第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営の基本方針

<経営の基本方針>

●品質第一主義に徹し、最高品質と環境負荷物質ゼロ化により、「ヨコオ品質ブランド」を確立する

●「技術立脚企業」として、アンテナ技術・マイクロウェーブ技術・表面改質材料技術・微細精密加工技術をさらに強化・革新するとともに、製品の付加価値向上に貢献する新技術を積極的に導入し、顧客の製品機能多様化・適用技術多様化へのニーズに応える

●プロダクト・イノベーション(事業構造・製品構造の革新)、 プロセス・イノベーション(事業運営システムの革新)、 パーソネル・イノベーション(人材の革新) の3つの革新に加え、将来成長を見据えた マネジメント・イノベーション(経営・事業運営の革新) を強力に推進することにより、「進化経営」の具現化を加速する

●業界/顧客/技術/サプライチェーン等の事業構造を重層化することにより、世界的パラダイムシフト/ドラスティックな事業環境や競争環境激変に対応可能な事業体制を確立する

 

(2)目標とする経営指標

<中期経営基本目標>

当社グループは、2024年5月14日公表の「新中期経営計画2024-2028」(2025年3月期~2029年3月期)において、以下の指標を中期経営基本目標として掲げております。

●ミニマム10(テン)の安定的な実現

ミニマム10:売上高営業利益率・営業利益成長率・投下資本利益率・自己資本利益率を10%以上確保

●連結売上高1,000億円の達成

 

(3)中長期的な会社の経営戦略

当期(2024年3月期)におきましては、当社グループは持続的な企業価値の向上を目指すとともに、より一段高いステージでの社会貢献の実現に向けて、経営の基本方針に掲げる4つのイノベーション(プロダクト/プロセス/パーソネル/マネジメント)の推進に取り組みました。

また、当社グループは、パーパス「人と技術で、いい会社をつくり、いい社会につなげる。」の実現に向け、グローバル社会のサステナビリティに貢献する事業活動/企業活動により、ステークホルダーと共に持続的な進化と成長を続ける「進化永続企業」を目指しております。

この考え方に基づき策定した「新中期経営計画2024-2028」の骨子は、以下のとおりです。
<経営戦略>

1)主要市場(自動車/半導体検査/携帯端末/医療機器)における成長・収益基盤強化

① 主力3事業(VCCS/CTC/FC)における事業進化テーマの探索と推進

② 成長率の高い新興国市場(特に中国・インド・アセアン)での本格事業拡大

③ CTC/FC事業の再成長路線への回帰による事業ミックスの適正化

④ 第4の核事業としての成長が確実なMD事業(医療分野)の本格躍進

2)新たなコアコンピタンスの獲得/他社との協業による事業ドメイン拡張

① 主力事業のドメイン拡張への取組み強化

② 電鋳技術/MEMS加工技術/光電融合技術領域における協業の構築と自社取込み

③ 自社ソフトウェア開発能力の取込みと並行したコト売りビジネスの本格化

3)ROIC経営の浸透

① ROIC(投下資本利益率)/WACC(加重平均資本コスト)を事業別に導入するとともに、より収益力/資本効率の高い事業構造に創り変えていく

② 不測の事態に備えて一定のキャッシュを保ちつつ、M&A/アライアンスを通したビジネスモデル革新/事業拡大と、安定成長配当と自社株買いによる株主還元の充実を図る

4)人的資本経営=「人財」中心の経営、サステナビリティの取組み

① 従業員の能力やスキルを組織の成長に活かし、中長期的な企業価値の向上につなげる

② マテリアリティを軸としたサステナビリティの取組みを推進する

 

これらを強力に推進することにより、本中期経営計画期間において、中期経営基本目標である「ミニマム10」の安定的な実現と連結売上高1,000億円の達成を目指してまいります。

 

 

