当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1)中期経営計画2024振り返り
●当社グループを取り巻く事業環境
中期経営計画2024(以下、中計2024)策定時に想定した事業環境に対して大きな変化が生じました。第一に、世界的なインフレと部材調達の長納期化であります。その影響は主に社会システム事業セグメントの業績を直撃しました。しかし、代替品の開発や新規調達先の開拓といった様々な取組みを進めてきたことで、当連結会計年度は長納期化の影響は概ね収まり、またインフレ影響の価格転嫁も進むなど、業績には明るい兆しが見えてまいりました。
第二にEV市場の動向の変化であります。2015年のパリ協定採択以降、多くの国がEV化の目標を掲げ、EV導入を推進した結果、EV市場は大きく成長しましたが、その勢いが落ち着きつつあります。これは、新技術への関心が高いアーリーアダプターの需要が一巡したことや各国のEV購入に対する補助金終了等の影響であると考えております。脱炭素の観点から、今後も世界全体のEVへの移行は進んでいくと考えられておりますが、国によっては導入期から普及期へ転換するにあたり、充電インフラの整備等が必要となってきていると捉えております。
最後に電力市場の動向の変化であります。国内においては、送配電網について、高度経済成長期に整備された設備の老朽化による更新需要に加え、脱炭素社会実現に向けた再生可能エネルギー導入のための整備を目的とした需要が拡大しました。更に、レベニューキャップ制度が導入されたことによって計画的な送配電網の整備が可能となり、安定的に更新できることとなりました。海外においても、先進国を中心にSF6ガス不使用製品の需要が高まるなど市場が急速に拡大しました。このような動向は、今後も暫く継続すると考えております。
●業績(2021年度~2024年度)
このような事業環境の中、当社グループは業績を順調に拡大させ、中計2024で目標として掲げた営業利益180億円、ROE10%を上回り、当連結会計年度は受注高、売上高、営業利益いずれも過去最高値を達成することができました。
財務状況について、中計2024開始前の2021年3月末時点と比べて、自己資本比率は34.6%から40.7%に向上し、有利子負債の圧縮も進んだことでネットD/Eレシオは0.34倍から0.10倍に改善するなど、より強固な財務基盤を構築することができました。効率性の面においては、総資産回転率が0.84回転から0.89回転に若干の改善が見られた一方で、部材長納期化への対策で戦略的に在庫を増やした影響等により、棚卸資産回転率が3.95回転から3.24回転に大きく悪化し、課題の残る結果となりました。
受注環境については、インド高速鉄道1号線(ムンバイ〜アーメダバード間)向け変電機器の大型受注を獲得するなど極めて良好で、受注残も年々増加しております。好調な受注状況を業績向上に繋げていくためにも、効率性指標の向上による生産力の拡大は重要な経営課題であると捉えております。
(2) 新中期経営計画:中期経営計画2027
●ビジョン達成に向けた価値創造プロセス
当社グループは、企業理念である「より豊かな未来をひらく」のもと、「人」と「技術」を企業価値創造の中核に据え、社会と共に発展してまいりました。中計2024では、2030年のビジョンとして「サステナビリティ・パートナー」を掲げ、そこからバックキャストする形で6つのマテリアリティ(重要課題)を特定し、その解決に取り組んでまいりました。
近年、生成AIをはじめとする革新的な技術が次々と実用化されており、企業を取り巻く環境や提供すべき価値のあり方は、今後更に大きく、かつ多様に変化していくと想定されます。その中で、2030年のビジョンを実現していくためには、成長と挑戦による価値提供方法の更新や、その実現を担う人財、企業文化の変革が必要になります。これらを踏まえ、マテリアリティにデジタル化の視点を加えて再構成し、「未来へ挑む人財・企業文化づくり」、「価値提供のアップグレード」、「人とデジタルの調和」を新たな重要課題として追加しました。注力領域のうち「リニューアブルエナジー」及び「サステナブルインフラ」の両領域においては、顧客や社会の課題に対し、ソリューションを通じた価値提供を推進してまいります。また、「グリーンモビリティ」及び「スマートインダストリー」の両領域では、製品技術及び生産技術を当社のコアコンピタンスと位置づけ、これらを活かした価値提供を展開してまいります。
ビジョン達成に向けた価値創造プロセスについて

●価値創造を実現するための戦略
当社グループは、「中期経営計画2027」(以下、「中計2027」)を「ニーズに対応した着実な成長」と「未来に向けた変化・挑戦」を両立する3年間として位置づけております。中計2027では既存事業の持続的な成長と非連続的な成長の両方を実現することを目指し、「成長&挑戦」をキーワードに成長戦略を推進してまいります。
成長戦略は大きく3つの柱で構成されます。第一の柱は「製品」であり、生産能力の増強のため、国内では変圧器や電子機器の生産設備を増設・増強し、海外ではアメリカ・ドイツ・シンガポール・インドにおける拠点再構築や新工場設立を進めるなど、合計260億円超の設備投資を計画しております。また、受注から出荷までの情報基盤整備や自動化・試験データの連携による生産プロセスの効率化等、DXによる生産性向上とリードタイムの削減を進めてまいります。
第二の柱は「事業」であり、新たな需要が見込まれる海外市場の開拓と、データ活用によるサービスビジネスの拡大を図ってまいります。変電事業・電鉄事業・半導体関連事業のグローバル展開に加え、水インフラ事業では機器・工事・運転維持管理・保守までを担う総合エンジニアリング体制を構築するなど、従来の機器販売に留まらない価値提供を推進してまいります。
そして第三の柱は「技術」であり、未来の社会を見据えた指向型研究を通じて、将来的な競争力の源泉を育成してまいります。注力する技術の方向性を、①直流・高周波、②パワーケミトロニクス(パワーエレクトロニクス×電気化学)、③デジタルツインO&Mという3つに定め、実現したい社会を構成するシステム・要素を整理し、その中で当社が特に取り組むコア技術の獲得を目指してまいります。
これら3つの成長戦略を支えるのが、「グリーン戦略の深化」、「人的資本の強化」、「社内DXの加速」を軸とした経営基盤の強化であります。「グリーン戦略の深化」では、脱炭素経営を加速し、工場ユニットの脱炭素化や再生可能エネルギーの導入、ライフサイクルアセスメント(LCA)の取組みを推進してまいります。「人的資本の強化」では、多様な人財が活躍できる環境づくりを進め、採用・育成・活躍の質的転換を目指してまいります。そして「社内DXの加速」では、基幹システムの刷新とデータ基盤の整備による業務の標準化・効率化・可視化を推進してまいります。
価値創造を実現するための戦略について

