文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) 会社の経営の基本方針
当社は、様々なステークホルダーに対する責任と対話を重視し、以下のとおり経営理念・経営ビジョン・経営方針を策定しています。なお、当社は、全グループ従業員等が同じ将来の姿を共有し、かつ社外に対して強いアピールをもって高い認知を得ることを目的として、2021年4月1日付で経営ビジョン及び経営方針を改定しております。
経営理念
誠と和と意欲をもって、“オリジナル&ハイレベル”な商品とサービスを提供し、安全・安心で豊かなグローバル社会の発展に貢献する
経営ビジョン
「はかる」を超える。限界を超える。共に持続可能な未来へ。
経営方針
1. 克己心を持ち、「誠実」な取り組みにより人も組織も“日々是進化”を遂げる。
2. 内外に敵を作らず協力関係を育み、「和」の精神で難題を解決する。
3. 進取の気性に富み、ブレークスルーを生み出す「意欲」を持つ。
4. ステークホルダーと共に人と地球にやさしい未来をつくり続ける「志」を持つ。
(2) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は、キャッシュ・フロー(CF)を常に重視した経営を展開しており、中長期的な企業価値最大化を図るため、「ROE (Return On Equity)」と「親会社所有者帰属持分比率(自己資本比率)」をKPIと捉え、投下資本の効率性改善と財務の安定性維持に取り組みます。
なお、現在運用している取締役(社外取締役及び監査等委員であるものを除く。)、執行役員及び理事を対象とした業績連動型株式報酬制度においては、その評価指標として、本制度の対象期間における各事業年度の期初に定める営業利益及び3ヶ年の中期経営計画に掲げる営業利益を採用しています。また、金銭の業績連動型報酬(年次役員賞与)においては、売上高、営業利益及びROEの指標に加え、ESGに係る非財務観点での目標の達成度等を評価に用いています。
(3) 中長期的な経営戦略、経営環境及び対処すべき課題等
今後の見通しにつきましては、情報通信分野においては、5Gの更なる技術革新や利活用分野への進展により、今後も5G関連の需要は拡大していくことが見込まれます。また、データセンター等でのネットワーク・インフラの拡充に向けた需要も拡大が見込まれます。このような事業環境の下、当社グループは、以下の経営理念・経営ビジョン・経営方針及び中長期経営戦略のもと、中期経営計画「GLP2023」(計画期間: 2021~2023年度)の達成に取り組み、5Gビジネスを中心に、更に5G利活用分野への広がりやネットワーク高速化の需要拡大に的確に対応したソリューションをタイムリーに提供することで、競争力優位を確立し、5G/IoT社会を支えるリーディングカンパニーを目指します。
① 中長期的な経営戦略及び中期経営計画
当社グループは、主力の計測事業を軸に、情報通信サービスに関わるビジネスを展開しております。現在の5Gシステムに代表される通信インフラの様々なイノベーションは、社会を劇的に変革するとともに、人類に「つながる」ことの豊かさを提供し、グローバル社会の進歩を生み出してきました。「誠と和と意欲」、”オリジナル&ハイレベル”を経営理念とするアンリツは、情報通信における品質の見える化のために研ぎ澄ましてきた「はかる」技術を、食品・医薬品分野にも水平展開し、安全・安心な社会に貢献しています。
当社グループは、2021年4月に新たな経営ビジョンのもと、3ヶ年の中期経営計画「GLP2023」をスタートしました。
当社のコンピテンシーである「はかる」を極めていくとともに、内外の異なる発想や技術を更に掛け合わせ、従来の「はかる」を超えた価値や新領域を開拓していくことで次の事業の柱を成長させ、攻めの姿勢で今までのアンリツの限界を超えてまいります。関係するあらゆるステークホルダーとともに持続可能で魅力的な未来を次世代に繋いでいくという思いを込めた経営ビジョンのもと、2030年度には安定した収益を上げる企業としての2,000億円企業を目指してまいります。
「GLP2023」の3年間は、5G計測市場のピークに向けた成長の3年であり、新たな芽を成長させる3年でもあります。4つのカンパニーと先端技術研究所の体制のもと、重点的に新たに成長させる4つの分野を 1)EV(電気自動車)、電池測定、2)ローカル5G、3)光センシング、4)医療・医薬品と捉え、それぞれの分野で外部との連携やM&A等を行うことで成長を加速させてまいります。
また、その先の将来も見据え、6GやNEMS(Nano Electro Mechanical Systems ※)の基礎研究も開始しております。組織の枠を超え、会社の枠を超え、今までの概念に縛られず、前進してまいります。
「GLP2023」の主な経営数値目標及び当連結会計年度である2020年度の実績は、下表のとおりです。2020年度は前中期経営計画「GLP2020」における計画最終事業年度であり、主力の計測事業では、5G関連のモバイル市場向け開発用計測器需要及びネットワーク高速化に向けた開発・生産関連需要を捉え、公表値を上回る業績を達成できました。引き続き、資本コストを意識した成長投資(含むM&A)と資本効率の改善で、企業価値KPI(ROE)の向上を目指します。
※ NEMS:半導体加工技術をベースとするマイクロマシンを更に小型化したnmオーダーの機械構造を持つデバイス
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2021年3月期 (GLP2020目標) |
2021年3月期 (実績) |
2022年3月期 (GLP2023目標) |
2024年3月期 (GLP2023目標) |
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売上収益(億円) |
1,050 |
1,059 |
1,140 |
1,400 |
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営業利益(億円) |
145 |
196 |
205 |
270 |
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当期利益(億円) |
110 |
161 |
162 |
200 |
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計測 事業 |
売上収益(億円) |
700 |
748 |
820 |
1,000 |
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営業利益(億円) |
100 |
177 |
185 |
230 |
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PQA 事業 |
売上収益(億円) |
260 |
214 |
230 |
270 |
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営業利益(億円) |
30 |
13 |
18 |
27 |
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ROE(%) |
12 |
15.8 |
14 |
15 |
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※ 億円未満を切り捨てて表示しております。
なお、「GLP2023」では、当社グループのサステナビリティ目標として、以下の目標を掲げています。
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2024年3月期までの主な目標・取組及び指標等 |
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E 環境 |
温室効果ガス削減に向けた長期計画と取組み |
・温室効果ガス(Scope1+2)※:2015年度比23%削減 ・温室効果ガス(Scope3)※ :2018年度比13%削減 |
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自家発電比率の向上 |
・自家発電比率:13%以上 |
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S 社会 |
ダイバーシティ経営の推進 |
・女性の活躍推進:女性幹部職比率15%以上 ・高齢者活躍推進:70歳までの雇用及び新処遇制度確立 ・障がい者雇用推進:職域開発による法定雇用率2.3%達成 |
