第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

  文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1)会社の経営方針

当社では、歩むべき方向性を明確にするため、経営理念を2003年4月に制定しております。この理念に則り、当社はパワーエレクトロニクスを通じて貢献する企業となり、お客様のイノベーションのため、社員一人ひとりのイノベーションのため、そして、社会のイノベーションのため、サステナブルな未来を実現してまいります。

 

(2)中長期的な会社の経営戦略及び目標とする経営指標

当社では、長期的に目指す姿を「独自性のある技術、人と組織のパフォーマンスで成長し、社会のイノベーションに貢献する高収益企業の実現」としております。

当社では、2024年中期経営計画(以下、「24中計」)を策定しております。本計画は2024年度を震災影響の立て直し期間と位置づけ、4ヶ年での計画としており、サンケンコアでの売上拡大を実現するとともに、利益を生み出す企業への変革達成に向け、24中計最終年度である2027年度のサンケンコア成長イメージを「売上高1,000億円以上」、「営業利益率10%」としております。

これを実現するための主要な施策は以下の通りであります。

 

 

メインシナリオ

注力要素

利益改善

レバー

新製品比率向上

開発ゲート管理

実現力の向上

既存製品の収益改善

適正売価条件の獲得

原価改善

(固定費削減含む)

原価低減活動

調達・前工程・後工程

開発リソース

SPP開発の更なる推進

産学連携での要素技術開発

プロセス/パッケージ

連動した開発管理

新 技 術

社外との協業推進

化合物デバイス

 

 

(3)会社の対処すべき課題

今後の世界経済は、地政学リスクの高まりや米政権による相互関税等の動向により、不透明な状況が継続することが見込まれます。また、中国の景気停滞が白物市場に及ぼす影響が懸念されるとともに、産機市場での投資抑制による調整の継続も見込まれ、2026年3月期は、予測が難しい環境にあると認識しております。こうした中、当社グループが取り組む24中計においては、震災からの立て直し期間と定めた2025年3月期を経て、今後の3ヶ年を本格的な成長実現フェーズと位置付けています。24中計期間中にサンケンコアとして最優先に取り組むべき課題を収益性改善と定め、そのために、新製品売上高比率向上の継続や既存製品の適正売価条件の獲得に加え、徹底した原価改善に取り組むことで実現してまいる所存です。

こうした目標実現に向け、業務執行における責任区分と役割の明確化のため、当社では今年度よりCxO体制(チーフオフィサー制)を導入いたしました。CEOは最高経営責任者として、経営に関する全責任を負い最終経営判断を下す役割を担い、CEOが策定した経営戦略の実行についてはCOO(最高執行責任者)が責任を負い、財務戦略の立案と実行についてはCFO(最高財務責任者)が責任を負うこととし、多様な経営課題への対応や戦略の実現を、迅速かつ的確に進めてまいる所存です。また、DX戦略とESG経営の推進による企業価値向上にも努めてまいります。

なお、当社は独自の窒化ガリウム(以下、「GaN」)エピタキシャル技術を保有する株式会社パウデックの全株式取得を決定し、2025年4月1日付で同社を子会社としました。同社とのシナジー効果により技術力を向上させ、当社が今後拡大を狙うGaNパワーデバイス市場における競争優位性を高めてまいります。この着実な実現を目指し、2025年10月1日付でのパウデック社吸収合併を予定しております。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する取り組みは、2020年にSDGsを経営に取り込み、重点課題(マテリアリティ)を「本業の推進(省エネ・高効率化)によるCOの削減」と「事業活動を通じた環境負荷の低減」と定め、グローバルな環境・社会課題の解決と産業・経済・文化の発展に寄与する企業像を目指して活動を行っております。また、これらの活動を支える動きとして「働きやすさの価値創造」を目指し、安心・安全な職場の実現や柔軟な働き方への志向、そして社員の健康の向上を図っております。こうしたサステナビリティへの動きを一層活発化させるため、2021年10月にサステナビリティ委員会を設置以来、ESG経営としての施策の明確化・指標化を行うなど、推進体制の整備を実施しております。

また、当社グループでは、「半導体をコアビジネスにパワーエレクトロニクスとその周辺領域の省エネ・高効率化製品の開発・生産・販売を通じて、国際社会の発展に寄与」することをグループCSR基本方針のひとつとして掲げています。持続可能な社会環境を実現するためには、気候変動への対応が重要課題であると認識しており、国内外のサステナビリティ開示で広く利用されている「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」の提言に沿った取り組み並びに情報開示を進めております。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。 

 

(1)ガバナンス(サステナビリティ推進体制)

ESG経営を推進するにあたり「サステナビリティ委員会」を中心に、環境・社会・ガバナンスの3部会と気候変動等のテーマごとのチーム活動を展開しています。この部会・チーム活動は当社グループのメンバーで構成されており、グループ一丸の活動体制としています。各部会・チームからサステナビリティ委員会への報告は、半期に一回行われています。サステナビリティ委員会には、2024年度より社外取締役がオブザーバーとして出席し、気候変動、安全健康推進、ダイバーシティ、人権デュー・ディリジェンス、外部格付評価など、環境・社会・ガバナンスに関するテーマについて議論を交わしています。その結果は、代表取締役社長CEOを最高責任者とする業務執行の最高意思決定機関である「経営会議」に報告され、取締役会にも付議・報告されています。そこで協議された内容が、サステナビリティ委員会および配下の各部会・チームにフィードバックされています。2024年度は、臨時開催を含め、サステナビリティ委員会は3回、各部会は4回ずつ、チームの会議は38回開催されました。また、サステナビリティに関する事項は、経営会議へ5回答申されました。サステナビリティ委員会の委員長は「ESG担当役員」である取締役 川嶋勝巳が務めております。また、委員会等の会議以外では、取締役監査等委員に対し、2ヶ月に1回ESG活動に関する報告を行っており、適宜、各種施策等について意見、アドバイスを得ております。

また、TCFD提言の「ガバナンス」項目では、気候関連のリスクと機会に対応するガバナンス体制の設置と開示が求められており、当社では「ESG経営」を組織横断的に審議する「サステナビリティ委員会」がその役割を担っています。サステナビリティ委員会では、気候関連のシナリオ分析・気候変動に関するリスクと機会の特定・評価とそれに対する対応策の検討・対応策の具体化の推進・対応策の進捗状況の確認に関する協議・審議を行っております。

 

※ESG経営推進体制図


 

(2)戦略

(2)-1 重要なサステナビリティ項目と戦略(気候変動)

当社グループは、「本業の推進(省エネ・高効率化)によるCOの削減」と「事業活動を通じた環境負荷の低減」を重点課題(マテリアリティ)と定めて活動を行っております。グローバルの大きな変化に対する迅速な対応を強化するとともに、事業機会の拡大と社会課題の解決を目指し、柔軟で強靭なESGガバナンスを構築し、ESG経営の推進体制の整備を実施しております。