(3) 資本コストや株価を意識した経営
●基本方針
当社グループは、企業価値向上の取組みとして、ROE(自己資本利益率)の向上とPER(株価収益率)の向上という二つの観点から方針を掲げ、それぞれに基づいた施策を実行しております。ROE向上に向けては、収益力の強化や投資効率の向上に取り組むことで、効率的な資本活用を通じた価値の創出を目指しております。一方、PER向上に向けては、成長期待を高める投資の実行と、人的資本やガバナンス体制の強化等、非財務価値の充実を通じて、将来にわたる持続的な価値創造に取り組んでおります。
これらの方針は、中計2027における成長戦略・投資戦略と連動しており、収益力や資産効率の向上を通じてキャッシュ創出力を高め、創出されたキャッシュを再投資することで、更なる成長と企業価値の向上を生み出す好循環の構築を目指してまいります。また、限られた経営資源をいかに成長投資と株主還元へ配分していくかというキャッシュ・アロケーションの最適化にも重点を置き、長期的な視点での価値創造に取り組んでまいります。
●キャッシュ・アロケーション
中計2027においては、上位格付けの取得に向けた財務基盤の強化と、大型投資を可能とする資本力の増強に取り組み、将来に向けた戦略的投資を着実に実行できる体制を整備してまいります。
設備投資については、事業の持続的成長と競争力強化を目的に、「成長・DX投資」に350億円、「通常投資」に350億円を計画しております。成長投資では、真空コンデンサ製造ラインの増設等、新市場の開拓や生産能力の増強を通じて新たな価値の創出に挑戦してまいります。DX投資では、プロジェクト管理や経営情報の可視化、データ活用の高度化を目的とした基幹システムの再構築により、全社的な業務価値の最大化を図ってまいります。通常投資については、既存設備の更新・維持・補修を通じて、生産性と品質の安定を確保し、継続的な事業価値の維持・向上に努めてまいります。
設備投資において、特に大型案件については社内の投資判断における収益率の基準(ハードルレート)等の定量的指標と戦略的意義等の定性的要素を総合的に評価したうえで実施の可否を判断してまいります。また、将来を見据えた戦略の具体化を進める中で、非連続的な価値創造を目指すM&A等の大型投資とその資金調達方法についても検討を進めてまいります。
株主還元については、「安定的かつ継続的な配当の実施」と「成長による中長期的な株主価値の向上」の両立を基本方針としております。具体的には、親会社株主に帰属する当期純利益の30%を配当によって直接還元するとともに、中計2027の施策を通じて、既存事業による継続的な価値の創出と新たな収益源の確保を両立させ、株主価値の更なる向上を実現してまいります。
資本コストや株価を意識した経営について

(4)「中期経営計画2027」財務指標・非財務指標
以上の戦略を踏まえ、中計2027の財務指標・非財務指標は次のとおり設定しております。

※1.計画為替レート:140円/USD
※2.ROIC=税引後営業利益/(有利子負債+自己資本)
※3.Scope1,2,3:2019年度実績比
※4.eNPS:従業員向けNPS®(ネット・プロモーター・スコア)。NPS®は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズの登録商標であります。
eNPSの単位を%とし、記載しております。また、eNPSの対象は、提出会社及び国内関係会社(イームル工業株式会社及び明電ユニバーサルサービス株式会社を除く。)であります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
当社グループでは、持続可能性の観点から企業価値を向上させるため、サステナビリティ推進体制を強化しており、代表取締役 執行役員社長がサステナビリティ課題に関する経営判断の最終責任を有しております。
2022年度より、経営判断を行う場と進捗把握を行う場を切り離す目的で、サステナビリティ経営戦略会議とサステナビリティ経営推進会議の2階構造に体制を見直しております。また、取締役会がサステナビリティ全般について監督する役割を担っており、社内のサステナビリティ経営に関する議論内容については、年2回の定期報告を含め取締役会へ情報共有が行われております。

~両会議体における議題(2024年度)~
また、取締役(監査等委員及び社外取締役を除く。)報酬を決定する評価基準に、従業員エンゲージメント指標であるeNPS連動報酬を組み込むことで、サステナビリティガバナンスの強化及び取組みの実効性向上を図っております。他のサステナビリティに関する指標についてもインセンティブ報酬の中に組み込むことを検討してまいります。

