第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、本報告書提出日現在において当社が判断したものであります。

 

(1)会社の経営の基本方針

 当社では、自社が果たすべき使命を「暮らしを守る、電気を守る」と捉えておりますが、この先も将来にわたり「暮らしを守る、電気を守る」という使命を果たしていく為には、デジタル化の進展や生産年齢人口の減少という時代の潮流変化を正しく理解する必要があると認識しています。

 「電気が人々を安全に照らし、人々が快適で安心な暮らしを送れる」理想の社会の実現の為に、当社自体、大きな変革を遂げるとともに、更に一層の努力で最高品質の製品・サービスを提供できる様、体制整備と人材育成を進め、全社一丸でお客様とその先にある皆様の暮らしを支えられる企業へ成長を遂げていく必要があります。その実現の為、当社では「持続的な事業価値・株主価値の創出と継続的な企業価値向上を意識し事業活動を展開していく」事を経営の基本方針と定め、事業展開を行っております。

 

(2)中長期的な会社の経営戦略

 当社は上記「経営の基本方針」に基づき、2030年3月期を最終年度とする5か年の中期経営計画を2025年4月から実行しています。この計画では事業戦略を中心に価値創出の具体策を実行するとともに、それを支える財務戦略・非財務戦略も歩調をあわせ推進することで事業価値・株主価値・企業価値を一体的に高めていきます。

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(3)目標とする経営指標

 当社は、2025年4月よりスタートいたしました中期経営計画において売上高・営業利益・ROE・配当性向を主要KGIと位置付けております。2030年3月期までに売上高350億円、営業利益40億円、ROE10.0%を安定的に計上出来る体制の確立を目指し、各種施策展開に取組んで参ります。

 

(4)経営環境及び対処すべき課題

(事業戦略)

①製品競争力の確保

 カスタム型配電制御設備専業メーカーとしての地位を一層強固なものにするため、今迄同様、製品の品質向上や納期遵守への取り組みを推し進めるのに加え、今後は更にお客様視点に立脚した製品・サービスの開発に注力する事で競争力を強化して参ります。特に、再開発事業やデータセンター等の建設案件が増加する一方、就労人口が減少するといった潮流変化の中、納品先でお客様が簡単に施工できる製品や、部品交換の為の停電時間が極小化された製品への需要が高まりつつあります。それらのお客様の課題解決に資する製品を開発することで競争力を強化させて参ります。また、新工場建設による生産能力拡充策も推し進め、持続的成長を確実なものとしていきます。

 

 

②リニューアル事業の強化を起点とした製品ライフサイクル管理強化

 当社では、従前よりリニューアル事業の強化を課題と捉えておりましたが、同事業を拡大するに足る人材の確保が困難で大きく成長させるに至っておりません。しかし、就業者数の長期減少やインフラ更新の社会トレンドを踏まえると、同事業の強化は社会的な要請でもあると認識しております。そこで、当社は、全社的な業務改革を推し進め、社内で新たに人的リソースを捻出するとともに、新技術や他社提携を含むビジネスモデル全般の見直しも進め、中長期的に製品ライフサイクル全般で価値提供を図るビジネスモデルへ転換を図って参ります。

 

③標準化とモジュール化の推進

 当社は、お客様のカスタムニーズへ柔軟に対応する事を強みとしておりますが、お客様のカスタムニーズに対して都度設計を行っているため、オペレーションの効率化や部品点数の絞り込みに改善の余地がある状況です。その為、お客様のカスタムニーズへの対応の柔軟性は損なう事なく、製品構造のモジュール化を進める事で、お客様満足と当社の採算確保を両立させる取組みを推進して参ります。

 

④コストマネジメント高度化

 当社は製品バリエーションが多岐にわたる為、原価管理の精度に改善の余地があります。特に近年の物価上昇の流れの中では、より厳格なコストマネジメントが必要だと認識しております。生産工程別、案件別の原価管理を高度化するとともに操業度の波を全社的な取組みにより抑制し一層の体質強化を実現して参ります。

