文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
当社グループは、社会における存在意義、パーパスを「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくこと」と定めております。パーパス実現に向けて必要不可欠な貢献分野であるマテリアリティを、地球環境問題の解決、デジタル社会の発展、人々のウェルビーイングの向上の3分野に定め、この3分野において重点的に取り組むべき13の課題を設定しました。全社でマテリアリティへの取り組みを推進し、当社グループの企業価値向上と持続可能な世界の実現を目指しております。
また、2030年に向けて、クロスインダストリーでサステナビリティに貢献するデジタルサービスを提供して、社会・お客様・株主様・社員などのステークホルダーにとってネットポジティブを実現するテクノロジーカンパニーになる、というビジョンを定めております。このネットポジティブとは、社会に存在する富士通が、財務的なリターンの最大化に加え、地球環境問題の解決、デジタル社会の発展、そして人々のウェルビーイングの向上というマテリアリティに取り組み、テクノロジーとイノベーションによって、社会全体へのインパクトをプラスにすること、と定義しております。
財務資本、人的資本といった資本を投入し、重点戦略に沿ってマテリアリティに取り組み、財務・非財務の両面でアウトプットやアウトカムを生み出し、それをまたインプットとして投じる、これを継続することでステークホルダーへの提供価値の向上を図ってまいります。
<市場環境>
当社グループをとりまく市場環境については、従来型の基幹システムなどの既存IT市場は、引き続き緩やかに縮小していくと予測されています。一方で、レガシーシステムのモダナイゼーションや、クラウド化・デジタル化への投資は、今後も堅調に増えると予測されています。さらには、生成型AI(人工知能)に代表されるAIなどのテクノロジーやデータ分析・活用といった業務の高度化に向けた投資は、社会や企業の成長・発展へのニーズに加えて、社会システムや産業構造の変化に対するニーズも加わることで、今後も拡大すると想定されています。
<2025年度までの中期経営計画について>
このような状況のもと、当社グループは、2023年度から2025年度までの3年間を2030年及びそれ以降の目指す姿の実現に向けて持続的な成長と収益力向上のモデルを構築する期間として位置付けた3か年の中期経営計画を定めており、その達成に向けた取り組みを進めております。
2025年における当社のあるべき姿と、ステークホルダーへの提供価値の最大化を実現するため、事業モデル・ポートフォリオ戦略、カスタマサクセス戦略/地域戦略、テクノロジー戦略、リソース戦略の4つの重点戦略に沿って施策を推進しております。
<2024年度の進捗と2025年度以降の取り組み>
2024年度における、4つの重点戦略ごとの主な取り組みは以下の通りです。1つ目は、事業モデル・ポートフォリオ戦略における、Fujitsu Uvanceを中心とするサービスソリューションの拡大及びハードウェアソリューションの基盤強化です。
サービスソリューションでは、売上収益に占めるFujitsu Uvanceの割合が伸長しています。Fujitsu Uvanceの2024年度の売上収益は、当初計画の4,500億円を上回る4,828億円となり、2023年度の3,679億円から31%増と伸長しました。2024年度は、2023年度より堅調に伸長しているテクノロジー基盤のHorizontal領域の売上収益に加えて、市場をクロスインダストリーでとらえるVertical領域の売上収益が伸長し、Fujitsu Uvance全体の売上収益に占めるVertical領域の売上収益の割合が2023年度の32%から36%へと増加しました。また、当社のコンサルティング事業ブランド「Uvance Wayfinders」が立ち上がり、コンサルティング主導によって従来のSI商談から商談の質が変化し、お客様経営変革のアジェンダ策定から実装までをリードする商談も生まれております。また、Fujitsu Uvanceのオファリングのグローバルでの標準化や、商談のリカーリング比率も着実に伸長しました。2025年度は、コンサルティングビジネスや、AI、パートナーソリューションなども活用したFujitsu Uvanceのオファリングの拡充を進め、商談の質・量ともに改善を図ってまいります。
また、ハードウェアソリューションでは、当社グループ内に分散するハードウェアソリューションに関する研究開発から製造、販売、運用・保守といった一連の機能を集約・分社化することで、グローバルでの競争力強化を図っております。2024年4月にサーバ・ストレージ事業を担うエフサステクノロジーズ株式会社を設立しました。2025年7月には、ネットワークプロダクト事業を担う1FINITY株式会社を設立予定です。AIが、今後ますます存在感を増し、欠かせないものとなっていく中、そのデータ活用を支えるハードウェアソリューションも、同じスピードでの進化や実用化が求められています。テクノロジー企業として、今後も各ソリューションの最適な提供体制を検討してまいります。
2つ目は、カスタマサクセス戦略/地域戦略における、モダナイゼーションビジネスの推進及び海外ビジネスの変革です。
モダナイゼーションビジネスは、受注、売上ともに順調に拡大しており、2024年度の売上収益は前期比86%増の大幅伸長となりました。2024年度は、リソースの効率的かつ機動的なアサインや、当社でモダナイゼーションマイスターと認定している専門人材の育成のほか、言語の自動変換ツールの整備など、業務の高度化、効率化を図りました。2025年度は、Fujitsu Uvanceにつながるモダナイゼーションとして、Fujitsu UvanceのHorizontalのソリューションを統合した、デジタルトランスフォーメーションの提案を加速させます。併せて、引き続き生成AIを活用した効率化、自動化を行い、競争力を高めてまいります。
また、海外ビジネスについては、2024年度のリージョンズ(海外)セグメントの全体の売上収益は5,897億円、2023年度から約2.4%減となりましたが、事業ポートフォリオ変革や構造改革の効果により、営業利益率は2023年度の1.7%から、4.1%へと改善しました。各地域の状況として、Europeリージョンは、2025年度の構造改革完了に向けて、引き続き採算性の低い事業のカーブアウトや地域戦略の見直しなどを行いました。Americasリージョンは、サービスビジネスに注力しており、2024年度にコンサルティング事業を立ち上げました。Asia Pacificリージョンは、より採算性の高いビジネス及び地域にフォーカスしていくため、構造改革に着手しております。その一環として、2025年4月より、リージョンではなく、各国ごとの体制へと変更しております。2025年度は、引き続き利益体質に向けた構造改革を進めるとともに、Fujitsu Uvanceを中心とするサービスビジネスの拡大を図り、全エリアにおいて収益性の向上を図ってまいります。
3つ目は、テクノロジー戦略におけるコアテクノロジーの強化です。AI、コンピューティングを中心に、外部パートナーとの戦略的な提携も行いながら、サービスの差別化につながる技術の強化を行っております。
AIは、引き続き生成AIを中心に強化を進めております。2024年7月に、カナダのCohere Inc.との戦略的パートナーシップを発表し、同社と共同開発した、高い日本語性能を持つ企業向け大規模言語モデル「Takane」を、当社のAIプラットフォーム「Fujitsu Kozuchi」のラインナップの1つとして、提供を開始しました。AIエージェント及びマルチAIエージェントの提供も開始しており、生成AIによるお客様事業の高度化に取り組んでまいります。
また、量子コンピューティングでは、256量子ビット機を開発しました。2025年度第1四半期中に、企業や研究機関に向けた提供の開始を予定しております。また、2026年度には、1,000量子ビット機を開発し、2025年9月に本社であるFujitsu Technology Park(神奈川県川崎市)に竣工予定の量子コンピュータの専用施設に設置する予定です。
また、次世代プロセッサ「FUJITSU-MONAKA」の開発を進めており、Super Micro Computer, Inc.及びAdvanced Micro Devices, Inc.との戦略的な協業も行っております。
引き続き、新たなテクノロジーの創出と実用化の両方を目指し、研究開発を加速させてまいります。
4つ目は、リソース戦略における、事業と連動した人材ポートフォリオの実現です。当社は、事業ポートフォリオに連動した人材ポートフォリオの変革を進めており、そのために必要な制度や人材マネジメントの見直しを継続して行っております。グローバルで人材の流動性を高めるために、ジョブ型人事制度に移行しており、2026年4月からは、新卒入社者に対しても、ジョブ型人事制度を適用し、ジョブレベルに応じた処遇を実施いたします。また、国内の従業員を対象に、グローバルで競争力のある報酬水準を取り入れております。2023年度から2024年度でおよそ20%の引き上げを行っており、市場のトレンドを見ながら継続して見直していく予定です。2020年度に導入したポスティング制度は、キャリア形成の手段として定着しており、2024年度までに、年間平均約3,000人が本制度を活用して異動しました。それに伴い、注力事業領域やキャリア形成に必要なスキルを自律的に学ぶリスキリングも活発になっており、制度や環境の整備が社員の行動変容につながっております。今後も、注力事業領域のリソースの強化やコーポレートの効率化、外部転身を含むリソースシフトなどを行いながら、事業成長と生産性の向上に向けた取り組みを継続してまいります。
以上4つの重点戦略に加えて、全社的な取り組みとしてサービスソリューション全体の収益性向上に向けた取り組みを継続して進めております。引き続き、グローバルデリバリーセンター及び海外の開発拠点を統括するジャパングローバルゲートウェイを中心にデリバリーの変革を行い、サービスソリューション全体の収益性の向上に努めております。2024年度は、ジャパングローバルゲートウェイや共通の開発基盤の活用により、開発の標準化及び自動化を進めました。また、お客様への提供価値に基づくプライシング戦略を拡大し、継続的な収益の増加に取り組みました。これらの施策を進めた結果、2024年度は売上総利益率が1.9%改善しました。2025年度は、サイバーセキュリティやAIの倫理的な活用にも十分に配慮しながら、生成AIをデリバリーに積極的に取り入れることでさらなる効率化・標準化を進めて、グローバルで最適なデリバリー体制を確立し、引き続き年間で2%程度の改善を図ってまいります。
<非財務面での取り組み>
当社グループは、非財務の領域においても、環境、お客様、生産性、そして人材の4つの項目において2025年度のKPIを定め、達成に向けて取り組んでおります。環境でのKPIとして温室効果ガス削減量を定めており、2020年度と比較しScope1・2では当社グループで50%削減、Scope3ではサプライチェーンで12.5%の削減を目指しております。お客様については、お客様NPS®において2022年度比で20ポイント上昇を目指してまいります。生産性については、従業員1人当たりの調整後営業利益において、2022年度比40%の上昇を目指しております。人材では、従業員エンゲージメントについて、グローバルでのスコア75の達成を目指しております。また、ダイバーシティリーダーシップの指標として、グローバルでの女性幹部社員比率を2022年度の15%から2025年度で20%に拡大することを目標としております。2025年度においても、上記2025年度のKPIのいずれも変更はなく、引き続き達成に向けて取り組んでまいります。また、非財務面での取り組みが財務面に対しどのように寄与するかについての定量的な分析についても、2024年度に引き続き、2025年度においても、さらに進めてまいります。
* Category11:製品の使用時消費電力によるCO2排出量のみ
当社グループは、引き続きデータを活用して迅速な意思決定を行いながら、デジタルテクノロジーと、これまで培った多様な業種への実績・知見を活かし、安心で安全で豊かな社会づくりに貢献してまいります。
(注)1.お客様NPS®:お客様Net Promoter Scoreの略。顧客体験=カスタマー・エクスペリエンス(CX)の改善度や深化の把握のために、企業、商品やサービスへのお客様の信頼度や愛着度を示す「顧客ロイヤリティ」を測る指標。
2.従業員エンゲージメント:会社の向かっている方向性・パーパスに共感し、自発的、主体的に働き貢献したいと思う意欲や愛着を表す指標。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1)サステナビリティに対する考え方及び対応
当社グループでは、「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくこと」をパーパスとし、その実現のための2030年に向けたビジョンとして「デジタルサービスによってネットポジティブを実現するテクノロジーカンパニーになること」を掲げています。
また、優先的に取り組むべき重要課題として、「経営におけるマテリアリティ」を2023年に設定しました。このマテリアリティの考え方を、事業戦略に組み込むことを通じて、サステナビリティへの取り組みを一層強く推進してまいります。経営戦略の全体像の詳細については、「
<マテリアリティ>
中長期的な視点で2030年を見据え、優先的に取り組むべき重要課題を、「必要不可欠な貢献分野」、「持続的な発展を可能にする土台」の2つのカテゴリーに分類し、具体的には、6つのテーマとそれに基づく重点項目を特定しています。
詳細については、下記「②戦略<マテリアリティ>」をご参照ください。
なお、2025年4月にマテリアリティの重点項目の見直しを行いました。見直し後のマテリアリティは、今後、当社ウェブページ(https://www.fujitsu.com/jp/about/csr/materiality/)で2025年7月に開示予定です。
<GRB>
マテリアリティに包含され、特に当社グループの価値創造の源泉に深く関わり、社会的責任を果たすための取り組みを「グローバルレスポンシブルビジネス(Global Responsible Business : GRB)」(以降“GRB”と記載)と呼称しています。
GRBの詳細は下記「
全社レベルでのマテリアリティへの取り組みを推進し、経営における重要なリスクの低減・回避と事業機会の拡大を図り、当社グループの企業価値向上と、地球環境問題、デジタル社会、人々のウェルビーイングにおいてネットポジティブの実現に貢献していきます。
なお、2025年度よりGRBは解消し、推進してきた取り組みはマテリアリティに統合して実行していきます。
①ガバナンス
<取締役会による監督体制>
当社グループはサステナビリティ経営委員会において、サステナビリティに係るリスクと機会の共有、中長期的な課題の検討及び方針の策定を行っています。これらの結果は、経営会議を通じて取締役会に報告されます。
サステナビリティ推進体制
また、当社グループは、全社レベルのリスクマネジメント体制において、取締役会の監督の下、代表取締役社長を委員長としたリスク・コンプライアンス委員会が、サステナビリティ課題を含むグループ全体のリスク分析と対応を行っています。同委員会は、グループ全体のリスクマネジメント及びコンプライアンスに関わる意思決定機関であり、抽出・分析・評価された重要リスクについて、定期的に取締役会に報告しています。詳細については、「
<リスクと機会の評価・管理における経営者の役割>
代表取締役社長は、サステナビリティ経営委員会及びリスク・コンプライアンス委員会の委員長を務め、最高位の意思決定の責任と業務執行の責任を担っています。取締役会は、経営会議及びリスク・コンプライアンス委員会を通じた報告をもとに監督する責任を有します。また、CSSOはサステナビリティの最高責任者として、取締役会、経営幹部への変革提案とサステナビリティ関連業務の執行を推進しています。加えて、業務執行取締役の賞与の評価指標に、ESGに関する第三者評価が含まれています。
(注)CSSO:Chief Sustainability & Supply chain Officerの略。富士通グループとして事業と連動したサステナビリティを起点とした重点施策を実行し、更にサプライチェーン全体で環境・社会課題の解決を目指す。
②戦略
当社グループでは、持続的な成長と中長期的な企業価値向上に向けて、事業全体でのマテリアリティを特定し、サステナビリティ経営を推進しています。また、マテリアリティの中で、特に当社グループの価値創造の源泉に深く関わり、社会的責任を果たすための取り組みをGRBとして活動を展開しています。
<マテリアリティ>
・マテリアリティ 2つのカテゴリー、6つのテーマと18項目(2025年3月現在)
これまで当社グループでは、CSRに限定した重要課題(マテリアリティ)を定めておりましたが、2023年度にビジネスを通じたお客様・社会への価値提供という観点も取り入れ、社内外の様々なステークホルダーの声を反映し、事業活動として優先的に取り組むべき重要課題としてマテリアリティを設定しました。
2030年を見据え、「自社」及び「ステークホルダー」の観点から評価を行い、優先的に取り組むべき重要課題を、「必要不可欠な貢献分野」、「持続的な発展を可能にする土台」の2つのカテゴリーとして特定しました。
必要不可欠な貢献分野については、「地球環境問題の解決」、「デジタル社会の発展」、「人々のウェルビーイングの向上」の3つのテーマに貢献する価値を、Fujitsu Uvanceを中心とした事業を通じて、お客様や社会に提供します。加えて、この3つのテーマで2030年の非財務指標も設定しました。詳細については、「
また、持続的な発展を可能にする土台については、当社グループの価値創造の源泉であるとして、「テクノロジー」、「経営基盤」、「人材」を強化し、新たなビジネスモデルやイノベーションの創出を支えます。
・マテリアリティの特定プロセス
当社グループでは、ダブル・マテリアリティの原則に基づき、企業と環境・社会の相互影響(環境・社会課題が当社に与える財務的な影響、当社活動による環境・社会に与える影響)を考慮しマテリアリティを特定しました。
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実施ステップ |
実施内容 |
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Step1 社会課題の整理・抽出 |
・2030年の未来を見据えたメガトレンドを踏まえ、様々な社会課題を整理したロングリストを作成(163課題) ・ロングリストから、類似項目の統合や、事業と関連性の少ない項目を削除し、最終的に40個の社会課題を抽出 |
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Step2 優先順位付け |
・抽出された社会課題をもとに、幅広く社内外のステークホルダーに対するアンケートやインタビュー、及びデスクトップ調査を実施。2030年の未来を見据え、各課題をリスク・機会両方の側面で、「当社にとっての重要度(環境・社会課題が当社に与える財務的な影響)」及び「ステークホルダーにとっての重要度(当社活動による環境・社会に与える影響)」の視点から包括的に評価・採点を行い、社会課題の優先順位を示すマテリアリティ・マトリックス案(40課題から25課題に絞り込み)を作成 ・個別インタビュー、サステナビリティ経営委員会等を通じて、マテリアリティ・マトリックス案について富士通の独自性(富士通らしさ)といった観点から妥当性に関する評価・討議を実施し(執行役員・業務執行取締役による評価・討議に加え、非執行取締役、監査役によるレビューを含む)、マテリアリティ・マトリックスを最終化(25課題から18課題に集約) ・マテリアリティのコンセプト整理を行い、18課題を2つのカテゴリー、6つのテーマに分類・構造化
マテリアリティ・マトリックス
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Step3 マテリアリティの決定 |
・サステナビリティ経営委員会を経て、特定したマテリアリティ及び全社的な取り組み推進の方向性について審議、承認 ・マテリアリティを含む中期経営計画を取締役会にて審議、承認 |
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Step4 レビュー、見直し |
・定期的にレビュー・討議を実施予定 |
・マテリアリティへのアプローチ
マテリアリティに対するリスク・機会の認識を踏まえ、2025年度に向けたアプローチを検討・整理しました。リスクについては富士通自身の社内における取り組みを中心に施策を実施し、機会についてはFujitsu Uvanceをはじめとしたビジネスを拡大することによって社会課題を解決し、お客様・社会に価値を提供していきます。マテリアリティへのアプローチの推進により、当社事業、社会に対するネガティブなインパクトの縮小、ポジティブなインパクトの拡大を促進し、ネットポジティブの実現に貢献します。
(凡例)●:社内の取り組み、□:お客様・社会への事業展開
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マテリアリティ |
2025年度に向けたアプローチ (主な取り組み)※2023年度時点 |
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気候変動 |
●事業拠点のGHG排出量の削減(省エネルギーの推進と再生可能エネルギー使用量の拡大) ●製品の省電力設計の推進、サプライチェーンにおけるGHG排出量の削減 |
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□サプライチェーンのGHG排出量の可視化・削減 □工場等設備のエネルギー使用量の可視化(一次データの収集自動化) 等 |
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資源循環 |
●事業拠点の水使用量削減、サプライチェーン上流における水資源保全意識の強化 ●製品の省資源化・資源循環性向上の推進 等 |