当社グループにおいて、全社的なリスク管理は、リスクマネジメント委員会にて行っております。サステナビリティ全体に関するリスク管理については、サステナビリティ経営を推進するサステナビリティ推進部が中心となり、関連部門とともにリスクの抽出を行っており、その内容については全社リスクの中に織り込んで、様々なリスクとともにマネジメントされております。リスク管理の詳細については、
当社は、企業理念である「より豊かな未来をひらく」のもと、「人」と「技術」を企業価値創造の中核に据え、社会とともに発展してまいりました。中期経営計画2024では、2030年ビジョンとして「サステナビリティ・パートナー」を掲げ、そこからバックキャストする形で6つのマテリアリティ(重要課題)を特定し、その解決に取り組んでまいりました。
近年、生成AIをはじめとする革新的な技術が次々と実用化されており、企業を取り巻く環境や提供すべき価値のあり方は、今後更に大きく、かつ多様に変化していくと想定されます。その中で、2030年のビジョンを実現していくためには、成長と挑戦による価値提供方法の更新や、その実現を担う人財、企業文化の変革が必要になります。これらを踏まえ、当社はマテリアリティにデジタル化の視点を加えて再構成し、「未来へ挑む人財・企業文化づくり」、「価値提供のアップグレード」、及び「人とデジタルの調和」を新たな重要課題として追加しました。注力領域のうちである「リニューアブルエナジー」及び「サステナブルインフラ」の両領域においては、顧客や社会の課題に対し、ソリューションを通じた価値提供を推進してまいります。また、「グリーンモビリティ」「スマートインダストリー」の両領域では、製品技術及び生産技術を当社のコアコンピタンスと位置づけ、これを活かした価値提供を展開してまいります。
マテリアリティの抽出については、経営企画本部が中心となり各事業グループや横断部門と意見交換を行ったうえ、サステナビリティ経営戦略会議・常務会・取締役会で議論を経て決定しております。
※マテリアリティに関する詳細な情報については、2025年9月に当社ウェブサイトにて公表予定の統合報告書(明電舎レポート)2025年度版をご参照ください。
当社グループにおけるマテリアリティのうち、①カーボンニュートラル社会の実現(気候変動に対する取組み) 及び②未来へ挑む人財・企業文化づくり(人的資本)については、特に企業経営に影響を与えると考えており、それぞれの項目にかかる当社グループの考え方及び取組みは、次のとおりであります。
① カーボンニュートラル社会の実現(気候変動に対する取組み)
<TCFD提言に基づく開示>
当社グループは長年、気候変動問題を重要課題として認識し、事業を通じて問題解決に取り組んでまいりました。2019年6月にTCFD提言への賛同を表明し、2020年よりTCFDのフレームワークに沿ったリスク・機会の検討を開始して、戦略への織り込みを進めております。
<ガバナンス>
当社グループにおける気候変動問題への対応は、経済政策及び国際情勢に関して、グループ内外での経験を通じた高い見識を有するサステナビリティ担当役員が統括責任を担い、環境政策及び技術に関する専門的な知見を有する経営企画本部サステナビリティ推進部が、戦略の立案・実行、各種対応策の策定、モニタリングを推進しております。
また、先述のとおり、サステナビリティ全般について扱うサステナビリティ経営戦略会議及びサステナビリティ経営推進会議において、脱炭素に向けた戦略策定などを検討しております。議論の内容については年2回、サステナビリティ担当役員及びサステナビリティ推進部より取締役会へ報告しており、取締役会は戦略・計画の妥当性や実行状況を監督しております。これと並行して、生産統括役員が委員長を務める「明電グループ環境委員会」にて、社内環境活動の進捗管理として、四半期ごとに社内課題の抽出、環境目標・実施計画・緊急事態発生時の対応等を審議し、環境経営の具体的な施策展開を推進・モニタリングしております。
<リスク管理>
先述のとおり、サステナビリティ全体に関するリスク管理については、サステナビリティ経営を推進するサステナビリティ推進部が中心となり関連部門とともにリスクの抽出を行っており、その内容についてはガバナンス本部が管理をする全社リスクの中に織り込み、様々なリスクとともにマネジメントしております。気候変動に関するリスクについてもその中に含まれております。
<戦略>
気候変動に対するシナリオ分析は、サステナビリティ推進部が中心となり、経理・財務本部、ガバナンス本部、事業グループなどの社内関係部門と連携しながら検討プロセスを4つに分け、年次で分析・評価をしております。同時に事業に影響を及ぼす重要な要因を選定し、特定したリスクと機会・評価を事業戦略に反映しております。
STEP1 シナリオ群の選択・具体化
TCFDが推奨するように、2℃シナリオ以下を含む複数の温度帯シナリオを選択し、分析を行っております。脱炭素シナリオ(RCP1.9)及び温暖化シナリオ(RCP4.5, RCP8.5)の2つのシナリオに基づき、IEAやIPCCなどの国際公表データや日本の政府機関が公表している数値データなどを用いつつ、5フォース分析などの経営フレームワークも活用し、各シナリオにおける世界観や具体的なシナリオを整理しております。当連結会計年度から当社グループの長期環境目標の最終年度である2050年までを見通して中長期的な世界観やシナリオ、数値前提を再構築しております。

STEP2 気候変動関連リスクに対する重要度評価
TCFD提言で例示されているリスク・機会を参考にしつつ、各シナリオの世界観をもとに気候変動に伴うリスク・機会因子を抽出し、事業領域別と当社グループ全体の対象範囲に分けたうえで、リスク・機会の具体化と影響が生じる時間軸を整理しております。
■気候変動関連リスク評価における時間軸の定義
■当社グループの注力領域及びグループ共通の移行リスク (主に脱炭素シナリオにおける機会・リスク)

■当社グループ共通の物理リスク(主に温暖化シナリオにおける機会・リスク)

STEP3 事業インパクト評価
STEP1で整理したシナリオ別の世界観及び、STEP2で整理した機会・リスク項目を踏まえ、事業インパクトの評価を実施しております。その過程で「第三次明電環境ビジョン」にて進捗目標を設定している2030年を対象に「営業利益へのインパクト」、「事業発生の蓋然性」の2軸から特に事業への影響が大きい項目をスクリーニングし、それらの項目について詳細分析を実施しております。影響が大きい各項目は、シナリオ別に市場成長率などをもとに「成行値(対策織り込み前の値)」を把握しました。一部仮定を置きながら定量的に試算し、計算が不可能な項目については定性的に整理しております。


STEP4 対応策の検討
STEP3で算出した「成行値」をもとに、当社グループの置かれた状況を踏まえ、機会を掴む戦略、リスクを軽減するための施策を検討してまいりました。

