第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1) 会社の経営の基本方針

当社は、経営理念を以下のとおり定め、お客様にご満足いただける新たな価値を提供していきます。

① お客様にご満足いただける新たな価値を創造し続けます。
日東工業グループは、お客様にとっての価値を理解し、満足いただける製品やサービスを提供していきます。 
われわれは価値創造を継続的に行うことにより、お客様との信頼関係を築き、強化していくことを大切にします。

② 人間尊重の精神に基づいた企業活動を進めます。
従業員一人ひとりの個性を尊重し、能力を生かし、育てることにより、新しい価値を創造する組織への更なる進化を図ります。
公正公平な人事評価と適材適所の人材配置により、従業員が職務を通じて自己実現を果せる会社であることを誓います。

③ 高い倫理観、道徳観に根ざしたコンプライアンス経営を実践します。
日東工業グループは、社会規範に則った公明正大な経営を常に行います。
誠実な行動と日々のたゆまぬ努力の積み重ねによって、安全・安心な、より高い品質の製品・サービスを提供します。

④ 美しい地球を次世代へつなぐことに貢献します。
電気と情報を主な事業領域とする日東工業グループは、企業市民として環境保護に努めていきます。
また同時に、再生可能エネルギーの活用を促進する技術等を通じ、持続可能性を高めることに貢献する価値を創造します。

⑤ 株主価値を高める経営を常に行います。
過去の成功を守ることや目先の利益を追うことを優先し、未来への投資を後回しにするようなことはしません。
株主価値を最大化する中長期的な成長と持続的な利益の創出を経営目標として、変わらず良い会社であり続けるために改善・改革を日々積み重ねます。

 

(2) 当社グループの経営環境

①  経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標

2023年度を最終年度とする「2023中期経営計画」において、底堅い設備投資に伴う需要を確実に捉えたことや価格改定効果により連結売上高の目標は達成することが出来ました。一方で、利益率改善に向け様々な施策を講じるも、原材料価格高騰の長期化や人件費を含む固定費の増加により利益が圧迫された結果、連結営業利益の目標は未達成となりました。また、自己株式の取得や配当性向100%への引き上げ(2期限定)の遂行により自己資本の抑制を図りましたが、ROEの目標も未達成となりました。

 

<2023中期経営計画 結果>

 

2023中期経営計画策定時

(2021年3月期 実績)

2023中期経営計画

目標

2024年3月期

実績

連結売上高

1,379億円

1,500億円

1,607億円

連結営業利益

123億円

130億円

119億円

RОE

9.3%

8.5%以上

8.3%

 

 

  新たに策定した2026年度を最終年度とする「2026中期経営計画」の財務目標は以下のとおりです。

 


 

 

②  中長期的な会社の経営戦略および対処すべき課題

当社グループは長期経営構想を踏まえ2026年度を最終年度とする新たな中期経営計画「2026中期経営計画」を策定しました。

 

<長期成長ストーリー>


<2026中期経営計画>

基本方針


 

「2026中期経営計画」の取り組みは以下のとおりです。

 

(イ) 電気・情報インフラ関連 製造・工事・サービス事業(日東工業㈱、㈱新愛知電機製作所、テンパール工業㈱、南海電設㈱、㈱大洋電機製作所、EMソリューションズ㈱、㈱ECADソリューションズ、日東工業(中国)有限公司およびその子会社、Gathergates Group Pte Ltdおよびその子会社、ELETTO(THAILA

ND)CO.,LTD、NITTO KOGYO BM(THAILAND)CO.,LTD)

 

(a) コア事業の基盤強化

配電盤、キャビネット、情報通信関連事業といったコア事業は、強い事業として盤石な基盤を構築するとともに、先進技術を活用し収益性を高めることを目指します。

主な施策は以下のとおりです。

・生産効率化の進展による収益性の強化(生産自動化、スマートファクトリーなど)

・販売システムの更なる進化と市場浸透促進

・グループ会社間の連携強化による事業体制の拡大および強靭化

 

(b) 戦略事業の推進

グローバル化、事業・技術領域の拡大を推進する戦略事業は、成長が期待できる市場への積極参入により規模を拡大し、将来の事業の柱を築くことを目指します。

主な施策は以下のとおりです。

・海外拠点の経営基盤およびマーケティング機能の強化(海外ローカル販売の拡大、生産体制確立など)

・環境関連製品[エネルギーマネジメント/EV充電設備]事業の基盤構築(提供商材の拡充、サービス事業の確立など)

・社会課題を見据えた新たなビジネスの創出

 

(ロ) 電気・情報インフラ関連 流通事業(サンテレホン㈱およびその子会社)

電気・情報インフラ関連流通事業では、ソリューション事業の強化およびサプライチェーンマネジメントの進化により市場およびサービスの領域を広げることで、事業規模の拡大を目指します。

 

(a) ソリューション事業の強化

ソリューション事業の強化における主な施策は以下のとおりです。

・提案商材、ターゲット市場の拡充(環境エネルギー、FA、データセンターなど)

・商材販売を超えたビジネス領域の拡張(現場調査・提案、設置・施工など)

・海外販売拠点[タイ/ベトナム]でのソリューションビジネス拡大

 

(b) サプライチェーンマネジメントの進化

サプライチェーンマネジメントの進化における主な施策は以下のとおりです。

・情報通信分野における重要市場の顧客ネットワーク強化(通信キャリア、システムインテグレーターなど)

・取引先との販売プロセスのデジタル化推進(ECサイト[GOYOU]の活用促進など)

・仕入先との連携強化

 

 

(ハ) 電子部品関連 製造事業(北川工業㈱およびその子会社)

電子部品関連製造事業では、海外ビジネスの拡大およびソリューションの強化により、グローバルに稼ぐ力を高め、まずは規模の拡大を目指し、長期的に収益性を高めることを目指します。

 

(a) 海外ビジネスの拡大

海外ビジネスの拡大における主な施策は以下のとおりです。

・日系メーカー海外現地法人との関係深化

・非日系メーカーの開拓

・EMC対策支援体制の構築(海外試験サイトとのアライアンス強化など)