また、TCFD提言に基づき、気候関連リスク・機会の特定・評価を全社の統合リスクマネジメントに組み込んでおります。具体的にはまず考えられる、直接操業における気候変動リスクと機会を部門ごとに列挙します。その後本社・工場の各部門長により、重要度を①リスクが顕在化した場合に受ける影響の大きさ(財務的・戦略的)、②影響を受けるタイムスケール(短期、中期、長期の視点から)、③発生頻度(リスクが顕在化した際に影響を受ける頻度はどの程度か)、④顕在化する可能性(リスクが顕在化する可能性はどの程度考えられるか)、⑤顕在化する時期(リスクが顕在化するのはどの程度先の将来か)の5項目について、「大」「中」「小」の3段階で分析、審議します。この審議の結果、特定されたリスクと機会は、サステナビリティ委員会が気候変動関連リスクを含むESGに関する事業リスクを組織横断的に評価しております。また、サステナビリティ委員会は、年に2回以上、経営会議に付議・審議した議案を取締役会に報告しており、ホームページや統合報告書等において適宜情報開示も行っております。

■リスクと機会の特定方法

製品及びそのサプライチェーン全体に係る気候変動関連のリスク及び機会を各STEPに従い特定しました。

STEP1

考えられるリスクと機会の列挙

STEP2

本社・工場の各部門長により、重要度を以下の5項目基準、3段階分類にて分析

 ・リスクが顕在化した場合に受ける影響の大きさ(財務的・戦略的)

 ・影響を受ける期間(どの程度の期間、影響が続くか)

 ・発生頻度(リスクが顕在化した際に影響を受ける頻度はどの程度か)

 ・顕在化する可能性(リスクが顕在化する可能性はどの程度考えられるか)

 ・顕在化する時期(リスクが顕在化するのはどの程度先の将来か)

STEP3

結果の集計(項目の重みや重要度高の頻度も考慮)と類似項目をまとめ、

リスク5個、機会3個を特定し、その重みを「大」「中」「小」に評価・分類

 

(要約)

・1.5℃、2℃の分析のために3つのシナリオ、4℃の分析のために2つのシナリオを使用。

・リスクとして炭素税導入による、電気代高騰、原材料価格、輸送費用高騰等を考慮。

・リスク低減の施策として多面的な省エネ活動、水力由来の電力など自然エネルギーの購入。

・機会として、気候変動による低炭素商品ニーズが高まる中で、「EV向けパワーモジュール」等の販売拡大の期待。

SiC等の次世代デバイスの開発加速を見込む。

・リスク管理体制として、サステナビリティ委員会(ESG各部会)と危機管理委員会等が連携し監視。

 

前述のプロセスを経て特定・評価された気候変動リスクと機会はサステナビリティ委員会において戦略的な取り組み方針が定められ、具体的対応策の検討が行われております。

 

■リスク

種類

主なリスク

施策

重要度

移行リスク

施策および規制

化石燃料価格上昇により、電気代が高騰し操業費用が上昇

CO排出量の削減

・省エネ活動

・再生可能エネルギーの電力置換え

・生産時の効率化

・輸送の最適化

・リサイクルの促進

炭素税導入により、操業費用が上昇

気候変動の新たな規制の強化により、既存製品の需要減少に伴う売上の減少

中期経営計画による省エネ・高効率の新製品開発で売上拡大

評判

気候変動対策が遅れることにより、ステークホルダーからの信頼が下がり、市場評価が低下

カーボンニュートラル実現に向けた計画を策定し実行

物理リスク

急性

自然災害等により生産への影響、サプライヤーの操業停止や物流機能被害によって売上が減少

危機管理体制の充実等リスク管理の強化

 

 

 

■機会

種類

主なリスク

施策

重要度

製品およびサービス

カーボンニュートラルに向けた商品の市場拡大(車載・白物家電等)により売上増

・インバータ向け製品の開発

・IPMの開発

・高効率電源デバイスの開発

・次世代半導体の開発

資源の効率

生産ラインおよび社内インフラの省エネ・省資源化

DX・スマートファクトリー導入

評 判

生産段階のカーボンニュートラルを推進することでステークホルダーからの信頼向上

カーボンニュートラル実現に向けた計画を策定し実行

 

気候変動が事業に及ぼす移行・物理的リスクおよび機会については、TCFDガイダンスに沿ったシナリオ分析により適切に把握しております。

 

(2)-2 人材に関する基本方針と戦略

1946年の設立以来、半導体をコアビジネスに、最適なソリューションを提供することを使命とし、実績を積み重ねてきましたが、これを実現するための人材基本方針として、「技術力と創造力の革新」「品質の追求」「価値観の共有」「公正な職場環境の提供」「個人および企業人としての成長」「倫理観と公正さ」「社会的責任と環境配慮」を経営理念に掲げ、人材の育成、環境の整備を継続してまいりました。今後も個人と組織の持続的な成長のため、さらに磨き上げていきます。

また、人的資本経営の取組みとして、主に2つの取組みを実施しています。

①スキル管理システムによる社員の必要なスキルの見える化と、スキルと紐づけた技術教育による「技術力と創造力」の向上

②事業戦略と連動した最適人員管理を行うためのHRBP施策※1の推進

これらの取組みにより、社員一人ひとりの成長と組織全体のパフォーマンス向上を図っています

※1  HRBP施策:現場が抱える人材・組織面の課題解決に向けた取り組み(異動・採用・育成等)の支援

 

1)働きがいをもって働ける環境づくり

当社及び国内グループ会社は多様な人が効率的な働き方ができる場所の提供を通じて、新たな「価値創造」に結び付けるという発想のもと、ダイバーシティや働き方改革を推進し、誰もが安心して働きがいをもって働くことができる環境づくりを進めています。

①人材の多様化の推進

国籍や性別等に関係なく、多様なバックグラウンドをもつ人材の採用を推進し、女性活躍だけでなく、シニア社員の活用等、組織変革の土台として人材基盤の強化を図っています。

②働く環境の整備

フレックスタイムやテレワークなどの柔軟な勤務制度を整えるだけでなく、自宅での勤務が難しい社員や出張者が最寄りで利用できるサテライトオフィスの導入や国内生産拠点を含めたオフィスの完全フリーアドレス化を実施するなど、働く場所の多様化だけでなく、よりフレキシビリティの高い働き方やコミュニケーションの活性化に繋げる取り組みを継続推進しています。

また、誰もが働きがいのある環境を整備するため、2024年度より人事制度を刷新するための検討に着手しています。

2)人材育成の促進

社員の成長は会社の成長につながるという考えの下、「人材育成ポリシー」を制定し、様々な成長支援、自立支援を行っています。

<人材育成ポリシー>

●会社は、成長機会を提供し、自己研鑚・OJT・研修を基本とし、社員一人ひとりの成長を積極的にサポートしながら、「学ぶ風土」、「育てる風土」を醸成する。

●管理者は、部下の成長支援の責任がある。成長意欲の醸成、成長機会の提供、フィードバックを行うと共に、率先垂範し、自己成長に努める。

●社員は自己成長に責任を持ち、主体的・計画的に取り組む。

●管理職の部下育成力の強化、社員の成長・自立を支援する。

 

