文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) 会社の経営の基本方針
当社は、経営理念を以下のとおり定め、お客様にご満足いただける新たな価値を提供していきます。
① お客様にご満足いただける新たな価値を創造し続けます。
日東工業グループは、お客様にとっての価値を理解し、満足いただける製品やサービスを提供していきます。
われわれは価値創造を継続的に行うことにより、お客様との信頼関係を築き、強化していくことを大切にします。
② 人間尊重の精神に基づいた企業活動を進めます。
従業員一人ひとりの個性を尊重し、能力を生かし、育てることにより、新しい価値を創造する組織への更なる進化を図ります。
公正公平な人事評価と適材適所の人材配置により、従業員が職務を通じて自己実現を果せる会社であることを誓います。
③ 高い倫理観、道徳観に根ざしたコンプライアンス経営を実践します。
日東工業グループは、社会規範に則った公明正大な経営を常に行います。
誠実な行動と日々のたゆまぬ努力の積み重ねによって、安全・安心な、より高い品質の製品・サービスを提供します。
④ 美しい地球を次世代へつなぐことに貢献します。
電気と情報を主な事業領域とする日東工業グループは、企業市民として環境保護に努めていきます。
また同時に、再生可能エネルギーの活用を促進する技術等を通じ、持続可能性を高めることに貢献する価値を創造します。
⑤ 株主価値を高める経営を常に行います。
過去の成功を守ることや目先の利益を追うことを優先し、未来への投資を後回しにするようなことはしません。
株主価値を最大化する中長期的な成長と持続的な利益の創出を経営目標として、変わらず良い会社であり続けるために改善・改革を日々積み重ねます。
(2) 当社グループの経営環境
① 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標
<経営指標推移>
「2026中期経営計画」の初年度である当連結会計年度は、企業の強い設備投資のほか、価格改定などの利益率改善に向けた様々な施策効果もあり、連結売上高1,846億円、連結営業利益134億円となりました。また、営業利益の増加や子会社株式の取得に伴う特別利益の計上により、ROEは10.8%となりました。
② 中長期的な会社の経営戦略および対処すべき課題
当社グループは長期経営構想のもと「2026中期経営計画」を推進し、社会課題を解決することで社会的価値と経済的価値の両立により企業価値の向上に取り組んでいます。
<長期成長ストーリー>

<2026中期経営計画>
基本方針

「2026中期経営計画」の取り組みは以下のとおりです。
(イ) 電気・情報インフラ関連 製造・工事・サービス事業
(a) コア事業の基盤強化
配電盤、キャビネット、情報通信関連事業といったコア事業は、強い事業として盤石な基盤を構築するとともに、先進技術を活用し収益性を高めることを目指します。
2024年度は、瀬戸工場の稼働開始により「スマートオーダー」システムを活用した自立キャビネットの受注が拡大しました。また、新たにグループ化したテンパール工業㈱との協業開始により、「設計・開発・生産」における協力体制の構築を通じて、強固なビジネスモデルへの変革を目指していきます。
今後も、生産自動化やスマートファクトリーなど生産効率化の進展による収益性の強化、販売システムの更なる進化と市場浸透促進、グループ会社間の連携強化による事業体制の拡大および強靭化を図ります。
(b) 戦略事業の推進
グローバル化、事業・技術領域の拡大を推進する戦略事業は、成長が期待できる市場への積極参入により規模を拡大し、将来の事業の柱を築くことを目指します。
2024年度は、グローバル化の推進において、インドやインドネシアなど海外展示会への出展や販売先との関係性構築を進めました。事業・技術領域の拡大においては、制御盤業界の変革を目指すパートナー会「制御盤DXアライアンス」を設立し、製造業全体に関わる新たな価値創造に貢献する取り組みを進めていきます。また、陸上養殖実証実験への参画を通じ、陸上養殖における効率的なエネルギーマネジメントの課題解決に貢献していきます。
今後も、海外拠点の経営基盤およびマーケティング機能の強化、環境関連製品事業の基盤構築、社会課題を見据えた新たなビジネスの創出を図ります。
(ロ) 電気・情報インフラ関連 流通事業
電気・情報インフラ関連 流通事業では、ソリューション事業の強化およびサプライチェーンマネジメントの進化により市場およびサービスの領域を広げることで、事業規模の拡大を目指します。
2024年度は、顧客別のソリューション提案の体制を準備し提案活動を開始しました。また、サプライチェーンの進化に向けたデータベースの整備を実施しました。
今後も、ソリューション事業の強化では、提案商材・ターゲット商材の拡充、ビジネス領域の拡張、海外販売拠点でのソリューションビジネス拡大を進めます。また、サプライチェーンマネジメントの進化では、取引先との販売プロセスのデジタル化推進、仕入先との連携強化を図ります。
(ハ) 電子部品関連 製造事業
電子部品関連 製造事業では、海外ビジネスの拡大およびソリューションの強化により、グローバルに稼ぐ力を高め、まずは規模の拡大を目指し、長期的に収益性を高めることを目指します。
2024年度は、積極的に海外顧客でのセミナー開催を行いました。また、国内自動車関連向けのソリューション強化により受注が拡大しました。
今後も、海外ビジネス拡大に向けては、日系メーカー海外現地法人との関係深化、非日系メーカーの開拓、EMC対策支援体制の構築を図ります。また、ソリューションの強化に向けては、高度化が進む電動・電子化に向けたコア技術の深耕、成長市場への部材供給範囲の拡大、コア技術を活かした新機能部材の開発を図ります。
(ニ) グループ経営基盤
事業成長を支えるグループ経営基盤の強化における主な施策は以下のとおりです。
(a) 人的資本
次代を見据え人的資本の極大化を図っていくことで、グループの持続的・永続的発展につなげます。
