文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
ダイヘングループは、当社を取り巻くステークホルダー(お客様、社員と家族、株主、資材取引先、地域社会)の皆様により多くの幸せを感じていただくこと(「みんなの幸せ同時達成」)を会社の目的とし、各ステークホルダーごとの具体的な目標(「幸せの目標値」)を明確に定め、その実現を目指しております。
事業の基本方針である当社独自の価値を持つ「ならでは製品」開発により、社会課題解決に貢献する製品を創出することで社会のサステナビリティに貢献し、その結果が売上高・利益の増加に結びつきます。そして「幸せの目標値」に沿って利益の分配を充実させることが、企業としてのサステナビリティの基盤であるステークホルダーとの信頼関係の強化につながるものと考えております。
当社は、社会課題解決に積極的に貢献する「研究開発型企業」となることを目指し、次の4つの基本方針からなる2026年度中期計画に取り組んでおります。
① 社会課題解決に資する開発の領域拡大
・「脱炭素社会の実現」、「労働力不足の解消」、「デジタル化の推進」の3つの社会課題解決を重点分野と定義して、既存の事業の枠組みにとらわれず開発の領域を拡大させることにより、当該分野での貢献度を高めます。
② 代理店販売の革新と新領域の販売拡大
・新たな領域でのビジネス拡大に向け自社営業マンの技術営業力・分析力・市場調査力を高めると共に新商材の市場浸透を図るための広報を強化いたします。また、国内販売ルートの活性化に向けたインセンティブプランの刷新に加え、その活動を支える販売ツール・教育プログラムの充実に取り組みます。
・海外ではこれまでに買収したグループ各社の製品・販売ルートの相互活用による欧州事業拡大を重点テーマと位置付けます。同様に米国でのビジネス拡大に向けた体制強化を進めます。
③ 自動化追求と最適生産体制の構築
・前中計で取り組んだモジュール設計推進の成果として、主要標準製品生産の完全自動化を目指し大幅なコスト削減を実現します。また、生産自動化を前提として世界最適地生産体制の構築を目指します。
・間接業務においては、RPAやBIツールに加えて文書生成AI活用推進による単純業務削減を徹底し、社員の力を付加価値が高くやりがいのある業務へ集中させます。
④ 長期人材育成計画に基づく人的資本の充実
・企業の競争力の源泉である人材の確保・育成の強化が経営の重要課題との認識の下、特に社会課題解決に貢献する製品を創出することで社会のサステナビリティに貢献するための開発力強化、開発領域拡大に資する理系人材の確保や若手人材の育成に重点を置いて取り組みます。
・コアステークホルダーである社員との信頼関係を高めるため、働きやすい職場づくりを推進すると共に健康と安全の確保・促進に取り組みます。
・これらの取り組みをより一層充実させるため、ダイバーシティ推進により多様な考え方を採り入れます。また、人材育成を長期にわたり計画的・組織的に進めていくために、事業活動の中核を担う部門長などのリーダーシップ力やマネジメント力の維持・強化に努めます。
(注) 連結売上高に対する開発費の比率。開発費は研究開発費だけでなく特許料などの開発関連費用を含む。
今後の見通しにつきましては、データセンター増設・再生可能エネルギー導入拡大に伴う蓄電池システム等の需要増加が期待されます。また、労働力不足を背景とする生産自動化需要の回復や半導体関連投資の堅調な推移が見込まれますが、一方で米国の関税政策による先行きの不透明感が強まっております。
このような事業環境の下、引き続きコスト削減の取り組みを推進し、社会課題の解決に資する開発投資に重点的に振り向けるとともに、前期より連結対象に加えた子会社とのシナジー創出を図ることにより、各事業の強化、業績の向上に努めてまいる所存でございます。
なお、各事業セグメントの主な課題への取り組み状況は以下のとおりであります。
・ エネルギーマネジメント
脱炭素社会の実現に貢献する系統用や自家消費用途の太陽光発電システムへの併設に最適な蓄電池パッケージ、EVの普及に貢献するプラグイン急速充電器及びワイヤレス充電システムなどの開発・市場投入に取り組んでおります。
・ ファクトリーオートメーション
