第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

(1) 会社の経営の基本方針

当社は、様々なステークホルダーに対する責任と対話を重視し、以下のとおり経営理念・経営ビジョン・経営方針を策定しています。なお、経営ビジョン及び経営方針は2021年4月1日付で改定しております。新たな経営ビジョンには、グループ従業員等の一人ひとりが自ら挑戦し、新しい価値を社会に提供し続け、未来に向けて成長していく、という思いを込めています。

経営理念

誠と和と意欲をもって、“オリジナル&ハイレベル”な商品とサービスを提供し、安全・安心で豊かなグローバル社会の発展に貢献する

経営ビジョン

「はかる」を超える。限界を超える。共に持続可能な未来へ。

経営方針

1. 克己心を持ち、「誠実」な取り組みにより人も組織も“日々是進化”を遂げる

2. 内外に敵を作らず協力関係を育み、「和」の精神で難題を解決する

3. 進取の気性に富み、ブレークスルーを生み出す「意欲」を持つ

4. ステークホルダーと共に人と地球にやさしい未来をつくり続ける「志」を持つ

(2) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社は、キャッシュ・フロー(CF)を常に意識した経営を展開しており、「ROE (Return On Equity)」と「自己資本比率」をKPIと捉え、自己資本の効率性向上による中長期的な企業価値最大化と財務の安定性維持に取り組みます。

なお、取締役(社外取締役及び監査等委員であるものを除く。)、執行役員及び理事を対象とした現行の業績連動型株式報酬制度においては、その評価指標として、本制度の対象期間における各事業年度の期初に定める営業利益目標及び3ヶ年の中期経営計画に掲げる営業利益を採用しています。また、金銭の業績連動型報酬(年次役員賞与)においては、当該連結会計年度における連結ROEに加え、売上高、営業利益及びESG/SDGs目標の達成度等の指標を用いています。

(3) 中長期的な経営戦略、経営環境及び対処すべき課題等

今後の見通しにつきましては、情報通信分野においては、5Gの更なる技術革新や利活用分野への進展に伴い、今後も5G関連の需要は拡大していくことが見込まれます。また、データセンター等でのネットワーク・インフラの拡充に向けた需要の拡大も期待されます。一方、半導体不足の長期化に伴う部品調達リスクについては、今後も継続すると見込んでいます。このような事業環境の中、当社グループは、経営理念・経営ビジョン・経営方針及び中長期経営戦略のもと、中期経営計画「GLP2023」(計画期間: 2021~2023年度)の達成に取り組み、5Gビジネスを中心に、更に5G利活用分野への広がりやネットワーク高速化の需要拡大に的確に対応したソリューションをタイムリーに提供することで、競争力優位を確立し、5G/IoT社会を支えるリーディングカンパニーを目指します。

① 中長期的な経営戦略及び中期経営計画

当社グループは、主力の通信計測事業を軸に、情報通信サービスに関わるビジネスを展開しております。現在の5Gシステムに代表される通信インフラの様々なイノベーションは、社会を劇的に変革するとともに、人類に「つながる」ことの豊かさを提供し、グローバル社会の進歩を生み出してきました。「誠と和と意欲」、”オリジナル&ハイレベル”を経営理念とするアンリツは、情報通信における品質の見える化のために研ぎ澄ましてきた「はかる」技術を、食品・医薬品分野にも水平展開し、安全・安心な社会に貢献しています。

当社グループは、2021年4月に新たな経営ビジョンのもと、3ヶ年の中期経営計画「GLP2023」を策定し、その実現に向けた取組みを進めています。

当社のコンピテンシーである「はかる」を極めていくとともに、内外の異なる発想や技術を更に掛け合わせ、従来の「はかる」を超えた価値や新領域を開拓していくことで次の事業の柱を成長させ、攻めの姿勢で今までのアンリツの限界を超えてまいります。関係するあらゆるステークホルダーとともに持続可能で魅力的な未来を次世代に繋いでいくという思いを込めた経営ビジョンのもと、2030年度には安定した収益を上げる企業としての2,000億円企業を目指してまいります。

「GLP2023」の3年間は、5G計測市場のピークに向けた成長の3年であり、新たな芽を成長させる3年でもあります。4つのカンパニーと先端技術研究所の体制のもと、重点的に新たに成長させる4つの分野を 1)EV(電気自動車)、電池測定、2)ローカル5G、3)光センシング、4)医療・医薬品と捉え、それぞれの分野で外部との連携やM&A等を行うことで成長を加速させてまいります。

また、その先の将来も見据え、6GやNEMS(Nano Electro Mechanical Systems ※1)の基礎研究も開始しております。組織の枠を超え、会社の枠を超え、今までの概念に縛られず、前進してまいります。

「GLP2023」の主な経営数値目標及び当連結会計年度である2021年度の実績は、下表のとおりです。2021年度は「GLP2023」における計画初年度であり、主力の通信計測事業では、5Gチップセット及び携帯端末の開発需要やデータセンター等でのネットワーク高速化に向けた開発・生産関連需要を獲得しました。一方、世界的な半導体不足や米国でのCバンド(※2)商用化スケジュールの遅れが影響し、前期比で減収となりました。引き続き、資本コストを意識した成長投資(含むM&A)と資本効率の改善で、企業価値KPI(ROE)の向上を目指します。

※1 NEMS:半導体加工技術をベースとするマイクロマシンを更に小型化したnmオーダーの機械構造を持つデバイス

※2 マイクロ波帯を分割する際の一つの周波数帯(4~8GHz)の呼び名

 

 

2021年3月期

(実績)

2022年3月期

(実績)

2023年3月期

(業績見通し)

2024年3月期

(GLP2023目標)

売上収益(億円)

1,059

1,053

1,150

1,400

営業利益(億円)

196

164

190

270

当期利益(億円)

161

128

140

200

通信

計測

事業

売上収益(億円)

748

733

780

1,000

営業利益(億円)

177

152

175

230

PQA

事業

売上収益(億円)

214

219

240

270

営業利益(億円)

13

11

13

27

ROE(%)

15.8

11.5

12

15

※ 億円未満を切り捨てて表示しています。なお、2023年3月期の業績見通しは、2022年4月28日に公表した「2022年3月期決算短信〔IFRS〕(連結)」に基づいています。

また、「GLP2023」では、下表に記載のとおり、当社グループのサステナビリティ目標を掲げています。

これらのうち、温室効果ガス排出量の削減については、「Scope1+2」では、そのCO2排出量の大部分がエネルギー消費によるものであるため、工場・オフィスでの省エネ活動及び再生可能エネルギーの太陽光自家発電増設による取り組みのほか、電力調達先のCO2換算係数の改善により、前期より削減が進みました。「Scope3」では、取引先様との協働や省エネ製品への切替が進み、購入した製品・サービス及び販売した製品を使用することによるCO2排出量を削減しました。また、本社及び主要拠点への太陽光発電設備の導入等の再生可能エネルギー自家発電の取り組みは計画どおりで、自家発電比率は2023年度目標に向けて進捗しています。

ダイバーシティ経営の推進については、幹部職に占める女性の割合が、現状では国内2.8%、グローバルで10.9%となっており、目標の実現に向けて途上にあるものの、女性幹部職登用を促進する取組みは、技術系の女性を核とした新卒採用や中途採用の強化、柔軟な働き方に向けた制度面でのサポート、ライフワークバランスをより重視したキャリアパス新設による幹部職コースの複線化などにより展開しています。これらの活動内容等は、サステナビリティ推進会議、取締役会等でも報告されています。高齢者活躍の推進は、今後の社会や労働環境の変化を背景にした中長期的な会社の成長戦略上の課題と認識しており、エンゲージメントの向上による人財活力最大化を図る施策として、全従業員が働きがいを抱き、かつ安心して働き続けられることを目的とした人事制度・処遇の改定について、2022年度から実施しています。また、2021年9月1日に子会社株式会社ハピスマを設立し、障がいをお持ちの方が個性と能力を発揮できる就労環境を整備しました。同社は2022年1月14日に「障害者の雇用の促進等に関する法律」に基づく特例子会社として厚生労働大臣の認定を受けました。これにより、障がい者雇用推進に向けて掲げた法定雇用率充足の目標は達成しています。

 

KPI

GLP2023 サステナビリティSDGs目標

左記目標に対する進捗(2021年度)

環境

・温室効果ガス(Scope1+2)

2015年度比 23%削減

23%削減(参考値)

・温室効果ガス(Scope3)

2018年度比 13%削減

14%削減(参考値)

