文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、電子部品事業、車載情報機器事業、物流事業を柱とし、各事業が密なる連携によるシナジーを発揮し、グローバルな事業展開を行っています。
目指す姿を「革新的T型企業“ITC101”」としています。コアデバイスを深耕して製品力を高める「縦のI型」と、広範なデバイスや技術をシステムに仕上げる「横のI型」を合わせた革新的な「T型」企業へと進化し、新たな価値を提供することで2024年度までに売上高1兆円、営業利益率10%を目指します。このために、電子部品事業では「部品サプライヤーから機能デバイスパートナーへの進化」を、車載情報機器事業では「内製コアデバイスを持つモビリティライフクリエーターへの進化」を進めていきます。
なお、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、世界経済、社会生活への影響も不確実さを増しています。このような状況下において、当社グループは各国政府の指導に沿って事業活動地域での感染拡大防止に努めるとともに、従業員の安全を確保し各事業への影響を軽減すべく取り組んでいきます。
電子部品事業は、「人と地球に喜ばれる新たな価値を創造します」という企業理念のもと、人とメディアの快適なコミュニケーションの実現を目指しています。その「ものづくり」の姿勢は、「美しい電子部品を究めます」との言葉に凝縮され、「Right(最適な)」「Unique(独自性)」「Green(環境にやさしい)」を兼ね備えたもの、すなわち洗練された外観のみならず、求められる機能を高い品質で実現し、かつ省エネルギーや省資源等環境への影響も十分に配慮した製品です。その実現には、微細加工技術や金型加工技術、ソフトウェア・IC設計技術、材料加工技術等、多彩な固有技術をベースとした先端のものづくりを常に追究しています。スイッチ、センサなどコンポーネント製品、モジュール製品をはじめ、グリーンデバイスなど新しい製品開発、事業分野にも挑戦しています。
車載情報機器事業では、電子部品事業の車載デバイス・モジュール製品と車載情報機器事業の自動車メーカー向け製品等をひとつにし、これまで両事業が培ってきた技術と、それぞれの得意分野を組み合わせた相乗効果により、今後、人とクルマにかかわる安心・快適・感動を提案するサービス、上質な移動空間の実現に向けた独創的かつ革新的な製品開発に取り組んでいきます。
物流事業では、(株)アルプス物流が電子部品を主な取扱い貨物とし、「ものづくりを支える最適物流を追求し、豊かな社会の実現に貢献します」との企業理念を掲げ、事業領域を「電子部品を核とした総合物流サービス」と定めています。
グループ各社は企業理念のもと連携して、中期・短期の経営計画を推進し、業容の拡大と企業価値の最大化を図っていきます。
(2) 中長期的な経営戦略と目標とする経営指標
2019年4月から2022年3月末まで3年にわたる第1次中期経営計画がスタートしました。目指す姿を「革新的T型企業“ITC101“」、部品サプライヤーから機能デバイスパートナーへの進化、内製コアデバイスを持つモビリティライフクリエーターへの進化とし、2024年度までに売上高1兆円、営業利益率10%を達成する目標を掲げています。
電子部品事業では、HMI、センサ、コネクティビティの三つのコア技術の融合と、これにソフトを内包させた機能デバイスへの進化を目指します。
車載情報機器事業では、車の利用スタイルが変化する中、カーライフ全体を考えた提案型のシステム製品へ、更にそれらに電子部品事業で培ったコアデバイスをあわせた高付加価値製品の開発を目指します。
物流事業では、2019年度より3年にわたる第4次中期経営計画をスタートしました。中期基本方針を「進化する『最適物流』をより多くのお客様に」と定め、「連結売上高1,200億円の達成」と「企業クオリティの向上」に取り組んでいきます。
(3) 会社の経営環境と対処すべき課題
当社グループを取り巻く環境は、不確実性が強まる中で先行きを見通すことが大変困難ですが、エレクトロニクス製品・自動車の需要は、先進国における高機能・多機能化に加えて、中長期的には新興国における需要の増加が牽引役となり、今後も拡大していくものと期待されます。
電子部品事業では、よりエレクトロニクスの重要性が高まる自動車市場、成長は鈍化したものの高機能部品の需要は高いスマートフォン市場、また新たにVR市場が立ち上がりを見せるなど、今後も拡大が見込まれます。当社では、HMI、センサ、コネクティビティの三つの技術領域から優位性の高い製品を継続して生み出し、これらニーズに応えていきます。開発スピードアップ、生産性並びに品質の向上に向けて技術・営業・製造部門が一体となった取り組みを更に強化し、Number1製品を創出していきます。
また、お客様がグローバル各地域に広がり、製品によって短期間での激しい需要増減もある中で、より強固でフレキシブルな生産体制の整備・確立が急務であり、国内外生産拠点の整備を進めるとともに、間接部門を含めた生産性向上により、収益性の強化にもつなげていきます。更に、EHII市場では幅広く、さまざまなビジネス形態がある中で、独自の製品開発と他社との協業や提携などによって事業基盤の確立に取り組みます。
車載情報機器事業では、現在の自動車産業は100年に1度とも言われる大きな変革の時代に入っており、特にCASEと呼ばれる4つの領域においては、インターネットへの常時接続機能の搭載、自動運転、自動車シェアリングサービス、ハイブリッド車や電気自動車の電動化等、他の業界に類を見ないほどの大きな変化が生じています。また、IT企業による自動車業界への進出に代表されるように、自動車業界の枠組みを超えた合従連衡の動きは従来よりも格段に加速しています。今後もCASE領域への経営資源の集中は自動車業界全体のトレンドであり続け、HMI等のサプライヤーは、単なるモジュール製品の開発だけではなく、自動車全体におけるトータルシステムソリューションの提案まで行うことが期待されています。
このように目まぐるしく変化する車載情報機器の市場環境を踏まえ、電子部品事業と当事業の強みを融合させた新製品の開発及び市場投入までの期間短縮は喫緊の課題となっています。経営統合によるシナジーを創出することで、これらの課題に速やかに対処し顧客の期待に応えていきます。
物流事業では、主要顧客である電子部品業界は、さまざまな機器や自動車の電子化の進展、そして新興国需要の拡大によって、今後も成長が予想されています。一方で、商品やマーケットの変化に対応した最適地生産や生販合理化が進んでおり、顧客の物流改革ニーズは高度化かつ多様化しています。このような中、顧客ごとの「最適物流」を追求し、より多くの顧客に提供していくことで、更なるグローバル成長を図ります。
また、その他の事業についても、グループ外部に対する拡販活動の強化などにより、収益への貢献を果たしていきます。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1)新型コロナウイルスの感染拡大に係るリスク
