文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
当社グループは、企業理念「アルプスアルパインは人と地球に喜ばれる新たな価値を創造します」の実現及び継続のため、創業期制定の社訓をベースとした「価値の追究」「地球との調和」「社会への貢献」「個の尊重」「公正な経営」の5つの経営姿勢をグループ共通の価値観として、各社が連携して経営計画を推進し、企業価値の最大化を図っていきます。
<中期経営計画2027 基本方針>
1.高付加価値の追求
モビリティ事業の収益改善を最重要テーマとし、従来のモジュール・システム事業をモビリティ事業へ一本化した上で、デジタルキャビン領域を中心に高付加価値製品へのシフトを進めます。併せて、不採算製品の撤退や、製品ポートフォリオの選択と集中、生産拠点の再編、更にはROICを基軸とした投資判断の徹底等、収益構造の抜本的な見直しを推進していきます。
2.次の主力事業仕込み
センサー領域を中心とした資本及び人的投資の強化を図るとともに、新たな成長領域を明確に定め、マーケティング機能との連携や外部パートナーとの協業体制を強化します。これにより、当社のコア技術をベースとした新製品の開発と拡販を積極的に推進します。
3.経営基盤の強化
国内生産拠点のコスト競争力向上に向け、戦略的な設備投資や機能再編、人財への投資を含む構造改革を継続し進めることで、持続可能な経営基盤の確立を図ります。更に、業績予想の精度向上及び資本効率を高める経営の実現に向けた施策にも取り組んでいきます。
これらの取り組みを通じて、2027年3月期でPBR1倍以上、2028年3月期にROE10%の達成を目指します。
当社は日本をはじめ北米、欧州、中国、その他アジアを中心に23の国と地域に183拠点を持ち、約15,000種類の製品・サービスを車載市場、モバイル市場、民生市場向けに販売しています。車載市場は、主に日本・北米・欧州の大手自動車メーカー向けに直接販売するTier1ビジネスを中心に、世界中の自動車部品メーカー向けに販売するTier2ビジネスも行っています。モバイル市場は、大手スマートフォンメーカーをはじめ、その他モバイル関連製品を扱う顧客にも販売を行っています。また、民生市場は、自動車やモバイル製品以外のパソコン、家電、ゲーム機器や一部産業機器等のメーカーに販売しています。
当社グループを取り巻く経営環境は、グローバル市場での競争が激化しており、世界市場での競争力を維持するために、経済的な変動に対応する必要があります。特に足許では、世界経済を巡る通商政策や地政学リスクの影響に加え、日本・北米・欧州の自動車メーカーにおいては、市場環境の変化を背景とした販売戦略の見直しが進んでおり、事業環境の不確実性が高い状況にあります。このような状況を踏まえ、短期的な環境変化への柔軟な対応に加え、中長期的な視点でのサプライチェーンの最適化が重要な経営課題となっています。
また、車載市場における当社の事業領域では、車の自動運転や電動化とともに車室内の電子化による技術進化が急速に進んでいます。特にインフォテインメントシステムやデジタルキャビンの開発が進み、車内の快適性と利便性が向上しています。近年では中国資本の企業がこの分野で躍進し、これに対抗して、従来の当社顧客の多くを占める日本や欧米の企業も技術開発と市場拡大に注力しており、企業間競争が激化しています。モバイル市場においては、技術のコモディティー化による競合企業の参入が進み、より一層のコスト対応力が求められるとともに当社のコア技術が活きる新製品の開発が求められています。また、これらの既存市場だけでなく、新規市場開拓としてロボティクス、ライフサイエンス、住宅設備、産業機器、農業、介護、環境、リサイクル市場への参入で当社製品の強みを活かすことを目指します。
中期経営計画2027では中期の重要課題として、①モビリティ事業の収益性、②成長ドライバーの不在、③収益予想のボラティリティ低減、④資本効率の改善による収益力の強化の4点を掲げ、課題解決に取り組んでいます。
加えて当社グループは、中長期的に企業価値を向上させるため、ESG(環境・社会・ガバナンス)領域からも重要な経営課題を特定し、事業の良質化と競争力強化を通じた持続的な成長を目指しています。気候変動対応や資源循環の促進については、環境価値の高い製品の創出や脱炭素施策の推進を通じ、付加価値創出と環境負荷低減の両立を図ります。また、価値創造を支える人財の育成・活躍推進と、実効性あるコーポレート・ガバナンスの強化により、これらの取り組みを着実に実行していきます。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、実際の結果とは様々な要因により異なる可能性があります。
(1)サステナビリティー全般
当社グループは、企業理念である「人と地球に喜ばれる新たな価値を創造します。」の実現に向け、「価値の追究」「地球との調和」「社会への貢献」「個の尊重」「公正な経営」の5つの経営姿勢の下、サステナビリティー経営を推進しています。また、社会や顧客からの要請、法規制への対応にとどまらず、持続的な成長及び中長期的な企業価値向上の観点から、サステナビリティー課題を含む重要課題(以下、マテリアリティー)を特定し、全社並びに各本部・部門の中期経営計画に反映しています。これにより、事業活動とサステナビリティーの一体的な推進を図っています。
① ガバナンス
当社グループは、サステナビリティー関連課題に対し、取締役会が最終的な監督責任を担う体制を構築しています。業務執行においては、各本部・部門が施策の推進及び進捗管理を行い、その内容や課題については、経営会議の一つとして位置づけるサステナビリティ委員会(執行役員会)において審議しています。同委員会では、全社横断的な観点からマテリアリティーの特定・見直し、対応方針の検討を行うことで、経営レベルでの迅速な意思決定につなげています。
取締役会は、サステナビリティ委員会からの定期報告(年4回)を受け、重要なサステナビリティー課題に関する監督を行っています。また、各マテリアリティーの担当役員を明確に定めることで、責任の所在を明確化し、実効性の高い推進体制を構築しています。
当事業年度においては、サステナビリティ委員会のテーマ別進捗の定期報告に加え、環境関連長期目標やエコロジカルフットプリント算定結果、従業員エンゲージメントサーベイ結果、人権方針の策定、グループ行動規範の改訂、情報セキュリティマネジメントシステムに関するマネジメントレビュー等を経営会議の主要議題として取り上げ、サステナビリティー課題への対応強化を図りました。
<推進体制>

<サステナビリティーに係る会議体>
<2025年度の経営会議における主なサステナビリティー議題>
<サステナビリティーに関連するインセンティブ>
当社は、サステナビリティー課題への取り組みを経営の重要要素と位置づけ、役員による主体的な関与とリーダーシップの発揮を促進するため、ESG評価指標を譲渡制限付株式報酬に組み込んでいます。
具体的には、主要な第三者評価機関であるFTSE Russell ESG Ratings及びMSCIのESG評価スコアを採用し、当社が定める評価基準に従い±20%の範囲で加減算を行っています。これにより、サステナビリティー課題への対応と役員報酬との連動性を高め、持続的な企業価値向上に資するインセンティブ設計としています。なお、詳細については、
② リスク管理
当社グループは、ビジョン2035の実現及び中期経営計画の達成に向け、サステナビリティー課題を含むマテリアリティーの特定プロセスにおいて、リスク及び機会の識別を行っています。具体的には、機関投資家との対話(SRエンゲージメント)を通じた外部視点の把握に加え、社内関係部門に対する調査及びヒアリングを実施し、多様な視点を踏まえ客観性と網羅性の確保を図りつつ、事業活動に影響を及ぼす機会とリスクを定期的に把握しています。
<マテリアリティーの特定プロセス>
<リスクと機会の識別>
識別されたリスクは、マテリアリティーへの取り組みを通じて低減を図る方針としています。各マテリアリティーについては担当役員を定め、その指揮命令の下、各本部・部門における重点施策及びKPIとして具体化し、必要な取り組みを推進しています。なお、これらの取り組み状況については、執行役員会及び各種委員会等の経営会議において定期的にモニタリングを行っています。取締役会は、その結果について報告を受け、マテリアリティーの進捗及びリスク低減の状況を監督しています。
また、当社グループはESG・法務本部長をリスク管理責任者とし、リスク管理基本方針及びリスク管理規定等に基づく管理体制を構築しています。リスクマップを整備するとともに、経営に重要な影響を及ぼすリスクについては、リスク情報、想定される影響及び対応策を明確化した上で管理・報告を行っています。更に、拠点及び拠点所在地域において事業活動の停止又はその可能性がある事象が発生した場合には、全社危機対策本部を設置し、対応方針、施策及び計画の検討・決定を行う体制としています。リスク管理の詳細は
当連結会計年度においては、経営構造改革及び中期経営計画の重点テーマである「事業ポートフォリオの転換」や「特定の顧客への依存」、「サプライヤーの事業継続」等新たに5つのリスクを特定・追加し、重要性の評価を踏まえて各施策へ反映しました。
③ 戦略
当社グループは、サステナビリティー経営の推進を社会的責任の遂行にとどまらず、持続的な成長及び中長期的な企業価値向上の実現に不可欠な経営課題と位置づけています。この認識の下、従来の事業視点に加え、ESRS(欧州サステナビリティ報告基準)に基づくダブルマテリアリティー及び人的資本経営の観点を踏まえてマテリアリティーを特定しています。特定に当たっては、「事業への影響度」と「ステークホルダーの関心度」を軸としたマテリアリティーマップを用いて整理し、各課題に対応するテーマ・施策及びKPIを設定しています。
<マテリアリティーマップ>

※下線テーマがサステナビリティーに係るマテリアリティー
※(E):環境、(S):社会、(G):ガバナンス
これらのマテリアリティーは、中期経営計画及び各本部の戦略に反映しており、各施策の実行を通じて、サステナビリティー課題への対応と事業成長の両立を図っています。
④ 指標及び目標
当社グループでは、マテリアリティーごとにテーマ/施策、KPI(中期)をそれぞれ設定し、進捗管理と評価を行っています。
※1 2025年度の担当役員、部門名で記載
※2 2021年度比
※3 2030年目標、2021年度比
※4 2次データの集計・算出結果。取引先から提出される1次データへの置き換えは翌期を予定
※5 2026年1月に環境配慮製品基準を策定。今後、同基準に基づき実態調査・検証を行い目標割合を設定予定
