当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、2023年度(当連結会計年度)末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 価値創造プロセスと重要課題(マテリアリティ)
●明電グループが目指す方向性
当社は「より豊かな未来をひらく」「お客様の安心と喜びのために」を企業理念とし、1897年の創業以来、真摯にものづくりを追求しながら産業の進歩・高度化と社会の持続的な発展に貢献してまいりました。現在、2030年のありたい姿・ビジョンとして「地球・社会・人に対する誠実さと共創力で、新しい社会づくりに挑む~サステナビリティ・パートナー」を掲げております。
「中期経営計画2024」において、「サステナビリティ」を戦略の中核に据え、企業理念及びビジョン(下図右上)の実現を目指しております。明電舎らしさを活かせる領域を4つに定め、それぞれの領域において「ニーズや課題の把握」、「機器・システムの提供」、「アフターフォロー」に注力しております。また特定した6つの重要課題(マテリアリティ)を、「価値創造にかかわるマテリアリティ」と「事業基盤にかかわるマテリアリティ」の2つのグループに分け、サステナビリティ経営を推進しております。

●価値創造にかかわるマテリアリティ
(カーボンニュートラルへの貢献、安心・安全・便利な社会の実現、共創によるイノベーション)
気候変動、デジタル化の進展、再構築を要するインフラの増加といった社会変化は、当社にとってリスクになると同時に、新たな事業機会をもたらすことから、「価値創造にかかわるマテリアリティ」は、持続的な成長を実現していくうえで対処すべき重要な経営課題であります。当社は、事業活動における環境負荷のさらなる低減を目指し、現在の環境目標を1.5℃シナリオに上方修正するための準備を進めるなど、脱炭素社会の実現に向けて取り組む方針であります。また、社内の脱炭素だけでなく、環境配慮設計の推進、DX、製品のライフサイクル全般をカバーする事業活動などを通じて、社会のサステナビリティに貢献してまいります。
2024年3月には、広島県や慶應義塾大学などと共に、水力発電を起点とした価値共創・社会イノベーションの創出等を行う「広島CSV(共有価値の創造)ラボ」を発足させました。産・官・学・民のパートナーとの共創という新たなプロセスを通じて、新しい社会づくりに挑んでまいります。
●事業基盤にかかわるマテリアリティ
(多様な人財がイキイキと成長・活躍できる風土醸成、クオリティの高いものづくり・価値提供、
誠実で責任ある事業運営)
事業活動を通じて新たな価値を創造するうえで、事業基盤を強化していくことも重要な経営課題であります。当社では、従業員がやりがい・働きがいを感じられる職場環境の構築、社会インフラを構成する当社が納入した設備を「絶対に止めない」という価値提供、誠実で責任感のある事業運営の土台となるコーポレートガバナンスの強化が重要であると考え、人的資本・品質・コーポレートガバナンスに関する「事業基盤にかかわるマテリアリティ」を設定しております。人的資本に関する取組みでは、役員構成の多様化などを進めるとともに、時代に即した人事制度のあり方の検討などを行っております。品質については、QCDSE(品質・原価・工期・安全・環境)向上を図るべく、品質管理強化の取組みとして「明電ものづくりスタンダード」の展開を進めております。コーポレートガバナンスの強化では、内部統制システムの充実や社外取締役過半数で構成する取締役会の監督機能の更なる強化、実効性向上などに取り組んでおります。
(2) 「中期経営計画2024」

●現状認識
「中期経営計画2024」で想定した事業環境に対して、複数の要素で大きな変化が生じております。社会システム事業セグメントにおいては、部材価格が高騰する以前に受注した案件の売上進行が続いていることや、関連工事の進捗遅れに伴う工程の長期化などを背景に収益性が低下しているほか、産業電子モビリティ事業セグメントでも、中国におけるEV事業の伸び悩みや半導体市況の回復遅れが逆風となっております。一方、電力インフラ事業セグメントでは、各国における電力需要の伸びや再生可能エネルギー投資の拡大、「エコタンク形真空遮断器」をはじめとした環境対応製品のニーズの高まりなどを受け、海外関係会社の業績が改善したほか、国内電力事業でも好調な受注を背景に稼ぐ力が向上しており、当社の収益基盤としての地位を確立しつつあります。当社を取り巻くこれらの事業環境の下、当連結会計年度は受注高、売上高及び営業利益いずれも過去最高を達成しました。上表にあるとおり、「中期経営計画2024」で掲げていた目標値には届かないものの、2024年度は売上高と営業利益共に過去最高を更新する想定であります。
●最終年度の課題
2024年5月10日発表の業績予想のとおり、営業利益150億円を実現し、次期中期経営計画における業容の更なる拡大に繋げていくために、対処すべき課題は2つあります。第1に「円滑な生産活動の実現」です。受注残は過去最高水準にまで積み上がっており、これを収益に繋げるためには、品質を担保しつつ生産の効率化を追求し、お客様の元へ着実に納品していくことが重要であると認識しております。建設・物流業界などにおける2024年問題による影響も懸念されますが、生産設備への投資の加速やプロジェクト管理業務のデジタル化推進などを通じた生産性の向上により、対処していく考えであります。第2に「インフレや金利に打ち勝つ事業体制の構築」です。昨今の世界的な物価・賃金上昇等に対して、調達面での創意工夫や機動的な価格転嫁とあわせて、価格競争に巻き込まれない高付加価値製品・サービスの開発に注力してまいります。同時に、営業活動においては、ABM(アカウントベースドマーケティング)戦略などにも取り組んでまいります。
(3) 資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応
-PBR(株価純資産倍率=企業価値)向上に向けた取組み-
企業価値向上は最大の経営課題の1つであり、当社ではPBR向上に向けた取組みとして、「ROE(自己資本利益率)向上」及び「PER(株価収益率)向上」の2つに分けて、次のとおり方針を掲げ、実行しております。

