文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、電子部品事業、車載情報機器事業、物流事業を柱とし、各事業が密なる連携によるシナジーを発揮し、グローバルな事業展開を行っています。
目指す姿を「革新的T型企業“ITC101”」としています。コアデバイスを深耕して製品力を高める「縦のI型」と、広範なデバイスや技術をシステムに仕上げる「横のI型」を合わせた革新的な「T型」企業へと進化し、新たな価値を提供すべく取り組みを進めています。経営目標として、売上高1兆円、営業利益率10%を掲げ、この達成時期については、当初、第2次中期経営計画期間の2024年度としていましたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、1年後ろ倒しの2025年度としています。電子部品事業では「部品サプライヤーから機能デバイスパートナーへの進化」を、車載情報機器事業では「内製コアデバイスを持つモビリティライフクリエーターへの進化」を進めていきます。
なお、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、世界経済、社会生活への影響も不確実さを増しています。このような状況下において、当社グループは各国政府の指導に沿って事業活動地域での感染拡大防止に努めるとともに、従業員の安全を確保し各事業への影響を軽減すべく取り組んでいきます。
電子部品事業は、「人と地球に喜ばれる新たな価値を創造します」という企業理念のもと、人とメディアの快適なコミュニケーションの実現を目指しています。その「ものづくり」の姿勢は、「美しい電子部品を究めます」との言葉に凝縮され、「Right(最適な)」「Unique(独自性)」「Green(環境にやさしい)」を兼ね備えたもの、すなわち洗練された外観のみならず、求められる機能を高い品質で実現し、かつ省エネルギーや省資源等環境への影響も十分に配慮した製品です。その実現には、微細加工技術や金型加工技術、ソフトウェア・IC設計技術、材料加工技術等、多彩な固有技術をベースとした先端のものづくりを常に追究しています。HMI(Human Machine Interface)、センサ、コネクティビティのコア技術、多彩な固有技術をベースとした先端のものづくりを追究し、スイッチやセンサ等のコンポーネント製品、モジュール製品をはじめ、新しい製品開発、事業分野にも挑戦しています。
車載情報機器事業では、電子部品事業の車載デバイス・モジュール製品と車載情報機器事業の強みであるシステム設計力、ソフトウェア開発力を活かした自動車メーカー向け製品等との融合により、これまで両事業が培ってきた技術と、それぞれの得意分野を組み合わせた相乗効果により、今後、人とクルマにかかわる安心・快適・感動を提案するサービス、上質な移動空間の実現に向けた独創的かつ革新的な製品開発に取り組んでいきます。
物流事業では、(株)アルプス物流が電子部品を主な取扱い貨物とし、「ものづくりを支える最適物流を追求し、豊かな社会の実現に貢献します」との企業理念を掲げ、事業領域を「電子部品を核とした総合物流サービス」と定めています。
グループ各社は企業理念のもと連携して、中期・短期の経営計画を推進し、業容の拡大と企業価値の最大化を図っていきます。
(2) 中長期的な経営戦略と目標とする経営指標
当社は現在、2019年4月から2022年3月末まで、3年にわたる第1次中期経営計画に取り組んでいます。
電子部品事業では、CASE(Connected、Autonomous、Shared & Services、Electric)に向けて、車載情報機器事業との統合シナジーにより生まれた「デジタルキャビン」製品群の開発活動に力を入れるとともに、スマートフォンの高機能化に対応した高付加価値領域の新製品開発を進めます。これらコア技術を組み合わせた独自の製品開発とともに、他社との協業による開発スピードの加速、更に「モノ」から「コト」へとニーズが変化する中で、新たなソリューションビジネスの確立も目指していきます。
車載情報機器事業では、ディスプレイやサウンド、更に各種デバイスなどを組み合わせるシステム設計力、ソフトウェア開発力を生かし、「デジタルキャビン」製品群の開発やソリューションビジネスなどへと展開していきます。
物流事業では、主要顧客である電子部品業界や新型コロナウイルスの影響により拡大した消費物流の新規拡販を継続して行い、海外における拠点・ネットワークの拡充を推進することにより、グローバルに業容の拡大を図っていきます。
(3) 会社の経営環境と対処すべき課題
当社グループを取り巻く環境は、近年、不確実性が更に強まる中で先行きを見通すことが大変困難ですが、エレクトロニクス製品・自動車の需要は、先進国における高機能・多機能化ニーズに加えて、新興国における需要の増加が牽引役となり、今後も拡大していくものと期待されます。
電子部品事業では、よりエレクトロニクスの重要性が高まる自動車市場、成長は鈍化したものの高機能部品の需要は高いスマートフォン市場、更にIoT(Internet of Things)、AI(人工知能)の活用による新たなビジネスも生まれているEHII(Energy、Healthcare、Industry、IoT)市場と、今後も拡大が見込まれます。
車載情報機器事業では、100年に1度とも言われる自動車産業の大変革期を迎え、特にCASE領域においては、自動運転やEV化など日進月歩の進化が続いています。また、IT企業の進出など、業界の枠を越えた合従連衡の動きも格段に加速するなど、今後もCASE領域への経営資源の集中は自動車業界全体のトレンドであり、HMI等のサプライヤー各社には、モジュール製品の開発だけではなく、車全体のトータル・システムソリューションの提案が期待されています。
これらの事業環境において、当社は、HMI、センサ、コネクティビティのコア技術をベースに優位性の高い製品を継続して生み出すと同時に、電子部品事業と車載情報機器事業の強みを融合させた新製品の開発など、経営統合によるシナジーを創出することで、お客さまの期待に応えていきます。また、よりスピーディーな事業立ち上げと成果に結びつけるべく、他社との協業や提携なども積極的に進めます。更に、生産・販売・技術だけでなく、間接部門も含めた生産性並びに品質の向上により、収益性の強化にも繋げていきます。
物流事業では、主要顧客である電子部品業界において、さまざまな機器や自動車の電子化の進展、そして新興国需要の拡大によって、今後も成長が予想されています。一方で、商品やマーケットの変化に対応した最適地生産や生販合理化が進んでおり、顧客の物流改革ニーズは高度化かつ多様化しています。このような中、顧客ごとの「最適物流」を追求し、より多くの顧客に提供していくことで、更なるグローバル成長を図ります。
また、その他の事業についても、グループ外部に対する拡販活動の強化などにより、収益への貢献を果たしていきます。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1)新型コロナウイルスの感染拡大に係るリスク