(4)会社の対処すべき課題

世界経済は、世界的な金融引き締めに伴う景気悪化や大幅な円安進行に加え、ウクライナ・中東情勢等の地政学リスクの高まりによる資源・原材料価格の高騰など、先行き不透明な状況が続いており、当社事業環境も、自動車市場は堅調に推移しているものの、半導体検査市場や携帯通信端末市場は2024年3月期における低迷から未だ回復途上にあり、予断を許さない状況にあります。このような状況下で、当社グループは以下の点に重点的に取り組みます。

1)VCCS事業

① 標準化/共通化による原価構造の徹底改革による収益体質の継続改善

② EV化/SDV(※)化/ADAS化に伴う新アプリケーション領域製品新規参入による新たな分野での売上拡大

※SDV:Softwear Defined Vehicle 外部との双方向通信でアップデートされる制御ソフトウェアにより性能の維持・向上を行う自動車のこと

2)CTC事業

① 現有技術の研鑽と他社との協業/共創/M&Aを通じて、新たなテストニーズに対応したハードウェア供給力を強化

② 社内・外部技術を駆使した総合テストソリューション型ベンダーへの進化

3)FC事業

① 材料/部品加工/表面改質の深耕による主力スプリングコネクタ(SPC)製品の強力引上げ

② 最小最軽量/低コストを付加価値とした製品の市場投入による事業拡大

4)MD事業

① 医療製販業認可取得に基づく自社企画製品の上市

② 先端医療機器分野におけるエコシステム拡大による人類・社会への貢献を加速

5)インキュベーションセンター

現有技術にとどまらず、顧客ニーズを満たす技術を保有するパートナーを探索し連携することで、

① 新たな市場を創造する製品・ソリューションを提供

② グローバル市場のニーズを把握し、モノ売りからコト売りへのビジネスモデル変革を推進

③ 企業連携、M&A、共創する企業への積極投資をも活用し、技術・人財・設備を補完し、新たな事業領域/ビジネスモデルを創出

 

上記の重点施策を着実にかつ強力に推進することで、中長期的に、激変の中でも揺るがない圧倒的な強みを確立するとともに、ステークホルダーの皆様と新たな価値の協創に邁進してまいります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

(1) サステナビリティに関する基本的な考え方

当社は、2022年の創業100周年を契機として企業理念体系を刷新し、以下のとおりパーパス(存在意義)/ビジョン(目指す姿)/バリュー(価値観)を定めております。

●パーパス:「人と技術で、いい会社をつくり、いい社会につなげる。」

・パーパスのステートメント:

「もっと社会に貢献したい。そのために、ヨコオをもっといい会社にしたい。

私たちは、多様な仲間の声に耳を傾け、世界に目を向け、安心安全な未来のために、社会の進化と課題解決に真摯に取り組む『いい会社』をつくっていきます。

人と技術で『いい会社』をつくり、ステークホルダーの皆様とともに持続可能な『いい社会』の実現に貢献していきます。」

●ビジョン:「社会ニーズのその先に、人と技術で挑戦し、『新しい』を生み出し続ける進化永続企業。」

●バリュー:「Respect 尊重」、「Fairness 公正・公平」、「Ownership 当事者意識」、「Challenge 挑戦」、
「Innovation 革新」

(ご参考:当社コーポレートサイト「企業理念体系/スローガン」)

https://www.yokowo.co.jp/company/philosophy.html

 

サステナビリティに関する当社の基本的な考え方は、上記のパーパスのステートメントに示しているとおりです。また、ビジョンに掲げる「進化永続企業」は、持続可能な社会があってこそ実現できるものであり、持続可能な社会の実現に貢献する会社であり続けることが大前提になると考えております。

 

(2) サステナビリティに関するガバナンス

当社グループは、サステナビリティ課題への取組みにおいてガバナンス体制を強化しており、投資を行う場合は、稟議規程に定める金額基準に従い、取締役会において事業機会やリスクを評価し、合理的判断のもと意思決定を行うこととしております。代表取締役は、マテリアリティの基本方針と施策に関するリソース投入の承認を行っており、取締役会は、当社のサステナビリティに関する基本方針を審議・決定し、その取組み状況を監督する責任を負っています。

