文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
当社グループは「可能性の追求を通して、総合的な高度技術により、情報社会の発展に寄与する」ことを企業理念とし、「CREATIVE CONNECTIVITY ―Challenge, Creativity, Solutions」をSMK’s Visionとして掲げております。クリエイティブで柔軟な発想を持ち、失敗を恐れず果敢にチャレンジし、社会やお客様の様々な課題を解決していくソリューションを提供してまいります。同時に持続的な企業活動の基盤となる人材の多様化と育成を進め、より良い社会と未来の創出に貢献できる企業を目指し、中長期的な企業価値の向上に努めてまいります。
当社グループは2025年4月に創立100周年を迎えました。1925年の創業以来、「良い部品は良いセットを作る」という創業の精神のもと、電機メーカーをはじめとする多くのお客様に対して、魅力ある製品やサービスを提供してまいりました。2035年長期ビジョン「あらゆるニーズを実現する“ものづくり力”で、次の100年に貢献する」の実現に向けた最初のマイルストーンとして、2025年3月期~2027年3月期を対象期間とする中期経営計画「SMK Next100」を策定し、この期間を「持続的成長に向けた構造改革を加速させる期間」と位置づけ、売上・利益の成長軌道への回帰に向けた資源投下とコスト構造改革、製販一体運営等の経営基盤の強化を進めてまいりました。
しかし、足許の状況としては、CS事業は好調に推移しているものの低成長にとどまり、SCI事業は取引先の在庫調整の長期化等もあり低迷し、イノベーションセンターも新製品・新規ビジネス化が遅れ赤字が継続している状況が続いております。当社では、2025年3月25日に発表しました通り、構造改革を加速させるため、当社が抱える本質的な課題に対する抜本的な取り組みが必要と判断し、「構造改革プログラム」を策定・実施することとしました。各事業部の不採算製品の撤退・縮小を進め、採算性や効率性の高い分野へリソースを集中していくとともに、人員数並びに人材ポートフォリオの最適化、管理部門の規模適正化を進めることで成長軌道への回帰を加速度的に進め、長期ビジョン並びに中期経営計画で掲げる目標の実現に向けて取り組んでまいります。
企業体質強化の具体的な取り組みは、以下の通りです。
自然災害の事業活動への影響を最小限に抑えるリスク対策として、事業継続マネジメント(BCM)をグループ全体で対応しております。開発・設計プロセスの改善としては、2021年に3D CADの最新版への更新、3Dプリンターの積極的な活用、フロントローディング型製品開発の推進とそのITシステム導入を進めております。
生産体制につきましては、固定費削減を含む生産の効率化を図るとともに最適地生産体制のレビューを継続してまいりました。これらの生産基盤強化に加えスカラロボット、6軸ロボット、無人搬送車などの活用によるスマート工場の実現に向けた取り組みを推進しております。
環境保全活動では、カーボンニュートラルを最重要課題と認識し、2045年にカーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)を実現する目標を設定しました。温室効果ガス削減のため、太陽光発電設備の導入やCO2排出の少ない電力メニューの選択などを順次進めております。2023年2月には富山事業所、ひたち事業所に、9月にフィリピン、11月にマレーシア、2024年2月にメキシコに太陽光発電設備を導入してまいりました。また、循環経済、カーボンニュートラルに資するものとして、3R(Reduce/Reuse/Recycle)推進に加え、省エネルギー・高効率化、製造工程の負荷低減等の実現を目指した製品の環境配慮設計を行っており、これからも引き続き推進してまいります。
企業の社会的責任(CSR)につきましては、従来から企業理念・企業行動憲章を制定し、社会に貢献し評価される企業づくりを目指しております。2006年4月には社員行動規範を制定し、教育活動を含めSMKグループ全構成員にCSR・コンプライアンスの徹底を図っております。企業に求められる社会的責任が時代とともに変化してきたことに対応し2024年4月に「社員行動規範」を改定いたしました。
当社グループでは持続的な成長と中長期的な企業価値向上のために管理体制の充実を図っております。2008年より適用開始された金融商品取引法における内部統制報告制度につきましては、2009年6月から財務報告に係る内部統制の有効性について内部統制報告書に開示しております。
