第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 会社の経営の基本方針

当社は、様々なステークホルダーに対する責任と対話を重視し、以下のとおり経営理念・経営ビジョン・経営方針を策定しています。

経営理念

誠と和と意欲をもって、“オリジナル&ハイレベル”な商品とサービスを提供し、安全・安心で豊かなグローバル社会の発展に貢献する

経営ビジョン

衆知を集めたイノベーションで社会のサステナビリティに貢献し、“利益ある持続的成長”を実現する

経営方針

1. 衆知を集めた全員経営でハツラツとした組織へ

2. イノベーションで成長ドライバーの獲得

3. グローバル市場でマーケット・リーダーになる

4. 良き企業市民として人と地球にやさしい社会づくりに貢献

(2) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社は、企業価値の最大化を目指してキャッシュ・フロー(CF)を重視した経営を展開しております。また、投下資本が生み出した付加価値を評価する当社独自の指標「ACE」を各事業部門の業績評価の指標としております。投下資本の効率性の指標として「ROE」の目標も設定しております。

(注)ACE (Anritsu Capital-cost Evaluation): 税引後営業利益-資本コスト(5%)

なお、当社取締役(社外取締役及び監査等委員であるものを除く。)、執行役員及び理事向けに2017年度までを対象期間として運用してきた業績連動型株式報酬制度(株式交付信託)においては、「ACE」等の資本効率を示す指標のほか、利益・売上高等の状況を示す指標を交付する株式の数の算定に用いました。本制度は、2018年6月26日開催の第92期定時株主総会において、株主の皆様よりご承認いただき、その内容の一部を変更し継続することとなりました。継続に際して新たに定めた評価指標としては、本制度の対象期間における各事業年度の期初に定める営業利益及び中期経営計画「GLP2020」に掲げる営業利益を採用しました。また、金銭の業績連動型報酬(年次役員賞与)の評価には、売上高、営業利益、営業CF及び資本効率(「ROE」、「ACE」、「ROIC」)の達成度、対前年比等の指標を用いています。

(3) 中長期的な経営戦略、経営環境及び対処すべき課題等

今後の見通しにつきましては、世界経済はこれまで回復基調で推移してきましたが、今後、英国のEU離脱問題、米中貿易摩擦の激化、保護貿易主義による対立など、先行きに対する不透明感が高まっています。情報通信分野においては、2018年12月に北米や韓国で先行的な5Gサービスが開始されており、2019年に入り5G対応スマートフォンの販売も始まりました。今後、日本も含め世界各国で5Gの本格的な商用化に向けた準備が加速すると見込まれます。

このような環境の中、当社グループは、中長期経営戦略及び「2020 VISION」のもと、中期経営計画である「GLP2020」(計画期間: 2018~2020年度)の達成に取り組み、世界各国の商用化計画に的確に対応したソリューションをタイムリーに提供することで、5G開発市場でのリーディングカンパニーの地位を目指します。

① 中長期的な経営戦略

当社グループは、主力の計測事業を軸に、ICT(Information and Communication Technology)サービスに関わるビジネスを展開しております。ICT分野における成長ドライバーは、「世界的なモバイル・ブロードバンド・サービスとIoT(Internet of Things)による新たな社会価値の創造」です。モバイル・ブロードバンド・サービスの拡大は、モバイル通信方式の2G、3G、4G、5Gとして進化してきました。それらの通信方式の進化は、計測市場の上昇、ピーク、下降の変動サイクルの波に見舞われた歴史でもありました。経営ビジョンに掲げる“利益ある持続的成長”が意味するものは、このような市場変動の波に耐え、次代の技術革新を獲得する先行投資を可能にするための強固な経営体質を構築することです。

「2020 VISION」は、その経営の基本方針に沿って2020年を目途とする時間軸として取り組んできたものであります。

「2020 VISION」及び「2020 VISION」のもと各事業部門が掲げるビジョンは、次のとおりです。

2020 VISION

1. アンリツらしい価値を創造し、ワールドクラスの強靭な利益体質を持つグローバルマーケットリーダーになる

2. 新しい分野でアンリツの先進性を発揮して事業創発をする

計測事業 : 5G/IoT社会を支えるリーディングカンパニーになる

PQA事業  : ワールドクラスの品質保証ソリューションパートナーになる

更に、当社グループは、2020年以降を見据えた持続的な成長の実現に向けた取組み「Beyond 2020」を始動させました。「Beyond 2020」では、「5G通信」、「食品安全」の一層の強化に加え、「5G利活用 自動車」、「医薬品安全」、そして「非通信計測事業」の領域の開拓にも挑み、これら5つの柱で社会課題の解決を図り、高収益企業を目指します。

② 中期経営計画

当社は、中長期事業戦略上の経営目標の一里塚として、2018年度を初年度とする3カ年の中期経営計画「GLP2020」を策定し、事業活動を展開しています。「GLP2020」が目指すものは、「収益力を回復する」ことと、「GLP2017」からの継続課題の「“利益ある持続的成長”のための経営基盤を確立する」ことです。その経営目標を確実に遂行するために、(1)成長ドライバーの確実な獲得、(2)強靭な利益体質の構築、(3)次世代の事業の柱づくり、に全力で取り組みます。なお、計画初年度にあたる2018年度は、経営方針に「新経営ビジョンとサステナビリティ方針のもと、アンリツグループの企業価値の向上に取り組もう」を掲げ、アンリツグループを挙げて目標達成に邁進しました。

「GLP2020」の主な経営数値目標及び2018年度の実績は、下表のとおりです。引き続き、株主資本コスト7%を上回るリターンを生み出す成長投資(含むM&A)と資本効率の改善で、企業価値KPI(ACE及びROE)の向上を目指します。

 

2018年3月期

(実績)

2019年3月期

(実績)

2020年3月期

(業績見通し)

2021年3月期

(GLP目標)

売上収益(億円)

859

996

1,020

1,050

営業利益(億円)

49

112

100

145

当期利益(億円)

28

89

75

110

計測

事業

売上収益(億円)

544

681

690

700

営業利益(億円)

21

94

80

100

PQA

事業

売上収益(億円)

225

230

245

260

営業利益(億円)

19

16

20

30

ACE(億円)

△16

39

25

50

ROE(%)

3.7

10.9

8

12

③ 事業部門別の具体的施策

計測事業では、モバイル市場において、5Gに関する標準・規格の進化とオペレータの商用化計画に的確に対応した最適なソリューションをタイムリーに市場投入することで、5G開発市場でリーディングカンパニーの地位を確実なものにします。同時に、LTE-Advanced/ Pro(Gigabit LTE)向けのソリューションは、コスト競争力も含めた一層の差別化策を実施し、収益基盤を確固たるものとします。一方、新たな成長分野として期待する5G/IoTを活用した産業分野での成長機会は、当面はオートモティブ市場での事業拡大を軸に、5Gの高信頼性や低遅延などの特徴を活かした用途での普及が期待される2021年以降をにらみ、M&A施策を含む事業創発活動を強化してまいります。ネットワーク・インフラ市場では、爆発的に増加するデータ・トラフィックやデータセンター需要で牽引される超高速大容量化のための技術革新を確実に取り込み、ネットワーク再構築のための需要を獲得します。