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□ブロックチェーン活用やリサイクルによるトレーサビリティの強化とロスの削減 □生産品質等の可視化による材料の有効活用の促進 等 |
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自然共生 |
●サプライチェーンを含む自社の企業活動の領域における、生物多様性への負の影響低減、正の影響増加 |
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□生物多様性に配慮した事業活動において、事業計画シミュレーションによる環境保全と影響度の可視化 □新たな生産方式の採用・材料開発による水、森林資源の保護・過剰消費の抑制 |
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情報セキュリティ確保 |
●ガバナンス強化:経営の能動介入及び現場セキュリティ体制強化による施策実行の迅速性・実効性の向上 ●サイバー脅威への対策強化:予兆を含むセキュリティリスク可視化・対処、情報管理の強化 等 |
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□セキュアなHybrid IT基盤の提供により、顧客システム/事業の信頼性確保 □公共/金融機関などミッションクリティカル領域に対し、レジリエントなHybrid IT基盤の提供と、ITガバナンス、セキュリティガバナンスの強化 等 |
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デジタル格差の解消 |
□先端医療の民主化と、患者に合わせた最適化 □原材料トレーサビリティ・証明に関する課題解決、意思決定の高度化 等 |
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情報・AI倫理の推進 |
●AI倫理の社内実践の制度化や、従業員やお客様へのAI倫理教育の提供など、AI倫理浸透に向けた活動 ●AI開発者やお客様自身によるAI倫理リスクの発見を容易にし、解決案を提示する技術・エコシステムの提供 |
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□AI倫理ガイドラインを遵守したAIの提供や、説明可能なAIの提供による、AIへの信頼性・透明性の確保(説明可能なAIを利用した企業の財務・非財務データからの不正リスクの予測による、ビジネスにおける持続的な信頼性の向上) □AIの適切な使用に関する倫理ルールやガイドライン作成などのコンサルティングの提供 |
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働きやすい環境の推進と労働力不足解消 |
□自動化技術あるいはAR/VR及びリモートコミュニケーション技術を活用した、生産・配送・出荷・販売等の作業の効率化と安全性の両立 □労働環境の変化に応じた、働く人を中心とした働き方の改革・エンゲージメント向上のための業務状況や社員の声の可視化、分析による戦略立案と実行 等 |
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責任あるサプライチェーンの推進 |
●サプライチェーンにおける人権リスクの予防・軽減 ●サプライチェーンにおけるGHG排出量の削減の推進 等 |
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□サプライチェーンのトレーサビリティ向上による管理強化 □災害、パンデミック、国際政治リスクなど、多面的なサプライチェーンリスクの検知 等 |
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QoL(生活の質)向上に向けた医療ヘルスケアの推進 |
□医療機関と外部機関・サービスをつなぎ、生活者・患者の診療情報と生活情報の相互流通の実現 □予防、治療から予後までのEnd-to-endのヘルスケア・ ジャーニーの個別化・最適化(パーソナルヘルスケアの実現) |
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生涯教育・リスキリングの推進 |
□AIによる個人最適化された教育の提供や時間や場所を選ばないマイクロラーニング環境の実現 □DX実現に向けて求められる人材像の定義、人財戦略・人財開発計画の策定支援、教育・研修プログラムの提供により、戦略的なリスキリングの実現 |
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顧客・生活者体験の向上 |
□マーケティング/プロモーションのパーソナライズ化、新たなオンライン・オフライン購買の実現 □あらゆるブランドチャネルと消費者との接点における、一貫性があり、かつ流動的でパーソナライズされたショッピング体験の実現 等 |
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最先端技術の開発及びイノベーションの創出 |
●量子:量子HPCハイブリッド技術によるお客様との新アプリケーションの開拓、世界をリードするエラー訂正技術の開発。1,000量子ビット機とさらなる大規模化技術の開発 ●Computing:Computing Workload Broker技術を強化し、グラフAIを加速するフレームワークを開発、HPCをデジタルツイン等の新領域に拡大 等 |
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ガバナンス・コンプライアンス |
●コーポレートガバナンス:コーポレートガバナンスの不断の見直し、株主を含む全てのステークホルダーとの協働に資する会社情報開示の充実、株主との建設的な対話の促進 ●コンプライアンス:コンプライアンス意識向上、Global Compliance Programの展開、お取引先へのコンプライアンス教育提供 |
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リスクマネジメント |
●GRCツールの活用最大化(潜在リスクマネジメントへのシフト) ●潜在リスクの高度化(データドリブンへの取り組み) |
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経済安全保障対応 |
●経済安全保障や地政学上の観点によるビジネス継続リスクの評価と、BCPへの反映等を通じたビジネス・レジリエンスの強化 ●重要な先端領域を含む技術の全社横断的な管理強化 等 |
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デジタルトランスフォーメーション(DX) |
●OneFujitsuプログラム推進によるデータドリブン経営の実現、及びオペレーショナルエクセレンスの追求:合理的・迅速な意思決定を支えるリアルタイムマネジメント、経営資源のEnd-to-endでのデータ化・可視化、グローバルでのビジネスプロセス標準化 |
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DE&I |
●多様性: ・誰もが一体感をもって、自分らしくいられるインクルーシブで公平な組織文化の構築 ・リーダーシップにおける女性の参画強化 ・グローバルに通用する文化・民族の総合戦略の構築 等 ●人権:バリューチェーンにおける人権リスクの予防・軽減(人権教育、有識者ダイアログ) |
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ウェルビーイング・人材育成 |
●人材基盤の強化:ジョブ型人材マネジメント、DX人材への進化 等 ●ウェルビーイング向上:ウェルビーイング理解・浸透策の展開、データドリブンな可視化と分析 等 |
<GRB>
当社グループでは、マテリアリティの中で、特に当社グループの価値創造の源泉に深く関わり、社会的責任を果たすための取り組みをGRBとして掲げ、下表のとおり、6つの項目ごとにありたい姿と目標を定めています。なお、目標に対する実績は「指標と目標」に示します。
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項目 |
ありたい姿と2025年度目標(KPI) |
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人権・多様性
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◆人権 <ありたい姿> 実社会/デジタル社会において、「人間の尊厳」への配慮がすべての企業活動に反映され、「人を中心とした価値創造」が恒常的に行われている。 <KPI> 当社バリューチェーン全体における人権リスクを予防・軽減する。 ・継続的な人権教育の実施(受講率90%以上を維持) ・有識者ダイアログの実施(毎年) ・パートナー、お客様、NGOと連携し、富士通の知見・テクノロジーで人権尊重の促進と保護へ貢献 |
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◆ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DE&I) <ありたい姿> 多様性を尊重した責任ある事業活動(レスポンシブルビジネス)に取り組む。誰もが一体感をもって自分らしく活躍できる、公平でインクルーシブな企業文化を醸成する。個人のアイデンティティに関わらず、誰もが違いを認め合い、活躍できるようにする。インクルーシブなデザインやイノベーションを通じて、社会により良いインパクトをもたらすよう努め、エンパワーし合うことで、持続可能な世界の実現を目指す。 <KPI> ・従業員エンゲージメント・サーベイの 「個人の尊重」に関する質問に対する回答結果の平均を7ポイント向上(80ポイント) <KPI> 誰もが一体感をもって、自分らしくいられるインクルーシブで公平な企業文化を構築する。 ・従業員エンゲージメント・サーベイの「機会の均等」に関する質問に対する回答結果の平均を4ポイント向上(74ポイント) <KPI> リーダーシップの役割にも重点を置き、女性の参画を同等にする。 ・リーダーシップレベルの女性比率を20%に向上 <KPI> 文化に配慮した偏見のない職場環境を実現するために、尊敬と寛容を促進し、私たちが働く社会の中で経営者レベルから下位層へと反映する。 ・地域やグローバルな取り組みをしつつ、グローバルに通用する文化・民族の総合戦略を構築 <KPI> LGBTI+を受け入れるベストプラクティスを推進し、富士通のすべての拠点で社員とその家族をサポートする。 ・LGBTI+の社員に平等な機会と一体感をもたらすため、FWEI(富士通ワークプレイス平等指数)を導入 <KPI> すべての社員、お客様、及び社会のステークホルダーが、当社のソリューション、製品、サービス、システムを使用し、 当社のコミュニケーションを理解できるようにする。 ・デジタルアクセシビリティをブランドコミュニケーション、顧客エクスペリエンス、ワークプレイスを含む企業戦略の一つとして推進及び提唱 |
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ウェルビーイング |
<ありたい姿> 仕事もプライベートも、自分自身が大切にしている価値観に向き合い、自身の未来の幸せに日々向かっている。 <KPI> 社員一人ひとりが自分のウェルビーイングを理解し、語ることができる。 ◆ウェルビーイング ・理解浸透に向けて、Globalにウェルビーイングに関するメッセージの発信 ◆ウェルビーイングに関しての指標開発 ・安全衛生 ・重大な災害発生件数:ゼロ |
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環境 |
<ありたい姿> グローバルなSustainability Transformation(SX)リーディング企業として社会的責任を果たす。自らのカーボンニュートラル実現に加え、お客様との共創により、革新的なソリューションを提供することで様々な環境課題を解決する。 <KPI> 社会的責任の遂行と環境課題解決への貢献 ・自社・サプライチェーンにおけるSBT(Science Based Targets)ネットゼロ※を目指したGHG排出削減 ※SBT基準に沿った当社の目標(温室効果ガス排出量ネットゼロ):温室効果ガス排出量を目標年度に基準年度の90%以上を削減し、10%以下となった残存排出量を大気中のCO2を直接回収する技術(DAC)の活用や、植林などによる吸収で除去すること ・事業活動に伴うリスクの回避と環境負荷の最小化 ・ビジネスを通じたお客様・社会の環境課題解決への貢献 |
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コンプライアンス |
<ありたい姿> 当社グループ内の役職員が高いコンプライアンス意識をもって、事業活動を行うことにより、社会の規範としての役割を果たしつつ、ステークホルダーから投資や取引、就業の対象として選択される、信頼される企業グループである。 <KPI> コンプライアンスに係るFujitsu Way「行動規範」の組織全体の周知徹底を図るために、グループ全体にGlobal Compliance Program を展開することで、高いコンプライアンス意識を根付かせるとともに、経営陣が先頭に立って、従業員一人ひとりがいかなる不正も許容しない企業風土(ゼロ・トレランス)を醸成する。また富士通のビジネスに携わるすべての人に活動を広げ、理解を求める。 ・社長を含めた富士通本社の経営層や各国グループ会社の社長等からコンプライアンス遵守の重要性をメッセージとして毎年発信 ・コンプライアンス教育を、お取引先100社以上を対象に毎年提供 ・贈賄、カルテルを起こさせない |
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サプライチェーン |
<ありたい姿> 当社グループは、人権・安全衛生、環境に配慮し、多様性を確保した責任あるサプライチェーンを実現する。 <KPI> サプライチェーンにおける、人権リスクを予防・軽減する。 ・調達指針の遵守要請と並行して、お取引先の可視化・課題の特定を推進し、問題を起こさない仕組みを構築 <KPI> サプライチェーンにおけるGHG排出削減の推進 ・GHG排出削減をお取引先とともに推進するため、主要取引先に対して、国際基準に沿った数値の目標設定を要請 ※産業革命前からの気温上昇を2℃未満に抑制することを規定するとともに、1.5℃までへの抑制に向けた努力を継続 <KPI> サプライチェーンの多様性を確保 ・各リージョン・国での社会的要請に基づき、多様性の指標を定め活動 ・日本での活動を女性活躍とし、お取引先の取組状況を測定する仕組みを構築 |
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コミュニティ |
<ありたい姿> 社員一人ひとりが幅広いステークホルダーとの共働・共創を通して社会課題への共感性を高めて活動に取り組み、社会にスケールあるインパクトをもたらすことで、富士通の成長機会を創出し、パーパス実現に貢献している。 <KPI> ・コミュニティ活動に参加した社員(従業員数の20%) ※コミュニティ活動とは:重要なステークホルダーの1つである地域社会とグローバルで協力し、社会が抱える課題解決に取り組み価値創造をめざす活動 |
③リスク管理
当社グループでは、サステナビリティ経営委員会において、サステナビリティに係るリスクと機会の共有、中長期的な課題の検討及び方針や目標を策定するとともに、進捗を確認しています。また、リスク・コンプライアンス委員会は、国内外の各部門及び各グループ会社の事業活動と、それに伴う重要リスクの抽出・分析・評価を行い、これらに対する対策状況を確認したうえで、対策の策定や見直しを図っています。また、様々な対策の実行にもかかわらずリスクが顕在化した場合に備え、対応プロセスを整備しています。
そして、2023年に策定したマテリアリティの結果は、全社のリスクマネジメントにも活用しています。マテリアリティ分析から抽出された気候変動や人権、セキュリティなどの課題を、当社グループ全社で行われる潜在リスクアセスメントにおいて重要リスク項目として連動させ、その一部は「事業等のリスク」として公表しています。
事業活動に伴う主なリスクの詳細及び対応プロセスについては、「
④指標及び目標
<マテリアリティ 2030年非財務指標>
2023年度からの中期経営計画の中で、マテリアリティ(必要不可欠な貢献分野)の3つのテーマ(地球環境問題の解決、デジタル社会の発展、人々のウェルビーイング)に対応する2030年の非財務指標を掲げました。現在、各非財務指標における具体的な実績のトラッキング等について検討しています。
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マテリアリティ |
非財務指標 |
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地球環境問題の解決 |
世界のGHG排出量削減への貢献:0.3% |
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デジタル社会の発展 |
デジタルアクセシビリティ:1.5億人 |
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人々のウェルビーイング向上 |
ICTスキル、教育提供数:1,200万人以上 |
<GRB 2025年度の目標と実績(2023年度)>
当社グループは、GRBの項目ごとに目標/KPIを定めております。この達成に向けて実効力のあるマネジメント体制を構築し、また各国の国内法や労働市場など国・地域ごとの違いを踏まえつつ、グローバルでより高いレベルの活動が実施できるよう、具体的なアクションを定め、目標達成に向けた取り組みを推進しております。なお、2024年度の主な実績について、本有価証券報告書提出日現在においてデータ収集及び一部のデータにおいては、第三者審査機関による審査の過程にあるため、以下では2023年度の主な実績を記載しています。
GRBの目標と実績
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項目 |
2025年度目標 |
2023年度実績 |
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人権・ 多様性 |
<人権> 当社バリューチェーン全体における人権リスクの予防・軽減 |
継続的な人権教育の実施 (受講率90%以上を維持) |
新入社員、キャリア入社者を対象に「ビジネスと人権」に関するeラーニングを実施(受講率:77%) |
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有識者ダイアログの実施(毎年) |
富士通グループのビジネスと人権に関する取り組みをテーマに、外部有識者とのダイアログを実施(2024年3月) |
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<ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DE&I)>
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年齢、性別、文化、民族、性的指向、アイデンティティ、能力に関係なく、すべての社員がサポートされ、尊敬されていると感じられるようにする |
従業員エンゲージメント・サーベイの「個人の尊重」に関する質問に対する回答結果の平均を7ポイント向上(80ポイント) |
「個人の尊重」 73ポイント(前年比+2) 「機会の均等」 71ポイント(前年比+1) |
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誰もが一体感をもって、自分らしくいられるインクルーシブで公平な企業文化を構築する |
従業員エンゲージメント・サーベイの「機会の均等」に関する質問に対する回答結果の平均を4ポイント向上(74ポイント) |
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リーダーシップの役割にも重点を置き、女性の参画を同等にする |
リーダーシップレベルの女性比率を20%に向上 |
15.75%(2024年3月) |
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文化に配慮した偏見のない職場環境を実現するために、尊敬と寛容を促進し、私たちが働く社会の中で経営者レベルから下位層へと反映する |
地域やグローバルな取り組みをしつつ、グローバルに通用する文化・民族の総合戦略を構築 |
各国・地域の実態に即し、文化・民族的背景を考慮したイベントを実施 |
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LGBTI+を受け入れるベストプラクティスを推進し、富士通のすべての拠点で社員とその家族をサポートする |
LGBTI+の社員に平等な機会と一体感をもたらすため、FWEI (富士通ワークプレイス平等指数)を導入 |
LGBTI+の社員も働きやすい職場環境構築に向け、トップメッセージ発信、及びグローバル各地域で「プライド月間」を開催 |
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すべての社員、お客様、および社会のステークホルダーが、当社のソリューション、製品、サービス、システムを使用し、当社のコミュニケーションを理解できるようにする |
デジタルアクセシビリティをブランドコミュニケーション、顧客エクスペリエンス、ワークプレイスを含む企業戦略の一つとして推進及び提唱 |
ブランドコミュニケーション、顧客エクスペリエンス、ワークプレイスにわたる「アクセシビリティステートメント」策定 |
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ウェルビーイング |
自身のウェルビーイング実現に向けて、具体的に行動している |