 

⑤新工場投資

 既存施設・設備の更新投資による品質維持・向上に加え、2025年5月、山形県上山市に新工場用地を取得する事が決定致しました。今後、2029年前半の竣工を目指し新工場建設に取組んで参ります。新工場の計画詳細確定は今後となりますが、現時点では「山形工場の機能を継承する工場」「標準化施策・自動化・省人化投資等を連動させ生産効率と生産力向上を両立させる」「カーボンニュートラルを実現し環境に配慮した生産活動を実践させる」等を新工場のコンセプトとして想定しています。

 

(財務戦略)

 新工場投資に際しては、手元資金や営業キャッシュフローの活用のみならず、当社の財務リスクが極端に高まらない水準まで負債を積極活用する事を想定しており、成長投資と株主還元を両立させて参ります。また、当事業年度末において当社の自己株式残高は1,862百万円(988,866株)であり、発行済株式総数の23.58%を所有しております。当該自己株式は、資本政策の柔軟性・機動性を確保するため取得しておりますが、自己株式の処分につきましては今後の対処すべき課題の一つと認識しております。

 

(非財務戦略)

人的資本投資の強化

  当社経営理念に掲げる「人間尊重」の精神のもと、人事諸制度のアップデートを進める等人的資本投資を強化して参ります。具体的な取組としては下表に記載の事項を想定しています。

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2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社のサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

(1)ガバナンス

 当社は、「わが社は電気に生きる-電気とともに発展する社会と共生し、人々の暮らしに貢献する」という社是のもと、「サステナビリティ」の実践(以下「サステナビリティ経営」という。)を通して企業価値向上に取り組むとともに、すべてのステークホルダーの価値創造、環境保全、そして社会の持続的発展に貢献することを目的として、2023年4月13日開催の取締役会において、「サステナビリティ規程」を制定するとともに、サステナビリティ経営の推進及び統括のため、社長執行役員が委員長を務める「サステナビリティ委員会」を設置しました。同委員会は、取締役会の監督・指示のもと、サステナビリティに関する基本方針の策定やマテリアリティ(重要課題)の特定と、それに基づく目標設定、それらの進捗管理を行うことで、全社的なサステナビリティへの取組みを推進しております。

 

サステナビリティ基本方針

 私たちかわでんは、「環境と社会と人のために」を基本理念に、事業活動を通じて、環境の保全、社会の持続的発展、人間尊重の具現化に貢献することで、持続可能な社会の構築に積極的な役割を果たすとともに、企業価値の向上を実現していきます。

・環境のために

私たちは、環境保全を常に念頭に、製品の開発、原材料調達、生産、輸送などすべての事業活動において、脱炭素化や資源リサイクルの推進など環境負荷の低減に積極的に取り組みます。

・社会のために

私たちは、社会を含めすべてのステークホルダーの声に積極的に耳を傾けて相互理解を進め、共存共栄を図ります。絶えざる技術革新により人々が安全で快適に暮らすための持続可能な社会インフラの構築と整備に貢献します。

・人のために

私たちは、かわでんのすべての事業に関わる人権を尊重するとともに、多様な考えや特徴を持つ従業員が互いに個を尊重し、やりがいと誇りをもって力を合わせることのできる環境を整え、社会やお客様から信頼される人材の育成に努めます。

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(2)戦略

 当社は、サステナビリティ委員会及び下部組織のサステナビリティ分科会が中心となり、サステナビリティ基本方針の策定及びマテリアリティ(重要課題)の特定を進め、2023年6月2日開催の取締役会にて決定しました。

 マテリアリティの特定にあたっては、最初に各部門(経営・製造・営業)の主要メンバーで構成されるサステナビリティ分科会で、国際的なガイドラインやSDGsなどを参照・分析して抽出した社会課題について、「社会や環境にとっての重要性」と「当社にとっての重要性」の2つの観点から、特に重要性が高い課題を特定しました。その上で、これらの課題に対して、当社事業との関連性をふまえ、施策を検討し、評価の妥当性を確認することにより、課題の見直しを行い、サステナビリティ委員会、経営会議、取締役会での審議を経て、当社が事業を通して取り組むべきマテリアリティを特定しました。