新型コロナウイルスの感染拡大は、全世界の経済活動に多大な影響を及ぼしており、当社グループの顧客及び取引先において生産停止や規模縮小等の対応がされています。当社グループにおいても受注額の変動に応じて工場における生産調整等を適宜実施し、従業員の安全確保も踏まえ生産停止や縮小を行った結果、売上の減少や稼働率の低下を余儀なくされています。現時点において2020年度の世界自動車販売台数が前年比20%減少すると予測しており、特に車載事業の業績への影響が生じると見込んでいます。また、スマートフォン関連製品は顧客の販売予想を基に業績への影響を評価しており、これらを勘案すると翌連結会計年度の第1四半期においては、当社グループの業績への影響は大きいと想定されるものの、第2四半期から緩やかに回復し年度末にかけて収束に向かうと予測しています。また、これらの影響により、当社グループの中期事業目標であるITC101の達成時期は1年程度遅延する見込みです。
これらのリスクへの対応策として、構造改革によるコスト削減を進めるとともに、新規事業やESG環境への投資は継続し、2021年以降のスマートフォン向け製品の拡大や2023年以降のデジタルキャビン製品の拡大に向けた取組みを推進します。また、新型コロナウイルスの感染拡大による不測の事態に備えた短期運転資金を使途として、資金の借入及びコミットメントライン契約を締結し、運転資金を確保しています。
(2)経済状況の変動に係るリスク
当社グループは、電子部品事業、車載情報通信機器事業を中心としてグローバルに事業を展開しており、当連結会計年度の海外売上高は約80.9%を占めています。また、当社グループ製品の大部分は顧客である国内外のメーカーに販売されるため、顧客への販売状況がグローバルの経済動向に左右されることで、当社グループの事業に大きく影響を及ぼす可能性があります。従って、当社グループは直接あるいは間接的に、自動車やスマートフォンなどをはじめとしたグローバルの各市場における経済状況の影響を受ける環境にあり、各市場における景気の変動等によって、当社グループの業績及び財務状況に影響が及ぶ可能性があります。また、予期しない法律又は税制の変更、不利な政治又は経済要因、貿易摩擦、テロ・戦争・その他の社会的混乱等のリスクが常に内在しています。
従って、これらの事象が起きた場合には、当社グループの事業の遂行が妨げられる可能性があり、これらの様々なリスクについて対処していくことができない場合は、当社グループの業績及び財務状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。これらの変化への対応として、生産拠点と販売拠点が綿密に連携し、迅速に顧客に販売動向や市場の動向を共有することで、生産規模の適正化を図っています。
(3)外国為替に係るリスク
当社グループは、グローバルに事業展開しており、結果として為替レートの変動による影響を受けます。一例として、外国通貨に対する円高、特に米ドル及びユーロに対して円高に変動した場合には、当社グループの業績にマイナスの影響を及ぼす可能性があります。従って当社グループでは、先物為替予約によるヘッジ取引や外貨建債権債務の相殺等、為替変動による影響額の極小化を図っていますが、為替レートの変動が想定から大きく乖離した場合、業績への影響を抑制できる保証はありません。
(4)有価証券の時価変動に係るリスク
当社グループは、売買を目的とした有価証券は保有していませんが、当連結会計年度末において、309億円の有価証券を保有しています。時価を有するものについては全て時価評価を行っており、株式市場における時価の変動が当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(5)顧客ニーズ及び新技術の導入に係るリスク
当社グループの事業は、自動車やスマートフォンをはじめとして技術革新のスピードが非常に早く、顧客要求の変化や新製品・サービスの導入が頻繁な市場であり、新たな技術・製品・サービスの開発により短期間に既存の製品・サービスが陳腐化して市場競争力を失ったり、販売価格が大幅に下落することがあります。電子部品事業においては、スマートフォン向けカメラ用アクチュエータの大型化、複数レンズの採用等の動きが進み、車載ビジネスにおいては、CASEに代表されるようにシステムが高度化するなど、急速に技術革新が進んでいます。これらの変化に対応すべく2020年3月期においては、423億円の設備投資、376億円の研究開発を実施しました。しかし、それらの市場の変化に迅速な対応ができない場合や、製品の販売が想定した台数に達しない場合、又は顧客ニーズに合わせた新製品の導入ができない場合、当社グループの業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(6)特定の部品の供給体制に係るリスク
当社グループの事業は、重要部品を当社グループ内で製造するよう努めていますが、一部については、当社グループ外の企業から供給を受けています。従って、これらの供給元企業が災害・事故等の事由により当社グループの必要とする数量の部品を予定どおり供給できない場合、生産遅延や販売機会の損失等が発生し、当社グループの業績及び財務状況に影響が及ぶ可能性があります。
供給問題を未然に防ぐ対策として、サプライチェーンマネジメントの強化に取組み、代替調達先の確保や、災害・事故等の発生時は調達部品の生産地を特定できるシステム等により、迅速な対策が取れるよう取組んでいます。また、一定水準の部品在庫の確保を図ることにより、生産遅延や販売機会の損失等を最小限に留める取組みを進めています。
(7)顧客の生産計画に係るリスク
当社グループの事業顧客である国内外のメーカーからの受注生産のため、顧客の生産計画の影響を直接受けます。また、顧客の生産計画は、個人消費の周期性や季節性、新製品の導入、新仕様や規格に対する需要予測及び技術革新のスピードなどの要因に左右されます。従って、このような不確実性が、当社グループの中長期的な研究開発や設備投資計画の策定に影響を及ぼす可能性があります。対応策として、販売部門と生産部門が綿密に連携し、顧客や市場の動向を迅速に共有化し、生産規模の適正化する取組みを進めています。
(8)M&A及び業務提携・戦略的投資に係るリスク
当社グループは、持続的な成長と中長期的な企業価値向上のため、新規事業領域への参入、新技術の獲得、現行事業の競争力強化を目的として、M&A及び業務提携・戦略的投資を実施しています。これらの実施に当たっては、当社事業計画に照らし合わせ、市場・技術動向や顧客ニーズ、相手先企業のポテンシャル等のリスクを十分に分析した上で、慎重に進めています。しかし、市場環境の著しい変化や、買収した事業が計画通りに進めることが出来ず、投下資金の回収遅れや未回収、追加費用の発生などにより、当社グループの業績及び財務状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(9)競合に係るリスク
当社グループは、例えば、電子部品事業におけるスマートフォン向けカメラ用アクチュエータ、車載情報機器事業におけるナビゲーションなど全ての事業分野において、他社との激しい競争に晒されています。当社グループは、新製品の導入や高品質の製品供給、グローバルなネットワークの整備・拡充等により、顧客満足を得るべく努めていますが、国内外の競合各社との市場における競争は更に激化することが予想されます。従って、失注などの不測事態の発生によって、当社グループの業績及び財務状況に影響が及ぶ可能性があります。
(10)製品品質に係るリスク