理解浸透に向けて、グローバルにウェルビーイングに関するメッセージの発信 |
メッセージの発信:2回 |
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ウェルビーイングに関する指標開発 |
ウェルビーイングサーベイの実施(日本) |
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重大な災害発生件数:0件 |
重大な災害発生件数:0件 |
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環境 |
社会的責任の遂行と環境課題解決への貢献
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自社・SCにおけるSBTネットゼロを目指したGHG排出削減 |
・目標30.0%以上削減、396千トン以下に対し実績41.6%削減、330千トン(2020年度比 毎年 約10.0%削減) ・再生可能エネルギー使用率:目標37%以上に対し実績42.7% |
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事業活動に伴うリスクの回避と環境負荷の最小化 |
・水の使用量:目標1.9万㎥以上の削減に対し実績5.9万㎥削減 ・サーキュラーエコノミー型ビジネスモデルに資する製品・サービスの開発:CEビジネス製品・サービスの開発に対し製品系事業部へCEビジネスに関する説明(ワークショップ等)を実施。製品系事業部門にレンタル製品のリファビッシュによる保守部品の長期安定化等、個別目標の設定を依頼 ・製品の使用時消費電力によるCO2排出量:目標7.5%削減に対し実績34.2%削減(2020年度比) ・サプライチェーンにおけるGHG排出量削減の推進:主要取引先への排出削減目標設定(SBT WB2℃目標)目標50.0%以上に対し54.0% ・サプライチェーン上流におけるCO2排出量削減及び水資源保全:主要取引先への取組依頼を100%完了 |
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ビジネスを通じたお客様・社会の環境課題解決への貢献
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WBCSDのPACTプログラムに参加し、サプライチェーン全体のCO2排出量の可視化とデータ連携を通じてネットゼロを目指す取り組みを成功するなど、サプライチェーンのグローバル実装を拡大 |
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コンプライアンス |
コンプライアンスに係るFujitsu Way「行動規範」の組織全体の周知徹底を図るために、グループ全体にGlobal Compliance Program を展開することで、高いコンプライアンス意識を根付かせるとともに、経営陣が先頭に立って、従業員一人ひとりがいかなる不正も許容しない企業風土(ゼロ・トレランス)を醸成する。また富士通のビジネスに携わるすべての人に活動を広げ、理解を求める |
社長を含めた富士通本社の経営層や各国グループ会社の社長等からコンプライアンス遵守の重要性をメッセージとして毎年発信 |
国際腐敗防止デーに合わせたFujitsu Compliance weekにおいて、社長、各リージョン長等の経営層から、従業員に対し、コンプライアンス徹底に関するメッセージを発信 |
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コンプライアンス教育をお取引先100社以上を対象に毎年提供 |
お取引先211社に対しコンプライアンス教育を提供 |
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贈賄、カルテルを起こさせない |
贈賄、カルテルの確認件数0件 |
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サプライチェーン |
サプライチェーンにおける、人権リスクの予防・軽減 |
調達指針の遵守要請と並行して、お取引先の可視化・課題の特定を推進し、問題を起こさない仕組みを構築 |
新調達指針の公開と220社から同意書の取得、リスク情報取得デジタルツールの評価 |
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サプライチェーンにおけるGHG排出削減の推進 |
GHG排出削減をお取引先とともに推進するため、主要取引先に対して、国際基準に沿った数値の目標設定を要請 (主要取引先において、SBT WB2℃相当の排出削減目標が設定されることを目標とする) |
2022年度の主要取引先のうち54%のお取引先において、排出削減目標の設定が完了(調達額ベース) |
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サプライチェーン多様性の確保 |
各リージョン・国での社会要請に基づき、多様性の指標を定め活動 |
UK・Americas・オセアニアにおいて、中小企業(SME)・女性経営・少数民族企業等、多様な属性を持つ企業からの調達KPIを達成 |
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日本での活動を女性活躍とし、お取引先の取組状況を測定する仕組みを構築 |
女性活躍推進に関する説明会を開催し、厚生労働省「女性の活躍推進企業データベース」への登録を依頼(271社参加、262社登録済) |
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コミュニティ |
コミュニティ活動※に対する社員のマインドセット変革・組織風土醸成、及び社会へのインパクト創出
※コミュニティ活動とは:重要なステークホルダーの1つである地域社会とグローバルで協力し、社会が抱える課題解決に取り組み価値創造をめざす活動 |
コミュニティ活動に参加した社員(従業員数の20%) |
従業員数の19.8% |
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(2)気候変動への対応
気候変動は国・地域を超えて世界に影響を与える問題であり、グローバルに活動する当社にとっても重要な課題であると認識しています。たとえば、気候変動によりもたらされる災害は調達・物流・エネルギー供給網を寸断し、各事業所への部品調達やエネルギー調達を困難にします。また、GHG排出量に関する法規制は、製品・サービスの製造、開発等に影響を与え、対応への遅れはビジネスチャンスの損失を招く恐れもあります。
当社グループでは、環境行動計画を策定し、環境活動を継続的に拡大してきました。特にGHG排出量の削減を重要課題と捉え、環境行動計画の当初(1993年)から目標に掲げて取り組んでいます。これからも当社グループは時代の変化をとらえ、持続可能で豊かな社会の実現を目指して環境活動を深化・発展させていきます。
現在、第11期富士通グループ環境行動計画(2023年度から2025年度)として、環境・社会課題の解決に向け、「お客様・社会」及び「自社・サプライチェーン」の2つの軸で、世界経済フォーラムのグローバルリスクである「気候変動」、「資源循環」、「自然共生」の3つにおいて8項目の目標を設定しました。そのうち、4項目は気候変動に関するものです。お客様・社会へのデジタル技術貢献に向けた取り組みや、自社の再生可能エネルギー使用率拡大など、当社グループの環境ビジョンの実現に向け足元を固めた取り組みを展開していきます。
詳細については以下のウェブサイトをご参照ください。
https://www.fujitsu.com/jp/about/environment/action-plan/
①ガバナンス
当社グループでは、サステナビリティ経営委員会やリスク・コンプライアンス委員会において、気候変動に関するリスクと機会の共有、方針策定、重要リスクに関する特定等を行い、取締役会へ報告しています。詳細については、上記の「
②戦略
<富士通グループ環境ビジョン>
グローバル社会におけるカーボンニュートラルへの取り組みが加速する中、当社グループが果たすべき社会的役割を再検討し、「2050年度に富士通グループ自らが排出するCO2をゼロエミッション」としてきたこれまでのビジョンを20年前倒しして2030年度にゼロエミッション達成を目指すこととしました。さらにバリューチェーン全体の温室効果ガス排出量を2040年度にネットゼロ※とする目標を定めました。
富士通グループ環境ビジョンは、「バリューチェーンでのネットゼロ」「緩和:カーボンニュートラル社会への貢献」「適応:気候変動に対する社会の適応策への貢献」という3つの柱で構成されています。先進のDX技術を効果的に活用して当社グループ自らのネットゼロにいち早く取り組むとともに、そこで得られたノウハウを当社グループのソリューションとしてお客様・社会に提供します。それにより、ビジネスを通して気候変動の緩和と適応に貢献することを目指しています。
※温室効果ガス排出量ネットゼロ:温室効果ガス排出量を目標年度に基準年度の90%以上を削減し、10%以下となった残存排出量を大気中のCO2を直接回収する技術(DAC)の活用や、植林などによる吸収で除去すること。
https://www.fujitsu.com/jp/about/environment/climate-energy-vision/
<TCFDに基づいたシナリオ分析>
また、当社グループでは、気候変動戦略のレジリエンスを確保するため、2018年度に「2℃」シナリオ、2021年度にIPCC、IEA、環境省・気象庁等政府機関、各種民間調査機関の公開情報を参照し、「1.5℃」及び「4℃」の外部シナリオを用いて、気候変動による事業インパクトを分析し、当社グループの気候関連リスク・機会を特定するとともに対応策を検討しました。自社オペレーション、サプライチェーンにネガティブな影響を及ぼす移行・物理リスクに対応するとともに、お客様の気候関連リスクを理解することで価値創造の提案につなげ、ビジネス機会の獲得を目指します。
・シナリオ分析
当社は、ビジネスを加速し、社会課題に挑むソリューション「Fujitsu Uvance」において、クロスインダストリーな重点分野を定めています。そのうち、特に気候変動の影響が大きいと考えられるSustainable Manufacturing(検討領域:石油化学、自動車、食品、電子機器関連ビジネス)、Trusted Society(検討領域:公共、交通、エネルギー関連ビジネス)、Hybrid IT(検討領域:データセンター関連ビジネス)に対し、「1.5℃」及び「4℃」の外部シナリオを用いて2050年までを考慮したシナリオ分析を実施しました。分析は「リスク重要度の評価」、「シナリオ群の定義」、「事業へのインパクト評価」、「対応策の検討」という4つのステップにて行いました。Sustainable Manufacturing及びTrusted Societyはお客様の気候関連リスクへの対応を支援するなど、当社におけるビジネスの「機会」を中心とした分析を行い、Hybrid ITは、自社事業及びお客様の気候関連リスクへの対応など、「リスク」と「機会」の両面で分析しました。分析結果として、シナリオで分析した機会についてオファリングの検討・開発方向と一致していること、また、リスクについても対応策を整備できていることを確認し、中長期的な観点から当社の事業は戦略のレジリエンスがあると評価しました。現在、顧客のGHG排出量の削減、エネルギー効率向上などをデジタルリハーサルによりお客様のESG経営を支援するオファリングを提供しています。また、サプライチェーン全体の環境変化を可視化し、データドリブンの施策実行によりScope3までを含むGHG排出量削減など環境への影響を最小限に抑え、各企業のESG経営に繋がるサプライチェーンマネジメントの実現に向けた「Dynamic Supply Chain Management」のオファリングを準備しています。
詳細については、以下の当社ウェブサイトに掲載している「TCFDに基づく情報開示」、「Fujitsu Uvance」をご参照ください。
https://www.fujitsu.com/jp/about/environment/tcfd/
https://activate.fujitsu/ja/uvance
機会
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機会分類 |
対象期間 |
内容 |
主な対応策 |
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製品・サービス |
短~長期 |
高エネルギー効率製品・サービスの開発・提供による売上増加 |
高性能・低消費電力の5G仮想化基地局、高性能・省電力のスーパーコンピュータ等の開発・提供 |
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市場 |
短~長期 |
ICT活用により創出される気候変動対策に向けた新規市場機会の獲得 |
サプライチェーンのCO2排出量算定・可視化、ゼロエミッションに向けた新材料探索を効率化するシステム等の開発・提供 |
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レジリエンス |
短~長期 |
レジリエンス強化に関する新製品及びサービスを通じた売上の増加 |
防災情報システム、洪水時の河川水位を予測するAI水管理予測システム等の開発・提供 |
リスク
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リスク分類 |
対象期間 |
内容 |
主な対応策 |
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移行 |
政策/ 規制 |
短~長期 |
・温室効果ガス排出やエネルギー使用に関する法規制強化(炭素税、省エネ政策等)に伴い、対応コストが増加 ・上記法規制に違反した場合の企業価値低下のリスク |
・温室効果ガス排出量の継続的な削減(再生可能エネルギーの積極的な利用拡大、省エネルギーの徹底) ・EMSを通じた法規制遵守の徹底 |
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市場 |
中~長期 |
・カーボンニュートラルの推進(電動化などの普及)に伴った電力価格の高騰 |
・社内基準の策定、革新的な技術開発などによる電力消費量の削減 |
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技術 |
中~長期 |
・熾烈な技術開発競争(省エネ性能、低炭素サービス等)で劣勢になり、市場ニーズを満たせなかった場合、ビジネス機会を逸失するリスク |
・顧客の気候変動課題解決に対応する製品・サービス開発、イノベーション推進 |
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評判 |
短~長期 |
・投資家・顧客等のステークホルダーからの要請へ対応することによるコストの増加 ・外部要請への対応遅れによる評価・売上に対するネガティブ影響が発生 |
・中長期環境ビジョン、環境行動計画の策定・推進 ・気候変動戦略の透明性確保に向けた積極的な情報開示 |
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物理 (自然災害等) |
慢性、急性 |
短~長期 |
・降水・気象パターンの変化、平均気温の上昇、海面上昇、渇水などへの対応コストが増加 ・異常気象の激甚化によるサプライチェーンを含む操業停止、復旧コストが増加 |
・BCP対策強化、お取引先の事業継続体制の調査やマルチソース化などの対策実施 ・潜在的水リスクの評価とモニタリングの実施 |
③リスク管理
気候変動を含むリスク管理プロセスは、リスクマネジメント・コンプライアンス体制によるプロセスに組み込まれています。詳細については、「
また、気候変動を含む環境課題に関するマネジメントについては、前述の仕組みに加え、ISO14001に基づく環境マネジメントシステムを構築しています。気候変動対策の方針策定及び進捗管理は、サステナビリティ経営委員会が担当しています。
④指標及び目標
GHG排出量に関しては基準年に対する排出削減比率、再生可能エネルギー導入比率を指標として管理しています。
カーボンニュートラルに向けた動きを加速するため、自社事業活動における排出量を2030年度に、またバリューチェーン全体の排出量を2040年度にネットゼロとする目標を策定し、2023年6月にSBTi(Science Based Targets Initiative)より「ネットゼロ」の認定を取得しました。
なお、2024年度の主な実績については、本有価証券報告書提出日現在においてデータ収集及び一部のデータにおいては、第三者審査機関による審査の過程にあるため、以下では2023年度の主な実績を記載しております。

<Scope 1、2及び該当する Scope 3のGHG排出量>
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項目 |
GHG排出量実績(2023年度) |
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Scope 1 |
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Scope 2(Market-based) |
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Scope 3(Category 1) Scope 3(Category 11) |
1,086千トン-CO2 2,283千トン-CO2 |
<目標と実績(2023年度)>
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項目 |
目標 |
実績(2023年度) |
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自らのGHG排出量削減(※1) |
SBTネットゼロ認定 |
中期 |
2030年までに100%削減(※2) |
41.6%削減 |
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バリューチェーンのGHG排出量削減(※3) |
長期 |
2040年度までに90%削減(※2) |
28.1%削減 |
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再生可能エネルギー使用率 |
RE100加盟 |
中期 |
2030年度までに100%導入 |
42.7%導入 |
(注)1.※1 Scope1+Scope2
2.※2 2020年度比
3.※3 Scope1+Scope2+Scope3
(3)人的資本及び多様性
サステナブルな企業として、社会に価値を提供していくための最大の経営資源、そして顧客価値の源泉は「人」です。「多才な人材が、エンゲージメント高く、一人ひとりのウェルビーイングを実現しながら、社会やお客様の課題を解決するためにパーパスを共有して俊敏に集い、社会のいたるところでイノベーションを創出する企業」となることを目指し、企業価値向上に向けた中長期的な人的資本の強化に取り組んでいます。
①ガバナンス
当社グループは、事業戦略の実行に連動した最適な人材ポートフォリオの実現に向けて、CHRO(最高人事責任者)を責任者として、国内外の人事、人材開発・育成責任者と連携して各種施策の策定・実行にあたっています。
また、経営層が人材マネジメントについて議論する場も定期的に設けています。具体的には、当社代表取締役社長、副社長、CHROが参加するGlobal Talent Committeeを年2回程度開催し、グローバルレベルで重要なポジションにおけるサクセッションプランの検討状況の共有や個別アポイントメントの検討、また経営者育成に向けた施策に関する議論を実施しています。加えて、Talent Acquisition(人材獲得)、Learning & Development(人材開発)、Performance Management(パフォーマンスマネジメント)、Engagement(エンゲージメント)等、人事・人材育成に関する具体的な課題や方針、施策に関する検討、議論、決定も行っています。なお、人的資本や多様性を含めた人事・人材育成に関わる事項のうち重要なものについては経営会議及び取締役会に報告されます。
さらに、各リージョンの人事責任者を含む、人事部門の各領域の責任者が参加するグローバルHRカンファレンスを年2回開催し、グローバルレベルでの人事戦略、人事施策の検討、各リージョンにおける人事施策の進捗状況や課題の共有等を実施しています。
②戦略
「多才な人材が、エンゲージメント高く、一人ひとりのウェルビーイングを実現しながら、社会やお客様の課題を解決するためにパーパスを共有して俊敏に集い、社会のいたるところでイノベーションを創出する企業」を実現するため、以下3点を人事部門のグローバル戦略テーマとしています。
“Empowerment”
多様性を享受しオープンかつエンゲージメントの高い、信頼を基にした強固な文化を醸成します。
“Growth”
常にすべての従業員が魅力ある仕事に挑戦し、学び、成長する機会を提供します。
“Impact”
国境や組織の枠組みを越えてコラボレーションし、ビジネスと社会に強いインパクトをもたらす多様性あふれる集団を形成します。
上記を実現するために、2024年度は主に以下の取り組みを進めました。
(ⅰ)事業戦略と一体化した人材ポートフォリオの策定
事業戦略を実現するためには、その戦略と一体となった人材ポートフォリオの策定が不可欠です。事業戦略に基づいて将来必要とされる人材のロールやスキルを定義するとともに、人数等の規模感を特定し、現有人材とのギャップ分析を行い、そのギャップを充足する計画の立案が必要です。