●ROE向上の取組み
当社は、「収益力強化・投資効率の向上」と「資本構成の最適化」を通じてROE向上に取り組んでおります。収益力強化では、お客様に対する提案力の強化やものづくりにおける効率の徹底的な追求を通じた営業利益率の向上や在庫の適正化などによるキャッシュコンバージョンサイクル(CCC)改善に取り組んでおります。また、投資効率の向上においては、投資に求める収益率を適切に設定するとともに、特に金額の大きい投資については、その採算性や各種リスクを常務会等の業務執行会議体において十分に審議し、取締役会の決議を経たうえで実行しております。また、過去に実施したM&A投資のトレースなども定期的に行う仕組みを導入しております。資本構成の最適化については営業キャッシュ・フローに加え、資産の圧縮・売却に伴い生まれるキャッシュを原資として、成長に向けた投資と株主還元をバランス良く実施することを基本的な考え方としております。成長投資を通じて当期純利益を増大させつつ、配当性向30%を方針とし、安定かつ継続的に配当を実施してまいります。
●PER向上の取組み
PER向上に向けて、「期待成長率の向上」と「非財務価値の向上」に取り組んでおります。「期待成長率の向上」では、投資を通じて事業を拡大し、キャッシュ創出力を高め、生み出されたキャッシュを再投資することで更なる成長を促すという企業価値向上のサイクルを進化させてまいります。次期中期経営計画では、資本コストを十分に意識しつつ、旺盛なインフラ需要に応えるための国内拠点への投資や、本格的な半導体市況の回復に備えた能力増強などの検討を進めてまいります。そして、それらの投資計画からの速やかな収益貢献の実現と、サステナビリティ経営と一体化した成長戦略の着実な実行を目指すとともに、当社グループの強みと社会のニーズが合致する新領域における事業開発にも注力してまいります。「非財務価値の向上」では、持続可能な経営基盤の構築とステークホルダーエンゲージメントの向上に取り組んでおります。非財務価値は、当社の競争力構築の源泉であると認識しており、特に人的資本はその中でも最大かつ最重要の資源であります。優れた人財を確保しつつ、従業員エンゲージメントを向上させ、かつ企業パフォーマンスを最大化するための人事制度の見直しや研修制度の高度化などを通じ、人的資本の拡充を進めております。また、内部統制システムの充実や取締役会の実効性向上などを通じたコーポレートガバナンス強化を図っているほか、ステークホルダーエンゲージメントの向上に向けて、IR活動における開示情報や社外の意見を経営に取り込む仕組みの拡充に取り組んでおります。
「中期経営計画2024」の最終年度となる2024年度は、開示している数値目標及び各種KPIの実現に注力するとともに、次期中期経営計画に向けた検討も進めてまいります。今後の戦略策定においても、PBR向上をベンチマークの一つとして意識しつつ取り組みを進め、持続的な企業価値向上に努めてまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、2023年度(当連結会計年度)末現在において、当社グループが判断したものであります。
当社グループでは、持続可能性の観点から企業価値を向上させるため、サステナビリティ推進体制を強化しており、代表取締役 執行役員社長がサステナビリティ課題に関する経営判断の最終責任を有しております。
2022年度より、経営判断を行う場と進捗把握を行う場を切り離す目的で、サステナビリティ経営戦略会議とサステナビリティ経営推進会議の2階構造に体制を見直しております。同会議体での議論内容については、常務会・取締役会へ年2回、定期的に報告しております。

~両会議体における議題(2023年度)~
当社グループにおいて、全社的なリスク管理は、リスクマネジメント委員会にて行っております。サステナビリティ全体に関するリスク管理については、サステナビリティ経営を推進するサステナビリティ推進部が中心となり関連部門と共にリスクの抽出を行っており、その内容については全社リスクの中に織り込んで、様々なリスクと共にマネジメントしております。リスク管理の詳細については、
当社グループは、持続可能な社会の実現と持続的な成長を目指し、2030年のありたい姿・ビジョンとして「地球・社会・人に対する誠実さと共創力で、新しい社会づくりに挑む 〜サステナビリティ・パートナー〜」を掲げております。目指したい3つの社会の実現及び当社グループの持続的な成長を目指し、当社らしさを活かせる4つの事業領域を設定したうえで、価値創造プロセスを整理し、特に対処すべきマテリアリティ(重要課題)を6つ設定しております。マテリアリティの抽出については、経営企画本部が中心となり各事業グループや横断部門と意見交換を行ったうえ、サステナビリティ経営戦略会議・常務会・取締役会での議論を経て決定しております。

