第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1)会社の経営の基本方針

 当社グループは、創業以来の社是「誠実」のもと、ミッションを「未来社会に音で貢献する」、ビジョンを「音に関わる製品やソリューションを通して世界中に豊かで快適な空間・楽しさ・喜び・安心安全を提供する」とし、「世界一の『音響』ソリューションパートナー」を長期的に目指す姿に掲げ、「音響」ソリューションのスペシャリストとして、業界での地位を確固たるものにするために、グローバル企業としてさらなる事業の充実と企業価値の向上を図りながら、持続的な成長を実現するための体制作りを推進します。

 

(2)中長期的な会社の経営戦略

(2025~2027年度 中期事業計画の概要)

・財務目標

 2027年度の目標として売上高1,500億円、営業利益90億円、営業利益率6.0%、ROE8.0%といたします。

この財務目標を達成するための柱として、「モビリティ関連ビジネス」と「コンシューマ関連ビジネス」の2つで成長戦略を策定しました。

 

・成長戦略:モビリティ関連ビジネス

 2023年度末から2027年度の4年間の自動車市場の予想成長率を上回る20%以上の中期売上高成長率の実現を目指します。

モビリティ関連ビジネスにおいては、量産開始の3年以上前に受注ができるケースが多いことから、この売上増加目標は、既に受注したビジネスが多く含まれている為、十分に実現可能な目標として設定しています。

「次世代モビリティにおいて豊かで快適な空間・楽しさ・喜び・安心安全を提供すること」を目的に、長年磨き上げた車載向けスピーカ技術を使って、次世代車室内音響空間 / 次世代HMI / 車内外警告音等で付加価値向上を図り、且つ自動車1台あたりの搭載数を増加させます。

 

・成長戦略:コンシューマ関連ビジネス

 従来のモビリティ関連ビジネスに加え、今後の更なる成長の柱として位置づけています。

「豊かで快適な空間・楽しさ・喜び・安心安全を軸にモビリティ関連ビジネスに次ぐ柱を構築」することを目的に、総合的な製品設計力と進化を続ける独自技術で、より付加価値の高い完成品ビジネスの拡大と新事業の創出で収益性を向上させます。当社の強みを活かせる分野として、新規長期収益基盤確立プロジェクトであります「Beyond2025」における3つの柱を構築し、「ライフスタイル」「ライフソリューション」そして「ライフエンハンスメント」の分野で、ビジネスを拡大させ成長させます。

 

・資本政策

 資本コストや株価を意識した経営の実現に向け、株主還元策を強化します。

具体的には、成長戦略に基づき持続的成長を実現させ、そこから得られる収益について成長投資・内部留保等を確保しつつ、株主還元として配当性向を前年度までの「30%水準」から2025年度より「40%水準」へと10%引き上げます。

また、継続的かつ安定した株主還元を維持する観点から、配当性向に加えDOE(自己資本配当率)を導入し、「2%を下限」として設定します。加えて、「中期事業計画」の進捗状況や内外環境の変化等も踏まえ、必要に応じて更なる株主還元策の検討も行う予定です。

「成長戦略」と、この「資本政策」にかかる施策を推進することで、中期事業計画期間中の「PBR1倍以上」の達成を目指します。

 

(コーポレート・ガバナンス)

 取締役会の主導のもと、経営環境の変化に迅速かつ的確に対応できる意思決定と、適法かつ適正な業務執行が可能な経営体制および公正で健全な経営システムの確立に取り組みます。同時に、グローバル経営をさらに高度化するため、グループガバナンスを強化し、より実効性の高い体制を整え、企業価値・株主価値の最大化を目指します。

 

(3)目標とする経営指標

 当社グループは、2024年11月に公表しました2025~2027年度 中期事業計画において、売上高1,500億円、営業利益90億円、営業利益率6.0%、ROE8.0%を中期財務目標としています。

 

(4)経営環境と対処すべき課題

 世界経済は、今後も不透明な状況が続くと見込まれます。米国政権の政策変更、中東やロシアウクライナ

紛争等の地政学リスクをはじめ、関税政策・インフレ・為替変動、中国経済減速等の経済リスク、加えて気候変動リスク等が複合的に絡み合い連鎖する状況です。

 当社グループが注力する自動車関連市場では、EV市場の減速や米国の関税政策の影響なども懸念され、先行きも不透明な状況です。

 米国の関税政策の業績への影響については、直接的な関税負担の発生や間接的な需要動向への影響、更には貿易摩擦に起因した部材仕入れへの制約などが想定されますが、当社の強みであるグローバルな販売構成、大半の顧客に導入済みの「価格連動制」に準じた丁寧な顧客交渉、製造拠点のスピーディーな移管やロジスティクスの機動的な見直しなどにより、その影響を極小化すべく努めて参ります。

 また、このような状況下ではありますが、車載ビジネスにおいてブランデッド・プレミアムレベルにフォーカスした販売戦略の推進により、既存顧客に加え新規顧客獲得にも注力し、昨年11月に新たな3か年の中期事業計画に掲げた1台あたりの搭載製品数拡大と収益性向上に向けた取り組みを加速します。

 当社では、新たな中期事業計画における財務目標を達成させるための成長戦略として、「モビリティ関連ビジネス」と「コンシューマ関連ビジネス」の2つの柱を掲げ、更なる成長の実現に向け取り組みます。

 具体的には、主に以下の方針のもと諸施策を実施します。

 

(基本方針)

新中期事業計画スタートの年

 

(方策)

1. 新中期事業計画の積極的ビジネス拡大を推進

2. 新製品・新技術への取り組み強化

3. 車載業務品質の徹底

4. 新中期事業計画のコスト構造改革の推進

5. ESG 経営の推進

 

 当社グループは、社員一人ひとりが新しい技術への挑戦、成長への執念、変化への柔軟な対応、地道な改善努力を忘れず、常に前向きな姿勢を保ちつつ、皆で一丸となって業務に取り組んでいきます。そして、社会や市場の中で信頼され、必要とされる企業になるためにESG経営を着実に続けていきます。

 

当面の懸念材料への対応等は「事業等のリスク」に記載。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社は、社是として「誠実」、ビジョンとして「未来社会に音で貢献する」、ミッションとして「音に関わる製品やソリューションを通して、世界中により快適な生活やコミュニケーションの喜びを提供し社会から期待される企業になる」ことを掲げて活動しています。その根底にはサステナビリティの理念が深く根付いており、創業時から一貫して社会から必要とされ発展し続けるサステナブルな企業を目指してきました。自社のみならず、社会双方のサステナビリティの実現に向けて、2021年には「ESG経営宣言」を制定し、E(環境)・S(社会)・G(ガバナンス)の側面を重視した経営に取り組んでいます。

 また、時代の変遷に伴いサステナビリティ課題への意識がより一層高まり、同時に気候変動、資源枯渇、社会的不平等、人権問題など、解決すべき社会的課題が増加しています。企業としての責任がますます重要になっています。

 ステークホルダー、特にお客様からの期待やニーズも多様化・高度化しており、企業にはより高い基準での対応が求められています。当社の車載関連ビジネスにおいては、電気自動車(EV)化の進展を背景に軽量化が求められ、環境負荷軽減やカーボンニュートラルへの対応も重要な課題です。現在、車載用音響スピーカの小型・軽量化を進めており、次世代スピーカとして環境配慮製品の開発も行っています。さらに、リサイクル材料の使用や、製造プロセスにおけるエネルギー効率の向上にも取り組んでいます。私たちの音響技術や材料開発力・製造技術をもって、これらの要望に応える製品を開発し提供していきます。

 今後も「ESG経営の推進」を経営方針の中核に据え、健全な企業風土の醸成、働き方改革のさらなる推進、品質管理・リスク管理の徹底を図ると共に、CO2排出削減やエネルギー効率の向上、サプライチェーンにおける人権尊重など社会課題の解決に取り組んでまいります。ステークホルダーの皆様、そして社会全体の期待に応え、サステナビリティに貢献していきます。

 

  (ⅰ)サステナビリティ全般

(1)ガバナンス

 企業価値・株主価値の最大化を図るため、経営環境の変化に迅速かつ的確に対応できる意思決定と、適法かつ適正な業務執行が可能な経営体制および公正で健全な経営システムの確立が重要であると認識し、ガバナンスに取り組んでいます。

 当社では2006年にCSR憲章の初版を発行し、2010年にアメリカの電子工業会が定めたCSR基準であるEICC(注)を基本方針として採用することで、グローバルな汎用性・普遍性を追求し、内容を刷新しました。

 さらに、2022年には従来取り組んできた企業の社会的責任(Corporate Social Responsibility、以下 CSR)だけでなく、自社そして社会双方のサステナビリティを追求することを明確にするために、CSR憲章を改定し、「サステナビリティ憲章」を制定しました。すべての役員・社員が、企業のサステナビリティ(ESG要素を含む中長期的な持続可能性)を重要な課題としてとらえていることを周知し、日々の活動の中でサステナビリティを意識し、果たすことを目的としています。

 (注) Electronic Industry Citizenship Coalition(2017年にResponsible Business Alliance に改名)
 