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グローバルなCSR調達の推進 |
・サプライチェーン・デューデリジェンスの強化:3年累積10社以上 ・CSR調達に係るサプライヤへの情報発信:2回/年以上 ・CSR調達に係るサプライヤへの教育:1回/年以上 |
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G ガバナンス |
グローバルなガバナンス力向上 |
・当社取締役会の多様性の推進、社外取締役比率:50%以上 |
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グループ内部統制構築の推進 |
・統制自己評価(CSA)基準の充足:すべての海外子会社への適用 |
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※ Scope1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)、Scope2:他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出、Scope3:Scope1・Scope2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)
② コーポレート・ガバナンスの充実
当社は、経営環境の変化に柔軟かつスピーディに対応し、グローバル企業としての競争力を高め、継続的に企業価値を向上させていくことを経営の最重要課題としております。その目標を実現するために、コーポレート・ガバナンスが有効に機能する仕組みを構築することに努めております。執行役員制度導入による意思決定と業務執行の分離の促進、「監査等委員会設置会社」への移行、独立社外取締役が委員長を務める指名委員会・報酬委員会・独立委員会の設置、取締役会の実効性評価の実施などの従前からの取組みに加え、社外取締役比率50%以上を確保することにより、取締役会の監査・監督機能を強化し、コーポレート・ガバナンス体制を一層充実させることで、グローバルな視点でより透明性の高い経営の実現を目指してまいります。
当社グループのコーポレート・ガバナンスに関する事項は、後記第4「提出会社の状況」の4「コーポレート・ガバナンスの状況等」をご参照ください。
③ サステナビリティ推進活動、ダイバーシティ推進等
国際社会のサステナビリティ課題は、2015年9月、国連総会において全会一致で「持続可能な開発目標(SDGs)」として定められました。当社は、温室効果ガスの排出削減計画をSBT(Science Based Targets)イニシアチブに提出し、2019年12月には、この計画に掲げた目標が気候変動に関する政府間パネルIPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change )の気候科学に基づく削減シナリオに整合しているとして、この計画を承認いただきました。これには再生可能エネルギー(以下、「再エネ」といいます。)電力証書の購入も計画しておりましたが、当社グループの事業遂行に必要な電力を自前でも発電していく取組みがSDGsの目指す姿に適うものと考え、再エネ自家発電(PGRE:Private Generation of Renewable Energy)を重視することにしました。そこで、2020年4月に「Anritsu Climate Change Action PGRE 30(以下、「PGRE 30」といいます。)」を策定し、温室効果ガス削減に向けて果敢に挑むこととしました。PGRE 30は、一部の子会社を除いた2018年度の当社グループの電力使用量を基準に、再エネの一つである太陽光自家発電比率を、2018年度の0.8%から2030年頃を目途に30%程度にまで高めていく野心的な目標となります。主要拠点である神奈川県厚木市、福島県郡山市、米国カリフォルニア州Morgan Hillの3地区に自社消費用の太陽光発電設備を導入・増設し、PGRE 30に取り組むことで、SDGsの目標7のターゲット7.2に掲げる「2030年までに、世界のエネルギーミックスにおける再エネの割合を大幅に拡大させる」という目標達成に貢献してまいります。
当社グループは、誠実な企業活動を通じてグローバルな社会の要請に対応し、社会課題の解決に貢献してこそ企業価値の向上が実現されると考えています。その基本的な考え方を定めた「サステナビリティ方針」は、従来より実践している当社のサステナビリティ経営の活動をベースに、2021年4月1日付の新経営ビジョン・新経営方針に沿った内容で改訂いたしました。この方針には2015年に国連で採択されたSDGsアジェンダの5つのP、すなわち、People、Planet、Prosperity、Peace、Partnershipの要素が包含されています。当社グループは、「安全・安心で豊かな社会の発展への貢献」、「人と地球にやさしい未来づくりへの貢献」、「人権の尊重と健康で働きがいのある職場づくりの励行」、「公正で誠実な活動の実践と経営の透明性の維持向上」、「ステークホルダーとの強固なパートナーシップの構築」を目標に据え、「誠と和と意欲」をもってグローバル社会のサステナビリティ及び世界共通目標SDGsに貢献することを通じて、企業価値の向上を目指してまいります。
当社グループにおける従業員の採用においては、技術職、事務職を問わず、外国籍人財のほかジェンダー平等に配慮した人財の採用を進めており、国内においては女性の積極採用、教育研修プログラムの改善等により女性社員の比率、女性幹部職の人数が徐々に高まっています。仕事と育児等の両立支援については、出産の前後や育児における休暇・休業・職場復帰制度、時短勤務制度等の諸制度を設けるなど、働きやすい職場環境の整備に積極的に取り組んでいます。加えて、従業員向けの自己啓発プログラムについては、自らの価値観・強み・ライフスタイルに基づき、「学びたいとき、学べるときに、学びやすい方法で、自ら学ぶ」をコンセプトに、自らが学ぶテーマを内発的に設定し、自己向上を図ることを目指すものとして刷新されています。諸制度の利用を希望する者が、性の別を問わず、共に安心して仕事と育児等の両立が図れるように、ダイバーシティ推進を総合的に所管する部門が中心となって、すべての従業員に対し、関連する情報の提供・周知、意識啓発等を行い、理解促進に努めています。これらの取組みにより、最近の傾向として、男性従業員による育児休職制度の利用が進んでいます。また、当社は、働き方の改革“ライフワークバランス”の推進に向け、就業時間管理の徹底、会議の時間短縮・効率化の推進等を通じた長時間労働の削減にも努めており、これは従業員の健康を守るとともに、育児、介護等を行いやすくすること、ひいては生産性を向上させてイノベーションを起こし、企業価値の向上につながるものと考えております。
なお、当連結会計年度末時点におけるグローバルにみた女性の活躍状況は以下のとおりです。
■ 幹部職に占める女性の割合 (女性幹部職数÷全幹部職数) (単位:%)
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2015年度 |
2016年度 |
2017年度 |
2018年度 |
2019年度 |
2020年度 |
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日本 |
1.3 |
1.3 |
1.0 |
1.1 |
1.8 |
2.3 |
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米州 |
22.7 |
24.7 |
23.0 |
20.2 |
18.3 |
17.9 |
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EMEA ※ |
17.0 |
19.7 |
22.1 |
23.5 |
21.6 |
24.2 |
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アジア他 |
18.2 |
21.7 |
21.6 |
24.1 |
23.4 |
24.0 |
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グローバル連結 |
9.6 |
10.2 |
9.9 |
10.5 |
10.4 |
10.8 |
※ EMEA(Europe, Middle East and Africa): 欧州・中近東・アフリカ地域