昨年からの新型コロナウイルスの感染拡大により、世界各国で渡航制限や外出制限等が実施され、世界経済はマイナス成長となりました。各国でワクチン接種が進む一方で、変異型の感染拡大や対策の進展度に差があることから、新型コロナウイルスの収束は不透明な状況です。2021年3月期の第2四半期以降の経済状況としては、各国での経済活動の再開や、経済対策の効果により、一部で力強い回復を見せています。また、現時点では2021年世界新車販売台数は前年比12%の増加や、経済回復による購買活動の活性化を予測しており、当社グループにおいて主に影響が生じた車載市場については今後3年程で回復すると想定しています。しかし、新型コロナウイルス再拡大等の状況によっては下振れのリスクがあるため、当社の想定した範囲を超えて発生した場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(2)気候変動に係るリスク
当社グループは、気候変動に伴うリスクが事業活動に大きく影響すると認識しています。当社は、2020年9月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への賛同を表明し、その開示項目に沿ったシナリオ分析を実施しています。異常気象による災害の激甚化によるサプライチェーンの寸断や、自社操業の停止などの物理リスク、新たな法規制への対応、省エネ活動によるコスト削減や新規市場への参入など、気候変動関連リスクと機会を分析し、事業戦略につなげることで、持続可能な成長及びリスクへの適正な対応を目指していきます。また、脱炭素社会に向けた取り組みとして、2030年までにRE100達成を目指し、省エネ推進、太陽光発電設備導入、RE由来電源への切り替え、再エネ電力証書の購入などの施策をグローバルで推進していくための組織を立上げ、各施策の具体的検討を進めています。移行リスクとして、顧客の意識変化による追加要求や要求高度化により、その対応に追加的なコストが発生する可能性や対応できない場合のビジネス機会の損失、カーボンプライシング施策の導入による費用負担増加などを想定しています。それらが当社の想定した範囲を超えて発生した場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(3)経済状況の変動に係るリスク
当社グループは、電子部品事業、車載情報機器事業を中心としてグローバルに事業を展開しており、当連結会計年度の海外売上高は81.1%を占めています。また、当社グループ製品の大部分は顧客である国内外のメーカーに販売されるため、顧客への販売状況がグローバルの経済動向に左右されることで、当社グループの事業に大きく影響を及ぼす可能性があります。従って、当社グループは直接あるいは間接的に、自動車やスマートフォンなどをはじめとし、IoT、AIの活用により新たなビジネスも生まれているEHII市場など、グローバルの各市場における経済状況の影響を受ける環境にあり、各市場における景気の変動等によって、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。また、予期しない法律又は税制の変更、不利な政治又は経済要因、貿易摩擦、テロ・戦争・感染症拡大・その他の社会的混乱等のリスクが常に内在しています。従って、これらの事象が起きた場合には、当社グループ事業の遂行が妨げられる可能性があり、これらの様々なリスクについて対処していくことができない場合は、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。これらの変化への対応として、生産拠点と販売拠点が綿密に連携し、迅速に顧客に販売動向や市場の動向を共有することで、生産規模の最適化を図っています。
(4)外国為替に係るリスク
当社グループは、グローバルに事業展開しており、結果として為替レートの変動による影響を受けます。一例として、外国通貨に対する円高、特に米ドル及びユーロに対して円高に変動した場合には、当社グループの業績にマイナスの影響を及ぼす可能性があります。従って、当社グループでは、先物為替予約や外貨建債権債務の相殺等、為替変動による影響額の極小化を図っていますが、為替レートの変動が想定から大きく乖離した場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(5)有価証券の時価変動に係るリスク
当社グループは、売買を目的とした有価証券は保有していませんが、当連結会計年度末において、408億円の有価証券を保有しています。時価を有するものについては全て時価評価を行っており、株式市場における時価の変動が当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(6)顧客ニーズ及び新技術の導入に係るリスク
当社グループの事業は、自動車やスマートフォンをはじめとして技術革新のスピードが非常に早く、顧客要求の変化や新製品・サービスの導入が頻繁な市場であり、新たな技術・製品・サービスの開発により短期間に既存の製品・サービスが陳腐化して市場競争力を失い、販売価格が大幅に下落することがあります。電子部品事業においては、引き続きスマートフォン向けカメラ用アクチュエータの大型化、複数レンズの採用等の動きが進み、車載ビジネスにおいては、CASEの更なる進展に伴い、システムの高度化やセキュリティ対策など、急速に技術革新が進んでいます。これらの変化に対応すべく2021年3月期においては、403億円の設備投資、310億円の研究開発を実施しました。しかし、それらの市場の変化に迅速な対応ができない場合や、製品の販売が想定した台数に達しない場合、又は顧客ニーズに合わせた新製品の導入ができない場合、当社グループの業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(7)特定の部品の供給体制に係るリスク
世界的な半導体不足や、米国テキサス州を襲った大寒波による樹脂等の原材料の供給不足の影響により、自動車メーカーによる生産調整が行われています。当社においても、生産調整による売上減少や、半導体や樹脂等の需給逼迫による材料費上昇、サプライチェーンの混乱による物流費の高騰や生産ロスが発生しています。また、当社グループの事業は、重要部品を当社グループ内で製造するよう努めていますが、一部の重要部品については、当社グループ外の企業から供給を受けています。従って、これらの供給元企業が災害・事故等の事由により当社グループの必要とする数量の部品を予定どおり供給できない場合、生産遅延や販売機会の損失等が発生し、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。供給問題を未然に防ぐ対策として、サプライチェーンマネジメントの強化に取り組み、代替調達先の確保や、災害・事故等の発生時は調達部品の生産地を特定できるシステム等により、迅速な対応が取れるよう取り組んでいます。また、喫緊の電子部品逼迫への対応策として、発注単位や条件の見直しにより必要な部材の安定的な確保を図ることで、生産遅延や販売機会の損失等を最小限に留める取り組みを進めています。
(8)顧客の生産計画に係るリスク
当社グループの事業顧客である国内外のメーカーからの受注生産のため、顧客の生産計画の影響を直接受けます。また、顧客の生産計画は、個人消費の周期性や季節性、新製品の導入、新仕様や規格に対する需要予測に加え、部材不足に伴うサプライチェーンへの直接・間接的影響や技術革新のスピードなどの要因にも左右されます。従って、このような不確実性が、当社グループの中長期的な研究開発や設備投資計画の策定に影響を及ぼす可能性があります。対応策として、販売部門、生産部門及び購買部門が綿密に連携し、顧客や市場の動向を迅速に共有化し、生産規模を最適化する取り組みを進めています。
(9)M&A及び業務提携・戦略的投資に係るリスク