当社グループは、品質保証体制を構築し、品質改善活動を通じ、製品の品質維持・向上に努め、また問題発生の未然防止に取り組んでいます。しかしながら、当社グループの製品の品質に起因して顧客の損失が発生した場合、生産物賠償責任保険の適用を超える賠償責任を問われる可能性があります。その結果として、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(11)顧客の財務状況に係るリスク
当社グループは、顧客が適時に支払うことができないことから生じる見積損失について、売掛金に関連する貸倒引当金を維持しています。ただし、通常の業務の過程に関連する売掛金は、担保又は信用保険の対象にはなりません。貸倒引当金は当連結会計年度末において7億円計上されていますが、実質的な売掛金を保有している顧客が景気低迷のために支払いが困難になり、その売掛金を償却しなければならない場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(12)災害等に係るリスク
当社グループは、国内外の各生産拠点において地震などの防災対策を徹底しており、過去の災害発生時には事業への影響を最小限に留めています。しかし、想定を超える大規模な災害が発生した場合には、事業への影響が大きくなる可能性があります。
そのため、当社グループでは、重要な情報インフラのバックアップ体制の整備を進めており、また、災害等が発生した場合は、災害対策本部を設置、迅速に対応にあたる体制を構築しています。
(13)環境汚染に係るリスク
当社グループは、昨年度企業ビジョンを制定し、グループ経営、コンプライアンス及び環境保全についての基本理念と行動指針を定めて当社及び当社子会社に展開しています。その中で、経営姿勢の一つとして、地球との調和を掲げ、環境リスク対策への取組みを行っています。具体的には、化学物質の漏洩防止策や排水・排気管理の徹底、国内事業所における土壌・地下水の浄化等を実施しています。しかし、事業活動を通じて今後新たな環境汚染が発生しないという保証はありません。このような不測の事態が発生又は判明した場合、その対策費用が発生し、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(14)法的手続き及び訴訟に係るリスク
当社グループは、事業活動に関するコンプライアンス体制を構築し、役員・従業員に対するコンプライアンス教育を行う等の方法で、コンプライアンス違反に係るリスクの低減を図っています。しかしながら、当社グループの活動に関連して、独占禁止法や環境規制等の法令違反に関し規制当局による法的手続きが開始される可能性、あるいは知的財産や製品品質に関して取引先や第三者との間で訴訟が発生する可能性があります。これらの法的手続きの開始や訴訟の提起の結果として、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(15)知的財産に係るリスク
特許その他の知的財産は、当社グループ製品の市場の多くが技術革新に重点を置いていることなどから、重要な競争力の要因となっています。当社グループは、自社開発技術において、特許、商標及びその他の知的財産権を取得し、場合によってはそれを行使することなどにより、当該技術の保護を図っています。一方、製品開発に当たっては第三者の知的財産権を尊重した製品開発を行っていますが、第三者による知的財産権侵害の申し立てを受ける可能性はあります。
また、当社グループが知的財産権を侵害しているとして損害賠償請求を提訴されている訴訟案件については、訴状への反論を行っていますが、裁判の経過により将来において訴訟の解決による損害賠償支払が確定した場合には、当社グループの業績や財務状況に影響が及ぶ可能性があります。更に当社グループの製品には、他社の知的財産権のライセンスを受けているものもありますが、当該知的財産権の保有者が将来において、ライセンスを当社グループに引き続き与えるという保証はありません。当社グループにとって好ましくない事態が生じた場合には、当社グループの事業はその影響を受ける可能性があります。
(16)人材の確保等に係るリスク
当社グループの事業の中核の一つである自動車市場では、CASEをはじめとする技術革新が加速しています。これらの環境下、ビジネスを確立・拡大していくためには、多様な分野において優れた専門性を有した人材の必要性がますます高まっています。一方、同業他社を含む各社の採用意欲の高まりや、少子高齢化に伴う労働人口の減少などにより、年々、人材の確保に関する難易度が高まっています。
これに対して当社では、継続的な新卒採用に加え、ニーズに基づいたキャリア採用を実行し、人材を確保するとともに、入社時からの体系的な人材育成や、人事理念に基づく評価、昇進・昇格、賃金制度等により、社員の能力・意欲を高める取組みを行っています。また、ビジネスのグローバル化に対応し、日本においても継続して、外国籍社員の採用にも積極的に取り組んでいます。一方では、社員の高齢化や、定年再雇用者が増加する中、各人の適性に応じた職務の割当てにより、社員一人ひとりの豊富な経験や能力を十分に発揮できる環境の整備に努めています。しかし、雇用環境の変化などにより、当社が求める人材の確保やその定着・育成が計画通りに進まなかった場合には、当社グループの将来の成長に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(17)情報管理に係るリスク
昨今の情報システムへのサイバー攻撃の高度化や、ITを活用したビジネス詐欺の巧妙化などにより、当社が事業活動を通じて創出した情報、顧客・サプライヤー又はその他団体及び個人(従業員含む)よりお預かりした情報などが漏えい、改ざん、破壊、更に当社情報システムが停止させられ利用できないなど、様々なインシデントが発生する可能性があります。
このような事態が発生した場合、当社グループの事業、業績及び財務状況に対して、重要な業務の中断による生産及び出荷の停止、顧客やその他関係者の機密情報漏えいに起因する損害賠償請求などの短期的な影響、企業戦略や新技術の漏えいによる競争力低下、並びに当社グループの企業イメージ毀損による販売機会喪失など、中・長期的な影響を生じる可能性があります。
また、特に自動車業界におけるCASE領域の製品では、サイバーセキュリティ体制整備が顧客の採用条件になりつつあり、対策の遅れが販売機会の損失に繋がる可能性もあります。よって当社では、情報の取り扱いに細心の注意を払うため、情報管理に関する規定の整備、サイバー攻撃を早期に発見し排除するセキュリティシステムの活用に加え、社内研修による従業員の知識習得と意識向上などの対策を講じて情報管理に取り組むとともに、今期から公的な情報セキュリティ認証の取得を目指し、インシデントの予防・発見・回復能力の強化と、その有効性を継続的に維持改善していくための体制整備を開始しています。
(18)公的規制に係るリスク
当社グループは、事業展開する各国において事業・投資の許可、関税をはじめとする輸出入規制等、様々な政府規制・法規制の適用を受けています。これらの規制によって、当社グループの事業活動が制限されコストの増加につながる可能性があります。従って、これらの規制は当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(19)資金繰りに係るリスク