また、東京証券取引所の「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」の中で、コーポレート・ガバナンス・コードへの対応を開示しており、コーポレート・ガバナンスを健全で効率的な経営を実現するための重要な仕組みと位置づけ、その充実・強化を図っております。
以上の取り組みを通じまして、SMKグループ一丸となって企業価値を高めるべく総力を尽くしてまいります。
当社グループは適正利潤を伴う売上の継続的拡大を目的に経営に取り組んでおり、中期経営計画「SMK Next100」(2025年3月期~2027年3月期)の最終年度である2027年3月期において、売上高600億円、営業利益率3.5%、ROE(自己資本当期純利益率)5.0%を目標として掲げております。
世界経済は、インフレの落ち着きによる実質所得の増加などを背景に、緩やかな成長トレンドが続く見通しではあるものの、米国トランプ政権の関税政策の影響、各国での自国第一主義の強まり、中国経済の不透明感、欧州主要国の政治不安定化などにより、先行きの不透明感は増大しております。
当社グループは、斯かる環境下、グローバルでの生産体制の効率化、お客様のニーズに適確に対応した新製品の投入、売価改定、固定費の削減等を強化してまいります。そして、2025年3月25日発表の「構造改革プログラム」を着実に実行することで、当社グループ全体での収益力と成長力を向上させ、企業価値の最大化を図ります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) サステナビリティ経営への取り組み
当社グループは、社長が統括する委員会が軸となり、サステナビリティ経営を推進しております。2005年4月に危機管理委員会を、2007年7月にはCSR委員会を設置しました。これらの活動の効率性と実効性をさらに向上させるため、2024年7月にはこの2つの委員会を統合・改組し、執行役員会の下に新たにCSR・サステナビリティ委員会を設置しました。社長が委員長を務める本委員会が、CSRや事業継続、リスクマネジメントに関する全社的な課題を総合的に審議・調整する役割を担い、その傘下の各委員会及び会議体が具体的な活動を推進しております。また、人的資本に関しては、人事委員会と人材開発会議が、人事制度の改革や人材育成、ダイバーシティーの推進において中核的な役割を果たしております。なお、これらの活動は取締役会および執行役員会が監督・統括しております。

(2) 気候変動への対応
気候変動は経営の重要課題と位置付け、取り組み強化に努めております。また、当社グループはTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明しており、今後も開示情報の質と量の拡充に努め、ESG経営における説明責任を果たします。
① ガバナンス
CSR・サステナビリティ委員会の下にTN環境保全委員会を設置しています。TN環境保全委員会は取締役副社長兼環境担当役員を委員長とし、事業部、生産事業所、その他関連部門の代表者で構成されています。
TN環境保全委員会では、グループ全体の環境保全活動を管理し活動方針や指標などを決定します。重要事項は、CSR・サステナビリティ委員会を通じて執行役員会や取締役会で審議・承認されます。
② 戦略(リスク/機会)
気候変動に係る当社グループのリスクと機会を下記に記載します。
(注) 事業活動への影響を「大」「中」「小」の三段階で評価
③ リスク管理
TN環境保全委員会において、気候変動に関連するリスクおよび機会の洗い出しと評価に向けた取り組みを段階的に進めています。 現在は、より実効性のあるリスク管理プロセスの構築に向けて関係部門と連携しながら体制整備を進めており、得られた知見や重要な事案については上部会議体へ報告し、必要な対応を付議しています。
④ 目標・指標
●カーボンニュートラル 中長期目標
当社グループは、中期経営計画においてScope1,2を対象としたカーボンニュートラル中長期目標を設定しています。
■ 長期目標 2045年度 カーボンニュートラル実現
■ 中期目標 2030年度 CO2排出量 : 2020年度基準40.0%削減
カーボンニュートラル実現に向けては、省エネルギー設備および再生可能エネルギーの使用を全社一丸となり促進します。主要な生産拠点で太陽光発電設備を導入し終えており、現在、さらなる施策の検討を進めています。また、サプライチェーン排出量(Scope3)は、ホームページで開示しています。
(3) 人的資本経営の取り組み