※6 生産拠点の廃棄物における埋め立て以外の比率
※7 連結指標は活動を開始して間もないため今後目標設定予定
※8 開示は単体実績。連結実績は活動を開始して間もないため今後集計予定
※9 CMRT(Conflict Minerals Reporting Template):紛争鉱物報告テンプレート
(2)気候変動への取り組みとTCFDへの対応
当社グループは、2020年9月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への賛同を表明しました。気候変動関連リスクと機会の分析を行い、その結果を事業戦略につなげることで持続可能な成長及びリスクへの適切な対応を目指していきます。
① ガバナンス
当社グループは、気候変動が事業活動に与えるリスクと機会を重要な経営課題と認識しており、取締役会の監督の下、組織的なガバナンス体制を構築しています。社長は気候変動課題を含むサステナビリティー課題に対する最高責任と権限を有しており、サステナビリティ委員長(取締役)が全てのサステナビリティー施策を監督する責任を負っています。
気候関連事項は、ESG・法務本部に設置した環境戦略推進プロジェクトがとりまとめを行い、サステナビリティ委員会において審議・承認されます。サステナビリティ委員会では、気候関連リスク及び機会の評価結果、気候変動への適応と緩和に向けた戦略・重要施策並びに関連KPIの進捗状況について、定期的な確認を行っています。サステナビリティ委員会における審議結果は、四半期ごとに取締役会へ報告されており、取締役会はこれらの報告を通じて、気候関連リスク及び機会への対応状況を継続的にモニタリングしています。取締役会は、進捗状況や顕在化しつつある課題について確認を行い、必要に応じて方針や施策の見直しを指示するなど、気候関連事項に対する監督機能を果たしています。

また、気候変動への適応と緩和をマテリアリティーとして特定し、中長期的な経営戦略に関連付けて取り組みを推進しています。更に、気候関連リスクは全社的なリスクマネジメントの枠組みに組み込んでおり、省エネルギー及び脱炭素に資する戦略投資(ESG投資)については、年度予算や大型投資の判断に当たって重要な要素として考慮しています。経営会議における主な気候変動への対応に係る議題は、「(1)サステナビリティー全般 ①ガバナンス」を参照ください。
なお、当社グループは、2050年度にバリューチェーン全体でのGHG排出実質ゼロをゴールとして掲げるとともに、単年度の目標としてスコープ1、2削減率や再生可能エネルギー比率を設定しています。
② 戦略
当社グループは、気候変動を将来の不確実性として捉えるのではなく、既に顕在化しつつある事業環境の変化として認識しています。こうした認識の下、当連結会計年度にマテリアリティーの見直しを行い、「脱炭素社会の実現」から「気候変動への適応と緩和」へと変更しました。これは、今後も一定程度の気温上昇は進行すると見込まれる中で、当社事業においては、気候変動への適応がリスク及び機会の両面に与える影響が特に大きいと評価したためです。
当社グループは、気候変動による影響を軽減するための緩和策を進めるとともに、変化する気候条件や社会環境への適応を優先的に取り組むことで、事業の持続性と競争力の確保を目指しています。
1)リスクと機会の分析条件
※ Intergovernmental Panel on Climate Change
2)シナリオ定義
当社グループは、気候変動が将来の事業環境に与える影響の不確実性を整理するため、気候変動の進行状況と社会の意向の方向性を組み合わせたシナリオ分析を実施しています。本分析では、縦軸に「気候変動の進行度(物理リスク)」、横軸に「規制強化度(移行リスク)」を設定し、両軸の組み合せにより4つのシナリオを定義しました。これにより、気候リスクが顕在化する局面と、政策・規制対応が進展する局面の違いを踏まえた、多面的な影響評価を可能としています。
各シナリオにおいては、コンポーネント及びセンサー・コミュニケーション事業とモビリティ事業それぞれについて、事業環境の変化がもたらすリスク及び機会を整理・評価しました。事業特性の違いを踏まえて分析を行うことで、気候変動が当社事業に与える影響をより具体的かつ戦略的に把握することを目的としています。

(A) 急速な脱炭素移行を迫られる社会
(B) 気候危機に翻弄される社会
(C) 積極的に脱炭素へ移行する社会
(D) 現状維持型社会
※電動化関連部品、ADAS/自動運転関連部品、半導体/電子デバイス関連、コックピット・インフォテインメント関連
3)リスクと機会の評価
前節で定義したシナリオを基に、当社主要事業における気候関連リスク及び機会を評価しました。
なお、リスク評価に当たっては、事業ごとに、①リスク項目の抽出、②想定される事業への影響の特定、③発生可能性及び影響度に基づく重要度評価(定性評価)を実施し、更に補助的なデータを用いて財務影響を定量化した上で、総合的に評価しています。
<リスク評価>
<機会評価>
4)リスクマネジメント
企業の持続的成長と企業価値の向上を実現するためには、事業を取り巻く様々なリスクについて、事業への影響度と重要度を適切に見極め、中長期的な視点で施策を立案し、対応していくことが重要であると認識しています。当社グループは、リスクマネジメントの枠組みとしてリスク管理規定を定め、全社的なリスクマップを作成しています。
気候変動に伴う物理的リスク及び移行リスクについても、経営上の重要なリスクの一つとして、全社リスクマネジメントの対象に組み込んでいます。気候関連リスクの識別及び評価に当たっては、TCFDの枠組みに基づき、将来の気候変動が事業に与える影響を整理しています。これらのリスクについては、環境戦略推進プロジェクトが中心となり、IPCC第6次評価報告書に示される気候シナリオ等の外部情報を活用しながら、定期的に洗い出し及び評価を実施しています。洗い出された気候関連リスクは、他の経営リスクと同様の評価基準に基づき整理され、全社リスクマップに反映した上で、サステナビリティ委員会において評価及び対応方針の検討、実行状況のモニタリングを行っています。また、財務影響度が大きいと判断されたリスクについては、取締役会に報告し、必要に応じて審議を行う体制としています。
このように当社グループでは、気候関連リスクを特別なリスクとして切り離すのではなく、全社的なリスクマネジメントプロセスの中に統合し、識別・評価・管理を行うことで、事業への影響提言及び中長期的な企業価値の維持・向上に努めています。
③ 指標及び目標
当社グループは、2050年度に向けた目標としてバリューチェーン全体のGHG排出実質ゼロを掲げています。また、2030年度に向けた中期目標を定め、その目標はSBT認定を取得しています。
<GHG排出削減目標>
(3)人的資本(人財戦略)
当社グループは、創業以来の理念である「人に賭ける」を継承し、人財を価値創造の源泉と位置づけ、個人を尊重するとともに、一人ひとりの熱意や挑戦を後押しする風土の醸成を基盤として人的資本経営を推進しています。この考えの下、従業員エンゲージメントの向上を通じて労働生産性を高めることで、人財の成長と企業価値の向上の好循環を実現することを人財戦略の基本的な方針としています。具体的には、事業計画の実行に必要となる人財ニーズ(人数・スキル等)を明確化の上、採用及び人財育成を通じた適所適材の配置を進めるとともに、個々の能力が最大限発揮される風土の醸成に取り組んでいます。
中期経営計画2027においては、「多様で自律した社員が企業理念に共感し、互いに信頼・連携しながら主体的に行動することにより、個人の成長、組織成果の最大化と会社の持続的成長を実現」することを目指す姿として掲げています。同計画の初年度の取り組み状況を踏まえ、2026年度においても、①人財ポートフォリオの充実、②価値創造人財の確保と育成、③個の能力を発揮できる風土醸成の3つを重点テーマとして継続的に推進します。これらの取り組みにより、人的資本の質・量の両面での強化と活用を図り、目指す姿の実現を通じて企業価値の向上につなげていきます。

なお、報酬については、人財の確保及び定着の観点から、外部水準及び社内の状況を踏まえ、労使間の協議を経て毎年見直しを行っています。また、物価動向等を踏まえつつ、生産性向上との両立を図ることで、事業競争力の維持・向上に資する処遇の実現に取り組んでいます。具体的な従業員数や平均年間給与及び平均年間給与の対前事業年度増減率等は「
また、当社では国内グループ会社(一部対象外の会社あり)を含めた、従業員持株会を導入しています。これは、福利厚生としての側面に加え、企業価値向上への関心を高めていくことを目的としています。具体的な従業員株式保有制度の状況は以下のとおりです。
2026年3月末現在
※自己株式を除く比率
① ガバナンス
当社グループでは、人的資本経営を担う責任者として人事総務本部長(CHRO)を設置し、取締役及び執行役員と連携して人と組織に関する課題のリスク把握と適切なリスクマネジメントを行っています。
人的資本に関する方針・計画等に関しては、次のとおり議論の場を分けて意見交換を実施しています。また、その重要性に応じて取締役会へ報告しています。
人的資本会議:人的資本に関する全体方針・計画や中長期的な重要事項
全社人材開発会議:個々人の育成や具体的な人財施策に関する事項
なお、経営会議における主な人的資本に係る議題は、「(1)サステナビリティー全般 ①ガバナンス」を参照ください。
<人的資本に関連する主な経営会議の開催実績>
※取締役会において人的資本に係る議題が含まれた開催月
② 戦略
1)人財ポートフォリオの充実
事業戦略の実行に必要な人財を適時・適所に配置することが、企業価値向上に向けた重要な基盤であると認識しています。この認識の下、事業及び職種ごとに求められる人財要件(人数・スキル・経験等)を明確化し、人財ポートフォリオの最適化に取り組んでいます。
具体的には、各事業における人財課題を把握し、最適な人事施策を推進するHRBP(Human Resources Business Partner)機能の強化により、事業の特性に応じた人財ニーズの把握精度を高めるとともに、タレントマネジメントシステムを活用し、従業員のスキルやケイパビリティーの可視化を進めています。これにより、事業戦略と連動した人財配置及び育成を推進し、人財ポートフォリオの高度化と事業機能の強化を図っています。これらの取り組みは現在、国内を中心に展開していますが、今後は人財データの整備・高度化を進めることでグローバルへの展開を図り、グループ全体での最適な人財活用を実現していきます。
2)価値創造人財の確保と育成