当社グループは、持続的な成長と中長期的な企業価値向上、またグローバル競争力及び顧客価値の向上、更に、よりスピーディーな事業立ち上げと成果に結びつけるため、新規事業領域への参入、新技術の獲得、現行事業の競争力強化を目的として、M&A及び業務提携・戦略的投資を実施しています。これらの実施に当たっては、当社事業計画に照らし合わせ、市場・技術動向や顧客ニーズ、相手先企業のポテンシャル等のリスクを十分に分析した上で、慎重に進めています。しかし、市場環境の著しい変化や、買収した事業を計画通りに進めることが出来ず、投下資本の回収に計画以上の期間を要する又はその回収ができないことにより、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(10)競合に係るリスク
当社グループは、電子部品事業におけるスマートフォン向けカメラ用アクチュエータをはじめとしたデジタル機器向けコンポーネント製品やCASEに対応した各種センサ、デバイス製品、車載情報機器事業におけるインフォテインメント機器など全ての事業分野において、他社との激しい競争に晒されています。特に車載情報機器分野においては、CASEやADAS(先進運転支援システム)の進展により、IT・通信分野など業種・業態の垣根を越えた企業間の開発競争が激化しています。当社グループは、新製品の導入や高品質の製品供給、グローバルネットワークの整備・拡充、M&Aや業務提携の推進等により、顧客満足を得るべく努めていますが、国内外の競合各社との市場における競争は更に激化することが予想されます。従って、失注などの不測事態の発生によって、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(11)製品品質に係るリスク
当社グループは、品質保証体制を構築し、品質改善活動を通じ品質の維持・向上に努め、また問題発生の未然防止に取り組んでいます。しかしながら、当社グループの製品の品質に起因して顧客の損失が発生した場合、生産物賠償責任保険の適用を超える賠償責任を問われる可能性があります。その結果として、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(12)顧客の財務状況に係るリスク
当社グループは、顧客が適時に支払うことができないことから生じる見積損失について、売掛金に関連する貸倒引当金を維持しています。ただし、通常の業務の過程に関連する売掛金は、担保又は信用保険の対象にはなりません。貸倒引当金は当連結会計年度末において7億円計上されていますが、実質的な売掛金を保有している顧客が景気低迷のために支払いが困難になり、その売掛金を償却しなければならない場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(13)災害等に係るリスク
当社グループは、災害発生に備え、地震などの防災対策の徹底や重要な情報インフラのバックアップ体制の整備を行うとともに、災害等の発生時には、災害対策本部を設置し、迅速に対応に当たる体制を構築しています。各拠点及び拠点所在地域において、事業活動の停止及びその可能性のある事象が発生した際は、拠点責任者が予め定められたルールに基づき報告を行い、全社有事対応の事務局が収集した情報を適切に周知する体制を整えています。また、顧客に対し、当社の被害状況及び供給への影響を報告する体制を整備しています。しかし、このような事態が当社の想定した範囲を超えて発生した場合、重要な業務の中断、顧客への供給問題の発生、材料費高騰による収益性の悪化など、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(14)環境汚染に係るリスク
当社グループは、企業ビジョンにおいてグループ経営、コンプライアンス及び環境保全についての基本理念と行動指針を定めて当社及び当社子会社に展開しています。その中で、経営姿勢の一つとして、地球との調和を掲げ、環境リスク対策への取り組みを行っています。具体的には、化学物質の漏洩防止策や排水・排気管理の徹底、国内事業所における土壌・地下水の浄化等を実施しています。しかし、近年欧州や中国を中心に環境負荷物質に対する規制が強化される方向にあり、必要な要件を満たせない場合、販売機会の損失や市場における回収に繋がるリスクがあります。また、事業活動を通じて今後新たな環境汚染が発生しないという保証はありません。このような不測の事態が発生又は判明した場合、その対策費用が発生し、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(15)法的手続き及び訴訟に係るリスク
当社グループは、事業活動に関するコンプライアンス体制を構築し、役員・従業員に対するコンプライアンス教育を行う等の方法で、コンプライアンス違反に係るリスクの低減を図っています。しかしながら、当社グループの活動に関連して、独占禁止法や環境規制等の法令違反に関し規制当局による法的手続きが開始される可能性、あるいは知的財産や製品品質に関して取引先や第三者との間で訴訟が発生する可能性があります。これらの法的手続きの開始や訴訟の提起の結果として、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(16)知的財産に係るリスク
特許その他の知的財産は、当社グループ製品の市場の多くが技術革新に重点を置いていることなどから、重要な競争力の要因となっています。当社グループは、自社開発技術において、特許、商標及びその他の知的財産権を取得し、場合によってはそれを行使することなどにより、当該技術の保護を図っています。一方、製品開発に当たっては第三者の知的財産権を尊重した製品開発を行っていますが、第三者による知的財産権侵害の申し立てを受ける可能性はあります。
また、当社グループが知的財産権を侵害しているとして損害賠償請求を提訴されている訴訟案件については、訴状への反論を行っていますが、裁判の経過により将来において訴訟の解決による損害賠償支払が確定した場合には、当社グループの業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。更に当社グループの製品には、他社の知的財産権のライセンスを受けているものもありますが、当該知的財産権の保有者が将来において、ライセンスを当社グループに引き続き与えるという保証はありません。当社グループにとって好ましくない事態が生じた場合には、当社グループの事業はその影響を受ける可能性があります。
(17)人材の確保等に係るリスク
当社グループの事業の中核の一つである自動車市場では、CASEをはじめとする技術革新が加速しています。これらの環境下、ビジネスを確立・拡大していくためには、デジタル分野など多様な分野において優れた専門性を有した人材の必要性がますます高まっています。一方、同業他社を含む各社の採用意欲の高まりや、少子高齢化に伴う労働人口の減少などにより、年々、人材の確保に関する難易度が高まっています。
これに対して当社では、継続的に年間約200名の新卒採用に加え、次世代自動車向けソフトウェアの開発力強化を目指して、2021年4月に仙台ソフトウェア開発センターを開所し、デジタル人材をはじめ必要な人材の積極採用を進めています。入社時からの体系的な人材育成や、人事理念に基づく評価、昇進・昇格、賃金制度等により、社員の能力・意欲を高める取り組みを行っています。また、ビジネスのグローバル化に対応し、日本においても継続して、外国籍社員の採用にも積極的に取り組んでおり、新卒の約1割を目指しています。一方では、社員の高齢化や、定年再雇用者が増加する中、各人の適性に応じた職務の割当てにより、社員一人ひとりの豊富な経験や能力を十分に発揮できる環境の整備に努めています。しかし、雇用環境の変化などにより、当社が求める人材の確保やその定着・育成が計画通りに進まなかった場合には、当社グループの将来の成長に影響を及ぼす可能性があります。
