文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) 会社の経営の基本方針
当社は、様々なステークホルダーに対する責任と対話を重視し、以下のとおり経営理念・経営ビジョン・経営方針を策定しています。
経営理念
誠と和と意欲をもって、“オリジナル&ハイレベル”な商品とサービスを提供し、安全・安心で豊かなグローバル社会の発展に貢献する
経営ビジョン
衆知を集めたイノベーションで社会のサステナビリティに貢献し、“利益ある持続的成長”を実現する
経営方針
1. 衆知を集めた全員経営でハツラツとした組織へ
2. イノベーションで成長ドライバーの獲得
3. グローバル市場でマーケット・リーダーになる
4. 良き企業市民として人と地球にやさしい社会づくりに貢献
(2) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は、企業価値の最大化を目指してキャッシュ・フロー(CF)を重視した経営を展開しております。また、投下資本が生み出した付加価値を評価する当社独自の指標「ACE」を各事業部門の業績評価の指標としております。投下資本の効率性の指標として「ROE」の目標も設定しております。
(注)ACE (Anritsu Capital-cost Evaluation): 税引後営業利益-資本コスト(5%)
なお、現在運用している取締役(社外取締役及び監査等委員であるものを除く。)、執行役員及び理事を対象とした業績連動型株式報酬制度(株式交付信託)においては、その評価指標として、本制度の対象期間における各事業年度の期初に定める営業利益及び中期経営計画「GLP2020」に掲げる営業利益を採用しています。また、金銭の業績連動型報酬(年次役員賞与)の評価には、売上高、営業利益、営業CF及び資本効率(「ROE」、「ACE」、「ROIC」)の達成度、対前年比等の指標を用いています。
(3) 中長期的な経営戦略、経営環境及び対処すべき課題等
今後の見通しにつきましては、新型コロナウイルス感染症の拡大や米中貿易摩擦の長期化など、今後の世界経済の動向は予断を許さない状況が続いています。今後の新型コロナウイルス感染症の拡大の経過によっては、サプライチェーンの寸断や様々な事業活動の制限などにより、長期間にわたり円滑な企業活動が妨げられる可能性があります。当社グループは、事業への影響を最小限に抑えるべく、テレワークの推進、ITツールの活用及び調達の多様化等の対策に取り組みます。一方、情報通信分野においては、世界各国で5Gサービスが開始され、今後も5G関連の需要は拡大していくことが見込まれます。
このような環境の中、当社グループは、中長期経営戦略及び「2020 VISION」のもと、中期経営計画「GLP2020」(計画期間: 2018~2020年度)の達成に取り組み、世界各国の5G商用化計画に的確に対応したソリューションをタイムリーに提供することで、モバイル市場での競争力優位を確立し、5G/IoT社会を支えるリーディングカンパニーを目指すとともに、企業価値の向上を図ってまいります。
① 中長期的な経営戦略
当社グループは、主力の計測事業を軸に、ICT(Information and Communication Technology)サービスに関わるビジネスを展開しております。ICT分野における成長ドライバーは、「世界的なモバイル・ブロードバンド・サービスとIoTによる新たな社会価値の創造」です。そのプラットフォームとなるものが、中長期にわたるユーザー・エクスペリエンスの向上を目指すコミュニケーションシステムのイノベーションです。このイノベーションを実現するために、広帯域化を支えるLTE、LTE-Advanced/Pro、更に5Gへと続くモバイル通信技術の継続的開発や超高速広帯域な接続性の向上を支える通信ネットワークの再構築が進められています。幅広いモバイル・ブロードバンド・サービスのインフラとなることが期待される5GのNSA-NR、SA-NRの規格の標準化が完了し、これを受けて世界的に5Gの商用化に向けた開発が本格化しています。そして、2030年頃の提供を目指し、5Gを高度化させた6Gの検討が、米国、中国、韓国及び日本で始まりました。基本的な社会インフラからIoTによる新たな価値創造に至るまで、持続可能な社会の実現には「いつでも、どこでも、安全・安心、快適につながる」ネットワークが不可欠です。アンリツは、無線・有線の両方をカバーする先進の計測カンパニーとして、社会とお客様のネットワーク課題を解決してまいります。
PQA事業の成長ドライバーは、「食品・医薬品市場における品質保証市場に拡大」です。食品、医薬品関連市場を中心に、長期的には海外売上比率を50%まで引き上げることにより事業拡大を目指してまいります。北米・アジア市場を中心に事業展開を加速するため、海外の経営資源の拡充に努めます。
2020年4月に当社の未来を支える基礎技術の獲得を目指し、先端技術研究所を新設しました。当社のコアコンピテンシーである“はかる”技術を拡張する課題に果敢に挑戦し、オープンかつイノベーティブな研究活動を通じて次世代リーダーを生み出し、10-20年後の当社ビジネスの競争力の源泉となる技術力を培っていきます。
「2020 VISION」は、その経営の基本方針に沿って2020年を目途とする時間軸として取り組んできたものです。
「2020 VISION」及び「2020 VISION」のもと各事業部門が掲げるビジョンは、次のとおりです。
2020 VISION
1. アンリツらしい価値を創造し、ワールドクラスの強靭な利益体質を持つグローバルマーケットリーダーになる
2. 新しい分野でアンリツの先進性を発揮して事業創発をする
計測事業 : 5G/IoT社会を支えるリーディングカンパニーになる
PQA事業 : ワールドクラスの品質保証ソリューションパートナーになる
更に、当社グループは、2020年以降を見据えた持続的な成長の実現に向けた取組み「Beyond 2020」を始動させました。「Beyond 2020」では、「5G通信」、「食品安全」の一層の強化に加え、「5G利活用 自動車」、「医薬品安全」、そして「非通信計測事業」の領域の開拓にも挑み、これら5つの柱で社会課題の解決を図り、高収益企業を目指します。
② 中期経営計画
当社は、中長期事業戦略上の経営目標の一里塚として、2018年度を初年度とする3カ年の中期経営計画「GLP2020」を策定し、事業活動を展開しています。「GLP2020」が目指すものは、「収益力を回復する」ことと、「GLP2017」からの継続課題の「“利益ある持続的成長”のための経営基盤を確立する」ことです。その経営目標を確実に遂行するために、(1)成長ドライバーの確実な獲得、(2)強靭な利益体質の構築、(3)次世代の事業の柱づくり、に全力で取り組みます。なお、計画初年度にあたる2018年度以後、経営方針に「新経営ビジョンとサステナビリティ方針のもと、アンリツグループの企業価値の向上に取り組もう」を掲げ、アンリツグループを挙げて目標達成に邁進しております。
「GLP2020」の主な経営数値目標及び2019年度の実績は、下表のとおりです。「GLP2020」における2021年3月期の経営数値目標は、5G関連のモバイル市場向け開発用計測器需要を確実に捉えた結果、連結及び計測事業では1年前倒しで達成することができました。引き続き、株主資本コスト7%を上回るリターンを生み出す成長投資(含むM&A)と資本効率の改善で、企業価値KPI(ACE及びROE)の向上を目指します。
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2019年3月期 (実績) |
2020年3月期 (実績) |
2021年3月期 (業績見通し) |
2021年3月期 (GLP目標) |
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売上収益(億円) |
996 |
1,070 |
1,100 |
1,050 |
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営業利益(億円) |
112 |
174 |
175 |
145 |
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当期利益(億円) |
89 |
133 |
135 |
110 |
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計測 事業 |
売上収益(億円) |
681 |
751 |
770 |
700 |
|
営業利益(億円) |
94 |
151 |
155 |
100 |
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PQA 事業 |
売上収益(億円) |
230 |
225 |
240 |
260 |
|
営業利益(億円) |
16 |
12 |
18 |
30 |
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ACE(億円) |
39 |
84 |
75 |
50 |
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ROE(%) |