取締役及び執行役員の報酬決定基準にも、サステナビリティ課題への取組みに関する実績評価を組み込み済みであり、代表取締役(社長)が評価を行ったうえで、指名・報酬諮問委員会(委員の過半数が独立社外取締役であり、委員長は独立社外取締役である委員から選出)に諮問します。同委員会で審議し決定した原案を、委員長である独立社外取締役が取締役会に答申し、取締役会で決定しています。

また、当社は、2022年10月に、グループで特定している3つのマテリアリティ(環境/地域社会/多様性と包摂性)に対して包括的に取組みを推進する機関として、「サステナビリティ委員会」を設置しました。

当委員会は、執行役員社長を委員長とし、委員である執行役員専務・常務とオブザーバーである常勤監査役・社外取締役により構成されており、当社グループのサステナビリティ課題の取組み方針の策定及び目標設定を行うとともに、取組み状況を取締役会に報告/情報共有する役割を担っています。

 

(3) サステナビリティに関するリスク管理

当社グループのサステナビリティに関するリスクは、まず全社的リスクマネジメントの中でその要諦を把握・管理しております。全社的リスクマネジメントにおける主要なリスクについては、後記「3 事業等のリスク」に記載しております。これらは、当社グループにおける事業リスク等について全社横断的にリスクを把握・評価・対策立案等の取りまとめを行う事業リスク管理委員会及びその事務局が、以下のとおりマネジメントサイクルを実行しております。

・当社の事業リスク管理委員会事務局が、当社全部門及び全グループ会社に対して、当期のグループ全体のリスク管理表をベースとして、次期に向けた自部門・自拠点のリスクアセスメント実施(新規リスク抽出・既存リスク内容更新)及びリスク低減策・低減計画立案を指示する。

・各部門・各拠点は、各々の次期事業計画にリスク低減計画を織り込む。

・リスクアセスメントにより更新された内容は、事業リスク管理委員会事務局が取りまとめる。個々のリスク項目が経営に与える影響度(軽微~致命的まで4段階)と発生頻度(ほぼ発生しない~頻発まで5段階)によりマッピングし、経営上重要なリスクを抽出する。

・事業リスク管理委員会事務局は、リスクアセスメントの概要を取締役会に報告するとともに、有価証券報告書等において開示する。

 

サステナビリティに関する、より詳細で具体的なリスクについては、後記「(4) サステナビリティの取組み項目」に掲げる各項目の推進体制/マネジメントシステムによりリスクマネジメントのPDCAサイクルを実行しております。

 

(4) サステナビリティの取組み項目

当社のサステナビリティの主要な取組み項目ごとのガバナンス/リスク管理進捗状況等は、以下のとおりです。

① 環境

a. 気候変動

イ) 基本的な考え方

当社グループは、「環境」を重点課題(マテリアリティ)の1つに選定するとともに、環境方針及び行動指針において温室効果ガス(GHG)排出量(Scope1・2)の削減目標を掲げ、気候変動対策に取り組んでいます。その具体的な施策内容と進捗状況はCDPの枠組みで開示しており、Scope3における温室効果ガス排出量削減への取り組みについても、今後さらに強化してまいります。

なお、GHG総排出量について2019年度分より第三者保証を受けており、GHG総排出量や気候変動対策の取り組みについては、2017年度分よりCDPにて開示をしています。今後も、2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、気候変動への対応を強力に推進するとともに、事業活動を通じた社会の発展に貢献していきます。

ロ) TCFDへの対応

当社は、2021年10月の取締役会決議に基づき、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明しております。また、CDPの枠組みにおいて、TCFD提言の気候関連財務情報開示の中核要素であるガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標に沿って情報を開示しています。