〈サステナビリティ推進体制〉

当社では、経営方針や重要事項の意思決定を担う取締役会の監督のもと、サステナビリティ推進を担う執行機関であるサステナビリティ委員会が重要事項を諮問し、それに基づいて取締役会が審議・承認を行っています。取締役会はサステナビリティに関する知識や経験を有する取締役が加わって構成されており、社外取締役の参画により、客観的な視点も取り入れながら、月1回定時に開催し、迅速かつ的確な意思決定と経営監督を実施しています。また、サステナビリティ委員会からの諮問事項については建設的なフィードバックを行い、委員会活動の質の向上にもつなげています。

執行側としては、代表取締役社長を委員長とし、関連部門の代表をコアメンバーとするサステナビリティ委員会を本社に設置しています。サステナビリティ委員会は、実行委員長であるサステナビリティ担当役員出席のもと、本社および各拠点のサステナビリティ責任者、実務担当者により月次で開催され、グループ全体におけるサステナビリティ推進活動、マテリアリティの特定プロセスやマテリアリティKPI設定・進捗のモニタリングと連携活動を担っています。

 

 

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2024年度の取締役会、サステナビリティ委員会におけるサステナビリティ関連の報告・審議事項

取締役会

審議・承認事項

・マテリアリティの見直し

・統合報告書の発刊

・サステナビリティに関する活動報告及び業務計画

サステナビリティ委員会

審議事項

・マテリアリティの見直し

・フォスターグループサプライヤーサステナビリティ行動規範の改定

・2024年度CO2削減アクションプログラムの策定

・統合報告書の発刊

 

報告事項

・マテリアリティKPIの進捗・振り返り

・サステナビリティ情報開示(CSRD、TCFD・TNFD対応)

・外部ESG評価機関・お客様調査に基づくESG重要課題

・2024年度CO2削減アクションプログラム進捗結果

・環境内部監査、マネジメントレビュー、ISO14001審査の結果

・お客様CSR監査の進捗・結果

 

(2)戦略

 2021年には、「ESG経営宣言」を制定し、E(環境)・S(社会)・G(ガバナンス)を軸とした経営に取り組むフォスターの姿勢を社内外に発信しました。すべての企業活動の原点である「社員」のウェルビーイングを活動の基点として、自社そして社会双方のサステナビリティ実現に向けて、中長期的にESG経営に取り組む当社のコミットメントおよび当社のありたい姿を具体的に表現したものです。

 さらに事業活動を通じてESG課題に統合的に取り組むために、2024年には従来のESGマテリアリティに事業(B)の要素を組み込み、「B+ESG」の領域でマテリアリティを設定しました。事業とESGの双方を連携させ、さらなる強化と推進を図ります。当社のサステナビリティ推進活動は、マテリアリティに伴うKPIの設定に始まり、ESGの側面からPDCAサイクルを実行しています。

 

(3)リスク管理

 当社のリスクマネジメントは、サステナビリティ関連を含むリスクを事前に予測し、リスクが具現化されることを未然に防ぐため、然るべき対策を講ずること、および万一リスクが発現・具現化して危機が発生した場合には、被害を最小化することを主な目的としています。具体的には、「フォワードルッキングなリスク・危機管理に向けての態勢作り」を運営の基本方針として、「RCM(リスクコントロールマトリックス)フレームワーク」の高度化及び情報管理・共有体制の強化を図っています。

 

〈リスクマネジメント推進体制〉

 経営に支障をきたす可能性のあるリスクに迅速かつ的確に対処するため、代表取締役社長を委員長とするリスク・危機管理委員会を設置しています。これにより、全社的なリスクの評価、管理、対策立案とその実行を行っています。

 

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   また、マテリアリティの設定に際しては、当社が社会および環境に与える影響(インパクト)と、それに伴う財務

   上の影響(リスクと機会)を考慮し、これらの影響の大きさや発生の可能性に基づいて重要度を評価しました。

   この様な評価プロセスを経て設定されたマテリアリティをもとに、当社はサステナビリティへの対応を推進してい

   ます。

 

(4)指標及び目標

 当社では、ESGの側面から設定した各マテリアリティを主担当部署ごとに、毎年目標・KPIを設定して推進し、達成に向けて取り組んでいます。進捗結果については、役員をはじめ関連部門の代表が出席するサステナビリティ委員会で審議し、見直しや改善の対策を講じています。なお、本有価証券報告書に掲載の「〈2〉人的資本への取組:人的資本への取組に関する指標、目標及び実績」以外の各KPIに対する2024年度の取り組み状況に関しましては、2025年7月末発刊予定の統合報告書にて開示する予定です。

 

B+ESG

マテリアリティ項目

サブ課題

2024年度目標(KPI)

事業(B)

音と振動を通じた快適な空間・楽しさ・喜びの提供

-

2025年4月よりスタートのためKPI掲載はございません

安心・安全な社会の実現

-

お客様とのパートナーシップによる
新たな価値の提供

-

安定した収益確保
による社会への経済的貢献

-

環境(E)

気候変動への対応

気候変動に対するレジリエンス向上

BCP訓練の実施

災害発生時における本社と拠点との合同BCP訓練・年1回の実施と課題の解消

温室効果ガス
排出量の削減

Scope1&2の総排出量
 
 


Scope3の総排出量
 

・2025年目標:2018年度比30%削減
・2030年目標:2018年度比50%削減
 
・2025年目標:2018年度比3%削減
・2030年目標:2018年度比15%削減

エネルギー使用の効率化と再生可能エネルギー利用の促進

再生可能エネルギー
比率の向上

-

資源循環型社会の
実現への貢献による地球生態系保全

サーキュラー
エコノミーの実現

105g未満に向けた軽量化技術を盛り込んだ自主開発品の製作完了
 
環境対応スピーカ(注1)の採用率の向上
車載用環境対応スピーカの採用率(売上高比)

 

 

 

 

2024年度:20%
2025年度:22%

各国の環境法規制への対応と環境負荷の低減

新規モバイルオーディオ製品のうち「トルエン不使用製品」の比率

100%

自然生態系の保護と回復

事業活動と生物多様性との依存度・影響評価を検討

-

社会(S)

理念の浸透と
人財育成

-

新規雇用従業員への
理念浸透教育実施率
(本社)
 
従業員一人当たりの
年間研修時間(本社)
 
 
全社研修有効性評価・満足度の平均スコア(本社)
 
従業員一人当たりの
研修費用(本社)

100%
 


 
35.0時間以上
(23年度実績:33.1時間)
 
 

85以上(23年度実績:84.9)
 
 
 

70,000円
(23年度実績:66,418円)

社員のウェルビー

イング向上

従業員のエンゲージメントの向上

エンゲージメント調査のポジティブ回答比率
(本社)

76.0%以上

労働安全衛生の
推進

重大結果に繋がる労働関連の傷害件数(注2)

0件

働きがいのある/働きやすい職場づくり

従業員一人当たりの

総労働時間(本社)
特定保健指導・健診事後措置面談受診率
(本社)
定期健康診断受診率
(本社)
介護離職者(本社)

月平均158時間以下
 

80%
 


100%維持
 

0%維持

ダイバーシティ・エクイティ&
インクルージョン(DE&I)の推進

女性管理職比率
(本社)
 
海外人財比率(本社)
障がい者雇用率
(本社)
男性の配偶者出産休暇取得率(本社)
男性の育児休業取得率
(本社)

2025年度 30%
 


2025年度 30%

法定雇用率2.5%を上回る
 
100%
 

70%

人権への理解向上と侵害防止

DE&I教育・人権教育・ハラスメント研修の
受講率(本社)

100%

バリューチェーンにおけるサステナビリティ推進

-

①重要サプライヤー(注3) CSR自主アセスメントの実施率
②重要サプライヤーCSR適合率(注4)
 
責任ある鉱物調達調査におけるサプライヤーからの回答回収率
既存サプライヤー
新規登録のサプライヤー

100%


 

100%
 
 
 
 

 

99%以上
100%

製品の安全・品質および安定供給の確保

製品の安全性

品質経営の推進による製品品質の更なる向上を目指す

受注から量産までの未然防止活動による重大クレーム(注5)
発生:0件

製品、サービスの品質の確保

顧客満足度 「Aランク」率(注6)
95%以上

製品の安定供給

目標のスピーカ在庫回転率を達成

本社:4回転/年
米国拠点:4.8回転/年
欧州拠点 :3.6回転/年

ガバナンス(G)

ガバナンス強化によるステークホルダーからの信頼の維持・向上

コンプライアンスの徹底

コンプライアンス・
テストおよびコンプライアンスアンケートの回答率
内部通報制度の周知率
コンプライアンス研修の実施と満足度

100%の維持
 

 

 

100%
5段階中平均4以上の確保

リスクマネジメント態勢の充実

リスクアセスメントに基づくリスク・危機管理の体制・運用の改善
 
重要項目のモニタリング(注7) を実施し、各項目の対応策年度内完了率


 
 
 
100%

ITガバナンスの
強化

情報セキュリティに
関する重大な事故

0件

知的財産の管理と活用

知的財産マネジメントサイクルの高度化

-

 

