機動的・安定的な資金調達が可能となるよう取り組んでいますが、金利が想定以上に上昇した場合、有利子負債に対する金利負担の増大を招くことにより、富士電機の業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

・富士電機は、債権の長期滞留調査や取引先の財務状況のモニタリング等、与信管理強化を図ることにより、売上債権の回収促進に取り組んでいますが、経済活動制限や景気低迷等により、取引先の資金繰りが悪化して債権回収不能となった場合、富士電機の業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

 

リスク項目

リスク内容

11

法務・倫理

・富士電機は、さまざまな事業分野及び世界の各地域において、各国の法令、規則等の適用を受けて事業活動を行っております。当社は代表取締役が委員長を務める「富士電機遵法推進委員会」において法令遵守の徹底を図るとともに、規制法令毎に社内ルール、監視、監査、教育の各側面において役割・責任を明確にしたコンプライアンスプログラム及び内部者通報制度等のコンプライアンス体制を整備しておりますが、法令違反等が発生した場合には、富士電機の社会的信用や業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

・富士電機は、訴訟等の法的紛争に備え、適切なタスクフォースの組成により、必要プロセス(事実調査、是正措置、再発防止、社内処分、開示)を迅速に行う体制を構築しておりますが、予期せぬ多額の賠償を命じられた場合、それらの決定の内容によっては、富士電機の業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

・富士電機は、知的財産権を効果的に守り、他社の権利を尊重した製品・技術の開発を進めておりますが、技術革新のスピードが加速していること、事業活動がグローバルに展開していることから、知的財産権の係争が発生した場合、富士電機の業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

12

政治情勢

社会経済動向

・富士電機は、為替変動リスクによる業績への影響を最小限に止めることを目的として、一定の基準に従って為替予約を実施しておりますが、米ドルを中心とした対円為替相場の変動により富士電機の業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

・富士電機は、中国やアジアを中心に多くの海外市場で事業展開しており、地政学リスクの最新情報を常時注視するとともに、想定外のリスクに備え、生産・販売拠点の分散化を図っておりますが、海外の国々で次のような事象が発生した場合は、富士電機の業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

○予期しえない法律・規制、不利な影響を及ぼす租税制度の変更

○不利な政治的要因の発生

○社会騒乱、テロ、戦争等による社会的混乱

13

株主・投資家の動向

・富士電機は、財務情報に係る開示や非財務情報の積極的な開示並びに株主・機関投資家とのコミュニケーションを重視するとともに、ディスクロージャーポリシーに則った誠実且つ正確な情報開示を行う等、当社経営への理解を促す取り組みを行っておりますが、株主・投資家の意向と当社経営の意向に齟齬が生じる等により、役員選任議案に反対票を投じられたり、その他当社経営に対する株主提案を受けた場合、経営に混乱をきたす等、富士電機の業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

14

自然災害・

事故

・富士電機は、世界各地に事業拠点を展開しており、災害や事故発生時において製品・サービスの供給を継続し、顧客や社会に対する責任を果たすため、社内に危機管理対応の専門部門を設置し、防火・防災の取り組み、事業継続計画(BCP)の策定及び必要な保険に加入する等、「事業継続力強化」に取り組んでおります。しかし、これら事業拠点において大規模な災害や事故等が発生した場合には、生産設備の破損、操業の中断、製品出荷の遅延等が生じ、富士電機の業績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。

15

情報システム

・富士電機は、多様化・高度化するサイバーセキュリティ脅威への対応のため、対策システムの整備及びセキュリティ対応組織(CSIRT/SOC)を設置し、攻撃の監視・制御を実施するとともに、新たな脅威の出現に備え、防御、検知システムの増強、サイバー訓練などの対応力強化を継続的に進めていますが、外部攻撃(サイバーテロ等)により機能不全、情報漏洩等の問題が発生し、社会的信用を失墜させた場合、富士電機の業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1)経営成績

当社は、当事業年度より、2026年度を最終年度とする3ヵ年中期経営計画「熱く、高く、そして優しく2026」をスタートしました。「利益重視経営による更なる企業価値向上」を基本方針として、「収益力の強化」、「成長戦略の推進」並びに「経営基盤の強化」を推し進めるとともに、外部環境変化への適応力を一層強化し、売上・利益の拡大と持続的な企業価値向上を目指しています。

 

当期における当社を取り巻く市場環境は、脱炭素化や循環経済への移行、デジタル化に向けた投資の拡大を背景に、製造業やデータセンターにおける設備投資が堅調に推移した一方で、中国経済の回復は足踏み状態にあり、工作機械関連等の需要は低調に推移したほか、電動車(xEV)市場は地域毎の強弱があり、伸長は想定よりも緩やかなものとなりました。また、米国の通商政策により世界経済の見通しは不確実性が増大しており、市場の動向に一層の注視が必要な状況となりました。

 

 当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度に比べ1.8%増収の1兆1,234億7百万円となりました。部門別には、「エネルギー」、「半導体」、「食品流通」は前連結会計年度を上回りましたが、「インダストリー」は前連結会計年度を下回りました。国内売上高は、前連結会計年度に比べ3.5%増収の7,979億23百万円となりました。また、海外売上高は、前連結会計年度に比べ2.1%減収の3,254億83百万円となりました。なお、売上高に対する海外売上高の比率は、前連結会計年度に比べ1.2ポイント減少して29.0%となりました。

 売上原価は、前連結会計年度に比べ0.7%増加し8,055億5百万円となりました。売上高に対する売上原価の比率は、前連結会計年度に比べ0.8ポイント減少して71.7%となりました。

 販売費及び一般管理費は、前連結会計年度に比べ1.5%増加し2,002億54百万円となりました。売上高に対する販売費及び一般管理費の比率は、前連結会計年度に比べ0.1ポイント減少して17.8%となりました。

