第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 NECグループの経営方針、経営環境および対処すべき課題等は、次のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、NECグループが判断したものです。
 
(1) 経営の基本方針

NECグループは、NECグループが共通で持つ価値観であり、行動の原点としてNEC Wayを規定しています。

 

NEC Wayは、企業としてふるまう姿を示した「Purpose(存在意義)」「Principles(行動原則)」と、NECグループの一人ひとりの価値観・ふるまいを示した「Code of Values(行動基準)」「Code of Conduct(行動規範)」で構成されています。

 

「Purpose(存在意義)」は、Orchestrating a brighter worldをもとに、豊かな人間社会に貢献する姿を示した宣言です。

 

0102010_001.png

 

「Principles(行動原則)」は、NECグループとしての行動のもととなる原則であり、次の3つの心構えを示しています。

 

 

創業の精神「ベタープロダクツ・ベターサービス」

常にゆるぎないインテグリティと人権の尊重

あくなきイノベーションの追求

 

 

「Code of Values(行動基準)」は、NECグループの一人ひとりが体現すべき日常的な考え方や行動の在り方を示した行動基準です。

 

 

視線は外向き、未来を見通すように

思考はシンプル、戦略を示せるように

心は情熱的、自らやり遂げるように

行動はスピード、チャンスを逃さぬように

組織はオープン、全員が成長できるように

 

 

「Code of Conduct(行動規範)」は、NECグループの一人ひとりに求められるインテグリティ(高い倫理観と誠実さ)についての具体的な指針であり、次の章から構成されています。

 

 

1.基本姿勢

2.人権尊重

3.環境保全

4.誠実な事業活動

5.会社財産・情報の管理

コンプライアンスに関する疑問・懸念相談、報告

 

 

NECグループは、「Purpose」を全うするため、「Principles」に基づき、中期経営計画をはじめとする中長期的な経営戦略を実践し、社会価値の継続的な創出と企業価値の最大化をはかっていきます。

また、NECグループの一人ひとりが、「Code of Values」に基づき、自らの働き方や組織の在り方を常に見直し、改善するとともに、高い倫理観と誠実さを持ったよき企業人として「Code of Conduct」を遵守していきます。

社会や顧客が期待する価値は常に変化し続けていることから、NECグループがこれからも社会から必要とされる存在であり続けるためには、何が価値となるのかを常に考え、新たな価値を創造していく必要があります。NECグループは、情報通信技術とさまざまな知見・アイデアを融合することで、世界の国々や地域の人々と協奏しながら、明るく希望に満ちた暮らしと社会を実現して未来に繋げていきます。

 

(2) 目標とする経営指標

NECグループは、企業価値の最大化に向けて、Purpose・戦略・文化の一体的な取り組みを経営方針として掲げています。Purposeの具現化に向けて、戦略ではEBITDA成長率(*1)を、文化ではエンゲージメントスコアを、特に中核指標と位置づけています。加えて、売上収益、調整後営業利益(*2)、Non-GAAP営業利益(*3)、Non-GAAP当期利益(*4)、EBITDA(*5)およびROIC(*6)を経営上の目標として掲げています。

*1 EBITDA成長率:2020年度から2025年度までの期間におけるEBITDAの年平均の成長率を意味します。

*2 調整後営業利益:営業利益から、買収により認識した無形資産の償却費およびM&A関連費用(ファイナンシャルアドバイザリー費用等)を控除した利益指標です。

*3 Non-GAAP営業利益:営業利益から、買収により認識した無形資産の償却費およびM&A関連費用(ファイナンシャルアドバイザリー費用等)ならびに構造改革関連費用、減損損失、株式報酬その他の一過性損益を控除した本源的な事業の業績を測る利益指標です。

*4 Non-GAAP当期利益:親会社の所有者に帰属するNon-GAAP当期利益を指し、親会社の所有者に帰属する当期利益から税引前当期利益に係る調整項目およびこれらに係る税金相当・非支配持分相当を控除した、親会社の所有者に帰属する本源的な事業の業績を測る利益指標です。

*5 EBITDA:売上総利益-販売管理費+減価償却費・償却費

*6 ROIC:(調整前営業利益-みなし法人税)÷(期末有利子負債+期末純資産<非支配持分含む>)

(3) 経営環境

当連結会計年度の経済環境は、国内外で積極的なIT投資意欲がみられ、従来型ITインフラからのクラウドシフト、生成AIを活用した社会全体のデジタル化が進展しています。経済安全保障や環境問題をはじめとした社会課題が複雑化する中で、持続可能な社会の実現に向けた企業の貢献が求められており、テクノロジーの役割がさらに増大しています。

 

(4) 中長期的な会社の経営戦略および対処すべき課題

国内ITサービス事業では、BluStellarを中核事業として位置づけ、価格の適正化やAI・コンサルティング・セキュリティ系の高収益な製品・サービスへのシフトを加速し、さらなる収益性の向上を目指します。さらに、コンサルティングと先進テクノロジーの活用における強みを掛け合わせることにより、価値の提供基盤を強化していきます。

また、DX需要が本格化する全国の自治体およびSME(中堅・中小企業)向けビジネスを強化することなどを目的として、2025年3月25日にNECネッツエスアイ㈱を完全子会社化しました。今後、当社、NECネッツエスアイ㈱およびNECネクサソリューションズ㈱の3社による事業再編を行い、現在の事業領域に加え、全国の自治体およびSMEに対して、IT・ネットワークを統合したDXソリューションをコンサルティングからSI(システム・インテグレーション)、工事、保守まで一貫して提供可能な事業体制を構築することで、お客様により付加価値の高いサービスの展開を実現するとともに、事業効率化による利益最大化および競争力強化をはかります。

 

成長事業と位置づけている海外ITサービス事業では、デジタル・ガバメントおよびデジタル・ファイナンスを中心に、統括機能を欧州に移転することなどにより、収益基盤の強化に加え、成長戦略やシナジー強化の取り組みを加速させていきます。これに加えて、オフショア活用の拡大、ソフトウェア開発におけるAI活用などの収益性の改善施策を通じて、国内と同レベルの利益水準を目指します。

 

当社は、「Employer of Choice - 選ばれる会社」を目指し、人とカルチャーの変革にも取り組んでいます。「2025中期経営計画」の最終年度である2025年度は、エンゲージメントスコア50%という目標達成に向けて、エンゲージメントスコアと相関の高い重点項目である「全社方針・戦略の浸透」および「評価・報酬・登用・キャリア」に注力していきます。また、ジョブ型人材マネジメントの浸透により、多種多様な人材がそれぞれの能力と意欲を最大限に発揮し、より活躍できるポジションに登用していきます。さらに、株式報酬制度の導入・拡充を今後進めていくなど、必要な人材に選ばれるための市場競争力の高い報酬体系を構築していくことにより、優秀な人材を獲得し、NECグループの将来を担う若手層を強化・育成します。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 

1899年の創業以来、NECグループは、情報通信技術(ICT)を活用して世の中のインフラを支えるミッションクリティカルなシステムを提供することで豊かな社会の実現に貢献し、成長を続けてきました。NECグループは、今後もコンプライアンスの徹底に努め、社会を構成する多様なステークホルダーの期待に応えることで、これまで培ってきた信頼関係を維持・強化していくとともに、Purposeで謳う社会価値の創造により長期利益の最大化を目指していきます。

また、NECグループは、Purposeに照らし、環境や人に対してはもとより、自らの財務面においても、「リスク」と「機会」の両面でインパクトの大きな経営課題をマテリアリティとして特定し、その実践に努めています。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在においてNECグループが判断したものです。

 

(1)サステナビリティ経営

① ガバナンス

 NECグループでは、監督と執行を明確に分離したコーポレート・ガバナンス体制のもと、サステナビリティ経営を推進しています。コーポレート・ガバナンス体制の詳細については、「第一部 企業情報 第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 ①コーポレート・ガバナンス体制」をご覧ください。

サステナビリティ経営推進体制

0102010_002.png

 

 

(イ)経営者の役割

(i)取締役会による監督

 取締役会は、サステナビリティ推進担当役員であるCFO(チーフフィナンシャルオフィサー)およびサステナビリティ経営推進に携わる役員(以下「サステナビリティ推進関係役員」という。)から、「(ⅱ)執行体制」で説明する各会議体等で討議または承認された事項の報告を受け、マテリアリティの実践状況やサステナビリティを巡る課題への対応状況を監督しています。

 

(ⅱ)執行体制

 当社は、CFOとサステナビリティ推進関係役員が協働して、マテリアリティを核に、サステナビリティを巡る課題について、内容に応じ適切な会議体で議論・審議しています。主に「機会」については、CEOが主催する経営会議やCFOが主催する事業戦略会議を、また、「リスク」については、CRCO(チーフリスク&コンプライアンスオフィサー)が主催するリスク・コンプライアンス委員会を活用しています。会議体の詳細は、「4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要 ①コーポレート・ガバナンス体制 (ロ)執行機能 (ⅰ)執行役」に記載のとおりです。加えて、CFOおよびサステナビリティ推進関係役員が社外有識者に諮問するサステナビリティ・アドバイザリ・コミッティを設置し、当社のサステナビリティに関する方針や取り組みを最新動向に照らして客観的・専門的に議論することで、不確実性が高く、変化が急速に進む時代における自社の方向性を確認し、改善につなげています。

 経営企画・サステナビリティ推進部門は、経営企画、IR、コミュニケーションなどを推進する統括部で構成され、人事、総務、人材組織開発、リスク・コンプライアンス推進、経営システム、環境、CS、品質、調達といった当社や子会社のコーポレート部門や事業部門と密接に連携しながら、サステナビリティ推進担当役員のもと、サステナビリティ経営を推進しています。さらに、NECグループでは、取引先と連携した取り組みも進めています。

 

(ロ)マテリアリティおよびサステナビリティ関連のパフォーマンス指標と役員報酬

 マテリアリティの実践については、「NEC Wayの実践をベースとした全社の組織開発・人材開発」および「ESG視点の経営優先テーマ『マテリアリティ』の実践」を社内取締役の役割定義書で明記するとともに、サステナビリティ推進関係役員の業績評価KPIにも織り込むことにより責任を明確化し、その実効性を高めています。また、Corporate SVP以上の役職員(社外取締役を除く。)の賞与算定指標として、エンゲージメントスコアを組み入れています。詳しくは、「4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (4)役員の報酬等 ①役員報酬等の内容の決定に関する方針 (ニ)短期インセンティブ報酬(賞与)」に記載のとおりです。

 

② 戦略

 NECグループは、多様なステークホルダーとの信頼関係の維持・強化と社会価値創造による長期利益の最大化に向け、NEC Wayに基づく以下の3項目をサステナビリティ経営の基本方針として、マテリアリティを実践しています。

・事業を通した社会課題解決への貢献

・リスク管理・コンプライアンスの徹底

・ステークホルダー・コミュニケーションの推進

 

