第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、NECグループが判断したものです。

(1) 会社の経営の基本方針

当社は、2020年4月1日にNECグループ共通の価値観であり行動の原点を示す「NEC Way」を改定しました。

 

「NEC Way」は、企業としてふるまう姿を示した「Purpose(存在意義)」「Principles(行動原則)」と、NECグループの一人ひとりの価値観・ふるまいを示した「Code of Values(行動基準)」「Code of Conduct(行動規範)」で構成されています。

 

「Purpose(存在意義)」はOrchestrating a brighter worldをもとに、豊かな人間社会に貢献する姿を示した宣言です。

 

 

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NECは、安全・安心・公平・効率という

社会価値を創造し、

誰もが人間性を十分に発揮できる

持続可能な社会の実現を目指します。

 

 

「Principles(行動原則)」は、NECグループとしての行動のもととなる原則であり、次の3つの心構えを示しています。

 

 

創業の精神「ベタープロダクツ・ベターサービス」

常にゆるぎないインテグリティと人権の尊重

あくなきイノベーションの追求

 

 

「Code of Values(行動基準)」は、NECグループの一人ひとりが体現すべき日常的な考え方や行動の在り方を示した行動基準です。

 

 

視線は外向き、未来を見通すように

思考はシンプル、戦略を示せるように

心は情熱的、自らやり遂げるように

行動はスピード、チャンスを逃さぬように

組織はオープン、全員が成長できるように

 

 

「Code of Conduct(行動規範)」は、NECグループの一人ひとりに求められるインテグリティ(高い倫理観と誠実さ)についての具体的な指針であり、次の章から構成されています。

 

 

1.基本姿勢

2.人権尊重

3.環境保全

4.誠実な事業活動

5.会社財産・情報の管理

コンプライアンスに関する疑問・懸念相談、報告

 

 

NECグループは、「Purpose」を全うするため、「Principles」に基づき、中期経営計画をはじめとする中長期的な経営戦略を実践し、社会価値の継続的な創出と企業価値の最大化をはかっていきます。

また、NECグループの一人ひとりが、「Code of Values」に基づき、自らの働き方や組織のあり方を常に見直し、改善するとともに、高い倫理観と誠実さをもったよき企業人として「Code of Conduct」を遵守していきます。

お客さまや社会が期待する価値は常に変化し続けていることから、NECグループがこれからも社会から必要とされる存在であり続けるためには、何が価値となるのかを常に考え、新たな価値を創造していく必要があります。NECグループは、情報通信技術とさまざまな知見・アイデアを融合することで、世界の国々や地域の人々と協奏しながら、明るく希望に満ちた暮らしと社会を実現して未来に繋げてまいります。

 

(2) 目標とする経営指標

NECグループは、企業価値の最大化に向けて、Purpose・戦略・文化の一体的な取り組みを経営方針として掲げています。Purposeの具現化に向けて、戦略ではEBITDA成長率を、文化ではエンゲージメントスコアを、特に中核指標と位置づけています。加えて、売上収益、調整後営業利益、調整後当期利益、EBITDA、およびROICを経営上の目標として掲げています。

 

(3) 経営環境

当連結会計年度の経済環境は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)(以下「新型コロナウイルス感染症」という。)の世界的な流行に伴う外出制限や営業・生産活動の停止等の影響から、世界経済、日本経済ともに、第1四半期に大きく悪化し、第2四半期以降はやや持ち直したものの、総じて低調に推移しました。

 

一方で、従来のIT市場におけるクラウドシフトへの流れに加えて、新しい生活様式への変化が進む中で社会全体のデジタル化が加速しました。欧州における先進的なデジタル・ガバメントの取り組みが世界的に拡大する中で、日本においてもデジタル庁創設が予定されており、今後、国および地方行政のDX(デジタルトランスフォーメーション)化が一層進む見通しです。また、環境問題がさらに深刻化する中で、持続可能な社会の実現へ向けて企業の貢献が求められており、テクノロジーの役割が増大しています。

 

このような経営環境のもと、NECグループは、Purpose・戦略・文化の一体的な取り組みを経営方針として掲げる「2025中期経営計画」を策定し、高いモチベーションをもって、日本を含むグローバルでの事業フォーカスと国内IT事業のトランスフォーメーションなどによる成長の実現や、サステナビリティ経営の基盤強化等を目指します。

 

(4) 中長期的な会社の経営戦略および対処すべき課題

NECグループは、Purposeの具現化に向けて2025年度を最終年度とする「2025中期経営計画」を2021年5月に策定しました。本中期経営計画ではPurpose・戦略・文化の一体的な取り組みを経営方針として掲げ、役員・社員一丸となって邁進します。

 

① Purpose

NECグループは、「NEC Way」において、安全・安心・公平・効率という社会価値を創造し、誰もが人間性を十分に発揮できる持続可能な社会の実現をPurposeとして掲げています。NECグループは社会価値を創造する企業として、社会や顧客との「未来の共感」を創ることで、その実現を目指します。そのためNECグループは、2030年の目指す未来の姿を「NEC 2030VISION」として策定しました。

 

 

NEC 2030VISION(目指す未来の姿)

[環境]

 ・地球と共生して未来を守る

[社会]

 ・個人と社会が調和し豊かな街を育む

 ・とまらない社会を築き産業と仕事のカタチを創る

 ・時空間や世代を超えて共感を生む

[暮らし]

 ・人に寄添い心躍る暮らしを支える

 

② 戦略

NECグループの強みである技術力を顧客価値に転換し、「日本を含むグローバルでの事業フォーカス」、「国内IT事業のトランスフォーメーション」および「次の柱となる成長事業の創造」によって、成長を実現します。

「日本を含むグローバルでの事業フォーカス」については、デジタル・ガバメント事業、デジタル・ファイナンス事業およびグローバル5G事業を注力領域と定め、事業成長を目指します。まず、デジタル・ガバメント事業およびデジタル・ファイナンス事業では、2018年以降に買収した欧州企業の確実な成長、および行政・金融の融合領域への取り組みや異業種顧客への新規事業機会の獲得といったNECグループとの事業シナジーによって事業成長を目指します。次にグローバル5G事業については、高品質や小型・軽量化といった技術力を強みにして、従来の基地局事業からグローバルOpen RAN事業へとハードウェア領域における事業を拡大し、さらには5GコアネットワークやOSS/BSSなどのソフトウェア領域へと拡大することで、グローバルトップベンダーを目指します。

「国内IT事業のトランスフォーメーション」では、従来の業種・顧客別の個別最適の事業から全体最適の事業へと変革します。具体的には、当社子会社のアビームコンサルティング㈱とのさらなる連携により、顧客に対して、コンサルティングから保守・運用までの一貫したサービス提供を実現します。加えて、生体認証やAI(人工知能)等の強い技術と社会のニーズを組み合わせ、デジタル・ガバメントやスーパーシティ構想といった先進的なDX領域での成長を目指します。また技術の共通基盤化や適切なソリューション提供に必要な提案モデルやツールの整備、他社とのアライアンスによる商材メニュー強化を通じて、収益性改善とともに競争力を強化します。

「次の柱となる成長事業の創造」では、NECグループのディスラプティブ技術(現在のビジネスモデルを破壊しうるユニークな技術)と米国におけるドットデータ社の設立などを通じて強化した事業開発力に、他社のノウハウ等を加えて、「NEC 2030VISION」を実現する新たな成長事業の創造に取り組みます。

これらの成長戦略の実行の裏付けとなる財務力については、引き続き、成長投資を重視したキャピタル・アロケーションを徹底するとともに、強固な財務基盤の維持と強化を行うことにより、今後の成長投資を支えます。

また、「顧客との未来の共感創り」では、「NEC 2030VISION」を社会や顧客に向けて積極的に発信することにより、NECグループの目指す社会像の共感を創り、新たな社会価値創造を加速します。

 

③ 文化

Purposeの実現には、高いモチベーションをもつ社員の存在が不可欠であることから、社員に選ばれる会社(Employer of Choice)への変革を目指します。その変革のため、「人・カルチャーの変革」、「ビジネスインフラの整備」および「顧客との未来の共感創り」の3つに取り組みます。

「人・カルチャーの変革」では、社員のエンゲージメントを高め、生産性向上やイノベーション創出につながる施策を実行します。具体的には、女性や外国人社員に代表される多様な人材の積極的な登用と計画的な育成により、ダイバーシティを加速させます。加えて、多様な人材が高い生産性・創造性をより発揮するために、働き方の選択肢を広げる等の人事制度の環境整備を進めます。

「ビジネスインフラの整備」では、これまで行ってきた共通業務のシェアードサービス化をさらに一歩進め、業務プロセス・制度・ITシステムの一体改革を実行します。具体的には、NECグループ全体最適視点での基幹システムのクラウド化や業務プロセス・制度の再設計、さらにはAIの活用などにより、データを最大限に活用した高度な経営基盤を構築します。

また、「顧客との未来の共感創り」では、「NEC 2030VISION」を社会や顧客に向けて積極的に発信することにより、NECグループの目指す社会像の共感を創り、新たな社会価値創造を加速します。

 

これらの施策を通じて、2025年度に売上収益3兆5,000億円、調整後営業利益3,000億円(利益率8.6%)、調整後当期利益1,850億円(利益率5.3%)、EBITDA4,500億円(利益率12.9%)、ROIC6.5%の達成を目指します。

 

NECグループは、2018年7月に、NECグループおよび社会のリスクを最小化し、NECグループが生み出す社会価値を最大化するために優先的に取り組むべきESG(環境・社会・ガバナンス)視点のテーマとして「マテリアリティ」を特定しました。2020年4月には、NECグループ共通の価値観であり行動の原点である「NEC Way」において、NECグループの存在意義である「Purpose」と企業としての行動原則である「Principles」を明確にし、これらの考え方に基づくマテリアリティの実践に取り組んできました。

このたび、NECグループは、「2025中期経営計画」の策定に際し、サステナビリティ経営の基盤強化に向け重点的に取り組むマテリアリティとして、「気候変動(脱炭素)」、「セキュリティ(情報セキュリティ・サイバーセキュリティ)」、「AIと人権」、「人材育成」、「コーポレートガバナンス」、「サプライチェーンサステナビリティ」および「コンプライアンス」を改めて特定しました。

社会とNECグループの継続的な成長に向け、顧客など多様なステークホルダーと対話し、取り組むことで国際連合の定める「SDGs」の達成に貢献します。

 

 

 

(5) 気候変動への対応

持続可能な社会を築くためには、地球温暖化がもたらす気候変動問題に対して、温暖化が進まないように温室効果ガスの排出を削減する緩和策だけでなく、気候変動リスクに備え、その被害を未然に防止し、または最小限に抑えるための適応策にも取り組む必要があります。NECグループは、気候変動リスクを最小限に抑え、お客さまや社会の気候変動対策への価値提供を通じてNECグループの事業成長へと繋げるため、緩和と適応の両面から気候変動がNECグループの事業にもたらすリスクと機会を評価し、NECグループが目指すべき方向と長期目標を定め戦略的に取り組んでいます。具体的には、お客さまと持続可能な社会を共創していく姿を示した「2050年を見据えた気候変動対策指針」を2017年7月に策定し、気候変動対策の強化を進めています。本指針は、①サプライチェーンからのCO₂排出量ゼロに向けた削減、②サプライチェーンでの気候変動リスクへの対策徹底、③世界が目指す低炭素社会の実現、④気候変動リスクに強い安全・安心な社会の実現、という4つの要素から構成されており、このうち①の要素については、NECグループが自らの事業活動に伴い発生するCO₂排出量(Scope1, 2(*1))を2050年までに実質ゼロとすることを目標として掲げています。