(18)情報管理に係るリスク
昨今のサイバー攻撃の高度化や、ITを活用したビジネス詐欺の巧妙化などに対応するため、当社では、ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)体制を構築し、当社及び当社サプライチェーン全体での情報管理強化対策、サイバー攻撃を早期に発見し排除するセキュリティシステムの活用、社内研修による従業員の知識習得と意識向上、インシデント対応計画整備に加え、その有用性を継続的に維持・改善していくための取り組みを開始しています。
しかしながら、当社が事業活動を通じて創出した情報、顧客・サプライヤー又はその他団体及び個人(従業員含む)よりお預かりした情報などが漏洩、改ざん、破壊し、当社の情報システムやそれに依存する業務が停止するリスクがあります。加えて、クラウドシステムの活用推進は、事業活動のDX(Digital Transformation)化を促し大きな利便性が得られる反面、当社が直接管理できないリスクの増大にも繋がっています。
このようなリスクが具現化した場合、当社グループの事業、業績及び財務状況に対して、重要な業務の中断による生産及び出荷の停止、顧客やその関係者の機密情報漏洩に起因する損害賠償請求などの短期的な影響、企業戦略や新技術の漏洩による競争力低下、並びに当社グループの企業イメージ毀損による販売機会損失など、中・長期的な影響が生じる可能性があります。また、特に自動車業界におけるCASE領域の製品では、サイバーセキュリティ体制整備が顧客の採用条件として明示されるようになり、対策の遅れが販売機会の損失に繋がる可能性もあります。
(19)公的規制に係るリスク
当社グループは、事業展開する各国において事業・投資の許可、関税をはじめとする輸出入規制等、様々な政府規制・法規制の適用を受けています。これらの規制によって、当社グループの事業活動が制限されコストの増加につながる可能性があります。従って、これらの規制は当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(20)資金繰りに係るリスク
当社グループは、取引先銀行とシンジケートローン契約及びシンジケート方式のコミットメントライン契約を締結していますが、これら契約の財務制限条項に抵触した場合には、借入金の繰上げ返済請求を受けることがあり、当社グループの財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(21)固定資産の評価及び減損損失に係るリスク
当連結会計年度末における有形固定資産及び無形固定資産の帳簿価額は2,094億円です。当社グループは顧客の需要予測による将来の販売計画に基づいて設備投資を行っていますが、固定資産の回収可能性は、個人消費の動向、新製品の導入タイミング、新仕様や規格変更への対応及び技術革新のスピード等に影響を受けます。当社グループは、各市場における製品ライフサイクルを分析し生産設備等の経済的耐用年数を設定しています。
新製品の導入が活発なスマートフォン市場向けの一部の固定資産については、経済実態に即してより短期間で償却するなどによりリスクの軽減に努めています。
一方で自動車市場においては、エレクトロニクスの重要性が高まり市場拡大が見込まれますが、自動車販売台数に基づく顧客の需要変動や顧客ニーズの変化、CASE領域における技術革新への対応等が遅延した場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、投資判断を行う際、その収益性・投資回収予定時期を社内で厳格に精査することで減損損失の計上リスクの軽減に努めています。
しかしながら、急激な経営環境の悪化により収益性が低下し、帳簿価額の全部又は一部を回収できないと判断した場合、減損損失を計上する可能性があります。
(22)繰延税金資産に係るリスク
当連結会計年度末において、繰延税金資産を69億円計上しています。当社グループは将来の収益力に基づく課税所得を見積り、繰延税金資産の回収可能性を判断しています。将来課税所得の見積りは、事業計画及びグループ会社間の取引価格を基礎としています。事業計画は、主に、各事業の主要顧客への販売数量及び販売価格、予測されている営業利益率、売上規模に応じた固定費の見積り及び想定為替レートを前提に策定しています。また、各市場における新型コロナウイルス感染拡大の影響も勘案しています。当社グループは、経営環境の変化に応じて事業計画を見直し経営成績の維持を図るとともに必要な税務戦略を考慮しています。しかし、将来において事業計画の主要な仮定が変化した場合、繰延税金資産の取崩しが発生する可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。
① 財政状態の状況
当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末と比べ687億円増加の6,942億円、自己資本は、退職給付に係る調整累計額の増加と、利益剰余金、自己株式の減少等により、204億円増加の3,449億円となり、自己資本比率は49.7%となりました。
流動資産は、受取手形及び売掛金、現金及び預金の増加等により、前連結会計年度末と比べ561億円増加の4,252億円となりました。
固定資産は、投資有価証券、機械装置及び運搬具の増加等により、前連結会計年度末と比べ126億円増加の2,689億円となりました。
流動負債は、支払手形及び買掛金、未払費用の増加と、短期借入金の減少等により、前連結会計年度末と比べ264億円増加の2,244億円となりました。
固定負債は、長期借入金の増加と、退職給付に係る負債の減少等により、前連結会計年度末と比べ195億円増加の914億円となりました。
② 経営成績の状況
当連結会計年度における世界経済は、新型コロナウイルスの感染拡大により、各国で感染対策と経済活動の両立を模索する状況となりました。米国では、上期に行った外出制限の影響もあり個人消費の落ち込みが見られましたが、下期は経済対策の効果が表れて緩やかな回復傾向となりました。欧州各国では、上期に都市封鎖が緩和されて以降、緩やかな景気回復へと向かいましたが、その後の感染再拡大による経済活動の制限により、下期は減速しました。中国では、2020年3月から経済活動を再開したことにより輸出が感染前の水準よりも拡大し、景気は総じて回復傾向が継続しました。日本においては、上期に全国で、下期に一部の地域で緊急事態宣言が発令された影響によって経済活動は低迷しました。政府の各種支援策等による個人消費の回復や製造業を中心とした輸出の持ち直しも見られましたが、総じて景気は軟調となりました。
経営者が認識しているセグメントごとの経営成績は次のとおりです。
[電子部品事業]