2030年のありたい姿・ビジョン、マテリアリティについては、「第一部 第2 1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」の「 (1) 価値創造プロセスと重要課題(マテリアリティ)」をご参照ください。
当社グループにおけるマテリアリティのうち、①気候変動への対応、②人的資本は、特に企業経営に影響を与えると考えており、それぞれの項目にかかる当社グループの考え方及び取組みは、次のとおりであります。
①気候変動への対応
<TCFD提言に基づく開示>
当社グループは長年、気候変動問題を重要課題として認識し、事業を通じて問題解決に取り組んでまいりました。2019年6月にTCFD提言への賛同を表明し、2020年よりTCFDのフレームワークに沿ったリスク・機会の検討を開始して、戦略への織り込みを進めております。
<ガバナンス>
前述のとおり、サステナビリティ全般について扱うサステナビリティ経営戦略会議及びサステナビリティ経営推進会議にて、脱炭素に向けた戦略策定などを検討しております。議論の内容については年2回サステナビリティ担当役員・サステナビリティ推進部より取締役会及び常務会へ報告を行っております。これと並行して、生産統括役員が委員長を務める「明電グループ環境委員会」にて、工場を中心とした生産現場の環境取組みについて、四半期ごとに社内課題の抽出や環境目標や実施計画、緊急事態発生時の対応等を審議し、環境経営の具体的な施策展開を推進・モニタリングしております。
<リスク管理>
前述のとおり、サステナビリティ全体に関するリスク管理については、サステナビリティ経営を推進するサステナビリティ推進部が中心となり関連部門と共にリスクの抽出を行っており、その内容についてはガバナンス本部が管理する全社リスクの中に織り込んで、様々なリスクと共にマネジメントしております。気候変動に関するリスクについてもその中に含まれております。
<戦略>
気候変動に対するシナリオ分析は、サステナビリティ推進部が関連部門と連携し、シナリオ分析の検討プロセスを4つに分けて、年次で分析・評価をしております。同時に事業に影響を及ぼす重要な要因を選定し、特定したリスクと機会、評価を事業戦略に反映しております。
■STEP1 シナリオ群の選択・具体化
TCFDが推奨するように、2℃シナリオ以下を含む複数の温度帯シナリオを選択し、分析を行っております。脱炭素シナリオ(RCP1.9)及び温暖化シナリオ(RCP4.5, RCP8.5)の2つのシナリオに基づき、IEAやIPCCなどの国際公表データや日本の政府機関が公表している数値データなどを用いつつ、5フォース分析などの経営フレームワークも活用し、各シナリオにおける2030年の世界観や具体的なシナリオを整理しております。


■STEP2 気候変動関連リスクに対する重要度評価
TCFD提言で例示されているリスク・機会を参考にしつつ、各シナリオの世界観をもとに、気候変動に伴うリスク・機会の因子を整理しております。そのうえで当社にとっての機会・リスクを明確化しております。

■STEP3 事業インパクト評価
STEP1で整理したシナリオ別の世界観及び、STEP2で整理した機会・リスク項目を踏まえ、経営企画本部、経理・財務本部、ガバナンス本部、事業部門などの社内関係者で議論し、事業インパクトの評価を実施しております。その過程で2030年における「営業利益へのインパクト」、「事業発生の蓋然性」の2軸から特に事業への影響が大きい項目をスクリーニングし、それらの項目について詳細分析を実施しております。影響が大きい各項目は、シナリオ別に市場成長率などをもとに「成行値(対策織り込み前の値)」を把握しました。一部仮定を置きながら定量的に試算し、計算が不可能な項目については定性的に整理しております。

■STEP4 対応策の検討
STEP3で算出した「成行値」をもとに、当社の置かれた状況を踏まえ、機会を掴む戦略、リスクを軽減するための施策を検討してまいりました。

<指標と目標>
当社グループは、気候変動に伴う変化を事業機会として捉えた戦略を展開しております。事業面では、特にEV事業、再生可能エネルギー事業をより拡大し、脱炭素社会の構築に貢献してまいります。また社内のリスク低減のために、環境目標の中間段階である2030年度の温室効果ガス排出削減目標を上方修正した、第二次明電環境ビジョンを2021年度に発表しScope1,2及び3のGHG削減目標を開示しております。なお、本目標はSBT(Science Based Targets)イニシアチブの認証を取得しております。目標達成に向け、サプライヤと連携を図り、取り組んでまいります。加えて2021年11月に中長期目標として、2040年RE100、2050年カーボンニュートラル達成を宣言しております。現在、環境目標の上方修正(1.5℃シナリオ水準)の検討を行っており、近日中に公表を予定しております。

~2030年までの削減計画内訳~

②人的資本
<人的資本に関する基本的な考え方>
当社グループは、前述のマテリアリティの認識のもと、それらへの対応の遅れは企業運営や事業継続に関わる重要リスクとなるため、人財を価値創造の源泉である人的資本として捉え、強化に取り組んでおります。
<課題認識/従業員意識調査の結果>
当社グループは、従業員エンゲージメントの向上に向け、従業員エンゲージメント指標(eNPS)をKPIとして設定し、毎年実施している従業員意識調査結果に起因する要因を分析することで、現状の課題を把握し施策の実行に繋げております。
2022年度に実施した従業員意識調査においては、組織の柔軟性や達成・挑戦志向を示す「風土」カテゴリ、評価制度や報酬制度を示す「各種制度」カテゴリ、人財育成や採用・配置を示す「人財活用」カテゴリの肯定率が前年度比1%以上マイナスとなる結果となりました。
特に「風土」カテゴリでは、オープンな風土・コミュニケーション・エンゲージメントの項目の数値が低下し、達成・挑戦志向も他社平均と比較して大きく下回る結果となりました。また、「各種制度」カテゴリでは昇格制度・人財育成制度等のすべての項目において低下、「人財活用」カテゴリでは人財育成において低下がみられました。

◆従業員エンゲージメントの影響要因
◆従業員意識調査の結果

※eNPSの単位を%とし、記載しております。
また、eNPSの対象は、提出会社と㈱明電エンジニアリングです。
<求める人財像の定義と各種取組みの展開>
急速に変化する時代の中で、その変化に対応し、価値提供のあり方を見直しながら世の中が抱える課題を解決していくためには、主体的に新しい社会づくりに取り組み、新たな価値を創造し続けることのできる人財が必要不可欠であります。
求める人財像を「自ら考え、自ら行動できる(考動)、多様な個を受け入れ、新しい価値を生み出すことができる(共動)、そして個とチームが共に育成・成長し合える(共育)人財」と定義し、これに基づく人財を獲得・育成していくための取組みを推進しております。

