第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 ソニーの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は以下のとおりです。文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものです。

 

 2024年度の世界経済は、地政学リスクが高止まりする一方で、インフレ率の低下及びそれにともなう金融緩和により、底堅い成長を維持しました。特に米国経済は、金利が上昇した状況下においても、安定した雇用・所得環境を背景とした個人消費の回復に下支えされ、堅調に推移しました。一方で、米国と日本の金利差を背景に、円相場は2023年度に引き続き大きく変動しました。中国では政府の景気支援策により個人消費や不動産販売の改善が見られたものの、不動産投資の落ち込みを中心とする不動産市場の長期的な低迷が成長を下押ししました。今後の世界経済の見通しは、ウクライナ・ロシア情勢や中東情勢等の不透明さが増していることに加え、米国の一連の関税政策及びそれにともなうグローバルでの景気減速懸念等により、不確実性が急速に高まっています。

 ソニーは、グローバルに多様な事業を展開しており、これらの世界経済の状況の変化に加えて、米中関係等の地政学リスクの高まりや人工知能(以下「AI」)のような技術の急速な進化、地球環境問題や社会の分断への対応等、ソニーの事業を取り巻く環境は大きく変化しています。

 ソニーは、これらの事業環境の変化に迅速に対応し、各事業の収益構造の強化に取り組むとともに、長期視点の経営を重視し、グループ全体の企業価値向上のための取り組みを続けてきました。

 

 2025年5月14日に開催した経営方針および業績に関する説明会では、社長 CEO(最高経営責任者)の十時裕樹が長期戦略、経営の方向性と重点領域を紹介しました。

 十時は、長年にわたり経営の軸足をエンタテインメントに移してきたことがソニーグループの変革と好調な業績に寄与しており、今後もこれら注力領域の成長をめざすと強調しました。足元の好調な勢いとこれまでの実績を糧に、長期ビジョンである「Creative Entertainment Vision」の実現に注力することが、今後のグループ経営方針の中核であると述べ、このビジョン実現のカギとなる主要事業の進捗と重点施策を語りました。

 

 2024年5月23日に開催した経営方針説明会で発表したソニーの「Creative Entertainment Vision」は、クリエイティビティとテクノロジーを通じて感動を届け、IPの価値を最大化し、クリエイター、パートナー、社員とともに、また、ソニーの様々な事業間のシナジーを通じて、「Create Infinite Realities」すなわち、無限の感動を届ける未来の実現をめざしています。十時は、ソニーの事業間コラボレーションを基盤とし、エンタテインメント領域全体で多様なファンコミュニティをつなぐエンゲージメントプラットフォームの活用や、アニメ等の成長領域におけるソニーの強みを活かすことが、このビジョンの実現において重要であると強調しました。

 

 2025年5月14日の経営方針および業績に関する説明会において発表した経営方針の詳細は、以下のとおりです。

 

1.「Creative Entertainment Vision」の実現を支えるエンタテインメント事業

 クリエイティビティとテクノロジーによる感動を届けることをめざす長期ビジョン「Creative Entertainment Vision」を、クリエイター、パートナー、社員とともに、またソニーグループの多様な事業間のシナジーを通じて実現していく。

 

(1)G&NS分野

・プレイステーション®5(以下「PS5®」)が今後も安定した利益をもたらす見込みであり、「FUTURE OF PLAY(遊びの未来)」の創造に向けて、思慮深く戦略的な投資を実行。

・インストールベース拡大にともなう月間アクティブユーザー数の増加や、プレイステーション®プラスの収益拡大等による、ネットワークビジネスの売上・利益の安定的な成長を見込む。

・『Ghost of Yōtei』やライブサービスゲームの『Marathon』等の新作を通じたユーザー層の拡大と、『HELLDIVERS 2』や『Destiny 2』等の既存のライブサービスゲームの継続的な成功による、スタジオビジネスのさらなる成長に期待。

・ベータ版クラウドストリーミング機能に対応したPlayStation Portal™ リモートプレーヤー等、強力かつ収益性の高い周辺機器への注力。

 

(2)音楽分野

・グローバル音楽事業では、グローバル市場でのポジション強化に向けて、主要市場における楽曲レパートリー、強力なレーベル及びアーティストサービス、インディーアーティスト向けに最適化されたサービス及びDIY(自作型)配信、音楽出版等、主要な事業価値を強化し、継続的に収益性を向上させる。

・国内音楽事業では、2024年度はYOASOBI等のJ-POPアーティストの海外展開で大きな成功を収め、今後もさらなる拡大を進める。

・オーガニック成長と戦略的買収の二軸での事業全体及び拡大市場での成長、注力領域や音楽カタログへの戦略的投資機会の探索、プレゼンスの向上、ファンへのサービス提供、ソニー・ミュージック所属アーティストのIPの拡大に注力。

・AI等の最先端技術の活用を探求し、価値を創造するとともに、アーティストの権利保護にも取り組む。

 

(3)映画分野

・SPEでは、『Spider-Man: Brand New Day』、Jumanjiシリーズの最新作、『Spider-Man: Beyond the Spider-Verse』、劇場限定公開予定のビートルズの伝記映画4作品等、大型作品の公開を予定している。

・アニメ専門配信サービスCrunchyrollは会員数やサービスを順調に拡大し、アニメが映画分野の成長を牽引する見込み。

・SPEが引き続き事業間シナジーや、コラボレーションを生み出すハブの役割を担うことを期待。

 

2.事業間連携とシナジー

 「Creative Entertainment Vision」のもと、ここ数年で事業間連携がもたらす価値や可能性が顕在化。

 

(1)アニメ

① グループの複数の事業において、成長を牽引する重要な領域であり、㈱アニプレックス(以下「Aniplex」)やCrunchyrollの事業を基盤に、アニメにおけるリーチの拡大と、コンテンツ開発の強化を進めている。

・ゲーム「Ghost of Tsushima: Legends/冥人奇譚」のアニメシリーズ化

・アニメをプロデュースする㈱HAYATE(以下「HAYATE」)の設立

・㈱KADOKAWA(以下「KADOKAWA」)との戦略的資本業務提携

 

② 今後もアニメ市場の成長が見込まれる中、Crunchyrollの成長をさらに加速させるための施策を強化。

・アニメグッズ等のeコマース、モバイルゲームライブラリサービス、マンガアプリ等、アニメファンに対するサービスを拡充。

・2025年3月31日時点で有料会員が1,700万人超に拡大しているが、さらなる会員獲得に向け、プレイステーションネットワーク(以下「PSN」)との連携を推進。PS5上からのCrunchyrollの有料サービスへの登録を円滑化しており、今後はPSNの収益化機能の活用を通じてCrunchyrollのサービスを強化。

 

(2)エンゲージメントプラットフォーム

・PSNのネットワーク基盤をベースに、決済・データ基盤・セキュリティ等のバックエンドのコア機能を活用し、ユーザーとクリエイターをつなぐ新たなエンゲージメントプラットフォーム構築に取り組んでいる。このプラットフォームはより質の高い収益化にむけたソニーグループ共通基盤として活用されることで、グループ各社が事業の競争力強化や差異化に経営資源を集中し、顧客エンゲージメントの拡大と深化に注力できることをめざす。

 

(3)ロケーションベースエンタテインメント(以下「LBE」)

・LBEは、長期目線で様々なエンタテインメント領域のIP価値を最大化できる領域と位置づけ、初期的な探索を実施。

 

3.エンタテインメント事業のイネーブラーとなるテクノロジー

(1)ET&S分野:商品やサービスの軸足をコンテンツクリエイションにシフト。

・α™(Alpha™)の成功をもとに、成長の原動力としてイメージング領域のエコシステム拡大を推進。

・スポーツデータの利活用能力の強化のため、昨年KinaTraxを買収。リアルタイムコンテンツクリエイション技術も活用し、新たな視聴層を獲得するオルタナティブ放送の拡大を図る。

・空間コンテンツの制作を支援するXYN™、リアルタイムVFX、360 Virtual Mixing Environment等により技術革新を追求。

 

(2)I&SS分野

・モバイル向けイメージセンサー事業ではセンサーサイズの大判化トレンドの継続が見込まれる中、次世代製造プロセスと2層トランジスタ画素積層型のTRISTA等を組み合わせ、センサーの高付加価値化・差異化で顧客の期待に応えさらなる成長をめざす。

・投資を適切なレベルに抑制し、投資効率を引き上げるための施策を検討する。

・モバイル向けイメージセンサー以外の事業領域では、カメラ向けや産業機器・社会インフラ向けセンサー等で安定した収益を確保しつつ、車載向けセンサー等の将来の成長が期待される事業では、市場成長のスピードや事業性を見極めながら、最適な開発費や体制のもとでの中長期的な成長をめざす。

 

4.多様な事業と人材による成長の実現

 ソニーの事業と人の多様性は、「Creative Entertainment Vision」の実現において最も重要であり、約11万人の社員が多様な視点やアイデアを生み出す環境から生まれるシナジーが、ソニー独自の競争力の源泉。

 ソニーはクリエイターの創造性を解放し、無限のリアリティ、エンタテインメント、感動が生まれる世界の実現に努めていく。

 

第五次中期経営計画 経営数値目標及びキャピタルアロケーションとその進捗

<経営数値目標とキャピタルアロケーション>

・当社は、2024年5月14日に2024年度から2026年度の3年間の中期経営計画(以下「第五次中期経営計画」)の数値目標を発表しました。

・第五次中期経営計画においては、利益ベースの成長をより重視することとし、金融分野を除く連結ベース*1の営業利益の成長率及び営業利益率をグループ全体の経営数値目標としました。具体的には、3年間の連結営業利益の年平均成長率を10%以上とすること、及び3年間累計の連結営業利益率を10%以上とすることを目標としています。

・第五次中期経営計画におけるキャピタルアロケーションについては、設備投資に1.7兆円、戦略投資については、各事業における成長投資と機動的な自己株式の取得に1.8兆円を割り当てる計画としました。また、キャピタルアロケーションの主な原資である3年間累計の金融分野を除く連結ベースの営業キャッシュ・フローは、第五次中期経営計画期間における利益成長に加え、2021年度から2023年度の3年間の第四次中期経営計画期間で増加した運転資金の回収により、第四次中期経営計画の実績を上回る、4.5兆円の見通しとしました。

・株主還元については、総還元性向を重視し、これを第五次中期経営計画期間を通して段階的に増加させ、最終年度の2026年度には、40%程度とすることを目標としました。

 

*1 金融事業のパーシャル・スピンオフの実行方針に係る2025年5月14日の取締役会決議にともない、2025年度第1四半期より、金融事業を非継続事業に分類し、金融事業を除く継続事業とは区分して表示するため、2025年5月14日以降、第五次中期経営計画の経営数値目標は継続事業ベースの営業利益の成長率及び営業利益率としています。

 

<進捗>

・2024年度については、主にG&NS分野及びI&SS分野が利益成長を牽引し、金融分野を除く連結ベース*2の営業利益額の2023年度からの成長率は23%、営業利益率は10.6%となりました。

・キャピタルアロケーションについては、主たる原資である3年間累計の継続事業ベースの営業キャッシュ・フローの見通しを、2024年度の実績も踏まえ、当初計画の4.5兆円から4.8兆円に見直しました。第五次中期経営計画では、株主還元強化を重要施策の一つと位置付けており、かかる原資の増加は、株主還元の増額に割り当てる計画です。戦略投資は1.8兆円、設備投資は1.7兆円と、当初計画からの変更はありません。

・戦略投資の進捗は、2025年5月14日時点までの実行済及び意思決定済案件の合計が約5,140億円となっています。株主還元については、2024年4月1日から2025年4月11日までの期間で総額3,075億円の自己株式取得を実施するとともに、2024年度には、株式分割考慮後*3で2023年度から1株につき3円増配となる年間20円(総額1,206億円)の配当を実施しました。2025年度については、2025年5月15日から2026年5月14日までの1年間で、2,500億円を上限とした自己株式取得枠を設定しており、配当は増配のペースを引き上げ、株式分割考慮後*3で、2024年度から1株につき5円増配となる年間25円*4を予定しています。

 

*2 金融分野を除く連結ベースの数値はIFRSに則った開示ではありませんが、ソニーは、この開示が投資家の皆様に有益な情報を提供すると考えています。

*3 当社は、2024年9月30日を基準日、2024年10月1日を効力発生日として、普通株式1株につき5株の割合で株式分割を行いました。

*4 上記の1株当たり配当金の予定額には、金融事業のパーシャル・スピンオフによるSFGI株式の現物配当は含めていません。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取り組み】

 文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものです。

 

ソニーのサステナビリティに関する基本方針

 当社は、取締役会において、サステナビリティに関する基本方針を以下のとおり定めています。

『ソニーは、「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」というPurpose(存在意義)と、「人に近づく」という経営の方向性のもと、「人」を軸に多様な事業を展開し、この多様性を強みとした持続的な価値創造と長期視点での企業価値の向上を目指しています。人々が感動で繋がるためには、私たちが安心して暮らせる社会や健全な地球環境があることが前提であり、ソニーは、その事業活動が株主、顧客、社員、調達先、ビジネスパートナー、地域社会、その他機関等のソニーグループのステークホルダーや地球環境に与える影響に十分配慮して行動するとともに、対話を通じてステークホルダーとの信頼を築くよう努めます。そして、イノベーションと健全な事業活動を通じて、企業価値の向上を追求し、持続可能な社会の発展に貢献することを目指します。』

 

(1)サステナビリティ推進体制及びその取り組み

<推進体制>

 当社は、サステナビリティ担当上級役員のもと、サステナビリティ推進部を設置し、同部がビジネスユニット及び事業会社(以下あわせて「各事業部門」)及び当社関連部署(コンプライアンス、人事、経営企画管理、財務、法務等)(以下「関連部門」)と連携しながら、グループ全体のサステナビリティに関する各種取り組みを推進しています。

 当社のサステナビリティ担当上級役員は、サステナビリティに関連するリスクを定期的に検討・評価し、損失のリスクの発見・情報伝達・評価・対応に取り組んでいます。当社の取締役会は、少なくとも四半期に1回、サステナビリティに関する取り組み及びその進捗の報告をサステナビリティ推進部から受けています。取締役会は、さらに、各事業部門からの中期経営計画に関する報告の一部として、それぞれの事業に関わりの大きいサステナビリティの課題と機会及びそれらへの取り組みについての報告を受けています。サステナビリティに関連するリスクの詳細は、「第2 事業の状況」『3事業等のリスク』をご参照ください。

 

<推進のための主な取り組み>

 上記体制のもとで、サステナビリティ推進部は、前述の「ソニーのサステナビリティに関する基本方針」にもとづき、ソニーの事業活動への当該基本方針の浸透を図るとともに、ステークホルダーとの対話やマテリアリティ分析等を通じて、グループ全体で対応が必要なサステナビリティ課題を特定しています。また、それらの特定したサステナビリティ課題について、当社マネジメントや関連部門と連携しながら、長期環境計画「Road to Zero」等のグループとしての対応方針を策定し、グループ全体に周知すること等により、グループ全体での取り組みを推進しています。

 また、各事業部門においては、サステナビリティの観点からの課題と機会を検討するとともに、それぞれの事業特性に応じた、サステナビリティに関する取り組みを行っています。加えて、サステナビリティ推進部と議論の上、重視しているサステナビリティ課題への取り組みについてKPI(以下「サステナビリティKPI」)を設定しています。サステナビリティKPIは各事業部門の業績評価の一部に組み込まれており、その達成状況をサステナビリティ推進部においても評価しています。加えて、当社上級役員の業績連動報酬の評価指標として、グループサステナビリティ評価の達成度を設定し、担当事業・組織の枠にとどまらない、ソニーグループ全体の中長期的な企業価値向上、持続的成長に向けた経営層としての取り組み、例えば、経営のサクセッションや人的資本への投資、社会価値創出及びESG(環境・社会・ガバナンス)の観点での取り組み、事業間連携での価値創造を加速するための取り組み、社員意識調査によるエンゲージメント指標等を評価しています。

 2024年度においては、サステナビリティに関するステークホルダーとの対話を深めることを目的として、投資家向けサステナビリティスモールミーティング及びサステナビリティメディアブリーフィングを開催しました。

 また、サステナビリティ担当上級役員、人事担当上級役員及び各事業部門のサステナビリティ責任者が参加するグループ全体でのサステナビリティ会議を開催し、各事業部門のサステナビリティに関する取り組み及びサステナビリティKPIの進捗状況等を共有し、確認しました。

 なお、各事業部門において設定した2024年度のサステナビリティKPIには、製品の消費電力の削減、製造プロセスの温室効果ガス(以下「GHG」)排出量の削減、ソニーグループのコンテンツIPを活用した環境啓発活動の実施、ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(以下「DE&I」)に関するプログラムや研修の実施、製品・サービスのアクセシビリティ向上等が含まれていました。

 

<上記取り組みの前提となるマテリアリティ分析>

 中長期的な視点で、ソニーのサステナビリティ活動を社会環境の変化やステークホルダーからの要請等に応じたものとするため、サステナビリティ担当上級役員のもと、サステナビリティ推進部が主導し、ソニーグループにとってのマテリアリティ項目を分析・特定し、定期的にその重要性について見直しています。直近では2022年度に見直しを実施しており、マテリアリティ項目を「中長期的な社会の変化及び多様なステークホルダーのニーズを踏まえた、ソニーの価値創造に影響を与えるサステナビリティに関する重要項目」と定義した上で、ソニーに関連性の高いサステナビリティ課題(ソニーの価値創造にネガティブなインパクトを与える項目を含む)について、自社視点・ステークホルダー視点の両面からその重要性を評価しました。

 自社視点での重要性については、中長期的にソニーの価値創造に与えるポジティブ又はネガティブなインパクトの観点から、また、ステークホルダー視点での重要性については、非政府組織(NGO)、投資家、評価機関、メディア等が公表している情報等にもとづき、各項目を評価しました。

 かかる評価にもとづき、当社マネジメント及び取締役会のレビューを経て、ソニーグループとして優先的に取り組むべき最も重要なマテリアリティ項目を特定しました。

 

(2)サステナビリティに係る戦略等

 2022年度に実施したマテリアリティ分析の結果、ソニーグループとして優先的に取り組むべき最も重要なマテリアリティ項目として、「気候変動」、「DE&I」、「人権の尊重」及び「サステナビリティに貢献する技術」(以下あわせて「最重要マテリアリティ項目」)を特定しました。なお、2024年度においても当該最重要マテリアリティ項目に変更はありません。

 

<最重要マテリアリティ項目特定の背景>

・気候変動:ソニーは、気候変動による影響の顕在化と、脱炭素社会への移行は全ての企業にとっての重要課題であること、また、自社の環境負荷等を低減していく「責任」と、多様な事業や技術を生かして行う「貢献」の両面から、幅広いステークホルダーからの環境への取り組みに対する期待が高まっていることを認識しています。ソニーの企業活動は、あらゆる生命の生存基盤である地球環境が健全であって初めて成り立つものであり、気候変動対策をはじめとする環境への対応が重要と考えています。

 

・DE&I:ソニーは、企業活動において、多様性に富む組織は、そうでない組織に比べて、よりイノベーティブであると認識しています。そして、社員一人ひとりの多様な価値観を尊重するとともに、エクイティ(公平性)の観点を大切にし、インクルーシブな組織風土を醸成することが重要であると考えています。また、社会正義や不平等等の社会課題に対する企業の取り組みにも期待が高まっており、グループ全体で社内外の課題解決に向けた取り組みのより一層の推進が重要と考えています。

 

・人権の尊重:ソニーは、そのグローバルな事業活動において、人権への潜在的な影響があることを認識しています。すなわち、ソニーのバリューチェーン全体において人権を尊重し、ソニーの事業活動との関係が直接的か間接的かに関わらず、潜在的なものも含めて人権への負の影響に対処することは、ソニーが果たすべき責任として幅広いステークホルダーから求められていることであると認識しています。近年の人権の尊重に関連する外部環境の変化も踏まえ、ソニーとしてもより一層取り組みを強化することが重要であると考えています。

 

・サステナビリティに貢献する技術:ソニーは、テクノロジーを通じて、事業の成長と社会・環境課題の解決を両立させることについて、ステークホルダーからソニーに対する期待があるものと認識しています。ソニーの開発する技術や製品・サービスにより、事業収益の増加のみならず、社会及び環境にポジティブな影響をもたらすことでサステナビリティ課題の解決をリードし貢献することは、ソニーにとって重要な使命であると考えています。

