2024年度より始まった長期経営計画「Vision-2028 EVOLUTION 100」の第3期中期経営計画「Realize-EV100」では、顧客の構造改革や課題解決を推進する新商材の開発・社会実装の加速と設計・ものづくりのバリューチェーン改革など収益性向上を図るとともに、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応としてROIC経営を進めてまいります。中期経営計画「Realize-EV100」最終年度において、連結売上高1,500億円、ROE10.0%以上、ROIC9.0%以上を目指します。
(3)中長期的な戦略経営
2019年度よりスタートした長期経営計画「Vision-2028 EVOLUTION 100」では、デジタルディスラプション(デジタル技術による破壊的なイノベーション)で既存産業が淘汰される大変革期の到来に対し、従来の延長線上にない新しいビジネスの在り方を追求し、インフラの進化を安全・快適のソリューションで支えることで社会的課題を解決し、世界中から必要とされる企業グループとなることを目指しています。また、長期経営計画の実現に向け、設立100周年となる2028年をターゲットとした、新たな中期経営計画「Realize-EV100」を2024年度よりスタートいたしました。DXを活用した新事業・新商材の社会実装を加速し、脱炭素ソリューションの展開や海外ビジネスの拡充、ものづくり効率化を図ります。更に、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けROEやROICの向上に努めてまいります。
(4)対処すべき課題
<重点課題1>新事業・新商材のNext Stage
鉄道・自動車の自動運転、キャッシュレスサービス、CBM、ホーム監視システム、ロボット等の省力化に資する開発の推進、脱炭素や顧客の構造改革を支えるソリューションビジネスの拡大等、新事業・新商材の社会実装の加速に取り組みます。
<重点課題2>国際事業のNext Stage
案件履行から継続的な保守・メンテナンス、更なる延伸案件の受注と市場開拓による新たな受注により、国際事業の成長と収益力向上を図ります。また、海外現地化を進めグローバル力を強化してまいります。
<重点課題3>ものづくりのNext Stage
脱炭素、ソフトウエアファーストに対応した商材開発強化とグループベースでの設計標準化、ものづくり内製化の推進、設備投資による生産性向上等により、QCD最適化を目指します。
<その他>ESG経営の推進
脱炭素化に向けた温室効果ガスの削減に努め、環境負荷の低い交通手段である鉄道の普及や維持を通じて持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
また、従業員エンゲージメント向上や地域密着型の社会貢献活動に努め、コーポレートガバナンス強化を図り、企業価値向上を目指します。
当社グループは、交通インフラという公共性の高い事業に関わる企業集団として、事業活動を「持続可能な開発目標(SDGs)」と関連づけて、自社にとっての重要課題を特定し、具体的な取り組みを行っています。SDGsの「世界を変えるための17の目標」になっている環境負荷の低減や災害に強いインフラづくり、安全なマチづくりにどのような役割が果たせるかを考えながら、研究開発や製品開発を展開しており、企業経営にとって大切な地域社会の皆さまとの強固なパートナーシップを育むために、教育や文化、福祉、地球環境の保全などをテーマとした社会貢献活動を積極的に行っております。
また、企業の成長力、活力を生み出す「さまざまな働き手がいきいきと働けるプラットフォームの構築」にも一層力を注いでまいります。
なお、文中の将来に関する事項は、当社グループが当連結会計年度末現在において合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の結果とは様々な要因により大きく異なる可能性があります。
(1)サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理
長期経営計画「Vision-2028 EVOLUTION 100」においては、「環境変化に適応したリスク管理とガバナンス」の一環としてサステナビリティへの取り組みを掲げております。中期経営計画においても、「新事業・新商材のNext Stage」に向け、人材の獲得・育成策を推進し、新ビジネス創出を目指しているほか、TCFDの提言に基づき、気候変動への取り組みを推進しております。