当連結会計年度の主な取り組みおよび実績としては、再生可能エネルギーの導入によるCO₂排出量の削減として、当社の府中事業場と我孫子事業場において太陽光発電を導入し、稼働を開始しました。当社子会社であるデンマークのケーエムディ社では、使用電力のグリーン電力への切り替えが100%完了しています。

また、当社は国際的なNGOであるCDP(*2)が主催する「CDPサプライチェーンプログラム」に加盟しています。当社はサプライヤーにおける気候変動対策の推進状況を把握するため、サプライヤーに対して当社の独自調査に加えて同プログラムを通じた調査を毎年実施し、優れた取り組みを行うサプライヤーを表彰するなど、サプライヤーと連携して、サプライチェーン全体の排出量削減および気候変動対策の強化に向けた取り組みを推進しています。このような取り組みが評価され、CDP2020において気候変動、水管理およびサプライヤーエンゲージメントの3部門で、最高評価である「Aリスト」企業に選定されました。

NECグループは、ICTを活用した省エネ型製品・サービスの提供や再生可能エネルギーの導入拡大などを積極的に進めるとともに、洪水や土砂災害などの気候変動リスクに備えるソリューションの開発・提供を進めることで、緩和策と適応策の両面からお客さまや社会の気候変動対策に貢献していきます。

*1 Scope1:事業者が所有または管理する排出源から発生する温室効果ガスの直接排出

 Scope2:電気、蒸気、熱の使用に伴う温室効果ガスの間接排出

*2 CDP:投資家、企業、国家、地域、都市が自らの環境影響を管理するためのグローバルな情報開示システムを運営している

英国の慈善団体が管理する国際的なNGO。2020年度は全世界で9,600社以上の企業がCDPを通じて情報開示を行いました。

2【事業等のリスク】

 本有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者がNECグループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクには、以下のようなものがあります。なお、文中の将来に関する事項は、本有価証券報告書の提出日現在において、NECグループが判断したものです。

(1) 経済環境や金融市場の動向に関するリスク

① 経済動向による影響

   NECグループの事業は、国内市場に大きく依存しています。NECグループの売上収益のうち国内顧客に対する売上収益の構成比は、当連結会計年度において連結売上収益の76.5%を占めています。今後の日本における経済情勢または国内顧客の業績および財政状態の悪化は、NECグループの業績および財政状態に重大な悪影響を与える可能性があります。

   NECグループの事業は、アジア、米国、欧州を含むNECグループが事業を行う国や地域の経済動向によっても影響を受けます。地政学的リスクおよび米中貿易摩擦を含む国際的な経済摩擦は世界経済の不確実性を高めており、また、保護主義的な通商政策の広がりは世界経済の成長の鈍化の一因となる可能性もあります。下記「④新型コロナウイルス感染症の流行による悪影響」に記載する新型コロナウイルス感染症等の感染症が引き続き流行した場合にも、世界経済情勢に悪影響を与える可能性があります。さらに、かかる地政学的リスクや経済摩擦が、NECグループが事業を行う国や地域において顕在化した場合には、例えば、当該国や地域から供給される半導体を十分に確保することが困難となり、NECグループが提供するハードウェア機器等の販売に支障を生じるなど、NECグループの事業の遂行に悪影響を与える可能性があります。

   また、国内外の政府・政府系機関または地方公共団体が、経済上の理由などにより、政策や予算の方針を変更した場合、NECグループの事業に悪影響を与える可能性があります。

   NECグループの事業計画および業績予想は、NECグループが属する市場における経済活動の予測に基づき作成していますが、上記のような一般的な国内外の経済の不透明さによって市場における経済活動の予測も困難となっており、NECグループの将来の収益および必要経費についても、その予測が困難となっています。計画編成または業績予想を行う際に予測を見誤った場合、NECグループは変化する市場環境に適切に対応できない可能性があります。

 

② 為替相場および金利の変動

   NECグループは、米ドル/円相場やユーロ/円相場を中心に外国為替相場の変動リスクにさらされています。円建てで表示されている当社の連結財務諸表は、外国為替相場変動の影響を受けます。為替変動は、外貨建取引から発生する株式投資、資産および負債の日本円換算額ならびに外貨建てで取引されている製品・サービスの原価および売上収益に影響を与えます。2021年3月31日現在における、NECグループの営業債権、営業債務および為替予約等についてのエクスポージャー純額は米ドル建てで452百万米ドルの債務ポジションであり、同日において円が米ドルに対して1%円安となった場合、税引前利益は501百万円減少します。NECグループは、為替リスクを軽減し、またこれを回避するために外貨建て営業債権債務の相殺や先物為替予約、通貨オプションを利用するなど様々な手段を講じていますが、為替相場の変動はNECグループの事業、業績および財政状態に悪影響を与える可能性があります。特定の外国為替の変動は、競合会社に有利に影響する一方で、NECグループには悪影響を与える場合もあります。

   また、NECグループは、金利変動リスクにもさらされており、かかるリスクは、NECグループの事業運営に係る経費全体ならびに資産および負債の額、特に長期借入金に伴う負担に影響を与える可能性があります。2021年3月31日現在における、NECグループの変動金利付の長期借入金残高は、655億円です。NECグループは、このような金利変動リスクを回避するために金利スワップ取引を利用するなど様々な手段を講じていますが、かかる金利変動リスクは、NECグループの事業運営に係る経費の増加、金融資産の価値の下落または負債の増大を招く可能性があります。

 

③ 市況変動

   NECグループの製品およびサービスの需要は、国内外におけるICT市場の市況変動の影響を受ける可能性があります。ICT市場の市況が低迷した場合の他にも、既存の製品・サービスの陳腐化、過剰在庫、コスト競争力の低下により、NECグループの製品およびサービスの需要は悪影響を受ける可能性があります。また、これらの市場は不安定な性質を有しており、回復したとしても将来再び低迷する可能性があり、その結果、NECグループの事業、業績および財政状態に悪影響を与える可能性があります。

 

④ 新型コロナウイルス感染症の流行による悪影響

   日本を含む全世界的な新型コロナウイルス感染症の拡大と、各国政府による渡航制限や外出自粛要請などの感染予防および感染拡大対策により、NECグループ、NECグループの仕入先および顧客が事業を行う地域において、不安定な社会、経済、財政および労働環境が継続する可能性があります。これらがNECグループ、NECグループの仕入先および顧客の事業に与える影響の程度は、新型コロナウイルス感染症の収束時期など今後の事態の進展によるため、極めて不透明であり、予測することが困難です。NECグループの顧客である政府・政府系機関、地方公共団体および企業が感染拡大や感染状況の継続といった事態への対応に注力した場合、これらの顧客からのNECグループの製品およびサービスに対する受注が従前の想定を下回る可能性があります。さらに、当連結会計年度においては、新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて、NECグループの一部顧客においてIT関連投資の減少傾向が見られたところ、かかるIT関連投資の減少傾向が今後も継続した場合には、NECグループの事業、業績および財政状態に悪影響を与える可能性があります。また、当連結会計年度における営業利益は、有形固定資産の売却等による収益に加えて、コスト削減策やいわゆるNew Normal需要の取り込みにより、前期比で約20.5%増加しましたが、今後、新型コロナウイルス感染症の蔓延が長期化または深刻化した場合、当連結会計年度と同程度の効果を伴う施策を講じることができる保証はありません。翌連結会計年度においては、ワクチン接種率の向上等により国内の経済活動に復調の兆しが見られる可能性はあるものの、いわゆる変異株を含む新型コロナウイルス感染症の拡大状況、ワクチンの効果・接種率の推移、医療体制の逼迫状況といったNECグループがコントロールできない事情や今後の事態の進展次第では、国内の経済活動が期待されたとおりに回復する保証はなく、NECグループの事業および業績が悪影響を受ける可能性があります。

   NECグループは、感染予防対策として相当数の従業員の在宅勤務を実施していますが、それによって不正なアクセスまたはサイバー攻撃を受ける危険性や、NECグループや顧客その他の第三者に関する個人情報または機密情報が流出する危険性が増大するおそれがあるほか、内部統制システムが新型コロナウイルス感染症の拡大前の水準で有効に機能しない可能性もあります。現在、NECグループの生産施設への重大な悪影響やサプライチェーンの著しい混乱は生じていませんが、今後の感染拡大の状況やそれに応じた各国政府による感染対策などによっては、顧客や仕入先の工場閉鎖、操業停止および財政状態の悪化が生じる可能性があり、また、調達物品の価格上昇や供給遅延、確保が困難となる状況が生じる可能性もあります。新型コロナウイルス感染症がNECグループの事業活動へ与える悪影響については、現時点においても、その全体像および継続期間を予測することはできません。

   また、新型コロナウイルス感染症の拡大による影響の程度や収束時期によっては、のれんその他の無形資産や使用権資産などNECグループの保有資産の減損のほか、主要な保有株式の価値の減少が生じ、NECグループの財政状態に悪影響を与える可能性があります。2021年3月31日現在におけるNECグループのその他の包括利益を通じて公正価値で測定する資本性金融商品は1,563億円ですが、新型コロナウイルス感染症の拡大による影響によりこれらの価値が減少する可能性があります。

   新型コロナウイルス感染症の流行および感染予防対策がNECグループの事業、業績および財政状態に与える悪影響について、その全体像を現時点で確実性をもって予測することはできません。新型コロナウイルス感染症の拡大に関する今後の事態の進展によっては、NECグループの事業および業績が重大な悪影響を受ける可能性があります。また、本有価証券報告書提出日現在までに、新型コロナウイルス感染症は世界経済に悪影響を与えており、これによって、NECグループの事業、業績および財政状態にも重大な悪影響が生じる可能性があります。

 

(2) NECグループの経営方針に関するリスク

① 中期経営計画

   NECグループは、2021年5月に、2026年3月期を最終事業年度とする「2025中期経営計画」を発表し、企業価値の最大化に向けて、Purpose・戦略・文化の一体的な取り組みを経営方針として掲げています。

   NECグループは、「2025中期経営計画」の実現に向けて、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4)中長期的な会社の経営戦略および対処すべき課題」に記載した取組みを実行しているところですが、それらの取組みを通じて「2025中期経営計画」で掲げた目標を達成できるか否かについては、デジタル・ガバメント、デジタル・ファイナンスやグローバル5Gなどにおいて事業拡大を企図している市場が、NECグループが想定した規模に成長しないリスク、当該市場の成長が想定したスピードを下回るリスク、当該市場においてNECグループが獲得するシェアが想定を下回るリスク、「2025中期経営計画」において計画している戦略的費用の投入によっても期待した効果が発現しないリスクなど、本「第一部 企業情報 第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載した事項を含む様々なリスク要因により影響を受けるため、それらの取組みが計画どおりに進捗せず、「2025中期経営計画」で掲げた目標について、当初計画した期間内に達成できない、または全く達成できない可能性があります。

 

 