自立的なキャリア形成の支援やグループ会社間の人財交流を進め、キータレントの育成・獲得を行うことで経営人財・技術人財・グローバル人財・DX人財などの人財育成に取り組んでいます。また、人財の多様化、エンゲージメント向上の取り組みを通じて、グループ社員として誇りと働きがいを感じながら働き続けられる組織風土作りにも取り組んでいます。
(b) DX
デジタル技術を最大限活用できるようになることで、ビジネスプロセスの変革やイノベーションの推進へとつなげます。
データドリブン経営に向け、データ活用基盤の構築や効率的かつセキュアなグループICTインフラ基盤の構築を行いました。今後も、柔軟性と拡張性を備えた安全安心なICTインフラ構築を目指し、当社グループのICTインフラ基盤を盤石なものとします。また、DXの教育体制を通じてDX人財の確保と育成、デジタル技術の利活用を促進していきます。
(c) 研究開発
未来社会を想見しグループの技術価値を高めることで、持続可能な社会の実現に対する貢献度を高めます。
必要とされる技術的知見やノウハウの取得をリスキリングによって内部創出するとともに、外部の企業・団体・大学と技術・知識の融合を積極的に図りました。また、海外事業における知的財産権の確保、当社グループ内での知的資本活用を最大化するなど知的財産戦略を打ち立て遂行しました。
「カーボンニュートラルの実現」「社会インフラの進化」「自動化・省人化の進展」をテーマに、新たな技術の獲得と研究開発基盤の強化を重点施策に掲げ、グループ全体の付加価値創出力の向上を目指します。
当社グループはこうした施策により、地球の未来に「信頼と安心」を届ける企業グループとして、より多くのお客様のニーズにお応えし、企業価値の向上に努めていきます。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) ガバナンス
当社グループでは、持続可能な社会の実現に向けた取り組みをさらに推進するために取締役社長を委員長とした「サステナビリティ委員会」のもと、既設の内部統制委員会や環境保全委員会等と連携をとりつつ、リスクと機会のモニタリングをおこない、また、環境課題に対して戦略を策定し取り組みを進めていきます。
取締役会は気候変動に関する取り組み状況や今後の戦略について、同委員会より報告を受けるとともに、その進捗に対する監督を行い、対応を指示していきます。

当社グループは、内部統制委員会とサステナビリティ委員会が連携し、事業の持続的発展を確保するために気候変動に関するリスクの特定、分析、評価を行っています。
特定したリスクは各部門にて必要な対策を講じ、リスクの低減を図っています。
取締役会は重大なリスクについて、内部統制委員会またはサステナビリティ委員会より報告を受けるとともに対応を指示し、その進捗に対する監督を行っていきます。なお、主なリスクの内容は次の通りです。
① 気候変動
地球環境に対する問題意識の高まりは、事業活動におけるエネルギー使用の合理化、環境負荷物質の規制強化による製品対応のみならず、当社グループの環境問題、特に気候変動リスクへの取り組み姿勢の評価などは当社グループの財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があると認識しています。
② 人的資本・多様性 (注)
当社を取り巻く事業環境などから、特に女性総合職、外国籍総合職の割合が少ない現状であり、多様性の確保という観点から課題の一つであると認識しています。
③ 人権の尊重
当社グループでは人権に配慮した企業活動は社会や企業が持続可能であるための重要事項であると認識しています。
① 気候変動
TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosure / 気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言を踏まえ、気候変動シナリオ分析に着手し、気候変動が事業に影響するリスクや機会を認識しています。
2030年と2050年を見据え、気候変動のシナリオはIPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)やIEA(国際エネルギー機関)等の将来予測を参考に、4℃シナリオおよび1.5℃シナリオの2つを用いて定性的・定量的に事業インパクトを評価・分析しました。
想定される将来の世界観を基に、いずれのシナリオにおいても気候変動リスクに柔軟かつ戦略的に対応し、事業活動のレジリエンスを高めていきます。
4℃シナリオ(SSP5-8.5:化石燃料に依存し続けた場合)
・異常気象の激甚化により防災・減災製品、熱対策製品、高性能タイプ製品の需要が高まります。
・化石燃料が入手困難になり購入品の価格高騰で仕入れ価格が増加します。

1.5℃シナリオ(SSP1-1.9:気温上昇を1.5℃に抑えた場合)
・再生可能エネルギー推進や消費者の行動変化により、環境配慮製品、エネルギーマネジメント関連製品、EV関連製品の需要が高まる。その反面、環境配慮技術の開発が必要になり、研究開発コストが増加します。
・炭素価格の上昇により、排出権購入など操業コストが増加し、再生可能エネルギー推進の影響で電力コストが上昇します。

② 人的資本・多様性 (注)
当社は、人財基本方針として「社員の個性を尊重し育てることにより、新たな価値を創造し、持続可能な社会に貢献する。」を掲げており、社内人財属性の多様性の確保は中長期的な企業価値向上に向けて重要な戦略の一つであると認識しています。
また、当社は、社員一人ひとりの健康保持増進を経営の重要課題の一つであると捉え、「健康宣言」を制定するとともに、社員が将来にわたり健康でいきいきと働けるよう、様々な活動に取り組んでいます。
2025年3月10日には、経済産業省と日本健康会議が選定する「健康経営優良法人制度」において「健康経営優良法人2025」(大規模法人部門)に認定されました。
③ 人権の尊重