PQA事業の成長ドライバーは、「食品・医薬品市場における品質保証ニーズの拡大」です。その背景には、供給サイド、需要サイド双方でのニーズの変化があります。供給サイドは、異物検査や重量選別に加えて、包装された商品の品質管理の厳格化です。また、生産効率化や人手不足対策を目的とする生産ラインの自動化投資が拡大しています。需要サイドは、食の安全・安心意識の高まりに加えて、個装された調理済み食品(中食)の普及拡大などがあります。PQA事業は、このような市場要求に応えるソリューションで差別化を図るとともに、世界大手食品メーカーとの信頼関係構築に努めて事業拡大を図ってきました。PQA事業が高い成長率を維持し続けるためには、日本市場での競争優位を維持しつつ、海外市場でのプレゼンスを拡大する必要があります。「GLP2020」計画期間は、グローバル市場攻略に向けた経営資源の拡充整備に取り組み、海外売上比率50%以上を可能とする経営体制の構築に取り組みます。

④ コーポレート・ガバナンスの充実、サステナビリティ推進活動、ダイバーシティ推進等

当社は、経営環境の変化に柔軟かつスピーディに対応し、グローバル企業としての競争力を高め、継続的に企業価値を向上させていくことを経営の最重要課題としております。その目標を実現するために、コーポレート・ガバナンスが有効に機能する仕組みを構築することに努めております。執行役員制度導入による意思決定と業務執行の分離の促進、「監査等委員会設置会社」への移行、独立社外取締役が委員長を務める指名委員会・報酬委員会・独立委員会の設置、取締役会の実効性評価の実施などにより、取締役会の監査・監督機能を強化し、コーポレート・ガバナンス体制を一層充実させることで、グローバルな視点でより透明性の高い経営の実現を目指してまいります。

当社グループは、誠実な企業活動を通じてグローバルな社会の要請に対応し、社会的課題解決に貢献してこそ企業価値の向上が実現されると考えており、従来のCSR達成像を発展させた「サステナビリティ方針」を掲げております国際社会のサステナビリティ課題は、2015年9月、国連総会において全会一致で「持続可能な開発目標(SDGs)」として定められました。当社グループは、「サステナビリティ方針」に掲げる「安全・安心で快適な社会構築への貢献」、「グローバル経済社会との調和の実践」、「地球環境保護への貢献」、「すべてのステークホルダーとの強固なパートナーシップの構築」を目標に据え、「誠と和と意欲」をもってグローバル社会のサステナビリティ及び世界共通目標SDGsに貢献することを通じて、企業価値の向上を目指してまいります。

 

従業員の採用においては、外国籍人財や女性の積極採用を進めており、また仕事と育児等の両立支援については、出産の前後や育児における休暇・休業・職場復帰制度、時短勤務制度等の諸制度を設けるなど、職場環境の整備に積極的に取り組んでいます。諸制度の利用を希望する者が、性の別を問わず、共に安心して仕事と育児等の両立が図れるように、ダイバーシティ推進を総合的に所管する部門が中心となって、すべての従業員に対し、関連する情報の提供・周知、意識啓発等を行い、理解促進に努めてまいります。また、当社は、働き方の変革・ライフワークバランスの推進に向け、長時間労働の削減にも努めており、これは従業員の健康を守るとともに、育児、介護等を行いやすくすること、ひいては生産性の向上にもつながるものと考えております。

なお、当連結会計年度末時点におけるグローバルにみた女性の活躍状況は以下のとおりです。

 

日本

米州

EMEA

アジア他

全社計

全従業員に占める女性従業員の比率

<女性従業員数/全従業員数>

15%

31%

21%

27%

20%

男性の幹部職登用率を100とした女性の幹部職登用率
(女性幹部職数/女性従業員数)/(男性幹部職数/男性従業員数)

6%

58%

112%

86%

48%

(注)EMEA(Europe, Middle East and Africa): 欧州・中近東・アフリカ地域

当社グループは、120年企業の証とも言える「先進と信頼の企業ブランド」を、ブランド・ステートメント「envision:ensure」に込め発信しています。その思いは、「お客様と夢を共有しビジョンを創りあげるとともに、それをイノベーションによりお客様の期待を超える確かなかたちあるものへと創りあげる」というものであり、お客様のビジョン実現を通じ社会のサステナビリティに貢献したいという姿勢を示しています。今後とも経営資源を最大限に活かして安全・安心で豊かなグローバル社会の発展に貢献し、企業価値の向上に努めてまいります。

 

(4) 株式会社の支配に関する基本方針について

当社は、2013年6月26日の第87期定時株主総会終結の時をもって、「当社株式の大規模買付行為に関する対応策(買収防衛策)」を継続しないことといたしました。これは、「2020 VISION」及び中期経営計画の実現、並びにコーポレート・ガバナンスの整備・強化によって企業価値の向上に継続して取り組むこと、加えて、株主の皆様への利益還元を充実させ、株主・投資家の皆様との対話の一層の充実を図ることが、当社が最優先で取り組むべき課題であると判断したためです。これに伴う、株式会社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針(会社法施行規則第118条第3号に掲げる事項)は次のとおりです。

① 基本方針の内容

当社は、公開企業として当社株式の自由な売買を認める以上、特定の者の大規模な買付行為に応じて当社株式の売却を行うか否か、ひいては会社を支配する者の在り方は、最終的には株主の皆様の意思に基づき決定すべきものと考えます。一方で、当社は、企業価値の源泉となり株主共同の利益を構築している経営資源の蓄積を最大限に活かし、当社グループのブランド価値を高めていくためには、中長期的観点からの安定的な経営及び蓄積された経営資源に関する十分な理解が不可欠であると考えています。したがって、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者に、これらに関する十分な理解なくしては、当社の企業価値及び株主共同の利益が毀損されるおそれがあると考えています。

そのため、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者として不適切な者による大規模買付行為に対しては、株主の皆様のご判断に資するよう、大規模買付者への情報提供要求など積極的な情報収集と適切な情報開示に努めるとともに、当社の企業価値及び株主共同の利益の確保・向上を図るため、必要に応じ、法令及び定款によって許容される限度において、適切な措置を講ずるものとします。

② 基本方針の実現のための取組みの概要

当社は、株主の皆様の負託に応えるためには、利益ある持続的な成長により企業価値を向上させることが最重要課題と認識しており、より長期的な視点で企業価値の向上に取り組むために、10年スパンの時間軸で取り組む「2020 VISION」及びそのマイルストーンとなる中期経営計画を策定し、その実現に向けてグループを挙げて取り組んでおります。また、当社は、コーポレート・ガバナンスの強化のため、執行役員制度の導入や複数の独立性のある社外取締役の選任による経営監督機能の強化、報酬委員会・指名委員会の設置による経営の透明性の確保に努めております。さらに、当社は、これらの取組みを進化させることを目的として、「監査等委員会設置会社」に移行するなど、コーポレート・ガバナンスの一層の強化に努めております。

このような企業価値向上を核とした経営を進めることは、当社の企業価値及び株主共同の利益を著しく損なう大規模買付者が現れる危険性を低減する方向に導くものとして、前記①の基本方針に沿うものと考えます。また、当社役員の地位の維持を目的とするものではないと考えております。

 

当社は、これらの活動を通じて、「2020 VISION」及び「GLP2020」に掲げる目標達成を目指すとともに、「Beyond 2020」に向けて継続して企業価値の向上に取り組んでまいります。

 

 

 

2【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 当社グループの技術・マーケティング戦略に関するリスク

当社グループは高い技術力により開発された最先端の製品とサービスをいち早く提供することで顧客価値の向上に努めております。しかし、当社グループの主要市場である情報通信市場は技術革新のスピードが速いため、当社グループが顧客価値を向上させるソリューションをタイムリーに提供できない事態や、顧客のニーズやウォンツを十分にサポートできない事態が生じた場合は、当社グループの財政状態及び経営成績に影響をもたらす可能性があります。