② 財務および収益の変動

   NECグループの各四半期または各年度の経営成績は、必ずしも将来において期待される業績の指標とはなりません。NECグループの業績は、新技術・新製品・新サービスの導入や市場での受容、技術・インフラの開発または事業化の遅延・失敗、技術進歩や広く利用されているソフトウェアのサポートサービスの終了および技術投資のサイクル、製品原価の変動とプロダクト・ミックス、顧客からの受注・納入時期に係る季節性、顧客の事業が成功するか否かにより影響を受け、また、製品・サービスごとに異なる顧客の注文の規模や時期、買収した事業や獲得した技術の影響、買収により期待するシナジーを実現する能力、固定費等を含む種々の要因により四半期ごと、年度ごとに変動しており、今後も変動します。

   NECグループの業績に影響を与え、特定の期間の業績予想を困難にする、NECグループがコントロールできないその他の動向や外部要因には、次のようなものがあります。

   (a) 提供する製品・サービスを取り巻く事業環境の悪化

   (b) ICT市場ならびに日本経済および世界経済の全般的な状況の変化

   (c) 競業会社による画期的な技術革新等により生じる予期しない市場環境の変化

   (d) 財政支出の規模、時期を含む政府のICTインフラの開発、展開に関する決定

   (e) 顧客による設備・ICT投資の規模や時期

   (f) 顧客の在庫管理方針

   (g) ICT業界に影響を与える法令、政府規制、政策等の変更

   (h) 資本市場の状況および顧客や取引先による資金調達力または設備投資能力の悪化

   (i) 顧客や取引先の信用状態の悪化等

   これらの動向や要因は、NECグループの事業、業績および財政状態に重大な悪影響を与える可能性があります。

 

③ 企業買収・事業撤退等

   NECグループは、事業拡大や競争力強化などを目的として、企業買収、事業統合および事業再編を実施しており、例えば、デジタル・ガバメントおよびデジタル・ファイナンスを推進する戦略の一環として、2018年1月に英国のノースゲート・パブリック・サービシズ社、2019年2月にデンマークのケーエムディ・ホールディング社、また、2020年12月にスイスのアバロク・グループ社をそれぞれ買収しました。NECグループは、今後も、「2025中期経営計画」で掲げた成長戦略の一環として、適切な企業買収等を検討していきます。しかしながら、NECグループの企業買収等の戦略に合致する適切な対象企業を見つけることができない可能性があり、また、適切な対象企業を見つけることができた場合であっても、次のような要因により、NECグループの戦略上の目標達成能力に悪影響を与える可能性があります。

   (a) かかる企業買収、事業統合および事業再編による成長機会の確保、財務体質の改善、投資効果やシナジー効果、期待されるその他の利益が、期待していた期間中に実現されないかまたは全く達成されない可能性

   (b) かかる企業買収、事業統合および事業再編に適用される規制・関係法令や契約上またはその他の条件により、計画された企業買収、事業統合および事業再編が予定どおりに完了しないかまたは全く実行されない可能性

   (c) かかる企業買収、事業統合および事業再編の過程において、海外市場を中心として、人事・情報システム、経営管理システム、および顧客向け製品・サービスの整理または統合の遅れや、想定外の費用および負担が発生するなど、予想を上回る問題が発生する可能性

   (d) 買収等の対象企業において、事業の継続・成長に必要な経営陣の確保や中長期的にNECグループとして事業を遂行するための体制の移行に支障が生じる可能性

   (e) 顧客が、費用やリスク管理等のために仕入先の分散を望む場合に、買収、統合または再編後の会社が既存の顧客および戦略的パートナーを維持できない可能性

   (f) 買収、統合または再編後の会社がNECグループの追加の財務支援を必要とする可能性

   (g) 経営陣および主要な従業員等が、企業買収、事業統合または事業再編に必要な業務に割かれることにより、NECグループの既存の主要事業の収益の増加およびコスト削減に注力できない可能性

   (h) かかる企業買収や事業再編から発生するのれんおよびその他の無形資産が減損の対象となる可能性

   (i) 買収、統合または再編後の会社への出資について、評価損が発生する可能性

   (j) その他、かかる企業買収、事業統合および事業再編が予期せぬ負の結果をもたらす可能性

   これらを含むいずれのリスクも、NECグループの事業、業績、財政状態および株価に悪影響を与える可能性があります。

   一方で、NECグループは、近年、事業戦略に整合しない事業や低収益事業のうちの一部について撤退・縮小を実施しています。しかしながら、市場環境や買手先候補の意向等により、NECグループが希望する時期・条件での事業の撤退・縮小が実現できる保証はなく、その事業戦略の実現のために望ましい条件での事業の撤退・縮小が行えない場合、NECグループの事業および業績に悪影響を与える可能性があります。

 

④ 戦略的パートナーとの提携関係

   NECグループは、新技術および新製品の開発ならびに既存製品および新製品の製造に関して、業界の先進企業と長期的な戦略的提携関係を構築しており、例えば、2020年6月には、楽天モバイル㈱との間で完全仮想化スタンドアローン方式の5Gコアネットワークの共同開発に合意し、また、同月、日本電信電話㈱との間で5Gや多様なICT製品の共同研究開発およびグローバル展開を目指した資本業務提携を実施しております。これらの戦略的パートナーに財務上その他事業上の問題が発生した場合や、戦略的パートナーが戦略上の目標変更や提携相手の見直し等を行った場合、NECグループとの提携関係を維持しようとしなくなるか、維持することができなくなる可能性があります。これらの提携関係を維持できない場合には、NECグループの事業活動に支障が生じる可能性があります。また、戦略的提携関係を構築した結果、共同開発の対象となる技術を使用した製品や、NTTグループや楽天モバイル㈱との提携を通じて推進するOpen RANに関する規格など戦略的提携関係による開発対象となる規格の取扱いを戦略的パートナーに依存し、NECグループの製品およびサービスの拡大または多様化に関するNECグループの自由度が制限される可能性があります。

   また、NECグループの競合会社は、NECグループの製品およびサービスと競合する分野における競争力強化や新技術の開発を目指して戦略的提携を実施することがあります。例えば、競合会社による戦略的提携により開発された規格が業界の標準規格としての地位を獲得したことにより、NECグループが自らまたは戦略的提携相手と推進する規格が普及しないなど、競合会社による戦略的提携が成功した場合、その影響により、NECグループの事業戦略が奏功しない可能性があります。

   NECグループは、様々なプロジェクトに他の企業とともに参加し、NECグループと他の企業の製品またはサービスを統合して顧客の要求に合致するシステムとして提供することがあります。戦略的パートナーが倒産その他の要因により提携関係における役割を維持できない場合、またはNECグループ以外の企業が提供する製品もしくはサービスのいずれかに起因する当該統合システムの誤作動もしくは顧客の要求事項との相違その他の欠陥や問題が生じた場合、NECグループの評価および事業に重大な悪影響を与える可能性があります。

 

⑤ 海外事業の拡大

   NECグループは、デジタル・ガバメント、デジタル・ファイナンスやグローバル5Gの推進など海外市場での事業拡大に向けて種々の施策を実行しています。このうち、デジタル・ガバメントおよびデジタル・ファイナンスの推進の成否については、特に、2018年1月に買収した英国のノースゲート・パブリック・サービシズ社、2019年2月に買収したデンマークのケーエムディ・ホールディング社および2020年12月に買収したスイスのアバロク・グループ社など近年買収した海外企業の成長やこれらの海外企業とNECグループとの適切な統合を通じた事業シナジーの実現の可否に左右されます。また、NECグループは、海外市場での事業拡大に伴い、特定の地域または市場に固有のリスクにさらされています。企図した製品・サービスの収益化や市場の成長が予想よりも遅い場合、NECグループの新しい製品・サービスが顧客に受け入れられない場合、収益獲得の機会が競争もしくは規制により損なわれる場合、または計画した買収、投資もしくは資本提携が規制当局に承認されない場合には、NECグループの新規市場への進出や新製品・サービスの提供が奏功しない可能性があります。また、現地の商慣行および法令規則の知見や理解が不十分な可能性や、市場によっては適切な事業や提携先を見つけることが困難である可能性もあります。そのほか、海外の潜在的な顧客と現地供給業者との間の長期的な提携関係の存在や国内事業者保護のための規制等の種々の障壁に直面しています。

   海外市場での成長機会を捉えるために、収益の計上が見込まれる時期より相当前から多額の投資を行う必要がNECグループに生じる可能性がありますが、このような投資が、期待される水準の収益成長をもたらす保証はありません。また、このような投資額の増大によって、利益の増加を上回るペースで費用が増加する可能性があります。さらに、海外におけるNECグループの事業および投資は、為替管理、外資による投資または利益もしくは投資資本の本国送金に対する諸規制、現地産業の国有化、5G関連技術を含む輸出入にかかる要件や規制の変更、海外当局からの許認可等の取得といった海外市場における規制、米中貿易摩擦を含む国際的な経済摩擦、税制・税率の変更、経済的・社会的・政治的・地政学的リスク等により悪影響を受ける可能性があります。

   さらに、海外の金融市場および経済に問題が発生した場合には、当該海外市場の顧客からの需要が悪影響を受ける可能性もあります。

   これらの要因により、NECグループは、海外市場における事業拡大に成功せず、その結果、NECグループの事業成長、業績および財政状態に重大な悪影響を与える可能性があります。

 

 

(3) NECグループの事業活動に関するリスク

① 技術革新および顧客ニーズへの対応

   NECグループが事業を展開する市場は、急速な技術革新と技術標準の進展、顧客の嗜好の変化および新製品・新サービスの頻繁な導入を特徴としており、これらにより既存の製品・サービスは急速に陳腐化し、または市場性を失う傾向があります。NECグループの将来における競争力の維持・強化には、次のような技術革新への対応能力が必要です。

   (a) AI、IoT(Internet of Things)、生体認証やサイバーセキュリティ技術を中心とした分野における急速な技術革新に対応して、技術面でのリーダーシップを維持する能力

   (b) 既存の製品・サービスを向上させる能力

   (c) 顧客のニーズを満たす革新的な製品をタイムリーにかつコスト効率よく開発し生産する能力

   (d) 新たな製品・サービスおよび技術を使用し、またはこれらに適応する能力

   (e) 優秀な技術者や理工学分野の人材を採用し雇用する能力

   (f) 開発する新製品・新サービスに対する需要およびこれらの商品性を正確に予測する能力

   (g) 開発した技術を事業化する能力

   (h) 新製品の開発または出荷の遅延を回避する能力

   (i) 高度化する顧客の要求に対応する能力

   (j) 顧客の製品およびシステムにNECグループの製品が組み込まれるようにする能力

   NECグループの上記の対応能力は、特に、研究開発費用を確保した上で行われる技術革新等に対応するための適切な研究開発体制の維持と、かかる研究開発体制に基づき蓄積されてきた研究開発結果に支えられているところ、資金、人材、その他のリソース不足等により研究開発力の維持が困難となるなどし、上記の対応能力が不足・低下した場合、NECグループは将来における競争力を失う可能性があります。

   NECグループは、技術革新および顧客嗜好の急速な変化に対応する、製品・サービスの改良や新製品・新サービスの開発を行い、市場投入することができない可能性があります。将来の技術革新および顧客嗜好の変化は、過去に実際に生じた変化とは異なる傾向や時間軸で生じる可能性があり、現時点での予測とも異なる可能性があります。NECグループがこれらの技術革新および顧客嗜好の変化を適切に把握し対応できなかった場合、またはそのような変化の方向性を正確に予測できなかった場合、NECグループの事業、業績および財政状態は著しく損なわれる可能性があります。さらに、NECグループの技術を顧客の期待に沿ったかたちで製品に組み込むことができなかった場合、NECグループの顧客との関係、評価および収益に悪影響を与える可能性があります。

