第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1)会社の経営の基本方針

当社グループは、世界中の人々がより安心、快適に暮らせる社会の実現を願い、1928年の設立以来、鉄道や道路交通など、社会インフラの発展と維持に貢献する事業を展開しています。2016年4月には、近年のグローバル化や産業技術の急激な変化を勘案し、創業60周年を機に制定された企業理念を「日本信号グループ理念」に改定いたしました。「私たちの使命」である“「安全と信頼」の優れたテクノロジーを通じて、より安心、快適な社会の実現に貢献します”という想いのもと、一丸となり企業活動に取り組んでおります。

2019年度より新たな長期経営計画「Vision-2028 EVOLUTION 100」をスタートし、10年後の設立100周年(2028年)に向けて、世界の人々から必要とされる企業グループになることを目指して、グローバル化の深化やデジタル技術の大変革期に適応し、持続的成長のための事業構造改革に取り組んでおります。

 

(2)目標とする経営指標

2024年度より始まった長期経営計画「Vision-2028 EVOLUTION 100」の第3期中期経営計画「Realize-EV100」では、顧客の構造改革や課題解決を推進する新商材の開発・社会実装の加速と設計・ものづくりのバリューチェーン改革など収益性向上を図るとともに、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応としてROIC経営を進めてまいります。中期経営計画「Realize-EV100」最終年度において、連結売上高1,500億円、ROE10.0%以上、ROIC9.0%以上を目指します。

 

(3)中長期的な戦略経営

2019年度よりスタートした長期経営計画「Vision-2028 EVOLUTION 100」では、デジタルディスラプション(デジタル技術による破壊的なイノベーション)で既存産業が淘汰される大変革期の到来に対し、従来の延長線上にない新しいビジネスの在り方を追求し、インフラの進化を安全・快適のソリューションで支えることで社会的課題を解決し、世界中から必要とされる企業グループとなることを目指しています。また、長期経営計画の実現に向け、設立100周年となる2028年をターゲットとした、新たな中期経営計画「Realize-EV100」を2024年度よりスタートいたしました。これまで自動運転技術や多機能重機ロボットなどのⅮⅩ商材の開発に取り組み、社会実装を進めてまいりました。今後はこれらの拡販やビジネスモデル構築に取り組み、国際事業での延伸案件等の受注やオペレーション&メンテナンス事業の拡大と収益性の向上に取り組みます。また資本収益性の改善に向けたROE、ROICの向上により一層努め、IR活動を強化してまいります。

 

(4)対処すべき課題

<重点課題1>新事業・新商材のNext Stage

鉄道・自動車の自動運転、キャッシュレスサービス、CBM、ホーム監視システム、ロボット等の省力化に資する製品開発の推進、脱炭素や顧客の構造改革を支えるソリューションビジネスの拡大等、新事業・新商材の社会実装の加速に取り組みます。

 

<重点課題2>国際事業のNext Stage

案件履行から継続的な保守・メンテナンス、更なる延伸案件の受注と市場開拓による新たな受注により、国際事業の成長と収益力向上を図ります。また、海外現地化を進めグローバル力を強化してまいります。

 

<重点課題3>ものづくりのNext Stage

脱炭素、ソフトウエアファーストに対応した商材開発強化とグループベースでの設計標準化、ものづくり内製化の推進、設備投資による生産性向上等により、QCD最適化を目指します。

 

<その他>ESG経営の推進

脱炭素化に向けた温室効果ガスの削減に努め、環境負荷の低い交通手段である鉄道の普及や維持を通じて持続可能な社会の実現に貢献してまいります。

また、従業員エンゲージメント向上や地域密着型の社会貢献活動にも取り組みます。

 

コーポレートガバナンスの強化といたしましては、モニタリングボードとしての取締役会を志向し、経営の監督機能と執行機能を明確に分離したうえで、監督機能の一層の強化と透明性の確保を図り、企業価値向上に努めてまいります。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループは、交通インフラという公共性の高い事業に関わる企業集団として、事業活動を「持続可能な開発目標(SDGs)」と関連づけて、自社にとっての重要課題を特定し、具体的な取り組みを行っています。SDGsの「世界を変えるための17の目標」になっている環境負荷の低減や災害に強いインフラづくり、安全なマチづくりにどのような役割が果たせるかを考えながら、研究開発や製品開発を展開しており、企業経営にとって大切な地域社会の皆さまとの強固なパートナーシップを育むために、教育や文化、福祉、地球環境の保全などをテーマとした社会貢献活動を積極的に行っております。
 また、企業の成長力、活力を生み出す「さまざまな働き手がいきいきと働けるプラットフォームの構築」にも一層力を注いでまいります。

なお、文中の将来に関する事項は、当社グループが当連結会計年度末現在において合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の結果とは様々な要因により大きく異なる可能性があります。

 

(1)サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理

長期経営計画「Vision-2028 EVOLUTION 100」においては、「環境変化に適応したリスク管理とガバナンス」の一環としてサステナビリティへの取り組みを掲げております。中期経営計画においても、「新事業・新商材のNext Stage」に向け、人材の獲得・育成策を推進し、新ビジネス創出を目指しているほか、TCFDの提言に基づき、気候変動への取り組みを推進しております。

全社環境委員会は、環境目標等の具体的な目標を活動に展開して実践し、取締役会の監督のもと適宜、開示をしております。

人的資本等への投資については、事業拡大や既存市場におけるシェアアップを図るべく、中期経営計画で投資ドメインや投資額を計画した上で、各年度の事業計画策定や半期ごとの投資進捗の確認という形で取締役会にて審議されるほか、毎月開催される役員会の場で議論し、投資内容の検討・変更や進捗に対する監視を適宜行っております。