<指標と目標>
当社グループは、2021年11月に長期目標として、2040年RE100、2050年カーボンニュートラル達成を宣言しております。また、中期目標として、2030年度に向けたScope1,2及び3の温室効果ガス排出削減目標を上方修正した第二次明電環境ビジョンを2021年度に発表しました。そして、2025年度から開始した中期経営計画2027では、1.5℃シナリオ水準に整合した新たな目標を第三次明電環境ビジョンとして策定し、短期目標として中期経営計画2027の最終年度2027年度の目標を定めました。また、これまで、Scope3の削減目標は最も排出量の多いカテゴリ11「販売した製品の使用」を削減目標の対象として参りましたが、第三次明電環境ビジョンでは、全カテゴリで新たな削減目標を定めました。なお、本目標は、SBT(Science Based Targe)イニシアチブの認証を2025年3月に改めて取得しております。
■温室効果ガス排出量削減目標
■カーボンニュートラルに向けた移行計画

■インターナルカーボンプライシング(ICP)
当社では2021年4月からインターナルカーボンプライシング(ICP)制度を導入して設備投資計画に伴う排出量を内部炭素価格で費用換算し、投資判断材料の一つとしております。2023年度の設備投資より、環境省のガイドライン及びIEAの1.5℃シナリオの炭素価格を考慮して、15,000円/t-CO2へ引き上げ、これまで空調設備更新やLED化等の推進に活用しております。当連結会計年度は、574t-CO2/年の削減に貢献しました。引き続き、ICPの活用拡大、Scope1,2の削減に取り組んでまいります。
■再生可能エネルギー由来の電力利用
生産増に伴うScope2増大を抑制するため、再生可能エネルギー由来の電力利用の拡大を進めてまいります。国内の再生可能エネルギー比率は2023年度30%から2024年度は41%となりました。今後自家発、電力購入契約(PPA)、再エネ電力メニュー、再エネ電力証書を活用しながら、国内外の生産拠点の再エネ比率拡大を優先事項として取り組んでまいります。
■GHG削減貢献量実績
当社グループは、環境配慮型製品及びサービスの販売を通じて、社会全体の温室効果ガス排出量削減に貢献してまいります。
*1 使用段階のGHG排出量の差分に、想定寿命及び年間販売量を乗じて算定しております。ただし、風力発電は年間の発電量実績に基づいて算定しております。
*2 2024年度は、米国での生産分が含まれております。
② 未来へ挑む人財・企業文化づくり(人的資本)
<人的資本に関する基本的な考え方>
当社グループは、前述のマテリアリティの認識のもと、それらへの対応の遅れは企業運営や事業継続に関わる重要リスクとなるため、人財を価値創造の源泉である人的資本として捉え、強化に取り組んでおります。
<課題認識/従業員意識調査の結果>
当社グループは、従業員エンゲージメントの向上に向け、従業員エンゲージメント指標(eNPS)をKPIとして設定し、毎年実施している従業員意識調査結果に起因する要因を分析することで、現状の課題を把握し施策の実行に繋げております。
当連結会計年度に実施した従業員意識調査においては、組織の柔軟性や達成・挑戦志向を示す「風土」カテゴリの肯定率が前年度比で改善した一方、評価制度や報酬制度を示す「各種制度」カテゴリ、人財育成や採用・配置を示す「人財活用」カテゴリの肯定率は低い水準で推移する結果となりました。

◆従業員エンゲージメントの影響要因
◆従業員意識調査の結果
※eNPSの単位を%とし、記載しております。
また、eNPS及びカテゴリ別肯定率の対象は、提出会社及び国内関係会社(イームル工業株式会社及び明電ユニバーサルサービス株式会社を除く。)であります。
<求める人財像の定義と各種取組みの展開>
急速に変化する時代の中で、その変化に対応し、価値提供のあり方を見直しながら世の中が抱える課題を解決していくためには、主体的に新しい社会づくりに取り組み、新たな価値を創造し続けることのできる人財が必要不可欠であります。
求める人財像を「自ら考え、自ら行動できる(考動)、多様な個を受け入れ、新しい価値を生み出すことができる(共動)、そして個とチームが共に育成・成長し合える(共育)人財」と定義し、これに基づく人財を獲得・育成していくための取組みを推進しております。

具体的には、各々の能力(A)とモチベーション(M)を高め、全ての従業員が活躍できる機会・環境を整備する(O)ことで企業パフォーマンスを最大化するAMOフレームワークを当社グループにおける人的資本強化の考え方のベースとして、「経営課題を解決する人財の獲得・育成」、「個を尊重した組織への転換」を軸に各種取組みを推進しております。