   NECグループは、現在提供している製品およびサービスや将来提供しようとしている製品およびサービスについて、業界の標準規格となる技術を開発し商業化するために、他の企業との提携およびパートナーシップの形成・強化に努めています。また、NECグループは、かかる技術の開発および商業化に多大な資金、人材およびその他のリソースを投じています。例えば、2020年6月に公表した日本電信電話㈱との資本業務提携は、「O-RAN」をはじめとするオープンアーキテクチャの普及促進を目的としていますが、かかる「O-RAN」は、競合会社が推進しようとしているOpen-RANの規格と競合しています。競合会社の技術が業界の標準規格として採用された場合、かかる規格技術の開発や商業化を行うことができない可能性があります。そのような場合、NECグループの競争上のポジション、評価、業績および財政状態に悪影響を与える可能性があります。

 

競争の激化

   NECグループは、事業を展開する多くの市場において激しい競争にさらされています。かかる競争状態は、NECグループの利益の維持に対する深刻な圧力となっており、当該圧力は特に市場が低迷した場合に顕著となります。また、競合会社の市場参入に伴い、NECグループの製品・サービスが厳しい価格競争にさらされるリスクが増大しています。主にアジア諸国における競合会社の中には、オペレーションコストの面でNECグループよりも有利であり、顧客に対する販売価格面で競争力を有している会社が存在する可能性があります。また、将来的には、NECグループよりも強固な財務基盤を有する多国籍企業とも競合する可能性がありますが、このような多国籍企業は、戦略的な価格設定や研究開発に向けた多額のリソースの投入・大規模な人材登用を実施することがあります。さらに、近年、NECグループが開発した新製品の市場投入から競合会社による同様または同種の製品の市場投入までの間隔が短くなっており、NECグループの製品が従来より早く激しい価格競争にさらされる可能性があります。

   NECグループは、大規模な多国籍企業から比較的小規模で急成長中の高度に専門化した企業まで、国内外を問わず多くの会社と競合しています。特定分野に特化している多くの競合会社とは異なり、NECグループは多角的に事業を展開しているために、競合会社より多くのリソースを保有していたとしても、それぞれの特定事業分野に関しては、競合会社ほどの資金を投入できない場合があり、また、そのような競合会社と同程度の迅速さや柔軟性をもって変化に対応することや、市場機会を捉えることができない可能性があります。さらに、特定分野において研究開発等のために多大な資金、人材およびその他のリソースを投入した場合であっても、これによってNECグループの収益性や競争力の向上が達成される保証はなく、かかる資金投入等が結果的にNECグループの事業および業績に悪影響を与える可能性があります。

   競合会社の規模や競争力の差異を生む要因は、業界や市場により異なります。例えば、5G技術の分野では、多額のリソースの活用が可能な大規模な多国籍企業が競合会社に含まれるところ、当該分野において、かかる多国籍企業に対して競争上の優位性を確保できるかは、競合する業界において、NECグループが自らまたは戦略的提携相手と開発・設計し、推進する技術・規格を用いたプラットフォームが支配的な地位を獲得できるかといった事情に左右されます。他方、デジタル・ガバメントやデジタル・ファイナンスの分野では、事業を展開する国や地域によりNECグループの有する市場シェアや競合会社となる企業が異なるため、競争上の優位性を確保するためには各国や地域における状況に応じた対応が必要となります。NECグループが多角的な事業を展開する上でこのような事業分野毎の特性に応じた効果的な事業戦略の遂行ができない場合には、NECグループの事業および業績に悪影響が及ぶ可能性があります。

   NECグループは、政府・政府系機関向けプロジェクトやその他の大規模なプロジェクトで発注価格等の条件が厳格に設定されている案件への入札や受注提案プロセスに参加することがあり、その場合、NECグループの収益性がさらに低下する可能性があります。厳格な条件に合致させつつも収益性を維持するために、NECグループは、革新的かつ独自の価値を顧客に提供することによって継続的に収益を増加させ、かつ、開発製造業務の最適化やビジネスプロセスの改善などにより費用削減に努めていますが、これらの取組みをもってしても、収益性を維持できない場合があります。

   NECグループは、現在の競合会社や潜在的な競合会社の一部に対し、製品やサービスを販売することがあります。例えば、大規模なプロジェクトで競合会社が主契約者となり、NECグループのソリューションを組み込みまたは利用して、ソリューションを提供する場合において、NECグループは、競合会社から注文を受けて、競合会社に対しNECグループのソリューションを提供する場合があります。この場合、かかる競合会社が、競合またはその他の理由により、かかる大規模なプロジェクトにおいてNECグループのソリューションを利用しないこととした場合、NECグループの事業に悪影響を与える可能性があります。

 

③ 特定の主要顧客への依存

   NECグループの事業ポートフォリオの大半は、政府・政府系機関向けの事業およびNTTグループをはじめとする大規模ネットワークインフラ企業向けの事業が占めますが、そのような事業の需要が変動した場合や事業を受注できなかった場合には、NECグループの売上収益に重大な悪影響を与える可能性があります。また、政府・政府系機関が予算、政策その他の理由で取引額を削減する可能性があるほか、顧客企業においても、事業上もしくは財務上の問題その他の理由により設備投資額もしくはNECグループとの取引額を削減または投資対象を変更する可能性があります。

   また、NECグループは、政府・政府系機関向け事業の獲得に必要な入札・受注提案プロセスへの参加が規制上の理由により制約される可能性があります。例えば、当社は、2016年および2017年に公正取引委員会から認定された独占禁止法違反行為に起因して、一定期間において、国内の多数の政府・政府系機関や地方公共団体から指名停止措置を受け、入札参加資格を停止されました。NECグループは、規制違反行為の発生を防ぐため内部統制システムの強化に努めていますが、かかる取組みを徹底しても、規制違反行為が発生する可能性を完全に否定することはできません。また、需要の変動、政策変更または規制により、政府・政府系機関向けの事業が縮小した場合、NECグループの事業、業績および財政状態に悪影響を与える可能性があります。

 

新規事業の展開

   新製品・新サービスを開発する際には、製品の開発・製造に要する期間・費用が非常に長期・多額となる可能性や、実際に製品・サービスの販売・提供による収益が生じる相当以前から多くのリソースの投入が必要となる可能性があるなど、多くのリスクを伴います。例えば、NECグループは、AIを活用した創薬事業への本格参入を企図して、2019年にオンコイミュニティ社(現NECオンコイミュニティ社)を買収しましたが、NECグループの創薬事業の経験が乏しいことにより、収益性を確保するまでには一定の期間を要し、場合によっては事業が奏功しない可能性もあります。また、新製品・新サービスの開発中に、異なる新技術が導入され、または標準規格が変更されること等により、NECグループが新たに開発した製品・サービスを市場に投入する前に、当該製品・サービスが陳腐化し競争力を失う可能性があります。新製品・新サービスには想定外の欠陥・エラーが含まれている可能性があり、新製品・新サービスを市場に投入・展開した後にこれらが発見された場合、顧客に生じた損失に対する責任を追及される可能性や、NECグループまたはその製品・サービスの評価が毀損される可能性があります。これらの要因により、NECグループの事業、業績および財政状態は著しく損なわれる可能性があります。

 

⑤ 製品およびサービスの欠陥

   NECグループが提供する製品およびサービスは、公的機関を顧客とするものも含み、その欠陥により顧客や多数のエンドユーザーに深刻な損失をもたらす可能性があります。顧客の基幹業務等高い信頼性が求められる、いわゆるミッションクリティカルな業務において使用されている製品またはサービスに欠陥や提供の遅延が生じた場合、NECグループは、顧客等に生じた損失に対する責任を追及される可能性があります。また、製品またはサービスの欠陥により社会的評価が低下する可能性や、リコール費用を負担する可能性もあります。特に、ICTに関する製品およびサービスは、一般的に、技術的障害やコンピューターウイルスなどのリスクにさらされていますが、NECグループは、消防・防災システムなど生命身体の安全を保護する場面で利用される製品およびサービスを提供しているため、より重大な責任を追及される可能性があります。さらに、生体認証技術といった革新的な技術を使用した製品およびサービスは、予測が困難なリスクにさらされる可能性があります。これらに起因して社会的評価が低下した場合や規制当局により制裁を受けた場合には、NECグループの販売力が損なわれる可能性があります。また、これらは不採算プロジェクトが発生する要因ともなります。

   NECグループでは、製品またはサービスの欠陥や不採算プロジェクトの発生を防ぐため、システム開発などのプロジェクトを遂行するにあたっては、システム要件の確定状況や技術的難易度の把握、システムを構成するハードウェアやソフトウェアの品質管理など、商談開始時からプロジェクトのリスク管理を徹底していますが、これらの発生を完全に防ぐことは困難です。NECグループが提供する製品もしくはサービスに欠陥が生じた場合または不採算プロジェクトが発生した場合には、NECグループの事業、業績および財政状態に悪影響を与える可能性があります。

 

部品等の調達

   NECグループの事業活動には、部品、製造装置その他の調達物品がタイムリーに納入されることが必要であり、中にはジャスト・イン・タイムの条件で購入しているものもあります。これらの部品等には、その複雑さや特殊性から仕入先が少数に限定されているものおよび仕入先または調達物品の切り替えが困難なものがあります。例えば、2020年以降の世界的な半導体の供給不足や米中貿易摩擦を含む国際的な経済摩擦、地政学的リスク等により、NECグループの主要顧客が属する業界を含む多くの業界が影響を受けているところ、今後NECグループにおいても、かかる半導体の供給不足等により製品やサービスの納入に遅れが生じる等、事業に悪影響が及ぶ可能性があります。NECグループは、現在、使用する部品、製造装置その他の調達物品を概ね確保しているものと認識していますが、NECグループに対する調達物品の供給に遅延もしくは中断が生じた場合、規制変更や規制動向の変化が生じた場合、業界内の需要が増加した場合または関税などの貿易問題が生じた場合などには、必要な部品が不足し、代替品の調達費用が増加し、NECグループの生産能力、効率および収益性に悪影響を与える可能性があります。さらに、金融市場の混乱によりNECグループの仕入先の資金繰りや支払能力に問題が生じた場合には、NECグループの調達物品の調達元が減少したり、そのサプライチェーンに混乱が生じる可能性があります。また、調達した部品、製造装置その他の調達物品がNECグループ製品の信頼性および評価に悪影響を与えるような欠陥を抱えている場合、または調達物品を適時に適切な価格で調達できない場合には、NECグループの事業、業績および財政状況に悪影響が及ぶ可能性があります。

 

⑦ 知的財産権等

   NECグループの事業は、NECグループが独自に開発した技術ならびにNECグループの製品、サービス、事業モデルならびにデザインおよび製造プロセスに必要な特許権その他の知的財産権を取得できるか否かにより大きな影響を受けます。特許権等の登録・維持には、長い時間と多額の費用を要します。これらの特許は、異議申立てを受け、無効とされ、または回避される可能性があります。また、NECグループが数多くの特許権その他の知的財産権を保有していたとしても、これらの権利によりNECグループの競争上の優位性が常に保証されているわけではありません。

