第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営方針

当社グループは「電子部品の製造とサービスを通じて世界のお客様に満足して頂ける仕事をいつも提供し続けることにより、豊かな社会の実現に貢献すること」を企業理念としております。

この理念のもと、可変抵抗器、固定抵抗器、センサー等の電子部品と、顧客のニーズに応えたカスタムユニットである前面操作ブロック[ICB]製品を開発、製造、販売してまいりました。ここで培った経験と蓄積された技術をベースに、「抵抗器のNOBLEから新生NOBLEへの深化と進化」を長期ビジョンに、Change(チェンジ:革新)、Challenge(チャレンジ:挑戦)、Communicate(コミュニケート:連携)の三つのCを行動指針として、これからの社会が求める新たな製品や技術に貢献できる部品やサービスを提供していく所存であります。

 

(2) 中長期的な経営戦略等

当社グループの置かれている市場環境は、顧客ニーズの高度化・多様化により、顧客からの要請への更なる対応が求められる一方で、EV車などの脱炭素化加速や5Gなどによる電子部品の需要増加が見込まれ、「顧客ニーズに合わせた製品ラインナップの拡大」「注力業界への対応力の強化」「時代のトレンドを先読みした製品開発」を目指し未来のNOBLEを見据えて、「抵抗器のNOBLEから新生NOBLEへの深化と進化」を長期ビジョンとして、2021年5月に中期5ヵ年計画を策定し、以下の項目を中長期的な基本戦略として取り組んでおります。

①既存領域の拡大

省エネ分野、EV分野へのセメント抵抗の拡販、医療・ヘルスケア分野の横展開によるセンサーの売り上げ拡大、ソフト(回路)の拡充による既存顧客への売り上げ拡大など、既存業界への製品の横展開を目指します。

②顧客ニーズを捉えた新製品展開

非接触スイッチ、非接触ポジションセンサー、チップ型固定抵抗など、顧客ニーズ・トレンドを捉えた新製品の開発を行います。

③新領域の確立(チャレンジ分野)

上記に加え、長期的なチャレンジ分野として、5Gに関連した通信・公共分野への参入など、トレンド分野への展開、防災、医療・ヘルスケア、介護分野への参入など社会課題解決への貢献を目指します。

 

(3) 目標とする経営指標

当社グループは、すべてのステークホルダーの視点に立った経営を進め、2021年5月に発表した中期経営計画の着実な実行による市場拡大、設備、インフラ、人材投資を含めた次期中期経営計画を見据えた投資計画による適正利益追求、適切な投資と株主への安定的な利益還元及び従業員への還元を重要課題として捉えております。今中期経営計画の最終年度である2025年度の数値目標につきましては、売上高180億円、営業利益17億円を目指しておりましたが、市場環境の変化等から2025年度の連結業績予想としましては、売上高170億円、営業利益15億円と修正いたします。

さらに、当社グループは温室効果ガス(GHG)排出量(Scope1及びScope2)及び再生可能エネルギー電力導入比率を管理指標として設定し、脱炭素社会の実現に向け、2030年度までにScope1及びScope2の排出量を2020年度比で50%以上削減、2050年度までにカーボンニュートラルを達成することを目標としております。加えて、再生可能エネルギー電力の導入を推進し、2030年度までにその比率を100%とすることを目指しております。

 

 

(4) 経営環境と対処すべき課題

当社グループは、2021年5月に策定した、未来のNOBLEを見据えて、「抵抗器のNOBLEから新生NOBLEへの深化と進化」を長期ビジョンとした中期5ヵ年計画の最終年度にあたる2025年度は、次期中期経営計画も念頭に、自動車電装、医療・ヘルスケア及び産業機器分野への拡販を推し進めて既存領域の拡大を図り、また、非接触センサーを含めた各種センサー類の開発等により、顧客ニーズを捉えた新製品の展開を行ってまいります。

また、次期中期経営計画以降の課題となる新領域の確立の取組を進めており、医療・ヘルスケア分野の拡大には当社の要素技術の要であるエレメント技術の向上が必須であり、インクや印刷工法の研究及び表面処理技術の高精度化が求められております。その目的の達成の為、2027年度の完成を目標とした研究開発機能と本社機能を複合したサステナビリティを体現する本社ビルへの建替えを計画しております。それを達成することにより、すでに量産化されている筋電・心電や脳波測定に用いる電極の更なる革新が見込まれます。また、今後の医療・ヘルスケア市場向けにおいては、その場で簡単に利用できるPOCT(Point of Care Testing)用バイオセンサーが望まれていることから、近々量産化を計画しているナトリウムカリウム測定に加え、将来的に様々な物質の測定に使用が見込まれる電気化学センサーの技術確立をすることを今後の柱の1つとしていきたいと考えており、大学などとの共同研究を積極的に行っております。また、エレメント技術の向上を足がかりとして、インフラビジネス・ウォータ―ビジネス・アグリビジネス等へ進出することを目指しております。

加えて、電気自動車やその周辺機器向け及び、静電容量方式のセンサー等自動車向け製品の開発を加速すると共に各種センサーの拡販を進めております。

環境に配慮した素材の選定や、開発技術力向上ならびに製造設備の省人化・無人化などによる生産性向上と原価低減を継続的に行い競争力強化を図るとともに、DX化(IoT)を組み込んだ生産ラインの導入も進めており、またBCPを念頭に生産の最適化についても進めております。

インフラ投資に関しましては、新たな研究開発棟により開発された製品の量産については、BCPや既存領域製品の増産対応も念頭に、倉庫スペースも含め既存の工場に新たなる工場建設や、高度な精度・性能が求められる製品製造が可能な新工場建設も検討してまいります。

さらに、当社グループは温室効果ガス(GHG)排出量(Scope1及びScope2)及び再生可能エネルギー電力導入比率を管理指標として設定し、脱炭素社会の実現に向け、2030年度までにScope1及びScope2の排出量を2020年度比で50%以上削減、2050年度までにカーボンニュートラルを達成することを目標としております。加えて、再生可能エネルギー電力の導入を推進し、2030年度までにその比率を100%とすることを目指しております。

