第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1) 経営方針

タムラグループは、コーポレートスローガンを「オンリーワン・カンパニーの実現を目指す」と掲げ、経営の基本方針を企業理念として以下のとおり定めています。

MISSION

私たちは、タムラグループの成長を支える全ての人々の幸せを育むため、世界のエレクトロニクス市場に高く評価される独自の製品・サービスをスピーディに提供してまいります。

VISION

① タムラグループは、世界的視野にたち、エレクトロニクス産業が求める事業を経営基盤とします。

② タムラグループは、市場本位をつらぬき、世界のお客様が求める技術を事業基盤とします。

③ タムラグループは、公正な視点で社員を評価し、努力によって成果をもたらす人を最も賞賛します。

④ タムラグループは、国際社会の一員として行動し、各国の法規制を順守し文化・慣習を尊重します。

⑤ タムラグループは、地球環境の保全に努め、資源の有効化と再資源化を推進します。

GUIDELINE

① 私たちは、パートナーシップを大切にする。

② 私たちは、革新する勇気を大切にする。

③ 私たちは、多彩な個性を大切にする。

④ 私たちは、社会的な責任を大切にする。

(2) 中長期の経営戦略

タムラグループでは、上述の経営方針に基づき、長期ビジョンと中期経営計画を策定し事業戦略を展開しています。

① 長期ビジョン

タムラグループが100周年を迎える2024年を最終年度とする第13次中期経営計画を策定するにあたり、長期ビジョンを見直しました。取締役も入り議論を重ね、創業の精神や企業理念を基盤とし、事業課題、環境・社会課題、ステークホルダー課題などを踏まえて、「世界のエレクトロニクス市場に高く評価される脱炭素社会実現のリーディングカンパニー」を長期ビジョンに設定いたしました。第13次中期経営計画は、長期ビジョン実現のための第一歩となります。

 

② 第13次中期経営計画(2022年4月1日~2025年3月31日)

第13次中期経営計画「Energize the Future 100」においては、世界的なカーボンニュートラルへの潮流を事業機会ととらえ、創業100周年とその先の力強い未来を創る変革を進める構想です。

世界に展開するタムラグループにとって、地球環境の変化、地政学的変化、技術の進化、人的資本の重大性増大など、今後とも大きな事業環境の変化が継続すると想定されます。その中で、機敏に機会をつかみ、リスクを低減することが、企業価値創出の根幹と考えています。第13次中期経営計画ではサステナビリティ戦略と事業戦略の統合をさらに深化させ、全社一体となって不確実な未来に立ち向かう施策を展開しています。

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a.事業戦略と財務目標

事業戦略は、①新製品・新事業創出とグローバル展開による成長戦略と、②収益および資産効率向上の二本柱で進めます。

まず、成長戦略においては、カーボンニュートラルに貢献する分野としてパワーエレクトロニクス、モビリティ、およびIoTの3分野に引き続き注力します。成長に向けて、新製品・新技術による売上比率を現在の一桁台から30%にすること、また、欧米市場向けの売上比率を10%台から20%超へ引き上げることを目標としています。事業部間の融合施策を進め、課題である電子部品事業の収益力を強化し、電子化学実装事業とともに当社を支える両輪となる事業に育てる計画です。

次に、事業収益・資産効率向上については、以下のとおり財務目標を掲げています。

■財務目標

 

2023年3月期

2024年3月期

2025年3月期

営業利益(億円)

30

50以上

60以上

営業利益率

3.2%

5%

6%

ROE

8%

 

■財務目標達成のためのガイドライン

 

2023年3月期

2024年3月期

2025年3月期

連結売上高(億円)

940

約1,000

1,000以上

事業別営業利益率

 

 

 

電子部品

1.5%

4%

5%

電子化学実装

8.7%

9%

10%

情報機器

4.2%

12%

15%

ROIC

6%

 

 第12次中期経営計画で苦戦した利益率の改善を早期に行い、業績を立て直すことを最優先とします。価格転嫁やコスト管理の徹底、成長戦略を通じた高付加価値品の拡大に加え、前中期経営計画で進めた生産改善の効果を実現し、収益性の改善を図ります。また、社内ではROICを指標として採用し、資産効率向上を図ってまいります。

b.サステナビリティ戦略

さらに、これら事業戦略と両輪で進めるサステナビリティ戦略については、マテリアリティを軸に展開してまいります。マテリアリティについては、ステークホルダーにとっての重要性とタムラグループにとっての重要性という二つの軸を基準に選定し、2021年5月に発表したものですが、中期経営計画の議論の過程でその項目を一部見直し、KPIと目標を設定しました。