世界各地で労働力不足の問題が進む中、工場全体の自動化ニーズに応えるべく、ハンドリングロボット、アーク溶接用協働ロボットや自律搬送台車の品揃え拡充とアーク溶接の前後工程で必要な各種アプリケーションへの対応力強化に努めております。加えて、半導体の小型化や低コスト化など実現するFOPLPなどの先端パッケージ向け搬送ロボットの開発・市場投入を推進しております。
・ マテリアルプロセシング
AIなどの情報通信技術の普及に不可欠な半導体製造プロセスの微細化、多層化及び省エネ生産に貢献する高機能・高効率な高周波電源システム等の開発及び市場投入を推進しております。また、EVの軽量化に不可欠な異材接合の適用材・接合範囲の拡大及び溶接機の省エネ化や溶接作業の脱技能化に資する開発に取り組んでおります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。また、サステナビリティに関する実績値などの定量情報については、規模感など理解促進を図るために独自集計した参考情報であり、独立した専門機関からの保証手続きを受けたものではありません。
当社グループは、
そして、その実現のために不可欠となる人的資本・多様性の確保や事業プロセスにおける気候変動対策を当社グループ及びステークホルダー双方の視点からみて取り組むべき重要課題と位置付け、他にも資材取引先との公正な取引などのコンプライアンスリスクの軽減、円滑な事業運営の継続を支える社会との共生など、事業基盤の強化に注力しております。
当社グループは、取締役会及び経営会議の管理・監督の下、全社横断的なリスク管理体制として、その責任と権限を持つ取締役兼務者を含む執行役員が委員長となり、各事業部門責任者や本社部門長などで構成する各種委員会を設置しております。現在、リスク管理委員会、ダイヘングループ環境委員会、組織・人財活性化委員会、ダイヘングループ安全衛生委員会、コンプライアンス委員会、情報セキュリティ委員会、全社品質管理委員会、輸出管理委員会があり、それぞれ原則年2回開催しております。各委員会はリスク管理の一環として関係するサステナビリティ課題への対策を検討し、活動実績及び計画について常勤取締役・監査役で構成される経営会議へ定期的に報告しております。
取締役会へは内部統制活動の一環として年1回主要事項を報告してモニタリングを受けるほか、重要な案件や方針については適宜付議することで実効性を確保しております。
なお、サステナビリティ関連の機会については、2024年5月の取締役会で決議した2026年度中期計画において、保有技術で社会課題解決に貢献できる分野として「脱炭素社会の実現」、「労働力不足の解消」、「デジタル化の推進」の3分野に重点を絞り、事業管理体制の下で製品開発の強化や業績拡大に取り組んでおります。
また、ESG経営推進のために企画本部ESG室を設置し、委員会と連携して気候変動に関するリスクと機会の整理を行うなど活動を補完すると共に、サステナビリティに関する活動をとり纏めた「ダイヘンレポート」を年1回発行し、投資家などとの対話に役立てております。
① ガバナンス
環境マネジメントの推進体制として、環境方針の審議・決定と具体的な活動計画の策定を行う「ダイヘングループ環境委員会」を設置し、環境保全活動の強化を図っております。その下での全社的な活動として、「環境配慮製品ワーキンググループ」は、製品開発を担う各技術部門の責任者で構成し、環境配慮製品の社内認定制度に基づく申請案件・認定基準の審議・決定と開発の進捗管理等を実施しております。また、「ダイヘングループ環境幹事会」では、各事業所・工場と各事業部の環境活動の計画・実績・外部環境情報の共有を通じて課題抽出を行いその解決策を議論し実行するなど、グループ横断的な連携を図りながら、各事業所・工場と各事業部が、「事業活動に伴う環境保全」と「環境配慮製品・サービスの企画・開発」の両面に取り組んでおります。また、気候変動への対応は重要な課題との認識の下、企画本部ESG室を設置して、リスク・機会や事業戦略等を踏まえた全社計画ならびに財務影響の分析を進めております。
② 戦略
当社グループは、持続可能な社会の実現に向けた社会課題の解決に積極的に貢献する企業を目指す上において、事業活動プロセスにおける環境保全を経営の最重要課題の一つと考え、5つの指針「事業活動に伴う環境負荷の低減」「法的及びその他の要求事項の順守」「環境目標の策定と定期的見直し」「環境意識の高揚」「ステークホルダーとの関係強化」を定め取り組みを実践しております。
