第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営方針

当社グループは「可能性の追求を通して、総合的な高度技術により、情報社会の発展に寄与する」ことを企業理念とし、「CREATIVE  CONNECTIVITY -Challenge, Creativity, Solutions」をSMK's Visionとして掲げております。クリエイティブで柔軟な発想を持ち、失敗を恐れず果敢にチャレンジし、社会やお客様の様々な課題を解決していくソリューションを提供してまいります。同時に持続的な企業活動の基盤となる人材の多様化と育成を進め、より良い社会と未来の創出に貢献できる企業を目指し、中長期的な企業価値の向上に努めてまいります。

 

(2) 中長期的な経営戦略

当社グループは2025年4月に創立100周年を迎えます。1925年の創業以来、「良い部品は良いセットを作る」という創業の精神のもと、電機メーカーをはじめとする多くのお客様に対して、魅力ある製品やサービスを提供してまいりました。当社を巡る事業環境は、車載市場におけるCASEの進展、情報通信市場における5Gの普及、IoT技術の急激な進化、カーボンニュートラルへの対応など著しく変化しております。また、テクノロジーの進展により技術はますます高度化し、エレクトロニクス活用のすそ野も大きな広がりを見せております。これらの環境変化に適確に対応し、次の100年に向けて飛躍を遂げるために、2035年の「ありたき姿」を明確化した長期ビジョン「あらゆるユーズを実現する“ものづくり力”で、次の100年に貢献する」を策定しました。そして、この「ありたき姿」を実現するために中期経営計画「SMK Next100」(2025年3月期~2027年3月期)を策定しました。中期経営計画を着実に実行し、長期ビジョンの達成と持続的な企業価値向上を目指してまいります。

中期経営計画「SMK Next100」の詳細は、当社ホームページにて開示しております。

https://www.smk.co.jp/company/ir/

 

当社グループは、持続的な成長・発展を実現するため、既存事業の拡大は勿論のこと、新規市場での事業拡大および新規事業創出の取り組みを積極的に進めると共に、企業体質の強化を進めてまいります。

具体的には、開発・設計・生産・販売・物流等の各方面における合理化、中長期的な市場および生産性の見直しによる事業の再編成、効率的かつ強力な営業体制の整備、多面的な業務提携の検討、さらには自然災害の事業活動への影響を最小限に抑えるリスク対策として事業継続マネジメント(BCM)を、グループ全体で対応しております。

開発・設計プロセスの改善として、2021年に3D CADの最新版への更新、3Dプリンターの積極的な活用、フロントローディング型製品開発の推進とそのITシステム導入を進めております。

生産体制につきましては、固定費削減を含む生産の効率化を図るとともに最適地生産体制のレビューを継続してまいりました。これらの生産基盤強化に加えIoT活用によるスマート工場の実現に向けた取り組みを推進しております。今後も、新技術・新生産技術の開発などの活動をグループ全体としてより強化してまいります。

環境保全活動では、カーボンニュートラルを最重要課題と認識し、2045年にカーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)を実現する目標を設定しました。温室効果ガス削減のため、太陽光発電設備の導入や再生可能エネルギー電力メニューの契約などを順次進めております。2023年2月にひたち事業所、3月に富山事業所、8月にフィリピン、11月にマレーシア、2024年4月にメキシコに太陽光発電設備を導入してまいりました。また、循環経済、カーボンニュートラルに資するものとして、3R(Reduce/Reuse/Recycle)推進に加え、省エネルギー・高効率化、製造工程の負荷低減等の実現を目指した製品の環境配慮設計を行っており、これからも引き続き推進してまいります。

企業の社会的責任(CSR)につきましては、従来から企業理念・企業行動憲章を制定し、社会に貢献し評価される企業づくりを目指しております。2006年4月には社員行動規範を制定し、教育活動を含めSMKグループ全構成員にCSR・コンプライアンスの徹底を図っております。企業に求められる社会的責任が時代とともに変化してきたことに対応し2024年4月に「社員行動規範」を改定いたしました。

当社グループでは持続的な成長と中長期的な企業価値向上のために管理体制の充実を図っております。2008年より適用開始された金融商品取引法における内部統制報告制度につきましては、2009年6月から財務報告に係る内部統制の有効性について内部統制報告書に開示しております。

また、東京証券取引所の「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」の中で、コーポレート・ガバナンス・コードへの対応を開示しており、コーポレート・ガバナンスを健全で効率的な経営を実現するための重要な仕組みと位置づけ、その充実・強化を図っております。

以上の取り組みを通じまして、SMKグループ一丸となって企業価値を高めるべく総力を尽くしてまいります。

 

(3) 目標とする経営指標

当社グループは適正利潤を伴う売上の継続的拡大を目的に経営に取り組んでおり、中期経営計画「SMK Next100」(2025年3月期~2027年3月期)の最終年度である2027年3月期において、売上高600億円、営業利益率3.5%、ROE(自己資本当期純利益率)5.0%を目標として掲げております。

 