 <マテリアリティの考え方>

 NECグループは、ISO26000、GRIスタンダード、国連グローバル・コンパクト原則、SDGs、SASBなどのグローバルなガイドラインを参考に洗い出した環境や人に関する課題について、NECグループのバリューチェーン上でのインパクトの有無や大きさ、および財務的影響を評価したうえで、マテリアリティを特定しています。特定にあたっては、様々な分野の有識者やステークホルダーの代表との対話を行い、方向性の確認や改善に活かしています。マテリアリティは、取締役会の監督のもと、中期経営計画の策定時に特定されており、自社や事業の環境変化、社会からの要請の変化等に応じて毎年見直しています。マテリアリティの特定プロセスは、サステナビリティWebサイト(https://jpn.nec.com/sustainability/ja/management/nec.html)に記載のとおりです。

 「2025中期経営計画」では、企業価値算出式に照らし、成長、機会創出および成長率向上を目的とした5つの「成長マテリアリティ」と、リスク低減と成長率向上を目的とした7つの「基盤マテリアリティ」を特定し、実践しています。

 これらマテリアリティの実践を通じて、従業員、取引先、顧客など、様々なステークホルダーからの要請に応え、社会や資本市場からの信頼度を測るESGインデックスへの継続的な組み入れを目指します。

 

 

0102010_003.png

 

各マテリアリティの主なリスク、機会および取り組みは、以下のとおりです。

 

マテリアリティ

リスク

機会

取り組み

成長マテリアリティ

行政・金融のデジタル化によるWell-beingな社会を実現

・高齢化の拡大やデジタルディバイドによる行政サービスの地域差拡大、富の偏重・格差拡大

・行政と金融など、様々な業種間の連携・融合

・高度な資産運用アドバイスや資産取引における利用者の裾野拡大

・信頼性の高いデジタル技術によって、透明性が高く、公平に利用できる行政・金融基盤を構築

人にも環境にもストレスなくつながる社会の実現

・通信機器の電力消費の増加による環境負荷

・効率的なトラフィック収容やネットワーク構築、柔軟なネットワーク運用、カーボンニュートラル対応を可能にするソリューションへの需要の増加

・セキュアな通信の重要性の高まり

・高速、大容量、低遅延の通信環境の提供

社会や産業の変革をデジタルの力で実現

・DXに通じた人材の不足やロードマップ作成の難しさなどによる実事業への展開の遅れ

・社会・企業のデジタル化によるIT需要の継続

・デジタル技術を活用したクラウドベースのサービス導入の増加

・AI、生体認証、セキュリティなどの技術力とクラウドやアジャイルの技術者、データサイエンティストなどの豊富な人材を強みに、社会や産業のDXを推進

誰もが自分らしく生きる、新しいヘルスケア・ライフサイエンスの世界を実現

・協業の遅れや市場の立ち上がり時期の遅れ

・AIなど先進技術を活用したヘルスケアへの需要の増加

・AIや画像認識技術を活用し、先進的な個別化治療/総合的医療サービス/ライフスタイルサポートの新事業開発を推進

お客さま・社会のカーボンニュートラルを実現

・カーボンプライシング導入や、CO2排出量に伴う費用増

・自然災害によるシステム障害

・カーボンニュートラル実現に向けたICTソリューション需要の増加

・自社のCO2削減の知見と経験を活かしてお客さまの脱炭素推進をデジタルで支援し、社会全体のカーボンニュートラルに貢献

基盤マテリアリティ

気候変動(脱炭素)を核とした環境課題への対応

 

・自社とサプライチェーン全体からのCO2排出量を削減

・洪水や干ばつなどの気象災害リスクに備えるソリューションの提供

ICTの可能性を最大限に広げるセキュリティ

・情報漏えい、不正アクセス、システム障害

・セキュリティ人材の育成

・堅牢な情報システムの提供・運用

・情報セキュリティ対策を確実に推進するとともに、NECグループの情報セキュリティのレファレンス事例やセキュリティを組み込んだ製品・システム・サービスを提供

・情報セキュリティ人材の育成を強化

人権尊重を最優先にしたAI提供と利活用

(AIと人権)

・新技術に伴うプライバシー侵害

・バリューチェーン上における人権侵害

・競争力強化

・「NECグループAIと人権に関するポリシー」をもとに人権を最優先にしたAI提供と利活用を推進

・国内外の法規制の動向を踏まえたAIガバナンスの強化と様々なステークホルダーとの対話を継続

多様な人材の育成とカルチャーの変革

・人材の確保・育成が困難

・長時間労働

・ハラスメント

 

 

・従業員エンゲージメント向上による組織力アップ

・NEC WayおよびHR方針に基づき、「2025中期経営計画」において「人・カルチャーの変革」を掲揚

・イノベーションの源泉であるダイバーシティを加速させるとともに、多様なタレントのワークスタイルを支える働き方改革を実行

社会価値の継続的な創出と企業価値の最大化を図るコーポレート・ガバナンス

・会計プロセス不備

・秘密情報管理

・社会からの信頼獲得

・以下を基本方針にコーポレート・ガバナンスを推進

1.経営の透明性と健全性の確保

2.スピードある意思決定と事業遂行の実現

3.アカウンタビリティ(説明責任)の明確化

4.迅速かつ適切で公平な情報開示

調達取引先との協働・共創を通じたサプライチェーンサステナビリティ

・バリューチェーン上における人権侵害

・サプライヤーとの協働・共創

・調達取引先に「サプライチェーンにおける責任ある企業行動ガイドライン」を周知し、その内容を遵守する旨の宣言書を取得する活動を推進

社会価値創造型企業としてのコンプライアンスの実践

・コンプライアンス事故(違法行為、不正行為)

・品質・安全性に関する法規制

・プロジェクト契約に関する品質向上コスト

・社会からの信頼獲得

・役員から従業員に至るまで、NECグループ行動規範「Code of Conduct」の同意書に署名し、一人ひとりがコンプライアンスを自分事として認識し、規範に基づく行動を日々実践

 

③ リスク管理

 NECグループのサステナビリティ関連リスクは、全社リスク管理の一環として、各制度主管および各事業主管が管理し、リスク・コンプライアンス委員会が定期的にモニタリングしています。リスク管理、リスク特定における方針・プロセス・運用状況については、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりです。

 なお、全社リスク管理事項となっている「サイバーセキュリティ」、「人権の尊重」、「重大な不祥事の発生」および「人的資本経営」は、社会に対するインパクトも自社における財務的影響も大きいことから、「ICTの可能性を最大限に広げるセキュリティ」、「人権尊重を最優先にしたAI提供と利活用(AIと人権)」、「社会価値創造型企業としてのコンプライアンスの実践」および「多様な人材の育成とカルチャーの変革」として「基盤マテリアリティ」にも位置づけています。

 一方、機会創出については、「基盤マテリアリティ」の取り組みのほか、「成長マテリアリティ」の実践状況を「2025中期経営計画」の進捗管理の一環で確認しています。加えて、自らをゼロ番目のクライアント、すなわち「クライアントゼロ」として位置づけ、リスク低減に関して、まずは自ら取り組み、その実践で得たノウハウも踏まえて顧客に提供することで大きな機会創出につなげることを目指しています。例えば、サイバーセキュリティでは、自社で実践してきたセキュリティ経営から得た経験とノウハウを活かし、セキュリティリスクマネジメントを支援するサービスを提供しています。

 

④ 指標及び目標

 「2025中期経営計画」において、マテリアリティの進捗を測るための指標として2025年度のKPIを設定し、毎年成果や課題を確認し、必要に応じて追加施策の検討や目標の見直しを行っています。各マテリアリティの2025年度のKPIと2024年度の取り組み実績は、次のとおりです。

 

マテリアリティ

2025年度KPI

2024年度実績

成長マテリアリティ

行政・金融のデジタル化によるWell-beingな社会を実現

・DGDF
売上収益3,150億円
調整後営業利益率12.1%(*1)

・DGDF
売上収益3,207億円
調整後営業利益率6.7%

人にも環境にもストレスなくつながる社会の実現

 ― (*2)

 

 ― (*2)

 

社会や産業の変革をデジタルの力で実現

・BluStellar
売上収益6,240億円
調整後営業利益率13.2%(*3)

・DX人材のべ人数12,000名

・BluStellar
売上収益5,424億円

調整後営業利益率12.2%

・DX人材のべ人数11,935名

誰もが自分らしく生きる、新しいヘルスケア・ライフサイエンスの世界を実現

・事業価値5,000億円(2030年度)に向けてヘルスケア・ライフサイエンス新事業を継続的に創出

・生成AIを活用した病院経営マネジメントサービスの実証実験を開始

・治験患者登録の効率化に向けLLM活用の有効性を実証

・個別化ネオアンチゲンがんワクチンの有効性確認のための治験が着実に進展

お客さま・社会のカーボンニュートラルを実現

・企業の脱炭素を支援するカーボンマネジメントなどの領域での事業拡大

・気候変動対策領域に加え、資源循環・自然資本などへも領域を拡大

・顧客および業界団体などとの社外連携やトライアルを促進

・自社取り組みを顧客課題解決に繋げる環境クライアントゼロ戦略を推進

基盤マテリアリティ

気候変動(脱炭素)を核とした環境課題への対応

 

・2040年カーボンニュートラルに向けScope1およびScope2におけるCO2排出量を25.0%削減(2020年度比)

・集計中(*4)

(2023年度実績は、Scope1およびScope2におけるCO2排出量約31.0%削減(2020年度比))

ICTの可能性を最大限に広げるセキュリティ

・国際認定資格(*5)取得者数3倍(2020年度比)

・国際認定資格(*5)取得者数累計約560名、2020年度比約3.7倍

人権尊重を最優先にしたAI提供と利活用(AIと人権)

・「NECグループAIと人権のポリシー」の適用

・「NECグループAIと人権のポリシー」の適用

多様な人材の育成とカルチャーの変革

・エンゲージメントスコア50%

・女性管理職比率20%(*6) 、役員に占める女性または外国人の割合20%(*7)

・エンゲージメントスコア42%

・女性管理職比率10.6%(*8)、役員に占める女性または外国人の割合16.9%(*9)

社会価値の継続的な創出と企業価値の最大化を図るコーポレート・ガバナンス

・独立社外取締役がマジョリティの指名委員会等設置会社への移行によるガバナンス高度化

・取締役会のモニタリング機能の強化

・独立社外取締役比率61.5%

調達取引先との協働・共創を通じたサプライチェーンサステナビリティ

・調達ガイドへの同意サプライヤー75%(*10)

・調達ガイドへの同意サプライヤー87%(*10)