・自家発電比率(PGRE 30)

13%以上(2018年度電力消費量を基準)

12%(参考値)

社会

・女性の活躍推進

女性幹部職比率15%以上

10.9%(グローバル 2022年3月末)

・高齢者活躍推進

70歳までの雇用及び新処遇制度確立

70歳までの雇用及び新処遇制度制定

・障がい者雇用促進

職域開発による法定雇用率2.3%達成

特例子会社立上げにより法定雇用率充足

・サプライチェーンDDの強化

3年累積10社以上

6社実施

・CSR調達に係るサプライヤへの情報発信2回/年以上、教育1回/年以上

情報発信3回、教育1回実施

ガバナンス

・取締役会の多様性の推進

社外取締役比率50%以上

社外取締役比率50%継続(10名中5名)

・海外子会社の内部統制構築

全海外子会社が統制自己評価(CSA)の基準を満たす

2023年度の評価に向けて、CSAの判断基準や各社に求められる水準を定義中

※ Scope1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)/ Scope2:他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出/ Scope3:Scope1・Scope2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)/ 当社ではScope3のKPIにカテゴリ1及び11を採用

② コーポレート・ガバナンスの充実

当社は、経営環境の変化に柔軟かつスピーディに対応し、グローバル企業としての競争力を高め、継続的に企業価値を向上させていくことを経営の最重要課題としております。その目標を実現するために、コーポレート・ガバナンスが有効に機能する仕組みを構築することに努めております。執行役員制度導入による意思決定と業務執行の分離の促進、「監査等委員会設置会社」への移行、独立社外取締役が委員長を務める指名委員会・報酬委員会・独立委員会の設置、取締役会の実効性評価の実施などの従前からの取組みに加え、社外取締役比率50%以上を確保することにより、取締役会の監査・監督機能を強化し、コーポレート・ガバナンス体制を一層充実させることで、グローバルな視点でより透明性の高い経営の実現を目指してまいります。

当社グループのコーポレート・ガバナンスに関する事項は、後記第4「提出会社の状況」の4「コーポレート・ガバナンスの状況等」をご参照ください。

③ サステナビリティ推進活動、ダイバーシティ推進等

国際社会のサステナビリティ課題は、2015年9月、国連総会において全会一致で「持続可能な開発目標(SDGs)」として定められました。当社は、温室効果ガスの排出削減計画をSBT(Science Based Targets)イニシアチブに提出し、2019年12月には、この計画に掲げた目標が気候変動に関する政府間パネルIPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change )の気候科学に基づく削減シナリオに整合しているとして、この計画を承認いただきました。これには再生可能エネルギー(以下、「再エネ」といいます。)電力証書の購入も計画しておりましたが、当社グループの事業遂行に必要な電力を自前でも発電していく取組みがSDGsの目指す姿に適うものと考え、再エネ自家発電(PGRE:Private Generation of Renewable Energy)を重視することにしました。そこで、2020年4月に「Anritsu Climate Change Action PGRE 30(以下、「PGRE 30」といいます。)」を策定し、温室効果ガス削減に向けて果敢に挑むこととしました。PGRE 30は、一部の子会社を除いた2018年度の当社グループの電力使用量を基準に、再エネの一つである太陽光自家発電比率を、2018年度の0.8%から2030年頃を目途に30%程度にまで高めていく野心的な目標となります。主要拠点である神奈川県厚木市、福島県郡山市、米国カリフォルニア州Morgan Hillの3地区に自社消費用の太陽光発電設備を導入・増設し、PGRE 30に取り組むことで、SDGsの目標7のターゲット7.2に掲げる「2030年までに、世界のエネルギーミックスにおける再エネの割合を大幅に拡大させる」という目標達成に貢献してまいります。なお、当社は、2021年6月30日付で気候関連財務情報タスクフォース(TCFD)の提言への賛同を表明しました。サステナビリティレポート2021では、当社の事業活動において影響度の大きいリスクや機会について2℃シナリオと4℃シナリオ別に分析するなど、「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」などTCFDのフレームワークに準じた開示を行っています。今後も気候変動への取り組みとTCFD提言に基づく情報開示に努めてまいります。

当社グループは、誠実な企業活動を通じてグローバルな社会の要請に対応し、社会課題の解決に貢献してこそ企業価値の向上が実現されると考えています。その基本的な考え方を定めた「サステナビリティ方針」には、国連で採択されたSDGsアジェンダの5つのP、すなわち、People、Planet、Prosperity、Peace、Partnershipの要素が包含されています。当社グループは、「安全・安心で豊かな社会の発展への貢献」、「人と地球にやさしい未来づくりへの貢献」、「人権の尊重と健康で働きがいのある職場づくりの励行」、「公正で誠実な活動の実践と経営の透明性の維持向上」、「ステークホルダーとの強固なパートナーシップの構築」を目標に据え、「誠と和と意欲」をもってグローバル社会のサステナビリティ及び世界共通目標SDGsに貢献することを通じて、企業価値向上を目指してまいります。

当社グループにおける従業員の採用においては、技術職、事務職を問わず、外国籍人財のほかジェンダー平等に配慮した人財の採用を進めており、国内においては女性の積極採用、教育研修プログラムの改善等により女性社員の比率、女性幹部職の人数が徐々に高まっています。仕事と育児等の両立支援については、出産の前後や育児における休暇・休業・職場復帰制度、時短勤務制度等の諸制度を設けるなど、働きやすい職場環境の整備に積極的に取り組んでいます。加えて、従業員向けの自己啓発プログラムについては、自らの価値観・強み・ライフスタイルに基づき、「学びたいとき、学べるときに、学びやすい方法で、自ら学ぶ」をコンセプトに、自らが学ぶテーマを内発的に設定し、自己向上を図ることを目指すものとして刷新されています。諸制度の利用を希望する者が、性の別を問わず、共に安心して仕事と育児等の両立が図れるように、ダイバーシティ推進を総合的に所管する部門が中心となって、すべての従業員に対し、関連する情報の提供・周知、意識啓発等を行い、理解促進に努めています。自覚しにくいアンコンシャス・バイアスに対する気づきを行動変化につなげていく趣旨のeラーニングも採り入れました。これらの取組みにより、最近の傾向として、男性従業員による育児休職制度の利用が進んでいます。また、当社は、働き方の改革“ライフワークバランス”の推進に向け、就業時間管理の徹底、会議の時間短縮・効率化の推進等を通じた長時間労働の削減にも努めており、これは従業員の健康を守るとともに、育児、介護等を行いやすくすること、ひいては生産性を向上させてイノベーションを起こし、企業価値の向上につながるものと考えております。

なお、当連結会計年度末時点におけるグローバルにみた女性の活躍状況は以下のとおりです。

■ 幹部職に占める女性の割合 (女性幹部職数÷全幹部職数)                                            (単位:%)

 

2016年度

2017年度

2018年度

2019年度

2020年度

2021年度

日本

1.3

1.0

1.1

1.8

2.3

2.8

米州

24.7

23.0

20.2

18.3

17.9

21.6

EMEA 

19.7

22.1

23.5

21.6

24.2

20.3

アジア他

21.7

21.6

24.1

23.4

24.0

23.7

グローバル連結

10.2

9.9

10.5

10.4

10.8

10.9

※ EMEA(Europe, Middle East and Africa): 欧州・中近東・アフリカ地域

当社グループは、皆様とともに進歩と進化へ向けて歩み続けていきたいという強い思いを込めて、2021年度からブランド・ステートメントを「Advancing beyond」に刷新し、皆様に発信しています。さらなる高みを目指すとともに、お客様のビジョン実現を通じ社会のサステナビリティに貢献したいという姿勢を示しています。今後とも経営資源を最大限に活かして安全・安心で豊かなグローバル社会の発展に貢献し、企業価値の向上に努めてまいります。

 

 

2【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(方針及び体制)

当社グループは、リスクを適切に管理することは、企業価値を継続的に高め、社会的責任を果たすために、極めて重要な経営課題であると認識しており、リスク管理体制を整備しています。また、企業価値を維持、増大し、企業の社会的責任を果たし、当社グループの持続的発展を図るため、経営者はもとより、全社員がリスク感性を向上させ、全員参加により、リスクマネジメントを推進する取り組みに注力しています。