 

(2)重要なサステナビリティ項目

当社グループにおける重要なサステナビリティ項目は以下の通りであります。

・人材の多様性

・気候変動

 

①人材の多様性

a.ガバナンス

取締役会で経営方針を決定し、それに基づき人事部門が採用・教育・人事制度・健康経営など人材戦略を立案いたします。立案された人材戦略は、執行役員で構成する役員会のうち年2回設定される経営計画会議で審議され確定いたします。当社で決定した各種施策は、グループ会社社長で構成するグループ経営会議やグループ会社の総務人事部門で構成するグループ人事部会を通じ、情報共有を図ります。

 

b.戦略

当社グループでは、グループ理念「私たちの大切にすべきこと」のひとつに「自らの成長に向けてチャレンジすること(ヒトづくり)」を掲げ、人材戦略の基盤としております。この理念の下、安全と信頼の交通インフラを支える「使命感」を中心に、自ら考動する「自律心」、困難を乗り越えていく「挑戦心」、様々な人々と協力しながら新たな価値を生み出す「共創力」を持つ人材をめざす姿として定めております。

この人材の獲得・育成ならびに、全ての社員が自分らしく生き生きと働ける企業環境の実現のため、現在の28中計では、「エンゲージメント向上」、「DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)推進」「不易流行の人材マネジメント」の3つを重点課題として取り組んでおります。

 

i.エンゲージメント向上のための取り組み

(ア)安全と信頼を支える使命感の醸成

当社グループが、社会に貢献し必要とされる企業であり続けるためには、全ての役員・社員がグループの使命や価値観を共有し、「交通インフラを支えるに相応しい人材」として考動することが重要です。これらの基盤になるものとして「日本信号グループ理念」において「私たちの行動規範」を策定し、法令やルールを尊重する行動を浸透させるとともに、問題を早期に発見して是正・改善する自浄作用を持つ組織づくりを推進しています。また、全社員を対象に「教訓事例教育」を定期的に開催し、事業活動において得られた気づきを共有し、当社が扱う製品が世の中へ与える影響を自ら考え、自らの仕事に活かす機会を設けております。

 

(イ)健康経営の推進

社員が心身ともに健康で働く環境維持のため、推進体制を構築し、各種取り組みを実施しており、2023年から3年間連続で「健康経営優良法人」(大企業法人部門)の認定を取得しております。

<主な活動>

(1) からだの健康

・健康診断受診後の各種フォローの実施(特定保健指導の参加率増加、医療従事者による保健指導の充実)

・定期的な運動習慣の確保のため、スポーツイベントや運動キャンペーンを継続

(各種スポーツイベントの開催)

健康増進・コミュニケーション活性化の観点から、各種のスポーツイベントを開催しております。特にグループの主要拠点が集中している関東地方においては、運動会「スポーツフェスティバル」や「リレーマラソン」、健康保険組合主催の当社グループ全体で1日平均8,000歩を目指すウォーキングキャンペーンなどのイベントを毎年開催し、多数の従業員が参加しております。

(2) こころの健康

・ストレスチェック・メンタルヘルス講習等を実施するとともに、高ストレスと判定された社員をフォローし、メンタル不調者の早期発見・未然防止を実施

(3) みらいの健康

・ヘルスリテラシー向上を目的とした各種セミナーの実施

・ヘルスケア休暇の利用促進

・喫煙対策の強化

喫煙対策の一環として、受動喫煙やニコチン依存など喫煙に係る危険性を再認識し、禁煙意識を醸成する目的で、毎年、WHOが定める「世界禁煙デー」に合わせ当社においても禁煙デーを定め、当社内全拠点で、終日禁煙の取り組みを実施しています。

 

(ウ)意識調査・サーベイの実施

社員のエンゲージメント向上を目的として「意識調査」を実施し、働きがいのある職場づくりのための課題把握・解決に活用しております。加えて、2024年度から管理職を対象とした「360度評価」を実施し、自身と周囲の認識のギャップを知ることで、本人の気づき・行動改革を促す取り組みを行っています。一例として、部下育成能力を強化する必要を認識し、後述のキャリアデザイン研修等に生かしています。

また、社員の自発的コミュニケーション活性化支援の観点から、社員同士のグループによる課外活動・自己啓発等に一定の補助を行う「このゆびとまれプロジェクト」を展開しています。

 

ⅱ.DE&I推進のための取り組み

(ア)グローバル人材獲得のための取り組み

当社では、アジアなど新興国を中心に国内で培った安全と信頼の技術をグローバル展開しています。現地と日本の架け橋となり活躍できる人材獲得のため、グローバル化を牽引する国内大学や、タイやベトナム等の大学に対し積極的な採用活動を行っております。

 

(イ)多様性への対応

フレックス勤務・時差出勤、リモートワークに加え、地域限定社員制度を導入し、社会の環境変化や社員のライフイベントなどに応じて働き方を選択できる環境づくりを進めました。

さらに、2024年には新たな福利厚生制度としてカフェテリアプランを導入し、多様化する社員の要望・ライフスタイルに合わせてサービスを選択することができるようになりました。このサービスには、介護・育児代行サービスなどの両立支援、資格取得補助や語学学習などの自己啓発、食事配達などの健康支援なども含まれ、社員のワーク・ライフ・バランスの充実をサポートしております。

 