(2) 市場の変動に関するリスク

経済や市場状況の変化、技術革新などの外的な要因は、当社グループが展開する製品群の収益に影響を及ぼし、グループの財政状態及び経営成績に大きな変動をもたらす可能性があります。

計測事業は、情報通信市場向けの売上比率が高いため、通信事業者や通信装置メーカー、関連電子部品メーカーの設備投資動向に業績が左右される可能性があります。通信事業者は、急増するデータ・トラフィックに対応しながら、IoTサービスやクラウドサービスなど様々なニーズを実現するネットワークの構築が求められており、コスト効率を意識した設備投資を進めています。また、当社グループの収益の柱であるモバイル計測分野の業績は、携帯電話サービスの技術革新や普及率、加入者数及びスマートフォン等の買い替え率の変化に影響されます。

PQA事業は、食品産業向けの売上収益が8割以上を占めているため、食品メーカーの経営成績や設備投資動向に業績が左右される可能性があります。

(3) 海外展開に関するリスク

当社グループはグローバル・マーケティングを展開しており、米国、欧州、アジアなど世界各国で顧客密着力の向上を目指した積極的なビジネスを行っています。なかでも計測・PQA事業等を合わせた海外売上比率は当期実績で68%を占めており、顧客の多くもグローバル規模で事業を展開しているため、海外諸国の経済動向、国際情勢の変化、遵守すべき法令対応や当社グループのグローバル戦略の進捗によって、財政状態及び経営成績に大きな影響をもたらす可能性があります。また、通信業界では合従連衡や事業再編がグローバル規模で行われ、勢力図が変化しております。その結果、主要顧客の設備投資動向が大きく変化した場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響をもたらす可能性があります。

(4) 外国為替変動に関するリスク

当社グループの海外売上比率は当期実績で68%と高い比率となっています。当社では売掛金の回収などで発生する外貨取引への為替先物予約等によりリスク・ヘッジに努めておりますが、急激な為替変動は当社グループの財政状態及び経営成績に影響をもたらす可能性があります。

(5) 在庫陳腐化のリスク

当社グループは顧客のニーズやウォンツをきめ細かく捉え、製品やサービスを市場に提供するよう努めております。しかし、特に計測事業における製品群は技術革新が極めて速いため、製品及び部品の陳腐化が起こりやすく、在庫の長期化・不良化を招くことで当社グループの財政状態及び経営成績に影響をもたらす可能性があります。

(6) 繰延税金資産に関するリスク

当社グループは、税効果会計を適用し、繰延税金資産を計上しています。繰延税金資産の計算は、将来の課税所得に関する見積りを含めた予測等に基づいており、実際の結果が予測と異なる可能性があります。将来の課税所得の見積りに基づく税金負担の軽減効果が得られないと判断された場合、当該繰延税金資産は取り崩され、当社グループの財政状態及び経営成績に影響をもたらす可能性があります。

(7) 確定給付制度債務に関するリスク

当社及び一部の子会社の従業員を対象とした確定給付年金制度から生じる退職給付費用及び債務は、割引率等の数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されておりますが、確定給付制度債務の見込額を算出する基礎となる割引率等の数理計算上の仮定に変動が生じた場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響をもたらす可能性があります。

(8) 自然災害等の突発的事象発生のリスク

当社グループはグローバルに生産・販売活動を展開しているため、大規模な地震等の自然災害、火災、戦争、テロ及び暴動等が発生した場合には、当社グループや仕入先、顧客の主要設備への被害等により事業活動に支障が生じ、また、これらの災害等が政治不安又は経済不安を引き起こすことにより、当社グループの財政状態及び経営成績に影響をもたらす可能性があります。

 

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

1) 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度における世界経済は、先進国を中心に景気拡大が継続し、国内においても企業収益及び雇用情勢の改善が続くなど回復基調で推移しましたが、米中間の貿易摩擦や保護貿易主義による対立などにより不確実性を増しています。

情報通信分野においては、モバイル・ブロードバンド・サービスは質量ともに拡がりを見せ、データ通信量は急速に増加して、ネットワーク・インフラを逼迫させつつあります。それらの課題を解決するために、モバイル通信方式4Gは、LTE(Long Term Evolution)及びLTE-AdvancedそしてLTE-Advanced Pro(Gigabit LTE)と進化し続けています。加えて、次世代の通信方式5Gの仕様策定が3GPPで進行しています。2017年12月に5G NSA-NR(Non-Standalone New Radio)、2018年6月に5G SA-NR(Standalone New Radio)の標準化が完了し、5Gの超高速通信に関する主要機能の全仕様が規定されました。3GPPでは引き続き、ユースケースの拡張が期待される超低遅延及び多数同時接続の仕様策定を検討しており、2020年初旬に標準化完了が予定されています。

その結果、各国主要キャリアの5Gの商用化に向けたロードマップが具体化し、商用化スケジュールは順調に進展しています。2018年12月に北米や韓国でモバイル・ルーターを使用した先行的な5Gサービスが開始され、2019年4月からは5Gスマートフォンのサービスも開始されました。米国、アジアの主要端末ベンダーは、5Gスマートフォンサービスで使用される端末の開発を行い、MWC(Mobile World Congress)2019で相次いでリリースしました。

このような環境のもと、計測事業グループは、5Gの開発投資需要を獲得するためのソリューションの開発と組織体制の整備に注力し、5Gチップセット及び端末の初期開発需要を獲得しました。

PQA事業の分野においては、加工食品生産ラインの自動化投資が進むとともに、X線を用いた異物検出並びに包装に関する品質保証などの需要が堅調に拡大しています。PQA事業グループは、このような状況下でX線を軸としたソリューションの競争力強化と海外の販売体制の整備拡充に取り組みました。

この結果、受注高は100,819百万円(前年同期比13.9%増)、売上収益は99,659百万円(同15.9%増)、営業利益は11,246百万円(同128.9%増)、税引前利益は11,362百万円(同146.9%増)、当期利益は8,991百万円(同210.2%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は8,956百万円(同210.9%増)となりました。

なお、法人税の不確実性に係る未払法人所得税の見直しを行ったことなどにより、米国子会社の法人所得税費用が約5億円減少しています。この結果、法人所得税費用は2,371百万円(前年同期比39.2%増)となりました。

当連結会計年度末の資産合計は、130,467百万円となり、前連結会計年度末に比べ9,277百万円増加しました。

当連結会計年度末の負債合計は、44,789百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,912百万円増加しました。

当連結会計年度末の資本合計は、85,678百万円となり、前連結会計年度末に比べ7,364百万円増加しました。

 

セグメントごとの経営成績は以下のとおりです。なお、各セグメント別の売上収益は外部顧客に対する売上収益を記載しています。

当連結会計年度より、各事業セグメントの業績をより適切に評価するため、これまで各事業セグメントに配分していた一般管理費のうち本社管理費等を全社費用に含めるよう配分方法を変更しています。前連結会計年度の数値は、変更後の表示に合わせて組替再表示しています。

① 計測事業

当事業は、通信事業者、関連機器メーカー、保守工事業者などへ納入する、多機種にわたる通信用及び汎用計測器、測定システム、サービス・アシュアランスの開発、製造、販売を行っています。

当連結会計年度は、モバイル市場において北米・アジアを中心に、5Gのチップセット及び携帯端末の初期開発需要が想定を上回って推移しました。また、ネットワーク・インフラ市場においては、米国の内需関連需要が堅調でした。この結果、売上収益は68,168百万円(前年同期比25.2%増)、営業利益は9,413百万円(同338.3%増)、調整後営業利益は9,413百万円(同274.5%増)となりました。