社会価値創造型企業としての

コンプライアンスの実践

・重大なカルテル・談合行為の発生件数0件

・重大なカルテル・談合行為の発生件数0件

*1 2025年度に目標を変更したもの

*2 環境変化に伴いKPI対象から除外

*3 2024年度にコアDXから変更し、KPIも見直ししたもの

*4 サステナビリティ情報を掲載した当社のウェブサイトや今後発行予定の「ESGデータブック2025」において報告予定。なお、「ESGデータブック2025」は、2025年度上期中に当社ウェブサイトで公表を予定。

*5 CISSP(Certified Information Systems Security Professional)

*6 2025年度内に決定された2026年4月1日付異動を含む。

*7 2026年3月末日時点の当社の取締役、執行役、Corporate SEVP、Corporate EVPおよびCorporate SVP(執行役、Corporate SEVP、Corporate EVPおよびCorporate SVP については2025年度内に決定された2026年4月1日付異動を含む。)

*8 2025年3月末日時点。2025年4月1日時点の女性管理職比率は11.7%

*9 2025年3月末日時点の当社の取締役、執行役、Corporate SEVP、Corporate EVPおよびCorporate SVP。2025年4月1日時点の役員に占める女性または外国人の割合は20.0%

*10 調達金額ベースでの比率

 

  「サプライチェーンサステナビリティ」については、当連結会計年度末時点で87%となり、前年度に引き続き2025年度のKPIである75%を達成しました。この数値は、調達金額ベースであるため変動しますが、2025年度末時点においても達成するよう取り組みを継続します。

 

(2)気候変動

① ガバナンス

 NECグループは、「(1)サステナビリティ経営 ①ガバナンス」に記載のサステナビリティ経営推進体制のもと、CSCO(チーフサプライチェーンオフィサー)が環境担当役員として、環境経営体制を整備しています。

 

(イ)経営者の役割

(i)取締役会による監督

 取締役会は、「(ⅱ)執行体制」で説明する各会議体等で討議または承認された議題のうち、「NECグループの事業に対して特に著しい影響を及ぼす、気候変動などのマテリアリティを巡る課題」について、CSCOから報告を受け、適宜対策指示を行い、対応状況を監督しています。

 

(ⅱ)執行体制

 気候変動を含む環境関連の重要事項については、経営会議または事業戦略会議にて討議します。付議する議題については、各ビジネスユニットに設置された環境経営委員会やテーマ別専門部会での議論および各ビジネスユニットの環境推進責任者で構成された環境経営推進会議での議論の結果、重要と判断されたものに限られます。

 各ビジネスユニットは、環境経営委員会の設置に加え、各部門や国内外のNECグループ会社における具体的な取り組みにつながる体制を整えており、経営会議または事業戦略会議で策定された環境戦略に基づき具体的な活動計画を立案および実践することで、NECグループとして一貫した環境経営を推進しています。

 例えば、NECグループの気候変動に関する環境方針・目標は、環境経営推進会議において審議・策定しています。CSCOは、その内容を確認し、上位会議体にあたる事業戦略会議に報告しています。また、気候変動に関するリスクについても、環境経営推進会議において共有し、事業に与える影響が大きい場合には、CSCOが確認のうえ、必要に応じてリスク管理プロセスに則ってリスク・コンプライアンス委員会で討議します。

 

(ロ)マテリアリティおよびサステナビリティ関連のパフォーマンス指標と役員報酬

 NECグループ全体で確実に気候変動対策を推進するため、CSCOは、ESGに関する第三者評価「CDP気候変動Aリスト評価」の達成にコミットし、その達成成否は、一定割合で賞与査定に連動しています。

 

② 戦略

 NECグループは、2017年に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」への賛同を表明し、気候変動に関する戦略として、不確実な未来への対応力を高めるため、複数のシナリオで将来起こりうる社会を予想し、対応策を検討しています。気候変動に関する政府間パネルなどの公開情報、ICT動向および社会情勢をもとに、サプライチェーン全体における中長期的なシナリオ分析を行い、以下のとおり事業のリスクと機会を認識しています。「2025中期経営計画」においては、基盤マテリアリティの一つとして「気候変動(脱炭素)を核とした環境課題への対応」を、成長マテリアリティの一つとして「お客さま・社会のカーボンニュートラルを実現」を特定し、事業における環境リスクの低減と事業を通じた環境課題解決に向けて取り組んでいます。

 

<気候関連のリスクとビジネスモデルおよびバリューチェーンに与える影響および財務的影響>

リスク

シナリオ(1.5℃

or 4.0℃)

(*1)

内容

時間軸

(*2)

財務的影響

/年

対策

関連事業

移行

(*3)

1.5℃

カーボンプライシングによるコスト増

中期

44億円

CO2排出量実質ゼロ(2040年)達成に向けた効率化の徹底と再生可能エネルギーの活用拡大

ITサービス

社会インフラ

その他

レピュテーションリスクによる売上減

短期

36億円

SBTイニシアティブ(*4)認定および再生可能エネルギーの活用拡大とグリーン電力の購入

物理

(*5)

4.0℃

データセンターの気象災害(洪水、土砂崩れ、水不足など)の影響による事業停止に伴う売上減

短期

33億円

非常用電源設備などの発電設備の強化(5日間稼働分の燃料の備蓄など)

ITサービス

洪水に伴う生産拠点の稼働停止の影響による売上減

中期

82億円

フロアの嵩上げや浸水防止のための止水板、止水扉の設置および土のうの備蓄など

ITサービス

社会インフラ

その他

 

*1 1.5℃:脱炭素社会が実現し、2100年に気温が1.5℃上昇するシナリオ

  4.0℃:脱炭素社会が実現せず、2100年に気温が4℃上昇するシナリオ

*2 時間軸:短期=0~3年、中期=4~10年、長期=11~20年

*3 移行リスク:脱炭素社会への移行に伴って、政策・法務・技術革新・市場嗜好の変化などにより発生するリスク

*4 SBTイニシアティブ:企業に対し、科学的根拠に基づく二酸化炭素排出量削減目標を立てることを求めるため、カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト(CDP)、国際連合グローバル・コンパクト(UNGC)、世界資源研究所(WRI)および世界自然保護基金(WWF)の4団体により設立されたイニシアティブ

*5 物理リスク:異常気象から引き起こされる事象による急性リスク(洪水や土砂災害など)と長期間での気候パターンの変化による慢性リスク(海面上昇や熱波、耕作適地の変化など)

 

  <気候関連の機会とビジネスモデルおよびバリューチェーンに与える影響および財務的影響>

機会

シナリオ

(1.5℃

or 4.0℃)

内容

時間軸

財務的影響

/年

機会創出と拡大

関連事業

適応

(*6)

4.0℃

適応価値の透明化とそれによる資金導入の需要増加による売上増

中期

-(*7)

デジタル技術の応用により減災効果や環境効果の見える化を行う「NECデジタル適応ファイナンス」の提供

ITサービス

適応

緩和

(*8)

4.0℃

災害に強い、エネルギー効率の高いデータセンターへのニーズ拡大による売上増

中期

133億円

データセンターのエネルギー効率改善(データセンターのグリーン化)

緩和

4.0℃

製造業の過剰在庫削減ニーズ増加による売上増

中期

-(*7)

需要予測技術を用いた廃棄物の削減

*6 適応:すでに生じている、あるいは将来予測される気候変動の影響による被害を回避・軽減させるために備えること

*7 本有価証券報告書提出日現在算定中です。

*8 緩和:気候変動の原因となる温室効果ガスの排出量を減らすこと

 

③ リスク管理

 「(1)サステナビリティ経営 ③リスク管理」に記載のとおり、気候変動への対応に関するリスクも全社リスク管理の一環として、「①ガバナンス (イ)経営者の役割」に記載の「(ⅱ)執行体制」のもと、気候シナリオ分析を活用したリスク評価を行っています。そして、潜在的および顕在的リスクに対する対応の進捗や課題を把握し、そのモニタリング結果をもとに計画の見直しや取り組みの改善を図ることにより、リスク低減とリスクの発生防止につなげています。一方、気候変動への対応に関する機会については、カーボンニュートラルビジネス推進PMO(*9)が全社横断で識別・評価し、事業ポートフォリオ管理を行い、四半期ごとにCEOおよびCFOに報告しています。

 なお、前連結会計年度から気候関連のリスクおよび機会の管理プロセスに変更はありません。

 

*9 カーボンニュートラル関連事業の拡大・創出に向けた活動を担う専門部署として2022年度に新設。PMOはプロジェクトマネジメントオフィスのこと。

 

<気候シナリオ分析>

 当社は、気候変動に対するリスクと機会の評価と特定のために、2022年度にシナリオ分析を実施しました。
(イ)使用したシナリオ
 シナリオ分析の際に参照した移行リスクおよび物理的リスクに関するシナリオは、以下のとおりです。最新の国際合意に沿ったシナリオであり、気候変動のレジリエンス評価にも活用しています。

シナリオ

出典

1.5℃

IPCC AR6 WG1 SSP1-1.9

IEA World Energy Outlook2021 Net Zero Emissions by 2050 Scenario (NZE)

IPCC 1.5℃特別報告書

IPCC AR5 RCP2.6

国立環境研究所 日本版SSP SSP1:持続可能

4.0℃

IEA World Energy Outlook2021 Stated Policies Scenario (STEPS)

IPCC AR6 WG1 SSP5-8.5

IPCC AR5 RCP8.5

国立環境研究所 日本版SSP SSP3:地域分断

 

(ロ)時間軸

 パリ協定だけでなく、ステークホルダーからの要請に対応するため、長期にわたる気候変動の影響を評価する必要性があると考え、2050年までを対象に分析しました。また、SBT目標設定に合わせて2030年を中間地点として設定しました。

 

(ハ)検討ステップ

 2022年度は、自治体を中心とした行政DXを対象事業と定め、リスクと機会両面でシナリオ分析を行いました。

 2024年度は、対象事業をNECグループ全体に広げ、NECグループの強みであるAI技術を活用して、リスクの重要度評価を行ったうえでリスク面でのシナリオ分析を実施しました。

 

検討ステップの詳細は、以下のとおりです。

 

0102010_004.png

 

④指標及び目標

 当社は、2017年に策定した「2050年を見据えた気候変動対策指針」、2021年9月に署名した「Business Ambition for 1.5℃(BA1.5℃)」をベースに、2021年に、2050年までのCO2排出量実質ゼロ(Scope1、Scope2およびScope3(*10))を宣言しました。その後、2022年9月に、サプライチェーン全体からのCO2排出量を2040年までにゼロとすることを目指すイニシアティブ「The Climate Pledge(TCP)」に参加し、従来計画比で10年前倒しとなる2040年カーボンニュートラルを宣言しました。また、2024年4月にはSBTイニシアティブからNet-Zero目標の認定(*11)を取得し、2030年度までに「Scope1、Scope2およびScope3のそれぞれ50%以上を削減(2020年度比)」という目標に引き上げました。