全社環境委員会は、環境目標等の具体的な目標を活動に展開して実践し、取締役会の監督のもと適宜、開示をしております。
人的資本等への投資については、事業拡大や既存市場におけるシェアアップを図るべく、中期経営計画で投資ドメインや投資額を計画した上で、各年度の事業計画策定や半期ごとの投資進捗の確認という形で取締役会にて審議されるほか、毎月開催される役員会の場で議論し、投資内容の検討・変更や進捗に対する監視を適宜行っております。
(2)重要なサステナビリティ項目
当社グループにおける重要なサステナビリティ項目は以下の通りであります。
・人材の多様性
・気候変動
①人材の多様性
a.ガバナンス
取締役会で経営方針を決定し、それに基づき人事部門が採用・教育・人事制度・健康経営など人材戦略を立案いたします。立案された人材戦略は、執行役員で構成する役員会のうち年2回設定される経営計画会議で審議され確定いたします。
当社で決定した各種施策は、グループ会社社長で構成するグループ経営会議やグループ会社の総務人事部門で構成するグループ人事部会を通じ、情報共有を図ります。
b.戦略
当社グループの価値創造の源泉は、人材にあります。グループ理念の「私たちの大切にすべきこと」のひとつに「ヒトづくり」を掲げて、「自らの成長に向けてチャレンジする人材の育成」に注力しております。
2024年3月期は、「次世代人事制度改革に向けた多様な働き方」「リスキリングによるDX人材の育成及び若手から中堅社員を対象とした次世代リーダー層の育成」「社員の健康増進を組織の活性化に繋げ、生産性を高めることで企業価値向上を目指す健康経営」の3点を重点課題として取り組みました。
i.次世代人事制度改革に向けた多様な働き方への取り組み
一般事業主行動計画にて、女性管理職比率、技術職の女性人数、育児休職制度利用率についてKPIを定め、女性活躍推進活動に取り組んでおります。工学系を中心とした技術者のウエイトが高く、相対的に女性社員の割合が少ない状況ですが、女性が活躍しやすい環境整備を通じて定着率の向上とキャリアアップを支援しています。
外国人材の採用については、グローバル化を牽引する国内の大学や日系企業への就職率が比較的高い海外の大学に向けて、積極的な採用活動を行っています。また、多様な人材が活躍する組織運営を目指して、管理職を対象とした研修で、ダイバーシティを活かすマネジメント方法やハラスメント防止に焦点をあてたプログラムも実施しています。
人材の多様化の取り組みとしては、「文系・理系の枠を設定しない採用」や「文系職種の人材の技術部門配属」を実施しています。今後は、OBのコネクションを活用した優秀な人材の採用や、退職者を対象としたカムバック採用の導入、日本人社員向けの異文化理解促進研修の導入も検討していきます。
社会環境の変化や社員のライフイベントなどに応じて、働く時間や場所など多様な選択ができるよう、フレックス勤務・時差出勤・リモートワークを導入しています。また、2023年10月には地域限定社員制度を新設し、個々の事情に応じて働き方を選択できる環境づくりを進めました。こうした多様な働き方の促進と組織の成長を両立させるため、個人ひいては組織全体の生産性の維持・向上を重要な課題としてとらえ、業務のデジタル化、WEB会議などを推進し、新しい業務環境の構築に取り組んでいます。また、デジタル化に伴うサイバーセキュリティ対策としてシステム上の常時監視・制御、教育研修、事故発生を想定した訓練を実施しています。
(ウ)育児支援への取り組み
柔軟な働き方の推進による仕事と育児の両立支援及び男性社員の育児参加の促進に取り組んでいます。2022年7月には、以下の通り関連制度の改定を行いました。
・時間外労働・休日労働制限の請求可能者、看護休暇の取得可能者の対象範囲を拡大
・育児フレックスタイム勤務・産前フレックスタイム勤務の取得可能者の対象範囲を拡大
・育児・介護・産前・通院フレックスタイム制勤務者をコアタイム適用外へ変更
また、仕事と育児の両立を目指す社員の支援を目的として、社内の先輩パパ・ママの意見を参考に作成した「仕事と育児の両立支援ガイドブック」を、子が生まれた社員に対し配布しています。妊娠から育児休業取得・職場復帰までの流れや家事分担・保育園選びのコツ、おすすめの育児本などを紹介しています。
(ア)企業文化定着のための取り組み
「安全と信頼」の理念のもと、社会から必要とされる企業グループであり続けるためには、一人ひとりの正しい行動に裏打ちされたステークホルダーとの深い信頼関係を築き上げることが不可欠です。この信頼関係の基盤となるものとして、「日本信号グループ理念」において、当社グループのすべての役員・社員がとるべき行動規範である「私たちの行動規範」を策定しました。