◆ 経営課題を解決する人財の育成
当社グループの目指す姿の実現には、多様な経営課題を解決できる人財の育成が必要不可欠であります。従業員の多様な能力(Ability)を高めるため、以下のような取組みを進めております。
<取組み事例>
● 既任正課長を対象としたマネジメント研修
既任正課長に対し、マネジメントスキル向上を目的とした研修を新たに導入しました。従来は新任の課長のみを対象としていましたが、変化する時代に対応するため、既任者向けにもマネジメント観のアップデートの機会を設けました。特にコミュニケーション力の強化を図り、管理職の効果的な部下との関わり方の習得を促進しております。
● 技能職研修
技能職は、従来選抜者を対象としたグループリーダー研修を実施していましたが、技能職の知識・モチベーション向上を目的として、当連結会計年度より階層別研修を新設し、昇格者全員を受講対象とする制度を導入しました。
● 社内兼業制度・社内インターンシップ制度
従業員のキャリア形成と組織活性化を目的とした人財育成施策として、社内インターンシップ制度及び社内兼業制度を導入しております。社内インターンシップ制度は、期間限定で他部門の業務を体験する機会を提供し、新たな経験や部門間交流を通じて視野の拡大と知見の習得を促進するとともに、従業員が自身のキャリアパスや適性を見つめ直す機会として機能しております。また、社内兼業制度は、従業員が本来の業務に加えて他部門の業務に携わることで、自発的なチャレンジの機会を創出し、働きがいの向上に繋げることを目的としております。
これらの制度を通じて、当社は多様な経験を持つ人財の育成と組織の持続的成長を図っております。
◆ 個を尊重した組織への転換
従業員のウェルビーイングを向上させ、当社グループの中長期的な価値創造に繋げていくためには、「個を尊重した組織への転換」が必要不可欠であります。従業員の能力を高めるだけでなく、働くモチベーションを高め、多様なバックグラウンドを持つ従業員が活躍できる機会や環境を整備することで、従業員それぞれが「個の力」を最大限に発揮でき、組織パフォーマンスの最大化に繋がると考えております。
ⅰ 従業員のモチベーション(Motivation)向上
● 人事制度改定
従業員のエンゲージメント向上や人財獲得の競争力強化のため、人事処遇制度を改定しました。特に一般職の処遇を引き上げ、それに合わせて役職・シニア職の処遇についても見直しを実施しました。より成果や役割に応じた制度へ移行し、従業員の働きがいや成長意欲の向上を図ります。
今後も、経営環境や労働市場の変化、個人の価値観や働き方の多様化、物価高騰による従業員の生活への影響等を踏まえ、経営状況や制度改定の影響等を考慮しながら、段階的に処遇を改善してまいります。
● 昇格基準・運用の見直し
適所適材を実現するために優秀な人財を早期に登用・抜擢できるよう「昇格制度」を見直し、当連結会計年度から運用を開始しました。今後は、必要に応じ昇格制度の運用改善を図りながら、優秀な人財の早期登用・抜擢を進め、組織パフォーマンスの最大化に繋げます。
● 職場環境の改善・企業風土醸成
従業員がよりいきいきと活躍できる職場環境実現のため、空調機を完備した更衣室の新築・運用を開始した他、食堂の改修等を行いました。また、職場の垣根を越えたコミュニケーション活性化のため、各事業所においてボウリング大会等の各種イベントを開催しました。
● エンゲージメント・やりがいの向上、オープンかつ未来志向な企業文化づくり
従業員のエンゲージメント・やりがいの向上を目的に、「MYビジョン」「MYチャレンジ」の取組みを進めております。また、オープンかつ未来志向な企業文化に変革していくために、2022年度から、経営層と従業員の双方向で「MYビジョン」「MYチャレンジ」について対話をする場として「明電みらいミーティング」、2023年度からは、「社長タウンホールミーティング」の取組みを開始しております。「社長タウンホールミーティング」では、新しい社会づくり・時代にあった価値を提供できる企業、一人ひとりの従業員を大切にする企業であり続けるために、社長自ら「MYビジョン」を語り、この取組みの必要性と、より人を大切にする経営を推進していく覚悟を示しました。また「明電みらいミーティング」では、部門毎に各担当役員が自らの「MYビジョン」を語り、部門の従業員と対話をすることにより、自分の思いをもって挑戦する空気の醸成を進めております。
ⅱすべての従業員が活躍できる機会(Opportunity)の創出
● 多様な人財が活躍できる環境づくり
女性活躍推進における課題を「計画的な育成と女性同士のネットワーク構築」と捉え、新たな女性リーダー育成プログラムを開始しました。これまで行ってきたサポーター役員とのセッションに加え、他社女性とのセッションや先輩社員のパネルディスカッションのカリキュラムによるネットワーク強化を図るとともに、参加者自身のキャリアビジョン及び組織運営に必要な具体的なリーダーシップ行動計画を構築するプログラムとしました。今後も継続的に実施することにより、社内外の女性同士の縦横のネットワーク構築も図ります。また、障がい者雇用においては、製造現場内での軽作業や事業所内路面補修業務等、活躍の場を拡大しました。
海外現地法人幹部候補人財の計画的育成のため、インドネシアにおいて、組織開発を目指す「コーチングプログラム」を実施しました。今後も海外現地法人の経営層の現地化を目指し、他現地法人へも引き続き展開を進めてまいります。
● 新たな挑戦を応援する風土醸成(社外への出向拡大)
若手・中堅層を中心に、グループ外・行政機関への出向を強化しております。専門分野や業務の枠を越えた広い視野と高い視座の習得、発想力や問題解決力の向上、多様性の受容力や共感力の向上等、さまざまな経験とチャレンジの場として活用しております。
<従業員の安全意識向上と健康経営の促進>
● 安全に関する取組み
従業員一人ひとりの危険感受性を向上させるとともに職場の危険を把握するため、国内各生産拠点やグループ会社に対し安全体感車を活用した教育(VR含む。)を展開しております。沼津事業所の安全伝承館では労働災害の風化防止のため、過去の労働災害を伝え、同じ労災を繰り返さないための教育を行っております。遠方の事業所の社員に対しては、新たにメタバース安全伝承館を構築し、WEB上での教育を開始しました。また、社員の不安全行動を監視し注意するため、沼津事業所にはAI安全カメラシステムを導入しました。高温多湿となりがちな工場内の作業環境を踏まえ、各工場に環境センサーを設置しWBGT値を監視することで、労働環境の警報を各職場に発信しています。作業者が快適に休憩できるスペース確保や空調管理の職場も拡張しています。
● 健康経営の促進
当社グループでは、持続的成長を支える人的資本経営の土台としての健康経営を推進し、『健康は何ものにも代え難い財産』という理念のもと、「身体の健康」・「心の健康」・「職場の健康」を三本柱とする包括的な健康施策に取り組んでおります。
当連結会計年度は国内各事業所と海外拠点(MEIDEN (HANGZHOU) DRIVE TECHNOLOGY CO., LTD.(中国) )をオンラインで結ぶハイブリッド型健康イベントを実施しました。今後も、従業員のヘルスリテラシー向上と健康増進を図るとともに、グローバルな一体感の醸成に取り組んでまいります。
<指標と目標>
以上の取組みを踏まえ、当社グループでは以下の項目について目標値を設定しております。2025年度も目標達成に向け、各種施策を実行してまいります。
現在、連結ベースでの人事情報収集体制が整備途上であり、データの整合性及び網羅性に課題があるため、現時点では単体ベースでの情報を開示しております。今後は、連結ベースでの人的資本データの整備及び開示体制の構築を進め、段階的に連結ベースでの開示に移行していく予定であります。
※1 同一労働の賃金に差はなく、提出会社の正社員のうち管理職における男女賃金格差は94.6%です。
※2 提出会社及び提出会社と同じ従業員意識調査を実施している国内連結子会社
(4)指標・目標
以上の内容を踏まえ、当社グループでは
(1) リスクマネジメントの体制
当社グループでは、下図のとおりスリーラインモデルによるリスクマネジメント体制を構築しております。