   NECグループが事業を展開する領域での技術革新は非常に速いため、知的財産権による保護には陳腐化のリスクがあります。また、NECグループが将来取得する特許権の請求範囲がNECグループの技術を保護するために十分広範囲であるという保証もありません。さらに、国によっては、特許権、著作権、トレードシークレット等の知的財産権による効果的な保護が与えられず、または制限を受ける場合があります。NECグループの企業秘密は、従業員・元従業員、契約の相手方その他の者によって不正に開示または流用される可能性があります。また、NECグループの知的財産権を侵害した品質の劣る模倣品により、NECグループのブランドイメージが損なわれ、NECグループの製品の売上に悪影響を与える可能性もあります。さらに、NECグループが特許権その他の知的財産権を行使するために訴訟を提起する必要がある場合、当該訴訟に多額の費用および多くの経営資源が必要となる可能性があります。

 

⑧ 第三者からのライセンス

   NECグループの製品には、第三者からソフトウェアライセンスやその他の知的財産権のライセンスを受けて製造・販売しているものがあり、今後もNECグループの製品に関連して第三者から必要なライセンスを受け、またはこれを更新する必要があります。NECグループは、経験および業界の一般的な慣行を踏まえ、原則としてこれらのライセンスを商業的に合理的な条件で取得することができると考えています。しかし、将来NECグループが必要とするライセンスを、第三者から商業的に合理的な条件で取得できる保証はなく、また、全く取得できない可能性もあります。そのような場合、かかるライセンスを利用する事業活動を制限または停止しなければならず、NECグループの事業、業績および財政状態に悪影響を与える可能性があります。

 

⑨ 顧客に対する信用リスク

   NECグループは、顧客に対してベンダーファイナンス(NECグループの製品・サービスの購入資金の供与)を提供することがあり、また、支払期間の延長や、NECグループの製品・サービスの購入を援助するためその他の方法による財務支援を行うことがあります。NECグループが財務上またはその他の事情により、顧客が受入れ可能な条件での支払条件の設定もしくはその他の方法による財務支援ができない場合、または条件にかかわらずかかる行為を一切行うことができない場合は、NECグループの業績に悪影響を与える可能性があります。さらに、NECグループの顧客の多くは、代金後払いの方法によりNECグループから製品・サービスを購入していますが、NECグループが支払期限の延長またはその他の支払条件の提案を行った顧客やNECグループが多額の売掛金を有する顧客に財務上の問題が発生した場合には、NECグループの事業、業績および財政状態に悪影響を与える可能性があります。

 

⑩ 人材の確保

   NECグループは、社会に受け入れられる製品・サービスおよびソリューションを開発するため、優秀な従業員を獲得し維持する必要があり、また、そのような優秀な従業員の獲得に際しては、豊富なリソースを有する多国籍のテクノロジー企業と競合する可能性があります。そのため、NECグループの人事部門は、中期経営計画の成長領域をはじめ、NECグループの事業を推進する部門に必要な人材を採用し、その雇用を継続することに努めており、将来の採用コストおよび人件費が増加する可能性があります。また、今後、技術および業界におけるトレンドの変化に伴い、社会感度が高く、様々な価値観、能力、バックグラウンドや従来とは異なる技術を有する多様な人材を採用する必要性が高まる可能性があります。具体的には、近年のデジタル化・自動化の進展に伴い、AI、機械学習、データサイエンスおよび統計分析等の技術を有する人材の需要が増していることから、これらの人材の獲得に向けた競争は今後より激しくなることが見込まれ、そのような技術を備えた人材の採用は、従来の採用方法とは異なる方法によって行う必要が生じる可能性があります。

   これらの要因により、優秀な従業員が多数離職した場合、優秀な人材を新規に採用することができなかった場合、または人材の多様性が確保できなかった場合には、NECグループの事業目的の達成が困難となり、社会価値創造型企業として社会に受け入れられる製品・サービスおよびソリューションを提供できなくなることがあります。

 

⑪ 資金調達

   NECグループは、営業活動によるキャッシュ・フローや銀行その他の金融機関からの借入金による資金調達に加え、コマーシャル・ペーパーその他の債券の募集等により資本市場から資金を調達しています。NECグループの信用状態が低下した場合、格付けが低下し、NECグループの金利負担が増加するとともに、NECグループのコマーシャル・ペーパー市場または債券市場における資金調達能力が悪影響を受ける可能性があり、その結果、NECグループの手許流動性、業績および財政状態にも悪影響を与える可能性があります。NECグループは、比較的高い財務レバレッジを維持しているため、負債による資金調達が困難になった場合には特に事業遂行に影響を与える可能性があります。

   NECグループの資金調達およびその費用は、NECグループの主要な貸手の倒産やNECグループに対する融資停止の決定、または資本市場の不安定さにより、悪影響を受ける可能性があります。NECグループが満足できる条件で外部から資金を調達することができない場合もしくは全く資金を調達することができない場合、または営業活動や必要に応じた資産の売却によって十分なキャッシュ・フローを生み出すことができない場合、NECグループは債務を履行することができなくなり、NECグループの事業、業績および財政状態は重大な悪影響を受ける可能性があります。また、NECグループの事業のために必要な資金調達を追加的な借入れで行う場合、NECグループの成長戦略を実行する能力に制約を与えるような財務的その他の制限的義務が課される可能性があります。

   NECグループは、原則として純投資目的以外の目的(いわゆる政策保有目的)で上場会社の株式を保有しないこととしているものの、NECグループとの協業や投資先との事業上の関係等において必要と判断した会社の株式については、例外的に純投資目的以外の株式として保有します。ただし、純投資目的以外の株式を保有することとした場合であっても、個別銘柄ごとに保有の必要性や、得られるリターンを検証するなど資本コストの観点等を総合的に評価したうえで、取締役会において保有の合理性を検証し、保有の合理性が認められないと判断される場合には売却することとしております。当連結会計年度においても保有する純投資目的以外の株式の売却を進めており、当該売却により971億円のフリー・キャッシュ・フローを獲得しました。かかる売却後もNECグループは、2021年3月末時点で、純投資目的以外の株式(非上場株式を含む。)を1,563億円保有しているところ、これらの約49%が市場株価のある上場株式であり、国内外の経済情勢や株式市場の需給関係の悪化、保有先企業の経営状態の悪化等により株価が低下する可能性があります。売却時期についての具体的な目標の設定はありませんが、保有する純投資目的以外の株式の株価が低下した場合、NECグループは、希望する時期に純投資目的以外の株式の売却を進めることができず、純投資目的以外の株式の売却によるフリー・キャッシュ・フローの獲得ができなくなる可能性があります。

 

(4) 内部統制・法的手続・法的規制等に関するリスク

① 内部統制

   NECグループは、財務報告の正確性を確保するために、業務プロセスの文書化やより厳密な内部監査の実施により内部統制システムの強化に努めていますが、その内部統制システムが有効なものであっても、財務諸表の作成およびその適正な表示について合理的な保証を与えることができるにすぎず、従業員等の人為的なミスや不正、複数の従業員等による共謀等によって機能しなくなる場合があります。また、内部統制システムの構築当時に想定していなかった事業環境の変化や非定型的な取引に対応できず、構築された業務プロセスが十分に機能しない可能性もあり、虚偽の財務報告、横領等の不正および不注意による誤謬が発生する可能性を完全には否定することはできません。このような事態が生じた場合には、財務情報を修正する必要が生じ、NECグループの財政状態および業績に悪影響を与える可能性があります。また、NECグループの内部統制システムに開示すべき重要な不備が発見された場合、金融市場におけるNECグループの評価に悪影響を与える可能性があり、かかる不備を是正するために多額の追加費用が発生する可能性もあります。さらに、内部統制システムの開示すべき重要な不備に起因して、行政処分または司法処分を受けた場合には、NECグループは、事業機会を失う可能性があります。

   NECグループは、業務の適正化および効率化の観点から業務プロセスの継続的な改善・標準化に努めていますが、様々な国や地域で事業活動を行っており、また業務プロセスも多岐にわたっているため、特にNECグループにとって新しい事業を行う会社や新しい国や地域で事業を行う会社を買収またはNECグループに統合する場合、共通の業務プロセスの設計およびその定着化は必ずしも容易ではなく、結果として業務プロセスの改善・標準化に多くの経営資源・人的資源と長期間にわたる対応の継続を要し、多額の費用が発生する可能性があります。

 

② 法的手続

   NECグループは、特許権その他の知的財産権に係る侵害その他の主張に基づく訴訟または法的手続を申し立てられることがあります。NECグループの事業分野には多くの特許権その他の知的財産権が存在し、また、新たな特許権その他の知的財産権が次々と生じているため、ある製品またはサービスについて第三者の特許権その他の知的財産権を侵害する可能性の有無を事前に完全に評価することは困難です。特許権その他の知的財産権侵害の主張が正当であるか否かにかかわらず、かかる主張に対してNECグループを防御するためには、多額の費用および多くの経営資源が必要となる可能性があります。特許権その他の知的財産権侵害の主張が認められ、NECグループが侵害したとされる技術またはそれに代わる技術についてのライセンスを取得できなかった場合には、NECグループの事業に悪影響を与える可能性があります。

   NECグループは、商取引法、独占禁止法、贈収賄防止法、製造物責任法、環境保護法などに関する様々な訴訟および法的手続の対象となる可能性があります。

   NECグループが当事者となっているかまたは今後当事者となる可能性のある訴訟および法的手続の結果を予測することは困難ですが、かかる手続においてNECグループにとって不利な結果が生じた場合、NECグループの事業、業績および財政状態に重大な悪影響を与える可能性があります。さらに、NECグループが関係する法的手続に関して必要となる財務資源および経営陣を含む人的資源等の経営資源についても同様に予測することは困難であり、その程度によっては、これらを適時に確保することが困難となり、NECグループの事業遂行に重大な悪影響を与える可能性があります。また、NECグループが法令および規制に違反した場合には、罰金または科料等が科せられるおそれがあるほか、政府・政府系機関、地方公共団体および国際機関からの受注や入札参加資格が停止されるおそれがあるなど、NECグループの事業、業績、財政状態および評価に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 法的規制等

   NECグループは、事業を展開する多くの国や地域において、予想外の規制の変更、法令適用や政府の政策の運用の不確実性およびその法的責任が不透明であることに関連する多様なリスクにさらされています。日本およびその他の国や地域の政府の経済、貿易、租税、労働、国防、財政支出、個人情報保護等に関する政策を含め、NECグループが事業を展開する国や地域における規制環境の重要な変更により、事業内容の変更を余儀なくされるほか、NECグループの事業、業績および財政状態に悪影響を与える可能性があります。

   例えば、2021年4月に、欧州データ保護監督官(European Data Protection Supervisor)が、生体認証技術やAI技術の分野において新たな規制を設ける旨を公表しており、今後、EUその他の国や地域において、かかる新規制の導入や関連する法改正が行われた場合、NECグループの事業および業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、各国の規制当局は経済制裁対象国や特定の個人または団体との取引等を制限または禁止しており、それらの規制は短期間のうちに大幅に改正される場合があります。NECグループはコンプライアンス・プログラムを実施しておりますが、当該規制への違反を防止する上で十分に機能しない可能性があり、違反が発生した場合等には、NECグループの社会的信用、事業、業績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 環境規制等