エレクトロニクス業界においては、自動車市場では、新型コロナウイルスの影響が一時的に収束に向かった第2四半期から、各国での経済活動の再開や経済対策の効果により、世界の新車販売台数は回復基調となったものの、前期比では減少となりました。加えて、第4四半期は、世界的な半導体不足や米国テキサス州を襲った大寒波による原材料の供給不足の影響等により、市況は直前四半期と比較して軟調に推移しました。スマートフォン市場では、5G対応の新商品への買い替え需要により、スマートフォンの世界販売台数は回復傾向となりましたが、前期比では減少しました。EHII各市場では、IoTの進展、及びAIとの組み合わせによる新たなビジネスの展開が進んでいますが、新型コロナウイルスの影響により低調に推移しました。
この中で、電子部品事業における車載市場では、新車販売台数の落ち込みが大きく影響し、車載市場向け各種製品が低調となりました。民生その他市場は、北米向けスマートフォンの販売台数が好調に推移したものの、米中貿易摩擦による中国向けスマートフォンの販売台数の減少などの影響もあり、全体としては軟調に推移しました。
これらの結果、当事業の売上高及び営業利益ともに前期比で減少しました。
また、当社グループが過去に製造・販売した自動車用部品の一部の製品に関連し、得意先で当該製品を組み込んだ自動車の品質不具合が発生したことから、当該品質不具合に伴う市場措置費用に関わる当社グループの負担金額68億円を特別損失として計上しています。
(車載市場)
電子部品事業における車載市場では、CASEへの開発活動が一段と加速している中、幅広いニーズに対応すべく、次世代技術を使用した製品開発を推進、また、ブロードコム株式会社とのBluetooth® Low Energyを応用した測距システムでの協業、Acconeer ABとの次世代センシング技術共同開発契約締結など、よりスピーディーな事業化に向けて、各有力企業とのアライアンスも積極的に進めました。
当連結会計年度における当市場の売上高は、世界的に自動車市場が減速した影響を受け、全般的に各種製品が低調に推移し、2,091億円(前期比13.6%減)となりました。
(民生その他市場)
電子部品事業における民生その他市場では、日本企業初のCellular-V2X機能搭載の車載用5G通信モジュールの開発をはじめ、株式会社キユーソー流通システム・損害保険ジャパン株式会社との物流資材遠隔管理システムの共創、またSkyhook Wireless, Inc.の精密測位システムを採用したクラウドサービスMonoTra™の開発などを進めました。
当連結会計年度における当市場の売上高は、スマートフォンの販売台数の減少による影響を受けましたが、スマートフォン向けカメラ用アクチュエータが好調に推移した効果もあり、1,869億円(前期比2.4%増)となりました。
以上の結果、当連結会計年度の電子部品事業の売上高は3,960億円(前期比6.7%減)、営業利益は114億円(前期比29.2%減)となりました。
[車載情報機器事業]
CASEやADAS(先進運転支援システム)の進展により、IT・通信など業種、業態の垣根を越えた企業間の開発競争が激化していますが、新車販売台数は前期比で減少し、市況は低調に推移しました。この中で、車載情報機器事業では、電子部品事業とのシナジーによって生まれた「デジタルキャビン」製品群の提案及び製品開発の加速、ブロックチェーン技術を活用したカーシェアリング向けデジタルキーシステムの開発や、コネクテッドカーの車両情報管理等でのビジネス強化を図りました。また、グローバル競争力及び顧客価値の向上を目的として、日本精機株式会社と資本業務提携契約を締結しました。
当連結会計年度は、新車販売台数減少の影響が大きく、売上高及び営業利益ともに前期比で減少しました。
以上の結果、当連結会計年度における車載情報機器事業の売上高は2,406億円(前期比21.4%減)、営業損失は39億円(前期における営業利益は56億円)となりました。
[物流事業]
物流事業の主要顧客である電子部品業界において、新型コロナウイルスの影響により、第1四半期は世界各国で自動車や電子機器の生産が停滞し電子部品の物量全体が大きく落ち込みましたが、第2四半期後半から車載関連を中心に回復傾向となりました。
このような需要動向のもと、物流事業((株)アルプス物流・東証第一部 ※2021年1月21日市場第二部銘柄から市場第一部銘柄へ上場)では、新規拡販に取り組むとともに、生産性向上の施策として国内で新たに大型自動化設備を導入した倉庫を稼働しました。消費物流においては、企業間物流の取り込み、メディカル・化粧品などの商品センター業務及び生協宅配ビジネスの拡大に取り組みました。また、海外においては、拠点・ネットワークの拡充を継続し、中国では通関業の専門子会社を設立するなど、業務の迅速化による輸出入事業拡大に向けた体制の強化を図りました。
当連結会計年度における業績は、新規拡販と生産性向上によるコスト削減に取り組み、更に電子部品業界の荷動きが活発になったことから、前期比で売上高、営業利益ともに増加しました。
以上の結果、当連結会計年度における物流事業の売上高は692億円(前期比3.5%増)、営業利益は47億円(前期比14.7%増)となりました。
以上により、上記の3事業セグメントにその他を加えた当連結会計年度における当社グループの連結業績は、売上高7,180億円(前期比11.4%減)、営業利益131億円(前期比51.1%減)、経常利益132億円(前期比29.1%減)、親会社株主に帰属する当期純損失38億円(前期における親会社株主に帰属する当期純損失は40億円)となりました。
③ キャッシュ・フローの状況
現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末と比べ235億円増加し、当連結会計年度末の残高は、1,517億円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度末における営業活動による資金の増加は、426億円(前期は872億円の増加)となりました。
この増加は、主に減価償却費413億円、たな卸資産の減少額91億円、仕入債務の増加額70億円、未払費用の増加額59億円及び税金等調整前当期純利益50億円による資金の増加と、売上債権の増加額147億円、法人税等の支払額63億円及び退職給付に係る負債の減少額19億円による資金の減少によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度末における投資活動による資金の減少は、411億円(前期は424億円の減少)となりました。
この減少は、主に有形及び無形固定資産の取得による支出379億円、投資有価証券の取得による支出39億円及び定期預金の預入による支出12億円による資金の減少と、定期預金の払戻による収入13億円の増加によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度末における財務活動による資金の増加は、145億円(前期は316億円の減少)となりました。
この増加は、主に短期借入金及び長期借入金の増加額451億円、自己株式の処分による収入37億円による資金の増加と、長期借入金の返済による支出280億円、配当金の支払額40億円による資金の減少によるものです。
④ 生産、受注及び販売の実績
1)生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
|
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前連結会計年度比(%) |
|
電子部品事業 |
400,382 |
△7.8 |
|
車載情報機器事業 |
205,608 |
△21.4 |
|
物流事業 |
― |
― |
|
合計 |
605,990 |