当社グループは、取引先銀行とシンジケートローン契約及びシンジケート方式のコミットメントライン契約を締結していますが、これら契約の財務制限条項に抵触した場合には、借入金の繰上げ返済請求を受けることがあり、当社グループの財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、新型コロナウイルスの感染拡大による不測の事態に備えた短期運転資金を使途として、資金の借入及びコミットメントライン契約を締結し運転資金を確保しています。
(20)固定資産の評価及び減損損失に係るリスク
当連結会計年度末における有形固定資産及び無形固定資産の帳簿価額は2,061億円です。当社グループは顧客の需要予測による将来の販売計画に基づいて設備投資を行っていますが、固定資産の回収可能性は、個人消費の動向、新製品の導入タイミング、新仕様や規格変更への対応、及び技術革新のスピード等に影響を受けます。当社グループは、各市場における製品ライフサイクルを分析し生産設備等の経済的耐用年数を設定しています。
新製品の導入が活発なスマートフォン市場向けの一部の固定資産については経済実態に即してより短期間で償却する等によりリスクの軽減に努めています。
一方で自動車市場においては、エレクトロニクスの重要性が高まり市場拡大が見込まれますが、自動車販売台数に基づく顧客の需要変動や顧客ニーズの変化、CASE領域における技術革新への対応等が遅延した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、投資判断を行う際、その収益性・投資回収予定時期を社内で厳格に精査することで減損損失の計上リスクの軽減に努めています。
しかしながら、急激な経営環境の悪化により収益性が低下し、帳簿価額の全部又は一部を回収できないと判断した場合、減損損失を計上する可能性があります。
(21)繰延税金資産に係るリスク
当連結会計年度末において、繰延税金資産を69億円計上しています。
当社グループは繰延税金資産の回収可能性を評価するにあたり将来の課税所得を見積もっています。将来課税所得は、顧客からの受注見込みや過去の業績、移転価格を考慮した連結会社間の利益の配分等に基づいて算定しています。
当社グループは、経営環境の変化に応じて事業計画を見直し経営成績の維持を図るとともに必要な税務戦略を考慮しています。しかし、将来において顧客の需要変動や移転価格を含む税務関連の動向の変化により課税所得が予想を下回り、すでに計上されている繰延税金資産の全部又は一部を回収できないと判断した場合、当該判断を行った期間に繰延税金資産を取崩し、税金費用が計上される可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。
① 財政状態の状況
当連結会計年度末における総資産は前連結会計年度末と比べ501億円減少の6,255億円、自己資本は、利益剰余金の減少と、自己株式の増加等により、408億円減少の3,244億円となり、自己資本比率は51.9%となりました。
流動資産は、受取手形及び売掛金の減少と、現金及び預金の増加等により、前連結会計年度末と比べ337億円減少の3,691億円となりました。
固定資産は、機械装置及び運搬具、繰延税金資産の減少と、無形固定資産の増加等により、前連結会計年度末と比べ164億円減少の2,563億円となりました。
流動負債は、短期借入金の増加と、支払手形及び買掛金の減少等により、前連結会計年度末と比べ100億円増加の1,980億円となりました。
固定負債は、長期借入金の減少と、退職給付に係る負債の増加等により、前連結会計年度末と比べ204億円減少の718億円となりました。
② 経営成績の状況
当連結会計年度における世界経済は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、先行きも厳しい状況が続いています。2019年4月から2019年12月において、米国の製造業に減速傾向が見られましたが、金融緩和や良好な雇用環境を背景に個人消費の下支え効果もあり堅調に推移しました。一方、欧州では世界経済の景気減速により輸出の低迷が続き、英国のEU離脱をめぐる混乱も景気に悪影響を及ぼしました。中国では、米国との貿易協議が第1段階の合意をしたものの、貿易摩擦の長期化の影響を受け米国向け輸出の減少や個人消費の減少等から景気の低迷が続きました。日本経済では製造業において減速傾向が見られたものの、良好な雇用環境が続き総じて景気は堅調に推移しました。2020年1月から2020年3月では、全世界に感染拡大した新型コロナウイルスの影響が2020年2月に中国から始まり、その後、同時かつ連鎖的に欧米、アジアへの感染が広がりました。3月以降は各国政府の感染拡大抑制策により、各国製造業の工場停止等が発表され、当連結会計年度の世界経済に多大な影響を及ぼしました。
経営者が認識しているセグメントごとの経営成績は次のとおりです。
[電子部品事業]
エレクトロニクス業界においては、自動車市場ではCASE(Connected、Autonomous、Shared & Services、Electric)への開発は活発化したものの、新車の世界販売台数が前年比で減少するなど、低調に推移しました。スマートフォン市場において、一部の製品は好調に推移したものの、新型コロナウイルスの影響が大きく全体ではマイナス成長となりました。EHII(Energy、Healthcare、Industry、IoT)各市場では、IoT(Internet of Things)を活用した具体的な展開が進み、更にAIを組み合わせた新たなビジネスが提案される等、動きが活発に進んでいます。
この中で、電子部品事業における車載市場では、自動車市場の景気減速の影響を受けモジュール製品や通信用高周波製品等が全般にわたり軟調傾向となりました。また、民生その他市場においても、スマートフォン向けに新規顧客開拓や拡販活動を進めたものの軟調傾向となりました。これらに加え、新型コロナウイルスの全世界における感染拡大の影響もあり、前期比で売上高及び営業利益ともに減少しました。
(車載市場)
電子部品事業における車載市場では、自動運転時代を見据えて車室内の高品位な入力デバイス(Premium-HMI)やCASEへの取り組みにおいて、タッチインプットモジュール等次世代への具体的な提案活動を進めました。しかし、2020年2月以降の中国における当社工場での新型コロナウイルスの感染拡大抑制対応及びサプライチェーンの寸断により、生産、販売への影響が拡大しました。その後、中国各工場では順次再稼働しましたが、同時かつ連鎖的な欧米、アジアへの感染が拡大しました。3月以降は各国政府の感染拡大抑制策により、欧米アジア及び日本国内の顧客においても工場稼働の停止が発表され、これらにより車載市場はグローバル全般にわたり低調となりました。
当連結会計年度における当市場の売上高は2,420億円(前期比12.9%減)となりました。
(民生その他市場)
電子部品事業における民生その他市場では、スマートフォン向け各種製品を生産する当社中国工場の稼働停止措置が春節明け以降も継続して生産に影響を受けました。この中で、スマートフォン向けカメラ用アクチュエータやタッチパネルの新規顧客開拓や拡販活動を継続していましたが、新型コロナウイルスの影響もあり、一部の商品においては好調に推移したものの全体として低調に推移しました。EHIIでは、IoTを用いた物流トラッカーがAGC株式会社の製品輸送用パレットに日本国内で初めて採用される等、具体的な活動を展開しました。
当連結会計年度における当市場の売上高は1,826億円(前期比4.2%減)となりました。