 営業利益は、原材料価格の高騰影響や、コンポーネントの物量減少影響があったものの、プラント、システムの需要増加、高付加価値商材の投入や製品販売価格の値上げ、原価低減の推進、為替影響等により、前連結会計年度に比べ115億80百万円増加し、1,176億46百万円となりました。売上高に対する営業利益の比率は、前連結会計年度に比べ0.9ポイント増加して10.5%となっております。

 営業外収益(費用)は、前連結会計年度の17億56百万円の収益(純額)から、11億12百万円の収益(純額)となり、前連結会計年度に比べ6億44百万円の収益(純額)の減少となりました。これは、事業転換費用が19億15百万円減少した一方で、前連結会計年度において24億19百万円であった為替差益が当連結会計年度は11億26百万円の差損に転じたことなどによるものであります。

 これらの結果、経常利益は、前連結会計年度に比べ109億37百万円増加し、1,187億59百万円となりました。

 特別利益は、固定資産売却益及び投資有価証券売却益、受取和解金を計上し、197億77百万円となりました。なお、主に投資有価証券売却益の計上額が増加したことにより、前連結会計年度に比べ112億23百万円増加しております。

 特別損失は、固定資産処分損及び投資有価証券評価損、和解金を計上し、48億74百万円となりました。なお、主に和解金を計上したことにより、前連結会計年度に比べ25億30百万円の増加となりました。

 以上により、税金等調整前当期純利益は1,336億61百万円となり、前連結会計年度に比べ196億29百万円の増加となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、法人税、住民税及び事業税等の税金費用369億80百万円を税金等調整前当期純利益から控除し、更に、非支配株主に帰属する当期純利益44億41百万円を控除した結果、922億39百万円となり、前連結会計年度に比べ168億86百万円の増加となりました。

 

 

 セグメント別の内容は、次のとおりであります。

 

■エネルギー部門

売上高:3,509億9百万円(前期比 2.4%増加) 営業損益:321億25百万円(前期比 19億79百万円増加)

発電プラント分野における費用増加や、器具分野の需要回復の遅れによる需要減少等があったものの、エネルギーマネジメント分野、施設・電源分野におけるプラント、システムの需要増加により、売上高、営業損益ともに前期を上回りました。

・発電プラント分野は、再生可能エネルギーの大口案件の影響等により、売上高は前期を上回りましたが、火力・地熱案件の費用増により、営業損益は前期を下回りました。

・エネルギーマネジメント分野は、電力、産業及び鉄道向け変電機器の大口案件の増加等により、売上高、営業損益ともに前期を上回りました。

・施設・電源システム分野は、海外における半導体メーカ向け大口案件の減少はあったものの、データセンター向け需要の増加により、売上高、営業損益ともに前期を上回りました。

・器具分野は、機械セットメーカ向け需要回復の遅れに伴う需要減少により、売上高は前期を下回りました。営業損益は、売上高の減少と原材料価格の高騰影響により、前期を下回りました。

なお、当連結会計年度の受注高は2,924億円(富士電機㈱のエネルギー部門単独ベース)となっております。

 

■インダストリー部門

売上高:4,124億43百万円(前期比 1.8%減少) 営業損益:381億64百万円(前期比 39億円増加)

オートメーション分野における低圧インバータの需要減や、設備工事分野における大口案件影響により、売上高は前期を下回りましたが、オートメーション分野のプロセスオートメーション、社会ソリューション分野、DXソリューション分野の需要増加等により、営業損益は前期を上回りました。

・オートメーション分野は、プロセスオートメーションにおける駆動制御システム等の需要増加等、プラントは好調であったものの、ファクトリーオートメーションにおける低圧インバータの在庫調整継続の影響により、売上高、営業損益ともに前期を下回りました。

・社会ソリューション分野は、輸送システムの需要増を主因として、売上高、営業損益ともに前期を上回りました。

・DXソリューション分野は、ITソリューションにおける大口案件の増加により、売上高、営業損益ともに前期を上回りました。

・設備工事分野は、前期の空調設備工事の大口案件影響により、売上高は前期を下回りました。営業損益は案件差や原価低減の推進等により、前期を上回りました。

なお、当連結会計年度の受注高は1,932億円(富士電機㈱のインダストリー部門単独ベース)となっております。

 

(注)当連結会計年度より、従来の「ITソリューション分野」を「DXソリューション分野」に改称するとともに、「情報ソリューション」を「社会ソリューション分野」から「DXソリューション分野」へ移管しております。なお、各分野の前期比につきましては、前期の数値を移管後の分野に組み替えたうえで算出しております。

 

■半導体部門

売上高:2,367億88百万円(前期比 3.8%増加) 営業損益:370億81百万円(前期比 9億17百万円増加)

・売上高は、電装分野では、電動車(xEV)向けパワー半導体の海外向けの需要は低調であったものの、国内向けの需要増により、前期を上回りました。産業分野では、国内での需要減があったものの、海外における再生可能エネルギー向けを中心とした需要増により、前期を上回りました。営業損益は、生産能力増強に係る費用の増加、原材料価格の高騰等があったものの、売上高の増加や販売価格の改定により、前期を上回りました。

なお、当連結会計年度の受注高は1,957億円(富士電機㈱の半導体部門単独ベース)となっております。

 

■食品流通部門

売上高:1,114億97百万円(前期比 3.9%増加) 営業損益:139億2百万円(前期比 50億99百万円増加)

・自販機分野は、国内の需要拡大に加え、原価低減の推進等により、売上高、営業損益ともに前期を上回りました。

・店舗流通分野は、新紙幣発行に伴う自動釣銭機の改刷対応特需を主因として、売上高、営業損益ともに前期を上回りました。

なお、当連結会計年度の受注高は1,075億円(富士電機㈱の食品流通部門単独ベース)となっております。

 