ハ)ガバナンス

前記「(2) サステナビリティに関するガバナンス」に記載の体制の下、環境マネジメントシステムの国際規格であるISO14001に基づき設置している環境担当役員及び環境管理責任者並びに環境管理委員会(事務局:サステナビリティ推進部)が、気候変動対応を含む環境全般の計画・施策立案と推進を担っております。なお、ISO14001の認証は、当社国内生産拠点(富岡工場及びMEMS開発センター)及び国内生産子会社並びに海外生産子会社(中国・マレーシア・ベトナム)において取得しており、その環境マネジメントシステムにより継続的な水準向上に取り組んでおります。

ニ)リスク管理

当社グループは、VCCS、CTC、FC・MD及びインキュベーションセンターの4セグメントで事業を展開しており、すべてのセグメントで気候変動を含む企業活動や行動に関するリスクと機会を洗い出すとともに、その影響度を数値化して管理しています。

気候関連リスクの特定及び評価は、環境管理委員会の運営プロセスの一部として、毎年の定期的な評価と、必要に応じて臨時の評価を実施しています。同委員会を構成する各部門ごとに、それぞれの業務プロセスから気候関連リスクを洗い出し、リスク評価を行った上で委員会事務局が集約、全社的リスクを特定し、サステナビリティ推進部長及び環境担当役員の承認を経た後、全社的リスクとして取締役会に報告しています。

ホ)戦略

・シナリオ分析

気候関連のリスクと機会を特定・評価し、気候関連課題が事業に与える中長期的なインパクトの把握のため、VCCS、CTC及びFC・MDの3セグメント(以下、「主要3セグメント」といいます。)を想定し、分析を実施しております。分析では、産業革命前に比べ 2100 年までに世界の平均気温が3℃上昇すると想定したシナリオと、気温上昇を1.5℃未満に抑えられたシナリオを採用し、移行リスク・機会に関する分析と災害などによる物理的変化(物理リスク・機会)に関する分析を実施しました。

・当社グループのビジネスへの影響

気候関連リスクと機会が当社グループの戦略に及ぼした影響

影響を受けた戦略分野

影響の説明

製品及びサービス

当社グループが提供する主な製品・サービスは、主要3セグメントでの製造・販売です。製造業では設計と製造が事業活動の主体となりますが、排出量が大きい製造段階におけるGHG排出抑制活動が重要となります。

今後、2015年のパリ協定による国の方針や2020年10月の日本政府による2050年の「カーボンニュートラル宣言」などを受けて、規制の強化等により大幅なGHG排出削減が要請されるのは確実です。当社グループとしても、よりGHG排出量の少ない製品を開発し、市場へ供給することが必要であり、技術提案力と競争力の強化が鍵となります。

サプライチェーン及び/又はバリューチェーン

当社グループのサプライチェーン及びバリューチェーンは、製品を構成する資材(原材料、二次製品など)の生産・調達と、自社の製造工場での生産にかかわるものに大別されます。

2015年のパリ協定による国の方針においても部門別の2030年度の排出量目安が示されており、資材生産や生産工場は産業部門に該当することから、削減が求められると想定されます。具体的には、気候変動抑制のためのGHG排出抑制に向けた対策から、資材生産時や製品生産時のGHG排出抑制のための規制強化に伴い、炭素税の賦課や追加の設備投資などによるコスト増加が想定されます。

研究開発への投資

当社グループは、常に先端製品の開発・供給を目指しており、技術開発・研究開発が事業成長には極めて重要です。

2015年のパリ協定による国の方針や法規制によりGHG排出量の大幅な削減が求められるなか、それを実現するための技術の開発・保有が必要不可欠です。具体的には、カーボンニュートラル生産やカーボンニュートラル製品に関する技術開発が課題となります。