現在当社においては、事業と人材ポートフォリオの連動に向け、事業、ロール、地域の3軸での可視化・モニタリングプロセスの検討を開始しています。事業のポートフォリオとアラインしたロール別の人員数をマッピングし、成長領域への戦略的な人材の採用・配置や、リスキリング・アップスキリングを含めた人材育成施策を実行するとともに、効率化や自動化を推進することで生産性の向上を目指す分野を可視化していくことを目指しています。2024年度は、グローバルに統一されたロールフレームワークを用い、各ビジネスグループ及びリージョンにおけるロール別人材ポートフォリオの可視化、事業計画に連動した要員計画の検討・策定を推進しました。
(ⅱ)人材ポートフォリオの質的変革
事業戦略と一体となった人材ポートフォリオの実現に向け、2020年より導入しているジョブ型人材マネジメントの考え方に沿って、社内の人材流動化の促進、より質の高い人材の採用、リスキリング・アップスキリングの強化、人材獲得競争力強化に向けた従業員報酬の設計に取り組んでいます。
・社内の人材流動化
社内公募制度であるポスティングをグローバル・グループワイドに展開しています。国内(グループ会社含む)を対象に実施しているグループワイドポスティングでは、2024年度は7,869名が応募し、うち2,826名が合格し異動しました。また、富士通グループグローバル横断で実施するグローバルポスティングでは59名が合格し、一貫して社内における適所適材の推進が進んでいます。このほか、従業員自身が希望する部署に期間限定で異動し、異なる業務を経験できる、社内インターンシップ制度「Jobチャレ!!」や、所属組織や業務を超えて、スキルや経験を活かして挑戦できる社内副業制度「Assign Me」など、社員が主体的に挑戦できる機会の拡充にも取り組んでいます。
・より質の高い人材の採用
2024年度は新卒採用871名、キャリア採用794名を採用しました。
新卒採用については、変化の激しい環境下で社会課題の解決やお客様のニーズに応えるために、求められるソリューションやテクノロジーに即応しながら、必要な役割を自律的に遂行できる人材の採用を加速するため、2026年度入社者より、新卒一括採用の廃止と新卒入社者へのジョブ型人材マネジメントの拡大を行うことを決定しました。毎年計画数を定めて一斉のタイミングや学歴別一律の初任給で採用する考え方を改め、新卒採用・キャリア採用の区分にこだわらず、必要な職務を担う人材を、計画数を定めずに通年でフレキシブルに採用します。処遇については、入社時よりジョブレベルに応じた処遇を適用し、高度な専門性などが必要なジョブを担うことができる人材には、入社時からそれに応じた処遇とすることで、より優秀で多様な人材の獲得を推進していきます。また、応募者が募集しているジョブへの理解を高め、入社後の自身の活躍をイメージすることが重要との観点から、当社の各領域におけるスペシャリストとともに実ビジネスに挑戦できる数か月にわたる長期の有償インターンシップを実施しています。2024年度は約200名が富士通のインターンシップを経験し、富士通への理解や参加者自身のキャリア形成に繋げることができました。
また、引き続き2023年度より、グローバル共通のEmployee Value Proposition(EVP)(注1)を展開し、採用活動における訴求力向上に努め、各種オンボーディング施策を実践するなど、採用力強化に加え、新規入社者の定着率向上についても実践しています。
(注1)当社では、会社が社員に提供できる価値を明文化し、グローバルに統一されたEVPとして5つのPeople Promisesを定めています。①Do the right thing ②Trusted to transform ③Work Your Way ④Global reach, local impact ⑤Achieve together
・人材獲得競争力強化に向けた従業員報酬の設計
当社が導入しているジョブ型人材マネジメントにおいては、人材獲得・定着に向けた競争力強化の観点から、「労働市場」を第一義として報酬水準を決定すること、すなわち、各人の職務・ポジションに対して、マーケットベンチマークに基づき相応しい報酬水準を設定することが基本的な考え方です。
この考え方に基づき、2023年4月にグローバル企業のベンチマーク結果を踏まえ、従業員の報酬水準の引上げを実施し、人材獲得競争力の向上につながっています。
また、中長期的な当社のビジネスへの貢献度が極めて高い領域(注2)における人材獲得競争力の強化を目的として、当該領域に非常に高い専門性を有する従業員を対象に報酬のアドオンを行う「高度専門職系人材処遇制度」や、受注獲得等の営業成績に対して責任を持つ社員を対象とした「セールスインセンティブ制度」の導入等、より職種の特性に応じた報酬の仕組みを導入し、従業員の納得性と当社で働く魅力の向上を図っています。
(注2)サイバーセキュリティ、AI、データサイエンティスト、重点オファリング(SAP, Salesforce, ServiceNow(3S)、社内弁護士)等を適用領域としています。
・リスキリング、アップスキリングの実践
事業戦略に沿って、必要となるスキルや専門性を有する人材の育成に向けて、リスキリングやアップスキリングに取り組んでいます。
Fujitsu Uvanceの拡大に向けては、「Business Application」領域のソリューションであるSAP、Salseforce、ServiceNowや「Hybrid-IT」領域のAmazon Web Services(AWS)、Microsoft Azureのスキルを有するエンジニアの育成に注力しています。人材育成投資を当該領域に集中的に実施することで、資格取得の総数は前年度比でSAP 116%、Salesforce 169%、ServiceNow 225%と堅調に推移しています。また、資格取得に留まらず、人材最適配置と生産性向上を加速するため、当社コンサルティング事業「Uvance Wayfinders」の展開に向けたコンサルタントの育成やデリバリー力強化に向けたデリバリー人材の育成に取り組み、当社重点強化領域へのリソースやスキルのシフトを推進しています。
(ⅲ)キャリアオーナーシップの浸透
当社のジョブ型人材マネジメントにおいては、従業員一人ひとりが自らのキャリアを考え、成長に向けて主体的に行動していく「キャリアオーナーシップ」の考え方を重視しています。
人材育成においては、「キャリアオーナーシップ」マインドを醸成し、行動変革を促進するための施策と、自ら主体的に選択して受講できる教育機会の拡充に取り組んでいます。
多様な従業員と互いのキャリアを語り合う「キャリアCafe」は、国内(グループ会社含む)を対象に2021年度より実施しており、2024年度までに延べ25,638名が参加しています。2022年度までは幅広い世代に実施をしておりましたが、2023年度からは、キャリア資本を戦略的に考えてもらうために、特に若手・ミドルシニア世代に注力し実施しています。2024年度は、2023年度より継続及び新たに対象となる従業員を中心に実施しています。
また、いくつかの質問に答えることで、個人のキャリアオーナーシップの状況を診断できる「キャリアオーナーシップ診断」は2022年度に導入し、キャリアCafeとも連携しながら提供しており、日本で延べ36,979名の従業員が活用しています。
学びの機会の拡充については、教育プラットフォーム「Udemy Business」や 「LinkedIn ラーニング」を導入し、自律的な学びの文化の醸成を促進しています。「Udemy Business」は、生成AI等の最新技術動向やデジタルリテラシー、お客様のDX戦略の加速とビジネス変革を支援するためのテクノロジー関連スキルの早期獲得を目的とし、2020年度より導入しています。「LinkedIn ラーニング」は、グローバルスタンダードのビジネススキルの習得を目的に、2023年度より全従業員(グローバル含む)に導入しています。
加えて、プログラムの提供だけでなく、職場・社員のキャリア形成を支援するキャリアカウンセラーの設置や、2024年度に約1,300名が参加した社内キャリアカウンセラーによるキャリア面談についても2022年度より全社展開を開始し、一人ひとりのチャレンジを後押しする取り組みも進めています。
(ⅳ)挑戦を促す評価制度「Connect」
2021年より順次、社員が自律的に考え、行動を起こしていくためのグローバル共通の人材マネジメントの基盤「Connect」を導入しました。
「Connect」では、当社のパーパスと個人のパーパスを起点にそれらを結び付け、社員一人ひとりの主体的な挑戦を後押しし、組織や個人の成長を最大化することと、社会やお客様に大きなインパクトをもたらすことをねらいとしています。
また、評価制度としては社員一人ひとりがビジョン実現に向けて生み出したインパクトの大きさ(Impact)、Fujitsu Wayの大切にする価値観「挑戦」「信頼」「共感」の体現度(Behaviours)、パーパスやビジョンを基にした自身とチームの成長(Learning&Growth)を評価します。
2024年度からは、毎月の1on1ミーティングのうち、3か月に1度の振り返りと未来に向けたアクションについて上司部下間で対話する「Connect Conversations」を全リージョンに導入しています。加えて、評価の決定と評価結果に基づいた個人のアサインメント・各種成長支援等の検討という一貫したアプローチを実施するための、組織全体の人材にまつわる議論の枠組みである「People discussions」についてもグローバルで考え方を統一しました。評価結果を報酬やアサインメント、スキル向上支援の検討にも活用することで、一貫性のある人材マネジメントを行うことができる仕組みとしています。
(ⅴ)エンゲージメントの向上
当社グループの持続的な成長を測る1つの指標として、2020年度より従業員エンゲージメントを非財務指標に設定し、2025年度までにグローバル企業と同等の数値(75ポイント)に引き上げることを目標に掲げ、様々な取り組みを推進しています。
社員一人ひとりが、パーパス実現に向けて活き活きと活躍できるよう、年2回のエンゲージメントサーベイを通じて社員の声を集め、組織の風土を「見える化」し、各組織へフィードバックすることで組織活性化に取り組んでいます。
また、2023年度より、サーベイプラットフォームをグローバルで統一し、より一貫した集計の下、組織・チーム内での内省・メンバーと一緒に行動を起こすこと(Action Taking)の実行を積極的に促しています。
この数年で従業員エンゲージメント数値は69ポイント付近を推移し、目標達成には未だ至っていない状況です。しかし、組織ごとにエンゲージメントスコアの影響要因にはばらつきがあり、高スコアを達成している組織も存在する一方、低スコア組織ではコミュニケーションの質と量に課題があることがエンゲージメントサーベイのフリーコメント分析から明らかになりました。この課題に対し、経営層からのメッセージ発信に加え、経営方針への理解と共感を深めるためのコミュニケーションフレームワーク「オープントーク」を展開し、組織のトップとメンバーが率直な対話を行う機会を設けています。また、特にマネジメントに課題を抱えるチームにおいては、人事部門が策定したガイドラインに沿って、組織長や上司幹部が職場主体で課題の改善に取り組むことで、対象チームの約4割でエンゲージメントスコアが改善しました(改善したチームで平均13ポイント改善)。
「1on1」の可視化による質の向上にも取り組み、2024年度は従業員1人あたり平均12.8回の1on1を実施し、昨年度より向上しました。さらに、マネジメント以外の経営基盤に関する課題の可視化も進め、関係部署と連携を始めています。
また、富士通研究所を含む社内外の最新の知見やテクノロジーを活用し、各組織における課題のさらなる深掘りと可視化を進め、より真因に迫ったAction Takingを推進しています。
今後も、エンゲージメントに影響を与える要因に対し、多角的な視点から根本原因を追求し、具体的な対策を実行することで、エンゲージメントの向上を目指してまいります。
(ⅵ)DE&Iの推進
当社グループが目指すDE&Iの姿は「誰もが一体感をもって自分らしく活躍できる、公平でインクルーシブな企業文化」です。これを基盤に多様性を尊重した責任ある事業活動に取り組み、持続可能な社会の実現に向けたイノベーションの創出を目指しています。
DE&Iにおける5つの重点領域(注3)をグローバルで設定し、持続的な発展を可能にする土台である多様な人材の活躍を支援しています。中でもジェンダーへの取り組みは現在の必須課題と位置づけており、非財務指標のKPIの1つとして、リーダーシップレベルにおける女性比率の目標を2025年度で20%と策定しました。2024年度末時点では17%となりました。
さらに、一人ひとり異なる価値観や能力を互いに活かし合える職場環境を醸成するため、全社員の意識やマネジメントスタイルの変革を目的とした「マインド改革(注4)」や、ありたい姿に向けた戦略的な採用・育成・登用や能力発揮を促す「活躍支援(注5)」を行い、当社が提唱する「Work Life Shift」の下、多様で柔軟な働き方を実現し、社員のキャリアやライフイベントへのサポートを一層充実していく等、様々な取り組みを推進しています。
(注3)2022年に「Global DE&I Vision & Inclusion Wheel」を刷新し、その中でジェンダー、世代間、LGBTI+、文化・民族、健康・障がい・アクセシビリティの5つを当社の重点領域として設定
(注4)マインド改革の例:アンコンシャスバイアス研修、インクルーシブリーダー研修、エンゲージメントサーベイの活用
(注5)活躍支援の例:コミュニティの充実、メンター制度、多様なキャリアの支援
(ⅶ)健康経営と労働安全衛生の遵守
当社では、健康に関する最終的な評価指標として「生産性向上」「個人・組織活性化」「人材リテンション強化」に関わる指標を設定し、下記5つの重点施策領域において、それぞれの指標を改善・向上させるためにPDCAサイクルを回しながら取り組んでいます。
1.生活習慣病・がん対策 2. メンタルヘルス対策 3.口腔・歯の健康施策
4.ヘルスリテラシー・健康意識向上、生活習慣の改善 5.職場環境の整備
また、労働安全衛生基本方針として「全ての事業活動において、心とからだの健康と安全を守ることを最優先とする」と定め、安全・快適に働く環境の整備と職場風土づくりをグループ一体となって推進し、社員の健康・安全の確保を図っています。この基本方針に基づき、各リージョンに労働安全衛生施策を展開しています。
(ⅷ)ウェルビーイングの実現
当社グループでは、マテリアリティ(組織が優先して取り組んでいく重要課題)の1つとして「人々のウェルビーイングの向上」を定めています。
当社ではウェルビーイングの定義を「一人ひとりが、自身の大切にしている価値観に向き合い、仕事と生活を通じて、未来の幸せに日々向かっている」と定めました。従業員一人ひとりのウェルビーイング向上に向けて以下4つのカテゴリにまとめ、カテゴリごとに方針を定めてグローバルで活動を実践しています。
ウェルビーイングの2025年度目標を、社員が「自身のウェルビーイング実現に向けて、具体的に行動している」とし、その達成に向けて2024年度はウェルビーイングの理解・浸透策の展開と、データドリブンによる可視化・分析の取り組みを重点的に推進してきました。
その1つの取り組みとして、ウェルビーイングの影響因子の可視化、データ分析結果の人事施策への立案と展開を目的に、2024年11月から12月に海外を含む全富士通グループ社員にウェルビーイングサーベイを実施しました。全社サーベイの結果、ウェルビーイングの実感は、性別や職責等の属性に加え、リージョンや国によっても異なり、特に海外の社員においては日本とは異なる傾向が見られました。ウェルビーイングにおいて重視する項目も同様に多様であることが判明したため、今後も分析と考察をさらに深め、各リージョン・国に適した活用方法や、ウェルビーイング向上に繋がる施策を検討していきます。
(2024年度ウェルビーイングサーベイ実施概要)
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目的 |
・社員のウェルビーイング実感値を把握する。 ・サーベイ結果を基に、ウェルビーイング向上のための施策を企画・実行する。 |
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対象者 |
海外を含む全富士通グループ社員に任意調査(有効回答数88,640人) |
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回答期間 |
2024年11月~12月 |
(ⅸ)人的資本価値向上とデータ検証
当社では2022年度より、人的資本経営の実践に向けて他社のCHROと協働する「CHRO Roundtable」(注6)を主催しています。人的資本経営の実践においては、人材に関する取り組みが戦略の実現にどのように関わっているのかを伝える一貫性あるストーリーと、その裏づけとなる自社固有のKPIを特定し、取り組みを進めていくことが重要との認識のもと、2022年度に実施した第1回CHRO Roundtableにおいて、各社が人的資本経営を検討するにあたっての構想フレーム「人的資本価値向上モデル」を策定し、社外に公開しています。各社が人的資本経営を実践するにあたり、自社の施策をこのモデル図に落とし込んで整理していくことで、企業価値向上につながる全体構造を捉えることが可能になります。
2023年度より実施した第2回CHRO Roundtable(注7)では、この人的資本価値向上モデルを活用し、経営戦略と組織・人材に関する取り組みの関係性を、データにより定量的に可視化する取り組みを進めました。様々なデータの相関分析を通じて、富士通が取り組んでいるジョブ型人材マネジメントの考え方に基づく自律的な人材流動化が、組織にプラスのインパクトをもたらしている可能性が示唆されました。また、最新のテクノロジーを活用した因果関係の探索にも取り組み、多様な人材の活躍には、マネージャーのピープルマネジメント力向上が鍵になりうるという示唆が得られました。
2024年度より実施している第3回CHRO Roundtable(注8)では、人的資本経営を実践フェーズに移すべく、人事がデータドリブンで事業に貢献するためのポイントや実践方法について議論を重ねています。
(注6)第1回CHRO Roundtableについては、「CHRO Roundtable Report」参照(下記リンク先よりダウンロード可)https://www.fujitsu.com/jp/microsite/fujitsutransformationnews/2023-04-20/01/?_gl=1*lizz6i*_ga*MTM5MjU4OTcxNi4xNzI5MDQyOTc3*_ga_GSRCSNXHW8*czE3NDc2MzAwMjMkbzQ3JGcxJHQxNzQ3NjMwMTUxJGowJGwwJGgw ga_GSRCSNXHW8*czE3NDc2MzAwMjMkbzQ3JGcxJHQxNzQ3NjMw MTUxJGowJGwwJGg
(注7)第2回CHRO Roundtableについては、「CHRO Roundtable Report 2024」参照(下記リンク先よりダウンロード可)
https://global.fujitsu/ja-jp/insight/tl-chro-roundtable-20240718
(注8)第3回CHRO Roundtableについて報告した「CHRO Roundtable Report 2025」は、2025年7月に公開予定
③リスク管理
人的資本を含むリスク管理プロセスは、リスクマネジメント・コンプライアンス体制によるプロセスに組み込まれています。詳細については、「
また、CHROを人事部門の最高責任者として、全社経営・事業戦略とアラインした人材戦略を策定して事業への貢献を確実なものとするため、“経営トップが参画し、次世代経営リーダー候補者の選抜・育成を筆頭に人事・人材育成に関する具体的な課題や方針、施策に関する検討、議論、決定を行う場である「Global Talent Committee」”、“グローバルで一気通貫の人事戦略・施策を促進する「グローバルHR カンファレンス」”において人的資本に関する議論のサイクルを定期的に回すことで、優秀人材の離職や人材獲得競争が激化するリスクにスピーディに対応できる体制を構築しております。
④指標及び目標
組織・人材の活性化の観点において重要とされる、従業員エンゲージメントスコア、女性管理職比率について、それぞれ中長期的に目標を定めマネジメントしております。
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項番 |
指標 |
目標 |
2022年度実績 |
2023年度実績 |
2024年度実績 |
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(ⅴ) |
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22年度12月時点で69 |
23年度11月時点で69 |
24年度11月時点で |
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(ⅵ) |
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15% |
16% |
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(参考)人事戦略に関する指標
人事戦略の重要なテーマに関する参考指標は、以下のとおりです。
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項番 |
指標 |
2022年度 実績 |
2023年度 実績 |
2024年度 実績 |
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(ⅱ) |
新卒採用数(注4) |
765名 |
1,037名 |
871名 |
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(ⅱ) |
キャリア採用数(注4) |
818名 |
1,083名 |
794名 |
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(ⅱ) |
高度専門人材認定者数 (内3S認定)(注4) |
78名 (57名) |
143名 (128名) |
178名 (159名) |
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(ⅱ) |