■その他部門

売上高:561億48百万円(前期比 11.1%減少) 営業損益:37億62百万円(前期比 5億49百万円減少)

 

生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。

① 生産実績

富士電機の生産品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではないため、セグメントごとに生産規模を金額又は数量で示すことはしておりません。

 

② 受注実績

富士電機の生産・販売品目も広範囲かつ多種多様にわたっており、受注生産形態をとらない製品も多く、セグメントごとに受注規模を金額又は数量で示すことはしておりません。このため受注実績については、「(1)経営成績」におけるセグメント別の内容に関連付けて示しております。

③ 販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前連結会計年度比(%)

エネルギー

350,909

102.4

インダストリー

412,443

98.2

半導体

236,788

103.8

食品流通

111,497

103.9

その他

56,148

88.9

消去

△44,380

-

合計

1,123,407

101.8

 

(2)財政状態

 当連結会計年度末の総資産額は1兆3,121億75百万円となり、前連結会計年度末に比べ410億1百万円増加しました。

 流動資産は7,666億72百万円となり、前連結会計年度末に比べ36億円増加しました。これは、前連結会計年度末に比べ売掛金が80億19百万円減少した一方で、棚卸資産が125億15百万円増加したことなどによるものであります。

 固定資産は5,454億35百万円となり、前連結会計年度末に比べ373億71百万円増加しました。このうち、有形固定資産と無形固定資産の合計は3,773億93百万円となり、前連結会計年度末に比べ404億75百万円増加しました。また、投資その他の資産は1,680億42百万円となり、前連結会計年度末に比べ31億3百万円減少しました。これは、前連結会計年度末に比べ投資有価証券が、売却を主因として97億14百万円減少したことなどによるものであります。

 当連結会計年度末の負債合計は5,815億17百万円となり、前連結会計年度末に比べ281億84百万円減少しました。

 流動負債は4,314億66百万円となり、前連結会計年度末に比べ438億76百万円減少しました。これは、前連結会計年度末に比べコマーシャル・ペーパーが360億円減少したことなどによるものであります。

 固定負債は1,500億50百万円となり、前連結会計年度末に比べ156億91百万円増加しました。これは、前連結会計年度末に比べ長期借入金が149億73百万円増加したことなどによるものであります。

 なお、当連結会計年度末の有利子負債残高は1,048億76百万円となり、前連結会計年度末に比べ580億30百万円減少しました。また、同残高の総資産に対する比率は8.0%となり、前連結会計年度末に比べ4.8ポイント減少しました。

 

 当連結会計年度末の純資産合計は7,306億58百万円となり、前連結会計年度末に比べ691億86百万円増加しました。これは、前連結会計年度末に比べ利益剰余金が707億50百万円増加したことなどによるものであります。これらの結果、自己資本比率は52.7%となり、前連結会計年度末に比べ5.3ポイント増加しました。

 

 セグメント別の内容は、次のとおりであります。

■エネルギー部門

 当連結会計年度末のセグメント資産は3,505億88百万円となり、契約資産、有形固定資産の増加を主因として、前連結会計年度末に比べ225億64百万円増加しました。

 

■インダストリー部門

 当連結会計年度末のセグメント資産は3,563億67百万円となり、売掛金、契約資産の減少を主因として、前連結会計年度末に比べ227億96百万円減少しました。

 

■半導体部門

 当連結会計年度末のセグメント資産は4,164億21百万円となり、売掛金、棚卸資産、有形固定資産の増加を主因として、前連結会計年度末に比べ610億18百万円増加しました。

 

■食品流通部門

 当連結会計年度末のセグメント資産は628億25百万円となり、棚卸資産の減少を主因として、前連結会計年度末に比べ16億69百万円減少しました。

 

■その他部門

 当連結会計年度末のセグメント資産は309億89百万円となり、前連結会計年度末に比べ54億34百万円減少しました。

 

(3)キャッシュ・フロー

 当連結会計年度における連結ベースのフリー・キャッシュ・フロー(「営業活動によるキャッシュ・フロー」+「投資活動によるキャッシュ・フロー」)は、815億36百万円の現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の増加(前連結会計年度は224億39百万円の増加)となり、前連結会計年度に対しては、590億97百万円の資金流入額の増加となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度において営業活動による資金の増加は1,449億20百万円(前連結会計年度は848億58百万円の増加)となりました。これは仕入債務の減少並びに棚卸資産が増加した一方で、税金等調整前当期純利益の計上などによるものであります。
 前連結会計年度に対しては、600億62百万円の資金流入額の増加となりました。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度において投資活動による資金の減少は633億84百万円(前連結会計年度は624億18百万円の減少)となりました。これは、投資有価証券を売却した一方で、有形固定資産を取得したことなどによるものであります。
 前連結会計年度に対しては、9億66百万円の資金流出額の増加となりました。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度において財務活動による資金の減少は862億46百万円(前連結会計年度は458億67百万円の減少)となりました。これは、主として、コマーシャル・ペーパーの減少、長期借入金並びにリース債務の返済などによるものであります。
 前連結会計年度に対しては、403億79百万円の資金流出額の増加となりました。

 当連結会計年度における資本の財源は営業活動によるキャッシュ・フローであり、その主な内訳は、税金等調整前当期純利益1,336億61百万円、減価償却費573億41百万円、契約負債の増加によるもの121億4百万円、売上債権及び契約資産の減少によるもの117億70百万円、法人税等の支払額△336億62百万円、投資有価証券売却損益△166億44百万円、仕入債務の減少によるもの△149億99百万円、棚卸資産の増加によるもの△116億70百万円、などとなっております。
 なお、当社グループは事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としており、設備投資に係る資金については、基本的に、社債及び長期借入金より調達することとしております。

 これらの結果、当連結会計年度末における連結ベースの資金は、前連結会計年度末に比べ28億68百万円(4.4%)減少し、626億75百万円となりました。

 