(注)調整後営業利益とは、営業利益から一過性の性格を持つ損益項目を排除した恒常的な事業の業績を測る当社独自の利益指標です。

(非監査情報)営業利益から調整後営業利益への調整表

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

前年同期比

営業利益

2,147

9,413

7,265

338.3%

(調整項目)

 

 

 

 

事業構造改善費用

366

△366

 

調整後営業利益

2,513

9,413

6,899

274.5%

 

② PQA事業

当事業は、高精度かつ高速の各種自動重量選別機、自動電子計量機、異物検出機などの食品・医薬品・化粧品産業向けの生産管理・品質保証システム等の開発、製造、販売を行っています。

当連結会計年度は、食品・医薬品に対する安全・安心志向の高まりや、人手不足を背景とした検査工程を自動化する動きが加速しており、国内・海外とも食品市場の品質保証プロセスの自動化、高度化を目的とした設備投資が堅調に推移しました。一方、海外市場の販売力強化に向けた投資を行いました。この結果、売上収益は23,074百万円(前年同期比2.3%増)、営業利益は1,609百万円(同18.3%減)となりました。

 

③ その他の事業

その他の事業は、情報通信事業、デバイス事業、物流、厚生サービス、不動産賃貸等からなっております。

当連結会計年度は、デバイス事業において価格競争激化の影響を受けるなど、全体として低調に推移しました。この結果、売上収益は8,416百万円(前年同期比6.3%減)、営業利益は1,145百万円(同21.5%減)となりました。

 

2) キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の期末残高は、45,097百万円となり、前期末に比べ9,644百万円増加しました。なお、営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合わせたフリー・キャッシュ・フローは、11,631百万円のプラス(前期は4,014百万円のプラス)となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。

① 営業活動によるキャッシュ・フロー

営業活動の結果獲得した資金は、純額で12,247百万円(前年同期は7,946百万円の獲得)となりました。これは、税引前利益並びに減価償却費及び償却費の計上により資金が増加した一方、営業債権及びその他の債権の増加により資金が減少したことが主な要因です。なお、減価償却費及び償却費は4,386百万円(前年同期比101百万円増)となりました。

② 投資活動によるキャッシュ・フロー

投資活動の結果使用した資金は、純額で616百万円(前年同期は3,932百万円の使用)となりました。これは、有形固定資産の取得により資金が減少した一方、その他の金融資産の売却により資金が増加したことが主な要因です。

③ 財務活動によるキャッシュ・フロー

財務活動の結果使用した資金は、純額で2,052百万円(前年同期は8,201百万円の使用)となりました。これは、配当金の支払額2,198百万円(前年同期の配当金支払額は2,059百万円)が主な要因です。

 

3) 生産、受注及び販売の実績

① 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2018年4月1日

至 2019年3月31日)

前年同期比(%)

計測(百万円)

69,652

128.8

PQA (百万円)

22,618

98.9

報告セグメント計(百万円)

92,271

119.9

その他(百万円)

8,615

96.3

合計(百万円)

100,887

117.4

(注1)金額は販売価格によっております。

(注2)上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

② 受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

計測

68,802

121.5

15,988

100.4

PQA

23,317

102.5

4,582

107.3

報告セグメント計

92,119

116.0

20,571

101.8

その他

8,699

95.1

1,311

141.2

合計

100,819

113.9

21,882

103.6

(注)上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

③ 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2018年4月1日

至 2019年3月31日)

前年同期比(%)

計測(百万円)

68,168

125.2

PQA (百万円)

23,074

102.3

報告セグメント計(百万円)

91,242

118.5

その他(百万円)

8,416

93.7

合計(百万円)

99,659

115.9

(注1)上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

(注2)主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、その割合が100分の10以上に該当する相手先がないため記載を省略しております。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、実際の結果は、将来に関する事項の記述とは異なる可能性があります。その主な要因については、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載しておりますが、それらに限定されるものではありません。

 

1) 重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、国際会計基準(IFRS)に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、予想される将来のキャッシュ・フローや、経営者の定めた会計方針に従って財務諸表に報告される数値に影響を与える項目について、経営者が見積りを行うことが要求されます。これらの見積りは過去の実績等を勘案し合理的に判断していますが、結果として、これらの見積りと実際の結果が異なる場合があります。

 

2) 経営成績

当社グループは、計測事業、PQA事業の2つを報告セグメントとしています。

① 計測事業

当社グループの売上収益の68%を占める計測事業は、「モバイル市場」「ネットワーク・インフラ市場」「エレクトロニクス市場」向けの3つのサブセグメントに区分しております。

a. モバイル市場

モバイル市場には、携帯電話サービスを行う通信事業者の端末受入検査用途向け計測器や、スマートフォン等の携帯電話端末やICチップセット、その他関連電子部品メーカーでの設計、生産、機能・性能検証、保守用途向けの計測器等を含めております。

当市場の需要は、携帯電話サービスの技術革新や普及率、加入者数の推移のほか、端末/チップセット・メーカーの新規参入又は撤退、端末やチップセットのモデルチェンジや出荷数などに影響される傾向があります。

現在、世界各国でLTE方式による多様なモバイル・ブロードバンド・サービスが展開されています。業界をリードする端末/チップセット・メーカーや通信事業者はサービスの更なる高度化・高品質化を目指し、LTE-Advanced 、LTE-Advanced Proへと通信システムの深化に取り組んでいるものの、端末製造市場ではスマートフォンの総出荷台数の飽和により投資抑制の動きが続いています。

一方で、LTEに続く次世代の通信方式(5G)では、2017年12月のNSA-NRに続いて2018年6月にSA-NRの規格仕様が策定され、第1フェーズの標準化が完了しました。これにより、2020年の本格的な5G導入に向けた開発案件が具体化し5G計測需要が顕在化してきました。加えて、5Gのユースケースとして期待されるIoT分野や自動車業界での自動運転・車載通信分野では、新たなサービスの実現に向けたモバイル通信技術の開発も事業機会として顕在化しています。

当社は、引き続き競争力のある最先端計測ソリューションを開発・投入するとともに、開発ポートフォリオ・マネジメントを的確に遂行することで、収益基盤の強化に努めてまいります。

b. ネットワーク・インフラ市場

ネットワーク・インフラ市場には、有線・無線通信事業者のネットワーク建設、保守、監視及びサービス品質保証用途向けのソリューションや、通信装置メーカーの設計、生産、試験及び調整用途向けソリューション等を含めております。

当市場においては、クラウドサービスの高度化やモバイル・ブロードバンド・サービスの普及によりデータ・トラフィックが急増しているため、ネットワークの更なる高速化を進める通信事業者や装置メーカーは100Gbpsサービスの普及促進、400Gbpsネットワーク装置の研究開発に注力しています。また、モバイル端末からの接続性を向上させるため、有線・無線通信技術を統合活用することにより基地局ネットワークを効率的に高密度化することが進められています。これらの市場動向の変化に伴い、有線・無線技術を最適化した計測ソリューションの需要が本格化しています。さらに、クラウドサービスを支えるデータセンターの増加などを背景に、高速データ通信装置の市場が拡大するとともに、高速光通信モジュールの研究開発や製造市場が増加基調にあり競争が激しくなっています。

当社は、通信機器の研究・開発向けソリューションに加え、通信インフラの構築・監視からサービス品質保証までの総合ソリューションを提供することで、事業の拡大に取り組んでまいります。

c. エレクトロニクス市場

エレクトロニクス市場には、通信ネットワークに関連する通信機器やその他の電子機器に使用される電子デバイスの設計、生産、評価をはじめ、エレクトロニクス分野で幅広く利用されている計測器等を含めております。