当社は“CREATIVE CONNECTIVITY - Challenge, Creativity, Solutions”をSMK Visionとして掲げ、社会やお客様の様々な課題を解決し、より良い社会と未来の創出に貢献することを目指しております。これを実現させるために、経営戦略と人材戦略・人的資本投資の連動性を高めることを重視し人材ポートフォリオの最適化を軸に、人材育成(能力開発)を重視した運営を開始します。更に学習・共創する組織風土への改革を推進することで、組織内の相互理解を高め、組織内外の共創を促します。こうした取り組みがSMK Visionなどの企業としての基本姿勢を実現し、更には、売上・利益の持続的成長への好循環サイクルを実現します。これらの具現化のためのガバナンス、リスク管理、戦略、指標と目標については次のとおりです。
① ガバナンス
当社グループでは、経営戦略に関わる人的資本投資については取締役会が審議・決定のうえ執行役員会に伝達し、グループ社員全般の人的資本投資については執行役員会で審議・決定しております。また、執行役員会の傘下には多様な人材の活躍支援を含む人事諸制度を審議する人事委員会と、人材育成やスキル向上を審議する人材開発会議を配しております。
人権尊重などの労働コンプライアンスと労働安全衛生については、CSR・サステナビリティ委員会の下部にあたる、労働・人権委員会が担当しております。
② リスク管理
人的資本経営に関するリスク管理は下表のとおり行っております。
③ 戦略
経営戦略を実現する人材戦略・人的資本投資を実施していきます。人材戦略と人的資本投資による人材一人ひとりの能力開発を促すことなどを起点に個人の成長を促します。また、組織風土改革を推進することで、従業員エンゲージメントを高めるとともに、学習・共創する組織風土の浸透に努めます。そうした取り組みにより、企業理念やビジョンを実現する原動力となり、売上や利益の持続的成長に繋がるよう推進し、経営戦略と人材戦略・人的資本投資・組織風土戦略の好循環サイクルを実現していきます。

人的資本の観点から、人材のビジネスにおける能力に注目し、徹底した能力開発を行うことで、人的資本価値の向上に努めます。ビジネスに関連する各種のスキルだけでなく、能力水準の土台を人間力と定め、視座の高さや視野の広がりのレベル感、或いは多様な価値観の受容能力などの意思決定における基礎となる総合的な力の伸長にも注目し対応していきます。また、今回実施した希望退職募集を踏まえ、今後の事業戦略にマッチした人材ポートフォリオの再構築に取り組んでいきます。
人材育成に関しては、階層別研修を全面的な見直しを行い、役割のステージに応じた研修体系を再構築します。それに先駆け、管理職層にアセスメントを活用した能力の棚卸しを行うと共に、能力開発計画に取り組むことでマネジメント力と職務遂行能力を向上させる取り組みを開始します。
個別の人材育成と並行し、組織風土の改革の重要性を大きく引き上げ、本格的な取り組みを開始します。従来の顧客ニーズへのカスタム対応力を維持しつつも、お客様や社会の課題に対し、プロアクティブに提案を行うなど自律的・能動的な組織風土の定着を目指します。具体的には社員の行動変容を組織的に取り組むことで学習・共創する組織風土の定着を目指します。こうした取り組みから、社員の多様性を新たな価値創造の原動力に向けていくことも視野にいれています。
④ 指標と目標
(注) 1 トランスナショナル人事制度における部課長相当の比率
2 トランスナショナル人事制度における基幹社員(実務スタッフ~部長)の離職率。定年退職者を除く。
3 該当年度までに経営幹部育成プログラムを修了し、期末現在に在籍している社員の人数
4 重大労働災害:死亡事故及び後遺障害の残る労働災害
(4) その他のサステナビリティ項目への取り組み
当社グループでは、社会課題の解決と持続可能な社会の実現に向けて、上記の気候変動、人的資本への取り組みに加えて、コーポレート・ガバナンス体制の充実、サプライチェーン・マネジメントの強化、社会貢献活動への取り組み等を多角的に推進しています。詳細は当社ホームページにて開示しております。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 競合及び価格動向
電子部品業界は、国内外に多数の同業者が大手から中小まで様々な規模で存在する極めて競合的な業界であります。当社グループは継続的な開発投資により独自技術の蓄積と新製品・新技術の開発に努めておりますが、当社グループを超える高い独自技術によって競合他社が当社グループの市場シェアを奪う可能性があります。
また、競合的な市場であることから、当社グループもコストダウンや差異化商品の投入等により、利益確保に努めておりますが、採算性、業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、主にアジア・北米・欧州で事業展開しており、それぞれの地域における経済・政治・社会情勢の変化が業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、各国・地域の法令・規則等の各種規制に従って事業を行っておりますが、予期せぬ変更や新たな適用により影響を受ける可能性があります。