 当事業年度は、それぞれのマテリアリティについて、サステナビリティ委員会及びサステナビリティ分科会が中心となり、当社の中長期的な取組み方針を策定した上で、分科会メンバーが、それぞれの所管部門に課題を持ち帰り、具体的な施策を検討・実行することに継続的に取り組んで参りました。また、各所管部門の取組みの進捗状況は、定期的にサステナビリティ委員会に報告され、全社的に取り組むべき課題については、サステナビリティ委員会での議論をふまえ、各所管部門にフィードバックされるサイクルで課題解決に取り組んで参りました。

 

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 また、当社における、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は、

下記のとおりです。

当社は「人間尊重」の精神のもと、多様性を重視し、互いの信頼と和を礎として、

①人材育成方針-「社会やお客様から信頼されるプロフェッショナル人材の育成」

②社内環境整備方針-「人材が力を発揮しやすい組織風土・環境整備」

を人材に関する基本方針とし、人材の価値を高めることで、労働生産性を向上させ、持続的成長と企業価値の向上を実現してまいります。

 

①人材育成方針-「社会やお客様から信頼されるプロフェッショナル人材の育成」

<採用>

経営戦略の実現に必要である多様な人材を確保するため、国籍、性別、障がい、人種、宗教、性的指向などに関係なく、応募者の適性・能力のみを基準とした公正公平な採用活動を基本方針として、新卒採用・キャリア採用を問わず実情に応じて柔軟に取り組みます。

<具体的な取り組み>

・新卒採用においては、インターンシップや職場見学会等を通じて、学生をエンゲージメントの高い状態で採用します。

・キャリア採用においては、多様性を確保しつつ、高い専門性・知見を有するプロフェッショナル人材を採用します。

<育成>

従業員一人ひとりの成長が会社の発展を支えるという考えのもと、従業員が入社後も持続的に成長できるよう、各種研修・自己啓発施策等による人材育成に取り組みます。

「求める人材像」

・社会やお客様から信頼されるプロフェッショナル人材

・お客様の信頼と期待に応え、社会に貢献するという使命感を持つ人材

・最高の品質とサービスを提供する高い技術力を身に付けた人材

・時代の変化に対応する多様な価値観を持ち、絶えず創造と改善に努める人材

・組織の一員としての役割を理解し、信頼と和をもって協働できる人材

<具体的な取り組み>

・OJT:職場での仕事を通じた指導・教育

・各種研修:階層別/職種別研修 専門知識・スキル向上教育

・自己研鑽・自己啓発:資格取得奨励制度、表彰制度

・経営人材の育成のためのジョブローテーション

 

②社内環境整備方針-「人材が力を発揮しやすい組織風土・環境整備」

<働きやすい環境づくり(働き方改革の推進、ワーク・ライフ・バランス推進、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)推進)>

従業員が生き生きと働くことが会社の活力の源泉であるという考えのもと、それぞれの職場において多様な働き方と、従業員の働きがい・働きやすさを追求し、従業員エンゲージメントの向上に取り組みます。

また、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)の尊重は当社の「人権方針」の重要な要素であり、多様な視点、価値観をもった従業員それぞれが、その能力を存分に発揮し、成果を最大化できるよう職場環境を整備してまいります。

<具体的な取り組み>

[働きがい]

・キャリア形成をサポートする人事制度の充実

・1on1ミーティング(個人面談制度、メンター制度)の実施

[働きやすさ]

・労働時間の適正管理

・年次有給休暇の計画的取得の推進

・時間や場所にとらわれない柔軟な働き方ができる制度の整備

・従業員の身体的・精神的健康維持のためのウェルビーイング(Well-being)の視点を取り入れた健康経営への取り組み

・労働災害を発生させない労働安全衛生活動の推進

・女性の活躍推進

・仕事と育児や介護の両立支援制度の充実

 