具体的なCO2排出量(Scope1+2)の削減活動としては、各事業所における省エネ化の取り組みとともに、主要拠点に太陽光発電設備を導入し、特に十三事業所と六甲事業所については、将来的に100%再生可能エネルギーで操業することを計画する等、積極的に脱炭素に向けた取り組みを進めております。
また、成長の機会の観点では、再生可能エネルギー導入に不可欠なEMS、EV普及を後押しする新たな接合技術や充電インフラ機器の市場投入など、脱炭素社会の実現に貢献する製品・システムの開発を2026年度中期計画の最重点課題としております。
③ リスク管理
気候変動対策については、国際エネルギー機関(IEA)と気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が示す「2℃シナリオ(気候変動を抑止するため規制が強化されるが世界の平均気温の上昇幅が産業革命前と比べ2℃未満に抑えられるシナリオ)」「4℃シナリオ(気候変動への対応が進まず異常気象の発生が増加するシナリオ)」によりリスク・機会とその対応方針を検討しました。その概要は次ページの「気候関連の主なリスク/機会と対応の方向性」のとおりであります。
④ 指標及び目標
CO2排出量(Scope1+2)の削減目標は、日本政府目標を前倒しする2027年度に2013年度比46%削減としております。2024年度のCO2排出量(Scope1+2)は31,261t-CO2であり、2013年度の排出量から23.7%削減しました。
また、サプライチェーンにおけるCO2排出量(Scope3)においても、その大部分を占めるカテゴリー11(販売した製品の使用)を重点対象として、2030年度に2020年度比25%削減を目標に環境配慮製品の創出に努めております。2024年度のC02排出量(Scope3・カテゴリー11)は、5,913千t-CO2であり、2020年度の排出量から9.9%削減しました。なお、2024年度のCO2排出量の対象範囲、集計方法は次の通りであり、対象範囲については財務報告と統一すべく順次取り組んでおります。
・CO2排出量(Scope1+2)
対象範囲:Lorch Schweißtechnik GmbHを除く連結対象会社(GHGプロトコルにおける財務支配力基準を採用)
集計方法:GHGプロトコルに準じエネルギー使用量をマーケット基準により環境省の排出係数で換算。
・CO2排出量(Scope3)
対象範囲:国内主要生産拠点(11拠点)
集計方法:GHGプロトコルに準じ質量・金額・輸送距離などの活動量を環境省及び国立研究開発法人産業技術総合研究所のデータベース(AIST-IDEA)の係数で換算し、製品群毎の代表機種の排出量を集計。全体の活動量を代表機種換算で想定して算出。
気候関連の主なリスク/機会と対応の方向性
・顕在化時期は、短期で2020年代後半、中期で2030年代、長期で2050年前後を想定。
・影響度は、以下の業績影響の目安と蓋然性の高・中・低を検討し想定。
大:事業継続が懸念される、又は企業規模が大幅に拡大する水準(100億円超規模)
中:影響はあるが事業継続はできる、又は一部事業が拡大する水準(10億円超規模)
小:一定の損益影響がある水準(1億円超規模)
b 人的資本・多様性
社会課題の解決に貢献する企業として発展し続けるためには、その原動力となる人材が当社グループの価値観・行動指針を共有して価値ある製品・サービスを創出し続けなければならないと考えております。
この考えの下、人材育成方針としての重点課題を「経営人材の育成」「女性管理職の育成」「若年層の育成」と定め、2026年度中期計画においては、長期人材育成計画に基づく人的資本の充実を基本方針の1つとして重点を置いて取り組んでおります。
また、社内環境整備方針としては、働きやすい職場づくりを推進するため定期的にエンゲージメントサーベイを実施し、社員の意識変化や多様性を的確に捉えエンゲージメントの向上に資する環境整備に取り組むと定め、仕事と家庭の両立支援制度を充実させるなどの改善に取り組んでおります。
これら、人材育成方針と社内環境整備方針に沿って次のような取り組みを進めております。
長期人材育成計画に基づく2026年度中期計画の主な取り組み