当社グループは、「お客様と夢を共有しビジョンを創りあげるとともに、それをイノベーションによりお客様の期待を超える確かなかたちあるものへと創りあげる」という思いをブランド・ステートメント「envision:ensure」に込め発信してまいりました。このたび2021年度から、その思いを継承しつつ、皆様とともに進歩と進化へ向けて歩み続けていきたいという強い思いを込めて、当社グループのブランド・ステートメントを「Advancing beyond」に刷新しました。さらなる高みを目指すとともに、お客様のビジョン実現を通じ社会のサステナビリティに貢献したいという姿勢を示しています。今後とも経営資源を最大限に活かして安全・安心で豊かなグローバル社会の発展に貢献し、企業価値の向上に努めてまいります。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(方針及び体制)
当社グループは、リスクを適切に管理することは、企業価値を継続的に高め、社会的責任を果たすために、極めて重要な経営課題であると認識しており、リスク管理体制を整備しています。また、企業価値を維持、増大し、企業の社会的責任を果たし、当社グループの持続的発展を図るため、経営者はもとより、全社員がリスク感性を向上させ、全員参加により、リスクマネジメントを推進する取り組みに注力しています。
当社グループは、グループCEOのリスクマネジメント統括のもと、主要リスクを①経営の意思決定と業務の執行に係るビジネスリスク、②法令違反リスク、③環境リスク、④製品・サービスの品質リスク、⑤輸出入管理リスク、⑥情報セキュリティリスク、⑦感染症・災害リスクであると認識し、リスクごとにリスク管理責任者を明確にしています。各リスク管理責任者は、当該リスクに関する関係部門の責任者及びグループ会社管理責任者で構成する委員会を主管し、当該リスクマネジメントに関わるグループ会社全体を統括するとともに、リスクマネジメントの対策、計画、実施状況及び年間を通したマネジメントサイクルの結果を、適時に経営戦略会議に報告します。また、リスクマネジメント推進部門は、規則、ガイドラインの制定、教育研修などを主管し、事業の継続発展を確保するための、リスク管理レベルの向上に必要な体制を整備しています。なお、各リスク管理責任者は、当該分野に関し、海外グループ会社の活動を支援しています。また、コンプライアンスリスクに関しては、各地域の統括会社の責任者が年度計画を策定し、リスクアセスメントを実施しています。
(個別のリスク)
(1) 当社グループの技術・マーケティング戦略に関するリスク(①ビジネスリスク)
当社グループは高い技術力により開発された最先端の製品とサービスをいち早く提供することで顧客価値の向上に努めております。しかしながら、当社グループの主要市場である情報通信市場は技術革新のスピードが速いため、当社グループが顧客価値を向上させるソリューションをタイムリーに提供できない事態や、顧客のニーズやウォンツを十分にサポートできない事態が生じた場合は、当社グループの財政状態及び経営成績に大きな影響をもたらす可能性があります。
(2) 市場の変動に関するリスク(①ビジネスリスク)
経済や市場状況の変化、技術革新などの外的な要因は、当社グループが展開する製品群の収益に影響を及ぼし、グループの財政状態及び経営成績に大きな変動をもたらす可能性があります。
計測事業は、情報通信市場向けの売上比率が高いため、サービス・プロバイダ、ネットワーク機器メーカー、スマートフォン・携帯電話メーカー、半導体・デバイスメーカーの設備投資動向に業績が左右される可能性があります。サービス・プロバイダは、急増するデータ・トラフィックに対応しながら、IoTサービスやクラウドサービスなど様々なニーズを実現するネットワークの構築が求められており、コスト効率を意識した設備投資を進めています。また、当社グループの収益の柱であるモバイル計測分野の業績は、携帯電話サービスの技術革新や普及率、加入者数及びスマートフォン等の買い替え率の変化に影響されます。
PQA事業は、食品産業向けの売上収益が8割以上を占めているため、食品メーカーの設備投資動向に業績が左右される可能性があります。
(3) 海外事業展開に関するリスク(①ビジネスリスク、②法令違反リスク、⑤輸出入管理リスク)
当社グループはグローバルに事業を展開しており、海外売上比率は当期実績で70%を占めています。顧客の多くもグローバル規模で事業を展開しているため、海外諸国の経済動向、国際情勢の変化、遵守すべき法令対応によって、当社グループの財政状態及び経営成績に大きな影響をもたらす可能性があります。
(4) 感染症の蔓延に関するリスク(⑦感染症・災害リスク)
新型コロナウイルス感染症拡大による不透明な社会・経済状況が依然として継続しています。当社グループは、従業員の安全確保と社内外の感染抑止を最優先に取り組んでいます。また、事業への影響を最小限に抑えるべく、新型コロナウイルス対策本部を設置し、情報収集と必要な対応を行っています。しかしながら、今後の感染拡大の経過によっては、サプライチェーンの寸断や当社グループ、顧客及び取引先の工場の操業停止や事業拠点の休業などの事業活動の制限等による影響により、当社グループの財政状態及び経営成績に大きな影響をもたらす可能性があります。
(5) 災害等に関するリスク(⑦感染症・災害リスク)
当社グループはグローバルに生産・販売活動を展開しているため、地震、台風、気候変動に伴う異常気象等の自然災害、火災、戦争、テロ及び暴動等が発生した場合には、当社グループや仕入先、顧客の主要設備への被害等により事業活動に支障が生じ、また、これらの災害等が政治不安又は経済不安を引き起こすことにより、当社グループの財政状態及び経営成績に大きな影響をもたらす可能性があります。
当社では、災害・緊急時の被害最小化と事業活動の早期回復を図り、円滑な事業活動を継続することを目的として、各部門がBCP(Business Continuity Plan)を作成しています。当社グループの製造拠点である東北アンリツ(株)では、地震や大雨による河川の氾濫などの自然災害を重要なリスクとして位置づけ、災害発生後になすべきことを具体的にプロセスごとに明確化しています。実際の大規模災害での教訓を受け、BCP緊急発動基準を見直し、より幅広いリスクに備えるとともに各リスク発生時の対応手順の精緻化を行っています。
(6) 外国為替変動に関するリスク(①ビジネスリスク)
当社では売掛金の回収などで発生する外貨取引への為替先物予約等によりリスク・ヘッジに努めておりますが、急激な為替変動は当社グループの財政状態及び経営成績に影響をもたらす可能性があります。
(7) 在庫陳腐化のリスク(①ビジネスリスク)
当社グループは顧客のニーズやウォンツをきめ細かく捉え、製品やサービスを市場に提供するよう努めております。しかし、特に計測事業における製品群は技術革新が極めて速いため、製品及び部品の陳腐化が起こりやすく、在庫の長期化・不良化を招くことで当社グループの財政状態及び経営成績に影響をもたらす可能性があります。
(8) 人材確保に関するリスク(①ビジネスリスク)
当社グループの持続的成長のためには、人材の獲得、確保、育成は非常に重要な要素となっています。当社グループは、国籍や性別などにこだわらない多様な人材の採用活動を積極的に行うことにより、優秀な人材の獲得に努めるとともに、社員の自発的成長を支援する教育研修体系の整備を継続的に進めています。また、ライフワークバランスを重視し、働き方や価値観の多様化に対応した労務環境の整備に取り組んでいます。しかしながら、人材の確保及び育成が想定どおりに進まない場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響をもたらす可能性があります。
(9) コンプライアンスに関するリスク(②法令違反リスク)
当社グループは、事業を展開する各国において当該国の法的規制の適用を受けています。これらの法令等に違反した場合、あるいは社会的要請に反した行動等があった場合には、法令による処罰、訴訟の提起、社会的制裁、ブランドの毀損等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響をもたらす可能性があります。
当社グループが社会的責任を遂行するにあたり、あるべき行動の指針とする「アンリツグループ行動規範」を定めるとともに、教育啓発活動を随時実施し、企業倫理の向上及び法令遵守の強化に努めています。国内アンリツグループのコンプライアンスの推進は、経営戦略会議の議長であるグループCEOが率先垂範しています。そして、経営戦略会議の下に、コンプライアンス担当執行役員を委員長とし、国内アンリツグループ各社の社員がメンバーとして参加する企業倫理推進委員会が、コンプライアンス推進活動を統括しています。また、企業倫理推進委員会およびその事務局である法務部は、法令対応の関連委員会とともに、海外アンリツグループ各社に対し、各国・各地域の法令・文化・慣習などを踏まえた倫理法令遵守を促し、必要な支援を行っています。さらに、海外アンリツグループ各社のコンプライアンス責任者と連携して、グローバルな推進体制を構築しています。なお、コンプライアンス推進体制が適正に機能しているかを内部監査部門が監査し、必要に応じて、提言・改善要請を行っています。