・海外における製造・調達機能の見直し

 

(b) ソリューションの強化

ソリューションの強化における主な施策は以下のとおりです。

・高度化が進む電動・電子化に向けたコア技術の深耕(次世代パワーデバイスに対するEMC対策など)

・成長市場への部材供給範囲の拡大(自動車を含むモビリティ市場、環境エネルギー市場など)

・コア技術を活かした新機能部材の開発

 

(ニ) グループ経営基盤

事業成長を支えるグループ経営基盤の強化における主な施策は以下のとおりです。

 

(a) 人的資本

次代を見据え人的資本の極大化を図っていき、グループの持続的・永続的発展につなげます。

 

(b) DX

デジタル技術を最大限活用できるようになり、ビジネスプロセスの変革やイノベーションの推進へとつなげます。

 

(c) 研究開発

未来社会を想見しグループの技術価値を高めることで、持続可能な社会の実現に対する貢献度を高めます。

 

当社グループはこうした施策により、地球の未来に「信頼と安心」を届ける企業グループとして、より多くのお客様のニーズにお応えし、企業価値の向上に努めていきます。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1) ガバナンス

当社グループでは、持続可能性の観点から企業価値を向上させるため、サステナビリティ推進体制を強化しています。

当社グループの持続可能な社会の実現に向けた取り組みを推進し、社会課題の解決に資すること、またグループ全体で中長期的な企業価値向上を図ることを目的とするサステナビリティ委員会を設置しています。

取締役社長を委員長としたサステナビリティ委員会はサステナビリティ推進室を事務局として、各委員会と連携し、サステナビリティに関する審議や各部門の推進状況のモニタリングを行い、取締役会へ報告します。

取締役会はサステナビリティ委員会の報告をもとに、サステナビリティに関する推進体制の決定、推進の監督を行います。

 


 

(2) リスク管理

当社グループはサステナビリティ委員会にて、サステナビリティに関するリスクと機会のモニタリング及びその課題の協議を行います。サステナビリティ委員会にて協議されたリスクと機会の課題は取締役会へ報告され、取締役会は報告をもとにサステナビリティに関するリスクと機会の課題への対応を決定し、監督を行います。なお、リスクの内容については次のとおりです。

① 気候変動

地球環境に対する問題意識の高まりは、事業活動におけるエネルギー使用の合理化、環境負荷物質の規制強化による製品対応のみならず、当社グループの環境問題、特に気候変動リスクへの取り組み姿勢の評価などは当社グループの財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、グループとしてのCО2排出削減目標を設定し、持続可能な社会の実現と企業価値向上に向けて、サプライチェーン排出量削減の取り組みを推進することにより当該リスクの低減に努めていきます。

 

 

② 人的資本・多様性 (注)

自社を取り巻く事業環境などから、特に女性総合職、外国籍総合職の割合が少ない現状であり、多様性の確保という観点から課題の一つであると認識しています。

中核人財の登用においては、性別、年齢、国籍、新卒採用・中途採用などの属性は意識せず、期待する役割に応じた能力と経験および実績により判断しています。

総合職における人財属性の構成比率改善と、それぞれの属性における中核人財の登用の二項目については、マイルストーンを設定するとともに、男性労働者の育児休業取得率、労働者の男女の賃金の差異にも着目することで、多様性の確保への取り組みを続けていきます。

 

③ 人権の尊重

近年の人権に対する意識の高まりを踏まえ、当社グループの人権尊重に向けた方針を示す日東工業グループ人権方針を策定しました。

 

(3) 戦略

① 気候変動

当社グループでは、製造工程における廃棄物の抑制、エネルギー使用の合理化、地球環境に配慮した製品開発、グリーンエネルギーへの切り替え、サプライチェーンや配送を含めたグループの事業活動全般にわたる環境課題に対する取り組み強化を推進しています。

外部団体との取り組みとしては、気候変動などの環境に関する情報を収集・管理・開示しているCDPへ当社グループの気候変動に対する活動状況を開示しています。また、気候変動イニシアティブ(JCI)に参加・賛同しており、2024年2月からはGXリーグへ参画しています。

 

② 人的資本・多様性 (注)

当社は、人財基本方針として「社員の個性を尊重し育てることにより、新たな価値を創造し、持続可能な社会に貢献する。」を掲げており、社内人財属性の多様性の確保は中長期的な企業価値向上に向けて重要な戦略の一つであると認識しています。

また、当社は、社員一人ひとりの健康保持増進を経営の重要課題の一つであると捉え、「健康宣言」を制定するとともに、社員が将来にわたり健康でいきいきと働けるよう、様々な活動に取り組んでいます。

2024年3月11日には、経済産業省と日本健康会議が選定する「健康経営優良法人制度」において「健康経営優良法人2024」(大規模法人部門)に認定されました。

 

③ 人権の尊重

当社グループでは、社員の人権を尊重する手段のひとつとして、内部通報窓口「ヘルプライン」と多言語対応も可能な社外の通報窓口「社外ホットライン」を設置しています。また、人権尊重の重要性を理解、周知するために社員に向けた人権教育プログラムを構築しました。

日東工業グループ人権方針を実践するため、人権デュー・ディリジェンスのプロセスに基づいた取り組みを進め、サプライチェーン上を含めた事業における人権侵害リスクを特定し、その防止、軽減を図り、取組みの実効性評価などについて情報を開示します。

 

 

(4) 指標及び目標

① 気候変動

GHG排出量削減目標                        (単位:t-CO2)

 

2020年度

(基準年度実績)

2023年度

(当期実績)

2030年目標

Scope1,2

25,975

26,578

2020年度比で30%削減

Scope3

399,109

559,296

2020年度比で30%削減

 

 

当期実績の対象範囲は次のとおりです。

Scope1,2

日東工業㈱、㈱新愛知電機製作所、南海電設㈱、㈱大洋電機製作所、㈱ECADソリューションズ、サンテレホン㈱及びその子会社、北川工業㈱及びその子会社、日東工業(中国)有限公司及びその子会社、Gathergates Group Pte Ltd及びその子会社(一部を除く)、ELLETO(THAILAND)CO.,LTD、NITTO KOGYO BM(THAILAND)CO.,LTD