当市場の需要は、通信機器や情報家電、自動車等に使用される電子部品及び電子機器の生産規模に影響を受ける傾向があります。モバイル・ブロードバンド・サービスやLPWA(Low Power Wide Area)デバイスなどを使用したIoTサービスの拡大により、多岐にわたる用途の無線モジュールの開発・製造用計測ソリューション需要が増加しております。また、周波数資源の有効利用のために各種無線システムのデジタル化が進められ、新システムの製造及び保守用計測ソリューションの需要は堅調に推移しています。

当社は、エレクトロニクス市場に対するソリューションを拡充し、更なる事業の拡大に努めてまいります。

 

② PQA事業

PQA事業は、当社グループの売上収益の23%を占めています。当事業は、食品産業向けの売上収益が8割以上を占めているため、食の安全安心に関する意識の高まりや食品メーカーの業績に影響を及ぼす消費支出水準の変化に大きな影響を受けます。

主力製品には、食品製造ラインにおいて高速搬送しながら高精度に計量する重量選別機や食品中に混入する金属や石などの異物を高感度に検出し製造ラインから排除する異物検査機器(X線検査機等)などがあります。日本市場においては異物混入に対する顧客の関心に加え、人手不足による自動化ニーズの高まりを背景に、食品生産ラインの自動化、省人化を目的とした設備投資が堅調でした。特に食品・医薬品の製造ラインにおいて、稼働状況を監視するとともに品質情報を収集分析し、歩留まり向上や品質管理強化を実現する総合品質管理用ソフトウェアソリューションの需要が高まりつつあります。

また、海外市場では、米州、欧州、中国などでグローバルに事業を展開する重要顧客の需要が堅調に推移し、当事業の海外売上比率は44%となっています。

食品メーカーの品質検査への関心は高く、世界のすべての地域で需要は堅調に推移するものと見込んでおります。この需要に応えるために、新製品及び品質保証ソリューションの開発、提供に努めるとともに、海外現地生産を含むサプライ・チェーンの最適化を推進し、事業拡大と収益性の向上に取り組んでまいります。

 

3) 財政状態

① 資金需要と流動性の管理

当社グループの資金需要は、製品の製造販売に関わる部材購入費や営業費用などの運転資金、設備投資資金及び研究開発費が主なものであり、内部資金のほか、直接調達・間接調達により十分な資金枠を確保しています。また、2017年3月に設定した借入枠75億円のコミットメントライン(2020年3月まで有効)により財務の安定性を確保しています。今後とも、大きく変動する市場環境のなかで、国内外の不測の金融情勢に備えるとともに、運転資金、長期借入債務の償還資金及び事業成長のための資金需要に迅速、柔軟に対応してまいります。

当期末の有利子負債残高(リース債務除く)は、16,248百万円(前期末の有利子負債残高は15,944百万円)となりました。また、デット・エクイティ・レシオは0.19(前期末は0.20)、ネット・デット・エクイティ・レシオは△0.34(前期末は△0.25)となっております。当期の売上収益に対する期末平均棚卸残高の回転率は5.4回となりました。

今後ともACEの改善(投下資本コストを上回る税引後営業利益の達成)とCCC向上によるキャッシュ・フロー創出及びグループ内キャッシュ・マネジメント・システム等による資金効率化を原資として、有利子負債の削減、デット・エクイティ・レシオの改善、株主資本の充実等、財務体質の強化に努めてまいります。

2019年3月期末の当社の格付(R&I:㈱格付投資情報センター)は、短期格付が「a-1」、長期格付が「A-」となっています。当社は、更なる格付向上に向けて、財務安定性の改善に引き続き取り組んでまいります。

 

(注1)デット・エクイティ・レシオ:有利子負債/親会社の所有者に帰属する持分

(注2)ネット・デット・エクイティ・レシオ:(有利子負債-現金及び現金同等物)/親会社の所有者に帰属する持分

(注3)ACE (Anritsu Capital-cost Evaluation): 税引後営業利益-資本コスト(5%)

(注4)CCC:キャッシュ・コンバージョン・サイクル

 

② 資産、負債及び資本

a. 資産

資産合計は、130,467百万円となり、前期末に比べ9,277百万円増加しました。主に現金及び現金同等物並びに営業債権及びその他の債権が増加した一方、有形固定資産並びにその他の金融資産が減少しました。

b. 負債

負債合計は、44,789百万円となり、前期末に比べ1,912百万円増加しました。主に従業員給付が増加した一方、営業債務及びその他の債務が減少しました。

c. 資本

資本合計は、85,678百万円となり、前期末に比べ7,364百万円増加しました。これは、主に利益剰余金が増加したことによるものです。

この結果、親会社所有者帰属持分比率は65.6%(前期末は64.6%)となりました。

なお、有利子負債残高(リース債務を除く)は16,248百万円(前期末は15,944百万円)となり、デット・エクイティ・レシオは0.19(前期末は0.20)となりました。

 

4) キャッシュ・フロー

キャッシュ・フローの状況は、「(1) 経営成績等の状況の概要 2) キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

 

5) 経営戦略と今後の方針について

経営戦略と今後の方針は、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。

(経営成績等の状況の概要に係る主要な項目における差異に関する情報)

 IFRSにより作成した連結財務諸表における主要な項目と連結財務諸表規則(第7章及び第8章を除く。以下「日本基準」という。)により作成した場合の連結財務諸表におけるこれらに相当する項目との差異に関する事項は、以下のとおりであります。

 

前連結会計年度

(自 2017年4月1日

至 2018年3月31日)

当連結会計年度

(自 2018年4月1日

至 2019年3月31日)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(開発費の資産計上)

日本基準において費用処理している一部の開発費用について、IFRSにおいては資産計上の要件を満たすことから「のれん及び無形資産」に計上しております。

この結果、連結財政状態計算書の「のれん及び無形資産」が1,269百万円増加しております。また、連結純損益及びその他の包括利益計算書の「売上原価」が320百万円増加し、「研究開発費」が562百万円減少しております。

(非上場株式の公正価値評価)

日本基準においては時価のない有価証券(非上場株式)は移動平均法による原価法により計上し減損を行っておりますが、IFRSにおいては公正価値を見積り、取得価額との差額をその他の資本の構成要素として遡及的に認識しております。

この結果、連結財政状態計算書の「その他の金融資産」(非流動資産)が1,234百万円増加しております。

 

(退職後給付債務に関する会計処理の差異)

日本基準においては、退職給付債務から年金資産の額を控除した額及び未認識数理計算上の差異を退職給付に係る負債に計上しておりますが、IFRSにおいては確定給付制度の再測定に伴う調整額を発生時にその他の包括利益で認識する方法を選択しております。また、日本基準においては一部の子会社において小規模企業の簡便的な退職給付債務の計算を採用しておりますが、IFRSにおいては原則に従って計算しております。

これらの結果、日本基準の連結財政状態計算書において計上されている「退職給付に係る調整累計額」(その他の包括利益累計額)△581百万円が取り消されております。また、連結純損益及びその他の包括利益計算書の「売上原価」が191百万円減少し、「販売費及び一般管理費」が38百万円、「研究開発費」が5百万円増加し、その他の包括利益の「確定給付制度の再測定」が988百万円計上されております。

収益認識における会計処理の差異

日本基準においては複数要素取引の収益認識について残余法による配分を行っておりますが、当連結会計年度より適用したIFRS15においては複数要素取引の中のそれぞれの構成要素が別個の履行義務として識別される場合に取引価格を独立販売価格に基づき比例的に配分し、それぞれの履行義務について収益を認識しております。