(ウ)仕事と育児・介護 両立支援の取り組み

当社では、仕事と育児・介護両立支援のため、柔軟な働き方の推進に取り組んでおります。

(1) 制度の充実化

・看護等休暇、育児フレックスタイム勤務、産前フレックスタイムなど、育児に関する制度について対象者を広く設定

・在宅勤務とコアタイムのないフレックスタイム制を導入し、妊娠・育児・通院・介護などへの柔軟な対応と、仕事との両立を支援

制度

概要

取得対象となる社員

法定要件

当社制度

看護等休暇

子の看病や健診・入園式

などの際に利用できる休暇

小学校3年生修了の子

養育する者

小学校卒業の年度末までの子

養育する者

育児フレックスタイム制

勤務(時短含む)

出退勤時間を任意に選択して勤務することのできる制度

3歳から小学校就学前の子を養育する者

※2025年10月より

小学校卒業の年度末までの子

同居し養育する者

産前フレックスタイム制

勤務(時短含む)

本人もしくは配偶者が

妊娠した場合

 

(2) 両立支援ガイドブックの作成

両立支援についてイメージがしやすいよう、社員の声をもとにしたガイドブックを作成し公開しております。

(3) シグナリオキッズ

社員寮の一つであるシグナリオ宇都宮に企業内保育施設「シグナリオキッズ」を併設しています。事業所からも近く、仕事と子育ての両立を支援し安心して働ける環境を提供しております。

 

ⅲ.不易流行の人材マネジメント

(ア)階層別研修の実施

当社では、すべての世代が「安全と信頼」を共通の価値観として継承するため、きめ細かな階層別研修を実施しています。

(1) 若年層向け

当社では新入社員育成研修「鉄熱(てつあつ)プログラム」を導入しています。「鉄熱プログラム」とは、「鉄は熱いうちに打て」との諺にある通り、吸収力が高い新入社員時代に様々な経験を積むことを目的とした教育プログラムです。加えて、このプログラムでは、新入社員を支える体制も重要であるとの考えのもと、周囲の人材育成も同時に実施しています。

新入社員を迎える組織は「課長」がリーダーとなり、「係長」「バディ(先輩社員)」が各々の立場での役割を持って新入社員の成長をサポートし、チーム一丸の活動を行います。その活動を通じて、新入社員を取り巻く全員が人材育成に関わり、新入社員に寄り添うことにより自らも成長していくことを目指しております。2024年度では新入社員のみならず、若手社員の育成、エンゲージメント向上のための取り組み紹介、意見交換の場としての活用を行い、ディスカッションプラットフォームの場としての進化を進めております。


(2) 次世代リーダー層向け研修

次世代の管理職・リーダーの育成を目的として、幅広いものの見方・考え方を持ちながら自らの想いを明確にし、組織内もしくは顧客・取引先などさまざまなステークホルダーへ価値ある企画・提案ができるスキルを身に着けることを目指した研修を実施しております。

(3) 管理職・リーダー向け研修

管理職は、部下の育成・組織力の向上において重要な役割を担っています。2024年度は、部下の価値観や適性を理解したうえでキャリア形成の支援を行うことが出来る管理職の育成を目指して、キャリアデザイン研修を実施しました。キャリアデザイン支援での管理者の役割やキャリア面談の進め方を学び、実践力を向上させております。併せて、将来の経営人材として経営リテラシーの習得や組織リーダーとしての人間力向上を目的とした「NSサクセッションプラン(次期経営人材育成研修)」を実施しております。

 

(イ)「安全と信頼」の技術継承

交通インフラの担い手として「安全と信頼」を守り続けるために高い技術力や専門的な技能を持つ人材を継続的に育成する必要があります。将来のものづくりを担う人材を育成するための取り組みや、グローバルに成長する企業として広い視野を養うことを目的とした若手技術者の海外派遣を行っています。また、鉄道をはじめ、現地への機器設置工事において必須となる品質・安全管理などの各資格者に対して月額手当を支給し、重要な役割を果たす人材の適正な処遇と確保につなげております。

 

(ウ)自ら学ぶ文化・意識の醸成

「基本的な考え方(①人材の多様性b.戦略 参照)」にある「自律心」「挑戦心」の観点から、社員自ら学ぶ文化・意識の醸成が重要であると考えております。当社では、その機会を提供するために、通信教育講座の費用補助や公的資格取得者への手当支給などの制度を整備しています。対象となる講座や資格は、海外市場拡大に必要不可欠な英語に関するものやITに関する幅広い知識を獲得できる情報関係、難易度の高い国家資格など多岐にわたります。

 

 

c.リスク管理

採用競争力の低下や離職者の増加に伴う組織の硬直化により、企業競争力を損なうリスクがあります。

このリスクを低減させるために、給与水準の見直しを逐次行うだけでなく、広報活動の強化など採用競争力の向上に努めるとともに、従業員の外国人材や構成比の低い工学系の女性の採用を増やす等の採用活動強化や、グローバル化やDX化の進展に追随するための学び直し(リスキリング)支援や、多様性を向上させる人材の配転など、人材開発を強化しております。

また、前述の両立支援を企図した福利厚生・人事制度によって従業員を支えるほか、若年層からリーダー層、次世代の経営人材まで、自らの成長に向けてチャレンジする人材を育成し、企業価値向上に努めてまいります。加えて、良好な企業風土を保つため、長時間労働やハラスメントなどコンプライアンスに係る事案、労働災害につながるインシデント(重大事故に発展する可能性のある事象)は、代表取締役社長を委員長とする「リスク管理委員会」の議題として取り上げ、全役員・従業員で情報共有し、リスクの未然回避及び顕在化したリスクによる被害の最小化に取り組んでおります。