<教育体系と主な施策> 


 

 

①Sanken Nexus School(技術学校)

『社員一人ひとりが繋がり(Nexus)、次世代の個人と会社の成長・成功に繋げる』という理念のもと、2023年4月に技術学校を開校し、コアビジネスとなるパワー半導体について、理系・文系を問わず学ぶ事ができる基礎教育と、技術者がより専門的な技術知識を身に付けるための講座を実施しています。

②フレックス スタディー

社員のビジネス基礎スキルの底上げを目指し、デジタル学習コンテンツ(動画)を使い、いつでも・どこでも学び、成長する楽しさを実感し、学習の習慣化に結びつける教育を2023年度から実施しています。

③管理職研修

2020年度から、将来の経営幹部候補者を選抜し、経営者として必要な知識・視野・リーダーシップなどの習得のための研修を体系化し、継続的かつ計画的に実施しています。

④DX研修

サンケンデジタルビジョンの実現に向け、2021年度から、業務に携わるすべての社員がDXに取組めるよう、基礎教育から段階的にレベルアップできるDX教育プログラムを立上げ、DX人材の育成を推進しています。

 

3)社員の健康づくり

当社及び国内グループ会社では、従業員の健康・維持に向けた積極的な取り組みが、企業全体の持続的な成長に影響を与える重要な要素であることに鑑み、グループ一丸となって職場の健康づくりを推進しています。

 

4)組織の変革

①ES調査をベースとした対話会

組織の変革を目的として、2018年からES調査を年1回実施しています。この調査を活用し、組織の良さや不満、強み・弱みなど現状の課題を全員で共有し、ありたい組織の姿を語り、自分たちで創り出していける組織を目指し、経営層による対話会、また職場単位の対話会を実施しています。

②グループ・コーチング

役職や立場に関係なく、社員同士が信頼関係で結ばれ、傾聴・質問・フィードバックなど本質的な議論・対話ができる組織を目指し、2022年度から管理職に対し、グループ・コーチングを実施しています。

 

(3)リスク管理

サステナビリティ委員会において、リスクと機会の戦略的な取り組み方針が定められ、具体的な対応策の検討が行われております。サステナビリティ委員会の下に環境 (E)・社会 (S)・ガバナンス (G) に特化した部会が設置されており、環境(E)部会においては、環境・気候変動に関連するリスクを検証・管理し、環境マネジメントシステムによる運用の中で管理・監視しています。社会 (S) 部会においては、人権デュー・ディリジェンスによりリスクを抽出し、対応を進めています。また、危機管理委員会では、自然災害や情報管理リスクなどに対応しております。ガバナンス (G) 部会においては、情報セキュリティやコンプライアンスに関するリスクを管理・監視しています。内部監査部門が、各部門における業務の点検を支援するとともに、全社レベルおよび業務プロセスレベルにおける統制活動の有効性を審査・評価しております。これらのリスク管理の内容はサステナビリティ委員会に報告され、そこでサステナビリティに関するリスクについて統合的に管理しております。

詳細については、3 事業等のリスクをご参照ください。

 

 

(4)指標及び目標

(4)-1 気候変動

2015年のパリ協定の決定を踏まえ、シナリオ分析を行った結果、気候変動により平均気温が4℃上昇するシナリオでは物理的リスクとして拠点の洪水等被災リスクの上昇による財務リスク、低炭素経済に移行する1.5℃シナリオでは移行リスクとして炭素税の導入、電力価格高騰による財務リスクが大きいことがわかりました。また一方で、1.5℃シナリオにおいては、自動車のEV化の進展により、当社グループが製造するxEV向け半導体デバイスの売上機会が生じることも判明しました。

これら気候関連リスク・機会のうち、炭素税の財務インパクトが最も大きく、最優先で取り組むべき気候関連課題であることが判明しました。この結果を踏まえ、中長期温室効果ガス排出削減目標を策定しました。これは2020年度を基準年とし2030年度までにScope1,2を33%削減、2050年カーボンニュートラルを目指すものです。2024年度のScope1,2は、2020年度に対し、26%削減となっています(自社調べ)。中長期温室効果ガス排出量削減のための具体策として、2023年度より石川サンケンと福島サンケンにてオンサイトPPA電力の活用を開始しました。また、大連サンケンにおいても2023年度より本格的に太陽光発電、風力由来電力の購入などを開始しました。このように、当社グループでは、再エネ電力利用を進めており、再エネ電力導入率は13%となっております。

なお、上記記載の将来に関する事項は、当連結会計年度末(2025年3月31日)現在における情報に基づいております。

 

■当社グループの中長期GHG(温室効果ガス)排出量削減のための具体策及び事例

①具体策

・国内外省エネの活動の推進

・太陽光発電の導入

・再生可能電力への転換

 

②事例

・福島サンケン:2022年4月から使用する全ての電力を100%「再生可能エネルギー」由来に切り替え。

2023年5月オンサイトPPA

・石川サンケン:2023年4月オンサイトPPA

・大連三墾電気有限公司:2023年 一部風力発電購入

2023年 敷地内太陽光発電電力使用開始

 

③Scope1,2 の削減実績 (※1)                     単位:[kt-CO2]

 

2020年度

2023年度

2024年度(※2)

Scope 1

エネルギー起源CO2

6.4

6.1

6.2

Scope 1

半導体製品の開発製造で使用されるGHG

20

21

17

Scope 2

80

61

59

 

※1 算定範囲:サンケン電気本社、石川サンケン、山形サンケン、福島サンケン、大連三墾電気、EK(2024年度より)

2023年度第三者検証機関により限定的保証にて検証済み。

※2 2024年度データは暫定値。第三者検証機関により検証実施中(2025年6月6日時点)。

 

(4)-2 当社グループの人材に関する指標

人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略において記載した事項に関する主な指標の目標と実績につきましては、次の通りであります。当社及び国内グループ会社は、連携して人材の育成及び社内環境整備に関する重要課題に取り組んでおりますが、具体的な実績及び目標に関しては連結ベースの数値ではなく、当社及び国内グループ会社の数値を記載しております。

 

主な指標(目標及び実績)[当社及び国内グループ会社]

 

目標値

(2025年度)

実績

2024年度

男性育児休業取得率

80

108.3

女性管理職比率

11

5.8

 

 

 