(注1) 環境対応スピーカ:軽量化、VOC削減、はんだ低減、ドライプロセス採用等の環境配慮要素をひとつでも含んでいるスピーカ

(注2) 重大結果に繋がる労働関連の傷害 (high-consequence work-related injury) :死亡、または6ヶ月以内に労働者が傷害前の健康状態に完全に回復することができないか、または 回復しないと予想される傷害をもたらす労働関連の傷害

(注3) 重要サプライヤー:当社の調達金額80%に該当する上位サプライヤー約50社

(注4) CSR適合率:CSR自主アセスメント評価点66%以上を達成しているサプライヤーを適合とする(65%以下は不適合)

(注5) 人命・財産・環境、などに重篤な影響を与える不具合

(注6) 「Aランク」率:顧客満足度の評価にて指摘や改善要求等なく要求を満足できているステータス

(注7) 1.グローバルロジスティクス体制の展開構築  2.BCP体制の検証とグローバルの継続  3.サプライヤーの事業継続性の管理  4.グローバルベースでの情報セキュリティ管理体制の強化  5.その他期中に生じる事象から予見するリスク

 

  (ⅱ)テーマ別サステナビリティ課題

  〈1〉気候変動への対応(TCFD提言への取り組み)

 環境や気候変動に関するテーマを重要な課題と考え、2022年2月に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD(注))」提言への賛同を表明すると共に、TCFDの効果的な情報開示や適切な取り組みについて、賛同企業や金融機関等が議論を行うTCFDコンソーシアムに参画しました。気候変動におけるリスクと機会を把握した上で、社内外の知見を活かしながら引き続き有効な対策を推進すると共に、TCFDの提言に沿った情報開示を積極的に進めてまいります。

(注) 気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate- related Financial Disclosures):各国の中央銀行・金融当局や国際機関が参加する金融安定理事会(FSB)が2015年に設立した、気候変動が経営に及ぼす影響の試算や情報開示のあり方について考えるタスクフォース。企業等に対し、気候変動関連リスクおよび機会に関する情報開示を推奨。

 

1.ガバナンス

 サステナビリティを重要なテーマとして捉え、2021年3月にESG経営を宣言し、優先課題であるマテリアリティの一つとして「気候変動への対応」「2050年カーボンニュートラルの実現」を目指すことを掲げ、その目標や削減活動は、全社員に展開され推進されています。

 また、ESG経営を推進するため、代表取締役社長を委員長とするサステナビリティ委員会が月次開催されています。同委員会は、気候変動に関する課題に対し、サステナビリティ担当役員、各本部長および本社・グローバル拠点の各部門から任命されるサステナビリティ推進責任者出席のもと、課題認識、方針・施策を審議・決定し、進捗状況を共有・モニタリングするものです。

 取締役会は、経営課題に関わるTCFDの賛同表明・情報開示、削減目標および施策等を審議・決定しています。また、同委員会の審議状況や進捗状況に関し、定期的もしくは必要に応じて報告を受け、当該業務執行状況を監督する役割を果たします。

 

2.戦略

 TCFD提言が提唱するフレームワークに基づいて、2030年時点の外部環境の変化を検討し、気候変動が当社に与える影響を分析しました。リスク・機会の分析にあたっては 1.5℃と4℃シナリオを採用し、移行リスクに関しては気候変動の緩和に向け、政策や市場がどのように移行するかを考えます。物理的リスクに関しては、気候変動に伴う気象災害の頻度や影響がどのように変化するかを分析しました。

 特定したリスクおよび機会の対応については中期事業計画へ展開すると共に、今後は自社への財務的な影響についても検討を進めます。また、インパクトの大きい一部の車載関連事業を対象に分析を行っていますが、対象外となった事業も含めて、引き続き分析を進めます。

 

〈気候変動リスクと機会に関する事業影響〉

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3.リスク管理

 経営に支障をきたす可能性のあるリスクに迅速かつ的確に対処するため、代表取締役社長を委員長とするリスク・危機管理委員会を設置しています。これにより、全社的なリスクの評価、管理、対策立案とその実行を行っています。

 特に気候変動に関連するリスクについては、同委員会の総合リスク評価においてトップリスクの一つとして位置づけ、サステナビリティ委員会がリスクの識別・評価し、対応策を講じる等、実効性を高めています。

 当該リスク管理、対応策の状況等については、取締役会においても情報共有が行われ、全社のリスク・危機管理について監督およびモニタリングを実施すると共に、リスク評価とマテリアリティ分析の整合性を図ることで、全社における総合的リスク管理の強化を進めています。

 

4.目標と指標

 2021年3月にサステナビリティ実現へ向けて「ESG経営宣言」を制定し、「脱炭素社会」、「ゼロエミッションへのたゆまぬ努力」を中長期的に目指すことを掲げました。これらの宣言の下、パリ協定の1.5℃目標に沿って2030年までの中期環境目標(Scope1、2)の見直しを行いました。また、新たに2050年までの長期目標を設定しています。

(1)2030年中期削減目標

・Scope1、2:2030年までに2018年比で50%削減

・Scope3  :2030年までに2018年比で15%削減

(2)2050年長期削減目標

・2050年までにカーボンニュートラルの実現を目指す

 これらの目標を達成すべく、今期(2024年度)CO2削減アクションプログラム〈Ver.2025〉を策定しました。当社グループ全体において本社、拠点が一体となり、CO2削減活動を加速させます。

 

具体的な削減施策

ⅰ.自社による省電力化(地道活動/革新的活動)

〈地道活動〉

具体的施策:

・運用改善    :運用、メンテナンス、保温・断熱改善、等

・省エネ設備の導入:各設備の改造・更新

〈革新的活動〉

活動内容:

・新しい製造方法・設計仕様の研究・導入

具体的施策:

・次世代スピーカプロジェクトによる革新的技術開発、等

ⅱ.再生可能エネルギー電力の調達

・費用対効果を検証の上、電力会社からの購入電力を再エネ100%メニューに切替

ⅲ.自社による再生エネルギー発電

・自社太陽光発電設備の導入

ⅳ.グリーン電力証書購入によるオフセット(不足分)

 ・海外工場におけるグリーン電力証書の購入

 

具体的なKPI

各拠点で電力使用量を削減のKPIに設定し、計画的な省エネルギー活動を推進しています。これらの活動を通じて、Scope1、2の2030年度目標(2018年度比50%削減)の確実な達成を目指します。

 

〈2〉人的資本への取組

Ⅰ.人財の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針等

 

1.人財開発方針

 当社の人財開発は、「中長期的な事業戦略と一人ひとりの個性(強み・弱み)を踏まえた、個々の人財開発目標に応じて、人事諸制度との有機的な連携を図りながら継続的に行う」ことを基本としています。長期的な視座から「採用・育成・活用・評価・処遇」を有機的に一体で捉えた「人事グランドデザイン」を策定し、社員一人ひとりが誇りとやりがいを持って力を発揮できる人事フレームワークを構築するとともに、次代のフォスターを担う人財基盤を盤石にするための「人づくり」を推進しています。

 

2.人財開発の指針となる人財像

・業務を通じてビジョンを具現化し、実現に向けてまい進する「強い意志」と「行動力」を持つ人財

・現状に甘んじることなく、あらゆる機会を利用して自己の能力を高める工夫と努力をし、成長できる人財

・専門性を武器に、戦略策定・遂行の中核となり、継続的に価値創出ができるプロフェッショナルな人財

・期待されている、また果たすべき役割や使命を自覚し、自らの行動および結果に対し責任を持つことができる自律型の人財

 

3.主な施策

① 自律的なキャリア開発への取り組み

 人財開発において、キャリア形成に対する社員自身の主体的な取り組みが必要不可欠です。自身がどのような成長を望み、どのようなスキルを身につけることが必要か、社員自らの意思で考え行動することが、人づくりの礎となり、より高い付加価値を生み出す源泉になると考えています。一人ひとりのキャリアプランやライフステージにあわせて、柔軟に選択肢を選ぶことができる「キャリアコース制度」を設け、社員の自律的成長を促し、支援しています。

 

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② 次世代人財育成への取り組み

 継続的な経営人財育成戦略の一環として、次代を担う人財をグローバルレベルで育成する「Global Leadership Development Program(GLDP)」を推進しています。

 GLDPは、2010年から本格的に取り組んできた経営人財育成プログラムを再構築し、2019年に新たなプログラムとして体系化したもので、主要ポストの後継者候補として選抜された対象者に対し、それぞれに適した能力開発を順次実施する選抜型の育成プログラムです。

また、2023年度には、若手社員層に対する公募型の育成プログラム「Start Up Program」を導入し、将来のタレントプール人財の育成も強化しています。

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③ グローバル人財育成への取り組み

 多様な文化や価値観を理解し、世界中の拠点で力を発揮できる人財を計画的・継続的に育成するため、体系的なグローバル人財育成プログラムを展開しています。

 新入社員全員が参加する「海外工場実習プログラム」は、当社のグローバル人財育成の基盤となる取り組みです。海外製造拠点での実務経験を通じて、製造工程や品質管理、生産革新への取り組みを学ぶとともに、異なる文化背景を持つ同僚との協働を体験します。この早期段階での海外経験は、当社の「ものづくり」の本質理解と同時に、グローバルマインドの醸成に大きく寄与しています。