サステナビリティの中でも重要視している、温室効果ガス削減については、2030年までに2013年対比(※脚注)で51%削減することとしています。第13次中期経営計画期間においては、それに向けて33%の削減を目標としています。その達成に向けて、自社工程の省エネによる電気使用量削減に取り組むとともに、太陽光発電設備の設置や再生エネルギーの調達にも力を入れてまいります。

また、「人が憧れる会社」、「人が集まる会社」を目指し、働きがいの実現を図ります。人材戦略として、人権・安全教育の充実、心理的安全性プログラムの展開などを進め、グローバルに実施する従業員サーベイの結果を年3ポイントずつ向上させることを目標とします。日本では、グローバルなステークホルダーの期待に応えられる多様性を確保することを目的に、管理職における女性比率、外国人比率、および中途採用比率を、2025年3月期にそれぞれ10%、5%、および50%とすることを目標としています。

 

c.中期経営計画の進捗

2023年3月期は、堅調な需要、価格改定、為替影響などにより過去最高の売上高を記録しました。また、電子部品事業と情報機機器事業の収益性改善がけん引して営業利益も目標を大きく上回り、好調な初年度となりました。

注力しているカーボンニュートラルに貢献する事業成長の施策として、成長する欧米での能力増強を行っています。メキシコにおいて北米市場で再生エネルギーなどの用途に使われる大型トランス・リアクタの増産のための工場拡張を、またルーマニアにおいてはチャージャやモジュール製品の生産拠点を新設する決定をしました。

一方、第12次中期経営計画中に行った車載関係投資の成果刈り取りについては、戦略の見直しを進めています。車載用昇圧リアクタについては中長期的に想定の需要が見込めないものの、モビリティ分野は引き続き重要市場と位置づけ、製品・用途開発を進めるとともに、工場稼働率と事業収益改善を目指します。

好調な事業業績を反映し、財務目標についても初年度は大きく目標を上回りました。

■財務目標(2023年3月期)

 

目標

実績

営業利益(億円)

30

48

営業利益率

3.2%

4.5%

ROE

4.0%

 

■財務目標達成のためのガイドライン(2023年3月期)

 

目標

実績

連結売上高(億円)

940

1,080

事業別営業利益率

 

 

電子部品

1.5%

3.6%

電子化学実装

8.7%

8.0%

情報機器

4.2%

△0.3%

ROIC

3.8%

 

サステナビリティ施策についても、働きがいの実現や脱炭素社会の実現に向けた施策を着実に実行し、目標に向けて進展しています。温室効果ガス削減については、国内主要5拠点(本社、坂戸、入間、狭山、児玉)の再生エネルギー使用率100%を実現し、目標に向けて大きく前進しました。また、働きがい改革としては、社内有志が参加する心理的安全性プログラムを推進し、従業員エンゲージメント調査を初めてグローバルに実施しました。

各KPIの進捗は以下のとおりです。

マテリアリティ

2025年3月期 目標

2023年3月期 実績

①持続的な事業成長

新製品・新市場向け売上比率 30%

11.8%

②製品品質の向上

不良損金率:15%削減(第12次中期経営計画期間平均対比)

52%増加

③適正なサプライチェーン

主要調達先SAQ実施率:100%

調達ガイドライン/SAQ改訂準備

④コンプライアンス

コンプライアンス研修実施率:100%

94%

⑤働きがいの実現

①グローバル従業員サーベイ実施ポイント向上:3Pt/年

②日本多様性:女性・外国人・中途管理職比率:10%、5%、50%

①ベースとなる初回実施

②7.8%、0.6%、40.3%

⑥地域社会との共生

社会貢献費:経常利益の1%

1.4%

⑦地球環境保全・脱炭素社会の実現への貢献

①サステナビリティ貢献製品比率:27%

②温室効果ガス(スコープ1&2)削減:33%以上(2013年対比*)

①20%

②45%

⑧情報開示の充実

①統合報告書発行

②TCFD準拠情報開示

①発行開始

②開示開始

脚注)各工場の状況に応じ、2013年基準値を調整しています。

タムラグループは、事業戦略とサステナビリティ戦略を統合し、創業100周年とその先の力強い未来を創る変革に取り組んでまいります。

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

タムラグループでは、企業理念や創業の精神に基づき、長期ビジョン「2050ありたい姿」を定め、「世界のエレクトロニクス市場に高く評価される脱炭素社会実現のリーディングカンパニー」となることを目指しています。この実現に向けた第一歩として、2022年4月から2025年3月までの3カ年を対象とする第13次中期経営計画を策定しています。本中期経営計画においては、事業戦略とサステナビリティ戦略を統合して取組みを推進しています。