運用

当社グループの主要3セグメントの中でも、主力事業であるVCCS事業及びCTC事業では、工場の生産工程からのGHG排出量が多く、脱炭素化に向けた社会的潮流は、炭素税、再生可能エネルギー導入量・価格など、さまざまな運用リスクと機会があります。当社は、このようなリスク・機会を踏まえ、2030年度に2014年度比で35%の自社工場からの温室効果ガス(Scope1・2)を削減することを目標に具体的な施策を推進しており、工場の操業に伴う排出量の削減は重要な課題となります。

 

気候関連リスクと機会が当社グループの財務計画に及ぼした影響

影響を受けた戦略分野

影響の説明

資産

シナリオ分析の結果、低炭素化・脱炭素化への対応が喫緊の課題であるとの認識から、新規建物構築やオフィス選定に際してより高い省エネルギー性能を求めたことで、より高い取引価格となったという影響がありました。また、生産設備及びその付帯設備、工場インフラ機器、社用車(BEV・HEV、急速充電器)等についても、同様の影響がありました。

 

 

ヘ)指標と目標

当社グループは、2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、自社工場からの温室効果ガス(GHG)排出量(Scope1・2)を2030年度に2014年度比で35%削減することを、2021年10月に目標として設定しておりますが、2024年1月にSBTi(Science Based Target Initiative)に対するコミットメントレターが受理されたことを受け、同イニシアティブに合致するGHG排出量削減目標及び同削減計画を策定中です。

今後も、新目標のSBTi認定取得と当該目標の達成に向けて、系統電力における再生可能エネルギーの利用拡大、エネルギー原単位削減、自家消費型再生可能エネルギー導入、グリーン電力調達などを柱として加速させるとともに、Scope3における温室効果ガス排出量削減への取り組みについても強化してまいります。

 

なお、気候変動に関するデータや具体的取組み等最新の情報は、下記の当社コーポレートサイトをご参照ください。

https://www.yokowo.co.jp/company/csr/warming.html

 

b. 化学物質管理と汚染防止

イ)基本的な考え方

当社では、環境方針の中で環境関連法規及び顧客要請事項の遵守を掲げており、行動指針の一部として以下のとおり定めております。

・環境及び人体に有害な影響を与える化学物質に対して、異常時、緊急時を含めた予防処置、対応処置を定め環境汚染の予防を行なうとともに、有害化学物質の使用量削減を図ります。

・環境関連法規、条例等の要求事項及び顧客要求事項を遵守し、さらに自主基準を定め環境管理の向上に努めます。

ロ)ガバナンス及びリスク管理

前記「a. ハ)ガバナンス」に記載の体制により、計画立案・リスク管理・進捗管理及び報告等を行っております。

ハ)指標と目標

環境や人体に有害な影響を及ぼす化学物質に対して、異常時や緊急時を含めた予防措置や対応策を定め、環境汚染を予防するとともに、有害化学物質使用のゼロ化に向けて推進いたします。

ニ)主な取組み

当社グループでは、有害化学物質管理基準を定め、当社グループが生産及び販売する製品に加えて使用する部品、材料等に含有される化学物質について管理対象を明確にするとともに、当社グループの社内及び取引先に周知徹底し、環境品質の向上を図っております。同管理基準では、原材料・部品等の受け入れから出荷まで、化学物質の管理方法を定めております。

製品に使用されている構成部品については、サプライヤーとの情報共有に重点を置き、ICP分析機や蛍光X線分析機により厳しくチェックするとともに、世界の自動車メーカー・電機メーカーの変化する化学物質規制要求に対応した製品を供給しています。

 

なお、化学物質管理に関するデータ等最新の情報は、下記の当社コーポレートサイトをご参照ください。

https://www.yokowo.co.jp/company/csr/pollutionchemical.html

 

c. 水資源管理及び廃棄物削減・リサイクル

イ)基本的な考え方

当社グループは、環境方針に基づく行動指針において、省エネルギー・省資源・リサイクルを積極的かつ継続的に推進し、地球環境保全に努めることとしており、その一環として、水資源管理及び廃棄物削減・リサイクルに取り組みます。