当連結会計年度の売上高に占める海外売上高の割合は約7割であり、米国ドル建てを主として取引をしております。為替予約などにより相場の変動リスクをヘッジしておりますが、為替変動による影響を完全に排除することは難しく、一般に、円高に振れた場合には利益は減少いたします。
当社グループは、原材料や一部部材を外部業者より調達しております。これら外部業者とは安定供給のための協力関係を築いておりますが、需要の急激な変動に伴う供給元からの調達難や仕入価格上昇が発生した場合、生産遅延やコスト上昇により、業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対して、当社グループでは、サプライチェーンマネジメントの強化に取り組み、代替調達先の確保や長期供給契約の締結等によって部材の安定的な確保に努めております。
(5) 事業提携・資本提携及び企業買収
当社グループは、戦略的な事業提携・資本提携及び企業買収を推進し、提携先・買収先との相乗効果による企業価値の最大化に取り組んでおりますが、提携先・買収先の企業や対象事業などを取り巻く事業環境が悪化し、当初想定していた成果や相乗効果を得られない場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、「SMKグループ環境憲章」のもと、環境に配慮した製品づくりや温室効果ガス・廃棄物排出の削減に取り組み、また、環境関連の規制を遵守して事業活動を推進しております。しかしながら、不測の事態により環境汚染につながる事象が発生した場合、早急に事態を収束するための対策費用が発生する可能性があります。また、環境関連の規制の強化・変更により、新たな規制への対応費用が発生する可能性もあります。
カーボンニュートラル推進においては、2045年にカーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)を実現する目標を設定しております。これに伴い、低炭素電力メニューの採用等により新たな負担が発生する可能性があります。また、電力供給会社の温室効果ガス削減推進の影響を受け、産業共通のインフラとしてのエネルギー供給が不安定になり、当社グループが最も多く使用するエネルギーである電力のコストが上昇し、新たな負担が発生する可能性があります。
当社グループは、電子情報を保護し管理を徹底するため、「電子情報セキュリティ基本規程」を制定し、外部からの社内情報システムへの不正アクセス又は不正操作に対処する侵入防止策を講じるとともに、内部監査や情報セキュリティ教育などを通して、情報漏洩対策の強化を推進しております。また、営業秘密や個人情報、知的財産についても、規程・運用方針などを整備してその保護に努めております。しかしながら、これら情報が漏洩するなどの情報セキュリティ問題が発生した場合、事業活動に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、地震等の自然災害や感染症の流行等による事業活動の低下を最小限にとどめるために、事業継続計画(BCP)の策定を進め、国内外の各拠点における防災対策や、災害発生時の他の拠点での代替生産や調達先の変更などへの対応に取り組んでおります。しかしながら、想定を超える大規模災害等が発生した場合、生産設備の破壊、物流機能の麻痺などにより、事業活動に影響を及ぼす可能性があります。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
当連結会計年度における世界経済は、高インフレの沈静化や、米国経済の底堅さを背景に、比較的安定した動きとなりました。一方、米国トランプ政権の関税政策の影響、ウクライナ紛争の長期化や中東情勢等の地政学リスクの継続、内需の回復が見えはじめた中国も米中対立から力強さに欠け、先行きの景況感は不透明な状態が継続しております。また、同様の事情を背景にドル円為替相場も不安定な状況が続いております。
当電子部品業界におきましては、市況は全体としては緩やかな回復基調となったものの、やや停滞気味に推移しました。車載市場では、世界的な自動車販売減速やEVの失速により停滞感が見られました。情報通信市場では、スマートフォン、タブレットなどは在庫調整の一巡により堅調に推移し、AIサーバー関連が拡大しました。家電市場においては、デジタル家電、ゲーム関連、大型白物家電などが堅調に推移しました。産機市場は半導体製造装置、FA関連で一部回復の兆しがありましたが、引き続き低調に推移しました。