そのほか、安心・安全な職場環境を実現するため、コミュニケーションの活性化、労働安全衛生面での継続的な災害防止活動や教育を通じた社員への意識づけ、健康保険組合との協力体制による社員とその家族の健康促進を目的とした取り組みなどを推進しております。
なお、人的資本に関しては以下の目標を定めております。対象範囲につきましては、価値観の相互理解や国内外での文化の相違などグループ各社の状況を踏まえ体制整備の検討が必要なため、現時点では限定しております。次期中期計画策定時には、グループ全体が一律の目標で運用できるよう体制整備を進めてまいります。
2026年度目標と2024年度実績
・社員教育に投資する費用は、重点課題を含む教育関連費用の年間外部支出額を比較。
・エンゲージメントサーベイは毎年12月に実施。2024年度は、経営の方向性(12項目)、仕事(担当職務)(15項目)、コミュニケーション(12項目)、職場環境や福利厚生(12項目)、人事制度(8項目)、多様性(3項目)、総合評価(1項目)63項目をそれぞれ5段階評価(5非常にそう思う、4そう思う、3どちらともいえない、2そう思わない、1全くそう思わない)で調査。肯定的回答率は総合評価で5或いは4を選択した人数の比率。
当社グループは、企業としての社会的責任を果たし、社会の皆様から信頼が得られるよう、全社員のコンプライアンス意識向上とその実践に努めております。その一環として、遵守すべき行動基準・法令を明記した「ダイヘン倫理規範」や「法令順守ガイド」を制定し周知徹底を図るとともに、コンプライアンス委員会や公益通報窓口の設置、社員教育の実施等により不正行為を未然に防止する体制構築に取り組んでおります。資材取引先との公正な取引関係の維持につきましては、競争原理を基本とし、品質・価格・納期等を勘案して公平な評価をしております。
地域社会との共生に関する取り組みとしては、事業拠点のある自治体、社会福祉協議会などへの支援策として利益の一定額を継続的に寄付することにしております。そのほか、企業としての社会的責任の一環として教育・学術、文化・芸術などへの支援活動に努めております。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 需要動向について
当社グループにおける需要については、エネルギーマネジメントでは国内・東南アジアでの送配電設備の更新・強化や国内でのビル・工場の新設や高経年化設備の更新、自家消費型太陽光発電やEV充電システム等の脱炭素関連投資、ファクトリーオートメーションでは国内外のEVや生産自動化関連投資、マテリアルプロセシングでは半導体製造装置や造船・建築関連投資が主なものであり、これらに急激な変動が生じた場合には、売上高をはじめとした経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 販売及び仕入価格の変動について
市場競争の激化に伴う販売価格の下落や銅などの素材価格の高騰が懸念されますが、これらの状況が著しく進展した場合には、売上高や利益率に悪影響を及ぼす可能性があります。
なお、輸出取引の為替変動リスクに対しましては、海外生産拠点からの製品仕入やコストダウンを目的とした海外調達の拡大にも積極的に取り組むことで、外貨建債権債務のポジション調整によるリスクの軽減を図っております。また、外貨建債権債務につきましては、売上と仕入で相殺されるものを除き、常時為替予約によって、リスクヘッジを行っております。しかしながら、急激な為替相場の変動が生じた場合には、経営成績、財政状態が変動する可能性があります。
(3) 海外事業環境について
2025年3月期における連結売上高の海外売上高比率は20.6%となっておりますが、今後も販売拡大が期待できる海外での事業展開に注力してまいりますため、海外売上高のウェイトは、より高い水準で推移すると想定しております。海外事業につきましては主に現地法人を通じて取り組んでおりますが、市場の成長性に不透明な要素があることに加え、政治又は法環境の変化など予期せぬ事象により、事業の遂行に問題が生じた場合には、経営成績、財政状態が変動する可能性があります。
なお、足もとの社会情勢によるリスクは以下のとおりであります。
米国が主導する対中輸出規制の拡大や関税政策の動向によっては投資抑制や経済活動の停滞などの影響が生じ、経営成績、財政状態に悪影響が及ぶ可能性があります。
(4) 保有資産価値の変動について