 

d.指標及び目標(単体)

経営戦略の実現のための人事課題を達成するため、当社では以下のKPIを設定しております。

KPI

2024年3月期

2025年3月期

目標値

目標年度

育児休業取得率

男性  92%
女性 100%

男性 90.3%
女性  100%

男性  90%以上
女性 100%

2026年3月期

女性管理職比率

3.8%

4.2

5

2026年3月期

技術職女性人数

49名

48

2020年3月期比

20%増加(50名)

2026年3月期

外国籍社員採用人数

3名

1

2

毎年

従業員一人当たり研修投資額

75,949円

86,132

90,000

毎年

 

 

②気候変動

a.ガバナンス

当社グループは、気候変動への対応をサステナビリティにおける重要な課題と位置づけています。全社環境委員会では、環境担当役員を委員長とし、各サイトのトップが参加し、年度目標や計画に基づいたマネジメントが行われています。内容や進捗状況の報告に基づいて、取締役会が監督を行っています。

気候関連の責任は、全社環境委員会及び委員長が負っております。


ⅰ.全社環境委員会、取締役会

2024年度は計3回全社環境委員会が開催されました。取締役会では、IFRS S1「サステナビリティ関連財務情報の開示に関する全般的要求事項」、S2「気候関連開示」(TCFD)に関わる開示情報、全社環境委員会で審議された重要事項が計2回報告されました。

取締役会では重要事項として、温室効果ガス排出量実績と目標、産業廃棄物マネジメントシステムの導入、第7期環境行動計画(2025年度~2027年度)、気候変動への品質の影響を考慮した戦略が報告されました。

 

 

ⅱ.気候関連のモニタリング

気候関連のモニタリングは、各部門から、サイト/関係会社の環境事務局に集約され、サイト環境事務局から環境・品質マネジメント推進部に報告されます。環境・品質マネジメント推進部は、環境・品質マネジメント推進部担当役員に報告し、特に重要な事項は取締役会で報告されます。モニタリングの指示は、報告と逆のルートで実施されます。

 

b.戦略(採用したシナリオ)

シナリオ分析の検討に際して、IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change/国連気候変動に関する政府間パネル)AR6 SSP1-1.9、及びSSP5-8.5を参照し、それぞれⅰ.2100年までの平均気温上昇が1.5℃未満に抑えられている世界(1.5℃シナリオ)、ⅱ.2100年までの平均気温上昇が4℃となる世界(4℃シナリオ)の2つのシナリオを設定しました。

ⅰ.1.5℃シナリオ

リスク

当社への影響

当社の対応

  移行リスク

サプライヤーへの炭素税、排出権取引制度の導入

・電気料金の大幅増加

・第7期環境行動計画:グリーンエネルギー調達比率80%(日本信号グループ)達成に向け、計画的にグリーン電力を確保

・温室効果ガス排出削減目標(注1)(第7期環境行動計画)達成に向け、省エネ・再エネ(エネルギー高効率機器の導入、発電設備導入等)の推進

・事業コストの増加

 (炭素税、排出権取引)

・素材(鉄・プラスチック)等の価格転嫁が進み、調達価格の上昇

・グループ会社への脱炭素政策の展開

・ハードウエアの使用を削減した商品への転換

・気候変動枠組みを含むグリーン調達ガイドラインの提示、遵守状況確認

・電気料金の高止まり

・省エネ、再エネの継続

脱炭素社会へ
調達・投資行動の
急速な変化

・環境関連設備投資の前倒しによる追加

 費用発生

・省エネと合わせた設備投資

・脱炭素・低環境負荷素材、部品しか調達できなくなることによる品質低下

・簡易梱包の義務化による輸送時のリスク

・新規部品改廃による定期的なマイナーチェンジを計画し、品質試験、製品認定を行い、常に品質・機能を守る

・「当社への納入品」と「当社からの出荷品」の両面で簡易梱包化、またはリサイクル材料を利用

長期

・環境性能における競争激化(環境負荷の大きい製品の競争力低下)

・適切な対応がとれない場合、社会的信頼、事業機会の損失

・サーキュラーエコノミー対応によるコスト増

・SBT Scope3(注2)に基づく、

 当社主要製品の環境負荷低減

・温室効果ガス排出量削減につながる商品・サービスの開発

・TCFDへの賛同とシナリオ分析、枠組みに従った情報開示

 

 (注)1.長期的温室効果ガス削減目標(SBT Scope3)は第7期環境行動計画中に提示

2.SBT:Science Based Targets パリ協定が求める温室効果ガス削減目標、Scope3は間接的排出

 

 

ⅱ.4℃シナリオ

リスク

当社への影響

当社の対応

  物理リスク

自然災害の激甚化、急激な増加

・風水害による生産拠点の被害発生

・サプライチェーンの寸断による部品供給

 停止

・猛暑による屋外作業の制限、空調コスト

 の増加

・事業継続計画(BCP)対応:生産拠点

 での災害対策、複数の生産拠点による製

 造対応、複数の調達先、輸送手段の確保

・自家発電、蓄電能力の確保

・屋外作業環境改善

 (屋根、スポット空調等)

・顧客の被害による新規設備投資の減少

・災害対策コストの上昇による新規インフラ

 整備箇所の縮小

・災害に強い製品の開発(耐水等)

