第2【事業の状況】

1【業績等の概要】

(1)業績

当連結会計年度における世界経済は、米国では景気回復基調の下でゼロ金利政策が解除される一方で、中東・欧州における地政学的リスクの増大、中国における経済成長の減速、原油価格の下落等、不透明な状況が継続しました。国内においては、マイナス金利の導入も含めた金融・財政政策による景気刺激策が継続されましたが、中国経済減速などの海外リスクの高まりや、第四半期における為替市場の急激な変動等により、景気の先行きに対する懸念が強まっています。

情報通信ネットワークの分野においては、モバイル・ブロードバンド・サービスの普及により、ネットワークのデータ通信量は増加の一途を辿っております。これに対応するため、LTE(Long Term Evolution)及びLTEを更に拡張したLTE-Advancedの普及が本格化しており、規格適合試験やオペレータの受入試験、携帯端末の総合的な送受信性能試験などの開発需要が継続しております。更に次世代の第5世代(5G)通信方式の標準化に向けた動きや、IoTInternet of Things)を活用した新たなサービス・アプリケーションの開発が幅広い業界で進められております。

このように当社グループを取り巻く事業環境は中長期の成長トレンドにありますが、足元のモバイル関連市場において、スマートフォンのコモディティ化が進むとともに、一部新興国では成長が見込まれるものの、全体として成長鈍化が顕著となっています。その結果、一部のチップ・端末の大手ベンダーがリストラを発表・実施する等、顧客の収益状況は一様でなく、投資意欲にも温度差が見られます。

このような環境のもと、当社グループは、新製品の開発を軸に戦略投資を行い、提供するソリューションの競争力を高め、事業拡大の基盤整備に取り組みました。

当連結会計年度は、PQA(プロダクツ・クオリティ・アシュアランス)事業が国内コンビニ市場を中心に受注・売上を拡大させましたが、計測事業において、データ通信量増大に対応したコアメトロネットワーク関連での光モジュール開発・製造関連の計測需要が堅調に推移したものの、アジアにおけるスマートフォン製造用計測器市場の縮小や主要プレーヤーの投資抑制、及び北米市場における基地局建設需要減の結果、計測事業全体として前連結会計年度比減収減益となりました。この結果、受注高は945億89百万円(前連結会計年度比6.4%減)、売上収益は955億32百万円(前連結会計年度比3.3%減)となり、営業利益は58億97百万円(前連結会計年度比45.8%減)、税引前利益は54億34百万円(前連結会計年度比53.1%減)、当期利益は37億67百万円(前連結会計年度比52.2%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益は37億60百万円(前連結会計年度比52.1%減)となりました。

 

各セグメント別の業績は以下のとおりです。なお、各セグメント別の売上収益は外部顧客に対する売上収益を記載しています。

1) 計測事業

当事業は、通信事業者、関連機器メーカー、保守工事業者へ納入する、多機種にわたる通信用及び汎用計測器、測定システム、サービス・アシュアランスの開発、製造、販売を行っています。

当連結会計年度は、光デジタル関連計測器の需要がアジアで堅調であったものの、モバイル市場において顧客の事業撤退や投資抑制が継続し、また、北米キャリアによるLTEネットワーク建設をはじめとしたインフラへの設備投資の抑制も続き、全体として前連結会計年度を下回る売上収益となりました。この状況に対処するため組織のスリム化にも取り組み、海外子会社においてリストラ費用を計上しました。

この結果、売上収益は67729百万円(前連結会計年度比7.8%減)、営業利益は47億6百万円(前連結会計年度比47.4%減)となりました。

2) PQA事業

当事業は、高精度かつ高速の各種自動重量選別機、自動電子計量機、異物検出機などの食品・医薬品・化粧品産業向けの生産管理・品質保証システム等の開発、製造、販売を行っています。

当連結会計年度は、国内・国外市場ともに堅調に推移し、とりわけ国内においてコンビニ市場中心に新製品が設備更改需要を捉え、大きく伸長しました。また、グローバル競争力の強化に向けて、研究開発投資と販売促進活動に積極的に取り組みました。

この結果、売上収益は18891百万円(前連結会計年度比16.6%増)、営業利益は1194百万円(前連結会計年度比45.0%増)となりました。

3) その他の事業

その他の事業は、情報通信事業、デバイス事業、物流、厚生サービス、不動産賃貸等からなっております。

当連結会計年度の売上収益は89億10百万円(前連結会計年度比3.1%減)、営業利益は5億75百万円(前連結会計年度比70.7%減)となりました。前連結会計年度と比較して利益が減少している主な要因は、前連結会計年度において減損損失の戻入れを認識したためです。

(2)キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ2475百万円増加して37391百万円となりました。

なお、営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合わせたフリー・キャッシュ・フローは、11億53百万円のプラス(前連結会計年度は15億33百万円のプラス)となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。

1) 営業活動によるキャッシュ・フロー

営業活動の結果得られた資金は、純額で10195百万円(前連結会計年度は7582百万円の獲得)となりました。これは、税引前利益の計上及び営業債権及びその他の債権の減少により資金が増加した一方、法人所得税の支払により資金が減少したことが主な要因です。

なお、減価償却費及び償却費は39億69百万円(前連結会計年度比5億98百万円増)となりました。

2) 投資活動によるキャッシュ・フロー

投資活動の結果使用した資金は、純額で90億42百万円(前連結会計年度は60億49百万円の使用)となりました。これは、グローバル本社棟の建設を含む有形固定資産の取得による支出が主な要因です。

3) 財務活動によるキャッシュ・フロー

財務活動の結果獲得した資金は、純額で2450百万円(前連結会計年度は11234百万円の使用)となりました。これは、社債の発行による収入80億円及び長期借入れによる収入30億円により資金が増加した一方、長期借入金の返済による支出50億円及び配当金の支払3296百万円(前連結会計年度の配当金支払額は3152百万円)により資金が減少したことが主な要因です。

 

(3)IFRSにより作成した連結財務諸表における主要な項目と連結財務諸表規則(第7章及び第8章を除く。)により作成した場合の連結財務諸表におけるこれらに相当する項目との差異に関する事項

前連結会計年度

(自 2014年4月1日

至 2015年3月31日)

当連結会計年度

(自 2015年4月1日

至 2016年3月31日)

(減損損失の戻入れ)

日本基準においては減損損失の戻入れは認められておりませんが、IFRSにおいては減損損失の戻入れが要求されており、当該要件を満たすことから有形固定資産について減損損失の戻入れを行っております。