(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

世界経済は、米国経済の底堅さや新興国経済の底堅い成長により、2024年は緩やかに回復する見通しであるものの、米国インフレの再燃リスク、中国経済の落ち込み、地政学リスクなど、依然として不透明な状況の継続が予想されます。当社グループは、斯かる環境下、お客様のニーズに適確に対応するとともに、積極的な新製品投入と一層の原価低減、経費削減に努めてまいります。

当社を巡る事業環境は、車載市場におけるCASEの進展、情報通信市場における5Gの普及、IoT技術の急速な進化など著しく変化しております。今期からの3年間を計画期間とする中期経営計画「SMK Next100」を着実に実行し、売上・利益の持続的成長の実現に向けた取り組みと経営基盤並びに資本・財務戦略の高度化を進め、企業価値の最大化を図ってまいります。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) サステナビリティ維持・向上に向けた取り組み

当社グループは、社長が統括する委員会が軸となり、サステナビリティに結びつく企業活動を推進しております。2005年4月に危機管理委員会を、2007年7月にはCSR委員会を設置しました。2024年7月にはこの2つの委員会を統合・改組し、CSR・サスティナビリティ委員会とすることとしました。また、人的資本の維持・拡充に関しては、人事委員会や人材開発会議等が活動の推進役となり、取締役会または執行役員会がこれを統括しています。

CSR・サステナビリティ委員会では、傘下の各委員会が、当社グループのサステナビリティとリスクマネジメント力向上を目的とした活動を推進し、企業価値向上に向けた取り組みを統括しています。

人事委員会と人材開発会議は、人事制度の改革と人材育成やダイバーシティーの推進を目的として、その中核的な機能を果たしております。

 

 

(2) 気候変動への取り組み

気候変動は経営の重要課題と位置付け、取り組み強化に努めております。また、当社グループはTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明しており、今後も開示情報の質と量の拡充に努め、ESG経営における説明責任を果たします。

 

① ガバナンス

当社グループでは、気候変動を含む地球環境に関するリスクを管理するために、CSR委員会の傘下に代表取締役副社長兼環境担当役員を委員長とし、事業部、生産事業所、その他関連部門の代表者で構成される「環境保全委員会」を設置しています。本委員会は定期的に開催され、グループ全体の環境保全活動状況を管理し、活動方針や指標などを審議します。また、各拠点や下部組織からの報告を受け、有用な情報や活動を水平展開しています。

 

② 戦略(リスク/機会)

気候変動に係る当社グループのリスクと機会を下記に記載します。

現在、TCFD提言におけるシナリオ分析を進めており、段階的に当社ウェブサイトにて開示してまいります。

区分

事業への影響

評価(注)

リスク

GHG

排出抑制

(政策・法規性/顧客要求)

高エネルギー効率設備や再生可能エネルギー発電所の投資負担

化石燃料使用停止への急激な方向転換によるエネルギー不足の生産活動への影響および電気コスト増大

温室効果ガス排出抑制義務の強化、再生可能エネルギー電力メニュー利用による電気コスト増大

カーボンニュートラル進行に伴って温室効果ガス排出枠低減によるクレジット選択肢の減少・価格上昇

市場・顧客の

行動変化

市場・消費者の好みの変化に追随できず収入減少

異常気象の増加

生産拠点の被災による生産能力の低下

 

機会

資源効率化/

エネルギー源/

レジリエンス

再生可能エネルギー発電所保有による温室効果ガス排出削減と電気コスト削減、レジリエンス強化

高エネルギー効率設備や省エネルギー活動推進による温室効果ガス削減

製品・サービス

/市場

低炭素社会・市場に向けた製品の開発・提供による収入増大

(再生可能エネルギー、テレワーク、EV、自転車など)

 

(注) 発生の可能性予測にて評価 大:ほぼ確実、中:50%以上、小:50%未満

 

③ リスク管理

気候変動に関するリスク管理は、取締役会、執行役員会、CSR委員会の傘下にある環境保全委員会で行っています。

 

●前記リスクに対応するため、当社グループは以下の施策を実施しています。

- 省エネルギー活動(高効率設備への投資、運用改善活動)の推進

- 再生可能エネルギー発電所の自社保有の推進、再生可能エネルギー電力の調達検討

- 低炭素社会に向けた製品(環境配慮製品)の開発・提供の推進

- 生産拠点の分散・最適化

 

●環境配慮製品について

当社グループは、低炭素社会に向けた製品を開発するため、経済産業省の省令等に基づき、環境配慮設計について当社グループ独自の基準を設けています。

具体的には、大きく4つのカテゴリーに分けています。

1.省エネルギー、高効率化した製品で、消費電力・待機電力の削減や耐久性能の向上など。

2.省資源化した製品で、小型化・軽量化・薄肉(うすにく)化や構成部品を削減したもの。

3.環境にやさしい製品で、リサイクル材使用、分解・修理の容易化、ハンダレス、メッキレスなど。

4.製造工程の負荷低減で、投入材料の削減、再利用の容易化など。

 