 この目標達成に向け、NECグループは、事業で使用する電力を100%再生可能エネルギーとすることを目指す国際イニシアティブ「RE100」(*12)に2021年に加盟し、再生可能エネルギーの利用拡大を進めており、既に当社本社ビルやNEC Cloud IaaSのデータセンターで使用する電力を100%再生可能エネルギー由来に置き換えています。2023年度には、RE100の目標達成年度を2050年から2040年に前倒ししています。

 「2025中期経営計画」における気候変動に関連する指標および目標については、「(1)サステナビリティ経営 ④指標及び目標」に記載のマテリアリティ「お客さま・社会のカーボンニュートラルを実現」および「気候変動(脱炭素)を核とした環境課題への対応」のとおりです。Scope1およびScope2におけるCO2排出量削減の2024年度の目標は、次のとおりです。

 

<CO2排出量削減目標>

2024年度

目標(2020年度比)

実績

Scope1,2

20.0%

集計中

*10 Scope1:事業者が所有または管理する排出源から発生する温室効果ガスの直接排出

    Scope2:電気、蒸気、熱の使用に伴う温室効果ガスの間接排出

    Scope3:Scope1およびScope2以外の事業者の関連する他社の温室効果ガス排出

*11 Net-Zero目標の認定 :2030年度までに2020年度比で、Scope1、Scope2およびScope3のそれぞれ50%以上を削減し、2040年度までに90%以上削減を目指す。まずはこの削減を最優先し、削減が非常に困難な残余排出量は、吸収クレジットで中和することでNet-Zeroの達成を目指す。

*12 RE100 :企業が自ら事業の使用電力を100%再生可能エネルギーで賄うことを目指す国際的なイニシアティブ

 

<温室効果ガス排出の測定に用いたアプローチ>

 NECグループにおける温室効果ガス排出量の把握にあたっては、NECグループ財務連結範囲を対象として、財務支配力アプローチ・見積りの方法により測定しています。

Scope1とScope2のマーケットベースは、地球温暖化対策の推進に関する法律に基づき算出し、Scope2のロケーションベースは、国際エネルギー機関(IEA)Emissions Factors 2024の国別排出係数を参照し算出しています。

 Scope3については、GHGプロトコルScope3スタンダードに基づいて算出しています。

温室効果ガス排出量を測定するために使用した活動量および排出係数に関する情報ならびに測定にあたり当社が置いた仮定は、以下のとおりです。活動量については、データの入手可能性、鮮度および網羅性を考慮のうえ、決定しました。

 

 なお、前連結会計年度から測定アプローチ・方法に変更はありません。

分類

活動量

排出係数

仮定

Scope1

燃料の調達実績

燃料種類別排出係数

Scope2

電力および熱の調達実績

ロケーションベースおよびマーケットベースの排出係数

Scope3

Cat1

原材料・資材の調達額

サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等の算定のための排出原単位データベース(ver.3.2)

Cat2

資本財の調達額

Cat3

電気・蒸気のエネルギー使用量

サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等の算定のための排出原単位データベース(ver.3.2)

LCIデータベースIDEAv2

Cat4

荷主分の輸送に係る燃料使用量

物流関係の量(金額、重量、輸送距離)

ロジスティクス分野におけるCO2排出量算定方法 共同ガイドラインVer.3.1(従来トンキロ法)

当社の費用と輸送に伴うCO2排出量を基にNECグループ分を算出、調達輸送はシナリオを設定しCO2排出量を算出

Cat5

廃棄物種類別排出量

サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等の算定のための排出原単位データベース(ver.3.2)

Cat6

従業員数

Cat7

交通費支給額

通勤手段に関する過去実績を基に当該年度の実績を按分し通勤手段別にCO2排出量を算出

Cat8

リース資産の使用量(エネルギー使用量、移動距離)

Cat9

製品重量

物流関係の量(輸送距離)

ロジスティクス分野におけるCO2排出量算定方法 共同ガイドラインVer.3.1(従来トンキロ法)

パーソナル製品の輸送シナリオを設定しCO2排出量を算出

Cat10

中間製品の販売量(金額、部品量)

LCAデータ

サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等の算定のための排出原単位データベース(ver.3.2)

部品1個当たりの平均単価、部品1個当たりのプロセスにおけるエネルギー使用量を社内データから求め、中間製品製造時にCO2排出量を算出

Cat11

資材の調達量(金額)

LCAデータ

当社製ハードウェアのカーボンフットプリントの値を使用、さらに外部購入ハードウェアについては費用額の比を基に延伸し、付加して算出

Cat12

廃棄物別の量(重量)

製品関連データ

当社製品の包装に関するデータをサンプリングし、当社取り扱いの全ハードウェアに延伸

Cat13

該当活動なし

Cat14

該当活動なし

Cat15

該当活動なし

 

 NECグループの気候変動の取り組みの詳細は、以下の当社ウェブサイトに掲載しています。

なお、当該ウェブサイトの内容に更新があった際には遅滞なく更新します。

https://jpn.nec.com/sustainability/ja/eco/risk.html

 

 

(3) 人的資本経営

① ガバナンス

 NECグループは、「(1) サステナビリティ経営 ①ガバナンス」に記載のサステナビリティ経営推進体制のもと、CHRO(チーフヒューマンリソーシズオフィサー)が人的資本経営の推進体制を整備しています。

 

(イ)経営者の役割

(i)取締役会による監督

 取締役会は、「(ⅱ)執行体制」で説明する各会議体等で討議または承認された議題のうち、「NECグループの事業に対して特に著しい影響を及ぼす、人的資本経営などのマテリアリティを巡る課題」について、CHROから報告を受け、適宜対策を指示するなどし、対応状況を監督しています。

 

(ⅱ)執行体制

 CHROの主導のもと、人事、組織変革、総務、労務、人材育成などの専門部署で構成されるピープル&カルチャー部門が人的資本経営を推進しています。人的資本経営に関する重要事項は、議題の内容により、経営会議、事業戦略会議またはリスク・コンプライアンス委員会で議論・審議のうえ、決定しています。

 当社は、1997年に人権啓発推進会議を設置して以来、差別の禁止やハラスメントの防止をはじめとした人権啓発活動を継続して推進しています。また、従業員の安全および健康については、社長の指示のもと、CHROがリスク管理を含む安全衛生および健康に関わる活動を統括し、その活動内容を取締役会などで報告しています。

 「2025中期経営計画」の「人・カルチャーの変革」の推進にあたっては、社長を委員長とするI&D推進委員会およびI&D変革チームを立ち上げ、インクルージョン&ダイバーシティに関する各種施策を検討のうえ、実行しています。加えて、2023年度には営業・ビジネスデザイン、マーケティング、サービス・SE・コンサルタントなどの職種別に役員クラス(Corporate SVP以上の役職員およびCorporate Executive)が委員長を務める人材育成委員会を新設し、NECグループ全体で体系的に人材育成を行う体制を整備しました。

 

(ロ)マテリアリティおよびサステナビリティ関連のパフォーマンス指標と役員報酬

 CHROを含むCorporate SVP以上の役職員(社外取締役を除く。)の賞与算定指標として、エンゲージメントスコアを組み入れています。詳しくは、「第一部 企業情報 第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (4)役員の報酬等 ① 役員報酬等の内容の決定に関する方針(ニ)短期インセンティブ報酬(賞与)」に記載のとおりです。

 

② 戦略

 NECグループでは、最大の経営資源を「人」と位置づけており、人的資本経営はリスク低減と機会創出の双方に寄与する重要テーマであると考えています。

 NECグループは、2019年にHR(Human Resources)方針「挑戦する人の、NEC。」を策定し、従業員一人ひとりへの多様な挑戦・成長機会の提供やフェアな評価、挑戦する従業員がベストを尽くせるよう環境や風土の変革を進めてきました。2021年には、これに加え、同年に公表された「2025中期経営計画」を人的資本経営の観点で実現する「2025人事中期経営戦略」を策定し、多様なタレント人材の活躍、働き方マインドセット改革、「適時適所適材」の実現およびタレントマネジメントという4つの柱を定め、「人・カルチャーの変革」を実現します。

 HR方針および「2025人事中期経営戦略」ならびにこれらに基づく具体的な取り組み内容は、次のとおりです。

 

(イ)HR方針

0102010_005.png

 

(i)多様な挑戦機会

 2020年度にNECライフキャリア㈱を設立して以来、従業員のキャリア自律・スキル開発支援を強化しています。具体的には、年間約6,000名が参加するキャリアデザインワークショップや年間約3,000名以上が利用するキャリア面談など、従業員が自律的にキャリアを形成するための支援のほか、従業員のスキルアップデートおよび行動変容を加速させるリスキリングプログラムを提供しています。

 

(ⅱ)限りない成長機会

 新しい発想、柔軟な視点、豊富な経験・実績を活かした変革型リーダーシップを兼ね備えたNECグループを牽引するリーダーを育成することを目的に、将来の経営リーダーを育成するプログラム「NEC Talent Acceleration Program(NTAP)」を展開しています。また、グローバルマーケットで勝ち続ける強い経営リーダー、強い経営チームを創出する取り組みを行っています。

 

(ⅲ)フェアな評価および次へ繋がるリワード

 ジョブ型人材マネジメントの実現に向けて人事の仕組み全体を整備する中で、2024年4月からジョブグレード体系と報酬制度を改めています。市場価値を反映した競争力のある報酬体系へ移行し、パフォーマンスに応じたフェアな評価とフィードバックの徹底をはかっています。また、NECグループでの「適時適所適材」をより一層進めるべく、これらの仕組みを2025年4月からNECグループ会社(当社含む6社、約49,000名)に展開しています。

 

(ⅳ)従業員がベストを尽くせる環境、文化の実現

 従業員一人ひとりが働きやすさだけでなく働きがいを持って高いパフォーマンスを発揮し、自律的に自己実現を描けるような環境づくりに取り組んでいます。

 

(ロ)「2025中期経営計画」の実現

 NECグループでは、「2025中期経営計画」において企業価値の最大化に向けたPurpose・戦略・文化の一体的な取り組みを経営方針としており、文化の観点でエンゲージメントスコアを中核指標と位置付けています。その取り組みを加速するために、HR方針に基づき「2025人事中期経営戦略」を策定し、多様なタレント人材の活躍、働き方マインドセット改革、「適時適所適材」の実現およびタレントマネジメントという4つの重点テーマに取り組んでいます。

 

(i)多様なタレント人材の活躍

 多様な人材が活躍し、多角的な視点やアイデアが尊重されるカルチャーを醸成することは、イノベーションの創出のために必須かつ重要な経営戦略の一環であると考えています。そのための施策として、グローバルな人材活用、キャリア採用の拡充、女性の活躍推進、障がい者の雇用促進および性的マイノリティに対する理解と支援の促進などに取り組んでいます。

 