なお、当社子会社の役職員が公務員より不適切な金銭の要求を受け、交付を行っていたこと(「本件不正行為」)が判明いたしました。株主、投資家の皆さまおよび関係者の皆さまには多大なご迷惑をおかけしますことを深くお詫び申し上げます。当社は、本件不正行為の発生を重大かつ厳粛に受け止め、真摯に反省するとともに、法令遵守体制及び経営管理体制等の充実・強化に取り組んでおり、ステークホルダーの皆さまおよび社会からの信頼回復を目指し、策定した再発防止策を着実に実行してまいります。

今後の経済見通しにつきましては、世界的には景気回復傾向にある中で、米国の通商政策の大幅な変更が、世界全体の景気に大きな影響を及ぼす懸念や、中国経済の景気回復の遅れや地政学リスクの解消が進まないなど、先行きは極めて不透明な状況が続くものと予想されます。日本においても、賃金上昇等により個人消費の回復が期待されますが、一方で賃金上昇以上の物価上昇の懸念もあり、先行きの見通しが困難な状況にあります。

当社グループの属するエレクトロニクス業界においては、自動車市場では電気自動車の販売が失速しておりますが全体としては堅調に推移しており、生活家電市場においても在庫調整が一巡し好調に推移した一方、産業機器市場では半導体関連は需要が増えておりますが、FA機器関連や設備投資関連は在庫調整が継続し回復が遅れており、加えて米国における各国や地域への高い相互関税がサプライチェーンに与える影響を予想することが困難な状況にあり、今後の受注動向に関し、依然として予断を許さない状況が続いています。利益面においても、為替が大きく変動しており、またエネルギー価格や原材料価格の上昇の継続などの懸念材料があります。

その結果、2025年度の連結業績予想につきましては、売上高170億円、営業利益15億円を目指します。

前提となる為替レートはUS$1=¥140を想定しております。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次の通りであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) サステナビリティ全般に関する開示 

当社グループは、サステナビリティ方針として下記を定めております。

 

■基本的な考え方■

当社グループは、社会的責任を果たし、事業の持続可能な成長を目指すために従来の「CSR基本方針」を「サステナビリティ方針」へと昇華させ、地球環境に対する負荷の最小化、持続可能な社会の実現に向けて取り組んでまいります。

 

■基本方針■

1.帝通グループは企業理念に基づいて豊かな社会の実現に貢献し、持続可能な社会実現の一翼を担います。

2.帝通グループは人権を尊重し、性別、年齢、国籍、人種、民族、信条、宗教、社会的身分、障害等に基づく差別を行いません。

3.帝通グループは職場の衛生と安全の問題を解決することに努めるとともに従業員の教育を実施していきます。

4.帝通グループは環境保全の重要性を認識し、“Human Oriented Technology”―人と地球にやさしい技術・人間性を指向した技術―の観点から、地球にやさしい製品作りを目指し、お客様にご満足していただける企業活動と環境の保全との調和に努めます。

5.帝通グループは健全な企業活動を継続していくために法の遵守はもとより企業を構成する従業員一人ひとりの倫理観の醸成、管理体制の整備に努めます。

6.帝通グループは業務上保有する情報を重要な資産と位置づけ、改ざん、破壊、漏えい等から保護、管理するための様々な施策を講じます。

7.帝通グループは国際社会・地域社会の発展に貢献できる活動を自主的に行うよう努めます。

 

 

(2) ガバナンス

当社グループは、サステナビリティに関わる基本方針、重要事項、リスク・機会などを検討・審議する組織として、サステナビリティ担当役員を任命し、サステナビリティ担当役員を委員長とするサステナビリティ委員会を設置し、当該委員会に対して取締役会が監督・指示を行います。また、サステナビリティ委員会の傘下にBCP部会はじめ専門分野ごとの部会を設け、サステナビリティを巡る経営課題に対してサステナビリティ委員会より指示・諮問し、各部会において対策を検討、報告させ、サステナビリティ委員会とし対応を図っております。また、各部会の具体的な活動状況や活動計画についてはサステナビリティ委員会より直接、取締役会に報告しております。

 

■サステナビリティ推進体制■

 


 

(3) 戦略

①気候変動に関する方針、戦略

当社グループは、気候変動の影響を踏まえて事業戦略と組織のレジリエンスを検討するため、TCFD提言に基づきシナリオ分析を実施しました。低炭素経済への移行が進む1.5℃シナリオと、GHG排出削減が十分に進まず気温上昇が加速する4℃シナリオを想定し、それぞれのシナリオにおける事業環境の変化を分析の上で、気候変動リスク・機会を特定・評価し、対応策の検討をしております。

1.5℃シナリオにおける主なリスクとして脱炭素化への対応遅れによる顧客流出を特定した一方、4℃シナリオにおける主なリスクとして海水面上昇に伴う事業拠点水没に備えた移転費用の発生を特定しました。

また、主な機会として工場の生産設備に高効率機器を導入することによるエネルギー関連費用の減少、及び、消費電力が少なく長寿命のセンサーを開発することにより、環境負荷低減とエネルギー効率の良い製品提供を実現可能であることを特定しております。

当社グループの事業に特に大きな財務影響を及ぼす気候変動リスク及び機会、並びにそれに対する対応施策については、以下の一覧表に示します。

 

 

■気候変動リスク・機会■

シナリオ分析における設定

・時間軸 短期:~4年、中期:4~8年未満、長期:8~28年

・影響度  大:会社全体に与える影響が大きい

      中:会社全体に与える影響が相応にあり

      小:会社全体に与える影響が軽微

・使用シナリオ:1.5℃シナリオ IEA WEO2023 Net Zero Emissions by 2050 等を使用

        4℃シナリオ IPCC AR6 SSP5-8.5シナリオ 等を使用

 

リスク

ドライバー

気候変動がもたらす影響

時間軸

影響度

( )内は

想定影響額

対応策

移行

リスク

法規制・政策

GHG排出価格の上昇

炭素税が導入された場合、調達先の製造プロセスにおけるCO2排出量に応じてコストが増加し、価格転嫁にともなう原材料、副資材調達コストが増加する。

中期

・取引先選定要件の見直しをする。

・サプライヤーに対し排出量低減に向けた取り組みへの協力要請をする。

炭素税が導入された場合、国内のScope1・2の排出量に応じた炭素税の支払コストが増加する。

中期

・本社、生産拠点等への設備投資及び再生可能エネルギー導入を実施する。(対応中)