【用語の説明】
第1ラインのCSAはすべての部門において年度ごとにリスクやそのコントロールの見直しが行われ、その結果を踏まえた翌年度のCSA進捗確認表を作成しております。
各部門で抽出された重要なリスクは「影響度」と「発生可能性」の二軸での評価に加えて、「リスクが顕在化する速度」や「リスク発生による影響期間」、「対策レベル」を加味して総合的に評価しております。
第1ラインのCSAによる各部門の重要リスク情報は、事業グループ単位のリスクディスカッションを経て内部統制推進部に集約されます。
更に、スタッフ部門のリスクヒアリングから抽出した第2ラインのリスク情報も加えて総合的な評価を行い、全社的に認識すべき重要リスクの一覧表を作成しております。この重要リスク一覧表はリスクマネジメント委員会で共有され、重要リスク一覧表をベースに事業リスクの評価とコントロール方法を審議しております。その結果は常務会・取締役会に報告され、経営層はそれらのリスクマネジメントについて議論する仕組みとなっております。

(3) 重要な事業リスク
上記の経営層による議論の結果、当社グループは本有価証券報告書に記載している事業に関し、投資者の判断に影響を及ぼす可能性のあるリスク事象をリスクカテゴリー別に分類し、以下のリスク事象一覧表に記載しております。
また、これらのリスクの内容とシナリオ及び対応策については、適宜取りまとめて以下(4)「重要な事業リスクの内容と対応策」に記述しております。
リスク事象一覧表