法令やルールを尊重する行動を浸透させるとともに、問題を早期に発見して是正・改善する自浄作用を持つ組織づくりを推進しています。活動の一環として、全社員を対象とした「教訓事例教育」を定期的に開催し、当社社員として必要な「安全と信頼」に関する基礎知識を身に着けるとともに、当社が扱う製品が世の中へ与える影響を自ら考え、業務に活かす機会を設けております。
また、全社員で経営戦略を推進するため、会社の方針に基づいた部門目標を定め、半期ごとの部門ミーティングで共有しています。部門目標の達成に向けて、社員一人ひとりが達成すべき目標及び職能資格コース別に求められる行動基準を基に、強化すべき行動を設定し、管理職と連携しながら、その実現に努めています。その他、目覚ましい功績をあげた社員や模範となる社員に対して表彰を実施しているほか、社内の各種コンテストの成績優秀者に対し、海外研修の機会を提供しています。
(イ)全社員のデジタルリテラシー向上への取り組み
当社は中期経営計画にて、「開発力強化とDXに適応した設計・生産体制の確立」を重要課題として定め、2022年度に全社員を対象にDXリテラシー教育を実施しました。2023年度は各部署における改善・改革テーマを見出し、そのDX化を推進する取り組みを行いました。また、採用においてもソフトウエアを中心に、AI・画像・通信等のDXに適した人材の獲得に注力しています。
(ウ)若年層教育の取り組み
若年層向けの研修として、2019年に従来の一般的なOJT制度を当社独自の「鉄熱(てつあつ)プログラム研修」に進化させました。
「鉄熱プログラム」とは、「鉄は熱いうちに打て」との諺にある通り、柔らか頭で吸収力が高い新入社員時代に様々な経験を積むことを目的とした教育プログラムです。新入社員を迎える組織は「課長」がリーダーとなり、「係長」「バディ(先輩社員)」が各々の立場での役割を持って新入社員の成長をサポートし、チーム一丸の活動を行います。その活動を通じて、新入社員を取り巻く全員が人材育成に関わり、新入社員に寄り添うことにより自らも成長していくことを目指しています。
このような考えに基づき、「鉄熱プログラム」は以下の3つを狙いとして実施されます。
・チームの指導、サポートにより新入社員が様々な経験を積むことで、成長曲線を高める。
・チーム全体で新入社員を支え、育てる仕組みの醸成を図る。
・新入社員をはじめとするチームのエンゲージメント向上を図る。
2023年度は、階層・部門間を超えた育成や関与の風土醸成を目的として、課長を中心とした「縦」の活動だけではなく、「横」の広がりも意識したプログラムを実施しました。
(エ)リーダーシップ開発
2022年度から2023年度にかけて、入社3年~5年目の社員及び次期管理職候補となる社員を中心に社長との懇談会を開催し、社長自らが経営トップの想いを伝え、社員の仕事に対する意欲向上や視野拡大、さらなるスキルアップを図る機会としました。また、次世代リーダー層育成を目指して、数年後の管理職候補者として各部署から選出された人材を集めて、幅広いものの見方・考え方、自らの想いの明確化、組織内もしくは顧客・取引先といったステークホルダーへの価値ある企画・提案をテーマとした研修を実施しました。
リーダー層の育成については、経営人材として必要な要件を明確にして、将来を担うリーダーを継続的に生み出す「次期経営人材育成研修」を構築し、経営人材の育成に取り組んでいます。また、当社の将来を担うリーダー層の人材をグループ会社の経営者に任命し、その後当社の経営陣に登用するなど、グループ間人事交流を積極的に実施し、グループ一体となって経営人材の育成に努めています。
(オ)リスキリング・学びなおしのための取り組み
社員の自己啓発の促進を目的に、通信教育講座の費用補助や会社が奨励する公的資格取得者への手当支給を行っています。2023年4月には、月額手当の支給対象者の拡大及び支給額の引き上げを実施し、自己啓発を積極的に行う社員に対する賃上げを行いました。業務上必要となる教育の促進を目的に、定期的に各部門へのヒアリングに基づく公的資格の手当対象範囲拡大を行っております。また管理職が部下との育成面接の中で自己啓発の実施状況を把握し、必要に応じてアドバイスをしています。
社外での学習機会としては、勤続10年以上で55歳に達した社員が今後の自分の在り方について考え自己研鑽の機会とする「マイビジョン休暇制度」や、国際大学への留学生制度があります。
ⅲ.健康経営・組織活性化への取り組み
<健康経営の推進>