(ⅱ)働き方マインドセット改革

 当社では、2024年度から、従業員一人ひとりの健康やインテグリティをベースとしてチームのパフォーマンスを最大化し、Purposeの実現を目指す目的組織としての活動を加速させています。具体的には、Face to Faceの活用機会を、原則として40%(週2日)以上設けることや、会社と従業員がインテグリティの高い行動をとることを基本的な考え方としています。

 

(ⅲ)「適時適所適材」の実現

 社会価値を創造しグローバル競争に勝つために重要となるのが、「適時適所適材」の実現です。市場の変化にしなやかかつスピーディに対応するために、戦略起点で適時にその実行に必要な組織・ポジションを設計し、社内外から最適な人材を登用していきます。

 当社は、ジョブ型人材マネジメントを目指して、2018年度の評価制度改革から開始し、段階的に制度・仕組みを導入してきました。2024年4月からは、全従業員向けにジョブ型人材マネジメントを適用しています。

 

(ⅳ)タレントマネジメント

 「2025中期経営計画」に掲げる「国内IT事業のトランスフォーメーション」実現のため、社会価値を創造・実装し続けるDX人材(*1)を12,000名(*2)確保する計画を掲げ、DX人材育成の強化を進めています。また、次世代リーダー人材の育成として、有望人材にタフアサインメントやトレーニングなどの豊富な成長機会を提供し、成長のスピードを加速する取り組みを行っています。

 

*1 当社が各定義および要件を定めるコンサルタント、データサイエンティスト、サイバーセキュリティ人材などを指しており、当社および次の連結子会社等を対象としています。
NECプラットフォームズ㈱、NECソリューションイノベータ㈱、日本電気通信システム㈱、NECネクサソリューションズ㈱、NECビジネスインテリジェンス㈱、NECネットワーク・センサ㈱、NECスペーステクノロジー㈱、日本電気航空宇宙システム㈱、NECライフキャリア㈱、㈱日本電気特許技術情報センター、NEC企業年金基金

*2 2024年度に目標を10,000名から引き上げました。

 

 上記のほか、当社は、「多様な人材の育成とカルチャーの変革」をマテリアリティとして特定しています。詳細は、「(1)サステナビリティ経営 ②戦略」に記載のとおりです。

 

③ リスク管理

 NECグループが事業目標を達成するためには優秀な従業員を獲得し維持する必要があり、優秀な従業員が多数離職した場合または優秀な人材を新規に採用することができなかった場合には、NECグループの事業活動に大きな影響を与えると考えています。これらのリスクは、「人的資本経営」として全社リスク管理において重要なリスクとして特定しており、CRCO(チーフリスク&コンプライアンスオフィサー)主導のもと、四半期ごとに影響度と切迫性の観点でリスク評価を行い、人材獲得に向けた外部エージェントや大学とのリレーションシップの構築や、期初予算で設定した要員計画に対する実績の差異を継続的に把握することなどにより、リスクの低減につなげています。

 

リスクおよびリスクへの対応策は、次のとおりです。

(イ)人材の確保および育成

 採用面では、人材紹介会社の利用に限らず、スカウトによる積極的な人材獲得、ブランディング・広報などに取り組んでいます。その結果、2024年度のITサービス領域では、当社ならびに主要子会社のNECソリューションイノベータ㈱およびアビームコンサルティング㈱において1,034名をキャリア採用しています。

 育成面では、DX人材をクラウド系、データサイエンティスト、サイバーセキュリティなど8つに分類のうえ専門の育成プログラムを整備しています。組織ごとのDX人材や育成状況を常時把握できる仕組みを構築しており、ITサービス領域の人材定着率は97%と高水準となっています。

 

(ロ)安全と健康を損なう長時間労働

 定期的にモニタリングを行い、残業時間が多い部門について残業要因の分析を実施し、個人の働き方、組織横断アプローチの両面から対策に取り組んでいます。

 

(ハ)労働安全、ハラスメント

 NECグループにおける労働安全衛生の基本理念と行動指針を定める「NECグループ安全衛生方針」のもと、「NECグループ労働安全衛生マネジメントシステム」に基づき、リスクの特定および対策を行っています。全従業員に対して定期的にオンラインでの研修を実施するとともに、管理職層にはワークショップ形式での研修を実施しています。

 

機会の創出に向けた各種取り組みは、次のとおりです。

(イ)ジョブ型人材マネジメント制度の導入と事業戦略に紐づく柔軟な人材配置

 「② 戦略 (ロ)「2025中期経営計画」の実現 (ⅲ)「適時適所適材」の実現」に記載の取り組み等により、変化に対応しながら最適な人材ポートフォリオを実現し、「適時適所適材」を実現することで、戦略実行に向けた変化へのスピーディな対応を可能とします。

 

(ロ)インクルージョン&ダイバーシティの推進

 NECグループでは、ダイバーシティをイノベーションの源泉であると考え、一人ひとりの違いを強みに変え、変化にしなやかに対応し、強く勝ち続ける組織づくりおよび「多様な人材の育成とカルチャーの変革」を進めています。主な取り組みは、「②戦略 (ロ)「2025中期経営計画」の実現 (i)多様なタレント人材の活躍」をご参照ください。

 

(ハ)従業員のエンゲージメントの向上

 NECグループは、NEC Wayのもとに多様な人材が集い、イノベーションを追求する会社、従業員に選ばれる会社を目指しています。その実現に向けて、毎年実施しているエンゲージメントスコアの結果に基づき、これまでの施策による成果の確認や課題の把握を行うとともに、今後の追加施策の検討を行っています。

 Say(*1)、Stay(*2)、Strive(*3)の3要素でエンゲージメントスコアを測定しており、NECグループでは、Stayの数値の高さと比較して、SayおよびStriveのスコア伸長が課題であると認識しています。そのため、SayおよびStriveとの相関の高い「全社方針・戦略の浸透」および「評価・報酬・登用・キャリア」に注力し、戦略浸透に向けたコミュニケーションの強化ならびに「主体的な学び・キャリア形成」および「フェアな評価・登用、市場競争力の高い報酬」の実現に向けて、当社を中心に「② 戦略 (イ)HR方針」に記載の取り組みをはじめとする各種施策を展開しています。特に、階層を超えた対話機会等、経営陣と従業員の相互信頼関係の構築を行うことで、リスクの低減とさらなる機会創出に向けた従業員のエンゲージメントの向上を推進します。

 

*1 Say:会社について他者に肯定的に語る。

*2 Stay:会社に留まることを強く望む。

*3 Strive:仕事上求められる以上の努力をする。

 

 

 

④ 指標及び目標

 「2025中期経営計画」およびそれに沿った「2025人事中期経営戦略」において、達成指標を設けています。

 

(イ)「2025中期経営計画」文化における指標:エンゲージメントスコア50%(2025年度)

 2025年度に達成を目指す目標および2024年度末の実績(*1)は、次のとおりです。

区分

2025年度目標

2024年度末実績

エンゲージメントスコア

50

42

 

(ロ)「2025人事中期経営戦略」:多様なタレント人材の活躍

 女性や外国人従業員に代表される多様な人材の積極的な登用と計画的な育成により、イノベーションの源泉であるダイバーシティを加速させます。2025年度末までに達成を目指す目標および2024年度末の実績(*2)は、次のとおりです。

区分

2025年度目標

2024年度末実績

役員(*3)に占める女性または外国人の割合

20

16.9

全管理職に占める女性の割合)(*4)

20

10.6

 

(ハ)「2025人事中期経営戦略」:タレントマネジメント

 育成と獲得により、2025年度にDX人材をのべ12,000名とすることを目標として掲げています。DX人材は、2025年3月末日現在、のべ11,935名です。

 

*1 One NECサーベイ(マーサージャパン㈱によるグローバルサーベイを利用)に参画している当社および連結子会社(2024年度は45社)における調査結果に基づきます。
目標値であるエンゲージメントスコア50%は、「2025中期経営計画」を策定した2021年5月時点で、グローバル企業の上位25%タイルに相当します。

*2 本指標における取組みは、連結グループに属する全ての会社を対象として実施しているものではないため、目標および実績は、当社の数値を記載しています。

*3 2025年度目標における役員とは、「(1) サステナビリティ経営 ④指標及び目標」の注記*7に記載のとおりです。

*4 全管理職に占める女性の割合は、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出しています。また、2025年度目標は、2025年度内に決定された2026年4月1日付異動を含みます。

 

3【事業等のリスク】

(1)リスク管理体制

 NECグループでは、NECグループの事業に関連する社内外のリスクを的確に把握し対応するため、リスク・コンプライアンス委員会とCRCO(チーフリスク&コンプライアンスオフィサー)を中心とした全社横断的なリスク管理体制を整備しており、その概要は下図のとおりです。

 リスク・コンプライアンス委員会では、リスク管理に関する活動方針、NECグループとして対策を講ずべき重点対策リスクの選定・対応方針のほか、期中のリスク変動により全社横断対応が必要となったリスクの対応、その他の全社リスク管理に関する重要な事項を審議し、事業戦略会議および取締役会に定期的に報告しています。

 また、NECグループ全体のリスクを俯瞰して一元的・横断的に対応し、損失に繋がる可能性をコントロールするため、CRCOを設置しています。CRCOは、日々変化する社会・事業環境の中で多様化・複雑化するリスクを感知・分析し、インパクトを評価するとともに、対応の優先付けをした上で、各リスクを所管するチーフオフィサーと密に連携することで全社横断的なリスク管理を主導します。

0102010_006.png

 

(2)リスク特定における方針・プロセス・運用状況

① 方針

 NECグループでは、トレッドウェイ委員会支援組織委員会(COSO)の全社的リスクマネジメント統合フレームワークおよびリスク管理に関する国際標準規格であるISO31000を参照しています。そのうえで、適切なリスク管理によるリターン追求のため、NECグループの事業に関連するリスクをRisk Total Pictureとして類型化し、各リスクの責任部門や対応方針を決定しています。Risk Total Pictureでは、インテグリティをすべてのリスク管理活動の基礎とし、リスクをその性質によって3つに分類しています。このリスクが顕在化した場合、とりわけ会社の存続を脅かす事態(クライシス)への備えとして対応フローを整備しています。

 

0102010_007.png

 

② プロセス

 CRCOは、NECグループとして認識しておくべきリスクを網羅的にとりまとめたリスク一覧をもとに、各リスクを所管するチーフオフィサーとの対話やリスクアセスメントを実施し、外部・内部環境変化や各リスク対策の状況を踏まえて5段階の影響度評価・3段階の切迫性評価を行い、優先順位を可視化したリスクマップを作成しています。

 リスクマップは、四半期毎にリスク・コンプライアンス委員会での審議を経て更新しており、事業戦略会議および取締役会に定期的に報告しています。

0102010_008.png

 

 

 

③ 運用状況

 前項のプロセスを通じて、NECグループが影響を受けるリスクについて、優先順位付けした現状のリスクマップは、以下のとおりです。

0102010_009.png

 