 

(4)経営上の目標の達成状況(連結)

 当社は、2026年度を最終年度とした3ヵ年中期経営計画「熱く、高く、そして優しく2026」を策定し、「利益重視経営による更なる企業価値向上」を基本方針に掲げ、「収益力の更なる強化」、「成長戦略の推進」、「経営基盤の強化」の重点戦略に取り組んでいます。

 2024年度連結実績においては、中期経営計画で掲げた2026年度の目標値に対して、次のとおりとなっております。

 

2026年度

中期経営計画

2024年度

実績

増減

売上高

12,500億円

11,234億円

△1,265億円

営業利益

1,400億円

1,176億円

△223億円

営業利益率

11.2%

10.5%

△0.7pt

親会社株主に

帰属する当期純利益

900億円

922億円

+22億円

純利益率

7.2%

8.2%

+1.0%

 

〔財務指標〕

ROE(自己資本利益率)

12%以上

14.3%

ROIC(投下資本利益率)

10%以上

12.9%

自己資本比率

50%程度

52.7%

ネットD/Eレシオ

0.2倍程度

0.1倍

配当性向

30%目安

24.9%

 

(5)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表を作成するにあたり、当社グループが採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しているとおりであります。連結財務諸表の作成には、資産、負債、収益及び費用の額に影響を与える見積り及び仮定を必要とします。これらの見積り及び仮定は、過去の実績や当連結会計年度末時点で入手可能な情報を総合的に勘案し合理的に判断しておりますが、見積り特有の不確実性が存在するため、実際の結果は異なることがあります。

 当社が連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであると考えております。

 

①履行義務の充足に係る進捗度を見積り、当該進捗度に基づき一定の期間にわたり認識する収益について

 当社グループは、個別受注生産による製品の販売及び工事契約による請負、役務の提供(以下、工事契約等)については、履行義務の充足に係る進捗度を見積り、当該進捗度に基づき一定の期間にわたり収益を認識する方法(履行義務の充足に係る進捗度の見積りはコストに基づくインプット法)を適用しております。履行義務の充足に係る進捗度は案件の原価総額の見積りに対する連結会計年度末までの発生原価の割合に基づき算定しております。当該見積りについて将来の事業環境の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において認識する収益及び費用の金額に影響を与える可能性があります。

 

②固定資産(のれんを含む)の減損判定

 当社グループは、保有する固定資産(のれんを含む)について減損の兆候がある場合は、当該資産又は資産グループについて減損損失を認識するかどうかの判定を行い、減損が必要と判定された場合は帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。減損損失を認識するかどうかの判定及び減損損失の測定に用いられる当該資産又は資産グループから得られる将来キャッシュ・フローの見積り及び仮定等について将来の事業環境の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において減損損失が発生する可能性があります。

 

③投資有価証券の減損判定

 当社グループは、上場株式は相場価格を用いて時価を算定しております。期末における当該時価が取得原価に比べ50%以上下落した場合は減損処理を行い、30~50%程度下落した場合には、回復可能性を考慮して減損処理を行っております。また、非上場株式等の市場価格のない株式等については、財政状態の悪化により実質価額が著しく低下した場合は、回復可能性を考慮して減損処理を行っております。将来の市況悪化又は投資先の業績不振等、現在の見積り及び仮定に反映されていない事象が発生した場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において評価損が発生する可能性があります。

 

④繰延税金資産の回収可能性

 当社グループは、将来の課税所得を合理的に見積り、回収可能性を判断したうえで繰延税金資産を認識しております。将来の課税所得の見積りについて、将来の事業環境の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において認識する繰延税金資産及び法人税等調整額の金額に影響を与える可能性があります。

 

⑤退職給付債務の算定

 当社グループには、確定給付制度を採用している会社が存在します。確定給付制度の退職給付債務は、数理計算上の仮定を用いて算定しており、当該数理計算上の仮定には、割引率、退職率、昇給率等の様々な計算基礎があります。当該見積り及び当該仮定について、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表における退職給付に係る資産、退職給付に係る負債及び退職給付に係る調整累計額の金額に影響を与える可能性があります。

 

 なお、当連結会計年度末の退職給付債務の算定に用いた主要な数理計算上の仮定は、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (退職給付関係)(9)数理計算上の計算基礎に関する事項」に記載しているとおりであります。

 

 

5【重要な契約等】

1)富士古河E&C株式会社を完全子会社とする株式交換

 

当社は、2024年10月31日開催の取締役会決議に基づき、富士古河E&C株式会社(2025年2月3日に富士電機E&C株式会社に商号変更)との間で、両社の既存事業・技術と新たに創出するシナジーを活かした更なる協業体制の強化とそれによる経営資源の有効活用、重複機能の解消による経営資源の最適な配分等、さらに踏み込んだグループ一体化経営を実現することで、富士古河E&C株式会社を含んだ当社全体の企業価値向上を目指すことを目的として、2024年10月31日に株式交換契約を締結しました。

 

株式交換の概要は以下のとおりです。

 

(1)株式交換の内容

当社を完全親会社とし、富士古河E&C株式会社を完全子会社とする株式交換

 

(2)株式交換の日

2025年2月3日

 

(3)株式交換の方法

株式交換日現在の富士古河E&C株式会社の株主名簿に記載又は記録された株主に対して、当社は普通株式4,495,801株を割当交付しました。なお、当社が交付する株式は、当社が保有する自己株式を充当しており、割当交付に際して新たに株式を発行しておりません。

 

(4)株式交換比率

 

当社

富士古河E&C株式会社

株式交換比率

0.93

 