この他に、エネルギーマネジメント、再生可能エネルギー、省エネルギー家電、EV、自転車に用いられる製品も環境に貢献する製品として位置づけ、当該市場での貢献をめざしています。

 

④ 目標・指標

●カーボンニュートラル 中長期目標

当社グループは、中期経営計画においてScope1,2を対象としたカーボンニュートラル中長期目標を設定しています。

■ 長期目標  2045年度 カーボンニュートラル実現

■ 中期目標  2030年度 CO2生産高原単位 : 2020年度基準40.0%削減

 

カーボンニュートラル実現に向けては、省エネルギー設備および再生可能エネルギーの使用を全社一丸となり促進します。2023年度にはサプライチェーン排出量(Scope3)を開示しました。今後も協力会社様との連携を深めブラッシュアップし、CO2排出量削減に向けた課題抽出と解決に努めます。

 

■再生可能エネルギー導入実績

<太陽光発電設備の導入>

・富山事業所(2023年3月稼働)

・ひたち事業所(2023年2月稼働、2023年9月拡張)

・フィリピン工場(2017年11月稼働、2023年8月拡張)

・マレーシア工場(2023年11月稼働)

・メキシコ工場(2024年4月稼働)

<再生可能エネルギー電力メニューの契約>

・SMK Electronics (Dongguan) Co., Ltd.(2023年8月)

 

 

CO2排出量削減 ・省資源化

当社グループは、省エネルギー・省資源への取り組みとして、毎年単年度計画を制定して活動しています。

CO2排出量


 

※購入電力のCO2換算係数更新のため過年度実績を再算出しています。

 

 

廃棄物排出量

 


 

 

 

埋立処分量とリサイクル率

 


 

 

(3) 人的資本経営の取り組み

当社グループは「CREATIVE  CONNECTIVITY -Challenge, Creativity, Solutions」をSMK's Visionとして掲げ、社会やお客様の様々な課題を解決し、より良い社会と未来の創出に貢献することを目指しております。これを実現させるためには、多様な属性の社員一人ひとりが「自主・自助・自律」の精神に基づき主体的に行動し、個々の能力を最大限に発揮することが必要であり、具現化のためのガバナンス、リスク管理、戦略、指標と目標については次のとおりです。

 

① ガバナンス

当社グループでは、経営戦略に関わる人的資本投資については取締役会が審議・決定のうえ執行役員会に伝達し、グループ社員全般の人的資本投資については執行役員会で審議・決定しております。また、執行役員会の傘下には多様な人材の活躍支援を含む人事諸制度を審議する人事委員会と、人材育成やスキル向上を審議する人材開発会議を配しております。

人権尊重などの労働コンプライアンスと労働安全衛生については、取締役会、執行役員会の下部にあたる、TN事業所管理会議が担当しております。

 

② リスク管理

人的資本経営に関するリスク管理は下表のとおり行っております。

重要課題

関連するリスクと機会

(〇機会、●リスク)

リスク管理

多様な人材の活躍

●人材獲得競争の激化による採用コスト増加

●多様な人材の獲得が進まない場合の事業の機会損失

●多様な人材の登用が進まない場合の社員のモチベーション低下

〇多様な人材の登用によるビジネス機会創出

・グループ全体の多様な人材の採用や離職について執行役員会でモニタリングし、対応施策の検討を行う。

・グループ全体での多様な人材の登用制度を含む人事諸制度の実行状況について人事委員会でモニタリングし、人事諸制度の立案を行う。

人材育成

●人材育成や技能伝承が進まない場合の競争力低下

〇優秀な人材の定着

・グループ全体の人材育成施策の計画立案とその遂行状況について人材開発会議でモニタリングし、新たな施策の検討を行う。

安心・安全な労働環境

●労働コンプライアンスが守られない場合の企業の信用失墜

●労災事故の発生

●従業員の心身の健康が維持できない場合の損失発生

〇安心・安全な労働環境の確保による企業の信頼獲得と社員のモチベーション向上

・グループ全体の労働コンプライアンスの遵守や安全衛生および健康増進活動の実施状況についてTN事業所管理会議でモニタリングし、情報共有を行う。

 

 

 

③ 戦略

人的資本経営の推進にあたっては、SMK企業行動憲章第5条「従業員のゆとりと豊かさを実現し、快適で安全な職場環境を確保するとともに、従業員の人格、個性を尊重する。」を基本原則とし、下表の取り組みを行っております。

重要課題

方針

施策

多様な人材の活躍

社員一人ひとりの個性と人権を尊重し、多様な人材の登用を進める。

・外国人人材を含むトランスナショナル人材の採用・育成

・キャリア採用の拡充と活躍支援

・女性社員の活躍を支援するためのプログラムの実行

・社員エンゲージメント向上による離職率低減

人材育成

多様な人材の活躍を支援するための育成体制の整備。

・専門人材育成のための職能別教育の拡充

・トランスナショナル幹部社員育成教育の実施

・社員のリスキリングとDX人材の育成

安心・安全な労働環境

従業員のゆとりと豊かさを実現し、快適で安全な職場環境を確保する。

・労働コンプライアンス遵守のためのPDCAサイクルの展開

・安全衛生活動の強化

・健診受診率と再検査受診率の向上

・ワークスタイルの柔軟化を実現させるための環境整備

 