ロ)ガバナンス及びリスク管理

前記「a. ハ)ガバナンス」に記載の体制により、計画立案・リスク管理・進捗管理及び報告等を行っております。

ハ)指標と目標

・水資源管理

当社グループの水の使用量は、生活用水が大部分を占めており、売上高当たりの水使用量を原単位で計測しております。前年度比1%の水使用原単位削減を目標に取り組んでおります。

・廃棄物削減・リサイクル

当社グループは、事業活動による廃棄物の排出量を削減するとともに、リサイクル率を80%以上にすることを目標に活動を進めております。

 

なお、水資源管理及び廃棄物削減・リサイクルに関するデータ等最新の情報は、下記の当社コーポレートサイトをご参照ください。

https://www.yokowo.co.jp/company/csr/environment.html

 

② 地域社会

a. 基本的な考え方

当社グループは、「地域社会」を重点課題(マテリアリティ)の1つに選定するとともに、地域社会の一員として、様々な社会貢献活動を推進しております。地域の発展を支える活動や、社会が抱える課題の解決に寄与する取組みを通じて、地域社会と共に発展していくことを目指しております。

b.主な取組み

イ)地域に根差した活動

・富岡市と連携し、地域住民や従業員の子供を対象とした野球イベントやティーボールなどのスポーツ教室の開催

・中国子会社従業員有志で結成した「友華ボランティア服務隊」による、環境保護活動やPCR検査などでのボランティア活動参加

ロ)持続可能な社会の実現に向けた活動

・フィリピン子会社従業員による植樹ボランティア活動

ハ)地域の発展に寄与する活動

・富岡市におけるネーミングライツパートナーとしての活動

・ベトナム子会社における地元教育機関との連携

 

なお、地域社会への貢献等に関する詳細やデータ等最新の情報は、下記の当社コーポレートサイトに掲載している「ヨコオ統合レポート2023」(「地域社会」はp.50)をご参照ください。

https://www.yokowo.co.jp/ir/library/annualreport.html

 

③人権尊重

a. 人権方針

当社は、2023年4月開催の取締役会において、「ヨコオグループ人権方針」を決定いたしました。その概略は以下のとおりです。

 

ヨコオグループは、「人と技術で、いい会社をつくり、いい社会につなげる。」をパーパス(存在意義)と位置付けています。そして、多様な仲間の声に耳を傾け、世界に目を向け、従業員を支える家族、お客様、お取引先様、地域の皆様など、すべてのステークホルダーの方たちと一緒に、幸せないい未来の姿を思い描き、「新しい」を生み出し続ける進化永続企業を目指しています。

「ヨコオグループ人権方針」(以下、「本方針」)は、ヨコオグループ(以下、「私たち」)のパーパス(存在意義)の基盤として、事業活動において関わるステークホルダーの人権を尊重するという私たちの姿勢と責任を示すものです。そして、本方針は、人権に関する最上位の方針として、私たちが人権に関する取り組みを継続して進めていく上での指針となるものです。

本方針は、取締役会の監督の下、人権・労働・倫理マネジメント委員会がその運用を担います。

・人権尊重に対する基本姿勢

本方針の適用範囲とお取引先様への期待

法令の遵守と国際規範の尊重

・人権デュー・ディリジェンスの実施

人権デュー・ディリジェンス体制の整備

ステークホルダーとの対話

是正・救済

苦情処理メカニズム

研修・教育

情報開示

・個別の人権課題への取り組み

強制労働の禁止

児童労働の禁止

差別の禁止

非人道的な扱いの禁止

結社の自由及び団体交渉権

労働時間及び賃金

労働安全衛生

外国籍労働者の人権

 

b. 人権デューディリジェンス

当社グループは、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づき、人権を尊重し、救済するための体制を強化しています。2022年に発足した人権労働倫理マネジメント委員会を中心として、国内外の子会社及び関係部門と連携しながら、人権・倫理に関する重要施策を審議し、事業活動を通じた人権への負の影響を特定するとともに防止・軽減し、取組みの実効性を評価したうえで、どのように対処したかについて説明・情報開示する人権デューディリジェンスプロセスを実施し、個別の人権課題に取り組みます。