3 【事業等のリスク】

当社グループの経営成績、財政状態等に影響を及ぼす可能性があるリスクとして主に以下の事項につき想定しております。それら事項による影響は将来も引き続き監視を強化し、継続した対応を行ってまいりますが、本項に記載した将来に関する事項は、当連結会計年度末(2025年3月31日)現在において判断したものであり、想定を上回る、もしくは想定外の未知なるリスクの発生など不確実性を内在しています。このため、将来生じる実際の結果と大きく異なる可能性と、その対応について以下の通り記しますのでご留意下さい。

なお、社会の複雑化とグローバル化が進展し、当社グループを取り巻く環境が目まぐるしく変化していることから、2025年6月に代表取締役社長CEOを委員長とするリスク管理委員会を設置しました。当委員会を中心に体系的なリスクマネジメントの強化を図ってまいります。

 

(1) 外部環境リスク

①国際情勢

国際的な紛争の多発する状況や米国の政策変化による世界的な影響が、グローバルに事業展開する当社グループへ影響を及ぼす可能性があります。直接的には原材料価格及びエネルギーコストの高騰によるコスト増や部材調達難の発生により、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼすおそれがあります。また、間接的には、相互関税による各顧客の需要変動や各国における法改正・制度や規制変更などが当社グループの生産及び販売活動に影響を及ぼす可能性があります。

こうしたリスクに対し、当社グループでは、政治・経済・市場動向などの情報収集、モニタリングを行い、最適なサプライチェーンの構築と見直しに努めております。不測の事態への対応については、発生した事象の内容とその重大性、影響度に応じて対応する社内体制を定めており、特に海外における人的安全管理に関しては、情報の収集及び当社グループ内での共有化を行い、非常時における迅速な対応と事業活動への影響最小化に努めております。

 

②為替・金利変動

当社グループのビジネスは、日本国内のほか、アジア、北米、欧州等の海外各国において、部材調達、生産及び販売を行っております。当社グループは当該各国、地域における現地通貨、もしくは米ドルにて会計処理を行っていることから、円換算時の為替レートにより業績に影響が及ぶ可能性があります。一例として、外国通貨に対する円高、特に米ドルに対して円高に変動した場合には、当社グループの業績にマイナスの影響を及ぼす可能性があります。為替レートの変動が想定から大きく乖離した場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループが部材調達及び生産を行う国の通貨価値の上昇は製造コストの押し上げ要因となり、業績に影響が及ぶ可能性があります。また、金利の変動は、支払利息、受取利息あるいは金融資産及び負債の価値に影響を与え、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

これらのリスクに対し、当社グループではサプライチェーンにおける部材調達や生産場所の見直しに努め、また、為替予約取引等によるリスクヘッジや、固定金利・変動金利のバランス等を考慮した適切な資金調達等を行い、米ドル及び円を含む主要通貨間の為替レートや金利の短期的な変動による影響の最小化を図っております。

 

③資金調達

当社グループは、設備投資、研究開発、所要運転資金などの資金調達方法として、社債の発行、コマーシャル・ペーパーの発行、コミットメントライン契約、銀行借入等を行っております。当社グループに対する債券市場あるいは金融機関、信用格付機関からの信用が低下した場合、こうした資金調達手段が制限されるか、もしくは調達コストが上昇し、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。また当社グループは一部の金融機関からの借入について財務制限条項が付されており、財政状態の著しい悪化によりその財務制限条項に抵触し、金融機関が借入金の繰上げ返済請求をした場合、当社グループの財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。

これらのリスクに対し、当社グループは将来のキャッシュ・フロー予測に基づく資金計画を策定し、計画の進捗状況を随時把握・報告し、適切な経営判断を下すことにより、財務規律を遵守した事業活動並びに財務制限条項の要求基準を安定的に充足するべく財務体質の改善・強化に取り組んでいます。また、資金調達においては手段の多様化とともに、保有資産に応じた期間・満期を考慮することによりリスクの軽減を図っています。当社グループは今後もディスクロージャーの透明性確保に一層努めるとともに、事業・財務状況についての市場、金融機関、信用格付機関との適切なコミュニケーションの維持により、安定的な資金調達実現に向け努めてまいります。

 

④環境リスク

当社グループは、「事業の推進によるCO2の削減(省エネ・高効率化)」および「事業活動を通じた環境負荷の低減」を重要課題として掲げ、地球規模での環境・社会課題への取組み、産業・経済・文化の発展に貢献する企業を目指しております。当社グループはパワー半導体メーカーとして、環境負荷低減を目指した製品設計、検証、生産体制、生産工程の構築を進め、環境負荷低減に貢献する製品の販売促進に取り組んでおります。製品の製造過程や製品に含まれる環境負荷物質につきましても、欧州REACH規制※1をはじめとした各国・地域での法規制動向を踏まえ、管理並びに削減に取り組んでおります。サステナビリティへの取り組みにつきましても、気候変動や生物多様性への取り組みとして環境マネジメントシステムを活用し実施しております。当社グループの事業の特性から、省エネ、省資源に関しては指標を設定し、環境データとして当社ホームページで適宜情報開示を行っております。

また、気候変動につきましては、TCFDガイダンスに沿ったシナリオ分析により、気候変動が当社の事業に及ぼすリスクと機会を把握し今後の対応について明確にしています。半導体製造プロセスにおいては大量の水を使用するため自然災害や気候変動による水資源の枯渇や喪失によって事業活動が制限されるリスクを認識し、LEAPアプローチ※2により評価を進めております。

当社グループにおけるリスクにつきましては、環境に係る規制を遵守できない状況に陥った場合、環境負荷物質を大量に漏洩させるなどの事故を起こした場合、あるいは含有が禁止されている環境負荷物質を製品から排除できなかった場合、その対策のために多額の費用が生じるほか、事業活動の制限、顧客への賠償責任、社会的信用の低下を招き、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。環境負荷物質を含む化学物質に関しましては、環境マネジメントシステムにて物質評価を実施し対応が必要となった場合には、規定に基づき、影響の大きさに合わせた緊急事態対応訓練を実施しています。影響の大きさは、以下の通り、通常時、非通常時、緊急時の各レベルを想定し、大気系排出、水系排出、土壌系排出を調査してリスクを特定しております。


 

これらのリスクは環境マネジメントシステムによる運用の中で管理・監視すると共に、サステナビリティ委員会に設置された環境部会において、環境・気候変動に関連するリスクを検証・管理し、その内容はサステナビリティ委員会に報告・集約され、気候変動関連リスクを含む事業リスクについて、適切な対応を経営計画に組み込んでいます。

※1  欧州REACH規制:Registration, Evaluation, Authorization and Restriction of Chemicalsの略。2007年6月1日に発効した化学物質の総合的な登録、評価、認可、規制の法規。

※2  LEAPアプローチ:Locate(発見)、Evaluate(診断)、Access(評価)、Prepare(準備)のプロセスから構成される、自然関連課題の特定と評価のためのアプローチ。

 

⑤災害・感染症リスク

自然災害のリスクに関しては近年、地球温暖化の影響と推測される大雨、大型台風・ハリケーンなどの異常気象や大規模地震の影響により、事業活動の停止やサプライチェーンの寸断が想定され、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