10.9 |
14.9 |
14 |
12 |
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③ コーポレート・ガバナンスの充実
当社は、経営環境の変化に柔軟かつスピーディに対応し、グローバル企業としての競争力を高め、継続的に企業価値を向上させていくことを経営の最重要課題としております。その目標を実現するために、コーポレート・ガバナンスが有効に機能する仕組みを構築することに努めております。執行役員制度導入による意思決定と業務執行の分離の促進、「監査等委員会設置会社」への移行、独立社外取締役が委員長を務める指名委員会・報酬委員会・独立委員会の設置、取締役会の実効性評価の実施などにより、取締役会の監査・監督機能を強化し、コーポレート・ガバナンス体制を一層充実させることで、グローバルな視点でより透明性の高い経営の実現を目指してまいります。
当社グループのコーポレート・ガバナンスに関する事項は、後記第4「提出会社の状況」の4「コーポレート・ガバナンスの状況等」をご参照ください。
④ サステナビリティ推進活動、ダイバーシティ推進等
国際社会のサステナビリティ課題は、2015年9月、国連総会において全会一致で「持続可能な開発目標(SDGs)」として定められました。当社は、温室効果ガスの排出削減計画をSBT(Science Based Target)イニシアチブに提出し、2019年12月には、この計画に掲げた目標が気候変動に関する政府間パネルIPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change )の気候科学に基づく削減シナリオに整合しているとして、この計画を承認いただきました。これには再生可能エネルギー(以下、「再エネ」といいます。)電力証書の購入も計画しておりましたが、当社グループの事業遂行に必要な電力を自前でも発電していく取組みがSDGsの目指す姿に適うものと考え、再エネ自家発電(PGRE:Private Generation of Renewable Energy)を重視することにしました。そこで、2020年4月に「Anritsu Climate Change Action PGRE 30(以下、「PGRE 30」といいます。)」を策定し、温室効果ガス削減に向けて果敢に挑むこととしました。PGRE 30は、一部の子会社を除いた2018年度の当社グループの電力使用量を基準に、再エネの一つである太陽光自家発電比率を、現在の約1%から2030年頃を目途に30%程度にまで高めていく野心的な目標となります。主要拠点である神奈川県厚木市、福島県郡山市、米国カリフォルニア州Morgan Hillの3地区に自社消費用の太陽光発電設備を導入・増設し、PGRE 30に取り組むことで、SDGsの目標7のターゲット7.2に掲げる「2030年までに、世界のエネルギーミックスにおける再エネの割合を大幅に拡大させる」という目標達成に貢献してまいります。
当社グループは、誠実な企業活動を通じてグローバルな社会の要請に対応し、社会的課題解決に貢献してこそ企業価値の向上が実現されると考えており、従来のCSR達成像を発展させた「サステナビリティ方針」を掲げております。当社グループは、「サステナビリティ方針」に掲げる「安全・安心で快適な社会構築への貢献」、「グローバル経済社会との調和の実践」、「地球環境保護への貢献」、「すべてのステークホルダーとの強固なパートナーシップの構築」を目標に据え、「誠と和と意欲」をもってグローバル社会のサステナビリティ及び世界共通目標SDGsに貢献することを通じて、企業価値の向上を目指してまいります。
当社グループにおける従業員の採用においては、技術職、事務職を問わず、外国籍人財のほかジェンダー平等に配慮した人財の採用を進めており、国内においては女性の積極採用、教育研修プログラムの改善等により女性社員の比率、女性幹部職の人数が徐々に高まっています。仕事と育児等の両立支援については、出産の前後や育児における休暇・休業・職場復帰制度、時短勤務制度等の諸制度を設けるなど、働きやすい職場環境の整備に積極的に取り組んでいます。加えて、従業員向けの自己啓発プログラムについては、自らの価値観・強み・ライフスタイルに基づき、「学びたいとき、学べるときに、学びやすい方法で、自ら学ぶ」をコンセプトに、自らが学ぶテーマを内発的に設定し、自己向上を図ることを目指すものとして刷新されています。諸制度の利用を希望する者が、性の別を問わず、共に安心して仕事と育児等の両立が図れるように、ダイバーシティ推進を総合的に所管する部門が中心となって、すべての従業員に対し、関連する情報の提供・周知、意識啓発等を行い、理解促進に努めています。また、当社は、働き方の改革・“ライフワークバランス”の推進に向け、就業時間管理の徹底、会議の時間短縮・効率化の推進等を通じた長時間労働の削減にも努めており、これは従業員の健康を守るとともに、育児、介護等を行いやすくすること、ひいては生産性を向上させてイノベーションを起こし、企業価値の向上につながるものと考えております。
なお、当連結会計年度末時点におけるグローバルにみた女性の活躍状況は以下のとおりです。
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日本 |
米州 |
EMEA |
アジア他 |
全社計 |
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全従業員に占める女性従業員の比率 <女性従業員数/全従業員数> |
15% |
30% |
19% |
28% |
20% |
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男性の幹部職登用率を100とした女性の幹部職登用率 |
10% |
54% |
118% |
79% |
46% |
(注)EMEA(Europe, Middle East and Africa): 欧州・中近東・アフリカ地域
当社グループは、120年企業の証とも言える「先進と信頼の企業ブランド」を、ブランド・ステートメント「envision:ensure」に込め発信しています。その思いは、「お客様と夢を共有しビジョンを創りあげるとともに、それをイノベーションによりお客様の期待を超える確かなかたちあるものへと創りあげる」というものであり、お客様のビジョン実現を通じ社会のサステナビリティに貢献したいという姿勢を示しています。今後とも経営資源を最大限に活かして安全・安心で豊かなグローバル社会の発展に貢献し、企業価値の向上に努めてまいります。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(方針及び体制)
当社は、リスクを「組織の収益や社会的信用など企業価値に影響を与える不確実な事象(リスクは必ずしも会社のマイナス要因となるだけではなく、適切に管理すればプラス要因ともなり得る事象)」ととらえています。リスクを適切に管理することは、経営上極めて重要な課題であると認識しており、当社グループとしてのリスク管理体制を整備しています。また、企業価値を維持、増大し、企業の社会的責任を果たし、当社グループの持続的発展を図るため、経営者はもとより、全社員がリスク感性を向上させ、全員参加により、リスクマネジメントを推進する取り組みに注力しています。
当社グループは、グループCEOのリスクマネジメント統括のもと、主要リスクを①経営の意思決定と業務の執行に係るビジネスリスク、②法令違反リスク、③環境リスク、④製品・サービスの品質リスク、⑤輸出入管理リスク、⑥情報セキュリティリスク、⑦災害リスクであると認識し、リスクごとにリスク管理責任者を明確にしています。各リスク管理責任者は、当該リスクに関する関係部門の責任者及びグループ会社管理責任者で構成する委員会を主管し、当該リスクマネジメントに関わるグループ会社全体を統括するとともに、リスクマネジメントの対策、計画、実施状況及び年間を通したマネジメントサイクルの結果を、適時に経営戦略会議に報告します。また、リスクマネジメント推進部門は、規則、ガイドラインの制定、教育研修などを主管し、事業の継続発展を確保するための、リスク管理レベルの向上に必要な体制を整備しています。なお、各リスク管理責任者は、当該分野に関し、海外グループ会社の活動を支援します。また、コンプライアンスリスクに関しては、各地域の統括会社のコンプライアンス責任者がリスクアセスメントを実施し、年度ごとの計画を立てて活動しています。
(個別のリスク)
(1) 当社グループの技術・マーケティング戦略に関するリスク(①ビジネスリスク)
当社グループは高い技術力により開発された最先端の製品とサービスをいち早く提供することで顧客価値の向上に努めております。しかしながら、当社グループの主要市場である情報通信市場は技術革新のスピードが速いため、当社グループが顧客価値を向上させるソリューションをタイムリーに提供できない事態や、顧客のニーズやウォンツを十分にサポートできない事態が生じた場合は、当社グループの財政状態及び経営成績に大きな影響をもたらす可能性があります。
(2) 市場の変動に関するリスク(①ビジネスリスク)
経済や市場状況の変化、技術革新などの外的な要因は、当社グループが展開する製品群の収益に影響を及ぼし、グループの財政状態及び経営成績に大きな変動をもたらす可能性があります。