 この中で、NECグループが特に重要と判断した「適正な製品・サービスの提供」を重点対策リスク、その次に重要と判断した「サイバーセキュリティ」、「人権の尊重」、「重大な不祥事の発生」および「人的資本経営」を重要なリスクとして、それぞれ以下に説明します。

 

(3)重点対策リスクおよび重要なリスク

① 重点対策リスク

リスク名称

適正な製品・サービスの提供

分類

Business, Compliance

評価

影響度:4

切迫性:3

リスク説明

NECグループの事業活動は、国内外で行われており、提供する製品やシステム、サービスが多岐にわたっており、サプライチェーンもグローバルに展開しています。NECグループにおける品質・安全性の管理はもとより、調達取引先も含めた幅広いステークホルダーの信頼を獲得し続けることができない場合、法的責任の追及、社会的信用の低下などにより、NECグループの事業活動に大きな影響を与えると考えています。

対策

品質・安全性推進体制/品質・安全性リスク管理体制

NECグループでは、全社規程や基準を定めて活動体系を明確にするとともに、CSCOが品質・安全性に対する管理責任を持ち、サプライチェーン戦略部門BUと連結子会社に設置している品質推進組織、および事業部門と連結子会社でそれぞれ任命されている品質・安全性管理責任者が核となり、品質と安全性の向上に取り組んでいます。

品質・安全性に関するリスク管理についても、全社的な体制を構築し、運用を徹底しています。万が一、お客さまのシステムや社会的に影響のあるシステムでの重大なトラブルや、重大製品事故、技術法規制違反などが発生した際は、迅速なエスカレーションとともに、関係部門による協議を行い、お客さま、所轄官庁、広報などについての対応方針を決定します。

新規プロジェクトの評価体制

新規プロジェクトの開始にあたっては、プロジェクト遂行上のリスクを把握し、十分なリスク対策が取られていることを確認しています。品質に係わる技術的なリスクや安全性リスク、開発規模・期間、プロジェクト体制など多面的に受注前審査を実施しています。

サプライチェーン・マネジメントの体制

NECグループでは、CSCOがサステナブル調達の管理責任を負っています。また、サプライチェーン戦略部門の調達機能責任者を議長とする会議でサステナブル調達に関する意思決定を行い、国内外ともにその実施状況についての定期報告を受け、ガバナンス強化をはかっています。NECグループのみならず調達取引先との協働・共創を通じて、環境や社会全体に与える影響に十分配慮しながら事業を行うことで、社会から信頼される社会価値創造に貢献していきます。

 

② 重要なリスク

リスク名称

サイバーセキュリティ

分類

Conduct

評価

影響度:5

切迫性:2

リスク説明

全世界がオープンに繋がり、AI利用が拡大する現在、サイバー攻撃の高度化やビジネス化、クラウド活用による情報漏えいリスクの増大、経済安全保障における情報管理の課題など多岐にわたるリスクに晒されています。NECグループだけでなく、お客さま・取引先のサイバーセキュリティに関するリスクに適切に対処できない場合、法的責任の追及、社会的信用の低下などにより、NECグループの事業活動に大きな影響を与えると考えています。

対策

現状を踏まえ、NECグループでは、「ゼロトラストセキュリティプラットフォーム」の構築を推進しており、ゼロトラスト成熟度モデルを踏まえた堅牢性と柔軟性を備えた対策を実施しています。

経済産業省の「サイバーセキュリティ経営ガイドラインVer3.0」や、NIST(米国標準技術研究所)の「Cyber Security Framework(2.0版)」に基づき、深刻化するサイバー攻撃に対するインテリジェンス(事前防御)やレジリエンス(攻撃からの回復能力)を強化、実行する体制を構築しています。

データドリブンサイバーセキュリティとして社内向けダッシュボードでサイバーセキュリティリスクを全従業員に示し、データを起点とした迅速な経営判断と現場の自律的なアクションに繋げ、統制を実現しています。

お客さまに提供する製品、システム、サービスをセキュアに開発・運用するため、セキュリティ実装推進体制を構築しています。この体制は、サイバーセキュリティ部門と各事業部門のセキュリティ責任者で構成され、その内容およびセキュリティ実装プロセスは、「サイバーセキュリティ管理規程」に定めています。

セキュリティを確保する「セキュリティ・バイ・デザイン(SBD)」の思想に基づき、企画・提案フェーズから運用・保守フェーズまでのセキュリティ確保など、高品質で安全なサービスを提供するために、サプライチェーンも含めた対策強化に取り組んでいます。

 

 

リスク名称

人権の尊重

分類

Conduct, Compliance

評価

影響度:4

切迫性:2

リスク説明

NECグループは、バリューチェーン全体の顕在的または潜在的な負の影響を継続的に評価することで、特に影響が大きいと考える顕著な人権課題を特定しています。これらの顕著な人権課題に適切に対処できない場合、法令違反、経済制裁、社会的信用の低下などにより、NECグループの事業活動に大きな影響を与えると考えています。

対策

NECグループ人権方針

NECグループは、あらゆる企業活動の場面において、基本的人権を尊重し、いかなる理由であっても差別行為を許さず、また個人の尊厳を損なう行為も許容しません。2015年に「NECグループ人権方針」を策定し、その後2022年6月に国連「ビジネスと人権の指導原則(UNGP)」で求められている、人権の尊重への経営トップのコミットメントとガバナンス体制を明確に示す内容に改定し、さらに2023年に国際労働機関(ILO)中核的労働基準に「安全で健康的な労働環境」が追加されたことを受け、これに対応する内容に改定しています。

 

当連結会計年度における顕著な人権課題に関する取り組みは、以下のとおりです。

AIなどの新技術と人権

AI事業の遂行にあたり、プライバシーなどの基本的人権を適切に保護するための方針として、「NECグループAIと人権に関するポリシー」を策定するとともに、AIと人権リスク対応の体制、計画、実施、点検および見直しに関するルールを規程として制定し、その実施や運用の浸透をはかっています。

地政学的情勢や紛争影響をふまえた人権リスク

人権視点のハイリスク地域を特定し、該当地域の取引先の属性や人権・腐敗行為に関する情報、製品・サービスの用途などを取引前に確認しています。また、人権に関する各制裁リストも確認しています。さらに、取引先に人権方針がない場合、人権リスクの発生防止のため、「NECグループ人権方針」と同等の取り組みを求めています。

サプライチェーン上の労働

「責任ある企業行動のためのOECDデュー・ディリジェンス・ガイダンス」に基づき、サプライチェーン上の人権リスクについて評価・特定を行い、当該リスクのある調達取引先に対して現地監査を実施し、必要に応じてリスク軽減に向けた是正対応をはかるなど、リスクベースアプローチによる活動を進めています。

従業員の安全と健康

「NECグループ労働安全衛生マネジメントシステム」に基づき、リスクの特定および対策を行っています。また、パワーハラスメント、セクシャルハラスメントなどのあらゆるハラスメントを禁止し、多様性を認め合う文化の醸成を目指しています。1997年に設置した人権啓発推進会議は、差別の禁止やハラスメントの防止をはじめとした人権啓発活動を継続して推進しています。

 

 

リスク名称

重大な不祥事の発生

分類

Compliance

評価

影響度:4-3

切迫性:3-2

リスク説明

NECグループでは、重大な不祥事につながりかねないコンプライアンス・リスクを特定し、これらについて適切に対処しています。これらに適切に対処できない場合、競争法等の関係法令違反、取引停止、社会的信用の低下などにより、NECグループの事業活動に大きな影響を与えると考えています。

対策

コンプライアンスの方針

 NECグループでは、Principlesに「常にゆるぎないインテグリティと人権の尊重」を掲げてコンプライアンスを経営の基本に置き、役員から従業員に至るまで、全社的な取り組みを継続的に実施しています。

コンプライアンス体制

NECグループでは、NECグループコンプライアンスポリシーを策定し、CRCOがコンプライアンス課題の全体を俯瞰し、リスク・コンプライアンス委員会を通じて、具体的な課題対応について審議・対策の推進を行っています。

また、「NECグループ行動規範」(Code of Conduct)の周知をはじめとしたコンプライアンス徹底のための各種施策を企画立案のうえ、実施しています。さらに、各部門が実施するリスク・マネジメントが体系的かつ効果的に行われるように、必要な支援、調整および指示を実行しています。

個人情報保護法違反の防止

CLO(チーフリーガルオフィサー)を個人情報保護担当役員として定めるとともに、個人情報保護管理者、個人情報保護推進事務局、個人情報保護監査責任者を設置して会社として個人情報保護の推進をしています。

また、個人情報保護管理者は、個人情報保護マネジメントシステムの運用責任者を務めるとともに、マイナンバーに関する対応についても、特定個人情報保護責任者としての役割を担っています。

当社は、JIS Q 15001に適合し、個人情報について適切な保護措置を講ずる体制を整備していると評価された事業者などに付与されるプライバシーマークを2005年10月に取得して以来、JIS Q 15001に準拠した個人情報の取り扱いを行うことなどを「NEC個人情報保護方針」に定めています。

贈収賄行為の防止

「NECグループ行動規範」(Code of Conduct)では、「贈収賄と腐敗防止」「接待・贈答、寄付、政治活動への対応」などに関する行動指針を定め、あらゆる形態の贈収賄・腐敗防止の徹底に努めています。

具体的な対応については、「贈収賄防止基本規程」のもと、「贈収賄防止マニュアル」および接待・贈呈・寄付に関する各種ガイドラインを策定・運用しています。

建設業法等違反の防止

建設工事においては、お客さまに社会価値を確実に提供するための現場工事の遵法かつ安全衛生文化を構築することを理念とした「建設工事 安全衛生行動指針」を策定・運用しています。

建設工事に従事する人だけでなく、従業員および関係作業員が健康管理を含む「安全衛生がすべての仕事に優先する」という安全衛生の基本方針に基づき、関連する法令および規制などを遵守し安全施工に取り組んでいます。

 

 

リスク名称

人的資本経営

分類

Business

評価

影響度:5

切迫性:2

リスク説明

対策

 人的資本経営については、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (3)人的資本経営 ③リスク管理」に記載のとおりです。

 

 NECグループは、上記以外のリスクについても、回避および顕在化した場合の対策に努めています。ただし、NECグループの事業、業績および財政状態は、予見することが困難なリスクや重要性が低いと考えられるリスクにより、影響を受ける可能性があります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末においてNECグループが判断したものです。

 (注)本文中の組織・役職名は、2025年4月1日時点のものを記載しています。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

※当連結会計年度から、セグメント別業績の算定方法の一部を変更しています。

 また、前連結会計年度との比較数値については、前連結会計年度の数値をこの算定方法の変更を反映したものに組み替えて表示しています。

 

(1) 経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度におけるNECグループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は、次のとおりです。