具体的には、各々の能力(A)とモチベーション(M)を高め、全ての従業員が活躍できる機会・環境を整備する(O)ことで企業パフォーマンスを最大化するAMOフレームワークを当社グループにおける人的資本強化の考え方のベースとして、「経営課題を解決する人財の獲得・育成」、「個を尊重した組織への転換」を軸に各種取組みを推進しております。

◆経営課題を解決する人財の獲得・育成
当社グループの目指す姿の実現には、多様な経営課題を解決できる人財の獲得・育成が必要不可欠であります。従業員の多様な能力(Ability)を高めるため、以下のような取組みを進めております。
ⅰ 採用
多様化する社会課題や経営課題の解決に必要な人財の獲得を目指した採用活動を進めております。
各事業における現状課題や労務構成の歪みなどを踏まえ、その解決に資する多様な技術・技能を持つ人財の獲得を重視し、新卒採用と併せて積極的なキャリア採用を進めております。また、並行してリスキリング・学び直しによる社内の人財活用も進めております。
ⅱ 人財育成
● 職種別スキルの整理と公開
自ら考え行動できる、自律性をもった人財の育成を目指し、自らが目指すキャリアの実現に向けた学びや組織間連携を促進するため、職種ごとに必要なスキルマップを整理・公開しました。スキルマップを活用して自身に足りていないスキルを発見し、自発的な学びに繋げられる取組みを進めております。
● ICT教育
DXの実現には、全従業員のICTリテラシー向上が必要との考えから、新入社員向けに、事務系・技術系問わず、ドローン等の実機を用いたICT技術に直接触れる機会を設け、2023年度より全社員向けに、ITパスポートの資格取得支援としてe-Learningを導入し、強化を図っております。
● 社内インターンシップ制度新設
2023年10月より、若手従業員を対象とした社内インターンシップ制度を新設し、自発的に他部門の業務を体験できる取組みを開始しました。新しい体験や人財交流を通じた視野の拡大、新たな知見の習得を図ると共に、個人のキャリアや適性を考える機会を提供しております。2024年度は対象者の範囲を広げ、更なる活性化を図ってまいります。
● 外国人幹部育成
多様な人財による価値創造を強化するため、海外現地法人におけるナショナルスタッフの幹部登用は必要不可欠であるとの考えから、各社の統括役員による定期的な幹部候補者面談を行い、経営マインドの醸成を実施しております。併せて、コーチングプログラムを展開し、幹部候補者のマネジメント能力の向上も図っております。また、一部の海外現地法人において、ナショナルスタッフの幹部候補へのキャリアパスを構築・明示しました。2024年度以降、他の海外現地法人へも同様に展開する計画であります。
<個を尊重した組織への転換>
従業員のウェルビーイングを向上させ、当社グループの中長期的な価値創造に繋げていくためには、「個を尊重した組織への転換」が必要不可欠であります。従業員の能力を高めるだけでなく、働くモチベーションを高め、多様なバックグラウンドを持つ従業員が活躍できる機会や環境を整備することで、従業員それぞれが「個の力」を最大限に発揮でき、組織パフォーマンスの最大化に繋がると考えております。
ⅰ 従業員のモチベーション(Motivation)向上
● 各種制度見直し
2022年4月に労使制度検討委員会を立ち上げ、「人事処遇制度」と「福利厚生制度」の見直しについて検討を重ねております。2024年4月には役割に応じた適正な処遇を目的に「役職人事処遇制度」を一部見直すとともに、適所適材を実現するために優秀な人財を早期に登用・抜擢できるよう「昇格制度」を見直しました。2024年度は「一般職人事処遇制度」の改定に向け検討を進めております。
● エンゲージメント・やりがいの向上、オープンかつ未来志向な社内文化づくり
従業員のエンゲージメント・やりがいの向上を目的に、「Myビジョン」「Myチャレンジ」の取組みを進めております。また、オープンかつ未来志向な社内文化に変革していくために、2022年度から、経営層と従業員の双方向で「Myビジョン」「Myチャレンジ」について対話をする場「明電みらいミーティング」、2023年度から、「社長タウンホールミーティング」の取組みを開始しております。「社長タウンホールミーティング」では、新しい社会づくり・時代にあった価値を提供できる企業、一人ひとりの従業員を大切にする企業であり続けるために、社長自らが一連の取組みの打ち出しと「Myビジョン」を語り、より人を大切にする経営を推進していく覚悟を示しました。また「明電みらいミーティング」では、部門毎に各担当役員が自らの「Myビジョン」を語り、部門の従業員と対話をすることにより、自分の思いをもって挑戦することが当たり前という空気の醸成を進めております。
● キャリアデザイン
2023年1月に相談窓口を開設以降、約40名の従業員が利用しております。20代から60代までの幅広い年代、様々な職種や勤務地で働いている当社グループ従業員から、キャリアやライフプランの立案支援、転機、キャリアアップ、スキルアップ、社内制度に関する相談など、多岐にわたる相談が寄せられております。多様化する価値観の中、キャリア意識も受動型から自律型に変化してきており、従業員一人ひとりが自分の力をさらに発揮し活躍できる支援を強化しております。
ⅱ すべての従業員が活躍できる機会(Opportunity)の創出
● 誰もが活躍できる組織と意識の変革(DEI推進)
2023年4月、ダイバーシティ推進室をDEI(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)推進室と名称変更し、「D(誰もが)、E(遠慮しないさせない環境の下)、I(イキイキと)」個々の力を発揮し、活躍する組織作りと風土醸成に取り組んでおります。2023年度は、DEI全般に関する方針・施策の決定及び推進強化のため、社長を委員長とした伴走機関「DEIコミッティ」を設立しました。また、ボトムアップによるDEIの自分事化を図るため、DEI浸透のための啓発ツールの構築や、社内コミュニケーション活性化及び心理的安全性を体現する場として、ランチタイムを活用した「DEI MeetUP!」を実行し、600名を超える従業員が参加しました。
● 多様な人財が活躍できる環境づくり
女性従業員の更なる活躍に向け、女性管理職比率目標値(2030年度12%)を設定し、目標達成に向けた施策を実行しております。
・若手・中堅クラス向け:2022年度より開始したサポーター役員制度により、役員のサポートやディスカッションを通して、対象者のマインド向上、行動変革を図っております。また、対象者の所属部門と連携し、能力を引き上げるためのサポートや配置転換等の育成計画を策定・実行できる仕組みづくりを推進しております。
・管理職クラス向け:外部機関におけるトップマネジメント研修を実施し、実力とスキルアップに向けた教育を実施しております。
また、障がい者雇用、男性育児休暇取得促進、性的マイノリティであるLGBTQへの理解促進活動を実施しております。
● 新たな挑戦を応援する風土醸成
従業員一人ひとりの思いを尊重し、組織として新しいことへの挑戦を応援する風土づくりの一環として、2022年度よりアイデアコンテスト「MEIANチャレンジ」を開催しております。2023年度は、「カーボンニュートラル」と「ウェルビーイング」に関連するアイデアを募集し、最終発表会では240名を超える従業員が参加しました。部門の垣根を越え、共通の興味を持った従業員同士がチームとなり、自らが「実現したい未来」をイメージしながらアイデアを具現化しております。本活動は、従業員同士のつながり力や、自らがやってみたいと思うチャレンジ精神の醸成にも繋がっております。
<従業員の安全意識向上と健康経営の促進>
● 安全に関する取組み
従業員一人ひとりの危険感受性を向上させ、自身の働く職場の危険を正確に把握・理解し、対策するために、安全体感車を活用し、国内の各製造拠点にて安全体感教育(VR含む)を展開しております。また、労災風化防止のために、過去の労災の事実を従業員に伝え、二度と同じ労災を繰り返してはならないと心に刻み、語り合う場として安全伝承館を設立しました。
● 健康経営の促進
「健康は、なにものにも代え難い財産」という思いのもと、「健康経営戦略マップ」を作成し、計画的に健康経営を推進しております。また、メンタルヘルス教育、ストレスチェック、相談窓口設置など、「心の健康づくり」も強化しております。2023年度はストレスチェック結果を有効活用するため、部門長や個人に対し、結果の見方・活用方法について改めて教育を実施しました。
<指標と目標>
以上の取組みを踏まえ、当社グループでは以下の項目について目標値を設定しております。
2024年度も目標達成に向け、各種施策を実行してまいります。
なお、以下のNo.1からNo.3の値は提出会社の数値、No.6の値は提出会社と㈱明電エンジニアリングの数値を記載しております。
海外を含めた連結子会社についても多様性を推進し、求める人財の獲得・育成及び環境整備に取り組んでまいります。
※ 同一労働の賃金に差はなく、提出会社の正社員のうち管理職における男女賃金格差は96.3%です。
(4)指標・目標
以上の内容を踏まえ、当社グループでは「
(1) リスクマネジメントの体制
当社グループでは、下図のとおりスリーラインモデルによるリスクマネジメント体制を構築しております。

