当社グループにおける経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は次のとおりです。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
当社グループは、「『誠実・創造・挑戦』をモットーに地球環境保全と豊かで人にやさしい社会環境の実現に貢献します」を経営理念としています。そして、「水・大気・医療・ガス」の4本柱で成長製品を創出し、ステークホルダーの皆さまに支持される企業を目指しています。その実現を図るため中期経営計画を策定し、成長戦略を着実に推進し、企業価値の向上に努めていきます。
今後の見通しについては、原材料やエネルギー価格、物流費などの製造コストが依然として上昇傾向にあり、引き続き厳しい状況が予想されます。一方で、当社グループが事業展開する計測機器市場は、世界的な脱炭素を中心とした環境保全への取り組みとともに環境法規制が一層強化されていることから、今後も中長期的に拡大傾向が継続すると見込んでいます。
その中でも、当社グループの計測機器が使われている水道・電力や医療などの社会インフラ市場では、省人化や業務の効率化の観点から、現場設備のリモート監視などの新たなニーズが高まっています。また脱炭素、農業・漁業・医療など環境・社会課題に向けて創出される新市場においても計測需要が見込まれ、ニーズが多様化しています。このような市場の変化に対応し、国内外での事業を拡大するためには、一層のスピード感をもった成長分野への経営資源シフトが必要となります。
また、気候変動対応などの環境経営、人的資本の充実、コンプライアンスの徹底、情報セキュリティなどリスク管理の強化などESG経営の継続的な推進も最重要課題のひとつと考えています。
「持続的な企業価値の向上」と「持続可能な地球環境・社会づくりへの貢献」の両面で、今まで以上にサステナブルな経営が求められていると認識しています。
当社グループの経営目標を達成する上での客観的な指標は、売上高、営業利益、自己資本利益率です。当社グループは、持続的成長と企業価値向上を目指し、中期経営計画(2022年度~2024年度)の達成に向けて一丸となって取り組んでいますが、中国経済停滞の影響により、海外売上高が大きく減少傾向となっています。この状況を踏まえ、中期経営計画の定量目標の達成は厳しいと判断し、最終年度である2024 年度の目標を修正し、売上高180億円、営業利益15億4千万円としました。新棟※、DX、人的資本などの投資費用が大きいことから減益予想としていますが、中期経営計画の諸施策に継続して取り組み、最終年度をしっかり締めくくる所存です。
※狭山インテグレーションセンター(埼玉県狭山市)が2024年6月に竣工
2024年度予測
当社グループは、サステナブルな地球環境・社会づくりに貢献する企業として、持続的成長と企業価値向上を目指し、中期経営計画(2022年度~2024年度)の最終年度として着実に施策を実行してまいります。
具体的には、国内では、継続して堅調な需要が見込まれる半導体設備や公共インフラの更新の受注獲得に加え、新市場(エネルギー関連産業、陸上養殖等)の積極的な開拓やアフタービジネスの拡大を展開し、2023年度を上回る、過去最高の売上高を更新する計画です。海外では、中国に次ぐ安定した売上が確保できる市場として東南アジアやインドでの事業展開を活発化し、売上高の回復を目指します。
また、2024年6月に竣工した狭山インテグレーションセンターにおいて、開発部門と生産部門との緊密な連携を目指し、東京エンジニアリングセンターの応用分析計の設計及び製造機能を移転・統合します。これによりシームレスな開発と生産を実現し、生産性向上・コストダウン、開発期間短縮による競争力強化を図ります。
さらに、研究開発やDX推進、人的資本投資など、将来の成長に向けた投資を着実に実行し、2025年度を初年度とする次期中期経営計画で売上高200億円を目指す体制を整備してまいります。
<中期経営計画の要諦>
① 社会の潮流変化に即応した製品・サービスの開発・提供
② 満足感の高い製品・サービスの提供を通じたお客さまから一番に選ばれる会社の実現
③ アジアを中心に更に広い地域のお客さまに満足を提供
④ 高い成長実現に向けた経営基盤の整備とブランド力の強化
⑤ ESG経営への持続的取り組みと、多様な人財が活躍・成長できる企業風土の醸成
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりです。 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