 

(1) ガバナンス

タムラグループでは、取締役会が、気候変動や人的資本をはじめとするサステナビリティ課題全般について基本方針・戦略の決定とその執行の監督を行っています。効率的・効果的な監督のため、取締役会は、その諮問機関としてサステナビリティ経営委員会を設置しています。サステナビリティ経営委員会は、代表取締役社長、監査等委員である取締役5名全員およびサステナビリティ担当執行役員などで構成されています。年2回委員会を開催し、サステナビリティ戦略の進捗を監督するとともに関連議題を審議の上、取締役会に対して答申します。

基本方針および戦略に基づき、具体的施策や取組みは、代表取締役社長を議長とする執行役員会以下の執行部門で推進しています。

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(2)戦略

① 気候変動

タムラグループは、気候変動への対応を重要課題と捉え、2022年6月に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言への賛同を表明しました。ステークホルダーとの建設的なコミュニケーションを推進するため、TCFDのフレームワークに基づき、情報開示に取り組んでいます。

タムラグループとして認識している、気候変動に関するリスク(移行リスクおよび物理的リスク)と機会は以下のとおりです。

移行リスクとしては、炭素税や温室効果ガス排出規制強化への対応に伴うコストの増加、石油化学製品、金属鉱物資源などの原材料価格の上昇、低炭素原材料の調達や自社の製造プロセスの低炭素化に向けた設備投資によるコストの増加等が想定されます。物理的リスクとしては、気候変動に起因する自然災害激甚化や気候パターンの変化に伴う事業所の被災、サプライチェーンの寸断による営業機会損失等が想定されます。

一方、機会としては、太陽光発電、風力発電などの再生可能エネルギー発電施設の増加、化石燃料使用から電力使用への切替やIoT推進などに伴う電力需要の増加、新興国の発展等により、タムラグループの主力事業であり、カーボンニュートラルに貢献する事業成長分野でもあるパワーエレクトロニクス、モビリティ、およびIoTの3分野は、事業機会が増大するものと認識しており、この機会を最大化するための取組みを進めています。

TCFDに基づく情報開示の詳細は、当社ウェブサイトをご参照ください。

https://www.tamura-ss.co.jp/jp/sustainability/e_report/tcfd.html

 

② 人的資本

タムラグループでは、事業目標の推進や、サステナブルな事業の実現のためにはそれを担う当社の人材こそが重要であると考えています。そのため、「人が憧れる会社」「人が集まる会社」を目指して、人材戦略を進めています。

第13次経営計画においては、グローバルに進める働きがい改革と、日本における人材の多様性確保を重点施策としています。働きがい改革では、働きがいをもって働く人材が増えることで会社が活性化し、戦略を推進することができるという考えのもと、働きがいを実現するための「土壌」である心理的安全性を中心に取組みを行っています。またグローバルなステークホルダーの期待に応えられる企業を目指し、女性、外国人、および中途採用者の管理職登用を推進しています。

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(3)リスク管理

タムラグループは、直接または間接的に経営または事業運営に影響を及ぼす可能性のあるリスクに対して迅速かつ的確に対処するため、リスク管理・危機管理規程、内部通報規程、情報管理規程等の社内規程を整備し、それに基づいたリスク管理を行っています。気候変動に関するリスクもその一環として、上述のガバナンス体制のもと管理しています。

 

(4)指標及び目標

サステナビリティ戦略については、8項目のマテリアリティを軸に、それぞれの項目について管理指標(KPI)および目標値を設定し施策を展開しています。マテリアリティの8項目、KPI、目標、2022年度の実績については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。

① 気候変動

タムラグループは、2050年までのカーボンニュートラル達成を見据え、2030年度までにスコープ1(*1)およびスコープ2(*2)の温室効果ガス排出量を2013年度対比(*3)で51%削減することを目指しています。第13次中期経営計画においては、最終年度(2024年度)までに33%削減することを目標としています。

この目標に向かって、2022年度は、自社工程の省エネによる電気使用量削減に取り組むとともに、太陽光発電設備の設置や再生可能エネルギーの調達などを推進し、当初の削減目標27%に対し、温室効果ガス排出削減45%を達成しました。