SAP資格取得件数(注4) |
848件 |
452件 |
438件 |
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(ⅱ) |
ServiceNow資格取得件数(注4) |
217件 |
430件 |
1,114件 |
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(ⅱ) |
Salesforce資格取得件数(注4) |
589件 |
950件 |
1,674件 |
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(ⅱ) |
新卒入社三年後定着率(注4) |
89% |
90% |
90% |
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(ⅱ) |
社内ポスティング異動人数(注5) |
3,419名 |
2,725名 |
2,826名 |
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(ⅱ) |
グローバルポスティング異動人数(注2) |
98名 |
65名 |
59名 |
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(ⅲ) |
Jobチャレ!!利用者数(注5) |
- |
71名 |
73名 |
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(ⅲ) |
キャリアcafé参加者数(注5) |
8,296名 |
7,255名 |
2,849名 |
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(ⅲ) |
キャリアオーナーシップ診断(注5) |
15,187名 |
11,813名 |
9,979名 |
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(ⅲ) |
Udemy Business 利用者数(注5) |
36,764名 |
33,320名 |
32,598名 |
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(ⅲ) |
LinkedIn ラーニング 利用者数 (注2) |
- |
104,773名 |
99,746名 |
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(ⅴ) |
1on1平均実施回数(注5) |
1人当たり 年間平均 9.4回実施 |
1人当たり 年間平均11.7回実施 |
1人当たり年間平均12.8回実施 |
(注1)2022年度実績は日本の連結対象会社のみ、2023年度実績から当社グループ全体の数値
(注2)当社グループ全体の数値
(注3)「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)又は「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)における算定方法による算出
(注4)提出会社のみ
(注5)日本の連結対象会社のみ
[方針・推進体制]
当社グループは、事業継続性、企業価値の向上、企業活動の持続的発展を実現することを目標とし、その実現に影響を及ぼす不確実性をリスクと捉え、これらのリスクに対処するために、取締役会が決定した「内部統制体制の整備に関する基本方針」に基づき、取締役会に直属し、グループ全体のリスクマネジメント及びコンプライアンスを統括する「リスク・コンプライアンス委員会」を設置しています。リスク・コンプライアンス委員会は、代表取締役社長を委員長として業務執行取締役等で構成しており、当社グループに損失を与えるリスクを常に評価、検証し、認識された事業遂行上のリスクについて、未然防止策の策定等リスクコントロールを行うとともに(潜在リスクマネジメント)、リスクの顕在化により発生する損失を最小限に留めるため、顕在化したリスクを定期的に分析し、取締役会等へ報告を行い、再発防止に努めております(顕在化したリスクのマネジメント)。
内部統制体制におけるリスク・コンプライアンス委員会の位置づけ
また、リスク・コンプライアンス委員会は、グローバルな地域に基づく業務執行体制の区分であるリージョンごとに、下部委員会としてリージョンリスク・コンプライアンス委員会を設置し、国内外の部門(第1線)やグループ会社、リージョンにリスク・コンプライアンス責任者を配置するとともに、これらの組織が相互に連携を図りながら、グループ全体でリスクマネジメント及びコンプライアンスを推進する体制を構築しております。
さらに、グループ全体のリスク管理機能強化のため、事業部門から独立した代表取締役社長直下の組織である全社リスクマネジメント室(第2線)にリスク・コンプライアンス委員会事務局機能を設置し、CRMO(Chief Risk Management Officer)の下、リスク情報全般の把握と迅速かつ適切な対応を行うとともに、代表取締役社長主導によるリスクマネジメント経営を徹底し、リスク・コンプライアンス委員会を毎月開催することで、施策実行の迅速性と実効性を担保するよう努めております。
なお、リスクマネジメント・コンプライアンス体制について、毎年、監査役監査、監査部門(第3線)による内部監査を行い、体制が正常に機能していることを確認しております。
[潜在リスクマネジメントプロセス]
・グループにおける重要リスクの抽出・見直し
リスク・コンプライアンス委員会事務局(全社リスクマネジメント室、第2線)にて、当社グループを取り巻く環境変化を踏まえて、当社グループにおける重要リスク(16項目)の抽出・見直しを実施。重要リスクごとにリスクシナリオを定義。純粋リスクと経営リスクに区分。
・リスク管理部門(第2線)の選出
重要リスクごとに当該重要リスクにおける責任を持ち統制を行う所管部門であるリスク管理部門を選出。
・グループにおけるリスク評価
リスク管理部門/部門/グループ会社において、各重要リスクの影響度、発生可能性、対策状況等を評価。
・重要リスクのランキング化・マップ化
グループにおける評価内容を踏まえ、重要リスクのランキング化・リスクマップの作成を行い、重要度を可視化。重要度を踏まえて重点対策リスクを決定。
・リスク・コンプライアンス委員会報告
グループにおける評価結果を踏まえた分析を実施、重要リスクの対策方針等を議論・決定。
・部門・グループ会社への是正指導
グループにおける評価結果を踏まえ、部門・グループ会社にフィードバックを実施し、改善を指示。
・部門・グループ会社におけるリスクモニタリング
部門・グループ会社において定常的にリスクモニタリングを実施し、リスク対策の状況確認と低減を実施。
[顕在化したリスクへの対応]
・リスクマネジメントに関する規程に基づき、リスク・コンプライアンス委員会への迅速なエスカレーションの実施等のルールを義務化し、従業員に周知。
・リスクマネジメントに関する基準やリスク・コンプライアンス委員会へのエスカレーションルールを基に、部門・グループ会社におけるエスカレーションルールを定め、迅速な対応を実施。
・リスクの分析・横展開を行うとともに必要に応じて取締役会報告等を行い、再発防止に努める。
このようなプロセスを繰り返し実行するとともに1年を通してリスク管理部門による定常監視を行うことで、グループ全体のリスクの低減と顕在化した際の影響の極小化に努めています。
リスクマネジメントプロセス
[重要リスク一覧]
潜在リスクアセスメントの評価結果に加え、実際に発生したリスクである「顕在化したリスク」の状況を踏まえたうえで、当社グループの事業戦略及びビジネス目標達成への影響を鑑み、重点的に取り組むリスクを「重点対策リスク」として選定しております。
昨今の当社及び当社グループ会社の度重なる情報セキュリティインシデントやシステム品質に関する問題により、「重点対策リスク」を以下2つの重要リスクと定め、リスク・コンプライアンス委員会中心に取り組んでおります。
・セキュリティに関するリスク
・製品やサービスの欠陥や瑕疵に関するリスク
本項においては、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は本有価証券報告書提出日(2025年6月20日)現在において当社グループが判断したものです。なお、以下の内容は、当社グループのすべてのリスクを網羅するものではありません。また、各リスクにおける対策の実施にもかかわらず、すべてのリスクの発生を未然に防止できない可能性があります。
また、当社グループは経営目標の達成に向けて「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載された様々な施策を進めてまいりますが、これらの施策に影響を与える可能性のある主なリスクとその対策を、経営方針・経営戦略との関連性も考慮したうえで、以下に記述しております。
[重点対策リスク]
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(1)セキュリティに関するリスク |
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[リスクの概要と影響] 昨今、サイバー攻撃の手口は日々高度化しており、当社グループに限らず、コンピューターウイルスの侵入や不正アクセス等のサイバー攻撃によるお客様システム、社内ネットワーク・システムの運用停止や情報漏洩、不正利用等を完全に防げるとは限りません。万一、情報漏洩により個人の権利・利益を侵害した場合やお客様の情報を漏洩した場合には、当社グループの信用は低下するとともに、個人情報保護法やGDPR等の法令違反による罰金や制裁金が科されるおそれがあります。 これらのリスクは当社グループのサプライチェーン上でも発生する可能性があります。委託先におけるセキュリティリスクが顕在化した場合、お客様や当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。 また、敷地・建物・フロアの3層において物理セキュリティ環境を構築していますが、物理的な破壊による業務停止や情報漏洩等を完全に防げるとは限りません。このようなリスクが顕在化した場合、機密情報の漏洩や企業ブランド価値の毀損、ビジネス機会の喪失等、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。 |
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[対策] お客様、お取引先、または当社グループの機密情報や個人情報の保護については、情報保護マネジメントシステム運用の強化を図り、社内規程の制定、従業員への教育、現場点検、監査、業務委託先も含めた指導等を実施しております。また、すべての組織・プロジェクトが守るべきルールである規定にセキュリティ検査制度を明示するとともに、グローバルな情報セキュリティ基準に基づいたセキュリティ対応計画の策定・実行を徹底することで堅牢なシステム構築を実現しております。 当社では、客観性の高いセキュリティリスクの把握と可視化及び的確な是正を軸とした「全社セキュリティリスクマネジメントスキーム」を構築、情報管理ダッシュボード等を導入し、情報システムの残存脆弱性や情報の不適切管理等のリスクをデジタルに可視化し、確実な是正を実施しています。 当社グループの重要な事業活動基盤の1つである社内ネットワークにつきましては、ゼロトラストを前提に、IT基盤の特性に合わせて対策を講じています。標的型攻撃対策として不正アクセス対策やマルウェア対策に加え、デバイス管理、ID管理、データ漏洩対策を組み合わせた認証・認可基盤を構築し、巧妙化・多様化・複雑化するサイバー攻撃への対策を実施しております。また、グローバルに展開しているお客様向けのITシステム及び、社内ITシステムのITアセット管理を一元化し可視化することで、グループ全体のセキュリティリスクの特定と是正を速やかに実施しております。 さらに、委託先におけるセキュリティリスクへの対処として、制度・セキュリティ強化の両面からサプライチェーンのセキュリティ強化施策を進めております。 また、敷地・建物・フロアの3層において「人的警備」と「機械警備」を組み合わせた物理セキュリティ環境を構築しています。さらにより高度な物理セキュリティ環境を構築するために、なりすましを防ぐことが可能な静脈認証装置を組み合わせたセキュリティゲートを社内展開しています。 |
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(2)製品やサービスの欠陥や瑕疵に関するリスク |
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[リスクの概要と影響] 当社グループでは、品質を事業活動の根幹に関わる事項として捉え、快適で安心できるネットワーク社会を支えるために、その維持・向上に日々たゆまず取り組んでおります。 システムの受託開発や製品・サービスの運用・保守業務、製品の設計・開発・製造において、お客様要求の高度化、システムの複雑化が進み、開発難度が高まり、製品の欠陥や瑕疵等が発生する可能性があります。また、競争の激化による価格低下により、納期遅延や不採算プロジェクトが発生する可能性があります。このような製品・サービスの欠陥、瑕疵や納期遅延等が発生した場合、製品回収や補修、システムリカバリー作業や、お客様への補償、機会損失等が当社グループの売上及び損益に影響を及ぼします。 また、万一、欠陥や瑕疵等への対応における判断誤りや組織的な不正があった場合、企業レピュテーションは低下し、当社グループの損益への影響を拡大させる可能性があります。 |
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[対策] システムの受託開発及びサービスの開発においては、お客様にこれまで以上の高い価値提供とシステムの安定稼働を目指し、組織に依存しないプロジェクト体制「One Delivery」への変革を進め、共通の「One Delivery品質保証プロセス」に則ってプロジェクト運営を行い、一元的にリスクマネジメントを行えるようにしています。また、品質管理の全社ルールを定め、ソフトウェアのモジュール化、開発の標準化、セキュリティ監査等による品質向上に努めております。開発プロジェクトの進捗やテスト密度・不具合検出率等、開発現場で発生する品質に関わる情報を共通プラットフォームであるFujitsu Developers Platformに乗せてEVM(Earned Value Management)や品質メトリックスの標準化と合わせて、タイムリーに分析してアラートを上げることにより、品質不良のリスクを早期に把握・対策する仕組みを構築することを目指しています。また、お客様との契約のあり方を見直すとともに、Sales・SEのビジネスプロセスの標準化を進め、商談発生時からプロジェクトの進行を通じてリスク管理を行い、納期遅延や不採算プロジェクトの発生を抑制しております。併せて損失の引当ても適時に実施しております。 製品・サービスの運用・保守業務では、安定稼動のため、お客様と協働での点検や品質、契約、ルール等を改善する活動を継続的に行っております。 製品の設計・開発・製造では、品質管理の全社ルールを定め、関連法規の遵守・最新基準への適合、品質の向上及び外部購入品の品質管理を進めております。 そして、パブリックサービスに対する品質統制を厳格化し、商談から運用・保守までの状況の見える化、品質状況の可視化、第三者による設計プロセスの確認、品質成熟度の評価による品質の確保に努めております。 また、重大障害の抑止に向けて、全社的な品質保証体制強化のため、事業部門ごとの品質保証プロセスに加え、社長直轄組織による開発プロセスのエンハンスや各プロセスの有効性の監視や、部門間での知見・ノウハウを共有する横断的な仕組みの導入・改善を進めております。 |
[重要リスク]
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(3)自然災害や突発的事象発生のリスク |
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① 自然災害・感染症・火災等に関するリスク |
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[リスクの概要と影響] 近年、世界的な気候変動により、台風・水害・大雪等の自然災害の発生頻度や影響度は高まっております。また、首都直下・南海トラフ等における巨大地震、感染症のパンデミック、火山噴火等の不測の事態は、被害想定を超えた規模で発生する可能性があります。このような事態が発生した場合、事業所の機能停止、設備の損壊、電力・水・ガス等の供給停止、公共交通機関や通信手段の停止、部材メーカーからの部品供給の不足や遅れ、サプライチェーンへの被害等により、お客様へのサービス提供や製品出荷の停止等、当社グループの事業活動の継続に影響を及ぼす可能性があります。 |
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[対策] 当社グループでは、防災に関する強固な連携体制の構築と事業継続対応能力強化を図るため、全社防災組織を編成し、様々な訓練を実施しております。また、過去の地震における対応を教訓として、事業所における耐震・浸水対策や定期点検の取り組みについても強化しております。さらに、地震や大規模な水害、火山の噴火等の自然災害、新型インフルエンザ等の感染症の流行、火災・爆発等の発生時にも、重要な事業を継続し、企業としての社会的責任を遂行するとともに、お客様が必要とする高性能・高品質な製品・サービスを安定的に供給するために、事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)の策定や継続的な見直し及び改善を行い、事業継続マネジメント(BCM:Business Continuity Management)の強化を図るとともに、全従業員を対象としたe-Learningによる教育を行っております。 また、感染症によるパンデミックの経験を踏まえて、お客様、お取引先、従業員とその家族の安全確保を最優先とし、お客様への製品・サービスを継続して提供する体制を構築することにより重要な事業を維持し、社会的責任を遂行できるよう努めております。 |
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② 紛争・テロ・政情不安等に関するリスク |
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[リスクの概要と影響] 当社グループは、グローバルにビジネスを展開しているため、各国・各地域において、紛争・テロ・デモ・ストライキ・政情不安等が発生した場合、当社グループの事業やサプライチェーン等に大きな影響を与える可能性があります。また、従業員等が巻き込まれ、安全が脅かされる可能性があります。 |
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[対策] 社内外からの情報収集を通じ、各国・各地域における事業実態に即したリスク評価を定常的に実施しております。評価結果については、海外拠点及び本社関係者間で共有するとともに連携体制を強化することでリスク発生時の影響を最小限に留めるよう努めております。調達先におけるBCPの推進や、従業員の緊急連絡体制を構築し従業員の安全管理を行う等、情勢を見極めながら、ビジネスを継続するよう努めております。 |
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(4)人権に関するリスク |
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[リスクの概要と影響] 昨今、欧州において人権に関するデューデリジェンスが義務化される等、人権尊重への取り組みが一層強く求められるように変化しており、当社グループはもとより、サプライチェーン上での労働環境や紛争鉱物等の人権に関するリスクを防止・低減することが求められています。もしこれらに関して人権リスクが発生した場合は、人材の流出やビジネス機会の損失、行政罰等により当社グループの社会的信用の失墜に繋がり、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。 さらに、急速に普及が進んでいるAI技術を利用したビジネスに関して人権を侵害する事象等が発生した場合も、同様に損害賠償や当社グループの社会的信用の失墜に繋がる可能性があります。 |
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[対策] 当社グループは、Fujitsu Wayにおいて、当社グループの従業員として厳守すべき事項を行動規範(人権の尊重、法令遵守、公正な商取引 等)として定めるとともに、これを詳細化して個々の従業員が行動する際のガイドライン(GBS:Global Business Standards)をグループで統一的に運用し、社内ルールの浸透と徹底、規範遵守の企業風土の醸成を図っております。そのための社内体制や仕組みの構築を推進するため、経営層からのトップメッセージの発信や定期的な従業員教育(人権、差別・ハラスメント防止 等)の実施を行っております。また、最新の国際動向を踏まえて、人権に関するリスクを整理し、重要性・事業関連性から優先課題を特定し、この評価を基に、当社グループの人権方針である「富士通グループ人権ステートメント」を改定し、当社グループやサプライヤーへの周知を行っております。 そのほか、サプライチェーンにおいては、2023年より「富士通グループサステナブル調達指針」を策定・公開し、主要サプライヤーにも同意いただいております。AIビジネスにおいては、急速に普及する生成AIやAIエージェントが人権に影響を及ぼす可能性が指摘されていますが、富士通は従前から「AIコミットメント」を制定し、グループ内へのAI倫理の浸透を図っています。具体的には、e-Learningをはじめとする従業員への定期的な教育、全AIビジネスに関するAI倫理審査などを通じたAI倫理の実践に加え、「One Delivery品質保証プロセス」にAI統制の仕組みを組み込むことで、AI品質に起因する人権リスクを最小化しています。これらの取り組みについては、外部の様々な分野の専門家で構成される「富士通グループAI倫理外部委員会」を定期的に開催して客観的な評価を受けております。 |