「日東工業グループ人権方針」は、国際的に認められている国際連合の「国際人権章典」と「ビジネスと人権に関する指導原則」およびILO(国際労働機関)の「労働における基本的原則及び権利に関する宣言」に基づき定めています。また、当社グループの人権尊重への取り組みを規定する既存の文書の上位文書として位置付けています。今後は「日東工業グループ人権方針」を実践するため、人権デュー・ディリジェンスのプロセスに基づいた取り組みを進め、サプライチェーン上を含めた事業における人権侵害リスクを特定し、その防止、軽減を図り、取り組みの実効性を評価していきます。
(4) 指標及び目標
① 気候変動
GHG排出量削減目標 (単位:t-CO2)
当期実績の対象範囲は次のとおりです。
② 人的資本・多様性 (注)
総合職全体における各属性の構成比 (単位:%)
総合職の各属性における管理職比率 (単位:%)
その他の当事業年度の社員の状況
男性労働者の育児休業取得率、労働者の男女の賃金の差異についての実績は「
(注) 人的資本・多様性に関わるリスクの内容及び戦略並びに指標及び目標について、現時点では日東工業株式会社単体について記載していますが、今後はグループ全体としての記載も検討していきます。
当社グループは、「内部統制委員会」を設置し、取締役社長の下にリスク管理体制を構築しています。平時においては、各委員会および各本部において「経営リスク管理規程」に従いリスクの軽減等に取り組むとともに、有事においては「緊急時対応要領」に基づき対応する体制を整備し、リスク管理体制の推進を図っています。また主要な各グループ会社からもリスク管理活動に係る報告を受けています。
当社グループの財政状態および経営成績等に影響を及ぼす可能性のある主なリスクは以下のようなものがあります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末(2025年3月31日)時点において当社グループが判断したものです。当社グループは、これらのリスクを認識したうえで、発生の回避および発生したときの対応に万全を尽くす所存です。
(1) 事業活動に係るリスク
① 事業環境について
当社グループの製品需要は、国内の民間非居住建築物棟数や機械受注に関連するものが多く最終的には国内の景気動向の影響を大きく受けます。情報通信分野および電子部品分野の製品においても技術革新が早く保有する在庫の陳腐化や案件の失注等のリスクがあります。また、米国による追加関税措置に起因する間接的な事業環境等の悪化についても当社グループの財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの事業環境では、当該リスクが顕在化する可能性は常にあると認識していますが、コア事業の競争力をより一層高めるとともに、事業領域の拡大、東南アジア地域を中心とした海外事業基盤の確立や新規ビジネスの確立などの諸施策を推し進めています。
② 品質について
当社グループが提供している製品は、厳重な品質管理体制のもと製造・出荷されています。不具合等が発生した場合には迅速な対応を行う管理体制を構築していますが、消費生活用製品安全法および製造物責任法に関連した問題が発生した場合には、社会的評価、企業イメージ低下のリスクがあり、当社グループの財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループが提供している製品は多品種であり個別仕様に基づくものも多くあるなど、当該リスクを完全に排除することは困難であると認識していますが、設計品質の向上、生産工程の改善、検査体制の拡充や品質教育の充実など品質保証体制の強化を着実に進めています。
③ 情報システム、情報セキュリティについて
当社グループは、販売や生産等の事業活動において情報システムに依存しており、また顧客、仕入先、従業員等に関する機密情報や個人情報を扱うことがあります。不測の事態により情報システムの長期間停止、機密情報や個人情報の流出などが発生した場合、当社グループの財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
高度化するサイバー攻撃などにより当該リスクを完全に排除することは困難であると認識していますが、情報システムに対する外部攻撃対策、コンピュータウイルス対策、セキュリティ遵守に関する従業員教育等の実施により当該リスクの低減に努めるとともに、積極的に新しい情報システムの活用を継続しています。
④ 労働環境について
当社グループの事業活動は、多くの役職員が携わることにより成立しています。人員の継続的な不足、労働環境等の悪化による労災事故、労務コンプライアンス問題などが発生した場合にそれらにともなう役職員のモラル低下などは当社グループの財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
労働に対する価値観の多様化が進むなか、当該リスクが常に存在するものであることを認識していますが、グループとして「働きがい改革」を掲げ、安全対策、労働時間管理、相談窓口設置やモチベーション向上施策の実施などにより、健康的でやりがいのある職場環境を実現することで当該リスクの低減に努めています。
⑤ 原材料等の調達について
当社グループは鋼材、ステンレス材、樹脂材、伸銅材などの原材料ならびに購入機器等を使用した製品の製造や情報通信機器等の仕入、販売をしています。サプライチェーンにおいて国際的な政治・経済情勢や商品市況の動向により調達価格の高騰や供給がひっ迫した場合や、環境や人権に係る問題が発生した場合、当社グループの財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
供給のひっ迫に関するリスクは緩和されつつあるものの、引き続き部材の調達難や原材料の価格高騰は当社グループのサプライチェーンの一部に影響を及ぼしています。供給が市況等に左右される原材料等を多く使用しているため当該リスクを完全に排除することは困難であると認識していますが、海外調達を含めた購買先の分散、機動的な在庫確保や使用部材の仕様変更などの施策を進めるとともに、共同購買などグループでの購買力を高めることで当該リスクの低減に努めています。