また、当連結会計年度より適用したIFRS15の適用にあたっては、適用開始による累積的影響を当連結会計年度の利益剰余金期首残高に対する修正として認識する経過措置に準拠して遡及適用を行っております。

この結果、連結持分変動計算書における利益剰余金期首残高について183百万円の増加を修正として認識しております。

 

(開発費の資産計上)

日本基準において費用処理している一部の開発費用について、IFRSにおいては資産計上の要件を満たすことから「のれん及び無形資産」に計上しております。

この結果、連結財政状態計算書の「のれん及び無形資産」が1,225百万円増加しております。また、連結純損益及びその他の包括利益計算書の「売上原価」が354百万円増加し、「研究開発費」が371百万円減少しております。

(非上場株式の公正価値評価)

日本基準においては時価のない有価証券(非上場株式)は移動平均法による原価法により計上し減損を行っておりますが、IFRSにおいては公正価値を見積り、取得価額との差額をその他の資本の構成要素として遡及的に認識しております。

この結果、連結財政状態計算書の「その他の金融資産」(非流動資産)が1,317百万円増加しております。

 

(退職後給付債務に関する会計処理の差異)

日本基準においては、退職給付債務から年金資産の額を控除した額及び未認識数理計算上の差異を退職給付に係る負債に計上しておりますが、IFRSにおいては確定給付制度の再測定に伴う調整額を発生時にその他の包括利益で認識する方法を選択しております。また、日本基準においては一部の子会社において小規模企業の簡便的な退職給付債務の計算を採用しておりますが、IFRSにおいては原則に従って計算しております。

これらの結果、日本基準の連結財政状態計算書において計上されている「退職給付に係る調整累計額」(その他の包括利益累計額)△477百万円が取り消されております。また、連結純損益及びその他の包括利益計算書の「売上原価」が141百万円減少し、「販売費及び一般管理費」が80百万円、「研究開発費」が45百万円増加し、その他の包括利益の「確定給付制度の再測定」が96百万円計上されております。

 

前連結会計年度

(自 2017年4月1日

至 2018年3月31日)

当連結会計年度

(自 2018年4月1日

至 2019年3月31日)

(有給休暇及び特別休暇等の債務計上)

IFRSにおいて、当社及び一部の子会社の有給休暇及び一定の勤務年数を条件として付与される特別休暇や報奨金の見積額を債務として計上していることから、連結財政状態計算書の「従業員給付」(流動負債)が212百万円、「従業員給付」(非流動負債)が717百万円増加しております。

 

(繰延税金資産及び繰延税金負債における一時差異及び回収可能性検討の差異)

IFRSにおいて、従業員給付等の連結財政状態計算書上の他の項目の調整に伴う一時差異が発生したこと及び繰延税金資産の回収可能性に関して将来減算一時差異を利用できる課税所得が生じる可能性をIFRSに基づき検討した結果、連結財政状態計算書の「繰延税金資産」が397百万円増加しております。また、連結純損益及びその他の包括利益計算書の「法人所得税費用」が75百万円増加しております。

 

(政府補助金に関する会計処理の差異)

資産に対する政府補助金について、日本基準では対象資産の取得価額から減額する圧縮記帳を行っておりますが、IFRSでは当該政府補助金を繰延収益として計上し、資産の耐用年数にわたって規則的に純損益に認識する方法によっております。

この結果、連結財政状態計算書の「有形固定資産」が1,146百万円、「その他の流動負債」が88百万円、「その他の非流動負債」が1,067百万円、それぞれ増加しております。また、連結純損益及びその他の包括利益計算書の「売上原価」が14百万円、「販売費及び一般管理費」が28百万円、「研究開発費」が35百万円、「その他の収益」が88百万円それぞれ増加しております。

 

(IFRS移行時の累積換算差額)

IFRSでは、IFRS初度適用における免除規定を適用し、日本基準においてその他の包括利益累計額に含めて表示しているIFRS移行時の在外営業活動体の累積換算差額△7,207百万円をゼロとみなし、連結財政状態計算書の「利益剰余金」に計上しております。

 

(資産計上された開発費に関連する支出)

日本基準において開発費に関連する支出は営業活動によるキャッシュ・フローに区分しておりますが、IFRSにおいては、資産計上された開発費に関連する支出は投資活動によるキャッシュ・フローに区分されることから、投資活動によるキャッシュ・フローが562百万円減少し、営業活動によるキャッシュ・フローが同額増加しております。

(有給休暇及び特別休暇等の債務計上)

IFRSにおいて、当社及び一部の子会社の有給休暇及び一定の勤務年数を条件として付与される特別休暇や報奨金の見積額を債務として計上していることから、連結財政状態計算書の「従業員給付」(流動負債)が221百万円、「従業員給付」(非流動負債)が746百万円増加しております。

 

(繰延税金資産及び繰延税金負債における一時差異及び回収可能性検討の差異)

IFRSにおいて、従業員給付等の連結財政状態計算書上の他の項目の調整に伴う一時差異が発生したこと及び繰延税金資産の回収可能性に関して将来減算一時差異を利用できる課税所得が生じる可能性をIFRSに基づき検討した結果、連結財政状態計算書の「繰延税金資産」が162百万円増加しております。また、連結純損益及びその他の包括利益計算書の「法人所得税費用」が22百万円減少しております。

 

(政府補助金に関する会計処理の差異)

資産に対する政府補助金について、日本基準では対象資産の取得価額から減額する圧縮記帳を行っておりますが、IFRSでは当該政府補助金を繰延収益として計上し、資産の耐用年数にわたって規則的に純損益に認識する方法によっております。

この結果、連結財政状態計算書の「有形固定資産」が1,068百万円、「その他の流動負債」が87百万円、「その他の非流動負債」が979百万円、それぞれ増加しております。また、連結純損益及びその他の包括利益計算書の「売上原価」が7百万円、「販売費及び一般管理費」が48百万円、「研究開発費」が22百万円、「その他の収益」が88百万円それぞれ増加しております。

 

同左

 

 

 

 

 

 

(資産計上された開発費に関連する支出)

日本基準において開発費に関連する支出は営業活動によるキャッシュ・フローに区分しておりますが、IFRSにおいては、資産計上された開発費に関連する支出は投資活動によるキャッシュ・フローに区分されることから、投資活動によるキャッシュ・フローが371百万円減少し、営業活動によるキャッシュ・フローが同額増加しております。

 

4【経営上の重要な契約等】

特記すべき事項はありません。

 

5【研究開発活動】

当連結会計年度の研究開発投資(無形資産に計上された開発費を含む)の内訳は、次のとおりであります。

 

 

当連結会計年度

 

売上収益比率

計測事業

9,086百万円

 

13.3%

PQA事業

2,174百万円

 

9.4%

その他の事業

526百万円

 

6.3%

基礎研究開発

220百万円

 

-

合 計

12,008百万円

 

12.0%

 

また、セグメント別の主な研究開発成果は次のとおりです。

 

(1) 計測事業

計測事業は、当社、Anritsu Company(米国)、Azimuth Systems, Inc.(米国)、Anritsu Ltd.(英国)、Anritsu A/S(デンマーク)等において、保有する技術を相互補完することによりシナジー効果を上げるべく協調して開発を進めております。

 