 

<最重要マテリアリティ項目に係る戦略と目標、主な取り組み>

・気候変動

 ソニーは、2010年にグループ全体で地球環境に及ぼす負荷を2050年までにゼロとすることをめざす長期環境計画「Road to Zero」を掲げ、以来、気候変動、資源、化学物質、生物多様性の4つの視点から環境負荷低減のための取り組みを行ってきました。2022年5月には、気候変動領域において、環境負荷低減活動をさらに加速するため、スコープ1から3までを含むバリューチェーン全体でのネットゼロ(以下「ネットゼロ目標」)の達成目標年を2040年に前倒しすることを発表しました。なお、この2040年のネットゼロ目標は、2022年8月に「Science Based Targets initiative (SBTi)*1」によるネットゼロ目標*2の認定を取得しました。さらに、2025年4月には、2026年度~2030年度を対象期間とする、グループ環境中期目標*3「Green Management(グリーンマネジメント) 2030」を新たに制定しました。

 

*1 気候変動による世界の平均気温の上昇を、産業革命前と比べ1.5度に抑えるという目標に向けて、科学的知見と整合した削減目標を企業が設定することを推進する国際イニシアティブ。

*2 ソニーのネットゼロ目標は、以下のSBTiの「企業ネットゼロ基準」にしたがっています。

・スコープ1、2及び3のGHG排出量をゼロにするか、又は、適格な1.5℃軌道においてグローバルもしくはセクターレベルでのGHGネットゼロ排出達成と整合する残余排出量水準にまでGHG排出量を削減すること。

・ネットゼロ目標の時点におけるGHGの残余排出量及びそれ以降に大気中に放出される全てのGHG排出量を中和すること。

*3 長期環境計画「Road to Zero」の達成に向けて、5年ごとに設定している中期目標。本書提出日現在、2021年度~2025年度までの環境中期目標「Green Management 2025」の達成に向けて、環境負荷低減の取り組みを進めています。

 

上記の2040年のネットゼロ目標達成に向けた中間目標については、以下のとおりです。

 

1.2030年までに、ソニーグループの事業所オペレーションにおけるGHGの直接・間接排出(スコープ1、2)をネットゼロとすることをめざします。さらに、製品、サプライチェーン、物流等その他の排出(スコープ3)については、2035年までに、製品使用時のGHG排出量を2018年度比で45%削減することをめざします。2040年には、全スコープにおいてGHG排出量をネットゼロとすることをめざします。

2.2030年までに、当社グループの事業所で使用する電力を100%再エネ化することをめざします。2025年度末時点での再エネ由来の電力使用率目標を35%としています。

 

上記1及び2の目標を達成するために、ソニーでは主に次のような施策を実施していきます。

・ソニーグループの事業所における継続的な環境負荷低減:グループ全体で、省エネルギー(以下「省エネ」)化、太陽光発電設備の設置及び再エネ導入を加速。日本におけるFIP(フィードインプレミアム)制度を活用したバーチャルPPA(電力購入契約)。

・ソニー製品の省エネ化:ソニー製品1台当たりの年間消費電力量の低減に向けた動きを加速。

・パートナーへの働きかけ強化:部品、材料及び完成品の製造委託先等にも、それぞれのGHG排出量の管理、省エネ及び再エネ転換等を促す。

・炭素除去・固定*4への貢献:炭素除去等の関連スタートアップ企業への投資検討や、株式会社SynecO(シネコ)のSynecoculture™(シネコカルチャー)*5をはじめとする拡張生態系の普及事業にともなう生物多様性と炭素固定の指標化の検討等。

 

*4 大気中から炭素を吸収し、固定させる技術。

*5 Synecocultureはソニーグループ株式会社の商標です。

 

・DE&I

 DE&Iに関する戦略等については、「(3)人的資本に関する戦略ならびに指標及び目標」をご参照ください。

 

・人権の尊重

 ソニーは、「ソニーグループ人権方針」において、バリューチェーン全体を通じて、ソニーの事業活動の影響を受ける可能性のある人の、国際的に認められている人権を尊重することとしています。また、ソニーの事業活動、商品やサービス、ビジネス上の取引関係によって、人権への負の影響を引き起こしたり、助長したりすることがないように努めるとともに、万一そのような影響が生じた場合には、その是正に向けて誠実に行動することとしています。特定の領域においては、エレクトロニクス製品の責任あるサプライチェーンの実現に向けたソニーグループ製造事業所及びサプライヤーの行動規範を定めた「ソニーサプライチェーン行動規範」や、ソニーの全ての役員及び従業員がソニーグループの価値観や新たな社会規範に沿ってAIの活用や研究開発を行うための指針である「ソニーグループAI倫理ガイドライン」等を策定し、運用しています。また、ソニーは、国連人権理事会によって発行された「ビジネスと人権に関する指導原則」(UNGP)及び「OECD責任ある企業行動に関する多国籍企業行動指針」に定められた人権デュー・ディリジェンスの枠組みに沿って、人権リスクのインパクト評価を実施しています。当該評価において、ソニーの事業活動の特性や各事業において重要なバリューチェーンを踏まえて、潜在的な人権リスクを特定した上で、これらの人権リスクのうち、責任あるサプライチェーン、多様性の尊重、責任あるテクノロジーの開発及び使用の3つの領域を、ソニーグループとして、優先的に取り組みを進める重点領域として定めています。これらの重点領域において、人権への重大な負の影響が特定あるいは懸念される課題には、その影響を防止又は軽減するための取り組みを推進しています。2024年度においては、各事業セグメントに特有の人権リスク及びこれらに対する取り組み状況を確認した上で、その改善や新たな施策の必要性について検討を行うため、各事業部門において人権リスクのインパクト評価を実施し、それぞれが優先的に取り組むべき人権課題を見直しました。当該評価は、サステナビリティ推進部が策定した評価基準を踏まえて、各事業部門が外部専門家又は社内関係部署の知見を活用して実施されました。サステナビリティ推進部は、2024年12月に開催した社内グローバル会議において、各事業の重点領域、取り組みの状況や今後の計画等について、各事業部門から報告を受けました。

 

・サステナビリティに貢献する技術

 ソニーは、事業成長に貢献する技術開発とともに、未来に向けて新たな社会・産業の在り方をもたらすイノベーションの創出に取り組んでいます。

 例えば、ソニーでは、環境に配慮した材料の開発及び低消費電力化技術によるソニー製品の環境負荷の低減等を行っています。さらに、ソニー株式会社では、生成AIモデルの急速な進化にともなうフェイク画像や虚偽情報の拡散のまん延等の課題に対処し、画像コンテンツの信頼性を高めるため、C2PA*6規格準拠とソニー独自のデジタル署名技術により、撮影画像の真正性を検証する真正性カメラソリューションを、報道機関をはじめ、報道に関わるフォトグラファーに提供しています。

 

*6 デジタルコンテンツの出所と信ぴょう性に対し、オープンスタンダードと技術仕様を策定する標準化団体。

 

(3)人的資本に関する戦略ならびに指標及び目標

<ソニーにおける多様性(ダイバーシティ)と人材理念>

 ソニーは、1946年にエレクトロニクス事業を起源として設立され、日本初のトランジスタ開発から半導体事業を開始しました。その後、外国企業との合弁による音楽事業と金融事業、外国企業の買収による映画事業、グループ内の共同出資によるゲーム事業等、様々な方法で新しい事業への参入を行いながら、複数の事業体から構成される企業として進化を続けてきました。現在、主要6事業のうち半数が本社を米国に置き、事業運営に最適な組織体制をグローバルに編成しつつビジネスを展開しています。

 これまでの事業の発展や成長は、創業来受け継がれてきた新しいことへの飽くなき挑戦心と多様性を重んじる価値観が、その基盤となっています。異なるバックグラウンドをもつ社員の交錯によって新しい事業が生まれ、事業が多様化することで人材の活躍の場が一層広がり、社員も会社もともに成長してきました。現在ソニーでは、事業と人の「ダイバーシティ」を、「クリエイティビティ」「テクノロジー」と並ぶ「価値創造のドライバー」と位置づけ、全世界で活躍する約11.2万人の社員は、属性や経験の多様性はもとより、事業の広がりによって職種も極めて多岐にわたり、各事業の成長の原動力となっています。これら多様な人材が、Purpose(存在意義)のもと、事業や地域を超えてつながり、交錯し、テクノロジーやクリエイティビティを融合することで、新たな価値創造につなげています。

 人材理念である“Special You, Diverse Sony”には、ソニーの人材に対する考え方が表現されており、異なる個性を持つ一人ひとりと、多様な個を受け入れる場であるソニーとがPurposeを中心にともに成長し続けていく、というメッセージが込められています。そして、この人材理念の下、グループ共通の人事戦略を「個を求む」・「個を伸ばす」・「個を活かす」と定義し、社員の働きがいの希求に応え、一人ひとりの力を最大限引き出す施策や活躍の場の提供に注力することで、グループ全体としての成長をめざします。具体的な取り組みについては、権限を委譲された各事業の人事責任者が、それぞれの事業や地域の特性に応じて最適な人事施策の策定・実行にあたっています。

 

<「異見」と第五次中期経営計画の達成に向けた注力領域>

 人材理念を実現していくためのキーワードとして、多様な一人ひとりの異なる意見を意味する「異見」を掲げています。多様な人材がこれまで多様な事業を創り支えてきたという事実をもとに、「異見を活かす組織」であり続けるために必要な要素を、様々なバックグラウンドの人材が集まっていること(属性の多様性)、異なる業界の経験者同士が一緒に仕事をすることや、一人の社員が一か所に留まらず、海外や複数のビジネス領域等で新たな経験を得ること(経験の多様性)、そして第三に、個性豊かな社員を活かして組織を牽引するリーダーがおり、多様な考え方や価値観を受け入れる企業文化があること(異見を活かすリーダーシップ、企業文化)と整理し、グループ内の人事施策に反映しています。

 2024年度から始まった第五次中期経営計画は「境界を超える~グループ全体のシナジー最大化~」をテーマとしています。企業価値向上に向けてシナジー実現の取り組みを進化させるための土台として、異見を活かす組織を推進していくとともに、下記を注力領域と定め進捗や実績をモニタリングしていきます。

 

① グループの成長を支える属性の多様性と経験の多様性の進化

 ソニーのマネジメントは多様な属性・経験や専門性を有するメンバーで構成されていますが、さらなる多様性の確保へのコミットメントとして、当社の役員*7に占める女性比率及び日本以外の国・地域の出身者*8比率を2030年までにそれぞれ30%以上にすることをめざしています。2025年3月31日時点での比率は、それぞれ18.8%、28.1%でした。

 

*7 取締役、執行役を含む上級役員及びその他の役員。

*8 日本以外の国籍をもつ者又は日本以外で出生した者。

 

 そして、2024年度には、当時SPE米国本社のチーフ・コミュニケーション・オフィサーであったロバート・ローソンを、事業と国を越えて当社の広報担当執行役員コーポレートエグゼクティブに任命しており、当社マネジメントの経験の多様性の進化にもつながっています。

 

 ソニーグループ全社員のうち、約半数が日本国外での事業活動に従事しており、そのうちの9割以上が現地採用社員です。主要事業にとどまらず、グローバルに展開するR&Dや㈱ソニーリサーチ(旧㈱ソニーAI)でのAI等の先端技術開発を推進できる人材についても、国籍を問わず採用する活動を強化しており、世界中から優秀な学生や経験者を採用する取り組みを積極的に続けています。

 また、多様な人材が活躍する職場環境の醸成の一環として女性の活躍推進をグローバルで進めており、2024年度末時点でのソニーグループ全社員のうちの女性社員比率は34.2%、管理職に占める女性労働者の割合(以下「女性管理職比率」)は31.6%です。一方で、日本国内企業の女性管理職比率は海外企業と比べて低いことから、国内主要会社各社で数値目標を定めて比率の向上に取り組んでいます。

 女性社員の継続的育成の観点では、女性リーダーの育成やキャリアアップを後押しする研修や、女性社員を対象とした座談会や交流会等を開催しています。また、当社及び国内主要子会社において、女性管理職比率及び男性労働者の育児休業取得率(以下「男性育休取得率」)を向上させるため、二つの目標を以下のとおり設定しています。

 

提出会社及び国内の主要な連結子会社における女性管理職比率に係る目標及び実績

会社名

2025年度末目標 *1

2025年3月末実績

ソニーグループ㈱

20.0

20.2

ソニー㈱

10.0%

8.5%

ソニーセミコンダクタ

ソリューションズ㈱

4.5% *2

4.5%

㈱ソニー・インタラクティブ

エンタテインメント

15.0%

15.6%

㈱ソニー・ミュージック

エンタテインメント

28.0%

27.1%

ソニーフィナンシャルグループ *3

18.0%

18.2%

(注)*1「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律に基づく一般事業主行動計画等に関する省令」(平成27年厚生労働省令第162号)の規定にもとづく「管理職に占める女性労働者の割合」の2025年度末時点の目標について記載しています。

*2 女性活躍推進法にもとづく行動計画において定めた2025年度末時点での女性管理職目標人数が2025年3月末時点管理職総数に占める割合です。

*3 ソニーフィナンシャルグループ傘下の対象各社(SFGI、ソニー生命(同社本社の内勤社員のみ)、ソニー損保、ソニー銀行、ソニー・ライフケア㈱、ライフケアデザイン㈱及びプラウドライフ㈱を指す。下表の注においても同じ。)の2025年度末時点の女性管理職の目標人数及び2025年3月末時点の女性管理職の人数実績をそれぞれ合算し、それぞれの合計の数値を、目標については2025年度末時点の想定管理職総数の合計で、実績については2025年3月末時点の管理職総数の合計で、それぞれ除した数値を記載しています。

 

提出会社及び国内の主要な連結子会社における男性育休取得率に係る目標及び実績

会社名

2025年度目標 *1

2024年度実績 *1

ソニーグループ㈱

100

79

ソニー㈱

100%

93%

ソニーセミコンダクタ

ソリューションズ㈱

100%

91%

㈱ソニー・インタラクティブ

エンタテインメント

100%

100%

㈱ソニー・ミュージック

エンタテインメント

100%

37%

ソニーフィナンシャルグループ

100%

90% *2

(注)*1 育児・介護休業法の規定にもとづき、2025年度目標については、2026年3月末時点で在籍しており2025年度に配偶者が出産する男性社員(出向受入社員を除く)のうち、同年度中に育児休業等をするものの数及び育児を目的とした休暇制度を利用するものの数の合計数の割合についての目標を、2024年度実績については、2025年3月末時点で在籍しており2024年度に配偶者が出産した男性社員(出向受入社員を除く)のうち、同年度中に育児休業等をしたものの数及び育児を目的とした休暇制度を利用したもの(以下まとめて「男性育休取得者」)の数の合計数の割合(小数第1位以下を切り捨て)を、それぞれ記載しています。

*2 ソニーフィナンシャルグループ傘下の対象各社の2025年3月末時点で在籍している2024年度の男性育休取得者の人数の合計数を、2025年3月末時点で在籍しており2024年度に配偶者が出産した男性社員(出向受入社員除く)数の合計値で除した数値を記載しています。

 

 ソニーの障がい者雇用においては、創業者の一人である井深大の「障がい者だからという特権なしの厳しさで、健丈者よりも優れたものを、という信念を持って」活躍してほしいという思いを理念とし、「障がいを感じない、働き甲斐のあるソニーらしい障がい者雇用環境」づくりに注力してきました。それぞれの国や地域の法令や規範を遵守し、障がいの有無にかかわらずキャリア構築ができる職場環境づくりに、グループ一体となって取り組んでいます。

 LGBTQ+の社員に対しては、国・地域の実情に合わせて、自分らしく、安心して働くことができる職場環境の醸成を推進し、多様な社員を包摂するインフラの整備を行っています。2022年度から、ソニーがLGBTQ+の社員及びコミュニティを尊重し支援する姿勢を社内外に視覚的に表明することを目的として、レインボーカラーで表示したソニーロゴタイプの「Prideロゴ」をグループ内に導入しています。

 

 社員の経験の多様性の進化という観点では、他社又は様々な職種での経験を通して培われた新たな知見や視点が加わることで組織の成長につながると考え、長年、他社や他職種の経験者(以下「他社・他職種経験者」)の採用を積極的に推進しています。当社及び国内の連結子会社における入社者全体に占める他社・他職種経験者の割合は、2023年度50.7%、2024年度48.3%となっており、海外では大半が他社・他職種経験者となっています。入社後の人事評価においても、他社・他職種経験者と新卒入社者とを区別していません。そして、ゲームタイトル開発等の成長領域におけるM&Aや戦略的提携により、2012年度から2024年度までに9,000人以上が新たにソニーグループに加わっており、社員のバックグラウンドの多様化による事業の成長に寄与しています。

今後は、このような多様な属性や経験を持つ社員の協業や、事業等の越境によるキャリア形成を支援する施策をより強化していきます。

 

② 個の経験の多様化を促す挑戦機会の提供

 自主性のある個性豊かな社員一人ひとりの成長が会社の成長につながると考えているソニーにおいて、挑戦心と成長意欲に満ちた人材を獲得し、その挑戦を支援し続けることが重要です。社員が能力や自主性を最大限発揮できる職務へチャレンジする機会を提供する仕組みとして、多様な制度(社内募集制度、キャリアプラス制度、社内フリーエージェント(FA)制度等)により、事業の枠を超えた社員のキャリア構築をサポートしています。国内では、社内人材を公募する「社内募集」制度を他社に先駆け1966年に開始し、約60年にわたって運用しています。これは社員の新たな職務へのチャレンジをベースに、適材適所の人材配置と重要ビジネス強化についても同時に実現することを狙いとした制度で、これまでに延べ8,000名以上の異動実績があり、社員個人の挑戦意欲を人事制度の面から推進する欠かすことのできない仕組みとして定着しています。さらに、2015年度には、現業を継続しながら、週1~2日間を、組織を越えた他部門の業務やプロジェクトに充てることができる「キャリアプラス」制度を導入しました。加えて、優秀な社員に「FA権」を付与し、権利行使者の情報をグループ内で共有することにより新たなフィールドに活躍の場を広げていくことのできる「社内FA」制度、社員自らがプロフィールを登録し、スキルや経験が合致すれば求人中の職場や人事から声がかかる「Sony CAREER LINK」等、従来の公募制度に新たな仕組みを加え大幅に拡充しています。

こうした取り組みは日本国内にとどまらずグローバルでも展開されており、例えば中国国内で事業を展開している会社では社内募集制度を導入しています。また、中国の事業横断の新規プロジェクトのチーム組成にあたってキャリアプラス制度を活用することで、応募者が現業を継続しながら勤務時間の20%以上を当該プロジェクトに充てることを可能にし、社員が事業の垣根を越えて新しい業務に触れ、他領域の同僚と協業する機会を創出しています。

その他、講演会やワークショップ、キャリア相談窓口も主体的なキャリア意識の啓発の場として活用されていますが、個の挑戦心を理解し後押しをするには職場での対話も重要です。一人ひとりが自分のキャリアについて上司と話し合い、あわせて自身のスキルを見直す中で、個々人のステージに応じた自律的なキャリア形成を支援していきます。

 

③ 異見を活かす組織文化とリーダーシップの醸成

 多様な人材が集まるソニーでは、組織を牽引するリーダーのマネジメントスタイルもまた様々ですが、リーダーに共通して必要な要素は「異見を活かすリーダーシップ」だと考えています。自身と異なる考えが歓迎され、活発な意見交換がなされるカルチャーが醸成されているだけでなく、異見を取り入れ、組織の力とつなげるマインドセットやスキルを高めることが重要です。

各事業部門・関連部門において中核的役割を担う経営人材の育成を目的とした次世代リーダー育成プログラム「ソニーユニバーシティ」では、毎年、全世界のグループ各社から異なるバックグラウンドを持つ多様な人材が集まります。選抜されたメンバーが、講義やグループディスカッション、多様な事業の経営メンバーとの対話を通して、リーダーシップや戦略立案、ビジョンメイキング等のスキル・マインドの強化に取り組みます。受講生がともに切磋琢磨することで事業や組織の枠を越えた人脈が形成され、事業における連携や協業につながっています。