Scope3

日東工業㈱、サンテレホン㈱、北川工業㈱

 

 

 

② 人的資本・多様性 (注)

総合職全体における各属性の構成比                               (単位:%)

 

2019年度

2020年度

2021年度

2022年度

2023年度

2030年目標

女性社員

16

16

15

15

15

20

外国籍社員

1

1

1

2

2

2

中途採用社員

25

25

26

27

28

26

 

 

総合職の各属性における管理職比率                               (単位:%)

 

2019年度

2020年度

2021年度

2022年度

2023年度

2030年

目標

最終目標

女性管理職/女性総合職

1

3

3

4

4

10

28

外国籍管理職/外国籍総合職

16

11

7

7

0

28

28

中途採用管理職/中途採用総合職

26

24

24

25

25

28

28

管理職/総合職全体

28

29

28

28

 

 

 その他の当事業年度の社員の状況

男性労働者の育児休業取得率、労働者の男女の賃金の差異についての実績は「第1 企業の概況 5 従業員の状況 (4) 管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異」に記載しています。

 

(注) 人的資本・多様性に関わるリスクの内容及び戦略並びに指標及び目標について、現時点では日東工業株式会社単体について記載していますが、今後はグループ全体としての記載も検討していきます。

 

3 【事業等のリスク】

当社グループは、「内部統制委員会」を設置し、取締役社長の下にリスク管理体制を構築しています。平時においては、各委員会および各本部において「経営リスク管理規程」に従いリスクの軽減等に取り組むとともに、有事においては「緊急時対応要領」に基づき対応する体制を整備し、リスク管理体制の推進を図っています。また主要な各グループ会社からもリスク管理活動に係る報告を受けています。

 

当社グループの財政状態および経営成績等に影響を及ぼす可能性のある主なリスクは以下のようなものがあります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末(2024年3月31日)時点において当社グループが判断したものです。当社グループは、これらのリスクを認識したうえで、発生の回避および発生したときの対応に万全を尽くす所存です。

 

(1) 事業活動に係るリスク

① 事業環境について

当社グループの製品需要は、国内の民間非居住建築物棟数や機械受注に関連するものが多く最終的には国内の景気動向の影響を大きく受けます。また、情報通信分野および電子部品分野の製品においては技術革新が急速に進んでおり、保有する在庫の陳腐化や案件の失注等により当社グループの財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループの事業環境では、当該リスクが顕在化する可能性は常にあると認識していますが、DX(デジタルトランスフォーメーション)を活用したスマートファクトリーを実現する瀬戸工場を2024年春に稼働させるなどコア事業競争力をより一層高めるとともに、事業領域の拡大、東南アジア地域を中心とした海外事業基盤の確立や新規ビジネスの確立などの諸施策を推し進めています。

 

② 品質について

当社グループが提供している製品は、厳重な品質管理体制のもと製造・出荷されています。不具合等が発生した場合には迅速な対応を行う管理体制を構築していますが、消費生活用製品安全法および製造物責任法に関連した問題が発生した場合には、社会的評価、企業イメージ低下のリスクがあり、当社グループの財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループが提供している製品は多品種であり個別仕様に基づくものも多くあるなど、当該リスクを完全に排除することは困難であると認識していますが、設計品質の向上、生産工程の改善、検査体制の拡充や品質教育の充実など品質保証体制の強化を着実に進めています。

 

③ 情報システム、情報セキュリティについて

当社グループは、販売や生産等の事業活動において情報システムに依存しており、また顧客、仕入先、従業員等に関する機密情報や個人情報を扱うことがあります。不測の事態により情報システムの長期間停止、機密情報や個人情報の流出などが発生した場合、当社グループの財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

高度化するサイバー攻撃などにより当該リスクを完全に排除することは困難であると認識していますが、情報システムに対する外部攻撃対策、コンピュータウイルス対策、セキュリティ遵守に関する従業員教育等の実施により当該リスクの低減に努めるとともに、積極的に新しい情報システムの活用を継続しています。

 

④ 労働環境について

当社グループの事業活動は、多くの役職員が携わることにより成立しています。人員の恒久的な不足、労働環境等の悪化による労災事故、労務コンプライアンス問題などが発生した場合にそれらにともなう役職員のモラル低下などは当社グループの財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

労働に対する価値観の多様化が進むなか、当該リスクが常に存在するものであることを認識していますが、グループとして「働きがい改革」を掲げ、安全対策、労働時間管理、相談窓口設置やモチベーション向上施策の実施などにより、健康的でやりがいのある職場環境を実現することで当該リスクの低減に努めています。

 

 

⑤ 原材料等の調達について

当社グループは鋼材、ステンレス材、樹脂材、伸銅材などの原材料ならびに購入機器等を使用した製品の製造や情報通信機器等の仕入、販売をしています。サプライチェーンにおいて国際的な政治・経済情勢や商品市況の動向により調達価格の高騰や供給がひっ迫した場合や、環境や人権に係る問題が発生した場合、当社グループの財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

供給のひっ迫に関するリスクは緩和されつつあるものの、引き続き部材の調達難や原材料の価格高騰は当社グループのサプライチェーンの一部に影響を及ぼしています。供給が市況等に左右される原材料等を多く使用しているため当該リスクを完全に排除することは困難であると認識していますが、海外調達を含めた購買先の分散、機動的な在庫確保や使用部材の仕様変更などの施策を進めるとともに、共同購買などグループでの購買力を高めることで当該リスクの低減に努めています。

また、環境に配慮した調達の推進や「日東工業グループ人権方針」の制定などにより持続可能なサプライチェーンの強化に努めています。なお、運送物流についても配送時間や運送コストの増加が予想されており、郡山物流センターの設置や配送の効率化などを進めて当該リスクの低減に努めています。

 