△12.9 |
(注)1. セグメント間取引については、相殺消去しています。
2. 金額は、販売価格によっています。
3. 上記の金額には、消費税等は含まれていません。
2)受注実績
当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
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セグメントの名称 |
受注高(百万円) |
前連結会計年度比(%) |
受注残高(百万円) |
前連結会計年度比(%) |
|
電子部品事業 |
416,269 |
△1.8 |
58,748 |
52.5 |
|
車載情報機器事業 |
248,484 |
△14.5 |
18,107 |
76.8 |
|
物流事業 |
― |
― |
― |
― |
|
合計 |
664,754 |
△6.9 |
76,856 |
57.6 |
(注)1. セグメント間取引については、相殺消去しています。
2. 上記の金額には、消費税等は含まれていません。
3. 当連結会計年度において、受注残高に著しい変動がありました。これは電子部品事業セグメントでは、新型コロナウイルス拡大影響によりスマートフォンの販売開始が後ろ倒しとなったため受注残高が維持されました。またスマートフォン向けコンポーネント製品の販売が好調だったことにより受注高が緩やかに回復しています。車載情報機器事業セグメントでは、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う移動規制や顧客工場の稼働停止等により、前年度末において、純正品等の販売が急速に減速した影響を受けましたが、下期以降、感染対策と経済活動の両立が進み、受注高が緩やかに回復した影響によるものです。
3)販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
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セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前連結会計年度比(%) |
|
電子部品事業 |
396,042 |
△6.7 |
|
車載情報機器事業 |
240,616 |
△21.4 |
|
物流事業 |
69,213 |
3.5 |
|
報告セグメント計 |
705,873 |
△11.5 |
|
その他 |
12,140 |
△4.3 |
|
合計 |
718,013 |
△11.4 |
(注)1. セグメント間取引については、相殺消去しています。
2. 上記の金額には、消費税等は含まれていません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成されています。
この連結財務諸表の作成に際し、連結決算日における資産・負債の数値及び連結会計年度の収益・費用の数値に影響を与える会計上の見積りを用いています。
当社は、特に以下の会計上の見積りが、当社グループの連結財務諸表に重要な影響を与えるものと考えています。
1)たな卸資産の評価
たな卸資産は取得原価又は正味売却価額のいずれか低い金額で評価しています。正味売却価額が取得原価よりも下落している場合には、取得原価と正味売却価額との差額について評価損を計上しています。正味売却価額は、主に顧客との販売契約に基づく予定売価を基に見積もっています。また、一定の保有期間を超えた場合、滞留又は陳腐化しているとみなし、評価損を計上しています。更に、保有期間にかかわらず将来廃却が見込まれるたな卸資産についても評価損を計上しています。
市場環境の悪化による顧客の需要減少や製品ライフサイクルの変化等に伴い、たな卸資産の収益性の低下、滞留、陳腐化が生じた場合、将来において追加の評価損の計上が必要となる可能性があります。
2)繰延税金資産
繰延税金資産については、回収可能性があると判断できる金額のみ計上しています。将来の収益力に基づく課税所得を見積り、繰延税金資産の回収可能性を判断しています。将来課税所得の見積りは、事業計画並びにグループ会社間の取引価格を基礎としています。事業計画は、主に、各事業の主要顧客への販売数量及び販売価格、予測されている営業利益率、売上規模に応じた固定費の見積り及び想定為替レートを前提に策定しています。また、各市場における新型コロナウイルス感染拡大の影響も勘案しています。
将来において顧客の需要減少や移転価格を含む、税務関連の動向の変化や新型コロナウイルスの影響により課税所得が予想を下回り、すでに計上されている繰延税金資産の全部又は一部を回収できないと判断した場合、当該判断を行った期間に繰延税金資産を取崩し、税金費用が計上される可能性があります。
当連結会計年度の繰延税金資産の回収可能性を判断するに当たり、将来課税所得の見積りに用いた重要な仮定は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。
3)退職給付に係る負債
退職給付費用及び退職給付に係る負債は、数理計算上の前提条件に基づいて算出されています。前提条件には、割引率、長期期待運用収益率、退職率、死亡率及び昇給率等の仮定が含まれています。このうち、退職給付費用及び退職給付に係る負債の計算に影響を与える最も重要な仮定は、割引率及び年金資産に係る長期期待運用収益率です。
割引率は優良債券の利回りを参考に決定しており、連結会計年度末において割引率を再検討した結果、割引率の変動が退職給付債務に重要な影響を及ぼすと判断した場合にはこれを見直した上で、退職給付債務を算定しています。長期期待運用収益率は、保有している年金資産のポートフォリオに基づく一定期間における運用実績を基に、今後の運用方針及び市場動向を考慮して設定しています。
これらの仮定が実際の結果と異なる場合、又は仮定を変更した場合、将来期間における退職給付費用及び退職給付に係る負債に影響を及ぼすことがあります。
当連結会計年度の退職給付費用の計算に使用した割引率及び長期期待運用収益率は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(退職給付関係)」に記載のとおりです。
4)固定資産の減損
当社グループの資産又は資産グループに減損が生じている可能性を示す事象があり、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額がこれらの帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しています。減損損失の測定に当たって見積られる回収可能価額は、資産又は資産グループの正味売却価額と使用価値のいずれか高い方の金額を使用しています。
減損損失を認識するかどうかの判定及び使用価値の算定において見積られる将来キャッシュ・フローは、中期経営計画や外部環境に照らして算定した受注予測等に基づき算定しています。また、使用価値の算定に使用する割引率は、当社に要求される加重平均資本コストを採用しています。将来、事業環境の変化等により固定資産の収益性が低下した場合や新型コロナウイルスの業績へ与える影響が仮定と大きく異なる場合、減損損失の計上が必要となる可能性があります。
また、固定資産の耐用年数については、各市場における製品ライフサイクルを基礎として、生産設備等の経済的耐用年数を設定しています。製品ライフサイクルについては、事業・市場・顧客単位などの性質を勘案して決定しています。