当社グループは事業用の資産として様々な有形・無形の固定資産を保有しておりますが、今後の経営環境変化に伴ってこれらの資産の収益性が著しく低下した場合には、経営成績、財政状態に影響を与える可能性があります。
また、事業運営上、多数の会社の株式などに出資又は投資しているほか、年金資産においても一部を株式で運用しております。株式市場の動向悪化、又は出資先の財政状態の悪化により、保有有価証券の減損や年金資産の運用成績悪化が生じた場合には、経営成績、財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(5) 金利変動リスクについて
2025年3月末現在の連結有利子負債(長短借入金の合計金額)残高は685億9千1百万円となっております。固定金利での長期安定資金の確保に努める一方、グループ全体の資金運用の効率化と資金管理の集中化及び在庫圧縮などによる有利子負債削減など、金利変動リスクを可能な限り回避するための様々な手段を講じておりますが、変動金利借入利息、借換時における資金調達に関しては金利情勢の影響を受けるため、急激な金利変動が生じた際には、経営成績、財政状態が変動する可能性があります。
当社グループは、事業活動のための様々な顧客情報や技術情報を有しております。サイバー攻撃等による情報漏洩やサービス停止等が発生した場合、競争力・技術的優位性の棄損、事業活動の停止、社会的信用の低下や損害賠償の発生等により、経営成績、財政状態に悪影響が及ぶ可能性があります。
なお、当リスクにつきましては、情報セキュリティ委員会を設置し、最新のセキュリティシステム導入や従業員への教育、内部監査によるルールの徹底等を通じ、グループ全体のセキュリティ強化に取り組むことでリスクの軽減を図っております。
(7) 大規模災害などについて
気候変動に伴う自然災害の増加などの対策として、リスク事象に応じた危機対策規程や事業継続計画を策定しておりますが、グループの生産、販売拠点において想定を超える地震、洪水などの大規模災害が発生した場合には、生産設備の損壊、原材料・部品の調達停止、物流販売機能の麻痺などにより、生産拠点の操業停止などが生じ、経営成績、財政状態に悪影響が及ぶ可能性があります。また、パンデミック、紛争、テロなど事業活動に弊害が生じる場合も同様であります。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当連結会計年度のダイヘングループの事業環境は、生産自動化関連投資は抑制傾向となりましたが電力インフラ関連・半導体関連の投資が堅調に推移しました。また、前年度第3四半期以降に買収した新規連結子会社の影響もあり、受注高は2,410億5千1百万円(前連結会計年度比12.9%増)、売上高は2,263億7千5百万円(前連結会計年度比20.0%増)となりました。利益面におきましては、売上高の増加やコスト削減の成果により、営業利益は161億7千4百万円(前連結会計年度比6.8%増)、経常利益は171億8千2百万円(前連結会計年度比6.8%増)となりました。しかしながら、親会社株主に帰属する当期純利益につきましては前年度に計上した子会社株式取得に伴う負ののれん発生益等の影響により前期に比べ減益の119億6千1百万円(前連結会計年度比27.5%減)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
配電機器や工場受電設備の更新が堅調に推移したことに加え、再生可能エネルギーの有効活用を目的とする電力需給調整市場の拡大を背景に蓄電池システムの販売が増加しました。また、東北電機製造株式会社と四変テック株式会社を連結子会社化した影響もあり、売上高は1,208億1千5百万円(前連結会計年度比23.8%増)、営業利益は114億7千7百万円(前連結会計年度比37.6%増)となりました。
労働力不足を背景に生産自動化ニーズは高まっておりますが、経済動向の不透明感から国内及び欧米での自動車関連投資が先送り傾向となり、売上高は327億7千3百万円(前連結会計年度比6.0%減)となり、営業利益は22億7千5百万円(前連結会計年度比44.6%減)となりました。
生成AI用途のメモリや先端半導体関連投資の拡大並びに中国での成熟世代向け投資の継続を背景に高周波電源システムの需要が増加したことに加え、Lorch Schweißtechnik GmbHを連結子会社化した影響もあり、売上高は726億5千7百万円(前連結会計年度比29.9%増)、営業利益は69億8千5百万円(前連結会計年度比10.4%増)となりました。