また、環境に配慮した調達の推進や「日東工業グループ人権方針」の制定などにより持続可能なサプライチェーンの強化に努めています。なお、運送物流についても引き続き配送時間や運送コストの増加が予想されており、配送の効率化などを進めて当該リスクの低減に努めています。
(2) 経営戦略や中長期に顕在化する可能性のあるリスク
① 人財確保、人財育成について
当社グループの持続的な成長には、優秀な人財の確保や育成促進が前提となります。積極的な採用活動、外部専門知識の活用や社内教育制度の充実などを進めていますが、事業展開に必要な人財の確保が困難となった場合、当社グループの財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
引き続き採用手法の多様化、柔軟な人事制度、多様な人財の登用や教育制度の充実をはかるとともに、給与水準の引上げなどにより、持続的な成長に必要な人財の確保に努めていきます。
② デジタル技術の進化について
デジタル革命の流れは、経営スピード、顧客との関係性や競争力などへ、より一層の影響を及ぼすものと予想されます。これらに起因して現在の競争優位の維持が困難となった場合、当社グループの財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
引き続きデジタル技術の活用を推進し、優位性のある販売システムやコスト競争力を高めることなどにより事業の競争優位性の維持に努めるとともに、ICTインフラ基盤の構築を通じてグループ経営基盤の強化を進めていきます。
③ 事業ポートフォリオについて
当社グループは主に配・分電盤ならびにコンポーネンツの製造、販売等を行う電気・情報インフラ関連 製造・工事・サービス事業をコア事業として、ネットワーク商材を扱う電気・情報インフラ関連 流通事業、電磁波環境コンポーネンツ等の製造、販売を行う電子部品関連 製造事業により構成されています。当社グループの業績はコア事業を主に担う日東工業株式会社の業績に連動性が高く、コア事業の低迷は当社グループの財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
引き続きコア事業の一層の強化、適切なリソース配分を通じた各セグメント事業の成長、グローバル化の推進に加えて、EVインフラ、エネルギーマネジメントなど環境に関連した事業領域の拡大、新規ビジネスへのチャレンジなどを通じてグループとしての成長に努めていきます。
④ 海外事業展開について
当社グループは海外でも事業を展開しており、当社グループの成長の重要なキーとなっていますが、事業の低迷、国際的な政治・経済動向あるいは戦争、テロ、大規模自然災害等により当社グループの財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
引き続き成長を続ける海外市場において強固な事業体制を構築し、東南アジア地域を中心としたビジネス展開に注力するとともに、グループガバナンス体制の強化を図ることによりグループとしての成長に努めていきます。
⑤ 知的財産について
当社グループは多くの知的財産権を保有し、権利保護のため適切に維持、管理しています。また、第三者の知的財産権についても侵害することのないよう適時適切に調査検討をしています。しかし、第三者との間で、無効、模倣、侵害等の知的財産権の問題が生じた場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
海外市場展開においては知的財産権の管理、とりわけ第三者の知的財産権への侵害等を回避することは事業活動に不可欠なものと認識しており、特許公報、海外規格の調査などを強化することにより当該リスクの低減に努めていきます。
⑥ 環境問題について
地球環境に対する問題意識の高まりは、事業活動におけるエネルギー使用の合理化、環境負荷物質の規制強化による製品対応のみならず、当社グループの環境問題、特に気候変動リスクの取り組み姿勢への評価などは当社グループの財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、「サステナビリティ委員会」のもと、その他の専門委員会等と連携をとり気候変動に関するリスクと機会のモニタリングを行うとともに、課題に対して戦略を策定し取り組みを進めます。また、グループとしてのGHG排出量削減目標を設定し、持続可能な社会の実現と企業価値向上に向けて、サプライチェーン排出量削減の取り組みを推進します。
引き続き製造工程における廃棄物の抑制、エネルギー使用の合理化、地球環境に配慮した製品開発、グリーンエネルギーへの切り替え、サプライチェーンや配送を含めたグループの事業活動全般にわたる環境課題に対する取り組みなどを強化することにより当該リスクの低減に努めていきます。
(3) その他
大規模災害等について
当社グループの主要事業所の多くは、今後発生が予想される南海トラフ地震による被災の可能性が高い地域にあります。こうした大規模自然災害等が発生した場合、工場建屋や生産設備の被災、サプライチェーンの復旧遅れ、電力供給不足等により、生産能力および物流機能等に大きな影響が生じ、当社グループの財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
近い将来、南海トラフ地震による被災の確率は高いと認識しています。当社グループでは人命を最優先に、大規模災害時の生産および販売への影響を最小限に抑えるため、防災訓練、安否確認訓練、各種耐震対策、データ管理の二重化等、事業継続計画の整備を積極的に進めています。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。