「ソニークロスメンタリングプログラム」は、2024年度で三期目となったソニーグループ横断の施策です。異なる事業の経営層と次期経営人材とをメンター・メンティーとして戦略的につなげ、自事業・自組織にとどまらない新たな分野への理解の深化、個人の育成計画に資する新たな気づきや学びの場、また、ネットワーキングの機会としています。約半年間の実施期間の中で、マネジメントスキルやリーダーシップスキル、ビジネス、そしてキャリア等様々なテーマをもとに定期的にコミュニケーションを行い、メンターが持つ豊富な知見や経験を共有することで、メンティーの視座の向上、そして視野の拡大につなげています。

上記に加えて、2024年度には、当社の役員と各事業・専門領域において活躍する社員とのラウンドテーブルを実施しました。「多様な経験×異見を活かす組織の実現」をテーマに、事業・職種・環境を変える経験がキャリアに与える影響や、今後ソニーグループに必要な異見についてディスカッションを行いました。参加者からは、「事業を越えた役員及び社員との直接的な対話自体が貴重」との声が多く集まり、ソニーのカルチャー、事業、人への理解の深化とシナジーの創出に貢献する機会となっています。

 

注力領域を定義し推進していく上で、実際に多様な社員が働きがいを感じ、それぞれの感動創出に挑戦できているかは、Purposeへの共感度と社員エンゲージメントに集約されると考え、社員意識調査を定期的に実施しています。特に社員エンゲージメントは重要な指標ととらえ、当社上級役員の業績連動報酬の評価指標の一部に組み入れています。

 

 Purposeの下、ソニーの持続的な成長や社会への価値創造をめざし、人材の多様性の確保と「異見を活かす組織」づくりにより一層注力していきます。

 

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあると考えています。なお、当該事項は、本書提出日現在において入手し得る情報にもとづいて判断したものです。

 

(1) ソニーは収益又は営業利益率の低下につながりかねない一層激化する競争を克服しなければなりません。

 ソニーは、業種の異なる複数のビジネス分野に従事しており、さらにそれぞれの分野において数多くの製品・サービス部門を有するため、大規模な多国籍企業から、単一又は数少ないビジネス領域に特化し高度に専門化した企業にわたって、業界の既存企業や新規参入企業等の多くの企業と競争しています。また、潜在的には現在ソニーに製品を供給している企業も競合相手となる可能性もあります。これらの既存の及び潜在的な競合他社がソニーより高度な財務・技術・労働・マーケティング資源を有する可能性があり、ソニーの財政状態及び業績は、当該既存及び新規参入の競合他社に効率的に対抗する能力にかかっています。

 ソニーが直面する競合要因は業種により異なります。例えば、エレクトロニクス領域において、ソニーは、競合他社との間で価格や機能を含む様々な要素で競争しています。また、G&NS分野、音楽分野及び映画分野では、ゲームクリエイター、アーティスト、作詞家、俳優、ディレクター、及びプロデューサーといった才能ある人材ならびに製作・制作、取得、ライセンス、又は配信されるエンタテインメント・コンテンツを得るため競争しています。競合他社との価格競争は、価格の下落に比例して費用が下落しない場合には利益率の低下につながり、また、才能ある人材と魅力的なコンテンツ獲得競争も、そのような才能ある人材やコンテンツの獲得に必要とされる費用の増加を増収により埋め合わせできない場合には、収益力の低下につながる可能性があります。また、生成AI等の革新的な技術の進化や競合他社による活用等により、既存のビジネスモデルが毀損する可能性があります。さらに、イメージセンサーのように、現在ソニーが強い競争力を有していると考えられる製品においても、競合他社の技術力の向上により、ソニーがその優位性を保てなくなる可能性もあります。また、一般消費者向けエレクトロニクス製品においては、製品に対する消費者の関心が絶えず変化し、例えば、消費電力の低減や、製品や包装材として地球環境に配慮した材料の使用を求める等、一層多様化する消費者の嗜好に訴求する製品を作るため、あるいは、消費者の多くが同種の製品をすでに保有しているという状況に対処するために、ソニーはより優れた技術を開発し、消費者の嗜好を予測し、競争力ある価格と特長を有する、魅力的で差異化された製品を迅速に開発する必要があります。ソニーは、様々な一般消費者向け製品において、一層激化する競合他社との価格競争にともなう価格低下圧力の高まり、小売業者の集約化、新規の販売・流通チャネルの構築、及び製品サイクルの短期化に直面しています。G&NS分野、音楽分野及び映画分野における業績は、予測が困難である作品に対する世界中の消費者からの支持による影響、ソニーの作品に代わり消費者が利用可能な娯楽及びレジャー活動による影響、ならびに、同時期もしくは近接した時期に公開・販売される他の競合作品による影響を受ける可能性があります。例えば、映画分野では、全米脚本家組合(以下「WGA」)及び映画俳優組合-米テレビ・ラジオ芸術家連盟(以下「SAG-AFTRA」)が2023年に実施したストライキにより中断されていた製作活動の再開にともなって劇場公開作品が増加する中で、主要スタジオ各社による映画公開スケジュールが過密となり、公開可能なスクリーンを巡って競争が激化したことにより、映画分野の業績が悪化しました。

 仮に、ソニーが、技術その他の競争力を持つ分野においてその優位性を保てなくなった場合、ソニーの一般消費者向け製品に対して頻繁に影響を及ぼす継続的な価格下落又はその事業に影響を及ぼすコスト圧力について効果的に予測し対応できない場合、既存の事業モデルや消費者の嗜好が変化した場合、又はソニーの一般消費者向け製品の平均価格の下落スピードが当該製品の製造原価削減のスピードを上回った場合には、ソニーの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) ソニーは、競争力を維持し消費者の需要を喚起し、製品及びサービスの革新を実現するために研究開発投資を行う必要があり、また、新しい製品及びサービスの頻繁な導入を適切に管理しなければなりません。

 ソニーは、製品及びサービスの競争力を強化するため、特にG&NS分野及びI&SS分野といった成長分野において、研究開発投資を継続的に行っています。しかしながら、ソニーとして、著しい成長可能性を持った製品及びサービス、ならびに市場動向を特定できなかった場合やそれらを把握できなかった場合、研究開発投資が成功しない可能性があります。加えて、ソニーの研究開発投資が革新的な技術を生み出さない可能性、想定した成果が十分かつ迅速にもたらされない可能性、又は競合他社に技術開発を先行されてしまう可能性があります。これらは、競争力のある新たな製品やサービスを商品化するソニーの機会を妨げる要因となり得ます。

 ソニーは、継続的にエレクトロニクス製品及びサービスを導入し、これらを拡充させることにより、顧客の需要を喚起し続けていく必要があります。これらの製品及びサービスは、年末商戦における消費者需要に特に影響を受けます。G&NS分野の売上及び収益性には、ストリーミングを含め、プラットフォームの導入及び普及の成否が重要な影響を及ぼし、この成否は、魅力的なソフトウェアの品揃えとオンラインサービスが消費者に提供されるか否かに影響されます。しかしながら、外部のソフトウェアの開発事業者や開発・販売事業者、主要な協力業者がソフトウェアの開発や供給をし続ける保証はありません。加えて、ソニーは、売上の拡大及び収益性の向上を図るために、ハードウェア、AIを含むソフトウェア、エンタテインメント・コンテンツ及びネットワークサービスの統合を促進させること、消費電力を最小限に抑えること、ならびにそのような統合の効果を達成するための研究開発への投資が不可欠であると考えています。しかしながら、この戦略は、AI及びネットワークサービス技術のさらなる開発能力、ソニーの様々な事業ユニット・販売チャネル間の戦略上及びオペレーション上の課題の調整と適切な優先順位付け、ユーザーインターフェースを含むエネルギー効率に優れたネットワークプラットフォームをシームレスに接続するための、消費者にとって革新的であり、エネルギー効率に優れ、かつ価格競争力のある魅力的な高性能ハードウェアの継続的な提供に依存しています。そして、業界内やネットワークに接続可能なソニーの製品や事業間における技術やインターフェース規格の標準化を行う能力にも依存しています。加えて、G&NS分野、音楽分野及び映画分野では、消費者の支持を得られるかどうかが分かる前に、社内で開発されたソフトウェアのタイトル、アーティスト、ミュージック・カタログ、映画作品、テレビ番組の製作及び番組の放送に関連して、相当の先行投資を含め、多額の投資を行わなければなりません。さらに、映画作品の初期の流通市場における業績と、その後の流通市場における業績には高い相関性がみられるため、初期の流通市場における映画作品の業績が想定を下回った場合、公開年及び将来におけるソニーの業績にも悪影響を及ぼす可能性があります。

 新製品及びサービスの導入ならびに切り替えの成功は、開発をタイムリーにかつ成功裏に完了させること、市場における受け入れ度合、効果的なマーケティング戦略の企画及び実行、新製品の導入の管理、生産立ち上げ時における課題への対処、新製品向けアプリケーションソフトウェアが入手できること、品質管理、及び年末商戦における消費者需要の集中度等、数多くの要素に依存しています。研究開発への投資に対して想定した成果を達成できない場合、新製品及びサービスの頻繁な導入を適切に管理できない場合、新製品やサービスが消費者に受け入れられない場合、又は統合戦略を実行できない場合、ソニーの評判、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) ソニーの戦略的目的を達成するための買収、第三者との合弁、投資、資本的支出、組織再編成、構造改革は成功しない可能性があります。

 ソニーは、技術獲得や効率的な新規事業開発のため、又は事業の競争力強化のため、買収、第三者との合弁、資本的支出及びその他の戦略的出資を積極的に実施しています。例えば、2024年度には、KADOKAWAの株式の追加取得を行いました。

 買収や合併の完了は、関係当局の承認及び許可の取得等が条件となる場合がありますが、競争法制度や競争法当局の審査の厳格化により、確定契約締結後の審査に想定以上の時間がかかる可能性や承認もしくは許可を得られない可能性があります。また、買収・合併する会社の戦略や財務状況の想定外の変化等により、確定契約において定められた取引完了の前提条件が満たされず、買収や合併が想定どおり進展しない可能性や、確定契約が変更又は解除される可能性があります。その結果、ソニーが事業機会を逸失し、当初想定した買収や合併の効果の一部又は全部を実現できない可能性があります。

 ソニーは、買収・合併する会社の技術、会計、税務、財務、人事及び法的な観点等における包括的な分析と評価を行いますが、多額の買収コスト又は統合費用の発生や、新たに買収・合併した会社におけるIT及び情報セキュリティリスク、想定したシナジーが実現できないこと、期待された収益の創出とコスト改善の失敗、主要人員の喪失や債務の引受け等により、ソニーの業績に悪影響が及ぶ可能性があります。

 ソニーが第三者と合弁会社を設立したり戦略的パートナーシップを構築する場合、ソニーの財政状態及び業績は、パートナーとの戦略の相違又は文化的相違、利害の対立、シナジーが実現できないこと、合弁会社及びパートナーシップ維持のために必要となる追加出資や債務保証、合弁パートナーからの持分買取義務、ソニーが保有する合弁持分の売却義務、もしくはパートナーシップの解消義務、キャッシュ・フローの管理を含む不十分な経営管理、特許技術やノウハウの喪失、減損損失、及びソニーブランドを使用する合弁会社の行為又は事業活動から受ける風評被害により、悪影響を受ける可能性があります。

 ソニーは、スマートフォンやその他の製品向けイメージセンサー用製造設備を含む生産設備や装置に多額の投資を行っています。ソニーは、競争環境、想定を下回る消費者需要、ソニーの主要顧客の財政状態やビジネス上の意思決定の変更又は生産設備や装置の調達の遅れに起因して、これらの資本的支出を計画どおりに実行できない又は一部もしくは全部を計画した期間内に回収できない場合があります。ソニーは、イメージセンサーの生産能力増強等のために、2023年度及び2024年度にそれぞれ、3,396億円及び2,274億円の資本を投資しました。

 さらに、ソニーは、収益力、事業の自律性及び株主価値を向上させ、また、ソニー全体の事業ポートフォリオにおける各事業の位置づけを明確にするため、構造改革及び事業構造変革の施策を実施しています。しかし、社内外で生じるビジネス上の阻害要因や予想を上回る市況の悪化が原因となり、想定された収益性レベルの達成を含め、これらの施策の実施によって期待される恩恵が得られない可能性があります。ソニーがこれらの施策を達成できない場合、ソニーの業績、財政状態、評判、競争力又は収益性に悪影響を及ぼす可能性があります。なお、当社は、2025年5月14日開催の取締役会において、金融事業のパーシャル・スピンオフを2025年10月1日付で実行することについて、2025年9月初旬の取締役会に付議する方針を決定しました。金融事業のパーシャル・スピンオフの実行は、東京証券取引所からのSFGI株式の上場承認の取得その他の関係当局の承認や認定、許認可等の取得を前提としています。

 

(4) ソニーの売上や収益性は卸売事業者、小売事業者、その他の再販売事業者及び第三者の販売業者の業績の影響を受ける可能性があります。

 ソニーは、製品の流通を卸売事業者、小売事業者、その他の再販売事業者及び第三者の販売業者に依存しており、その多くが競合他社の製品を同時に取り扱っています。例えば、映画分野では、映画配給においては第三者の映画館運営会社に、映画やテレビ番組の配信においてはケーブル、衛星、インターネット及びその他配信システムに依存しており、当該第三者からソニーが受領するライセンス料の減少が映画分野の売上に悪影響を与える可能性があります。映画分野における様々なテレビネットワークを通じた配信も、第三者のケーブル、衛星及びその他配信システム経由で行われ、これらの第三者配信会社との契約を更新できない、又は不利な条件で契約を更新する場合は、これらの第三者ネットワークを通じた広告販売及び予約販売の実績に悪影響を及ぼす可能性があります。ソニーは、卸売事業者、小売事業者、その他の再販売事業者及び第三者の販売業者に対して、ソニー製品を市場に導入し、販売を促進するインセンティブを与えることを目的としたプログラムに資金を投入しています。しかしながら、それらのプログラムの提供が、消費者を競合他社の製品の代わりにソニー製品を買うように促し、結果的にソニーに大きな利益や追加収入をもたらすことを保証するものではありません。

 多くの卸売業者、小売業者、その他の再販売事業者及び第三者の販売業者の業績及び財政状態は、特にオンライン小売業者との競争と景気の後退により悪影響を受けます。これらの業者の財政状態が継続的に悪化したり、ソニー製品を取り扱うことを中止したり、もしくはソニー製品に対する需要が不透明になるなどの要因によりこれらの業者がソニー製品の発注数やマーケティング活動、販売奨励金、又は販売を減少させたり縮小させたりするような場合、ソニーの業績及び財政状態は悪影響を受ける可能性があります。

 

(5) ソニーはグローバルに事業を展開しているため、多くの国々において広範な法規制の適用を受けるとともに、企業の社会的責任を含むサステナビリティに係る取り組みに関する株主、消費者、地域社会、NGO等の外部ステークホルダーの関心の高まりに直面しています。これらの法規制や外部ステークホルダー及び規制当局の関心は大きく変わる可能性があり、その変化がソニーの事業活動費用の増加、事業活動の制約及びソニーの評判への悪影響につながる可能性があります。

 ソニーはグローバルに事業を展開しているため、広告、販売促進、消費者保護、輸出入、腐敗防止、反競争的行為、環境保護(気候変動対策にともなう脱炭素規制及び特定の有機フッ素化合物等の有害物質の使用・漏出に係る規制を含む)、データプライバシー及びデータ保護、製品セキュリティ、コンテンツや放送規制、AIの開発や利用、知的財産、労働、安全衛生、製造物責任、課税(デジタルサービスからの収入に係る税金を含む)、外国投資規制、政府調達、為替管理、経済制裁を含む多数の地域における事業活動に影響を与える世界中の多くの国々の法規制の適用を受けます。

 これらの法規制を遵守することは事業活動における負担をともない、また、遵守にともない費用が発生する可能性があります。これらの法規制は継続的に変更されるとともに、管轄ごとに異なるものとなる可能性があり、その遵守や事業遂行にかかる費用が増加する可能性があります。このような変更は、場合によっては頻繁に又は事前の通知なくして起こり、消費者にとってのソニー製品又はサービスの魅力の低下、新製品又はサービスの導入の遅延もしくは禁止、あるいはソニーの事業遂行の変更や制約に結びつく可能性があります。例えば、米国及びその他の地域における関税、輸出規制等の貿易制限措置及び報復的措置の導入が、ソニーの製品に賦課される関税率の増加、部品の調達費用の増加、又は既存及び将来的なソニーの製品及びサービスの顧客への販売の制限又は中止につながり、ソニーの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。加えて、ソニーがオンライン上を含め事業を行う上で依拠又は適用を受ける法規制又はそれに関連する裁判所の解釈に変化が生じた場合や、ソニーがこのような変化を想定できなかった場合にも、ソニーの法的責任に対するリスクの増加、法規制遵守のための費用の増加又は一部の事業活動に対する制限、制約もしくは中止を含む事業活動の変更につながる可能性があります。また、欧州等の規制当局はAIに関する法規制を進めています。ソニーはAIの開発や利用を行っていることから、それら法規制の遵守にともなう費用が増加する可能性があります。

 ソニー、又はソニーの役員・従業員、第三者サプライヤー、ビジネスパートナー、もしくは代理人が法規制に違反すると、ソニーが罰金、刑罰、法的制裁の対象となり、また、ソニーの事業遂行への制約や評判への悪影響につながる可能性があります。加えて、気候変動やサプライチェーンにおける人権尊重等、企業のサステナビリティに係る取り組みに対し、全世界的に規制当局や外部ステークホルダーの注目が高まっており、また、これらの事項に関する情報開示の法的規制が強化されています。例えば、アジア地域で操業する電子部品及び製品の製造事業者や製造/設計受託事業者(OEM/ODM)における労働環境を含む労働慣行への注目が高まっています。ソニーは製品の製造に多くの部品や原材料を使用しており、それらの部品や原材料の供給を第三者サプライヤーに依存しているため、これらの領域における規制の強化や外部ステークホルダーの関心の高まりによって、ソニーの法規制の遵守にかかる費用が増加する可能性があります。さらに、かかる法規制の不遵守があった場合、又は外部ステークホルダーの関心の高まりに対してソニーが適切に対処していないとみなされた場合には、それが法的に求められているか否かにかかわらず、ソニーの評判、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) ソニーは市況変動の大きい環境のなか、部品・原材料、ソフトウェア、及びネットワークサービスの在庫量、入手可能性、費用及び品質をコントロールするために第三者のサプライヤー及びその他のビジネスパートナーからの大量かつ広範な調達品を管理する必要があります。

 ソニーの製品やサービスは、例えば、半導体、プレイステーションのゲーム機及びモバイル製品向けチップセット、ならびにモバイル製品、テレビ及びサービスに利用されている液晶パネルやアンドロイドOSを含め、部品・原材料、ソフトウェア、及びネットワークサービスに関して、第三者のサプライヤー及びその他のビジネスパートナーに大きく依存しています。したがって、第三者サプライヤーやパートナーにおけるこれらの供給不足、当該第三者サプライヤーやパートナーから提供を受ける部品等の価格変動、品質問題、製造の中止、取引条件の変更、又は第三者サプライヤーやパートナーがエレクトロニクス領域以外の顧客あるいはソニーの競合他社を優先させた場合、ソニーの業績、ブランド及び評判に悪影響を与える可能性があります。例えば、2020年度の後半から2022年度の前半にかけて顕著であった世界的な半導体不足について、2024年度末時点では半導体の世界的な供給は安定していますが、再び供給に制約が生じた場合、ソニーの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、第三者のソフトウェア及び技術への依存は、競合他社の製品とソニーの製品との差異化をますます難しくする可能性があります。さらに、特にソニーが一社に部品の調達を依存している場合、特注の部品の生産能力に限界がある場合、もしくは新しい技術を使用する製品の初期生産能力に制約がある場合には、部品の供給不足や出荷遅延が生じ、その結果、ソニー又はビジネスパートナーの製造事業所における生産調整又は生産停止が起こる可能性があります。