【用語の説明】
第1ラインのCSAはすべての部門において年度ごとにリスクやそのコントロールの見直しが行われ、その結果を踏まえた翌年度のリスクマネジメント確認表を作成しております。
各部門で抽出された重要なリスクは「影響度」と「発生可能性」の二軸で評価されております。
第1ラインのCSAによる各部門の重要リスク情報は、事業グループ単位のリスクディスカッションを経て内部統制推進部に集約され、内部統制推進部は第1ラインのリスク情報に対して「顕在化に至る速度」や「ブランド毀損」、「対応策の有効性」等を加味して評価を行っております。
さらに、スタッフ部門のリスクヒアリングから抽出した第2ラインのリスク情報も加えて総合的な評価を行い、全社的に認識すべき重要リスクの一覧表を作成しております。この重要リスク一覧表はリスクマネジメント委員会で共有され、重要リスク一覧表をベースに事業リスクの評価とコントロール方法を審議しております。その結果は常務会、取締役会に報告され、経営層はそれらのリスクマネジメントについて議論する仕組みとなっております。

(3) 重要な事業リスク
上記の経営層による議論の結果、当社グループは本有価証券報告書に記載している事業に関し、投資者の判断に影響を及ぼす可能性のあるリスク事象を以下のリスク事象一覧表に記載しております。
また、これらのリスクの内容とシナリオ及び対応策については、適宜取りまとめて以下(4)「重要な事業リスクの内容と対応策」に記述しております。