   NECグループの事業は、大気汚染、水質汚濁、有害物質の使用および取り扱い、廃棄物処理、製品含有化学物質、製品リサイクルならびに土壌・地下水汚染の規制や地球温暖化防止などを目的とした様々な環境法令の適用を受けています。また、NECグループは、過去、現在および将来の製造活動に関し、環境責任を負うリスクを抱えています。NECグループが現在および将来の環境規制を遵守できなかった場合やNECグループが責任を負う汚染が発見された場合、罰金、有害物質の除去費用または損害賠償を含む多額の費用や、施設および設備を改良する多額の投資を要する可能性があります。また、将来、新たな環境問題が生じた場合や環境規制がより厳格化する場合など予期せぬ事態が生じた場合、NECグループの社会的評価の悪化、事業活動の制限または製品設計や商品性への影響などによって、NECグループの業績および財政状態に悪影響を及ぼす著しい環境コストを負担する可能性があります。

   NECグループは、自主管理基準や2050年を見据えた長期視点の気候変動対策指針を設定・策定し、NECグループの環境方針に従って点検や環境監査を実施するなど、法令および政府当局の指針の遵守に努めていますが、これらの措置は過去、現在および将来の事業活動に関して生じるおそれのある潜在的な責任を回避する上で必ずしも有効に機能しない可能性があり、また、将来、新たなまたはより厳格化する環境規制の遵守や、有害物質等を除去する義務に関する費用が発生する場合、NECグループの事業、業績および財政状態に悪影響を与える可能性があります。なお、NECグループの気候変動への対応については「第一部 企業情報 第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (5)気候変動への対応」に記載のとおりです。

 

⑤ 税務

   NECグループの実効税率は、税率の低い国や地域での収益が予想よりも少なく、税率の高い国や地域での収益が予想よりも多い場合や、NECグループの繰延税金資産および繰延税金負債の評価の変更、移転価格の調整、損金算入されない報酬の税効果、またはNECグループが事業を展開する多くの国や地域における租税法令、会計基準もしくはそれらの解釈の変更が行われた場合、悪影響を受ける可能性があります。今後、実効税率が大幅に上昇した場合には、NECグループの将来の利益が減少する可能性があります。現在、NECグループは、繰越欠損金および将来減算一時差異により繰延税金資産を計上していますが、これらはいずれも将来の課税所得を減額する効果があります。繰延税金資産は課税所得によってのみ回収されます。市況やその他の環境の悪化により、繰越期間中のNECグループの事業およびタックス・プランニングによる将来の課税所得が予想よりも低いと見込まれる場合には、回収可能と考えられるNECグループの繰延税金資産の額が減額される可能性があります。また、法人税率の引下げ等の租税法令の改正や会計基準の変更がなされた場合においても、NECグループの繰延税金資産の額が減額される可能性があります。かかる減額は、その調整が行われた期間におけるNECグループの利益に悪影響を与えます。

   また、NECグループは、税務申告について様々な国や地域の税務当局により継続的な監査および調査を受けています。NECグループでは、未払法人所得税等の妥当性を判断するため、これらの監査および調査の結果生じる悪影響の可能性について定期的に評価していますが、これらの監査や調査の結果は、NECグループの事業、業績および財政状態に悪影響を与える可能性があります。

 

⑥ 情報管理

   NECグループは、通常の事業遂行に関連して、個人番号(マイナンバー)や機微情報(センシティブ情報)を含む多数の個人情報や機密情報の収集、保有、使用、移転その他の処理をしています。近年、企業や機関が保有する情報や記録が流出し、または不正なアクセスやサイバー攻撃を受けるといった事件が多発しています。NECグループが保有する顧客または従業員に関する個人情報や機密情報が流出し、または不正なアクセスやサイバー攻撃を受け、それが不正に使用された場合には、NECグループは法的な責任を負い、規制当局による処分を受ける可能性があり、NECグループの評価およびブランド価値が損なわれる可能性があります。とりわけ、近時のサイバー攻撃の高度化や対象となる事業やインフラの規模の拡大および複雑化に伴い、不正アクセス等の脅威や、情報管理に関するシステム等の脆弱性の発見および軽減が適時に行えない可能性があります。さらに、これらの不正なアクセスやサイバー攻撃を受けるリスクは、NECグループの製品、サービスおよびシステムだけではなく、顧客、請負業者、仕入業者、ビジネスパートナーその他の第三者の製品、サービスおよびシステムにも存在します。NECグループの顧客には金融機関や医療機関といった高度な規制業種および防衛関連を含む基礎的な社会インフラに関わる政府・政府系機関が含まれており、NECグループの製品、サービスおよびシステムは、これらの顧客にとって極めて重要な場面で利用されることもあるほか、センシティブなデータを取り扱うこともあります。

   NECグループは、個人情報を日本の個人情報保護法や欧州の「EU一般データ保護規則(GDPR)」等の関係法令に従い取り扱わなければなりません。NECグループが、かかる情報を保護できなかった場合、これにより生じた経済的損失または精神的苦痛に対し、賠償しなければならない可能性や規制当局により多額の制裁金等を科される可能性があります。また、さらなる情報保護対策を実施するために、多額の費用が発生し、または通常業務に支障が生じる可能性があります。さらに、NECグループの製品・サービス・システムを利用している顧客が、かかる情報を保護できなかった場合には、NECグループの評価および事業に悪影響を及ぼす可能性があります。

   また、NECグループは、生体認証技術とAI技術等を活かしたデジタル・ガバメントおよびデジタル・ファイナンスの推進により成長を目指しています。これらの先端技術の進展に伴い、新たな人権問題への対応の必要性が議論されており、かかる人権問題の関心の高まりを受けて、データ保護および個人情報保護に係る規制の範囲も拡大し、かつ、その規制内容は国や地域ごとに異なる複雑なものになっています。今後も生体認証技術やAI技術等の先端技術の利用に関する規制強化に向けた動きが継続する可能性は高く、その規制内容次第では、NECグループまたはNECグループがサービスを提供する顧客において、規制当局による調査や制裁を受けるおそれや第三者から訴訟等を提起されるおそれが高まる可能性があるほか、国や地域によっては、これらの先端技術の利用そのものが禁止または著しく制限され、かかる先端技術を利用した事業機会を失う可能性があります。

 

⑦ 人権・労働環境等

   NECグループが事業を展開する国や地域では、人権や労働安全衛生等に係る問題への企業の対応に関心が高まっており、これらに関する法令および規制も変化しています。また、人種差別や政治不安に起因する人権問題が存在する地域もあります。NECグループの事業拠点やサプライチェーンにおいて、これらの問題に適切に対応できなかった場合、地域住民、顧客・消費者、株主・投資家、人権保護団体などの様々なステークホルダーからの批判にさらされ、NECグループの評価およびブランド価値が損なわれる可能性があり、また、規制に服したり、財政的負担を負う可能性もあります。

 

 

(5) その他のリスク

① 自然災害や火災等の災害

   国内外を問わず、NECグループが事業を展開する国や地域において、地震や台風などの自然災害や火災、気候変動に起因する異常気象(集中豪雨、洪水、水不足等)、致死率の高い強毒性の感染症の世界的な蔓延(パンデミック)、戦争、テロリストによる攻撃等が発生した場

合、NECグループ、NECグループの仕入先および顧客に損害、混乱が生じる可能性があります。例えば、首都直下地震が発生した場合、NECグループの本社は、甚大な被害を受ける可能性があり、その場合、NECグループの事業は悪影響を受ける可能性があります。また、これらの災害等が国内外の経済活動の停滞、為替変動・金利変動、政治不安・経済不安、治安および世情の悪化を引き起こし、NECグループの事業を阻害する可能性があります。

   NECグループでは事前の減災対策を行うとともに緊急時の復旧手順や行動要領等をまとめた事業継続計画(BCP)を策定し、訓練・教育も実施していますが、自然災害が発生すると被災地域における電気・ガス・水道・通信・交通などの社会インフラが破壊され、人的被害や製造停止、資材調達困難、物流困難、環境・品質リスクの発生など、事業に多大な影響を与える可能性があります。また、上記「(1)経済環境や金融市場の動向に関するリスク ④新型コロナウイルス感染症の流行による悪影響」に記載する新型コロナウイルス感染症の流行の深刻化など、人類が免疫を持たない未知の感染症が蔓延すると、人材の確保や労働環境のリスクが高まるほか、感染症蔓延地域における顧客の需要低下、仕入先の操業中断など、事業運営に悪影響を与える可能性があります。

 

のれんの減損

   NECグループは、2018年に英国のノースゲート・パブリック・サービシズ社を、2019年にデンマークのケーエムディ・ホールディング社を、2020年にスイスのアバロク・グループ社をそれぞれ買収したことにより2020年3月31日および2021年3月31日時点でそれぞれ1,823億円および3,005億円ののれんを計上しており、今後さらに買収を行う場合には追加ののれんを計上する可能性があります。

   NECグループの連結財務諸表は国際財務報告基準(IFRS)に準拠して作成しており、のれんを配分した資金生成単位については、減損の兆候の有無にかかわらず1年に1回、また、減損の兆候があると認められた場合には随時、当該資金生成単位の帳簿価額が回収可能価額を超えるか否かを判断するための減損テストを行う必要があります。回収可能価額は、処分費用控除後の公正価値と使用価値のいずれか高い金額に基づいて算出します。また、使用価値は、見積将来キャッシュ・フローを、貨幣の時間的価値および当該資産に固有のリスクを反映した税引前の割引率を用いて現在価値に割り引くことで算定します。減損テストの結果、のれんを含む資金生成単位の帳簿価額が回収可能価額を上回っている場合、減損損失を認識します。減損処理にあたっては、資金生成単位に配分されたのれんの帳簿価額を減額することになり、その結果、NECグループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 確定給付制度債務

   NECグループは、一部の子会社を除いて、2020年10月1日以降の積立分について確定給付年金制度から確定拠出年金制度に移行しておりますが、2020年9月30日以前の積立分については、今後も制度資産を構成する株式その他の資産の時価の変動または運用利回りの低下等によって、確定給付に係る負債が増加し、NECグループの財政状態および業績に悪影響を与える可能性があります。また、確定給付制度債務の見込額を算出する基礎となる割引率等の数理計算上の仮定に変動が生じた場合、NECグループの財政状態および業績に悪影響を与える可能性があります。例えば、将来、割引率が低下した場合や、制度の変更により過去勤務費用が発生した場合には、確定給付制度債務および確定給付費用が増加する可能性があります。

 

 

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 

※当連結会計年度から、セグメントを変更しています。

 また、前連結会計年度との比較数値については、前連結会計年度の数値を新たなセグメントに組み替えて表示しています。

 なお、「調整後営業損益」は、営業損益から、買収により認識した無形資産の償却費およびM&A関連費用(ファイナンシャルアドバイザリー費用等)を控除し、買収会社の全社への貢献を明確化した、本源的な事業の業績を測る利益指標です。また、「親会社の所有者に帰属する調整後当期損益」は、当期損益から営業損益に係る調整項目およびこれらに係る税金相当・非支配持分相当を控除した、親会社所有者に帰属する本源的な事業の業績を測る利益指標です。

 

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度におけるNECグループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。

 

① 財政状態および経営成績の状況

当連結会計年度の経済環境は、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行に伴う外出制限や営業・生産活動の停止等の影響から、世界経済、日本経済ともに、第1四半期に大きく悪化し、第2四半期以降はやや持ち直したものの、総じて低調に推移しました。