・MaaS等、既存インフラ設備を活用した

 最適な移動の提案

・災害の影響を受けやすい地域の変化による

 既存インフラの稼働率低下

・低コストで維持できるシステムの提案

温暖化による品質への影響

中期

・高温による屋外保管品の品質劣化(屋内保管への切り替えによるコスト増加)

・設計条件を超える環境になった場合の劣化の早期化

・適切な保管環境の確保、長期保管品の削減

・冠水リスクがある商品の耐水機能の標準装備、緊急出荷に応じた予備品の確保、入念な温度試験

感染症の地域的流行

・部品を含む生産工場の稼働率低下

・部品供給の寸断による生産縮小

・生産プロセスの自動化、商談のIT化

・部品、製品在庫の確保

・公共(乗合)交通の優位性低下による新規

 設備投資の減少

・感染症対策製品の開発

(検温、トレーサビリティ等)

 

 

ⅲ.機会

機会

当社への影響

当社の対応

顧客の脱炭素化を
支援する商品・
ソリューションの
販売拡大

・省エネ製品の注文増

・既存製品の省電力化設計

・長期

・脱炭素化を目的とした既存製品の置き換

  え注文増

・脱炭素化ソリューションの提案要望増加

・設計改善、商材変更による脱炭素化計画

 (製品の廃止を含む)

・温室効果ガス排出量削減につながる

 ソリューション

顧客のインフラ強靭化を支援する

商品・ソリューションの販売拡大

・停電時電源確保、浸水対策製品注文増

・太陽光発電、蓄電池つき製品の開発

・耐水型屋外製品の開発

・顧客のインフラ強靭化工事に伴う既存

 製品の置き換え注文増

・災害復旧迅速化ソリューションの提案

 要望増加

・災害時に機能を維持する製品の開発

・災害復旧の迅速化に貢献する製品の開発

 感染症対策
(ニューノーマル)につながるソリューションの販売拡大

・窓口、券売機以外での予約、決済利用

 の増加

・モバイル予約、決済に対応する改札の

 拡販

・混雑情報把握、人流平準化ソリューショ

 ンの提案要望増加

・現場作業の無人化ソリューションの提案

 要望増加

・人流把握、混雑予測等ソリューションの

 開発、提案

・遠隔監視、操作ソリューションの開発、

 提案

新規事業の
創出・展開

・災害検知ソリューションの提案要望増加

・インフラにおける災害発生を検知する

 技術の開発計画

 

 

 

ⅳ.シナリオ分析による影響の検討結果

(ア)製品・サービス

・ライフサイクルにおける温室効果ガス削減のため、ハードウエアの使用を削減した商品の開発を進めます。これには、機器の集約化、ケーブルレス(無線化)、汎用端末を使用した決済対応等が含まれます。

・異常気象による災害増加に対応するため、災害に強い製品の開発を進めます。これには、耐水型製品、停電時対応を考慮したバッテリー・発電装置付き製品等が含まれます。

 

(イ)サプライチェーン/バリューチェーン

・異常気象による災害により、部品製造工場の被災、物流の寸断に備え、複数の調達先、輸送手段を確保します。これには、複数の調達先を確保できる部品を用いた設計・開発が含まれます。

・災害時に社会インフラを維持し、迅速な復旧に貢献する製品・システムの開発を進めます。

 

(ウ)研究開発関連投資

中期経営計画「Realize-EV100」において、研究開発に210億円規模の投資が計画・実行されています。脱炭素社会を実現するための課題を解決する、CBM、自動運転、キャッシュレス決済、MaaS、ロボット分野などへ注力します。これらは、いずれも限りあるヒト・モノを効率的に配置することで温室効果ガス削減に貢献します。

 

c.リスク管理

ⅰ.気候関連リスクのマネジメントプロセス

日本信号グループでは、気候関連の以下のリスクに関して、選別・評価・管理し、全社環境委員会で妥当性を審議し、取締役会に報告しております。

・移行リスク(政策規制、市場、技術、利用者の行動変化)

・物理的リスク(自然災害、感染症、気温上昇)

 

ⅱ.気候関連のリスクマネジメント評価プロセス

1.5℃シナリオ、4℃シナリオのリスクに対して、短期・中期・長期について、通常の他のリスクと同じように、発生確率×被害の大きさで重大度を判断し、それに合わせて対応の緊急性を判断いたします。

 

ⅲ.気候関連のリスクを軽減、移転、受入または制御する意思決定プロセス

全社環境委員会(特に重要な事項は取締役会)で意思決定が行われた後、日本信号グループの各サイトに指示されます。各サイトの環境委員が中心となり、各サイトで具体的な意思決定が行われます。サイト間の調整、及び各サイトの意思決定の報告は、環境事務局会議(環境・品質マネジメント推進部が事務局)で行われます。 各サイトの意思決定の結果は環境委員から各部門に周知されます。

 

 

d.指標及び目標(ライフサイクルCO2排出量)

日本信号グループは、SBTのScope1~3に則り、温室効果ガス削減に取り組みます。特に、Scope3については、カテゴリ別の排出量測定を行い、特に自社製品の使用と廃棄に関する温室効果ガスの削減を、設計の上流から活動として取り組みます。具体的には、製品ライフサイクル全体で、政府目標である2030年温室効果ガス46%削減(2013年比)、2050年カーボンニュートラルに取り組みます。

単位:t

2022年度

2023年度

2024年度

2027年度

(中間目標)

2030年度

(目標)

削減方策

Scope1

683(単)※1

1,094(グ)772(単)

983(グ)