計測事業は、情報通信市場向けの売上比率が高いため、サービスプロバイダ、ネットワーク機器メーカー、スマートフォン・携帯電話メーカー、半導体・デバイスメーカーの設備投資動向に業績が左右される可能性があります。サービスプロバイダは、急増するデータ・トラフィックに対応しながら、IoTサービスやクラウドサービスなど様々なニーズを実現するネットワークの構築が求められており、コスト効率を意識した設備投資を進めています。また、当社グループの収益の柱であるモバイル計測分野の業績は、携帯電話サービスの技術革新や普及率、加入者数及びスマートフォン等の買い替え率の変化に影響されます。
PQA事業は、食品産業向けの売上収益が8割以上を占めているため、食品メーカーの設備投資動向に業績が左右される可能性があります。
(3) 海外事業展開に関するリスク(①ビジネスリスク、②法令違反リスク、⑤輸出入管理リスク)
当社グループはグローバルに事業を展開しており、海外売上比率は当期実績で66%を占めています。顧客の多くもグローバル規模で事業を展開しているため、海外諸国の経済動向、国際情勢の変化、遵守すべき法令対応によって、当社グループの財政状態及び経営成績に大きな影響をもたらす可能性があります。
(4) 感染症の蔓延に関するリスク(⑦感染症・災害リスク)
新型コロナウイルスの感染拡大が続いています。当社グループは、従業員の安全確保と社内外の感染抑止を最優先に取り組んでいます。また、事業への影響を最小限に抑えるべく、新型コロナウイルス対策本部を設置し、情報収集と必要な対応を行っています。しかしながら、今後の感染拡大の経過によっては、サプライチェーンの寸断や当社グループ、顧客及び取引先の工場の操業停止や事業拠点の休業などの事業活動の制限等による影響により、当社グループの財政状態及び経営成績に大きな影響をもたらす可能性があります。
(5) 災害等に関するリスク(⑦感染症・災害リスク)
当社グループはグローバルに生産・販売活動を展開しているため、地震、台風、気候変動に伴う異常気象等の自然災害、火災、戦争、テロ及び暴動等が発生した場合には、当社グループや仕入先、顧客の主要設備への被害等により事業活動に支障が生じ、また、これらの災害等が政治不安又は経済不安を引き起こすことにより、当社グループの財政状態及び経営成績に大きな影響をもたらす可能性があります。
当社では、災害・緊急時の被害最小化と事業活動の早期回復を図り、円滑な事業活動を継続することを目的として、各部門がBCP(Business Continuity Plan)を作成しています。当社グループの製造拠点である東北アンリツ(株)郡山事業所では、重要なリスクの一つとして地震や大雨による河川の氾濫などの自然災害に対してBCPを策定しています。このBCPでは、災害発生後になすべきことを具体的にプロセスごとに明確化しています。実際の大規模災害での教訓を受け、BCP緊急発動基準を見直し、より幅広いリスクに備えるとともに各リスク発生時の対応手順の精緻化を行っています。
(6) 外国為替変動に関するリスク(①ビジネスリスク)
当社では売掛金の回収などで発生する外貨取引への為替先物予約等によりリスク・ヘッジに努めておりますが、急激な為替変動は当社グループの財政状態及び経営成績に影響をもたらす可能性があります。
(7) 在庫陳腐化のリスク(①ビジネスリスク)
当社グループは顧客のニーズやウォンツをきめ細かく捉え、製品やサービスを市場に提供するよう努めております。しかし、特に計測事業における製品群は技術革新が極めて速いため、製品及び部品の陳腐化が起こりやすく、在庫の長期化・不良化を招くことで当社グループの財政状態及び経営成績に影響をもたらす可能性があります。
(8) 人材確保に関するリスク(①ビジネスリスク)
当社グループの持続的成長のためには、人材の獲得、確保、育成は非常に重要な要素となっています。当社グループは、国籍や性別などにこだわらない多様な人材の採用活動を積極的に行うことにより、優秀な人材の獲得に努めるとともに、社内教育研修制度の充実を図り、人材の育成に注力しています。また、ワークライフバランスを重視し、働き方や価値観の多様化に対応した労務環境の整備に取り組んでいます。しかしながら、人材の確保及び育成が想定どおりに進まない場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響をもたらす可能性があります。
(9) コンプライアンスに関するリスク(②法令違反リスク)
当社グループは、事業を展開する各国において当該国の法的規制の適用を受けています。これらの法令等に違反した場合、あるいは社会的要請に反した行動等があった場合には、法令による処罰、訴訟の提起、社会的制裁、ブランドの毀損等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響をもたらす可能性があります。
当社グループが社会的責任を遂行するにあたり、あるべき行動の指針とする「アンリツグループ行動規範」を定めるとともに、教育啓発活動を随時実施し、企業倫理の向上及び法令遵守の強化に努めています。国内アンリツグループのコンプライアンスの推進は、経営戦略会議の議長であるグループCEOが率先垂範しています。そして、経営戦略会議の下に、コンプライアンス担当執行役員を委員長とした企業倫理推進委員会を置き、国内アンリツグループ各社のコンプライアンス推進活動を統括しています。また、企業倫理推進委員会及びその事務局である法務部は、法令遵守を推進する委員会と連携して、海外アンリツグループ各社に対し、各国・各地域の法令・文化・慣習などを踏まえた倫理法令遵守を促し、必要な支援を行うとともに海外アンリツグループ各社のコンプライアンス責任者と連携して、グローバルなコンプライアンス推進体制を構築しています。なお、コンプライアンス推進体制が適正に機能しているかを内部監査部門が監査し、必要がある場合、提言・改善要請を行っています。
(10) 環境問題に関するリスク(③環境リスク)
当社グループは、気候変動、エネルギー、大気、水、有害物質、廃棄物、商品リサイクルなどさまざまな環境に関する法令及び規制等の適用を受けています。当社グループでは、事業活動や製品に関わる環境コンプライアンスの徹底はもとより、気候変動対策、循環型社会の形成、環境汚染予防に取り組んでいます。
しかしながら、環境規制の更なる強化や過去の行為に起因する環境責任の発生、自然災害などに起因した環境汚染の発生等が考えられます。これらの事象によって、法令遵守や環境対策のために必要なコストの増加等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響をもたらす可能性があります。
当社グループでは、ステークホルダーからの要請に応えるため、製品のライフサイクル全体にわたり環境とのかかわりを意識した製品を開発し、提供しています。また、地球温暖化防止、生物多様性保全などの観点から、オフィス・ファクトリーの省エネルギー化によるCO2排出量の削減、3R(リデュース・リユース・リサイクル)推進による廃棄物の削減、環境汚染防止に関して法、条例の規制より厳しい自主管理基準の設定による環境汚染リスクの低減に努めています。
(11) 製品の品質に関するリスク(④製品・サービスの品質リスク)
当社グループでは、品質マネジメントシステムの国際規格であるISO 9001の認証を1993年から取得し、製品の設計・開発から製造・サービス・保守に至るまでの一貫した品質管理をグローバルに展開しています。しかしながら、予測し得ない品質上の重大な欠陥といった事象の発生や製造物責任につながる事態が発生した場合には、社会的信用の失墜、訴訟の提起、社会的制裁、ブランドの毀損等に加え、補償や対策に伴うコストが発生し、当社グループの財政状態及び経営成績に影響をもたらす可能性があります。
当社グループでは、製品品質の維持・向上と保証を図り、品質マネジメントシステムを適切に運用するために、品質マネジメントシステム委員会や内部品質監査委員会等を設けています。また、万一製品事故が発生した場合の体制の整備や製品事故予防のシステム及び再発防止に向けた取り組みについて、検討を行っています。
(12) 訴訟に関するリスク(②法令違反リスク)
当社グループは、事業に関わる各種法令を遵守するとともに、知的財産権の適正な使用、契約条件の明確化、相手方との協議の実施等により紛争の発生を未然に防ぐよう努めています。
当連結会計年度において、当社グループに重要な影響を及ぼす訴訟等は提起されていません。しかしながら、重大な訴訟等が発生した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響をもたらす可能性があります。
(13) 情報セキュリティに関するリスク(⑥情報セキュリティリスク)
当社グループは事業活動を行ううえで、顧客及び取引先、株主、従業員などすべての関係者の情報を適切に保護することが社会的責務であり、また、情報資産が当社グループ及びすべての関係者にとって重要な財産であると認識しています。これらの情報資産について、サイバー攻撃による情報セキュリティ事故が発生した場合、当社グループの社会的信用の失墜、訴訟の提起、社会的制裁、ブランドの毀損等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響をもたらす可能性があります。