また、若手社員向けの「Global-eye Program」や中堅社員を対象とした海外トレーニー研修制度など、多様な形態での国際人事異動を推進し、より実践的な海外業務経験を積む機会を提供して将来のグローバルリーダーとしての素養を培います。昇格者研修や管理者研修においては、DE&I の理解促進と実践にも重点を置いており、多様性を強みに変える組織づくりの重要性を全社に浸透させています。

こうした多層的なアプローチにより、当社は世界各地の拠点で活躍できるグローバル人財の育成と、国際競争力の強化に取り組んでいます。

 

④ 若手社員の定着と早期戦力化への取り組み

 若手社員の成長を多角的に支援するための包括的なフォローアップ体制を整えています。「メンター制度」では、先輩社員が身近な相談相手となり日常業務や職場環境への適応をサポートします。「役員メンター制度」では、経営層が直接若手社員と定期面談を行い、キャリア形成や長期的な成長に関するアドバイスを提供しています。さらに「エスコートランナー制度」では、人事部門の専任担当者が若手社員の成長過程に寄り添い、職場での関係構築からキャリアプランニングまで、包括的なサポートを提供しています。これらの制度が互いに連携することで、若手社員の多様なニーズに応え、成長をきめ細かく支援する体制を実現しています。

また、「役員と若手社員との車座ミーティング」は、経営層と若手社員が直接対話する貴重な機会となっています。このミーティングでは、事業戦略や会社の将来ビジョンについての質疑応答だけでなく、若手社員が日々の業務で感じている課題や改善提案を経営層に直接伝える場としても機能しています。

 

⑤ 技術承継、技術者育成への取り組み

 技術者育成プログラムの一つとして、「アラカルト研修」を導入しています。約45種類・合計200時間以上の講座の中から、ニーズに合わせて必要なものを選択し受講することができるものです。また過去の講座を動画で視聴できる環境も整えています。

このプログラムの最大の特徴は、すべての講義を社内講師により実施されているため、当社の実務に最適化された内容になっていること、そして受講者の教育と同時に社内講師の育成を継続的に行っている点にあります。

この取り組みが、当社の技術力の底上げと技術承継を促し、確かな技術力を支える礎となっています。2011年の開講以来、受講者数はのべ4,600名以上におよびます。

 

⑥ 組織風土改革への取り組み

 毎年実施している「ストレスチェックおよび従業員満足度・エンゲージメント調査」結果から、課題抽出のための組織分析を実施。加えて2022年度からは「360度フィードバック制度」を導入し、管理職層の自己内省と行動変容を促すことで、よりよい職場環境づくりに向けた取り組みを強化しています。

この他にも、労働組合に代わる社員組織である「真珠会」との労使協議を通じて得られるさまざまな要望や提言、退職者への「exitインタビュー」結果や、人事評価フィードバック面談実施後の社員アンケート結果等から、継続的に課題抽出を行い、人事施策へ反映させていく活動を続けています。

 

⑦ 理念浸透、エンゲージメント向上への取り組み

「Foster Rhythm Project」という取り組みをグローバル規模で展開し、企業理念の浸透を図っています。このプロジェクトによって、フォスターグループの「ありたい姿」を再定義し、社員自らが考えアイディアを出しあいながら、行動基準や大切にする価値観を言語化しました。これらをガイドブックやカードとしてまとめ、全世界の社員に配布しています。また、ワークショップや各種教育プログラムを継続的に実施することで、企業理念を体現できる人づくりと、活力ある組織風土づくりに取り組んでいます。

さらに、社員のチャレンジ支援プログラム (注)(Foster Incubation Program)では、自社の強みや魅力を発信する取り組みとして、短編動画「FOSTER STORIES」を制作する等、エンゲージメント向上につながる活動は、様々な形で広がりと進化を続けています。

(注) 2020年から開始した社内の取り組み。

社員自らが、ワクワクすること・チャレンジするアイディアや技術を生かしたプロジェクトを立ち上げ、それを支援する制度です。

 

Ⅱ.社内環境整備に関する方針

1.ダイバーシティ・エクイティ & インクルージョン(DE&I)

〈方針〉

多様な人財がグローバルに連携を図りながら価値共創を行うことは、当社の「ものづくり」において必要不可欠です。

 年齢・性別・性的指向・身体的特徴・価値観・学歴・経歴・出身地・人種・民族・国籍等、さまざまな個性の多様性が尊重されるとともに、個々の事情や育児・介護といったライフイベント等の多様なニーズに応じ、安心していきいきと働くことができる組織風土づくりを推進しています。

 これにより、社員と会社の「Win-Winの関係」を築き、社員一人ひとりの充実した個人生活の実現と、新たな価値の創造・企業競争力の向上という相乗効果を生みだすことを目指しています。

 

〈推進体制〉

 ダイバーシティ・エクイティ & インクルージョン(DE&I)を推進する専任組織として、人事部門内に「ダイバーシティ推進課」を設置しています。

 

〈主な施策・活動(本社)〉

① ダイバーシティ教育への取り組み

 多様な人財の活躍が企業のあらたな価値の創造につながることへの理解を深めるため、社内イントラネット上にダイバーシティに関する専用ウェブサイトを設置し、さまざまな情報発信を行っています。この中で、多様性を尊重したコミュニケーションの促進を目的とした「インクルーシブ・ランゲージ」についての啓発も実施しています。2018年から人事評価項目に「ダイバーシティへの取り組み行動実績」を追加しました。2023年度は「一人ひとりが自分らしく活躍するために~アンコンシャス・バイアスに気づき、行動を変える一歩を踏み出そう~」をテーマに女性取締役による講演会を開催しました。2024年度は管理職向けにダイバーシティ・マネジメント研修を実施し、属性の違いに合わせたマネジメントについて学びました。すべての社員のダイバーシティに関する意識を高め、自ら推進する行動を促すことで、より包括的で多様性のある職場づくりに取り組んでいます。

 

② LGBTQ+(性的マイノリティ)への理解促進に対する取り組み

 以前よりLGBTQ+に関する理解を深め、Ally(LGBTQ+当事者の理解者、応援者のこと)を増やす活動を推進してきました。2023年度にLGBTQ+フレンドリー推進検討会を立ち上げ、個人の性的志向や性自認を尊重すべく活動しています。また「多様性を組織力に変えるためのLGBT講座」や、「ハラスメントのない職場づくり講座」といったオンライン教育コンテンツを導入し、いつでも受講できるようにしています。

 

③ 女性活躍推進への取り組み

 2025年度までに管理職に占める女性管理職の割合を30%にすることを目標に掲げ、女性社員の計画的育成やキャリア形成における支援に取り組んでいます。2022年度は女性取締役が講師となり、多様なキャリアについての理解を深めることで自身のキャリア開発イメージを明確にするとともに、女性社員のネットワークづくりを目的とした「若手・中堅女性社員のためのキャリア研修」を実施しました。また2024年度は女性管理職と女性社員との座談会を開催し、女性管理職からキャリアを形成する上で努力したこと、管理職としてのやりがい、仕事とプライベートを両立するために工夫したことなどをオープンに語ってもらいました。参加者からは、普段聞くことができない話を直接聞くことができて有意義な座談会だったとの声が寄せられています。

 

④ 子育て&介護支援への取り組み

 子育て世代の社員や介護をしながら働く社員が安心して働ける環境づくりを促進するため、仕事と育児・介護の両立支援制度拡充に取り組んできました。2018年4月より、育児休業は最長3年まで、介護休業は最長183日まで、休業期間を延長しました。「子の看護休暇」についても法令上のものに加え、中学校までの子を養育する社員にまで取得要件を拡大しました。また、社内に相談窓口を設置し、個別に適切なアドバイスや情報を提供できる体制を整えています。2023年度は「介護セミナー~人生100年時代を生きる~」をテーマにeラーニング講座を開設し、いつでも受講できるようにしました。

 

⑤ シニア人財活用への取り組み

 60歳の定年到達後、65歳までの継続雇用制度(再雇用制度)を適用しています。経験豊富なシニア人財は会社にとって欠かせない戦力であるとの考えから、モチベーションを維持しながら積極的に働けるよう、シニア人財が活躍できる環境の整備を行っています。シニア人財の勤務形態は職務の必要性等に応じて個別に決定されますが、所定労働日数や所定労働時間については柔軟な選択肢を用意するなど、シニア人財の多様な働き方を支援しています。

 

⑥ グローバルな人財採用への取り組み

 人財採用においても多様性を重視し、差別のない公正な選考を行うことはもちろんのこと、本社で働く人財のグローバル化促進を目的として、外国籍社員の積極採用にも取り組んでいます。新規学卒者採用における海外人財比率は、過去15年間で20%以上となっており、キャリア採用においても同様にグローバル化を推進しています。通常の一般求人だけでなく、海外グループ会社から日本本社への転籍制度を設ける等、多様な採用チャネルを積極的に活用し、異なる国籍や文化を持つ人財が組織に参加することを促し、多様性と包括性を高めることを目指しています。

 

⑦ 退職年金制度改革

 個人のライフプラン多様化に応じ、選択肢の拡大および将来にわたり安定した年金給付を可能とする制度を構築するため退職年金制度の改革に取り組み、2022年7月より退職年金制度を確定拠出年金に一本化しました。