*1:スコープ1(直接排出量):自社の工場や事務所、車両等から排出される温室効果ガス排出量

*2:スコープ2(間接排出量):他社から供給された電気等を自社が使用したことによる温室効果ガス排出量

*3:各工場の状況に応じ、2013年基準値を調整しています。

② 人的資本

第13次中期経営計画の目標としては、働きがい改革の効果を測る指標としてエンゲージメント評価のポイント向上(3Pt/年)と、人材多様性の進捗を測る指標として、中核人材(管理職)中の、女性、外国人、および中途採用者の比率をそれぞれ10%、5%、および50%と定めています。初年度である2022年度は、改善の土台となるグローバルのエンゲージメント調査を実施しました。多様性については、女性、外国人、および中途採用者はそれぞれ7.8%、0.6%、および40.3%となり、外国人比率について課題を残すものの目標に向けて前進しました。

3【事業等のリスク】

タムラグループの経営成績、財務状況等に影響を及ぼす可能性のあるリスクには以下のようなものがあります。

なお、文中の将来に関する事項は当連結会計年度末において、当社が判断したものです。事業等のリスクはこれらに限られるものではなく、また、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクが顕在化した場合にタムラグループの経営成績等の状況に与える影響は合理的に予見することが困難であるため、記載していません。

当該リスクへの対応として、各種社内規程を定める所轄部門が管理し、内部監査部門が内部統制の指導、監督および運用状況の評価を行い、リスク軽減を図っています。詳細については、「第4 提出会社の状況 4.コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要 ③企業統治に関するその他の事項 a.会社の機関の内容および内部統制システムの整備の状況」をご参照ください。

(1) 事業環境に関するリスク

タムラグループは、成長戦略としてパワーエレクトロニクス、モビリティ、IoTの3分野に注力して取組みを進めています。特にモビリティに関する領域は、電子部品・電子化学材料・実装装置というタムラグループの幅広い製品が関わり、中長期的な成長を期待して開発投資や設備投資を進めてきました。しかしながら世界的なカーボンニュートラルへの潮流を受けて急速に電気自動車への転換が進められており、日系車載メーカーも従来から取り組んできたハイブリッド車に加えて電気自動車へ注力する方向に舵を切っています。このような各国の政策や顧客の事業方針の変更は、タムラグループ製品の需要に変化をもたらす可能性があります。それによりタムラグループ製品の普及拡大が想定どおりに進まなかった場合には、設備投資の回収が遅れるなど、タムラグループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。タムラグループでは、市場のニーズを常に見極め、時代の変化を先取りした製品・サービスの提供することで、リスクの回避と成長戦略の推進に努めてまいります。

(2) 素材価格に関するリスク

電子部品関連事業における銅や鉄、電子化学実装関連事業における錫や石油化学製品などの素材価格の変動は、利益に対して影響を与えるリスクがあります。主要な素材については、定期的な相場連動による価格改定により価格変動の影響を吸収できるように対策していますが、素材価格が急激に変動し価格改定が追い付かないような場合は、企業収益を圧迫する可能性があります。タムラグループでは、価格改定に加えて、設計変更による材料比率の低減や代替部材の開発、予約購入によるリスクヘッジなどの手段なども講じて、素材価格の影響の低減を総合的に進めてまいります。

(3) 海外展開におけるリスク

タムラグループは、中国に多くの生産拠点を配置し、その生産高はタムラグループ全体のおよそ半分を占めています。競争力のある製品の製造と中国市場の展開のためにその重要性は変わりませんが、世界の経済圏の分断が進む中、各国の政策動向によっては事業活動に困難が生じる可能性があります。タムラグループは中国の他にも、アセアンや欧米などにおいても主要製品の生産が可能であり、今後地産地消をより強化して、エリア毎に対応力を高めてまいります。

(4) 自然災害をはじめとする緊急事態に対するリスク

タムラグループの本社所在地は東京にあり、埼玉県および東北地方に製造拠点を有しています。日本の生産高はグループ全体の3割程度ですが、電子化学事業では、日本の製造事業所が生産した材料を用いて生産活動を行う海外拠点もあり、当該地域で大地震などの自然災害が発生した場合には、建物や機械設備、棚卸資産の被害に加え、日本のみならず海外拠点の生産活動に影響を及ぼす可能性があります。