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(5)コンプライアンスに関するリスク |
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[リスクの概要と影響] 当社グループは、グローバルにビジネスを展開しており、競争法・贈賄禁止法・輸出管理法等国内外の関連法令・規制等を遵守する必要がありますが、これらの関連法令・規制等に抵触する事態が発生した場合、多額の課徴金や損害賠償を請求される可能性があります。また、不正会計等により監査法人から監査報告を受けることができない、または有価証券報告書の提出ができない、もしくは過去に提出した有価証券報告書の訂正をしなければならなくなる事態が発生した場合、株価の下落や、株主からの損害賠償請求に繋がり、当社グループの社会的信用が失墜する可能性があります。 |
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[対策] 当社グループでは、Global Compliance Programの枠組みの下、最新の法令を踏まえたコンプライアンスに必要な社内ルール・規程の制定と継続的運用を行うことで、業務上、役員や従業員による法令違反が生じないように統制しています。海外拠点においても、各国の法令を踏まえたルールを整備したうえで、各国におけるリスクの評価を行い、評価に応じて本社のコンプライアンス部門が海外拠点のコンプライアンスの支援を行うことでリスクの低減を図っております。また、社長をはじめとする主要役員からのトップメッセージの発信やe-Learningの定期的な実施、職種や担当事業に応じたコンプライアンス教育を行い、従業員のコンプライアンス意識を根付かせる活動の一方、発生したコンプライアンス違反事案を把握できるよう内部通報制度を整備、運用し、コンプライアンス違反事案の調査・対策をしております。不正会計等についても、法令に基づき内部統制評価をしていますが、内部監査部門やコンプライアンス部門と情報連携して業務プロセス上で適正な事務処理及び経理処理がされるようにしております。 |
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(6)財務に関するリスク |
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[リスクの概要と影響] 当社グループに対して外部の格付け機関が発行する格付け(CSR・サステナビリティ関連の格付けを含む)は、資金調達や企業レピュテーションに大きな影響を及ぼすとともに、お客様やお取引先と取引する際の信用情報として使われることがあります。収益計画の未達や財務状況の悪化等の理由によりこれらの格付けが引き下げられた場合、当社グループの資金調達に影響を及ぼすほか、入札等、取引参加において不利になる可能性があります。また、お取引先の経営悪化や経済情勢の悪化等の信用不安等は売掛債権の回収に影響を及ぼす可能性があります。 |
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[対策] 当社グループでは、資金調達に関する対策として、流動性の確保、資金調達計画の策定、金融市場動向の分析等を行っております。また、与信管理に関する対策として、与信管理関連部門による意見交換、及び外部機関の企業信用調査情報等の関連部門との共有と動向監視、債権保全に関するアドバイス・指示及び注意喚起の実施等を行い、リスクの低減を図っております。 |
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(7)環境・気候変動に関するリスク |
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[リスクの概要と影響] 当社グループでは、パーパスとして、イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくことを掲げており、環境を含むサステナビリティ課題への対応を経営の最重要事項の1つと位置付けています。しかし、事業活動を通じて環境汚染等が発生した場合、当社グループの社会的な信用低下や、浄化処理等の対策費用発生等により損益に影響を及ぼす可能性があります。 また、近年、気候変動等により発生頻度・影響度が増大した自然災害は、調達・物流・エネルギー供給網を寸断し、気温の長期的な変化は空調エネルギー使用量の増加を招き、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。現在、世界各国が2050年までにカーボンニュートラルを目標に掲げていく中で、機関投資家も気候変動への取り組みを投資基準とする等、社会・経済のカーボンニュートラルへの流れが加速しています。温室効果ガスの排出量の規制強化や炭素税の導入に加え、顧客や社会のカーボンニュートラルへの貢献が求められていますが、これらの規制等に適合できない、あるいは社会が期待する以上の貢献ができない場合、後追いでの規制対応のためのコストの増加、企業レピュテーションの低下によるビジネス機会の損失や、環境ラベル取得などの市場のスタンダードへの適合を条件とする入札に参加できなくなる可能性があります。また、お客様・社会のCO2削減、エネルギー需給の最適化、再エネ拡大といったカーボンニュートラルな社会システムへの転換や気候変動適応を支援するソリューションに対する需要の急速な高まりにより、省エネ・カーボンニュートラルに貢献するソリューションや、気候変動の適応に貢献するソリューションを提供できない場合、または他社と比べて削減できるエネルギーが少ない場合は、ビジネス機会の損失や市場シェア及び利益率の低下に繋がり、当社グループの売上及び損益に影響を及ぼす可能性があります。 |
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[対策] 当社グループでは、法律・条令等に基づき社内規程を整備し環境負荷の低減や環境汚染の発生防止等に努めています。エネルギー使用量においては、環境パフォーマンス管理システムによる事業所のエネルギー使用量の把握を行うとともに、電力においては、社内の調達電力システムを活用し、各社の電力料金の比較・分析を行い、契約電力のコストやCO2排出量等の最適化を図っています。排水・排ガスにおいては、関連法律・条例等の排出基準よりも厳しい自主管理値を設定し、定期的な測定により数値の監視を行っています。また、当社グループ工場跡地では、土壌や地下水の調査及び浄化活動を行っています。 さらに、主要な外部評価の評価基準を分析し、環境経営の評価軸に組み込んだ情報開示、環境パフォーマンス向上を狙いとした改善を図るとともに、グローバルな環境リーディング企業として社会的責任を果たすために、気候変動対策としてSBTiよりネットゼロ認定を取得するとともに、顧客や社会のカーボンニュートラルを戦略的に推進しています。顧客や社会のカーボンニュートラルに貢献するため、環境配慮製品やソリューションの設計・開発を行うとともに、EPEAT等の環境配慮製品ラベルを取得し、また、効率的な環境価値取引のエコシステムの構築を目指す新たなプロジェクトを開始し、企業や国を超えたCO2削減量等の環境価値取引市場に対して、ブロックチェーン技術やカーボンニュートラル関連技術に基づく環境価値流通プラットフォームの市場適用と活性化に向けた取り組み等を行っております。 |
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(8)当社グループの施設・システムに関するリスク |
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[リスクの概要と影響] 当社グループでは、国内外に事業所・工場・データセンター等の様々な施設を保有・賃借するとともに、他社ベンダーのクラウドサービスを活用しております。地震、大規模な水害、火災、放射能汚染等の災害や感染症、テロ、デモ、ストライキ、施工品質の不足、運用ミス等が発生した場合、生産ラインの停止や、施設、社内基幹情報システム等の運用停止により、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。 |
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[対策] 当社グループでは、社内基幹情報システム等においては、24時間365日体制によるシステム監視と運用体制を構築するとともに、事業継続計画書に基づいた対策を実施しています。また、いずれの施設・サービスについても、建築基準その他の規制に準拠した独自の安全基準を設け、リスクの低減を図っております。 |
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(9)競合・業界に関するリスク |
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[リスクの概要と影響] 市況の変化や競争激化、技術革新等は、製品・サービスの価格下落につながる可能性があります。そのため、想定を上回る価格下落が生じた場合や、調達価格が大幅に変動した場合等には、十分なコストダウンや販売拡大を実現できず、当社グループの売上及び損益に影響を及ぼします。 また、ICT業界では、既存の競合他社に加え、異業種を含めた新規参入者との競争も激しくなっています。現在、競争優位性を持っている分野においても、新規参入業者を含めた競合他社との競争に晒され、将来の事業において優位性を確保できない可能性があります。ICT業界では技術の進歩が大変速く、新製品や新技術であっても急速に陳腐化します。これらの技術開発競争で他社に優位性を奪われた場合、シェアや利益率が低下し、当社グループの売上及び損益に影響を及ぼす可能性があります。 |
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[対策] 当社グループでは、技術の進歩や競争激化等による製品・サービスの低価格化を想定し、社会動向に基づいた課題を洞察するとともにお客様のニーズや他社状況を把握し、競争力のある製品・サービスのラインナップを拡充することで販売拡大に努めるとともに、コストダウンに取り組んでおります。 また、競争力維持のためには、先端技術の研究開発を続けることが必要です。当社グループは適切な研究開発への投資を実行することで、当社グループ事業の強み、競合他社等との差異を明確にし、技術やサービスの優位性を確保するよう、努めております。 |
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(10)経済や金融市場の動向に関するリスク |
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①主要市場における景気動向 |
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[リスクの概要と影響] 当社グループは、日本国内及び世界各国で、政府等の公共機関や企業等に、ICT分野において各種サービスを提供しております。また、事業ブランドであるUvanceビジネスは、グローバル共通の戦略として展開しております。これらの事業の売上及び損益は、景気動向及び各市場における急激な需給バランスの変化に大きく左右されます。特に、主要市場である、日本、欧州、北米、オセアニア、中国を含むアジアにおける景気動向及び急激な需給バランスの変化は、当社グループの事業に影響を与えます。 |
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[対策] 急激な市場の変化に対応するため、グループ全体の戦略や事業ポートフォリオの方針を明確化するとともに継続的な構造改革を行うことで、リスクの低減を図っております。 |
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②為替動向と金利変動及び資本市場の動向 |
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[リスクの概要と影響] 当社グループは、グローバルでの事業拡大を進めております。そのため、急激な為替変動は、海外に輸出提供する製品・サービスの価格競争力の低下や、海外からの部材等の輸入に影響を及ぼす可能性があり、海外ビジネスの売上及び損益に大きく影響します。海外に保有する資産・負債等についても、資産等が目減り、または負債等が増大する可能性があります。 さらに、有利子負債の中には金利変動の影響を受けるものが含まれているため、金利上昇により支払利息や調達コストが増加する可能性があります。 また、国内外の株式市場の動向は、保有する他社株式の評価額及び年金資産の運用状況に大きく影響を及ぼし、株式市場が低迷した場合、保有株式の評価減や、年金資産の目減りによる会社負担増大のおそれがあります。 |
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[対策] 為替変動等の金融市場環境に関する情報収集や動向注視、金融機関動向の分析等を行いながら必要に応じて為替予約等のヘッジを実施しております。また、グループ全体に情報共有を行うとともに、影響の最小化を図っております。 |
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(11)知的財産に関するリスク |
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[リスクの概要と影響] 当社グループでは、研究開発活動を通じ、他社の製品やサービスと差別化できる技術やノウハウの創出に努めておりますが、かかる技術やノウハウは、法的・経済的な制約のために知的財産としての十分な保護が受けられない場合があります。そのため、他社が当社グループの技術やノウハウを使って類似した製品やサービス等を製造、販売することを効果的に防止できない可能性があります。また、他社が類似、またはより優れた技術を開発した場合、当社グループの知的財産の価値が低下することがあります。当社グループの知的財産を適切に保護・活用できない場合、当社グループ事業の成長の阻害や、利益の逸失に繋がる可能性があります。 当社グループの製品やサービス及び活動について、他社の知的財産権を侵害している、あるいはオープンソースソフトウェアを含む第三者のソフトウェアの利用形態が許諾条件に沿わないとされ、使用料支払いや設計変更費用等が発生した場合、当社グループの損益に影響を及ぼす可能性があります。 |
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[対策] 知的財産の保護・活用においては、当社グループの事業戦略や事業環境の変化を踏まえ、より効果的な知財戦略への見直しを行い、推進しております。また、他社の知的財産権を侵害することのないよう、社内規程や体制の整備、ソフトウェア利用の管理体制の強化、製品・サービスの商品化プロセスにおける他社知的財産調査等を行っております。 |
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(12)お客様に関するリスク |
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[リスクの概要と影響] 当社グループのビジネスは、日本政府、自治体、各国政府等の公共機関、情報通信事業、金融業、製造業、流通業、ヘルスケア産業等のお客様との取引割合が高く、また、海外ビジネスにおいては、各国における政府系のプロジェクトが重要な事業となっております。お客様の政策・方針や、業界の経営環境、市況変化、業界再編の動き等は、お客様のICT投資動向の変化につながり、お客様のICT投資計画やその見直し及びお客様の製品・サービスの売れ行き等は、当社グループの製品・サービスの需要や価格に大きな影響があります。また、お客様との信頼関係や、取引または契約関係が継続できない場合、当社グループの売上及び損益に影響を及ぼします。 |
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[対策] 当社グループでは、社会的な課題解決を念頭に置いた事業活動を行うとともに、市場動向、技術動向、お客様の状況の変化を注視しており、ICTのライフサイクルにわたるソリューションを提供し、長期的な信頼関係を築くことを目指しております。当社グループは、お客様を取り巻く環境変化に対して多様な業種への実績、理解とデジタルテクノロジーを活用し、人とデータを中心とした新たな生活様式を築いていく役割を果たしております。 |
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(13)調達先・提携等に関するリスク |
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①調達に関するリスク |
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[リスクの概要と影響] 当社グループが提供する製品・サービスは最先端の技術を使用しており、汎用的ではない部品や希少性の高い原材料等を使用することがあります。そのため、一部の部品・原材料等については、安定的な調達が困難な場合や、代替の調達先を確保できない場合、大量に調達が必要な部品・原材料等について、必要な量を調達できない可能性があります。また、お取引先において、自然災害、感染症の流行、事故、法令違反、経営状況の悪化等が発生した場合は、当社グループに対する部品・原材料等の安定的な提供が困難になります。さらに、世界中で発生する異常気象やそれに伴う災害、国際情勢の不安定化等、部品・原材料等の安定的な調達に影響を及ぼす事象は増加傾向にあるため、部品・原材料等を十分に確保できない場合、製品・サービスの提供が遅れ、お客様への納期遅延や機会損失等が発生する可能性があります。 当社グループの調達部品等については、為替動向や需給逼迫等により調達価格が当初の見込みを上回り、製品・サービスの利益率の悪化や、値上げによる売上の減少が起きる可能性があります。 また、できる限り品質確保に努めておりますが、購入品の不良を完全に防げない場合には、納期遅延や製品不良が発生し、機会損失、修理回収費用、不良品廃却費用、お客様への賠償責任等が発生する可能性があります。 |
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[対策] 当社グループでは、部品単位での製造拠点・調達先の各対策状況調査や、調達のマルチソース化、お取引先への事業継続マネジメント(BCM:Business Continuity Management)の働きかけ、支援の強化、及び適正な在庫の確保等をすることで、サプライチェーンの維持に努め、リスクの低減を図っております。 |
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②提携・アライアンス・技術供与に関するリスク |
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[リスクの概要と影響] 当社グループは、グローバルなICTビジネス環境における競争力強化のため、業務提携、技術提携、合弁等の形で、多くの会社と共同で活動を行っておりますが、経営、財務、その他の要因により、協力関係を成立、または、継続できない場合や、これらの協力関係から十分な成果を得られない場合があります。当社グループの製品・サービスは、他社の許諾を受けて使用している多くの特許や技術、ソフトウェア、商標等を前提としておりますが、これらの技術等について、今後、当社グループが許容できる条件で、他社からの供与や使用許諾を受けられない場合には、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。 |
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[対策] 当社グループでは、業務提携、技術提携、合弁等で他社との関係を構築する際、厳格な社内プロセスを通してリスクを的確に認識・評価した上で契約条件等への反映を行うとともに、継続的なモニタリングを行うことで、当社グループへの影響を最小限に抑えるよう努めております。 |
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(14)投資判断・事業再編に関するリスク |
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[リスクの概要と影響] ICT業界においては、競争力維持のために多額の研究開発投資、設備投資及び事業買収・売却、事業再編等が必要な場合があります。 当社グループが有望と考えた市場や技術、買収先が想定ほど成長しない場合や、需給悪化や価格下落が予想以上に早く発生した場合には、投資から十分なリターンを得られず、当社グループの経営成績に大きな影響を及ぼす可能性があります。 |
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[対策] 当社グループでは、投資や事業再編にあたり、市場動向やお客様のニーズ、当社グループの技術の優位性、当社グループの事業ポートフォリオ等を勘案するとともに、投資効率を検証し、評価指標とプロセスを定め、所要変動に応じて投資を複数段階に分けることやお客様等と提携することで、リスクの低減を図っております。 |
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(15)公的規制・政策・税務に関するリスク |