この結果、連結財政状態計算書の「有形固定資産」が573百万円増加しております。また、連結純損益及びその他の包括利益計算書の「その他の収益」が573百万円増加しております。

 

(開発費の資産計上)

日本基準において費用処理している一部の開発費用について、IFRSにおいては資産計上の要件を満たすことから「のれん及び無形資産」に計上しております。

この結果、連結財政状態計算書の「のれん及び無形資産」が829百万円増加しております。また、連結純損益及びその他の包括利益計算書の「売上原価」が252百万円増加し、「研究開発費」が426百万円減少しております。

 

(非上場株式の公正価値評価)

日本基準においては時価のない有価証券(非上場株式)は移動平均法による原価法により計上し減損を行っておりますが、IFRSにおいては公正価値を見積り、取得価額との差額をその他の資本の構成要素として遡及的に認識しております。

この結果、連結財政状態計算書の「その他の金融資産」(非流動資産)が1,186百万円増加しております。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(開発費の資産計上)

日本基準において費用処理している一部の開発費用について、IFRSにおいては資産計上の要件を満たすことから「のれん及び無形資産」に計上しております。

この結果、連結財政状態計算書の「のれん及び無形資産」が953百万円増加しております。また、連結純損益及びその他の包括利益計算書の「売上原価」が233百万円増加し、「研究開発費」が352百万円減少しております。

 

(非上場株式の公正価値評価)

日本基準においては時価のない有価証券(非上場株式)は移動平均法による原価法により計上し減損を行っておりますが、IFRSにおいては公正価値を見積り、取得価額との差額をその他の資本の構成要素として遡及的に認識しております。

この結果、連結財政状態計算書の「その他の金融資産」(非流動資産)が1,135百万円増加しております。

 

 

前連結会計年度

(自 2014年4月1日

至 2015年3月31日)

当連結会計年度

(自 2015年4月1日

至 2016年3月31日)

(退職後給付債務に関する会計処理の差異)

日本基準においては、退職給付債務から年金資産の額を控除した額及び未認識数理計算上の差異を退職給付に係る負債に計上しておりますが、IFRSにおいては確定給付制度の再測定に伴う調整額を発生時にその他の包括利益で認識する方法を選択しております。また、日本基準においては一部の子会社において小規模企業の簡便的な退職給付債務の計算を採用しておりますが、IFRSにおいては原則に従って計算しております。

これらの結果、日本基準の連結財政状態計算書において計上されている「退職給付に係る調整累計額」(その他の包括利益累計額)△2,165百万円が取り消されております。また、連結純損益及びその他の包括利益計算書の「売上原価」が521百万円、「販売費及び一般管理費」が741百万円、「研究開発費」が190百万円減少し、その他の包括利益の「確定給付制度の再測定」が1,338百万円計上されております。

 

(有給休暇及び特別休暇等の債務計上)

IFRSにおいて、当社及び一部の子会社の有給休暇及び一定の勤務年数を条件として付与される特別休暇や報奨金の見積額を債務として計上していることから、連結財政状態計算書の「従業員給付」(流動負債)が157百万円、「従業員給付」(非流動負債)が918百万円増加しております。

 

(繰延税金資産及び繰延税金負債における一時差異及び回収可能性検討の差異)

IFRSにおいて、従業員給付等の連結財政状態計算書上の他の項目の調整に伴う一時差異が発生したこと及び繰延税金資産の回収可能性に関して将来減算一時差異を利用できる課税所得が生じる可能性をIFRSに基づき検討した結果、連結財政状態計算書の「繰延税金資産」が123百万円増加し、「繰延税金負債」が18百万円減少しております。また、連結純損益及びその他の包括利益計算書の「法人所得税費用」が825百万円増加しております。

 

(政府補助金に関する会計処理の差異)

資産に対する政府補助金について、日本基準では対象資産の取得価額から減額する圧縮記帳を行っておりますが、IFRSでは当該政府補助金を繰延収益として計上し、資産の耐用年数にわたって規則的に純損益に認識する方法によっております。

この結果、連結財政状態計算書の「有形固定資産」が1,381百万円、「その他の流動負債」が87百万円、「その他の非流動負債」が1,322百万円、それぞれ増加しております。また、連結純損益及びその他の包括利益計算書の「売上原価」が30百万円、「販売費及び一般管理費」が30百万円、「研究開発費」が9百万円、「その他の収益」が80百万円それぞれ増加しております。

(退職後給付債務に関する会計処理の差異)

日本基準においては、退職給付債務から年金資産の額を控除した額及び未認識数理計算上の差異を退職給付に係る負債に計上しておりますが、IFRSにおいては確定給付制度の再測定に伴う調整額を発生時にその他の包括利益で認識する方法を選択しております。また、日本基準においては一部の子会社において小規模企業の簡便的な退職給付債務の計算を採用しておりますが、IFRSにおいては原則に従って計算しております。

これらの結果、日本基準の連結財政状態計算書において計上されている「退職給付に係る調整累計額」(その他の包括利益累計額)△3,100百万円が取り消されております。また、連結純損益及びその他の包括利益計算書の「売上原価」が417百万円、「販売費及び一般管理費」が428百万円、「研究開発費」が118百万円減少し、その他の包括利益の「確定給付制度の再測定」が1,556百万円計上されております。

 

(有給休暇及び特別休暇等の債務計上)

IFRSにおいて、当社及び一部の子会社の有給休暇及び一定の勤務年数を条件として付与される特別休暇や報奨金の見積額を債務として計上していることから、連結財政状態計算書の「従業員給付」(流動負債)が192百万円、「従業員給付」(非流動負債)が901百万円増加しております。

 

(繰延税金資産及び繰延税金負債における一時差異及び回収可能性検討の差異)

IFRSにおいて、従業員給付等の連結財政状態計算書上の他の項目の調整に伴う一時差異が発生したこと及び繰延税金資産の回収可能性に関して将来減算一時差異を利用できる課税所得が生じる可能性をIFRSに基づき検討した結果、連結財政状態計算書の「繰延税金資産」が217百万円増加しております。また、連結純損益及びその他の包括利益計算書の「法人所得税費用」が287百万円増加しております。

 

(政府補助金に関する会計処理の差異)

資産に対する政府補助金について、日本基準では対象資産の取得価額から減額する圧縮記帳を行っておりますが、IFRSでは当該政府補助金を繰延収益として計上し、資産の耐用年数にわたって規則的に純損益に認識する方法によっております。