また、タムラグループは、日本の他にも、中国・アセアン・欧米等の世界各地で事業活動を行っており、各国で生じる可能性のある様々な自然災害のほか、政治的要因や経済的要因による社会的混乱などにより、事業活動の停止や遅延が生じる可能性があります。

タムラグループでは、このようなリスクを踏まえてタムラグループ緊急事態対策構築ガイドラインを整備して、グローバルに販売・生産体制を連携し、事業継続できるように対策しています。また、社員安否確認システム構築、災害発生時の初動対応計画策定、復旧計画の策定などの取組みを行っています。

(5) 感染症のリスク

タムラグループは、新型コロナウイルス感染症の拡大に対して、顧客、取引先、従業員などの安全を最優先に、各種感染防止対策を行いながら、事業活動を継続しました。具体的には、衛生管理の徹底、Web会議システムの活用、在宅勤務、時差通勤、交代制勤務などを導入しました。今後も新型コロナウイルス感染症や新たな感染症の発生により、通常の事業活動を行えなくなるリスクがありますが、新型コロナウイルスの拡大に際して構築した感染防止対策を活用し、適時適切な対応を進めてまいります。

 

(6) 製品補償に関するリスク

大規模な製品補償や製造物責任賠償につながるような製品の欠陥は、会社の評価に重大な影響を与え、業績と財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。対策として、製造物責任賠償保険に加入していますが、保険で賠償額を十分にカバーできる保証はありません。

これに対して、タムラグループでは日常的に実施している製品不具合再発防止策に加え、工場監査チェックシートの改訂、タムラグループ内における品質指標の標準化、国際的な品質マネジメント規格の技法を活用した品質保証プロセスの改善の導入などにより、品質を強化する取組みを進めています。

(7) 知的財産権に関するリスク

タムラグループは、独自に開発した設計・製造工程に関する技術および製品等の特許権やその他の知的財産権を所有しています。これら知的財産保護のための様々な取組みを行っていますが、完全な保護は難しく、想定している効果を得られない可能性があります。また、タムラグループは、第三者の知的財産権を侵害しないよう留意し、調査を行っていますが、全ての知的財産権を完全に調査完了することは時間・コスト・技術的観点より困難であり、また特許権利者が自己の知的財産権をどのように解釈し、どの範囲まで権利行使手続きを行うかを予想することは極めて困難です。万一、タムラグループの製品が第三者の知的財産権に近似する場合には、当該第三者より損害賠償請求、使用差し止め等の訴えを起こされる可能性があり、タムラグループは和解やライセンス契約の締結、又は多額の損害賠償金の支払いが必要となる可能性や、タムラグループの製品やサービスの一部が差し止めとなる可能性があります。

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

① 財政状態及び経営成績の状況

1) 財政状態

当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ77億3千1百万円増加し、1,117億8千6百万円となりました。流動資産は87億9千1百万円増加し、固定資産は10億5千9百万円減少しています。これは主に、流動資産は売上債権および棚卸資産の増加、固定資産は中国における減損損失の計上による有形固定資産の減少によります。

当連結会計年度末の負債の合計は、前連結会計年度末に比べ50億3千5百万円増加し、588億6千8百万円となりました。これは主に、借入金の増加によります。

有利子負債合計(短期借入金・1年内返済予定の長期借入金・短期リース債務・長期借入金および長期リース債務の合計額)は41億2千6百万円増加し、353億1千2百万円となりました。

当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末に比べ26億9千6百万円増加し、529億1千8百万円となりました。これは主に、為替換算調整勘定が20億7百万円増加したことによります。また、当社株式を用いた株式報酬制度導入により、自己株式が増加しました。この結果、自己資本比率は47.08%となりました。

(自己資本比率は、純資産より新株予約権・非支配株主持分を控除して計算した比率を用いています。)

2) 経営成績

当連結会計年度(2022年4月1日~2023年3月31日)における世界経済は、概ね回復基調で推移したものの、原燃料価格や為替の変動、インフレーションの進行、欧米における金融市場の混乱など不安定な状況が継続しました。当社グループに関わるエレクトロニクス市場は、半導体不足による自動車の減産や巣ごもり需要の反動によるスマートフォンやPCなどの減速の影響を受けたものの、エアコンなどの家電やロボットなどの産業機械は年度を通じて底堅い需要が継続しました。