(3)リスク管理

 当社では、持続的な成長を実現するため、サステナビリティ委員会において、サステナビリティに関するリスク・機会を評価・特定し、それらのリスク・機会についての討議を行い、マテリアリティ(重要課題)の設定や見直しに活用しております。当社は、気候変動の影響による自然災害の激甚化や労働力不足等のあらゆる社会課題における当社のリスクと機会を抽出・分析し、重要課題に取り組むことで、企業価値向上につなげて参ります。

 

(4)指標及び目標

 当社では、上記、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。

指 標

目 標

  実 績(当事業年度)

管理職に占める女性従業員の割合

2030年度までに10

3.3

女性従業員の育児休業取得率

2030年度までに100

100

男性従業員の育児休業取得率

2030年度までに50

47.1

 

 

3【事業等のリスク】

 以下において、当社の事業の状況及び経理の状況等に関する事項のうち、リスク要因となる可能性があると考えられる主な事項及びその他投資者の判断に重要な影響を及ぼすと考えられる事項を記載しております。当社は、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針でありますが、当社の有価証券に関する投資判断は、慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。
 なお、以下の記載のうち将来に関する事項は、2025年3月31日現在において当社が判断したものであり、不確実性を内在しているため、実際の結果と異なる可能性があります。

①当社の事業内容と特徴について

 当社は、ビルならびに工場、産業施設、大型マンション向けの高低圧配電盤、制御盤、分電盤などの配電制御設備をカスタムメイドで製作(顧客が指定する製品仕様に従い、一品毎に製作)する大手専業メーカーで、1940年の設立以来長い歴史を有しております。

(イ)当社事業の属する市場の特徴と動向について

 当社の製品は、日本国内の大型・中型オフィスビル、病院、学校、工場、大型マンション等に設置されており、機能により高低圧配電盤、制御盤、分電盤等に区分されますが、多くの場合、それら一式を配電制御設備として受注しております。製品は重量物であり、かつ容積が嵩むこと、更にカスタムメイドの場合は納期が建築物の建築工程に深く組み込まれていること、受注から製造までの間に顧客から仕様変更を要求されることが多いこと等の特性により、国内の建築物向けとして、海外での生産には不向きな製品であり、輸出にも不向きな製品です。当社が製品を納入する施設は大型マンションを除いて多くが非居住用施設であり、当社の製品への需要はこれら施設への建築投資時に発生することから、当社は国内の民間非住宅建築投資の動向による影響を強く受けると言えます。
 民間非住宅建築投資は、新型コロナウイルス感染拡大の影響から2020年度に大幅に減少いたしました。2021年度以降は徐々に改善傾向は見られるものの、今後も様々な外部環境の変化から企業収益の悪化による民間非住宅建築投資が減少した場合には、当社製品の需要が減少し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(ロ)配電制御設備事業の競争状況について

 当社が事業を展開する配電制御設備の市場の特徴は、国内の民間非住宅建築投資の動向による影響を強く受けやすい点、新技術・新製品の開発・導入が頻繁になされることなく、従来の製品や技術が長く利用されるという点、製品の性能面での差別化が難しくそのため価格競争に陥りがちであるという点、及び製品の納期が建築物の建築工程に深く組み込まれ、受注から製造までの間に顧客から仕様変更を要求されることが多いという点があげられます。したがって、当社の将来における競争力は、以下のような点に依拠していると当社は考えます。

(a)顧客ニーズにきめ細やかに対応したプレサービス、アフターサービス

(b)建設不況に伴う製品の価格下落に対応できる生産技術の向上や管理費の効率化等によるコスト削減

(c)顧客からの仕様変更に常に対応し、建築工程に組み込まれる製品を納期に確実に納入することができるという顧客の信用の維持

(d)製品の性質上長期間となりやすい受注から製品納入までの期間に耐えうる財務面での信用力

 これらの課題に対して当社は継続的な生産効率の改善や、リードタイムの短縮、営業体制の強化等の対策を行っておりますが、一方でコスト削減等には限界があり、製品の価格下落に対応できるようなコストの削減を行うことができない可能性があります。また、顧客からの仕様変更の内容や程度によっては、十分それに対応することができず、その結果、当社は顧客からの信用を維持できない可能性もあります。かかる場合、当社は競争力を維持できず、当社の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(ハ)四半期業績について