 あわせて、教育資金や住宅購入等のライフイベントに伴うニーズにも柔軟に対応できるよう、退職金を前払いで受け取ることができる「前払退職金制度」を導入しました。このような選択肢を設けることにより、将来の生活基盤が必ずしも日本国内とは限らない外国籍の社員にも配慮しています。

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2.労務(労働慣行とディーセントワーク)

〈方針〉

 社員一人ひとりが仕事を通じて成長し、やりがいを感じながら能力を発揮できることを重んじ、さまざまなバックグラウンドを持つ社員が、日々のコミュニケーションを通じて自然に助け合い、知恵を出し合えるような「働きやすい」環境をつくることが重要であると考えています。労使の信頼関係・相互協力の下、さまざまなライフスタイル・志向を持つ社員が、それぞれの条件に応じたワークスタイルで働くことができる環境を目指し、諸制度の整備と組織風土づくりを推進しています。

 

〈推進体制〉

 ダイバーシティ推進課での活動に加えて、働き方改革プロジェクトを設置し、労使で連携をとりながら行っています。

 

〈主な施策・活動(本社)〉

① 働き方改革への取り組み

 2016年9月よりダイバーシティの推進、ワークライフバランスの実現を図ることを目的に、多様な働き方のニーズに応じた制度や風土づくりに取り組んできました。2017年度は、フレックスタイム制度の全社員への適用および在宅勤務制度の本格導入を実現しました。現在在宅勤務は対象者に制限をかけず、誰でも利用できる制度として実施しています。

 2020年度は、一日の所定労働時間を15分短縮して7時間30分にすると共に、コアタイムのないフレックスタイム制度を全社員に適用しました。仕事の進め方の抜本的な見直しやICTの活用により、個々のライフスタイルに合わせて「時間」や「場所」に捉われない柔軟な働き方を実現する環境整備に取り組みました。

 2021年度は、社員が居住地を選択する自由度を高めるため、距離による制約を撤廃しました。これにより、配偶者の転勤により遠隔地に転居するようなケースにも、柔軟に対応することが可能となりました。

 今後もより一層働きやすくかつ働きがいのある会社を目指し、働き方改革に取り組んでまいります。

 

② 休暇・休職制度充実への取り組み

 働き方の多様性促進、多様なライフスタイルへの対応と働きやすさの向上を目指し、休職や休暇制度の充実に取り組んでいます。

 ボランティア休暇制度、就学を希望する社員や配偶者の海外転勤への同行を希望する社員に対する休職制度、失効年休を積み立てることができる「積立有給休暇」制度の拡充、家族の介護・不妊治療・子の看護等の各種休暇制度に加え、2022年7月には、子の入学式や卒業式等のイベントに気兼ねなく参加することができるよう「子のイベント休暇」を導入しました。

 また、年に2日の「一斉有給休暇取得日」を設定するとともに、毎月「有給休暇取得奨励日」を設けることで有給休暇取得率向上を図りました。(2024年度有給休暇取得率78.3%※年5日の年次有給休暇を含む)

 

③ 過重労働防止への取り組み

 当社は、長時間労働が労働生産性の低下や疲労の蓄積を招き、さらには脳・心臓疾患の発症リスクを高めるという医学的知見を重視し、社員の健康維持と働きやすい職場環境の実現に向けて、以下の施策を推進しています。

・フレックスタイム制度の全社展開

コアタイムを設けないフレックスタイム制度を全社的に導入し、社員が自身の業務状況や生活パターンに応じて労働時間を柔軟に調整できる環境を整備しています。この制度は、業務の効率化と過重労働の防止に大きく貢献しています。

・在宅勤務制度の拡充

当社は、テレワークが一般化する以前から在宅勤務制度を導入してきました。現在は、利用日数の制限を撤廃するとともに、同一勤務日における出社と在宅の併用を可能とする部分在宅勤務制度を導入し、より柔軟で効率的な働き方を実現しています。

・戦略的な有給休暇取得の促進

適切な休暇取得は、過重労働の予防だけでなく、従業員エンゲージメントの向上や生産性の改善にも寄与します。当社では、有給休暇の計画的付与制度を導入すると共に、毎月の有給休暇取得奨励日を設定し、休暇を取得しやすい職場風土の醸成に努めています。

・充実した産業保健体制の構築

法定基準(月間残業時間100 時間超)を大幅に下回る月間残業時間45 時間を独自の基準として設定し、該当する社員に対して産業医による面接指導を実施しています。これにより、心身の不調を早期に発見し、適切な対応を図っています。また、産業保健師による相談体制を整備し、社員が気軽に健康相談できる環境を提供しています。これらの取り組みを通じて、社員の心身の健康保持・増進と、持続可能な働き方の実現を目指しています。

 

④ 副業解禁への取り組み

 社外における多様な経験は新たな活躍や成長の機会を広げ、個々のキャリア形成に幅と奥行きをもたらすことに寄与するとの考えから、2020年9月1日より副業制度を導入しました。現在、10名以上の社員が副業制度を活用しており、本業では携わることのできない仕事に取り組むことで視野を広げ、多様なスキルやノウハウを身につけています。

 

⑤ 健康増進への取り組み

 社員が働きがいを感じ、いきいきと活躍するためには、まず心身共に健康であることが必要不可欠です。社員の健康増進を重要な経営課題と位置づけ、さまざまな取り組みを行っています。産業医による新入社員への入社後フォローアップ面談の実施や、産業保健師による健康相談を充実させて、メンタルヘルス不調や病気の予防・早期発見・重症化防止に取り組んでいます。また、社員の健康増進に対する意識づけを目的として、健康診断・人間ドックの受診、健康関連セミナーへの参加、メンタルヘルス研修の受講等に対してポイントを付与し、健康奨励金を支給する「健康ポイント制度」を導入しています。2024年度は産業保健師によるメンタルヘルス研修を実施し、心の健康について学びました。

 なお、当社の健康増進に対する取り組みが評価され、2018年12月に健康企業宣言東京推進協議会より「健康優良企業 金の認定」を取得しました(2025年1月1日認定更新)。また、2025年3月には経済産業省より「健康経営優良法人2025(大規模法人部門)」に認定されました。

 

人的資本への取組に関する指標、目標及び実績

マテリアリティ-サブ課題

目標(KPI)

2024年度までの取り組み状況

従業員のエンゲージメントの向上

エンゲージメント調査の
ポジティブ回答比率
(本社)

76.0%以上

78.5%

労働安全衛生の推進

重大結果に繋がる労働関連の傷害件数(注)

0件

0件

働きがいのある/働きやすい
職場づくり

従業員一人当たりの総労働時間(本社)
特定保健指導・健診事後
措置面談受診率(本社)
 
定期健康診断受診率
(本社)
 
介護離職者(本社)

月平均158時間以下
 

80%
 


100%維持


 
0%維持

159.7時間
 

84.4%
 


100%


 
0%
 

ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)の推進

女性管理職比率(本社)
 


海外人財比率(本社)
障がい者雇用率(本社)
 
 
男性の配偶者出産休暇
取得率(本社)


男性の育児休業取得率
(本社)

2025年度 30%
 

 

2025年度 30%
法定雇用率2.5%を上回る


100%

 


70%

 

13.7%(2025年3月31日)
13.9%(2025年4月1日現在)
 

11.9%
3.1%

 


100%
 

 

125%

 

(注) 重大結果に繋がる労働関連の傷害 (high-consequence work-related injury) :死亡、または6ヶ月以内に労働者が傷害前の健康状態に完全に回復することができないか、または 回復しないと予想される傷害をもたらす労働関連の傷害

 

 なお、上記記載のほか、「従業員の状況」においても記載しています。

 

〈3〉人権尊重への取組

1.ガバナンス

 2003年に「フォスターグループ企業行動要綱」および「フォスターグループ社員行動規範」を制定しました。これにより、強制労働、児童労働、差別、ハラスメント、個人情報保護、安全衛生、責任ある鉱物調達等の側面において、すべての法律・法令、国際ルールおよびその精神・趣旨に則り、人権を尊重することを規定しています。また、「フォスターグループサプライヤーサステナビリティ行動規範」を通じてお取引先様にもご協力いただき、サプライチェーン全体を通して人権の尊重を遵守しています。さらに2024年には、人権に関する取り組みを一層強化するため、人権に関する最上位の方針として「フォスターグループ人権方針」を策定しました。この方針は、すべての従業員や取引先に適用されるものであり、人権に対する責任とコミットメントを明確に示すとともに、社内外での人権リスクの管理と改善を通じて、持続可能なビジネス活動を推進していくための指針となっています。2025年には、ハラスメント防止規定を改定し、非性的ハラスメントを含む多様なハラスメントを想定した内容へと見直しました。今後も、さまざまな属性を持つ従業員が働きやすい職場になるよう、ハラスメント防止の取り組みにも注力していきます。

 