当連結会計年度におけるわが国経済は、一部に足踏みが残るものの、各種政策効果もあり景気は緩やかに回復しました。一方、物価上昇の継続が消費者マインドの下振れ等を通じて個人消費に及ぼす影響や、通商政策などアメリカの政策動向による影響のほか、金融資本市場の変動等の影響に引き続き注視が必要な状況にあります。
当業界におきましては、設備投資や機械受注には持ち直しの動きがみられる一方、新設住宅着工戸数はおおむね横ばいとなるとともに、民間非居住建築物棟数は弱含んでいます。また、原材料価格は高止まりを続け、工事現場の人手不足が深刻化するなど、依然として先行きに懸念が残る事業環境となりました。
このような情勢下にあって当社グループは、当期よりスタートした「2026中期経営計画」に基づき、事業拡大への挑戦、積極的な成長投資、盤石な事業・経営基盤の構築を推し進めるべく、各種施策に取り組みました。
当連結会計年度においては、新たにグループ化した子会社の連結効果や価格改定の効果、案件価格の改善効果により、電気・情報インフラ関連 製造・工事・サービス事業の売上が増加したほか、企業におけるIT投資意欲の高まりを背景に電気・情報インフラ関連 流通事業の売上が増加しました。一方、産業機器市場等の需要減少がみられたことから、電子部品関連 製造事業の売上は減少しました。
以上の結果、売上高は184,683百万円と前期比14.9%の増収、営業利益は13,432百万円と同12.2%の増益、経常利益は13,516百万円と同7.6%の増益となりました。また、子会社株式の取得に伴う特別利益を計上したことから、親会社株主に帰属する当期純利益は12,097百万円と同38.8%の増益となりました。
セグメント別の経営成績は次のとおりです。
(電気・情報インフラ関連 製造・工事・サービス事業)
(イ) 配電盤部門
配電盤部門につきましては、子会社化したテンパール工業㈱の連結効果により売上が増加したほか、案件価格の改善効果による高圧受電設備の売上が増加した結果、売上高は68,681百万円と同22.1%の増収となりました。
(ロ) キャビネット部門
キャビネット部門につきましては、価格改定効果のほか、WEBを活用した設計・受注システムの利用拡大により穴加工キャビネットの売上が増加した結果、売上高は23,340百万円と同6.7%の増収となりました。
(ハ) 遮断器・開閉器・パーツ・その他部門
遮断器・開閉器・パーツ・その他部門につきましては、子会社化したテンパール工業㈱の連結効果により売上が増加したほか、需要の高まりを受けブレーカーの売上が増加した結果、売上高は16,901百万円と同31.0%の増収となりました。
(ニ) 工事・サービス部門
工事・サービス部門につきましては、高圧受電設備に関連した電気工事や病院におけるネットワーク工事案件の売上が増加したほか、子会社化したEMソリューションズ㈱の連結効果により売上が増加した結果、売上高は5,307百万円と同29.6%の増収となりました。
以上の結果、電気・情報インフラ関連 製造・工事・サービス事業の売上高は114,230百万円と同20.1%の増収、セグメント利益(営業利益)は10,253百万円と同11.8%の増益となりました。
(電気・情報インフラ関連 流通事業)
電気・情報インフラ関連 流通事業につきましては、半導体工場建設関連の案件獲得や企業におけるIT投資意欲の高まりに伴いネットワーク部材の売上が増加した結果、売上高は56,046百万円と同9.9%の増収、セグメント利益(営業利益)は2,089百万円と同9.3%の増益となりました。
(電子部品関連 製造事業)
電子部品関連 製造事業につきましては、エアコン関連市場の需要に持ち直しがみられた一方、海外自動車市場や産業機器市場等の需要減少がみられたことから、売上高は14,406百万円と同1.3%の減収となりました。一方、前期にのれんに係る償却が完了したことなどから、セグメント利益(営業利益)は959百万円と同9.9%の増益となりました。
当期の財政状態の概況は、次のとおりです。
(資産)
流動資産は、前連結会計年度末に比べて17.6%増加し、106,841百万円となりました。これは現金及び預金の増加7,552百万円、売上債権の増加2,784百万円や棚卸資産の増加6,260百万円などによるものです。
固定資産は、前連結会計年度末に比べて8.7%増加し、77,056百万円となりました。これは主に有形固定資産の増加4,934百万円などによるものです。
この結果、総資産は前連結会計年度末に比べて13.7%増加し、183,897百万円となりました。
(負債)
流動負債は、前連結会計年度末に比べて18.2%増加し、39,920百万円となりました。これは主に仕入債務の増加3,468百万円や1年内返済予定の長期借入金の増加2,163百万円などによるものです。
固定負債は、前連結会計年度末に比べて42.6%増加し、27,470百万円となりました。これは主に長期借入金の増加7,789百万円などによるものです。
この結果、負債合計は前連結会計年度末に比べて27.0%増加し、67,390百万円となりました。
(純資産)
純資産合計は、剰余金の配当8,443百万円などによる減少がある一方、親会社株主に帰属する当期純利益の計上12,097百万円やその他の包括利益累計額の増加1,168百万円などにより、前連結会計年度末に比べて7.2%増加し、116,507百万円となりました。
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ7,720百万円増加の33,132百万円となりました。