 

④ 指標と目標

重要課題

指標の内容

2023年3月期

実績

2024年3月期

実績

長期目標

(2035年)

多様な人材の活躍

①女性管理職比率(連結)(注1)

10.8

9.2

20.0%

②外国人管理職比率(連結)(注1)

22.3

22.5

30.0%

③中途採用管理職比率(連結)(注1)

50.0

53.5

67.0%

④離職率(単独)(注2)

3.0

2.4

2.5%

⑤離職率(連結)(注2)

4.7

3.1

4.5%

⑥障がい者雇用率(単独)

2.7

2.6

3.0%

人材育成

⑦一人あたり研修受講時間(連結)

21

33

30H

⑧一人あたり研修受講費用(連結)

8,072

10,856

12,000円

安心・安全な労働環境

⑨CSR研修受講率(連結)

99.1

99.9

100.0%

⑩労災発生件数(連結)

2

7

0件

⑪健診受診率(単独)

91.2

90.8

100.0%

 

(注) 1 トランスナショナル人事制度における部課長相当の比率

2 トランスナショナル人事制度における基幹社員(実務スタッフ~部長)の離職率。定年退職者を除く。

 

(4) その他のサステナビリティ項目への取り組み

当社グループでは、社会課題の解決と持続可能な社会の実現に向けて、上記の気候変動、人的資本への取り組みに加えて、コーポレート・ガバナンス体制の充実、サプライチェーン・マネジメントの強化、社会貢献活動への取り組み等を多角的に推進しています。詳細は当社ホームページにて開示しております。

https://www.smk.co.jp/csr/

 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 競合及び価格動向

電子部品業界は、国内外に多数の同業者が大手から中小まで様々な規模で存在する極めて競合的な業界であります。当社グループは継続的な開発投資により独自技術の蓄積と新製品・新技術の開発に努めておりますが、当社グループを超える高い独自技術によって競合他社が当社グループの市場シェアを奪う可能性があります。

また、競合的な市場であることから、当社グループもコストダウンや差異化商品の投入等により、利益確保に努めておりますが、採算性、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 海外展開

当社グループは、主にアジア・北米・欧州で事業展開しており、それぞれの地域における経済・政治・社会情勢の変化が業績に影響を及ぼす可能性があります。

また、各国・地域の法令・規則等の各種規制に従って事業を行っておりますが、予期せぬ変更や新たな適用により影響を受ける可能性があります。

(3) 為替レートの変動

当連結会計年度の売上高に占める海外売上高の割合は約7割であり、米国ドル建てを主として取引をしております。為替予約などにより相場の変動リスクをヘッジしておりますが、為替変動による影響を完全に排除することは難しく、一般に、円高に振れた場合には利益は減少いたします。

(4) 原材料等の調達と価格変動

当社グループは、原材料や一部部材を外部業者より調達しております。これら外部業者とは安定供給のための協力関係を築いておりますが、需要の急激な変動に伴う供給元からの調達難や仕入価格上昇が発生した場合、生産遅延やコスト上昇により、業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対して、当社グループでは、サプライチェーンマネジメントの強化に取り組み、代替調達先の確保や長期供給契約の締結等によって部材の安定的な確保に努めております。

(5) 事業提携・資本提携及び企業買収

当社グループは、戦略的な事業提携・資本提携及び企業買収を推進し、提携先・買収先との相乗効果による企業価値の最大化に取り組んでおりますが、提携先・買収先の企業や対象事業などを取り巻く事業環境が悪化し、当初想定していた成果や相乗効果を得られない場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(6) 環境保全及び環境関連の規制の強化

当社グループは、「SMKグループ環境憲章」のもと、環境に配慮した製品づくりや温室効果ガス・廃棄物排出の削減に取り組み、また、環境関連の規制を遵守して事業活動を推進しております。しかしながら、不測の事態により環境汚染につながる事象が発生した場合、早急に事態を収束するための対策費用が発生する可能性があります。また、環境関連の規制の強化・変更により、新たな規制への対応費用が発生する可能性もあります。

カーボンニュートラル推進においては、2045年にカーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)を実現する目標を設定し、2021年にグループ内横断のカーボンニュートラル・タスクフォースを立ち上げて取り組みを進めております。これに伴い、再生可能エネルギー発電所への投資や低CO2電気メニューの採用により新たな負担が発生する可能性があります。また、電力供給会社の温室効果ガス削減推進の影響を受け、産業共通のインフラとしてのエネルギー供給が不安定になり、当社グループが最も多く使用するエネルギーである電力のコストが上昇し、新たな負担が発生する可能性があります。