この結果、連結財政状態計算書の「有形固定資産」が1,303百万円、「その他の流動負債」が88百万円、「その他の非流動負債」が1,244百万円、それぞれ増加しております。また、連結純損益及びその他の包括利益計算書の「売上原価」が39百万円、「販売費及び一般管理費」が26百万円、「研究開発費」が11百万円、「その他の収益」が87百万円それぞれ増加しております。

 

 

前連結会計年度

(自 2014年4月1日

至 2015年3月31日)

当連結会計年度

(自 2015年4月1日

至 2016年3月31日)

(IFRS移行時の累積換算差額)

IFRSでは、IFRS初度適用における免除規定を適用し、日本基準においてその他の包括利益累計額に含めて表示しているIFRS移行時の在外営業活動体の累積換算差額△7,207百万円をゼロとみなし、連結財政状態計算書の「利益剰余金」に計上しております。

 

(資産計上された開発費に関連する支出)

日本基準において開発費に関連する支出は営業活動によるキャッシュ・フローに区分しておりますが、IFRSにおいては、資産計上された開発費に関連する支出は投資活動によるキャッシュ・フローに区分されることから、投資活動によるキャッシュ・フローが426百万円減少し、営業活動によるキャッシュ・フローが同額増加しております。

同左

 

 

 

 

 

 

(資産計上された開発費に関連する支出)

日本基準において開発費に関連する支出は営業活動によるキャッシュ・フローに区分しておりますが、IFRSにおいては、資産計上された開発費に関連する支出は投資活動によるキャッシュ・フローに区分されることから、投資活動によるキャッシュ・フローが352百万円減少し、営業活動によるキャッシュ・フローが同額増加しております。

 

 

2【生産、受注及び販売の状況】

(1)生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2015年4月1日

至 2016年3月31日)

前年同期比(%)

計測(百万円)

64,295

84.6

PQA (百万円)

19,366

119.5

報告セグメント計

83,661

90.8

その他(百万円)

8,578

88.8

合計(百万円)

92,240

90.6

 (注1)金額は販売価格によっております。

 (注2)上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

(2)受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2015年4月1日

至 2016年3月31日)

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

計測

66,943

89.8

13,787

88.9

PQA

19,114

111.9

3,181

106.7

報告セグメント計

86,057

93.9

16,969

91.8

その他

8,531

90.0

841

70.4

合計

94,589

93.6

17,810

90.5

 (注1)上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

(3)販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2015年4月1日

至 2016年3月31日)

前年同期比(%)

計測(百万円)

67,729

92.2

PQA (百万円)

18,891

116.6

報告セグメント計

86,621

96.6

その他(百万円)

8,910

96.9

合計(百万円)

95,532

96.7

 (注1)上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 (注2)主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、その割合が100分の10以上に該当する相手先がないため記載を省略しております。

 

3【対処すべき課題】

今後の見通しにつきましては、世界経済は米国においては回復傾向で推移すると思われますが、中国経済の動向や、中東などにおける地政学的リスクの増大、日本・欧州におけるマイナス金利政策によるマーケットの混乱など、不安定な要素が増大し予断を許さない状況です。また、技術革新、市場環境や競争関係の変化、金融情勢の動向に常に的確に対応する必要があります。

当社グループは、このような市場環境を踏まえ、以下の経営理念・経営ビジョン・経営方針のもと、中長期的な企業価値の向上に向けて必要な施策を展開してまいります。

 

①経営理念・経営ビジョン・経営方針

当社は、様々なステークホルダーに対する責任と対話を重視し、以下のとおり経営理念・経営ビジョン・経営方針を策定しています。

経営理念

誠と和と意欲をもって、“オリジナル&ハイレベル”な商品とサービスを提供し、安全・安心で豊かなグローバル社会の発展に貢献する

経営ビジョン

衆知を集めたイノベーションで“利益ある持続的成長”を実現する

 

経営方針

1.衆知を集めた全員経営でハツラツとした組織へ

2.イノベーションで成長ドライバーの獲得

3.グローバル市場でマーケット・リーダーになる

4.良き企業市民として人と地球にやさしい社会づくりに貢献

 

②中長期的な経営戦略

当社グループは、主力の計測事業を軸にICT(Information and Communication Technology)サービスに関わるビジネスを展開しております。ICT分野における成長ドライバーは、世界的なモバイル・ブロードバンド・サービスとIoT(Internet of Things)による新たな社会価値の創造です。そのプラットフォームとなるものが、中長期にわたるユーザー・エクスペリエンスの向上を目指すコミュニケーション・システムのイノベーションです。このイノベーションを実現するために、広帯域化を支えるLTE、LTE-Advanced、更に5Gへと続くモバイル通信技術の継続的開発や超高速広帯域な接続性の向上を支える基地局ネットワークの高密度化に代表される通信ネットワークの再構築が進められています。基本的な社会インフラからIoTによる新たな価値創造に至るまで、持続可能な社会の実現には「いつでも、どこでも、安全、安心、快適につながる」ネットワークが不可欠です。当社は、無線・有線のすべてをカバーする先進の計測カンパニーとして、社会とお客様のネットワーク課題を解決してまいります。

PQA事業の成長ドライバーは、安全・安心と健康の増進です。食品・医薬品関連市場を中心に、長期的には海外売上比率を50%まで引き上げることにより事業拡大を目指してまいります。北米・アジア市場を中心に事業展開を加速するため、海外の経営資源の拡充に努めます。

 

③中期経営計画の策定等

当社は、経営ビジョンにおいて示された「利益ある持続的成長」の実現に向けて10年スパンの時間軸で取り組む「2020 VISION」を掲げるとともに、そのマイルストーンとなる中期経営計画「GLP2017」を策定し、継続して企業価値の向上に取り組んでおります。

「GLP2017」では、「さらなるグローバル化による事業拡大」、「顧客価値を高めるためのブランド力強化」、「事業創発の加速と事業領域の拡大」、「全社を挙げた継続的な利益体質への取組み」を基本方針としております。

 

④事業部門別の具体的施策

主力の計測事業では、モバイル市場の収益基盤を強化しつつ、ネットワーク・インフラ市場での売上拡大及び次世代のIoT/5G事業への積極的投資を行い、目標の達成に取り組みます。

モバイル市場では、引き続きLTE-Advanced(CA:Carrier Aggregation、MIMO:Multiple-Input and Multiple-Output など)向けソリューションの提供、新興市場開拓などを実行し収益の確保に努めます。

ネットワーク・インフラ市場では、サービスの拡大で爆発的に増加するモバイルトラフィックやデータセンター需要で拡大しつつあるネットワーク再構築(Network Reshaping)市場を獲得するために競争力強化を図ってまいります。