1) 5G NRのRF試験とプロトコル試験に対応したMT8000Aの開発

MT8000Aは、第5世代通信システム5G NR(New Radio)のRF試験とプロトコル試験に対応した、モバイル端末、チップセット及びデバイス開発用テストプラットフォームとして2018年4月に販売を開始しました。2018年度は引き続いて、Sub-6GHzにおけるデータ通信を高速化する4x4 MIMOや、ミリ波の広帯域化を実現する8CCなどの最新技術への対応、ミリ波の28GHz帯に加え39GHz帯への対応を行いました。さらに、プロトコル試験で必要なテストケースの編集、実行、解析を統合的にサポートするRapid Test Designer(RTD)の開発、そしてOTA(Over The Air)環境でのRF試験とプロトコル試験に使用するOTAチャンバとして、RF Chamber MA8171A及びCATR Anechoic Chamber MA8172Aの開発にも取り組みました。これによりミリ波のビーム特性評価とビーム検証試験が可能となります。

 

2) 5G NR モバイルデバイステストプラットフォームME7834NRの開発

5G NR対応のモバイル端末のプロトコルコンフォーマンス試験と通信事業者受入試験に対応する自動試験システムとして、5G NRモバイルデバイステストプラットフォームME7834NRを開発しました。

OTAチャンバとRFコンバータを組み合わせることで、Sub-6GHz及びミリ波を含む3GPPで規定される5G周波数帯域をカバーします。2018年8月には、モバイル端末の認証試験基準を定めているGCF(Global Certification Forum)及びPTCRB(PCS Type Certification Review Board)により、5G NRモバイル端末用テストプラットフォームとして登録されました。その後、2019年1月に開催されたGCFミーティングにおいて、複数のミリ波の周波数帯で認証を得ました。今後もGCF及びPTCRBのプロトコルコンフォーマンステストの認証カバー率を増やしていきます。

 

3) 5G NR RF コンフォーマンステストシステムME7873NRの開発

5G NR対応のモバイル端末のRF試験に対応する自動試験システムとして、5G NR RFコンフォーマンステストシステムME7873NRを開発しました。

3GPPで規定されるRF試験の他、基地局と携帯端末間の無線リソース制御、例えば隣接基地局間のハンドオーバなどが正しく動作しているかを確認するための試験であるRRM(Radio Resource Management)試験にも対応しています。OTAチャンバとRFコンバータを組み合わせることで、Sub-6GHz及びミリ波を含む3GPPで規定される5G周波数帯域をカバーします。2019年1月からSub-6GHzノンスタンドアローンモード(NSA)でGCFによる認証取得を開始し、3月にはGCFでもスプリアス試験の認証を取得しました。今後、Sub-6GHz スタンドアローンモード(SA)やミリ波の周波数帯でも認証を取得していく予定です。

 

4) 5G波形生成ソフトウェアMX370113A、MX269913Aの開発

5Gでは、28GHz、39GHzを使用するミリ波に加え、6GHz以下を使用するSub-6GHzの周波数帯も利用します。4G LTEに近い周波数帯であることから、Sub-6GHzに対応した5Gシステムの送信/受信特性評価においては、LTE、LTE-Advancedなど従来の通信システムで使用している信号発生器を活用したいというニーズが高まっています。

そこで、各種通信方式に対応してきたベクトル信号発生器MG3710A、シグナルアナライザMS2690A/MS2691A/MS2692Aを機能強化し、5G NR信号の出力を可能とするソフトウェアを開発しました。アップリンク信号とダウンリンク信号をサポートし、コンポーネントキャリア(最大100MHz)、サブキャリア間隔、変調方式などのパラメータを設定することで、3GPPで規定される5G NR信号の波形ファイルを生成できます。

 

5) MT8870A 5G NR Sub-6GHzソフトウェアの開発

Sub-6GHzは、モビリティやワイドエリアカバレッジなど、4G LTEに近い周波数特性の中でサービスを提供できるというメリットがあり、2020年ころまでには5Gシステムの主役になることが予測されています。このため、スマートフォンなど5Gデバイスベンダにとって、Sub-6GHzに対応することが最初のステップになることから、今後量産用測定器として生産性向上のニーズが高まることが見込まれています。

そこで、ユニバーサルワイヤレステストセット MT8870Aのソフトウェアを拡充し、Sub-6GHz対応モバイル端末の評価を可能とするソフトウェアを開発しました。MT8870Aは上限6GHzのシームレスな周波数バンドと160 MHz帯域幅を標準搭載しており、ハードウェアをアップグレードすることなく、3GPP 5G NR Sub-6GHzで定義される試験が行えます。また、次世代のモバイルデバイスで一般的なデザインになる4G + 5G + IEEE 802.11ax + Bluetooth 5を共通のプラットフォームで試験可能となり、試験コストを削減できます。

 

6) 5Gネットワークを支える光ファイバ建設・保守用MT9085シリーズOTDRの開発

5Gの実用化に向け、モバイルネットワークそしてメトロ・コアネットワークの大容量化が急ピッチで進んでいます。これらのネットワークを支えるのが光ファイバであり、その建設・保守作業でOTDR(Optical Time Domain Reflectometer)が利用されます。しかし、建設・保守作業の増加とともに光ファイバ測定に不慣れな作業者が増え、使いやすくかつ分かりやすいOTDRが求められています。

そこで、新たにMT9085シリーズOTDRを開発しました。MT9085は、ロータリノブ、ハードキーなど従来の使い勝手の良さを継承しつつ、8インチワイドの大画面にタッチスクリーン操作を追加することで、今までOTDRを操作したことのない作業者にも直感的に操作できるようにしました。また、測定結果が一目でわかるFiber Visualizer機能を追加しました。これにより、熟練した作業者だけでなく初めての作業者まで光ファイバ建設・保守現場作業が容易に行えるようになりました。さらに、WLANやBluetoothなどを利用し、測定結果の一元管理も簡単に行えます。

 

7) 5Gネットワークの建設・保守に貢献するハンドヘルドスペクトラムアナライザ MS2090Aの開発

5Gネットワーク建設・保守用測定器として求められる機能や性能を有し、各種無線通信ネットワークの品質向上に最適なフィールドマスタ プロ MS2090Aを開発しました。

MS2090Aは、9kHzから9/14/20/26.5/32/44GHz及び54GHzまでの周波数範囲をカバーします。表示平均ノイズレベル(DANL)-160dBm未満、3次相互変調歪(TOI)+20dBm(代表値)など、最高クラスの性能を備え、高精度でスペクトラムクリアリング(周波数の空き状況)、アンテナアライメント、高調波及び歪み測定が可能です。また、変調解析帯域幅は100MHz、位相ノイズは100kHzオフセットで‒110dBc/Hz(@1GHz、代表値)と最高クラスを実現しており、デジタル無線システムにおける高精度な変調測定が行えます。さらに、±0.5dB(代表値)の振幅確度により、送信機パワー及びスプリアス測定において、信頼性の高い結果が得られます。

さらに、5G帯域(Sub-6GHz及びミリ波)における変調解析をサポートしています。コンプライアンステスト、そして高調波やスプリアスのテストにも使用できます。最大100MHzのリアルタイムスペクトラム解析スパンで、セルラ帯域や無線LAN帯域での干渉をモニタリングできます。

 

8) 5Gモバイルネットワークの開通・保守機能を強化したMT1000Aの開発

MT1000Aは、10Mbpsから100Gbpsまでの通信速度で運用される各種ネットワークの伝送品質を評価できるポータブル測定器です。ネットワーク評価の標準試験であるRFC2544試験やY.1564試験に加え、OTNやSDH/SONET、モバイルネットワークで使用されるCPRIやOBSAIも試験できます。