当社グループは、経営理念実現のため、社会課題や事業環境の変化を中期経営計画に反映し、事業活動を通じて課題の解決に取り組むESG経営を実践しています。
<サステナビリティ基本方針>
当社は、経営理念のもと、ESGの取り組みを積極的に推進し、すべてのステークホルダーとの共存共栄を図ります。
「すべてのステークホルダー」を「六方よし」の概念に基づき、「お客様」「お取引先様(サプライヤー)」「株主」「従業員」「地域社会」「地球環境」と定義しました。「六方よし」に取り組むことが、企業価値の向上、経営体質の強化、事業リスクの低減、そして新たな事業機会の発掘につながると考えています。ESGの各方面において社会的責任を果たし、「持続可能な社会の実現」と「グループの持続的な成長」の両立を目指します。
当社グループは、東亜ディーケーケー企業行動憲章を基軸とし、事業を通じてサステナビリティ課題に取り組んでいます。企業行動憲章は、企業理念の実践に向け、すべての事業活動において遵守すべき行動規範を定めています。各規範に基づき、法令・規則を遵守し、環境保全関連企業として高い倫理観を持って行動することを促しています。
またグループ全体でサステナビリティの推進を加速するため、サステナビリティ委員会を設置しています。代表取締役社長を委員長とし、複数の取締役及び関連部門の責任者を中心に構成されており、原則年2回開催しています。同委員会には下部組織として「気候変動・脱炭素対応分科会」、「人的資本経営推進分科会」を含む4つの作業部会を置き、重要テーマについてスピード感をもって取り組む体制を整えています。サステナビリティに関する重要な事項はサステナビリティ委員会、経営会議を経て、取締役会に付議又は報告の上決定します。その他、サステナビリティ委員会から取締役会への定期的な報告や勉強会を通じて、取締役会による適切な監督が行えるよう体制を整えています。
当社グループは、国内外の環境行政に適合する環境計測機器・アフターサービスの提供を通じて、地球環境保全に貢献する事業を強力に推進しています。省試薬・省エネルギー等環境調和に配慮した製品開発に継続的に取り組むほか、環境・社会が抱える課題(ニーズ)や新技術の進展を踏まえた開発ロードマップを作成し、研究開発を進めています。また、気候変動を含むサステナビリティ課題の様々なリスクと機会を踏まえて中期経営計画を策定しており、現行計画には「ESG経営への持続的取り組み」と「多様な人財が活躍・成長できる企業風土の醸成」を掲げています。今後も様々な環境・社会課題に関わるリスクと機会への対応力を強化し、リスクの低減に努めるとともに、社会課題を解決する新たな事業活動を通じて、サステナビリティ経営のレベルアップに努めてまいります。
<気候変動関連>
当社グループは、気候変動に伴うリスク及び機会を経営戦略上の重要な要素の一つと認識しています。リスクとしては、自然災害による自社を含むサプライチェーンの停滞があります。また、当社グループの計測機器は、水道、電力、医療等、ライフラインに関わる施設で重要な役割を果たしていることから、災害発生時にはその影響を最小限に抑えるため、BCPの策定に取り組んでいます。その一環として、緊急時に主要製品の代替生産が可能な狭山インテグレーションセンターを2024年6月に建設しました。その他のリスクとしては、炭素税の導入や再生可能エネルギー賦課金の上昇等により部材・エネルギー・物流コストの増加が想定されますので、仕入先・輸送ルートの最適化や自家発電・省エネ設備の導入にも取り組んでいます。一方、脱炭素社会への動き、特に脱炭素技術(アンモニア・水素を燃料とした火力発電、バイオマス発電等)の進展は市場拡大の機会と捉え、販促及び技術開発に注力しています。また、環境配慮型設計の製品開発等による他社製品との差別化は継続的に推進しています。
<人的資本・多様性関連>
経営理念「誠実・創造・挑戦」を具現化できる「誠実な人間性」「豊かな創造性」「旺盛なチャレンジ精神」を備えた人材を当社グループの求める人材像と位置づけ、以下の方針のもと、人材の多様性の確保を含む人材の採用・育成及び社内環境の整備に取り組んでいます。
・人材採用・育成方針:高い専門性と倫理観を持ち、創造的かつ自律的に行動する人材を採用・育成します
3つの重点施策 ・新卒、経験者を問わず能力・意欲ある人材の積極採用・登用
・専門分野別・職能階層別の教育及び知見・技術の継承
・自己啓発支援(リスキル支援含む)及びキャリア形成支援
・働きやすい職場環境づくりの方針:多様な価値観を有する人材が能力を発揮できる社内環境の整備を推進します
3つの重点施策 ・人権を尊重し、差別的な取り扱いのない職場の形成
・良好な労使関係の維持と、社員一人ひとりが活躍できる職場環境の整備
・社員の安全と健康経営の更なる推進