自身の強みを発揮し、組織成果の創出に主体的に貢献できる人財を「価値創造人財」と定義し、その拡充を通じて企業価値の向上及び持続的な成長の実現を目指しています。
この考え方の下、価値創造人財の確保・育成・配置を一体的に推進しています。確保においては、当社への理解促進に向けた情報発信の強化に加え、新卒採用における職種別採用の実施や勤務地確定時期の前倒し等により、採用の質及びマッチング精度の向上に取り組んでいます。また、入社後の定着支援として、パルスサーベイや面談による状況把握に加え、キャリア採用者同士のネットワーク形成を促進するなど、安心して能力を発揮できる環境整備を進めています。
育成においては、次世代の経営リーダーや事業を構想・推進できる人財、グローバルで活躍できる人財の育成に注力するとともに、従業員一人ひとりの自律的な成長を支援するため、多様な研修機会の提供を行っています。更に配置においては、社内公募制度の活用や本人の意向を踏まえた部門横断の異動を推進し、適所適材の実現と能力発揮の最大化を図っています。
3)個の能力を発揮できる風土醸成
企業理念及びビジョン2035等の会社が目指す姿の実現に向け、従業員一人ひとりが能力を最大限に発揮できる心理的安全性の高い風土醸成を推進しています。多様な従業員が自身のポテンシャルを発揮できる環境整備を進めるとともに、エンゲージメントの向上を通じて、組織全体の成果創出につなげていくことを目指しています。
こうした風土醸成に向け、当社ではこれまで対話型マネジメントの浸透に取り組み、挑戦と成長を生む企業風土の実現を進めてきました。これにより、自らの働きがいや成長した姿を見出し、主体的に行動する従業員が増加しつつあります。一方で、これらの変化に伴いマネジメントに求められる役割は年々増大し、課題の高度化が進んでいます。その結果、中間管理職層において部下と向き合う時間の確保が難しくなっていることが課題となっています。このため、従業員のキャリア自律支援を継続的に行うとともに、中間管理職層がマネジメント業務に集中できる環境づくりを進めています。
また、2024年度より国内の全従業員(単体)を対象にエンゲージメントサーベイを定期的に実施し、組織の状態や課題の可視化を進めています。サーベイ結果を踏まえた改善活動を通じて、対話の質の向上や組織風土の継続的な改善を図り、エンゲージメントの向上と行動変容の定着を推進し、更なる成果発揮につなげていきます。
<個の能力を発揮できる風土醸成に係る活動概要>
なお、当社グループでは、女性活躍推進法に基づく行動計画を策定しており、女性が活躍できる社内環境の整備を計画的に実施しています。

また、重点テーマを遂行するに当たり、その基盤となる労働環境及び安全衛生の維持・向上は欠かせない事項であると捉え「安全衛生方針」を策定し、従業員一人ひとりが安全に、そして心身ともに健康に働ける職場環境づくりに努めています。

加えて、2021年4月に制定した「健康経営宣言」の下、従業員の健康管理を重要な経営課題と捉え、健康診断やストレスチェックの定期的な実施、特定保健指導の実施率向上をはじめとする様々な「健康経営」の実践に積極的に取り組むとともに、2022年度より健康経営ワーキンググループを発足させ、取り組みを推進しています。

③ 指標及び目標
当社における、2025~2027年度における指標/目標及び活動実績は次のとおりです。
※1 国内外の動向等を踏まえ今後も労務費上昇が見込まれることから、付加価値創出額も同様に上昇させていくことを想定し、
2024年度と同程度の目標を設定
※2 2025年度より単体に加え国内外の主要グループ会社31社の人財育成費の集計を開始。参考として記載した連結値は、合計
32社を対象とした集計結果。今後は対象範囲の拡大及び集計内容の精緻化を進める予定
※3 2026年度より連結のグループ会社を対象にeNPSを集計予定。その結果を踏まえ連結目標を設定
※4 HR Brain社のサーベイを使用し他社と比較検証を実施
(1)リスクマネジメントの考え方
当社グループは、リスクマネジメントを事業の持続的成長と中長期的な企業価値の向上を実現するための「経営・事業運営の基盤=攻めの経営を支える基盤」と位置づけ、事業のグローバル化、サプライチェーンの複雑化等により多様化するリスクに対して、今後起こり得るリスクやそれらによる事業への影響度に応じて被害を回避又は最小化するための取り組みを進めています。
(2)リスクマネジメントの活動サイクル
当社は、リスク管理部門を設置し、当該部門が中心となって、各種委員会・会議を通じて、リスクマップにて定められる主要リスクごとにリスク低減施策・BCPを策定し、リスク対応力の向上に努めています。また、リスク管理部門が主管となって、リスク管理に関する教育・訓練を実施しています。
更に、事業活動の停止又は停止する可能性があるなど、経営に甚大な影響が予想される場合には、社長を本部長とする危機対策本部を設置し、損害・損失等を最小限にとどめるための方針、施策、計画を迅速に決定・実行します。

(3)当社グループにおける主要リスクについて
有価証券報告書に記載した事業の状況・経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識しているリスクを可視化し、それらの発生可能性、事業への影響度、リスク対策の実施状況等の観点から評価したリスクマップを整備し、その中から優先順位付けした当社グループの主要リスクを示しています。

当社グループにおける主要リスクの内容と取り組みについては次のとおりです。なお、文中においては将来に関する事項が含まれていますが、当該事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
①事業戦略リスク
1)事業ポートフォリオ転換に係るリスク
<リスクの内容>
当社グループは、事業拡大を図るため、当社の事業内容とシナジーを発揮でき、かつ成長が見込まれる会社の買収や事業譲受等のM&Aを検討していきます。M&Aの実施に当たっては、市場動向や顧客のニーズ、相手先企業の経営成績、財務状況、市場競争力、M&A実行後の対象会社と当社グループとの経営・業務・意識統合プロセスの検討及び計画、経営課題及びその対応方針等を十分に考慮して進めます。しかし、事前の調査・検討に不足や見落としが生じることや、買収した事業が計画通りに展開することができず、投下した資金の回収ができない場合や追加的費用が発生した場合等には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループは、成長性が高く、安定的な収益の得られる事業構造の確立のため、事業ポートフォリオにおける非注力・ノンコア事業/不採算事業の整理、終息の取り組み(カーブアウト)を進めています。しかし、各国の規制、雇用問題、当社グループが売却を検討している事業に対する市場における需要不足等により、これらが実行されない可能性があります。これらが実行された場合においても、顧客等からの評価の低下等、予期せぬ結果をもたらす可能性もあります。
<主な取り組み>
M&Aの実施に当たっては、当社事業計画に照らし合わせ、市場・技術動向や顧客ニーズ、相手先企業のポテンシャル等のリスクを執行役員会及び取締役会にて十分に分析・審議した上で、実施していきます。
また、事業ポートフォリオの再構築に当たっては、市場・業界動向、戦略、売却価格、プロセス及び潜在リスク等様々な視点から分析した上で、執行役員会及び取締役会にて審議し、慎重に進めています。
2)新技術の導入に係るリスク
<リスクの内容>
近年、AIや5G/6G等の新技術が急速に進展しており、これらの技術はスマートフォンやサーバー等の情報通信分野だけでなく、自動車等の産業へ波及していくことが予想されます。当社グループは、コンポーネント製品、センサー・コミュニケーション製品、及びキャビンドメインコントローラーをはじめとするモビリティ製品において、当社コア技術を活用し、AI時代に向けたマルチモーダルセンシング技術等の新技術の開発を行っています。当社グループの事業は、スマートフォンや自動車をはじめとして技術革新のスピードが非常に速く、顧客要求の変化や新製品・サービスの導入が頻繁な市場であり、新たな技術・製品・サービスの開発により短期間に製品・サービスが陳腐化して市場競争力を失い、販売価格が大幅に下落することがあります。そのため、それらの市場の変化に迅速な対応ができない場合や、顧客ニーズに合わせた新製品の導入ができない場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
<主な取り組み>
新技術の導入に当たっては、これらの変化に対応すべく、中期経営計画2027における戦略投資テーマ(国内生産競争力強化・センサー領域・ソフトウェア・人的資本等)及び個々の開発テーマに対し、投下資本利益率(ROIC)に基づく投資判断を行い、計画的かつ適切に投資を行っていくことで、技術力強化と人財育成を図っていきます。
また、営業部門が市場・顧客動向を把握し、技術部門等にフィードバックを図ることにより、市場変化に対応した新技術開発を進めています。
3)特定の顧客依存に係るリスク
<リスクの内容>
当社の一部のビジネスユニット及び製品の販売では、特定の顧客に依存しているため、当該顧客の投資・販売計画及び資材調達の方針等が、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
<主な取り組み>
当社グループは、既存顧客との更なる関係強化を図るとともに、事業セグメント毎の主要顧客別戦略を推進することにより、特定の顧客に過度に依存しないバランス経営を図ります。
②事業遂行リスク
1)製品品質に係るリスク
<リスクの内容>
当社は、部品の製造や製品の組立の一部を数社の取引先に外部委託しており、その中には、非常に複雑な製造工程を必要とする部品や製品の組立があります。そのため、規格や仕様を満たさない部品や組立品が製造され、当社に供給されることにより、当社製品の品質に影響する場合があります。また、当社で全て製造、組み立てる場合においても、製品への微小不純物の混入や製造工程の問題等の発生によって製品が納品できない状態になる場合や規格外となる場合があります。こうした要因によって生産高が計画を下回る、あるいは製品の出荷が遅れる等、業績に重大な影響を与える可能性があります。また、当社製品の品質問題によりリコールや大規模な製品事故が発生した場合は、多額の費用の発生や社会的信用の低下につながります。当社グループの製品の品質に起因して顧客の損失が発生した場合、生産物賠償責任保険の適用を超える賠償責任を問われる可能性があります。その結果として、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼします。