 四半期ごとに当社の業績を見た場合、その時期に検収される案件の金額、利益率により、売上高、利益ともに変動するため、ある四半期の業績は必ずしも他の四半期の業績や年次の業績を示唆するものではないことにご注意ください。

(ニ)特定顧客への売上依存度について

 2025年3月期における当社売上高のうち㈱きんでん、関工商事㈱に対する売上高の構成比はそれぞれ17.0%、15.4%となっております。各社とは、納入数量、価格等に関する長期納入契約は締結しておりません。
 当社は今後共、各社と良好かつ緊密な関係を維持・拡大する方針ですが、各社の事業方針、営業施策により当社との取引関係を維持できない場合、あるいは当社との取引が相当程度減少した場合、当社の業績が悪影響を受ける可能性があります。

 

(ホ)特定の仕入先からの仕入依存度及び特定メーカーへの依存度について

 2025年3月期における当社の原材料仕入高のうち㈱立花エレテックからの仕入高は22.8%となっております。これは、配電制御設備の主要部品である電気機器類のうち当社が最も多く使用している三菱電機㈱製品について、㈱立花エレテックから購入していることによるものです。
 当社が三菱電機㈱製品を最も多く使用しているのは、品揃え、コスト、利便性等を考慮してのことです。当社といたしましては、今後とも良好な関係を維持していく方針ですが、万が一、㈱立花エレテックからの購入が困難な状況に陥った場合、三菱電機㈱製品の仕入先を変更することにより対応は十分可能であると考えられるものの仕入先を変更するまでの間一時的に業務に必要な電気機器類を入手できず、当社の業績が悪影響を受ける可能性があります。
 また、上記の通り配電制御設備の主要部品である電気機器類のうち当社が最も多く使用している製品は、三菱電機㈱製品であり、万が一、三菱電機㈱製品の購入が困難な状況に陥った場合、他社製品に切り替えることにより対応は可能と考えられますが、他社製品により代替するまでの間一時的に業務に必要な電気機器類を入手できず、当社の業績が悪影響を受ける可能性があります。

(ヘ)原材料の価格変動による影響について

 当社使用の原材料のうち、鉄板、銅バーの購入価格は市況による変動を受けることがあります。当該変動分については必ずしも販売価格に反映されているとは限らず、当社の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(ト)製造原価が販売価格に反映されないリスク

 当社の事業遂行上は、受注から製造までの間に顧客から製品の仕様変更を要求されることが頻繁にありますが、国内建設業界における慣行を前提とした場合、かかる仕様変更に伴う製造原価の増加が販売価格に反映されるとは限りません。
 当該仕様変更に伴い製造原価が増加した場合、当社は徹底した顧客サービス、リードタイムの短縮などによる差別化を行い、販売価格に製造原価の上昇分を反映すべく努力致しますが、競争力維持の観点等から、交渉の結果常に販売価格を上げられるとは限らず、場合によっては製造原価が販売価格を上回る可能性もあります。

(チ)受注から売掛金の回収までの期間が長期間にわたるリスク

 当社の製品は顧客が指定する製品仕様に従い、一品毎に製作するカスタムメイドであること、受注から製造までの間に顧客から仕様変更を要求されることが多いこと、納期が建築物の建築工程に深く組み込まれ、顧客の依頼により納期も頻繁に変更されること、売上は顧客による検収後に計上するため、一連の製品納入の最後に納品した時点でそれ以前に納品した製品も含めて一括して顧客による検収が行われることもあること等の理由により、受注から顧客による検収までの期間が、長いものは2~3年かかる場合があります。
 このように受注から検収までの期間が長期間にわたることは、当社の製品の特質及び国内建設業界の慣行上やむを得ないことではありますが、その期間中に、顧客からの注文の取消しや顧客の倒産その他なんらかの理由により受注後に製品の納入又は検収にまで至らない可能性があります。
 また、検収後顧客に対する売上債権の回収までに要する期間も、通常約2ヶ月かかります。当社は顧客に対する与信管理の徹底を図っておりますが、製品の検収後において、顧客の倒産等により売掛金の回収が行えない可能性があります。かかる事態が発生した場合、当社の業績が悪影響を受ける可能性があります。