 ソニーは消費者需要の予測にもとづいて事前に決定した生産量及び在庫計画に沿って部品を発注していますが、そうした消費者需要の変動は大きく、また、予測が難しいものです。不正確な消費者需要予測や不十分な在庫管理は、在庫不足もしくは過剰在庫を招き、その結果、生産計画に混乱が生じることにより売上の機会損失や在庫調整につながる可能性もあります。ソニーでは、部品や製品が陳腐化したり、在庫レベルが使用見込み数量を上回ったり、もしくは在庫の帳簿価額が正味実現可能価額を上回る場合には、在庫の評価減を行います。過去にこのような売上機会の損失及び在庫調整、ならびに部品の供給不足がソニーの業績及び財政状態に悪影響を及ぼしたことがあり、今後も及ぼす可能性があります。

 

(7) ソニーの売上、収益性及び事業活動は、世界及び地域の経済動向及び政治動向ならびに情勢に敏感です。

 ソニーの売上及び収益性は、ソニーが事業を営む主要市場の経済動向に敏感です。2024年度のソニーの売上高及び金融ビジネス収入において、日本、米国、欧州における構成比はそれぞれ17.3%、31.9%、20.3%でした。これらの市場が深刻な景気後退に陥ると、ソニーの業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。ソニーの主要市場における経済状況の悪化や今後悪化するという見通しにより、最終消費が低迷して法人顧客の事業が悪影響を受け、その結果、ソニーの製品やサービスに対する需要が減少する可能性があります。

 また、ソニーは世界各地において事業活動を行っており、このような世界規模での事業遂行、特に一部の新興市場での事業遂行には困難がともなうこともあります。例えば、ET&S分野、I&SS分野及びG&NS分野においては、中国やその他のアジアの国々・地域において製品及び部品を生産、調達しているため、これらの地域外の市場に製品を供給するために要する時間が長くなり、変化する消費者需要に迅速に対応することがより難しくなる可能性があります。さらにソニーは、複数の国において、ソニーにとって望ましくない政治的・経済的な要因により、事業を企画・管理する上で困難に直面する可能性があります。この例としては、武力紛争、外交関係の悪化、通商・関税政策の変更、期待される行動規範からの逸脱、及び十分なインフラの欠如等があります。不安定な国際政治又は国内政治・軍事情勢が今後生じた場合、ソニーやそのビジネスパートナーの事業活動が阻害されることにより、ソニーの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。例えば、2021年度に発生したウクライナ・ロシア情勢の悪化を受け、本書提出日現在において、ソニーはロシアにおける事業を中断しています。今後、情勢がさらに悪化した場合、国際情勢の不安をもたらし、ソニーの他地域での事業又は世界的な経済状況の悪化につながり、ソニーの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(8) ソニーの業績及び財政状態は外国為替変動の影響を受ける可能性があります。

 ソニーの製品の多くは開発、製造された国・地域と異なる国・地域で販売されるため、ソニーの業績と財政状態は外国為替相場の変動による影響を受けます。例えば、エレクトロニクス領域においては、研究開発費や本社間接費は主に円で、原材料及び部品の調達や外部委託生産を含む製造費用は主に米ドル及び円で発生しています。売上は日本・米国・欧州・中国・新興国市場を含むその他地域において、それぞれの地域の通貨で計上されています。結果として、特に米ドルに対する大幅な円安、ユーロに対する大幅な円高、ならびに新興国通貨に対する米ドル高は、ソニーの業績に悪影響をこれまでも及ぼしており、今後も及ぼす可能性があります。また、ソニーの連結損益計算書は世界中の各子会社の現地通貨ベースの業績を円換算して作成されていることから、外国為替相場の変動が、かかる換算にともないソニーの業績に悪影響を与える可能性があります。さらに、近年では中国や新興国市場を含むその他地域におけるビジネス拡大とともに、これらの地域の通貨の米ドル及び円に対する為替レートの変動の影響も大きくなっています。中長期的な為替レート水準の変動により、ソニーの経営資源のグローバルな配分が妨げられたり、ソニーが研究開発、資材調達、生産、物流、販売といった活動を、収益力を保った形で遂行する能力が低下したりする可能性があります。

 また、ソニーは、短期の外貨建て債権債務(純額)の一部を取引が発生する前にヘッジすることで為替リスクの低下に努めていますが、かかるヘッジ活動によっても、ヘッジされている為替について限られた期間に為替が不利に変動する場合に、全くもしくは一部しか財政状態への悪影響を解消できない可能性があります。

 さらに、ソニーの連結財政状態計算書は世界中の各子会社の現地通貨ベースの資産及び負債を円換算して作成されるため、米ドル及びユーロならびにその他の外国通貨に対して円高が進行すると、ソニーの自己資本に悪影響を与える可能性があります。

 

(9) 信用格付けの低下や国際金融市場における深刻かつ不安定な混乱状況は、ソニーの資金調達や資金調達コストに悪影響を及ぼす可能性があります。

 ソニーの業績及び財政状態の悪化は、ソニーの信用格付け評価にマイナスの影響を及ぼす可能性があります。信用格付けの低下は、資金調達コストの上昇を招き、ソニーのコマーシャル・ペーパー(以下「CP」)及び中長期債市場からの受諾可能な条件での調達に悪影響を与える可能性があります。

 また、国際金融市場が深刻かつ不安定な混乱状況に陥った場合、金融その他の資産価格全般に下落圧力が生じたり、資金調達に影響が生じたりする可能性があります。従来、ソニーは、営業活動によるキャッシュ・フロー、CP及び中長期債の発行、銀行やその他の融資機関からの借入金等により資金を調達してきました。しかしながら、将来にわたってこのような資金源からソニーにとって受諾可能な条件で必要かつ十分な資金調達が可能となる状況が継続するという保証はありません。

 その結果、ソニーは弁済期限到来時のCPや中長期債の返済、その他事業遂行上必要ある場合や必要な流動性を賄うために、金融機関と契約しているコミットメントラインや資産の売却等の代替的な資金源を活用する可能性がありますが、そのような資金源からソニーにとって受諾可能な条件で必要かつ十分な資金調達ができない可能性があります。その結果、ソニーの業績、財政状態及び流動性に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(10) ソニーの成功は、挑戦心と成長意欲に満ちた多様な人材との良好な関係の維持と、それら人材の採用・確保に依存しています。

 ソニーが、ますます競争が激しくなる市場において、コンテンツの制作やサービスの開発、製品の設計、製造、マーケティング及び販売を継続するためには、マネジメント人材、クリエイティブな人材、及びハードウェアやソフトウェアエンジニア等の高い専門性や豊富な経験を持った内部及び外部の重要な人材を惹きつけ、確保し、それらの人材との間で良好な関係を維持することが必要となります。しかしながら、そのような人材には高い需要があります。加えて、事業譲渡や構造改革及びその他の事業構造変革施策の実施により、経験豊かな人材やノウハウが意図せず喪失又は流出してしまう可能性があります。また、特にエンタテインメント領域において、労働組合によるストライキが生じた場合、又はそのおそれがある場合、作品のリリースの遅れやコストの増加につながることもあります。例えば、映画分野では、WGAが2023年5月から同年9月にかけて、SAG-AFTRAが同年7月から同年11月にかけて、ストライキを実施しました。これらのストライキがコンテンツ制作に与えた影響により、映画製作における一部作品の劇場公開日の変更やテレビ番組制作における作品納入の後ろ倒し等の悪影響が出ています。さらに、日本国内においては、少子高齢化にともなう労働人口の減少や、企業間の専門人材獲得競争の激化、人件費の高騰等が進んでおり、人事制度の設計・運用が不十分である場合、必要な人材を確保することが困難となる可能性があります。もしこれらの事象が起きた場合、あるいは高い専門性や豊富な経験を持った人材や重要なマネジメント人材を惹きつけ、確保し、良好な関係を維持できなかった場合、ソニーの業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。

 

(11) ソニーの知的財産は不正利用や窃取の被害を受け、また、第三者が保有する知的財産のソニーによる利用が制限される可能性があります。

 ソニーは、ソニーの製品やサービスに関連する知的財産の不正利用や窃取の被害を受ける可能性があります。例えば、デジタル技術、デジタルメディアの利用、世界的なインターネットの普及及び生成AIを含むAI技術の拡大は、ソニーが著作権で保護されたコンテンツを違法コピー及び盗用、偽造等から保護することを困難にさせ、正規の製品・サービスの販売にも悪影響を与えます。ソニーは、知的財産権の保護のために費用を計上しており、今後も引き続き費用を計上します。しかしながら、ソニーが行っているこれらの知的財産保護のための様々な取り組みが想定している効果を達成できない可能性があり、ソニーの競争上の地位や研究開発投資に悪影響を与えるおそれがあります。

 さらに、ソニーの知的財産権に関して紛争が生じたり、無効にされたりする可能性があります。また、ソニーの知的財産権が、ソニーの競争力を維持するうえで十分ではない可能性があります。

 また、多くのソニー製品やサービスは、第三者が保有する特許その他の知的財産権のライセンス供与を受けて設計・開発・製造されています。過去の経験や業界の慣行により、将来的にビジネスに必要な様々な知的財産権のライセンス供与を受け又は更新できるとソニーは考えていますが、全く供与されない、又は受諾可能な条件で供与されない可能性があります。そのような場合には、ソニーは、製品又はサービスの設計変更や、マーケティング、販売、あるいは提供もしくは配信の断念を余儀なくされる可能性があります。

 ソニーの製品やサービスに利用されている第三者の部品、ソフトウェア及びネットワークサービスを含め、ソニーの製品やサービスが第三者の保有する知的財産権を侵害しているという主張がソニーに対してなされており、また、今後もなされる可能性もあります。特に、新規技術やより高度な機能が製品及びサービスに導入されることにともない、競合他社又は第三者の権利者から、かかる主張がなされる可能性があります。ソニーは、かかる主張により、和解やライセンス契約の締結、又は多額の損害賠償金の支払いを余儀なくされる可能性があり、差止命令、あるいはソニーの製品やサービスの一部についてマーケティング、販売、又は提供の中止に直面する可能性があります。

 ソニーの知的財産権の第三者による不正利用や窃取を防止できない場合、必要とされる第三者の知的財産権のライセンスが受けられない場合、ソニーの知的財産権が無効になる場合、又は第三者との間で知的財産の権利侵害の訴えについて和解が成立する場合には、ソニーの評判、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(12) 新たな技術や配信プラットフォームによる消費行動の変化や、デジタル音楽配信会社による寡占度が高まること、及び配信会社自らがコンテンツを制作することは、音楽分野及び映画分野の業績に悪影響を与える可能性があります。

 音楽分野及び映画分野で使用される技術、特にデジタル技術は進化を続け、デジタルコンテンツの発掘及び消費の方法とプラットフォームは急速に変化しつつあります。このような技術の進歩は、消費者行動を変化させ、消費者が、デジタルコンテンツを消費するタイミング、場所及び方法を、これまでよりも消費者自身がコントロールすることを可能とさせています。

 デジタルストリーミングネットワークやその他新規メディアが普及した場合、従来のテレビ放送や劇場での映画鑑賞にも影響が及ぶことが考えられ、映画分野の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 さらに、より多くの音楽や映像コンテンツがデジタルストリーミングのネットワークで消費されることにより、デジタル音楽配信会社の寡占度がさらに高まり、ソニーの音楽コンテンツの競争力を減少させることで、ソニーの価格設定に悪影響を及ぼす可能性があります。加えて、デジタルの音楽や映像コンテンツの配信会社は生成AI等の技術も活用して自らのサービスのための自社制作コンテンツを増やす可能性があり、ソニーが制作するコンテンツに対する需要が減少する可能性があります。ソニーがこのような変化に適切に対応できない場合、又は新たな市場の変化に効果的に適応することができない場合、ソニーの業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。

 

(13) 法令改正や金融市場の動向等が、非継続事業に分類される金融事業の業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。

 ソニーの金融事業は、日本における保険や銀行といった法規制や監督の対象となる業界で事業を行っています。将来における法規制・政策等の改正・変更は、当該法規制や政策の遵守に対応するための費用の増加や事業活動に対する制約にもつながる可能性があります。なお、日本の監督官庁の指針にもとづく制約により、当社の金融事業の子会社と金融事業以外のソニーグループ会社間で資金の貸借を行うことは厳格に制限されています。

 また、金融事業においては、金利、外国為替レート及びインフレ率の変動、日本国債、国内社債、米国債、株式、不動産及びその他の投資資産の価値変動ならびに金利・株価・為替のインプライド・ボラティリティの変動が業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。例えば、ソニーの生命保険事業では、保有契約から生じる長期の負債特性に見合うように、一般勘定資産のうち大部分を超長期日本国債及び国内社債ならびに超長期米国債に投資しています。生命保険事業では、上述の市況変動により投資ポートフォリオの利回りが低下する可能性がある一方で、残存する保険契約の予定利率を保証しています。また、ソニーの銀行事業では、住宅ローンが貸出金の大部分、総資産の過半を占めています。上述の市況変動及び債務者の信用状況の悪化により不良債権の増加や担保不動産価値の減少が生じ、損失評価引当金の積み増しが必要となり、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 ソニーの生命保険事業及び損害保険事業においては、上述の市況変動とこれらの変動に対するソニーの管理体制、又は日本における大地震や感染症等の疫病、あるいはその他の大規模災害の発生が、費用計上額の増加につながり、又は保険契約負債を履行する保険事業の能力に悪影響を及ぼす可能性もあります。

 保険事業における保険契約負債は、不確実な多くの保険数理上の前提にもとづいて計算されています。その計算前提が大幅に変更された場合や、上述の市況変動により、金融事業の業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。なお、保険契約負債の計算前提は、各報告期間末日時点での見直しが求められています。

 なお、2025年5月14日の当社取締役会における金融事業のパーシャル・スピンオフの実行方針に係る決議にともない、ソニーは、2025年度第1四半期より、IFRS第5号「売却目的で保有する非流動資産及び非継続事業」に従い、金融事業を非継続事業に分類しています。詳細は「第5 経理の状況」連結財務諸表注記『33.重要な後発事象』をご参照ください。

 

(14) 大規模な災害や停電、感染症等が生じた場合、ソニーの設備や事業活動は被害や損害を受け、それがサプライチェーンや、製造その他の事業遂行における混乱を引き起こし、ソニーの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 ソニーの本社及びイメージセンサー等の最先端の製造拠点の多くは、地震のリスクが比較的高い日本国内にあります。日本で大地震が起きた場合、特にソニーの本社がある東京、エレクトロニクス製品の製造事業所が所在する東海地方、又はイメージセンサーの製造事業所が所在する九州地方及び東北地方で起きた場合には、建物や機械設備、棚卸資産が被害を受けたり、製造事業所では生産活動が中断したりするなど、ソニーの事業は大きな被害を受ける可能性があります。例えば、2016年4月14日以降に発生した平成28年(2016年)熊本地震の影響で、九州地方にあるイメージセンサー製造事業所に損傷があり、その事業所における製造が中断しました。

 また、ネットワーク、情報通信システムインフラ、研究開発、資材調達、製造、映画やテレビ番組の製作・制作、物流、販売及び、オンラインやその他のサービスに使用される、ソニーやサプライヤー、外部サービスプロバイダ及びその他のビジネスパートナーの世界各地にあるオフィスや設備は、自然災害、新型コロナウイルス感染症やその他の感染症、テロ行為、武力紛争、大規模停電、大規模火災等の予期できない大惨事により、破壊されたり、一時的に機能が停止したり、混乱に陥ったりする可能性があります。これらのオフィスや設備のいずれかが前述の大惨事により重大な損害を受けた場合、事業活動の停止、設計・開発・生産・出荷・売上計上の遅れ、又はオフィスや設備の修繕・置換えにかかる多額の費用計上等が生じる可能性があります。例えば、新型コロナウイルス感染症やその他の感染症等により経済活動が停滞した場合、ソニーの製品又はサービスの部品又は原材料の調達、生産、開発又は制作、及び販売又は提供に悪影響を及ぼし、結果として、ソニーの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。G&NS分野では、部品のサプライチェーン上の問題からハードウェアの生産に再び悪影響が出る可能性があります。音楽分野では、対面でのコンサートその他のイベントの開催等が再び制限され、これらに関連する収益が減少する可能性があります。映画分野では、映画館が再び閉鎖された場合又は収容人数が制限された場合、劇場興行収入が減少する可能性があります。また、感染再拡大や外出制限等の感染対策の状況によっては、新作映画の製作やテレビ番組作品の制作のスケジュールの遅れ、広告収入の減少といった影響を再び受ける可能性があります。ET&S分野では、製造事業所の稼働停止や稼働率低下、サプライチェーンの混乱及び製品の販売店舗の世界的な閉鎖や休業による悪影響を受ける可能性があります。

 さらに、ソニーは、原材料及び部品の価格高騰や、法人顧客の需要減少による影響を受ける可能性があり、これらの場合には、ソニーの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。また、気候変動の影響で気温上昇が進むにつれて異常気象が激甚化・頻発化することにより、上記のリスク及び不確実な要素に悪影響を与える可能性があります。

 

(15) ソニーあるいは外部のサービスプロバイダやその他のビジネスパートナーの情報セキュリティに対する侵害又はその他の不正行為があった場合、ソニーのブランドイメージ及び評判や事業への悪影響が及ぶ可能性や、ソニーが法的な責任を追及される可能性があります。

 ソニーならびに外部のサービスプロバイダ、サプライヤー及びその他のビジネスパートナーは、情報技術を広範に活用することで営業活動を行い、また、顧客に対しネットワークサービスやオンラインサービスを提供しています。これらの事業及びサービス、ならびにソニーのビジネス情報は、国家が支援する組織を含む悪意をもった第三者、犯罪組織、ソニーの役員・従業員、ソニーもしくは外部のサービスプロバイダ又はその他のビジネスパートナーの故意又は過失により侵害を受ける可能性があります。そのような組織や個人は、悪意のあるソフトウェアをインストールしたり、情報技術の脆弱性を利用したり、ソーシャル・エンジニアリングを用いて役員・従業員やビジネスパートナーのパスワードや機密情報を開示させたり、分散DoS(サービス停止)攻撃を仕組んだり、より自動化され、標的を絞った組織的なサイバー攻撃を実行できる生成AIを使用したりするなど、様々な技術の組み合わせにより、サービスを停止させる可能性があります。また、サプライヤー及びその他のビジネスパートナーがこれらのサイバー攻撃を受けた場合、ソニーへの部品・材料、その他役務の供給をすることができなくなる可能性があり、その結果、ソニーのビジネスに影響を与える可能性があります。ソニーはこれまでにサイバー攻撃の対象とされたことがあります。詳細は、「第4 提出会社の状況」『4コーポレート・ガバナンスの状況等』(1)コーポレート・ガバナンスの概要 ② 企業統治に関するその他の事項 <サイバーセキュリティに関する活動状況>をご参照ください。

 サイバー攻撃がますます高度化かつ自動化し、より容易にツールやリソースを利用できるようになりつつあることから、外部からの不正な侵入の防止あるいは検知、侵入への対応、データへのアクセス制限、ビジネス情報の消失、破壊、改変、あるいは流出の防止、それらの攻撃の悪影響を抑制するためにソニーが行っている対策及びセキュリティへの取り組みや管理が、完全に安全な情報セキュリティを確保できる保証はありません。また、ソニーの役員・従業員は、出社による勤務と在宅勤務の併用を継続しています。ソニーは、在宅勤務者に対し適切な情報セキュリティ保護が確実に実施されるように措置を講じていますが、外部からの不正な侵入の防止あるいは検知、侵入への対応、データへのアクセス制限、ビジネス情報の消失、破壊、改変、あるいは流出の防止、それらの攻撃の悪影響を抑制するためにソニーが行っている対策及びセキュリティへの取り組みや管理が、完全に安全な情報セキュリティを確保できる保証はありません。その結果、個人を識別できる情報を含むソニーのビジネス情報の消失、破壊、漏洩、悪用、改変、又は承諾を得ない第三者による不正アクセスが発生し、ソニー、あるいは外部のサービスプロバイダ及びその他のビジネスパートナーの情報システム又は事業が破壊される可能性があります。また、悪意をもった第三者は、ソニーに知られることなく、ソニーの外部の事業パートナーを侵害するためのプラットフォームとしてソニーのネットワークに不正にアクセスする可能性があります。