これらのリスクに対し、平時より危機管理委員会による自然災害等に関するリスクの把握と対策、備蓄品の準備、防災訓練等を実施しており、また同委員会と各拠点による緊密な連携によりさらなる体制強化を図っております。当社グループの生産子会社の多くは、地震リスクが比較的高い日本国内にあるため、大規模地震が発生した場合に備え、直接的な被害を最小限に抑え、早急かつ円滑な操業再開を可能とすることを基本的な方針とし、当社及びグループ会社の地震災害対策の計画・具体化を進めています。具体的な有事対応として、2024年1月1日に発生した能登半島地震では、震源地に近い石川サンケン株式会社の3工場(堀松工場、志賀工場、能登工場)が被災し、同工場における製品の生産・出荷が一時的に停止する事態が生じたため、災害対策本部を速やかに設置し、従業員の安否確認を第一優先として対応、工場の早期再稼働に向けた対応を進め、2024年3月末までに全ての工場において、全面的に生産を再開いたしました。

それらを教訓に平常時の取組みとしては、災害発生に備え、災害対策マニュアル(地震、風水害、雷害、電力停止、火災)を策定しております。災害避難訓練については執務室のフリーアドレス化やフレックスタイム制度に対応した方式を新たに構築するなど、災害対応力の向上を図っております。また安否確認システムを導入しており、危機発生時には、従業員とその家族の迅速な安否確認と速やかな支援に繋げる体制を構築しております。事業継続に関する取り組みとしては、主に大規模地震のリスクを想定し国内生産子会社毎に事業継続マニュアルを策定しており、災害発生時の被害を最小限に抑え、早急かつ円滑な操業再開が可能となるよう努めると共に、被災時に培った教訓や経験を活かし、災害発生時の対応計画の見直しを積極的に行い、国内外に生産拠点を分散して配置する等、事業継続力の強化を目的とした活動や管理の仕組み作りに取り組んでおります。

感染症のリスクに関しては、新型コロナウイルス感染症対策での経験を基に、新たな感染症が発生した場合においても、災害対策本部を設置し、影響の最小化と事業継続のための施策検討を行うこととしております。また、当社グループ各社においても当社との連携・情報共有を図ることとしております。

 

(2) 事業活動リスク

①新製品開発

当社グループは、変化し続ける市場ニーズに沿った製品を開発し販売するビジネスを展開中ですが、製品のタイムリーな市場投入が出来なかった場合、あるいは市場に受け入れられなかった場合、当社グループの収益性が低下し、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

こうしたリスクへの対応として、各事業部門による市場動向・顧客ニーズ・競合製品に関する情報収集と、マーケティング機能による情報分析に基づく市場戦略の立案・管理及び次世代製品の企画策定を推し進め、顧客の潜在ニーズを先取りした製品開発、タイムリーな市場投入と収益性の改善に取り組んでおります。新製品開発においては、開発ゲート管理の強化により、品質、コスト、日程順守状況を監視し、その実現力や状況変化に対する対応力を向上させるとともに、新製品開発活動を加速すべく、当社ものづくり開発センターを核とする開発改革を推進しております。

 

②価格競争

半導体業界における価格動向は需要変化により上下するものの、長期的には価格低減による競争力確保が必要となります。競合企業の台頭等により、当社製品の価格は大きな影響を受けることから、価格競争は今後とも厳しさを増していくことが想定されます。当社グループの価格競争力を上回るような競合企業による低価格製品の出現、顧客の需要変化、エネルギー価格及び原材料価格の高騰等による収益性の低下といったリスクが存在しております。なお、これにより事業の収益性が低下した場合、固定資産の減損リスクなど当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

これらのリスクに対しては、一層の原価低減に努めるとともに、当社固有の技術を生かした高付加価値製品の市場投入、適正売価条件獲得による既存製品の収益改善、設計段階からの部材共通化・材料厳選・マルチベンダー化などによる原価低減といった調達改革を継続して行い、常に顧客の需要動向を注視することにより対応を図っております。

 

③知的財産権

一部の国や地域では、知的財産権の保護が不十分な場合があり、第三者が当社グループの知的財産を用いた類似製品の製造・販売を効果的に防止できない可能性があります。一方、当社グループの事業に関連した知的財産権が第三者に成立した場合、又は、当社グループにおいて認識し得ない知的財産権が存在した場合には、第三者による知的財産権侵害の主張に基づき、ロイヤリティーの支払い、当該知的財産権の使用禁止もしくは訴訟の提起がなされる可能性があり、これらにより費用負担の増加又は製品の開発・販売の制限といったリスクが存在しております。

これらのリスクに対し、当社グループでは、知財教育の充実による従業員の啓蒙や、製品開発および設計にあたって第三者の知的財産権の調査を積極的に実施しております。また、当社グループは、「2024年中期経営計画」の骨子において、化合物半導体デバイス開発を加速させることとしており、その中で自ら開発した技術とノウハウを用いて競合他社製品との差別化を図っており、これら独自の技術を保護するため、日本を含むアジア地域および欧米諸国を中心に必要に応じて、知的財産権の出願、登録を行っております。

 

④品質問題

当社グループは、顧客の品質基準及び当社の品質基準を満足する各種製品を供給しております。必要となる品質管理体制の維持向上のため、品質管理に関する国際基準ISO9001及びIATF16949の認証を取得し、品質マネジメントシステムの改善に努めております。しかしながら国際基準の認証取得だけでは、製造する全ての製品において欠陥がない状態を維持できるということはなく、想定外の品質問題が発生した場合、製品の回収、修理等が発生してしまう可能性を排除しきれません。大規模な製品の回収、修理等及び損害賠償責任につながるような製品の品質事故は、多額の費用や社会的信用の低下を招き、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼすことになります。

こうしたリスクに対し、現在生産している製品の品質管理を強化すると共に、保有する設計ノウハウや過去から蓄積している品質不具合情報を用いた検証と傾向分析を行い、新規点・変化点の管理強化と検証及び製品企画や設計、試作、量産化の各審査ステージを通じて開発段階から品質の作り込みを実現するための様々な施策を実施し、高度化、複雑化する製品の信頼性確保に努めています。

 

⑤持分法適用関連会社及び出資先の業績

当社グループは持分法適用関連会社の株式を保有し、また投資事業有限責任組合への出資等を行っております。関連会社及び出資先は各々の事業及び財務に関する方針のもとで経営を行っており、関連会社及び出資先の業績が悪化した場合には、当社グループの事業、業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

これらのリスクに対し、関連会社の経営状況を定期的にモニタリングすることや出資先の経営状況をヒアリングすること等により可能な限りリスクを回避するように努めております。

 