以上の結果、当連結会計年度の電子部品事業の売上高は4,247億円(前期比9.4%減)、営業利益は161億円(前期比45.5%減)となりました。
[車載情報機器事業]
自動車業界においては、世界最大の市場である中国での新車販売が景気悪化や米中貿易摩擦等の影響を受けて減少し、欧米市場においても販売台数が前期比で減少するなど、世界の自動車市場は総じて厳しい状況で推移しました。また、コネクテッドカーや自動運転に次世代移動通信規格5Gを活用するためのIT・通信等の業種・業態を超えた企業間の開発競争が激化しました。
このような中、車載情報機器事業では経営統合のシナジー効果の早期実現を目指し、ディスプレイ製品と電子部品事業のセンサを連動させた新製品開発や、ナビゲーションのGPS(Global Positioning System)にセンサ及び画像処理技術を組み合わせたドローンシステムの実用化に注力しました。また、音響スピーカーの開発で培った技術を応用し、歩行者に自動車の接近を知らせる車両接近通報システムの開発に着手し、更にブロックチェーン技術を活用したカーシェアリング向けデジタルキーの開発やコネクテッドカーの車両情報管理のため、IT企業のフリービット株式会社との業務提携によるMaaS(Mobility as a Service)ビジネスの強化を図りました。
当連結会計年度の業績は、電子部品事業における車載市場と同様に、新型コロナウイルスの欧米各国への感染拡大により、移動規制や顧客工場の稼働停止等、3月以降の純正品等の販売が急速に減速した影響を受けました。前期比で一部製品が好調に推移したため売上高は増加しましたが、将来の受注獲得による研究開発費等により営業利益は減少しました。
以上の結果、当連結会計年度における車載情報機器事業の売上高は3,062億円(前期比0.9%増)、営業利益は56億円(前期比59.4%減)となりました
[物流事業]
物流事業の主要顧客である電子部品業界において、各種電子機器、自動車、産業用機器などの市況悪化を受けて荷動きが減少しました。また、新型コロナウイルスの感染拡大による顧客の工場稼働停止、各国における様々な規制の強化もあり、2020年2月以降は中国、3月には主に北米・アセアンにおいて、貨物の取扱高に一部影響が出ました。一方、将来的には次世代移動通信規格5G、IoT、自動車の電子化など、次世代技術の進展により半導体や電子部品は需要拡大が見込まれています。
このような需要動向のもと、物流事業((株)アルプス物流・東証第二部)では、中長期的に電子部品の需要拡大が見込まれる地域を中心に、新たにHUB拠点の整備とネットワークの充実を進め、新規取扱貨物量の拡大に努めました。アセアン、南アジア地域においては、7月にタイで大型の新倉庫を竣工、営業を開始しました。欧州では、東欧展開の足掛かりとしてハンガリーに事務所を開設しました。更に、これまで拡充した拠点の充実を図るとともに、安定稼働と生産性向上に取り組みました。また、車載関連物流強化策の一つとして、株式会社ロジコムと合弁会社を設立し、その海外展開の第一段階としてインドに現地法人を設立し、車載関連ビジネスの拡大を目指しています。
当連結会計年度の業績は、国内外で新規顧客の獲得に取り組みましたが、米中貿易摩擦等による電子部品全体の荷動きが減少したことに加え、新型コロナウイルスの影響が拡大し、減収減益となりました。
以上の結果、当連結会計年度における物流事業の売上高は668億円(前期比0.0%減)、営業利益は41億円(前期比12.8%減)となりました。
以上により、上記の3事業セグメントにその他を加えた当連結会計年度の当社グループにおける連結業績は、売上高8,105億円(前期比4.8%減)、営業利益267億円(前期比46.0%減)、経常利益186億円(前期比57.2%減)、親会社株主に帰属する当期純損失40億円(前期における親会社株主に帰属する当期純利益は221億円)となりました。
③ キャッシュ・フローの状況
現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末と比べ98億円増加し、当連結会計年度末の残高は、1,282億円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度末における営業活動による資金の増加は、872億円(前期は726億円の増加)となりました。
この増加は、主に減価償却費460億円、売上債権の減少額311億円及び税金等調整前当期純利益155億円による資金の増加と、法人税等の支払額96億円及びたな卸資産の増加額40億円による資金の減少によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度末における投資活動による資金の減少は、424億円(前期は674億円の減少)となりました。
この減少は、主に有形及び無形固定資産の取得による支出406億円、連結の範囲の変更を伴う子会社持分の取得による支出35億円及び定期預金の預入による支出30億円による資金の減少と、定期預金の払戻による収入52億円による資金の増加によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度末における財務活動による資金の減少は、316億円(前期は69億円の減少)となりました。
この減少は、主に自己株式取得による支出123億円、配当金の支払額93億円、長期借入金の返済による支出88億円による資金の減少によるものです。
④ 生産、受注及び販売の実績
1)生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
|
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前連結会計年度比(%) |
|
電子部品事業 |
434,291 |
△8.3 |
|
車載情報機器事業 |
261,438 |
0.3 |
|
物流事業 |
― |
― |
|
合計 |
695,729 |
△5.3 |
(注)1. セグメント間取引については、相殺消去しています。
2. 金額は、販売価格によっています。
3. 上記の金額には、消費税等は含まれていません。
2)受注実績
当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
|
セグメントの名称 |
受注高(百万円) |
前連結会計年度比(%) |
受注残高(百万円) |
前連結会計年度比(%) |
|
電子部品事業 |
423,756 |
△8.2 |
38,521 |
△2.4 |
|
車載情報機器事業 |
290,546 |
△5.1 |
10,240 |
△60.6 |
|
物流事業 |
― |
― |
― |
― |
|
合計 |
714,302 |
△7.0 |
48,761 |
△25.5 |
(注)1. セグメント間取引については、相殺消去しています。
2. 上記の金額には、消費税等は含まれていません。
3. 当連結会計年度において、受注残高に著しい変動がありました。これは車載情報機器事業セグメントに
おいて新型コロナウイルスの欧米各国への感染拡大により、移動規制や顧客工場の稼働停止等、3月以
降の純正品等の販売が急速に減速した影響によるものです。
3)販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
|