(10) 環境問題に関するリスク(③環境リスク)
当社グループは、気候変動、エネルギー、大気、水、有害物質、廃棄物、商品リサイクルなどさまざまな環境に関する法令及び規制等の適用を受けています。当社グループでは、事業活動や製品に関わる環境コンプライアンスの徹底はもとより、気候変動対策、循環型社会の形成、環境汚染予防に取り組んでいます。
しかしながら、環境規制の更なる強化や過去の行為に起因する環境責任の発生、自然災害などに起因した環境汚染の発生等が考えられます。これらの事象によって、法令遵守や環境対策のために必要なコストの増加等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響をもたらす可能性があります。
当社グループでは、ステークホルダーからの要請に応えるため、製品のライフサイクル全体にわたり環境とのかかわりを意識した製品を開発し、提供しています。また、地球温暖化防止、生物多様性保全などの観点から、オフィス・ファクトリーの省エネルギー化によるCO2排出量の削減、3R(リデュース・リユース・リサイクル)推進による廃棄物の削減、環境汚染防止に関して法、条例の規制より厳しい自主管理基準の設定による環境汚染リスクの低減に努めています。
(11) 製品の品質に関するリスク(④製品・サービスの品質リスク)
当社グループでは、品質マネジメントシステムの国際規格であるISO 9001の認証を1993年から取得し、製品の設計・開発から製造・サービス・保守に至るまでの一貫した品質管理をグローバルに展開しています。しかしながら、予測し得ない品質上の重大な欠陥といった事象の発生や製造物責任につながる事態が発生した場合には、社会的信用の失墜、訴訟の提起、社会的制裁、ブランドの毀損等に加え、補償や対策に伴うコストが発生し、当社グループの財政状態及び経営成績に影響をもたらす可能性があります。
当社グループでは、製品品質の維持・向上と保証を図り、品質マネジメントシステムを適切に運用するために、品質マネジメントシステム委員会や内部品質監査委員会等を設けています。また、万一製品事故が発生した場合の体制の整備や製品事故予防のシステム及び再発防止に向けた取り組みについて、検討を行っています。
(12) 訴訟に関するリスク(②法令違反リスク)
当社グループは、事業に関わる各種法令を遵守するとともに、知的財産権の適正な使用、契約条件の明確化、相手方との協議の実施等により紛争の発生を未然に防ぐよう努めています。
当連結会計年度において、当社グループに重要な影響を及ぼす訴訟等は提起されていません。しかしながら、重大な訴訟等が発生した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響をもたらす可能性があります。
(13) 情報セキュリティに関するリスク(⑥情報セキュリティリスク)
当社グループは事業活動を行ううえで、顧客及び取引先、株主、従業員などすべての関係者の情報を適切に保護することが社会的責務であり、また、情報資産が当社グループ及びすべての関係者にとって重要な財産であると認識しています。これらの情報資産について、サイバー攻撃による情報セキュリティ事故が発生した場合、当社グループの社会的信用の失墜、訴訟の提起、社会的制裁、ブランドの毀損等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響をもたらす可能性があります。
当社グループでは、情報セキュリティ管理体制を構築し、徹底した管理とセキュリティの維持・向上への取り組みや情報セキュリティ教育の実施などを継続的に行っています。グローバルに事業を展開する当社では、世界中のオフィスをネットワークで接続し、情報の共有化を進めてきました。情報セキュリティにおいては一カ所でも脆弱な部分があると、全体のセキュリティレベルに影響を及ぼすことから、グローバルで強固かつ均一なセキュリティシステムを構築することに取り組んでいます。
(14) 繰延税金資産に関するリスク(①ビジネスリスク)
当社グループは、税効果会計を適用し、繰延税金資産を計上しています。繰延税金資産の計算は、将来の課税所得に関する見積りを含めた予測等に基づいており、実際の結果が予測と異なる可能性があります。将来の課税所得の見積りに基づく税金負担の軽減効果が得られないと判断された場合、当該繰延税金資産は取り崩され、当社グループの財政状態及び経営成績に影響をもたらす可能性があります。
(15) 確定給付制度債務に関するリスク(①ビジネスリスク)
当社及び一部の子会社の従業員を対象とした確定給付年金制度から生じる退職給付費用及び債務は、割引率等の数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されておりますが、確定給付制度債務の見込額を算出する基礎となる割引率等の数理計算上の仮定に変動が生じた場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響をもたらす可能性があります。
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。
1) 財政状態及び経営成績の状況
計測事業の主要市場である情報通信分野においては、5Gサービスが各国で開始されるなど、オペレータの5G商用化スケジュールは順調に進展しています。日本においても2020年3月から都市部を中心とした一部のエリアで5Gサービスが開始されました。2020年7月には、3GPPにおいてユースケースの拡張が期待される超低遅延及び多数同時接続の仕様策定(Release 16※)の標準化が完了し、Automotive分野での5G活用に向けた研究開発や、ローカル5Gのようなプライベート領域での5Gネットワーク構築に向けた調査や実証実験が始まっています。3GPPでは引き続き、高周波数帯の拡張、通信エリアの拡大、低消費電力・低コスト通信など、5Gのさらなる効率性、性能改善を目的とした新たな仕様(Release 17※)の検討が、2022年の標準化完了を目指して進められています。
また、クラウドサービスの高度化や5Gサービスの進展によりデータ・トラフィックが急増し、ネットワーク・インフラを逼迫させつつあります。ネットワークの更なる高速化を進めるサービス・プロバイダでは、100Gbpsサービスの導入が本格化するとともに、ネットワーク機器メーカーでは、400Gbpsネットワーク装置の開発も進展しています。
このような環境のもと、計測事業グループは、5Gの開発投資需要を獲得するためのソリューションの開発と組織体制の整備に注力し、5G商用化に向けた開発関連需要を獲得しました。また、ネットワーク高速化に向けた開発・生産関連需要も獲得しました。一方、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、一部の顧客の投資に慎重な姿勢がみられました。
PQA事業の分野においては、加工食品生産ラインの自動化投資が進んでおり、X線を用いた異物混入検査や包装品質検査など品質保証工程の自動化に係る需要は今後も拡大が見込まれますが、新型コロナウイルス感染拡大の影響により一部の顧客の設備投資に慎重な姿勢が続いています。PQA事業グループは、このような状況下でX線を軸としたソリューションの競争力強化と対面営業に代わる販売促進策の強化に取り組みました。
この結果、受注高は107,567百万円(前年同期比0.1%減)、売上収益は105,939百万円(同1.0%減)、営業利益は19,651百万円(同12.8%増)、税引前利益は19,838百万円(同15.5%増)、当期利益は16,143百万円(同20.5%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は16,105百万円(同20.6%増)となりました。
当連結会計年度末の資産合計は、144,100百万円となり、前期末に比べ5,227百万円増加しました。
当連結会計年度末の負債合計は、34,645百万円となり、前期末に比べ9,895百万円減少しました。
当連結会計年度末の資本合計は、109,455百万円となり、前期末に比べ15,123百万円増加しました。
なお、当社グループの当連結会計年度の財政状態の状況は、「(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 2) 財政状態」に記載しています。
(※)3GPPで標準化される規格番号
セグメントごとの経営成績は以下のとおりです。なお、各セグメント別の売上収益は外部顧客に対する売上収益を記載しています。