(3) コーポレートリスク

①情報セキュリティ

当社グループは、事業を展開する上で、顧客及び取引先の機密情報や個人情報及び当社グループ内の機密情報や個人情報を有しております。これらの情報については、外部流出や改ざん、消失等を防止するため、「情報管理規程」をはじめとする関連規程類を整備するとともに、グループでの管理体制の構築やプライバシーポリシーの制定など、情報管理の徹底に努めております。しかしながら、外部からのサイバー攻撃や、当社役職員の不正行為により、これら情報の流出、改ざん、消失、あるいは当社グループや取引先の情報システムが停止する等のリスクが存在しており、こうした事象が発生した場合、社会的信用の低下、損害賠償費用の発生等、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

こうしたリスクに対し、サイバーセキュリティに関しては、システム管轄部門によるサイバー攻撃対応、不正侵入の防止あるいは検知、データアクセスへの制限、全従業員を対象とする対応訓練など、リスク低減に向けた対応を実施しているほか、サイバーセキュリティについての定期的な内部評価も実施しています。また、人的セキュリティに関しては、SNSの適正な取り扱い、持ち出し可能な記録媒体の使用制限、退職者に対する機密情報の持ち出し防止などを徹底するほか、従業員に対するコンプライアンス教育においても情報管理に対するテーマを充実させ、意識向上を図っています。

 

②コンプライアンス

当社グループは、日本国内のほか、海外各国、地域において開発、生産及び販売拠点を有し、各国、地域の定める様々な法令、規則、規制等(以下、「法的規制」)の適用を受け、事業が成立しております。また、当社グループが全世界において開発、生産及び販売等と遂行する為に必要な技術・製品・材料等の輸出入につきましては、展開する各国、地域の定める関税、貿易、為替、戦略物資、特定技術、独占禁止、特許、環境等に関する法的規制の適用を受け、事業活動を展開しております。当社が様々な地域で事業活動を展開する上で、コンプライアンスは全従業員の基本行動であり、行動規範である「サンケンコンダクトガイドライン」をはじめとする社内規程の拡充と、定期的な研修実施による周知・啓発により社会規範遵守の徹底に努めています。重大なコンプライアンス上の問題が発生した場合、当社グループの事業活動が制限されることはもとより社会的信用の低下を招き、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

こうしたリスクに対し、法的規制については、各事業の所管部門、グループ会社、法務部門における情報収集・分析・検討を実施し、必要に応じて弁護士等の外部専門家への相談・助言を得られる体制を構築しております。社会規範については、全従業員に対するコンプライアンス意識調査を定期的に実施するほか、個人単位で行われていたコンプライアンス教育に職場単位の教育も追加し、教育内容を質・量の両面で充実させています。また、既に運用している「内部通報制度」についても常に見直しを行い、利便性の向上を図っております。

 

③税務リスク

当社グループは、世界各国に生産・販売拠点を有しており、各国税務当局との間で見解の相違が生じる場合、多額の追徴課税を課されるリスク及び移転価格税制の課税による二重課税リスク等の税務リスクがあります。また、税制の変更が当社グループの予想を超えて実施された場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

これらのリスクに対し、当社グループでは、税務に関するガバナンス体制を整備するとともに、各国・地域における税制の変化に関して海外子会社と情報共有を実施することで、早期に税務リスク情報を収集し、法令の立法趣旨に照らして税務処理の決定を行っております。また、税務処理に不確実性が残った場合は、外部専門家への相談を行い税務リスク低減に努めております。

 

④人材採用・確保

当社グループのグローバルな事業活動を維持し、継続的な事業発展を続けるための人材採用と確保は重要課題の一つでありますが、急速な市場規模の拡大、技術革新における専門性の高い人材獲得競争の激化により、今後さらに優秀な人材の維持確保が難しくなる可能性があります。

当社はこれらの課題解決に向け、HRBP施策※3を推進しながら、計画的な定期・中途採用、外国籍社員採用やリファラル採用等様々な採用手法の実施・強化、シニア層の活用、働き方改革の促進、福利厚生の充実を図り、多様な人材の確保に努めております。また、離職率削減並びに人材育成の一環として採用後の各種資格取得に対する費用サポートの充実や社内での専門知識取得講座の拡充、並びに支援などを強化しております。

※3  HRBP施策:現場が抱える人材・組織面の課題解決に向けた取り組み(異動・採用・育成等)の支援

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

 

(財政状態)

当連結会計年度末における資産の部は、2,590億67百万円となり、前連結会計年度末より1,245億24百万円減少いたしました。これは主に、棚卸資産が258億74百万円減少し、有形固定資産が607億36百万円減少し、無形固定資産が710億98百万円減少したことなどによるものであります。
 負債の部は、1,111億38百万円となり、前連結会計年度末より738億33百万円減少いたしました。これは主に、1年内返済予定の長期借入金を含む短期借入金が168億43百万円減少し、未払費用が122億24百万円減少し、長期借入金が492億45百万円減少したことなどによるものであります。
 純資産の部は、1,479億28百万円となり、前連結会計年度末より506億90百万円減少いたしました。これは主に、為替換算調整勘定が159億21百万円減少し、非支配株主持分が787億49百万円減少したことなどによるものであります。

 

(経営成績)

当連結会計年度は、新たにスタートした2024年中期経営計画(以下、「24中計」)の初年度に当たりますが、2024年1月に発生した能登半島地震によって被った大きな損失からの立て直し期間と定めました。そのため、震災に起因する分配可能額欠損の早期解消を図るためのコーポレートアクションを実行しました。2024年8月には連結子会社であったAllegro MicroSystems, Inc.(以下、「アレグロ」)株式の一部を売却し、得られた資金については、24中計期間での資金需要、財務体質の抜本的な改善等の計画を立案しました。また、ファブライト戦略として、連結子会社であったPolar Semiconductor, LLC(以下、「PSL」)につきましては、ファンダリ企業への転換を目的とした第三者割当増資を行い、2024年9月に完了いたしました。この第三者割当増資において、アレグロ株式の一部売却によって得られた資金の一部について、PSLへの支援金として拠出しました。一連のコーポレートアクションにより、アレグロは持分法適用関連会社となり、PSLは直接出資から投資会社組成によるリミテッド・パートナーシップ(以下、「LPS」)を通じた間接出資に切り替わり、それぞれ連結対象から除外されました。この様に、2025年3月期は、当社グループが大きく姿を変える年度となりました。

 

この様な変化があった当連結会計年度の経営環境は、高インフレ状態が継続する中で米国政策動向等の影響もあり、景気の先行きは不透明感を増しながら推移しました。当連結会計年度の業績につきましては、アレグロが連結対象から除外されたことから、連結売上高は1,216億19百万円と、前連結会計年度比1,136億1百万円48.3%減少いたしました。損益面につきましては、サンケンコアでの改善があったものの、アレグロでの収益環境の影響を受け、連結営業損失37億88百万円(前連結会計年度 連結営業利益195億39百万円)、連結経常損失142億76百万円(前連結会計年度 連結経常利益182億46百万円)を計上する結果となりました。親会社株主に帰属する当期純利益につきましては、アレグロ株式の一部を売却したことにより、509億34百万円(前連結会計年度 親会社株主に帰属する当期純損失81億12百万円)となりました。