「リスク管理規程」に基づき、コンプライアンス委員会が中心となり、リスク管理体制の整備と運用を図っています。毎年、事業の特性や外部環境の変化を踏まえ、全社的なリスク項目を網羅的に洗い出し、その影響度と発生頻度を評価し、リスクマップを作成しています。特に重要なリスクについては対応策を経営会議で確認し、グループ全体でリスクの低減に取り組み、発生した場合の諸施策を整備しています。そして、内部監査部門は、各部門及び関係会社のリスクが適切に管理されているかを個別にヒアリングし、その結果を取締役会に報告しています。また、市場環境や社会情勢から事業拡大につながる事象を「機会」と捉え、中期経営計画を始めとする事業計画に適宜反映しております。
2024年3月、ESG経営の深化を図るため、「解決すべき社会・環境課題」と「当社グループの事業成長」の観点から優先的に取り組む課題として以下4つの項目をマテリアリティ(重要課題)として特定しました。そして2024年度中に、これらのマテリアリティを実現するため、取組テーマ毎の評価指標(KPI)及び目標を設定します。

なお、サステナビリティの取り組み状況については、外部評価機関の審査(EcoVadis社の審査でブロンズ評価を獲得)を受け、その結果をもとに改善を図っています。
<気候変動関連>
当社グループは、温室効果ガス(GHG)排出量をモニタリング指標として事業活動による環境負荷低減に取り組んでいます。Scope1※1については、2022年度より排出量の算出及び発生原因分析を行っており、排出量の削減を目標としています。Scope2※2については、2021年10月に「再エネ100宣言RE Action※3」に参加し、2021年度以降は目標である実質ゼロ化を達成しています。またScope3※4については算定に向け準備を進めています。
※1 Scope1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)
※2 Scope2:他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出
※3 再エネ100宣言RE Action:2050年までに企業や自治体、教育機関、医療機関等が使用電力を100%再生可能エネルギーに転換する目標を表明し、行動していく枠組み
※4 Scope3:Scope1、Scope2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)
<人的資本・多様性関連>
上記「(2)戦略」において記載した人材の多様性の確保を含む人材育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針に関する主な指標と実績は次のとおりです。各指標に応じた具体的な数値目標は今後設定してまいりますが、性別や国籍、新卒・経験者採用等の属性を問わず能力に応じた人材登用を引き続き進めてまいります。
※女性活躍推進法:女性の職業生活における活躍の推進に関する法律
当社グループは、グループ各社がそれぞれ独自に人事制度を整備しているため、現時点では連結会社ベースで人的資本管理関連指標のデータ管理を行っていません。そのため、人的資本・多様性関連の指標は、その所属する従業員数の連結グループの従業員数に占める割合の最も高い提出会社単体の数値を記載しています。
経営者が当社グループの業績、財務状況等に重要な影響を及ぼす可能性があると認識している主なリスクは、以下のとおりです。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであり、当社グループに関する全てのリスクを網羅したものではありません。
当社グループは、環境・プロセス分析機器の売上割合が大きく、この分野での法規制の動向、製品需給の変動により業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、各種業界団体及び関連協会等に加盟し、各委員会等に積極的に参加することで、環境にかかる法改正や市場動向にかかる情報を収集するとともに、それらを速やかに経営層、関係部門に展開し共有する体制を構築しています。
また、当社グループは、賃貸ビルほかを所有し不動産賃貸事業を行っています。テナントの退去等が発生した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、不動産管理会社と月1回定例の打合せを行い、テナントに関する情報を共有しています。