<主な取り組み>
当社は、外部委託先の選定に当たり、十分な検討の上、委託先を選定しています。また、外部委託先には、当社と同じ生産管理及び品質管理を適用し、顧客への納期及び品質要求に対応しています。社内においては、製品の生産に関し、関連法規制の調査/周知徹底・設計審査・製品アセスメント・内部品質監査・工程管理・各種評価試験等を通じ、開発から出荷に至るサプライチェーンを含めた全ての段階における品質保証体制整備に努めています。また、AIやロボットを活用した生産性改善に向けた取り組みを実施し、リスクの低減に努めています。
2)生成AIの活用に係るリスク
<リスクの内容>
近年、生成AIツールの利用が急速に普及しており、当社グループでも業務効率や生産性の向上、イノベーションの促進等を実現するため、生成AIツールの導入を推進していますが、生成AIツールの活用が遅れることにより、競争力が低下するリスクが想定されます。また、生成AIのアウトプットを過信し、適切に業務が遂行されないなどのリスクも想定されます。更に、生成AIは、有用である反面、まだ発展途上の技術であるため、その利用に当たっては、秘密情報や個人情報の入力による情報漏洩、誤情報の生成、知的財産権の侵害等の可能性があります。
<主な取り組み>
当社グループは、生成AIの利用に関するガイドラインの策定、社内教育の実施等を通じて、社内の管理体制の整備・強化に取り組んでいます。
③地政学・経済安全保障リスク
<リスクの内容>
当社は、日本以外に米国や欧州、アジア地域をはじめとする世界各国で事業活動や投資を行っています。これらの海外市場において、当社にとって望ましくない政治的・地政学的・経済的要因により、経済安全保障政策・投資規制・製品や原材料の輸出入の規制・収益の本国送金規制・関税の引き上げ等に関する予期できない法律・規制の変更等のリスクに直面し、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。特に、ウクライナ情勢や中東情勢の長期化、米中間の政治的・経済的な対立、台湾有事等のリスク発生の可能性が高いと考えています。
<主な取り組み>
増大する地政学・経済安全保障リスクがもたらす当社グループへの影響を最小限に抑えるため、当社は、経済安全保障委員会を設置し、政府各省庁及び企業・団体等から刻々と変化する国際情勢を把握し、地政学リスクのモニタリングや重要技術情報の流出防止の取り組み強化等、能動的なリスク低減施策をとっています。また、事業継続計画(BCP)の観点から日本・アセアンを含めた代替生産体制の実現等による生産体制の多極化を進めます。
④市場環境リスク
1)顧客の需要に係るリスク
<リスクの内容>
当社グループは国内外のメーカーからの受注生産が大部分を占めるため、顧客の生産計画の影響を直接受けます。地政学・経済安全保障上の各種影響による高まりを受けたエネルギー問題、物流費や部材の高騰、関税引き上げ等、不確実な政治経済状況によるサプライチェーン全体への混乱で見通しが立てづらい状況が加速しています。当社グループは、顧客の生産計画に基づき、市場動向、部材の調達リードタイム、安定供給を勘案して取引先に部材手配を行っていますが、市場環境や上記地政学・経済安全保障上の各種影響等により、早期生産終了を含む顧客の生産計画の変動影響を受け、生産調整・過剰在庫が発生するリスクがあり、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
また、モビリティ事業の顧客において、EVからHEV等へのモデル変更やEVの開発を中止する事象が発生しており、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
<主な取り組み>
当社グループは、事業部門、営業部門、生産部門及び資材部門が綿密に連携し、顧客や市場の動向を迅速に共有し、生産規模及び在庫の適正化に向けた取り組みを進めています。
また、モビリティ事業の顧客において、企画台数未達の場合には補償に関して交渉を行います。また、モビリティ事業の生産拠点最適化を行うことにより、モビリティ事業の収益確保を図ります。
2)部材価格の高騰に係るリスク
<リスクの内容>
当社グループは、重要部材の内製化に努めていますが、一部についてはグループ外からの供給に依存しています。このため、特にモビリティ製品の重要部品であるメモリの供給不足に伴う価格上昇や、主にコンポーネント製品に使用する原材料である地金等の価格上昇に加え、中東情勢の長期化に伴う原油価格の上昇及びナフサ由来部材の調達混乱、更には取引先の事業撤退等により部材価格が高騰した場合には、当社製品の原価率が悪化し、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
<主な取り組み>
供給問題を未然に防ぐ対策として、当社グループは、サプライチェーンマネジメントの最適化・強靭化に取り組んでいます。具体的には、取引先へ事業方針説明会を適宜実施することにより、パートナーシップの構築を図るとともに、取引先に対する定期的な評価を通じて、部品の安定調達の体制強化を図っています。また、重要部材については、代替調達先の選定・確保にも努めています。更に、当社製品の原価率が悪化した際には、顧客との価格適正化の交渉を行います。
3)外国為替に係るリスク
<リスクの内容>
当社グループは、グローバルに事業展開しており、結果として為替レートの変動による影響を受けます。一例として、米ドルが円高に変動した場合又はユーロ及び人民元が円安に変動した場合には、当社グループの業績にマイナスの影響を及ぼす可能性があります。為替レートの変動が想定から大きく乖離した場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
<主な取り組み>
当社グループは、先物為替予約、通貨オプション及び外貨建て債権債務の相殺等、為替変動による影響額の極小化を図っています。
4)有価証券の時価変動に係るリスク
<リスクの内容>
当社グループは、売買を目的とした有価証券は保有していませんが、当連結会計年度末において、676億円の有価証券を保有しています。時価を有するものについては全て時価評価を行っており、株式市場における時価の変動が当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
<主な取り組み>
当社は、政策保有株式等について、毎年の保有に係る合理性検証の結果、保有意義がないと判断された場合、適宜縮減を進めています。また、保有株式の株価変動が当社の財政状態に重要な影響を及ぼす可能性を察知するため、定期的に株価のモニタリングを行っています。
5)当社製品の競合環境に係るリスク
<リスクの内容>
当社グループが属する電子部品業界は、中長期的に需要機会は大きく伸長すると見込まれますが、同時に競合他社との競争は激しく、製品の特性、供給力、コスト競争力等で競合他社に劣後する場合、当社市場シェアが低下し、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。特に、昨今、中国・アセアンローカルの競合メーカーが急速に力をつけてきており、競合との競争は更に激化する傾向にあります。
<主な取り組み>
当社グループは、将来の市場、製品及び技術動向の予測に基づき、当社コア技術を活用した開発を進め、付加価値の高い新製品を継続的に投入していきます。また、独自の生産技術、現場のものづくり力を統合したコストダウンの推進、顧客需要にタイムリーに応える供給力の整備、顧客との安定した取引関係を構築する営業力等の総合力により、マーケットシェアの維持拡大に注力し、売上の拡大や収益性の向上に努めます。
⑤人財・労務リスク
1)人財確保及び人財定着に係るリスク
<リスクの内容>
当社グループが事業活動を推進し将来にわたって発展するためには、研究開発・製造・販売・管理等様々な分野において人財の確保と育成が必要です。社員一人ひとりが働きがいをもってチャレンジを楽しむ組織風土の醸成が重要であり、併せて社会環境の変化に合致した労働環境を構築するためにD&I(ダイバーシティー&インクルージョン)の推進が必要です。一方、国内の少子高齢化に伴う労働人口減少をはじめグローバルでの人財獲得・競争が激化する中、働き方・キャリアに関する価値観が多様化して人財の流動性が高まっているため、年々、人財の確保に関する難易度が高まっています。雇用環境の変化等により、当社が求める人財の確保やその定着・育成が計画通りに進まなかった場合には、当社グループの将来の成長に影響を及ぼす可能性があります。
<主な取り組み>
人的資本経営の重要性が高まる中、当社グループは、経営陣と社員が対話を行うタウンホールミーティングを含む社員のエンゲージメント向上施策に取り組むとともに、社内公募制度等様々な分野でチャレンジできる環境整備と、採用ブランディングの向上やインターンシップの実施等の採用力強化により、多様な人財の採用と育成に取り組んでいます。また、社員の高齢化や、定年再雇用者が増加する中、各人の適性に応じた職務の割当てにより、社員一人ひとりの豊富な経験や能力を十分に発揮できる環境の整備に努めています。更に、育児・介護等との両立支援やテレワーク勤務制度等多様な人財が働きやすい職場環境づくり、競争力のある報酬水準となるように賃金の引上げ等を実施し、人財の定着と動機付けを図っています。
2)労働安全衛生に係るリスク
<リスクの内容>
当社グループは、国内を対象として「安全衛生方針」を定め、社員一人ひとりが安全に、そして心身ともに健康に働ける職場環境づくりに努めています。しかし、死亡・後遺症が残る又はそれらに準じる怪我や疾病等人的被害が発生した場合や、生産に影響が出る火災等が発生した場合には、社会的な信用が低下するとともに、生産・出荷や顧客との取引が停止することにより、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
<主な取り組み>
当社グループは、怪我や疾病につながるリスクや火災等につながるリスクの低減に向け、国内全拠点を対象に、年1回安全衛生アセスメントを実施しています。また、労働災害防止や交通事故防止を目的に安全衛生教育及び交通安全講習会を実施しています。更に、国内を対象として「健康経営宣言」を制定し、健康診断やストレスチェックの定期的な実施、特定保健指導の実施率向上、禁煙施策、メンタルヘルスへの取り組み等により、健康経営優良法人に6年連続で認定されています。引き続き健康経営を進め、従業員の健康維持・増進を経営の重要テーマの一つと位置づけ、積極的に取り組みます。
⑥ガバナンス・コンプライアンスリスク