① 計測事業
当事業は、サービス・プロバイダ、ネットワーク機器メーカー、保守工事業者などへ納入する、多機種にわたる通信用及び汎用計測器、測定システム、サービス・アシュアランスの開発、製造、販売を行っています。
当連結会計年度は、5Gチップセット及び携帯端末の開発需要が順調に推移しました。特にアジア地域において、5G商用化に向けた開発需要が拡大し、5Gビジネスを牽引しました。また、データセンター等でのネットワーク高速化に向けた開発・生産関連需要も獲得しました。一方、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、主に日本地域において一部の顧客の投資に慎重な姿勢がみられました。
この結果、売上収益は74,809百万円(前年同期比0.5%減)、営業利益は17,714百万円(同16.9%増)となりました。
② PQA事業
当事業は、高精度かつ高速の各種自動重量選別機、自動電子計量機、異物検出機などの食品・医薬品・化粧品産業向けの生産管理・品質保証システム等の開発、製造、販売を行っています。
当期は、新型コロナウイルス感染拡大に伴う先行きの不透明感から一部の顧客の設備投資に慎重な姿勢が継続しています。また、業務の効率化を促進する等、販管費の削減に取り組みました。この結果、売上収益は21,419百万円(前年同期比5.1%減)、営業利益は1,340百万円(同4.1%増)となりました。
③ その他の事業
その他の事業は、情報通信事業、デバイス事業、物流、厚生サービス、不動産賃貸等からなっております。
当期の売上収益は9,709百万円(前年同期比4.6%増)、営業利益は1,797百万円(同5.4%減)となりました。
2) キャッシュ・フローの状況
当期における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の期末残高は、49,810百万円となり、前期末に比べ2,140百万円増加しました。なお、営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合わせたフリー・キャッシュ・フローは、15,452百万円のプラス(前期は11,035百万円のプラス)となりました。
当期における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
① 営業活動によるキャッシュ・フロー
営業活動の結果獲得した資金は、純額で20,481百万円(前年同期は14,721百万円の獲得)となりました。これは、税引前利益の計上により資金が増加した一方、法人所得税の支払いにより資金が減少したことが主な要因です。なお、減価償却費及び償却費は4,946百万円(前年同期比53百万円減)となりました。
② 投資活動によるキャッシュ・フロー
投資活動の結果使用した資金は、純額で5,029百万円(前年同期は3,686百万円の使用)となりました。これは、有形固定資産の取得による支出が主な要因です。
③ 財務活動によるキャッシュ・フロー
財務活動の結果使用した資金は、純額で14,458百万円(前年同期は7,592百万円の使用)となりました。これは、普通社債の償還8,000百万円及び配当金の支払額4,878百万円(前年同期の配当金支払額は3,365百万円)が主な要因です。
3) 生産、受注及び販売の実績
① 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
計測(百万円) |
74,321 |
95.1 |
|
PQA (百万円) |
21,423 |
93.3 |
|
報告セグメント計(百万円) |
95,745 |
94.7 |
|
その他(百万円) |
9,714 |
105.6 |
|
合計(百万円) |
105,459 |
95.6 |
(注1)金額は販売価格によっております。
(注2)上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
② 受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
|
セグメントの名称 |
受注高(百万円) |
前年同期比(%) |
受注残高(百万円) |
前年同期比(%) |
|
計測 |
76,390 |
101.1 |
15,926 |
95.5 |
|
PQA |
21,570 |
93.8 |
5,185 |
105.0 |
|
報告セグメント計 |
97,961 |
99.4 |
21,112 |
97.7 |
|
その他 |
9,606 |
105.2 |
1,459 |
104.8 |
|
合計 |
107,567 |
99.9 |
22,571 |
98.1 |
(注)上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
③ 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
計測(百万円) |
74,809 |
99.5 |
|
PQA (百万円) |
21,419 |
94.9 |
|
報告セグメント計(百万円) |
96,229 |
98.5 |
|
その他(百万円) |
9,709 |
104.6 |
|
合計(百万円) |
105,939 |
99.0 |
(注1)上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(注2)主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、その割合が100分の10以上に該当する相手先がないため記載を省略しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであり、実際の結果は、将来に関する事項の記述とは異なる可能性があります。その主な要因については、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載しておりますが、それらに限定されるものではありません。
1) 経営成績
当社グループは、計測事業、PQA事業の2つを報告セグメントとしています。
① 計測事業
当社グループの売上収益の71%を占める計測事業は、「モバイル市場」「ネットワーク・インフラ市場」「エレクトロニクス市場」向けの3つのサブセグメントに区分しております。
a. モバイル市場
モバイル市場には、携帯電話サービスを行うサービス・プロバイダの端末受入検査用途向け計測器や、スマートフォン等の携帯電話端末やICチップセット、その他関連電子部品メーカーでの設計、生産、機能・性能検証、保守用途向けの計測器等を含めております。
当市場の需要は、携帯電話サービスの技術革新や普及率、加入者数の推移のほか、端末/チップセット・メーカーの新規参入又は撤退、端末やチップセットのモデルチェンジや出荷数などに影響される傾向があります。
これまで世界各国で展開されてきたLTE方式に加え、現在では5G通信システムを用いたサービスが米国、韓国、欧州に次いで中国でも開始されるなど、各国オペレータの5G商用化スケジュールは順調に進展しています。日本においても2020年3月から都市部を中心とした一部のエリアで5Gサービスが開始されました。
このような市場環境のもと、端末製造市場ではLTEスマートフォン製造需要が減縮する一方で、端末開発市場では5GをサポートするICチップセットや携帯電話端末の開発が本格化し、5G開発用計測器への需要が高まっています。
加えて、2020年7月には超低遅延及び多数同時接続の仕様策定が完了し、さらなる高周波数帯への拡張、通信エリアの拡大、低消費電力・低コスト通信などの仕様検討がすすめられているなど、IoT分野や自動運転・テレマティクス分野、ローカル5G分野では、新たなサービスの実現に向けたモバイル通信技術の開発も事業機会として顕在化しています。また、5Gの各性能をさらに高めた次世代の通信規格である6Gの研究開発も始まっています。
当社は、引き続き競争力のある最先端計測ソリューションを開発・投入するとともに、開発ポートフォリオ・マネジメントを的確に遂行することで、収益基盤の強化に努めてまいります。
b. ネットワーク・インフラ市場
ネットワーク・インフラ市場には、有線・無線通信事業者のネットワーク建設、保守、監視及びサービス品質保証用途向けのソリューションや、ネットワーク機器メーカーの設計、生産、試験及び調整用途向けソリューション等を含めております。