当社グループは、生産活動において様々な部材・資材を使用しており、調達先を複数確保するなど安定的な部材の調達に努めています。しかし、部材メーカーの高齢化及び事故等による供給の遅延・中断の影響から生産活動に支障をきたす可能性があり、その結果、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。当社グループは、主要部品の内製化及び代替品の活用等の対策を実行し、製品納期確保・利益確保に努めています。
また、部材・輸送価格の上昇が継続しており、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。事業計画策定においては一定のコスト上昇を織り込んでいますが、想定を超える価格上昇が当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、コスト低減活動の継続や調達価格高騰の適切な販売価格転嫁などの対策を行っています。
当社グループは、ハック・カンパニーと国内総代理店契約を締結しています。同製品の輸入に際しては米ドル建ての決済をしているため、想定以上の為替相場の変動により業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、為替予約によりリスクヘッジをしています。
大規模な自然災害やパンデミック等が発生した場合、生産活動の停止、部材・資材調達の遅延またはシステム障害、さらには修復・生産工場等の代替に伴う費用負担等が発生し、当社グループの経営成績、財務状況等に影響を与える可能性があります。当社グループでは、このような事態に備え、災害発生時の影響を最小限に抑えるため、緊急連絡網を整備し、BCPの策定を推進しています。
また、当社グループは、従業員に新型コロナウイルスやインフルエンザ等の感染症が拡大した場合、一時的に 操業を停止するなど、当社グループの経営成績、財務状況等に影響を与える可能性があります。当社グループで はこれらのリスクに対応するため、感染予防や感染拡大防止に対して適切な管理体制を構築しています。新型 コロナウイルス感染症への対応につきましては、感染防止に取り組み、影響の極小化を図っています。
当社グループは、市場動向、技術動向を分析し新技術や新製品の研究開発に努めています。しかし、急速な技術の進歩により当社の相対的な優位性が低下した場合や、新製品の市場投入が遅延・中止する可能性も考えられ、結果として当社グループの業績に影響を与える可能性があります。当社グループは、当該リスクを最小化するため、中長期的な開発ロードマップを適時改訂するとともに、技術者の計画的な育成やオープンイノベーションの推進等を図っています。
当社グループは、お客様、仕入先ほか利害関係者との間で、取引にかかる様々な契約を締結していますが、契約の履行や取引の条件などを巡って利害関係者と見解が食い違うなどした場合、損害賠償請求などにより業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、取引に当たっては法務部門を通じて法律事務所の見解、確認を得ること等により、相互の解釈に法的な齟齬のないよう対応を行っています。
当社グループは、国内外の品質基準を遵守し、すべての製品・サービスの信頼性を維持するために万全の品質保証体制を整えていますが、予期せぬ欠陥等により製造物責任が発生する可能性があります。当社グループでは製造物責任賠償の保険に加入していますが、当該保険ですべての賠償額をカバーできる保証はなく業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、「品質一番」宣言の周知でグループ全従業員の意識向上を図るとともに、製造物責任問題を未然に防ぐために、各種規程類を制定し、また、社長直轄の品質保証部を設置し、製品の安全設計と品質の維持管理を図っています。
多様かつ有能な人材を安定的に確保することが、当社グループの持続的成長のみならず将来の事業継続に関わる重要課題と認識しています。特に日本国内においては少子高齢化に伴う労働人口の減少等もあり、必要な人材を継続的に獲得するための競争は厳しさを増していくと予想されます。新卒・経験者を問わず年間を通じた採用活動や、教育研修等を通じた人材育成の取り組みに加え、定年退職者再雇用制度の改定による人材の活性化やグループ間での人事交流による最適配置を行っています。その他、人事評価や処遇の改善を通じた従業員エンゲージメントの向上やワークライフバランスに配慮した働きやすい職場環境の整備等、積極的に人的資本の充実化に取り組んでいます。