②売上計上について

 当社の製品は、その納期が建築物の建築工程に深く組み込まれ、また、顧客の依頼により納期も頻繁に変更されることもあり、建築工程の遅れ、又は納期の変更により、製品納入が当初予定していた時期よりも遅れる可能性があります。また、建築工程の進捗状況に応じて、一部の製品を先に納入する場合でも、その時点で検収が行われず、一連の製品納入の最後に納品した時点でそれ以前に納品した製品も含めて一括して顧客による検収が行われる場合もあります。
 当社は売上を顧客による製品検収後に計上するため、上記のような理由により、製品の納入又は検収が当初予定の時期よりも遅れた場合には、売上計上が遅れることになり、当社の業績が変動する可能性があります。

 

③製品の欠陥について

 当社はISO(国際標準化機構)による品質保証規格に従って製品を製造しており、品質には万全を期しておりますが、製品に欠陥が生じた場合、停電による損害や最悪の場合は火災が発生し当社製品を備える建物への延焼による損害等が発生する可能性があります。また、製造物責任賠償については保険に加入しておりますが、この保険により最終的に負担する賠償額を十分にカバーできるという保証はありません。さらに、引続き当社がこのような保険に許容できる条件で加入できるとは限りません。製造物責任賠償につながるような製品の欠陥は、多額のコストや当社の評価に重大な影響を与え、それにより受注・売上が減少し、当社の業績と財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。

④法的規制について

 当社工場には、板金、プレス、塗装、メッキの各工程があるため、主に騒音規制法、水質汚濁防止法並びに毒物及び劇物取締法の規制を受けております。そのため、これらの法的規制の変更があった場合には、そのための対応費用を追加計上する必要が生じ、当社の業績が悪影響を受ける可能性があります。

⑤生産拠点の一極集中リスクについて

 地震等の自然災害や火事、爆発等の事故によって、当社の製造拠点等が壊滅的な損害を受ける可能性があります。特に、当社はその生産の大部分(2025年3月期においては、約7割)を山形工場で行っており、九州工場の生産能力は山形工場よりかなり低いため、山形工場が自然災害等により壊滅的な損害を被った場合、当社の生産は深刻な影響を受け、売上が大幅に低下し、更に、山形工場の修復又は代替のために巨額の費用を要することとなる可能性があります。

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

①財政状態及び経営成績の状況

 当事業年度におけるわが国経済は、良好な業況感により企業収益や設備投資が緩やかな増加傾向で推移しておりま

すが、米国の関税政策等の動向により今後の経済状況や物価への影響について十分注視していく必要があります。

 当業界におきましては、デジタル化や脱炭素化などを中心とした民間設備投資が引き続き増加傾向で推移しているものの、原材料価格の高騰・人手不足による人件費の高騰などによる影響が継続しております。

 このような状況下で当社におきましては、都市部におけるオフィス・商業施設の再開発やデータセンター・半導体

関連の大型工場建設に伴う受注が堅調に推移したことから、売上高は24,218百万円(前期比13.5%増)となりました。

 利益につきましては、増収による影響に加え高付加価値案件の受注や平準化の推進によって営業利益は2,589百万円(前期比128.2%増)、経常利益は2,664百万円(前期比131.0%増)、当期純利益は1,963百万円(前年同期比163.7%

増)となりました。

②キャッシュ・フローの状況

 当事業年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という)の残高は、投資活動によるキャッシュ・フローで