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前連結会計年度比(%) |
|
電子部品事業 |
424,709 |
△9.4 |
|
車載情報機器事業 |
306,299 |
0.9 |
|
物流事業 |
66,872 |
△0.0 |
|
報告セグメント計 |
797,881 |
△4.9 |
|
その他 |
12,688 |
3.6 |
|
合計 |
810,570 |
△4.8 |
(注)1. セグメント間取引については、相殺消去しています。
2. 上記の金額には、消費税等は含まれていません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成されています。
この連結財務諸表の作成に際し、連結決算日における資産・負債の数値及び連結会計年度の収益・費用の数値に影響を与える会計上の見積りを用いています。
当社は、特に以下の会計上の見積りが、当社グループの連結財務諸表に重要な影響を与えるものと考えています。
なお、当連結会計年度末において、新型コロナウィルスによる影響を反映しています。詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(追加情報)」に記載のとおりです。
1)たな卸資産の評価
たな卸資産は取得原価又は正味売却価額のいずれか低い金額で評価しています。正味売却価額が取得原価よりも下落している場合には、取得原価と正味売却価額との差額について評価損を計上しています。正味売却価額は、主に顧客との販売契約に基づく予定売価を基に見積もっています。また、一定の保有期間を超えた場合、滞留又は陳腐化しているとみなし、評価損を計上しています。更に、保有期間にかかわらず将来廃却が見込まれるたな卸資産についても評価損を計上しています。
市場環境の悪化による顧客の需要減少や製品ライフサイクルの変化等に伴い、たな卸資産の収益性の低下、滞留、陳腐化が生じた場合、将来において追加の評価損の計上が必要となる可能性があります。
2)繰延税金資産
繰延税金資産については、回収可能性があると判断できる金額のみ計上しています。繰延税金資産の回収可能性を判断するにあたり、将来の課税所得を見積もっています。将来の見積課税所得は、顧客からの受注見込みや過去の業績、移転価格を考慮した連結会社間の利益の配分等に基づいて算定しています。
将来において顧客の需要減少や移転価格を含む、税務関連の動向の変化や新型コロナウィルスの影響により課税所得が予想を下回り、すでに計上されている繰延税金資産の全部又は一部を回収できないと判断した場合、当該判断を行った期間に繰延税金資産を取崩し、税金費用が計上される可能性があります。
3)退職給付に係る負債
退職給付費用及び退職給付に係る負債は、数理計算上の前提条件に基づいて算出されています。前提条件には、割引率、長期期待運用収益率、退職率、死亡率及び昇給率等の仮定が含まれています。このうち、退職給付費用及び退職給付に係る負債の計算に影響を与える最も重要な仮定は、割引率及び年金資産に係る長期期待運用収益率です。
割引率は優良債券の利回りを参考に決定しており、連結会計年度末において割引率を再検討した結果、割引率の変動が退職給付債務に重要な影響を及ぼすと判断した場合にはこれを見直した上で、退職給付債務を算定しています。長期期待運用収益率は、保有している年金資産のポートフォリオに基づく一定期間における運用実績を基に、今後の運用方針及び市場動向を考慮して設定しています。
これらの仮定が実際の結果と異なる場合、又は仮定を変更した場合、将来期間における退職給付費用及び退職給付に係る負債に影響を及ぼすことがあります。
当連結会計年度の退職給付費用の計算に使用した割引率及び期待運用収益率は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(退職給付関係)」に記載のとおりです。
4)固定資産の減損
当社グループの資産又は資産グループに減損が生じている可能性を示す事象があり、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額がこれらの帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しています。減損損失の測定に当たって見積もられる回収可能価額は、資産又は資産グループの正味売却価額と使用価値のいずれか高い方の金額を使用しています。
減損損失を認識するかどうかの判定及び使用価値の算定において見積もられる将来キャッシュ・フローは、中期経営計画や外部環境に照らして算定した受注予測等に基づき算定しています。また、使用価値の算定に使用する割引率は、当社に要求される加重平均資本コストを採用しています。将来、事業環境の変化等により固定資産の収益性が低下した場合や新型コロナウイルスの業績へ与える影響が仮定と大きく異なる場合、減損損失の計上が必要となる可能性があります。
また、固定資産の耐用年数については、各市場における製品ライフサイクルを基礎として、生産設備等の経済的耐用年数を設定しています。製品ライフサイクルについては、事業・市場・顧客・シリーズ単位などの性質を勘案して見積もっています。
② 当連結会計年度の財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度の当社グループにおける連結業績は、売上高8,105億円(前期比4.8%減)、営業利益267億円(前期比46.0%減)、経常利益186億円(前期比57.2%減)、親会社株主に帰属する当期純損失40億円(前期における親会社株主に帰属する当期純利益は221億円)となりました。
減収減益の主な要因は、電子部品事業において、車載市場は新車の世界販売台数が前期比で減少するなど低調に推移しました。民生その他市場では、スマートフォン市場において一部製品が好調に推移し、EHII(Energy、Healthcare、Industry、IoT)各市場では、IoT(Internet of Things)を活用した具体的な展開が進むなど、活発に動きが進みましたが、各市場ともに新型コロナウイルスの影響が大きく、前期比で売上高及び営業利益ともに減少しました。
このような経済環境の中、第1次中期経営計画の1年目が終了し、「革新的T型企業“ITC101”」の目標実現に向け、経営構造改革の実行による更なる統合シナジー効果の発揮を加速させ、売上の拡大や企業体質の強化等を推進します。今回の新型コロナウイルスの急速な感染拡大に伴い、当社の各事業における売上の減少や当社グループ海外工場の操業度低下等、当社事業に多大な影響を及ぼしています。そのため、当社はこの影響を軽減すべく、急速に変化する状況に応じて必要な対策を継続していきます。新型コロナウイルスによる当社への業績影響は、2021年3月期の業績にも影響すると思われますが、この影響は一過性なものと捉えています。また、更なるグローバルネットワークの拡充により一層の事業拡大を目指す物流事業を含め、これまで以上にグループ一丸となった事業運営を推進し、企業価値の向上を図っていきます。
なお各セグメントの状況については以下のとおりです。
[電子部品事業]
当連結会計年度は、車載市場で自動車市場の景気減速の影響を受けモジュール製品や通信用高周波製品等が全般にわたり軟調傾向となりました。また、民生その他市場においてもスマートフォン向けに新規顧客開拓や拡販活動を進めたものの軟調傾向となりました。これらに加え、新型コロナウイルスの全世界における感染拡大の影響もあり、前期比で売上高及び営業利益ともに減少しました。