651(単)

600

(▲383)

300

(▲683)

電気自動車、低燃費車の活用

Scope2

1,665(単)

1,050(グ)115(単)

911(グ)

50(単)

200

(▲711)

0

(▲911)

グリーン電力への切替

Scope3

188,499

230,214

266,544

159,200

(▲107,344)

120,400

(▲146,144)

製品使用時のCO排出量削減、原材料削減

カテゴリ1

83,894

123,259

147,337

75,000

(▲72,337)

61,500

(▲85,837)

省資源化、グリーン調達※2

カテゴリ2

3,036

3,247

3,140

2,900

(▲240)

2,500

(▲640)

グリーン調達

カテゴリ4

1,715

1,355

1,577

1,200

(▲377)

1,000

(▲577)

輸送効率化、エコカー導入

カテゴリ5

457

362

370

400

(目標達成)

400

(目標達成)

 

カテゴリ6

未算出

350

344

320

(▲24)

300

(▲44)

オンライン会議の利用

カテゴリ7

647

663

650

550

(▲100)

500

(▲150)

エコ運転、公共交通の利用

カテゴリ11

56,129

59,665

71,280

45,000

(▲26,280)

25,500

(▲45,780)

CBTC、省電力・省資源化

カテゴリ12

25,621

30,834

29,985

25,000

(▲4,985)

20,200

(▲9,785)

省資源化

カテゴリ13

未算出

479

1,861

500

(▲1,361)

500

(▲1,361)

 

その他

17,000

10,000

10,000

8,330

(▲1,670)

8,000

(▲2,000)

業務活動効率化

合計

190,847

232,358

268,438

160,000

(▲108,438)

120,700

(▲147,738)

2013年度比50%減

 

※1(単)=単体、(グ)=グループ。グループの排出量には、日本信号㈱、山形日信電子㈱、日信特器㈱、

栃木日信㈱、日信工業㈱、朝日電気㈱、日信電子サービス㈱の排出量が含まれています。

※2カテゴリ1は、排出量の多くの割合を占めていますが、原材料の購入高に排出原単位を掛けた値で算出しているため、自社および調達先の排出量削減活動が反映されない問題があります。これは、算出方法を変更した上で排出量削減活動を行う予定です。

 

 

3 【事業等のリスク】

当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性のあるリスクとしては、主に以下のようなものがあります。但し、全てのリスクを網羅しているわけではなく、現時点では予見できないリスクや重要と評価されていないリスクについても、将来影響を受ける可能性がないか注視しております。

文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

 (1)経済、市場に基づくリスク
 当社グループは、交通インフラに関わるシステムやサービスの提供を当社の基幹事業としております。その主要顧客である国内鉄道各事業者の設備投資や、警察等の公共投資の影響を強く受ける分野であります。
 そのため、感染症や災害等により人や貨物の輸送量が減少し、運輸収入に大きな影響が生じた場合、国内鉄道事業者の設備投資や公共事業投資が減少して市場規模が縮小し、当社グループの経営成績に重大な影響を与える可能性があります。

 また、主要顧客の設備投資及び公共投資が当社の需要の中心となっているため、当社グループの売上の比重は期末に高くなる傾向があります。

 

(2)製品の特性に基づくリスク
 当社グループで製造・販売している鉄道信号や交通信号システム、駅務自動化システム関連の製品は、重要な社会インフラである「交通」を支えております。また、実証実験に参画している鉄道と自動車の自動運転に係る新技術なども含め、極めて高い安全性が求められます。そのため、故障・誤動作等の障害が発生した場合、深刻な公共交通のマヒあるいは利用者の人命や財産に関わる安全を損なう事態を招く恐れがあり、各関係者の被害に関する損害の賠償請求を受け、当社グループの経営成績に悪影響を与える可能性があります。
 当社グループが何よりも優先すべきことは「安全と信頼」であり、これを頑なに守り続けることが必要であります。そうしたことから、グループ理念に掲げる安全への想いを未来に継承していく拠り所として、安全信頼創造センターを設立し、安全理論の研究、蓄積や社員の安全教育を実施しております。

 

(3)競合、取引先に関するリスク
 主要顧客である国内鉄道各事業者や、警察等の官公庁からの発注は一般競争入札に基づいており、参入業者間の競合による価格競争の激化は、当社グループの経営成績に悪影響を与える可能性があります。
 海外事業についても同様であり、特に欧州企業や中国企業との価格競争の激化は、当社グループの経営成績に悪影響を与える可能性があります。

   また、半導体等をはじめとする原材料や部品等の大幅な不足や価格の高騰が生じた場合、当社グループの業績及び財務状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)災害に対するリスク
 当社グループは、主力生産事業所を埼玉・栃木の二県に集中して展開しております。これらの事業所及び本社を含む首都圏において、大規模地震や台風・豪雨・洪水等の自然災害による生産設備への被害、製品輸送、製品保管中の事故等、不測の事態が発生した場合、操業停止を含め、当社グループの生産能力が著しく低下する可能性があります。
 このような大規模災害が発生した場合に指揮命令系統を早期に確立するための事業継続計画(BCP)を制定し、従業員の安否確認システムを利用した訓練をしております。
 また、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大を契機に自然災害・新型感染症対応規程の見直しを図り、国際事業の拡大やテレワークなど新しい働き方の運用を踏まえて、社員の安全確保と事業の継続について定めております。

 

 