564百万円の資金の減少、財務活動によるキャッシュ・フローで226百万円の資金の減少があったものの、営業活動に

よるキャッシュ・フローで1,537百万円の資金の増加となり、これらの結果、前事業年度末比747百万円(10.1%)増

加し、8,119百万円となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当事業年度における営業活動によるキャッシュ・フローは1,537百万円の資金の増加となりました。これは未収入

金の増加額1,336百万円及び法人税等の支払額633百万円による資金の減少があったものの、税引前当期純利益2,649

百万円及び減価償却費584百万円による資金の増加があったことによるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当事業年度における投資活動によるキャッシュ・フローは564百万円の資金の減少となりました。これは山形工場

及び九州工場における設備の更新などに伴う有形固定資産取得による支出321百万円、社内システムの増強に伴う無

形固定資産取得による支出150百万円などの資金の減少があったことによるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当事業年度における財務活動によるキャッシュ・フローは226万円の資金の減少となりました。これは長期借入金

の借入による収入400百万円の資金の増加があったものの、長期借入金の返済による支出304百万円、配当金の支払額

284百万円などの資金の減少があったことによるものであります。

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当事業年度における生産実績は次のとおりであります。

区分

生産高(千円)

前期比(%)

配電制御設備

24,705,185

115.3

24,705,185

115.3

 

b.受注実績

当事業年度における受注実績は次のとおりであります。

区分

受注高(千円)

前期比(%)

受注残高(千円)

前期比(%)

配電制御設備

27,325,764

115.1

24,003,727

114.9

27,325,764

115.1

24,003,727

114.9

 

c.販売実績

当事業年度における販売実績は次のとおりであります。

区分

販売高(千円)

前期比(%)

配電制御設備

24,218,746

113.5

24,218,746

113.5

 (注)1.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、以下のとおりであります。

前事業年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当事業年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

販売先

金額(千円)

割合(%)

販売先

金額(千円)

割合(%)

 ㈱きんでん

4,916,150

23.0

 ㈱きんでん

4,116,803

17.0

 関工商事㈱

2,745,798

12.9

 関工商事㈱

3,730,293

15.4

 

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

文中における将来に関する事項は、当事業年度末(2025年3月31日)現在において判断したものであります。

①重要な会計方針及び見積り

 当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成に当たりまして、経営陣による会計方針の選択・適用と、資産、負債の評価などの会計上の判断・見積りが含まれております。

②当事業年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

1)財政状態

(流動資産)

 受取手形が211百万円減少いたしましたが、その一方で未収入金が1,338百万円、現金及び預金が747百万円、売掛金が670百万円増加いたしました。これらの結果、流動資産合計は前事業年度末比2,795百万円(17.1%)増加し、

19,158百万円となりました。

(固定資産)

 減価償却等により有形固定資産が77百万円減少いたしましたが、投資その他の資産が232百万円増加、無形固定資産が69百万円増加いたしました。これらの結果、固定資産合計は前事業年度末比224百万円(3.7%)増加し、6,270百万円となりました。

(流動負債)

 短期借入金が33百万円減少したものの、買掛金446百万円、賞与引当金246百万円、未払法人税等185百万円の増加などにより、流動負債合計は前事業年度末比1,144百万円(22.3%)増加し、6,267百万円となりました。

(固定負債)

 長期借入金が91百万円増加したことなどにより、固定負債合計は前事業年度末比170百万円(13.7%)増加し、

1,417百万円となりました。

(純資産)

 前事業年度の期末配当160百万円及び当事業年度の中間配当128百万円による減少がありましたが、当期純利益1,963百万円の計上により利益剰余金が1,674百万円増加いたしました。これに加えその他有価証券評価差額金が29百万円増加したことにより、純資産合計は前事業年度末比1,704百万円(10.6%)増加し、17,744百万円となりました。

2)経営成績

(営業損益)

 当事業年度は、都市部におけるオフィス・商業施設の再開発やデータセンター・半導体関連の大型工場建設に伴う受注が堅調に推移したことから、売上高は前事業年度の21,334百万円に比べ13.5%増収の24,218百万円となりました。