[車載情報機器事業]
当連結会計年度は、ディスプレイ製品と電子部品事業のセンサを連動させた新製品開発や、ナビゲーションのGPS(Global Positioning System)にセンサ及び画像処理技術を組み合わせたドローンシステムの実用化に注力しました。また、音響スピーカーの開発で培った技術を応用し、歩行者に自動車の接近を知らせる車両接近通報システムの開発に着手し、更にブロックチェーン技術を活用したカーシェアリング向けデジタルキーの開発やコネクテッドカーの車両情報管理のため、IT企業のフリービット株式会社との業務提携によるMaaS(Mobility as a Service)ビジネスの強化を図りました。しかし、新型コロナウイルスの欧米各国への感染拡大により、移動規制や顧客工場の稼働停止等、3月以降の純正品等の販売が急速に減速した影響を受けました。前期比で一部製品が好調に推移したため売上高は増加しましたが、将来の受注獲得による研究開発費等により営業利益は減少しました。
[物流事業]
当連結会計年度は、中長期的に電子部品の需要拡大が見込まれる地域を中心に、新たにHUB拠点の整備とネットワークの充実を進め、新規取扱貨物量の拡大に努めました。アセアン、南アジア地域においては、7月にタイで大型の新倉庫を竣工、営業を開始しました。欧州では、東欧展開の足掛かりとしてハンガリーに事務所を開設しました。更に、これまで拡充した拠点の充実を図るとともに、安定稼働と生産性向上に取り組みました。国内外で新規顧客の獲得に取り組みましたが、米中貿易摩擦等による電子部品全体の荷動きが減少したことに加え、新型コロナウイルスの影響が拡大し、前期比で売上高及び営業利益ともに減少しました。
③ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループにおいては、新製品対応、顧客に満足される品質の確保と原価低減などを目的として、生産設備の更新や合理化など設備投資を行いました。また、投資案件については十分に精査を行い、不要不急の執行を抑えるなどの対応を取りました。
電子部品事業については、国内外の各事業拠点において、新製品の増産対応や合理化、生産体制の強化などを目的とした機械設備や金型等に対し、総額257億円(前期比74億円減)の投資を行いました。
車載情報機器事業については、新製品開発など戦略投資に絞り込み、総額115億円(前期比20億円減)の投資を行いました。
物流事業については、国内外における拠点や倉庫の整備を目的とした建物や車両運搬具など、総額45億円(前期比9億円減)の投資を行いました。
以上の結果、その他子会社での投資及び連結消去を含む当連結会計年度の当社グループにおける設備投資の総額は、423億円(前期比105億円減)となりました。
当社グループにおける運転資金及び設備投資資金については、主に営業活動によるキャッシュ・フローにて調達しています。当連結会計年度末の借入金残高は998億円(前期比89億円減)となり、運転資金安定のための短期借入金が561億円(前期比179億円増)、将来の事業基盤確立に向けた研究開発や設備投資資金の確保などのための長期借入金が436億円(前期比268億円減)となりました。
今後の重要な設備投資としては、電子部品事業は当社を中心に生産体制強化を図るため、主にコンポーネント製品の生産設備への投資を行う予定です。
車載情報機器事業は、新製品の研究開発・生産設備の更新や合理化のため、国内外の主要な拠点で投資を行う予定です。
物流事業は、国内外における倉庫建設を中心とした拠点・ネットワーク投資を行う予定です。
なお、当社グループにおける運転資金及び設備投資資金については、主に営業活動によるキャッシュ・フローにて調達する予定です。
また、当社は、2020年4月24日開催の取締役会において、新型コロナウイルスの感染拡大による不測の事態に備えた短期運転資金を使途として、資金の借入及びコミットメントライン契約を締結することを決議しました。詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な後発事象)」に記載のとおりです。
(吸収分割契約の締結について)
当社は、2019年10月30日開催の取締役会において、当社の100%出資の連結子会社であるアルパイン(株)(以下
「アルパイン」といい、当社とアルパインを総称して「両社」といいます。)より、アルパインの全事業(但し、
“アルパイン”ブランドの市販ビジネスに関する商標権及び子会社株式等の保有・管理事業を除きます。)を吸収分
割(以下「本会社分割」といいます。)にて承継することを決議し、両社の間で吸収分割契約を同日付で締結しました。この契約に基づき、2020年4月1日付でアルパインを本会社分割の方法により承継しました。
詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な後発事象)」に記載のとおりです。
当社グループ(当社及び連結子会社)は、「人と地球に喜ばれる新たな価値を創造します。」を全ての礎に、事業活動を通じて持続可能な社会の発展に貢献することを目指しています。
「Right(最適な)」「Unique(独自性)」、「Green(環境にやさしい)」を兼ね備えた、「美しい電子部品を究める」ことを事業の根幹とし、70年の歴史の中で育んだ当社グループ独自の強みを最大限に活かし、新しい価値を創造しています。
当社グループの研究開発費の総額は
(1)電子部品事業
当社の価値創造の源泉は、市場のニーズを捉えた「美しい電子部品」です。そして、それをタイムリーに世の中に送り出すことが、私たちの価値創造です。創業以来70年の中で、深化・融合した技術と脈々と受け継がれている企業風土が相まって、価値創造を支えています。
人とメディアのより快適なコミュニケーションを目指し、「HMIの深化」「センサバラエティの拡大」「コネクティビティをキーとしたビジネスの拡大」を独自の柱とし、固有技術の深化・融合により、新たな価値ある製品を開発しています。
また、更なる未来を見据えた技術開発は、現在所有する技術に留まらず、新たな技術領域への挑戦に向けて、大学や研究機関・他企業とのオープンイノベーションやアライアンスにもこれまで以上に取り組み、当社独自の生産技術力と組み合わせて、今までにない新しい製品を新しい市場に送り出すために、ダイナミックな技術開発を行っています。
電子部品事業に係わる研究開発費は
① 車載市場
自動車産業における100年に1度の大変革期の中、その中心にあるCASEに対応した各種センサやデバイス製品の開発に加え、コクピット・インテリアデザイン、運転操作システムで差別化する各種モジュール製品まで幅広く開発を行っています。
<車載モジュール製品>
車の更なる安全・安心、かつ快適な車室内空間を実現するために、人と機器をつなぐHMI技術及びセンシング技術を応用した商品開発を行っています。また、小型電子シフターをはじめ、エアコンやオーディオの操作性向上を目的に、ハプティック®、タッチパッド、静電ステアリングホイールスイッチなどの開発を進めます。更に現在、自動運転の目となる、前方の車両や人・障害物などを検知し、衝突を防止するための超短距離ミリ波レーダーの開発も進めています。これら複合化・多機能化に加え、大学や研究機関と共同研究を進めている人間工学に基づいた、心地良く快適な操作フィーリングを追求することで付加価値向上を図ります。