(2) 経営戦略や中長期に顕在化する可能性のあるリスク

① 人財確保、人財育成について

当社グループの持続的な成長には、優秀な人財の確保や育成促進が前提となります。積極的な採用活動、外部専門知識の活用や社内教育制度の充実などを進めていますが、事業展開に必要な人財の確保が困難となった場合、当社グループの財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

引き続き採用手法の多様化、柔軟な人事制度、多様な人財の登用や教育制度の充実をはかることなどにより、持続的な成長に必要な人財の確保に努めていきます。

 

② デジタル技術の進化について

デジタル革命の流れは、経営スピード、顧客との関係性や競争力などへ、より一層の影響を及ぼすものと予想されます。これらに起因して現在の競争優位の維持が困難となった場合、当社グループの財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

引き続きデジタル技術の活用を推進し、優位性のある販売システムやコスト競争力を高めることなどにより事業の競争優位性の維持に努めるとともに、ICTインフラ基盤の構築を通じてグループ経営基盤の強化を進めていきます。

 

③ 事業ポートフォリオについて

当社グループは主に配・分電盤ならびにコンポーネンツの製造、販売等を行う電気・情報インフラ関連 製造・工事・サービス事業をコア事業として、ネットワーク商材を扱う電気・情報インフラ関連 流通事業、電磁波環境コンポーネンツ等の製造、販売を行う電子部品関連 製造事業により構成されています。当社グループの業績はコア事業を主に担う日東工業株式会社の業績に連動性が高く、コア事業の低迷は当社グループの財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

引き続きコア事業の一層の強化、適切なリソース配分を通じた各セグメント事業の成長、グローバル化の推進に加えて、EVインフラ、エネルギーマネジメントなど環境に関連した事業領域の拡大、新規ビジネスへのチャレンジなどを通じてグループとしての成長に努めていきます。

 

④ 海外事業展開について

当社グループは海外でも事業を展開しており、当社グループの成長の重要なキーとなっていますが、事業の低迷、国際的な政治・経済動向あるいは戦争、テロ、大規模自然災害等により当社グループの財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

引き続き成長を続ける海外市場において強固な事業体制を構築し、東南アジア地域を中心としたビジネス展開に注力するとともに、グループガバナンス体制の強化を図ることによりグループとしての成長に努めていきます。

 

 

⑤ 知的財産について

当社グループは多くの知的財産権を保有し、権利保護のため適切に維持、管理しています。また、第三者の知的財産権についても侵害することのないよう適時適切に調査検討をしています。しかし、第三者との間で、無効、模倣、侵害等の知的財産権の問題が生じた場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

海外市場展開においては知的財産権の管理、とりわけ第三者の知的財産権への侵害等を回避することは事業活動に不可欠なものと認識しており、特許公報、海外規格の調査などを強化することにより当該リスクの低減に努めていきます。

 

⑥ 環境問題について

地球環境に対する問題意識の高まりは、事業活動におけるエネルギー使用の合理化、環境負荷物質の規制強化による製品対応のみならず、当社グループの環境問題、特に気候変動リスクの取り組み姿勢への評価などは当社グループの財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、「サステナビリティ委員会」のもと、その他の専門委員会等と連携をとり気候変動に関するリスクと機会のモニタリングを行うとともに、課題に対して戦略を策定し取り組みを進めます。また、グループとしてのGHG排出量削減目標を設定し、持続可能な社会の実現と企業価値向上に向けて、サプライチェーン排出量削減の取り組みを推進します。

引き続き製造工程における廃棄物の抑制、エネルギー使用の合理化、地球環境に配慮した製品開発、グリーンエネルギーへの切り替え、サプライチェーンや配送を含めたグループの事業活動全般にわたる環境課題に対する取り組みなどを強化することにより当該リスクの低減に努めていきます。

 

(3) その他

 大規模災害等について

当社グループの主要事業所の多くは、今後発生が予想される南海トラフ地震による被災の可能性が高い地域にあります。こうした大規模自然災害等が発生した場合、工場建屋や生産設備の被災、サプライチェーンの復旧遅れ、電力供給不足等により、生産能力および物流機能等に大きな影響が生じ、当社グループの財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

近い将来、南海トラフ地震による被災の確率は高いと認識しています。当社グループでは人命を最優先に、大規模災害時の生産および販売への影響を最小限に抑えるため、防災訓練、安否確認訓練、各種耐震対策、データ管理の二重化等、事業継続計画の整備を積極的に進めています。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 (1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。

① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、コロナ禍の影響が緩和され経済活動の正常化が進む中で、このところ足踏みがみられるものの、各種政策効果もあり景気は緩やかに回復しました。一方、世界的な金融引締めに伴う影響や中国経済の先行き懸念など、海外景気の下振れリスクのほか、物価上昇、中東地区をめぐる情勢、金融資本市場の変動等の影響に引き続き注視が必要な状況にあります。

当業界におきましては、部材調達難の影響は緩和されてきたものの、新設住宅着工戸数は弱含んでいるほか、機械受注や民間非居住建築物棟数にも弱含みがみられるなど、先行きに懸念が残る事業環境となりました。

このような情勢下にあって当社グループは、2022年3月期よりスタートした「2023中期経営計画」に基づき、コア事業である配・分電盤ならびにその部材の製造・販売強化に加え、海外事業拡大や新規事業創出に向け、各種施策に取り組みました。

当連結会計年度においては、前年度から実施している価格改定の効果や案件増加に伴う配・分電盤の売上増加により、電気・情報インフラ関連 製造・工事・サービス事業の売上が増加したほか、オフィスネットワーク案件等の回復を背景に電気・情報インフラ関連 流通事業の売上が増加しました。一方、エアコン関連市場等の需要減少がみられたことから、電子部品関連 製造事業の売上は減少しました。

以上の結果、売上高は160,709百万円と前期比9.6%の増収、営業利益は11,967百万円と同46.4%の増益、経常利益は12,566百万円と同38.8%の増益、親会社株主に帰属する当期純利益は8,715百万円と同59.1%の増益となりました。

 

セグメント別の経営成績は次のとおりです。
 

(電気・情報インフラ関連 製造・工事・サービス事業)