1)コーポレート・ガバナンスに係るリスク
<リスクの内容>
当社グループは、グローバルに事業展開しており、コーポレート・ガバナンスが有効に機能しない場合、経営者によるステークホルダーの利益に反する企業運営及び組織的な不祥事につながる可能性があり、この場合、事業の持続的成長に支障が生じ、企業価値が毀損し、当社グループの株価の低下、業績及び財務状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
<主な取り組み>
当社グループは、コーポレート・ガバナンス体制の機関設計として「監査等委員会設置会社」を選択し、取締役の職務執行の組織的監査を行っており、定款の定めに基づき、「重要な業務執行の決定」を取締役に委任し、経営判断の迅速化を図っています。また、取締役会の実効性を担保するために、毎年取締役会へのアンケートを実施し、取締役会で分析・評価し、その結果をもとに具体的な改善策を実施しています。
加えて、社外取締役や監査等委員が社内取締役及び執行役員等の業務執行を監査することにより、経営の透明性向上や適法な会社運営の確保に努めています。なお、取締役の報酬は、報酬諮問委員会を設置して、公平性・透明性・客観性を強化し、当社取締役に求められる役割と責任に見合った報酬体系及び報酬水準となるよう設計しています。また、業務執行取締役及び執行役員に対する賞与及び譲渡制限付株式報酬において、重大な法令違反等の非違行為等が生じた場合には、報酬諮問委員会の審議の上、取締役会の決議により、支給済みである報酬の一部又は全部について対象者に返還を求めるクローバック制度を導入しています。
2)グループ統制に係るリスク
<リスクの内容>
当社グループは、国内外に多くのグループ会社を持つことから、グループ統制が重要であると認識しています。そのため、「業務の適正を確保するための体制」に基づき、内部統制システムを整備・運用をしていますが、グループ会社が行った経営上の意思決定に際し、結果的に法令違反や巨額の損失が発生した場合には、当社グループの社会的信用を失墜し、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
<主な取り組み>
当社グループは、グループ会社の事業運営の独立性と自立性を尊重しつつ、グループ会社の取締役の職務執行の適正を確保するため、「構成会社経営管理規程」において、管理項目ごとに報告等の手続き方法を定め、報告を受けることとしています。
また、当社の内部監査部門が、定期的に当社及び当社グループ会社における業務執行状況を監査し、その結果を取締役会、監査等委員会、執行役員会及びグループ会社の取締役等に直接報告しています。
3)コンプライアンスに係るリスク
<リスクの内容>
当社グループは、経営姿勢の一つとして「公正な経営」を掲げ、コンプライアンスの徹底に努めています。しかし、コンプライアンスの徹底が十分になされず、法令、社内規程や社会規範等のコンプライアンス違反や人権侵害、ハラスメントによる問題、製品品質や会計に関する不正等が生じた場合、当社グループの企業イメージ毀損、当社製品の生産及び出荷の停止、顧客からの損害賠償請求等、当社グループの事業、業績及び財務状況に影響する可能性があります。
<主な取り組み>
当社は、コンプライアンス活動を推進する組織として、コンプライアンス推進委員会を設置し、全社コンプライアンス推進体制の構築・運営、コンプライアンス意識の醸成(教育・啓蒙の促進)、ルールとプロセスの遵守の促進(実効的な定期点検の推進とインシデント情報・再発防止策の展開)に取り組んでいます。また、当社グループ会社ごとに、コンプライアンス推進責任者を任命し、当社グループで発生したインシデント情報及び再発防止策を周知するようにしています。
そして、社内外に内部通報窓口を設置することで、コンプライアンス違反の把握と未然防止に努めています。更に、有事の際には法務部門と社外弁護士等が連携し適切な措置を講じる体制を確保しています。
⑦法務リスク
1)契約締結・訴訟に係るリスク
<リスクの内容>
当社グループの事業運営に関し、不適切な契約の締結がなされた場合、損害賠償請求等、当社グループの事業、業績及び財務状況に影響する可能性があります。また、当社グループの信頼性や企業イメージが低下する可能性もあります。
<主な取り組み>
当社グループは、契約審査制度を整備し、訴訟その他法的手続きの発生を未然に防止するよう努めるとともに、万が一訴訟その他法的手続きが発生した場合には、外部専門家と連携しながら当社グループへの影響を最小限に抑えることに努めています。
⑧自然災害・感染症リスク
1)自然災害に係るリスク
<リスクの内容>
当社グループが事業を展開する地域において、地震・津波・風水害等の自然災害が発生し、当社の想定範囲を超えた場合、設備等への被害、重要な業務の中断、顧客への納期問題等の発生により収益性が悪化し、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
<主な取り組み>
当社グループは、自然災害の発生に備え、防災対策や重要な情報インフラのバックアップ体制の整備を行っています。また、事業に重大な影響を及ぼしうる自然災害が発生した際は、危機対策本部を設置するなど、迅速に対応に当たる体制を構築しています。各拠点において、事業活動が停止又は停止に至る可能性のある事象が発生した際は、拠点責任者が予め定められたルールに基づき報告し、全社で収集した情報を共有する体制を整えています。また、顧客に当社グループの被害状況や納入への影響を報告する体制を整備しています。
2)感染症に係るリスク
<リスクの内容>
新型コロナウイルス感染症は、収束傾向にありますが、今後も類似の感染症や新たな感染症が発生し、拡大するリスクは常にあり、当社グループ内に拡散した場合、又は、経済活動の停滞が生じた場合、操業停止やサプライチェーンの停止等により、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
<主な取り組み>
当社グループ社員への感染を未然に防止するため、テレワーク、フレックスタイム勤務を活用した時差出勤、衛生管理の徹底を継続することにより、感染予防と拡散防止に努めます。また、大規模感染症が海外にて発生した場合には、駐在員やその家族の感染状況の把握及び大使館・各種機関からの情報収集に努め、これらの情報をもとに、帰国その他安全措置等必要な対応を迅速に決定していきます。
⑨財務リスク
1)資金繰りに係るリスク
<リスクの内容>
当社グループは、取引先銀行とシンジケート方式の借入金契約を締結していますが、これら契約の財務制限条項に抵触した場合には、借入金の繰上げ返済請求を受けることがあり、当社グループの財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
<主な取り組み>
当社グループは、財務制限条項に抵触しないよう、財務部門において各事業の事業計画を横断的にモニタリングし、資金調達リスクの低減を図っています。
2)繰延税金資産に係るリスク
<リスクの内容>
当連結会計年度末において、繰延税金資産を138億円計上しています。当社グループは将来の収益力に基づく課税所得を見積り、繰延税金資産の回収可能性を判断しています。将来課税所得の見積りは、事業計画及びグループ会社間の取引価格を基礎としています。事業計画は、主に、各事業の主要顧客への販売数量及び販売価格、予測されている営業利益率、売上規模に応じた固定費の見積り及び想定為替レートを前提に策定しています。当社グループは、経営環境の変化に応じて事業計画を見直し経営成績の維持を図るとともに、必要な税務戦略を考慮しています。しかし、将来において事業計画の主要な仮定が変化した場合、繰延税金資産の取崩しが発生する可能性があります。
<主な取り組み>
当社は、繰延税金資産に影響を与えるような事業計画の変動要因や、各国・地域の税制変更を定期的に確認しており、将来の見通しの変化等により事業計画の変動が判明した場合には、繰延税金資産の回収可能性に関しての見直しの要否を適時に判断しています。
3)不良債権及び貸し倒れに係るリスク
<リスクの内容>
当社は、売掛債権について、顧客が期日までに返済する能力があるか否かを考慮し、回収不能額を見積った上で貸倒引当金を計上しています。しかしながら、通常の営業取引において当社の売掛債権は、担保物件や信用保証により、全ては保全されていません。従って、経済環境の悪化等に伴い、顧客に対する売掛債権の回収が困難となり、保全されていない多額の債権が発生した場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
<主な取り組み>
当社は、顧客与信管理規定に基づき、顧客ごとに回収条件・与信限度額を設定し、定期的に与信の見直しを行っています。また、回収期限を日次で管理しており、回収遅延や信用不安が発生した場合は、個別に債権回収、条件変更、担保・保証の入手等の債権保全策を講じ、貸倒リスクの極小化に努めています。
4)固定資産の評価及び減損損失に係るリスク
<リスクの内容>
当社グループは、当連結会計年度末において有形固定資産及び無形固定資産を1,885億円保有しています。当社グループは顧客の需要予測による将来の販売計画に基づいて設備投資を行っていますが、固定資産の回収可能性は、個人消費の動向、新製品の導入タイミング、新仕様や規格変更への対応及び技術革新のスピード等に影響を受けます。特に車載市場においては、自動車販売台数に基づく顧客の需要変動や顧客ニーズの変化、技術革新への対応等が遅延した場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、投資判断を行う際、その収益性・投資回収を社内で厳格に精査することで減損損失の計上リスクの軽減に努めています。しかし、急激な経営環境の悪化により収益性が低下し、帳簿価額の全部又は一部を回収できないと判断した場合、減損損失を計上する可能性があります。
<主な取り組み>
当社グループは、各市場における製品ライフサイクルを分析し生産設備等の経済的耐用年数を設定しています。また、投資判断を行う際、NPV(正味現在価値)・IRR(内部収益率)基準に基づく収益性・投資回収を社内で厳格に精査することで、減損損失の計上リスクの回避や極小化に努めています。
⑩IT・情報セキュリティーリスク
<リスクの内容>
昨今のサイバー攻撃の高度化や、ITを活用したビジネス詐欺の巧妙化に伴い、当社が事業活動を通じて創出した情報、顧客・サプライヤー又はその他団体及び個人(社員含む)から預かった情報の漏洩・改ざん・破壊等の被害が発生するリスクがあります。