(7) 情報セキュリティ

当社グループは、電子情報を保護し管理を徹底するため、「SMK電子情報セキュリティポリシー」を制定し、外部からの社内情報システムへの不正アクセス又は不正操作に対処する侵入防止策を講じるとともに、内部監査や情報セキュリティ教育などを通して、情報漏洩対策の強化を推進しております。また、営業秘密や個人情報、知的財産についても、規程・運用方針などを整備してその保護に努めております。しかしながら、これら情報が漏洩するなどの情報セキュリティ問題が発生した場合、事業活動に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8) 災害等の発生

当社グループは、地震等の自然災害や感染症の流行等による事業活動の低下を最小限にとどめるために、事業継続計画(BCP)の策定を進め、国内外の各拠点における防災対策や、災害発生時の他の拠点での代替生産や調達先の変更などへの対応に取り組んでおります。しかしながら、想定を超える大規模災害等が発生した場合、生産設備の破壊、物流機能の麻痺などにより、事業活動に影響を及ぼす可能性があります。

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 経営成績及び財政状態の状況

当連結会計年度における世界経済は、サービス分野のリバウンド需要、底堅い個人消費の下支えなどにより比較的安定した動きとなりました。一方、ウクライナ情勢やイスラエル・ハマス紛争による地政学リスクの高まり、中国における不動産市況低迷を要因とした景気減速など先行きの景況感は依然不透明な状態が続いております。製造業においては半導体・原材料調達難は解消方向に転じましたが、市場の在庫調整は依然として継続しました。また、日米の金利差を反映し、一段と円安が進行することとなりました。

当電子部品業界におきましては、全体的に市況は低調に推移しました。車載市場では、半導体不足の緩和に伴い回復軌道に向かいましたが、在庫調整の影響により力強い回復には至りませんでした。情報通信市場では、スマートフォン、タブレットなどは欧米における買い替えサイクルの長期化、中国経済の低迷などにより低調に推移しました。家電市場では、住宅設備機器、エアコンなどが巣ごもり需要の反動減やサービス消費へのシフトなどに伴う在庫調整により低調に推移しました。産機市場は半導体関連などの一部で需要増はあるものの、FA・設備関連が中国経済の減速などにより低調に推移し、総じて厳しい状況が続きました。

当社グループでは、部材の安定調達を徹底し、顧客需要に即応した安定的な製品供給を維持すると共に、積極的な新製品の投入とコスト削減に努めたものの、家電市場及び車載市場における主要得意先の在庫調整が想定以上に継続したこと、情報通信市場における主要得意先の新製品立ち上げが遅れたことから、当連結会計年度の売上高は465億2千2百万円(前期比15.2%減)、営業損失は12億4千3百万円(前期は営業利益11億2千8百万円)となりました。経常利益は2億2千6百万円(前期比91.0%減)、親会社株主に帰属する当期純損失は4億8千9百万円(前期は親会社株主に帰属する当期純利益13億3千4百万円)となりました。

 

セグメントの業績は、次のとおりです。

 

(CS事業部)

コネクタは、車載市場においては、カメラ関連が堅調に推移したことに加え、電装品関連などが拡大したことにより、前年を上回りました。情報通信市場では、米国顧客向けタブレット関連の需要が減少しましたが、中国顧客向けスマートフォン関連の需要が年間を通して好調を維持し、前年を上回りました。一方、家電市場ではアミューズメント関連が市場の在庫調整の影響で前年を下回りましたが、CS事業部全体としては前年を上回る結果となりました。

この結果、当事業の売上高は205億8千6百万円(前期比2.9%増)、営業利益は10億9千5百万円(前期比22.5%増)となりました。

 

 

(SCI事業部)

家電市場では、主力のリモコンにおいてサニタリー用は順調に拡大しましたが、住設・エアコン用は市場での販売不振の影響を受け、前年より縮小しました。また、車載市場では、主要顧客の在庫調整が想定以上に継続し、操作ユニット・タッチセンサーが前年より縮小しました。

SCI事業全体として、市場の落ち込みおよび主要顧客の在庫調整が想定よりも長期化したことが響き、前年を下回る結果となりました。

この結果、当事業の売上高は255億3千6百万円(前期比25.9%減)、営業損失は21億4千5百万円(前期は営業利益3億9千3百万円)となりました。

 

(開発センター)

開発センターの主力事業、無線通信モジュールの売上の中心であるBluetooth®モジュールにおいて、決済端末用、医療機器用は前年を割り込みましたが、モバイルプリンター用は拡大しました。また、Sub-GHz RFモジュールについても、照明機器用が拡大し、開発センター全体として前年を上回る結果となりました。

この結果、当事業の売上高は3億8千7百万円(前期比14.2%増)、営業損失は1億8千4百万円(前期は営業損失1億6千万円)となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物は、期首残高から12億8千2百万円増加し、101億9千7百万円となりました。

当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、前期と比較して、1億2千7百万円増加し、37億1千9百万円の流入となりました。

当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、前期と比較して、3億2千7百万円増加し、16億1千7百万円の流出となりました。