(イ)配電盤部門

配電盤部門につきましては、企業における底堅い設備投資需要の動きから主力の配・分電盤の売上が増加したほか、Gathergates Group Pte Ltdなどの子会社の売上が増加した結果、売上高は56,260百万円と同14.6%の増収となりました。

 

(ロ)キャビネット部門

キャビネット部門につきましては、WEBを活用した設計・受注システムの利用拡大により穴加工キャビネットの売上が増加したほか、自立キャビネットやステンレスキャビネットの売上が増加した結果、売上高は21,873百万円と同6.0%の増収となりました。

 

(ハ)遮断器・開閉器・パーツ・その他部門

遮断器・開閉器・パーツ・その他部門につきましては、国による補助金政策に後押しを受けた案件増加によりEV用充電スタンドの売上が増加したほか、配・分電盤やキャビネットに関連するパーツ等の売上が増加した結果、売上高は12,903百万円と同10.4%の増収となりました。

 

(ニ)工事・サービス部門

工事・サービス部門につきましては、学校向け電話設備の更新案件や工場向け電気通信設備の案件が増加した一方、病院案件における電気通信工事の売上が減少した結果、売上高は4,095百万円と同0.2%の減収となりました。

 

以上の結果、電気・情報インフラ関連 製造・工事・サービス事業の売上高は95,132百万円と同11.3%の増収、セグメント利益(営業利益)は9,166百万円と同48.1%の増益となりました。

 

 

(電気・情報インフラ関連 流通事業)

電気・情報インフラ関連 流通事業につきましては、オフィスネットワーク案件の回復に伴いネットワーク部材の売上が増加したほか、再生可能エネルギー関連等の案件が増加した結果、売上高は50,975百万円と同10.9%の増収、セグメント利益(営業利益)は1,912百万円と同21.1%の増益となりました。

 

(電子部品関連 製造事業)

電子部品関連 製造事業につきましては、自動車関連市場の堅調な需要を背景に熱対策関連製品の売上が増加しましたが、エアコン関連市場や産業機器市場等の需要減少がみられたことから、売上高は14,601百万円と同4.2%の減収となりました。一方、変動費率の改善や販管費等の減少により、セグメント利益(営業利益)は872百万円と同144.6%の増益となりました。

 

当期の財政状態の概況は、次のとおりです。

 

(資産)

流動資産は、前連結会計年度末に比べて13.4%増加し、90,826百万円となりました。これは現金及び預金の増加5,207百万円、売上債権の増加3,598百万円や棚卸資産の増加1,196百万円などによるものです。

固定資産は、前連結会計年度末に比べて27.9%増加し、70,916百万円となりました。これは主に建物及び構築物の増加13,094百万円などによるものです。

この結果、総資産は前連結会計年度末に比べて19.3%増加し、161,742百万円となりました。

(負債)

流動負債は、前連結会計年度末に比べて37.1%増加し、33,785百万円となりました。これは主に1年内返済予定の長期借入金の増加1,799百万円や未払法人税等の増加2,069百万円、その他の流動負債の増加4,043百万円などによるものです。

固定負債は、前連結会計年度末に比べて101.5%増加し、19,260百万円となりました。これは主に長期借入金の増加10,157百万円などによるものです。

この結果、負債合計は前連結会計年度末に比べて55.1%増加し、53,046百万円となりました。

(純資産)

純資産合計は、剰余金の配当4,906百万円などによる減少がある一方、親会社株主に帰属する当期純利益の計上8,715百万円やその他の包括利益累計額の増加3,514百万円などにより、前連結会計年度末に比べて7.2%増加し、108,696百万円となりました。

 

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ5,313百万円増加の25,411百万円となりました。

なお、当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況とそれらの主な要因は次のとおりです。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度において、営業活動によるキャッシュ・フローは12,321百万円(前連結会計年度3,751百万円)となりました。これは、税金等調整前当期純利益12,217百万円の計上に対し、売上債権の増加額3,324百万円や法人税等の支払額1,512百万円などによる資金の減少があった一方で、減価償却費の計上4,858百万円などによる資金の増加があったことによるものです。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度において、投資活動によるキャッシュ・フローは△14,429百万円(前連結会計年度△13,899百万円)となりました。これは、定期預金の払戻による収入465百万円などによる資金の増加があった一方で、固定資産の取得による支出13,914百万円などによる資金の減少があったことによるものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度において、財務活動によるキャッシュ・フローは6,929百万円(前連結会計年度1,449百万円)となりました。これは、配当金の支払額4,900百万円などによる資金の減少があった一方で、長期借入れによる収入12,000百万円による資金の増加があったことによるものです。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

当社グループは「電気・情報インフラ関連 製造・工事・サービス事業」「電気・情報インフラ関連 流通事業」「電子部品関連 製造事業」の事業活動を展開しています。

当連結会計年度の「生産、受注及び販売の実績」をセグメント別に示すと以下のとおりです。なお、「電気・情報インフラ関連 製造・工事・サービス事業」については部門別の実績を記載していますが、「工事・サービス」部門については、生産実績及び商品仕入実績を定義することが困難であるため記載していません。

 

(イ) 生産実績

当連結会計年度の生産実績をセグメント別に示すと、次のとおりです。

 

セグメント別

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

金額(百万円)

対前期

  増減率(%)

電気・情報インフラ関連

製造・工事・サービス事業

配電盤

59,248

15.8

キャビネット

24,704

4.8

遮断器・開閉器・パーツ・その他

12,457

5.4

小計

96,410

11.4

電子部品関連 製造事業

9,074

△10.0

合計

105,485

9.2

 

(注)  1 金額は販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっています。

2 上記の金額には、消費税等は含まれていません。

 

 

(ロ) 商品仕入実績

当連結会計年度の商品仕入実績をセグメント別に示すと、次のとおりです。

 

セグメント別

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

金額(百万円)

対前期

  増減率(%)

電気・情報インフラ関連 流通事業

43,888

7.3

 

(注)  金額は仕入価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっています。

 

(ハ) 受注実績

当社グループは製品の性質上、原則として需要予測による見込生産方式をとっているため、記載を省略しています。

 