(注)リスク評価は当社グループにおける多種のリスク事象を独自に評価したものであります。
(4) 重要な事業リスクの内容と対応策
上記(3)のリスク事象に関するリスクシナリオと対応策は以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在における当社グループの状況に基づく判断であります。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、2024年度(当連結会計年度)末現在において判断したものであります。
(1) 経営成績
当連結会計年度におけるわが国の経済は、雇用・所得環境の改善が進み、旺盛なインバウンド需要などにより、景気は緩やかに持ち直している一方で、米国の関税政策、円安を背景とした原材料価格やエネルギー価格の高騰の影響などにより、先行きは依然として不透明な状況が続いております。
当社の関連する市場においては、国内電力市場では設備更新需要が拡大し、海外先進国を中心にSF6ガス不使用製品の需要が高まるなど当社の事業に好影響を及ぼしております。また半導体市況の需給調整は徐々に回復の兆しが見える一方で、自動車事業でのEVシフトの勢いが弱まり、当社のEV事業の業績に少なからず影響を与えました。
このような中、「中期経営計画2024」最終年度となった本年は計画完遂に向け、市場需要の積極的な取り込みや環境に資する事業・製品への注力、海外事業における収益基盤の強化を進めてまいりました。並行してグリーン戦略・人的資本といったサステナビリティ経営の各種施策展開を推し進め、価値創造基盤の強化にも努めてまいりました。
当連結会計年度(以下「当期」)の経営成績は、以下のとおりであります。
(単位:百万円)
当期の営業利益は21,512百万円となり前連結会計年度(以下「前期」)と比較し8,781百万円増加しております。
当期の営業外損益につきましては、営業外収益が2,170百万円、営業外費用が2,490百万円となりました。
営業外収益の主な内訳は、受取利息及び配当金1,100百万円であります。営業外費用の主な内訳は、支払利息986百万円であります。この結果、経常利益は21,192百万円となり前期と比較して7,806百万円増加し、売上高経常利益率は7.0%となっております。
当期の特別損益につきましては、特別利益が3,100百万円、特別損失が456百万円となりました。
特別利益の主な内訳は、投資有価証券売却益1,274百万円、受取保険金1,165百万円であります。特別損失の主な内訳は、災害損失354百万円であります。
この結果、税金等調整前当期純利益は23,836百万円となり、法人税、住民税及び事業税、法人税等調整額合計で4,961百万円計上、及び非支配株主に帰属する当期純利益387百万円を計上したことにより、親会社株主に帰属する当期純利益は18,487百万円となっております。また、1株当たり当期純利益は407円51銭、自己資本利益率は13.9%となっております。
なお、当社は、前連結会計年度において明電商事株式会社を吸収合併したことに伴い、当連結会計年度より、同社が手掛けていた事業のセグメント区分の変更を行っております。以下、前年同期比較については、当該変更を反映した前年同期の数値を用いております。
① 電力インフラ事業セグメント
売上高は前期比10.2%増の86,437百万円、営業利益は前期比1,544百万円改善の7,988百万円となり、売上高及び営業利益はいずれも過去最高となりました。
海外を主体とする変電事業については、シンガポール、ドイツ、インドなどにおける需要の伸びや収益性改善の取組みにより、増収増益となりました。また、国内主体の電力エネルギー事業についても、電力会社向け案件の需要増を背景に、増収増益となりました。
② 社会システム事業セグメント
売上高は前期比10.0%増の96,323百万円、営業利益は前期比3,568百万円改善の3,034百万円となりました。
社会システム事業及び水インフラ事業においては、工程の遅れによる売上計上時期の後ろ倒しの影響が一部の案件でみられたものの、資材高騰に伴う収益性悪化は改善傾向にあり、増収増益となりました。電鉄事業においては、海外案件の減少がみられましたが、シンガポールで手掛けてきた大型案件の原価が改善したことなどから、減収増益となりました。
③ 産業電子モビリティ事業セグメント
売上高は前期比8.5%減の72,079百万円となった一方、営業利益は前期比936百万円改善の1,132百万円となりました。
電動力ソリューション事業は、主に搬送分野の受注減少、EV事業は、当社製品を搭載する車種で販売台数の落ち込みにより減収減益となりました。その一方で、電子機器事業及びモビリティT&S事業については、緩やかな需要の回復が見られ、増収増益となりました。
④ フィールドエンジニアリング事業セグメント
売上高は前期比17.2%増の49,567百万円、営業利益は前期比3,281百万円改善の9,931百万円となりました。
保守サービスに関する堅調な需要が継続していることに加えて、当年度に売り上がる案件の増加により、売上高及び営業利益はいずれも過去最高となりました。
⑤ 不動産事業セグメント
売上高は前期比0.2%増の3,235百万円、営業利益は前期比10百万円改善の1,443百万円となりました。
⑥ その他
報告セグメントに含まれない事業において、売上高は前期比16.3%減の8,672百万円となった一方で、営業利益は前期比149百万円改善の477百万円となりました。
(生産、受注及び販売の状況)
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) セグメント間取引につきましては、相殺消去しております。
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) セグメント間取引につきましては、相殺消去しております。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) セグメント間取引につきましては、相殺消去しております。
(2) 財政状態
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末(以下「前期末」)比6,559百万円(2.0%)増加し、341,347百万円となりました。
流動資産は、受取手形、売掛金及び契約資産の回収が進んだものの、現金及び預金が増加した結果、前期末比8,613百万円(4.1%)増加の217,116百万円となりました。
固定資産は、保有する上場株式の売却及び市場価値下落に伴う投資有価証券の減少により、前期末比2,053百万円(1.6%)減少の124,230百万円となりました。
負債合計は、社債の償還、支払手形及び買掛金の減少により、前期末比6,164百万円(3.0%)減少して199,134百万円となりました。
純資産合計は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上により、前期末比12,724百万円(9.8%)増加して142,212百万円となりました。
この結果、自己資本比率は前期末の37.8%から40.7%となりました。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」)は、前連結会計年度末に比べ11,867百万円増加し、29,091百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は35,454百万円(前年同期は8,968百万円の獲得)となりました。
主な収入は、税金等調整前当期純利益23,836百万円、減価償却費10,463百万円、売上債権の減少額5,159百万円であり、主な支出は、仕入債務の減少額4,433百万円、法人税等の支払額4,309百万円であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は9,065百万円(前年同期は7,553百万円の使用)となりました。
主な支出は、有形及び無形固定資産の取得による支出10,547百万円によるものであり、主な収入は、投資有価証券の売却による収入1,422百万円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は14,536百万円(前年同期は749百万円の獲得)となりました。
主な支出は、社債の償還による支出6,000百万円、短期借入金の返済による支出4,623百万円、コマーシャル・ペーパーの返済による支出4,000百万円、配当金の支払額3,851百万円であり、主な収入は、長期借入れによる収入5,900百万円であります。
(資本の財源及び資金の流動性に係る情報)
当連結会計年度における資金調達は、主として借入金及びコマーシャル・ペーパーをもって行いました。調達においては、長期・短期のバランスと安定性を考慮し、長期の借入も実施しております。
その結果、借入金、コマーシャル・ペーパー及び社債の残高は、前期比10,114百万円減の44,565百万円となりました。
また、コミットメントラインは前期末比5,000百万円増加の40,000百万円で設定されています。
当社グループでは、「中期経営計画2024」で掲げた、「質の高い成長」「サステナビリティ経営の推進」「両利きの経営の推進」という3つの基本方針に基づき、再生エネルギーやEV等の環境に資する事業拡大、海外事業の収益力強化及び気候変動への対応に向けた各種施策を推し進めてまいりました。当連結会計年度においては、電力インフラ事業を中心に海外事業の収益を前年比で大幅に改善させたとともに、保守サービスに関する堅調な需要が継続したことにより、受注高・売上高・営業利益いずれも過去最高を更新しました。
当連結会計年度の投資については、設備投資11,953百万円、研究開発11,234百万円となりました。事業環境の変化に伴い、当初計画していたEV用モーター・インバーター一体機量産や風力発電用風車リプレースを延期した一方、環境負荷低減や電力需要の高まりに対応し、真空インタラプタ製品の増産投資などを進めました。また、従業員の声に耳を傾け、働きやすい環境づくりを目指し、各事業所の食堂や休憩スペース、更衣室、トイレの整備など生産環境改善の投資も実施しました。研究開発の状況は、後記「第2 事業の状況 6 研究開発活動」に記載のとおりであります。今後も、会社の「成長」のために強みを伸ばし、新しい価値を創造するため「挑戦」し続けることを基本方針として、研究開発を推進してまいります。
当社を取り巻く事業環境としては、社会課題の解決と経済・産業の持続的な発展が求められる中で、生成AIをはじめとする革新的な技術が次々と実用化され、デジタル活用のニーズは拡大し、更に多様化すると想定しております。このような中、当社グループでは、多くの政治的・社会的な動向を注視する必要がありますが、「成長」を戦略の中心に据え、中期経営計画2027(以下、中計2027)で掲げたとおり、「製品」、「事業」、「技術」の3つの領域でそれぞれに適した戦略的アプローチを展開します。そしてこの3つの成長戦略を支える経営基盤としては、価値創造の根源である「脱炭素経営」「人的資本の強化」「経営マネジメントの変革」を展開し、更なる価値創造に繋げてまいります。2025年度においては、生産性の改善や工場におけるコストリダクションをしっかり行い、利益の拡大に努め、現行のリソースで工夫できることやDXなどの要素も加味した設備投資で収益力の向上を目指してまいります。
2024年度(当連結会計年度)実績、2025年度当初計画及び中計2027最終年度目標は以下のとおりであります。