当社グループでは、情報セキュリティ管理体制を構築し、徹底した管理とセキュリティの維持・向上への取り組みや情報セキュリティ教育の実施などを継続的に行っています。グローバルに事業を展開する当社では、世界中のオフィスをネットワークで接続し、情報の共有化を進めてきました。情報セキュリティにおいてはどこか一カ所でも脆弱な部分があると、全体のセキュリティレベルに影響を及ぼします。現状、地域間で存在しているセキュリティレベルのばらつきを是正し、地域格差を解消するとともに全体的な底上げを図っています。
(14) 繰延税金資産に関するリスク(①ビジネスリスク)
当社グループは、税効果会計を適用し、繰延税金資産を計上しています。繰延税金資産の計算は、将来の課税所得に関する見積りを含めた予測等に基づいており、実際の結果が予測と異なる可能性があります。将来の課税所得の見積りに基づく税金負担の軽減効果が得られないと判断された場合、当該繰延税金資産は取り崩され、当社グループの財政状態及び経営成績に影響をもたらす可能性があります。
(15) 確定給付制度債務に関するリスク(①ビジネスリスク)
当社及び一部の子会社の従業員を対象とした確定給付年金制度から生じる退職給付費用及び債務は、割引率等の数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されておりますが、確定給付制度債務の見込額を算出する基礎となる割引率等の数理計算上の仮定に変動が生じた場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響をもたらす可能性があります。
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。
1) 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における世界経済は、米中貿易戦争が激化するも、先進国を中心に緩やかに景気拡大が継続してきましたが、世界的な新型コロナウイルスの感染拡大による経済活動の停滞により、景気後退の動きが急速に進んでいます。また、ヒトやモノの移動制限によるサプライチェーンの寸断、都市封鎖等による工場の操業停止や事業拠点の休業など、新型コロナウイルスの感染拡大による企業活動へのマイナス影響が懸念されています。国内においても、インバウンド需要の減少、イベント等の中止、外食等の手控えなどにより国内消費が急速に落ち込んでいます。
情報通信分野においては、モバイル・ブロードバンド・サービスは質量ともに拡がりを見せ、データ通信量は急速に増加して、ネットワーク・インフラを逼迫させつつあります。それらの課題を解決するために、モバイル通信方式4Gは、LTE(Long Term Evolution)及びLTE-AdvancedそしてLTE-Advanced Pro(Gigabit LTE)と進化しました。加えて、次世代の通信方式5Gの仕様策定が3GPPで進行しています。2017年12月に5G NSA-NR(Non-Standalone New Radio)、2018年6月に5G SA-NR(Standalone New Radio)の標準化が完了し、5Gの超高速通信に関する主要機能の全仕様が規定されました。3GPPでは引き続き、ユースケースの拡張が期待される超低遅延及び多数同時接続の仕様策定(Release 16※)を検討しており、2020年に標準化完了が予定されています。また、3GPPでは、高周波数帯の拡張、通信エリアの拡大、低消費電力・低コスト通信など、5Gのさらなる効率性、性能改善を目的とした新たな仕様(Release 17※)の検討が、2021年の標準化完了を目指して進められる予定です。
その結果、米国、韓国、欧州に次いで、中国でも5Gサービスが開始されるなど、各国オペレータの商用化スケジュールは順調に進展しています。日本においても2020年3月から都市部を中心とした一部のエリアで5Gサービスが開始されました。
このような環境のもと、計測事業グループは、5Gの開発投資需要を獲得するためのソリューションの開発と組織体制の整備に注力し、5Gチップセット及び端末の開発関連需要を獲得しました。
PQA事業の分野においては、加工食品生産ラインの自動化投資が進むとともに、X線を用いた異物検出並びに包装に関する品質保証などの需要が堅調に推移しています。PQA事業グループは、このような状況下でX線を軸としたソリューションの競争力強化と海外の販売体制の整備拡充に取り組みました。
この結果、受注高は107,709百万円(前年同期比6.8%増)、売上収益は107,023百万円(同7.4%増)、営業利益は17,413百万円(同54.8%増)、税引前利益は17,181百万円(同51.2%増)、当期利益は13,397百万円(同49.0%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は13,355百万円(同49.1%増)となりました。なお、新型コロナウイルス感染拡大による当連結会計年度の業績への影響は軽微でした。
当連結会計年度末の資産合計は、138,873百万円となり、前連結会計年度末に比べ8,405百万円増加しました。
当連結会計年度末の負債合計は、44,541百万円となり、前連結会計年度末に比べ247百万円減少しました。
当連結会計年度末の資本合計は、94,331百万円となり、前連結会計年度末に比べ8,653百万円増加しました。
なお、当社グループの当連結会計年度の財政状態の状況は、「(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 2) 財政状態」に記載しています。
(※)3GPPで標準化される規格番号
セグメントごとの経営成績は以下のとおりです。なお、各セグメント別の売上収益は外部顧客に対する売上収益を記載しています。
① 計測事業
当事業は、通信事業者、関連機器メーカー、保守工事業者などへ納入する、多機種にわたる通信用及び汎用計測器、測定システム、サービス・アシュアランスの開発、製造、販売を行っています。
当連結会計年度は、モバイル市場において5Gチップセット及び携帯端末の開発需要が順調に推移しました。特にアジア地域において、5G商用化に向けた開発需要が拡大し、5Gビジネスを牽引しました。
この結果、売上収益は75,165百万円(前年同期比10.3%増)、営業利益は15,148百万円(同60.9%増)、調整後営業利益は15,018百万円(同59.6%増)となりました。
(注)調整後営業利益とは、営業利益から一過性の性格を持つ損益項目を排除した恒常的な事業の業績を測る当社独自の利益指標です。
(非監査情報)営業利益から調整後営業利益への調整表
(単位:百万円)
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前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
前年同期比 |
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営業利益 |
9,413 |
15,148 |
5,735 |
60.9% |
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(調整項目) |
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受取保険金及び災害損失 (台風19号関連) |
- |
△129 |
△129 |
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調整後営業利益 |
9,413 |
15,018 |
5,605 |
59.6% |
② PQA事業
当事業は、高精度かつ高速の各種自動重量選別機、自動電子計量機、異物検出機などの食品・医薬品・化粧品産業向けの生産管理・品質保証システム等の開発、製造、販売を行っています。
当連結会計年度は、国内・海外とも食品市場の品質保証プロセスの改善強化、自動化、省力化に向けた設備投資需要は堅調であるものの、顧客先での製品の受入検収期間が長期化した影響等により減収となりました。この結果、売上収益は22,575百万円(前年同期比2.2%減)、営業利益は1,287百万円(同20.0%減)となりました。
③ その他の事業
その他の事業は、情報通信事業、デバイス事業、物流、厚生サービス、不動産賃貸等からなっております。
当連結会計年度は、デバイス事業の利益が、前年同期と比較して増加しました。この結果、売上収益は9,282百万円(前年同期比10.3%増)、営業利益は1,900百万円(同65.9%増)となりました。
2) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の期末残高は、47,669百万円となり、前期末に比べ2,572百万円増加しました。なお、営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合わせたフリー・キャッシュ・フローは、11,035百万円のプラス(前期は11,631百万円のプラス)となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