また、社員の働き方の多様化に伴う情報の持ち出しや不適切な取扱いにより秘密情報の外部漏洩が発生するリスクがあります。更に、クラウドシステムの活用推進は、事業活動のDX化を促し、大きな利便性が得られる反面、当社グループが直接管理できないリスクの増大にもつながっています。
このようなリスクが具現化した場合、当社製品の生産及び出荷の停止、顧客やその関係者の機密情報漏洩に起因する損害賠償請求、企業戦略や新技術の漏洩による競争力低下、並びに当社グループの企業イメージ毀損による販売機会の損失等、当社グループの事業、業績及び財務状況に影響する可能性があります。
また、通信機能を有する車載製品の需要が増加してきており、サイバーセキュリティー体制整備が顧客の採用条件として明示されるようになり、対策の遅れが販売機会の損失につながる可能性もあります。
<主な取り組み>
当社では、ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)体制を構築し、サーバーアクセスの認証強化、社内ネットワーク脆弱性診断の定期実施、重要情報の管理・統制プロセスの改善、情報セキュリティーインシデントを想定した訓練を含む、当社及び当社サプライチェーン全体での情報管理強化対策に取り組んでまいりましたが、2026年3月期に当社が利用している外部VPNシステムに不正アクセスを受け、個人情報が外部の攻撃者に閲覧された可能性を否定できない事案が発生しました。
当該事案を踏まえ、これまでの情報管理強化対策に加え、VPNシステムを含むシステム全体のセキュリティー対策及び監視体制の強化、個人情報の取扱い及び管理ルールの再点検、社内システム利用者に対する情報セキュリティー教育を実施します。これらを通じて、再発防止に努め、信頼回復を図っていきます。
⑪環境関連リスク
1)環境汚染及び環境負荷物質に係るリスク
<リスクの内容>
当社グループは、事業活動に伴う大気・土壌・河川等水資源環境への影響を最小限に抑えることが、地域社会との共生と持続可能な成長の基盤であると考えています。しかし、当社グループの事業活動を通じて、想定外の事態による環境汚染が発生した場合、汚染除去費用や損害賠償費用等の対応費用が発生し、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
また、欧州や中国を中心に環境負荷物質に対する規制が強化される方向にあり、これらの規制を遵守できない状況に陥った場合、環境負荷物質を大量に漏洩させるなどの事故を起こした場合、あるいは含有が禁止されている環境負荷物質を製品から排除できなかった場合、その対策のために多額の費用が生じるほか、事業活動の制限、顧客への賠償責任、社会的信用の低下を招き、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
<主な取り組み>
当社グループは、土壌汚染及び地下水汚染のリスクを最小限に抑えるため、地下埋設配管の地上化、重油貯蔵タンクの給油口周辺への防液堤の設置、漏洩センサーの導入等の対策を実施しており、リスクの早期検知と迅速な対応を可能にしています。また、国内拠点では、地下水の下流に位置する敷地境界に揚水浄化施設を設置し、基準値を超える地下水が敷地外へ流出しないよう、適切な管理を行っています。更に、各工場では、化学物質の使用状況を確認するパトロールの実施や、工場ごとに、化学物質や廃棄物の保管場所、取扱う場所等を図面化した「環境リスクマップ」を作成し、事故発生リスクが高い場所を可視化し、環境リスクの低減に繋げています。
環境負荷物質の規制に対する取り組みとしては、欧州のRoHS指令やREACH規則等の法規制、業界基準の最新動向を調査し、その結果を「グリーン調達基準書」に反映しており、製品設計部門が部材選定する場合、及び、工程設計部門が工程で使用する設備や生産補助材を選定する場合において、グリーン調達基準書の部材評価に基づく調査を実施し、適合する部材を選定しています。また、出荷する製品に基準を超える環境負荷物質が含有していないことを確認するため、定期的に蛍光X線分析装置による分析を実施しています。
2)気候変動及び資源循環に係るリスク
<リスクの内容>
当社グループは、気候変動に伴うリスクが事業活動に大きく影響すると認識しています。低炭素経済への移行に伴い、広範囲に及ぶ政策・法規制・技術・市場の変化が生じることに起因する移行リスクとして、カーボンプライシング制度の加速、省エネ・GHG排出量規制の強化、低炭素製品需要の拡大、鉱物資源の需要逼迫、電力需要の拡大等を想定しています。また、異常気象に伴う災害の激甚化に伴うサプライチェーンの寸断や自社操業の停止による売上減少、気温上昇に伴う従業員の健康悪化による労働生産性の低下やエネルギーコストの増大等の物理リスクを想定しています。それらが当社の想定した範囲を超えて発生した場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
<主な取り組み>
当社グループは、2020年9月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への賛同を表明し、その開示項目に沿ったシナリオ分析を実施し、事業戦略につなげることで、持続可能な成長及びリスクへの適正な対応を目指していきます。
上記移行リスクに対応する取り組みとして、当社グループは、インターナルカーボンプライシング制度導入による事業ポートフォリオ評価への組み込み、計画的な設備更新による規制強化への先行対応、低炭素製品・技術開発の強化による需要対応力の向上、サプライヤーとの協働や複数調達先の検討によるコスト上昇の抑制と安定調達の確保、省エネ推進による電力需要・料金上昇リスクの抑制等の施策に取り組んでいます。また、物理リスクに対応する取り組みとして、当社グループは、定量的リスク評価に基づく防災・減災対策の優先実施、定量的リスク評価に基づくサプライチェーンリスクの可視化、定量的な熱中症リスク評価に基づく職場環境・健康対策の強化、高温環境を考慮した設備・建屋対策によるエネルギー負荷抑制等の対応強化を行っています。
なお、環境関連リスクに関する施策について、全執行役員で構成される「サステナビリティ委員会」で進捗管理・評価・個別施策の審議を行い、取締役会が監督及びモニタリング機能を果たすことにより、サステナビリティーの重点課題に関する目標達成と企業価値向上を目指しています。
⑫知的財産リスク
<リスクの内容>
特許・その他の知的財産は、当社グループに関連する製品市場の多くが技術革新に重点を置いていること等から、重要な競争力の要因となっています。当社グループは、自社開発技術・製品・サービスにおいて、特許・商標及びその他の知的財産権を取得し、場合によっては特許・その他の知的財産権を行使すること等により、当該技術・製品・サービスの保護を図っています。一方、製品開発に当たっては第三者の知的財産権を尊重した開発を行っていますが、実際に侵害しているか否かを問わず第三者による知的財産権侵害の申し立てを受ける可能性があります。また、通信技術に関連する製品では、第三者の標準必須特許に対する高額の実施許諾料の支払いを要求される可能性があります。
また、当社グループの製品には、他社の知的財産権のライセンスを受けているものもありますが、当該知的財産権の保有者が将来において、ライセンスを当社グループに引き続き与えるという保証はありません。当社グループにとって好ましくない事態が生じた場合には、当社グループの事業はその影響を受ける可能性があります。
<主な取り組み>
当社グループは、社員向けに知的財産権に関する定期的な教育・研修を実施するとともに、当社グループ社員による知財侵害者発掘奨励制度を導入し、知的財産権保護に努めています。また、新技術・新製品・新サービスを開発する際には、他社の知的財産権の侵害を未然に防止するために、先行する知的財産権の調査を徹底し、必要に応じて設計回避等の対策を講じています。それでも第三者から申し立てがあった場合は誠実に対応を行い、必要に応じて適正な和解金や実施許諾料を支払うことで解決を図ります。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。
当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末と比べ424億円増加の7,831億円、自己資本は335億円増加の4,475億円となり、自己資本比率は57.1%となりました。
流動資産は、現金及び預金、受取手形及び売掛金の増加と、その他流動資産の減少等により、前連結会計年度末と比べ57億円増加の5,007億円となりました。
固定資産は、建設仮勘定、無形固定資産の増加等により、前連結会計年度末と比べ366億円増加の2,824億円となりました。
流動負債は、その他流動負債の増加と、短期借入金の減少等により、前連結会計年度末と比べ138億円増加の2,407億円となりました。
固定負債は、退職給付に係る負債の減少と、繰延税金負債の増加等により、前連結会計年度末と比べ53億円減少の930億円となりました。
② 経営成績の状況
当連結会計年度における世界経済は、各国の金融・通商政策の動向や地政学リスクの高まり、米国による追加関税等の影響を受け、不確実性の高い状況で推移しました。北米では、個人消費は比較的底堅く推移したものの、通商政策を巡る不透明感が景気の先行きに対する懸念材料となりました。欧州では、雇用環境が比較的良好に推移した一方、景気回復の動きは緩やかにとどまりました。中国では、輸出は一定の回復を示したものの、不動産市場の低迷が継続し、景気回復は限定的なものにとどまりました。日本では、内需の下支えによる景気回復が緩やかに進んだものの、各国の通商政策等を背景とする経済・物価動向の不確実性もあり、不透明感を伴う状況で推移しました。
当社の車載市場向けビジネスには、完成車メーカーとの受託開発に基づいた専用設計製品を納入するTier1ビジネスと、Tier1メーカー向けに、顧客との受託開発に基づいた専用設計製品、及び当社開発の標準品を供給するTier2ビジネスがあります。当連結会計年度における事業環境は、車載市場において、Tier1ビジネスでは、当社主要顧客である日本・北米・欧州の自動車メーカー向けが、前期に中国市場での競争激化に伴う減産の影響を受けた後、今期は回復が依然として限定的な状況にある中、前期比でやや持ち直しの傾向が見られました。一方、Tier2ビジネスは、当社製品に対する幅広い引き合いが伸長し、引き続き堅調に推移しました。モバイル市場では、大手スマートフォンメーカー向けが堅調に推移しました。民生市場では、ゲーム機器向けやその他電子部品の需要が拡大しました。