なお、当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況とそれらの主な要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において、営業活動によるキャッシュ・フローは18,637百万円(前連結会計年度12,321百万円)となりました。これは、税金等調整前当期純利益15,743百万円の計上に対し、法人税等の支払額4,898百万円や負ののれんの発生益2,395百万円などによる資金の減少があった一方で、減価償却費の計上6,512百万円や未払消費税等の増加額2,379百万円などによる資金の増加があったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において、投資活動によるキャッシュ・フローは△12,450百万円(前連結会計年度△14,429百万円)となりました。これは、固定資産の売却による収入487百万円などによる資金の増加があった一方で、固定資産の取得による支出9,117百万円などによる資金の減少があったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において、財務活動によるキャッシュ・フローは974百万円(前連結会計年度6,929百万円)となりました。これは、配当金の支払額8,439百万円などによる資金の減少があった一方で、長期借入れによる収入12,000百万円による資金の増加があったことによるものです。
当社グループは「電気・情報インフラ関連 製造・工事・サービス事業」「電気・情報インフラ関連 流通事業」「電子部品関連 製造事業」の事業活動を展開しています。
当連結会計年度の「生産、受注及び販売の実績」をセグメント別に示すと以下のとおりです。なお、「電気・情報インフラ関連 製造・工事・サービス事業」については部門別の実績を記載していますが、「工事・サービス」部門については、生産実績及び商品仕入実績を定義することが困難であるため記載していません。
当連結会計年度の生産実績をセグメント別に示すと、次のとおりです。
(注) 1 金額は販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっています。
2 上記の金額には、消費税等は含まれていません。
3 当連結会計年度において、生産実績に著しい変動がありました。これは主に、電気・情報インフラ関連製造・工事・サービス事業において、テンパール工業㈱及びその子会社1社が連結子会社になったことによるものです。
当連結会計年度の商品仕入実績をセグメント別に示すと、次のとおりです。
(注) 金額は仕入価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっています。
当社グループは製品の性質上、原則として需要予測による見込生産方式をとっているため、記載を省略しています。
当連結会計年度の販売実績をセグメント別に示すと、次のとおりです。
(注) 1 セグメント間の取引については相殺消去しています。
2 当連結会計年度において、販売実績に著しい変動がありました。これは主に、電気・情報インフラ関連製造・工事・サービス事業において、テンパール工業㈱及びその子会社1社が連結子会社になったことによるものです。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
(イ) 財政状態
当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末に比べて13.7%増加し、183,897百万円となりました。これは、主に当社の銀行借入による資産及び負債の増加のほか、前期比増収に伴う売上債権の増加などによるものです。
(ロ) 経営成績
(売上高)
当連結会計年度においては、新たにグループ化した子会社の連結効果や価格改定の効果、案件価格の改善効果により、電気・情報インフラ関連 製造・工事・サービス事業の売上が増加したほか、企業におけるIT投資意欲の高まりを背景に電気・情報インフラ関連 流通事業の売上が増加しました。一方、産業機器市場等の需要減少がみられたことから、電子部品関連 製造事業の売上は減少しました。
以上の結果、売上高は184,683百万円と前期比14.9%の増収となりました。
セグメント別の売上高及び営業利益は以下のとおりです。
(単位:百万円)
(注) 1 売上高におけるセグメント間の取引については相殺消去しています。
2 営業利益の各セグメントの金額は、セグメント間の内部振替前の数値によっています。
3 セグメント別業績についての分析は「第1 企業の概況 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりです。
(営業利益)
営業利益は13,432百万円と同12.2%の増益となりました。主に、前期比増収及び価格改定効果によるものです。
(経常利益)
経常利益は13,516百万円と同7.6%の増益となりました。主に、減価償却費が増加したことなどにより営業外損益が悪化した一方で、営業利益が増加したことによるものです。
(税金等調整前当期純利益)
税金等調整前当期純利益は15,743百万円と同28.9%の増益となりました。主に、経常利益の増加及び負ののれん発生益2,395百万円によるものです。なお、当社において、建物解体費用引当金繰入額406百万円を特別損失として計上しています。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
親会社株主に帰属する当期純利益は12,097百万円と同38.8%の増益となりました。主に、税金等調整前当期純利益の増加によるものです。1株当たり当期純利益は、前連結会計年度の229円77銭から318円91銭に増加しました。
2025年3月期から2027年3月期の3年間を対象とする「2026中期経営計画」の実績と計画は以下のとおりです。
(単位:億円)
(注) 1 計画については2024年5月15日、実績については2025年5月15日に公表したものです。
2 2025年5月15日に公表したものです。
3 2024年5月15日に公表したものです。