 売上原価については、平準化の取組みにより外注費などの抑制効果があったものの、原材料・エネルギー価格の高騰や人件費の上昇などの影響が継続しているため、前事業年度の15,704百万円から3.2%増加し16,200百万円となりました。

 販売費及び一般管理費は、人件費や物流コストの上昇に伴う運搬費の増加などの要因により、前事業年度の4,494百万円から934百万円増加し5,428百万円となり、売上高に対する比率は22.4%となっております。

 利益につきましては、増収による影響に加え高付加価値案件の受注や平準化の推進によって営業利益は前事業年度の1,134百万円に対し128.2%増益の2,589百万円となりました。

 

(営業外損益)

 営業外収益・費用は前事業年度の18百万円の収益(純額)から75百万円の収益(純額)となりました。営業外収益の増加が主な要因であり、受取配当金19百万円、受取補償金18百万円の計上、ならびに貸倒引当金戻入10百万円が寄与しました。一方、営業外費用では、売上債権売却損が前事業年度末比13百万円減少し26百万円となったことが挙げられます。

 この結果、経常利益は前事業年度の1,153百万円に対し131.0%増益の2,664百万円となりました。

 

(特別損益)

 特別損失は固定資産除却損を12百万円、減損損失を3百万円計上し、この結果、税引前当期純利益は前事業年度の1,153百万円に対し129.8%増益の2,649百万円となりました。

 

(当期純利益)

 法人税、住民税及び事業税が前期より増加し、税金費用686百万円計上いたしました。この結果、当期純利益は前事業年度の744百万円に対し163.7%増益の1,963百万円となりました。

 

3)キャッシュ・フローの状況

 当事業年度のキャッシュ・フローの状況につきましては「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

4)経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社は、2025年4月よりスタートいたしました中期経営計画において売上高・営業利益・ROE・配当性向を主要KGIと位置付けております。2030年3月期までに売上高350億円、営業利益40億円、ROE10.0%を安定的に計上出来る体制の確立を目指し、各種施策展開に取組んで参ります。

 当事業年度のROEは11.6%となっております。今後につきましても当該指標の向上に努めて参ります。

 

5)資本の財源及び資金の流動性

 当社の運転資金需要のうち主なものは、製品製造のための材料及び部品の購入のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用によるものであります。営業費用の主なものは、人件費であります。

 当社は現在、運転資金及び設備投資資金につきましては内部資金または借入により資金調達することとしております。

 借入による資金調達に関しましては、安定的な長期借入金で調達することを原則としております。

 当社は健全な財務状態、営業活動を基盤としたキャッシュ・フローを生み出す能力により、当社の成長を維持するために将来必要な運転資金及び設備投資資金を調達することが可能と考えております。

 また、当社は資本政策の柔軟性・機動性を確保するため自己株式を取得しております。

 なお、自己株式の取得の状況は「第4 提出会社の状況、2 自己株式の取得等の状況」に記載のとおりであります。

 

6)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。

 

5【重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 当社は、配電制御システムの専業メーカーとして、配電制御にかかわる様々なシステムをご提供し、来年100周年を迎えます。お客様のニーズに合ったより満足していただける安心安全な電気インフラ作りに向けてさらなる研究開発を推進して参ります。

 主な取り組みといたしましては、

・弊社製品納入後に設置、配線接続等が必要になりますが、その工数、作業者の熟練度を大きく削減できる省施工盤の開発。

・クラウドサービスへの移行に伴うデータセンターの増加により電力需要がひっ迫しておりますが、サーバ等IT機器の電源設備の発熱による損失を抑えた省エネタイプのPDU(Power Distribution Unit)盤の開発。

・製品のライフサイクルでのカーボンニュートラルをめざした製品、工法の開発。

・標準化、モジュール化、自動化に適応した製品構造の開発。

 以上の他にも、昨今めまぐるしい環境の変化、お客様のニーズに対応した研究開発テーマを都度取り上げてタイムリーに活動して参ります。

 当事業年度における研究開発費の総額は39百万円であります。