① 営業活動によるキャッシュ・フロー
営業活動の結果獲得した資金は、純額で14,721百万円(前年同期は12,247百万円の獲得)となりました。これは、税引前利益並びに減価償却費及び償却費の計上により資金が増加した一方、棚卸資産並びに営業債権及びその他の債権の増加により資金が減少したことが主な要因です。なお、減価償却費及び償却費は4,999百万円(前年同期比612百万円増)となりました。
② 投資活動によるキャッシュ・フロー
投資活動の結果使用した資金は、純額で3,686百万円(前年同期は616百万円の使用)となりました。これは、有形固定資産の取得による支出が主な要因です。
③ 財務活動によるキャッシュ・フロー
財務活動の結果使用した資金は、純額で7,592百万円(前年同期は2,052百万円の使用)となりました。これは、長期借入金の返済3,500百万円及び配当金の支払額3,365百万円(前年同期の配当金支払額は2,198百万円)が主な要因です。
3) 生産、受注及び販売の実績
① 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
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セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) |
前年同期比(%) |
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計測(百万円) |
78,173 |
112.2 |
|
PQA (百万円) |
22,950 |
101.5 |
|
報告セグメント計(百万円) |
101,124 |
109.6 |
|
その他(百万円) |
9,202 |
106.8 |
|
合計(百万円) |
110,326 |
109.4 |
(注1)金額は販売価格によっております。
(注2)上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
② 受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
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セグメントの名称 |
受注高(百万円) |
前年同期比(%) |
受注残高(百万円) |
前年同期比(%) |
|
計測 |
75,579 |
109.8 |
16,673 |
104.3 |
|
PQA |
22,999 |
98.6 |
4,937 |
107.7 |
|
報告セグメント計 |
98,579 |
107.0 |
21,610 |
105.0 |
|
その他 |
9,130 |
105.0 |
1,394 |
106.2 |
|
合計 |
107,709 |
106.8 |
23,003 |
105.1 |
(注)上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
③ 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
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セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) |
前年同期比(%) |
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計測(百万円) |
75,165 |
110.3 |
|
PQA (百万円) |
22,575 |
97.8 |
|
報告セグメント計(百万円) |
97,740 |
107.1 |
|
その他(百万円) |
9,282 |
110.3 |
|
合計(百万円) |
107,023 |
107.4 |
(注1)上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(注2)主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、その割合が100分の10以上に該当する相手先がないため記載を省略しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであり、実際の結果は、将来に関する事項の記述とは異なる可能性があります。その主な要因については、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載しておりますが、それらに限定されるものではありません。
1) 経営成績
当社グループは、計測事業、PQA事業の2つを報告セグメントとしています。
① 計測事業
当社グループの売上収益の70%を占める計測事業は、「モバイル市場」「ネットワーク・インフラ市場」「エレクトロニクス市場」向けの3つのサブセグメントに区分しております。
a. モバイル市場
モバイル市場には、携帯電話サービスを行うサービスプロバイダの端末受入検査用途向け計測器や、スマートフォン等の携帯電話端末やICチップセット、その他関連電子部品メーカーでの設計、生産、機能・性能検証、保守用途向けの計測器等を含めております。
当市場の需要は、携帯電話サービスの技術革新や普及率、加入者数の推移のほか、端末/チップセット・メーカーの新規参入又は撤退、端末やチップセットのモデルチェンジや出荷数などに影響される傾向があります。
これまで、世界各国で展開されてきたLTE方式は、データ通信量の急速な増加によるネットワークインフラの逼迫を解決するために、LTE-Advanced 、LTE-Advanced Proへと進化してきました。現在、次世代の5G通信システムの超高速通信に関する仕様が確定し、米国、韓国、欧州に次いで中国や日本でも5Gサービスが開始されるなど、各国オペレータでも5G商用化が進められつつあります。端末製造市場ではLTEスマートフォン製造需要が減縮する一方で、端末開発市場では5GをサポートするICチップセットや携帯電話端末の開発が本格化し、5G開発用計測器への需要が高まっています。
加えて、超低遅延及び多数同時接続の仕様策定が進められており、5Gのユースケースとして期待されるIoT分野や自動車業界での自動運転・車載通信分野では、新たなサービスの実現に向けたモバイル通信技術の開発も事業機会として顕在化しています。
当社は、引き続き競争力のある最先端計測ソリューションを開発・投入するとともに、開発ポートフォリオ・マネジメントを的確に遂行することで、収益基盤の強化に努めてまいります。
b. ネットワーク・インフラ市場
ネットワーク・インフラ市場には、有線・無線通信事業者のネットワーク建設、保守、監視及びサービス品質保証用途向けのソリューションや、ネットワーク機器メーカーの設計、生産、試験及び調整用途向けソリューション等を含めております。
当市場においては、クラウドサービスの高度化や5Gサービスの進展によりデータ・トラフィックが急増しているため、ネットワークの更なる高速化を進めるサービスプロバイダでは100Gbpsサービスの導入が本格化するとともに、ネットワーク機器メーカーでは、400Gbpsネットワーク装置の開発も進展しています。また、モバイル端末からの接続性を向上させるため、有線・無線通信技術を統合活用することにより基地局ネットワークを効率的に高密度化することが進められています。これらの市場動向の変化に伴い、有線・無線技術を最適化した計測ソリューションの需要が本格化しています。さらに、クラウドサービスを支えるデータセンターの増加などを背景に、高速データ通信装置の市場が拡大するとともに、高速光通信モジュールの研究開発や製造市場が増加基調にあり競争が激しくなっています。
当社は、通信機器の研究・開発向けソリューションに加え、通信インフラの構築・監視からサービス品質保証までの総合ソリューションを提供することで、事業の拡大に取り組んでまいります。
c. エレクトロニクス市場
エレクトロニクス市場には、通信ネットワークに関連する通信機器やその他の電子機器に使用される電子デバイスの設計、生産、評価をはじめ、エレクトロニクス分野で幅広く利用されている計測器等を含めております。
当市場の需要は、通信機器や情報家電、自動車等に使用される電子部品及び電子機器の生産規模に影響を受ける傾向があります。モバイル・ブロードバンド・サービスやLPWA(Low Power Wide Area)デバイスなどを使用したIoTサービスの拡大により、多岐にわたる用途の無線モジュールの開発・製造用計測ソリューション需要が増加しております。また、周波数資源の有効利用のために各種無線システムのデジタル化が進められ、無線システムの製造及び保守用計測ソリューションの需要は堅調に推移しています。
当社は、エレクトロニクス市場に対するソリューションを拡充し、更なる事業の拡大に努めてまいります。
② PQA事業
PQA事業は、当社グループの売上収益の21%を占めています。当事業は、食品産業向けの売上収益が8割以上を占めているため、食の安全安心に関する意識の高まりや食品メーカーの業績に影響を及ぼす消費支出水準の変化に大きな影響を受けます。