技術

原材料コストの上昇

ライフサイクルCO2排出量の削減に向け生産時のCO2排出量削減目標の達成に向け、再生資源、再生材料(外部からの購入部材)へ切り替えることで、調達コストが増加する。

長期

・廃材の再生利用を拡大する。(対応中)

・材料の一括購入をすることでコストを抑える。

低排出技術に移行するためのコスト

脱炭素社会への移行に向け、Scope2削減に寄与する環境価値購入コスト(例、非化石証書を使った電力プランへの切替)が増加する。

中期

・電気使用量抑制や設備投資等での本社・赤穂工場の再エネ比率100%達成をする。(対応中)

・他国内事業所の再エネへの切替を実施する。(対応中)

市場

顧客行動の変化

顧客が炭素排出の少ない商品やサービスを求めるようになり、化石燃料を使用した自動車、住宅設備や家電製品が敬遠される可能性があり、関連する部品の売上が減少する。

中期~長期

(647百万円)

・自社製品や部品の炭素排出削減を目指して、低炭素技術の開発や導入を進める。特に、電気自動車(EV)向け部品やエネルギー効率の高い家電用部品など、環境負荷の少ない製品の開発に注力する。(対応中)

・顧客に対して自社製品の環境への配慮や持続可能性を積極的に伝える。

市場シグナルの不確実性

脱炭素化への対応遅れにより、気候変動対応が進んだ競合企業に顧客を奪われ、売上が減少する。

中期

(2,873百万円)

・自社の脱炭素化戦略を早期に策定し、実行に移すことで競合との差を縮める。これにより、顧客の期待に応えるとともに、企業の信頼性と競争力を強化する。(対応中)

・環境意識の高い顧客層に向けて、サステナブルな環境配慮製品を積極的に開発・提供する。これにより、脱炭素化対応が遅れている競合企業との差別化を図り、顧客のロイヤルティを高める。

評判

消費者の嗜好の変化

他社製品と比較してエネルギー効率が劣っている、製造時のGHG排出量が高い場合、顧客からの信頼低下や競争優位性の喪失につながり、売上が減少する。

 

短期~中期

・サプライチェーンの透明性向上として、材料調達や製造プロセスにおける環境負荷を公表する。(対応中)

・環境基準の順守とPRの観点で、自社製品の環境配慮ポイントを明確にし、積極的にアピールする。

・カーボンフットプリント削減製造プロセスの効率化や再生可能エネルギーを活用してカーボンフットプリントを削減する。(対応中)

物理

リスク

慢性

上昇する平均気温

平均気温の上昇により暖房器需要に変化が見られ、 弊社製品の出荷にも一定の影響が及ぶ。

長期

・販売予測精度や生産性向上による利益率の改善をする。(対応中)

・未参入メーカーなどへの新規拡販を実施する。(対応中)

平均気温の上昇により、耐熱性製品の性能が損なわれることで売上が減少する。

中期~長期

(42百万円)

・耐熱性の商品性能を再確認する。(対応中)

・耐熱性を強化する。

 

 

 

機会

ドライバー

気候変動がもたらす影響

時間軸

影響度

( )内は

想定影響額

対応策

機会

資源効率

リサイクルの利用

自社内再生混入材活用によるバージン材(非再生材)の購入量削減に伴い、調達コストが低減する。

中期

・再生材利用対象部品を拡大させる。(対応中)

より効率的な生産及び流通プロセスの使用

流通経路を短縮する物流戦略や、輸送効率を高めることで温室効果ガス(GHG)排出量を削減し、コストと環境負荷の両方を低減する。

 

短期~中期

(8.4百万円)

・地産地消の考え方を取り入れた部品調達や輸送プロセスの効率化により、コスト削減と環境負荷低減を両立する。(対応中)

高効率ビルへの移転

高効率な断熱構造や最新の省エネシステムを備えたビルに移転することで、エネルギー使用量を減らし、コストを削減する。

短期~中期

(26百万円)

・エネルギー効率や環境認証の有無を基準に、移転先候補を選定する。断熱性能や省エネ設備などを重視して選択する。(対応中)

・高効率ビルの設備を最大限に活用するために、エネルギー使用量を常時監視し、削減可能な部分を分析・改善する。

・新しいビルでのエネルギー効率を高めるため、従業員に対してエネルギー削減の取り組みを共有し、協力を促す。

エネルギー源

より低排出のエネルギー源の使用

再生可能エネルギー(主に太陽光)の導入によりエネルギーコストを削減し、製造工程全体の効率性を向上させる。

短期~中期

(3百万円)

・製造拠点での太陽光発電設備を設置し、自社内でのエネルギーの持続可能性を確保する。(対応中)

・再生可能エネルギー電力を提供する企業からの調達契約(PPA)を締結し、脱炭素化を進める。

製品及びサービス

低排出商品及びサービスの開発及び/または拡張

消費電力が少なく、長寿命のセンサーを開発することで、環境負荷を低減させると同時に、顧客に対してエネルギー効率の良い製品を提供する。

短期~中期

・センサーの設計段階でエネルギー消費を最小限に抑える技術を採用し、顧客に対して省エネ効果をアピールする。

・センサーのエネルギー効率に関する研究開発を強化し、持続可能な技術を活用した製品を市場に提供する。(対応中)

消費者の嗜好の変化

消費者が環境への配慮を強化する中で、エネルギー効率の良い(省エネディスプレイ、省エネエアコン)、環境負荷を低減する製品(非化石エネルギー製品)への部品提供機会が高まる。

短期~中期

・顧客の製品ラインナップを把握し、省エネ製品、低炭素製品への十分な部品供給力を確保する。

市場

新しい市場へのアクセス

水害や土砂災害等への防災リスク回避に資する製品需要が増加する。

中期~長期

・気候変動リスクを予測するためのセンサー技術を強化し、異常気象を監視するセンサーを開発する。

 

 

②人的投資及び社内環境整備に関する方針、戦略

当社グループにおける、人材の多様性の確保などを含む人的投資に関する方針及び社内環境整備に関する方針を下記の通り定めております。

 