当連結会計年度において減損会計を適用するに当たり、将来キャッシュ・フローの見積りに用いた重要な仮定は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。
② 当連結会計年度の財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度の当社グループにおける連結業績は、売上高7,180億円(前期比11.4%減)、営業利益131億円(前期比51.1%減)、経常利益132億円(前期比29.1%減)、親会社株主に帰属する当期純損失38億円(前期における親会社株主に帰属する当期純損失は40億円)となりました。
減収減益の主な要因は、電子部品事業において、車載市場は世界的に自動車市場が減速した影響を受け、全般的に各種製品が低調に推移しました。EHII各市場では、IoT(Internet of Things)の進展、及びAI(人工知能)との組み合わせによる新たなビジネスの展開が進んでいますが、新型コロナウイルスの影響により低調に推移しました。車載情報機器事業においても、新車販売台数の減少が大きく影響し低調に推移しました。
このような事業環境の中、第1次中期経営計画の2年目が終了し、「革新的T型企業“ITC101”」の目標実現に向け、「デジタルキャビン」製品群の提案活動も一層拍車をかけ、事業構造改革におけるコスト構造改革においては固定費の削減などが計画通り進んでいます。他にも、コロナ禍を働き方改革推進の好機と捉え、そのインフラとなるITの活用によるDX(Digital Transformation)を推進しています。当社は、今後も新型コロナウイルス感染拡大に伴う事業への影響を最小限とすべく、急速に変化する状況に応じて必要な対策を継続していきます。そして、更なるグローバルネットワークの拡充により一層の事業拡大を目指す物流事業を含め、これまで以上にグループ一丸となった事業運営を推進し、企業価値の向上を図っていきます。
なお各セグメントの状況については以下のとおりです。
[電子部品事業]
当連結会計年度は、車載市場で世界的に自動車市場が減速した影響を受け、各種製品が全般的に低調傾向となりました。民生その他市場においてはスマートフォンの販売台数の減少による影響を受けましたが、スマートフォン向けカメラ用アクチュエータは好調に推移しました。しかし、新型コロナウイルスの感染再拡大の影響もあり、前期比で売上高及び営業利益ともに減少しました。
[車載情報機器事業]
当連結会計年度は、CASEやADAS(先進運転支援システム)の進展により、IT・通信など業種、業態の垣根を越えた企業間の開発競争が激化していますが、新車販売台数は前期比で減少し、市況は低調に推移しました。この中で、車載情報機器事業では、電子部品事業とのシナジーによって生まれた「デジタルキャビン」製品群の提案及び製品開発の加速、ブロックチェーン技術を活用したカーシェアリング向けデジタルキーシステムの開発や、コネクテッドカーの車両情報管理等でのビジネス強化を図りました。また、グローバル競争力及び顧客価値の向上を目的として、日本精機株式会社と資本業務提携契約を締結しました。しかし、新車販売台数減少の影響が大きく、売上高及び営業利益ともに減少しました。
[物流事業]
当連結会計年度は、新規拡販に取り組むとともに、生産性向上の施策として国内で新たに大型自動化設備を導入した倉庫を稼働しました。消費物流においては、企業間物流の取り込み、メディカル・化粧品などの商品センター業務及び生協宅配ビジネスの拡大に取り組みました。また、海外においては、拠点・ネットワークの拡充を継続し、中国では通関業の専門子会社を設立するなど、業務の迅速化による輸出入事業拡大に向けた体制の強化を図りました。新規拡販と生産性向上によるコスト削減に取り組み、更に電子部品業界の荷動きが活発になったことから、前期比で売上高、営業利益ともに増加しました。
③ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループにおいては、既存事業と新規事業における新製品対応や品質の確保及び原価低減などを目的として、生産設備の更新や合理化などの設備投資を行いました。
電子部品事業については、国内外の各事業拠点において、新製品の増産対応や合理化、生産体制の強化などを目的とした主にコンポーネント製品の機械設備や金型等に対し、総額254億円(前期比2億円減)の投資を行いました。
車載情報機器事業については、新製品の開発や品質の向上などを目的として、CASE領域など将来の成長に備え、自動車メーカーに対応した金型や機械設備などに、総額102億円(前期比13億円減)の投資を行いました。
物流事業については、国内で新たに大型自動化設備を導入した倉庫などに対し、総額40億円(前期比4億円減)の投資を行いました。
以上の結果、その他子会社での投資及び連結消去を含む当連結会計年度の当社グループにおける設備投資の総額は、403億円(前期比20億円減)となりました。
当社グループにおける運転資金及び設備投資資金については、主に営業活動によるキャッシュ・フロー及び金融機関からの借入金にて調達しています。当連結会計年度末の借入金残高は1,179億円(前期比180億円増)となり、運転資金安定のための短期借入金が508億円(前期比53億円減)、将来の事業基盤確立に向けた研究開発や設備投資資金の確保などのための長期借入金が670億円(前期比233億円増)となりました。
今後の重要な設備投資としては、電子部品事業は当社を中心に生産体制強化を図るため、主にコンポーネント製品の生産設備への投資を行う予定です。
車載情報機器事業は、新製品の研究開発・生産設備の更新や合理化のため、国内外の主要な拠点で投資を行う予定です。
物流事業は、国内外における倉庫建設を中心とした拠点・ネットワーク投資を行う予定です。
なお、当社グループにおける運転資金及び設備投資資金については、主に営業活動によるキャッシュ・フロー及び金融機関からの借入金にて調達する予定です。
該当事項はありません。
当社グループ(当社及び連結子会社)は、「人と地球に喜ばれる新たな価値を創造します。」を全ての礎に、事業活動を通じて持続可能な社会の発展に貢献することを目指しています。
「Right(最適な)」「Unique(独自性)」、「Green(環境にやさしい)」を兼ね備えた、「美しい電子部品を究める」ことを事業の根幹とし、70年の歴史の中で育んだ当社グループ独自の強みを最大限に活かし、新しい価値を創造しています。
当社グループの研究開発費の総額は
(1)電子部品事業
当社の価値創造の源泉は、市場のニーズを捉えた「美しい電子部品」です。そして、それをタイムリーに世の中に送り出すことが、私たちの価値創造です。創業以来70年の中で、深化・融合した技術と脈々と受け継がれている企業風土が相まって、価値創造を支えています。
人とメディアのより快適なコミュニケーションを目指し、「HMIの深化」「センサバラエティの拡大」「コネクティビティをキーとしたビジネスの拡大」を独自の柱とし、固有技術の深化・融合により、新たな価値ある製品を開発しています。
また、更なる未来を見据えた技術開発は、現在所有する技術に留まらず、新たな技術領域への挑戦に向けて、大学や研究機関・他企業とのオープンイノベーションやアライアンスにもこれまで以上に取り組み、当社独自の生産技術力と組み合わせて、今までにない新しい製品を新しい市場に送り出すために、ダイナミックな技術開発を行っています。
電子部品事業に係わる研究開発費は