当社グループは、グループCEOのリスクマネジメント統括のもと、主要リスクを①経営の意思決定と業務の執行に係るビジネスリスク、②法令違反リスク、③環境リスク、④製品・サービスの品質リスク、⑤輸出入管理リスク、⑥情報セキュリティリスク、⑦感染症・災害リスクであると認識し、リスクごとにリスク管理責任者を明確にしています。各リスク管理責任者は、当該リスクに関する関係部門の責任者及びグループ会社管理責任者で構成する委員会を主管し、当該リスクマネジメントに関わるグループ会社全体を統括するとともに、リスクマネジメントの対策、計画、実施状況及び年間を通したマネジメントサイクルの結果を、適時に経営戦略会議に報告します。また、リスクマネジメント推進部門は、規則、ガイドラインの制定、教育研修などを主管し、事業の継続発展を確保するための、リスク管理レベルの向上に必要な体制を整備しています。なお、各リスク管理責任者は、当該分野に関し、海外グループ会社の活動を支援しています。また、コンプライアンスリスクに関しては、各地域の統括会社の責任者が年度計画を策定し、リスクアセスメントを実施しています。

 

(主要リスクの概要)

(1) 当社グループの技術・マーケティング戦略に関するリスク(①ビジネスリスク)

当社グループは高い技術力により開発された最先端の製品とサービスをいち早く提供することで顧客価値の向上に努めております。しかしながら、当社グループの主要市場である情報通信市場は技術革新のスピードが速いため、当社グループが顧客価値を向上させるソリューションをタイムリーに提供できない事態や、顧客のニーズやウォンツを十分にサポートできない事態が生じた場合は、当社グループの財政状態及び経営成績に大きな影響をもたらす可能性があります。

(2) 市場の変動に関するリスク(①ビジネスリスク)

経済や市場状況の変化、技術革新などの外的な要因は、当社グループが展開する製品群の収益に影響を及ぼし、グループの財政状態及び経営成績に大きな変動をもたらす可能性があります。

通信計測事業は、情報通信市場向けの売上比率が高いため、サービス・プロバイダ、ネットワーク機器メーカー、スマートフォン・携帯電話メーカー、半導体・デバイスメーカーの設備投資動向に業績が左右される可能性があります。サービス・プロバイダは、急増するデータ・トラフィックに対応しながら、IoTサービスやクラウドサービスなど様々なニーズを実現するネットワークの構築が求められており、コスト効率を意識した設備投資を進めています。また、当社グループの収益の柱であるモバイル市場の業績は、携帯電話サービスの技術革新や普及率、加入者数及びスマートフォン等の買い替え率の変化に影響されます。

PQA事業は、食品産業向けの売上収益が8割以上を占めているため、食品メーカーの設備投資動向に業績が左右される可能性があります。

(3) 戦略投資に関するリスク(①ビジネスリスク)

当社グループは、コンピテンシーである「はかる」を極めていくと共に、内外の異なる発想や技術をさらに掛け合わせ、従来の「はかる」を超えた価値や新領域を開拓していくことで次の事業の柱を成長させるため、外部との連携やM&Aを含めた戦略的成長投資を強化しています。投資の実行にあたっては、事前に事業計画の検証やデューデリジェンスを実施したうえで、投資判断を行っています。また、投資後もPMI(Post Merger Integration)計画を策定、実行し、投資後のビジネス立ち上げに万全の体制で取り組んでいます。

しかしながら、予期せぬ外部環境の変化や、市場環境や競合状況の変化等によっては当初期待した成果が得られないリスクがあります。このような場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響をもたらす可能性があります。

(4) 海外事業展開に関するリスク(①ビジネスリスク、②法令違反リスク、⑤輸出入管理リスク)

当社グループはグローバルに事業を展開しており、海外売上比率は当期実績で70%を占めています。顧客の多くもグローバル規模で事業を展開しているため、海外諸国の経済動向、国際情勢の変化、遵守すべき法令対応によって、当社グループの財政状態及び経営成績に大きな影響をもたらす可能性があります。

 

(5) 製品の供給に関するリスク(①ビジネスリスク、⑦感染症・災害リスク)

当社グループは、電子部品等の安定調達を目指して、取引先との強固な関係構築に努めるとともに、部品調達リスクを速やかに把握する仕組み作りや、戦略的な部品在庫の確保などの対策を講じています。あわせて、リスクの高い部品については代替品への変更などによりリスクの最小化を図っています。

しかしながら、災害等に起因するサプライチェーンの混乱や需要の急激な高まりによる部品供給の逼迫等が生じた場合は、電子部品等の調達や主要製品の製造が困難な状況になり、製品の供給に遅延や停止が発生するリスクがあります。このような場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響をもたらす可能性があります。

(6) 感染症の蔓延に関するリスク(⑦感染症・災害リスク)

新型コロナウイルス感染症拡大による不透明な社会・経済状況が依然として継続しています。当社グループは、従業員の安全確保と社内外の感染抑止を最優先に取り組んでいます。また、事業への影響を最小限に抑えるべく、新型コロナウイルス対策本部を設置し、情報収集と必要な対応を行っています。しかしながら、今後の感染拡大の経過によっては、サプライチェーンの寸断や当社グループ、顧客及び取引先の工場の操業停止や事業拠点の休業などの事業活動の制限等による影響により、当社グループの財政状態及び経営成績に大きな影響をもたらす可能性があります。

(7) 災害等に関するリスク(⑦感染症・災害リスク)

当社グループはグローバルに生産・販売活動を展開しているため、地震、台風、気候変動に伴う異常気象等の自然災害、火災、戦争、テロ及び暴動等が発生した場合には、当社グループや仕入先、顧客の主要設備への被害等により事業活動に支障が生じ、また、これらの災害等が政治不安又は経済不安を引き起こすことにより、当社グループの財政状態及び経営成績に大きな影響をもたらす可能性があります。

当社では、災害・緊急時の被害最小化と事業活動の早期回復を図り、円滑な事業活動を継続することを目的として、各部門がBCP(Business Continuity Plan)を作成しています。当社グループの製造拠点である東北アンリツ(株)では、地震や大雨による河川の氾濫などの自然災害を重要なリスクとして位置づけ、災害発生後になすべきことを具体的にプロセスごとに明確化しています。実際の大規模災害での教訓を受け、BCP緊急発動基準を見直し、より幅広いリスクに備えるとともに各リスク発生時の対応手順の精緻化を行っています。

(8) 外国為替変動に関するリスク(①ビジネスリスク)

当社では売掛金の回収などで発生する外貨取引への為替先物予約等によりリスク・ヘッジに努めておりますが、急激な為替変動は当社グループの財政状態及び経営成績に影響をもたらす可能性があります。

(9) 在庫陳腐化のリスク(①ビジネスリスク)

当社グループは顧客のニーズやウォンツをきめ細かく捉え、製品やサービスを市場に提供するよう努めております。しかし、特に通信計測事業における製品群は技術革新が極めて速いため、製品及び部品の陳腐化が起こりやすく、在庫の長期化・不良化を招くことで当社グループの財政状態及び経営成績に影響をもたらす可能性があります。

(10) 人材確保に関するリスク(①ビジネスリスク)

当社グループの持続的成長のためには、人材の獲得、確保、育成は非常に重要な要素となっています。当社グループは、国籍や性別などにこだわらない多様な人材の採用活動を積極的に行うことにより、優秀な人材の獲得に努めるとともに、社員の自発的成長を支援する教育研修体系の整備を継続的に進めています。また、ライフワークバランスを重視し、働き方や価値観の多様化に対応した労務環境の整備に取り組んでいます。しかしながら、人材の確保及び育成が想定どおりに進まない場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響をもたらす可能性があります。

(11) コンプライアンスに関するリスク(②法令違反リスク)

当社グループは、事業を展開する各国において当該国の法的規制の適用を受けています。これらの法令等に違反した場合、あるいは社会的要請に反した行動等があった場合には、法令による処罰、訴訟の提起、社会的制裁、ブランドの毀損等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響をもたらす可能性があります。

当社グループが社会的責任を遂行するにあたり、あるべき行動の指針とする「アンリツグループ行動規範」を定めるとともに、教育啓発活動を随時実施し、企業倫理の向上及び法令遵守の強化に努めています。国内アンリツグループのコンプライアンスの推進は、経営戦略会議の議長であるグループCEOが率先垂範しています。そして、経営戦略会議の下に、コンプライアンス担当執行役員を委員長とし、国内アンリツグループ各社の社員がメンバーとして参加する企業倫理推進委員会が、コンプライアンス推進活動を統括しています。また、企業倫理推進委員会およびその事務局である法務部は、法令対応の関連委員会とともに、海外アンリツグループ各社に対し、各国・各地域の法令・文化・慣習などを踏まえた倫理法令遵守を促し、必要な支援を行っています。さらに、海外アンリツグループ各社のコンプライアンス責任者と連携して、グローバルな推進体制を構築しています。なお、コンプライアンス推進体制が適正に機能しているかを内部監査部門が監査し、必要に応じて、提言・改善要請を行っています。