(ニ) 販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメント別に示すと、次のとおりです。

 

セグメント別

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

金額(百万円)

対前期

  増減率(%)

電気・情報インフラ関連

製造・工事・サービス事業

配電盤

56,260

14.6

キャビネット

21,873

6.0

遮断器・開閉器

パーツ・その他

12,903

10.4

工事・サービス

4,095

△0.2

小計

95,132

11.3

電気・情報インフラ関連 流通事業

50,975

10.9

電子部品関連 製造事業

14,601

△4.2

合計

160,709

9.6

 

(注) セグメント間の取引については相殺消去しています。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。

① 財政状態及び経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

(イ) 財政状態

当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末に比べて19.3%増加し、161,742百万円となりました。これは、主に当社の銀行借入による資産及び負債の増加のほか、前期比増収に伴う売上債権の増加などによるものです。

 

 

(ロ) 経営成績

(売上高)

当連結会計年度においては、前年度から実施している価格改定の効果や案件増加に伴う配・分電盤の売上増加により、電気・情報インフラ関連 製造・工事・サービス事業の売上が増加したほか、オフィスネットワーク案件等の回復を背景に電気・情報インフラ関連 流通事業の売上が増加しました。一方、エアコン関連市場等の需要減少がみられたことから、電子部品関連 製造事業の売上は減少しました。

以上の結果、売上高は160,709百万円と前期比9.6%の増収となりました。

セグメント別の売上高及び営業利益は以下のとおりです。

 

(単位:百万円)

 

セグメント別

2023年3月

2024年3月

実績

実績

対前期

  増減率(%)

 

電気・情報インフラ関連

製造・工事・サービス事業

85,501

95,132

11.3

電気・情報インフラ関連

流通事業

45,952

50,975

10.9

電子部品関連 製造事業

15,244

14,601

△4.2

合計

146,698

160,709

9.6

電気・情報インフラ関連

製造・工事・サービス事業

6,188

9,166

48.1

電気・情報インフラ関連

流通事業

1,579

1,912

21.1

電子部品関連 製造事業

356

872

144.6

セグメント間取引消去

48

15

合計

8,172

11,967

46.4

 

(注) 1 売上高におけるセグメント間の取引については相殺消去しています。

 2 営業利益の各セグメントの金額は、セグメント間の内部振替前の数値によっています。

 3 セグメント別業績についての分析は「第1 企業の概況 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりです。

 

(営業利益)

営業利益は11,967百万円と同46.4%の増益となりました。主に、前期比増収及び価格改定効果によるものです。

(経常利益)

経常利益は12,566百万円と同38.8%の増益となりました。主に、為替差益が減少した一方で、営業利益が増加したことによるものです。

(税金等調整前当期純利益)

税金等調整前当期純利益は12,217百万円と同49.1%の増益となりました。主に、経常利益の増加及び特別損失の減少によるものです。なお、日東工業株式会社において、名古屋工場の移転に伴う建物解体費用引当金繰入額377百万円を特別損失として計上しています。

(親会社株主に帰属する当期純利益)

親会社株主に帰属する当期純利益は8,715百万円と同59.1%の増益となりました。主に、税金等調整前当期純利益の増加によるものです。1株当たり当期純利益は、前連結会計年度の144円45銭から229円77銭に増加しました。

 

 

2022年3月期から2024年3月期の3年間を対象とする「2023中期経営計画」の実績と2025年3月期から2027年3月期の3年間を対象とする「2026中期経営計画」の目標は以下のとおりです。

(単位:億円)

 

2023中期経営計画(注)1

2026中期経営計画(注)2

 

2024年3月期(最終年度)

2027年3月期

(最終年度)

2025年3月期

(中計初年度)

 

計画

実績

計画

計画

連結売上高

1,500

1,607

2,000

1,800

連結営業利益

130

119

150

125

連結ROE

8.5%以上

8.3%

9.0%以上

 

(注) 1 連結売上高・営業利益の目標については2021年5月13日、連結ROE目標については2022年5月13日、実績については2024年5月15日に公表したものです。

 2 2024年5月15日に公表したものです。

 

「2023中期経営計画」の最終年度となる2024年3月期の実績につきましては、底堅い設備投資に伴う需要を確実に捉えたことや価格改定効果により連結売上高は過去最高を記録し目標を達成した一方で、利益率改善に向け様々な施策を講じるも、原材料価格高騰の長期化や人件費を含む固定費の増加により利益が圧迫された結果、連結営業利益の目標は未達成となりました。また、自己株式の取得や配当性向100%への引き上げ(2期限定)の遂行により自己資本の抑制を図りましたが、ROEの目標も未達成となりました。

 

当社グループは長期経営構想を踏まえ2026年度を最終年度とする新たな中期経営計画「2026中期経営計画」を策定し、財務目標を連結売上高2,000億円、連結営業利益150億円、連結ROE9.0%以上としました。前中期経営計画で築き上げた足場[基盤]を使い、事業進化を加速させる3年間とし、コア事業の更なる強靭化ならびに成長事業への果敢な挑戦を通じ、過去最高の売上高・営業利益の達成を目指します。また、成長投資と株主還元の最適バランスを追求し資本効率性を高めることで、ROEの持続的向上を実現させていきます。

2026中期経営計画の初年度となる2025年3月期の計画につきましては、人件費および減価償却費などの固定費増加を見込んでいますが、テンパール工業㈱等の連結効果のほか、価格改定効果等による業績拡大により、連結売上高1,800億円(前期比12.0%の増収)、連結営業利益125億円(前期比4.4%の増益)を見込んでいます。

 

 

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローは、営業活動によるキャッシュ・フローが12,321百万円、投資活動によるキャッシュ・フローが△14,429百万円、財務活動によるキャッシュ・フローが6,929百万円となりました。当連結会計年度末の現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末の20,098百万円から5,313百万円増加し、25,411百万円となりました。

当社グループの資金需要のうち主なものは、部材購入費、人件費及び新製品並びに合理化・省力化用の設備投資にかかるものです。また、市場優位性確保のための研究開発投資についても積極的に行っています。