 

① 財政状態および経営成績の状況

NECグループは、当連結会計年度も2021年5月に発表した「2025中期経営計画」のもと、引き続き、Purpose・戦略・文化の一体的な取り組みを経営方針に掲げ、「ITサービス」および「社会インフラ」を主要なセグメントとして各事業活動を行いました。

 

・事業戦略

「ITサービス」においては、2024年5月に、お客様を未来に導く価値創造モデル「BluStellar
(ブルーステラ)」を発表しました。BluStellarは、これまで当社がDX(デジタルトランスフォーメーション)事業で積み重ねたナレッジやノウハウを結集し、AIやセキュリティに代表される先端テクノロジーをさらに進化させていくことでお客様への迅速かつ高度なサービス提供に寄与しています。当連結会計年度において、旺盛なDX需要の後押しもあり、BluStellar事業は、当初の想定を上回る速さで事業成長と収益性改善を実現し、ITサービス領域の好調な業績に大きく貢献しました。

 

「社会インフラ」においては、エアロスペース・ナショナルセキュリティ領域で、ナショナルセキュリティへの意識の高まりを背景とした日本政府の防衛予算の増加により、当連結会計年度の受注は、前連結会計年度に引き続き過去最高の水準で推移しました。また、今後のさらなる事業規模の拡大に備え、人員や生産設備の増強などの事業基盤強化策を実行しました。

 

・人材戦略

当社は、2024年4月に、柔軟な人材配置による「適時適所適材」を推進する原動力として、ジョブ型人材マネジメントを当社の全従業員を対象に導入しました。これは、当社の戦略起点でのジョブの明確化と従業員のキャリアの自律を促進する狙いがあります。また、NECグループ内でのさらなる人的リソースの流動化をはかるため、2025年4月に、NECグループ会社5社(*)にも、ジョブ型人材マネジメントを導入しました。さらに、キャリア採用者、女性、外国人など多様な人材の登用を進めており、役員における女性・外国人の割合については、2024年4月時点で15.8%、2025年4月時点で20%となり、「2025中期経営計画」に掲げた目標値(20%)を達成しました。

 

当社は、従業員が当社で働くことに誇りを持ち、より主体的に仕事に取り組む文化を醸成し、フェアな評価・登用・報酬の整備に注力した結果、2024年度のエンゲージメントスコアは、2020年度の25%から42%へと改善しました。なお、「2025中期経営計画」では、エンゲージメントスコアを50%まで上げることを目標としており、これは概ねグローバル上位25パーセンタイルに該当します。

 

(*)NECソリューションイノベータ㈱、NECプラットフォームズ㈱、日本電気通信システム㈱、NECネクサソリューションズ㈱、NECビジネスインテリジェンス㈱

 

 

このような経営環境のもと、当連結会計年度の売上収益は3兆4,234億円(前連結会計年度比1.5%減少)、営業利益は2,565億円(同685億円増加)、調整後営業利益は2,872億円(同636億円増加)、Non-GAAP営業利益は3,113億円(同837億円増加)、税引前利益は2,398億円(同548億円増加)、親会社の所有者に帰属する当期利益は1,752億円(同257億円増加)、親会社の所有者に帰属するNon-GAAP当期利益は2,257億円(同479億円増加)となりました。また、当連結会計年度のフリー・キャッシュ・フロー(「営業活動によるキャッシュ・フロー」と「投資活動によるキャッシュ・フロー」の合計額)は、2,132億円の収入となりました。当連結会計年度末の有利子負債(短期借入金、コマーシャル・ペーパー、1年内返済予定の長期借入金、1年内償還予定の社債、社債、長期借入金およびリース負債を合計したもの)残高は、前連結会計年度末に比べ1,177億円増加し、6,664億円となり、デット・エクイティ・レシオ(D/Eレシオ、自己資本(「資本合計」から「非支配持分」を控除したもの)に対する有利子負債の割合)は、0.34倍(前連結会計年度末比0.05ポイント悪化)となりました。なお、有利子負債残高から現金及び現金同等物の残高を控除した有利子負債残高(NETベース)は、前連結会計年度末に比べ96億円増加の817億円となり、デット・エクイティ・レシオ(NETベース)は0.04倍(前連結会計年度末並)となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、3,444億円の収入で、前連結会計年度に比べ732億円増加しました。これは運転資金の改善や税引前利益が増加したことなどによるものです。

投資活動によるキャッシュ・フローは、1,312億円の支出で、前連結会計年度に比べ551億円支出額が増加しました。これは有形固定資産の取得の増加などによるものです。

この結果、営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合算したフリー・キャッシュ・フローは2,132億円の収入となり、前連結会計年度に比べ180億円増加しました。

財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の増加などがあったものの、非支配持分からの子会社持分取得による支出やリース負債の返済や長期借入金の返済による支出などにより、1,040億円の支出となりました。

現金及び現金同等物に係る為替変動による影響は、11億円の減少となりました。

上記の結果、現金及び現金同等物は、5,846億円となり、前連結会計年度末に比べ1,081億円増加しました。

 

③ 生産、受注および販売の実績

NECグループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、また受注生産形態をとらない製品も多いため、セグメントごとに生産規模、受注規模を金額あるいは数量で示すことはしていません。

このため、生産、受注および販売の状況については、「(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容」におけるセグメントの業績に関連づけて示しています。

なお、外部顧客への売上収益のうち、連結損益計算書の売上収益の10%以上を占める相手先がないため、主要な販売先に関する記載を省略しています。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点によるNECグループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりです。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、NECグループが判断したものです。連結財務諸表の作成には、期末日における資産、負債、偶発資産および偶発債務ならびに会計期間における収益および費用に影響を与えるような見積りや仮定を必要とします。結果として、このような見積りと実績が異なる場合があります。

 

① 当社の概要(主な事業内容)および経営成績に重要な影響を与える要因

NECグループの売上は、2つの主要なセグメントであるITサービス事業、社会インフラ事業から生じます。

各セグメントの製品およびサービス等の概要は、「第一部 企業情報 第1 企業の概況 3 事業の内容」に記載のとおりです。

NECグループの各セグメントの業績は、景気動向およびIT投資の動向や通信事業者の投資動向等に左右されます。

 

経営成績に重要な影響を与えるその他の要因につきましては、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりです。

 

② 重要性がある会計方針および見積り

経営陣は、次の重要性がある会計方針の適用における見積りや仮定が連結財務諸表に重要な影響を与えると考えています。

 

重要性がある会計方針および見積りにつきましては、「第一部 企業情報 第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要性がある会計方針」と「第一部 企業情報 第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載のとおりです。

 

③ 当連結会計年度の経営成績の分析

当連結会計年度の売上収益は、3兆4,234億円と前連結会計年度に比べ538億円(1.5%)減少しました。これは、ITサービス事業および社会インフラ事業が増収となったものの、日本航空電子工業㈱の非連結化による減収などによるものです。

収益面につきましては、営業利益は、前連結会計年度に比べ685億円増加し、2,565億円となりました。これは、ITサービス事業および社会インフラ事業の売上収益の増加などによるものです。また、調整後営業利益は、前連結会計年度に比べ636億円増加し、2,872億円となり、Non-GAAP営業利益は、前連結会計年度に比べ837億円増加し、3,113億円となりました。

税引前利益は、持分法による投資損益においてNECキャピタルソリューション㈱に対する投資の減損損失を計上したものの、営業利益が増加したことなどにより、前連結会計年度に比べ548億円増加し、2,398億円となりました。

親会社の所有者に帰属する当期利益は、税引前利益が増加したことなどにより、前連結会計年度に比べ257億円増加し、1,752億円となりました。また、親会社の所有者に帰属するNon-GAAP当期利益は、前連結会計年度に比べ479億円増加し、2,257億円となりました。

セグメント別実績については次のとおりです。なお、各セグメント別の売上収益については、外部顧客に対する売上収益を記載しています。

 

a.ITサービス事業

売上収益

2兆332億円

(前連結会計年度比      6.2%増)

調整後営業利益

2,371億円

(    同     530億円増加)

 

ITサービス事業の売上収益は、国内および海外ともに好調に推移したことなどにより、前連結会計年度に比べ1,192億円(6.2%)増加し、2兆332億円となりました。

調整後営業利益は、売上の増加に加え、システム構築領域の収益性向上などにより、前連結会計年度に比べ530億円増加し、2,371億円となりました。

 

b.社会インフラ事業

売上収益

1兆1,417億円

(前連結会計年度比      6.0%増)

調整後営業利益

854億円

(    同     302億円増加)

 

社会インフラ事業の売上収益は、エアロスペース・ナショナルセキュリティ領域が増加したことなどにより、前連結会計年度に比べ644億円(6.0%)増加し、1兆1,417億円となりました。

調整後営業利益は、売上の増加に加え、テレコムサービス領域における費用効率化などにより、前連結会計年度に比べ302億円増加し、854億円となりました。

 

c.その他

売上収益

2,485億円

(前連結会計年度比     48.9%減)

調整後営業利益

△147億円

(    同     197億円減少)

 

その他の売上収益は、前連結会計年度に比べ2,374億円(48.9%)減少し、2,485億円となりました。

調整後営業利益は、前連結会計年度に比べ197億円減少し、147億円の損失となりました。

 

財政状態につきましては、当連結会計年度末の総資産は4兆3,154億円と、前連結会計年度末に比べ879億円増加しました。流動資産は、現金及び現金同等物や営業債権及びその他の債権が増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べ832億円増加し、2兆2,250億円となりました。非流動資産は、有形固定資産の増加などにより、前連結会計年度末に比べ46億円増加し、2兆904億円となりました。

 

負債は、2兆2,439億円と前連結会計年度末に比べ1,059億円増加しました。これは、社債及び借入金や未払法人所得税などが増加したことなどによるものです。有利子負債残高は、前連結会計年度末に比べ1,177億円増加の6,664億円となり、デット・エクイティ・レシオは0.34倍(前連結会計年度末比0.05ポイント悪化)となりました。また、有利子負債残高から現金及び現金同等物の残高を控除した有利子負債残高(NETベース)は、前連結会計年度末に比べ96億円増加の817億円となり、デット・エクイティ・レシオ(NETベース)は、0.04倍(前連結会計年度末並)となりました。

 

資本は、親会社の所有者に帰属する当期利益の計上による利益剰余金の増加や、確定給付制度の再測定の増加など、その他の資本の構成要素が増加したことなどに対して資本剰余金や非支配持分の減少により、前連結会計年度末に比べ180億円減少し、2兆715億円となりました。

 

この結果、親会社の所有者に帰属する持分は1兆9,520億円となり、親会社所有者帰属持分比率は45.2%(前連結会計年度末並)となりました。

 