当社グループは長期経営構想を踏まえ2026年度を最終年度とする新たな中期経営計画「2026中期経営計画」を策定し、財務目標を連結売上高2,000億円、連結営業利益150億円、連結ROE9.0%以上としました。前中期経営計画で築き上げた足場[基盤]を使い、事業進化を加速させる3年間とし、コア事業の更なる強靭化ならびに成長事業への果敢な挑戦を通じ、過去最高の売上高・営業利益の達成を目指します。また、成長投資と株主還元の最適バランスを追求し資本効率性を高めることで、ROEの持続的向上を実現させていきます。
2026中期経営計画の中間年度となる2026年3月期の計画につきましては、人材獲得競争の激化や、物流費用および各種部材コスト等の増加を見込んでいますが、各事業戦略の推進や価格改定の実施等による業績拡大により、連結売上高192,000百万円(前期比4.0%の増収)、営業利益13,600百万円(同1.2%の増益)、経常利益は13,600百万円(同0.6%の増益)、親会社株主に帰属する当期純利益は9,400百万円(同22.3%の減益)を見込んでいます。
当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローは、営業活動によるキャッシュ・フローが18,637百万円、投資活動によるキャッシュ・フローが△12,450百万円、財務活動によるキャッシュ・フローが974百万円となりました。当連結会計年度末の現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末の25,411百万円から7,720百万円増加し、33,132百万円となりました。
当社グループの資金需要のうち主なものは、部材購入費、人件費及び新製品並びに合理化・省力化用の設備投資にかかるものです。また、市場優位性確保のための研究開発投資についても積極的に行っています。
当社グループの運転資金及び設備資金については、主に自己資金及び銀行借入を充当しています。当連結会計年度においては、生産設備の取得・更新のほか、瀬戸工場関連投資による支出があり、キャッシュ・フロー減少の主な要因となっています。なお、当社は、2025年3月14日付で、事業資金の調達を目的としたシンジケート方式によるタームローン契約を締結し、借入れを実行しています。今後の運転資金、設備資金及び研究開発投資資金については、グループ各社における成長投資、配当原資などの資金需要が見込まれており、必要に応じて最適な資金調達方法を検討しています。
また、世界情勢を取り巻く貿易摩擦リスクや円安の進行などの影響による物価高や金利の上昇、人材獲得競争の激化や、物流費用および各種部材コスト等の増加が見込まれるため、想定以上に事態が悪化した場合に備え、グループ資金の効率化の推進や新たな資金調達方法の検討など、資金の流動性を確保するための取り組みを進めています。
当連結会計年度における借入金残高は28,075百万円となっていますが、本借入金額は当社グループの資産額を鑑みるに十分返済可能な額であると考えています。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しています。この連結財務諸表の作成にあたり、棚卸資産、有価証券、有形・無形固定資産、各引当金等の計上に関しては、一般に公正妥当と認められている会計基準に準拠した当社グループ会計方針及び見積り基準に基づき計上しています。上記の会計上の見積りは、期末日現在の資産・負債の金額、偶発的な資産・負債の開示及び報告対象期間の収益・費用の金額に影響を与える様々な見積りや仮定を用いており、実際の結果は、これらの見積りと異なる場合があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しています。
該当事項はありません。
当社グループは、「電気・情報インフラ関連 製造・工事・サービス事業」及び「電子部品関連 製造事業」において、コア事業である配・分電盤ならびにその部材の強化や海外事業拡大及び新規事業創出に向け各分野の商品を研究開発し、世の中に信頼される課題解決企業集団となることを目指し幅広く市場に展開しています。
当連結会計年度の研究開発費は
(1) 電気・情報インフラ関連 製造・工事・サービス事業
当連結会計年度の研究開発活動については、環境意識の高まりや社会・経済構造の変化などにより、これら社会課題の重要性が高まりをみせる中、当社は、『地球の未来に「信頼と安心」を届ける新たな製品・技術・サービスの確立』を掲げ、お客様にご満足いただけるような研究開発に挑戦してきました。
当セグメントにおける当連結会計年度の研究開発費は
エネルギーマネジメントシステム関連製品として、電気自動車の使用済みバッテリーをリユース活用した『産業用太陽光自家消費蓄電池システム サファLink -ONE-』を自治体の公共施設等への導入を進めるとともに、同製品と連携するEV用中速充電器の開発を進めています。
今後、再生可能エネルギーの効率的活用につながるエネルギーマネジメント製品の開発に注力し、脱炭素社会、循環型社会の実現を目指します。
配電盤は、再生可能エネルギーの主力である太陽光発電システムの高電圧・高容量化に対し、ダイオード方式を採用することで従来製品からメンテナンス性が向上し、電気工事業界の人手不足解消に貢献する業界初の『太陽光発電システム用DC1500V接続箱』を開発しました。
住宅用分電盤は、普及が拡大する電気自動車用6kW充電設備に対応した『EV6kW対応ホーム分電盤』を開発しました。一般住宅における充電容量の増加要求に応え、利便性の向上に寄与することで、電気自動車の普及拡大に貢献します。また、同製品は太陽光発電システム用ブレーカを標準搭載しており、再生可能エネルギーによる充電が可能となり、脱炭素社会の実現に貢献します。
光接続箱関連製品は、最大2000心の高密度・大容量実装を実現した『自立型光接続箱 前面パッチ式・プレ配線モジュールタイプ』を開発し、今後、成長が期待されるデータセンターなどの高速光通信インフラ構築を支えます。
テレワークやWEB会議の増加を背景に、少人数でのミーティングを可能にする『プライベートボックスの4人用』を開発し、快適なプライベート空間を提供します。