■人的投資と社内環境整備に関する方針■

当社グループは、豊かな社会の実現という企業理念を礎に長期ビジョンとして「抵抗器のNOBLEから新生NOBLEへの深化と進化」を掲げており、それを達成する源泉は人材であると位置づけています。人権を尊重し、人種・国籍・性別・信仰・信条・心身障がい等を理由とする差別やセクシャルハラスメント、パワーハラスメント等の嫌がらせのない健全な職場環境を確保し、多様な人材が十分にその能力を発揮できる職場環境整備に努め、グローバルフィールドで活躍できる人材の育成に積極的に取り組んでいきます。

1.経営戦略と人材戦略の連動

人的投資は経営戦略と一体で進め、企業の成長段階や事業構造に応じた人材戦略を策定・実行します

2.目指すべき人材像

グループ全体の行動指針として掲げる3つのC(Change・Challenge・Communicate)を主軸に置き、下記の人材を目指すべき人材像としています。

Change   「時代の変化を柔軟に捉え、未来に向かって革新できる人材」

Challenge  「自主・自立・自発の精神を持って挑戦し、現状に満足することなく前進していく人材」

Communicate 「世界中のステークホルダーと信頼関係を築ける質の高いコミュニケーション能力を有した人材」

 

3.環境整備

(A) 多様な人材の採用と公正な機会の確保

女性、障がい者、外国人、キャリア採用など多様な人材の採用、及び性別・年齢・国籍などに関係なく、多様な人材が活躍できる環境づくりに取り組み、公正な評価と処遇を実施します。

(B)安全で働きやすい職場環境

労働安全衛生や労働条件に関する法令等を遵守し、安全で適正な労働条件のもと働きがいのある、働きやすい職場の実現を目指して取り組んでいきます。

(C)多様な働き方の実現

従業員の多様な生き方を尊重し、在宅勤務制度や時差出勤制度等(セレクトタイム制度)による多様な働き方を推進していきます。

(D)教育研修の提供

従業員が自身の知識や能力を磨いて、成長へとつなげられるよう公平かつ平等な教育研修の機会を提供していきます。

多様な人材が十分にその能力を発揮できる職場環境整備に向けては、従業員サーベイを実施し、把握された課題解決に向けた取組を展開しております。さらに、公平かつ平等な教育研修の機会を提供するためEラーニングを利用したベース研修を展開するとともに階層別教育の充実や次世代を担う幹部候補者を対象とした教育カリキュラムを実施し、人材育成に向け更なる拡充・拡大を目指しております。

(E)エンゲージメントの向上と働きがいの創出

従業員との対話を重視し、働きがいや目的意識を持って業務に取り組める職場づくりを推進していきます。

(F)施策効果の可視化と改善

人的投資と社内環境整備に関する施策の実施状況をモニタリングし、定量・定性の両面から分析を行うことにより効果を可視化し、課題が見つかれば改善していきます。

 

 

(4) リスク管理

当社グループの経営上のリスクを総合的に分析、把握して対策を講じる全社的なリスク管理は内部統制委員会において行っておりますが、気候関連リスクを含むサステナビリティに係るリスク全般の分析・対策の立案と推進についてサステナビリティ委員会の中でより詳細な検討を行い、連携・共有することで全社的なリスクマネジメント活動を推進しております。また、非常時にはそのリスク度合に応じて、担当取締役をセンター長とする「危機管理センター」の設置による対応や、取締役会決議に基づく独立性、中立性、専門性が確保された調査委員会の設置と、当該委員会報告に基づく対策立案、推進により、ノーブルグループ全体で対応する体制をとっております。

サステナビリティ全般に関するリスク管理は、当社の「サステナビリティ方針」に基づき、当社グループ全体のサステナビリティ関連リスクを分析、把握し、リスクの低減と未然防止にむけ、当該リスクに関する主管部門における課題対応の実施状況等をモニタリングする体制としています。詳細につきましては「3 事業等のリスク」をご参照ください。

 

■リスク管理体制■

 


 

(5) 指標及び目標

①気候変動に関する指標及び目標

当社グループでは、気候関連課題が経営に与えるリスクと機会を評価するため、温室効果ガス(GHG)排出量(Scope1及びScope2)及び再生可能エネルギー電力導入比率を管理指標として設定しています。GHG排出量はGHGプロトコルに基づき、2020年度以降、当社及び連結対象グループ企業(海外を含む)を対象に算定を実施しています。また、2022年度より本社及び赤穂工場において再生可能エネルギー電力の導入を開始しました。

当社グループは、脱炭素社会の実現に向け、2030年度までにScope1及びScope2の排出量を2020年度比で50%以上削減し、2050年度までにカーボンニュートラルを達成することを目標としています。加えて、再生可能エネルギー電力の導入を推進し、2030年度までにその比率を100%とすることを目指しています。2024年度の時点では、国内4拠点(須坂、福井、飯田、木曽)において、電力の30%を再生可能エネルギー由来に転換しています。

 

 

■当社グループにおける気候変動管理指数と目標■

 

 

実績

目標

2020年度

2021年度

2022年度

2023年度

2030年度

温室効果ガス

排出量[t-CO2]

Scope1

国内

667

705

781

745

 

Scope1+2

50%以上削減

(2020年比)

海外

188

155

132

116

小計

855

860

913

862

Scope2

国内

4,893

5,202

4,123

4,407

海外

3,159

3,460

2,979

2,965

小計

8,052

8,661

7,102

7,372

Scope1+2

合計

8,907

9,521

8,015

8,234

再生可能エネルギー電力導入比率

15%

16%

100%導入

 

(注) 1  温室効果ガス排出量の算定対象は、財務支配力アプローチに基づき、帝国通信工業株式会社及び連結対象グループ企業としています。

2 Scope1は燃料の使用に伴うエネルギー起源CO2を省エネ法・温対法で定められた単位発熱量と排出係数を用いて算定しています。

3 Scope2はマーケット基準に準じて、国内拠点は電力会社との契約に基づく排出係数を海外拠点は日本の電力会社の排出係数を使用して算定しています。

 

■温室効果ガス排出量(Scope1,2)の推移と削減目標■

 


 

②人材の育成及び社内環境整備に関する方針に関する指標の内容並びに当該指標を用いた目標及び実績、指標及び目標

当社グループでは、上記「(3) 戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む「人材育成に関する方針」及び「社内環境整備に関する方針」について、次の指標を用いております。

指標

目標

実績

女性の積極採用

新卒採用時の女性採用比率 30(継続)