(5) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。
この連結財務諸表の作成にあたって、連結貸借対照表上の資産、負債の計上額、及び連結損益計算書上の収益、費用の計上額に影響を与える見積りを行う必要があります。
会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
なお、連結財務諸表の作成に当たり採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表」の(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)に記載しております。
① 固定資産の減損及び投融資の評価
当社グループは、有形固定資産及び無形固定資産について、見積耐用年数にわたり、主として定率法又は定額法により償却しております。これらの有形固定資産及び無形固定資産について、帳簿価額が回収できない可能性を示す事象や状況の変化が生じた場合に、減損の判定を行っております。減損が生じていると判断した場合、当該資産の帳簿価額が回収可能価額を上回る金額を、減損損失として計上しております。
回収可能価額は、使用価値と正味売却価額のうち、いずれか高い金額としております。使用価値の算定においては、見積り将来キャッシュ・フローを、貨幣の時間価値及び資産固有のリスクを反映した割引率を用いて現在価値に割り引いて算出しております。
なお、一部の子会社の買収時に発生したのれんの価値算定においては、過去実績、収益と費用の予測、将来の市場の成長度合、経営者により承認された事業計画の実現可能性度合、適切な市場における比較対象等の前提条件を使用しております。また、割引率の算定にあたっては、独立した外部の評価機関を利用しております。
これらの前提条件の見積りに関する評価は合理的であると判断しておりますが、予測不能な前提条件の変化等により回収可能価額の評価に関する見積りが変化した場合には、更に減損損失の計上が必要となる可能性があります。
また、会計上の見積り及び仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」をご参照ください。
② 繰延税金資産
当社グループは、将来の課税所得の見込みにより、回収可能と判断した部分につきましては評価性引当額を認識しておらず、繰延税金資産を計上しております。
繰延税金資産の回収可能性を評価するに際しては、過去実績、将来の課税所得及びタックス・プランニング等を考慮し、慎重に検討しておりますが、予測不能な前提条件の変化等により回収可能性の評価に関する見積りが変化した場合には、繰延税金資産の修正が必要となる可能性があります。
③ 受注損失引当金
当社グループは、受注契約に係る将来の損失に備えるため、翌連結会計年度以降の損失発生見込額を計上しております。実際の発生原価が見積りと異なる場合、引当金の追加計上が必要となる可能性があります。
④ 製品保証引当金
当社グループは、納入した製品の無償補修費用の支出に備えるため、無償補修費用を個別に見積り算出した額を計上しております。実際の補修費用が見積りと異なる場合、引当金の追加計上が必要となる可能性があります。
⑤ 退職給付に係る負債
従業員の退職給付債務及び費用は、割引率、昇給率、退職率、死亡率、長期期待運用収益率等の前提条件を用いた年金数理計算により見積られます。特に割引率及び長期期待運用収益率は、退職給付債務及び費用を決定する上で重要な前提条件であります。
割引率は、測定日時点における従業員への給付が実行されるまでの予想平均期間に応じた優良債券の利回りに基づき決定しております。長期期待運用収益率は、債券及び株式等の投資対象資産グループ別の長期期待運用収益の加重平均に基づき決定しております。
当社グループは、年金数理計算上用いられる前提条件と方法は適切であると判断しておりますが、前提条件と実際の結果が異なる場合、又は前提条件の変更がある場合には、当社グループの退職給付債務及び費用に影響を与える可能性があります。
なお、割引率及び長期期待運用収益率がそれぞれ0.5%変動した場合の連結財務諸表への影響は以下のとおりであります。
⑥ 工事契約に係る収益認識
工事契約に係る収益のうち、一定の期間にわたり充足される履行義務については、履行義務の充足に係る進捗度を見積り、当該進捗度に基づき収益を一定の期間にわたり認識しております。履行義務の充足に係る進捗率の見積りの方法は、主として発生原価に基づくインプット法によっております。
工事契約に係る収益認識は、工事原価総額の見積りにより収益及び損益の額に影響を与えます。工事原価総額の見積りは当初は実行予算によって行っております。実行予算作成時には、作成時点で入手可能な情報に基づいた仕様や材料価格について仮定を設定し、作業効率等を勘案して各工事毎に詳細に積み上げることによって工事原価総額を見積ります。着工後は、プロジェクト毎に実際の発生原価と対比して適時・適切に工事原価総額の見直しを行っております。
工事原価総額の見積りに用いられる前提は適切であると判断しておりますが、想定していなかった原価の発生等により工事進捗度が変動した場合は、工事契約に係る収益及び費用の修正が必要となる可能性があります。
また、会計上の見積り及び仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」をご参照ください。
該当事項はありません。
当連結会計年度の研究開発費の総額は、連結売上高の3.7%にあたる、
当連結会計年度は「中期経営計画2024」(2021年度~2024年度)の最終年度として、「両利きの経営を支える研究開発」を基本方針とし、既存事業の競争力強化と新技術・新製品の創出に取り組みました。
既存事業の競争力強化については、変圧器とスイッチギヤの環境対応製品の開発や車の電動化への対応を進めております。変圧器については、従来と比べてCO2排出量が少ない植物油を絶縁油に用いた植物油入変圧器のラインアップを拡充し、カーボンニュートラルへの貢献を推進しました。スイッチギヤについては、遮断部に真空インタラプタ、絶縁ガスにドライエアを採用した、SF6ガスを使わない真空遮断器の高電圧・大容量化を進め、2025年度以降更なる製品展開を計画しております。車の電動化については、モーター・インバーター及びギアを一体化した製品「e-Axle」の更なる小型化・高性能化及び製品ラインアップ拡充を目指した開発を行いました。
新技術・新製品の創出については、当社の事業活動がイノベーションを通じて新しい社会づくりを加速させることを目指し、イノベーション人財の発掘と育成に注力しております。アイデアコンテスト「MEIANチャレンジ」や、新規事業創出支援を行う「MASTプロジェクト」を通じて、個人のアイデアを事業へと発展させる環境を整備しました。また、スタートアップの探索や企業との共創活動にも積極的に参画しております。更に、当社が将来目指したい社会の姿からバックキャストして当社グループが保有すべき技術を議論し、研究開発に取り組む「指向型研究」を推進しております。特に、水資源への影響が懸念されているPFAS(有機フッ素化合物)について、当社の特長技術であるオゾン水やパルス電源等を組み合わせ、分解・無害化する技術開発に取り組んでおります。