また、中長期にわたって成長が期待できるIoT/5G市場での事業機会獲得のために積極的に投資を継続していきます。

PQA事業は、マーケット・リーダーとしての日本市場における安定的な収益基盤を強化するとともに、成長する海外市場でのマーケットシェア拡大を図っていきます。海外市場での競争力を強化するために、グローバルな事業体制を整備拡充していきます。

 

当社は、これらを遂行するうえで阻害要因となるリスクを適切に管理・対処し、競争優位の源泉に変えていくため、内部統制システムの整備により確立した国内外のグループ会社との連携を更に強化し、リスク・マネジメント・システムを高度化してまいります。

また、当社は、経営環境の変化に柔軟かつスピーディに対応し、グローバル企業としての競争力を高め、継続的に企業価値を高めていくため、コーポレート・ガバナンスの充実を重要な経営課題と位置づけております。「監査等委員会設置会社」への移行、指名委員会・報酬委員会・独立委員会の設置などにより、取締役会の監査・監督機能を強化しコーポレート・ガバナンス体制を一層充実させることで、より透明性の高い経営の実現を目指してまいります。

当社グループは、誠実な企業活動を通じてグローバルな社会の要請に対応し、社会的課題解決に貢献してこそ企業価値の向上が実現されると考えており、CSR活動にも積極的に取り組んでおります。製品・サービスを通じた安全・安心な社会づくりへの貢献をCSR活動の第一義に捉え、コンプライアンス、顧客満足(CS)、サプライ・チェーン・マネジメント、地球環境保護、ダイバーシティの尊重(女性や外国籍の人財が活躍できる環境の整備、障がい者雇用の促進等)、人権課題への対応(人権デューデリジェンスの実施等)、労働安全衛生など、様々な領域で企業に求められる役割を果たしてまいります。

仕事と育児等の両立支援については、出産・育児の前後における休暇・休業・職場復帰制度、時短勤務制度等の諸制度を設けるなど、職場環境の整備に積極的に取り組んでいます。諸制度の利用を希望する者が、性の別を問わず、共に安心して仕事と育児等の両立が図れるように、2016年4月に発足したダイバーシティ推進を総合的に所管する部門が中心となって、全社員に対し、関連する情報の提供・周知、意識啓発等を行い、理解促進に努めてまいります。なお、2015年度末時点におけるグローバルにみた女性の活躍状況は以下のとおりです。

 

 

日本

米州

EMEA

アジア他

全社計

全社員に占める女性社員の比率

<女性社員数/全社員数>

14%

31%

20%

26%

19%

男性の幹部職登用率を100とした女性の幹部職登用率
<(女性幹部職数/女性社員数)/(男性幹部職数/男性社員数)>

 8%

64%

 83%

63%

44%

 

(注)EMEA(Europe,Middle East and Africa):欧州・中近東・アフリカ地域

当社グループは、2014年に新たに掲げたブランド・ステートメント「envision:ensure」のもと、積極的に事業展開を進めております。これに込めた思いは、「お客様と夢を共有しビジョンを創りあげるとともに、それをイノベーションによりお客様の期待を超える確かなかたちあるものへと創りあげる」というものです。今後も経営資源を最大限に活かして企業価値の向上に努めるとともに、安全・安心で豊かなグローバル社会の発展に貢献していく所存です。

 

当社は、2013年6月26日の第87期定時株主総会終結の時をもって、「当社株式の大規模買付行為に関する対応策(買収防衛策)」を継続しないことといたしました。これは、「2020 VISION」及び中期経営計画の実現、並びにコーポレート・ガバナンスの整備・強化によって企業価値の向上に継続して取り組むこと、加えて、株主の皆様への利益還元を充実させ、株主・投資家の皆様との対話の一層の充実を図ることが、当社が最優先で取り組むべき課題であると判断したためです。これに伴う、株式会社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針(会社法施行規則第118条第3号に掲げる事項)は次のとおりです。

 

①基本方針の内容

 当社は、公開企業として当社株式の自由な売買を認める以上、特定の者の大規模な買付行為に応じて当社株式の売却を行うか否か、ひいては会社を支配する者の在り方は、最終的には株主の皆様の意思に基づき決定すべきものと考えます。一方で、当社は、企業価値の源泉となり株主共同の利益を構築している経営資源の蓄積を最大限に活かし、当社グループのブランド価値を高めていくためには、中長期的観点からの安定的な経営及び蓄積された経営資源に関する十分な理解が不可欠であると考えています。したがって、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者に、これらに関する十分な理解なくしては、当社の企業価値及び株主共同の利益が毀損されるおそれがあると考えています。

 そのため、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者として不適切な者による大規模買付行為に対しては、株主の皆様のご判断に資するよう、大規模買付者への情報提供要求など積極的な情報収集と適切な情報開示に努めるとともに、当社の企業価値及び株主共同の利益の確保・向上を図るため、必要に応じ、法令及び定款によって許容される限度において、適切な措置を講ずるものとします。

 

②基本方針の実現のための取組みの概要

 当社は、株主の皆様の負託に応えるためには、利益ある持続的な成長により企業価値を向上させることが最重要課題と認識しており、より長期的な視点で企業価値の向上に取り組むために、10年スパンの時間軸で取り組む「2020 VISION」及びそのマイルストーンとなる中期経営計画を策定し、その実現に向けてグループを挙げて取り組んでおります。また、当社は、コーポレート・ガバナンスの強化のため、執行役員制度の導入や複数の独立性のある社外取締役の選任による経営監督機能の強化、報酬委員会・指名委員会の設置による経営の透明性の確保に努めております。さらに、当社は、コーポレート・ガバナンスの一層の強化を図るため、2015年6月25日開催の当社第89期定時株主総会においてご承認いただき、「監査等委員会設置会社」に移行いたしました。

 このような企業価値向上を核とした経営を進めることは、当社の企業価値及び株主共同の利益を著しく損なう大規模買付者が現れる危険性を低減する方向に導くものとして、前記①の基本方針に沿うものと考えます。また、当社役員の地位の維持を目的とするものではないと考えております。

 

 当社は、これらの活動を通じて、2020年までに到達したい姿を描いた「2020 VISION」の中で掲げた「グローバル・マーケット・リーダーになる」・「事業創発で新事業を生み出す」という目標達成を目指すとともに、継続して企業価値の向上に取り組んでまいります。

 

 

4【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)当社グループの技術・マーケティング戦略に関するリスク