(5)海外展開に関するリスク
 当社グループは、アジアを中心に積極的な海外展開を図っております。そのため各国の経済・市場の動向に関するリスクだけではなく、政治的リスクや気候変動リスクにより、事業開発の遅れが生じるリスクがあります。

   また、テロ・紛争・戦争、感染症等のリスクがあり、社員の安全確保のため、営業拠点からの退避や事業そのものからの撤退を余儀なくされる恐れもあります。また、これらの事象により為替相場が変動し、当社グループの経営成績に悪影響を与える可能性があります。

 

(6)新規事業に関するリスク
 当社グループは、既存事業特有のリスク低減を目指し、より安定した強固な企業基盤を確立すべく、既存事業の海外展開や、MaaS、自動運転、ロボティクスといった新分野の技術開発に積極的に取り組み、新市場の開拓を目指しております。
 しかしながら、参入を検討している新市場規模が縮小した場合、又は技術開発の遅れにより、新事業から撤退等の事態に陥った場合、新たな成長ドライバーを獲得するまで、依然としてこれらのリスクが残存することになります。

 

(7)情報システムセキュリティリスク
 当社グループは、事業上の重要情報や、事業の遂行過程で得た取引先等の機密情報を有しております。当該情報の盗難・紛失等を防ぐため、情報取扱管理規程の整備、情報システムのセキュリティ強化、社員に対するITセキュリティ教育を実施しております。
 しかし、不測の事態によって、機密情報の漏洩や想定を超えるサイバー攻撃を受けることで、データの破壊、改ざん、流出、システム障害等を引き起こす可能性があり、その結果、当社グループの経営成績に悪影響を与える可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況
a.経営成績

当連結会計年度における世界経済は、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化や中東情勢の緊迫化による地政学リスクに加えて米国の関税政策等に対する各国の反応など、先行きを注視すべき状況が続いております。

国内経済においては、賃金の上昇と定額減税による個人消費の増加や、インバウンド消費等を背景にした景気の緩やかな回復が見込まれる一方で、上記の関税政策の影響など、今後の不透明な経済動向が懸念されております。

このような状況の中、当社グループは、2024年度に2028年度を最終ゴールとする中期経営計画「Realize-EV

100」をスタートいたしました。2年目にあたる2025年度では、DX技術を活用した新商材の販売拡大と新たなビジネスモデルの構築、オペレーション&メンテナンスビジネスの拡大を進めるとともに、当社グループ全体でものづくりの更なる生産性向上に取り組みます。

また、グループ会社再編も進めており、その一環として、2025年4月1日に日信ITコネクト株式会社(旧:日信ITフィールドサービス株式会社)が当社子会社としての事業活動を開始いたしました。同社は、当社のDX商材に必要なITインフラの構築と運営・管理を一元化する役割を担います。
さらに、投資家・株価を意識したIR・SR活動や人的資本経営の推進等、サステナブルな成長を目指しております。

当連結会計年度の経営成績といたしましては、受注高は100,453百万円(前期比27.5%減)、売上高は106,859百万円(前期比8.4%増)となりました。損益面につきましては、新紙幣対応及び鉄道事業者の業績改善に伴う安全設備への投資増などに伴い、営業利益は9,906百万円(前期比45.2%増)、経常利益は10,789百万円(前期比36.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は8,503百万円(前期比59.1%増)となりました。

 

なお、当連結会計年度における各セグメントの概況は、以下のとおりであります。 

〔交通運輸インフラ事業〕

「鉄道信号」では、国内市場においては、鉄道事業者向けに列車集中制御装置、連動装置等の信号保安装置、案内表示設備等の受注・売上がありました。地上設備をスリム化した地方鉄道向けの無線式列車制御システムや、鉄道設備状態をクラウドネットワークで収集・蓄積・分析する「Traio」など、メンテナンスの省力化や検査効率の向上に資する製品開発と全国展開により、今後も引き続き安全で快適な移動の実現に貢献してまいります。

海外市場においては、インドネシア、台湾、韓国等で鉄道信号システムの受注・売上がありました。これまでの導入実績をもとに、アジア諸国におけるインフラ整備の需要に応え、快適で安全な街づくりに貢献してまいります。

道路交通安全システムを中心とする「スマートモビリティ」では、交通管制センター向けのシステムや交通信号灯器等の受注・売上がありました。また、自動運転実証実験の各種プロジェクトにも積極的に参画し、自動運転車両と道路の信号機や路側センサを連携した「インフラ協調」を支える製品、技術のプロバイダとなることを目指しております。

海外市場においては、急激な都市部への人口流入による慢性的な交通渋滞の解決が求められている東アフリカ市場の開拓を目指し、営業所を新設したウガンダで交通信号の受注・売上がありました。

結果といたしましては、受注高は51,033百万円(前期比38.5%減)、売上高は56,570百万円(前期比4.9%増)となりました。また、損益面につきましては、セグメント利益は4,547百万円(前期比26.8%減)となりました。

 

 

〔ICTソリューション事業〕

駅務ネットワークシステムを中心とする「AFC」では、国内市場においては、各種ホームドアや改札機、そして新札対応による改造・更新需要があった券売機や駐車場機器等の受注・売上がありました。

これから全国各地で導入が見込まれるクレジットカードやデビットカード等のタッチ決済及びQRコード認証を用いた新しいキャッシュレス乗車サービスについても実証実験に積極的に取り組んでおり、2025年4月の大阪・関西万博開催にあわせて開業した夢洲駅などで運用が開始されました。