当連結会計年度においては、CS事業の売上高は車載、家電、産機市場が好調に推移し前年を上回りました。SCI事業の売上高は、車載、情報通信市場は前年を割り込みましたが、家電市場が拡大し、前年並みとなりました。この結果、売上高は480億5千1百万円(前期比3.3%増)となりました。情報通信市場における主要得意先の需要減や、当社メキシコ生産子会社のSMK Electronica S.A. de C.V.で退職給付費用2億6千5百万円を計上したことなどにより、営業損失は2億2千万円(前期は営業損失12億4千3百万円)となりました。経常利益は5億4千9百万円(前期比142.9%増)、構造改革プログラムに伴う事業構造改革費用8億6千9百万円を計上したことなどにより、親会社株主に帰属する当期純損失は18億8千4百万円(前期は親会社株主に帰属する当期純損失4億8千9百万円)となりました。
セグメントの業績は、次のとおりです。
車載市場においては、カメラ関連が堅調に推移したことに加え、E-Bike関連が好調で前年を上回りました。家電市場では、アミューズメント関連が拡大し前年を上回り、産機市場でも再生可能エネルギー関連が拡大し前年を大きく上回りました。一方、情報通信市場では、タブレット関連の需要増により上期は前年を上回って進捗しましたが、第3四半期以降、タブレットと一部顧客のスマホ関連が減速したものの、CS事業全体としては、前年を上回る結果となりました。
この結果、当事業の売上高は221億5千6百万円(前期比7.6%増)、営業利益は15億3千4百万円(前期比40.0%増)となりました。
家電市場では、サニタリー用・エアコン用・スマート家電用リモコンが順調に拡大し前年を上回りました。車載市場では操作ユニットやカメラモジュールが主要顧客の在庫調整や新製品の開発時期ずれなどの影響を受け第3四半期まで低調に推移しておりましたが、第4四半期は需要回復による在庫販売や開発費用の売上などもあり挽回し、SCI事業全体としては、前年並みとなりました。
この結果、当事業の売上高は256億4千3百万円(前期比0.4%増)、営業利益は、売価アップや原価低減等のコスト削減に努め前年より改善したものの、営業損失13億8百万円(前期は営業損失21億4千5百万円)となりました。
イノベーションセンターの主力事業、無線通信モジュールの売上の中心であるBluetooth®モジュールにおいて、モバイルプリンタ用、医療機器用が前年を割り込みました。一方、Sub-GHz通信モジュールについて、照明機器用が前年を上回ったものの、イノベーションセンター全体としては、前年を下回る結果となりました。
この結果、当事業の売上高は2億5千1百万円(前期比36.2%減)、営業損失は4億4千6百万円(前期は営業損失1億9千3百万円)となりました。
当連結会計年度における現金及び現金同等物は、期首残高から2億1千7百万円増加し、104億1千5百万円となりました。
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、前期と比較して、12億7千9百万円減少し、24億3千9百万円の流入となりました。
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、前期と比較して、5億9千9百万円減少し、22億1千6百万円の流出となりました。
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、前期と比較して、7億6千4百万円増加し、2億8千6百万円の流入となりました。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(経営成績)
売上高は、CS事業は車載、家電、産機市場が好調に推移し、SCI事業は車載、情報通信市場は前年を下回りましたが家電市場が拡大し、480億5千1百万円(前期比3.3%増)となりました。営業損失は、情報通信市場における主要得意先の需要減や、当社メキシコ生産子会社のSMK Electronica S.A. de C.V.で退職給付費用2億6千5百万円を計上したことなどにより、2億2千万円となりました。
営業外損益の主なものは不動産収支であり、経常利益は5億4千9百万円となりました。
特別損益の主なものは、構造改革プログラムに伴う事業構造改革費用、減損損失であります。また、法人税等として在外子会社の配当方針見直しに伴う留保利益に係る税効果を当連結会計年度に計上したことなどにより、親会社株主に帰属する当期純損失は18億8千4百万円となりました。
(財政状態)
(単位:百万円)