当社グループは高い技術力により開発された最先端の製品とサービスをいち早く提供することで顧客価値の向上に努めております。しかし、当社グループの主要市場である情報通信市場は技術革新のスピードが速いため、当社グループが顧客価値を向上させるソリューションをタイムリーに提供できない事態や、顧客のニーズやウォンツを十分にサポートできない事態が生じた場合は、当社グループの財政状態及び経営成績に影響をもたらす可能性があります。

(2)市場の変動に関するリスク

経済や市場状況の変化、技術革新などの外的な要因は、当社グループが展開する製品群の収益に影響を及ぼし、グループの財政状態及び経営成績に大きな変動をもたらす可能性があります。

計測事業は、通信市場向けの売上比率が高いため、通信事業者や通信装置メーカー、関連電子部品メーカーの設備投資動向に業績が左右される可能性があります。通信事業者は、設備投資を抑制しながらデータ・トラフィック急増を支える新技術の導入を進める一方で、サービス開発効率を上げるため、ネットワークの共同利用やオープン化を進めています。さらに、当社グループの収益の柱であるモバイル計測分野の業績は、携帯電話サービスの技術革新や普及率、加入者数及び携帯端末の買い替え率の変化に影響されます。加えて、携帯電話ソフトウェアのプラットフォーム化などにみられる開発手法の変化や端末製造用の計測器で激化する価格競争への対応などによっても業績は影響を受けます。

PQA事業は、食品産業向けの売上収益が8割以上を占めており、経済成長や消費支出水準及び原材料の価格動向が食品メーカーの経営成績や設備投資等に及ぼす影響にその業績が左右される可能性があります。

(3)海外展開に関するリスク

当社グループはグローバル・マーケティングを展開しており、米国、欧州、アジアなど世界各国で顧客密着力の向上を目指した積極的なビジネスを行っています。なかでも計測・PQA事業等を合わせた海外売上比率は当連結会計年度実績で70%を占めており、顧客の多くもグローバル規模で事業を展開しているため、海外諸国の経済動向、国際情勢の変化、遵守すべき法令対応や当社グループのグローバル戦略の進捗によって、財政状態及び経営成績に大きな影響をもたらす可能性があります。また、通信業界では合従連衡や事業再編がグローバル規模で行われ、勢力図が変化しております。その結果、主要顧客の設備投資動向が大きく変化した場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響をもたらす可能性があります。

(4)外国為替変動に関するリスク

当社グループの海外売上比率は当連結会計年度実績で70%と高い比率となっています。当社では売掛金の回収などで発生する外貨取引への為替先物予約等によりリスク・ヘッジに努めておりますが、急激な為替変動は当社グループの財政状態及び経営成績に影響をもたらす可能性があります。

(5)在庫陳腐化のリスク

当社グループは顧客のニーズやウォンツをきめ細かく捉え、製品やサービスを市場に提供するよう努めております。しかし、特に計測事業における製品群は技術革新が極めて速いため、製品及び部品の陳腐化が起こりやすく、在庫の長期化・不良化を招くことで当社グループの財政状態及び経営成績に影響をもたらす可能性があります。

(6)繰延税金資産に関するリスク

当社グループは、税効果会計を適用し、繰延税金資産を計上しています。繰延税金資産の計算は、将来の課税所得に関する見積りを含めた予測等に基づいており、実際の結果が予測と異なる可能性があります。将来の課税所得の見積りに基づく税金負担の軽減効果が得られないと判断された場合、当該繰延税金資産は取り崩され、当社グループの財政状態及び経営成績に影響をもたらす可能性があります。

(7)確定給付制度債務に関するリスク

当社及び一部の子会社の従業員を対象とした確定給付年金制度から生じる退職給付費用及び債務は、割引率等の数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されておりますが、確定給付制度債務の見込額を算出する基礎となる割引率等の数理計算上の仮定に変動が生じた場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響をもたらす可能性があります。

(8)会計基準の改正等による影響

当社グループは国際会計基準(IFRS)を任意適用して決算を行っておりますが、将来における会計基準、税制等の新たな適用や変更は当社グループの財政状態及び経営成績に影響をもたらす可能性があります。

(9)自然災害等の突発的事象発生のリスク

当社グループはグローバルに生産・販売活動を展開しているため、大規模な地震等の自然災害、火災、戦争、テロ及び暴動等が発生した場合には、当社グループや仕入先、顧客の主要設備への被害等により事業活動に支障が生じ、また、これらの災害等が政治不安又は経済不安を引き起こすことにより、当社グループの財政状態及び経営成績に影響をもたらす可能性があります。

 

5【経営上の重要な契約等】

特記すべき事項はありません。

6【研究開発活動】

当社グループは、安全・安心で豊かなグローバル社会の実現に貢献するため、日本、アメリカ、ヨーロッパに有する開発拠点でグローバルに“オリジナル&ハイレベル”な商品とサービスの研究開発を行っております。

計測事業は、当社、Anritsu Company(米国)、Anritsu Ltd.(英国)、Anritsu A/S(デンマーク)、Anritsu Solutions S.r.l.(イタリア)及びAnritsu Solutions SK,s.r.o.(スロバキア)において、保有する技術を相互補完することによりシナジー効果を上げるべく協調して開発を進めております。

PQA事業は、アンリツインフィビス㈱が研究開発を行っております。

国際会計基準(IFRS)の適用に伴い、当社グループでは開発投資の一部について資産化を行い、無形資産に計上しております。無形資産に計上された開発費を含む当連結会計年度の研究開発投資の内訳は次のとおりであります。

 

当連結会計年度

 

売上収益比率

計測事業

9,822百万円

 

14.5 %

PQA事業

1,901百万円

 

10.1 %

その他の事業

795百万円

 

8.9 %

基礎研究開発

570百万円

 

     -

合 計

13,089百万円

 

13.7 %

 

 また、セグメント別の主な研究開発成果は次のとおりです。

 

(1)計測事業

1) 4x4/8x2 MIMOフェージング機能に対応したMD8430Aの開発

3GPP(注1)で標準化された移動通信システムであるLTEが広く普及されている中、急激に増加している通信量に対応するためにLTEを更に高速化したLTE-Advancedの採用が進んでおります。