当社グループは、事業活動を通じて入手した顧客や取引先の個人情報及び機密情報や、設計・技術・営業等に係る機密情報を多数保有しています。そのため、サイバー攻撃などによるコンピュータウイルスの感染、不正アクセスや盗難、その他不測の事態により個人情報や機密情報が消失、もしくは社外に漏洩する可能性があります。また、当社グループの事業活動において、情報システムの利用とその重要性は増大しており、コンピュータウイルスその他の要因によってかかる情報システムの機能に支障が生じた場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、外部環境との接続にはファイアウォールを設置し、加えて適切なアンチウイルスソフトの導入などで対策するとともに、外部環境への接続制限や従業員への教育等を通じた情報セキュリティの維持・向上を図っています。
当社グループは、国内外において販売代理店契約を結び事業展開しており、代金後払いで製品を販売している場合があります。契約店の財政状態が悪化し、債権の回収不能が発生した場合には、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、契約店の財政状態・業績等に応じた与信設定等を通じて信用リスクの回避には細心の注意を払っています。また、万一、契約店において法令に違反する行為があった場合、当社グループの信頼性やブランドイメージが低下する恐れがあります。当社グループは、契約店との信頼関係の構築に努めるとともに、指導・教育の充実を図っています。
当社グループでは、公正な競争に関する規制及びその他商取引、環境、安全、労働、知的財産権、会計基準及び租税等の各種法令諸規則の適用を受けています。これらの法令諸規則またはその運用にかかる変更は、当社グループの事業活動への制約、法令遵守対応にかかる費用の増加または法令諸規則違反による当社グループへの過料賦課若しくはこれに関連する民事訴訟の提起等がなされた場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、東京証券取引所や金融庁等、当局の公表文書を注視するとともに、各種業界団体及び関連協会に加盟することで各種法改正にかかる情報を入手し、それらを速やかに経営層、関係部門に展開し共有する体制を構築しています。
当社は、ハック・カンパニー(以下「ハック」といいます。)と2005年11月21日付で業務及び資本提携契約を、更に2010年12月3日付で同契約の補訂合意書を締結し、ハックが当社議決権の33.4%以上を保有しています。当社は経営方針及び事業展開の意思決定において独立性・自律性を保っていますが、ハックは当社の筆頭株主として議決権行使等により当社の経営等に影響を及ぼし得る立場にあり、同社の利益は当社の他の株主の利益と一致しない可能性があります。
なお、営業面ではハックの国内総代理店としてハック製品の更なる販売拡大を図るとともに、ハックの販売網を活用して中国市場等の開拓を進めるほか、研究開発面でも既に共同開発で一定の成果を上げており、引続き次世代の新製品開発に共同で取り組むことに合意しています。しかしながら、今後、かかる業務提携が当初期待していた成果を出せない場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、ハックとの定期的な情報交換やミーティングの開催等で、随時、相互の意思を確認し、良好な関係の構築に努めています。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度の業績は、売上高は17,444百万円(前期比5.5%増)となりました。利益につきましては、営業利益は1,768百万円(前期比7.2%増)、経常利益は1,849百万円(前期比6.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,292百万円(前期比6.1%増)となりました。
セグメント毎の経営成績は次のとおりです。
(計測機器事業)
当事業の売上高は17,201百万円(前期比5.5%増)、セグメント利益は2,678百万円(前期比9.1%増)となりました。
(不動産賃貸事業)
当事業の売上高は243百万円(前期比0.1%増)、セグメント利益は141百万円(前期比0.5%増)となりました。
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ2,325百万円増加の29,043百万円となりました。これは、建設仮勘定が2,012百万円、投資有価証券が1,795百万円、電子記録債権が790百万円、棚卸資産が548百万円それぞれ増加し、現金及び預金が2,691百万円、売掛金が176百万円、繰延税金資産が133百万円それぞれ減少したことなどによります。