2.戦略及びリスク管理

①社員の人権尊重および啓発・浸透

 社員のウェルビーイングを大切にし、社員の人権尊重・差別禁止、ハラスメント防止、個人情報・プライバシーの保護、職場の安全衛生、労働関係法の順守等の観点から、一人ひとりの人権が尊重されるよう取り組んでいます。さらに社員への啓発・浸透を目的とする全社員向けのハラスメント研修や、毎年人権週間にあわせて全社員向けの「人権とビジネス」に関するeラーニングや啓発の掲示、ダイバーシティ推進活動の一環としてLGBTQ+に対する理解を深めるeラーニングを実施しています。内部通報制度に関しては、社員に対してコンプライアンス・アンケートを利用した周知活動を行っており、社内周知率は100%を維持しています。

 

②サプライチェーンにおける人権尊重

 お取引先様には「フォスターグループサプライヤーサステナビリティ行動規範」への同意書に署名いただき、人権侵害に関する項目を設けた取り組み状況の調査(CSR自主アセスメント)を実施し、必要に応じて是正依頼をしています。さらに鉱物調達においては、深刻な人権侵害を行う武装勢力の資金源になっていないことを確認するためのデューディリジェンス(責任ある鉱物調達調査)を行い、認定された精錬所のみから調達活動をしています。

 

③相談・通報窓口

 内部通報制度として、コンプライアンスホットラインおよびハラスメントヘルプラインの相談・通報窓口を設置し、さまざまなステークホルダー(当社グループの社員・役員、その家族および取引先の社員を含む)からの相談を受け付けています。厳正な調査に基づき人権への侵害が特定された場合は、通報者への報復・不利益がないことを確保した上で、救済・処分を行っています。

 

 なお、その他の取り組みや最新の実績については、2025年7月に発行予定の当社『統合報告書』をご参照ください。

 

3【事業等のリスク】

 当社グループ(以下、当社という。)では、リスク・危機管理委員会が当社のリスクマネジメント活動を推進する役割を担っており、定期的に当社におけるリスクの識別、当該リスクが顕在化する可能性や影響度を検討し、当該リスクへの対応策の立案及び対応状況の進捗確認を行っています。リスク・危機管理委員会は、当該委員会の運営状況、直面するリスク及び対応状況を取締役会に適宜報告し、取締役会は社外取締役の専門的見地からの助言を含め監督機能を発揮しています。

 経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクのうち、リスク・危機管理委員会が、特に重要と分類しているリスクは、以下のとおりです。

 なお、文中における今後又は将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日(2025年6月25日)現在において当社が判断したものです。

 

特に重要と分類しているリスク

 

項目

リスク内容

対策

経済環境及び関連市場の景況

グローバルで事業を展開する当社において、世界経済や関連市場の景況感は、経営戦略の遂行に大きな影響があります。特に当社グループが注力する自動車関連市場では、米国政権の政策変更、中東やロシアウクライナ紛争等の地政学リスクをはじめ、関税政策・インフレ・為替変動、物価上昇による景気減速等により、急激な需要低下が発生した場合は、受注減に加え過剰在庫をもたらす等、当社の業績及び財務状態にさらに影響を及ぼす可能性があります。

・当社製品の最終消費地域(主に、欧米、日本を含むアジア)における景況感の悪化とそれに伴う需要減。

・当社が生産を行う地域(中国、ベトナム、ミャンマー等)の経済発展に伴う人件費上昇。

・顧客との連携をより密接にし、需要動向を的確に把握。

・世界情勢を十分に勘案し、BCPの観点も含め適時・適切な生産管理・在庫管理の実施。

・販売地域や生産地域における情報収集と分析。

・各種リスクを低減させるグローバル・サプライチェーンの構築と高付加価値製品の提案。

・自動化・機械化の推進と、人と機械を調和させた効率的な生産体制の構築による人員の最適化。

ODM・OEM得意先企業の景況への依存

・取引依存度の高い企業の販売・業績不振、経営合理化・リストラ、予期しない契約の変更・解除、調達方針の変更等による取引減少。

・取引依存度の高い企業からの値下げ要求。

・取引依存度の高い企業の財務モニタリングや信用調査による与信管理。

・高付加価値製品のマーケティング。

・ビジネス・ポートフォリオの見直しによる上位取引企業への依存度引下げ。

新商品の開発

当社は、継続して価値ある新製品を開発し、より付加価値のある製品をタイムリーに市場に提供することを重要な経営戦略として位置付けています。当該経営戦略に伴い主に以下のリスクがあります。

・マーケット・ニーズの予測が外れるリスク。

・急速な技術変化により、当社製品が市場ニーズの流れに乗り遅れるリスク。

・新技術の製品化遅延により、市場ニーズにマッチしなくなるリスク。

・顧客や消費者からの情報収集と分析。

・提案型マーケティングと開発へのフィードバック。

・振動アクチュエータをはじめ新技術・新製品の開発体制の構築。

・社会的ニーズの把握と環境配慮型製品の開発。

・M&A候補の継続的調査と産学連携など他社との協業。

 

資材費・部材費の高騰

・当社は、鉄、レアアース(ネオジム、ディスプロシウム)、原油、銅等の市況の影響を受けますが、資材・部材の調達価格が急激に上昇した場合、当社の業績及び財務状態に影響を及ぼす可能性があります。

・市場相場連動制の導入を含めた価格転嫁

・コスト低減に向けたサプライヤーへの提案。

・振動系部品を中心とした主要部品の内製化の推進。

海外展開・進出の潜在リスク

・予期しない法令や規制の変更。

・予期しない政治的経済的変動。

・人財の採用・確保・育成難。

・社会的共通資本(インフラ)の整備遅

れ。

・テロ・争乱・その他の社会的混乱。

・専門的な能力を備えた現地スタッフの採

用。

・現地弁護士等、外部専門家からのアドバイ

ス。

・現地ソサエティ等を活用した情報収集と分

析。

・事業活動を通じた地域貢献と納税。

・拠点間の連携によるバックアップ体制の整

備。

製品の品質

車載関連ビジネスを中心におく事業変革・意識変革を推進している当社において、車載向け製品の品質を高めることは経営戦略の根幹です。当該経営戦略に伴って、以下のリスクがあります。

・顧客品質要求を充足できないリスク。

・大規模な製品クレームやリコール、製造物責任に繋がるような重大な欠陥リスク。

・原材料の品質不良を原因とする完成品の欠陥。

・品質人財育成と品質を重視した組織風土の醸成。

・一般車載品質管理から「より高度な品質管理」へ転換するための体制・仕組みの構築。

・各拠点を含むクロスファンクショナルチームによるグローバル品質改善活動。

・仕入れ先の品質管理モニタリング。

・戦略的パートナー(仕入れ先)との関係強化。

・新規の仕入れ先や業務委託先の調査。

国内外の競合状況と価格競争の動向

製品価格は、当社製品の需要を決定する重要な要素であり、経営戦略において重要な要素です。当該経営戦略に伴い、主に以下のリスクがあります。

・競合会社による競争力ある製品の発売。

・競合会社との価格競争激化。

・低価格品への需要シフト。

・商品のコモディティ化による価格の低下。

・VE/VAによる継続的なコスト削減。

・高付加価値製品の開発とマーケティング(「音と振動によるソリューション」の提供)。

・価格・品質・納期・技術・サービスでの差別化。

・知財活動による企業価値の維持と向上。

・基幹部品の内製化によるコストダウン。

公的な規制への対応

法的規制・制限

・事業・投資に関する各国の法改正、安全保障貿易その他の輸出規制、関税その他の輸出入制限(米国関税政策による直接的な関税負担の発生、間接的な需要動向への影響、貿易摩擦に起因した部材仕入れへの制約)等。

・通商、独占禁止、特許等知的財産権、消費者、租税、為替管理、情報セキュリティ、環境・リサイクル関連の法規制の適用。

・コンプライアンス委員会、安全衛生委員会等による教育研修。

・内部通報制度の整備と運営。

・グローバルな販売構成、「価格連動制」に準じた丁寧な顧客交渉、製造拠点のスピーディーな移管やロジスティクスの機動的な見直し等によるリスクの低減。

・先願調査、侵害調査の周知徹底による知的財産権侵害リスクの低減。

・環境マネジメントシステムに基づき、定期的なアセスメントによる環境関連法の順守徹底と規制変化への対応。

・サイバーセキュリティリスクを想定した情報セキュリティの構築。

金利上昇リスク

・金利上昇に伴う支払利息の増加リスク。

・取引先の与信リスク。

・資本コスト上昇リスク。

 

・長期短期資金調達の最適化。

・売上債権、棚卸資産及び仕入債務の回転期間の最適化。

・与信管理の強化。

・最適資本負債構成の検証と対応。

10

情報セキュリティに関するリスク

事業の円滑・効率的な運用等を目的として、ITシステムの利活用及びDXの推進は重要な経営戦略です。当該経営戦略に伴い主に以下のリスクがあります。

・サイバー攻撃等によるシステム障害、業務停滞リスク。

・個人情報・機密情報等の情報漏洩等のリスク。

・サプライチェーン情報セキュリティ脆弱リスク。

・情報セキュリティ規程の整備・適宜更新。

・外部機関によるネットワークの脆弱性検査と対策。

・セキュリティシステムの強化。

・従業員に対しての標的型攻撃メール訓練。

・従業員への研修やモラル教育等による情報管理の重要性の周知徹底。

・サプライチェーン全体の情報セキュリティ体制のモニタリング強化。

11

気候変動に関するリスク

気候変動への取組みは地球規模での課題であると同時に企業の使命です。持続的な成長に向け環境に配慮したモノづくりは当社の重要な経営戦略です。当該経営戦略に伴い主に以下のリスクがあります。