 

(12) 環境問題に関するリスク(③環境リスク)

当社グループは、気候変動、エネルギー、大気、水、有害物質、廃棄物、商品リサイクルなどさまざまな環境に関する法令及び規制等の適用を受けています。当社グループでは、事業活動や製品に関わる環境コンプライアンスの徹底はもとより、気候変動対策、循環型社会の形成、環境汚染予防に取り組んでいます。

しかしながら、環境規制の更なる強化や過去の行為に起因する環境責任の発生、自然災害などに起因した環境汚染の発生等が考えられます。これらの事象によって、法令遵守や環境対策のために必要なコストの増加等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響をもたらす可能性があります。

当社グループでは、ステークホルダーからの要請に応えるため、製品のライフサイクル全体にわたり環境とのかかわりを意識した製品を開発し、提供しています。また、地球温暖化防止、生物多様性保全などの観点から、オフィス・ファクトリーの省エネルギー化によるCO2排出量の削減、3R(リデュース・リユース・リサイクル)推進による廃棄物の削減、環境汚染防止に関して法、条例の規制より厳しい自主管理基準の設定による環境汚染リスクの低減に努めています。

(13) 製品の品質に関するリスク(④製品・サービスの品質リスク)

当社グループでは、品質マネジメントシステムの国際規格であるISO 9001の認証を1993年から取得し、製品の設計・開発から製造・サービス・保守に至るまでの一貫した品質管理をグローバルに展開しています。しかしながら、予測し得ない品質上の重大な欠陥といった事象の発生や製造物責任につながる事態が発生した場合には、社会的信用の失墜、訴訟の提起、社会的制裁、ブランドの毀損等に加え、補償や対策に伴うコストが発生し、当社グループの財政状態及び経営成績に影響をもたらす可能性があります。

当社グループでは、製品品質の維持・向上と保証を図り、品質マネジメントシステムを適切に運用するために、品質マネジメントシステム委員会や内部品質監査委員会等を設けています。また、万一製品事故が発生した場合の体制の整備や製品事故予防のシステム及び再発防止に向けた取り組みについて、検討を行っています。

(14) 訴訟に関するリスク(②法令違反リスク)

当社グループは、事業に関わる各種法令を遵守するとともに、知的財産権の適正な使用、契約条件の明確化、相手方との協議の実施等により紛争の発生を未然に防ぐよう努めています。

当連結会計年度において、当社グループに重要な影響を及ぼす訴訟等は提起されていません。しかしながら、重大な訴訟等が発生した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響をもたらす可能性があります。

(15) 情報セキュリティに関するリスク(⑥情報セキュリティリスク)

当社グループは事業活動を行ううえで、顧客及び取引先、株主、従業員などすべての関係者の情報を適切に保護することが社会的責務であり、また、情報資産が当社グループ及びすべての関係者にとって重要な財産であると認識しています。これらの情報資産について、サイバー攻撃による情報セキュリティ事故が発生した場合、当社グループの社会的信用の失墜、訴訟の提起、社会的制裁、ブランドの毀損等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響をもたらす可能性があります。

当社グループでは、情報セキュリティ管理体制を構築し、徹底した管理とセキュリティの維持・向上への取り組みや情報セキュリティ教育の実施などを継続的に行っています。グローバルに事業を展開する当社では、世界中のオフィスをネットワークで接続し、情報の共有化を進めてきました。情報セキュリティにおいては一カ所でも脆弱な部分があると、全体のセキュリティレベルに影響を及ぼすことから、グローバルで強固かつ均一なセキュリティシステムを構築することに取り組んでいます。

(16) 繰延税金資産に関するリスク(①ビジネスリスク)

当社グループは、税効果会計を適用し、繰延税金資産を計上しています。繰延税金資産の計算は、将来の課税所得に関する見積りを含めた予測等に基づいており、実際の結果が予測と異なる可能性があります。将来の課税所得の見積りに基づく税金負担の軽減効果が得られないと判断された場合、当該繰延税金資産は取り崩され、当社グループの財政状態及び経営成績に影響をもたらす可能性があります。

(17) 確定給付制度債務に関するリスク(①ビジネスリスク)

当社及び一部の子会社の従業員を対象とした確定給付年金制度から生じる退職給付費用及び債務は、割引率等の数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されておりますが、確定給付制度債務の見込額を算出する基礎となる割引率等の数理計算上の仮定に変動が生じた場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響をもたらす可能性があります。

 

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。

 

1) 財政状態及び経営成績の状況

通信計測事業の主要市場である情報通信分野においては、各国オペレータが5Gサービスを開始していますが、5Gミリ波の技術的課題や、米国Cバンドの商用化スケジュールの遅れなどにより、5Gスマートフォンの普及速度は緩やかになっています。2022年3月には、3GPPにおいて高周波数帯の拡張、通信エリアの拡大、低消費電力・低コスト通信などの5Gの更なる効率性、性能改善を目的とした新たな仕様「Release 17」(*1)の標準化が完了しました。ミリ波による5G商用化の普及が遅れている米国においても、Sub6GHz帯であるCバンド(*2)による商用化に向けた動きが活発化してきました。5G利活用の領域では、Automotive分野での5G活用に向けた研究開発や、ローカル5Gのようなプライベート領域での5Gネットワーク構築に向けた調査や実証実験が始まっています。さらに、次世代の通信規格である6Gの研究開発も始まっています。

5Gのネットワークでは、オペレータが無線ネットワークをより柔軟に構築できるよう、無線アクセスネットワークのオープン化に取り組むO-RANアライアンスが活動を進めてきました。これまでメーカー独自のインタフェースで構成されていた基地局装置に対してO-RANの標準仕様を適用することで、マルチベンダーでの無線アクセスネットワークの構築が容易になりました。これにより、世界各地のオペレータがO-RANの導入を進めており、5G基地局市場が活性化しています。

また、クラウドサービスの高度化や5Gサービスの進展によりデータ・トラフィックが急増し、ネットワーク・インフラを逼迫させつつあります。ネットワークの更なる高速化を進めるサービス・プロバイダでは、100Gbpsサービスの導入が本格化するとともに、ネットワーク機器メーカーでは、400Gbpsネットワーク装置の開発も進展しています。

新型コロナウイルス感染症については、変異株の感染再拡大に伴う都市のロックダウンなど依然として先行きが不透明な状況が継続しています。また、ウクライナ情勢悪化に伴う地政学リスクの高まり、資源価格の高騰、世界的な半導体不足の長期化も企業業績に対する重要なリスク要因となっています。

半導体不足をはじめとした部品調達リスクに対しては、取引先と強固な関係を構築し、情報を速やかに把握する仕組み作りや、戦略的な部品在庫の確保などの対策を講じています。あわせて、リスクの高い部品については代替品への変更などによりリスクの最小化を図っています。

このような環境のもと、通信計測事業グループは、5Gの開発投資需要を獲得するためのソリューションの開発と組織体制の整備に注力し、5G商用化に向けた開発関連需要を獲得しました。また、ネットワーク高速化に向けた開発・生産関連需要も獲得しました。

PQA事業の分野においては、加工食品生産ラインの自動化投資が進んでおり、X線を用いた異物混入検査や包装品質検査など品質保証工程の自動化に係る需要が堅調に推移しました。PQA事業グループは、このような状況下でX線を軸としたソリューションの競争力と販売体制の強化に取り組みました。

また、当社は、中期経営計画GLP2023において「EV、電池測定」を重点的に成長させる分野の一つとして掲げています。2022年1月には、高電圧・大電流・大容量の電気エネルギー制御技術を持つ株式会社高砂製作所を当社の連結子会社とし、EV、電池測定市場の事業基盤拡大に取り組みました。

この結果、受注高は110,665百万円(前年同期比2.9%増)、売上収益は105,387百万円(同0.5%減)、営業利益は16,499百万円(同16.0%減)、税引前利益は17,150百万円(同13.5%減)、当期利益は12,841百万円(同20.5%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益は12,796百万円(同20.5%減)となりました。