当市場においては、クラウドサービスの高度化や5Gサービスの進展によりデータ・トラフィックが急増しているため、ネットワークの更なる高速化を進めるサービス・プロバイダでは100Gbpsサービスの導入が進むとともに、ネットワーク機器メーカーでは、400Gbpsネットワーク装置の開発も進展しています。また、モバイル端末からの接続性を向上させるため、有線・無線通信技術を統合活用することにより基地局ネットワークを効率的に高密度化することが進められています。これらの市場動向の変化に伴い、有線・無線技術を最適化した計測ソリューションの需要が本格化しています。さらに、クラウドサービスを支えるデータセンターの高速化を背景に、高速データ通信装置の市場が拡大するとともに、高速光通信モジュールの研究開発や製造市場が増加基調にあり関連する計測機器の需要が高まっています。
当社は、通信機器の研究・開発向けソリューションに加え、通信インフラの構築・監視からサービス品質保証までの総合ソリューションを提供することで、事業の拡大に取り組んでまいります。
c. エレクトロニクス市場
エレクトロニクス市場には、通信ネットワークに関連する通信機器やその他の電子機器に使用される電子デバイスの設計、生産、評価をはじめ、エレクトロニクス分野で幅広く利用されている計測器等を含めております。
当市場の需要は、通信機器や情報家電、自動車等に使用される電子部品及び電子機器の生産規模に影響を受ける傾向があります。モバイル・ブロードバンド・サービスやWi-Fi/Bluetoothデバイスなどを使用したIoTサービスの拡大により、多岐にわたる用途の無線モジュールの開発・製造用計測ソリューション需要が増加しております。
当社は、エレクトロニクス市場に対するソリューションを拡充し、更なる事業の拡大に努めてまいります。
② PQA事業
PQA事業は、当社グループの売上収益の20%を占めています。当事業は、食品産業向けの売上収益が8割以上を占めているため、食の安全安心に関する意識の高まりや食品メーカーの業績に影響を及ぼす消費支出水準の変化に大きな影響を受けます。
主力製品には、食品製造ラインにおいて高速搬送しながら高精度に計量する重量選別機や食品中に混入する金属や石などの異物を高感度に検出し製造ラインから排除する異物検査機器(X線検査機等)などがあります。日本市場においては新型コロナウイルスの感染拡大に伴い一部顧客で設備投資に慎重な姿勢がみられるものの、異物混入に対する顧客の関心は引き続き高く食品生産ラインの自動化、省人化を目的とした設備投資は底堅く推移しました。
また、海外市場では、米州、欧州、中国などでグローバルに事業を展開する重要顧客の需要が堅調に推移し、当事業の海外売上比率は約4割となっています。
食品メーカーの品質検査への関心は高く、この需要に応えるために、新製品及び品質保証ソリューションの開発に努めるとともに、海外現地生産を含むサプライチェーンの最適化とグローバルオペレーションの効率化を推進し、事業拡大と収益性の向上に取り組んでまいります。
2) 財政状態
① 資産
資産合計は、144,100百万円となり、前期末に比べ5,227百万円増加しました。主に現金及び現金同等物並びにその他の非流動資産が増加したことによるものです。
② 負債
負債合計は、34,645百万円となり、前期末に比べ9,895百万円減少しました。主に普通社債8,000百万円の償還により社債及び借入金が減少しました。
③ 資本
資本合計は、109,455百万円となり、前期末に比べ15,123百万円増加しました。これは、主に利益剰余金が増加したことによるものです。
この結果、親会社所有者帰属持分比率は75.8%(前期末は67.8%)となりました。
有利子負債残高は5,848百万円(前期末は14,594百万円)、デット・エクイティ・レシオは0.05(前期末は0.15)となりました。
3) キャッシュ・フロー
当社グループは、当連結会計年度末において49,810百万円の資金を保有していることから、将来の予測可能な資金需要に対して不足が生じる事態に直面する懸念は少ないと認識しています。
当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況は、「(1) 経営成績等の状況の概要 2) キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
当連結会計年度の設備投資額は、5,449百万円(前年同期比20.6%増)となりました。主に新製品開発と原価低減に向けた投資を継続するとともに、グローバルでの情報システム統一に向けた投資を実施しました。研究開発投資については、11,246百万円(前年同期比15.6%減)となりました。主に新製品開発とソリューションの競争力強化に向けた投資を実施しました。これらの設備投資額及び研究開発投資は、主に自己資金によって賄われました。
翌連結会計年度においては、約6,000百万円の設備投資と約13,000百万円の研究開発投資を予定しています。設備投資額は、開発環境基盤強化を目的とした通常の投資のほか、グローバルでの情報システムへの投資、気候変動対策として再生可能エネルギー設備への投資等を見込んでおります。研究開発投資については、更なる事業拡大にむけて、主力の計測事業においては、5Gにおける競争力強化、PQA事業については、グローバルビジネス展開を目的とした投資を行っていきます。これらの設備投資額及び研究開発費投資を、主に自己資金によって賄う予定です。
4) 資本の財源及び資金の流動性
当社グループの資金需要は、製品の製造販売に関わる部材購入費や営業費用などの運転資金、設備投資資金及び研究開発費が主なものであり、主に営業活動によって獲得した内部資金のほか、直接調達・間接調達により十分な資金枠を確保しています。また、2020年3月に設定した借入枠75億円のコミットメントライン(2023年3月まで有効)により財務の安定性を確保しています。今後とも、大きく変動する市場環境のなかで、国内外の不測の金融情勢に備えるとともに、運転資金、長期借入債務の償還資金及び事業成長のための資金需要に迅速、柔軟に対応してまいります。
当期末の有利子負債残高は、5,848百万円(前期末の有利子負債残高は14,594百万円)となりました。また、デット・エクイティ・レシオは0.05(前期末は0.15)となりました。
今後ともROEの向上、CCC向上によるキャッシュ・フロー創出及びグループ内キャッシュ・マネジメント・システム等による資金効率化に取り組み、強固な財務体質の維持に努めてまいります。
当社の格付(R&I:㈱格付投資情報センター)は、発行体格付が「A」、短期格付が「a-1」となっています。当社は、更なる格付向上に向けて、新たな経営ビジョンのもと、安定した収益を上げる企業としての2,000億円企業を目指してまいります。
株主還元については、連結当期利益の上昇に応じて、親会社所有者帰属持分配当率(DOE:Dividend On Equity)を上げることを基本に、連結配当性向30%以上の配当を行うとともに、総還元性向も勘案した株主還元施策も機動的に行っていくことを基本方針としています。
また、剰余金については、5G市場における競争力強化、IoTを活用した産業分野への事業拡大、クラウドサービス市場等への事業展開、新成長分野の開拓及び6Gをはじめとした次世代技術の獲得等に向けた戦略的投資(含むM&A)のための資金需要等に備える計画です。このような新規事業への投資も含めて、企業価値の向上に取り組みます。
(注1)デット・エクイティ・レシオ:有利子負債/親会社の所有者に帰属する持分
(注2)CCC:キャッシュ・コンバージョン・サイクル
5) 経営戦略と今後の方針について
経営戦略と今後の方針は、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。
6) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、国際会計基準(IFRS)に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、予想される将来のキャッシュ・フローや、経営者の定めた会計方針に従って財務諸表に報告される数値に影響を与える項目について、経営者が見積りを行うことが要求されます。これらの見積りは過去の実績等を勘案し合理的に判断していますが、結果として、これらの見積りと実際の結果が異なる場合があります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 4. 重要な会計上の見積り及び判断に記載のとおりであります。
特記すべき事項はありません。
当連結会計年度の研究開発投資(無形資産に計上された開発費を含む)の内訳は、次のとおりです。
|
|
当連結会計年度 |
|
売上収益比率 |
|
計測事業 |
|
|
11.9% |
|
PQA事業 |
|
|
8.3% |
|
その他の事業 |
447百万円 |
|
4.6% |
|
基礎研究開発 |
120百万円 |
|
- |
|
合 計 |
|
|