・脱炭素社会に向けたコストの増加及び企業ブランドの毀損による販売機会の逸失。

・異常気象による原材料の高騰。

・異常気象による罹災への対処が遅れ工場操業停止やサプライチェーンの寸断による製品サービス供給停止。

・サステナビリティ委員会、環境委員会を中心とする対策強化。

・国際要請の確認及び環境目標の適宜見直し及び推進。

・「資材費・部材費の高騰リスク」参照。

12

為替の変動

・海外拠点における現地通貨の下落により、子会社の業績や企業価値が下がるリスク。

・海外拠点における現地通貨の上昇により、現地人件費など製造コストが上昇するリスク。

・外貨建債権・債務のアンバランスにより、換算差損が生じるリスク。

・円安進行により輸入用在庫の粗利益が減少するリスク。

・各国為替相場のモニタリングと為替予約やデリバティブの活用。

 

13

人財確保・育成

企業価値を高め持続的な成長を実現するためには、多様な価値観や専門性を持った人財が必要不可欠であり、人財戦略は重要な経営戦略です。当該経営戦略に伴い主に以下のリスクがあります。

・少子高齢化や雇用環境の変化等により、当社の求める人財の確保やその定着・育成が計画通りに進まない。

・労働市場の状況により、必要なタイミングに必要な能力を有する人財を確保できない。

・優秀な人財の社外流出。

・人財育成がうまくいかず、技術の承継ができなくなる。

・個々人の価値観を尊重し、多様性を受け入れる文化を醸成するため、Foster Rhythm(行動基準及び大切にする価値観)を整備し、普及させる活動を継続。

・「働き方改革」の推進により、ワークライフバランスを実現できるさまざまな勤務形態や休暇制度の選択肢を提供。

・モチベーション向上につながる人事処遇制度の確立。

・専門性を重視した中途採用。

・幹部人財の育成と後継者計画プログラムの強化。

・ダイバーシティの推進。

・国籍を問わないグローバル人財の登用。

・健康経営の推進。

・ハラスメント教育や内部通報制度の整備。

14

災害等による影響

・地震、洪水、停電等の災害の発生。

・重大事故の発生。

・感染症の拡大。

・地域や事業に応じたBCP(事業継続計画)を策定。

・早期復旧体制の整備(被災時の初期対応、報告、方法、各種対策本部の設置、役割の明確化等)。

・ウイルス感染を防止する職場環境の整備と新しい勤務体系の提供。

15

減損会計の適用による影響

・減損損失の計上。

・設備投資委員会の運営(投資回収性等の審査や経過管理)。

・各子会社の業績モニタリングと兆候の有無の確認。

16

税務に係るリスク

・追徴課税

・税務アドバイザー等、外部専門家からの助言。

・BEPS文書の整備と更新。

・移転価格ポリシーの整備や移転価格契約の締結・更新。

・バイラテラルAPAの締結。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。

 

(1)経営成績等の状況の概要

① 業績の概要

 当期における世界経済は、紛争、政権交代等の地政学リスクの高まりが継続する状況下、日本の政策金利は引上げられる一方、先進国では断続的に利下げが行われ、為替相場は大きく変動し、中国経済の減速懸念、異常気象等、先行き不透明な状況が続きました。

 当社グループが注力する自動車関連市場では、電気自動車(EV)へのシフトが減速する等、市場全体でも自動車販売が伸び悩む中、当社グループは長年培ってきた車載向けスピーカの品質を強みとして、車載関連ビジネスの受注を増やすことに注力しました。また、需要予測の精度を高め、最適な生産体制と在庫量の保持に努め、原価改善施策も継続的に推進しました。

 以上の結果、当期連結業績における売上高は137,607百万円(前期比12.4%増)、営業利益は6,796百万円(前期比54.0%増)、経常利益は7,726百万円(前期比79.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は3,902百万円(前期比69.3%増)となりました。

 

セグメント別の業績は、次のとおりです。

 

[スピーカ事業]

 前期に発生した一部顧客における在庫調整が無くなり、また中国において一部の自動車メーカー向けのスピーカ販売が好調だったこと等から、売上高は114,521百万円(前期比15.5%増)となりました。損益面では、利益率の高いスピーカ販売が増加したことおよび継続的な原価改善策の結果、営業利益は6,362百万円(前期比50.8%増)となりました。

 

[モバイルオーディオ事業]

 民生用のアクチュエータが計画を上回る出荷となった一方、車載用ヘッドホンの販売減少等により、売上高は12,893百万円(前期比9.2%減)となりました。これに対し、損益面では、売上減少影響あるも利益率の高い製品販売でカバーしたこと等から、営業利益は641百万円(前期比5.6%増)となりました。

 

[その他事業]

 小型音響部品事業、「フォステクス」ブランドの製品を含むその他事業は、接近通報音スピーカ等の販売が堅調だったことから、売上高は10,192百万円(前期比12.3%増)となりました。一方、損益面では、前期から取り組んでいる構造改革における在庫処理等の影響により、207百万円の営業損失(前期は営業損失412百万円)となりました。

 

(注)上記セグメント別の売上高は、セグメント間取引消去後の数値で記載しています。

 

② 販売の状況

 当連結会計年度における販売の状況は下記のとおりです。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

スピーカ事業

114,521

15.5%

モバイルオーディオ事業

12,893

△9.2%

その他事業

10,192

12.3%

合計

137,607

12.4%

 

スピーカ事業           車載用スピーカ・スピーカシステム、テレビ用スピーカ等の製造・販売

モバイルオーディオ事業      ヘッドセット、ヘッドホン、イヤホンドライバ、振動アクチュエータ等の製造・販売

その他事業            接近通報音用スピーカ、車両緊急通報システム用スピーカ、「フォステクス」ブランド製品の製造・販売等

(注)1 受注高、受注残高及び生産高につきましては、主として見込生産方式を採用しているため、記載を省略しています。

2 セグメント間の取引については相殺消去しています。

 

(2)財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

 経営者の視点による当社グループ(以下「当社」)の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中における今後又は将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日(2025年6月25日)現在において当社が判断したものです。

 

① 重要な会計方針及び見積り

 当社の連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。この財務諸表の作成に際し、決算日における資産・負債の報告金額及び偶発債務の開示、ならびに報告期間における収益・費用の報告金額に影響を与えるような見積り・予測が必要とされます。当社経営陣は、継続的に、過去の実績や状況に応じ合理的と判断される範囲での様々な仮定に基づきその見積り・予測を評価します。その様な評価の結果は、他の方法からは即時に判定しえない資産・負債の簿価あるいは収益・費用の報告金額についての判断の基礎となります。実際の結果は、見積特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。当社は、以下の重要な会計方針が、当社の重要な判断と見積りに大きな影響を及ぼすと考えています。

a 棚卸資産

収益性の低下による簿価切り下げの方法により棚卸資産を評価しており、一定の期間を超えて受払いがなかった棚卸資産について、その滞留期間に応じて規則的に帳簿価額を切り下げる処理を行っております。顧客と連携して製品の需要予測を行うことで在庫数量の管理を行っておりますが、製品需要はその販売市場における景気や消費者動向等の外部環境の影響を強く受けることから、滞留在庫の評価には多くの不確実性を伴い、受注減や過剰在庫など、棚卸資産の評価に影響を与える事象が発生する可能性があります。

b 投資有価証券

 長期的な取引関係の維持等のために、特定の金融機関及び取引先等に対する非支配持分を所有しています。これらの株式は、価格変動性が高い公開会社の株式です。公開会社への投資の場合、決算日における株価が取得価額を50%以上下回った場合及び2期連続して取得価額を30%以上下回り、かつ、回復する見込みがあると認められない場合に評価損を計上しています。将来の市況悪化又は投資先の業績不振により、現在の簿価に反映されていない損失または簿価の回収不能が発生した場合、評価損の計上が必要となる可能性があります。

c 貸倒引当金

 顧客等の支払不能時に発生する損失の見積額について、貸倒引当金を計上しています。顧客等の財務状況が悪化しその支払能力が低下した場合、追加引当が必要となる可能性があります。

d 固定資産の減損

 固定資産の減損会計の適用に際し、独立したキャッシュ・フローを生み出す最小単位でグルーピングし、収益性が著しく低下した資産グループについて、固定資産の帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しています。回収可能価額は、将来キャッシュ・フロー、割引率、正味売却価額等の前提条件に基づき算出しているため、この前提条件に変更が生じた場合、減損損失の計上が必要となる可能性があります。

e 繰延税金資産

 繰延税金資産については、将来の課税所得を検討することによって回収可能性のある金額を検証しており、繰延税金資産の全部又は一部を将来実現困難と判断した場合は、相応の評価性引当額を計上しています。これは財務諸表上、法人税等調整額として表示され、当期純利益を減額させることとなります。

 