売上高は1億9千1百万円、営業利益は3千3百万円となり、前連結会計年度からの大きな変動はありません。
生産、受注及び販売の実績は次のとおりであります。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 金額は、販売価格によっております。
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
なお、関西電力㈱については、同一企業集団に属する関西電力送配電㈱への販売高を集約して記載しております。
(2) 財政状態
当連結会計年度末の資産合計は、現金及び預金や棚卸資産の増加、また建物及び構築物をはじめとした有形固定資産の増加などにより、2,902億3千4百万円(前連結会計年度末比130億3千4百万円増)となりました。
負債合計は、支払手形及び買掛金や賞与引当金の増加、また借入金の増加などにより1,369億4千9百万円(前連結会計年度末比83億4千5百万円増)となりました。
純資産合計は、利益剰余金や為替換算調整勘定の増加などにより1,532億8千5百万円(前連結会計年度末比46億8千9百万円増)となりました。なお、自己資本比率は前連結会計年度末の48.4%から0.7ポイント減少して47.7%となりました。
セグメントごとの資産は、次のとおりであります。
売上債権及び棚卸資産の増加などにより、エネルギーマネジメントの資産は1,280億3千6百万円(前連結会計年度末比57億6千万円増)となりました。
売上債権の回収による現預金の増加などにより、ファクトリーオートメーションの資産は474億7千3百万円(前連結会計年度末比7億7百万円増)となりました。
溶接・接合関連機器の売上高減少に伴う棚卸資産の増加などにより、マテリアルプロセシングの資産は917億2千9百万円(前連結会計年度末比52億6千6百万円増)となりました。
その他の事業の資産は10億7千3百万円となり、前連結会計年度末からの大きな変動はありません。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ、67億7千8百万円増加し、288億5千5百万円となりました。
売上債権の減少や仕入債務の増加等により、240億1千万円の資金の増加となり、前連結会計年度に比べると、330億3百万円の増加となりました。
有形固定資産の取得や子会社株式の取得による支出等により、96億1百万円の資金の減少となり、前連結会計年度に比べると、9億6千3百万円の増加となりました。
自己株式の取得等により、59億8千1百万円の資金の減少となり、前連結会計年度に比べると、319億3千6百万円の減少となりました。
当社グループの主要な資金需要は、製品製造のための材料費や製造費用、販売費及び一般管理費、設備投資資金などであります。これらの必要資金は、継続的な利益の蓄積などによる内部資金により賄うことを基本としております。
資金の流動性確保のため、コミットメントライン契約を締結するなど安定的な資金の確保に努める一方、当社及び国内連結子会社においてはCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を導入することにより各社の余剰資金を当社へ集中し、資金効率の向上を図っております。
当社グループの2026年度中期計画の基本目標と実績は以下のとおりであります。
2024年度においては、生産自動化投資は抑制傾向となりましたが、蓄電池システムや半導体製造装置向け省エネ電源等の社会課題解決に役立つ製品の開発・市場投入が進みました。引き続きコスト削減の取り組みを推進し、社会課題の解決に資する開発投資に重点的に振り向けていくことにより、各事業の強化、業績の向上に努めてまいる所存でございます。
2026年度中期計画の目標と実績
(注) 連結売上高に対する開発費の比率。開発費は研究開発費だけでなく特許料などの開発関連費用を含む。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