(5)株式交換比率の算定根拠

株式交換比率の算定にあたって、当社はSMBC日興証券株式会社、富士古河E&C株式会社はみずほ証券株式会社を財務アドバイザーに任命しました。

SMBC日興証券株式会社は、当社については市場株価法、富士古河E&C株式会社については市場株価法、類似上場会社比較法及びディスカウンテッド・キャッシュ・フロー法(DCF法)による分析を行い、これらを総合的に勘案して株式交換比率を算定しました。

みずほ証券株式会社は、当社については市場株価基準法、富士古河E&C株式会社については市場株価基準法、類似企業比較法及びDCF法による分析を行い、これらを総合的に勘案して株式交換比率を算定しました。

これらの算定結果を参考に当事者間で協議し株式交換比率を決定しました。

 

 

(6)株式交換完全親会社となる会社の概要

(1)商号

富士電機株式会社

(2)事業内容

エネルギー、産業、輸送その他社会インフラに関する各種機器、システム及び半導体デバイス、自動販売機、店舗設備機器の開発、製造、販売、サービス並びにこれらに関するソリューションの提供

(3)設立年月日

1923年8月29日

(4)本店所在地

川崎市川崎区田辺新田1番1号

(5)代表者の役職・氏名

代表取締役会長CEO 北澤 通宏

代表取締役社長COO 近藤 史郎

(6)資本金

47,586百万円

(7)発行済株式数

149,296,991株

(8)決算期

3月31日

(9)大株主及び持株比率

(2024年3月31日現在)

日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 17.58%

株式会社日本カストディ銀行(信託口) 11.92%

朝日生命保険相互会社 2.77%

全国共済農業協同組合連合会 2.14%

MSIP CLIENT SECURITIES 1.88%

ファナック株式会社 1.88%

STATE STREET BANK WEST CLIENT - TREATY 505234 1.69%

SSBTC CLIENT OMNIBUS ACCOUNT 1.56%

古河機械金属株式会社 1.54%

NORTHERN TRUST CO. (AVFC) RE FIDELITY FUNDS 1.50%

(10)直近事業年度の財政

状況及び経営成績

2024年3月期(連結)

純資産

661,472百万円

総資産

1,271,174百万円

1株当たり純資産

4,218.41円

売上高

1,103,214百万円

営業利益

106,066百万円

経常利益

107,822百万円

親会社株主に帰属する

当期純利益

75,353百万円

1株当たり当期純利益

527.57円

 

 

2)株式会社高柳富士の吸収合併

 

当社は、2025年5月23日開催の取締役会において、当社子会社である株式会社高柳富士を2025年5月30日に完全子会社化したうえで、当社への吸収合併の契約締結について決議を行い、2025年6月2日に同社と合併契約を締結しました。

 

合併の概要は以下のとおりです。

 

(1)合併の目的

株式会社高柳富士は中型回転機(誘導機・発電機)の巻き線加工の事業を行う当社子会社として、当社オートメーション事業の発展に貢献してきましたが、株式会社高柳富士が保有する巻き線加工における高度かつ専門的な技能を当社に取り込み、徹底的な合理化、標準化、自動化により内製化を加速推進し、コスト、品質面での強化を図る目的で合併することといたしました。

 

(2)合併の方法

当社を存続会社、株式会社高柳富士を消滅会社とする吸収合併

 

(3)合併に際して発行する株式及び割当

当社完全子会社との合併であるため、本合併による新株式の発行及び資本金の増加並びに合併交付金の支払いはありません。

 

(4)合併の期日

2025年10月1日(予定)

 

(5)引継資産・負債の状況

富士電機株式会社は、以下の2025年3月31日現在の株式会社高柳富士の貸借対照表その他同日現在の計算を基礎とし、これに合併に至るまでの増減を加除した一切の資産、負債及び権利義務を合併期日において引継ぎいたします。

資産

金額

負債

金額

流動資産

102百万円

流動負債

47百万円

固定資産

8百万円

固定負債

9百万円

資産合計

110百万円

負債合計

56百万円

 

 

 

(6)吸収合併存続会社となる会社の概要

(1)商号

富士電機株式会社

(2)事業内容

エネルギー、産業、輸送その他社会インフラに関する各種機器、システム及び半導体デバイス、自動販売機、店舗設備機器の開発、製造、販売、サービス並びにこれらに関するソリューションの提供

(3)設立年月日

1923年8月29日

(4)本店所在地

川崎市川崎区田辺新田1番1号

(5)代表者の役職・氏名

代表取締役会長CEO 北澤 通宏

代表取締役社長COO 近藤 史郎

(6)資本金

47,586百万円

(7)発行済株式数

149,296,991株

(8)決算期

3月31日

(9)大株主及び持株比率

(2025年3月31日現在)

日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 16.00%

株式会社日本カストディ銀行(信託口) 9.62%

STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505001 3.36%

(10)直近事業年度の財政

状況及び経営成績

2025年3月期(連結)

純資産

730,658百万円

総資産

1,312,175百万円

1株当たり純資産

4,695.56円

売上高

1,123,407百万円

営業利益

117,646百万円

経常利益

118,759百万円

親会社株主に帰属する

当期純利益

92,239百万円

1株当たり当期純利益

642.69円

 

6【研究開発活動】

富士電機は、「2026年度中期経営計画」の研究開発戦略に基づき、現行製品の競争力強化や次世代機の開発、成長戦略をけん引するGX、DXやグローバル商材の新製品開発、及び2030年以降の市場拡大を見据えた、水素・アンモニア・CO2関連などの新技術獲得に取り組んでいます。これらに向けて、パートナー企業やアカデミアとの協業・共創も進めています。

当連結会計年度における富士電機の研究開発費は37,822百万円であり、各部門の研究成果及び研究開発費は次のとおりです。

また、当連結会計年度において富士電機が保有する国内外の産業財産権の総数は13,373件です。

 

 