LTE-Advancedは、通信帯域幅を拡張するキャリアアグリゲーション(注2)に加え、複数のアンテナを用いることにより、移動時に1Gbpsから最大3Gbpsのデータ通信を可能とする移動通信システムです。移動通信システムは、フェージング(注3)により実効通信速度が変動することから、複数のアンテナを使用するMIMO(注4)では、実効通信速度の検証が重要な評価項目となっています。現在、4x4 MIMO、8x2 MIMO(注4)技術の開発が進展しており、このフェージング環境で実効通信速度を検証できる基地局シミュレータのニーズが高まっています。そこで本開発では、MD8430Aシグナリングテスタの機能を強化し、新たに4x4 MIMO/8x2 MIMOフェージング試験を可能としました。

(注1)3GPP:The 3rd Generation Partnership Project

    第3世代、第4世代及び、次世代移動通信システム規格の検討・作成を行う標準化プロジェクト

(注2)キャリアアグリゲーション

       複数のLTEコンポーネントキャリアを同時に使用することで、広い帯域を確保し、通信速度を向上させる技術。

(注3)フェージング

       無線通信において、時間差をもって到達した電波が干渉し合うことによって電波レベルの強弱に影響を与える現象のことである。フェージングは、電波が地上の障害物や大気中の電離層などによって反射することによって生じるが、移動体通信においては、送受信する端末そのものが移動することでも発生する。

(注4)4x4/8x2 MIMO:Multiple Input Multiple Output

       MIMOは複数アンテナを使用して同時にデータを送受信し、データ通信を高速化・高信頼化する技術。4x4 MIMOは、送受信で各4本のアンテナを使用し、8x2 MIMOは、送信側で8本、受信側で2本のアンテナを使用する。

 

2) LTE-Advanced/3G/2Gに1台で対応したMT8821Cの開発

LTE並びに、LTEを発展させたLTE-Advancedの通信方式に加え、GSMやW-CDMAに代表される既存の移動通信システム(第2~3.5世代)にも対応し、第2世代から最新のLTE-Advancedまでの主要な移動通信規格に1台で対応できるMT8821Cラジオコミュニケーションアナライザを開発しました。

本製品は呼制御を用いたRF性能試験並びに機能試験を行うことができ、移動通信端末(移動機)や端末用チップセットの開発に大いに貢献するものと考えます。

また、従来は複数台の測定器が必要であった機能を1台に集約したこと、そして新開発のGUI(Graphical User Interface)が「タッチパネルのGUIは素直で直感的に理解容易にデザインされており、見た目や色も本体と統一感がある。多用途、多機能をシンプルにまとめた優れたデザインである」として高く評価され、2015年度グッドデザイン賞を受賞しました。

 

3) 高性能導波管ミキサMA2806A/08Aの開発

ミリ波(注1)の市場は、次世代の無線通信システムを担う周波数帯として注目が高まっております。一方でユーザの要求を満足する測定器がなく、ユーザは、個別に測定環境を構築して評価を実施している状況です。そのため、R&D市場、認証市場のユーザ等から、次世代無線通信システムに対応した測定器の開発が待ち望まれていました。こうした要求に対応するため、高性能導波管ミキサの開発と、MS2830Aシグナルアナライザの外部ミキサ機能の拡張を行い、それらを組み合わせることで、50~75GHz帯及び60~90GHz帯で市場要求を満足する高ダイナミックレンジのミリ波帯スペクトラム測定を実現しました。

(注1)ミリ波

       30GHz以上の周波数を持つ電波。波長1cm以下。無線通信システムや衛星通信、レーダーなどで用いられる電波。周波数帯域により、各通信システムの運用が割り当てられている。

 

4) 近傍位相雑音性能を大幅に向上したMS2840Aの開発

近年発売されているスペクトラムアナライザは、需要が拡大しているLTEや無線LANなどの測定用として、広帯域での測定性能を重視したモデルが主流となっています。一方、マイクロ波帯の無線バックホールやV/UHF帯業務用無線機などの測定では、狭帯域での測定性能を重視したスペクトラムアナライザが必要ですが、市場に多く存在するLTE対応スペクトラムアナライザは、これらの用途に適合していませんでした。

そのため、狭帯域性能を必要とするお客様は10年~20年前に購入した旧型モデルを継続利用するか、著しく高価な最高級モデルを購入する必要がありました。そこで、狭帯域での測定性能を重視したミドルレンジモデルとしてMS2840Aシグナルアナライザを開発しました。

本製品は、9kHz~44.5GHzの測定周波数範囲を持ち、内蔵発振器のSSB位相雑音性能(注1)を、測定周波数1GHz、オフセット周波数10kHzにて−123dBc/Hzと大幅に向上させています。これにより、これまで大型で高価格の位相雑音専用測定器でしか実現できなかった狭帯域通信装置の近傍スプリアス性能評価を、充分な余裕を持って実現できます。

(注1)SSB位相雑音性能

       SSBはSingle Side Band(搬送波単側波帯)の略。信号発生の原理上、必ず含まれる余分な周波数成分。

 

5) 高速シリアルBUSインターフェース規格に対応したMP1800A用アプリケーションソフトの開発

データ通信トラフィックの拡大により、デジタル通信システムには更なる大容量化と高速化が求められています。PCI Express(注1)やUSBに代表される高速BUSインターフェース規格では高速化に伴いシグナルインテグリティ(注2)の確保がますます困難になってきており、ジッタ耐力試験では実測によるマージン確認が必須となってきています。そこで、MP1800Aシグナルクオリティアナライザに搭載することで、PCI ExpressやUSBデバイスの評価で必要とされるリンクシーケンスパターン(注3)の発生とジッタ耐力(注4)試験が可能となるアプリケーションソフトウェアを開発しました。

(注1)PCI Express

       PCI-SIGにより策定されるシリアルデータバス規格。主にパソコン内部の通信で使用される。最新はGen4.0で1レーンあたりの帯域を16GT/sとしている。

(注2)シグナル インテグリティ

       信号が伝播する際に生じる波形のひずみなど、信号の品質を指す。

(注3)リンクシーケンスパターン

       ホストとターゲットの接続を確立するシーケンスパターン。

(注4)ジッタ耐力

       シリアルデータバスの性能を見極めるための試験方法で、レシーバにジッタ可変変調データを入力し、そのBERによって定義される。

 

6) 標準化活動

計測事業における研究開発活動の重要な取り組みのひとつとして、国内外の標準化活動へ積極的に参画しています。情報通信産業における最先端の知識・技術を常に製品へ反映し、競争力に優れたソリューションをタイムリーに提供するために、主要な標準団体として現在3GPP、ITU-T(注1)、IEEE(注2)等へ参加し、4G/5G、データセンタ、IoT/M2M(注3)、コネクテッドカー(注4)といった有線・無線通信事業の戦略立案や情報収集に役立てています。