2025年4月 54

 

(注) 1  単年度では、目標を達成しておりますが、当社の母集団形成における女性比率はまだ低いことから、当年度の目標も継続目標として、前事業年度と同様の目標としております。

2  上記の目標値は、国内における主要な採用手段である新卒採用に焦点を当てていることから、国内のみを対象とし、新卒採用枠の慣習が無い海外の連結子会社は除外しております。

 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 市場動向に関するリスク

当社グループは電子部品の製造販売を主たる事業としております。また、売上比率の高いデジタル家電や自動車市場の顧客はグローバルに展開するセットメーカーであります。世界各地の経済状況や市場の変化が直接的・間接的に当社グループの業績に影響を与えることがあります。

(2) 製品の欠陥等に関するリスク 

当社グループは顧客に満足していただける品質の製品やサービスを提供することを企業理念としておりますが、製品の欠陥により顧客に多大な損害を与える場合があります。この場合、顧客から損害賠償を請求される可能性もあります。

(3) 人材確保と育成に関するリスク

当社グループの継続的な成長は、優秀な人材の確保と育成に大きく依存しております。労働力人口の変化や雇用環境の多様化が進む中で、人材の流出防止や新たな人材の獲得が出来ない場合は、当社グループの成長や業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 特定製品に依存するリスク

当社グループの主要な製品には顧客の個別要求に応えて開発したカスタム製品があります。従って、顧客の設計開発状況や生産計画状況の変化により当社グループの生産・出荷が影響を受け、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(5) 競合に関するリスク

当社グループは常に国内外の同業他社と競合しております。優位に立ち続ける努力は継続しておりますが、他社に先行され優位に立たれた場合、当社グループの業績に影響を与えることもあります。

(6) 為替レートの変動リスク

当社グループの生産及び販売は日本の他、中国・アセアン諸国・北米を中心に各国で行われております。これらの海外事業所における財務諸表は現地通貨建あるいはUSドル建で作成されており、当社の連結財務諸表作成時に円換算されております。従ってこれらの通貨の日本円に対する為替の変動の影響を受けます。

また日本を含む各事業所の海外取引において日本円の他にUSドル等が使用されているため、それぞれの通貨の為替の変動の影響を受けることで当社グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

(7) 情報セキュリティに関するリスク

当社グループは、事業活動において取得する財務情報、機密情報、個人情報等を、電子情報等の形式で蓄積・利用しております。これらの情報の管理に関して、ハード・ソフト両面の必要なセキュリティ対策を講じるとともに、基幹システムに仮想環境やクラウドを利用し、システム停止しないよう対策を図っております。しかしながら、コンピューターウィルスによる第三者からの攻撃、不正アクセス等によって、システムの障害が発生した場合、当社グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。また、機密情報が漏えいした場合は、信用失墜のみならず損害賠償を請求される可能性があります。

(8) 偶発的リスク

当社グループが事業展開する日本及び海外においていくつかのリスクが潜在しております。

① テロ、戦争、暴動、感染症等による社会的混乱

② 政治的、経済的状況の予期せぬ変化

③ 電力、水道等ライフラインの予期せぬ断絶

④ 自然災害や火災

当社グループは、一部の自然災害などの偶発的なリスクによって通常の業務運営が困難となった場合に備え、事業活動の低下を最小限にとどめるため、BCP(事業継続計画)計画の策定を進め、事業を継続するための対応を定めております。

しかしながら、上記の偶発的リスクにより、BCP(事業継続計画)の想定を超える事象が発生して、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(9) 気候変動に関するリスク

当社グループは気候変動問題について、経営に及ぼす影響を評価・管理するため、温室効果ガス(GHG)排出量(Scope1及びScope2)及び再生可能エネルギー電力導入比率を管理指標として設定し、脱炭素社会の実現に向け、2030年度までにScope1及びScope2の排出量を2020年度比で50%以上削減、2050年度までにカーボンニュートラルを達成することを目標としています。加えて、再生可能エネルギー電力の導入を推進し、2030年度までにその比率を100%とすることを目指して取り組んでおります。その過程で法的規制に対処するコスト増加や生産設備等への投資の増加、また原材料コストの上昇や環境価値購入コストの増加、顧客行動の変化による売上の減少、気候変動対応の遅れによる顧客からの信頼低下・競争優位の喪失による取引縮小、平均気温上昇に伴う製品の需要や性能への影響などにより当社グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

(10) 知的財産権に関するリスク

当社グループの製品は、顧客ニーズに応える製品を提供するための新技術開発を行い、特許権、実用新案権、意匠権など知的財産権を取得しています。しかし、第三者が同様の技術の使用、製品化を行うと当社の販売機会を失うリスクがあります。また、他社の取得済み特許権類を十分確認し、新製品開発をしておりますが、当社が上市した時、第三者から知的財産権を侵害しているとして提訴されることで、当社グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

(11) 原材料・部品の調達に関するリスク

当社グループの製品にはプラスチック等石油関連材料、金属材料、半導体部品等を使用しております。そのため、各国の輸出入規制や、紛争、自然災害、火災など、不測の事態による各メーカーの製造停止等で、原材料や部品が入手困難となり、生産停止による顧客への供給停止、及び原材料価格、人件費、エネルギー価格、物流費等の上昇等による原材料や部品の価格上昇などにより当社グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

(12) 新技術・製品開発に関するリスク

当社グループの所属する電子部品業界は、技術革新のスピードが速く、顧客要求の高度化、多様化を求められており、技術的競争力や優位性をあげ続ける必要があります。当社グループは既存領域の拡大に向けた技術検討、新領域の確立を目指した新分野への参入を基本戦略の1つとしており、その対応に於いて設備投資、人材投資、法的規制など十分評価して進めておりますが、市場環境や技術の変化に対応して製品等の供給ができないことで財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

(13) 法務・コンプライアンス等のリスク

当社グループは、グローバルにビジネスを展開しており、様々な分野における広範な国内外の法律及び規制に服しております。そのため、コンプライアンス委員会を中心に、グループ全体のコンプライアンス体制を強化し、法令遵守の徹底等コンプライアンス意識の向上を図るとともに、必要に応じ社内外の専門家への相談・活用等により、リスクを未然に防止するよう努めています。しかし、関連する規制への抵触、役員・従業員による不正行為が完全に回避できない可能性があります。これに伴い、予期せぬ事象が生じた場合は、損害賠償の請求、訴訟の提起、関連法令・規制等による罰則・課徴金の適用、生産・製品の販売等の遅延や停止などにより、当社グループの事業活動に支障が出ることによる業績や財務状況への影響や社会的信用の失墜等の可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(経営成績等の状況の概要)