このような事業環境のもと、NECグループは、2018年1月に発表した「2020中期経営計画」に基づき、「収益構造の改革」、「成長の実現」、「実行力の改革」に取り組みました。

「収益構造の改革」では、従来、収益を押し下げる要因になっていた不採算プロジェクトや低収益プロジェクトを抑制するとともに、当社子会社であるNECディスプレイソリューションズ㈱の株式の過半数の売却による非連結化、蓄電システム事業を担う米国子会社であるNECエナジーソリューションズ社の新規受注の停止による事業縮小など事業ポートフォリオの改革を進めました。また、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う業績へのインパクトを極小化するため、あらゆる費用の見直しと節減の徹底、New Normalにおける新たなビジネス機会の積極的な開拓、相模原事業場の土地の売却や保有する株式の売却などの資産の圧縮を進め、急激に変化する事業環境にも迅速かつ柔軟に対応し、安定的に事業を運営する力を高めました。

「成長の実現」では、2018年以降に買収したノースゲート・パブリック・サービシズ社およびケーエムディ社における事業運営のNECグループとしての一体化の推進や、両社におけるさらなる企業買収により、グローバルにおけるデジタル・ガバメント領域の事業を強化しました。さらに2020年12月には、スイスの大手金融ソフトウェア会社であるアバロク・グループ社を買収し、グローバルでデジタル・ファイナンス領域に事業参入しました。

第5世代移動通信システム(5G)領域では、通信事業者への基地局の提供が本格化し、加えて様々なパートナーと戦略的な協業も進め、2020年6月には、楽天モバイル㈱と、RANからコアネットワークまでを5Gの通信技術に基づき構成したスタンドアローン方式の5Gコアネットワークの共同開発に合意するとともに、日本電信電話㈱と革新的な光・無線の技術を活用したICT製品の共同研究開発およびグローバル展開を目指した資本業務提携に合意し、中長期的な事業推進体制を強化しました。また、2020年11月には、英国にOpen RANの事業開発拠点を設立し、英国政府が主導する5G Open RANを活用した実証プロジェクト「NeutrORAN」に参加するなど、海外展開に向けた活動も拡大しました。

また、新型コロナウイルス感染症が世界的に拡大する中、観光・ビジネス客の安全・安心な旅と、現地の人々の安全対策の実現のため、2020年7月から米国ハワイ州の主要5空港に生体認証や映像分析の技術とサーマルカメラを組み合わせた感染症対策ソリューションの導入を開始するなど、生体認証やAI等のデジタル技術を活かした事業の推進を通じて社会価値創造に取り組みました。

「実行力の改革」では、最新技術を活かした顧客価値創造への挑戦と社員の力を最大限に引き出す改革に取り組みました。最新技術を活かした顧客価値創造への挑戦としては、課題や技術を産官学で持ち寄り研究開発を行う「共創型R&D」という新たな研究開発の仕組みを活用した、デジタル技術に関連する研究開発および受託研究、コンサルティング、投資などの新事業を行うため、2020年9月に当社を含めた異業種6社でBIRD INITIATIVE㈱を設立しました。次に、社員の力を最大限に引き出す改革としては、NECグループ社員全員が共有すべき軸として、会社の存在意義を明確にし、会社の姿勢と一人ひとりの価値観・行動とのつながりを示すため、2020年4月に「NEC Way」を改定しました。2020年7月には、新しい働き方をDX(デジタルトランスフォーメーション)で実現するデジタルオフィス化のプロジェクトを始動し、生体認証や映像解析等のデジタル技術を活用した様々なシステム実証実験を当社本社ビル内にて開始しました。また、多様な価値観やライフスタイルを持つ社員が成長し続け、安心して働くため、適時・適所・適材の人材活用を目指し、2020年10月に社員の主体的なキャリア形成を支援するNECライフキャリア㈱を設立しました。

 

このような経営環境のもと、当連結会計年度の売上収益は2兆9,940億円(前連結会計年度比3.3%減)、営業損益は1,538億円の利益(同262億円改善)、調整後営業損益は1,782億円の利益(同324億円改善)、税引前損益は1,578億円の利益(同339億円改善)、親会社の所有者に帰属する当期損益は1,496億円の利益(同496億円改善)、親会社の所有者に帰属する調整後当期損益は1,654億円の利益(同542億円改善)となりました。また、当連結会計年度のフリー・キャッシュ・フロー(「営業活動によるキャッシュ・フロー」と「投資活動によるキャッシュ・フロー」の合計額)は、1,524億円の収入となりました。当連結会計年度末の有利子負債(短期借入金、コマーシャル・ペーパー、1年内返済予定の長期借入金、1年内償還予定の社債、社債、長期借入金およびリース負債を合計したもの)残高は、前連結会計年度末に比べ274億円増加し、7,029億円となり、デット・エクイティ・レシオ(D/Eレシオ、自己資本(「資本合計」から「非支配持分」を控除したもの)に対する有利子負債の割合)は、0.54倍(前連結会計年度末比0.20ポイント改善)となりました。なお、有利子負債残高から現金及び現金同等物の残高を控除した有利子負債残高(NETベース)は、前連結会計年度末に比べ1,367億円減少の1,795億円となり、デット・エクイティ・レシオ(NETベース)は0.14倍(前連結会計年度末比0.21ポイント改善)となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、2,749億円の収入で、前連結会計年度に比べ130億円改善しました。これは運転資金が改善したことおよび税引前利益が改善したことなどによるものです。

投資活動によるキャッシュ・フローは、1,225億円の支出で、前連結会計年度に比べ385億円支出額が増加しました。これは有価証券および有形固定資産の売却による収入が増加したものの、アバロク・グループ社の買収に伴う子会社の取得による支出を計上したことなどによるものです。

この結果、営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合算したフリー・キャッシュ・フローは1,524億円の収入となり、前連結会計年度に比べ254億円悪化しました。

財務活動によるキャッシュ・フローは、リース負債の返済、社債の償還および長期借入金の返済による支出があったものの、長期借入れ、株式の発行、非支配持分への子会社持分売却および社債の発行による収入などにより、14億円の収入となりました。

 

上記の結果、現金及び現金同等物は、5,233億円となり、前連結会計年度末に比べ1,641億円増加しました

 

③ 生産、受注および販売の実績

NECグループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、また受注生産形態をとらない製品も多いため、セグメントごとに生産規模、受注規模を金額あるいは数量で示すことはしていません。

このため、生産、受注および販売の状況については、「(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容」におけるセグメントの業績に関連づけて示しています。

なお、外部顧客への売上収益のうち、連結損益計算書の売上収益の10%以上を占める相手先がないため、主要な販売先に関する記載を省略しています。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点によるNECグループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりです。

なお、将来に関する事項は、当連結会計年度末(2021年3月31日)において判断したものです。連結財務諸表の作成には、期末日における資産、負債、偶発資産および偶発債務ならびに会計期間における収益および費用に影響を与えるような見積りや仮定を必要とします。結果として、このような見積りと実績が異なる場合があります。

 

① 当社の概要(主な事業内容)および経営成績に重要な影響を与える要因

NECグループの売上は、5つの主要なセグメントである社会公共事業、社会基盤事業、エンタープライズ事業、ネットワークサービス事業およびグローバル事業から生じます。

各セグメントの製品およびサービス等の概要は、「第一部 企業情報 第1 企業の概況 3 事業の内容」に記載のとおりです。

NECグループの各セグメントの業績は、景気動向およびIT投資の動向や通信事業者の投資動向等に左右されます。

 

経営成績に重要な影響を与えるその他の要因につきましては、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりです。

 

② 重要な会計方針および見積り

経営陣は、次の重要な会計方針の適用における見積りや仮定が連結財務諸表に重要な影響を与えると考えています。

 

重要な会計方針および見積りにつきましては、「第一部 企業情報 第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針」と「第一部 企業情報 第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載のとおりです。

 

③ 当連結会計年度の経営成績の分析

当連結会計年度の売上収益は、2兆9,940億円と前連結会計年度に比べ1,012億円(3.3%)減少しました。これは、ネットワークサービス事業および社会基盤事業が増収だったものの、社会公共事業や、エンタープライズ事業、グローバル事業などが減収となったことによるものです。

収益面につきましては、営業損益は、前連結会計年度に比べ262億円改善し、1,538億円の利益となりました。これは、売上収益が減少したものの、不採算プロジェクトの抑制による収益性の改善や、費用の効率化による販売費及び一般管理費の改善に加え、土地売却益および子会社株式売却益の計上によるその他の損益の改善があったことなどによるものです。また、調整後営業損益は、前期に比べ324億円改善し、1,782億円の利益となりました。

税引前損益は、営業損益が改善したことなどにより、前連結会計年度に比べ339億円改善し、1,578億円の利益となりました。

親会社の所有者に帰属する当期損益は税引前損益が改善したことなどにより、前連結会計年度に比べ496億円改善し、1,496億円の利益となりました。また、親会社の所有者に帰属する調整後当期損益は、前連結会計年度に比べ542億円改善し、1,654億円の利益となりました。

 

セグメント別実績については次のとおりです。なお、各セグメント別の売上収益については、外部顧客に対する売上収益を記載しています。

 

a.社会公共事業

売上収益

4,251億円

(前連結会計年度比     11.1%減)

調整後営業損益

394億円

(    同     51億円改善)

 

社会公共事業の売上収益は、医療向けや地域産業向けが減少したことに加え、企業向けパソコンの更新需要の一巡などにより、前連結会計年度に比べ533億円(11.1%)減少し、4,251億円となりました。

調整後営業損益は、不採算プロジェクトの抑制をはじめとする収益性の改善などにより、前連結会計年度に比べ51億円改善し、394億円の利益となりました。

 

b.社会基盤事業

売上収益

6,929億円

(前連結会計年度比     2.1%増)

調整後営業損益

594億円

(    同     48億円悪化)

 

社会基盤事業の売上収益は、政府のGIGAスクール構想を背景にして教育機関向けパソコンを中心に官公向けが増加したことなどにより、前連結会計年度に比べ141億円(2.1%)増加し、6,929億円となりました。

調整後営業損益は、官公向けが売上の増加に伴い増益となった一方、連結子会社が減益となったことなどにより、前連結会計年度に比べ48億円悪化し、594億円の利益となりました。

 

c.エンタープライズ事業

売上収益

5,031億円

(前連結会計年度比    8.5%減)

調整後営業損益

482億円

(    同     39億円悪化)

 

エンタープライズ事業の売上収益は、前期にあった大型案件の売上の減少や企業向けパソコンの更新需要の一巡に加え、製造業や流通・サービス業におけるIT投資の抑制などにより、前連結会計年度に比べ467億円(8.5%)減少し、5,031億円となりました。

調整後営業損益は、不採算プロジェクトを抑制したものの、売上が減少したことなどにより、前連結会計年度に比べ39億円悪化し、482億円の利益となりました。

 

d.ネットワークサービス事業

売上収益

5,388億円

(前連結会計年度比    11.6%増)

調整後営業損益

412億円

(    同     106億円改善)

 

ネットワークサービス事業の売上収益は、通信事業者の5G導入を背景に移動ネットワーク領域や固定ネットワーク領域で増加したことなどにより、前連結会計年度に比べ561億円(11.6%)増加し、5,388億円となりました。

調整後営業損益は、売上が増加したことなどにより、前連結会計年度に比べ106億円改善し、412億円の利益となりました。

 