当社は2022年4月に「日本信号グループ健康宣言」を制定しました。健康診断及び保健指導の受診率・参加率の向上、定期的な運動の習慣化を目的とした、スポーツイベントや健康保険組合とのコラボレーションによる運動キャンペーン等を展開、ヘルスリテラシー向上を目的としたセミナーの開催に注力し、2023年から2年連続で「健康経営優良法人」(大企業法人部門)の認定を取得しました。主な活動は以下の通りです。
(ア)からだの健康
・健康診断受診後の各種フォローの実施(特定保健指導の参加率増加、医療従事者による保健指導
の充実)
・定期的な運動習慣の確保のため、スポーツイベントや運動キャンペーンを継続
(イ)こころの健康
ストレスチェック・メンタルヘルス講習等を実施するとともに、高ストレスと判定された社員をフォローし、メンタル不調者の早期発見・未然防止を実施
(ウ)みらいの健康
・喫煙対策の強化
・ヘルスリテラシー向上を目的とした各種セミナーの実施
・ヘルスケア休暇の利用促進
<社員エンゲージメントを高めるための取り組み>
2021年より、社員エンゲージメントの向上を目的として「従業員意識調査」を毎年実施しております。調査結果は、経営陣や各部門長にフィードバックすると同時に、解決すべき問題の特定に活用し、働きがいのある職場づくりのための課題設定につなげております。
2023年は部門を横断したコミュニケーションの強化を課題とし、社員の自発的な社内ネットワーク構築の支援企画を実施するなど、社員のエンゲージメントを高める施策に取り組みました。
c.リスク管理
採用競争力の低下や離職者の増加に伴う組織の硬直化により、企業競争力を損なうリスクがあります。
このリスクを低減させるために、従業員の外国人材や構成比の低い工学系の女性の採用を増やす等の採用活動強化や、グローバル化やDX化の進展に追随するための学び直し(リスキリング)支援や、多様性を向上させる人材の配転など、人材開発を強化しております。
また、柔軟な働き方の推進や育児という従業員のライフイベントを支える企業内保育所の設置等の福利厚生・人事制度によって従業員を支えるほか、若年層からリーダー層、次世代の経営人材まで、自らの成長に向けてチャレンジする人材を育成し、企業価値向上に努めてまいります。
また、良好な企業風土を保つため、長時間労働やハラスメントなどコンプライアンスに係る事案、労働災害につながるインシデント(重大事故に発展する可能性のある事象)は、代表取締役社長を委員長とする「リスク管理委員会」の議題として取り上げ、全役員・従業員で情報共有し、リスクの未然回避及び顕在化したリスクによる被害の最小化に取り組んでおります。
d.指標及び目標(単体)
経営戦略の実現のための人事課題を達成するため、当社では以下のKPIを設定しております。
②気候変動
a.ガバナンス
当社グループは、気候変動への対応をサステナビリティにおける重要な課題と位置づけています。全社環境委員会では、TQM推進部担当役員を委員長とし、各サイトのトップが参加し、年度目標や計画に基づいたマネジメントが行われています。内容や進捗状況の報告に基づいて、取締役会が監督を行っています。
気候関連の責任は、全社環境委員会及び委員長が負っております。

ⅰ.全社環境委員会、取締役会
2023年度は計4回全社環境委員会が開催されました。取締役会では、TCFDに関わる開示情報、全社環境委員会で審議された重要事項が計4回報告されました。
取締役会では重要事項として、環境方針改定及び環境行動指針制定、TCFDに伴い段階的に全社環境委員会の参加会社を増やす計画、第6期環境行動計画の結果が報告されました。
ⅱ.気候関連のモニタリング
気候関連のモニタリングは、各部門から、サイト/関係会社の環境事務局に集約され、サイト環境事務局からTQM推進部に報告されます。TQM推進部は、TQM推進部担当役員に報告し、特に重要な事項は取締役会で報告されます。モニタリングの指示は、報告と逆のルートで実施されます。
b.戦略(採用したシナリオ)
シナリオ分析の検討に際して、IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change/国連気候変動に関する政府間パネル)AR6 SSP1-1.9、及びSSP5-8.5を参照し、それぞれⅰ.2100年までの平均気温上昇が1.5℃未満に抑えられている世界(1.5℃シナリオ)、ⅱ.2100年までの平均気温上昇が4℃となる世界(4℃シナリオ)の2つのシナリオを設定しました。
ⅰ.1.5℃シナリオ
(注)1.長期的温室効果ガス削減目標(SBT Scope3)は第6期環境行動計画中に提示
(注)2.SBT:Science Based Targets パリ協定が求める温室効果ガス削減目標、Scope3は間接的排出
ⅱ.4℃シナリオ
ⅲ.機会
ⅳ.シナリオ分析による影響の検討結果