10.6% |
また、セグメント別の主な研究開発成果は次のとおりです。
(1) 計測事業
計測事業は、日本、米国、英国、スロバキア、中国、インド、フィリピンに設置した開発拠点を相互に連動させたグローバルな開発体制により開発を進めております。
1) MT8000A ラジオ コミュニケーション テストステーションの機能拡張
MT8000A ラジオ コミュニケーション テストステーションは、2018年の販売以来、第5世代通信システム(5G NR)のプロトコル試験、 無線特性試験及びアプリケーション機能試験に対応した、チップセット等のデバイス開発を含むモバイル端末開発用の試験プラットフォームとして活用され、モバイル通信技術の普及と発展に貢献しています。
5G NRは様々な社会課題の解決に役立つ柔軟性の高い移動体通信技術として期待され、2019年から商用サービスが始まっています。現在は、従来のLTEネットワークとの組み合わせで5G技術を活用するNSA(Non Stand Alone)方式が中心ですが、今後は、LTEネットワークに頼らないSA(Stand Alone)方式のサービスが発展してきます。また、周波数も、現在はFR1と呼ばれる比較的低い周波数を利用した5Gサービスが主に展開されていますが、今後はFR2と呼ばれる非常に高い周波数を利用したサービスが拡大することが期待されています。
このような中で、当社は今後の5G技術開発で要求される測定機能を積極的に開発し、MT8000Aに搭載しております。SA対応では、プロトコル試験、無線特性試験に加え、5G端末の機能試験用ツールであるMX800070A SmartStudio NRのSA試験機能を開発し、追加オプションとして販売を開始しました。また、FR2対応では、世界の先端チップセットメーカと協力してFR1+FR2 DC(Dual Connectivity)接続で業界最高速となる7Gbps以上のスループットを実現しています。さらに、FR2での無線特性評価で必須となるETC(Extreme Condition)環境でのOTA(Over The Air)試験への対応に業界として初めて成功しMA8172A CATR Anechoic Chamber ETCオプションとして販売を開始しています。
2) ME7873NR/ME7834NR RF/プロトコル コンフォーマンス試験・通信事業者受入試験システムの機能拡充
コンフォーマンス試験は、モバイル通信サービスの品質を保つための世界的な評価基準で、世界中の通信事業者に広く受け入れられています。また、多くの先進的な通信事業者は、このコンフォーマンス試験に加え、独自の端末品質評価体系を整備し、運用しています。
ME7873NR、ME7834NRは、RFとプロトコルそれぞれのコンフォーマンス試験及び通信事業者受入試験に対応した自動試験システムで、すでに数多くの試験機能がGCF及びPTCRBといった認証団体や大手通信事業者に認証され、実際の5G端末コンフォーマンス認証試験や端末受け入れ試験に使用されています。
コンフォーマンス試験や通信事業者受入試験では、サービスの拡張や通信規格の発展に伴う新たなテストケースの開発が継続的に必要となることから、試験ソリューションの供給には、体系的に十分に整備された品質の高い開発体制が必要となります。当社では、この要件を満たすため、日本を中心に、米国、英国、スロバキア、中国、インド、フィリピンに設置した開発拠点を連動させた強力な開発体制を構築することと合わせて、主要な先端チップセットメーカとの密接な共同検証体制を確立しています。このような活動を通して、2020年度は、RFコンフォーマンス試験におけるミリ波スプリアス試験やミリ波Demodulation/CSI試験、プロトコル コンフォーマンス試験におけるVoNR (Voice over New Radio) 試験等の分野で、業界初となるGCFからの認証を獲得しています。
3) 5G端末製造ソリューションの開発
2020年は、中国市場を中心に5Gスマートフォンの出荷台数が急速に増加し、年間で2億台を超える5Gスマートフォンが製造されました。2021年は5Gの普及が中国市場以外でも加速し、年間5億台以上の5Gスマートフォンが製造されると予想されています。
5Gスマートフォンを含むハイエンドスマートフォンは、高速通信を実現するMIMO(Multi Input Multi Output)技術やキャリアアグリゲーション技術に対応するため多くのアンテナポートを持っています。当社は、製造検査において、これらの多ポート型のスマートフォンを正確に効率よく測定するため、24ポートのRFコネクタを1モジュールに実装した新しい測定モジュールMU887002Aを開発いたしました。当社は、MU887002Aの供給を通して、より安価で高品質なスマートフォンの量産製造に貢献いたします。
4) Connected Vehicleの5G化に向けて機能強化対応したMT8000Aの開発
5G通信技術を活用することで、高速大容量、高信頼・低遅延な通信が可能となり、Connected Vehicleに新たなユーザ体験の創造が可能になります。当社はConnected Vehicleを支える5G車載通信器の開発/実装を行うお客様向けに効率的な評価を行えるSmartStudio Automotive Suiteを開発しました。
5Gで現実する高速大容量通信は、送信/受信マルチアンテナ技術などを用いた高密度データ伝送によって実現されますが、一方で設計技術者の皆様は、複雑な組合せ試験の増加などによって開発期間の長期化、開発費増大などを招いています。当社が開発したSmartStudio Automotive Suiteは、車載通信機が対応する通信機能を自動的に取得し、組合せ試験の自動生成、自動評価を行う業界初のTurn Keyソリューションです。
SmartStudio Automotive Suiteにより、5G車載通信器の品質・信頼性向上に寄与することでConnected Vehicleでの新たなユーザエクスペリエンス創造や自動運転早期実現に貢献いたします。
5) ローカル5G体験施設の開設と、お客様・パートナー企業様とのソリューション共創に向けた取り組み
当社は5Gの効果を体感頂ける施設として「ANRITSU 5G LAB」を本社(神奈川県厚木市)に新設いたします。ANRITSU 5G LABでは実際にローカル5G免許を取得し、基地局および5G端末を導入、当社5Gテストプラットフォームや試験ソリューションを併せて展示し、5G効果を体験頂ける施設となっています。
本施設開設にあたり、当社自身で無線局免許申請からエリア評価を行い、当社無線従事者が運用管理いたします。設置した基地局と利用可能な端末の周波数は28GHz帯と2.5GHz帯に対応しており、ローカル5Gの電波伝搬特性解析・カバーエリア調査、ネットワーク開通・保守、5G端末のR&D・品質保証・キャリア受入検証などの実証実験を行うことで、ローカル5Gのネットワーク品質の確保・向上のための知見を積み重ねてまいります。そこで培った技術と経験をお客様やパートナー企業様と共有することで、新たなソリューションを共創し、ローカル5Gの普及に貢献していきます。
6) MP1900A PCIe 5.0(PCI Express)対応ソリューションの開発
5G(第5世代通信システム)などによる超高速、大容量に対応するネットワークの検討が進んでいます。これらの技術革新によりデータセンターも高速大容量のデータを処理する必要性が高まっています。これにともない、データセンターを構築する伝送装置、サーバ、ストレージなどの内部インタフェースも高速、広帯域化が進み、内部インタフェースに導入されているPCI Expressは、PCIe4.0(16GT/s)が普及期に入り、さらに高速化に向けた次世代規格であるPCIe5.0(32GT/s)対応のチップセットや装置開発が進んでいます。装置のPCIe5.0規格認証の開始が2022年から予定され、装置メーカ各社は2021年から接続検証を始めています。また、PCI-SIG®では、さらに次々世代となるPCIe6.0の規格策定に着手しており、信号速度は64GT/sへ高速化し、その実現に高度な信号生成技術を用いる32Gbaud PAM4(Pulse Amplitude Modulation)の採用が決定しました。
MP1900Aは、自社開発の超高速デバイスの採用により、高品質な信号の送受信を可能にした、市場をリードするビットエラーレートテスタです。PCIe5.0をサポートする信号解析ソリューションを業界最速で2019年後半から2020年初めで市場投入し、多くの先端デバイスや装置開発メーカにご使用いただいています。昨今では、PCIe5.0対応製品開発で設備導入を検討されるお客様は、今後チップセットの開発が始まるPCIe6.0への拡張も見据えた検討をしています。