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

(1) 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度の世界経済は、米国経済はインフレ率が低下する中、個人消費が底堅く推移しましたが、2025年1月の政権交代による通商政策の大幅な変更が、世界全体の景気に大きな影響を及ぼす懸念があります。また、中国経済は長引く不動産不況や厳しい雇用環境により景気の減速が続いており、加えて米国における各国や地域への高い相互関税がサプライチェーンや世界経済に影響を与える懸念が出てきました。さらに、ウクライナ紛争など地政学リスクの解消が進まないなど、先行きは極めて不透明な状況が続きました。

我が国の経済は、インバウンド需要や賃金上昇等により個人消費が回復しましたが、一方で賃金上昇以上の物価上昇が懸念されており、米国の関税問題や政権動向による円安から円高に為替が変動し、先行きの見通しが困難な状況にあります。

当社グループの属するエレクトロニクス業界では、自動車市場では電気自動車の販売が失速しておりますが、全体としては堅調に推移し、生活家電市場においても在庫調整が一巡し好調に推移した一方、産業機器市場では半導体関連は需要が増えましたが、FA機器関連や設備投資関連は在庫調整が継続している事から回復が遅れております。加えて米国における中国への高い相互関税がサプライチェーンに与える影響を予想することが困難な状況にあり、今後の受注動向に関し、依然として予断を許さない状況が続いています。

このような状況の中で当社グループは、2021年5月に策定した中期5ヵ年計画の第3ステップにあたる2024年度は、その目標達成に向けて、センサー・医療・非接触を合言葉に、医療・ヘルスケア分野及び産業機器分野への拡販を推し進め、既存領域の拡大を図り、また、非接触センサー開発等により、顧客ニーズを捉えた新製品の展開を行ってまいりました。

また、次期中期経営計画以降の課題となる新領域の確立の取組を進めており、医療・ヘルスケア分野の拡大には当社の要素技術の要であるエレメント技術の向上が必須であり、さまざまな技術の高精度化が求められております。その目的の達成の為、2027年度の完成を目標とした研究開発機能と本社機能を複合したサステナビリティを体現する本社ビルへの建替えを計画しております。

販売面においては、電子部品セグメントは全体的に好調に推移しましたが、その他のセグメントにおいては、産業機器市場の低迷が継続していることから、機械設備等の販売は低調となりました。利益面においては、円安の影響や原価低減を進めた結果、当連結会計年度の売上高は167億90百万円(前年同期比10.3%増)となりました。営業利益は16億63百万円(前年同期比75.5%増)、経常利益は21億27百万円(前年同期比36.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は20億9百万円(前年同期比47.5%増)となりました。

 

セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。

電子部品事業においては、すべての市場向けで好調に推移し、特にAV市場向けはミラーレス一眼レフカメラ向けを中心に好調に推移しました。また、自動車電装市場向けやアミューズメント市場向けも堅調に推移したことに加え、産業機器市場向けも下期以降上向きになっており、医療・ヘルスケア市場向けも好調でした。この結果、電子部品の売上高は161億88百万円(前年同期比10.5%増)となり、営業利益は15億43百万円(前年同期比75.0%増)となりました。

その他の事業においては、環境対応緩衝材は、医療機器市場向けや半導体関連市場向けに加え果実や根野菜向け緩衝材の拡販を進め、順調に推移しております。また、産業機器市場の低迷が継続していることから機械設備等の販売は低調となりました。この結果、その他の事業の売上高は6億1百万円(前年同期比5.4%増)、営業利益は1億13百万円(前年同期比22.8%増)となりました。

 

財政状態の状況は次のとおりであります。

当連結会計年度末の財政状態につきましては、総資産が前連結会計年度末に比べ13億74百万円増加し、334億60百万円となりました。その内訳は、流動資産が17億8百万円増加し212億49百万円、固定資産が3億33百万円減少し122億10百万円となっております。

負債は前連結会計年度末に比べ3億75百万円増加し、50億51百万円となりました。その内訳は、流動負債が5億45百万円増加し28億3百万円、固定負債は1億69百万円減少し22億47百万円となっております。

これらの結果、純資産は前連結会計年度末に比べ9億98百万円増加し284億9百万円となり、自己資本比率は前連結会計年度末の83.5%から83.0%となりました。

 

(2) キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、次のとおりとなりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によって得られたキャッシュ・フローは、18億14百万円(前年同期は29億23百万円)となりました。これは、税金等調整前当期純利益23億92百万円(前年同期は18億50百万円)、減価償却費7億96百万円(前年同期は7億86百万円)、売上債権が3億18百万円増加(前年同期は9億21百万円の減少)、棚卸資産が1億80百万円増加(前年同期は5億60百万円の減少)したことなどによります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果獲得した資金は2億28百万円(前年同期は87百万円の使用)となりました。これは、有形固定資産の取得に8億66百万円(前年同期は5億52百万円)、投資有価証券の売却により5億82百万円獲得(前年同期は2億60百万円の獲得)したことなどによります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果使用した資金は12億80百万円(前年同期は12億72百万円の使用)となりました。これは配当金の支払い8億17百万円(前年同期は6億38百万円)、自己株式の取得により5億48百万円支出(前年同期は5億2百万円の支出)、自己株式の処分により2億49百万円獲得したことなどによります。

この結果、当連結会計年度の現金及び現金同等物の残高は、11億21百万円増加(前年同期は18億30百万円の増加)し、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は110億64百万円(前年同期は99億42百万円)となりました。

 

(3) 生産、受注及び販売の状況

 ①生産実績

当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

生産高(千円)

前年同期比(%)

電子部品

16,568,377

115.1

その他

600,789

109.1

合計

17,169,167

114.9

 

(注) 1 セグメント間の取引については相殺消去しております。

2 金額は販売価格によっております。

 

 ②受注実績

当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前年同期比(%)