 こうした情報セキュリティインシデントによって、多額の復旧費用が発生する可能性があります。加えて、ソニーのネットワークやオンラインサービス、情報技術への破壊行為、その他のソニーの情報セキュリティに対する侵害行為によって、売上の喪失、ビジネスパートナー及びその他の第三者との関係の悪化、専有情報の不正漏洩、改変、破壊あるいは悪用、ならびに顧客の維持や勧誘の失敗等が生じ、その結果、ソニーの事業や活動が重大な打撃を受ける可能性があります。さらに、これらの破壊や侵害行為がマネジメントの関心や経営資源の分散につながる可能性があります。他にも、メディアの報道に悪影響をもたらし、ソニーのブランドイメージや評判を傷つける可能性があります。また、ソニーは、訴訟や、規制当局による調査や法的措置を含む法的手続の対象となる可能性があります。ソニーが加入しているサイバー攻撃に対する保険は、発生する費用や損失の全額を填補できない可能性があり、その結果、ソニー又は外部のサービスプロバイダやその他のビジネスパートナーの情報セキュリティに対する、それらの侵害その他の不正行為が、ソニーの業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。

 

(16) 訴訟及び規制当局による措置が不利な結果に終わった場合、ソニーの評判、業績及び財政状態が悪影響を受ける可能性があります。

 ソニーは、様々な国において事業の遂行に関して、訴訟及び規制当局による措置に服するリスクにさらされています。訴訟及び規制当局による措置により、ソニーは、多額かつ不確定な損害賠償や事業活動に対する制約を要求される場合がありますが、その発生の可能性や影響の程度を予測するには相当の期間を要することがあります。例えば、公正な競争に反する市場慣行に関して規制当局が行う調査が、訴訟や規制当局による措置につながる可能性があります。多大な法的責任や規制当局による不利な措置が課された場合や、訴訟及び規制当局による措置への対応に多大なコストがかかった場合、ソニーの評判や業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(17) ソニーは製品品質、製品セキュリティ及び製造物責任による財務上のリスクや評判を損なうリスクにさらされています。

 急速な技術の進化や、モバイル製品及びオンラインサービスに対する需要増にともない、一般消費者向けエレクトロニクス製品、業務用及び産業用製品、部品、半導体、ソフトウェア、ならびにネットワークサービス等のソニーの製品・サービスは一層高機能かつ複雑になっており、また、多くの製品が常にインターネットやソニー又は第三者が提供するサービスにつながっている環境におかれています。ソニーは、製品品質及び製品セキュリティを維持しながら、技術の急速な進展や、モバイル製品及びオンラインサービスの需要増加に対応できない可能性があり、これにより、製造物責任問題に関するリスクが高まる可能性があります。その結果、ソニーの評判に悪影響を及ぼし、製品回収やアフターサービス等の費用が発生する可能性があります。加えて、既存の製品及びサービスへの販売後のアップグレード、機能の拡充、又は新機能の導入に成功しない可能性や、既存の製品及びサービスを、他の技術及びオンラインサービスとの間で便宜的かつ効果的に連携させ続けることができない可能性があります。その上、インターネットに接続されている製品に対するサイバー攻撃は劇的に増加しており、ソニーの製品・サービスが他者からの攻撃にさらされる事態、顧客情報ならびにソニー及び他社の技術情報が流出する事態、又は製品・サービスが利用不能となる事態や他者への攻撃に悪用される事態が生じるおそれがあります。ソニーが導入したセキュリティ対策は、ソニーの製品及びサービスに対する侵害を防止できる保証はありません。

 そのため、ソニーの既存の製品及びサービスについて、顧客満足を維持できない可能性や、需要の減少、競争力の低下、あるいは陳腐化を招く可能性があり、その結果、ソニーの評判や業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。また、根拠の有無にかかわらず、ソニー製品に関するセキュリティ脆弱性、健康面や安全性の問題に関する申立て又は訴訟は、直接的に、ソニーのブランドイメージや、高品質な製品やサービスを提供する企業であるという評価に対して影響を与え、その結果として、ソニーの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。これらの問題は、ソニーがその製品を製造したか否かに関係なく、また、ソニーが直接顧客に販売する製品のみならず、半導体等のソニー製の部品が搭載された他社製品においても生じる可能性があります。

 

(18) ソニーの業績及び財政状態は確定給付制度債務により悪影響を受ける可能性があります。

 ソニーは、確定給付年金制度に関する会計基準に従い、確定給付年金制度ごとの確定給付制度債務の現在価値から制度資産の公正価値を控除した金額を確定給付負債又は資産の純額として認識しています。制度資産の公正価値が確定給付制度債務の現在価値を超過している場合、資産計上額は、利用可能な制度からの返還及び将来掛金の減額の現在価値を上限としています。制度資産の公正価値の減少や割引率の低下、その他の年金数理計算前提となる比率の変動による確定給付制度債務の現在価値増加にともない確定給付負債又は資産の純額が増加又は減少し、その結果、ソニーの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 また、ソニーの業績及び財政状態は、日本の確定給付企業年金法の年金積立要求により悪影響を受ける可能性があります。確定給付企業年金法により、ソニーは定期的な財政再計算や年次の財政決算を含む年金財政の検証を行うことが求められています。法定の責任準備金等に対して制度資産の公正価値がこれを下回り、かつ法令もしくは特別な政令等により認められた期間内にそのような状況が回復しないと見込まれる場合には、ソニーは年金制度への追加拠出が必要となり、キャッシュ・フローを減少させる可能性があります。同様に、海外の年金制度についても各国の法令にもとづき追加拠出が必要となる場合、キャッシュ・フローを減少させる可能性があります。また、今後、法令が定める掛金の更新にともなって制度資産の長期期待収益率等の前提を見直したことにより、年金制度への拠出金の水準が引上げられた場合、ソニーのキャッシュ・フローに対して悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(19) 繰延税金資産に対して評価減を計上している税務管轄におけるさらなる損失の発生、ソニーが繰延税金資産を最大限に利用できないこと、各国の法令にもとづく繰延税金資産の使用の制限、追加的な税金負債あるいは税率の変動がソニーの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 ソニーは、日本及び様々な税務管轄において法人所得税を課されており、通常の営業活動において連結会社間の移転価格取引により最終的な税額の決定に不確実な状況が多く生じています。また、ソニーは、多くの税務管轄において税務当局から継続的な調査を受けています。ソニーの税金引当額、及び繰越欠損金や繰越税額控除を含む税金資産の帳簿価額の計算には将来の課税所得の見積りを含む高度な判断と見積りが要求されます。ソニーは、決算日において、繰延税金資産に対して計上している評価減の妥当性を判断するため、これら資産の再評価を行います。2025年3月31日現在、総額で2,326億円の評価減が計上されています。これら評価減の増加は、ソニーの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 繰延税金資産は、税務管轄ごとに評価されます。2025年3月31日時点において、ソニーは主に日本において地方税に係る評価減を計上しています。さらに、充分な課税所得を適切な税務管轄内で生み出せないなど様々な理由により、繰延税金資産は未使用のまま消滅、又は回収できない可能性があります。繰延税金資産が未使用のまま消滅した場合、ソニーの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 一部の税務管轄において、繰越欠損金又は繰越税額控除の使用が、翌期以降の課税所得に対する一定の水準に制限されており、ある特定の要因の所得との相殺にしか使用できない場合があります。したがって、ソニーは、課税所得が発生した税務管轄において、多額の繰越欠損金又は繰越税額控除があるにもかかわらず、税金の支払いが発生するため税金費用を計上する可能性があります。

 また、ソニーの将来における実効税率は、法定税率の変更や異なる法定税率が適用される各国での利益の割合の変化、又は最低税率に関する枠組み、ロイヤルティや利息の損金算入制限、及び税額控除の使用制限を含む租税法規の改正やそれらの解釈の変更等により不利な影響を受ける可能性があります。

 上記に加え、ソニーのビジネスには、実効税率に直接影響しないものの、デジタルサービス税を含む新たな形態の総収益に対する課税や取引税が課される可能性があり、その結果、ソニーの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(20) ソニーは、のれん、コンテンツ資産、その他の無形資産、もしくは有形固定資産の減損損失を計上する可能性があります。

 ソニーは多くののれん、コンテンツ資産、その他の無形資産ならびに製造施設及び設備を含む有形固定資産を保有しています。これらの資産については、業績の悪化や時価総額の減少、将来のキャッシュ・フローの見積額の減少、世界経済情勢の変化、減損の判定に用いられる高度な判断を必要とする見積り・前提の変更により、減損損失を計上する可能性があります。減損の可能性を示す事象又は状況の変化には、設定された事業計画の下方修正や実績見込みの大幅な変更、あるいは外的な市場や産業固有の変動等が含まれます。なお、ソニーがさらされている国際的な競争環境の激化や技術動向の急激な変化により、減損の判定に用いられる見積り、前提及び判断が変動し、減損損失の計上の可能性が増加することがあります。このような減損損失の計上は、ソニーの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。

(1)重要な会計上の見積り

 IFRSにしたがった連結財務諸表の作成は、決算日における資産・負債の報告金額及び偶発資産・負債の開示、及び報告期間における収益・費用の報告金額に影響を与えるような、マネジメントによる見積り及び仮定を必要とします。ソニーは、継続的に、過去のデータ、将来の予測及び状況に応じ合理的と判断される範囲での様々な仮定にもとづき見積りを評価します。これらの評価の結果は、他の方法からは容易に判定しえない資産・負債の簿価あるいは費用の報告金額についての判断の基礎となります。実際の結果は、これらの見積りと大きく異なる場合があります。ソニーは、会社の財政状態や業績に重要な影響を与え、かつその適用にあたってマネジメントが重要な判断や見積りを必要とするものを重要な会計上の見積りであると考えます。ソニーは、以下に述べる項目を会社の重要な会計上の見積りとして考えています。なお、重要な会計上の見積りの各項目に関連する会計方針については、「第5 経理の状況」連結財務諸表注記『2.作成の基礎』及び『3.重要性がある会計方針の要約』をご参照ください。

金融商品

 ソニーは、金融商品の契約の当事者になった時点で、金融商品を金融資産又は金融負債として認識しています。金融資産及び金融負債は公正価値で当初測定されます。

 ソニーの保有する金融商品は測定方法にしたがって分類され、このうち公正価値で測定される金融商品については、将来における公正価値の変動により連結財務諸表に重要な影響を与える可能性があります。

 また、負債性証券の信用損失の評価は、多くの場合、主観的であり、発行企業の信用格付け、業績予想、事業計画及び将来キャッシュ・フローに関するある特定の前提及び見積りが必要とされます。したがって、現在、信用損失がないと判断している負債性証券について、信用格付けの低下、継続的な業績の低迷、将来の世界的な株式市況の大幅悪化又は市場金利変動の影響等の事後的に利用可能となる情報の評価にもとづき、将来、信用損失に関する引当金が測定され、費用として認識されることにより、将来の収益を減少させる場合があります。

非金融資産の減損

 ソニーは、棚卸資産、契約コスト及び繰延税金資産を除く非金融資産について、個々の資産又は資金生成単位に係る減損の兆候が存在する場合には、当該資産の回収可能性の検討を行っています。これに加え、各資金生成単位に配分されているのれん、耐用年数が確定できない無形資産及び未だ利用可能でない無形資産の帳簿価額については、年に1回第4四半期に減損テストを実施しています。

 

 当年度の減損判定において、のれんを持つ全ての資金生成単位の回収可能価額が帳簿価額を超過していたため、のれんの減損損失を認識することはありませんでした。また、重要なのれんを持つ資金生成単位において回収可能価額は帳簿価額を少なくとも10%以上超過しています。耐用年数が確定できない無形資産及び未だ利用可能でない無形資産においても、回収可能価額が帳簿価額を超過していたため、減損損失を認識することはありませんでした。

 

 中期計画を除く、2024年度ののれんの減損判定において実施された資金生成単位の回収可能価額への影響に関する感応度分析を含む重要な前提の検討は下記のとおりです。詳細は「第5 経理の状況」連結財務諸表注記『11.のれん及び無形資産』をご参照ください。

・税引後割引率は3.9%から14.0%の範囲です。他の全ての前提を同一とし、割引率を1ポイント増加させた場合においても、重要なのれんの減損損失を認識することはありませんでした。

・G&NS分野、ET&S分野、I&SS分野及び金融分野の資金生成単位におけるターミナル・バリューに適用された成長率はおおよそ1.0%から2.0%の範囲です。音楽分野の資金生成単位における中期計画を超える期間の成長率は1.0%から3.0%の範囲、映画分野では△5.0%から17.0%の範囲です。他の全ての前提を同一とし、成長率を1ポイント減少させた場合においても、重要なのれんの減損損失を認識することはありませんでした。

・映画分野の資金生成単位におけるターミナル・バリューの算定に使用される利益倍率は8.5から14.3、収益倍率は1.4から1.8です。他の全ての前提を同一とし、利益倍率を1.0、収益倍率を0.25それぞれ減少させた場合においても、重要なのれんの減損損失を認識することはありませんでした。

 マネジメントは、のれんの減損判定における回収可能価額の見積りに用いられた前提は、合理的であると考えています。しかしながら、将来の予測不能なビジネスの前提条件の変化による、回収可能価額の下落を引き起こすような見積りの変化が、これらの評価に不利に影響し、結果として、将来においてソニーが非金融資産の減損損失を認識することになる可能性があります。

企業結合

 被取得企業における識別可能資産及び負債は、限定的な例外を除き、取得日の公正価値で測定しています。

 企業結合で移転された対価、被取得企業の非支配持分の金額及びソニーが従来保有していた被取得企業の資本持分の公正価値の合計が、取得日における識別可能資産及び負債の正味価額を上回る場合にはその超過額がのれんとして認識され、下回る場合には純利益として認識されます。

 見積りや前提には固有の不確実性が含まれるため、この移転された対価は異なる金額で評価され、識別可能資産及び負債に割り当てられる可能性があります。実際の結果が異なる可能性があること又は予想しない事象及び状況がこのような見積りに影響を与える可能性があることから、識別可能資産及びのれんの減損損失の計上又は識別可能負債の増加が必要となる可能性があります。

 

映画分野における予想総収益の見積り

 映画会計においては、作品のライフサイクルを通した予想総収益を見積もる過程でマネジメントの判断が必要となります。この予想総収益の見積りは、繰延映画製作費及び映画分野における未払分配金債務の測定にあたり重要となります。

 映画作品が製作され関連する費用が資産化される際に、その繰延映画製作費の公正価値が減損し、回収不能と見込まれる額を評価減する必要があるかどうかを決定するため、マネジメントは発生時に費用化される配給関連費用を含む追加で発生する費用を控除した予想総収益を見積もる必要があります。また、映画作品に関する売上原価として認識される繰延映画製作費の額は、その映画作品がそのライフサイクルにおいて様々な市場で公開されることから、残りの予想総収益に対する当該年度の収益実績額の割合にもとづいて計上されています。

 マネジメントが各作品の予想総収益を見積もる際に基礎とするのは、同種の過去の作品の収益、主演俳優の人気度、その作品の公開される予測映画館数、BD/DVD等のパッケージメディアやデジタル販売、テレビ放映及びその他の付随マーケットでの期待収益ならびに将来の売上に関する契約等です。この見積りは、各作品の直近までの実現収益及び将来予測収益にもとづいて定期的に見直されます。例えば、公開当初数週間の劇場収入が予想を下回った場合には、通常、劇場、BD/DVD等のパッケージメディアやデジタル販売、及びテレビ放映の生涯収益等を下方に修正することになります。そのような下方修正を行わなかった場合、当該期間における繰延映画製作費の償却費の過少計上になる可能性があります。さらに、未払分配金債務は残りの予想総収益に対する当該年度の収益実績額の割合に応じて計上されます。

 

繰延税金資産の評価

 繰延税金資産は、将来それらを利用できる課税所得が稼得される可能性が高い範囲内で認識しています。したがって、繰延税金資産の計上金額は、繰延税金資産の回収可能性に関連する入手可能な証拠にもとづいて、定期的に評価されます。

 

 繰延税金資産の評価は、財政状態計算書日時点で適用されている税制や税率にもとづいており、また、ソニーの財務諸表及び税務申告書で認識されている事象に関して将来に起こり得る税務上の結果についてのマネジメントの判断と最善の見積り、様々な税務戦略を実行する能力、一定の場合においての将来の結果に関する予測、事業計画及びその他の見込みを反映しています。ソニーが事業を行っているそれぞれの税務管轄における現在の税制や税率の改正は、実際の税務上の結果に影響を与える可能性があり、市場経済の悪化やマネジメントによる構造改革の目標未達は、将来における業績に影響を与える可能性があります。そして、これらのいずれかが、繰延税金資産の評価に影響を与える可能性があります。将来の結果が計画を下回る場合、税務調査の結果や連結会社間の移転価格に関する事前確認制度の交渉が現在の損益配分に関する予想と異なる結果となる場合、及び税務戦略の選択肢が実行可能ではなくなる場合や売却を予定する資産の価値が税務上の簿価を下回ることになる場合には、繰延税金資産に対して評価減の計上が要求される可能性があります。一方、将来の予測される利益の改善や継続した利益の計上、ビジネス構造の変革といった他の要因によって、関連し得る要因の評価の結果、将来において、税金費用の減額をともなう評価減の戻し入れが計上される可能性があります。現在の見込みにおいて予想していないこれらの起こり得る要因や変化は、評価減が計上又は取崩される期間において、ソニーの業績又は財政状態に重要な影響を与える可能性があります。

 

保険料配分アプローチを適用せずに測定している保険契約負債の測定

 保険契約グループの帳簿価額は、発生保険金に係る負債と残存カバーに係る負債の合計です。残存カバーに係る負債は、保険契約から生じる履行キャッシュ・フロー及び契約上のサービス・マージンを算定することによって測定されます。保険契約グループの履行キャッシュ・フローは、将来キャッシュ・フロー、割引率及び非金融リスクに係るリスク調整に関する現在の見積りを用いて、報告日時点で測定されます。将来キャッシュ・フローの現在価値の見積りを測定するために使用している死亡率、罹患率、解約・失効率及び割引率は、保険契約負債を測定するために用いられる重要な仮定です。

 

(2)生産、受注及び販売の状況

 ソニーの生産・販売品目は極めて広範囲かつ多種多様であり、また、ゲーム機やゲームソフト、音楽・映像ソフト、エレクトロニクス機器等は、その性質上、原則として見込生産を行っているため、分野別に生産規模及び受注規模を金額又は数量で示すことはしていません。販売の状況については後述の「(3)経営成績の分析」において各分野の業績に関連付けて示しています。

 

 

(3)経営成績の分析

 

営業概況

 

ソニー連結:

2023年度

(億円)

2024年度

(億円)

売上高 *1

130,208

129,571

営業利益

12,088

14,072

税引前利益

12,687

14,737

当社株主に帰属する当期純利益

9,706

11,416

 

金融分野を除く連結ベース *2

2023年度

(億円)

2024年度

(億円)

売上高 *1

112,650

120,439

営業利益

10,353

12,766

税引前利益

11,451

13,432

当社株主に帰属する当期純利益

8,966

10,674

*1 IFRSにおける「売上高及び金融ビジネス収入」を「売上高」として表示しています(以下同じ)。

*2 金融分野を除く連結ベースの数値はIFRSに則った開示ではありませんが、ソニーはこれらの開示が投資家の皆様に有益な情報を提供すると考えています。金融分野を除く連結ベースの財務諸表の作成については、後述の「金融分野を分離した経営成績情報」をご参照ください(以下同じ)。

 

連結業績

 2024年度の連結業績は、以下のとおりです((+)は主な改善要因、(-)は主な悪化要因)。

 

売上高:12兆9,571億円(前年度比637億円減収)

 (-)金融分野の減収

 (+)G&NS分野、音楽分野及びI&SS分野の増収

 (売上高の内訳の詳細は、後述の「分野別営業概況」参照)

 

 (後述の「売上原価」、「研究開発費」及び「販売費及び一般管理費」に関する売上高に対する比率分析において、売上高には、純売上高のみが考慮されており、金融ビジネス収入は除かれています。これは、金融ビジネス費用は連結財務諸表上、売上原価や販売費及び一般管理費とは別に計上されていることによります。さらに、後述の比率分析のうち、セグメントに関するものについては、セグメント間取引を含んで計算されています。)

 

売上原価:8兆5,048億円(前年度比4,155億円増加)

 売上高に対する比率は前年度の71.8%から70.7%に改善。

 

 研究開発費(売上原価に全額含まれる):7,346億円(前年度比82億円減少)

 売上高に対する比率は6.1%(前年度は6.6%)。

 (詳細は「第2 事業の状況」『6 研究開発活動』参照)