■エネルギー部門

●発電プラント分野

将来の水素社会の到来に備え、自動車用の固体高分子形燃料電池モジュールを適用した工場・施設向け水素燃料電池システムの開発を進めています。当社独自の運転技術により10年を超える耐久性を実現するとともに、急峻な電力需要への追従運転や自立運転(BCP対応)も可能です。今後、発電容量360kWの実証機を用いてフィールドテストを行う予定です。

●エネルギーマネジメント分野

再生可能エネルギー(再エネ)の普及にともない伸長する蓄電池市場向けに、大容量蓄電池PCSを開発しました。出力容量2,750kVA品をラインアップに追加するとともに、自立運転機能(BCP対応)や低騒音オプションを備えることでさまざまな顧客のニーズに対応します。

●施設・電源システム分野

設備投資が活発な国内・海外の半導体工場やデータセンター向けに、22kVモールド変圧器を開発しました。当社がこれまで培ってきた熱流体解析や電界解析などの技術を活用し、放熱及び絶縁構造を最適化することにより、従来器よりも小型化しました。

工場や交通施設の受配電設備向けに、最新の国内規格「JIS C 62271-200」に準拠したスイッチギヤ「VCM-CLAD(3.6/7.2kV、400~3,000A)」を開発し発売しました。インターロックの強化などに対応することで、顧客設備への安定した電力供給を実現します。

●器具分野

国内トップシェアの電磁開閉器を35年ぶりにフルモデルチェンジした「SC-NEXTシリーズ」の定格電流40~65A品の開発を完了し発売しました。本シリーズは、従来品の長寿命・高信頼性の特徴を継承しつつ、外形の更なる小型化を実現し、制御盤の小型化や高機能化に貢献します。2023年度に発売した11~38A品に加えて、今回の開発で定格電流11A~65A(定格電圧200V)の小型・中型容量のラインアップが完成し、幅広い顧客の用途に応えることが可能となりました。

当連結会計年度における当部門の研究開発費は9,809百万円です。

 

■インダストリー部門

●低圧インバータ分野

国内・海外のエレベータメーカー向けに、乗用エレベータ用に制御性能を最適化したインバータ「FRENIC-Lift(LM3)」を開発し発売しました。モータ軸回転角度の検出分解能を向上し、エレベータ始動時のかごの落下量を従来機種に比べて約47%改善したことにより、良好な乗り心地を実現します。

●FAコンポーネント分野

製造ラインやプラントの生産性向上に貢献する新たな機能を搭載したプログラマブルコントローラ「MICREX-SXシリーズ」SPHのCPUモジュールとして、「SPH2200」(監視・シーケンス制御用)、「SPH3300」(モーション制御用)を開発し発売しました。演算エンジンを刷新したことで従来に比べて制御速度を6.5倍向上するとともに、これまで上位機種に搭載していた計測・制御データを定周期で記録する当社独自のデータロギング機能を標準搭載し、自動化・省人化に必要な生産設備のデータを可視化し、製造現場のDXに貢献します。

ロボット、機械装置向けサーボシステム「ALPHA7」シリーズの容量11kW、15kWを開発しました。2023年度に発売した容量2.9kW~7.5kWに加えて、今回の開発でシリーズのラインアップが完成しました。これにより、顧客の幅広いニーズに対応します。

●小容量電源分野

情報通信機器や産業機器向けに小容量UPS「GX100シリーズリニューアル版(2kVA,3kVA)」を開発しました。電源投入時の突入電流に対応し、常時安定した電力供給をするため過負荷耐量を向上しました。

●計測機器・センサ分野

鉄道事業者向けに河川橋梁の健全性を高精度に評価する業界初の橋梁モニタリングシステムを開発し発売しました。従来は、台風や豪雨による増水後、作業員を派遣して目視確認や衝撃振動試験により橋梁の健全性を確認していました。本システムは、橋梁に高分解能加速度センサとセンサデータの伝送機能を搭載したモニタリングシステムを設置して橋梁の固有振動数を自動で取得し、取得したデータを独自のアルゴリズムにより解析することで、橋脚の異常兆候の有無を判定します。これにより現地作業を省力化しつつ、交通インフラの安全性向上に貢献します。

発電プラントやガス設備など高耐圧性能が求められる環境向けに、ピエゾ式抵抗型高圧測定圧力計を開発しました。本製品は、従来の静電容量式圧力センサに比べて、高圧領域で誤差が少ない構造のピエゾ式圧力センサを採用したことで、業界トップクラスの耐圧150MPaを実現しました。これにより、年々掘削深度が深くなり高耐圧化する海底油田設備などに対応します。

半導体製造装置や空調設備向けに、超音波流量計「S-Flow(口径40A,50A)」を開発しました。配管に前面から取り付け可能な構造とし、取り扱いやすさを向上しました。

●駆動制御システム分野

発電や鉄鋼・化学プラント向けに、中型誘導電動機「低圧三相モータMLU2形シリーズ(定格電圧200V、400V)」及び「高圧三相モータMLA6形シリーズ(3,000V、3,300V、6,000V、6,600V)」のモデルチェンジ品を開発し発売しました。本シリーズは、従来機に比べて始動トルクを大きく向上し、始動電流の増加を抑制しました。これにより、搭載したシステムの安定運転に貢献します。

●計測制御システム分野

産業プラント向けに、監視制御システム「MICREX-VieW FOCUS Evolution」ver.2.2を開発しました。複数のエンジニアが同時にプログラムの編集作業を行えるマルチユーザーエンジニアリング機能やエンジニアリングデータの検索性を向上させる統合クロスリファレンス機能を新たに搭載し、エンジニアリング効率を大幅に向上しました。