(注)リスク評価は一般的評価ではなく、当社グループにおける多種のリスク事象を独自に評価したものであります。
(4) 重要な事業リスクの内容と対応策
上記(3)のリスク事象に関するリスクシナリオと対応策は以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、2023年度(当連結会計年度)末現在における当社グループの状況に基づく判断であります。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、2023年度(当連結会計年度)末現在において判断したものであります。
(1) 経営成績
当連結会計年度におけるわが国の経済は、サプライチェーンの正常化進展やコロナ禍後の人流回復、ものづくりの国内回帰の流れなどを受けて、民間の幅広い業種において投資マインドが改善に至りました。これに加えて、官公庁向けの需要も安定的に推移したことから、当社が手掛ける重電製品・システムに対する引き合いは、年間を通して旺盛な状況が継続しました。一方で、各種資材及びエネルギー価格の高止まりや全国的な課題となりつつある人手不足を背景とする工事進捗の遅れなどにより、一部の事業分野において収益性が圧迫される状況が発現しました。
また、世界経済においては、地政学上の混乱に伴う各種事業リスクの顕在化や主要国における継続的な物価上昇、半導体市況の需給の緩みなどが、当社の業績に少なからず影響を与えました。その一方、脱炭素社会の実現に向けた各国でのエネルギー投資の拡大や環境配慮型製品に対するニーズの増加などは、当社海外事業の収益性の大幅な改善に繋がる追い風となりました。
このような中、当社グループは、「中期経営計画2024」で掲げた方針に基づき、環境に資する事業・製品への注力、海外事業における収益基盤の強化及びサステナビリティ経営の進展に向けた各種施策の展開といった動きを推し進めてまいりました。
当連結会計年度(以下「当期」)の経営成績は、以下のとおりであります。
(単位:百万円)
当期の営業利益は12,731百万円となり前連結会計年度(以下「前期」)と比較し4,191百万円増加しております。
当期の営業外損益につきましては、営業外収益が2,533百万円、営業外費用が1,879百万円となりました。
営業外収益の主な内訳は、受取利息及び配当金848百万円、為替差益751百万円であります。営業外費用の主な内訳は、支払利息908百万円であります。この結果、経常利益は13,385百万円となり前期と比較して4,561百万円増加し、売上高経常利益率は4.6%となっております。
当期の特別損益につきましては、特別利益が3,988百万円、特別損失が1,617百万円となりました。
特別利益の主な内訳は、固定資産売却益3,236百万円であり、特別損失の主な内訳は、火災損失792百万円であります。
この結果、税金等調整前当期純利益は15,756百万円となり、法人税、住民税及び事業税、法人税等調整額合計で4,411百万円計上、及び非支配株主に帰属する当期純利益138百万円を計上したことにより、親会社株主に帰属する当期純利益は11,205百万円となっております。また、1株当たり当期純利益は247円00銭、自己資本利益率は9.6%となっております。
① 電力インフラ事業セグメント
売上高は前期比28.5%増の77,719百万円、営業利益は前期比6,920百万円改善の6,404百万円となり、現セグメント区分下で初となる営業黒字となりました。
海外を主体とする変電事業については、シンガポール、北米、インドなどにおける需要の伸びや収益性改善の取組みにより、増収増益となりました。また、国内主体の電力エネルギー事業についても、電力会社向けや水力発電所向け案件の豊富な受注残などを背景に、増収増益となりました。
② 社会システム事業セグメント
売上高は前期比4.6%減の86,269百万円、営業損失は前期比2,849百万円悪化の453百万円となり、現セグメント区分下で初となる営業赤字となりました。
電鉄事業においては、海外案件の減少により減収となりましたが、シンガポールで手掛けてきた大型案件の原価が改善したことなどから、増益となりました。その一方、社会システム事業及び水インフラ事業においては、工程の遅れによる売上計上時期の後ろ倒しや資材高騰に伴う収益性悪化などの影響が強く発現し、減収減益となりました。
③ 産業電子モビリティ事業セグメント
売上高は前期比0.5%増の78,487百万円となった一方、営業利益は前期比1,527百万円悪化の155百万円となりました。
EV事業は、中国拠点の稼働は低位に留まったものの、国内製造ラインの高稼働が継続し、増収増益となりました。また、電動力ソリューション事業、モビリティT&S事業については、価格交渉や生産性向上に向けた努力を継続したことにより、増益を確保しました。その一方で、電子機器事業では、半導体市況の落ち込みを背景に、大幅な減収減益となりました。
④ フィールドエンジニアリング事業セグメント
売上高は前期比6.5%増の42,303百万円、営業利益は前期比1,389百万円改善の6,650百万円となりました。
保守サービスに関する堅調な需要が継続していることに加えて、部材の長納期化に対応するための各種の取組みを進めてきたことなどが奏功し、売上及び営業利益はいずれも過去最高となりました。
⑤ 不動産事業セグメント
売上高は前期比0.1%減の3,228百万円、営業利益は前期比111百万円改善の1,432百万円となりました。
⑥ その他
報告セグメントに含まれない事業において、一部の国内関係会社の再編や機能の見直しを進めたことから、売上高は前期比11.7%減の14,672百万円となった一方で、営業利益は前期比96百万円改善の328百万円となりました。
(生産、受注及び販売の状況)