 

販売費及び一般管理費:2兆2,568億円(前年度比1,007億円増加)

 売上高に対する比率は前年度の19.1%から18.8%に改善。

 

その他の営業損(益)(純額):92億円の利益(前年度比202億円減少)

 (-)2023年度に発生した以下の要因の影響がなかったこと

・従来持分法で会計処理されていた会社の連結子会社化による再評価益60億円(音楽分野)

・ソニーペイメントサービス㈱(以下「ソニーペイメントサービス」)株式の一部譲渡にともなう売却益及び再評価益198億円(金融分野)

 (「第5 経理の状況」連結財務諸表注記『23.連結損益計算書についての補足情報』参照)

 

持分法による投資利益(損失):78億円の損失(前年度は105億円の利益)

 (-)その他分野における持分法による投資損益の悪化

 

営業利益:1兆4,072億円(前年度比1,983億円増加)

 (+)G&NS分野、I&SS分野及び音楽分野の増益

 (-)金融分野の減益

 2023年度の営業利益には、前述のその他の営業損(益)(純額)に計上された要因が含まれています。

 

金融収益:1,390億円(前年度比134億円増加)

金融費用:725億円(前年度比67億円増加)

金融収益及び費用(純額):666億円の収益(前年度比67億円増加)

 (+)受取利息(純額)の増加

 

税引前利益:1兆4,737億円(前年度比2,051億円増加)

 

法人所得税:3,138億円(前年度比257億円増加)

実効税率:21.3%(前年度は22.7%)

 税率の変動は主に以下の要因の影響によるものです。

 ・子会社からの資本の払い戻しにともなう税金費用の減少(484億円)

 ・子会社の解散にともなう税金費用の減少(353億円)

 ・日本の税制改正にともなう税率上昇から生じる繰延税金資産及び負債の再評価による税金費用の増加

 (「第5 経理の状況」連結財務諸表注記『25.法人所得税』参照)

 

非支配持分に帰属する当期純利益:183億円(前年度比84億円増加)

 

当社株主に帰属する当期純利益(非支配持分に帰属する当期純利益を除く):1兆1,416億円(前年度比1,710億円増加)

 

基本的1株当たり当社株主に帰属する当期純利益:188.71円(前年度は157.66円)

希薄化後1株当たり当社株主に帰属する当期純利益:187.92円(前年度は157.14円)

 (当社は、2024年9月30日を基準日、2024年10月1日を効力発生日として、普通株式1株につき5株の割合で株式分割を行いました。上記の基本的1株当たり当期純利益及び希薄化後1株当たり当期純利益は、前年度の期首に当該株式分割が行われたと仮定して算定しています。1株当たり当社株主に帰属する当期純損益の詳細については、「第5 経理の状況」連結財務諸表注記『26.基本的及び希薄化後EPSの調整表』参照)

 

 

 

分野別営業概況

 以下の情報はセグメント情報にもとづきます。各分野の売上高はセグメント間取引消去前のものであり、また各分野の営業損益はセグメント間取引消去前のもので配賦不能費用は含まれていません。(「第5 経理の状況」 連結財務諸表注記『4.セグメント情報』参照)

 

G&NS分野

 

主要経営数値

 

2023年度

(百万円)

2024年度

(百万円)

製品部門別の外部顧客向け売上高

 

 

デジタルソフトウェア・アドオンコンテンツ

1,934,586

2,290,498

ネットワーク

545,537

669,873

ハードウェア・その他

1,692,871

1,583,200

外部顧客向け売上高の合計

4,172,994

4,543,571

セグメント間取引

94,740

126,473

セグメント売上高

4,267,734

4,670,044

セグメント営業利益

290,184

414,819

 

 2024年度のG&NS分野の業績は、以下のとおりです。

 

 売上高:4兆6,700億円(前年度比4,023億円増収、為替影響:+1,700億円)

 ・(+)アドオンコンテンツを含む自社制作以外のゲームソフトウェア販売増加

 ・(+)為替の影響

 ・(+)ネットワークサービスの増収

 ・(-)販売台数減少によるハードウェアの減収

 ・(-)自社制作のゲームソフトウェア販売減少

 

 営業利益:4,148億円(前年度比1,246億円増益、為替影響:+2億円)

 ・(+)ネットワークサービスの増収の影響

 ・(+)自社制作以外のゲームソフトウェア販売増加の影響

 ・(-)自社制作のゲームソフトウェア販売減少の影響

 

事業環境及び事業戦略

 2024年度の当分野の業績は、PS5のインストールベースの拡大を背景に、アドオンコンテンツを含むゲームソフトウェア販売の好調なモメンタムの継続、プレイステーション®プラス(以下「PS Plus」)における上位ティアへのシフト等によるネットワークサービスからの継続的な収益拡大等にともなうユーザーエンゲージメントの安定的な拡大を反映したものとなりました。このような環境下、ソニーは、PS Plusの収益拡大、プレイステーション®ストアにおけるユーザー一人当たりの平均売上高の最大化、これまで積極的に開発を強化してきた自社制作のゲームソフトウェアの販売拡大、及びコストコントロールとサプライチェーン管理の強化を通じて、収益性の高い安定した事業成長をめざしていきます。具体的には、ハードウェアについては、収益性とのバランスを保ちながらPS5のインストールベースを継続的に拡大させるとともに、ユーザーに新しいゲームの楽しみ方を提供するPlayStation Portalリモートプレーヤー等の周辺機器の販売も引き続き推進していきます。ネットワークサービスについては、PS Plusにおいて、ユーザーエンゲージメントを高めるとともに、提供しているサービスやコンテンツの価値を継続的に向上させ、上位ティアへのユーザーの移行を促すことで、利益成長に注力していきます。また、自社制作以外のゲームソフトウェアについては、サードパーティスタジオとの関係性を維持・強化し、毎年リリースされる主要なフランチャイズ作品からの安定的な収益貢献を継続させるとともに、新たなヒット作品の創出のためのクリエイター支援の取り組みも継続していきます。自社制作のゲームソフトウェアにおいては、ソニーが従来から強みを持つシングルプレイヤーゲームを毎年継続的にリリースするとともに、ライブサービスゲームのポートフォリオ構築にも注力することで、安定した収益基盤の構築に取り組んでいきます。また、PC等のマルチプラットフォームへの自社制作のゲームソフトウェアの展開や、ソニーグループ内連携によるプレイステーションのゲームIPの映画化・テレビ番組化の取り組みを継続し、IPのさらなるリーチ拡大と収益化を図っていきます。

音楽分野

 音楽分野の業績には、日本のSMEJの円ベースでの業績、ならびにその他全世界にある子会社の業績を米ドルベースで連結している、SME及びSMPの円換算後の業績が含まれています。

 

主要経営数値

 

2023年度

(百万円)

2024年度

(百万円)

ビジネス部門別の外部顧客向け売上高

 

 

音楽制作(ストリーミング)

709,453

788,772

音楽制作(その他)

356,646

407,260

音楽出版

326,727

379,812

映像メディア・プラットフォーム

202,129

244,419

外部顧客向け売上高の合計

1,594,955

1,820,263

セグメント間取引

24,003

22,341

セグメント売上高

1,618,958

1,842,604

セグメント営業利益

301,662

357,255

 

 2024年度の音楽分野の業績は、以下のとおりです。

 

 売上高:1兆8,426億円(前年度比2,236億円増収、為替影響:+738億円)

 ・(+)音楽制作及び音楽出版におけるストリーミングサービスからの収入増加

 ・(+)為替の影響

 ・(+)映像メディア・プラットフォームにおける㈱イープラスの連結子会社化の影響

 ・(+)音楽制作における興行・物販及びライセンスからの収入増加

 

 営業利益:3,573億円(前年度比556億円増益)

 ・(+)増収の影響

 ・(+)為替の好影響

 ・(-)販売費及び一般管理費の増加

 

事業環境及び事業戦略

 2024年度の当分野の業績は、音楽ストリーミング市場の拡大が続く中、これまで積極的に行ってきた優れたアーティストやソングライターの発掘・育成の強化及び音楽カタログへの投資によるストリーミングサービスからの収入の安定的な成長を反映したものとなりました。また、The OrchardやAWAL等のインディーズレーベル向けディストリビューションやインディーアーティスト向けサービスの収益拡大も、当分野の成長に貢献しています。このような環境下、ソニーは、グローバル音楽事業においては、配信プラットフォーム各社との強固な関係を維持しながら、事業全体ならびにラテンアメリカ、インド及びその他アジア諸国等の、拡大する新興市場での事業成長をめざしています。この成長を実現するため、注力地域及び音楽カタログへのさらなる戦略的投資機会の探索による収益機会の拡大、アーティストやソングライターの発掘・育成及びローカルのインディーズレーベルやアーティストとの関係構築・強化を進めていきます。また、アーティストやコンテンツのファンに向けたライブ興行・物販等の事業展開にも注力していきます。また、様々なパートナーと連携して、革新的な音楽コンテンツの創出や新しいアイデアの実現のためのツールとして、AI等の最先端技術の活用を探求するとともに、アーティストの権利保護にも引き続き取り組んでいきます。加えて、ソニーグループ内連携により、ソニー・ミュージック所属アーティストの伝記映画やドキュメンタリー、ライブイベントを通じたIP活用の拡大に取り組んでいきます。日本国内の音楽事業においては、YOASOBI等のJ-POPアーティストの海外展開のさらなる拡大を進めていきます。映像メディア・プラットフォームにおいては、アニメ事業のさらなる成長に向けて、有力IPの新規開発及び獲得のための企画力・制作力の強化と、基幹IPの海外市場を含む展開力強化を進めていきます。例えば、2025年3月には、海外市場を見据えた高品質なアニメの企画力・制作力強化のためにAniplexとCrunchyrollとの共同出資により、HAYATEを設立しました。ゲーム事業においては、新規タイトルによるヒット創出と既存タイトルのライフタイムバリュー最大化の両立に引き続き取り組んでいきます。

 

映画分野

 映画分野の業績は、全世界にある子会社の業績を米ドルベースで連結しているSPEの円換算後の業績です。ソニーはSPEの業績を米ドルで分析しているため、一部の記述については「米ドルベース」と特記してあります。

 

主要経営数値

 

2023年度

(百万円)

2024年度

(百万円)

ビジネス部門別の外部顧客向け売上高

 

 

映画製作

542,044

610,313

テレビ番組制作

551,035

459,281

メディアネットワーク

393,638

428,940

外部顧客向け売上高の合計

1,486,717

1,498,534

セグメント間取引

6,333

7,410

セグメント売上高

1,493,050

1,505,944

セグメント営業利益

117,702

117,284

 

 2024年度の映画分野の業績は、以下のとおりです(要因分析は米ドルベース)。

 

 売上高:1兆5,059億円(前年度比ほぼ横ばい、米ドルベース:416百万米ドル減収)

 ・(-)2023年度のWGA及びSAG-AFTRAのストライキによる作品制作の遅れ等によるテレビ番組制作における納入作品数の減少

 ・(-)メディアネットワークにおけるインド事業の視聴料及び広告料収入減少

 ・(+)有料会員数増加等によるCrunchyrollの増収

 ・(+)Alamo Drafthouse Cinemaの買収の影響

 

 営業利益:1,173億円(前年度比ほぼ横ばい、米ドルベース:34百万米ドル減益)

 ・(-)映画製作におけるカタログ作品の貢献の減少

 ・(-)減収の影響

 ・(+)劇場公開に係る広告宣伝費の減少

 

事業環境及び事業戦略

 2024年度の当分野の業績は、2023年度のWGA及びSAG-AFTRAのストライキがコンテンツ制作に与えた影響による、テレビ番組制作における作品納入の後ろ倒しを中心とした悪影響があったものの、充実したコンテンツIPや規律ある事業運営等のソニーの強みを反映したものとなりました。また、アニメDTCプラットフォームであるCrunchyrollは、豊富なコンテンツライブラリと配信チャンネルの拡大により有料会員数が順調に成長し、当分野への業績貢献を拡大しました。このような環境下、ソニーは、あらゆる配信プラットフォームにコンテンツを提供できる独立系コンテンツサプライヤーとしての強みを活かし、引き続きIPの長期的な価値最大化をめざします。映画製作においては、映画作品の劇場公開を重視する戦略を継続するとともに、グローバルでのマーケティング及び劇場配給の能力により、タレントやクリエイターとの関係を強化しています。今後は、2026年度に公開予定の『Spider-Man: Brand New Day』をはじめとする、強力なIPの映画作品の劇場公開を予定しています。テレビ番組制作においては、多様なジャンルにおける制作能力を引き続き強化するとともに、スピンオフ作品の開発等によるフランチャイズ拡大に積極的に取り組んでいきます。メディアネットワークにおいては、CrunchyrollやSonyLIV等のDTCサービスの展開をさらに強化していきます。特に、Crunchyrollは、当分野の成長の重要な柱であり、ストリーミングサービスにとどまらず、アニメグッズ等のeコマース、モバイルゲーム、マンガアプリ等を通じてファンとのタッチポイントを拡大し、より幅広い視聴者にリーチしていきます。また、当分野は、ソニーグループ内の事業間シナジーやコラボレーションを生み出すハブの役割を担い、「Creative Entertainment Vision」の実現に貢献することをめざします。例えば、Aniplex、SMEJ及びPlayStation Productionsによる『Ghost of Tsushima』のアニメシリーズ化等、今後もプレイステーションのゲームIPを題材とした作品展開やアニメ領域におけるグループ内コラボレーションを拡大していきます。また、LBEや、2024年6月に買収したAlamo Drafthouse Cinema等の、IPを活用して体験価値を提供する領域において、既存IPからの収益機会を積極的に追求していきます。

ET&S分野

 

主要経営数値

 

2023年度

(百万円)

2024年度

(百万円)

製品部門別の外部顧客向け売上高

 

 

テレビ

624,264

564,154

オーディオ・ビデオ

412,067

391,664

静止画・動画カメラ

643,429

665,144

モバイル・コミュニケーション

299,905

279,834

その他

435,281

462,042

外部顧客向け売上高の合計

2,414,946

2,362,838

セグメント間取引

38,772

46,437

セグメント売上高

2,453,718

2,409,275

セグメント営業利益

187,399

190,926

 

 2024年度のET&S分野の業績は、以下のとおりです。

 

 売上高:2兆4,093億円(前年度比444億円減収、為替影響:+789億円)

 ・(-)販売台数減少によるテレビ及びスマートフォンの減収

 ・(+)為替の影響

 

 営業利益:1,909億円(前年度比35億円増益、為替影響:+123億円)

 ・(+)オペレーション費用の削減

 ・(+)為替の好影響

 ・(-)テレビの減収の影響

 ・(-)構造改革費用の増加

 

事業環境及び事業戦略

 2024年度の当分野の業績は、引き続き厳しい事業環境の中、テレビにおける販売台数の減少及びスマートフォンにおける製品ラインナップの見直しや競争の激化による販売台数の減少による減収があったものの、事業環境の変化に機敏に対応するための徹底したサプライチェーンの最適化や構造改革を含む固定費削減等の各種施策を実行するとともに、各事業において収益性を重視し、高付加価値商品へのシフトを推進した成果を反映したものとなりました。このような環境下、ソニーは、収益性の高いイメージング事業等のクリエイションを軸とした事業の拡大を着実に進めており、「収益性維持と成長戦略を両立する事業構造の確立」という経営方針の下、「企業価値向上」と「キャッシュ創出」を目標に掲げ、中期的な事業の変革を推進しています。具体的には、テレビ及びスマートフォン事業においては、販売、製造、設計の構造変革を推進することで、収益水準の向上とボラティリティの低減を進め、リスクをコントロールしていきます。テレビ及びスマートフォンで用いるディスプレイ及び通信の技術はクリエイションの拡大に必要不可欠であると考えており、両事業においては、売上の規模を追うのではなく、クリエイションに集中した技術開発を進めることでさらなる事業転換を進めます。イメージング及びサウンド事業においては、安定した収益基盤を強化し、事業領域を拡大させることで、さらなる成長をめざします。イメージング事業では、優れた技術力・商品力による競争優位性で事業領域を拡大し、エコシステムを構築していきます。サウンド事業においても、サウンド制作からコンスーマー製品まで、End to Endでエコシステムの構築をめざします。イメージング事業のソリューションや、サウンド事業のクリエイションを含む領域では、既存のビジネスで培った技術をベースにソフトウェアの付加価値を加えることでクリエイターの表現力を拡張し、クリエイションの多様化により事業を拡大させ、クリエイターのすそ野も拡大していきます。スポーツ及びニューコンテンツクリエイション事業においては、事業モデルの進化やバリューチェーンの拡大を加速するために、規律を持ちながらも積極的に投資を行っていきます。スポーツ事業では、判定支援から、データエンハンスメントのテクノロジーを活用した新たなエンタテインメントの創造へと事業を進化させていきます。ニューコンテンツクリエイション事業においては、空間キャプチャリングやクリエイティブツールのテクノロジーを活用し、新たなクリエイション産業の創出をめざします。

I&SS分野

 

主要経営数値

 

2023年度

(百万円)

2024年度

(百万円)

外部顧客向け売上高の合計

1,503,906

1,712,534

セグメント間取引

98,832

86,471

セグメント売上高

1,602,738

1,799,005

セグメント営業利益

193,541

261,147

 

 2024年度のI&SS分野の業績は、以下のとおりです。

 

 売上高:1兆7,990億円(前年度比1,963億円増収、為替影響:+959億円)

 ・(+)為替の影響

 ・(+)モバイル機器向けイメージセンサーの増収

    ・(+)製品ミックスの改善

    ・(+)販売数量の増加

 

 営業利益:2,611億円(前年度比676億円増益、為替影響:+634億円)

 ・(+)為替の好影響

 ・(+)増収の影響

 ・(+)モバイル機器向けイメージセンサーの新製品量産立上げにおける費用の減少

 ・(-)製造経費の増加

 ・(-)減価償却費の増加

 

 

事業環境及び事業戦略

 2024年度の当分野の業績は、為替の好影響に加え、ハイエンドスマートフォンを中心にモバイル機器向けイメージセンサーの大判化、高画質・高性能化の傾向が継続したことや、2023年度に発生した新製品の歩留り悪化が解消したことにより、売上高及び営業利益ともに過去最高を更新しました。このような環境下、ソニーは、イメージセンサーにおける世界No.1ポジションをさらに強固なものとし、事業環境の不確実性が増している中でも収益性をともなう成長を実現するために経営基盤の再構築に取り組んでいます。当分野では、各事業を「成長牽引事業領域」、「収益事業領域」、「戦略事業領域」の3つに分け、それぞれの戦略の方向性を踏まえて事業を運営しています。成長牽引事業領域であるモバイル機器向けイメージセンサー事業では、競争に勝ち抜くための技術力強化と成長投資を継続します。足元ではスマートフォン市場が緩やかな回復基調にあることに加え、イメージセンサーの大判化は引き続き順調に推移しています。今後は大判化に加えて、イメージセンサーのさらなる高付加価値化を実現し、動画を活用した様々なクリエイションに貢献するために、先端プロセス技術の開発として、プロセスノードの適合化による平面方向の高密度化と、積層技術による多層化を通じた垂直方向の高密度化による技術革新に取り組み、さらなる事業成長を図ります。収益事業領域であるカメラ及び産業・社会インフラ向けイメージセンサー事業においては、高い競争力を堅持し安定した収益貢献をめざします。戦略事業領域である車載向けイメージセンサー事業、システムソリューション事業、半導体レーザー事業及びディスプレイデバイス事業については、将来のビジネスの柱とすべく、事業拡大と収益とのバランスを取りながら、規律を持った事業運営を行っていきます。車載向けイメージセンサー事業はこれまで順調に成長しており、金額シェアは想定どおり拡大しています。市場が拡大する中で、センサー特性の総合力を一層強化し、引き続きグローバルでOEMやパートナーとの関係構築・強化を進め、収益拡大をめざします。半導体レーザー事業は、生成AIの普及にともなうデータセンター市場におけるストレージ需要の拡大により、中長期的な需要拡大を見込んでいます。このような状況のもと、当分野の設備投資については、第五次中期経営計画期間においては投資を厳選し、第四次中期経営計画比で減らしていく方向性には変わりはないものの、モバイル機器向けイメージセンサー事業において、前述の先端プロセスの導入が当初の想定より早まったこと等により、昨年度時点での見通しとの比較では増加する見込みです。同時に、継続する投資負担を軽減するために様々な選択肢を検討していくとともに、今後はフリーキャッシュ・フローの黒字を維持することを財務規律とし、当分野から創出されるキャッシュ・フローを必要な設備投資資金に充当する方針です。