② 財政状態の分析

 総資産は、主に売掛金の増加により前連結会計年度末に比べ4,078百万円増加して106,826百万円となりました。

 主な増減の内訳ですが、流動資産は、受取手形及び売掛金の増加等により、4,120百万円増加の83,045百万円となりました。また、固定資産は42百万円減少の23,780百万円となりました。

 負債は、短期借入金の減少等により前連結会計年度末に比べ334百万円減少して38,094百万円となりました。純資産は、主に利益剰余金の増加により前連結会計年度末に比べ 4,412百万円増加して68,731百万円となり、また自己資本比率は前連結会計年度末比0.5ポイント増加の57.0%となりました。

 

③ 当連結会計年度の経営成績の分析

 (1)経営成績等の状況の概要① 業績の概要 をご参照下さい。

 

④ キャッシュ・フローの分析

 当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ3,737百万円増加し、当連結会計年度末には20,771百万円となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。

 

a 営業活動によるキャッシュ・フロー

 営業活動による資金の増加は、仕入債務の増加等により14,831百万円(前年同期は、15,428百万円の資金の増加)となりました。

 

b 投資活動によるキャッシュ・フロー

 投資活動による資金の減少は、設備投資等により844百万円(前年同期は、8,539百万円の資金の減少)となりました。

 

c 財務活動によるキャッシュ・フロー

 財務活動による資金の減少は、短期借入金の減少等により9,884百万円(前年同期は、4,440百万円の資金の減少)となりました。

 

 当社のキャッシュ・フロー関連指標の推移は、次のとおりです。

 

2021年

3月期

2022年

3月期

2023年

3月期

2024年

3月期

2025年

3月期

自己資本比率

65.6%

54.7%

55.0%

56.5%

57.0%

時価ベースの自己資本比率

37.6%

18.6%

27.5%

27.4%

27.0%

キャッシュ・フロー対有利子負債比率

7.0

△1.0

49.2

1.1

0.6

インタレスト・カバレッジ・レシオ

10.9

△163.6

0.7

23.9

23.2

(注)1.自己資本比率:自己資本/総資産

2.時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産

3.キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー

4.インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い

※各指標は、いずれも連結ベースの財務指標により計算しています。

※株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式総数により計算しています。

※キャッシュ・フローは連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しています。有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としています。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しています。

 

⑤ 資本の財源及び資金の流動性

a 資本政策の基本方針

 当社は、持続的な成長による企業価値及び株主価値の向上を図るため、資本効率の向上と財務の安定性のバランスを考慮し、資本政策を実施します。

 また、適時適切な情報開示や投資家との積極的な対話等のIR活動を通じて資本コストの低減に努めると同時に、資本と負債の最適な構成に鑑み資本効率を高めていきます。

 

b 利益配分に関する基本方針

 当社は、利益配分について、企業価値の向上を経営課題としつつ、業績に対応した利益配分と長期的な視野に立った内部留保の充実との調和を図りながら、総合的に株主利益の向上を図ることを基本的方針とし、連結ベースでの配当性向30%以上を目標としています。

 

 C 資金の流動性

 2026年3月期の設備投資は約50億円、研究開発費は約34億円を予定しており、所要資金については自己資金及び借入金を充当する予定です。また、(連結貸借対照表関係)及び(貸借対照表関係)に記載のとおり、コミットメントライン契約を締結しております(当連結会計年度末融資枠設定金額8,000百万円、提出日現在融資枠設定金額8,000百万円、当連結会計年度末借入実行残高-)。

 事業展開に伴う所要資金に対する機動的な対応のため、また不確実性が高まる環境下での不測の事態に備えて、十分な現金及び現金同等物を保有しています。現金及び現金同等物の保有額については厳密な目標水準を定めていません。

 

⑥ 経営方針・経営戦略・経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標

 当連結会計年度の連結業績目標の達成状況は以下のとおりです。

 当社は、当期を最終年度とした中期財務目標として売上高1,200億円、営業利益50億円、営業利益率4.2%を設定していましたが、当期は、自動車関連市場で電気自動車(EV)へのシフトが減速する等、市場全体でも自動車販売が伸び悩む中、当社グループは長年培ってきた車載向けスピーカの品質を強みとして、車載関連ビジネスの受注を増やすことに注力し、また需要予測の精度を高め、最適な生産体制と在庫量の保持にも努め、原価改善施策も継続的に推進した結果、売上高、営業利益、営業利益率の全項目にて目標を達成しました。

 なお当社は、新たな中期事業計画における財務目標として、2028年3月期(連結)売上高1,500億円・営業利益90億円・営業利益率6.0%・ROE8.0%を設定し、この目標を達成させるための成長戦略として、「モビリティ関連ビジネス」と「コンシューマ関連ビジネス」の2つの柱を掲げ、更なる成長の実現に向け取り組んで参ります。

 

 

2021年3月期

2022年3月期

2023年3月期

2024年3月期

2025年3月期

売上高(百万円)

85,220

91,106

121,338

122,447

137,607

営業利益(百万円)

0.7

△7,757

2,445

4,412

6,796

営業利益率(%)

0.0

2.0

3.6

4.9

 

5【重要な契約等】

製造委託契約

 製造委託契約は下記のとおりです。

フォスターエレクトリックCo.,(ホンコン)Ltd.は2023年6月30日に番禺旧水坑五金綜合総廠との来料加工契約を終了し、2023年7月1日に広州豊達電機有限公司が広州市番禺区旧水坑豊達電機廠と製造委託契約を締結しました。

 

6【研究開発活動】

 当社グループの研究開発活動体制は、前年度に引き続き新たなマーケットの創造と共に、自動運転、EV化など自動車業界の変革への対応、及びウェアラブル/ヒヤラブル製品の進化を目指し、要素技術開発を行う開発部、短中期的要素技術開発・商品開発を行う技術本部のスピーカ分野・モバイルオーディオ分野・振動デバイス分野・小型音響変換器分野の技術部門、プロ用機器の開発を主に担当するフォステクス・カンパニーの技術部門、およびこれらと密接に連携する各国製造・販売子会社の技術部門により役割構成され、デファクト・スタンダードを目指してグローバルな開発活動を推進しております。

 

 また、製造に関する要素技術・設備開発は、製造本部の技術部門が統括して海外の生産技術部門と連携して、グローバルな開発活動を展開しております。

 

 当期の研究開発活動は、新市場や高まる環境対応への継続的な取り組みと共に、AVAS/eCall向けを含む高音質で高品質な音響デバイス・音響システムの基礎開発・応用開発・製品開発、高度な車室内外音響の解析手法の開発及び、製造設備開発に一貫して取り組み、音響機器専門メーカとして顧客ニーズを的確に捉えた商品開発を目指して参りました。

 

 当連結会計年度における研究開発費は、3,391百万円であります。技術分野別の主な成果は以下のとおりです。

 

1.カーオーディオ分野

・原価低減、軽量化を目的に部品、製品の標準化の推進

・顧客・地域別に車両での音響提案活動の推進

・重低音を追求した小型サブウーファ/再生方法の開発

・生産効率化・環境対応のための機械/省人化、エージングレス設計を推進

・EV、HV車向け軽量・小型・省スペーススピーカの開発

・シームレスな車室内立体音響をつくる、多様なスピーカとアクチュエータの開発

・1シート・1システムのパーソナル音響空間を実現する高音質シートシステムデバイスの開発

・リアシートエンタテインメント向けBluetoothワイヤレスヘッドホンの開発

・eCall用及び自動車メーター用の低振動スピーカの開発

・AVAS用スピーカシステムの開発

 

2.情報通信機器分野

・車載及び社会インフラ向けアクティブ・ノイズキャンセル付きヒアラブルデバイスの開発

・車載及び社会インフラ向け生体情報取得機能付きヒアラブルデバイスの開発

・Gaming向け RPドライバー搭載 ヒアラブルデバイスの開発

・高音質ヘッドホン用小型ドライバーユニットの開発

・高音質ヘッドホン用RPドライバーユニットの開発

・ヒアラブルデバイス用小型ドライバーユニットの開発

・AR/VR用小型ドライバーユニットの開発

 

3.プロ用機器、市販オーディオ分野

・組込用小型スピーカーユニット「C045A8」の開発

・RPステレオ・ヘッドホン「T50RPmk4」の開発

・アクティブ・スピーカー「PM0.1BD」の開発

・フラッグシップ・ヘッドホン「TH1000 RP」「TH1100RP」の開発

・限定製品 フルレンジ「FE203Σ-RE」の開発

・パッシブ・ニアフィールド・モニター「NF06」の開発

・スピーカーシステム「GS103A-VB」の開発

・ネットワーク用フィルムコンデンサー「CXシリーズ」の開発

・ゲーミング・ヘッドホン「T50RPmk4g」の開発

・限定製品 ホーンスーパーツィーター「T90A-ST」の開発

 

4.その他

・車載用HMI目的の振動デバイスの開発。

・AR/VRゲーミング機器へ向けた振動デバイスの開発。

・VOC削減・生産性向上の為のスピーカ組立工法の開発。

・接近通報用スピーカの特殊振動板開発。

・振動機能付きスピーカの開発(2in1)