MP1900Aは、販売開始している64Gbaud PAM4信号を生成可能なPAM4 PPGユニットへのPCIe5.0オプション対応を2021年10月に行い、PCIe 5.0開発及びコンプライアンステスト対応と次世代PCIe 6.0で用いられるPAM4の性能評価を1boxで可能とするソリューションの提供を開始しています。
7) 5Gネットワーク、データセンター増強を支える400GbEテスタMT1040Aの開発
5Gサービスやクラウドサービス普及でネットワークやデータセンターの通信量は大幅に増加しており、通信方式も高速化に対応して進化が進んでいます。400GbEのネットワークやデータセンターへの導入が本格的に立上りはじめています。通信事業者は通信品質を維持、管理するために新たな通信規格への対応が必要となっており、さらにこの測定需要は、通信品質の向上、セキュリティ強化の為にモジュールやネットワークの検証を自ら行うデータセンター事業者にも広がりを見せ始めています。このようなニーズに応えるために、MT1040Aネットワークマスタ プロを2020年7月に販売開始しました。10Mbit/s~400Gbit/sまで1台で対応可能とした400Gマルチレートモジュールを主体に光ファイバー品質測定のOTDRモジュールなどを組み合わせ、様々なお客様にネットワークの建設、保守、及びネットワーク機器の検証を支える測定ソリューションを提供します。特に、400Gマルチレートモジュールでは、400GbEで必要とされるFEC(Foreword Error Correction)の測定機能に対応しました。FECは通信品質を向上させる一方、その訂正限界を超えると突発的な通信品質低下が生じます。MT1040Aの連続的・定量的FEC測定により、その訂正限界エラー発生を検証し、ネットワーク建設や定期保守時に予後保全が可能となります。
8) クラウドベースのリモート制御ソリューションSORA(Site Over Remote Access)の開発
ネットワークの建設・保守の業務効率化を推進するサービスとして、MX109020A Site Over Remote Accessを開発しました。5Gモバイル網(フロントホール、ミドルホール、バックホール)やコアネットワークの建設・保守用測定器であるMT1000A/MT1040Aネットワークマスタ プロを管理センタのエキスパートエンジニアがフィールドエンジニアに代わり遠隔操作することや現場の作業者の操作をモニタして指示することがAWS等のクラウドサービスを介してできるサービスです。ネットワークの建設・保守を行うフィールドエンジニアは、測定器を用いて、不慣れな操作や障害切り分けを行う場合もあり、エキスパートエンジニアのサポートが作業効率を改善します。エキスパートエンジニアは現場に駆け付けることなくオフィスの自席や自宅から測定器を遠隔操作でき、さらに本サービスを介して測定器で作成した測定レポートをお客様の指定するサーバへ格納することも可能です。
5GやIoTなどネットワーク技術の進化に伴って、現場作業者も新たな測定スキルを必要とします。エキスパートエンジニアによる現場サポートの他、実機の遠隔操作でのトレーニングなども有効となります。
このようなクラウド経由のサービスはこれから立ち上がるローカル5G網の設計・敷設・運用・保守においても有効なツールとなります。デジタルトランスフォーメーションによる進化が生み出すネットワーク構築の様々な場面での有効活用をこれからも模索していきます。
9) 標準化活動
計測事業における研究開発活動の重要な取り組みのひとつとして、国内外の標準化活動へ積極的に参画しています。情報通信産業における最先端の知識・技術を常に製品へ反映し、競争力に優れたソリューションをタイムリーに提供するために、主要な標準団体として現在3GPP、ITU-T、IEEE、PCI Express(注1)、IOWN等へ参加し、4G/5G、データセンター、IoT/M2M、コネクテッドカーといった有線・無線通信事業の戦略立案や情報収集に役立てています。
特に移動通信システムの規格を策定する3GPPにおいては、基地局と携帯端末の通信手順試験を可能とするコンフォーマンステスト(端末認証試験)仕様策定に際し、LTE/LTE-Advanced(4G)/New Radio(5G)の規格策定段階から数多くの寄書を行っています。2020年度は活動に制限を受けながらも海外現地法人と協力しながら前年度同様に国内外の通信オペレータ、チップセットベンダ、端末ベンダとも積極的にコラボレーション開発を実施継続し、そこで得た経験を活用し5G移動通信システム関連規格を含むリリース16の策定に参加しました。中でも5Gより採用されたミリ波通信周波数帯(注2)における測定方法の策定おいては、オンラインで開催されている会合に参加し、引き続きOTA(Over The Air)(注3)での測定方法検討、測定限界に関する情報の提供、また測定の不確かさ算出に貢献しました。これらの策定にあたっては3GPPに先行して進められていた国内法規策定にも配慮し、国内外の規格間での整合を取る活動にも貢献しています。
この他、データセンター向けサーバなどの内部インタフェースに使われるPCI Expressでは、次世代Gen5、Gen6のコンプライアンス試験に向けた規格会議に参画し、規格化に向けた測定結果の提示や、測定方法の提案などで貢献しました。本PCI Expressは今後コネクテッドカーなど内部インタフェースに使われることが期待されています。また、NTTが主導するIOWN構想は、これまでのインフラの限界を超え、あらゆる情報を基に個と全体との最適化を図り、多様性を受容できる豊かな社会を創るため、光を中心とした革新的技術を活用した高速大容量通信、膨大な計算リソース等を提供可能な、端末を含むネットワーク・情報処理基盤として、2024年に仕様確定、2030年の実現を目指して開始されており、この実現に向けた規格化会議に参加しています。今後規格化に向けた提案で貢献していきます。
(注1)PCI Express
PCI ExpressはPCI-SIGによって策定されたコンピュータの拡張バスの標準仕様で、CPUやメモリなどと通信するためのI/Oシリアルインタフェース。Gen5は32GT/s、Gen6は64GT/sのデータ転送速度。
(注2)ミリ波通信周波数帯
3GPPリリース15より採用された移動通信システム用通信周波数帯の一つ。新たに採用されている周波数としては24.25 GHz~29.5 GHz、37.0 GHz~40.0 GHzがある。その周波数帯では既存の6 GHz以下の周波数帯と比較し電波の空間伝送損失が非常に大きいため通信信号の品質劣化が大きい。そのため規格内で求められている端末性能を評価するために、物理的な測定限界付近での試験性能が求められる場合も有る。
(注3)OTA (Over The Air)
物理的にケーブル接続を行い通信するのに対し、無線での通信、電波の測定を行うこと。5Gのミリ波帯通信信号の携帯端末・基地局内における品質劣化を防ぐために回路の集積化が進められた結果、従来は携帯端末や基地局と測定器間は物理的にケーブルを用いて接続がなされていたのに対し、5Gのミリ波帯においては携帯端末・基地局のアンテナ端から送信される無線信号を測定器のアンテナで受信しその品質を評価する形となった。
(2) PQA事業
PQA事業は、アンリツインフィビス㈱が研究開発を行っております。
「食品ロスの低減」に貢献する品質保証ソリューション
近年、我が国をはじめとする世界各国において、SDGs(Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標)の実現に向けた機運が高まっています。SDGsの目標12.3では、「世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させる」ことを宣言しており、世界各国の食品産業においては「安全・安心な食品の安定供給」に加えて、「生産・サプライチェーンにおける食品の損失を減少させる」取組が加速しています。
PQA事業では、食品原材料に混入した金属異物を食品製造の工程内で検出して排除することができる「M6-hシリーズ 落下型金属検出機」を開発し販売を開始しました。
この製品は、新開発の筒状センサーユニットにより高感度かつ安定性に優れた異物検査を実現したほか、防塵・防水性や清掃性を大幅に向上して包装前の検査対象物を衛生的に検査することができます。
また、併せて提供する選別ユニットは、十分な応答性を確保して確実な異物排除を可能にした高信頼設計となっています。コンパクトなセンサーユニットは、狭い空間にも設置が可能で、複数ラインによる生産においては、各々の材料をミックスする前に検査することで、異物を検出した際の廃棄ロスを最小限に抑えることができるなど、食品生産プロセスの歩留まり向上と食品ロスの低減に貢献します。