(ア)製品・サービス
・ライフサイクルにおける温室効果ガス削減のため、ハードウエアの使用を削減した商品の開発を進めます。これには、機器の集約化、ケーブルレス(無線化)、汎用端末を使用した決済対応等が含まれます。
・異常気象による災害増加に対応するため、災害に強い製品の開発を進めます。これには、耐水型製品、停電時対応を考慮したバッテリー・発電装置付き製品等が含まれます。
(イ)サプライチェーン/バリューチェーン
・異常気象による災害により、部品製造工場の被災、物流の寸断に備え、複数の調達先、輸送手段を確保します。これには、複数の調達先を確保できる部品を用いた設計・開発が含まれます。
・災害時に社会インフラを維持し、迅速な復旧に貢献する製品・システムの開発を進めます。
(ウ)研究開発関連投資
日本信号グループ28中期経営計画(2024年度~2028年度の経営計画)において、研究開発に210億円規模の投資が計画・実行されています。脱炭素社会を実現するための課題を解決するCBM、自動運転、決済・認証、ロボット分野などへ注力します。これらは、いずれも限りあるヒト・モノを効率的に配置することで温室効果ガス削減に貢献します。
c.リスク管理
i.気候関連リスクのマネジメントプロセス
日本信号グループでは、気候関連の以下のリスクに関して、選別・評価・管理し、全社環境委員会で妥当性を審議し、取締役会に報告しております。
・移行リスク(政策規制、市場、技術、利用者の行動変化)
・物理的リスク(自然災害、感染症、気温上昇)
ⅱ.気候関連のリスクマネジメント評価プロセス
1.5℃シナリオ、4℃シナリオのリスクに対して、短期・中期・長期について、通常の他のリスクと同じように、「発生確率×被害の大きさ」で重大度を判断し、それに合わせて対応の緊急性を判断いたします。
ⅲ.気候関連のリスクを軽減、移転、受入または制御する意思決定プロセス
全社環境委員会(特に重要な事項は取締役会)で意思決定が行われた後、日本信号グループの各サイトに指示されます。各サイトの環境委員が中心となり、各サイトで具体的な意思決定が行われます。サイト間の調整、及び各サイトの意思決定の報告は、環境事務局会議(TQM推進部が事務局)で行われます。 各サイトの意思決定の結果は環境委員から各部門に周知されます。
d.指標及び目標(ライフサイクルCO2排出量)
日本信号グループは、SBTのScope1~3に則り、温室効果ガス削減に取り組みます。特に、Scope3については、カテゴリ別の排出量測定を行い、特に自社製品の使用と廃棄に関する温室効果ガスの削減を、設計の上流から活動として取り組みます。具体的には、製品ライフサイクル全体で、政府目標である2030年温室効果ガス46%削減(2013年比)、2050年カーボンニュートラルに取り組みます。

Scope1:燃料の燃焼や工業プロセスにおいて、企業自身が直接排出した温室効果ガス排出量
Scope2:電力会社などの他社から供給された電気・熱・蒸気の使用に伴う間接排出
Scope3:Scope1にもScope2にも該当しない温室効果ガスのことで、事業活動全体
で生じる間接排出、具体的にはサプライチェーンで排出するCO2
また、当社グループは2005年度から環境行動計画を策定し、環境負荷の低減に取り組んでいます。
「第5期環境行動計画(2019年度~2021年度)」を見直し、2022年度から「第6期環境行動計画」を推進しております。
当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性のあるリスクとしては、主に以下のようなものがあります。但し、全てのリスクを網羅しているわけではなく、現時点では予見できないリスクや重要と評価されていないリスクについても、将来影響を受ける可能性がないか注視しております。
文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経済、市場に基づくリスク
当社グループは、交通インフラに関わるシステムやサービスの提供を当社の基幹事業としております。その主要顧客である国内鉄道各事業者の設備投資や、警察等の公共投資の影響を強く受ける分野であります。
そのため、感染症や災害等により人や貨物の輸送量が減少し、運輸収入に大きな影響が生じた場合、国内鉄道事業者の設備投資や公共事業投資が減少して市場規模が縮小し、当社グループの経営成績に重大な影響を与える可能性があります。
また、主要顧客の設備投資及び公共投資が当社の需要の中心となっているため、当社グループの売上の比重は期末に高くなる傾向があります。
(2)製品の特性に基づくリスク