一方、生産性改善を重要課題とし、材料や部品の共通化及び設計・開発工程の標準化を推進し、安定品質を維持して収益力の強化に取り組みます。
<車載デバイス製品>
自動運転を支えるActive Safety技術の高度化に向け、車両の運転支援技術として中国での導入が先行するC-V2X(Cellular based Vehicle to X)の開発が進み、2020年度市場導入に向けた準備を進めています。自動運転走行で必須となる操舵検出において、当社固有の静電技術を応用したステアリングハンズオフセンサー、高周波技術を核としたミリ波センシングの多様化(乗員検出、障害検出、モーション検出等)の開発が進んでいます。更にその先に向け、電子ミラーを核とし、前出のセンサとディスプレイ製品で培ったイメージ処理技術を融合させた安全運転支援技術への取り組みを加速させています。
また、コネクテッドの領域においては将来車両に必須である高度セキュリティとデジタルキー技術を実現するスマートフォンエントリーシステムの量産化に注力しています。
電動化における重要部品となる量産中の電流センサの高電圧化、多相化、小型・高精度に対応した製品バラエティーの拡充によって採用が増えています。更にCASE領域製品だけではなく、当社の強みであるHMIデバイスにおいては、デザイン性と操作フィーリングを両立する新たな静電・ハプティックデバイスの開発を進めています。
② 民生その他市場
スマートフォン、ノートPC、小型プリンタをはじめとするモバイル市場やEHII市場において、機器の軽薄短小・操作性・快適性・省エネ・高速大容量化等に貢献すべく、新素材からデバイス、モジュール製品等の幅広い分野で研究開発を行っています。
<モバイル市場>
巨大な需要が続くスマートフォン市場では、防水防塵のスイッチ、タクトスイッチ® など各種操作入力用製品をはじめ、カメラモジュールの高性能化及び低消費電力、薄型化などのニーズに応え、手振れ補正用アクチュエータ、次世代タッチパネルとして期待されている折り曲げ可能なファーダブルタッチパネルセンサ、低ノイズ・低消費電力の3軸地磁気センサの新製品開発に更に注力します。また、スマートフォンの付加価値向上に熱転写プリンタ技術を応用した加飾印刷の開発に取り組んでいます。
ゲーム市場では長寿命・高触感のニーズからコントローラ用にスイッチやジョイスティック等のHMI製品、リアルな感触を再現できる2軸共振タイプの「ハプティック® リアクタ Hybrid Tough Type」の開発を行います。
これらの製品は、当社固有の精密加工技術、磁気・電気・熱設計技術を応用し開発され、自動機組立てで安定した供給と品質が保証されています。
<EHII市場>
ICT(Information and Communication Technology)による「超スマート社会」の実現が政府より打ち出されて以来、日本をはじめ先進各国でビッグデータを活用した革新的な取り組みが急速に広がりはじめています。工業、インフラ、物流、ウェアラブルなどあらゆる分野で市場が形成されはじめており情報技術、エレクトロニクスの重要性が高まっています。当社グループはIoTスマートモジュールを用いて通信等各社との協業によるソリューション提案を様々な分野で進め、EHIIとして中国、インド、マレーシア等、各国での展示会に出展し、光通信やIoT等、進展する市場の新規開拓も進めてきました。
Energy分野では、大手海外企業とスマート分電盤用電流センサを量産開始して以来、家庭向け蓄電池システムの量産も実施し当社独自の軟磁性アモルファス材料 リカロイ™を用いた製品を基に、小型高効率技術を追求し、省エネルギー分野でのビジネス開発を継続して進めます。
IoT分野では、世界最小のセンサネットワークモジュールを開発し、ユーザー側で容易にIoT環境が構築できる開発キットも提供しています。現在、荷物の位置や状態をリアルタイムに把握できる物流状態の管理システムや製造現場における実証実験に基づいた「作業者見守りシステム」が採用され、各種センサをヘルメットに装着、環境情報や作業者の生体情報・活動情報を取得することで、体調不良の検知や万が一の労働災害発生の早期発見・早期処置が可能となります。また送電線設備故障の未然防止のための異常放電を音や光で検知するシステムも開発が進んでいます。これら様々なビジネス形態の中で、スピーディーな事業基盤の確立に向け電子部品事業の強みであるハードウェア技術と車載情報機器事業のサービスビジネスフレームワークの融合により当社グループとして付加価値のある差異化した製品でソリューションビジネスを展開します。また、他社との協業や提携なども積極的に進め、国内外での生産体制の拡充及び生産性の改善に向けた各種取り組みを継続して進めていきます。
(2)車載情報機器事業
自動車業界においては、CASEやADAS(先進運転支援システム)の進展により環境が大きく変化し、IT・通信等の業務・業態を超えた企業間の開発競争が激化しています。
このような変化に対し、当社は、CASE・Premium HMIといった注力領域への研究開発リソースのシフトを加速すべく、電子部品事業と車載情報機器事業のコア技術を融合し、高付加価値領域の仕込みと事業化を推進し事業の拡大を目指します。
情報・通信機器市場では、車室内を一人ひとりのお客様の感動空間へと変化させる“人とクルマをつなぐユニークなシステム製品”の提供を通じて、独自の「シームレススマートモビリティソリューション」を提案しています。例えば、スマートフォンをキーとして、カーシェアの予約や乗車を進化させる「スマートエントリ」、乗り手の好みのドライブプランを把握して自動提案する「レコメンドエンジン」、自動運転中の車内をくつろぎの空間にする「ドライバーモニタリング」、車室内をより上質で快適に演出する「Premium HMI」、そして、ドライブの後までスムーズにする「降車サポート」など、さまざまな機能とサービスを組み合わせたソリューションを体験することができる「シームレススマートモビリティソリューション」コクピットを「東京モーターショー2019」に出展しました。
音響機器市場では、Faital社との資本業務提携を活用し、アルパインブランド及び自動車メーカー向けビジネスにおいてこだわり続けている“良い音”をより深化させ、プレミアム領域の更なる開拓を含めてより魅力ある製品開発を加速するとともに、自動運転時代において、車室内の快適な移動空間の提供のために重要となるノイズをコントロールする技術やAIを活用したチューニング技術など普遍価値であるプレミアムサウンドをより身近に実現することを目指した取り組みを推進します。
新しい事業領域では、ナビゲーションの位置情報処理技術にセンサ及び画像処理技術を組み合わせた産業用ドローンシステムの実用化に向けた取り組みや、ブロックチェーン技術を活用したカーシェアリング向けデジタルキーの開発やコネクテッドカーの車両情報管理のため、IT企業のフリービット株式会社の一部株式を取得し、業務提携によるMaaS(Mobility as a Service)ビジネスの強化を図りました。ブロックチェーン技術の改ざんが不可能な特性を活用し、より透明性ある中古車査定や、コネクテッドカーの拡大により増加する各種車両情報をセキュアかつ、改ざん出来ない形で保管するなど、自動車業界を支えるITインフラ技術としての活用を検討していきます。
車載情報機器事業に係わる研究開発費は