主力製品には、食品製造ラインにおいて高速搬送しながら高精度に計量する重量選別機や食品中に混入する金属や石などの異物を高感度に検出し製造ラインから排除する異物検査機器(X線検査機等)などがあります。日本市場においては異物混入に対する顧客の関心に加え、人手不足による自動化ニーズの高まりを背景に、食品生産ラインの自動化、省人化を目的とした設備投資が堅調でした。
また、海外市場では、米州、欧州、中国などでグローバルに事業を展開する重要顧客の需要が堅調に推移し、当事業の海外売上比率は約4割となっています。
食品メーカーの品質検査への関心は高く、この需要に応えるために、新製品及び品質保証ソリューションの開発、提供に努めるとともに、海外現地生産を含むサプライ・チェーンの最適化とグローバルオペレーションの効率化を推進し、事業拡大と収益性の向上に取り組んでまいります。
2) 財政状態
① 資産
資産合計は、138,873百万円となり、前期末に比べ8,405百万円増加しました。主に現金及び現金同等物並びに棚卸資産が増加したことによるものです。
② 負債
負債合計は、44,541百万円となり、前期末に比べ247百万円減少しました。主に社債及び借入金が減少した一方、IFRS第16号の適用に伴い、リース債務が増加したこと等によりその他の金融負債が増加しました。
③ 資本
資本合計は、94,331百万円となり、前期末に比べ8,653百万円増加しました。これは、主に利益剰余金が増加した一方、その他の資本の構成要素が減少しました。
この結果、親会社所有者帰属持分比率は67.8%(前期末は65.6%)となりました。
有利子負債残高は14,594百万円(前期末は16,435百万円)、デット・エクイティ・レシオは0.15(前期末は0.19)となりました。また、リース債務を除く有利子負債残高は12,876百万円(前期末は16,248百万円)、リース債務を除くデット・エクイティ・レシオは0.14(前期末は0.19)となりました。
なお、IFRS第16号の適用に伴い、当連結会計年度からリース債務の残高が増加しています。その影響により有利子負債が増加しましたが、長期借入金を返済したため、前期末に比べ有利子負債及びデット・エクイティ・レシオが減少しました。
3) キャッシュ・フロー
当社グループは、当連結会計年度末において47,669百万円の資金を保有していることから、将来の予測可能な資金需要に対して不足が生じる事態に直面する懸念は少ないと認識しています。
当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況は、「(1) 経営成績等の状況の概要 2) キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
当連結会計年度の設備投資額は、4,518百万円(前年同期比85.5%増)となりました。主に新製品開発と原価低減に向けた投資を実施しました。研究開発投資については、13,321百万円(前年同期比10.9%増)となりました。主にソリューションの競争力強化に向けた投資を実施しました。これらの設備投資額及び研究開発投資は、主に自己資金によって賄われました。
翌連結会計年度においては、約5,000百万円の設備投資と約13,500百万円の研究開発投資を予定しています。設備投資額は、開発環境基盤強化を目的とした通常の投資のほか、グローバルな情報システムへの投資、気候変動対策として再生可能エネルギー設備への投資等を見込んでおります。研究開発投資については、更なる事業拡大にむけて、主力の計測事業においては、5Gにおける競争力強化、PQA事業については、グローバルビジネス展開を目的とした投資を行っていきます。これらの設備投資額及び研究開発費投資を、主に自己資金によって賄う予定です。
4) 資本の財源及び資金の流動性
当社グループの資金需要は、製品の製造販売に関わる部材購入費や営業費用などの運転資金、設備投資資金及び研究開発費が主なものであり、主に営業活動によって獲得した内部資金のほか、直接調達・間接調達により十分な資金枠を確保しています。また、2020年3月に設定した借入枠75億円のコミットメントライン(2023年3月まで有効)により財務の安定性を確保しています。今後とも、大きく変動する市場環境のなかで、国内外の不測の金融情勢に備えるとともに、運転資金、長期借入債務の償還資金及び事業成長のための資金需要に迅速、柔軟に対応してまいります。
当期末の有利子負債残高は、14,594百万円(前期末の有利子負債残高は16,435百万円)となりました。また、デット・エクイティ・レシオは0.15(前期末は0.19)、ネット・デット・エクイティ・レシオは△0.35(前期末は△0.33)となっております。当期の売上収益に対する期末平均棚卸残高の回転率は5.4回となりました。
今後ともACEの改善(投下資本コストを上回る税引後営業利益の達成)とCCC向上によるキャッシュ・フロー創出及びグループ内キャッシュ・マネジメント・システム等による資金効率化を原資として、有利子負債の削減、デット・エクイティ・レシオの改善、株主資本の充実等、財務体質の強化に努めてまいります。
2020年3月期末の当社の格付(R&I:㈱格付投資情報センター)は、短期格付が「a-1」、長期格付が「A-」となっています。当社は、更なる格付向上に向けて、財務安定性の改善に引き続き取り組んでまいります。
株主還元ついては、連結当期利益の上昇に応じて、親会社所有者帰属持分配当率(DOE:Dividend On Equity)を上げることを基本に、連結配当性向30%以上の配当を行うとともに、総還元性向も勘案した株主還元施策も動機的に行っていくことを基本方針としています。
また、剰余金については、5G/IoTを活用した産業分野への事業拡大やクラウドサービス市場等への事業展開及び6Gをはじめとした次世代技術の獲得等に向けた戦略的投資(含むM&A)のための資金需要に備える計画です。このような新規事業への投資も含めて、企業価値の向上に取り組みます。
(注1)デット・エクイティ・レシオ:有利子負債/親会社の所有者に帰属する持分
(注2)ネット・デット・エクイティ・レシオ:(有利子負債-現金及び現金同等物)/親会社の所有者に帰属する持分
(注3)ACE (Anritsu Capital-cost Evaluation): 税引後営業利益-資本コスト(5%)
(注4)CCC:キャッシュ・コンバージョン・サイクル
5) 経営戦略と今後の方針について
経営戦略と今後の方針は、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。
6) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、国際会計基準(IFRS)に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、予想される将来のキャッシュ・フローや、経営者の定めた会計方針に従って財務諸表に報告される数値に影響を与える項目について、経営者が見積りを行うことが要求されます。これらの見積りは過去の実績等を勘案し合理的に判断していますが、結果として、これらの見積りと実際の結果が異なる場合があります。
重要な会計方針及び見積りの内容は、「第一部 企業情報 第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 3. 重要な会計方針」に記載しています。連結財務諸表に関して、特に重要な見積りを伴う会計方針は、以下のとおりです。
① 繰延税金資産の回収可能性
当社グループは、税効果会計を適用し、繰延税金資産を計上しています。繰延税金資産については、将来課税所得に対して利用できる可能性が高いものに限り認識しております。
繰延税金資産の評価は、取締役会で承認された事業計画を基礎とした将来の課税所得の見積りと、税務上実現可能と見込まれる計画に基づいており、仮に将来の市場環境や経営成績の悪化により将来の課税所得が見込みを下回る場合は、繰延税金資産の金額が大きく影響を受ける可能性があります。
② 確定給付制度債務
当社及び一部の子会社の従業員を対象とした確定給付年金制度から生じる退職給付費用及び債務は、割引率、退職率及び死亡率等の数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されております。
当社グループでは、確定給付年金制度の純額の再測定により生じる調整額をその発生時に連結純損益及びその他の包括利益計算書の「その他の包括利益」で認識し、確定給付年金制度の再測定により生じた調整の累計額を連結財政状態計算書の「利益剰余金」に計上しております。
割引率は、当社の債務と概ね同じ満期日を有する期末日の優良社債の利回りを使用しております。割引率は測定日現在の確定給付制度債務を計算するために使用されます。
確定給付制度債務の見込額を算出する基礎となる割引率等の数理計算上の仮定に変動が生じた場合は、将来の確定給付費用及び確定給付制度債務に影響をもたらします。
特記すべき事項はありません。
当連結会計年度の研究開発投資(無形資産に計上された開発費を含む)の内訳は、次のとおりです。
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|
当連結会計年度 |
|
売上収益比率 |
|
計測事業 |
|
|
14.0% |