海外市場においては、バングラデシュやベトナム、インド、エジプト等でAFCシステムやホームドア等の受注・売上がありました。

ロボティクス及びセンシングを中心とする「R&S」では、ホームドア用の3D距離画像センサやX線手荷物検査装置、多機能鉄道重機、警備ロボット等の受注・売上がありました。当社はフェールセーフの基本思想のもと、これまでに培ったセンサ、画像分析等のコア技術に最新のロボティクス技術を融合させ、人とロボットが協働する未来社会の実現に向けた取り組みを推進しております。

結果といたしましては、受注高は49,420百万円(前期比11.1%減)、売上高は50,288百万円(前期比12.8%増)となりました。また、損益面につきましては、セグメント利益は8,950百万円(前期比124.2%増)となりました。

 

b.財政状態

当連結会計年度末における総資産は、契約資産の減少5,160百万円、棚卸資産の減少1,569百万円等がありましたものの、売掛金の増加6,728百万円、有形固定資産の増加1,608百万円等により、前連結会計年度末に比べ945百万円増加の166,240百万円となりました。

負債は、契約負債の減少2,623百万円、支払手形及び買掛金の減少1,653百万円等により、前連結会計年度末に比べ4,856百万円減少の63,616百万円となりました。

純資産は、利益剰余金の配当による減少2,120百万円等がありましたものの、親会社株主に帰属する当期純利益8,503百万円の計上等により、前連結会計年度末に比べ5,801百万円増加の102,623百万円となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は11,248百万円となり、前連結会計年度末に比べ512百万円の減少となりました。
 各キャッシュ・フローの状況につきましては、次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、契約負債の減少△2,623百万円、仕入債務の減少△2,310百万円、売上債権の増加△1,530百万円等がありましたものの、税金等調整前当期純利益11,674百万円の計上等により、5,783百万円の資金の増加(前年同期は6,771百万円の資金の増加)となりました。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、投資有価証券の売却による収入547百万円等がありましたものの、有形・無形固定資産の取得による支出△4,881百万円等により、4,498百万円の資金の減少(前年同期は2,982百万円の資金の減少)となりました。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入れによる資金の増加500百万円等がありましたものの、配当金の支払による支出△2,117百万円等により、1,598百万円の資金の減少(前年同期は338百万円の資金の減少)となりました。

 

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

交通運輸インフラ事業

57,424

105.8

ICTソリューション事業

50,228

112.0

合計

107,653

108.6

 

(注) 上記金額は販売価格によっております。

 

b.受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高

受注残高

金額(百万円)

前年同期比
(%)

金額(百万円)

前年同期比
(%)

交通運輸インフラ事業

51,033

61.5

78,616

93.4

ICTソリューション事業

49,420

88.9

26,200

96.8

合計

100,453

72.5

104,816

94.2

 

(注) 上記金額は販売価格によっております。

 

c.販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

交通運輸インフラ事業

56,570

104.9

ICTソリューション事業

50,288

112.8

合計

106,859

108.4

 

(注) 上記金額は販売価格によっております。

 

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

①経営成績等の分析

当連結会計年度は、長期経営計画「Vision-2028 EVOLUTION 100」で掲げるビジネス転換や、事業ドメイン、人材・組織、技術開発などに関する戦略に取り組んだ6年目となりました。
 売上高については、交通運輸インフラ事業の鉄道信号の国内外の需要、ICTソリューション事業の国内AFCにおける新紙幣対応のための改造・更新需要等により106,859百万円(前期比8.4%増)となりました。

損益面については、営業利益9,906百万円(前期比45.2%増)、経常利益10,789百万円(前期比36.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益8,503百万円(前期比59.1%増)となりました。

 

②資本の財源及び資金の流動性についての分析

当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、現在、運転資金及び設備投資資金は、内部資金又は借入により資金を調達しております。このうち借入による資金調達については、運転資金は期限が1年以内の短期借入金により調達しております。

当社グループは、その健全な財政状態、営業活動によりキャッシュ・フローを生み出す能力により、当社グループの成長を維持するために将来必要な運転資金及び設備資金を調達することが可能であると考えております。

 

③経営方針・経営戦略、経営上の達成状況を判断するための客観的な指標等

長期経営計画「Vision-2028 EVOLUTION 100」をより具体的な取り組み・施策に展開した、第3期中期経営計画「Realize-EV100」初年度の経営上の目標値といたしましては、売上高1,000億円、営業利益率8.0%、並びにROE5.8%としておりました。

当期における当社グループの経営成績は、売上高1,068億円、営業利益率9.3%、並びにRОE8.5%となりました。

 

④重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

5 【重要な契約等】

該当事項はありません。

 

 

6 【研究開発活動】

当連結会計年度の研究開発活動については、各事業部門において、事業拡大のための次世代商品開発(自動・省エネ運転、オペレーション&メンテナンス、ロボット、セキュリティ機器、センシング機器等)を行っております。
 また、当社研究開発室において、産学連携を含め中長期的な視点に立った事業拡大及び基盤技術強化のための研究開発(センシング技術、無線&ネットワーク技術、AI・画像解析技術等)を行っております。

 

セグメント別の主な研究開発活動は次のとおりであります。

[交通運輸インフラ事業]

   ・賢い列車制御システム(省エネ化)

   ・スマートなオペレーション&メンテナンス(Traio/CBMシステム)

・くるLinkシステム

研究開発費の金額は1,744百万円であります。

 

[ICTソリューション事業]

・NS-MaaSプラットフォーム(iDONEO)

・駅総合遠隔監視システム

・多機能鉄道重機ロボット

研究開発費の金額は1,508百万円であります。