産業機械や家電関連を中心とした堅調な需要と価格改定の浸透に加えて円安効果もあり、当社グループの当連結会計年度の売上高は、1,079億9千3百万円(前期比22.3%増)となり、過去最高を記録しました。また、営業利益および経常利益もそれぞれ、48億2千9百万円(同208.6%増)、43億2千9百万円(同116.3%増)と大幅に増加しました。親会社株主に帰属する当期純利益は、特別損失(純額)約15億円を計上したものの、20億4千7百万円(前期は8千4百万円の当期純損失)と黒字転換しました。

当社の連結子会社である田村汽車電子(佛山)有限公司は、中国において主に車載用昇圧リアクタの生産・販売を行っていますが、事業環境の変化を受けて事業計画を見直しました。それに伴い、所有する固定資産に対する将来の回収可能性を検討した結果、減損損失約13億円を特別損失として計上しました。なお、現在推進中である中期経営計画「Energize the Future 100」においてもモビリティは重要市場と位置付けており、今後とも製品・用途開発を進め、工場稼働率と事業収益の改善を目指します。

セグメントの業績は、次のとおりです。

なお、売上高はセグメント間の内部売上高を含めており、セグメント利益はセグメント間取引消去及び本社部門負担の未来開発研究費用控除前の営業利益と調整を行っています。

(電子部品関連事業)

エアコン向けリアクタ、産業機械向けトランス・リアクタなどの売上高は、年度を通じて堅調に推移しました。一方、電動工具向けチャージャは、主要顧客における在庫調整により、第4四半期に販売が減少しました。自動車関連の顧客では、半導体不足による生産調整は解消の兆しが見られたものの、ゆるやかな需要回復にとどまり、関連製品の売上高は低調に推移しました。自動販売機向けLED製品は、コロナ前水準の安定的な売上高を維持しました。利益面では、価格改定の効果や前中期より取り組んできた生産改善活動の効果が年度を通じて寄与し、収益性が大きく改善しました。

その結果、売上高は過去最高の729億6千5百万円(前期比23.1%増)、セグメント利益は26億4千2百万円(同370.1%増)と、増収増益となりました。

(電子化学実装関連事業)

電子化学事業では、ソルダーペーストの堅調な販売、価格改定努力、円安などにより、売上高が増加しました。一方、ソルダーレジストは、自動車関連顧客の減産やスマートフォン向けフレキシブル基板用の需要低調の影響を受けたものの、為替効果もあり前年度並みの売上となりました。実装装置事業では、日系自動車関連顧客を中心に回復基調が継続しました。

その結果、売上高は過去最高の327億5千2百万円(前期比20.7%増)、セグメント利益は26億2千6百万円(同25.2%増)と、増収増益となりました。

 

(情報機器関連事業)

情報機器関連事業の主力市場である放送業界では、設備投資抑制の局面から徐々に設備更新への動きが見られましたが、本格的な回復には至りませんでした。利益面では、次世代音声卓の開発が完了したことにより前年比で開発費用が減少したため、損失が大きく縮小しました。

その結果、売上高は24億4千4百万円(前期比17.6%増)、セグメント損失は6百万円(前期は6億3千8百万円のセグメント損失)となりました。

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末の現金及び現金同等物(以下「資金」という)につきましては、前連結会計年度末に比べ7億3千2百万円増加し、136億2千万円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、減価償却費が39億1千5百万円、税金等調整前当期純利益が27億9千8百万円となりましたが、売上債権の増加が37億8千3百万円、棚卸資産の増加が24億4千6百万円となったことなどにより、21億8千万円の資金収入となりました。また、前連結会計年度末と比べ、営業活動によるキャッシュ・フローは、71億2千9百万円増加(資金支出から資金収入へ転換)しました。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、日本および中国における生産設備を中心とした有形固定資産の取得による支出が24億6千万円となったことなどにより、26億4千2百万円の資金支出となりました。また、前連結会計年度末と比べ、投資活動によるキャッシュ・フローは、19億8千万円増加(資金支出の減少)しました。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、短期運転資金を借り入れたことなどにより、5億9千1百万円の資金収入となりました。また、前連結会計年度末と比べ、財務活動によるキャッシュ・フローは、39億4千5百万円減少しました。

③ 生産、受注及び販売の実績

1) 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

生産高(百万円)

前年同期比(%)

電子部品関連事業

72,626

118.0

電子化学実装関連事業

32,801

118.5

情報機器関連事業

2,516

119.8

報告セグメント計

107,944

118.2

合計

107,944

118.2

(注)1. セグメント間取引については、相殺消去しています。

2. 金額は、販売価格によっています。

2) 受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

電子部品関連事業

78,819

86.0

62,915

110.3

電子化学実装関連事業

33,122

120.4

9,522

105.4

情報機器関連事業

2,701

64.0

3,476

109.7

報告セグメント計

114,643

92.9

75,913

109.6

合計

114,643

92.9

75,913

109.6

(注) セグメント間取引については、相殺消去しています。

 