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[リスクの概要と影響] 当社グループは、グローバルにビジネスを展開しているため、各国・各地域の数々の公的規制、政策動向、税務法制、運用等の影響を受けます。事業展開する各国・各地域において、政府の政策、事業及び投資の許可、輸出入に関する制限等のさまざまな規制並びに、独占禁止、知的財産権、消費者、環境・リサイクル、労働条件、派遣・下請、租税等に関する法令の適用を受けております。 さらに、昨今の国際情勢は不透明な状況にあり、経済安全保障による各国・各地域の政策や米国による関税措置の発動など、グローバルな企業活動への規制・制約が強化される傾向にあります。このような政策の変更や規制・制約の強化は、当社グループが対象としている市場やサプライチェーン等に影響を及ぼし、対応コストの増加や仮に強化された規制等の違反が認定された場合の制裁金等の負担が発生する可能性があります。 また、当社グループがソリューションを提供する分野には、通信、医療、工事、個人情報の取扱い等、公的規制を受ける領域があるため、これらに関する規制の動向が当社グループの事業へ影響を与える可能性があります。 |
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[対策] 当社グループでは、各省庁や業界団体等から情報収集し分析を行うことで、各国・各地域における規制や政策の動向を注視しております。また、経済安全保障分野においては、今後も規制が厳しくなる方向であると捉えており、国内外の規制動向、さらには政府・企業の動向も注視したうえでグループ内の対応体制を整備しております。 |
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(16)人材に関するリスク |
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[リスクの概要と影響] 当社グループの成長と利益は、人材に大きく依存するため、経営者、優秀な高度専門技術者等、必要とする人材を採用及び育成するとともに、人材が継続して働くことができる環境を整備することが重要です。人材を採用または育成することができない場合、流出を防止できない場合や重大な労務問題が発生した場合は、当社グループの成長や利益に影響を及ぼす可能性があります。 |
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[対策] 当社グループでは、高度専門技術者に対する個別処遇やジョブ型人事制度等、多様性やチャレンジを尊重する組織風土を醸成するための制度改革を行うとともに、Work Life Shiftの推進により、テレワーク勤務を基本とし、フレックスタイム制や裁量労働制等の柔軟な勤務形態を積極的に活用することで、適切な労務管理を実現し優秀な人材を確保し活躍し続けられる環境を整備しております。また、成長に向けた学びの機会を拡大することを目的とし、自ら学べるe-Learning講座を導入しています。 |
(1)経営成績等の状況の概要、経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
当連結会計年度における当社及び連結子会社並びに持分法適用会社(以下、当社グループ)の経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況の概要、経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次の通りです。文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末(2025年3月31日)現在において判断したものです。
文中において、当連結会計年度は当年度、前連結会計年度は前年度と、省略して記載しています。
① 中期経営計画の進捗状況
パーパスの実現に向けて長期かつ安定的な貢献を行うためには、すべてのステークホルダーと信頼関係を築き自らがサステナブルに成長していくことが必要です。そのため、非財務面での指標を事業活動の中核に組み込み、財務目標と合わせて達成に向けた取り組みを推進しています。
(ⅰ)財務指標の進捗状況
*1 全社連結の売上収益及び調整後営業利益からデバイスソリューションを除いております。
*2 連結損益計算書上の営業利益から事業再編、事業構造改革、M&A等に伴う損益並びに制度変更等による一過性の損益(調整項目)を控除した、本業での実質的な利益を示す指標です。
当年度の全社連結の売上収益は3兆5,501億円で前年度比2.1%の伸長、うちサービスソリューションの売上収益は2兆2,459億円で前年度比5.1%の伸長でした。また調整後営業利益は全社連結で前年度比プラス15.8%の3,072億円、うちサービスソリューションは前年度比プラス22.2%の2,899億円と、増収効果に加えて採算性の改善も進んでいます。
(ⅱ)非財務指標の進捗状況
非財務指標の進捗状況の詳細については、「第2事業の状況 1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 <非財務面での取り組み>」をご参照ください。
② 経営成績
<要約連結損益計算書>
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(億円) |
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前年度 (自 2023年4月 1日 至 2024年3月31日) |
当年度 (自 2024年4月 1日 至 2025年3月31日) |
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前年度比
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増減率 (%)
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|
継続事業 |
|
|
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売上収益 |
34,769 |
35,501 |
|
731 |
2.1 |
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売上原価 |
△23,589 |
△23,821 |
|
△231 |
1.0 |
|
売上総利益 |
11,179 |
11,679 |
|
499 |
4.5 |
|
販売費及び一般管理費 |
△8,747 |
△8,871 |
|
△123 |
1.4 |
|
その他の損益 |
△938 |
△157 |
|
781 |
△83.2 |
|
営業利益 |
1,493 |
2,650 |
|
1,157 |
77.5 |
|
金融損益 |
51 |
1 |
|
△50 |
△97.9 |
|
持分法による投資利益 |
111 |
82 |
|
△28 |
△26.0 |
|
継続事業からの税引前利益 |
1,656 |
2,734 |
|
1,078 |
65.1 |
|
法人所得税費用 |
925 |
△638 |
|
△1,564 |
- |
|
継続事業からの当期利益 |
2,581 |
2,095 |
|
△485 |
△18.8 |
|
非継続事業 |
|
|
|
|
|
|
非継続事業からの当期利益 |
85 |
225 |
|
140 |
164.3 |
|
当期利益 |
2,666 |
2,321 |
|
△345 |
△13.0 |
|
親会社の所有者に帰属 |
2,544 |
2,198 |
|
△346 |
△13.6 |
|
非支配持分 |
122 |
123 |
|
1 |
1.0 |
|
|
|
|
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|
|
調整後営業利益および調整後当期利益 |
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営業利益 |
1,493 |
2,650 |
|
1,157 |
77.5 |
|
調整項目 |
△1,160 |
△421 |
|
738 |
- |
|
(上記調整項目を控除した) 調整後営業利益 |
2,653 |
3,072 |
|
419 |
15.8 |
|
当期利益 (親会社所有者帰属) |
2,544 |
2,198 |
|
△346 |
△13.6 |
|
調整項目 |
186 |
△211 |
|
△398 |
- |
|
(上記調整項目を控除した) 調整後当期利益(注1) |
2,358 |
2,409 |
|
51 |
2.2 |
(注1)連結損益計算書上の親会社の所有者に帰属する当期利益から事業再編、事業構造改革、M&A等に伴う損益並びに制度変更等による
一過性の損益およびこれらに係る税金相当(調整項目)を控除した利益指標
(ご参考)財務指標
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前年度 |
当年度 |
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前年度比 |
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調整後営業利益率 |
7.6% |
8.7% |
|
1.1% |
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調整後EPS(注2) |
122.2円 |
129.4円 |
|
5.9% |
(注2)1株当たり調整後当期利益(非継続事業を除く)
(ⅰ)当年度決算概況
売上収益は3兆5,501億円、サービスソリューションが牽引し、前年度から2.1%の増収です。なお、ユビキタスソリューションは低採算の欧州ビジネスから撤退した影響で減収となりました。当年度の営業利益は2,650億円、前年度比1,157億円の大幅増です。主に前年度において、海外リージョンを中心とした構造改革の実施に伴う一過性の損失があった影響により、増益となりました。親会社の所有者に帰属する当期利益は2,198億円、前年度比346億円の減です。主に前年度において、海外リージョンを中心とした構造改革の実施に伴う繰延税金資産の計上による税金費用の減少があった影響により、減益となりました。一過性の損益を除く調整後営業利益は3,072億円、前年度から419億円の増益です。利益面でも、サービスソリューションの伸長が寄与しました。調整後当期利益は2,409億円、前年度から51億円の増益で、前年度に引き続き過去最高益を更新しました。
(ⅱ)営業利益調整項目
当年度は人材ポートフォリオ変革に向けた、リソースシフトを大きく進め、これに係る費用385億円を計上しました。上期は間接部門の幹部社員を対象にセルフ・プロデュース支援制度を拡充、下期には直接部門も含めてリソースの最適配置やリスキリングを実施し、外部転身を選択した者については転身支援を行いました。このほか、富士通コミュニケーションサービス株式会社の譲渡に伴う一過性の利益144億円、M&A関連費用などを当年度の一過性の損益として、営業利益の調整項目に計上しています。
(ⅲ)ノンコア事業のカーブアウト
新光電気工業株式会社は2025年3月のTOB完了を経て、2025年6月11日に新光電気工業株式会社の自己株式取得に応じることによる当社所有株式の譲渡が完了しました。富士通オプティカルコンポーネンツ株式会社は、2025年4月に古河電気工業株式会社への株式譲渡が完了しました。FDK株式会社は、電子部品の製造を手掛ける台湾拠点の企業グループであるPSAグループを構成する企業の一つである、閎暉實業股份有限公司(SILITECH TECHNOLOGY CORPORATION)への株式譲渡契約を締結、2025年3月に株式譲渡が完了しました。これらによりましてデバイスソリューションのセグメントに帰属していた事業はすべてカーブアウトすることになり、同セグメントは非継続事業に分類しております。また持分法適用関連会社の株式会社富士通ゼネラルについては、株式会社パロマ・リームホールディングスと2025年1月に株式譲渡契約を締結、2025年上期中に譲渡完了する予定です。
(ⅳ)セグメント情報
当社グループは、経営組織の形態、製品・サービスの特性に基づき、複数の事業セグメントを集約した上で、「サービスソリューション」、「ハードウェアソリューション」、「ユビキタスソリューション」の3つを報告セグメントとしています。
「サービスソリューション」については、Fujitsu Uvanceを中心としたグローバル共通の価値提供サービスの創出・提供を行う「グローバルソリューション」、日本市場に向けたサービスの提供・実装を行う「リージョンズ(Japan)」、海外市場に向けたサービスの提供・実装を行う「リージョンズ(海外)」により構成されています。「ハードウェアソリューション」は、ICTの基盤となる、サーバやストレージシステムなどのシステムプロダクトと携帯電話基地局や光伝送システムなどの通信インフラを提供するネットワークプロダクトにより構成されています。「ユビキタスソリューション」は、パソコンなどの「クライアントコンピューティングデバイス」により構成されています。「消去・全社」は、各セグメントに属さない全社共通の先進的先行研究開発、グローバルグループベースでの社内DX投資等のグループ共通の事業成長投資、共用資産等の売廃却およびセグメント間売上収益の消去を計上しております。
当年度のセグメント別の売上収益(セグメント間の内部売上収益を含む)及び調整後営業利益は以下のとおりです。
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(億円) |
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前年度 (自 2023年4月 1日 至 2024年3月31日) |
当年度 (自 2024年4月 1日 至 2025年3月31日) |
|
前年度比
|
増減率 (%)
|
|
サービスソリューション |
|
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|||
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売上収益 |
21,375 |
22,459 |
|
1,084 |
5.1 |
||
|
調整後営業利益 |
2,372 |
2,899 |
|
527 |
22.2 |
||
|
(調整後営業利益率) |
(11.1%) |
(12.9%) |
|
(1.8%) |
|
||
|
|
|
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|
|
|
|
|
|
|
|
グローバルソリューション |
|
|
|
|
|
|
|
|
売上収益 |
4,803 |
5,112 |
|
309 |
6.4 |
|
|
|
調整後営業利益 |
137 |
56 |
|
△80 |
△58.8 |
|
|
|
(調整後営業利益率) |
(2.9%) |
(1.1%) |
|
(△1.8%) |
|
|
|
|
リージョンズ(Japan) |
|
|
|
|
|
|
|
|
売上収益 |
12,621 |
13,104 |
|
483 |
3.8 |
|
|
|
調整後営業利益 |
2,131 |
2,603 |
|
471 |
22.1 |
|
|
|
(調整後営業利益率) |
(16.9%) |
(19.9%) |
|
(3.0%) |
|
|
|
|
リージョンズ(海外) |
|
|
|
|
|
|
|
|
売上収益 |
6,041 |
5,897 |
|
△144 |
△2.4 |
|
|
|
調整後営業利益 |
103 |
239 |
|
136 |
132.7 |
|
|
|
(調整後営業利益率) |
(1.7%) |
(4.1%) |
|
(2.4%) |
|
|
|
|
セグメント内消去 |
|
|
|
|
|
|
|
|
売上収益 |
△2,091 |
△1,654 |
|
436 |
- |
|
ハードウェアソリューション |
|
|
|
|
|||
|
売上収益 |
11,080 |
11,199 |
|
119 |
1.1 |
||
|
調整後営業利益 |
836 |
613 |
|
△223 |
△26.8 |
||
|
(調整後営業利益率) |
(7.6%) |
(5.5%) |
|
(△2.1%) |
|
||
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
システムプロダクト |
|
|
|
|
|
|
|
|
売上収益 |
9,250 |
9,383 |
|
133 |
1.4 |
|
|
|
ネットワークプロダクト |
|
|
|
|
|
|
|
|
売上収益 |
1,830 |
1,816 |
|
△13 |
△0.8 |
|
ユビキタスソリューション |
|
|
|
|
|
||
|
売上収益 |
2,733 |
2,517 |
|
△215 |
△7.9 |
||
|
調整後営業利益 |
242 |
313 |
|
71 |
29.6 |
||
|
(調整後営業利益率) |
(8.9%) |
(12.5%) |
|
(3.6%) |
|
||
|
消去・全社 |
|
|
|
|
|
||
|
売上収益 |
△419 |
△675 |
|
△256 |
- |
||
|
調整後営業利益 |
△797 |
△753 |
|
43 |
- |
||
|
連結 |
|
|
|
|
|
||
|
売上収益 |
34,769 |
35,501 |
|
731 |
2.1 |
||
|
調整後営業利益 |
2,653 |
3,072 |
|
419 |
15.8 |
||
|
(調整後営業利益率) |
(7.6%) |
(8.7%) |
|
(1.1%) |
|
||
a サービスソリューション
サービスソリューションは増収増益です。当年度の売上収益は2兆2,459億円と、前年度比+5.1%の伸長、とくに国内向けは8%の伸長です。DXやモダナイゼーション商談が年間を通して売上を力強く牽引しました。Fujitsu UvanceはVerticalオファリングの立ち上がりも背景に前年度比プラス31%の伸長、モダナイゼーション商談は当年度より需要が本格化し、前年度比プラス70%の大幅伸長です。調整後営業利益は2,899億円と、前年度比527億円の増益です。国内を中心とした増収効果に加え、採算性改善が着実に進みました。ジャパン・グローバルゲートウェイ、グローバルデリバリーセンターの活用や共通開発基盤活用による開発プロセスの標準化・自動化など、生産性向上の取り組みに加え、提供価値に応じたプライシングの進展により、売上総利益率が約2%改善しています。費用面については、Fujitsu Uvanceのオファリング開発やモダナイゼーションナレッジセンターへのナレッジ集約、自動化ツールの開発など、成長に直結する投資を拡大したほか、セキュリティ対策、人材リスキリングへの取り組みを拡大しながらもそれらをカバーして大きな増益を達成しました。今後も採算性の改善と高付加価値戦略を推進し、更なる収益性向上を目指します。
(受注の状況)
サービスソリューションの国内受注については、前年度比5%の増です。2022年度を起点にすると、2022年度から2024年度にかけて年平均10%の成長を達成しています。サービスソリューションの業種別は以下の通りです。まず、エンタープライズビジネス(産業・流通・小売)では前年度比6%増加しました。製造、モビリティ、リテールなど広い範囲で受注が拡大、Fujitsu UvanceのVertical領域でも商談を獲得しています。ファイナンスビジネス(金融・保険)は前年度比14%増加しました。メガバンクのお客様向け基幹システム保守など複数年契約の大型商談を獲得し、2年連続の2桁伸長を達成しました。パブリック&ヘルスケア(官公庁・自治体・医療)では、前年度に官公庁向けで複数年契約の大型案件を獲得した反動もあって前年度比マイナス2%ですが、システム更改案件は安定して複数獲得しており、2022年起点の年平均成長率は7%の伸びと、確実に拡大しております。ミッションクリティカル他では前年度比11%の増、とくにナショナルセキュリティ領域では当年度も大型商談を複数件獲得し、前年度の高い水準をさらに上回ることができました。
海外の受注については以下の通りです。Europeでは、前年度の公共系大型商談の反動により、前年度から7%減少しました。ビジネスの拡大よりも、まずビジネスの健全性・採算性向上を優先しています。Americasは前年度の複数年契約の反動により対前年度比では12%の減少ですが、2022年起点の年平均成長率はプラス6%と、Fujitsu Uvanceを中心に成長基調です。Asia Pacificは34%の増加、オセアニアで公共系の新規案件、更新案件など複数獲得することができました。
(Fujitsu Uvanceの状況)
事業成長とポートフォリオ変革の要と位置付けている、Fujitsu Uvanceの受注および売上収益の進捗状況です。当年度の受注は5,486億円、売上収益は4,828億円、ともに前年度比プラス31%の伸長です。とくに基盤となるHorizontalのデマンドは年初の想定より強く推移しました。サービスソリューション全体の売上に占める構成比も前年度の17%から当年度は21%に拡大し、ポートフォリオの転換も着実に進んでいます。
(モダナイゼーションの状況)
モダナイゼーションビジネスの当年度の売上収益は2,969億円、Uvanceとの重複を除くサービス部分で前年度比プラス70%の伸長です。DXとクラウド化を基盤に旺盛な基幹システム刷新需要を確実に取り込み、レガシー資産からの移行を加速しています。
(リージョンズ(海外)の損益情報)
当社グループは、グローバルでの売上収益の拡大と収益力向上を経営上の重要な課題の1つであると考えており、サービスソリューションに含まれるリージョンズ(海外)の損益情報は当社グループの事業管理において重要な項目であるとともに、株主、投資家の皆様に当社グループの損益概況をご理解頂くための有益な情報であると考えています。
|
|
|
|
|
|
|
|
(億円) |
|
|
|
|
前年度 (自 2023年4月 1日 至 2024年3月31日) |
当年度 (自 2024年4月 1日 至 2025年3月31日) |
|
前年度比
|
増減率 (%)
|
|
Europe |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
売上収益 |
|
4,191 |
3,904 |
|
△286 |
△6.8 |
|
|
営業利益 |
|
23 |
160 |
|
136 |
569.4 |
|
|
(営業利益率) |