当社グループの運転資金及び設備資金については、主に自己資金及び銀行借入を充当しています。当連結会計年度においては、生産設備の取得・更新のほか、瀬戸工場関連投資による支出があり、キャッシュ・フロー減少の主な要因となっています。なお、当社は、2023年1月31日付で、工場建設に係る事業資金の調達を目的としたシンジケート方式によるコミットメント期間付きタームローン(グリーンローン)契約を締結し、借入れを実行しています。今後の運転資金、設備資金及び研究開発投資資金については、グループ各社における成長投資、配当原資などの資金需要が見込まれており、必要に応じて最適な資金調達方法を検討しています。

また、ウクライナ情勢等の地政学的リスクや急激な円安の進行などの影響による物価高や金利の上昇など、先行き不透明な状況が続くことが見込まれるため、想定以上に事態が悪化した場合に備え、グループ資金の効率化の推進や新たな資金調達方法の検討など、資金の流動性を確保するための取り組みを進めています。

当連結会計年度における借入金残高は18,079百万円となっていますが、本借入金額は当社グループの資産額を鑑みるに十分返済可能な額であると考えています。

なお、「2026中期経営計画」の期間中において、成長投資及び定常投資並びに株主還元の原資として600億円程度のキャッシュアウトを計画しており、うち200億円程度は財務健全性を考慮したうえで、有利子負債を活用した資金調達を、400億円程度は営業活動によるキャッシュ・フローによる充当を計画しています。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しています。この連結財務諸表の作成にあたり、棚卸資産、有価証券、有形・無形固定資産、各引当金等の計上に関しては、一般に公正妥当と認められている会計基準に準拠した当社グループ会計方針及び見積り基準に基づき計上しています。上記の会計上の見積りは、期末日現在の資産・負債の金額、偶発的な資産・負債の開示及び報告対象期間の収益・費用の金額に影響を与える様々な見積りや仮定を用いており、実際の結果は、これらの見積りと異なる場合があります。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しています。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

(株式の取得による会社等の買収)

 当社は、2024年1月31日付けでテンパール工業株式会社の株式の一部を取得する旨の株式譲渡契約書を締結しました。詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な後発事象)」に記載のとおりです。

 

6 【研究開発活動】

当社グループは、「電気・情報インフラ関連 製造・工事・サービス事業」及び「電子部品関連 製造事業」において、コア事業である配・分電盤ならびにその部材の強化や海外事業拡大及び新規事業創出に向け各分野の商品を研究開発し、世の中に信頼される課題解決企業集団となることを目指し幅広く市場に展開しています。

当連結会計年度の研究開発費は3,059百万円で、当連結会計年度の研究成果のうち主なものは次のとおりです。

 

(1) 電気・情報インフラ関連 製造・工事・サービス事業

当連結会計年度の研究開発活動については、脱炭素や防災・減災をはじめとする社会課題を解決していくことへの重要性がますます高まっている中で、「持続的成長と社会貢献に資する新たな製品・技術・サービスの確立」へ向け、お客様にご満足いただけるような製品開発にチャレンジしました。

当セグメントにおける当連結会計年度の研究開発費は2,436百万円で、研究成果のうち主なものは次のとおりです。

① 配電盤部門

エネルギーマネジメントシステム関連製品として、電気自動車の使用済みリユースバッテリーと太陽光リユースパネルを活用した環境配慮型 『産業用太陽光自家消費蓄電池システム サファLink -ONE-』を開発し、発売を開始しました。リユース品を活用することでCО2排出量やレアメタルの使用量を削減し、持続可能なエネルギー供給の新たな方向性を示す取り組みが評価されグッドデザイン賞を受賞した他、公共施設に採用されるなど脱炭素社会、循環型社会の実現への貢献を進めています。

また、同製品を活用して、株式会社Shizen Connectと、今後普及が進む需給調整市場への入札を想定したVPP運用の実証を行いました。自家消費ニーズに加えマイクログリッド市場への対応など、新しい制御技術を採用することにより電力の安定化に貢献していきます。

配電盤は、『プチセーバ』、『アイセーバ』のモデルチェンジにより銅材の削減を実現しており、製品の省資源化を通じても脱炭素社会に向けて貢献しています。また、多様化する要求に合せたユニットの追加を行い、製品自体の小型化や配線作業の効率化を実現しました。

住宅用分電盤は、需要が拡大する家庭用蓄電システム向けの『電源切替機能付ホーム分電盤』のモデルチェンジを行いました。また、蓄電システムが普及しにくいマンションやアパート向けに、ポータブル電源による蓄電を活用する『受電インレット付き手動切替盤』を開発しました。蓄電システム関連製品の充実化により再生可能エネルギーの活用によるカーボンニュートラルの実現や災害時における停電対策に貢献します。

光接続箱関連製品は、現地での省施工に寄与するプレ配線タイプの強化を進めています。マルチモード光ファイバコードを高性能なОМ4へ仕様を変更するなどしており、これにより高速通信のインフラ構築に貢献します。

 

 

② キャビネット部門

ワークスタイルの変革に伴うテレワークやWeb会議の増加を背景に需要が増加しているプライベートボックスについて、従来品より省スペースな2人用の『コンパクトタイプ』を機種追加しました。また、工場や倉庫向けにクーラ付の対応を開始するなどお客様の様々なニーズに応え、快適なプライベート空間を実現します。

キャビネットは、制御盤キャビネットのスマートオーダーシステムのカスタマイズメニューを大幅に拡大しました。また、新たに大型自立キャビネットを対象としたスマートオーダー生産システムを瀬戸工場で構築をし、Webでのカスタマイズ受注を開始しました。ユーザーの加工業務負担を軽減することで、深刻化する人手不足の解消、働き方改革の実現に貢献します。

システムラックは、市場が拡大しているデータセンター向けにサーバを高密度に実装可能な『サーバラック・FDシリーズ』のバリエーションやオプションを強化しました。ハイレベルな機器収容性、配線作業性、堅牢性、熱対策により、大規模なサーバ設置環境の「最適化」に貢献します。