① 車載市場
自動車産業における100年に1度の大変革期の中、その中心にあるCASEに対応した各種センサやデバイス製品の開発に加え、コクピット・インテリアデザイン、運転操作システムで差別化する各種モジュール製品まで幅広く開発を行っています。
<車載モジュール製品>
車の更なる安全・安心、かつ快適な車室内空間を実現するために、人と機器をつなぐHMI技術及びセンシング技術を応用した商品開発を行っています。また、小型電子シフターをはじめ、エアコンやオーディオの操作性向上を目的に、ハプティック®、タッチパッド、静電ステアリングホイールスイッチなどの開発を進めます。更に、自動運転の目となる、前方の車両や人・障害物などを検知し、衝突を防止するための超短距離ミリ波レーダーの開発も進めています。これら複合化・多機能化に加え、大学や研究機関と共同研究を進めている人間工学に基づいた、心地良く快適な操作フィーリングを追求することで付加価値向上を図ります。
一方、生産性改善を重要課題とし、材料や部品の共通化及び設計・開発工程の標準化を推進し、安定品質を維持して収益力の強化に取り組みます。
<車載デバイス製品>
自動運転を支えるActive Safety技術の高度化に向け、車両の運転支援技術として中国での導入が先行するC-V2X(Cellular based Vehicle to X)の開発が進み、2020年度に市場導入を開始しました。更に5G通信方式への対応に向けた準備を進めています。自動運転走行で必須となる操舵検出において、当社固有の静電技術を応用したステアリングハンズオフセンサ、高周波技術を核としたミリ波センシングの多様化(乗員検出、障害検出、モーション検出等)の開発が進んでいます。更にその先に向け、電子ミラーを核とし、前出のセンサとディスプレイ製品で培ったイメージ処理技術を融合させた安全運転支援技術への取り組みを加速させています。
また、コネクテッドの領域においては将来車両に必須である高度セキュリティとデジタルキー技術を実現するスマートフォンエントリーシステムの量産化に注力しています。
電動化における重要部品である電流センサについては、高電圧化、多相化、小型・高精度に対応したバラエティの拡充によって採用が増えています。更にCASE領域製品だけではなく、当社の強みであるHMIデバイスにおいては、デザイン性と操作フィーリングを両立する新たな静電・ハプティックデバイスの開発を進めています。
② 民生その他市場
スマートフォン、ノートPC、小型プリンタをはじめとするモバイル市場やEHII市場において、機器の軽薄短小・操作性・快適性・省エネ・高速大容量化等に貢献すべく、新素材からデバイス、モジュール製品等の幅広い分野で研究開発を行っています。
<モバイル市場>
成熟が進むも巨大な需要が続くスマートフォン市場では、軽薄短小の防水防塵スイッチ、タクトスイッチ® など各種操作入力用製品をはじめ、カメラモジュール機能の高性能化に伴うレンズ大口径化及び低消費電力、薄型化などのニーズに応え、手振れ補正用アクチュエータ、タッチパネルセンサ、3軸地磁気センサ、圧力センサの新製品開発に更に注力します。また、スマートフォンの付加価値向上に熱転写プリンタ技術を応用した加飾印刷の開発に取り組んでいます。
ゲーム市場では長寿命・高触感のニーズからコントローラ用にスイッチやジョイスティック等のHMI製品、リアルな感触を再現できるハプティックデバイスの開発を行います。
これらの製品は、当社固有の精密加工技術、接点・抵抗・静電・圧電・光・磁気・電気・熱の設計技術を応用し開発され、自動機組立てで安定した供給と品質が保証されています。
<EHII市場>
ICT(Information and Communication Technology)による「超スマート社会」の実現が政府より打ち出されて以来、日本をはじめ先進各国でビッグデータを活用した革新的な取り組みが急速に広がりはじめています。工業、インフラ、物流、ウェアラブルなどあらゆる分野で市場が形成されはじめており情報技術、エレクトロニクスの重要性が高まっています。当社グループはIoTスマートモジュールを用いて通信等各社との協業によるソリューション提案を様々な分野で進め、EHIIとして中国、インド、マレーシア等、各国での展示会に出展し、光通信やIoT等、進展する市場の新規開拓も進めてきました。
Energy分野では、大手海外企業とスマート分電盤用電流センサを量産開始して以来、家庭向け蓄電池システムの量産も実施し当社独自の軟磁性アモルファス材料 リカロイ™を用いた製品を基に、小型高効率技術を追求し、省エネルギー分野でのビジネス開発を継続して進めます。
IoT分野では、世界最小のセンサネットワークモジュールを開発し、ユーザー側で容易にIoT環境が構築できる開発キットも提供しています。現在、荷物の位置や状態をリアルタイムに把握できる物流状態の管理システムや製造現場における実証実験に基づいた「作業者見守りシステム」が採用され、各種センサをヘルメットに装着、環境情報や作業者の生体情報・活動情報を取得することで、体調不良の検知や万が一の労働災害発生の早期発見・早期処置が可能となります。これら様々なビジネス形態の中で、スピーディーな事業基盤の確立に向け電子部品事業の強みであるハードウェア技術と車載情報機器事業のサービスビジネスフレームワークを融合するとともに、ハードウェアを中心にしたモノビジネスからサービス含むコトビジネスへの移行を推進し、ワンストップ型ソリューションビジネスの展開を進めます。また、他社との協業や提携なども積極的に進め、国内外での生産体制の拡充及び生産性の改善に向けた各種取り組みを継続して進めていきます。
(2)車載情報機器事業
自動車業界においては、CASEやADAS(先進運転支援システム)の進展により環境が大きく変化し、IT・通信等の業務・業態を越えた企業間の開発競争が一層激化しています。
このような事業環境の中で、電子部品事業とのシナジーによって生まれた「デジタルキャビン」製品群の提案及び製品開発の加速、ブロックチェーン技術を活用したカーシェアリング向けデジタルキーシステムの開発を引き続き推進しています。また、MaaS(Mobility as a Service)ビジネスの強化として、レンタカー等の交通事業者や中古流通・物流MaaS事業者向けに、高度なUIを備えたナビアプリ及び車両位置の管理システムを開発しています。関係会社のアルパインマーケティング株式会社と連携し、ソリューションの提供を開始しました。また、グローバル競争力及び顧客価値の向上を目的として、日本精機株式会社と資本業務提携契約を締結しました。
音響機器市場では、CASEなど自動車産業の変革に伴って、サウンド事業が取り組む領域も拡大しています。エンジンのこもり音など走行中のノイズを逆位相の音をスピーカーから出して打ち消すアクティブノイズコントロールやAIを活用したチューニング技術など「デジタルキャビン」におけるプレミアムサウンドをより身近に実現することを目指した取り組みを推進します。音をコントロールする取り組みは、車の中だけでなく外にも広がっています。例えば、電気自動車やハイブリッドカーに搭載が義務づけられた車両接近通報装置において、当社の「eSound」は電子基板を備えているのが大きな特徴で、決まった音のみを発生させる他社のシステムとは違い、サウンドを自在に作り込むことが可能です。サウンド技術の可能性を更に広げていくため、人の聴覚にどうアプローチするかをテーマに、大学と連携した共同研究を進めています。
車載情報機器事業に係わる研究開発費は