当連結会計年度末の資産合計は、153,261百万円となり、前期末に比べ9,160百万円増加しました。

当連結会計年度末の負債合計は、38,819百万円となり、前期末に比べ4,174百万円増加しました。

当連結会計年度末の資本合計は、114,442百万円となり、前期末に比べ4,986百万円増加しました。

なお、当社グループの当連結会計年度の財政状態の状況は、「(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 2) 財政状態」に記載しています。

 

(*1)3GPPで標準化される規格番号

(*2)マイクロ波帯を分割する際の一つの周波数帯(4~8GHz)の呼び名

 

セグメントごとの経営成績は以下のとおりです。なお、各セグメント別の売上収益は外部顧客に対する売上収益を記載しています。

① 通信計測事業

当事業は、サービス・プロバイダ、ネットワーク機器メーカー、保守工事業者などへ納入する、多機種にわたる通信用及び汎用計測器、測定システム、サービス・アシュアランスの開発、製造、販売を行っています。

当期は、5Gチップセット及び携帯端末の開発需要が堅調に推移しました。また、データセンター等でのネットワーク高速化に向けた開発・生産関連需要も獲得しましたが、世界的な半導体不足や米国でのCバンド商用化スケジュールの遅れが売上収益に影響し、前年同期比で減収となりました。費用面では部品調達費用や販売促進費の増加に加えて、第2四半期には固定資産除却損355百万円が発生しています。この結果、売上収益は73,320百万円(前年同期比2.0%減)、営業利益は15,202百万円(同14.2%減)となりました。

なお、当連結会計年度より、当事業は従来「計測事業」としていた名称を「通信計測事業」に変更しております。

 

② PQA事業

当事業は、高精度かつ高速の各種自動重量選別機、自動電子計量機、異物検出機などの食品・医薬品・化粧品産業向けの生産管理・品質保証システム等の開発、製造、販売を行っています。

当期は、アジアや米国などの新型コロナウイルス感染症の状況が改善している地域において、食品市場の品質保証プロセスの自動化、省人化を目的とした設備投資が堅調に推移しましたが、半導体不足による部品調達費用の増加等により、増収減益となりました。この結果、売上収益は21,978百万円(前年同期比2.6%増)、営業利益は1,173百万円(同12.5%減)となりました。

③ その他の事業

その他の事業は、環境計測事業、センシング&デバイス事業、物流、厚生サービス、不動産賃貸等からなっております。

当期は、センシング&デバイス事業においては、価格競争の激化等により減収となりましたが、2022年1月4日付で株式会社高砂製作所を連結子会社とし、当第4四半期より同社を連結対象としたことにより、売上収益は10,089百万円(前年同期比3.9%増)、営業利益は1,123百万円(同37.5%減)となりました。

 

2) キャッシュ・フローの状況

当期における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の期末残高は、45,689百万円となり、前期末に比べ4,120百万円減少しました。なお、営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合わせたフリー・キャッシュ・フローは、7,324百万円のプラス(前期は15,452百万円のプラス)となりました。

当期における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。

① 営業活動によるキャッシュ・フロー

営業活動の結果獲得した資金は、純額で16,031百万円(前年同期は20,481百万円の獲得)となりました。これは、税引前利益の計上により資金が増加した一方、法人所得税の支払いにより資金が減少したことが主な要因です。なお、減価償却費及び償却費は5,132百万円(前年同期比186百万円増)となりました。

② 投資活動によるキャッシュ・フロー

投資活動の結果使用した資金は、純額で8,706百万円(前年同期は5,029百万円の使用)となりました。これは、株式会社高砂製作所の取得による支出4,012百万円及び有形固定資産の取得による支出が主な要因です。

③ 財務活動によるキャッシュ・フロー

財務活動の結果使用した資金は、純額で13,395百万円(前年同期は14,458百万円の使用)となりました。これは、配当金の支払額6,077百万円(前年同期の配当金支払額は4,878百万円)及び自己株式の取得による支出5,079百万円が主な要因です。

 

3) 生産、受注及び販売の実績

① 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

前年同期比(%)

通信計測(百万円)

71,858

96.7

PQA (百万円)

22,557

105.3

報告セグメント計(百万円)

94,415

98.6

その他(百万円)

10,156

104.6

合計(百万円)

104,572

99.2

(注)金額は販売価格によっております。

 

② 受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

通信計測

77,109

100.9

21,318

133.9

PQA

23,118

107.2

6,595

127.2

報告セグメント計

100,228

102.3

27,914

132.2

その他

10,437

108.6

4,023

275.6

合計

110,665

102.9

31,937

141.5

 

③ 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

前年同期比(%)

通信計測(百万円)

73,320

98.0

PQA (百万円)

21,978

102.6

報告セグメント計(百万円)

95,298

99.0

その他(百万円)

10,089

103.9

合計(百万円)

105,387

99.5

(注)主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、その割合が100分の10以上に該当する相手先がないため記載を省略しております。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであり、実際の結果は、将来に関する事項の記述とは異なる可能性があります。その主な要因については、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載しておりますが、それらに限定されるものではありません。

 

1) 経営成績

当社グループは、通信計測事業、PQA事業の2つを報告セグメントとしています。

① 通信計測事業

当社グループの売上収益の70%を占める通信計測事業は、「モバイル市場」「ネットワーク・インフラ市場」「エレクトロニクス市場」向けの3つのサブセグメントに区分しております。

a. モバイル市場

モバイル市場には、携帯電話サービスを行うサービス・プロバイダの端末受入検査用途向け計測器や、スマートフォン等の携帯電話端末やICチップセット、その他関連電子部品メーカーでの設計、生産、機能・性能検証、保守用途向けの計測器等を含めております。

当市場の需要は、携帯電話サービスの技術革新や普及率、加入者数の推移のほか、端末/チップセット・メーカーの新規参入又は撤退、端末やチップセットのモデルチェンジや出荷数などに影響される傾向があります。

現在、5G通信システムを用いたサービスが世界各国で開始され、各国オペレータの5G商用化スケジュールはミリ波の技術的課題はあるものの進捗しています。日本においても都市部を中心とした一部のエリアから全国に5Gサービス範囲を拡大しています。

このような市場環境のもと、端末開発市場では5GをサポートするICチップセットや携帯電話端末の開発が継続し、5G開発用計測器への需要が堅調に推移しています。

加えて、2022年3月には高周波数帯への拡張、通信エリアの拡大、低消費電力・低コスト通信などの仕様策定が完了し、IoT分野や自動運転・テレマティクス分野、ローカル5G分野では、新たなサービスの実現に向けたモバイル通信技術の開発も事業機会として顕在化しています。また、5Gの各性能をさらに高めた次世代の通信規格である6Gの研究開発も始まっています。

当社は、引き続き競争力のある最先端計測ソリューションを開発・投入するとともに、開発ポートフォリオ・マネジメントを的確に遂行することで、収益基盤の強化に努めてまいります。

b. ネットワーク・インフラ市場

ネットワーク・インフラ市場には、有線・無線通信事業者のネットワーク建設、保守、監視及びサービス品質保証用途向けのソリューションや、ネットワーク機器メーカーの設計、生産、試験及び調整用途向けソリューション等を含めております。

当市場においては、クラウドサービスの高度化や5Gサービスの進展によりデータ・トラフィックが急増しているため、ネットワークの更なる高速化を進めるサービス・プロバイダでは100Gbpsサービスの導入が本格化するとともに、ネットワーク機器メーカーでは400Gbpsネットワーク装置の開発も進展しています。これに伴い、関連する計測ソリューションの需要も堅調に推移しています。さらに、800Gbpsの実用化やオール光化などのネットワークの高度化に向けた研究開発も始まっています。

当社は、通信機器の研究開発向けソリューションに加え、通信インフラの構築・監視からサービス品質保証までの総合ソリューションを提供することで、事業の拡大に取り組んでまいります。

c. エレクトロニクス市場

エレクトロニクス市場には、通信ネットワークに関連する通信機器やその他の電子機器に使用される電子デバイスの設計、生産、評価をはじめ、エレクトロニクス分野で幅広く利用されている計測器等を含めております。

当市場の需要は、通信機器や情報家電、自動車等に使用される電子部品及び電子機器の生産規模に影響を受ける傾向があります。モバイル・ブロードバンド・サービスやWi-Fi/Bluetoothデバイスなどを使用したIoTサービスの拡大により、多岐にわたる用途の無線モジュールの開発・製造用計測ソリューション需要が増加しております。また、6Gに向けた研究開発の始まりに伴い関連する測定器の需要が顕在化しています。

当社は、エレクトロニクス市場に対するソリューションを拡充し、更なる事業の拡大に努めてまいります。

 