なお、当社はアレグロ株式の一部売却で得られた資金より、株主還元策として、2024年12月より自己株式の取得(上限株数600万株、上限金額300億円)を実施しております。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、607億44百万円となり、前連結会計年度末に比べ126億28百万円の増加となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、97億6百万円のマイナスとなり、前期に比べ252億34百万円の収入減となりました。これは主に、棚卸資産の増加によるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、980億51百万円のプラスとなり、前期に比べ1,871億62百万円の収入増となりました。これは主に、投資有価証券の売却による収入によるものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、478億91百万円のマイナスとなり、前期に比べ991億67百万円の支出増となりました。これは主に、前年度において長期借入れによる収入、及び当年度において短期借入金の減少、並びにコマーシャル・ペーパーの減少によるものです。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

当社グループは、単一の事業セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。

(生産実績)

当連結会計年度における生産実績は、次の通りであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

半導体デバイス事業

130,256

62.6

 

(注)1 金額は、販売価格で表示しております。

   2 当連結会計年度において、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載の通り連結範囲の変更を行っております

 

 

(受注実績)

当連結会計年度における受注実績は、次の通りであります。

セグメントの名称

受注高

受注残高

金額(百万円)

前年同期比(%)

金額(百万円)

前年同期比(%)

半導体デバイス事業

120,241

49.6

15,548

14.7

 

(注)1 当連結会計年度において、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載の通り連結範囲の変更を行っております

 

(販売実績)

当連結会計年度における販売実績は、次の通りであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

前年同期比

金額(百万円)

構成比(%)

金額(百万円)

増減率(%)

半導体デバイス事業

121,619

100.0

△113,601

△48.3

 

(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

2 相手先別販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10未満であるため、相手先別販売実績及び総販売実績に対する割合の記載を省略しました。

3 当連結会計年度において、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載の通り連結範囲の変更を行っております

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

当社グループの財政状態、経営成績については以下の通り分析しております。
  なお、本項に記載した将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年6月26日)現在において判断したものであり、不確実性を内在しているため、将来生じる実際の結果と大きく異なる可能性もありますのでご留意ください。

 

① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

経営成績等の分析

(売上高及び営業損益)

当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度に比べ1,136億1百万円(△48.3%)減1,216億19百万円となりました。これは主として、アレグロを連結範囲から除外したことによるものであります。

当連結会計年度の売上原価は、売上高の減少に伴い、前連結会計年度に比べ516億50百万円(△34.8%)減966億84百万円となり、売上原価率は前連結会計年度に比べ16.4ポイント悪化し、79.5%となりました。 
 当連結会計年度の販売費及び一般管理費は、前連結会計年度に比べ386億23百万円(△57.3%)減287億23百万円となりました。これは主として、アレグロを連結範囲から除外したことによるものであります。売上高販管費比率は前連結会計年度に比べ5.0ポイント良化し、23.6%となりました。
 この結果、当連結会計年度の営業損益は、前連結会計年度に比べ233億27百万円減37億88百万円の損失となりました。

 

(為替変動の影響)

当社グループの海外売上高は891億14百万円で、連結売上高総額の約73.27%を占めており、そのほとんどを米ドル建で取引しております。また、主要な在外連結子会社の財務諸表は米ドル建で作成されております。このため、為替相場の変動は、円高が売上減少、円安が売上増加の方向に影響する傾向があります。
 一方、原価面でみますと、ほぼ同じ外貨ボリュームがあることから、売上高への影響額は利益段階では縮小することになります。

 

(営業外損益及び経常損益)

当連結会計年度の営業外損益は、前連結会計年度に比べ91億95百万円損失(純額)が増加し、104億88百万円の損失(純額)となりました。これは主として、為替差損が増加したことなどによるものであります。
 この結果、当連結会計年度の経常損益は、前連結会計年度に比べ325億22百万円減142億76百万円の損失となりました。

 

(特別損益)

当連結会計年度の特別損益は、前連結会計年度に比べ734億93百万円利益(純額)が増加し、647億77百万円の利益(純額)となりました。これは主として、持分変動利益を計上したことなどによるものであります。

 

(親会社株主に帰属する当期純損益)

当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純損益は、前連結会計年度に比べ590億47百万円増509億34百万円の利益となりました。

 

経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等については、2024年4月から向こう4ヵ年にわたる中期経営計画において、最終年度である2028年3月期の目標値をサンケンコアの連結売上高1,000億円以上、連結営業利益率10%としております。当連結会計年度においては、サンケンコアの連結売上高は900億円、連結営業利益率は2.2%となりました。

 

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

(キャッシュ・フロー)

当社グループの資金状況は、「営業活動によるキャッシュ・フロー」は、97億6百万円の支出(対前年度比252億34百万円減)となりました。前年度比の主な要因は、棚卸資産の増加によるものです。「投資活動によるキャッシュ・フロー」は、980億51百万円の収入(対前年度比1,871億62百万円増)となりました。前年度比の主な要因は、投資有価証券の売却による収入によるものです。「財務活動によるキャッシュ・フロー」は、478億91百万円の支出(対前年度比991億67百万円減)となりました。前年度比の主な要因は、前年度において長期借入れによる収入、及び当年度において短期借入金の減少、並びにコマーシャル・ペーパーの減少によるものです。これにより、当連結会計年度末における有利子負債残高は631億43百万円となり、有利子負債依存度は24.4%となりました。これらの活動の結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、607億44百万円(対前年度末比126億28百万円増)となりました。

 

(財務政策)

当社グループの資金調達の手段は、社債の発行、コマーシャル・ペーパーの発行、コミットメントライン契約、銀行借入などでありますが、2025年3月31日現在の残高は、1年内返済予定の長期借入金を含む短期借入金217億8百万円、コマーシャル・ペーパー10億円、1年内償還予定の社債を含む社債150億円、長期借入金253億36百万円となっております。当社グループは、運転資金及び設備投資資金の調達は内部資金によることを基本としておりますが、当社グループの成長を維持するために将来必要な運転資金及び設備投資資金につきましては、営業活動によるキャッシュ・フローのほか、未使用のコマーシャル・ペーパー発行枠290億円、当座貸越未実行分408億円などにより調達可能と考えております。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

また、連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

 

5 【重要な契約等】

(固定資産の譲渡)

当社は、2024年4月25日の取締役会において、下記の通り固定資産を譲渡することを決議し、2024年4月26日に契約を締結いたしました。

 

1.譲渡の理由

経営資源の有効活用と財務基盤の強化を図るため、旧川越工場の土地、建物を売却することといたしました。

 