3) 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

電子部品関連事業

72,962

123.1

電子化学実装関連事業

32,637

120.6

情報機器関連事業

2,393

119.0

報告セグメント計

107,993

122.3

合計

107,993

122.3

(注)1. セグメント間取引については、相殺消去しています。

2. 最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりです。

相手先

前連結会計年度

(自  2021年4月 1日

至  2022年3月31日)

当連結会計年度

(自  2022年4月 1日

至  2023年3月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

牧田(昆山)有限公司

7,429

8.4

5,850

5.4

株式会社マキタ

1,998

2.3

2,043

1.9

マキタ EU S.R.L.

1,930

2.2

1,418

1.3

合計

11,358

12.9

9,312

8.6

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

当連結会計年度の売上高は1,079億9千3百万円で、過去最高かつ初めて1,000億円を超えました。こちらは産業機械や家電関連を中心とした顧客からの堅調な需要に加えて、素材価格高騰に対する価格改定の浸透、円安などが追い風になった結果と認識しています。営業利益は48億2千9百万円、営業利益率は4.5%で、中期計画初年度で目標とした営業利益30億円・営業利益率3.2%を超えており、中期計画としては好調な出だしとなりました。

しかし各事業セグメント別で見ると、それぞれの事業課題が顕在化しています。

セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。

(電子部品関連事業)

電子部品関連事業は、主要顧客向けの堅調な売上に加え、素材価格改定が浸透した効果もあり、売上高は729億6千5百万円、セグメント利益は26億4千2百万円、セグメント利益率は3.6%と大きく改善しました。

一方、ハイブリッド車に搭載する昇圧リアクタをモビリティ市場向けの主力製品として、前中期経営計画から注力してまいりましたが、足元ではコロナや半導体などの部材不足による顧客の減産が影響し、計画に届いておりません。また、日系自動車メーカーでもEV化が急速に進み、中長期的な需要見通しが減少する見込みです。

そのため、最新需要見通しに基づき事業計画を見直し、2023年3月期において、中国の車載用昇圧リアクタ生産専用工場の資産を減損するに至りました。従来は、車載用昇圧リアクタを中心に戦略を進めていましたが、今後は、EV向け、EVインフラ向け、電鉄向けなど、より広くモビリティ市場全体を視野に入れて製品投入と生産体制の再整備を進めます。こうして電子部品関連事業全体として投下資本の運用効率改善と、事業収益の改善に努めてまいります。

 

(電子化学実装関連事業)

電子化学実装関連事業は、従来から収益性が高く、当社グループの利益を牽引してきましたが、当連結会計年度のセグメント利益は、電子部品関連事業に及ばない26億2千6百万円、セグメント利益率は当事業セグメントとしては低水準の8.0%という結果に終わりました。

売上や生産面では、当年度終盤におけるスマートフォンおよび半導体関連の市場停滞が収益悪化に影響しました。また原価面では、ソルダーペーストの主原料である錫の価格が高騰したことから、これまで素材価格連動売価の導入を進めていましたが、期の中盤以降は、逆に錫価格が急速に下落したことで販売価格を値下げする一方、部材不足の折に高値で購入した在庫を消費する必要があり、収益性悪化につながりました。

こうした状況に左右されず、本質的な収益性の改善を図るためには、当事業においても付加価値の高い新製品・新市場への展開が必須と認識しています。将来的に市場拡大が見込まれるパワー半導体向けの高耐熱接合材の開発や、自動車の電動化に向けた車載用ソルダーペースト・ソルダーレジストの開発、日系車載向けでは定評のあるリフロー装置をグローバル仕様に変えて非日系メーカーに拡販する取組みなどを、スピード感をもって進め、収益性の改善につなげていきます。

(情報機器関連事業)

当事業の主力市場である放送業界では、設備投資抑制の局面から徐々に設備更新への動きが見られるようになりました。しかし、当連結会計年度は本格的な需要回復に至らず、赤字幅は大きく縮小したものの、わずかに黒字に届きませんでした。2024年3月期には放送局の大口の更新需要が予定されており、着実な納入により売上・利益を確保することを課題として認識しています。