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PQA事業 |
|
|
9.7% |
|
その他の事業 |
467百万円 |
|
5.0% |
|
基礎研究開発 |
184百万円 |
|
- |
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合 計 |
|
|
12.4% |
また、セグメント別の主な研究開発成果は次のとおりです。
(1) 計測事業
計測事業は、当社、Anritsu Company(米国)、Azimuth Systems, Inc.(米国)、Anritsu Ltd.(英国)、Anritsu A/S(デンマーク)等において、保有する技術を相互補完することによりシナジー効果を上げるため、協調して開発を進めております。
1) 5G NRのRF試験とプロトコル試験及び5G端末の機能・アプリケーション試験に対応したMT8000Aの開発
MT8000Aは、第5世代通信システム5G NR(New Radio)のRF試験とプロトコル試験に対応した、モバイル端末、チップセット及びデバイス開発用テストプラットフォームとして2018年4月に販売が開始されました。2019年度は引き続き、Sub-6GHzにおけるデータ通信を高速化する4x4M MIMO 2CCを対応するためのMulti RF Module MT8000A-031や、ミリ波の28GHz帯と39GHz帯の両方に対応するMultiband RF Converter MA80003Aの機能強化開発を行いました。また、既存5G機能の組合わせであるFDD + TDDやFR1 + FR2のキャリア・アグリゲーション機能や、4Gの周波数で5G通信を行うDSS(Dynamic Spectrum Sharing)機能に対応しました。さらに、GUI操作のみで5Gネットワークと端末の通信状況を再現するSmartStudio NR MX800070Aを2020年3月に販売開始しました。これにより5G端末の通信速度、消費電力、端末のアプリケーション動作、ソフトウェアリグレッション試験(*1)が可能になります。
(*1) ソフトウェアリグレッション試験:ソフトウェアをバージョンアップした際、その変更によって予想外の問題が現れていないかを確認する試験。
2) 5G NRモバイルデバイステストプラットフォームME7834NRの開発
ME7834NRは、3GPPで規定される5G NRのプロトコルコンフォーマンス試験と通信事業者受入試験に対応する自動試験システムです。5G NRのスタンドアローンモード(SA)/ノンスタンドアローンモード(NSA)双方での試験に対応します。また、OTAチャンバと組み合わせて、5Gで使用されるSub-6GHz帯、ミリ波帯の周波数帯域におけるOTA環境での試験に対応します。
ME7834NRは、モバイル端末の認証試験基準を定めているGCF(Global Certification Forum )及びPTCRB(PCS Type Certification Review Board)のプラットフォームとして認証されています。また、グローバルの大手通信事業者が独自受入試験を実施している各種プロトコル試験、データパフォーマンス試験に対応しています。今後もGCF・PTCRB、通信事業者受入試験でのプロトコル試験プラットフォームとして認証カバー率を増やしていきます。
3) 5G NR RFコンフォーマンステストシステムME7873NRの開発
ME7873NRは、3GPPで規定される5G NRのRF試験、基地局と携帯端末間の無線リソース制御、例えば隣接基地局間のハンドオーバなどが正しく動作しているかを確認するための試験であるRRM(Radio Resource Management)試験に対応する自動試験システムです。5G NRのスタンドアローンモード(SA)/ノンスタンドアローンモード(NSA)双方での試験に対応します。また、OTAチャンバと組み合わせて、5Gで使用されるSub-6GHz帯、ミリ波帯の周波数帯域におけるOTA環境での試験に対応します。
ME7873NRは、5G NR Sub-6GHz NSAのRFコンフォーマンス試験において、ネットワークでの運用基準や携帯端末の認証試験基準を定めているGCFが規定する5G端末の認証開始に必要なテストケース数のGCF認証を取得しました。対象の周波数バンドは、日本、韓国、中国で使用される予定のものです。今回認証開始基準を達成したRFコンフォーマンス試験は、端末のRFの送受信性能を測定する基本試験であり、5G対応端末を早期に市場投入するうえで重要な試験項目です。さらに、技術的難易度が高い5G NR ミリ波NSAにおいても、RFコンフォーマンス試験でGCF認証を取得しました。これらにより、端末ベンダは、ミリ波の5G端末についてもRFコンフォーマンス試験開始が可能となりました。
4) ワイヤレスコネクティビティテストセットMT8862Aの開発
IoTの普及に伴い、スマートフォンなどの携帯端末に加えて、プリンタやテレビなどの家電、車載機器、産業機器、センサー機器などでも急速にWLAN機能の搭載が進展しています。IEEE 802.11axは、既に5G搭載のスマートフォンやPC市場でも採用が始まっており、今後主要なWLAN規格となることが見込まれています。これに伴い、IEEE 802.11ax搭載機器の送受信性能を評価できる測定器の需要が急速に高まっています。
MT8862Aは、WLAN機能を搭載した通信機器のRF評価用測定器であり、IEEE 802.11a/b/g/n/acに対応しています。さらに今回IEEE 802.11axに対応したオプションを開発しました。本オプションを使用することにより、IEEE 802.11ax 搭載機器のRF評価を、ダイレクトモードによる短時間での評価に加え、ネットワークモードでは通信プロトコルを使用した実動作の状態で評価が行えます。また、WLANの信号品質はデータレートごとに特性が異なるため、データレートごとでの信号評価が非常に重要です。MT8862Aは、通信プロトコルを使用した実動作状態での測定モードにて、現在使用されている主要なWLAN規格のすべてのデータレートで信号品質評価が可能な業界初の測定器となりました。
5) 5Gエリアテスタの開発
2020年春から開始された5G本格サービスに向けて多数の基地局の配備が、今後必要となります。さらに、一般企業が限られたエリアで5Gを自営網として利用できるローカル5Gが制度化され、自営通信による5G基地局の整備も本格化します。オペレーター各社及びローカル5G事業者は、通信品質の安定や向上のために、基地局のカバーエリア内の電波伝搬特性の評価と、基地局の運用状態の確認を行います。これに伴い、評価用測定器のニーズが高まることが見込まれています。
そこで、携帯電話基地局サービスエリアの電波伝搬状況を評価するエリアテスタ™ ML8780A/ML8781Aの機能を強化し、5G NR(第5世代通信システム)測定用オプションを開発しました。新開発の5G NR測定用オプションは、5G NR基地局のエリア評価に必要な項目が測定できる「5G NR信号測定機能」、マルチパスの確認と改善に有効な「RS遅延プロファイル機能」、5G NR信号のフレームタイミングが許容範囲に収まっているかを確認できる「Frame Timing機能」などを標準搭載しています。ML8780A/ML8781Aは5G測定用オプションを搭載することにより、5G NR基地局から出力される5G信号の電波伝搬特性を高精度に評価し、カバーエリアを正確に検証することができます。
6) Automotive機能強化対応したMD8475Bの開発
基地局シミュレータ/シグナリングテスタ MD8475A/MD8475BとeCall Tester MX703330Eを組み合わせた自動車向け緊急通報システム eCall試験ソリューションを拡張し、NG112 LTE eCallオプションを開発しました。本オプションを使用することにより、次世代のeCall over LTE(NG-eCall)に対応した車載機器の評価が行えます。
eCallは、事故が発生した際に、緊急連絡センターに緊急呼接続を行い、事故情報を音声信号で送信するシステムです。EUでは、すべての新型車へのeCallシステム装備が2018年3月31日から義務化され、各国で導入が本格化しています。欧州の通信事業者は、2G及び3Gから4G LTE及び5Gインフラへの移行を進めています。eCallシステムもこの移行に従い、4G LTE及び5Gを使用した次世代緊急通報システム“NG-eCall”の開発が進展しています。
シグナリングテスタ MD8475A/MD8475Bは、eCallが運用されるモバイルネットワークを擬似的に構築できる基地局シミュレータです。eCall Tester MX703330Eは、eCall車載器と緊急連絡センター間の通信シーケンスをエミュレートできるソフトウェアです。MX703330Eに、今回開発したNG112 LTE eCallオプションを追加することにより、NG-eCall機能試験及びエンドツーエンドでの音声評価が、疑似的なLTEネットワークで行えます。ギガビットLTEのシミュレーション及びNG-eCall 車載器の評価をシグナリングテスタ MD8475B一台で実現し、テレマティクス総合試験の効率化と試験コストを低減しています。