当連結会計年度における経営成績の概況については以下のとおりです。なお、下記に示す売上高は外部顧客に対する売上高であり、報告セグメント間売上高は内部取引売上高として消去しています。
セグメントの状況
<コンポーネント事業>
売上高は、モバイル市場、民生市場及び車載市場向け製品がいずれも増加しました。営業利益は、製品構成の変化や資材価格の上昇の影響により、前期比で減少しました。
以上の結果、当連結会計年度におけるコンポーネント事業の売上高は3,583億円(前期比3.0%増)、営業利益は301億円(前期比0.8%減)となりました。
<センサー・コミュニケーション事業>
売上高は、車載市場向け製品が従来モデルのキーレスエントリーシステム製品からデジタルキー製品への置き換えによる端境期に当たることや、パワーインダクター製品の事業譲渡の影響がありましたが、モバイル市場向けの小型フォトプリンターの伸長により、事業全体では増加しました。営業利益は、パワーインダクター製品の事業譲渡による売上高の減少や変動費率の上昇により、前期比で減少しました。
以上の結果、当連結会計年度におけるセンサー・コミュニケーション事業の売上高は852億円(前期比1.3% 増)、営業損失は35億円(前期における営業損失は33億円)となりました。
<モビリティ事業>
2026年3月期より従来の「モジュール・システム事業」を「モビリティ事業」へ名称を変更しました。
売上高は、前期に中国市場における当社主要顧客である日本・北米・欧州自動車メーカーの減産による影響がありましたが、今期はやや持ち直しの傾向が見られることや、新製品の発売等により増加しました。営業利益は、販売回復や新製品の販売による売上高の増加に加え、不採算製品の縮小、前期に発生した需要変動による操業度差異の影響もあり、前期比で増加しました。
以上の結果、当連結会計年度におけるモビリティ事業の売上高は5,550億円(前期比3.3%増)、営業利益は141億円(前期比152.6%増)となりました。
営業外収益(持分法による投資利益)の計上について
2026年3月期において、主に当社の持分法適用会社である(株)アルプス物流が保有する不動産の流動化取引を実施したこと等による持分法による投資利益79億円を営業外収益に計上しました。
特別損失(減損損失)の計上について
2026年3月期において、減損損失42億円を特別損失に計上しました。これは、低収益製品から高収益製品への事業モデル転換を推進するモビリティ事業のサウンド製品に係る事業用資産に加え、使用見込みのない処分用資産の帳簿価額を回収可能価額まで減額したことによるものです。
以上により、上記の3事業セグメントにその他を加えた当連結会計年度における当社グループの連結業績は、売上高10,194億円(前期比2.9%増)、営業利益420億円(前期比23.3%増)、経常利益491億円(前期比61.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益268億円(前期比29.0%減)となりました。
③ キャッシュ・フローの状況
現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末と比べ59億円増加し、当連結会計年度末の残高は、1,533億円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度末における営業活動による資金の増加は、959億円(前期は658億円の増加)となりました。
この増加は、主に税金等調整前当期純利益439億円、減価償却費339億円、棚卸資産の減少額112億円及び売上債権の減少額97億円による資金の増加と、持分法による投資損益79億円による資金の減少によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度末における投資活動による資金の減少は、584億円(前期は16億円の減少)となりました。
この減少は、主に有形及び無形固定資産の取得による支出599億円による資金の減少によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度末における財務活動による資金の減少は、411億円(前期は372億円の減少)となりました。
この減少は、主に長期借入金の返済による支出239億円、自己株式の取得による支出200億円及び配当金の支払額122億円による資金の減少と、長期借入れによる収入139億円による資金の増加によるものです。
④ 生産、受注及び販売の実績
1)生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注)1.セグメント間取引については、相殺消去しています。
2.金額は、販売価格によっています。
2)受注実績
当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注)セグメント間取引については、相殺消去しています。
3)販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注)1.セグメント間取引については、相殺消去しています。
2.主な相手先の販売実績及び総販売実績に対する割合は、下記のとおりです。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成されています。
この連結財務諸表の作成に際し、連結決算日における資産・負債の数値及び連結会計年度の収益・費用の数値に影響を与える会計上の見積りを用いています。
当社は、特に以下の会計上の見積りが、当社グループの連結財務諸表に重要な影響を与えるものと考えています。
1)棚卸資産の評価
棚卸資産は取得原価又は正味売却価額のいずれか低い金額で評価しています。正味売却価額が取得原価よりも下落している場合には、取得原価と正味売却価額との差額について評価損を計上しています。正味売却価額は、主に顧客との販売契約に基づく予定売価を基に見積もっています。また、一定の保有期間を超えた場合、滞留又は陳腐化しているとみなし、評価損を計上しています。更に、保有期間にかかわらず将来廃却が見込まれる棚卸資産についても評価損を計上しています。
市場環境の悪化による顧客の需要減少や製品ライフサイクルの変化等に伴い、棚卸資産の収益性の低下、滞留、陳腐化が生じた場合、将来において追加の評価損の計上が必要となる可能性があります。
2)繰延税金資産
繰延税金資産については、将来減算一時差異及び税務上の繰越欠損金に対して、将来の収益力に基づく翌期の課税所得を見積り、繰延税金資産の回収可能性を判断しています。課税所得の見積りは、事業計画及びグループ会社間の取引価格を基礎としています。また、中国市場における当社主要顧客である日本・北米・欧州自動車メーカーの販売戦略の見直し等に起因する販売数量及び製品構成の変化、部材高騰の長期化やインフレの継続といった事業環境下における目標とする原価改善の達成状況についても考慮しています。グループ会社間の取引価格は、各国の移転価格税制を考慮し、連結子会社ごとに設定しています。
将来において、事業環境の変化による顧客の需要減少や、移転価格を含む税務関連の動向の変化等により課税所得が予想を下回り、すでに計上されている繰延税金資産の全部又は一部を回収できないと判断した場合、当該判断を行った期間に繰延税金資産を取崩し、税金費用が計上される可能性があります。
3)退職給付に係る負債
退職給付費用及び退職給付に係る負債は、数理計算上の前提条件に基づいて算出されています。前提条件には、割引率、長期期待運用収益率、退職率及び死亡率等の仮定が含まれています。このうち、退職給付費用及び退職給付に係る負債の計算に影響を与える最も重要な仮定は、割引率及び年金資産に係る長期期待運用収益率です。
割引率は、優良債券の利回りを参考に決定しており、連結会計年度末において割引率を再検討した結果、割引率の変動が退職給付債務に重要な影響を及ぼすと判断した場合にはこれを見直した上で、退職給付債務を算定しています。長期期待運用収益率は、保有している年金資産のポートフォリオに基づく一定期間における運用実績を基に、今後の運用方針及び市場動向を考慮して設定しています。
これらの仮定が実際の結果と異なる場合、又は仮定を変更した場合、将来期間における退職給付費用及び退職給付に係る負債に影響を及ぼすことがあります。
当連結会計年度の退職給付費用の計算に使用した割引率及び長期期待運用収益率は、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(退職給付関係)」を参照ください。
4)固定資産の減損
当社グループの資産又は資産グループに減損が生じている可能性を示す事象があり、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額がこれらの帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しています。減損損失の測定に当たって見積られる回収可能価額は、資産又は資産グループの正味売却価額と使用価値のいずれか高い方の金額を使用しています。
減損損失を認識するかどうかの判定及び使用価値の算定において見積られる将来キャッシュ・フローは、事業計画を基礎として算定しています。当該事業計画は、主に顧客・製品別にまとめた受注予測、予測されている限界利益率及び固定費を前提として策定しています。また、当社主要顧客である日本・北米・欧州の自動車メーカーの販売戦略の見直し等に起因する販売数量及び製品構成の変化、部材高騰の長期化やインフレの継続といった事業環境下における目標とする原価改善の達成状況についても考慮しています。また、使用価値の算定に使用する割引率は、当社に要求される加重平均資本コストを採用しています。将来、事業環境の変化等により固定資産の収益性が低下した場合、減損損失の計上が必要となる可能性があります。
また、固定資産の耐用年数については、各市場における製品ライフサイクルを基礎として、生産設備等の経済的耐用年数を設定しています。製品ライフサイクルについては、事業・市場・顧客単位等の性質を勘案して決定しています。
当連結会計年度において減損会計を適用するに当たり、将来キャッシュ・フローの見積りに用いた重要な仮定は、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」を参照ください。
② 当連結会計年度の財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度の当社グループにおける連結業績は、売上高10,194億円(前期比2.9%増)、営業利益420億円(前期比23.3%増)、経常利益491億円(前期比61.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益268億円(前期比29.0%減)となりました。