当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、前期と比較して、3億8千3百万円増加し、4億7千8百万円の流出となりました。

 

③ 生産、受注及び販売の状況

  a. 生産実績

  当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

生産高(百万円)

前年同期比(%)

CS事業部

16,560

2.6

SCI事業部

21,003

△32.1

開発センター

291

△6.8

 報告セグメント計

37,854

△20.1

その他

3

0.1

合計

37,858

△20.1

 

(注)当連結会計年度において、SCI事業部の生産実績(前年同期比32.1%減)が著しく減少しております。減少の背景につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 経営成績及び財政状態の状況」に記載のとおり、家電市場及び車載市場における主要得意先の在庫調整などの影響によります。

 

  b. 受注実績

  当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

CS事業部

20,340

10.2

6,219

7.3

SCI事業部

23,302

△27.5

7,497

△22.4

開発センター

2

△99.3

209

△64.8

 報告セグメント計

43,645

△14.5

13,926

△13.2

その他

7

△58.6

合計

43,653

△14.5

13,926

△13.2

 

 

  c. 販売実績

  当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

CS事業部

20,586

2.9

SCI事業部

25,536

△25.9

開発センター

387

14.2

 報告セグメント計

46,510

△15.2

その他

11

△50.1

合計

46,522

△15.2

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 経営成績及び財政状態の状況に関する認識及び分析・検討内容

 (経営成績)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減

 

金額
(百万円)

売上比
(%)

金額
(百万円)

売上比
(%)

金額
(百万円)

売上比
(%)

1.売上高

54,842

100.0

46,522

100.0

△8,320

0.0

2.営業費用合計

53,714

97.9

47,765

102.7

△5,948

4.8

 ①材料費

26,890

49.0

21,183

45.5

△5,706

△3.5

 ②外注加工費

1,098

2.0

640

1.4

△457

△0.6

 ③労務費

17,329

31.6

16,815

36.2

△514

4.6

 ④経費 

5,902

10.8

5,635

12.1

△267

1.3

 ⑤減価償却費

2,712

4.9

2,276

4.9

△435

0.0

 ⑥在庫増減

△219

△0.4

1,213

2.6

1,433

3.0

3.営業利益又は営業損失(△)

1,128

2.1

△1,243

△2.7

△2,371

△4.8

4.営業外損益
  内為替差損益

1,375

720

2.5

1.3

1,469

1,089

3.2

2.3

94

368

0.7

1.0

5.経常利益

2,503

4.6

226

0.5

△2,277

△4.1

6.特別損益

△597

△1.1

△280

△0.6

317

0.5

7.税金等

571

1.0

435

0.9

△136

△0.1

8.親会社株主に帰属する

    当期純利益又は

  親会社株主に帰属する

    当期純損失(△)

1,334

2.4

△489

△1.1

△1,824

△3.5

 

 

売上高は、家電市場及び車載市場における主要得意先の在庫調整や、情報通信市場におけるコロナ禍の巣ごもり需要の反動減によるタブレット関連の需要減により、前連結会計年度を下回りました。営業利益は、プロダクトミックスや継続的な原価低減活動等による変動費率の改善、固定費の抑制に努めましたが、売上高の減少に加えて回収が見込まれない棚卸資産の評価損6億8千4百万円の計上により前連結会計年度に比べて減少し、営業損失は12億4千3百万円となりました。

営業外損益の主なものは、為替差益、不動産収支であります。2023年3月末が1US$=133.53円、2024年3月末が1US$=151.41円と為替レートの円安が進行し、主に当社の保有する外貨建ての債権、債務を期末時点で評価したことによる為替差益が発生し、経常利益は2億2千6百万円となりました。

特別損益の主なものは、固定資産売却益、投資有価証券売却益、減損損失であります。親会社株主に帰属する当期純損失は4億8千9百万円となりました。

 

 

 (財政状態)

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減

流動資産

33,251

33,824

572

固定資産

23,113

24,619

1,506

総資産

56,365

58,444

2,079

負債

24,090

26,300

2,210

純資産

32,274

32,143

△131

自己資本比率

57.3

55.0

△2.3%

 

 

流動資産は、前連結会計年度末に比べて1.7%増加し、338億2千4百万円となりました。これは、現金及び預金が12億8千9百万円増加、商品及び製品が8億5千3百万円減少したことなどによります。固定資産は、前連結会計年度末に比べて6.5%増加し、246億1千9百万円となりました。これは、投資その他の資産が17億1千万円増加したことなどによります。

この結果、総資産は、前連結会計年度末に比べて3.7%増加し、584億4千4百万円となりました。

流動負債は、前連結会計年度末に比べて5.1%減少し、153億7千1百万円となりました。これは、短期借入金が6億5千万円減少したことなどによります。固定負債は、前連結会計年度末に比べて38.4%増加し、109億2千9百万円となりました。これは、長期借入金が21億5千9百万円増加したことなどによります。