特に携帯電話システムの規格を策定する3GPPにおいては、基地局と携帯端末の通信手順試験を可能とするコンフォーマンステスト(端末認証試験)仕様策定に際し、LTE/LTE-Advancedの規格策定段階から数多くの寄書を行い、2015年度はリリース13(注5)の公開に貢献しました。

(注1)ITU-T

       International Telecommunication Union-Telecommunicationの略。国際電気通信連合の電気通信標準化部門。

(注2)IEEE

       The Institute of Electrical and Electronics Engineers, Inc.の略。アメリカ合衆国に本部を持つ電気工学・電子工学技術の学会。IEEE 802.11 (WiFi)や、IEEE802.3 (Ethernet)などの規格を策定している。

 

(注3)IoT/M2M

       Internet of Things、Machine to Machineの略。コンピュータなどの情報・通信機器だけでなく、世の中に存在するあらゆる物に通信機能を持たせ、インターネットに接続したり人手を介さずに相互に通信することにより、自動認識や自動制御、遠隔計測などを行う技術。

(注4)コネクテッドカー

       ICT端末としての機能を有する自動車のこと。車両の状態や周囲の道路状況などの様々なデータをセンサーにより取得し、ネットワークを介して集積・分析することで、新たな価値を生み出すことが期待されている。

(注5)リリース13

       3GPPから公開されている移動通信システム規格の版数。リリース13は2016年3月に公開。

 

(2)PQA事業

医薬品等のカプセル用重量選別機の開発

世界的な人口の増加と新興国の経済発展を背景に医薬品の需要は増加の一途をたどっております。生命に直結する医薬業界において、医薬メーカー各社は、食品より更に厳格な品質保証を自社の課題としています。

近年、医薬業界では製薬技術の発達により従来薬よりも少量で薬効が期待できる高活性薬剤が増加しており、質量管理の高精度化、更には医薬品製造プロセスの健全性を証明するバリデーション体制の厳格化が求められています。

当社は、このような医薬業界のお客様の課題に注目し、医薬品製造現場のニーズにお応えする品質検査機器の開発に取り組んでおります。

当連結会計年度におきましては、種々の医薬のなかでも内容量のバラつきが生じやすく、厳格な全数管理が必要なカプセル医薬の質量検査に特化した重量選別機「KWS9001シリーズ カプセル重量選別機」を開発し、販売を開始いたしました。

本機は、従来機に比べて約2倍の処理速度と4倍の計測精度を両立したことに加え、検査の健全性検証過程を支援する各種機能や、米国の医薬品管理基準「FDA21CFR Part11」に準拠したデータ管理機能を搭載することで、医薬製造における品質保証の向上に貢献いたしました。

PQA事業は、食品産業のみならず医薬製造の現場においても、オリジナルでハイレベルな商品と、お客様の生産活動を24時間サポートするサービスの提供を通じて安全・安心な社会の実現に貢献しています。


(3)その他の事業

情報通信事業 トラフィックアクセラレータ PureFlow WSX NF7601Aの開発

近年、企業活動のグローバル化と、それに伴うクラウドサービスの適用で、WAN回線の利用頻度が格段に増してきています。更にWAN回線に流すデータ量も急激に増加し、同時に回線上で発生する往復遅延時間やパケット損失の影響により、本来の転送能力を発揮できず、業務に支障をきたし生産性の悪化を招いています。

このように遠距離間での大容量データ通信で発生しているパフォーマンス問題を解決することで快適なデータのやり取りを実現したいという社会的要請に応え、トラフィックアクセラレータPureFlow WSX NF7601Aを開発し、PureFlowシリーズのラインナップに追加いたしました。

今後もPureFlowシリーズは、クラウドサービス基盤と連動したトラフィック制御を実現するためコントロールインタフェースを提供するなど、進化するクラウド環境をリードし、世界中のネットワークで安全・安心、そして快適な通信環境を提供してまいります。

 

7【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、実際の結果は、将来に関する事項の記述とは異なる可能性があります。その主な要因については、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 4 事業等のリスク」に記載しておりますが、それらに限定されるものではありません。

(1)重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、国際会計基準(IFRS)に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、予想される将来のキャッシュ・フローや、経営者の定めた会計方針に従って財務諸表に報告される数値に影響を与える項目について、経営者が見積りを行うことが要求されます。これらの見積りは過去の実績等を勘案し合理的に判断していますが、結果として、これらの見積りと実際の結果が異なる場合があります。

(2)経営成績の分析

当社グループは、計測事業、PQA事業の2つを報告セグメントとしています。

1) 計測事業

当社グループの売上収益の71%を占める計測事業は、「モバイル市場」「ネットワーク・インフラ市場」「エレクトロニクス市場」向けの3つのサブセグメントに区分しております。

 

① モバイル市場

モバイル市場には、携帯電話サービスを行う通信事業者の端末受入検査用途向け計測器や、スマートフォン等の携帯電話端末やICチップセット、その他関連電子部品メーカーでの設計、生産、機能・性能検証、保守用途向けの計測器等を含めております。

当市場の需要は、携帯電話サービスの技術革新や普及率、加入者数の推移のほか、端末/チップセット・メーカーの新規参入又は撤退、端末やチップセットの新機種数や出荷数などに影響される傾向があります。

現在、世界各国でLTE方式に対応した端末で多様なモバイル・ブロードバンド・サービスが普及しつつあり、業界をリードする通信事業者、端末/チップセット・メーカーはサービスの更なる高度化・高品質化を目指し、最先端通信方式LTE-Advancedの研究開発を進めています。また、モバイル通信技術は車載通信端末などにも用いられ、新たなサービスの実現に向けた研究開発も進められています。これらの研究開発活動に牽引され、規格適合試験や相互接続試験用計測システムなどの関連する最先端計測ソリューションが求められています。加えて、5Gの基礎研究開発における計測需要が顕在化しつつあります。

一方、これまで急速に普及してきたスマートフォンは、中国での需要一巡やコモディティ化の進展などにより市場成長に鈍化傾向がみられます。これらの市場変化を背景に、より効率的な端末製造用計測器が求められています。

当社は、引き続き競争力のある最先端計測ソリューションを開発・投入するとともに、開発ポートフォリオ・マネジメントを的確に遂行することで、収益基盤を強化してまいります。

 

② ネットワーク・インフラ市場

ネットワーク・インフラ市場には、有線・無線通信事業者のネットワーク建設、保守、監視及びサービス品質保証用途向けのソリューションや、通信装置メーカーの設計、生産、試験及び調整用途向けソリューション等を含めております。