当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ42百万円増加の6,674百万円となりました。これは、繰延税金負債が461百万円、未払消費税等が185百万円それぞれ増加し、支払手形及び買掛金が597百万円減少したことなどによります。
当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ2,283百万円増加の22,369百万円となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ1,941百万円減少し、3,550百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
営業活動によるキャッシュ・フローは、165百万円の収入(前期307百万円の収入)となりました。主な要因は、税金等調整前当期純利益1,839百万円、仕入債務の減少額617百万円、法人税等の支払額601百万円、売上債権の増加額598百万円、棚卸資産の増加額548百万円、減価償却費510百万円、退職給付に係る負債の減少額156百万円です。
投資活動によるキャッシュ・フローは、1,729百万円の支出(前期374百万円の支出)となりました。主な要因は、有形固定資産の取得による支出2,337百万円、定期預金の払戻による収入750百万円、無形固定資産の取得による支出132百万円です。
財務活動によるキャッシュ・フローは、376百万円の支出(前期553百万円の支出)となりました。主な要因は、借入による収入650百万円、借入金の返済による支出618百万円、配当金の支払額354百万円です。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 金額は販売価格によっています。
b.受注状況
主として受注見込みに基づく生産を行っていますが、特別仕様品については、受注生産を行っています。
当連結会計年度の受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 金額は販売価格によっています。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 販売実績が総販売実績の10%以上となる相手先はありません。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
①当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度(2023年4月1日~2024年3月31日)におけるわが国経済は、底堅い雇用・所得環境が改善する中で緩やかな回復基調が続きました。しかしながら、世界的な金融引締めに伴う海外景気の下振れや物価上昇等により先行きは依然として不透明な状況が続いています。
このような環境のもと、当社グループは中期経営計画の2年目として、製品開発を含む市場別重点施策を進めるとともに、経営基盤の強化に向けた積極的な投資を着実に実行しました。国内では、半導体関連を中心とした旺盛な設備投資や、公共インフラの活発な更新の需要獲得に注力しました。海外では、中国・韓国・台湾など主要市場での拡販に加えて、タイに新たな拠点を開設し、東南アジアでの販売を強化するとともに、国家認証の取得などにも継続的に取り組みました。部材不足の解消が進み、生産状況が回復したこともあり、国内売上高は過去最高を更新したものの、海外売上高は中国経済停滞の影響を受け減少しました。
以上の結果、当連結会計年度の売上高は17,444百万円(前期比5.5%増)となりました。利益につきましては、製造原価低減への取り組みや販売価格改定の効果により、営業利益は1,768百万円(前期比7.2%増)、経常利益は1,849百万円(前期比6.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,292百万円(前期比6.1%増)となりました。
セグメント毎の経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
(計測機器事業)
環境・プロセス分析機器
この分野は、基本プロセス計測器、環境用大気測定装置、煙道排ガス用分析計、ボイラー水用分析装置、上下水道用分析計、環境用水質分析計、石油用分析計等です。
国内においては、半導体関連の旺盛な設備投資需要や浄水場等公共インフラの活発な更新需要を取り込み大幅増収となりました。一方海外では、特に注力しているインドネシアやインドでの販売が好調に推移したものの、中国経済停滞の影響により中国政府主導の環境水質計案件が大幅に減少し減収となりました。これらの結果、当分野の売上高は6,194百万円(前期比7.2%増)となりました。
科学分析機器