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) セグメント間取引につきましては、相殺消去しております。
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) セグメント間取引につきましては、相殺消去しております。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) セグメント間取引につきましては、相殺消去しております。
(2) 財政状態
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末(以下「前期末」)比27,396百万円(8.9%)増加し、334,787百万円となりました。
流動資産は、棚卸資産の増加及び受取手形、売掛金及び契約資産の増加により、前期末比20,752百万円(11.1%)増加の208,503百万円となりました。
固定資産は、保有する上場株式の市場価値上昇に伴う投資有価証券の増加により、前期末比6,644百万円(5.6%)増加の126,284百万円となりました。
負債合計は、契約負債の増加により、前期末比8,789百万円(4.5%)増加して205,298百万円となりました。
純資産合計は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上及びその他有価証券評価差額金の増加により、前期末比18,607百万円(16.8%)増加して129,488百万円となりました。
この結果、自己資本比率は前期末の35.1%から37.8%となりました。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」)は、前連結会計年度末に比べ3,107百万円増加し、17,224百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は8,968百万円(前年同期は13,742百万円の獲得)となりました。
主な収入は、税金等調整前当期純利益15,756百万円、減価償却費10,296百万円であり、主な支出は、棚卸資産の増加額6,621百万円、法人税等の支払額5,084百万円であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は7,553百万円(前年同期は10,506百万円の使用)となりました。
これは主に、有形及び無形固定資産の取得による支出9,343百万円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果得られた資金は749百万円(前年同期は2,685百万円の使用)となりました。
主な収入は、長期借入れによる収入8,759百万円、コマーシャル・ペーパーの発行による収入2,000百万円であり、主な支出は、長期借入金の返済による支出9,106百万円、配当金の支払額2,131百万円であります。
(資本の財源及び資金の流動性に係る情報)
当連結会計年度における資金調達は、主として借入金及びコマーシャル・ペーパーをもって行いました。調達においては、長期・短期のバランスと安定性を考慮し、長期の借入も実施しております。
その結果、借入金、コマーシャル・ペーパー及び社債の残高は、前期比4,170百万円増の54,679百万円となりました。
また、コミットメントラインは前期末比5,000百万円減少の35,000百万円で設定されています。
当社グループでは、「中期経営計画2024」で掲げた、「質の高い成長」「サステナビリティ経営の推進」「両利きの経営の推進」という3つの基本方針に基づき、再生エネルギーやEV等の環境に資する事業拡大、海外事業の収益力強化及び気候変動への対応に向けた各種施策を推し進めております。2023年度(当連結会計年度)においては、電力インフラ事業を中心に海外事業の収益を前年比で大幅に改善させるとともに、保守サービスに関する堅調な需要が継続したことにより、受注高・売上高・営業利益いずれも過去最高を更新しました。
2023年度(当連結会計年度)の投資につきましては、設備投資9,981百万円、研究開発10,098百万円となりました。設備投資においては、電力系統を支える変電設備の心臓部品であるVI(真空インタラプタ)製品の増産に向けた新ライン構築への投資を進めました。研究開発の状況は、後記「第2 事業の状況 6 研究開発活動」に記載のとおりであります。今後も環境貢献に資する事業・製品の業容拡大を念頭に置きつつ、増加する生産負荷に対応し、生産性向上・収益力改善をもたらす設備投資を優先的にすすめるとともに、製品・サービス競争力の強化に繋がる研究開発を行ってまいります。
2024年度は「中期経営計画2024」の最終年度にあたります。受注高・売上高は掲げていた中計目標を上回りますが、営業利益は中計目標の180億円を下回る計画としております。主に、電力インフラ事業の好調が継続し、全社の受注高・売上高に寄与する見通しですが、利益面は、半導体市況の減速やEV関連の市場環境の変化により産業電子モビリティ事業が低迷していることと、社会インフラ関連事業の収益性が想定よりも悪化していることが影響しております。会社全体では更なる売上拡大・収益力向上を図りつつ、特に苦戦を強いられております社会インフラ事業に対しては収益改善に集中して取り組むことで、2024年度計画の達成を目指してまいります。
財務指標につきましては、2023年度(当連結会計年度)は、当期純利益の増加によりROEが9.6%となり、前年の6.8%に対し大幅に改善しました。引き続き、収益力を伸ばしていきながら、より一層資本効率を意識した経営を展開することで、2024年度計画の完遂と、次期中計に向けた基盤作りを推進してまいります。