流動資産は、前連結会計年度末に比べて2.0%減少し、331億4千9百万円となりました。これは、商品及び製品が5億1千4百万円、原材料及び貯蔵品が9億9千4百万円それぞれ減少し、売掛金が11億8千2百万円増加したことなどによります。固定資産は、前連結会計年度末に比べて0.3%減少し、245億3千5百万円となりました。これは、退職給付に係る資産が4億5千9百万円増加し、有形固定資産が5億7千3百万円減少したことなどによります。
この結果、資産合計は、前連結会計年度末に比べて1.3%減少し、576億8千4百万円となりました。
流動負債は、前連結会計年度末に比べて8.3%増加し、166億4千7百万円となりました。これは、短期借入金が12億円増加したことなどによります。固定負債は、前連結会計年度末に比べて8.1%増加し、118億1千5百万円となりました。これは、繰延税金負債が5億7千万円、長期借入金が2億5千9百万円それぞれ増加したことや、当社メキシコ子会社のSMK Electronica S.A. de C.V.で退職給付に係る負債2億6千万円を計上したことなどによります。
この結果、負債合計は、前連結会計年度末に比べて8.2%増加し、284億6千2百万円となりました。
純資産合計は、前連結会計年度末に比べて9.1%減少し、292億2千1百万円となりました。これは、利益剰余金が25億2千2百万円、為替換算調整勘定が3億1千5百万円それぞれ減少したことなどによります。
なお、今後の見通しにつきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。
また、当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
(経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等)
当社グループは中期経営計画「SMK Next100」(2025年3月期~2027年3月期)の最終年度である2027年3月期において、売上高600億円、営業利益率3.5%、ROE(自己資本当期純利益率)5.0%を掲げております。当連結会計年度においては、売上高480億円、営業利益率△0.5%、ROE(自己資本当期純利益率)△6.1%となりました。
次期においては、2025年3月25日発表の「構造改革プログラム」を着実に実行し成長軌道への回帰を加速度的に進め、中期経営計画で掲げる目標の実現に向けて取り組んでまいります。
(キャッシュ・フローの状況)
(単位:百万円)
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、前期と比較して、12億7千9百万円減少し、24億3千9百万円の流入となりました。
主に、減価償却費23億4千7百万円による流入によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、前期と比較して、5億9千9百万円減少し、22億1千6百万円の流出となりました。
主に、有形固定資産の取得による支出20億8千万円による流出によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、前期と比較して、7億6千4百万円増加し、2億8千6百万円の流入となりました。
主に、借入金の純増加額14億6千万円による流入、リース債務の返済による支出5億3千5百万円、配当金の支払額6億3千6百万円による流出によるものです。
(資本の財源及び資金の流動性)
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、材料の仕入のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資、投資有価証券の取得等によるものであります。当社グループは、事業運営上必要な資金の流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資や長期運転資金の調達につきましては、金融機関からの長期借入を基本としております。
なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は156億1千6百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は104億1千5百万円となっております。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項) 4.会計方針に関する事項」及び「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
当社は、財務上の特約が付された金銭消費貸借契約を締結しております。
契約に関する内容等は、以下のとおりであります。