2023年度においては、グループ従業員を対象に質問票による調査を行ない(従業員ベースのカバー率:99%)、リスクの特定/分析評価/対策の実行/開示/サプライヤー展開/サプライヤー有効性の確認を実行いたしました。その結果、グループの適合化に向けた体制整備/サプライチェーンへの展開/苦情処理メカニズムの整備/ダイバーシティの促進の4項目が今後の重点課題として抽出され、2024年度より本格的に取組みを進めております。

 

上記の人権方針等人権尊重の取組みの詳細については、下記の当社コーポレートサイトに掲載しております。

https://www.yokowo.co.jp/company/csr/humanright.html

 

④人的資本

a. 多様性と包摂性

イ)基本的な考え方

当社グループでは、「多様性と包摂性」を重要課題(マテリアリティ)の一つと定め、国籍・性別・世代にとらわれず、多様な人材を採用・育成し、従業員一人一人が最大限に力を発揮できるよう、個性の尊重と校正・公平な処遇、働きやすい職場づくりに努めます。

ロ)多様性に関する具体的な取組みと目標

・女性活躍推進

当社は、製造業という業態から女性正社員の採用数が少なく、母集団が小さいため、女性リーダー比率(全女性社員に占める係長職以上の女性の社員の比率)も男性と比べて低いのが現状です。この女性リーダー比率を2030年までに男性と同等以上とすることを目標として、女性の社外役員就任や管理職への積極的な登用を行っております。

また、女性従業員による「ラウンドテーブル」(座談会)を開催し、そこで出た意見や要望を集約して、業務のあり方等を順次改善しております。

・外国人人材の積極的採用と育成

「TISP(Tomioka International Specialist Park)プロジェクト」を中心的な取組みとして推進しております。本プロジェクトは、外国籍のスペシャリスト人材を積極採用・育成し、当社のマザー工場である富岡工場を中心に配置する構想です。2030年の目標として、120名の配置を掲げており、2022年度実績は72名です(日本国内勤務を継続している者だけでなく、母国にある当社グループ会社に勤務している者も、実績人数に参入しています)。

 

このプロジェクトにおいて、日本在住の外国籍の従業員はもとより、海外在住の従業員も積極的に採用しています。特に、主力生産拠点がある中国、ベトナム、マレーシアでは、現地の大学を卒業した新卒入社者に対して、日本での数年間の研修プログラムを実施しております。対象者には個別のCDP(Career Development Plan)を作成して計画的な人材育成を行っており、日本での研修を修了した従業員の多くが戻り活躍しております。

・障がい者雇用

当社グループの障がい者雇用率の2030年度目標として「法定雇用率の1.5倍」を設定し、その実現に向けて、2022年4月に業務受託・請負を業とする「株式会社ヨコオみらいサポート」を設立いたしました。2023年3月に特例子会社の認定を受けたことを機に、障がいを持つ方の雇用と活躍促進にさらに積極的に取り組んでおります。

・キャリア採用の強化

キャリア採用については、当社は過去から、特に新技術導入・新分野進出に際して積極的に行ってきており、2022年度末時点で当社単体に在籍する従業員に占める中途入社者の比率は62.4%です。数値目標等は特段設定しておりませんが、今後も国籍・性別・世代等にかかわらず、積極的に推進してまいります。