この分野は、ラボ用分析機器、ポータブル分析計等です。
当分野は、部品調達難の解消により販売数量が回復し、売上高は1,137百万円(前期比8.3%増)となりました。
医療関連機器
この分野は、粉末型透析用剤溶解装置等です。
当分野は、新機種の販売を前に、従来機種のOEM在庫調整があり、売上高は891百万円(前期比13.2%減)となりました。
産業用ガス検知警報器
この分野は、バイオニクス機器株式会社が製造・販売する産業用ガス検知警報器です。
当分野は、国内販売は増加したものの、海外販売が低調に推移し、売上高は350百万円(前期比7.7%減)となりました。
電極・標準液、保守・修理、部品・その他
この分野は、前記環境・プロセス分析機器、科学分析機器、医療関連機器の分野における全製品群の補用品類、現地調整・定期点検及び修理、補用パーツ等に該当するものです。
これらアフタービジネス分野につきましては、設備稼働維持のための保守点検が計画どおり実施され、また価格改定の浸透が進んだことにより、売上高は8,627百万円(前期比7.0%増)となりました。
以上の結果、当事業の売上高は17,201百万円(前期比5.5%増)、セグメント利益は2,678百万円(前期比9.1%増)となりました。
(不動産賃貸事業)
東京都新宿区の本社に隣接の賃貸ビル1棟ほかを所有し、不動産賃貸事業を行っています。当事業の売上高は243百万円(前期比0.1%増)、セグメント利益は141百万円(前期比0.5%増)となりました。
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりです。
経営方針・経営戦略、経営目標の達成状況を判断するための客観的な指標は、売上高、営業利益、自己資本利益率(ROE)です。2024年3月期の達成状況は以下のとおりです。
(注)2024年3月期の計画値は、2023年4月28日に公表した当初の通期業績予想数値です。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローは、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1)経営成績等の状況の概要②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、運転資金需要のうち主なものは、材料や商品の仕入のほか、製造費、販売費及び一般管理費の営業費用です。投資を目的とした資金需要は設備・IT投資、製品開発、国内外の新市場開拓、人的資本投資などです。短期運転資金及び設備投資資金の調達は自己資金を基本としていますが、状況に応じて金融機関からの借入も検討しながら、事業運営上必要な資金の流動性と資金の源泉を安定的に確保することとしています。
当社グループの配当政策につきましては、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」に記載のとおりです。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しています。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いていますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しています。
業務及び資本提携契約の締結
2005年11月から、ハック・カンパニー(以下「ハック」といいます。)との業務及び資本提携の契約を締結しています。
2010年12月、ハックとの間で、業務及び資本提携に関する補訂合意(以下、「本補訂合意」という。)を締結しています。本補訂合意によって、当社及びハックは、ハック(その関係会社を含みます。以下同じ。)が33.4%以上の議決権を保有している限り、①当社は、当社が企図する時期において新株発行等を行わないことが当社の財務状況に重大な影響を及ぼすと合理的に認められる場合を除き、同社の同意なしに、同社の議決権保有割合を低下させる新株発行等を行わないこと、②当社が同社の議決権保有割合を低下させる新株発行等を行う場合、同社は33.4%の議決権保有割合を維持するために必要な新株の割当等を当社に請求できること、③ハックは、上限3名までの当社の取締役候補者を、当社の取締役会の決議に付すために上程することができ、当社は、当該候補者が当社の企業価値の向上に寄与すると合理的に判断される場合、当社の取締役会の決議を経て、これらの者を当社の株主総会の議案として上程するものとすることを合意しています。
当社グループでは、開発研究センターをグループ全体の技術中枢として位置付け、新たな計測技術の研究と独創的な製品の開発に取り組み、新商品を国内外の市場へ提供しています。