当市場においては、ブロードバンド接続サービスの普及により、音楽やビデオの配信サービスに加え、クラウドサービスの利用が増加しています。さらに、携帯端末経由でのインターネット・アクセスも急増しています。これらに伴い、データ・トラフィックが急激に増加し続け、ネットワークの更なる高速化を進める先進的な通信事業者や装置メーカーは100Gbps サービスの商用化、400Gbps ネットワーク装置の研究開発に注力しています。また、モバイル端末からの接続性を向上させるため、有線・無線通信技術を統合活用することにより基地局ネットワークを効率的に高密度化することが進められています。当連結会計年度は北米市場等で基地局建設需要減の傾向が見られましたが、これらの市場動向の変化に伴い、有線・無線技術を最適化した計測ソリューションの需要が本格化しています。さらに、クラウドサービスを支えるデータセンターの増加などを背景に、高速データ通信装置の市場が拡大するとともに、高速光通信モジュールの研究開発や製造市場が活発化しており、関連する計測ソリューションの需要が高まっています。

当社は、通信機器の研究・開発向けソリューションに加え、通信インフラの構築・監視からサービス品質保証までの総合ソリューションを提供することで、事業の拡大に取り組んでまいります。

 

③ エレクトロニクス市場

エレクトロニクス市場には、通信ネットワークに関連する通信機器やその他の電子機器に使用される電子デバイスの設計、生産、評価をはじめエレクトロニクス分野で幅広く利用されている計測器等を含めております。

当市場の需要は、通信機器や情報家電、自動車等に使用される電子部品及び電子機器の生産規模に影響を受ける傾向があります。

モバイル・ブロードバンド・サービスの拡大やスマートメーターをはじめとするIoTの活用により、多岐にわたる用途の無線モジュールの開発・製造用計測ソリューション需要が増加しております。また、周波数資源の有効利用のために各種無線システムのデジタル化が進められ、新システムの製造及び保守用計測ソリューションの需要は堅調に推移しています。当社は、エレクトロニクス市場に対するソリューションを拡充し、更なる事業の拡大に努めてまいります。

 

2) PQA事業

PQA事業は、当社グループの売上収益の20%を占めています。当事業は、食品産業向けの売上収益が8割以上を占めているため、食品メーカーの業績に影響を及ぼす経済成長率及び消費支出水準の変化に大きな影響を受けます。

主力製品には、食品製造ラインにおいて高速搬送しながら高精度に計量する重量選別機や食品中に混入する金属や石などの異物を高感度に検出し製造ラインから排除する異物検査機器(X線異物検出機等)などがあります。これらの新製品が国内コンビニ市場を中心とした設備更新需要をとらえ伸長しました。また、グローバルでのシェア拡大を目指し継続的に投資を進めた結果、北米での顧客基盤拡大も貢献し、当事業の海外売上収益は前連結会計年度比15%増となりました。

食品メーカーの品質検査への関心は高く、世界のすべての地域で需要は堅調に推移するものと見込んでおります。この需要に応えるために、新製品及び品質保証ソリューションの開発、提供に努めるとともに、グローバルな事業体制の最適化を推進し、事業拡大と収益性の向上に取り組んでまいります。

なお、当連結会計年度より、当事業は従来「産業機械事業」としていた名称を「PQA事業」に変更しております。

 

(3)財政状態の分析

1) 資金需要と流動性の管理

当社グループの資金需要は、製品の製造販売に関わる部材購入費や営業費用などの運転資金、設備投資資金及び研究開発費に加え、当年度においてはグローバル本社等建設のための支出がありました。これらの需要に対して、内部資金のほか、直接調達・間接調達により十分な資金枠を確保しています。また、2014年3月に設定した借入枠100億円のコミットメントライン(2017年3月まで有効)により財務の安定性を確保しています。今後とも、大きく変動する市場環境のなかで、国内外の不測の金融情勢に備えるとともに、運転資金、長期借入債務の償還資金及び事業成長のための資金需要に迅速、柔軟に対応してまいります。

当連結会計年度は、普通社債の発行及び借入金の返済などにより、有利子負債残高(リース債務除く)は220億円(前連結会計年度末の有利子負債残高は160億円)となりました。また、デット・エクイティ・レシオは0.29(前連結会計年度末は0.20)、ネット・デット・エクイティ・レシオは△0.20(前連結会計年度末は△0.24)となっております。当連結会計年度の売上収益に対する期末平均棚卸残高の回転率は5.1回となりました。

今後ともACEの改善(投下資本コストを上回る税引後営業利益の達成)とCCC向上によるキャッシュ・フロー創出及びグループ内キャッシュ・マネジメント・システム等による資金効率化を原資として、有利子負債の削減、デット・エクイティ・レシオの改善、株主資本の充実等、財務体質の強化に努めてまいります。

2016年3月期末の当社の格付(R&I:㈱格付投資情報センター)は、短期格付が「a-1」、長期格付が「A-」となっています。当社は、更なる格付向上に向けて、財務安定性の改善に引き続き取り組んでまいります。

  (注1)デット・エクイティ・レシオ:有利子負債/親会社の所有者に帰属する持分

  (注2)ネット・デット・エクイティ・レシオ:(有利子負債-現金及び現金同等物)/親会社の所有者に帰属する持分

 (注3)ACE (Anritsu Capital-cost Evaluation): 税引後営業利益-資本コスト

  (注4)CCC:キャッシュ・コンバージョン・サイクル
 

2) 資産、負債及び資本

① 資産

資産合計は、1,246億24百万円となり、前連結会計年度末に比べ22億68百万円減少しました。主に営業債権及びその他の債権が減少した一方、現金及び現金同等物が増加しております。

② 負債

負債合計は、487億61百万円となり、前連結会計年度末に比べ5億34百万円増加しました。主に非流動負債における社債及び借入金、従業員給付が増加しました。一方、流動負債における社債及び借入金、営業債務及びその他の債務が減少しております。

③ 資本

資本合計は、75862百万円となり、前連結会計年度末に比べ28億2百万円減少しました。これは、主に利益剰余金、その他の資本の構成要素が減少したことによるものです。

この結果、親会社所有者帰属持分比率は60.8%(前連結会計年度末は62.0%)となりました。

 

3) キャッシュ・フロー

キャッシュ・フローの状況は、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 1 業績等の概要」に記載しております。

 

(4)経営戦略と今後の方針について

経営戦略と今後の方針は、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 3 対処すべき課題」に記載しております。