④ 流動性と資金の源泉

NECグループは、手許流動性、すなわち、現金及び現金同等物と複数の金融機関との間で締結したコミットメントライン契約の未使用額との合計額を今後の事業活動のための適切な水準に維持することを財務活動の重要な方針としています。当連結会計年度末は、現金及び現金同等物5,846億円、コミットメントライン未使用枠2,380億円、合計8,226億円の手許流動性を確保し、必要な流動性水準を維持しました。なお、現金及び現金同等物は主に円貨であり、その他は米ドルやユーロなどの外国通貨です。

また、NECグループは、短期・長期の資金需要を満たすのに十分な調達の枠を維持しています。まず、短期資金調達では、その多くを国内コマーシャル・ペーパーの機動的な発行で賄っており、5,000億円の発行枠を維持しています。さらに、不測の短期資金需要の発生やコマーシャル・ペーパーによる調達が不安定になった場合の備えとして、コミットメントライン枠計2,380億円を維持し、常時金融機関からの借入れが可能な体制を敷いています。一方、長期資金調達では、国内普通社債の発行枠3,000億円を維持しています。

負債構成の考え方に関しては、必要資金の安定的な確保の観点から、十分な長期資金の確保、およびバランスのとれた直接・間接調達比率の維持を当面の基本方針としており、その状況を示すと次のとおりです。

 

 

前連結会計年度末

当連結会計年度末

長期資金調達比率 *1

75.0%

57.0%

直接調達比率 *2

42.7%

35.9%

*1 長期資金調達比率は、社債、長期借入金およびその他(1年超のリース債務)の合計を有利子負債で除して計算したものです。

*2 直接調達比率は、社債(1年内償還予定を含む。)およびコマーシャル・ペーパーの合計を有利子負債で除して計算したものです。

 

(3) キャッシュ・フローの状況について

 キャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおりです。

 

(4) 経営戦略と今後の方針について

 経営戦略と今後の方針につきましては、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりです。

 

5【重要な契約等】

 

(1) 重要な技術導入、提供契約

 2025年3月31日現在における重要な技術導入、技術提供等の契約は、次のとおりです。

当 事 者

契約の内容

契約期間

当社および

International Business Machines Corporation(米国)

情報取扱装置に関する特許の相互実施許諾

自:2006年9月28日

至:対象特許の終了日

当社および

International Business Machines Corporation(米国)

情報取扱装置に関する特許の相互実施許諾

自:2020年3月18日

至:対象特許の終了日

当社およびIntel Corporation(米国)

情報取扱装置に関する特許の相互実施許諾

自:2005年2月5日

至:対象特許の終了日

当社およびMicrosoft Corporation(米国)

情報取扱装置に関する特許の相互実施許諾

自:2006年1月1日

至:対象特許の終了日

 

 「企業内容等の開示に関する内閣府令及び特定有価証券の内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」(令和5年12月22日内閣府令第81号)附則第3条第4項の規定に基づき、2024年4月1日前に締結された当社株主と当社との間の契約および当社または連結子会社の金銭消費貸借契約に係る記載は、省略します。

 

6【研究開発活動】

 

 NECグループは、安全・安心・公平・効率という社会価値を創造し、誰もが人間性を十分に発揮できる持続可能な社会を目指しています。その実現に向けて、社会価値創造の軸となる既存事業を発展させる技術や、社会に新たな価値を提供しうる将来事業向けの先進的な技術を創出し、その事業化を加速することで、NECグループの持続的な発展を支えていきます。

 当社は、社会実装が急速に進展する生成AIの研究、製品開発および事業開発を一貫して対応する組織として、新たにAIテクノロジーサービス部門を発足させました。これにより最先端の新技術の市場投入までのリードタイムの大幅な短縮を目指します。

 研究開発については、世界トップクラスの技術を多く保有するAIやセキュリティ、ネットワークの技術領域を中心に据えて取り組んでいます。具体的には、AIの技術領域では、いつでもどこでも使える安心な生体認証技術や、映像認識の強みを生かした外部環境を高度に理解するマルチモーダル基盤モデル技術のほか、業界最高レベルの高速・高精度な応答でお客様の業務を効率化する生成AI技術などを強化しています。さらに、これらの技術を組み合わせることで、複雑な指示・要求に対して自律的に動作するエージェント型AI(Agentic AI/ AI Agent)を開発し、組織をまたいだ全体最適化の実現に貢献します。セキュリティの技術領域においても、AIの強みを活用したセキュリティ業務の自動化やAIの信頼性を高める技術開発などに取り組んでいます。ネットワークの技術領域では、アプリケーションの品質やリアルタイム性を高信頼に保つ技術などの研究開発を通じて、安全・安心・高効率なICTインフラの実現に取り組んでいます。

 さらに、AIを活用した科学計算革新の取り組みとして、高速なシミュレーション技術の開発などにより、創薬プロセスを大きく変革するAI創薬という新たなビジネスチャンスに挑んでいます。

 また、NECグループは、社会や顧客が求める新たな価値を実現するための研究開発機能、これらの価値を提供するための事業開発機能、および価値ある知財を創出し活用するための知的財産戦略機能をグローバルイノベーションビジネスユニットに結集させ、「未来の共感」と「テクノロジー」でイノベーションを起こし、新たな社会価値創造を実現していきます。

 さらに、グローバルに研究成果を創出するため、北米、欧州、シンガポール、中国、インド、イスラエルにも研究開発拠点を設置し、それぞれの地の利を生かした研究開発を推進しています。また、学術・研究機関、顧客、世界最先端の技術を有する研究パートナー等とのオープンイノベーションを通じて、より大きな社会価値を創出することに挑戦しています。

 NECグループは、「2025中期経営計画」のもと、強い技術を生み出し続ける研究開発力と事業開発力とを統合することで技術と事業の繋がりを一層深め、技術力を顧客価値に転換し、「日本を含むグローバルでの事業フォーカス」、「国内IT事業のトランスフォーメーション」および「次の柱となる成長事業の創造」によって、成長の実現を目指します。

 

 NECグループの当連結会計年度における主な研究開発活動の成果は、次のとおりです。

 

(ITサービス事業)

高度な専門業務の自動化による生産性向上に資するAgentic AIの開発・提供

 当社は、当社が開発した生成AI「cotomi」を活用して専門的な業務の自動化を可能とするエージェント型AI(Agentic AI/ AI Agent)を開発し、2025年1月から「NEC AI Agent」として提供を開始しました。

 NEC AI Agentは、高度な専門知識がない利用者でも実行したい業務を入力するだけで、生成AI「cotomi」が自律的にタスクを分解して必要な業務を設計し、それぞれのタスクに適したAIやITサービスを選択して業務を自動で実行できるため、経営計画や人材管理、マーケティング戦略など、企業経営や業務運営に関わる高度な専門業務において、大幅な効率化が期待できます。

 当社は、今後、業務や機能に特化するなど、Agentic AIを活用したサービスの拡充を進め、さらなる生産性向上や業務効率化を支援するとともに、お客様の業務変革の実現に貢献していきます。

 

0102010_010.png

 

(ITサービス事業)

小型で幅広い用途に展開可能な顔・虹彩マルチモーダル生体認証技術を開発

 当社は、高品質画像から抽出できる虹彩の特徴量を低品質画像からでも推定可能な顔・虹彩マルチモーダル生体認証技術を世界で初めて(*1)開発しました。これにより、従来必要としていた虹彩認証専用のカメラを用いることなく、PCやタブレット端末にカメラモジュールを接続するだけで数千万人規模の生体認証を高速かつ高精度に実行でき、小型で屋内外問わず幅広い用途に生体認証を展開することが可能となります。

 世界No.1の認証精度を持つ顔認証技術と虹彩認証技術をはじめとした生体認証技術(*2)は、当社の価値創造モデル「BluStellar」のコアテクノロジーの1つです。NECグループは、今後も業種横断の先進的な知見と研ぎ澄まされた最先端テクノロジーによりビジネスモデルを変革し、社会課題とお客様の経営課題の解決に導きます。

*1 2024年11月21日時点、当社調べ。

*2 米国国立標準技術研究所(NIST)が実施したベンチマークテストにおいて、指紋認証技術、顔認証技術、虹彩認証技術はいずれも第1位の評価を獲得しています。当社の生体認証における第三者評価は、こちらをご参照ください。

 https://jpn.nec.com/biometrics/evaluation/index.html

 

0102010_011.png

 

(ITサービス事業・社会インフラ事業)

衛星画像解析×LLMにより迅速な被災状況把握を実現する技術を開発

 当社は、高度な専門知識を必要とする衛星画像解析とLLM(大規模言語モデル)を融合し、チャット形式で災害時の迅速な被災状況の把握を可能にする技術を開発しました。

 この技術により、衛星データの高度な解析を通じて、災害やインフラの変化などの事象を深く理解することが可能となり、さらに地図データや現地で撮影した写真などの地上データを融合させることにより、倒壊した家屋の数や深刻さの程度などを素早く推定することができます。

 今後、多くのデータソースをこの技術により解析できるようにすることで、地球規模での災害リスクの予測や、自治体や企業の防災対策策定などへの活用を目指していきます。

 

0102010_012.png

 

(その他)

経口投与型の個別化がんワクチンの第Ⅰ相臨床試験の中間結果でワクチンの安全性と免疫原性を報告

 NECグループが開発している個別化がんワクチン「NECVAX-NEO1(開発コード)」は、経口投与可能なバクテリアベースのDNAワクチンであり、最先端の独自のAI技術を用いることで、患者の免疫系を活性化し、患者ごとに異なるがん細胞特有のネオアンチゲンを標的として攻撃するT細胞応答を促すように設計されています。NECグループでAIによる創薬の臨床開発を手掛けるNEC Bio Therapeutics GmbHが、免疫チェックポイント阻害剤(CPI)治療を3カ月以上受けているがん患者を対象に第Ⅰ相臨床試験を実施中です。その過程において、メラノーマ(悪性黒色腫)、腎細胞がん、頭頸部がんのいずれかに罹患した患者5名に対し投与したところ、NECVAX-NEO1の投与に関連する有害事象は報告されず高用量投与に移行したこと、また、標的として選定したネオアンチゲンの68%の免疫原性(*1)と、40%の患者におけるネオアンチゲン特異的免疫応答を確認しました(*2)。

 現在、NECVAX-NEO1は、新たにリトアニア、ドイツ、スペインで臨床試験評価を行っており、患者の募集・登録を進めています。

*1 抗原などが体内で免疫応答を引き起こす能力。

*2 2024年12月11日から13日にスイス・ジュネーブで開催されたESMO Immuno-Oncology Congress

   (ESMO免疫腫瘍学会)2024で、ワクチン投与24週間後の中間解析結果を発表しました。

 

 当連結会計年度におけるNECグループ全体の研究開発費は、99,194百万円であり、セグメントごとの内訳は、次のとおりです。

 

ITサービス事業

39,429百万円

社会インフラ事業

40,725百万円

その他

19,040百万円