●原子力・放射線分野

原子力発電所の廃止措置による解体・撤去で発生する廃棄物を分別して適切に処理するため、試料の前処理を含めた分析技術の開発を進めています。これまでに、放射性元素塩素36に対して、誘導結合プラズマ質量分析法を用い、かつ、試料の前処理工程を簡素化し、計測時間を従来の1/30に短縮する技術を確立しています。現在は、分析可能な放射性元素種類の拡充に向けた開発に取り組んでいます。これにより、廃棄物処理の効率化に貢献します。

●情報ソリューション分野

業種・業態を問わず、情報の検索や分析を容易にし、様々な管理業務の効率化を支援するBI(ビジネスインテリジェンス:Business Intelligence)ツール「軽技Web V8.0」を開発し発売しました。本製品は、専門知識が無くとも、簡単な操作でデータを検索・活用できます。今回新たにユニバーサルデザインを取り入れ、より操作性を向上することで、レポート作成などの業務の効率化に貢献します。

当連結会計年度における当部門の研究開発費は10,446百万円です。

 

■半導体部門

●産業モジュール分野

太陽光発電システム向けに最適化した第7世代IGBTモジュール1,200V/800A(M276パッケージ)を開発し量産を開始しました。内部レイアウトの改善により、パッケージは従来と同じ外形寸法を維持しながら、従来の1200V/600Aから定格電流を拡大したことで、装置の小型化に貢献します。

鉄道や再エネ発電システム向けに、1,200V系列のAll-SiCモジュール(M295パッケージ)を開発し、量産を開始しました。第2世代SiCトレンチゲート型MOSFET(第2世代SiCチップ)の適用により、従来のSi-IGBTチップに比べて総損失を約70%低減しました。さらに、M295パッケージは、従来の標準パッケージ(M276)に比べて配線インダクタンスを24%削減し、SiC-MOSFETの高速スイッチング時において、ノイズや故障の原因となるサージ電圧を抑制しました。これらにより、インバータなどの顧客装置の効率向上や信頼性向上に貢献します。

再エネ発電システム向けに、「HPnC」(High Power next Core)パッケージに第3世代SiCトレンチゲート型MOSFET(第3世代SiCチップ)を搭載した2,300V/1,200Aの大容量モジュールを開発しサンプル展開を開始しました。第2世代SiCチップに比べ低損失・小型化した第3世代SiCチップを用いることにより、更なる大容量化が求められる再エネ市場の拡大に貢献します。

●車載モジュール分野

軽・小型車用インバータ向けに、750V/600Aの直接水冷型パワーモジュール(M682パッケージ)を開発し量産を開始しました。低損失の第7世代RC-IGBTチップを搭載し、冷却性能を改善することで電力密度をさらに高めました。引き続き、さまざまな出力の電動車に対応するため容量系列の拡大を進めます。

2026年以降のxEV(電動車)モデル向けに、第3世代SiCチップを搭載して発生損失を大幅に低減しつつ、パッケージの薄型と低インダクタンス化を実現した次世代SiCパワーモジュールの開発を進めています。これらの製品を通じて、電動車の更なる高効率化と小型・軽量化に貢献します。

●電源制御用IC分野

電源システム向けに、第4世代臨界モードインターリーブPFC-ICを開発しました。力率向上とTHD(全高調波歪率)の改善により、国際標準規格IEC61000-3-2で定められた高調波電流規制ClassCに準拠しました。また、負荷状態に応じてICの制御方法を自動的に切り替える機能を新たに搭載しました。軽負荷時の効率向上、待機電力の低減に貢献します。

●感光体分野

小規模オフィス向けに、最大A4サイズの印刷に特化した小型カラープリンタ用の有機感光体を開発し量産を開始しました。高感度の電荷輸送材を採用することで画質を向上しました。また、添加剤の配合比率を最適化することにより感光体表面の残留電位の上昇を抑制し、長期間にわたり安定した画像品質を実現しました。

当連結会計年度における当部門の研究開発費は13,439百万円です。

 

■食品流通部門

●自動販売機(自販機)分野

販売できる商品の選択肢を広げ、小売業・アグリ分野などのこれまで自販機が活用されていなかった市場へ訴求し、店舗の省人・省力化に貢献する業界初の「冷蔵ロッカー型自販機」を開発し発売しました。本自販機では、商品の大きさに合わせて、顧客自身が商品の収納室の間仕切りを着脱できるため、飲料や食品のような定形品に限らず、これまで販売できなかった野菜や生花などの不定形品に加えて、ホールケーキや寿司折詰めなど大型の冷蔵食品も販売できます。また、収納室の背面から冷気を送り込むダクト循環方式を新たに開発し、収納室容量変更の影響を受けず、温度ムラの無い保冷構造を実現しました。

●店舗流通分野

外食産業やオフィス向けに、業務用全自動コーヒーマシン「Cafe Mania」に外付け可能なミルクユニットを開発しました。ミルクを水蒸気で加熱しながら空気と混合して泡立てる方式を採用することで、口当たりの良い泡質を実現しました。これにより、提供飲料のバリエーションが広がり、ユーザのさまざまな嗜好に対応可能になりました。

店舗のさらなる省エネルギー(省エネ)化やCO2排出量削減のニーズに応えるため、太陽光パネルや蓄電池を併設したコンビニエンスストアのエネルギーを制御する店舗コントローラの次世代機を開発しています。運転環境に対応してショーケースを最適に制御して省エネを実現するとともに、太陽光パネルの発電量や店舗の電力需要の予測制御機能との組み合わせにより、発電した電力を余すことなく活用することで、CO2排出量の削減と購入電力量の低減に貢献します。

●通貨機器分野

2024年7月3日に発行された新紙幣を識別する技術を開発し、釣銭機や自販機のビルバリデータへ搭載しました。なお、既に市場で稼働している釣銭機などに対しては、ソフトウエアの更新のみで新紙幣対応が可能です。これにより、顧客の負担を軽減できます。

当連結会計年度における当部門の研究開発費は4,116百万円です。

 