② PQA事業

PQA事業は、当社グループの売上収益の21%を占めています。当事業は、食品産業向けの売上収益が8割以上を占めているため、食の安全安心に関する意識の高まりや食品メーカーの業績に影響を及ぼす消費支出水準の変化に大きな影響を受けます。

主力製品には、食品製造ラインにおいて高速搬送しながら高精度に計量する重量選別機や食品中に混入する金属や石などの異物を高感度に検出し製造ラインから排除する異物検査機器(X線検査機等)などがあります。日本市場においては新型コロナウイルス感染症の影響長期化に伴い一部顧客で設備投資に慎重な姿勢がみられるものの、異物混入に対する顧客の関心は引き続き高く食品生産ラインの自動化、省人化を目的とした設備投資は底堅く推移しました。

また、海外市場では、米州、欧州、中国などでグローバルに事業を展開する重要顧客の需要が堅調に推移し、当事業の海外売上比率は約5割となっています。

食品メーカーの品質検査への関心は高く、この需要に応えるために、新製品及び品質保証ソリューションの開発に努めるとともに、海外現地生産を含むサプライチェーンの最適化とグローバルオペレーションの効率化を推進し、事業拡大と収益性の向上に取り組んでまいります。

 

2) 財政状態

① 資産

資産合計は、153,261百万円となり、前期末に比べ9,160百万円増加しました。主に棚卸資産並びに、のれん及び無形資産が増加した一方、現金及び現金同等物が減少しました。

② 負債

負債合計は、38,819百万円となり、前期末に比べ4,174百万円増加しました。これは、主に営業債務及びその他の債務が増加したことによるものです。

③ 資本

資本合計は、114,442百万円となり、前期末に比べ4,986百万円増加しました。これは、主に利益剰余金並びに、その他の資本の構成要素が増加した一方、自己株式5,079百万円の取得で減少したことによるものです。

この結果、親会社所有者帰属持分比率は74.5%(前期末は75.8%)となりました。

有利子負債残高は6,521百万円(前期末は5,848百万円)、デット・エクイティ・レシオは0.06(前期末は0.05)となりました。

 

(注)デット・エクイティ・レシオ:有利子負債/親会社の所有者に帰属する持分

 

 

3) キャッシュ・フロー

当社グループは、当連結会計年度末において45,689百万円の資金を保有していることから、将来の予測可能な資金需要に対して不足が生じる事態に直面する懸念は少ないと認識しています。

当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況は、「(1) 経営成績等の状況の概要 2) キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

当連結会計年度の設備投資額は、5,658百万円(前年同期比3.8%増)となりました。主に新製品開発と原価低減に向けた投資を継続するとともに、グローバルでの情報システム統一に向けた投資を実施しました。研究開発投資については、11,386百万円(前年同期比1.2%増)となりました。主に新製品開発とソリューションの競争力強化に向けた投資を実施しました。これらの設備投資額及び研究開発投資は、主に自己資金によって賄われました。

翌連結会計年度においては、約6,500百万円の設備投資と約12,000百万円の研究開発投資を予定しています。設備投資額は、開発環境基盤強化を目的とした通常の投資のほか、生産体制の整備、気候変動対策として再生可能エネルギー設備への投資等を見込んでおります。研究開発投資については、更なる事業拡大にむけて、主力の通信計測事業においては、5Gにおける競争力強化、PQA事業については、グローバルビジネス展開を目的とした投資を行っていきます。これらの設備投資額及び研究開発費投資を、主に自己資金によって賄う予定です。

 

 

4) 資本の財源及び資金の流動性

当社グループの資金需要は、製品の製造販売に関わる部材購入費や営業費用などの運転資金、設備投資資金及び研究開発費が主なものであり、主に営業活動によって獲得した内部資金のほか、直接調達・間接調達により十分な資金枠を確保しています。また、2020年3月に設定した借入枠75億円のコミットメントライン(2023年3月まで有効)により財務の安定性を確保しています。今後とも、大きく変動する市場環境のなかで、国内外の不測の金融情勢に備えるとともに、運転資金、長期借入債務の償還資金及び事業成長のための資金需要に迅速、柔軟に対応してまいります。

当期末の有利子負債残高は、6,521百万円(前期末の有利子負債残高は5,848百万円)となりました。また、デット・エクイティ・レシオは0.06(前期末は0.05)となりました。

今後ともROEの向上、CCC向上によるキャッシュ・フロー創出及びグループ内キャッシュ・マネジメント・システム等による資金効率化に取り組み、強固な財務体質の維持に努めてまいります。

当社の格付(R&I:㈱格付投資情報センター)は、発行体格付が「A」、短期格付が「a-1」となっています。当社は、更なる格付向上に向けて、新たな経営ビジョンのもと、安定した収益を上げる企業としての2,000億円企業を目指してまいります。

株主還元については、連結当期利益の上昇に応じて、親会社所有者帰属持分配当率(DOE:Dividend On Equity)を上げることを基本に、連結配当性向30%以上の配当を行うとともに、総還元性向も勘案した株主還元施策も機動的に行っていくことを基本方針としています。

また、剰余金については、5G市場における競争力強化、IoTを活用した産業分野への事業拡大、クラウドサービス市場等への事業展開、新成長分野の開拓及び6Gをはじめとした次世代技術の獲得等に向けた戦略的投資(含むM&A)のための資金需要等に備える計画です。このような新規事業への投資も含めて、企業価値の向上に取り組みます。

 

(注)CCC:キャッシュ・コンバージョン・サイクル

 

 

5) 経営戦略と今後の方針について

経営戦略と今後の方針は、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。

 

6) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、国際会計基準(IFRS)に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、予想される将来のキャッシュ・フローや、経営者の定めた会計方針に従って財務諸表に報告される数値に影響を与える項目について、経営者が見積りを行うことが要求されます。これらの見積りは過去の実績等を勘案し合理的に判断していますが、結果として、これらの見積りと実際の結果が異なる場合があります。

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 4. 重要な会計上の見積り及び判断」に記載のとおりであります。

 

4【経営上の重要な契約等】

当社は、2021年7月30日開催の取締役会において、日本電気株式会社(以下NEC)の子会社である株式会社高砂製作所の発行済株式のうち、NECが保有する99.7%分を取得することについて決議し、同日付でNECと株式譲渡契約を締結しました。2022年1月4日をもって取得手続きを完了しております。

詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 7. 企業結合」に記載のとおりです。

5【研究開発活動】

当連結会計年度の研究開発投資(無形資産に計上された開発費を含む)の内訳は、次のとおりです。

 

 

当連結会計年度

 

売上収益比率(%)

通信計測事業

8,964百万円

 

12.2

PQA事業

1,758百万円

 

8.0

その他の事業

572百万円

 

5.7

基礎研究開発

91百万円

 

-

合 計

11,386百万円

 

10.8

 

また、セグメント別の主な研究開発成果は次のとおりです。

 

(1) 通信計測事業

通信計測事業は、日本、米国、英国、スロバキア、中国、インド、フィリピンに設置した開発拠点を相互に連動させたグローバルな開発体制により開発を進めております。

 

1) MT8000A ラジオ コミュニケーション テストステーションの機能拡張

MT8000A ラジオ コミュニケーション テストステーションは、2018年の販売以来、第5世代通信システム(5G NR)のプロトコル試験、 無線特性試験及びアプリケーション機能試験に対応した、チップセット等のデバイス開発を含むモバイル端末開発用の試験プラットフォームとして活用され、モバイル通信技術の普及と発展に貢献しています。

5G NRは様々な社会課題の解決に役立つ柔軟性の高い移動体通信技術として期待され、従来のLTEネットワークとの組み合わせで5G技術を活用するNSA(Non Stand Alone)方式を中心に2019年から商用サービスが開始されました。現在はLTEネットワークに頼らないSA(Stand Alone)方式のサービスも増え、5GサービスはFR1周波数帯を中心に導入期から普及期に移行しています。またFR2と呼ばれるミリ波を利用したサービスに向けた技術開発投資も続いています。このような中、当社はLTEと5G FR1そしてFR1で新たに定義されたNR-U(Unlicensed Band、7GHz帯)を全て対応する新RFユニットMT8000A-033、MT8000A 1台でLTEと5G NR対応を可能にするSingle Box、更に端末修理、アンテナ評価ニーズを満たす低価格版Entry Modelの販売を開始しました。これによりMT8000Aは5G普及期に増加するハイエンドからミドル・ローエンドの市場要求に柔軟に対応できるプラットフォームに進化しました。また、パートナー企業との協業によりOTA(Over The Air)試験、SAR(Specific Absorption Rate)試験や映像/音声品質試験など5G端末実使用時に必要となる試験に幅広く活用可能となりました。更に、URLLC(Ultra Reliable Low Latency Communication)で必要とされるDAPS(Dual Active Protocol Stack)対応によるハンドオーバ時のデータ信頼性向上、FR1 + FR2 DC(Dual Connectivity)接続での10Gbpsのスループット実現等、Release16以降の先端技術への対応も進めています。