キャビネットは、瀬戸工場の稼働開始に伴い、大型自立キャビネットのWEB設計カスタマイズサービス『キャビスタ・スマートオーダー』を提供開始するとともに、カスタマイズメニューを大幅に拡大しました。ユーザーの加工業務負担を軽減することで、深刻化する人手不足の解消、働き方改革の実現に貢献します。
樹脂製キャビネットは、IoTの構築に最適な防水・防塵性能に優れ、バイオマス樹脂材料を採用した小型の『PXF形プラボックス』を開発し、環境負荷の低減に貢献します。
システムラックは、生成AIの普及に伴い市場が拡大しているデータセンター向けに搭載機器による製品内部の高発熱化に対応可能な『液冷サーバ用ラック』や『水冷リアドア空調機付ラック』などを開発し、データセンターの空調効率改善や省エネルギー化に貢献します。また、エッジコンピューティングに最適な『クーラー実装型ラック』をラインナップに追加し、大規模から小規模まで様々なシステム構築において「最適化」を実現します。
遮断器製品は、電灯・動力分電盤および住宅用分電盤に搭載する『協約形ブレーカ』をモデルチェンジし、市場要求の高かった遮断容量の向上を実現するとともに、カドミウムを撤廃するなど、環境に配慮した持続可能性の高い製品を提供しています。
EV用普通充電器は、主力機の『Pit-2Gシリーズ』がJARI(一般財団法人日本自動車研究所)認証を取得しました。同機関での基準適合により、安全・安心な自動車社会の実現に取り組んでいます。
同通信モデルは、4G通信を使った遠隔制御によるエネルギーマネジメントや課金決済など様々な運用が可能で、複数のEV充電サービス事業者とのサービス連携を実現し、ハードウェア以外にもICT領域も含めた統合的な充電インフラソリューションを提供することで、急速に進むEV化及び脱炭素社会の実現に貢献します。
また、テンパール工業が当社グループに加わったことで、研究開発分野におけるグループ間連携について検討を開始しました。今後、各社で長年にわたり培ってきた技術を最大限に活用した新たな価値創出のための協議を重ねていきます。製造分野においても、各社のノウハウを結集しQuality(品質)、Cost(コスト)、Delivery(納期)を強化することで、お客様の満足度向上を目指します。
近年、気候変動の影響によるゲリラ豪雨、暴風雨や台風の大型化といった異常気象や大規模地震などが毎年発生しており、インフラ設備の一端を担う当社製品は様々な自然環境にさらされるリスクが高まっています。
当社では、自然環境で起きている現象を試験室で再現・検証することで製品の信頼性を高め、お客様に安心してお使いいただけるよう努めています。暴風雨を模擬できる「風雨試験設備」、実際の地震の揺れを再現可能な「3軸耐震試験設備」、太陽光を模擬可能な「日射試験装置」など、新たな市場開拓や顧客要求を満足する製品の研究開発を行っています。
その中で、当社は一般財団法人建材試験センターと国立研究開発法人防災科学技術研究所の協力のもと、屋外に設置されるキャビネットが豪雨と暴風に同時にさらされた場合の自然環境を模擬・評価できる風雨性能評価基準を制定しました。また、当該評価基準に基づいた風雨等級(WPコード)を性能表示した製品『耐風雨キャビネット タフテクト』が、各種インフラ関連機器を収納するキャビネットとして、沿岸部や高所など屋外環境での採用が広がっています。
今後成長が見込まれる分野に向け、大学や研究機関、企業との共同研究・開発や技術連携を図り、2026中期経営計画「研究開発」で掲げた重点テーマ「カーボンニュートラルの実現」「社会インフラの進化」「自動化・省人化の進展」に対する研究を推し進めています。具体的には、データセンター関連では熱対策・冷却技術、屋外用設備では耐環境技術、安全性に関する研究では異常検知技術や放電検出技術になります。それら以外にも、環境配慮材料や新技術・新工法の研究、地震対策や熱対策などの解析・分析技術といった技術構築に取り組んでいます。
(2) 電子部品関連 製造事業
当連結会計年度の研究開発活動については、自動車の電動化、自動運転及び各種機器の省エネ化に付随する電磁波障害問題や熱問題を中心として、振動衝撃問題や音問題などの製品開発にも取り組んできました。製品開発以外の面では、EMCや熱、振動をはじめとした解析技術や要素開発の向上にも努めました。
また持続可能な社会に貢献する新規事業の創出(薄膜技術応用、オリジナル材料やその応用製品の研究開発)に取り組んできました。
当セグメントにおける当連結会計年度の研究開発費は
① 電磁波環境コンポーネント部品
EV・PHEV等の環境自動車に向けたノイズフィルターの高性能化(広周波数帯域対応、高耐熱化、高耐久化等)や小型化・低背化への開発及び要素技術に取り組みました。
また基板上でのグランド強化部材として省スペース対応品や高周波対応品の開発を推進しました。
② 精密エンジニアリングコンポーネント部品
アプライアンス市場に向けた作業性改善に貢献する各種スペーサー部品の開発やカーボンニュートラルへ貢献するバイオマス製品の開発にも注力しました。
③ 熱対策部品
環境自動車市場(バッテリー、モーター及びインバーター)や通信市場向けの熱対策需要が拡大しており、熱伝導部材の高性能化(高熱伝導化、高耐熱化、厚膜化等)や自動化に貢献する液状材料の要素開発に注力しました。
④ 振動・衝撃・音対策部品
ファン等の音対策部材で省人化に貢献する樹脂部品の開発に注力しました。
⑤ 薄膜技術応用開発製品
パワー半導体の進化に伴うノイズ抑制に適したシールドフィルムの要素開発や調光デバイスに適した透明導電フィルムの開発を進めました。
また社会インフラ分野を想定した環境検知センサーの要素開発も推進しました。
⑥ 環境対応素材
カーボンニュートラルへ貢献するオリジナルの難燃性仕様のバイオマス材料の開発及びウォーターポジティブに貢献する造水モジュール向けの機能性部材について産学連携を活用して開発を推進し、社会実装での検証を進めました。共創の理念に基づき企業間連携を模索しながら、コア技術の蓄積や新技術の獲得と新規事業の創出を目指します。