 

金融分野

 金融分野には、SFGI及びSFGIの連結子会社(以下あわせて「ソニーフィナンシャルグループ」)であるソニー生命、ソニー損保、ソニー銀行等の業績が含まれています。金融分野に記載されている業績は、ソニーフィナンシャルグループが日本の会計基準に則って個別に開示している業績とは異なります。

 

主要経営数値

 

2023年度

(百万円)

2024年度

(百万円)

金融ビジネス収入

1,769,954

931,400

営業利益

173,576

130,528

 

 2024年度の金融分野の業績は、以下のとおりです。

 

 金融ビジネス収入:9,314億円(前年度比8,386億円減収)

 ・(-)ソニー生命の減収(△8,638億円、収入:6,601億円)

    ・(-)市況変動による特別勘定における資産運用益の減少

 

 営業利益:1,305億円(前年度比430億円減益)

 ・(-)2023年度におけるソニーペイメントサービス株式の一部譲渡にともなう売却益及び再評価益の計上(△198億円)

 ・(-)ソニー生命の減益(△131億円、ソニー生命の営業利益:1,134億円)

    ・(-)変額保険の最低保証等に係る市況変動による利益の減少

 

事業環境及び事業戦略

 2024年度の当分野の業績は、日本経済と債券市場の状況を反映したものとなりました。日本経済は、円安等による輸入価格の高止まりや食料価格上昇等による物価高が長引いたことで、個人消費の本格回復には至らず、景気は踊り場となりました。債券市場は、日米の景気及び金融政策の動向による影響を大きく受けました。2024年夏頃までは日本銀行の国債買い入れ縮小観測等を受けて、日本の長期金利は1%を超える水準まで上昇しました。しかし、8月に米国において失業率上昇等を受けて景気後退観測が高まり、国際金融市場が大きく不安定化したため、日本の長期金利は急転して1%以下まで低下しました。2024年度後半は、米国経済に対する過度な悲観論が後退する中、国内物価の上振れリスク等から日本銀行による追加利上げ観測が高まり、長期金利は上昇基調を強めました。2025年1月には政策金利が0.5%に引き上げられ、同年の春闘では前年を超える賃上げ率となったこと等から、3月には長期金利が約16年ぶりとなる1.5%超をつけました。このような環境下、ソニーは、当分野の業績に対する金利感応度低減のため、保有する債券の売却や入れ替え、一部の既契約ブロックの出再に取り組んでいます。2025年10月に予定している金融事業のパーシャル・スピンオフにより、SFGIは当社の持分法適用関連会社となる予定です。金融事業のパーシャル・スピンオフ実行後も、ソニーは金融事業のさらなる成長のために、ソニーのブランドとテクノロジーを軸とした、金融事業とソニーグループの連携強化を図っていきます。ブランドに関しては、金融事業のパーシャル・スピンオフ実行後も、ソニーフィナンシャルグループは、ソニーブランドの継続使用が可能であり、ソニーグループとの事業間連携を通じて金融事業のブランド価値のさらなる向上をめざします。テクノロジーに関しては、Web3関連技術を活用したBorderless Digital Bankingサービスの開発、ライフプランナー向けの営業支援等におけるデータ解析・利活用、AIによる顧客対応アシスト、ゲーム関連技術やコンテンツのリハビリ用途への活用等、ソニーグループが持つ技術やIP、エンタメを活用することで、非金融から金融へのシームレスな顧客体験の創出を図ります。また、これまで着実に成長してきたソニーフィナンシャルグループの各事業のコアコンピタンスを、付加価値の伸びが最も大きいと考えられるソニー生命に実質的に融合し、今後はソニー生命をコアとした金融グループ一体での価値提供を行っていきます。ソニーフィナンシャルグループは、ソニー生命を軸とした既存事業の利益成長に加えて、ソニー損保が持つ高いブランド認知度や集客力、ソニー銀行が持つ資金循環基盤等、各事業のコアコンピタンスを事業の垣根を越えて活かすことで新たな付加価値を顧客に提供し、さらなる成長をめざします。

 

金融分野を分離した経営成績情報

 以下の表は金融分野の要約損益計算書、及び金融分野を除くソニー連結の要約損益計算書です。これらの要約損益計算書は、ソニーの連結財務諸表の作成に用いられたIFRSには準拠していませんが、金融分野はソニーのその他の分野とは性質が異なるため、ソニーはこのような比較表示が連結財務諸表の理解と分析に役立つものと考えています。なお、以下の金融分野と金融分野を除くソニー連結の金額には両者間の取引を含んでおり、これらの相殺消去を反映した後のものがソニー連結の金額です。

 

要約損益計算書(3月31日に終了した1年間)

 

(単位:百万円)

金融分野

金融分野を除くソニー連結

ソニー連結

 

2023年度

2024年度

2023年度

2024年度

2023年度

2024年度

売上高

11,265,043

12,043,903

11,260,037

12,034,917

金融ビジネス収入

1,769,954

931,400

1,760,731

922,147

売上高及び金融ビジネス収入合計

1,769,954

931,400

11,265,043

12,043,903

13,020,768

12,957,064

売上原価

8,101,990

8,514,325

8,089,317

8,504,810

販売費及び一般管理費

2,148,472

2,256,294

2,156,156

2,256,829

金融ビジネス費用

1,615,594

798,954

1,606,370

789,702

その他の営業損(益)(純額)

△19,271

1,982

△10,133

△11,224

△29,404

△9,241

売上原価、販売費・一般管理費及びその他の一般費用合計

1,596,323

800,936

10,240,329

10,759,395

11,822,439

11,542,100

持分法による投資利益(損失)

△55

64

10,557

△7,865

10,502

△7,801

営業利益

173,576

130,528

1,035,271

1,276,643

1,208,831

1,407,163

金融収益(費用)(純額)

109,864

66,530

59,831

66,563

税引前利益

173,576

130,528

1,145,135

1,343,173

1,268,662

1,473,726

法人所得税

49,063

56,359

239,105

257,467

288,168

313,839

当期純利益

124,513

74,169

906,030

1,085,706

980,494

1,159,887

当期純利益の帰属

 

 

 

 

 

 

金融分野の当期純利益

123,986

74,169

金融分野を除くソニー連結の当期純利益

896,636

1,067,419

当社株主に帰属する当期純利益

970,573

1,141,600

非支配持分に帰属する当期純利益

527

9,394

18,287

9,921

18,287

 

その他分野

 2024年度の売上高は、前年度比70億円増加し、963億円となりました。営業損益は、前年度の16億円の利益に対し、2024年度は180億円の損失となりました。この損益悪化は、前述の増収の影響があったものの、主に持分法による投資損益の悪化によるものです。

 

為替変動とリスク・ヘッジ

 2024年度の米ドル、ユーロに対する平均円レートはそれぞれ152.5円、163.6円と前年度の平均レートに比べ米ドルは8.1円、ユーロは7.0円の円安となりました。

 2024年度の連結売上高は、前年度比ほぼ横ばいの12兆9,571億円となりました。前年度の為替レートを適用した場合、売上高は約4%の減収となります。為替変動による売上高及び営業損益への影響については後述の『注記』をご参照ください。

 G&NS分野、ET&S分野及びI&SS分野の為替変動による売上高及び営業損益への影響については、以下の表をご参照ください。また、詳細については、「経営成績の分析」の分野別概況における各分野の分析をご参照ください。為替の影響が大きかった分野やカテゴリーについて、その影響に言及しています。

 

 

 

2023年度

(億円)

2024年度

(億円)

為替変動による影響額

(億円)

G&NS分野

売上高

42,677

46,700

+1,700

 

営業利益

2,902

4,148

+2

ET&S分野

売上高

24,537

24,093

+789

 

営業利益

1,874

1,909

+123

I&SS分野

売上高

16,027

17,990

+959

 

営業利益

1,935

2,611

+634

 

 なお、2024年度の音楽分野の売上高は前年度比14%増加の1兆8,426億円となりましたが、前年度の為替レートを適用した場合、約9%の増収でした。映画分野の売上高は前年度比ほぼ横ばいの1兆5,059億円となりましたが、米ドルベースでは、前年度比約4%の減収でした。詳細な分析は、「(3)経営成績の分析」の「音楽分野」及び「映画分野」をご参照ください。ソニーの金融分野は、円ベースのSFGIを連結しています。同分野の事業のほとんどが日本で行われていることから、ソニーは金融分野の業績の分析を円ベースでのみ行っています。

 2024年度のG&NS分野、ET&S分野及びI&SS分野において、米ドルに対する1円の円高の影響は、売上高では約318億円、営業損益では約13億円の減少と試算されます。ユーロに対する1円の円高の影響は、売上高では約118億円、営業損益では約65億円の減少と試算されます。(「第2 事業の状況」『3 事業等のリスク』参照)

 ソニーの連結業績は、主に収入と費用において通貨構成が異なることから生ずる為替変動リスクにさらされています。G&NS分野では、米ドル建てのコストの割合が高いのに対して、売上高は日本円、米ドル又はユーロで計上されるため、米ドルに対する円高は営業利益に好影響を、ユーロに対する円高は営業利益に悪影響を及ぼします。ET&S分野では、主要製品におけるドル建ての製造コスト等の割合が高いこと等から米ドルに対する円高は営業利益に好影響を及ぼします。一方で、新興国での売上高の割合が高いため、新興国通貨に対する円高は営業利益に悪影響を及ぼします。I&SS分野では、米ドル建ての販売契約の割合が高い一方、主に日本で製造を行っていることから、米ドルに対する円高は営業利益に大幅な悪影響を及ぼします。

 これらの為替変動によるリスクを軽減するため、ソニーは一貫したリスク管理方針に従い、先物為替予約、通貨オプション契約を含むデリバティブを利用しています。ソニーが行っているこれらのデリバティブは、主に当社及び当社の子会社の予想される外貨建て取引及び外貨建て営業債権や営業債務から生じるキャッシュ・フローの為替変動によるリスクを低減するために利用されています。

 ソニーは、総合的な財務サービスを当社及び当社の子会社・関連会社に提供することを目的として、Sony Global Treasury Services Plc(以下「SGTS」)を英国に設立しています。為替変動リスクにさらされている当社及び全ての子会社が、リスク・ヘッジのための契約をSGTSとの間で結ぶことがソニーの方針となっており、当社及び当社の子会社のほとんどはこの目的のためにSGTSを利用しています。為替リスク集中の原則にもとづき、SGTSと当社がソニーグループ全体の相殺後のほとんどの為替変動リスクをヘッジしています。ソニーの方針として、金融機関との為替デリバティブ取引は、リスク管理のため、原則としてSGTSに集中しています。SGTSはグループ外の信用の高い金融機関との間で外国為替取引を行っています。ほとんどの外国為替取引は、実際の輸出入取引が行われる前の予定された取引や債権・債務に対して行われます。一般的には、実際の輸出入取引が行われる当月又は1ヵ月前からヘッジを行っています。ソニーは金融機関との外国為替取引を主にヘッジ目的のために行っています。ソニーは、金融分野を除き、売買もしくは投機目的でこれらのデリバティブを利用していません。金融分野においては、主に資産負債の総合管理の一環としてデリバティブを活用しています。

 

 キャッシュ・フロー・ヘッジとして指定されたデリバティブの公正価値変動は、当初累積その他の包括利益に計上され、ヘッジ対象取引が損益に影響を与える時点で損益に振り替えられます。一方、ヘッジ会計の要件を満たさない先物為替予約、通貨オプション契約、及びその他のデリバティブは時価評価され、その変動は、直ちに金融収益・金融費用に計上されます。2024年度末における外国為替契約の負債に計上された公正価値(純額)の合計は5億円となっています。(「第5 経理の状況」連結財務諸表注記『15.デリバティブ及びヘッジ活動』参照)

 

『注記』

前年度の為替レートを適用した場合の売上高の状況、及び為替変動による影響額について

 前年度の為替レートを適用した場合の売上高の状況は、当年度の現地通貨建て月別売上高に対し、前年度の月次平均レートを適用して算出しています。ただし、音楽分野のSME及びSMP、ならびに映画分野については、米ドルベースで集計した上で、前年度の月次平均米ドル円レートを適用した金額を算出しています。

 映画分野の業績の状況は、米国を拠点とするSPEが、全世界にある子会社の業績を米ドルベースで連結していることから、米ドルベースで記載しています。

 為替変動による影響額は、売上高については前年度及び当年度における平均為替レートの変動を主要な取引通貨建て売上高に適用して算出し、営業損益についてはこの売上高への為替変動による影響額から、同様の方法で算出した売上原価ならびに販売費及び一般管理費への為替変動による影響額を差し引いて算出しています。I&SS分野では独自に為替ヘッジ取引を実施しており、売上高及び営業損益への為替変動による影響額に同取引の影響が含まれています。

 これらの情報はIFRSに則って開示されるソニーの連結財務諸表を代替するものではありません。しかしながら、これらの開示は、投資家の皆様にソニーの営業概況をご理解頂くための有益な分析情報と考えています。

 

所在地別の業績

 所在地別の業績は、顧客の所在国又は地域別に分類した売上高及び金融ビジネス収入を「第5 経理の状況」連結財務諸表注記『4.セグメント情報』に記載しています。

 

(4)財政状態の分析

 以下の表は金融分野の要約財政状態計算書、及び金融分野を除くソニー連結の要約財政状態計算書です。これらの要約財政状態計算書はソニーの連結財務諸表の作成に用いられたIFRSには準拠していませんが、金融分野はソニーのその他のセグメントとは性質が異なるため、ソニーはこのような比較表示が連結財務諸表の理解と分析に役立つものと考えています。なお、以下の金融分野と金融分野を除くソニー連結の金額には両者間の取引を含んでおり、両者の繰延税金資産と繰延税金負債を相殺する前の金額となっています。これらの相殺消去を反映した後のものがソニー連結の金額です。

 

要約財政状態計算書

 

 

 

 

 

 

(単位:百万円)

科     目

金融分野

金融分野を除くソニー連結

ソニー連結

2023年度末

2024年度末

2023年度末

2024年度末

2023年度末

2024年度末

 

 

 

流動資産

 

 

 

 

 

 

現金及び現金同等物 *1

913,815

1,216,277

993,298

1,764,679

1,907,113

2,980,956

金融分野における投資及び貸付 *2

398,153

453,677

-

-

398,153

453,677

営業債権、その他の債権及び契約資産

127,016

126,052

2,033,170

1,820,688

2,158,196

1,943,184

棚卸資産

-

-

1,518,644

1,310,770

1,518,644

1,310,770

その他の金融資産

57,254

117,719

68,111

27,473

125,365

145,192

その他の流動資産

50,487

25,882

625,539

604,486

669,335

621,209

流動資産合計

1,546,725

1,939,607

5,238,762

5,528,096

6,776,806

7,454,988

非流動資産

 

 

 

 

 

 

持分法で会計処理されている投資

4,905

3,171

418,839

344,547

423,744

347,718

金融分野における投資及び貸付 *2

18,939,794

18,736,298

-

-

18,939,794

18,736,298

金融分野への投資(取得原価)

-

-

550,483

550,483

-

-

有形固定資産

14,162

13,335

1,508,151

1,499,998

1,522,640

1,513,660

使用権資産

76,288

76,291

428,224

446,455

503,395

521,685

のれん及び無形資産(コンテンツ資産含む) *3

77,323

86,601

3,953,492

4,342,380

4,030,815

4,428,981

繰延税金資産

-

3,149

520,613

546,501

499,550

559,284

その他の金融資産

52,882

60,496

848,599

1,108,426

897,341

1,164,630

その他の非流動資産

165,049

153,880

421,258

484,529

513,405

565,929

非流動資産合計

19,330,403

19,133,221

8,649,659

9,323,319

27,330,684

27,838,185

合 計

20,877,128

21,072,828

13,888,421

14,851,415

34,107,490

35,293,173

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

流動負債

 

 

 

 

 

 

短期借入金

1,802,337

1,872,486

227,979

258,918

2,030,316

2,131,404

営業債務及びその他の債務

61,153

93,010

2,005,112

2,010,444

2,064,905

2,100,144

銀行ビジネスにおける顧客預金

3,670,567

3,981,193

-

-

3,670,567

3,981,193

未払法人所得税

10,050

5,902

142,024

83,583

152,074

89,485

映画分野における未払分配金債務

-

-

251,743

236,752

251,743

236,752

その他の金融負債

77,523

74,680

38,522

36,009

116,044

110,689

その他の流動負債

209,555

225,531

1,704,158

1,822,993

1,906,396

2,039,121

流動負債合計

5,831,185

6,252,802

4,369,538

4,448,699

10,192,045

10,688,788

非流動負債

 

 

 

 

 

 

長期借入債務

703,106

690,249

1,355,011

1,376,593

2,058,117

2,066,842

退職給付に係る負債

39,284

38,806

208,299

198,135

247,583

236,941

繰延税金負債

36,368

8,202

165,877

172,139

166,424

175,228

保険契約負債

12,931,995

12,689,306

-

-

12,931,995

12,689,306

映画分野における未払分配金債務

-

-

206,081

188,919

206,081

188,919

その他の金融負債

214,414

313,800

175,263

263,675

386,761

574,351

その他の非流動負債

7,607

6,751

176,767

177,380

162,379

162,647

非流動負債合計

13,932,774

13,747,114

2,287,298

2,376,841

16,159,340

16,094,234

負 債 合 計

19,763,959

19,999,916

6,656,836

6,825,540

26,351,385

26,783,022

金融分野の株主に帰属する資本

1,113,169

1,072,912

-

-

-

-

金融分野を除くソニー連結の株主に帰属する資本

-

-

7,062,657

7,695,469

-

-

当社株主に帰属する資本

-

-

-

-

7,587,177

8,179,745

非支配持分

-

-

168,928

330,406

168,928

330,406

資 本 合 計

1,113,169

1,072,912

7,231,585

8,025,875

7,756,105

8,510,151

合 計

20,877,128

21,072,828

13,888,421

14,851,415

34,107,490

35,293,173

 

 

(注)*1 2024年度末の金融分野を除くソニー連結における現金及び現金同等物の変動要因は、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」の『(5)キャッシュ・フローの状況の分析』をご参照ください。

*2 2023年度末及び2024年度末の金融分野における投資及び貸付の変動については、「第5 経理の状況」連結財務諸表注記『5.金融商品』をご参照ください。

*3 2024年度末の金融分野を除くソニー連結におけるのれん及び無形資産(コンテンツ資産含む)の増加は、主に音楽分野及び映画分野におけるコンテンツ資産の増加によるものです。

 

(5)キャッシュ・フローの状況の分析

 営業活動によるキャッシュ・フロー:2024年度において営業活動から得た現金及び現金同等物(純額)は、前年度比9,485億円増加し、2兆3,217億円となりました。

 金融分野を除くソニー連結では、1兆9,724億円の受取超過となり、前年度比7,946億円の受取の増加となりました。この増加は、営業債権及び契約資産が増加から減少に転じたこと、非資金調整項目(減価償却費及び償却費(契約コストの償却を含む)、その他の営業損(益)(純額)ならびに有価証券に関する損(益)(純額))を加味した後の税引前利益が増加したこと、営業債務が減少から増加に転じたこと、ならびに棚卸資産の減少額の拡大等によるものです。一方で、コンテンツ資産の増加額が拡大したこと等のキャッシュ・フローを悪化させる要因もありました。

 金融分野では3,503億円の受取超過となり、前年度比1,039億円の受取の増加となりました。この増加は、ソニー銀行における住宅ローンの増加額が縮小したこと等によるものです。

 

 投資活動によるキャッシュ・フロー:2024年度において投資活動に使用した現金及び現金同等物(純額)は、前年度比1,112億円増加し、9,301億円となりました。

 金融分野を除くソニー連結では、9,044億円の支払超過となり、前年度比1,102億円の支払の増加となりました。この増加は、主にビジネスの買収等による支出が前年度に比べて増加したことによるものです。

 金融分野ではほぼ前年度並みの269億円の支払超過となりました。

 