なお、2024年4月1日前に締結された金銭消費貸借契約については、「企業内容等の開示に関する内閣府令及び特定有価証券の内容等に関する内閣府令の一部改正する内閣府令」附則第3条第4項により記載を省略しております。
(コミットメントライン契約)
(1) コミットメントライン契約の概要
契約締結日 : 2025年3月31日
契約の相手方の属性 : 都市銀行及び地方銀行
債務の期末残高 : 5,500百万円
コミットメント期間 : 自 2025年3月31日 至 2028年3月31日
担保の内容 : 工場財団に根抵当権を設定
(2) 財務上の特約の内容
①各年度の決算期の末日および第2四半期の末日における連結の貸借対照表上の純資産の部の金額を直前の決算期末日または第2四半期の末日における連結の貸借対照表上の純資産の部の金額の75%以上かつ241億円以上に維持すること。
②各年度の決算期の末日および第2四半期の末日における単体の貸借対照表上の純資産の部の金額を直前の決算期末日または第2四半期の末日における単体の貸借対照表上の純資産の部の金額の75%以上かつ183億円以上に維持すること。
③各年度の決算期における連結の損益計算書に示される経常損益が2期連続して損失とならないようにすること。
④各年度の決算期における単体の損益計算書に示される経常損益が2期連続して損失とならないようにすること。
当社は企業理念である「可能性の追求を通して総合的な高度技術により、情報社会の発展に寄与する」を基本精神として、研究開発活動を進めております。「CREATIVE CONNECTIVITY ―Challenge, Creativity, Solutions」をSMK’s Visionとして掲げ、社会やお客様の課題に対するソリューション提案・付加価値提案のための研究開発を継続的に進めています。目覚ましく進歩するデジタル化・IoT化によって社会の利便性が益々高まっており、ユーザビリティや耐環境性能など、お客様の新たなセットの価値創出に貢献していくことを目指しています。
イノベーションセンターは独自性のある高付加価値技術で社会課題へのソリューション提案となる先進的な開発を行い、各事業部門では電子情報産業分野における技術・商品開発を推進し、コアテクノロジーの深耕と新耕に注力しております。生産技術センターでは各事業部・事業所と連携し、トランスナショナルの製造現場における自動化の向上とIT技術の導入による無人化・生産性の向上を進めており、自社内での自動化・省力化設備の開発と製作、稼動データ収集システムを活用した設備の予兆保全にも取り組んでいます。また、技術管理部では研究開発・設計開発環境の向上を目指して、開発ツール・ソフトの高度化やシミュレーション技術の向上、当社が創造した知的財産の適切な保護とその活用を進めています。
開発体制は、国内3拠点の他に、米国・メキシコ・中国・シンガポールとグローバルな拠点展開を行い、本社をセンター機能として各拠点間で双方向の連携を図っています。各開発拠点は、その地域でのワンストップソリューション(営業・設計・生産の一貫体制)での設計機能を果たすと共に、新技術の共有や設計工数・習熟度などの不足は補完し合いながら開発を進めています。
当連結会計年度における主な研究開発成果は次のとおりです。
(1) CS事業関連
CS事業部において、生成AIの普及でPCやタブレットの情報量が飛躍的に増大する要求に応えるため、PCIe-Gen5を満足する0.35mmピッチ・勘合高さ0.6mmのフルシールドB2Bコネクタを開発しました。差動インピーダンス85Ωに高精度でマッチングしており高速の伝送性能と高いEMI性能を有しています。
車載市場ではADASの進展で車載カメラの搭載が標準化し、同軸機能に加え電源供給のニーズが増えていることから、1軸+2電源対応の複合コネクタ(CM-Cシリーズ)を製品化しました。凍結防止や水滴除去を目的としたカメラへの電源供給、DMS/OMS用途ではLEDへの電源供給が可能となります。
車載電装品では軽量化と低価格化目的で電線接続からFFC接続への切り替えが進んでおり、電線とFFCの両方が使用できるマルチ接続コネクタ(LA-4シリーズ)を開発しました。配線用途に応じて電線とFFCの併用が可能となり、車両メーカーの選択自由度に貢献します。モバイル端末の普及により車内でUSBポートを使用した充電やデータ伝送のニーズが高まっており、ECUとディスプレイなどを繋ぐUSB3.2Gen2信号に対応した24Pinロック付きコネクタを開発しました。強い振動や衝撃への耐久性を確保するため、勘合時にフルロック構造を採用し、SAE/USCAR-2規格の引張強度を満足し、高い接触信頼性を実現しています。