7) 5Gネットワークを支える光ファイバー建設・保守機能を強化したMT1000A用OTDRモジュールの開発
SNSやインターネットビデオの普及により、スマートフォン、タブレットなどの通信容量が増大しています。さらに5Gサービスの本格普及に伴い、通信容量の急増が見込まれており、無線基地とアンテナ装置間/無線基地と交換局間の光ネットワーク化、メトロネットワークの波長分割多重化が更に進展しています。このため、ネットワークの建設や現用回線の保守作業が増大しています。光ファイバの建設・保守時には、光ファイバの品質試験だけでなく伝送品質試験も求められ、これらの評価を1台で可能とするマルチプラットフォームのニーズが高まっています。
今回開発したMU100023Aは、MT1000A用測定モジュールとして、1310/1550nmに加え、現用回線の保守で使用される1650nmの3波長で光ファイバー特性の測定を行えます。MU100023Aは、OTDR、安定化光源、光パワーメータを標準搭載していることに加え、オプションで可視光源機能、光ファイバスコープ機能を搭載できます。これにより、1台で各種光回線の通信品質の検証や現用回線を含む障害箇所の検知が行えます。さらに、MU100023Aと既存の10Gマルチレートモジュール MU100010Aや100Gマルチレートモジュール MU100011Aを同時に搭載することにより、光回線測定と伝送品質測定が1台のMT1000Aで実現できます。
8) MP1900A用400GbE PAM4 BER測定モジュールの開発
次世代5Gモバイル通信やクラウド通信サービスの普及により、データ通信トラフィックの更なる増大が予想されています。それに伴い、データセンタでは、53.125 Gbaud PAM4 x 4レーン方式を用いる400GbE通信規格や、さらに将来は8レーン化による800GbEへの高速化が検討されています。
4値の振幅レベルで情報を表すPAM4方式では、2値で表すNRZ方式に対して信号レベル間の差は1/3となるため、信号品質を評価する測定器には従来よりも高感度な入力性能が求められます。また、高速化に伴い伝送路損失による測定結果への影響が無視できなくなるため、クロックリカバリやイコライザなど、損失影響を補償するための機能を高度に統合したソリューションが求められています。
MP1900Aは、高度な信号発生と信号性能の解析をサポートし、400Gを超える通信速度に向けた、市場をリードするビットエラーレートテスタです。今回開発したPAM4 EDモジュールは、オリジナルInP半導体技術を用いた受信回路により、58 Gbaud PAM4入力に対応、Typ. 50mVの感度性能を実現しました。さらに、クロックリカバリ・イコライザ機能を内蔵し、動作上限・感度性能や、伝送路損失の影響によって、これまでできなかったBER測定結果の妥当性検証をサポートします。既に商品化されているMP1900AのPAM4パターン発生器と組み合わせて、より精度の高いPAM4信号のBER測定を行えます。
9) BERTWave™ MP2110Aサンプリングオシロスコープに内蔵可能な53Gbaudクロックリカバリの開発
5Gの本格普及によりデータ通信ネットワークの高速大容量化の需要はますます高まっています。この高速大容量ネットワークに使用される100G~400Gに対応した光モジュールでは、従来のデジタル信号伝送方式であるNRZ方式に代わりPAM4方式の光信号が出力されます。サンプリングオシロスコープではデータ信号に同期したトリガクロック信号が別途必要ですが、PAM4信号を出力する光モジュールではトリガ信号を用意できないケースが多くなってきています。クロックリカバリによりデータ信号からトリガ信号を生成することができますが、導入コストが高くなるという課題がありました。
そこで、BERTWave™ MP2110Aのサンプリングオシロスコープの機能を強化し、変調レート53GbaudのPAM4光信号からトリガクロックを生成することができるクロックリカバリユニットオプションを開発しました。このクロックリカバリオプションは内蔵タイプであるため、外付けタイプよりも低価格であり、操作性も優れています。本オプション追加により、現在IEEEで規格化が完了しているすべての種類のPAM4光モジュール評価を、外部のトリガクロックなしに1台で行うことが可能となりました。また、4チャネルオシロスコープを選択すると複数のチャネルを一括で測定できるため、製造のスループットを改善できます。現場で必要な試験系を、柔軟に、かつ最適なコストで構築できます。
10) 標準化活動
計測事業における研究開発活動の重要な取組のひとつとして、国内外の標準化活動へ積極的に参画しています。情報通信産業における最先端の知識・技術を常に製品へ反映し、競争力に優れたソリューションをタイムリーに提供するために、主要な標準団体として現在3GPP、ITU-T、IEEE等へ参加し、4G/5G、データセンタ、IoT/M2M、コネクテッドカーといった有線・無線通信事業の戦略立案や情報収集に役立てています。
特に移動通信システムの規格を策定する3GPPにおいては、基地局と携帯端末の通信手順試験を可能とするコンフォーマンステスト(端末認証試験)仕様策定に際し、LTE/LTE-Advanced(4G)/New Radio(5G)の規格策定段階から数多くの寄書を行っています。2019年度は国内外の通信オペレータ、チップセットベンダ、端末ベンダとも積極的にコラボレーション開発を実施し、そこで得た経験を活用し5G移動通信システム関連規格を含むリリース16の策定に参加しました。中でも5Gから採用されたミリ波通信周波数帯(注1)における測定方法の策定においては、従来用いられていなかったOTA(Over The Air)(注2)での測定方法検討、測定限界に関する情報の提供、また測定の不確かさの算出に貢献しました。これらの策定に当たっては3GPPに先行して進められていた国内法規策定にも配慮し、国内外の規格間での整合を取る活動にも貢献しています。
このほか、5Gモバイルフロントホール構築に必要な規格開発に参画し、「IEEE 1914.3-2018(注3)」の公開に貢献しました。本規格は、5Gの無線信号と有線インターフェースの親和性を高め、モバイルフロントホールを効率化するための規格であり、2018年10月にIEEEにより新規に公開されました。
(注1)ミリ波通信周波数帯
3GPPリリース15より採用された移動通信システム用通信周波数帯の一つ。新たに採用されている周波数としては24.25 GHz~29.5 GHz、37.0 GHz~40.0 GHzがある。その周波数帯では既存の6 GHz以下の周波数帯と比較し電波の空間伝送損失が非常に大きいため通信信号の品質劣化が大きい。そのため規格内で求められている端末性能を評価するために、物理的な測定限界付近での試験性能が求められる場合も有る。
(注2)OTA (Over The Air)
物理的にケーブル接続を行い通信するのに対し、無線での通信、電波の測定を行うこと。5Gのミリ波帯通信信号の携帯端末・基地局内における品質劣化を防ぐために回路の集積化が進められた結果、従来は携帯端末や基地局と測定器間は物理的にケーブルを用いて接続がなされていたのに対し、5Gのミリ波帯においては携帯端末・基地局のアンテナ端から送信される無線信号を測定器のアンテナで受信しその品質を評価する形となった。
(注3)IEEE 1914.3-2018
RoEを使用したイーサネットフレーム上での転送のための無線プロトコルのカプセル化とマッピングを定義。IEEE 1914.3™の採用により、ルーティングされたイーサネットネットワークで、デジタル化された無線データ、CPRI™、I/Qデータ、コントロールチャネルフレームを利用できるようになる。イーサネットをIEEE 1914.3フレームでトランスポート層として利用すると、より優れたリンク能力や転送効率やネットワーク仮想化など、5Gサービスに適したフロントホールネットワークを構築することが可能となる。
(2) PQA事業
PQA事業は、アンリツインフィビス㈱が研究開発を行っております。
医薬品の「安全・安心」に貢献する品質保証ソリューションの開発
医療は、食品と並んで人々が健康で豊かな社会生活を営むための最も基本的な要素であり、医薬品の開発や製造に携わる企業は、「安全・安心」を約束する品質保証に日夜取り組んでいます。少量で身体に強い効能を発揮する医薬品には、精度が高い品質検査とその品質を保証する厳格な管理が欠かせません。
PQA事業では、錠剤やカプセル剤の検査用に「M6-hシリーズ金属検出機 KDS1004PSW」を開発し、販売を開始しました。この新製品は、新開発のセンサー構造と信号処理を搭載し、業界最高レベルの金属検出感度と安定性を実現したほか、装置内部の状態監視や自己診断、選別部の動作確認など高度なバリデーション機能を備え、医薬品の厳格な品質保証に貢献します。
また、併せて開発した医薬品向け総合品質管理・制御システム「QUICCA Pharma」は、医薬品製造ラインに設置された検査機をネットワークで接続し、判定結果や来歴などをリアルタイムに収集・分析します。アメリカ食品医薬品局の定める「電子的記録,電子署名に関する規則(FDA 21CFR Part11)」に準拠した品質データ管理を提供することでデータ不正のリスクを軽減し、品質保証の信頼性向上に貢献します。