同センターでは、製品開発を行うほか、お客様が実際に使用している環境大気測定用コンテナ局舎や、バッテリーバックアップ付き水道水用水質自動測定装置(屋外キュービクル)等の施設も併設し、新製品の紹介・展示、技術サービスのトレーニング等を行うとともに、世界各国からの視察団やJICA等の国内外の政府機関からの見学者や研修者を受け入れるなど、多方面にわたる活動を展開しています。
さらに医療関連機器の開発は、同センター敷地内に所在する臨床医療用関連機器専用の開発・製造設備を持つ医療関連機器生産棟にて取り組んでいます。
現在、狭山テクニカルセンター内に新生産棟を建設中ですが、本生産棟は開発製品の完成度を極限まで高め、生産子会社の生産ラインへ引き渡すための当社マザー工場となることを目標とするとともに、開発から生産までの一気通貫体制の構築を推進してまいります。
開発技術本部では、基礎技術研究と製品開発を合わせて行う技術頭脳集団として、国際競争力を強化し、知的財産権の取得強化、国際認証取得、開発スピードアップ、品質改革、新たな計測技術の獲得と実用化、さらには、脱炭素化への取り組み等を通じた環境保全に寄与する計測機器の研究開発、並びに医療関連事業を通じて社会貢献を果たしてまいります。
また、継続して進めている製品のモデルチェンジは、デザインや操作方法などの共通化を推進することでシリーズ化を図るとともに、当社のブランディングにも繋がるように、省資源・省電力のコストパフォーマンスと、使い易さに重点を置いた製品の開発に配慮しています。
なお、当連結会計年度の研究開発費
この分野は主として基本プロセス計測器、環境用大気測定装置、煙道排ガス用分析計、ボイラー水用分析装置、上下水道用分析計、環境用水質分析計、石油用分析計等を扱っており、プラントでの運転管理や品質管理、工場からの放流水や排ガス等の監視などの「生産管理用プロセス計測器」や「環境保全用計測器」の開発と改良を行っています。
基本プロセス計測器では、pH計の最上位機種である「自動校正機能付きpH計」のモデルチェンジが完成し販売を開始しました。チップ交換式電極やIoT通信機能搭載のCALMEMO-pH電極も使用できるようになりました。また、主要な計測器の本質安全防爆取得も継続して行ってまいります。
環境用大気測定装置では、中国での「VOC測定装置」の国家認証試験に合格し、中国国内でのフィールド試験も問題なく終了しました。今後は販売活動を推進するとともに、各種大気測定装置の中国、韓国、東南アジア市場からの多様な技術的要望等に対応してまいります。また、グローバル展開を見据えた国際規格である米国EPA認証取得も新たに進めています。昨年度は「オゾン計」の認証取得したことから、インドなどの東南アジア諸国への応用展開を進めてまいります。
上下水道用・環境用水質分析計では、上水道向け水質計の海外市場向け展開を図ると同時に、年々要求精度が厳しくなっている中国環境水質分析計に対応した新型の「全窒素・全りん自動測定装置」を開発し、国家認証試験に合格しました。
更に、当社のオンリーワンセンサにIoT通信機能を搭載したデジタル濁度センサ、デジタル残留塩素センサ、デジタルpHセンサを海外での上水・環境水マーケット向けに発売しグローバルな市場に広く役立つことを目指しています。
この分野は主としてラボ用分析機器、ポータブル分析計などを対象として測定ニーズの多様化に合わせた商品展開を行っています。
ラボ用分析機器では、「自動滴定装置」のモデルチェンジ製品の計量法型式取得が終了しましたので、より広いマーケットへの展開が期待されます。
ポータブル水質計では「ポータブル多項目水質計」の上市を完了し、陸上養殖などの新分野への応用展開を進めてまいります。
この分野は主として粉末型透析用剤溶解装置などを取り扱っています。
医療関連機器では、主力である粉末型透析用剤溶解装置の市場要求を受けたモデルチェンジを順次進めています。また、生物発光法による「エンドトキシン計」が高感度・短時間測定で好評です。エンドトキシン計のラインナップ拡充を図るため、更なる測定時間短縮と簡便操作を実現し、販売を開始しました。ポータブル型エンドトキシン計についても生物発光法の利点について市場のご理解が得られ好評をいただいています。さらに、エンドトキシン測定技術(生物発光法)の新たな応用分野の開拓に注力中です。また、その他の医療関連機器の開発も順調に進行しています。
この分野は、主に化学工業や半導体産業で使用される毒性ガスや可燃性ガス等が漏えいした際に検知をするガス検知警報器を対象とし、商品展開を行っています。
重点テーマとして定電位電解式ガスセンサの開発、吸引式ガス検知部のモデルチェンジに取り組んでいます。