電子部品

16,255,824

113.4

2,537,933

102.7

その他

594,404

129.5

60,859

90.1

合計

16,850,229

113.9

2,598,793

102.4

 

(注) セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

 ③販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(千円)

前年同期比(%)

電子部品

16,188,983

110.5

その他

601,056

105.4

合計

16,790,040

110.3

 

(注) 1 セグメント間の取引については相殺消去しております。

2 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、総販売実績に対する割合が10%以上を占める相手先がいないため記載を省略しております。

 

 

(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

(1) 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

当連結会計年度の経営成績は、電子部品事業においては、世界的には景気回復傾向にある中で、米国の通商政策の大幅な変更が、世界全体の景気に大きな影響を及ぼす懸念や、中国経済の景気回復の遅れや地政学リスクの解消が進まないなど、先行きは極めて不透明な状況が続くものと予想されます。日本においても、賃金上昇等により個人消費の回復が期待されますが、一方で賃金上昇以上の物価上昇の懸念もあり、先行きの見通しが困難な状況にあります。

当社グループの属するエレクトロニクス業界においては、自動車市場では電気自動車の販売が失速しておりますが全体としては堅調に推移しており、生活家電市場においても在庫調整が一巡し好調に推移した一方、産業機器市場では半導体関連は需要が増えておりますが、FA機器関連や設備投資関連は在庫調整が継続し回復が遅れており、加えて米国における各国や地域への高い相互関税がサプライチェーンに与える影響を予想することが困難な状況にあり、今後の受注動向に関し、依然として予断を許さない状況が続いています。利益面においても、為替が大きく変動しており、またエネルギー価格や原材料価格の上昇の継続などの懸念材料があります。

そのような中、電子部品事業においては、すべての市場向けで好調に推移し、特にAV市場向けはミラーレス一眼レフカメラ向けを中心に好調に推移しました。また、自動車電装市場向けやアミューズメント市場向けも堅調に推移したことに加え、産業機器市場向けも下期以降上向きになっており、医療・ヘルスケア市場向けも好調でした。

その他の事業においては、環境対応緩衝材は、医療機器市場向けや半導体関連市場向けに加え果実や根野菜向け緩衝材の拡販を進め、順調に推移しております。また、産業機器市場の低迷が継続していることから機械設備等の販売は低調となりました。

連結売上高は前連結会計年度と比べ10.3%増加し167億90百万円となり、営業利益は前連結会計年度と比べ75.5%増加し16億63百万円となりました。

当社グループの主要セグメントである電子部品事業を地域別に分析いたしますと、日本では、暖冬などの影響から季節商品である石油ファンヒーター向け製品は、低調でしたが、エアコン向けは好調に推移し、自動車電装市場向け、医療・ヘルスケア市場向けは、堅調な推移をしました。この結果、売上高は69億97百万円(前年同期比1.0%増)、営業利益は3億68百万円(前年同期は1億59百万円の営業損失)となりました。

アジアでは、中国経済は長引く不動産不況や厳しい雇用環境により景気の減速が続いており、生活家電市場においては、給湯器関連が低調に推移しましたが、エアコン関連は堅調に推移し、AV機器市場は、特に上期において好調でした。その他のアジア地域については、アミューズメント市場向けが計画を上回る受注となり好調に推移しました。この結果、売上高は89億47百万円(前年同期比19.0%増)、営業利益は11億88百万円(前年同期比19.9%増)となりました。

北米では、景気動向は依然不透明な状況ではありますが、個人消費は底堅く、プロ用オーディオ市場向け、産業機器市場向けともに好調を維持しました。この結果、売上高は2億43百万円(前年同期比18.1%増)、営業利益は7百万円(前年同期は23百万円の営業損失)となりました。

経常利益については前連結会計年度と比べ36.4%増加し21億27百万円となり、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度と比べ47.5%増加し20億9百万円となりました。

2021年5月に策定した、未来のNOBLEを見据えて、「抵抗器のNOBLEから新生NOBLEへの深化と進化」を長期ビジョンとした中期5ヵ年計画の最終年度にあたる2025年度は、次期中期経営計画も念頭に、自動車電装、医療・ヘルスケア及び産業機器分野への拡販を推し進めて既存領域の拡大を図り、また、非接触センサーを含めた各種センサー類の開発等により、顧客ニーズを捉えた新製品の展開を行ってまいります。

そのうえで、今中期経営計画の最終年度である2025年度の連結業績予想につきましては、売上高170億円、営業利益15億円を目指してまいります。

また、次期中期経営計画以降の課題となる新領域の確立の取組を進めており、医療・ヘルスケア分野の拡大には当社の要素技術の要であるエレメント技術の向上が必須であり、インクや印刷工法の研究及び表面処理技術の高精度化が求められております。その目的の達成の為、2027年度の完成を目標とした研究開発機能と本社機能を複合したサステナビリティを体現する本社ビルへの建替えを計画しております。それを達成することにより、すでに量産化されている筋電・心電や脳波測定に用いる電極の更なる革新が見込まれます。また、今後の医療・ヘルスケア市場向けにおいては、その場で簡単に利用できるPOCT(Point of Care Testing)用バイオセンサーが望まれていることから、近々量産化を計画しているナトリウムカリウム測定に加え、将来的に様々な物質の測定に使用が見込まれる電気化学センサーの技術確立をすることを今後の柱の1つとしていきたいと考えており、大学などとの共同研究を積極的に行っております。また、エレメント技術の向上を足がかりとして、インフラビジネス・ウォータ―ビジネス・アグリビジネス等へ進出することを目指しております。

加えて、電気自動車やその周辺機器向け及び、静電容量方式のセンサー等自動車向け製品の開発を加速すると共に各種センサーの拡販を進めております。

環境に配慮した素材の選定や、開発技術力向上ならびに製造設備の省人化・無人化などによる生産性向上と原価低減を継続的に行い競争力強化を図るとともに、DX化(IoT)を組み込んだ生産ラインの導入も進めており、またBCPを念頭に生産の最適化についても進めております。

インフラ投資に関しましては、新たな研究開発棟により開発された製品の量産については、BCPや既存領域製品の増産対応も念頭に、倉庫スペースも含め既存の工場に新たなる工場建設や、高度な精度・性能が求められる製品製造が可能な新工場建設も検討してまいります。