セグメント別の売上高及び営業利益については、「(1)経営成績等の状況の概要 ②経営成績の状況」を参照ください。
③ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループの運転資金需要の主なものは、製造費用、販売費及び一般管理費等の営業費用であり、投資を目的とした資金需要は設備投資、業務提携等によるものです。
当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本としています。日本、欧州、中国、米国及びアセアンの各地域においてキャッシュ・マネジメント・システムを導入しグループ資金の効率化を図るとともに、金融機関とのコミットメントライン契約により流動性を担保しています。
運転資金及び設備投資資金については、主に営業活動によるキャッシュ・フロー及び金融機関からの借入金にて調達しています。資金の源泉を安定的に確保するため、CCC(Cash Conversion Cycle)改善による流動性資金の拡充、金融機関からの借入金の長期化、コマーシャルペーパー発行枠の確保等、資金調達の多様化を図っています。
なお、キャッシュ・フローの状況の分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」を参照ください。
(資本業務提携解消・業務提携への移行)
当社と日本精機株式会社(以下「日本精機」という。)は、2021年1月28日付「日本精機株式会社との資本業務提携及び同社を処分予定先とする第三者割当による自己株式の処分に関するお知らせ」にて公表のとおり、業務及び資本提携契約を通じて、両社の競争力の向上と顧客価値の向上を目指してきました。
一方、コーポレート・ガバナンスにおける政策保有株式の縮減の重要性が増してきていることから、両社で協議を重ねた結果、資本業務提携の解消後も従来どおりの業務提携遂行に問題はないと判断し、資本提携を解消することを決定しました。
当社は、2026年1月27日開催の取締役会において、日本精機との資本業務提携を解消するとともに、業務提携を継続することを決議し、2026年1月28日に資本業務提携を解消しました。
(財務制限条項が付された借入金契約)
(注)1.財務制限条項の内容は以下のとおりです。
(1)2023年3月期末日以降の各連結会計年度において、連結貸借対照表上の株主資本合計金額を2020年3月期第1四半期会計期間の末日における連結貸借対照表上の株主資本合計金額の75%以上の金額を維持すること。
(2)各連結会計年度の末日において、連結損益計算書上の営業損益を2期連続して損失としないこと。
2.財務制限条項の内容は以下のとおりです。
(1)2024年3月期末日以降の各連結会計年度の末日における連結貸借対照表に記載される純資産の部の合計金額を、2023年3月期末日における連結貸借対照表に記載される純資産の部の合計金額の75%に相当する金額、又は直近の連結会計年度の末日における連結貸借対照表に記載される純資産の部の合計金額の75%に相当する金額のうち、いずれか高い方の金額以上に維持すること。
(2)各連結会計年度の末日において、連結損益計算書上の営業損益を2期連続して損失としないこと。
3.財務制限条項の内容は以下のとおりです。
(1)各連結会計年度の末日における連結貸借対照表に記載される純資産の部の金額を、直前の連結会計年度の末日における連結貸借対照表上に記載される純資産の部の金額の75%以上を維持すること。
(2)各連結会計年度の末日において、連結損益計算書上の営業損益を2期連続して損失としないこと。
4.財務制限条項の内容は以下のとおりです。
(1)2024年3月期末日以降の各連結会計年度の末日において、連結貸借対照表上の株主資本合計金額を、(a)2024年3月期末日においては、2023年3月期末日における連結貸借対照表上の株主資本合計金額の75%以上の金額に、(b)2025年3月期以降の各連結会計年度の末日においては、2024年3月期末日における連結貸借対照表上の株主資本合計金額の75%以上の金額に、それぞれ維持すること
(2)各連結会計年度の末日において、連結損益計算書上の営業損益を2期連続して損失としないこと。
5.財務制限条項の内容は以下のとおりです。
(1)2026年3月期末日以降の各連結会計年度の末日における連結貸借対照表から計算される純資産の部の合計金額を、2025年3月期末日における連結貸借対照表から計算される純資産の部の合計金額の75%に相当する金額、又は直近の連結会計年度の末日における連結貸借対照表から計算される純資産の部の合計金額の75%に相当する金額のうち、いずれか高い方の金額以上に維持すること。
(2)各連結会計年度の末日において、連結損益計算書上の営業損益を2期連続して損失としないこと。
当社グループ(当社及び連結子会社)は、ビジョン2035「人の感性に寄り添うテクノロジーで未来をつくる」を研究開発の起点とし、社会課題の解決と持続的な企業価値向上に資する技術基盤の強化に取り組んでいます。
コア技術・基盤技術においては、磁気・電波・静電・音響・アクチュエーション等の五感要素技術を融合したマルチモーダルセンシングを中核に、ソフトウェア、アルゴリズム及び自社IC設計技術を一体化し、「感動」「安全」「環境」の価値提供を目指した開発を推進しています。
また、重点応用領域として、モビリティ分野に加え、ロボティクス及び社会領域での活用を見据え、人の状態や意図を捉えて判断・フィードバックにつなげる技術の具現化に向け、要素技術及びシステム技術の開発を進めています。
更に、これらの取り組みを加速するため、複数の大学との包括連携や講座の共有等を通じて技術力の強化も図っています。
当社グループは、これらの研究開発を通じて、ビジョン2035と中期経営計画との連動を一層強化していきます。
当社グループの研究開発費の総額は
当事業は、収益基盤事業として育んできた当社独自のコア技術と、実績に裏付けされた高い生産技術力と品質を強みに新しい発想で製品と価値を創出し、継続的な事業拡大を目指しています。
コンシューマーや車載市場の既存事業に対しては、業界トップの品揃えと高い品質・生産力による優位性を活かし高シェアを維持するとともに、開発・生産体制の最適化に取り組み、市場における競争力確保と収益性の向上を図ります。
また、車載市場においては、電気自動車の拡大や自動運転技術等の進化により新たに期待される地域ごとのニーズにタイムリーに応えるために、グローバルでの開発体制を強化していきます。アミューズメント市場においてはジョイスティック等の入力デバイスや振動デバイスでのシェア拡大を図りながら、次世代デバイスに求められる製品の研究・開発に積極的に投資をしていきます。アクチュエーターについては従来のスマートフォン向けビジネスの拡充と収益性改善の取り組みを強化しながら、SMA(Shape Memory Alloy)やピエゾ技術を用いた新しい製品・用途向けのアクチュエーター開発に積極的に取り組み、長期的な技術優位性並びに市場競争力の確保を目指します。
コンポーネント事業に係る研究開発費は
当事業は、人やモノを検知し位置を特定するセンシング技術と、制御するソフトウェアを強みに、人と機器、機器同士をつなぎ合わせ、人の感性に合う応答の実現により、社会課題の解決に貢献することを目指しています。
自動車業界においては SDV(Software Defined Vehicle)化の進展を背景に車載セキュリティーの重要性がますます高まる中、スマートフォンによる自動車のキーシェアを安全かつ快適に実現するデジタルキーシステムを開発しました。これは車載エッジ端末やセンサーに加えデジタルキーサーバーを含んだ標準化システムであり、自動車以外のパーソナルモビリティーや、オフィス、住宅等、様々な鍵の解錠/施錠ソリューションとして提案することで、安心快適な社会の実現に貢献していきます。
また、2025年4月から開始した中期経営計画2027において、センサー領域への戦略投資を進めていきます。中でも車載、スマートフォン、産業ロボット、医療機器等多岐にわたり使用される磁気センサーにおいて、東京大学と共同研究で、量子物質を使用した磁気センサーの開発に着手しており、当社及び東京大学から研究員を増員し、開発を加速していきます。新たな磁気センサーを活用することにより、従来では検出できない極めて微弱な磁場の測定が可能となり、不良品検知や病気の早期発見等、産機・ライフサイエンス市場における新しい事業創出を目指すとともに、社会課題の解決につながる価値を生み出し持続的な成長に繋げていきます。
センサー・コミュニケーション事業に係る研究開発費は
当事業は、従来より提唱してきたデジタルキャビンソリューションの商品群として、空間価値創出を目指した各種製品開発を進めてきました。その結果、開発を進めていた複数のプロジェクトを2026年春にリリースすることができました。主な商品としては、車室内センシングを行うオーバーヘッドコンソール製品、プレミアムサウンド製品及び静電タッチで操作可能なステアリングホイールスイッチ製品等があります。2026年中にはキャビンドメインコントローラー(IVI+METER)製品のリリースも予定しており、順調に開発を進めています。
業界全体でBEV(Battery Electric Vehicle)の販売計画の見直し・台数減少の傾向にありますが、車両のSDV(Software Defined Vehicle)化はBEVに限らず、HEV(Hybrid Electric Vehicle)を含むICE(Internal Combustion Engine)車にも確実に進展しています。当事業では、次期SDVの車室内空間価値を高めるデジタルキャビンソリューションの基幹製品として、統合インプット製品、統合アウトプット製品及びプロセッシング領域の製品開発を進めています。
開発に当たっては、当社グループに留まらず、大学、研究機関、並びに他社との協業を推進し、それぞれの技術・製品力を結集することで、シナジー効果の創出を目指しており、これらの取り組みを北米CESにおいて自動車メーカーのみならず一般来場者にも公開しました。
また、アルパインブランドでは、車載製品開発を通じて一般消費者向けの車室内空間価値の向上に取り組んでおり、カスタムカーの企画・販売を行うAlpine Styleを通じて得られる消費者ニーズを製品開発へフィードバックすることで、更なる付加価値の創出を図っています。
モビリティ事業に係る研究開発費は