この結果、負債合計は、前連結会計年度末に比べて9.2%増加し、263億円となりました。

純資産合計は、前連結会計年度末に比べて0.4%減少し、321億4千3百万円となりました。これは、利益剰余金が14億7千6百万円、自己株式が4億9千8百万円それぞれ減少し、為替換算調整勘定が6億5千2百万円、退職給付に係る調整累計額が8億7千6百万円それぞれ増加したことなどによります。

 

なお、今後の見通しにつきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。

また、当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

 (経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等)

当社グループは前中期経営計画(2022年3月期~2024年3月期)の最終年度である2024年3月期において、売上高607億円、営業利益率5.0%、ROE(自己資本当期純利益率)8.0%、ROA(総資産経常利益率)6.0%、期末有利子負債残高100億円を目標として掲げておりましたが、情報通信市場の5G、ウェアラブル等の新市場拡大が遅れていることや市況悪化による需要減により、当連結会計年度においては、売上高465億円、営業利益率△2.7%、ROE(自己資本当期純利益率)△1.5%、ROA(総資産経常利益率)0.4%、期末有利子負債残高143億円となりました。

次期においては、新たに策定した中期経営計画「SMK Next100」(2025年3月期~2027年3月期)を着実に実行し、最終年度である2027年3月期において、売上高600億円、営業利益率3.5%、ROE(自己資本利益率)5.0%を達成するために、売上・利益の持続的成長の実現に向けた取り組みと経営基盤並びに資本・財務戦略の高度化を進め、企業価値の最大化を図ってまいります。

 

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 (キャッシュ・フローの状況)

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減

営業活動によるキャッシュ・フロー

3,591

3,719

127

投資活動によるキャッシュ・フロー

△1,944

△1,617

327

財務活動によるキャッシュ・フロー

△862

△478

383

現金及び現金同等物

8,915

10,197

1,282

 

 

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、前期と比較して、1億2千7百万円増加し、37億1千9百万円の流入となりました。

主に、減価償却費24億5千1百万円、棚卸資産の増減額14億4千万円による流入によるものです。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、前期と比較して、3億2千7百万円増加し、16億1千7百万円の流出となりました。

主に、有形固定資産の取得による支出23億7千9百万円による流出によるものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、前期と比較して、3億8千3百万円増加し、4億7千8百万円の流出となりました。

主に、借入金の純増減額15億8百万円による流入、自己株式の取得による支出4億9千8百万円、配当金の支払額9億8千4百万円による流出によるものです。

 

 (資本の財源及び資金の流動性)

当社グループの運転資金需要のうち主なものは、材料の仕入のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資、投資有価証券の取得等によるものであります。当社グループは、事業運営上必要な資金の流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資や長期運転資金の調達につきましては、金融機関からの長期借入を基本としております。

なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は143億6千5百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は101億9千7百万円となっております。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項) 4.会計方針に関する事項」及び「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

5 【経営上の重要な契約等】

経営上の重要な契約の締結等は行われておりません。

 

 

6 【研究開発活動】

当社は企業理念である「可能性の追求を通して総合的な高度技術により、情報社会の発展に寄与する」を基本精神として、研究開発活動を進めております。「CREATIVE CONNECTIVITY ―Challenge, Creativity, Solutions」をSMK's Visionとして掲げ、社会やお客様の課題に対するソリューション提案・付加価値提案のための研究開発を継続的に進めています。目覚ましく進歩するデジタル化・IoT化によって社会の利便性が益々高まっており、ユーザビリティや耐環境性能など、お客様の新たなセットの価値創出に貢献していくことを目指しています。

開発センターは独自性のある高付加価値技術で社会課題へのソリューション提案となる先進的な開発を行い、各事業部門では電子情報産業分野における技術・商品開発を推進し、コアテクノロジーの深耕と新耕に注力しております。生産技術センターでは各事業部・事業所と連携し、トランスナショナルの製造現場における自動化の向上とIT技術の導入による無人化・生産性の向上を進めており、自社内での自動化・省力化設備の開発と製作、稼動データ収集システムを活用した設備の予兆保全にも取り組んでいます。また、技術管理部では研究開発・設計開発環境の向上を目指して、開発ツール・ソフトの高度化やシミュレーション技術の向上、当社が創造した知的財産の適切な保護とその活用を進めています。

開発体制は、国内3拠点の他に、米国・メキシコ・中国・シンガポールとグローバルな拠点展開を行い、本社をセンター機能として各拠点間で双方向の連携を図っています。各開発拠点は、その地域でのワンストップソリューション(営業・設計・生産の一貫体制)での設計機能を果たすと共に、新技術の共有や設計工数・習熟度などの不足は補完し合いながら開発を進めています。