今後5G基地局インターフェースであるCPRIは、EthernetをベースとしたeCPRI/RoEに拡張されます。Ethernetはベストエフォート通信のため、5Gでの運用においてはネットワークの遅延時間を厳しく管理する必要があります。5Gではミリ波など飛距離の短い高周波数帯の電波を使用するため、数多くの基地局が必要になります。これらの基地局の時刻同期を行うためにPTPが用いられます。このため、eCPRI/RoEや時刻同期を評価できる測定器のニーズが高まっていました。

そこで、eCPRI/RoEや時刻同期を評価できる機能を開発しました。MT1000Aはマスター機とスレーブ機として連携させ、マスター機からスレーブ機をリモート動作させることができます。これによりマスター機でアップリンク(端末からサーバーへのデータ転送)の通信速度を、スレーブ機でダウンリンクの通信速度を同時かつ正確に測定できるようにしました。また、オプションの高精度GPS同期発振器 MU100090Aと組み合わせることにより、GPSから得られた時刻情報を元にした時刻同期試験や遠く離れた2台のMT1000A間の片方向遅延の高精度な測定が行えます。

 

9) MP1900A用400GbE PAM4 BER測定モジュールの開発

次世代5Gモバイル通信やクラウド通信サービスのインフラとなるデータセンタでは、高速化に加え、PAM4やマルチレーンを用いた伝送容量の拡張が検討されています。400GbEは、26.5625 Gbaud PAM4 x 8レーン、53.125 Gbaud PAM4 x 4レーンの伝送方式によって実現されます。4値の振幅レベルで情報を表すPAM4方式では、NRZ方式に対して信号レベル間の差が1/3となり、高baudレート化にともない1シンボルの単位時間は短くなるため、高速伝送を実現する上でテスト信号の品質の重要度が増しています。また、マルチレーン化や集積設計によりクロストークやノイズなどに起因する信号品質の劣化が避けられなくなっており、劣化要因のストレスを加えたテスト信号による最小受信感度評価の要求が高まっています。

そこで、高信号品質を実現した64 Gbaud PAM4 PPGと、高感度性能の32 Gbaud PAM4 EDを開発しました。64 Gbaud PAM4 PPGモジュールは、高品質信号性能の要求へ応え、Tr/Tf(20-80%)時間8.5 ps(代表値)、低残留ジッタ170 fs(代表値)を実現しました。4chまで拡張可能なマルチチャネル機能、伝送路損失による信号劣化を補償するためのエンファシス機能も備えています。32 Gbaud PAM4 EDモジュールは、23 mV(代表値)の高感度性能を実現しているとともに、受信感度評価で必須となるクロックリカバリ機能を内蔵し、PAM4シンボルエラー測定に対応しました。マルチチャネル機能により、測定器導入計画に合わせた拡張を可能にするとともに、複数レーン同時測定による測定時間短縮に貢献します。

 

10) BERTWave™ MP2110A用4チャネルのサンプリングオシロスコープオプションの開発

光通信ネットワークを構成する光モジュールは、チャネル数、波長、伝送方式(NRZ/PAM4)などによりさまざまな種類が存在しますが、一方でコスト要求は厳しさを増しています。そのため、評価系構築にあたってはさまざまな方式に対応し、かつコストパフォーマンスの高いシステム構成が求められています。

そこで、光モジュールの評価用測定器として提供している、オシロスコープとBERTを一体化したBERTWave™ MP2110Aの機能を強化し、4チャネルのサンプリングオシロスコープオプションを開発しました。100GbEや400GbEなど光モジュール評価で必要とされるアイパターン解析、アイマスク試験、TDECQ(Transmitter and Dispersion Eye Closure Quaternary)測定が行えます。また、従来の2チャネルモデルに比べ、チャネル単価が約1/2に低減されています。さらに、多チャネル同時測定と、各チャネルの個別測定の両方が可能です。これにより、多チャネルモジュールだけでなく単チャネルモジュールを複数同時に測定することが可能であり、測定システムを柔軟に構築できます。

 

11) 標準化活動

計測事業における研究開発活動の重要な取り組みのひとつとして、国内外の標準化活動へ積極的に参画しています。情報通信産業における最先端の知識・技術を常に製品へ反映し、競争力に優れたソリューションをタイムリーに提供するために、主要な標準団体として現在3GPP、ITU-T、IEEE等へ参加し、4G/5G、データセンタ、IoT/M2M、コネクテッドカーといった有線・無線通信事業の戦略立案や情報収集に役立てています。

特に移動通信システムの規格を策定する3GPPにおいては、基地局と携帯端末の通信手順試験を可能とするコンフォーマンステスト(端末認証試験)仕様策定に際し、LTE/LTE-Advanced(4G)/New Radio(5G)の規格策定段階から数多くの寄書を行っています。2018年度は国内外の通信オペレータ、チップセットベンダ、端末ベンダとも協力しつつ、5G移動通信システム関連規格を含むリリース16の策定に参加しました。

この他、5Gモバイルフロントホール構築に必要な規格開発に参画し、「IEEE 1914.3-2018(注)」の公開に貢献しました。本規格は、5Gの無線信号と有線インターフェースの親和性を高め、モバイルフロントホールを効率化するための規格であり、2018年10月にIEEEにより新規に公開されました。

(注)IEEE 1914.3-2018

RoEを使用したイーサネットフレーム上での転送のための無線プロトコルのカプセル化とマッピングを定義。IEEE 1914.3™の採用により、ルーティングされたイーサネットネットワークで、デジタル化された無線データ、CPRI™、I/Qデータ、コントロールチャネルフレームを利用できるようになる。イーサネットをIEEE 1914.3フレームでトランスポート層として利用すると、より優れたリンク能力や転送効率など、フロントホールネットワーク性能が改善することに加え、必要なネットワーク遅延保証を維持することができる。

 

(2) PQA事業

PQA事業は、アンリツインフィビス㈱が研究開発を行っております。

持続可能社会の実現に貢献する品質保証ソリューションの開発

世界各国で、SDGs(Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標)の実現に向けた機運が高まっています。PQA事業の主な市場である食品産業においても、「安全・安心な食品の安定供給」に加えて、食品の廃棄ロスを減らして「持続可能な生産と消費のスタイル」を構築することが課題として注目されています。

お客様の品質保証活動の高度化や生産性の向上などの便益をご提供するPQA事業の品質保証ソリューションは、家庭から食品工場へと食品加工の集約化を促します。高度に品質管理された生産ラインで食品を長期に保存可能な状態に加工することで、不良品の回収、消費期限切れ、家庭での調理などによる廃棄ロスを減少させる効果が期待できます。

当社は、このような品質保証ソリューションが持つ社会的価値に以前から注目し、品質検査に有効なセンシング技術の研究と品質保証の高度化に貢献するソリューションの開発に取り組んでおります。

当期におきましては、新開発のデュアルエナジ―センサと画像処理アルゴリズムを採用した「デュアルエナジ―センサ搭載XR75シリーズX線検査機」を開発し販売を開始いたしました。この新製品は、肥育された鶏肉に残った微小な骨を検出するなど、従来機では検出が困難であった異物の排除に威力を発揮します。また、併せて開発した総合品質管理・制御システム「QUICCA3」は、品質検査機が出力する大量の品質データを分析し、生産状況や品質状況の見える化を通じて、出荷品質と生産性の向上に貢献します。また、最新のIoT技術を取り入れてお客様の工場で導入が進むMES(Manufacturing Execution System、製造実行システム)などとの連携性を向上しています。

PQA事業は、オリジナルでハイレベルな品質保証ソリューションのご提供を通じて、「持続可能な社会」の実現に貢献しています。