 

③ 遮断器・開閉器・パーツ・その他部門

電気自動車などの普通充電を安全に実施するための電源回路に使用する『EV・PHEV用協約形漏電ブレーカ』を開発しました。本商品は充電回路を遮断する漏電保護機能において従来の漏電現象のみでなく、微小の直流成分を含んだ交流など様々な漏電電流の検知が行える商品となり、より安全な漏電保護を実現します。

また、協約形プラグイン電灯・動力分電盤に搭載する『プラグインスリムブレーカ』のモデルチェンジを行いました。定格電流20A以下の機種のみであった工具レスにて簡単に電線接続が行える二次側速結端子を、すべての定格電流で採用することで、施工時間の短縮や人手不足など社会課題の解決に貢献します。

EV普通充電器は、主力機の『Pit-2Gシリーズ』がJARI認証を取得し、国の補助金対象設備として承認を受けました。通信モデルは、4G通信を使った遠隔制御によるエネルギーマネジメントや課金決済など様々な運用が可能で、複数のEV充電サービス事業者とのサービス連携を実現しています。

これら連携はクラウドサーバー間の接続により実現しており、当社オリジナルのAPIのほか、世界標準プロトコルOCPPにも対応しています。充電器というハードウェア以外にもICT領域も含めた統合的な充電インフラソリューションを提供することで、急速に進むEV化及び脱炭素社会の実現に貢献します。

その他、電気火災の主な原因となる火花放電を検出し、電気火災の未然防止に貢献する放電検出ユニット『スパーテクト』の普及拡大のため性能改善や機能向上を図るとともに、三相3線タイプや電気工事が不要で誰にでも簡単に設置可能なコンセントタイプの機種追加などシリーズ強化をしました。

また、『スパーテクト』は、重要文化財への採用に加えて、畜産関係でも実証実験が行なわれるなど様々な分野において、社会の安全な暮らしのサポートを進めています。

熱関連製品は、通信基地局向け熱交換器や省エネタイプの換気扇などの開発を行いました。環境にやさしい製品開発により持続可能な社会に貢献します。

 

④ 研究体制

当社製品は、情報化社会の発展に伴い、屋外に設置される監視カメラや携帯基地局などの情報通信インフラの重要度が増す中、暴風雨、台風、地震などの過酷な自然環境にも耐える性能が要求されています。当社は、業界に先駆け暴風雨を模擬できる「風雨試験設備」及び実際の地震の揺れを再現可能な「3軸耐震試験設備」を導入し、新たな市場開拓や顧客要求を満足する製品の研究開発を行っています。加えて当社は、一般財団法人建材試験センターと国立研究開発法人防災科学技術研究所の協力のもと、従来のキャビネットに対するIP性能(防塵・防水性能)とは異なり、実際の自然環境を模擬・評価できる風雨性能評価基準を制定しました。風雨性能評価基準に基づき風雨等級(WPコード)を性能表示した製品『耐風雨キャビネット タフテクト』が、各種インフラ関連機器を収納するキャビネットとして、沿岸部や高所などの環境で採用されています。

また、今後成長が見込まれる分野に向け大学や研究機関、企業との共同研究・開発や技術連携を進めています。次世代技術を構築するため、データセンター関連では熱対策技術、屋外用設備については騒音対策や屋外設置環境技術、省エネルギー及び安全性に関する研究や防災関連では放電検出技術、また、環境配慮材料や新技術・新工法の研究、筐体強度や熱対策などの解析・分析技術の構築を行っています。 

 

 

(2) 電子部品関連 製造事業

当連結会計年度の研究開発活動については、自動車の電動化、自動運転及び各種機器の省エネ化に付随する電磁波障害問題や熱問題を中心として、振動衝撃問題や音問題などの対策製品開発にも取り組んできました。また薄膜技術を応用したセンサー部品や産学連携によるSDGsへ貢献するオリジナル材料やその応用製品の研究開発にも取り組みました。

当セグメントにおける当連結会計年度の研究開発費は623百万円で、研究成果のうち主なものは次のとおりです。

 

① 電磁波環境コンポーネント部品

CО2削減に向けて自動車の電動化が急激に加速する中で、EV・PHEV等の環境自動車(もしくは「新エネルギー自動車」)向けノイズフィルターの高性能化(広周波数帯域対応、高耐久性、低背化対応等)や小型化への取り組みを強化しました。

また基板上でのグランド強化部材として高周波対応品や省スペース対応品の開発に着手しました。

 

② 精密エンジニアリングコンポーネント部品

多機能化の要求に対応すべく、グランド・アース機能を付与した樹脂部品やアプライアンス市場に向けたスペーサー部品の開発に注力しました。

 

③ 熱対策部品

電動自動車に搭載される二次電池の温度管理向けの熱対策製品の需要が拡大しており、顧客仕様にマッチした製品開発及び新規材料の開発を強化しました。また5G技術の普及を迎えた通信・電子機器市場ではSoCやDDRの高密度実装に対応する自動実装・ディスペンスが可能な液だれしない高熱伝導仕様の液状放熱材料の開発及び熱拡散・断熱機能を付与する新規素材開発にも着手しました。

 

④ 振動・衝撃・音対策部品

ファン等の音対策部材で省人化に貢献する樹脂部品の要素研究及び開発に着手しました。

 

⑤ 薄膜技術応用開発製品

パワー半導体の進化に伴い発生したノイズを抑制するシールドフィルムの要素技術及び製品の開発も進めました。さらに社会インフラ分野を想定する環境検知センサーモジュールの開発や検知結果を解析するプログラムの研究やIoTデバイスへの発展について要素技術の研究を進めました。

 

⑥ 環境対応素材

カーボンニュートラルへ貢献するオリジナルの難燃性仕様のバイオマス材料の開発及びウオーターポジティブに貢献する造水モジュール向けの機能性部材について産学連携を活用して開発を推進し、社会実装での検証を進めました。共創の理念に基づき企業間連携を模索しながら、コア技術の蓄積や新技術の獲得と新規事業の創出を目指します。