.グローバル事業

売上収益

4,500億円

(前連結会計年度比     8.7%減)

調整後営業損益

75億円

(    同     107億円改善)

 

グローバル事業の売上収益は、海洋システムの増加に加え、アバロク・グループ社の連結化に伴いセーファーシティが増加したものの、ディスプレイの減少およびディスプレイ事業を展開する子会社の非連結化やワイヤレスバックホールの減少などにより、前連結会計年度に比べ431億円(8.7%)減少し、4,500億円となりました。

調整後営業損益は、サービスプロバイダ向けやセーファーシティの収益性の改善、海洋システムの売上の増加に加え、子会社株式売却益の計上などにより、前連結会計年度に比べ107億円改善し、75億円の利益となりました。

 

f.その他

売上収益

3,842億円

(前連結会計年度比    6.9%減)

調整後営業損益

77億円

(    同     167億円悪化)

 

その他の売上収益は、前連結会計年度に比べ283億円(6.9%)減少し、3,842億円となりました。

調整後営業損益は、前連結会計年度に比べ167億円悪化し、77億円の利益となりました。

 

 

④ 流動性と資金の源泉

NECグループは、手許流動性、すなわち、現金及び現金同等物と複数の金融機関との間で締結したコミットメントライン契約の未使用額との合計額を今後の事業活動のための適切な水準に維持することを財務活動の重要な方針としています。当連結会計年度末は、現金及び現金同等物5,233億円、コミットメントライン未使用枠3,260億円、合計8,493億円の手許流動性を確保し、必要な流動性水準を維持しました。なお、現金及び現金同等物は主に円貨であり、その他は米ドルやユーロなどの外国通貨です。

また、NECグループは、短期・長期の資金需要を満たすのに十分な調達の枠を維持しています。まず短期資金調達では、その多くを国内コマーシャル・ペーパーの機動的な発行で賄っており、5,000億円の発行枠を維持しています。さらに、不測の短期資金需要の発生やコマーシャル・ペーパーによる調達が不安定になった場合の備えとして、コミットメントライン枠計3,280億円を維持し、常時金融機関からの借入れが可能な体制を敷いています。このうち800億円については、2024年3月までの契約期間において、短期借入を実行できるコミットメントラインとなります。一方、長期資金調達では、国内普通社債の発行枠3,000億円を維持しています。

負債構成の考え方に関しては、必要資金の安定的な確保の観点から、十分な長期資金の確保、およびバランスのとれた直接・間接調達比率の維持を当面の基本方針としており、その状況を示すと次のとおりです。

 

 

前連結会計年度末

当連結会計年度末

長期資金調達比率 *1

70.1%

85.9%

直接調達比率 *2

29.6%

25.6%

*1 長期資金調達比率は、社債、長期借入金およびその他(1年超のリース債務)の合計を有利子負債で除して計算したものです。

*2 直接調達比率は、社債(1年以内償還予定を含む)およびコマーシャル・ペーパーの合計を有利子負債で除して計算したものです。

当連結会計年度末の長期資金調達比率は85.9%、直接調達比率は25.6%となりました。

(3)キャッシュ・フローの状況について

キャッシュ・フローの状況につきましては、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおりです。

 

(4)経営戦略と今後の方針について

経営戦略と今後の方針につきましては、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりです。

 

(5)新型コロナウイルス感染症の影響

新型コロナウイルス感染症について、大きな売上の減少等はなく当連結会計年度の連結財務諸表に与える影響は軽微と判断しています。

なお、事業等のリスクにつきましては、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 2 事業等のリスク」、重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断につきましては、「第一部 企業情報 第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載のとおりです。

 

 

4【経営上の重要な契約等】

(1) 重要な技術導入、提供契約

 2021年3月31日現在における重要な技術導入、技術提供等の契約は、次のとおりです。

当 事 者

契約の内容

契約期間

当社および

インターナショナル・ビジネス・

マシーンズ社(米国)

情報取扱装置に関する特許の相互実施許諾

自:2006年9月28日

至:対象特許の終了日

当社および

インターナショナル・ビジネス・

マシーンズ社(米国)

情報取扱装置に関する特許の相互実施許諾

自:2020年3月18日

至:対象特許の終了日

当社およびインテル社(米国)

情報取扱装置に関する特許の相互実施許諾

自:2005年2月5日

至:対象特許の終了日

当社およびマイクロソフト社(米国)

情報取扱装置に関する特許の相互実施許諾

自:2006年1月1日

至:対象特許の終了日

 

(2) アバロク・グループ社の買収に関する契約

 当社は、2020年10月3日開催の取締役会において、スイスの大手金融ソフトウェア企業であるアバロク・グループ社を100%所有する持株会社であるダブリューピー・エーブィ・シーエイチ・ホールディングス・ワン社の全株式を取得することについて決議し、同社の株式を保有するアバロク・グループ社の持株会、ウォーバーグ・ピンカス社が運営する特別目的会社などと株式売買契約を締結しました。当社は、2020年12月22日付でダブリューピー・エーブィ・シーエイチ・ホールディングス・ワン社を買収し、同社およびアバロク・グループ社は当社の連結子会社となりました。

 アバロク・グループ社は、スイスを中心に金融機関向けソフトウェア事業を展開しており、世界30ヵ国150社を超える顧客を有しています。金融資産管理を中心としたソフトウェアをSaaS型で提供するなどリカーリングビジネス(継続的に収益を生み出すビジネスモデル)で事業成長を続けており、金融資産管理向けソフトウェアでは欧州およびアジア太平洋地域でトップクラスのシェアを有しています。

 当社はアバロク・グループ社の買収によりデジタル・ファイナンス領域のソフトウェアやドメイン知識を獲得し、グローバルで同領域に事業参入するとともに、デジタル・ガバメント領域の事業強化もはかります。

 今後はアバロク・グループ社および同社の顧客と長期的な関係を築くことを重視し、当社の生体認証「Bio-IDiom」や最先端AI技術群「NEC the WISE」、ブロックチェーン技術などとアバロク・グループ社のソフトウェアを組み合わせることで新たなソリューションの創出をはかります。また、2019年2月に買収したケーエムディ社を含むNECグループの販路を活用したアバロク・グループ社のソフトウェアのグローバルでの拡販を推進します。

 

5【研究開発活動】

 NECグループは、ICTを活用した社会課題解決に取り組むことで、人が豊かに生きる安全・安心・公平・効率な社会の実現を目指しています。その実現に向けて、社会価値創造の軸となる既存事業を発展させる技術や、社会に新たな価値を提供しうる将来事業向けの先進的な技術を創出し、かかる技術の事業化を加速することで、NECグループの持続的な発展を支えていきます。

 具体的には、多種多様なデータの解析により新たな価値を創造する「データサイエンス」の技術領域と、これを効率的かつセキュアに支える「ICTプラットフォーム」の技術領域を中心に据え、研究開発を推進しています。

 「データサイエンス」の技術領域では、長年にわたる技術の蓄積と事業実績、世界トップレベルの性能を持つAI(人工知能)の技術群等を活用し、実世界の見える化をはかることで従来よりも広く深い情報の収集・分析を行い、複雑化・不確実化する社会システムの将来を予測することによって、社会システム全体のデジタルトランスフォーメーションに貢献していきます。

 「ICTプラットフォーム」の技術領域では、コンピューティングやネットワーキング、セキュリティの分野において、デジタルトランスフォーメーションの深化に対応するユニークな技術を発展させることにより、即時性・遠隔性・堅牢性とダイナミズムを実現するための研究開発に取り組んでいます。

 また、NECグループは、社会や顧客が求める新たな価値を実現するための研究開発とこれらの価値を提供するための事業開発とを一体化させて技術の事業化を更に加速するため、2021年4月に新事業の創出に特化した組織であるビジネスイノベーションユニットと研究・開発ユニットを統合し、新たにグローバルイノベーションユニットを設置しました。

 さらに、グローバルに研究成果を創出するため、北米、欧州、シンガポール、中国、インドにも研究開発拠点を設置し、それぞれの地の利を生かした研究開発を推進しています。また、顧客や世界最先端の技術を有する研究パートナーとのオープンイノベーションを通じて、より大きな社会価値を創出することに挑戦しています。

 NECグループは、強い技術を生み出し続ける研究開発力と事業開発力とを統合することで技術と事業の繋がりを一層深め、技術力を顧客価値に転換し、「日本を含むグローバルでの事業フォーカス」、「国内IT事業のトランスフォーメーション」および「次の柱となる成長事業の創造」によって、成長の実現を目指します。

 

 NECグループの当連結会計年度における主な研究開発活動の成果は、次のとおりです。

 

エンタープライズ事業

ロボット導入・活用を容易にするティーチング作業自動化AIを開発

 当社は、現場の作業者が作業目標を指示するだけで、全自動でロボットの作業手順を設定し、最も効率的で安全な動作を導き出してロボットを制御するAI技術「目標指向タスクプランニング技術」を開発しました。本技術を活用することで、これまで専門家が人手で行っていたロボットへのティーチング作業(作業目標を達成する一連の作業手順の設計および作業手順に沿ってロボットを動作させる制御命令の作成と設定をする作業)を自動化し、ロボット稼働までに要する時間を大幅に短縮することが可能となります。

 当社は、本技術を活用することで、作業変更が頻繁に発生し、作業環境が変化しやすい現場におけるロボットの導入や活用を支援し、倉庫業や製造業などの現場における労働力不足の解決に貢献します。

 

 

エンタープライズ事業

AIにより車などの遠隔見守りの高度化に貢献する「学習型メディア送信制御技術」を開発

 当社は、自動運転車両の安全・安心な走行を支援するため、車載カメラが撮影した映像データを遠隔地の監視センターに送信する際、他の車両、歩行者、信号機など運転時の危険を予兆するために必要な領域に限定して最適な画質に調整するという送信制御を自動的に行い、送信データ量を大幅に削減するAI技術「学習型メディア送信制御技術」を開発しました。本技術を活用することで、映像の乱れや通信遅延が生じやすい走行中であっても車載カメラが記録した高画質な映像をリアルタイムに安定して伝送することが可能となります。

 当社は、本技術を活用した車外・車室内状況見守りソリューションを翌連結会計年度中に商用化する予定であり、当該ソリューションの提供を通じて、自動運転車両の遠隔見守りを高度化することに貢献します。

 

(グローバル事業

画像解析で人の密集度合いをリアルタイムに可視化する技術を開発

当社は、新型コロナウイルス感染症の拡大の防止に貢献するため、駅や空港といった公共施設や店舗など人が集まる場所に設置されたカメラの映像を解析し、個人を特定しない形で人の密集度合いをリアルタイムに可視化するソーシャルディスタンシング判定技術を開発しました。新型コロナウイルス感染症の拡大を防止するためには、人と人との距離を保つことが重要であり、本技術を活用して人の密集度合いを数値化しリアルタイムに示すことで、施設管理者や施設利用者に対して密集回避を促すことが可能となります。

 当社は、本技術を含む映像解析技術を活用したソリューションの提供を通じて、安全・安心な社会の実現に貢献します。

 

 当連結会計年度におけるNECグループ全体の研究開発費は、114,625百万円であり、セグメントごとの内訳は、次のとおりです。

 

社会公共事業

10,726百万円

社会基盤事業

12,646百万円

エンタープライズ事業

15,755百万円

ネットワークサービス事業

31,151百万円

グローバル事業

18,400百万円

その他

25,947百万円