当連結会計年度における主な研究開発成果は次のとおりです。

コネクタについては、AV市場では更に高速・大容量化する機器に向けて、小型・低背・高EMI性能・簡単挿入性のシールド対応FPCコネクタを開発し、製品化しました。情報通信市場では移動体通信機器に向けて、現行主力製品よりも基板専有面積を大幅に小型化しながら堅牢性が高く、且つ、超高速充電を可能とする15A対応の新FEコネクタを開発しました。車載市場では先進的なエンターテイメントや繋がるクルマ(コネクティビティ)に向けて、超小型イーサネット対応コネクタ「SE-R1」とロック付きUSB-Type Cコネクタを開発しました。「SE-R1」は1000BASE-T1のイーサネット通信に対応しながら、搭載スペースに貢献する小型幅狭構造を実現しています。ロック付きUSB-Type Cコネクタは10Gbps高速通信や急速充電に対応、嵌合フルロック構造とすることで堅牢性とユーザビリティに貢献します。また、拡大するE-Bike市場では電動アシストサイクルに向けて、モーター駆動用の大電流対応に加え、給電と制御信号接続部品を一体化したパネルマウントコネクタの開発を手掛けています。再生可能エネルギー市場ではソーラールーフやペロブスカイト型太陽電池に向けて、大幅な薄型化と作業性を向上させた汎用パネルコネクタの開発に着手しました。環境対応として、植物性由来の樹脂材料(高性能ポリアミド)を採用したコネクタも開発・製品化しており、PFASフリーやコバルトフリー及びカーボンフットプリントに対する取り組みも始めています。

スイッチでは、ウェアラブル機器の動向から、高い操作部強度や耐衝撃性・操作音の低減を実現するスイッチの開発に取り組みました。

リモコンでは、Smart Home/Home Appliance向けとしてSub-GHz帯通信でリモコン・レシーバー及びセンサーを集中管理する製品を開発しました。

ユニットでは、ミリ波レーダーを用いたセンシング技術として、人の動作を検知して機器の制御を行うジェスチャー認識技術を開発しました。ミリ波センシングでは睡眠深度推定デバイスの開発にも取り組んでおり、スリープテック向けデバイスとしてアルゴリズム開発や実証実験をすすめています。またCO(一酸化炭素)センサーやVOC(揮発性有機化合物)センサーを用いた火災予兆検知器の開発や、商用車向けの堅牢で高耐候性を特長とするバックカメラ用カメラモジュールの提供を開始しました。

タッチセンサーでは、印刷技術応用製品として屈曲性・柔軟性を持つフレキシブルヒーターの開発に取り組んでいます。

エコ関連製品では環境配慮型製品として、太陽電池を搭載しコイン電池との置き換えが可能なエナジーハーベスティングモジュールの開発をすすめています。また、木材の食物繊維であるセルロースやお酢の主原料である酢酸から生成される樹脂やリサイクル樹脂・エコパッケージの採用などの研究も進めています。

IoT事業の取り組みでは、高齢者など利用者の機器の使用状況をクラウド経由で把握できる見守り技術を開発、顧客の課題解決に向けた製品・システム提案をすすめ、実証実験に取り組みました。Sub-GHz帯通信モジュールを活用した、物流領域や小売領域のデジタル化を中心とした課題解決に向けた製品・システム開発を進め、今年中には商品化の予定です。更に、車載向けデジタルキー、住宅用スマートロック向けに、小型・薄型を実現した周囲の金属の影響を受けにくい、独自フェライト卷線構造のNFCアンテナの開発にも取り組んでいます。

新技術では、オープンイノベーションによる技術を活用し、ヘルスケアビジネスの強化を図っています。例えば、非接触型の生体センサーでは、スタートアップ企業と協業し、車室空間の安心・安全向上に向け、「子供置き去り検知センサー」、「生体情報検知センサー」の量産化を目指しています。また、筋電センサーについてはスポーツ用途向けに筋活動の可視化や、高齢者を対象としたフレイル予測のアルゴリズム開発に積極的に取組んでいます。更に、既にプレスリリースしている日本語音声による認知症や鬱等の診断支援アルゴリズムの開発では、軽度認知障害(MCI)の分析技術を優先にアルゴリズムとアプリケーションの開発を進めており、年内にサービス販売開始を予定しています。

生産技術面では製造現場の無人化・省人化に重点的に取り組んでいます。大容量の製造ラインでは無人搬送車を導入し生産設備と連動させることにより、部品供給から組立検査・梱包工程までの無人化ラインを実現しました。また、検査精度の向上を図るためAIを導入した自動検査機の開発に取り組んでいます。中少量製造ラインでは多関節ロボットと画像システムを組み合わせてランダムピッキング技術を開発し、設備の簡素化と汎用化を図りました。また、IoT・DX技術を導入した自動機の稼働データ収集システムを展開し、ロットトレースや生産状況のリアルタイム収集システムを構築し、日報集計の自動化など製造現場全体の工数削減に取り組んでいます。

研究開発・設計開発ではフロントローディング型開発システムを構築・推進し、シミュレーション技術(強度解析・電磁界解析・高周波/高速伝送解析・温度特性解析・樹脂流動解析・プレス成形解析など)の活用強化と解析スピードアップを図り、設計品質の向上と開発リードタイムの短縮を図るための環境整備に取り組んでいます。

なお、当連結会計年度の研究開発費は2,557百万円です。