 

2) ME7873NR/ME7834NR RF/プロトコル コンフォーマンス試験・通信事業者受入試験システムの機能拡充

コンフォーマンス試験は、モバイル通信サービスの品質を保つための世界的な評価基準で、世界中の通信事業者に広く受け入れられています。また、多くの先進的な通信事業者は、このコンフォーマンス試験に加え、独自の端末品質評価体系を整備し、運用しています。

ME7873NR、ME7834NRは、RFとプロトコルそれぞれのコンフォーマンス試験及び通信事業者受入試験に対応した自動試験システムで、すでに数多くの試験機能がGCF及びPTCRBといった認証団体や大手通信事業者に認証され、実際の5G端末コンフォーマンス認証試験や端末受け入れ試験に使用されています。

2021年度は、RFコンフォーマンス試験に関してFR1のテストケースの拡張だけでなく、業界に先駆けてFR2 Performance試験のGCF認定基準(TPAC)を取得した他、法人サービス用途の無線アクセス機器の試験対応のため、MA8172A CATR Chamberを機能強化し、対象機器サイズや重量を拡張するなど、今後のFR2の市場活性化に向けた試験強化も実施しました。プロトコル コンフォーマンス試験においては、先端チップセット・メーカーとの早期共同検証により3GPPの規格であるFR1 Release16の認証を業界で初めて取得し、スマートフォンで期待されるPower Saving(消費電力抑制)などの先端機能の試験を拡充しました。また、通信事業者受入試験に関しては、新たに独自の受入試験を開始した米国通信事業者への対応を完了したことで、当社は日本及び米国の主要通信事業者7社の端末受入試験を提供する唯一のメーカーとして5G端末の品質向上に貢献いたします。

 

3) MT8870A 5G端末製造ソリューションの機能拡張

2021年は5G FR1サービス拡大に伴い、年間で5億台を超える5Gスマートフォンが製造されました。今後も増加が続き2024年には年間10億台以上の5Gスマートフォンが製造されると予測されます。

5Gスマートフォンを含むハイエンドスマートフォンは、高速通信を実現するMIMO(Multi Input Multi Output)技術やキャリアアグリゲーション技術に加え、WLAN、 Bluetooth、 GPSなどの様々な通信方式に対応するため多くのアンテナポートを持っています。当社は、これらの多ポート型スマートフォンの製造検査を効率よく測定するため業界最多の24ポートのRFコネクタを1モジュールに実装した測定モジュールMU887002Aをリリース、更にこの測定モジュールの7GHz拡張を販売開始しました。これにより各国で順次利用が開始される6GHz帯のWLANと、将来必要となる5G FR1 NR-Uにソフトウエア追加のみで対応可能になります。MU887002Aの供給を通して、より安価で高品質なスマートフォンの量産製造に引き続き貢献いたします。

 

4) ワイヤレスコネクティビティテストセットMT8862A Wi-Fi6/6Eの開発

WLAN機能を搭載した無線通信機器は、IoTやリモートワーク環境の普及に伴い、ノートブックPC、ゲートウェイ、プリンタやテレビなどのIT/Network、 Consumer/Smart Home分野で市場が拡大しています。今後はさらに、車載機器分野においても大きな成長が見込まれています。

このWLAN搭載機の普及を後押ししている無線技術IEEE802.11axは、Wi-Fi6/6Eと呼ばれ、多数端末接続時のスループットが改善されます。この技術の実現には新しい周波数(6GHz帯)の利用とデバイス間の相互接続性の担保が重要であり、実際の通信状態における無線品質測定と接続性検試験の実現が期待されております。

この要求に応えるため、通信プロトコルを搭載するMT8862Aにて、6GHz帯周波数拡張、および測定帯域160MHz拡張に対応、実動作状態にてWi-Fi6/6E搭載機の信号品質を評価できる業界初の測定器を実現しました。当社は、最新WLAN試験環境の提供を通して、WLAN搭載機の普及に貢献いたします。

 

5) 5G基地局製造向けMT8000Aの開発

5Gサービスの本格的な拡大にともなって、5G基地局の生産数が増加し、その種類も多様化する傾向にあります。基地局は対応する周波数帯ごとに設計され、性能調整の方法や試験仕様が異なります。基地局に搭載されるアンテナ数(RFポート数)も増えつつあり、試験時間は長くなる傾向があります。こうした状況の中、基地局の製造ラインでは柔軟な検査設備の構築と試験コストの削減、試験時間の短縮が課題となっています。

当社はこの課題を解決するために、ラジオコミュニケーションテストステーションMT8000Aの機能拡充をおこない、FR1とFR2のそれぞれに複数のRF送受信ポートを備えることで5G基地局の効率的なRF試験を実現しました。当社は、Base Station Test Suite for NR mmWave MX800045AとBase Station Test Suite for NR sub-6GHz MX800046Aを通して、より安価で高品質な基地局製造に貢献いたします。

 

6) MP1900A PCIe 5.0/6.0(PCI Express)対応ソリューションの開発

5G(第5世代通信システム)の導入、自動運転・遠隔医療の実現などに向け超高速・大容量に対応するネットワークの検討が進んでいます。これらの技術革新によりデータセンターも高速大容量のデータを処理する必要性が高まっています。これにともない、データセンターを構築する伝送装置、サーバ、ストレージなどの内部インタフェースも高速、広帯域化が進み、内部インタフェースに導入されているPCI Expressは、次世代規格5.0(32GT/s)の装置の認証が2022年4月から開始されます。認証取得に向け装置メーカー各社はPCIe5.0接続検証の加速を始めています。また、PCI-SIG®では、さらに次々世代となるPCIe6.0の規格策定を進めており、信号速度は64GT/sへ高速化し、その実現に高度な信号生成技術を用いる32Gbaud PAM4(Pulse Amplitude Modulation)の採用が決定しております。チップセットの物理的特性を規定しているBASE規格は2022年1月にリリースをされ、装置に要求されるCEM規格は2023年リリースに向けてPCI-SIG®にて活発な議論が行われています。

MP1900Aは、自社開発の超高速デバイスの採用により、高品質な信号の送受信を可能にした、市場をリードするビットエラーレートテスタです。PCIe5.0をサポートする信号解析ソリューションを業界最速で2019年後半から2020年初めで市場投入し、多くの先端デバイスや装置開発メーカーにご使用いただいており、装置に先行して測定器としての認証を2022年4月に取得しました。また、PCI-SIG®はMP1900Aを認証試験プログラム設備として採用しております。昨今では、PCIe5.0対応製品開発で設備導入を検討されるお客様は、今後チップセットの開発が始まるPCIe6.0への拡張も見据えた検討をしています。

MP1900Aは、販売開始している64Gbaud PAM4信号を生成可能なPAM4 PPGユニットへのPCIe5.0オプション対応を2021年10月に行い、PCIe 5.0開発及びコンプライアンステスト対応と次世代PCIe 6.0で用いられるPAM4の性能評価を1boxで可能とするソリューションの提供を開始しており、新たに導入されるFEC(Forward error correction)測定手法など規格策定に合わせたソリューションの提供によりデータセンターの高速大容量化に貢献していきます。

 