(5) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。
この連結財務諸表の作成にあたって、連結貸借対照表上の資産、負債の計上額、及び連結損益計算書上の収益、費用の計上額に影響を与える見積りを行う必要があります。
会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
なお、連結財務諸表の作成に当たり採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表」の(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)に記載しております。
①固定資産の減損及び投融資の評価
当社グループは、有形固定資産及び無形固定資産について、見積耐用年数にわたり、主として定率法又は定額法により償却しております。これらの有形固定資産及び無形固定資産について、帳簿価額が回収できない可能性を示す事象や状況の変化が生じた場合に、減損の判定を行っております。減損が生じていると判断した場合、当該資産の帳簿価額が回収可能価額を上回る金額を、減損損失として計上しております。
回収可能価額は、使用価値と正味売却価額のうち、いずれか高い金額としております。使用価値の算定においては、見積り将来キャッシュ・フローを、貨幣の時間価値及び資産固有のリスクを反映した割引率を用いて現在価値に割り引いて算出しております。
なお、一部の子会社の買収時に発生したのれんの価値算定においては、過去実績、収益と費用の予測、将来の市場の成長度合、経営者により承認された事業計画の実現可能性度合、適切な市場における比較対象等の前提条件を使用しております。また、割引率の算定にあたっては、独立した外部の評価機関を利用しております。
2024年3月31日時点における評価において、連結財務諸表において事業用資産の減損損失を470百万円計上しております。
これらの前提条件の見積りに関する評価は合理的であると判断しておりますが、予測不能な前提条件の変化等により回収可能価額の評価に関する見積りが変化した場合には、更に減損損失の計上が必要となる可能性があります。
また、会計上の見積り及び仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」をご参照ください。
②繰延税金資産
当社グループは、将来の課税所得の見込みにより、回収可能と判断した部分につきましては評価性引当額を認識しておらず、繰延税金資産を計上しております。
繰延税金資産の回収可能性を評価するに際しては、過去実績、将来の課税所得及びタックス・プランニング等を考慮し、慎重に検討しておりますが、予測不能な前提条件の変化等により回収可能性の評価に関する見積りが変化した場合には、繰延税金資産の修正が必要となる可能性があります。
③受注損失引当金
当社グループは、受注契約に係る将来の損失に備えるため、翌連結会計年度以降の損失発生見込額を計上しております。実際の発生原価が見積りと異なる場合、引当金の追加計上が必要となる可能性があります。
④製品保証引当金
当社グループは、納入した製品の無償補修費用の支出に備えるため、無償補修費用を個別に見積り算出した額を計上しております。実際の補修費用が見積りと異なる場合、引当金の追加計上が必要となる可能性があります。
⑤退職給付に係る負債
従業員の退職給付債務及び費用は、割引率、昇給率、退職率、死亡率、長期期待運用収益率等の前提条件を用いた年金数理計算により見積られます。特に割引率及び長期期待運用収益率は、退職給付債務及び費用を決定する上で重要な前提条件であります。
割引率は、測定日時点における従業員への給付が実行されるまでの予想平均期間に応じた優良債券の利回りに基づき決定しております。長期期待運用収益率は、債券及び株式等の投資対象資産グループ別の長期期待運用収益の加重平均に基づき決定しております。
当社グループは、年金数理計算上用いられる前提条件と方法は適切であると判断しておりますが、前提条件と実際の結果が異なる場合、又は前提条件の変更がある場合には、当社グループの退職給付債務及び費用に影響を与える可能性があります。
なお、割引率及び長期期待運用収益率がそれぞれ0.5%変動した場合の連結財務諸表への影響は以下のとおりであります。
⑥工事契約に係る収益認識
工事契約に係る収益のうち、一定の期間にわたり充足される履行義務については、履行義務の充足に係る進捗度を見積り、当該進捗度に基づき収益を一定の期間にわたり認識しております。履行義務の充足に係る進捗率の見積りの方法は、主として発生原価に基づくインプット法によっております。
工事契約に係る収益認識は、工事原価総額の見積りにより収益及び損益の額に影響を与えます。工事原価総額の見積りは当初は実行予算によって行っております。実行予算作成時には、作成時点で入手可能な情報に基づいた仕様や材料価格について仮定を設定し、作業効率等を勘案して各工事毎に詳細に積み上げることによって工事原価総額を見積ります。着工後は、プロジェクト毎に実際の発生原価と対比して適時・適切に工事原価総額の見直しを行っております。
工事原価総額の見積りに用いられる前提は適切であると判断しておりますが、想定していなかった原価の発生等により工事進捗度が変動した場合は、工事契約に係る収益及び費用の修正が必要となる可能性があります。
また、会計上の見積り及び仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」をご参照ください。
当社は、2023年7月28日開催の取締役会において、連結子会社である明電商事㈱(以下、「明電商事」)を次のとおり吸収合併することを決議し、同日付で吸収合併契約を締結しました。
(1) 合併の目的
当社は「中期経営計画2024」で掲げる「質の高い成長」の実現を目指して、強固な経営基盤の構築を進めております。
この達成に向けて、更なる販売体制の強化ならびに経営資源の集中・効率化が不可欠と判断し、当社の販売子会社である明電商事を吸収合併し、機能を統合することとしました。
なお、本合併と同時に、明電商事のICT関連事業については会社分割を行い、当社100%子会社でICT関連事業を担当する明電システムソリューション㈱に集約しております。
合併決議取締役会(※1) 2023年7月28日
合併契約締結 2023年7月28日
合併の期日(効力発生日) 2024年1月1日
(※1)本合併は、当社においては会社法第796条第2項に定める簡易合併、明電商事においては会社法第784条第1項に定める略式合併に該当するため、それぞれの合併契約の承認に関する株主総会を経ずに行いました。
(3) 合併方法
当社を存続会社とする吸収合併で、本合併により明電商事は解散しました。
(4) 合併に関する割当の内容
当社100%子会社との合併であるため、本合併による新株式の発行及び合併交付金の支払いは行いませんでした。
(5) 引継資産・負債の状況
存続会社である当社は、明電商事が明電システムソリューション㈱に会社分割によって承継させるICT関連事業に関する資産・負債を除き、合併期日(効力発生日)時点における明電商事の一切の資産、負債及び権利義務を引き継ぎました。
(6) 合併に伴う新株予約権及び新株予約権付社債に関する取扱い
該当事項はありません。
(7) 吸収合併存続会社となる会社の概要
当連結会計年度の研究開発費の総額は、連結売上高の3.5%にあたる、
「中期経営計画2024」では、「両利きの経営を支える研究開発」を基本方針とし、既存事業の競争力強化及び新製品・新規事業育成に取り組んでおります。当連結会計年度の主な取組みは次のとおりであります。
既存事業の競争力強化に向けては、環境対応製品のラインアップ拡充を目指した開発と車の電動化に対応する開発に取り組みました。1点目の環境対応製品については温暖化係数の高いSF6ガスを使わない真空技術応用製品が代表的であり、特に、環境意識の高まりから規制が進んでいる北米市場で需要が旺盛な123/145kV以上の高電圧対応製品の基盤技術開発に注力しました。2点目の車の電動化については、今後普及が拡大する急速充電に対応するため、800V対応の高出力EV駆動ユニットの開発を行いました。さらに、次世代デバイスであるSiC(シリコンカーバイド)の適用によるEV駆動ユニットの小型化、高効率化を目指しております。
新製品・新規事業育成に向けては、明電グループの新事業の柱となり得るテーマの創出を組織的に推進しております。さらに、将来目指したい社会の姿からバックキャストし、明電グループが保有すべき技術を議論し実施する「指向型研究」を展開しております。その中で、当社のコア技術の1つである電力変換技術に注力し、今後の再生可能エネルギー普及により拡大が見込まれる分散型エネルギーを高効率で繋ぐ直流送配電系統に対応した基礎技術の開発を行いました。