(0.6%) |
(4.1%) |
|
(3.5%) |
|
|
|
Americas |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
売上収益 |
|
541 |
569 |
|
28 |
5.2 |
|
|
営業利益 |
|
34 |
39 |
|
5 |
14.6 |
|
|
(営業利益率) |
(6.4%) |
(6.9%) |
|
(0.6%) |
|
|
|
Asia Pacific |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
売上収益 |
|
1,024 |
1,029 |
|
5 |
0.6 |
|
|
営業利益 |
|
35 |
36 |
|
0 |
1.9 |
|
|
(営業利益率) |
(3.5%) |
(3.5%) |
|
(0.0%) |
|
|
|
East Asia |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
売上収益 |
|
390 |
378 |
|
△12 |
△3.1 |
|
|
営業利益 |
|
12 |
13 |
|
1 |
9.4 |
|
|
(営業利益率) |
(3.1%) |
(3.5%) |
|
(0.4%) |
|
|
|
その他・消去 |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
売上収益 |
|
△105 |
14 |
|
120 |
- |
|
|
営業利益 |
|
△2 |
△9 |
|
△6 |
- |
|
リージョンズ(海外) |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
売上収益 |
|
6,041 |
5,897 |
|
△144 |
△2.4 |
|
|
営業利益 |
|
103 |
239 |
|
136 |
132.7 |
|
|
(営業利益率) |
(1.7%) |
(4.1%) |
|
(2.4%) |
|
|
b ハードウェアソリューション
ハードウェアソリューションの売上収益は11,199億円と、前年度比1.1%の増収、為替影響を除くとほぼ前年度並みです。調整後営業利益は613億円と、前年度比223億円の減益です。サーバ、ストレージを中心とするシステムプロダクトは、前年度の新紙幣対応需要や大型・好採算商談の反動減、また海外は価格競争が拡大し、物量面・採算面とも厳しい事業環境でした。国内向け汎用品の物量増はあったものの、売上構成の変化により採算性低下、為替影響による輸入部材調達コストの上昇も加わり減益です。ネットワークプロダクトは需要回復の動きに前年度から大きな変化はなく、売上水準は低調な状態が継続しました。一方で、高速・低遅延・低消費電力の実現など、次の成長サイクルに向けた開発投資を継続しております。
c ユビキタスソリューション
ユビキタスソリューションの売上収益は2,517億円と、前年度比7.9%の減収となりました。調整後営業利益は313億円と、前年度比71億円の増益です。低採算の欧州事業から撤退し、一方で比較的採算のよい国内向けビジネスに集中することで損益は改善、減収ながら増益となりました。
d 消去・全社
調整後営業利益753億円のマイナス、前年度比43億円の費用減です。AIや量子コンピュータといった先進的な先行研究、またOne Fujitsuプログラムやグローバルセキュリティの強化などの経営基盤強化といった中長期的な事業成長に資する投資を継続しております。一方で人材ポートフォリオ変革につながるリソースの最適配置等を行ったことで、生産性の向上、コストの最適化が進みました。
(ⅴ)事業成長投資
投資領域の代表的なものが4点あります。まず事業拡大に直結するFujitsu Uvance、モダナイゼーション、コンサル事業強化への投資で410億円です。主にオファリング開発、ナレッジの集約、教育も含めたリソース拡充への投資です。GK Software SEの100%子会社化に向けた追加出資など関連M&A投資も含まれます。次にAIや量子コンピュータなど先進的な研究開発に関する投資が580億円です。AIプラットフォームFujitsu Kozuchiの開発、生成AI開発のスタートアップCohere Inc.への出資、次世代プロセッサーFUJITSU-MONAKA、量子コンピュータの開発などです。またデータドリブン経営に向けた経営基盤強化領域で550億円、当年度にはグローバルワンインスタンスの基幹システムOne ERP+を日本国内で稼働、現在国内の従業員約7万人が利用しております。品質・セキュリティ強化で400億円、AIを活用したシステム構築時や運用時のトラブル予兆検知への取り組み、あるいは頻発するセキュリティインシデントへの対応強化を進めております。
③ 財政状態
<要約連結財政状態計算書>
|
|
|
|
|
(億円) |
|
|
前年度末 (2024年3月31日) |
当年度末 (2025年3月31日) |
|
前年度末比
|
|
資産 |
|
|
|
|
|
流動資産 |
18,964 |
21,175 |
|
2,211 |
|
非流動資産 |
16,183 |
13,802 |
|
△2,381 |
|
資産合計 |
35,148 |
34,978 |
|
△170 |
|
負債 |
|
|
|
|
|
流動負債 |
13,111 |
13,520 |
|
409 |
|
非流動負債 |
2,848 |
2,436 |
|
△411 |
|
負債合計 |
15,959 |
15,957 |
|
△2 |
|
資本 |
|
|
|
|
|
自己資本 |
17,523 |
17,409 |
|
△114 |
|
非支配持分 |
1,664 |
1,611 |
|
△53 |
|
資本合計 |
19,188 |
19,020 |
|
△167 |
|
負債及び資本合計 |
35,148 |
34,978 |
|
△170 |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
有利子負債 |
2,456 |
2,470 |
|
14 |
|
(ネット有利子負債) |
(△964) |
(110) |
|
(1,074) |
(注)自己資本 :親会社の所有者に帰属する持分合計
有利子負債 :借入金及びリース負債
ネット有利子負債 :有利子負債-現金及び現金同等物
当年度末の資産合計は3兆4,978億円と、前年度末から170億円減少しました。うち流動資産は2兆1,175億円と、前年度末比で2,211億円増加しました。一方で、非流動資産は1兆3,802億円と、前年度末比で2,381億円減少しました。主に、新光電気工業株式会社が保有する有形固定資産から振り替えて、売却目的で保有する資産として流動資産に計上した影響によるものです。
負債合計は1兆5,957億円と、ほぼ前年度並みです。うち流動負債は1兆3,520億円と、前年度末比で409億円増加しました。年度ごとの株主還元額を平準化するための短期的な資金融通目的の借入金が増加しました。非流動負債は2,436億円と、退職給付に係る負債やリース負債の減少により前年度末比で411億円減少しました。資本合計は1兆9,020億円と、前年度末比で167億円減少しました。うち利益剰余金は1兆7,009億円と、親会社の所有者に帰属する当期利益を計上したことなどにより前年度末比で2,135億円増加しました。また、自己株式の保有額は5,597億円です。株主還元施策として当年度は自己株式1,800億円を取得しました。
④ キャッシュ・フロー
<要約連結キャッシュ・フロー計算書>
|
|
|
|
|
(億円) |
|
|
前年度 (自 2023年4月 1日 至 2024年3月31日) |
当年度 (自 2024年4月 1日 至 2025年3月31日) |
|
前年度比
|
|
Ⅰ営業活動によるキャッシュ・フロー |
3,092 |
3,038 |
|
△53 |
|
Ⅱ投資活動によるキャッシュ・フロー |
△1,572 |
△891 |
|
680 |
|
Ⅰ+Ⅱフリー・キャッシュ・フロー |
1,519 |
2,147 |
|
627 |
|
調整項目 |
△452 |
△189 |
|
263 |
|
(上記調整項目を控除した) コア・フリー・キャッシュ・フロー |
1,972 |
2,336 |
|
363 |
|
Ⅲ財務活動によるキャッシュ・フロー |
△1,814 |
△2,404 |
|
△589 |
(ご参考)
|
ベース・キャッシュ・フロー (注) |
3,030 |
3,866 |
|
835 |
(注)成長投資前のフリー・キャッシュ・フローにリース料支払を加えたキャッシュ・フロー
当年度の営業活動によるキャッシュ・フローは3,038億円と、前年度比で53億円の収入減でした。投資活動によるキャッシュ・フローは891億円のマイナスと、前年度比で680億円の支出減となりました。主に、前年度にドイツGK Software SEの買収による支出があった反動によるものです。
営業活動及び投資活動によるキャッシュ・フローを合わせたフリー・キャッシュ・フローは2,147億円のプラスと、前年度から627億円の収入増となりました。一過性の収支を除いたコア・フリー・キャッシュ・フローは当年度2,336億円、前年度から363億円のプラスです。財務活動によるキャッシュ・フローは2,404億円のマイナス、前年度の1,031億円を上回る、1,800億円の自己株式取得を実施しました。
(ベース・キャッシュ・フローとキャピタルアロケーションの進捗状況)
ベース・キャッシュ・フローは3,866億円プラスと前年度から835億円の収入増となりました。ベース・キャッシュ・フローは、事業並びに保有資産最適化から生み出されたキャッシュ・フローで、事業成長投資と株主還元への配分原資となるものです。当年度は、Fujitsu Uvance・コンサル事業の強化、先端研究開発を中心とした事業成長投資に2,182億円、自己株式取得および配当による株主還元に2,305億円を配分しました(ベース・キャッシュ・フローを超過した分については短期借入等で充当)。
当年度末の現金及び現金同等物は3,200億円です。当社グループは、緊急の資金需要に対応するため、月商の数カ月分を目安に十分な手元流動性を確保しています。また、当社は、グローバルに資本市場から資金調達するため、ムーディーズ・インベスターズ・サービス(以下、ムーディーズ)及び株式会社格付投資情報センター(以下、R&I)から債券格付けを取得しています。本有価証券報告書提出日現在における格付けは、ムーディーズ:A3(長期)、R&I :AA-(長期)/a-1+(短期)です。
当社グループは、事業や国・地域毎の特性やリスクを加味し、株主資本コストと借入コストの加重平均として資金調達コストを算定し、これに基づいて各事業における投資意思決定や回収可能性の判断を行っています。当社グループは、今後ますます需要が高まるDXビジネスに経営資源を集中し、中長期的に安定して高い収益性を獲得していくことによって、資金調達コストより高いリターンをあげることができると考えています。
⑤ 重要性がある会計方針及び見積り
IFRSに準拠した連結財務諸表の作成において、経営陣は、会計方針の適用並びに資産、負債、収益及び費用に影響を与える判断、見積り及び仮定を必要としておりますが、実際の結果と異なる場合があります。また、見積り及びその基礎となる仮定は継続して見直されます。会計上の見積りの見直しによる影響は、その見積りを見直した連結会計期間及び影響を受ける将来の連結会計期間において認識されます。連結財務諸表の金額に重要な影響を与える見積り及び判断については、「第5 経理の状況 連結財務諸表注記 4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」をご参照ください。
(1) 技術提携契約
|
相手方 |
国名 |
契約製品 |
契約内容 |
契約期間 |
|
Intel Corporation |
米国 |
半導体装置 |
特許実施権交換 |
1998年6月5日から 関係特許の有効期間中 |
|
Intel Corporation |
米国 |
半導体装置 |
特許実施権交換 |
2008年6月5日から 関係特許の有効期間中 |
|
International Business Machines Corporation |
米国 |
情報処理組織 |
特許実施権交換 |
2015年12月18日から 関係特許の有効期間中 |
|
Microsoft Corporation |
米国 |
ソフトウェア |
特許実施権交換 |
1997年9月16日から 関係特許の有効期間中 |
(注)上記の契約は、全て当社を契約会社としたものです。
(2) 合弁契約及びその他の契約
|
|
契約会社名 |
相手方 |
国名 |
契約内容 |
|
合弁契約 |
富士通株式会社 (当社) |
Lenovo Group Limited、 Lenovo International Coӧperatief U.A. |
中国、 オランダ |
2017年11月2日、グローバル市場に向けたPC及びPC関連製品の研究開発、設計、製造及び販売に関する戦略的な提携について、富士通クライアントコンピューティング株式会社を合弁会社とする合弁契約及び株式譲渡契約を締結しました。 |
|
その他の 契約 |
富士通株式会社 (当社) |
Oracle America, Inc. |
米国 |
2004年5月31日、Sun Microsystems, Inc.(現 Oracle America, Inc.)との間で、 SPARC/Solarisサーバ製品の開発、製造及び販売に関する協力関係を規定する諸契約を締結しました。 |
(3)重要な契約
①株式会社富士通ゼネラルの株式の譲渡にかかる契約
当社は、2025年1月6日開催の取締役会において、株式会社パロマ・リームホールディングス(以下、パロマ)との間における、①パロマによる当社の関連会社である株式会社富士通ゼネラル(以下、富士通ゼネラル)の普通株式(以下、富士通ゼネラル株式)に対する公開買付け(以下、本公開買付け)への不応募、②パロマが本公開買付けにより富士通ゼネラル株式の全て(ただし、当社が所有する富士通ゼネラル株式(以下、当社売却予定株式)及び富士通ゼネラルが所有する自己株式を除く)を取得できなかった場合に、富士通ゼネラルの株主を当社とパロマのみとするために富士通ゼネラルが行う株式併合、③富士通ゼネラルが当社売却予定株式の取得を実行するための資金及び分配可能額を確保することを目的とするパロマによる富士通ゼネラルに対する資金提供及び富士通ゼネラルにおける資本金、資本準備金及び利益準備金の額の減少、並びに④富士通ゼネラルの自己株式取得に当社が応じることによる当社売却予定株式の譲渡(以下、本株式譲渡)を通じた富士通ゼネラル株式を非公開化することを目的とする一連の取引に関する取引基本契約(以下、本取引基本契約)を承認する決定をし、本取引基本契約を締結しました。
なお、2025年5月28日付で本公開買付けが成立したことにより、当社は、本取引基本契約に基づき、2026年3月期において、富士通ゼネラルによる自己株式取得を通じて、本株式譲渡を行う予定です。また、本株式譲渡により、富士通ゼネラルは当社の持分法適用会社から外れる予定です。
②FDK株式会社の株式に対する公開買付けへの応募にかかる契約
当社は、2025年2月12日開催の取締役会において、電子部品の製造を手掛ける台湾拠点の企業グループであるPSAグループを構成する企業の1つである閎暉實業股份有限公司(以下、Silitech)との間における、Silitechによる当社の連結子会社であるFDK株式会社(以下、FDK)の普通株式(以下、FDK株式)に対する公開買付け(以下、本公開買付け)に応募する旨の応募契約(以下、本応募契約)を承認する決定をし、本応募契約を締結しました。
なお、2025年3月13日付で本公開買付けが成立したことにより、当社は、本応募契約に基づき、2025年3月21日付で当社が保有するFDK株式の一部をSilitechに譲渡しました。また、これに伴い、FDKは、当社の連結子会社から外れました。
当社グループでは、デジタルテクノロジーにより、「人」「企業」「システム」「プロセス」「データ」などが複雑かつ無限につながる社会において、あらゆる局面で求められる信頼「Trust」を確保することを重要な技術戦略に位置付けております。そして、このデジタル時代のTrustの実現と共に、デジタル技術とデータを駆使して革新的なサービスやビジネスプロセスの変革をもたらす、DX(デジタルトランスフォーメーション)企業を目指し、イノベーションが絶えず生まれるために必要な先端テクノロジー開発に取り組んでおります。
当社グループの事業は、「サービスソリューション」、「ハードウェアソリューション」、「ユビキタスソリューション」の各セグメントにより構成されており、上記の研究開発方針のもと、それぞれの分野ごとに研究開発活動を行っております。「サービスソリューション」では、Fujitsu Uvanceを中心としたオンクラウドのデジタルサービス等に関する研究開発を行っております。「ハードウェアソリューション」では、次世代のサーバ、ネットワーク等に関する研究開発を行っております。
特に、当社グループの成長領域であるサービスソリューションをはじめとするビジネスに貢献するため、「Computing」、「AI」、「Network」、「Data&Security」、「Converging Technologies」の5つの先進テクノロジーを重点領域として、これらのキーテクノロジーを「AI」を中心に融合させることで新たな価値創出に取り組んでおります。
当社グループの当連結会計年度における主な研究開発活動の成果は、以下のとおりです。また、当連結会計年度における研究開発費の総額は、
(注)当社は、当連結会計年度より「デバイスソリューション」を非継続事業に分類しております。これにより、研究開発費は、非継続事業を除いた継続事業の金額を表示しております。
(1) Computing
・「富岳」を活用し、台風に伴い発生する竜巻を予測する気象シミュレーションに成功しました。富士通の大規模並列処理技術と横浜国立大学の気象シミュレーターCReSSを組み合わせ、これまで困難だったスケールの異なる台風と竜巻の同時予測を正確かつ高速に行い、気象災害のリスクを軽減します。
・2024年5月に、産業技術総合研究所より超伝導ゲート型量子コンピュータを国内ベンダーとして初めて受注しました。また、大阪大学と共同開発した「STARアーキテクチャ」により量子優位性を示すための量子ビット数を大幅に削減しました。さらにオランダのデルフト工科大学との共同研究では、ダイヤモンドスピン方式量子コンピュータの量子ゲート操作において、誤り訂正を可能にするエラー確率0.1%未満の操作精度を世界で初めて達成しました。
(2) AI
・大規模データを正確に参照可能とするナレッジグラフ拡張RAG、企業ニーズを満たす特化型生成AIモデルを自動生成する生成AI混合技術、及び法規制や企業規則に準拠した生成AIを実現する生成AI監査技術から構成される、エンタープライズ生成AIフレームワークを開発し、AIサービス「Fujitsu Kozuchi」のラインナップとして提供を開始しました。カナダのCohere Inc.との戦略的パートナーシップを締結し、世界最高の日本語性能を誇る企業向けLLM「Takane」の提供も開始しています。
・AIが人と協調して自律的に高度な業務を推進する「Fujitsu Kozuchi AI Agent」を開発し、提供を開始しました。本技術は、人々の抽象的な会話から本質的な課題を抽出して解くべきタスクを生成・実行し、適切なタイミングで提案します。人がAIから新たな知見を得て共に創造的に活動する世界を目指します。
(3) Network
・RANの自律化・自動化といったインテリジェント化を担うO-RAN仕様に基づく運用管理システム(SMO)上で、体感品質(QoE)向上、省電力化、通信品質維持を実現する3つのアプリケーションを開発しました。これにより、モバイルネットワークの接続性向上、利用者の利便性・満足度向上に加え、運用コスト削減と省電力化を支援し、社会課題解決にも貢献します。
・総務省及び国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)のBeyond5G基金研究開発事業に、All-Photonics Network(APN)の情報通信基盤としての社会実装に向けた、当社を含む5社共同提案が採択されました。本研究開発により、複数の通信事業者間のAPNが協調して耐障害性の向上やサービス品質を確保できるようになる他、企業、研究機関などのユーザが、用途・需要に応じて複数クラウド・データセンターを同時に利用することや、接続先を柔軟に切り替えることが可能になります。
・GaN-HEMT(窒化ガリウム 高電子移動度トランジスタ)を用いたパワーアンプを開発し、産業分野で広く利用される周波数2.45GHzにおいて世界最高の電力変換効率85.2%を達成しました。ワイヤレス通信やレーダーの消費電力を低減しCO2排出量を削減することで、持続可能な社会の実現に貢献します。
(4) Data & Security
・世界初の偽情報対策プラットフォームの構築に向けて、内閣府が主導する「経済安全保障重要技術育成プログラム」にプライム事業者として採択されました。事業規模は60億円、2024年から4年間業界権威の産学組織の9者と共創し、生成AIの急速な普及により社会問題となっているフェイクニュース撲滅に挑みます。
・攻撃や防御に関するスキルやナレッジを持つセキュリティ特化型AIエージェントを連携させることで、脆弱性や新たな脅威への事前対策を支援するマルチAIエージェントセキュリティ技術を開発しました。専門知識がなくてもプロアクティブなセキュリティ対策を実現できるようになり、安心・安全なITシステム運用を可能とします。
(5) Converging Technologies
・東洋大学と共同で、犯罪心理学と生成AIの融合によるカスタマーハラスメント体験AIツールを開発しました。個人の特性に合わせたフィードバックを行い、深刻化するカスタマーハラスメントへの実践的な対応力強化を目指します。
・自治体の施策をデジタルツイン上に再現し、事前検証によって効果を最大化する「Policy Twin」技術を開発しました。実績ある施策から新たな施策を再構成するため、立案根拠を提示することが可能です。自治体の予防医療事業へ適用し、医療費節減効果と健康改善効果がともに2倍になる施策候補を導出できることを実証しています。