また、拡大するE-Bike市場に向けて業界最小クラスの丸形2P~8Pで防水対応の電線対電線用コネクタを開発しました。小型ながら1ピン当たり3A通電が可能で、良好な操作フィーリングを実現しています。モーターやバッテリーパックなど大電流通電のバスバーと基板を簡単かつ高性能・高信頼性で接続するアクティブフローティングソケットを開発しました。車載用途への展開を見据え、定格100Aまで対応可能な標準品ラインナップを順次リリースしていく予定です。
(2) SCI事業関連
SCI事業部において、スイッチではウェアラブル機器用にハンダレスでユーザビリティが高く、従来品比で幅方向を29%小型化し部品密集化に貢献し、強度3倍以上の高い耐衝撃性能を有したMicro1domeスイッチを開発しました。リモコンではSmart Home/Home Appliance向けとしてSub-GHz帯通信でリモコン・レシーバー及びセンサーを集中管理する製品、また、超薄型を追求した製品を開発しました。ミリ波センシングでは周波数解析を用いた睡眠深度推定アルゴリズムの研究開発を進めており、非接触・非侵襲でのバイタル計測に拠って家電をコントロールし、睡眠の質を向上させるデバイス:スリープテックの開発を進めています。
環境貢献事業への取り組みの一環として、今後拡大が見込まれる風力発電の風車に使用されるボルトの緩みを検知するセンサーとして、IoTデバイスとモニタリングシステム「SyncBolt®」を共同開発しました。電力インフラを維持する際、点検の負担と危険が大きな課題となっており、遠隔での自動検知による保守業務の効率化を図る目的で、国内の電力事業者向けに商品化を進めています。また、コイン型電池CR2032に置き換わる、業界初の自立給電型コイン電池モジュール「Harvest Loop」を開発し、今年米国で開催のCESにおいて、「CES Innovation Award 2025」をSustainability & Energy/Power部門にて受賞しました。IoTデバイス・センシングデバイスへの幅広い活用ができ、持続可能なエネルギー社会の実現に向けた製品開発を進めていきます。
(3) イノベーションセンター関連
イノベーションセンターにおいては、IoT事業の取り組みとして電波によるセンシング技術を活用し、対象者の在室検知や転倒検知などが行える技術を開発し、顧客の課題解決に向けた製品・システム提案を進め、実証実験に取り組みました。また、Sub-GHz帯通信モジュールを活用した物流領域や小売領域のデジタル化での課題解決に向けた製品・システム開発を行い、商品化を実現し、お客様に納入させて頂きました。車載向けデジタルキー及び住宅用スマートロック向けに、小型・薄型を実現した周囲の金属の影響を受けにくい独自フェライト卷線構造のNFCアンテナの開発も進めています。
新技術ではオープンイノベーションによる技術を活用し、ヘルスケアビジネスの創出に取り組んでいます。非接触型の生体センサーでは、スタートアップ企業と協業し、車室空間の安心・安全向上に向け「子供置き去り検知センサー」の量産化を目指しています。また、筋電センサーについてはスポーツ・トレーニング用途向けに筋活動の可視化に取組んでいます。さらに、既にプレスリリースしている日本語音声による頭の健康度を可視化するアルゴリズムの開発が完了し、アプリケーションの本格的な販売を開始しました。
(4) 生産技術関連他
生産技術面では、全工場の製造工程の自動化率向上及び、IoT・DX技術の活用による製造現場の効率化に取り組んできました。全社の自動化率は前年比で1.3%向上させることができました。設備製作においては部品製作に3Dプリンターの活用を推進し、複雑な形状の部品を3Dプリンターで制作することによって、設備開発リードタイムを数週間レベルで短縮させ、制作費用の大幅な削減を実現しています。また、画像検査においてはAIを活用したシステムを導入し、誤判定率の精度向上に取り組み、精度が37倍向上した製品もあり、水平展開を図っています。加えて、これまで自動化が難しく目視検査が続いている工程にもAI画像技術を導入し、検査工程の完全自動化の実現に向けて研究開発を進めています。
情報技術面では自動機の稼働データ収集を高度化し、不具合発生の早期発見・未然防止システム構築により仕損費の削減に大きな効果を生み出しました。新製品開発ではフロントローディング型開発システムを構築・推進し、シミュレーション技術(構造解析・流動解析・電磁界解析・光学解析など)の活用強化と解析スピードアップを図ると共に、機構強度・音響・材料配向・流体・加工成形を組み合わせた連成シミュレーションやAIを活用した最適化の導入でシミュレーション技能の高度化を図り、設計力強化・設計品質向上に向けた環境整備に取り組んでいます。
なお、当連結会計年度の研究開発費は