当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因として、顧客の設計、製造が外部のOEMやODMといわれる第三者に委託するケースが発生する等により、受注成約に大きな影響を与える要因となり、また、顧客商品の市場販売状況についても、当社グループの売上高に大きく影響を与えます。

また、ウクライナ情勢や中東情勢の動向、米国の通商政策の大幅な変更による相互関税のリスクとその影響によるインフレによる景気後退リスク、顧客における生産計画調整や在庫調整、市場ニーズの変化や供給問題、エネルギー価格や原材料価格の上昇、為替変動の動向等により、当社グループの将来の業績に影響を与える懸念があります。

 

(2) キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

キャッシュ・フローの状況の分析

当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローは、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (経営成績等の状況の概要) (2)キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

資本の財源及び資金の流動性

当社グループの資本の財源及び資金の流動性として、当連結会計年度末において有利子負債残高が46百万円ありますが、この有利子負債は非連結子会社からの借入金であります。これは当社グループでは財務体質の健全性を堅持し、継続的に効率よく事業投資が行えるよう本社にて資金管理を行い、グループ内の資金を効率よく活用するようにしているためです。

当社グループの資金需要は主に製造費用、販売費用、設備投資や研究開発費用等であり、これらは日常の営業活動によって得られた資金で賄っております。

 

(3) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されています。連結財務諸表の作成にあたり、期末時点の状況をもとに、種々の見積りと仮定を行っていますが、それらは連結財務諸表、偶発債務に影響を及ぼします。連結財務諸表に与える影響が大きいと考えられる項目・事象は以下のとおりです。

①棚卸資産の評価

当社グループは、棚卸資産について、正味売却価額に基づき収益性の低下を検討しております。また、一定期間を超えて在庫として滞留する棚卸資産についても、簿価を切り下げております。今後の市況や需要動向によっては、追加の評価減が必要となる可能性があります。

②繰延税金資産

当社グループは、繰延税金資産について定期的に回収可能性を検討し、当該資産の回収が不確実と考えられる部分に対して評価性引当額を計上しています。回収可能性の判断においては、将来の課税所得見込額と実行可能なタックス・プランニングを考慮して、将来の税金負担額を軽減する効果を有すると考えられる範囲で繰延税金資産を計上しています。

将来の課税所得見込額はその時の業績等により変動するため、課税所得の見積りに影響を与える要因が発生した場合は、回収懸念額の見直しを行い繰延税金資産の修正を行うため、当期純損益額が変動する可能性があります。

 

③退職給付債務及び退職給付費用

退職給付債務及び退職給付費用は、主に数理計算で設定される退職給付債務の割引率、年金資産の長期期待運用収益率等に基づいて計算しています。割引率は、従業員の平均残存勤務期間に対応する期間の安全性の高い長期債利回りを参考に決定し、また、年金資産の長期期待運用収益率は、過去の運用実績及び将来見通し等を基礎として設定しています。割引率及び長期期待運用収益率の変動は、将来の退職給付費用に影響を与える可能性があります。

④固定資産の減損

当社グループは、固定資産の減損に係る回収可能性の評価にあたり、資産のグルーピングをセグメント別に行い、収益性が著しく低下した資産グループについて、固定資産の帳簿価額を回収可能価額まで減損し、当該減少額を減損損失として計上しています。

固定資産の回収可能価額について、将来キャッシュ・フロー、割引率、正味売却価額等の前提条件に基づき算出しているため、当初見込んでいた収益が得られなかった場合や、将来キャッシュ・フロー等の前提条件に変更があった場合、固定資産の減損を実施し、当社グループの業績を悪化させる可能性があります。

 

5 【重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

(1) 研究開発の主体、及び規模

当社グループにおける研究開発は、主として当社の開発部門が主体となり、新製品の開発等、技術開発を担当しております。また、生産設備の自動化などに関する開発は、当社の生産技術部門が担っております。

これらの研究開発に際しては必要に応じて、他企業や大学等と共同研究開発を実施しております。特に当社の提唱する前面操作ブロック製品(ICB製品)及び生体系センサー等の設計開発においては、顧客との密接な連携が不可欠であり、製品のデザインを含めた設計初期段階から顧客と一体となって開発を進めております。

(2) 目的及び主要な成果

新製品開発にあたっては、メカトロニクスの基盤となるセンサー系製品の開発と、HMI(ヒューマン・マシン・インターフェース)の一翼を担うICB製品の開発に注力しております。特にセンサー用途に使われる抵抗エレメントの新規開発にくわえ、さらなる高精度化、高寿命化を追及しております。また、機器のデザインコンセプトを自由に表現できるICB製品は、単にディスクリート製品をプリント基板上に搭載するものとは異なり、当社独自のエレメント技術・成型加飾技術・プレス技術等を駆使して一体化させたものであり、3Dデザインにおけるスペース効率を最大限に活かせる設計が可能です。

その成果として、コンパクト化が進展する映像機器・事務機器分野においてデジタルカメラやプロジェクター向けに、多種多様なICB製品を市場に提供することができました。さらに、当社独自のフィルム技術を応用し、フレキシブル性を生かした曲面センサー等などの製品展開にも成功しました。医療・ヘルスケア分野においては、心電・脳波・筋電を手軽かつ高精度測定できる生体電極の量産化を実現しております。

(3) 活動の方針

事務機器・車載・産業機器・生活家電・医療・ヘルスケア・AV機器・ゲーム機などの分野に対して、当社のエレメント技術、及びICB技術を応用できるよう、環境に配慮した要素技術開発にも一層注力してまいります。また、HMIとしての新しいデバイスや、スクリーン印刷技術、部品実装技術を生かしたフレキシブルなIoTデバイス等の開発に注力し、通信分野やインフラ分野などの新規市場に向けて、新たなモジュール製品の提案を進めていく所存です。

医療・ヘルスケア分野においては、その場で簡単に使用できるPOCT(Point of Care Testing)向けバイオセンサーのニーズが高まっていることを受け、現在、ナトリウムカリウム測定が可能なセンサーの上市を目指して取り組んでおります。くわえて、将来的に血液、尿、唾液などから、さまざまな物質の測定が可能とされる電気化学センサーの技術確立を、今後の柱の1つとして取り組んでまいります。

なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は518,589千円であります。