7) 5Gネットワーク、データセンター増強を支える400GbEテスタMT1040Aの機能拡充

5Gサービス、テレワークやオンライン授業の急速な普及、社会的な要請であるDX(デジタルトランスフォーメーション)推進等により、データセンターの増設が急ピッチで進んでいます。データセンターは、電源・空調システムの制約上、建設後にデータ処理量を大幅に増加させることは困難であり、スケールアップのためには、拠点の追加・分散化が効果的な手段となります。このため、拠点同士を接続するDCI構築の需要が高っています。DCIには通信キャリアが提供するWDM回線が広く使われてきましたが、回線のコスト化のためシステムのオープン化が推進されています。その実現に400ZRトランシーバーの導入が加速しています。しかし、この技術導入のトレードオフとしてユーザ自身がDCI回線の通信品質を担保する必要が生じます。このようなニーズに応えるために、400GbEテスタMT1040Aネットワークマスタプロを機能拡充し、400ZRインタフェース規格に対応しました。また、1拠点あたりの効率化も同時進行しています。外部から引き込んだ高速回線を内部の低速レートに接続するには間に伝送装置を挟まなければならず、その分だけ多くのスペースを取ります。ブレイクアウトと呼ばれる方式はこの問題を解消するインタフェースとして、導入が進んでおり、このブレイクアウト方式の品質評価を実現する、イーサネットN Port BERT測定機能を追加しました。これらの機能強化により、400ZRを使用した回線への移行試験や、ブレイクアウトインターフェースの導入試験を効率化し、データセンターの構築・拡張のコスト削減に貢献いたします。

 

8) MT1000A 5Gモバイルネットワークの開通・保守での同期測定機能を強化

5G(第5世代通信システム)は、「超高速」「高信頼・低遅延」「多数同時接続」といった様々なシナリオに対応するネットワークとして普及が進んでいます。5Gで使われるミリ波では上りと下りの送受信タイミングを時分割で切り替えるTDD(注1)方式が採用されます。この方式では全ての基地局が精密に時刻同期していないと干渉を起こし、通信品質の劣化を招きます。基地局間の同期は、これらを結ぶ有線ネットワークに SyncE、PTPと呼ばれる技術を適用することにより実現されます。このため、セルサイトの建設・保守においてネットワークの時刻同期性能を測定し、ネットワーク性能を保証することがネットワークオペレータにとって重要になります。このニーズに応えるため高精度GNSS同期発振器モジュールMU100090Bを開発し、MT1000Aネットワークマスタプロの時刻同期測定を強化しました。MU100090BはGPS、QZSS(みちびき)、Galileo、GLONASSおよびBeidouに対応したGNSS(注2)同期発振器です。各国・地域が運用する衛星測位システムからの信号を受信し、UTCとトレーサビリティのある基準時刻および10MHz周波数信号を時刻同期精度測定の基準タイミングとして出力します。この基準タイミングを用いて、最大25GbpsまでのSyncE、PTP試験をサポートし、ネットワークの時刻同期精度を測定します。

さらにMX109020A Site Over Remote Accessを組み合わせることで、遠く離れた複数のサイトに置かれたMT1000Aを中央局からクラウド経由で一括して遠隔操作・監視することができます。これにより同期障害が発生している個所を素早く特定することができます。これらのソリューションによりローカル5GやO-RAN基地局による5Gサービス普及を支える時刻同期インフラの構築に貢献していきます。

 

9) 標準化活動

通信計測事業における研究開発活動の重要な取り組みのひとつとして、国内外の標準化活動へ積極的に参画しています。情報通信産業における最先端の知識・技術を常に製品へ反映し、競争力に優れたソリューションをタイムリーに提供するために、主要な標準団体として現在3GPP、ITU-T、IEEE、PCI Express(注3)、IOWN等へ参加し、4G/5G、データセンター、IoT/M2M、コネクテッドカーといった有線・無線通信事業の戦略立案や情報収集に役立てています。

特に移動通信システムの規格を策定する3GPPにおいては、基地局と携帯端末の通信手順試験を可能とするコンフォーマンステスト(端末認証試験)仕様策定に際し、LTE/LTE-Advanced(4G)/New Radio(5G)の規格策定段階から数多くの寄書を行っています。2021年度はCOVID-19のパンデミックにより活動に制限を受けながらも海外現地法人と協力しながら前年度同様に国内外の通信オペレータ、チップセットベンダ、端末ベンダとも積極的にコラボレーション開発を実施継続し、そこで得た経験を活用し5G移動通信システム関連規格を含むリリース16、17の策定および、リリース15の保守に参加しました。中でも5Gより採用されたミリ波通信周波数帯(注4)における測定方法の策定おいては、オンラインで開催されている会合に参加し、引き続きOTA(Over The Air)(注5)での測定方法検討、測定限界に関する情報の提供、また測定の不確かさ算出に貢献しました。これらの活動の結果策定された試験規格は最終的に端末のコンフォーマンステスト用プログラムとして四半期毎に製品に取り込まれ、認証団体であるGCFやPTCRB (注6)による審査・承認を経て、携帯端末の認証取得および、市場投入をサポートしています。

 この他、データセンター向けサーバなどの内部インタフェースに使われるPCI Expressでは、Gen5や次世代Gen6の認証試験開始に向けて測定手順書の作成、規格化に向けた測定結果の提示や、測定課題解決に向けた提案などで貢献しました。本PCI Expressは今後コネクテッドカーや、VR/ARなど内部インタフェースでの使用が検討されています。また、NTTが主導するIOWNはオールフォトニクス・ネットワーク、デジタルツインコンピューティング、コグニティブ・ファウンデーションの3つの要素でスマートな社会実現に向けて、高速大容量、低遅延、低消費電力を実現可能なAPN (All Photonics Network)実現を目標としている。APN実現のキーデバイスである光電融合デバイスに関して測定課題の提案や、各タスクフォースでの会合に参加し、2024年に仕様確定、2030年の実現に向けた提案活動を通して貢献していきます。

 

(注1)TDD(Time Division Duplexing)

ネットワークから端末への下り通信と、その逆の上り通信を決められた時間間隔で切り替えながら通信する方式。同一の周波数帯を両方向で共有するため、帯域の利用効率が高い。

(注2)GNSS(Global Navigation Satellite System)

人工衛星を用いた測位システムであり、GPSは米国の運用するGNSSのひとつ。欧州の運用するGalileo、ロシアの運用するGLONASS、中国の運用するBeidouのほかに日本の運用する準天頂衛星システム(QZSS: みちびき)などがある。

(注3)PCI Express

PCI ExpressはPCI-SIGによって策定されたコンピュータの拡張バスの標準仕様で、CPUやメモリなどと通信するためのI/Oシリアルインタフェース。Gen5は32GT/s、Gen6は64GT/sのデータ転送速度。

(注4)ミリ波通信周波数帯

3GPPリリース15より採用された移動通信システム用通信周波数帯の一つ。採用されている周波数としては24.25 GHz~29.5 GHz、37.0 GHz~43.5 GHz、47.2 GHz~48.2 GHzがある。その周波数帯では既存の6 GHz以下の周波数帯と比較し広い帯域を用いた高速大容量通信が可能である反面、電波の空間伝送損失が非常に大きいため通信信号の品質劣化が大きく、通信可能な距離に制約があるため端末性能の評価がより重要となる。

(注5)OTA (Over The Air)

物理的にケーブル接続を行い通信するのに対し、無線での通信、電波の測定を行うこと。5Gのミリ波帯通信信号の携帯端末・基地局内における品質劣化を防ぐために回路の集積化が進められた結果、従来は携帯端末や基地局と測定器間は物理的にケーブルを用いて接続がなされていたのに対し、5Gのミリ波帯においては携帯端末・基地局のアンテナ端から送信される無線信号を測定器のアンテナで受信しその品質を評価する形となった。

(注6)GCF/PTCRB

GCF: Global Certification Forum

PTCRB: PCS Type Certification Review Board

それぞれヨーロッパ発祥、アメリカ発祥の認証機関であり、携帯端末が3GPPの規格に準拠していることの認証を行うとともに、コンフォーマンステストシステムの認証の役割も担っている。

 

 

(2) PQA事業

新方式の高精細センサを搭載したデュアルエナジーセンサ搭載X線検査機(HRタイプ)の開発

世界全体の食肉需要の高まりに伴い、より高品質な食肉へのニーズが高まっています。食肉には解体の過程で除去しきれなかった骨が残っていることがあり、原材料が加工されるにつれて細かく砕け、除去が難しくなります。そのため加工工程での確実な骨の検出と除去を求められており、当社は各種手法を駆使して検出性能を向上させてきました。

今回、更なる高感度での異物検出を実現させるため新方式の高精細デュアルエナジーセンサと新設計の画像処理を搭載したX線検査機を開発し販売を開始しました。これにより、厚みがあり凹凸が多い食肉や冷凍食品などに混入している骨や金属、石などの異物をより高精度に自動検出することができます。

この新製品は、加工後の廃棄ロスを最小限に抑え、食品生産プロセスの歩留まり向上と食品ロスの低減に貢献します。また、新方式のセンサは素子の劣化が少なく、大幅な高寿命化を実現したことにより、TCO(総所有コスト)の低減にも貢献します。