 財務活動によるキャッシュ・フロー:2024年度において財務活動に使用した現金及び現金同等物(純額)は、前年度比875億円増加し、2,982億円となりました。

 金融分野を除くソニー連結では、2,772億円の支払超過となり、前年度比799億円の支払の増加となりました。この増加は、主に長期借入債務による調達額が前年度に比べ減少したことによるものです。

 金融分野では209億円の支払超過となり、前年度比424億円の支払の減少となりました。この減少は、配当金の支払を行わなかったこと等によるものです。

 

 現金及び現金同等物:以上の結果、為替変動の影響を加味した2025年3月末の現金及び現金同等物期末残高は2兆9,810億円となりました。金融分野を除くソニー連結の2025年3月末における現金及び現金同等物期末残高は、2024年3月末に比べ7,714億円増加し、1兆7,647億円となりました。金融分野の2025年3月末における現金及び現金同等物残高は、2024年3月末に比べ3,025億円増加し、1兆2,163億円となりました。

 

金融分野を分離したキャッシュ・フロー情報

 以下の表は、金融分野の要約キャッシュ・フロー計算書、及び金融分野を除くソニー連結の要約キャッシュ・フロー計算書です。この要約キャッシュ・フロー計算書は、ソニーの連結財務諸表の作成に用いられたIFRSには準拠していませんが、金融分野はソニーのその他のセグメントとは性質が異なるため、ソニーはこのような比較表示が連結財務諸表の理解と分析に役立つものと考えています。なお、以下の金融分野と金融分野を除くソニー連結の金額には両者間の取引を含んでおり、これらの相殺消去を反映した後のものがソニー連結の金額です。

 

 

要約キャッシュ・フロー計算書

 

 

 

 

 

(単位:百万円)

項    目

金融分野

金融分野を除くソニー連結

ソニー連結

2023年度

2024年度

2023年度

2024年度

2023年度

2024年度

営業活動によるキャッシュ・フロー

 

 

 

 

 

 

税引前利益(損失)

173,576

130,528

1,145,135

1,343,173

1,268,662

1,473,726

営業活動から得た又は使用した(△)現金及び現金同等物(純額)への税引前利益(損失)の調整

 

 

 

 

 

 

減価償却費及び償却費(契約コストの償却を含む)

27,689

27,399

1,117,292

1,125,588

1,144,981

1,152,987

その他の営業損(益)(純額)

△19,271

1,981

△10,133

△11,222

△29,404

△9,241

有価証券に関する損(益)(純額)(金融分野以外)

-

-

△73,166

△75,742

△73,166

△75,742

資産及び負債の増減

 

 

 

 

 

 

営業債権及び契約資産の増加(△)・減少

△20,843

959

△200,071

226,098

△243,646

228,623

棚卸資産の増加(△)・減少

-

-

75,641

199,916

75,641

199,916

金融分野における投資及び貸付の増加(△)・減少

△1,748,913

△824,443

-

-

△1,748,913

△824,443

コンテンツ資産の増加(△)・減少

-

-

△486,183

△683,388

△486,183

△683,388

営業債務の増加・減少(△)

27,116

31,309

△40,882

107,601

9,188

136,952

保険契約負債(保険契約資産との純額)の増加・減少(△)

1,370,580

573,749

-

-

1,370,580

573,749

銀行ビジネスにおける顧客預金の増加・減少(△)

536,688

401,014

-

-

536,688

401,014

生命保険ビジネス及び銀行ビジネスにおける借入債務の増加・減少(△)

△41,516

66,783

-

-

△41,516

66,783

法人所得税以外の未払税金(純額)の増加・減少(△)

387

△1,304

△22,878

△14,157

△22,491

△15,461

その他

△59,081

△57,649

△326,927

△245,428

△387,208

△303,800

営業活動から得た又は使用した(△)現金及び現金同等物(純額)

246,412

350,326

1,177,828

1,972,439

1,373,213

2,321,675

投資活動によるキャッシュ・フロー

 

 

 

 

 

 

有形固定資産及びその他の無形資産の購入

△18,167

△26,542

△606,844

△622,187

△623,946

△647,527

投資及び貸付(金融分野以外)

-

-

△95,506

△98,536

△95,506

△98,536

投資の売却又は償還及び貸付の回収(金融分野以外)

-

-

92,679

46,540

92,679

46,540

その他

△7,560

△382

△184,553

△230,215

△192,113

△230,597

投資活動から得た又は使用した(△)現金及び現金同等物(純額)

△25,727

△26,924

△794,224

△904,398

△818,886

△930,120

財務活動によるキャッシュ・フロー

 

 

 

 

 

 

借入債務の増加・減少(△)

△11,633

△21,545

90,289

△48,827

78,656

△70,372

配当金の支払

△50,037

-

△98,620

△115,253

△98,620

△115,253

その他

△1,693

605

△188,977

△113,111

△190,745

△112,618

財務活動から得た又は使用した(△)現金及び現金同等物(純額)

△63,363

△20,940

△197,308

△277,191

△210,709

△298,243

現金及び現金同等物に対する為替相場変動の影響額

-

-

82,595

△19,469

82,595

△19,469

現金及び現金同等物の純増加・減少(△)額

157,322

302,462

268,891

771,381

426,213

1,073,843

現金及び現金同等物期首残高

756,493

913,815

724,407

993,298

1,480,900

1,907,113

現金及び現金同等物期末残高

913,815

1,216,277

993,298

1,764,679

1,907,113

2,980,956

 

 

(6)資本の財源及び資金の流動性についての分析

 以下の基本方針及び数値情報は、独自に流動性を確保している金融分野及び一部の子会社を除いたソニーの連結事業にもとづいて説明しています。なお、金融分野については当該項目において別途説明しています。

 

流動性マネジメントと資金の調達

 ソニーは、事業活動に必要な流動性を保ちながら健全な財政状態を維持することを財務の重要な目標と考えています。ソニーは、現金及び現金同等物(以下「現預金等」。ただし、国の規制等で資金の移動に制約があるものを除く)及びコミットメントラインの未使用額を合わせた金額を流動性として位置づけています。

 流動性の保持に必要な資金は、営業活動及び投資活動(資産売却を含む)によるキャッシュ・フロー及び現預金等でまかないますが、ソニーは必要に応じて社債、CP、銀行借入等の手段を通じて、金融・資本市場からの資金調達を行っています。

 当社、SGTS及び米国の子会社Sony Capital Corporation(以下「SCC」)は日本・米国・欧州の各市場へアクセス可能なCPプログラム枠を有しています。2024年度末時点で当社、SGTS及びSCCは、円換算で合計1兆2,468億円分のCPプログラム枠を保有しています。2024年度末における発行残高はありません。

 金融・資本市場が不安定な混乱状況に陥り、前述の手段により十分な資金調達ができなくなった場合に備え、ソニーは、多様な金融機関との契約によるコミットメントラインも保持しています。2024年度末の未使用のコミットメントラインの総額は円換算で7,607億円です。未使用のコミットメントラインの内訳は、日本の銀行団と結んでいる3,500億円の円貨コミットメントライン、日本の銀行団と結んでいる1,700百万米ドルの複数通貨建てコミットメントライン、外国の銀行団と結んでいる1,050百万米ドルの複数通貨建てコミットメントラインです。金融・資本市場の流動性がなくなった場合でも、ソニーは現預金等及びこれらのコミットメントラインを使用することによって十分な流動性を維持することができると現時点では考えています。

 ソニーは、流動性及び資本政策に対する財務の柔軟性を確保し、金融・資本市場を通じた十分な資金リソースへのアクセスを保持するため、安定した一定水準の信用格付けの維持を重要な経営目標の一つと位置づけています。ただし、グループ全体の主要な資金調達に関する金融機関との契約において、ソニーの信用格付けが低下した場合に、強制的に早期弁済を求められるものはありません。また、これら契約のうち一部のコミットメントライン契約については、ソニーの信用格付けにより借入コストが変動する条件が含まれているものがありますが、未使用のコミットメントラインからの借入を禁ずる条項を含んでいるものはありません。

 

キャッシュ・マネジメント

 ソニーは日本においては当社、米国においてはSCC、それ以外の地域においてはSGTSを中心にグローバルな資金管理を行っています。資本取引に規制があり資金移動を制限されている国や地域は一部存在しますが、大部分の子会社における資金の過不足は、当社、SGTS及びSCCにより純額ベースで運用又は調達をしています。ソニーは資金の効率化をめざし、各子会社に資金余剰が出た場合は当社、SGTS及びSCCに預け、また各子会社に資金不足が生じた場合には当社、SGTS及びSCCを通じて資金の貸し借りを行うことで、余剰資金を活用し、外部借入を削減することができます。関係会社間の効率的な資金移動が制限されている国や地域では、ソニーは当社、SGTS及びSCCの外に資金を残していますが、必要な流動性資金はキャッシュ・フローや外部からの借入(もしくはその両方)によって調達しています。ソニーは、海外に所在する移動を制限されている資金が、ソニー全体の流動性や財務状況ならびに業績に重大な影響を与えるとは考えていません。

 

金融分野

 SFGI、ソニー生命、ソニー損保及びソニー銀行の各マネジメントは、業務の遂行にともなう支払義務を履行するのに十分な流動性を確保することが重要だと認識しています。ソニー生命、ソニー損保及びソニー銀行は、法令(保険業法及び銀行法等)や金融庁及びその他関係規制当局の定める各種規制を遵守することに加え、それに準拠した社内規程を制定、運用しながら、十分な現預金等を準備し、支払能力を確保することに努めています。ソニー生命及びソニー損保は、受取保険料を主な資金の源泉とし、有価証券を中心とした投資を行うにあたり、保険金等の円滑な支払等に十分な水準の流動性を確保しています。ソニー銀行は、顧客からの円貨・外貨建て預金を主な資金の源泉とし、住宅ローンを中心とする貸出と主に市場性のある有価証券投資を行う中で、円滑な決済等に必要な水準の流動性を確保しています。外貨建て顧客預金で得られた資金は、主に同じ通貨建の金融商品に投資されています。

 なお、金融分野の子会社は、保険業務、銀行業務の公共性から、その信用を維持し、契約者や預金者の保護を確保することが保険業法、銀行法で定められています。したがって、金融分野の子会社と金融分野以外のソニーグループ会社間で資金の貸借を行うことは厳格に制限されており、金融分野の子会社は、上記の当社、SGTS及びSCCを介したグローバルなキャッシュ・マネジメントからも隔離されています。

 

 なお、ソニーグループが創出した営業活動によるキャッシュ・フローに関する、成長投資、手許資金及び株主還元への配分についての考え方に関しては「第2 事業の状況」「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等『第五次中期経営計画 経営数値目標及びキャピタルアロケーションとその進捗』」をご参照ください。

 

オフバランス取引

 ソニーは、流動性と資金調達手段の確保、及びクレジットリスクを軽減するためにオフバランス取引を行っています。これらの取引は、ソニーが営業債権に対する支配を放棄したことから、売却として会計処理されます。なお、一部の営業債権売却プログラムにはストラクチャード・エンティティが関与しています。「第5 経理の状況」連結財務諸表注記『28.ストラクチャード・エンティティ』をご参照ください。

 

借入債務、コミットメント及び偶発債務等

 2025年3月31日現在におけるソニーの借入債務、コミットメント及び偶発債務等は以下のとおりです。

 

 借入債務

 「第5 経理の状況」連結財務諸表注記『6.金融商品に関連するリスク管理 (4) 流動性リスク』及び『14.短期借入金及び長期借入債務』をご参照ください。

 

 ローン・コミットメント、パーチェス・コミットメント及び訴訟に関する偶発債務

 「第5 経理の状況」連結財務諸表注記『32.パーチェス・コミットメント、偶発債務及びその他』をご参照ください。

 

 保険契約負債

 「第5 経理の状況」連結財務諸表注記『13.金融分野における保険契約 (9) 保険及び市場リスク』をご参照ください。

 

5【重要な契約等】

 プレイステーション®4及びPS5ハードウェアを含むソニーのブルーレイディスク™プレーヤー機能付製品は、米国のVia Licensing Alliance LLCとのライセンス契約にもとづきライセンスを供与されている、ブルーレイディスク規格上特定されている技術に関する特許に大きく依存しています。

 

6【研究開発活動】

「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」ことをPurpose(存在意義)とするソニーでは、経営の方向性として「クリエイションシフト」、10年後のありたい姿を示す長期ビジョンとして「Creative Entertainment Vision」を掲げ、クリエイターに向けた技術やソリューションを提供しています。

 

ソニーの研究開発(R&D)の役割は、クリエイターを支え、その創造性を解放する技術を生み出すことです。クリエイターとはアーティスト、エンジニア、科学者等、感動にあふれるより良い未来を創ろうとする人と広く捉えたうえで、R&Dの方向性を「We are here for creators」と定めました。

 

この方向性のもとで、現事業の技術基盤に加え、新たな事業展開を可能とする技術基盤を構築することで、ソニーの将来のため、特に「センシング」「AI」「仮想空間」の3つの技術領域を中核とし、「クリエイティビティ」、「IP価値」、そして「ファンエンゲージメント」を最大化させる、クリエイションテクノロジー群の研究開発の推進を図ります。こうしたクリエイションテクノロジーの開発には、多様なコンテンツ領域と、言語等の文化的な多様性、あらゆるデモグラフィの人々の視点という3つの多様性を尊重することが重要で、開発を担う側も専門性や経験等、多様性を包摂していることが不可欠です。ソニーは、技術革新に必要な、優秀で多様な研究者の支援に社会課題としても取り組み、2024年3月に、地球や社会にポジティブなインパクトをもたらす研究を進めている、次世代の女性研究者3名を毎年表彰する「Sony Women in Technology Award with Nature」を世界有数の科学ジャーナル『Nature』と共同で立ち上げ、2025年2月に第1回の受賞者を発表しました。

 

ソニーは、テクノロジーを通じて、様々なクリエイターがクリエイティビティを発揮するための力を提供し続けます。

 

ソニーの研究開発組織は、国内外の複数の拠点と連携し、それぞれの地域の特徴や強みを活かした研究開発活動を行っています。現地の優秀な研究開発人材の獲得をめざすとともに、ソニーの中だけに閉じず、外部のクリエイターやアカデミアとの連携も強化していきます。すでに世界各地の大学との共同開発等の様々な活動を推進しており、今後さらに拡大させていきます。

 

 2024年度の研究開発費は、前年度に比べ82億円(1.1%)減少の7,346億円となりました。金融分野を除く連結ベースの売上高に対する比率は、前年度の6.6%から6.1%になりました。

 

 各分野における研究開発費の金額は以下のとおりです。

項目

2023年度

(億円)

2024年度

(億円)

増減率

(%)

G&NS

2,816

2,792

△0.9

ET&S

1,548

1,389

△10.3

I&SS

2,192

2,284

4.2

(注)当社の研究開発組織(コーポレートR&D)における研究開発費については、2024年度における当社のテクノロジー関連組織の再編にともない、金額的重要性が乏しくなったため、2024年度より独立掲記していません。

 

 2024年度の主な研究開発活動及び成果として、以下のものがあげられます。

 

(1)G&NS

・PlayStation®5 Pro

 2024年11月に発売したPlayStation 5 Proは、これまで以上に高精細なグラフィックを、より滑らかなフレームレートで実現する、PlayStation史上最も先進的かつ革新的なコンソールです。AIによって強化された超解像技術「PlayStation スペクトルスーパーレゾリューション(PSSR)」によって映像のディテールが大幅に向上し、極めて鮮明なビジュアルを実現します。また、従来からさらに進化したレイトレーシング機能を追加したことで、よりダイナミックな光の反射と屈折の表現が可能となりました。

 

・PlayStation Portal リモートプレーヤー向けクラウドストリーミング機能(ベータ版)

 2023年11月に発売したPlayStation Portal リモートプレーヤーは、PS5本体を遠隔で操作できるリモートプレイ専用デバイスです。発売後もアップデートによって機能を追加し、2024年11月にはクラウドストリーミング機能のベータ版をリリースしたことで、PlayStation Plusプレミアム会員はPS5本体を経由することなく、対応しているゲームタイトルをサーバーから直接ストリーミングしてプレイできるようになりました。

 

(2)ET&S

・空間コンテンツ制作支援を行うソフト・ハードが統合されたソリューション XYN

 手軽に高品質な3DCG制作を実現する新しいソリューションとしてXYN(ジン)を発表しました。XYNのソリューション群は 、映画、アニメ、ゲーム等の幅広いクリエイターの直感的かつ効率的な空間コンテンツ制作のニーズに対応します。XYN Motion Studioは、モバイルモーションキャプチャー mocopi™と組み合わせによる、キャプチャーからタイムライン編集やクラウド保管・活用機能を備えたモーション制作の統合アプリケーションです。アニメ制作やゲーム開発等に導入することで、モーションを使用したコンテンツ制作プロセスを効率化します。

 開発中のXYN空間キャプチャーソリューションは、ミラーレス一眼カメラで撮影した画像と独自アルゴリズムを使用し、高品質な3DCGアセットを生成します。映画やゲームの小道具、メタバースやバーチャルプロダクション向けの空間背景制作等の3DCG制作ワークフローを効率化します。

 また、空間コンテンツ制作のワークフローを効率化する高画質XRヘッドマウントディスプレイを開発中です。SPEの子会社であるSony Pictures Animation Inc.との実証実験を通じてエンタテインメント領域での利用が期待されています。

 

・大幅な小型軽量化を実現したVENICEエクステンションシステムMini「CBK-3621XS」

 デジタルシネマカメラの最上位ラインであるCineAltaラインアップとして、VENICEエクステンションシステムMiniを発表しました。この新しいシステムは、既存モデルに比べて約70%の小型化と、新開発の細くしなやかな脱着式ケーブルにより、手持ち撮影や小型ジンバルへの搭載、狭所設置の自由度を大幅に向上させています。

大幅な小型化を実現するために、VENICEエクステンションシステムMiniには8.6KフルサイズCMOSセンサーを内蔵し、ドロップイン方式のNDフィルターを採用しています。また、VENICE 2 6Kユーザーもこのシステムを使用することで8K撮影が可能となります。

 さらに、本システムとVENICE 2を複数台使用することで、レンズの中心間距離を人の瞳孔間距離とほぼ等しくした高品質で自然な立体映像に加え、VFX背景等の空間コンテンツ制作が可能です。

 

(3)I&SS

業界初※1 RAW画像※2とYUV画像※3を独立した2系統で処理・出力可能な車載カメラ用CMOSイメージセンサー「ISX038」

先進運転支援システム(ADAS)や自動運転システム(AD)の高度化や、ドライバーが運転体験に求めるニーズの増加にともない、車載カメラが担う役割はますます多様化している一方で、設置スペースが限られていることから、無制限にカメラの数を増やすことは困難です。

本製品は、独自開発のISP※4を搭載しており、ADASやADとして車外環境の検知・認識に必要なRAW画像と、ドライブレコーダーやARカメラ等車載インフォテインメント用に提供するYUV画像を、それぞれ個別の系統で処理し、出力することが可能です。
 1台のカメラで対応可能な用途を拡大することで、車載カメラシステムを簡素にすることができ、省スペース化や低コスト化、低消費電力化に貢献します。

※1: 車載カメラ用のCMOSイメージセンサーとして。SSS調べ(2024年10月4日広報発表時点)。
※2: コンピュータによる認識のための画像。
※3: 録画やモニター表示等ドライバーの視覚のための画像。
※4: Image Signal Processor:画像処理のための回路。

 

高速処理と多画素を両立する産業機器用グローバルシャッター方式CMOSイメージセンサー「IMX925」

工場の自動化が進展し、産業機器においても、様々な対象物をより高速かつ高画質で撮影できるマシンビジョンカメラへのニーズが高まっています。

本製品は、独自の画素構造によるグローバルシャッター技術「Pregius S™」を搭載し、小型でありながら、低ノイズで高画質な撮像が可能です。さらに、画素の読み出しやA/Dコンバーターにおけるセンサー駆動を効率化した新たな回路構造を採用することで、従来比約4倍の高速処理と2倍以上の電力効率を実現しています。時間あたりの撮影回数が増えることで、測定や検査工程の時間短縮や電力効率の向上に貢献することに加え、3次元検査等の複数の撮像データを活用したより高度な検査への応用も期待されます。

※: 当社の産業機器向けグローバルシャッター方式CMOSイメージセンサー「IMX530」との比較。