当社グループで製造・販売している鉄道信号や交通信号システム、駅務自動化システム関連の製品は、重要な社会インフラである「交通」を支えております。また、実証実験に参画している鉄道と自動車の自動運転に係わる新技術なども含め、極めて高い安全性が求められます。そのため、故障・誤動作等の障害が発生した場合、深刻な公共交通のマヒあるいは利用者の人命や財産に関わる安全を損なう事態を招く恐れがあり、各関係者の被害に関する損害の賠償請求を受け、当社グループの経営成績に悪影響を与える可能性があります。
当社グループが何よりも優先すべきことは「安全と信頼」であり、これを頑なに守り続けることが必要であります。そうしたことから、グループ理念に掲げる安全への想いを未来に継承していく拠り所として、安全信頼創造センターを設立し、安全理論の研究、蓄積や社員の安全教育を実施しております。
(3)競合、取引先に関するリスク
主要顧客である国内鉄道各事業者や、警察等の官公庁からの発注は一般競争入札に基づいており、参入業者間の競合による価格競争の激化は、当社グループの経営成績に悪影響を与える可能性があります。
海外事業についても同様であり、特に欧州企業や中国企業との価格競争の激化は、当社グループの経営成績に悪影響を与える可能性があります。
また、半導体等をはじめとする原材料や部品等の大幅な不足や価格の高騰が生じた場合、当社グループの業績及び財務状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(4)災害に対するリスク
当社グループは、主力生産事業所を埼玉・栃木の二県に集中して展開しております。これらの事業所及び本社を含む首都圏において、大規模地震や台風・豪雨・洪水等の自然災害による生産設備への被害、製品輸送、製品保管中の事故等、不測の事態が発生した場合、操業停止を含め、当社グループの生産能力が著しく低下する可能性があります。
このような大規模災害が発生した場合に指揮命令系統を早期に確立するための事業継続計画(BCP)を制定し、従業員の安否確認システムを利用した訓練をしております。
また、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大を契機に自然災害・新型感染症対応規程の見直しを図り、国際事業の拡大やテレワークなど新しい働き方の運用を踏まえて、社員の安全確保と事業の継続について定めております。
(5)海外展開に関するリスク
当社グループは、アジアを中心に積極的な海外展開を図っております。そのため各国の経済・市場の動向に関するリスクだけではなく、政治的リスクや気候変動リスクにより、事業開発の遅れが生じるリスクがあります。
また、テロ・紛争・戦争、感染症等のリスクがあり、社員の安全確保のため、営業拠点からの退避や事業そのものからの撤退を余儀なくされる恐れもあります。また、これらの事象により為替相場が変動し、当社グループの経営成績に悪影響を与える可能性があります。
(6)新規事業に関するリスク
当社グループは、既存事業特有のリスク低減を目指し、より安定した強固な企業基盤を確立すべく、既存事業の海外展開や、MaaS、自動運転、ロボティクスといった新分野の技術開発に積極的に取り組み、新市場の開拓を目指しております。
しかしながら、参入を検討している新市場規模が縮小した場合、又は技術開発の遅れにより、新事業から撤退等の事態に陥った場合、新たな成長ドライバーを獲得するまで、依然としてこれらのリスクが残存することになります。
(7)情報システムセキュリティリスク
当社グループは、事業上の重要情報や、事業の遂行過程で得た取引先等の機密情報を有しております。当該情報の盗難・紛失等を防ぐため、情報取扱管理規程の整備、情報システムのセキュリティ強化、社員に対するITセキュリティ教育を実施しております。
しかし、不測の事態によって、機密情報の漏洩や想定を超えるサイバー攻撃を受けることで、データの破壊、改ざん、流出、システム障害等を引き起こす可能性があり、その結果、当社グループの経営成績に悪影響を与える可能性があります。
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当連結会計年度における世界経済は、欧米各国の中央銀行による金融引き締め、ウクライナや中東など地政学的緊張の長期化によるヨーロッパ経済の停滞、中国における不動産市場の停滞による経済活動の減速等、先行き不透明な状況が続いております。
国内経済においては、円安を背景にした好調なインバウンド消費等により緩やかな回復基調にあります。しかしその一方で、ロシアへの経済制裁の影響等によるエネルギー価格高騰や、物価上昇による個人消費の低迷等、経済活動の鈍化も懸念されております。