■新技術・基盤技術分野

●パワーエレクトロニクス技術

カーボンニュートラルの実現に向けて、太陽光や風力など再エネの利用拡大が求められています。一方、郊外など大きな電力を流すことのできない系統に再エネを接続する場合、電圧振動が増加する懸念があります。これに対応するために、再エネ用PCSの出力電圧・電流を安定させる新たな制御アルゴリズムを開発しました。本制御アルゴリズムを搭載したPCSの実機検証により、従来は接続困難であった電力系統においても安定して運転が可能であることを確認しました。

リニアモータのさらなる小型化を目指し、位置検出をセンサレスで行う駆動制御技術を開発しました。本技術は、磁石配置から生じる磁束変化を利用して動作位置を検出する方式を採用し、モータ構造の最適化により隣接する磁石からの磁束干渉を低減することで高精度な位置検出を実現しました。これにより、省スペースが求められるアプリケーションへの適用が可能となり、幅広いニーズに対応します。

●AI活用技術

電力取引市場において、再エネで発電した電力を売買するビジネスが拡大しています。そこで、市場取引を行うEMS(Energy Management System)向けに、AIを活用した価格予測技術と取引計画の最適化技術を開発しました。複数の取引市場(卸電力市場、需給調整市場)の中から最適な市場を選択し、売買するタイミングと取引量を自動的に計画します。これにより、独立系発電事業者や特定卸供給事業者など顧客の電力取引における収益最大化が可能となります。

近年増加している洪水への対策として、ダム流入量をAIにより長期かつ高精度に予測する技術を開発しました。本技術は、雨がダムに流れる時間遅れを学習し、3日先までの計画作成を支援します。また、AIの学習モデルや学習手順の最適化により流入量予測の精度を向上させ、発電用ダムの過剰放流を抑制し、発電ロスを低減します。これにより、国土交通省のガイドラインに基づく計画的な事前放流が可能となり、洪水対策と発電効率の両立を実現します。

研究開発における生産性・品質向上や開発リードタイムの短縮に向けて、構造設計やソフトウエア開発における生成AIの活用を進めています。構造設計においては、シミュレーション技術と生成AI技術を融合したジェネレーティブデザインの実用化に取り組んでいます。この技術は、要求仕様や制約条件の範囲で3次元形状の自動生成が可能です。ソフトウエア開発においては、生成AIによるプログラムの自動生成技術を開発しました。引き続き、生成AIを用いたプログラムの試験条件の自動生成技術の開発に取り組む予定です。

●セキュリティ技術

工場など製造現場ではエネルギー利用効率や生産性向上を目的として、設備の消費電力、装置の稼働率や良品率など、様々なデータの活用が進んでいます。一方で、設備や装置のデータ活用には外部サーバとの接続が必要不可欠でありサイバー攻撃による情報流出や生産停止などのリスクが増大することから、セキュリティ対策が重要となります。制御システムにおけるセキュリティ対策に関する標準は、国際標準IEC62443に定められており、この認証取得に向けた技術開発を進めています。今回、メモリ領域へのアクセスを制御する技術を確立し、不正なプログラムの実行/書換えの防止を実現しました。引き続き、不正アクセス防止技術などのセキュリティ対策技術の開発を進める予定です。

●水素・アンモニア・CO2関連技術

水素社会の到来に向けて、水素製造コストの低減が見込めるAEM(Anion Exchange Membrane)型水電解水素生成技術の開発に取り組んでいます。2024年度は、小型セルの試作と耐久性を評価し、セルを大面積化した場合の課題抽出と耐久性向上のための対策検討を実施しました。本研究は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「アニオン膜型アルカリ水電解セルの要素研究と実用化技術の確立」として実施しました。

水素と同様に次世代燃料として期待され、水素キャリアとしても利用可能なアンモニアの社会実装に向けた周辺技術の開発も進めています。アンモニア燃料供給船やバンカリング装置に適用する高感度アンモニア漏えい検知技術や配管内に残留するアンモニアの回収技術などの安全対策技術の開発を行っています。本研究はNEDOのグリーンイノベーション基金事業「次世代船舶の開発」プロジェクトの「アンモニア燃料船サプライチェーン構築における周辺機器開発」として実施しています。

工場用コージェネレーションシステムや船舶のディーゼルエンジンの脱炭素化に向けてCO2分離回収装置の開発に取り組んでいます。これらの比較的小規模なシステムにおいて低コスト化が可能な膜方式を適用したCO2分離技術の開発とともに、膜性能を維持するための排ガスの前処理技術(排ガスの除熱、除湿、集塵)の開発を並行して進めています。2024年度は、前処理装置の機能試作及び評価を実施し、排ガスの流量・圧力変動に追従して前処理プロセスを制御する技術を確立しました。今後、CO2回収装置の実証機の試作と評価を進めます。

●次世代半導体技術

SiCよりさらに低損失な次世代半導体材料として期待されている窒化ガリウム(GaN)を用いた、縦型GaNパワーデバイスを開発しています。量産性に優れる「イオン注入プロセス」を用いたデバイスとして縦型GaNでは世界初の耐圧1,400V、電流10Aの大面積素子を実現しました。本研究の一部は文部科学省「革新的パワーエレクトロニクス創出基盤技術研究開発事業(パワーデバイス領域)」として実施しています。

●材料技術

サーキュラーエコノミーの実現に向けて、リサイクル可能な樹脂材料の実用化に向けた技術開発に取り組んでいます。熱可塑性材料の耐加水分解性や機械強度などの性能を維持するため、材料添加による加水分解抑制や加工条件の最適化を完了しました。今後、リサイクルが困難とされている耐熱性や難燃性が高い熱硬化性樹脂材料を対象に、環境負荷低減樹脂への代替を進める予定です。

 

■その他部門

当連結会計年度における当部門の研究開発費は8百万円です。