2.譲渡資産の内容

(1) 譲渡資産 : 土地・建物

(2) 所在地  : 埼玉県川越市大字下赤坂字大野原677番

(3) 譲渡益  : 1,525百万円

   ※ 帳簿価額、譲渡価額につきましては、相手先との間の守秘事項であるため記載を控えさせて頂きます。

 

3.譲渡先

(1) 名 称

株式会社 GSユアサ

(2) 所在地

京都市南区吉祥院西ノ庄猪之馬場町1番地

(3) 代表者

代表取締役 取締役社長 村尾 修

(4) 資本金

100億円

(5) 事業内容

自動車用・産業用各種電池、電源システム、受変電設備、その他電気機器の製造・販売

(6) 大株主及び持株比率

株式会社ジーエス・ユアサコーポレーション  100%

(7) 当社との関係

当社は、2021年5月に、当社子会社であったサンケン電設株式会社の全株式を株式会社 GSユアサに譲渡いたしました。その他、特筆すべき関係はございません。

 

 

4.譲渡の日程

取締役会決議日 2024年4月25日

契約締結日   2024年4月26日

物件引渡日   2024年4月26日

 

5.当該事象の損益への影響

当該固定資産の譲渡に伴う売却益は、特別利益として計上しております。

 

(Polar Semiconductor, LLCの第三者割当増資)

当社は、2023年1月27日開催の取締役会において、連結子会社であるPolar Semiconductor, LLCが第三者割当増資による新株式の発行を行うことを決議しておりましたが、2024年4月25日開催の取締役会において、Niobrara CapitalとPrysm Capitalが新たに設立する共同投資会社を割当先とする第三者割当増資による新株式の発行を行うことを決議し、2024年9月に完了しました。

詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(企業結合等関係)」に記載しております。

 

(Allegro MicroSystems, Inc.株式の売却)

当社は、2024年7月24日開催の取締役会において、当社の保有するAllegro MicroSystems, Inc.(以下、アレグロ)の普通株式の一部を、アレグロによる自己株式の取得を通じて売却することを決議し、2024年8月に完了しました。

詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(企業結合等関係)」に記載しております。

 

 

6 【研究開発活動】

経営理念の一つである「パワーエレクトロニクスとその周辺領域を含めた最適なソリューション提供」に基づき、当連結会計年度における研究開発活動を進めてまいりました。パワーモジュール、パワーデバイスの領域での成長戦略の実現及び技術マーケティングの確立と効率的な開発マネジメントによる新製品開発の促進を進めるとともに、連結子会社にも研究開発部門を置き、グループを挙げて研究開発に取り組んでおります。当連結会計年度における研究開発費の総額は売上高の10.26%に当たる12,484百万円であります。
 

製品開発における技術マーケティングの導入により成長市場へのシフトを担う製品開発に注力するとともに、前工程となる半導体素子プロセスから、後工程となる実装、パッケージ技術のプラットフォーム化(SPP: Sanken Power-electronics Platform)を進めることにより、設計改革、業務改革を推進し開発スピードのアップを図っております。当連結会計年度における研究開発の主な成果は次のものがあります。

 

・次世代MICプロセスの採用によりリードタイムを短縮化するとともに、H side OCP(過電流保護機能)追加による二次的な破壊拡大の防止、及びLS(ローサイドパワーIGBTエミッタ)–COM(コモン)間ESD保護素子追加によるセット組立時の静電気破壊リスクの回避を行った白物家電用モータドライバIC SIM1シリーズを開発した。

・新構造により低ノイズでVFスイッチングオフ特性の優れる新しいプラットフォームの高速リカバリダイオード(FRD)であるBlueFRD1を開発した。

・高耐圧電源ICの起動回路用LDMOS(Lateral Double-diffused MOSFET)において、ESD保護素子機能を素子内に統合することでチップ面積の増加を最小限に抑えながら、高いESD耐量を有する新たなLDMOSを開発。このLDMOSは、製品端子であるStart-up端子に接続されるため、製品のESD耐性強化につながり、より安全で信頼性の高い高耐圧電源IC製品の実現に大きく寄与する。

・近赤外光は人間の眼に見えにくく、照明やディスプレイでは不要とされてきたが、植物育成や分光分析の分野では重要な光であり、LEDを用いた検討がなされている。この近赤外発光する蛍光体を用いた様々なLEDを開発した。

・電動化や自動運転化、コネクテッド化など自動車は大きな変革期に入っており、これに伴い自動車のE/Eアーキテクチャは、機能分散型からドメイン型、ゾーン型へと急激な変化が起こっている。ゾーン型のE/Eアーキテクチャでは、従来のメカリレーやヒューズを用いた配電システムからIPD等の半導体を用いた配電システムへの切り替えが見込まれることから、次世代ゾーン型配電システムに必要となる機能を盛り込んだ次世代車載用IPD“SIP1シリーズ”を開発した。

・大型TVやEV車用途の高圧バッテリ充電器向けのLLC電源では、電源スリム化のためトランスの小型化及びパワー素子のヒートシンクのレス化・小型軽量化が求められている。この要求に応えるためのソリューションとして、電源二次側をフルブリッジ構成とし、高出力電圧・低電流化を行い、さらにパワー素子の温度を下げるため同期整流化を行い、効率の良いスイッチング制御を行うための新しい同期整流コントローラICを開発した。

・スイッチング電源の設計計算は、使用ICへの理解やトランス設計・回路設計等の知識が必要であり、電源設計を容易にすることは、その電源ICの採用機会を拡大する効果が期待できるため、当社ICを使用した電源設計支援ツール「Sanken STR Pro」を開発した。

・スマートファクトリー化の取り組みである目視検査の画像化拡大に伴い、さらなる生産性向上、画像検査精度向上、品質管理強化、コスト削減など、画像検査システムに求められる要求が高まる中、これらの要求に柔軟に対応することをコンセプトとし、当社独自の内製画像検査システム「AI-fact」を開発した。

・スマートファクトリー推進における自動流動を実現するに当たり、設備のパラメータデータや稼働データ及び品質データなどを吸い上げ、チェックシートへの自動転記やその結果から稼働可否を判断することが必須となる。しかし、データ収集 (IoT) 非対応の設備や一部データについては設備仕様上、データの吸い上げができない状態であるが、こうした状態への対応を可能とする自動流動可能な生産システム基盤を構築した。

 

なお、SiCデバイスに関しては、2023年度に採択されたNEDO先導研究プログラム『SiCスマートパワーIC技術の研究開発』を産業技術研究所と共同で遂行中であり、SiCの特性を最大限引き出すSiC-IC技術の開発を行っております。

GaNデバイスに関しては、NEDO基盤技術研究促進事業で得られたGaN on Si技術を活かし、新たに買収したパウデック社所有のPSJ技術と融合させることで、独自のデバイス構造を開発し、早期に市場投入できるよう対応中です。また、並行してGaN基板を用いた縦型デバイスの検討を、名古屋大学中心に進められているGaNコンソーシアムに参画し行っております。