このような状況の中、当社グループは、2024年度から新たに第3期中期経営計画「Realize-EV100」をスタートいたしました。急激に変化した経営環境及びニーズを踏まえ、新事業・新商材や国際事業の更なる拡大を目指してまいります。
当連結会計年度の経営成績といたしましては、受注高は138,566百万円(前期比39.9%増)、売上高は98,536百万円(前期比15.3%増)となりました。損益面につきましては、営業利益は6,824百万円(前期比33.5%増)、経常利益は7,893百万円(前期比33.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は5,346百万円(前期比31.2%増)となりました。
なお、当連結会計年度における各セグメントの概況は、以下のとおりであります。
〔交通運輸インフラ事業〕
「鉄道信号」では、国内市場においては、鉄道事業者各社向けに自動列車制御装置や連動装置、無線式列車制御装置等の受注・売上がありました。
当社では、現在、地方鉄道における既存の信号保安装置を活用した自動運転システムの開発を進めております。今後も顧客の省力化に資する製品開発に注力してまいります。
海外市場においては、台湾やインド等で鉄道信号システムの受注・売上がありました。中でも、当社システムを導入している台湾の花東線では、当社の実績が評価され、新たに電子連動装置更新、変電、電力監視制御システム及び通信システム改修等の受注に成功いたしました。引き続き導入実績をもとにアジア諸国のインフラ需要に応え、交通インフラによる快適で安全な街づくりに貢献してまいります。
道路交通安全システムを中心とする「スマートモビリティ」では、交通管制システムやパーキングメーターの受注・売上がありました。自動運転実証実験の各種プロジェクトへも積極的に参画しており、当社は自動運転車両と道路の信号機や路側センサと連携した「インフラ協調」に資する製品、技術の提供を行ってまいります。
結果といたしましては、受注高は83,002百万円(前期比34.6%増)、売上高は53,936百万円(前期比14.7%増)となりました。また、損益面では6,212百万円のセグメント利益(前期比21.4%増)となりました。
〔ICTソリューション事業〕
駅務ネットワークシステムを中心とする「AFC」では、国内市場においては、各種ホームドアや券売機、改札機、駐車場機器等の受注・売上がありました。駅構内において、ホームドアのラインナップ拡充に加え、当社製3D距離画像センサを活用したホーム監視システムの販売拡大にも取り組んでおります。当システムは、センサで車両在線や扉開閉の状態を検知し、利用客への注意喚起が可能であり、省人化とさらなる安全性向上の両立に寄与してまいります。
海外市場においては、バングラデシュやエジプト等でAFCシステムやホームドアの受注・売上がありました。
ロボティクス及びセンシングを中心とする「R&S」では、ホームドアや建機・農機に搭載する3D距離画像センサや危険物の有無を短時間で探知できるX線手荷物検査装置等の受注・売上がありました。当社はフェールセーフの基本思想のもと、これまでの経験等で培ったセンサ、画像分析等のコア技術に最新のロボティクス技術を融合させ、人とロボットが協働する未来社会の実現に貢献してまいります。
結果といたしましては、受注高は55,564百万円(前期比48.6%増)、売上高は44,600百万円(前期比16.1%増)となりました。また、損益面では3,991百万円のセグメント利益(前期比20.2%増)となりました。
当連結会計年度末における総資産は、契約資産の増加5,756百万円、時価の上昇等による投資有価証券の増加4,471百万円、現金及び預金の増加3,395百万円、売掛金の増加2,468百万円、棚卸資産の増加2,421百万円等により、前連結会計年度末に比べ19,276百万円増加の165,295百万円となりました。
負債は、契約負債の増加3,788百万円、支払手形及び買掛金の増加2,310百万円、電子記録債務の増加1,878百万円、短期借入金の増加1,184百万円、未払法人税等の増加1,002百万円等により、前連結会計年度末に比べ11,805百万円増加の68,473百万円となりました。
純資産は、利益剰余金の配当による減少1,684百万円等がありましたものの、親会社株主に帰属する当期純利益5,346百万円の計上、その他有価証券評価差額金の増加3,474百万円等により、前連結会計年度末に比べ7,470百万円増加の96,821百万円となりました。