② 資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社グループは、設備投資およびその他の事業資金については、自らの事業活動により獲得した内部資金で対応することを基本方針としています。しかし、成長投資や一時的な運転資金の充足のために資金需要が生ずる場合には、時々の金融市場の状況を踏まえた適切な手段により外部からも調達できるよう多様化を図っており、現時点においては銀行からの借入を実施しています。不測の事態に備え、機動的な短期運転資金としてコミットメントライン契約を総額50億円に増枠し、手許流動性を高められるよう対応しています。

新中期経営計画では、第12次中期計画のような大規模投資を予定していませんが、引き続き生産設備の増強や更新を進めてまいります。自己資本の他、ファイナンス・リースや銀行借入の利用を予定しています。

③ 重要な会計上の見積り方針及び当該見積りに用いた仮定

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。

5【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

6【研究開発活動】

当社グループは、「オンリーワン・カンパニーの実現」をスローガンに、タムラならではの「オンリーワン技術」で市場ニーズに応える製品づくりを進めています。

当連結会計年度は、各事業において中期経営計画で掲げる「パワーエレクトロニクス」・「モビリティ」・「IoT」という3つの成長市場に向けた製品開発を進めると共に、既存の事業部門の枠を越えた全社未来開発を推進しました。当連結会計年度における各セグメント別の研究開発活動は、次のとおりです。

セグメントの名称

金額(百万円)

電子部品関連事業

59

電子化学実装関連事業

305

情報機器関連事業

91

報告セグメント計

455

全社(共通) (注)

301

合計

757

(注) 「全社(共通)」の区分は、各セグメントに配分できない未来開発研究費用です。

① 電子部品関連事業

パワーエレクトロニクスとモビリティ関連において、市場拡大が期待される製品の開発を強化しました。

主な研究開発内容と開発成果は次のとおりです。

・電流センサは、省エネ・創エネ・蓄エネなどの場面で使用されることを想定して開発を進めています。電流レンジ・精度レンジなどのラインナップを充実させました。

・大電力パワースイッチング半導体の駆動に使用するゲートドライバモジュールの開発を進めています。IGBT、SiC-MOSFETのどちらにも対応可能で、機器の設計が大幅に簡素化されます。再生可能エネルギー向けの採用が高まっています。

・世界的なEV市場の拡大に向けて、充電用トランス・コイル(車載用・定置用)の開発を進めました。

研究開発費用は、5千9百万円です。

② 電子化学実装関連事業

パワーエレクトロニクス・モビリティ・IoTの各領域に対して、電子化学材料から実装装置までの幅広い分野で、技術開発・製品開発を推進しました。

主な研究開発内容と開発成果は次のとおりです。

・パワー半導体チップ接合や基板下接合用に、新たな高耐熱接合材の開発を進めています。SiC、GaN、酸化ガリウムなど、高性能化が期待される次世代パワー半導体での適用を目指しています。

・車載機器用の高耐熱高信頼ソルダーレジストの開発を進めています。DSR-2200ACRシリーズは、次世代車載基板に要求される過酷環境下での耐塗膜クラック性、耐熱性、絶縁信頼性、密着性等の長期信頼性に優れている製品です。

・非日系顧客ニーズに応えるフレキシブルな機能設計を実現したリフロー装置TNUシリーズを開発しました。機種切替時の温度変更時間は、当社従来品比で3分の1を実現。生産効率の向上と省エネに貢献します。

研究開発費用は、3億5百万円です。

③ 情報機器関連事業

ネットワーク化や多様化する情報サービスのニーズに対応した製品開発を推進しました。

主な研究開発内容と開発成果は次のとおりです。

・フルIP対応音声調整卓「NTXシリーズ」を開発しました。NTシリーズで培った、システム内の電源、伝送経路、同期信号の2重化などの信頼性を継承し、信号処理部の集約化を図ったモデルです。音声通信には、ST-2110を採用しIP化を実現しました。信号処理部(X-CORE)の冗長構成、信頼性を確保。PTPマスターを持たないシステムへ対応できるよう独自の音声同期モードに対応します。

研究開発費用は、9千1百万円です。

④ 未来開発関連事業

当社創業100周年とその先を支える新製品新市場の創出に向けて。事業部横断による研究開発を進めています。特に、当社が保有する素材技術に着目し、独自のコア技術の強みを生かすことで、高周波化や大電流化が進む将来のエレクトロニクス市場において期待される新製品の創出を目指しています。

研究開発費用は、3億1百万円です。