当社グループは、繰延税金資産について回収可能性を検討し、当該資産の回収が不確実と考えられる部分に対して評価性引当額を計上しています。回収可能性の判断においては、将来の課税所得見込額等を考慮して、将来の税金負担額を軽減する効果を有すると考えられる範囲で繰延税金資産を計上しています。
将来の課税所得見込額はその時の業績等により変動するため、課税所得の見積りに影響を与える要因が発生した場合は、回収懸念額の見直しに伴う繰延税金資産の修正により、当期純損益が変動する可能性があります。
退職給付債務及び退職給付費用は、主に数理計算で設定される退職給付債務の割引率、年金資産の長期期待運用収益率等に基づいて計算しています。割引率は、従業員の平均残存勤務期間に対応する期間の安全性の高い長期債利回りを参考に決定し、また、年金資産の長期期待運用収益率は、過去の運用実績及び将来見通し等を基礎として設定しています。割引率及び長期期待運用収益率の変動は、将来の退職給付費用に影響を与える可能性があります。
当社グループは、棚卸資産の評価において原価法(収益性の低下による簿価切下げの方法)を採用しており、棚卸資産について過去の滞留期間ごとの在庫の販売実績や廃却実績をもとに簿価切下げを行っております。実際の将来需要又は市場状況が当社グループによる見積りより悪化した場合、追加の評価減が必要となり、当社グループの業績を悪化させる可能性があります。
関係会社株式及び関係会社出資金について、実質価額が取得価額に比べ著しく下落した場合、将来の事業計画等に基づき回復可能性を勘案し、回復可能性がない場合には評価損を計上しております。関係会社の将来の事業計画等の未達等の要因に伴い評価損を計上した場合、当期純損益が悪化する可能性があります。
なお、関係会社出資金の評価の見積りに用いた仮定につきましては、「第5 経理の状況 2 財務諸表等 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
e のれん及び無形資産の評価
当社グループは、のれん及び無形資産について、その効果が及ぶ期間にわたって規則的に償却しております。また、その資産性については子会社の業績や事業計画等を基に検討しており、将来において当初想定していた収益が見込めなくなった場合、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上する可能性があり、当社グループの業績を悪化させる可能性があります。
なお、のれん及び無形資産の見積りに用いた仮定につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
該当事項はありません。
当社は、社会課題解決に資する製品の創出・市場投入に向け、グループ内の開発部門と相互に連携をとりながら、お客様や大学などの研究機関との共同研究も積極的に行い、技術シーズの蓄積と製品化を進めております。
当連結会計年度の研究開発費は
<エネルギーマネジメント>
脱炭素社会の実現に向けて、系統安定化のための蓄電池活用や、既設太陽光発電所の有効活用を目的とする蓄電池システムの併設ニーズの高まりを受け、狭路搬入や省スペース設置並びに他社製の太陽光発電システムと併設可能な蓄電池システムなど再生可能エネルギーの導入拡大に貢献する開発に取り組みました。またプラグイン急速充電器の開発やEV用走行中給電技術などのワイヤレス充放電の実証実験などEV普及を見据えた充電インフラ機器・システムの開発に取り組みました。
当連結会計年度におけるエネルギーマネジメントの研究開発費は
<ファクトリーオートメーション>
労働力不足の解消に寄与する協働ロボットや自律搬送台車のラインアップ拡充、FOPLPなどの先端パッケージ向けに省スペース化を実現する真空搬送用のスカラアーム型ロボット及び低振動、低床・高ストローク型大気ロボットの開発に取り組みました。
当連結会計年度におけるファクトリーオートメーションの研究開発費は
<マテリアルプロセシング>
半導体製造プロセスにおいて必要とされる多層・微細加工を小型かつ省電力で実現する高周波電源システムの高性能化や半導体製造用の薄膜形成(CVD)装置において過剰に付着した膜を洗浄除去する用途のプラズマ源の開発に取り組みました。また高効率・高精度な金属積層造形システム及び溶接機の省エネ化や溶接作業の脱技能化に資する開発に取り組みました。
当連結会計年度におけるマテリアルプロセシングの研究開発費は