当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は11,760百万円となり、前連結会計年度末に比べ3,395百万円の増加となりました。
各キャッシュ・フローの状況につきましては、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、売上債権の増加△7,805百万円、棚卸資産の増加△2,421百万円等がありましたものの、税金等調整前当期純利益8,047百万円の計上、仕入債務の増加4,154百万円、契約負債の増加3,788百万円等により、6,771百万円の資金の増加(前年同期は1,715百万円の資金の増加)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、投資有価証券の売却による収入1,687百万円等がありましたものの、有形・無形固定資産の取得による支出△3,913百万円等により、2,982百万円の資金の減少(前年同期は3,597百万円の資金の減少)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入れによる資金の増加1,104百万円等がありましたものの、配当金の支払による支出△1,681百万円等により、338百万円の資金の減少(前年同期は3,911百万円の資金の増加)となりました。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 上記金額は販売価格によっております。
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 上記金額は販売価格によっております。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 上記金額は販売価格によっております。
当連結会計年度は、長期経営計画「Vision-2028 EVOLUTION 100」で掲げるビジネス転換や、事業ドメイン、人材・組織、技術開発などに関する戦略に取り組んだ5年目となりました。
売上高については、交通運輸インフラ事業の鉄道信号の国内外の需要、ICTソリューション事業の国内AFC機器の更新需要等の増加により98,536百万円(前期比15.3%増)となりました。
損益面につきましては、営業利益6,824百万円(前期比33.5%増)、経常利益7,893百万円(前期比33.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益5,346百万円(前期比31.2%増)となりました。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、現在、運転資金及び設備投資資金は、内部資金又は借入により資金を調達しております。このうち借入による資金調達については、運転資金は期限が1年以内の短期借入金により調達しております。
当社グループは、その健全な財政状態、営業活動によりキャッシュ・フローを生み出す能力により、当社グループの成長を維持するために将来必要な運転資金及び設備資金を調達することが可能であると考えております。
長期経営計画「Vision-2028 EVOLUTION 100」をより具体的な取り組み・施策に展開した、第2期中期経営計画「Next Stage 24」の2年目の経営上の目標値といたしましては、売上高950億円、営業利益率6.3%、並びにROE4.9%としておりました。
当期における当社グループの経営成績は、売上高985億円、営業利益率6.9%、並びにRОE5.7%となりました。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
該当事項はありません。
当連結会計年度の研究開発活動については、各事業部門において、事業拡大のための次世代商品開発(自動運転、オペレーション&メンテナンス、ロボット、セキュリティ機器、センシング機器等)を行っております。
また、当社研究開発室において、産学連携を含め中長期的な視点に立った事業拡大及び基盤技術強化のための研究開発(センシング技術、無線&ネットワーク技術、AI・画像解析技術等)を行っております。
セグメント別の主な研究開発活動は次のとおりであります。
[交通運輸インフラ事業]
・次世代列車制御システム(CBTC)/ドライバーレス自動運転(FS-ATO)
・Traio/CBMシステム
・くるLinkシステム
研究開発費の金額は
[ICTソリューション事業]
・NS-MaaSプラットフォーム(iDONEO)
・クラウド型駐車場運営システム
・多機能鉄道重機ロボット
研究開発費の金額は