 

b. 労働安全衛生

イ)基本方針

当社(株式会社ヨコオ及び国内外のグループ会社を含む)は、当社の重要な財産である社員(以下「社員」といいます。)及び構内協力会社、訪問者等の当社活動における利害関係者(以下「利害関係者」といいます。)の安全と健康を経営の最優先課題と位置付け、安全を常に確保し、社員及び利害関係者が安心して働ける職場を追求するとともに心身の健康増進に努めます。

1) 労働安全衛生関連法及びその他の要求事項を順守し、社員及び利害関係者の安全と健康を最優先するとともに継続的活動を展開します。

2) 労働安全衛生マネジメントシステムを構築・維持し、継続的な改善を行います。

3) 職場における危険源の特定と労働安全衛生リスクの評価に基づき目標を設定し、OH&Sの改善、及びリスク低減を目指します。

4) 安全で健康な職場環境を実現させるため、必要な教育を実施し、社員の労働安全衛生に対する理解と意識の向上を図ります。

5) 労働安全衛生方針を文書化し、全社員に周知するとともに利害関係者に公表し、目標達成に向けた継続的な改善活動を展開します。

6) 社員との協議と参加により、継続的な労働安全衛生パフォーマンスの向上を図ります。

ロ)管理体制

当社は、2018年にOHSAS18001の認証を取得(2021年よりISO45001に移行)し、そのマネジメントシステムにおいて、経営トップを筆頭として実務上の中心となる各部門の部門安全衛生管理者・推進者で構成する「安全衛生推進委員会」を毎月開催しております。また、産業医等を交え労使の代表者が協議を行う場として、「安全衛生委員会」を法令に基づき毎月開催しております。2024年4月より、サステナビリティ推進部内に環境・労働・安全課を設置し、各会議体の推進を中心に安全衛生に資する施策のさらなる充実化を図っています。

ハ)目標及び実績

項目

2023年度実績

2030年度目標

社内労働災害発生件数(連結・国内)

0

ゼロ

新規付与有給休暇の取得率(当社単体)

67.6

90

 

 

なお、労働安全衛生に関するデータ等最新の情報は、下記の当社コーポレートサイトをご参照ください。

https://www.yokowo.co.jp/company/csr/safety.html

 

c. 人材育成及び社内環境整備

イ)基本方針

当社グループは、競争優位につながるプロダクト/プロセス・イノベーションに必要な技術知識体系を特定し、そのために必要な従業員教育・人材獲得・外部機関連携の組み合わせによる"知"のエコシステムを構築していくパーソネル・イノベーションを、経営課題として取り組んでおります。

その中で、人材育成及び社内環境整備については、「社員は企業競争力の源泉となる財産であり、社員が学び成長する場を作ることで、事業が強くなり会社が成長し、当社に勤めると大きく成長できると社員が実感できる。さらにそれが優秀な人を当社に惹きつける。そういった正の循環を生み出す。」という基本的な考え方に基づき、2023年4月に新設した「人財育成センター」がその司令塔となって、当社グループ社員の職務遂行能力のレベルアップと、トップガン人材層の先端技術実装能力の競合優位の確立を目指しております。

 

ロ)目標設定・取組み等

以下のプロセスにより、上記イ)基本方針にいう「正の循環」の創出に取り組んでおります。

・当社が達成すべき人財育成目標の設定

・当社が達成すべき人財育成目標と現状とのギャップの明確化

・当社グループ全体(海外拠点も含む)を対象とした、上記ギャップを埋めるための人財育成プログラムの策定と推進

・当社グループ全体を対象とした人財育成のKPIの設定と進捗の把握

・当社グループ全体を対象とした人財育成予算の設定と管理

・支援機関との関係構築と運用

・社員の内発的学習意欲を喚起する企業風土の醸成

2022年10月より運用中のタレント・マネジメント・システムをベースとして、2023年度中は人財育成目標の検討を進め、国内を中心に上記プロセスの確立に努めました。2024年以降は、現在構築中のジョブ型人事制度との連携やグローバル研修プログラムとの連動を目指してまいります。

 

d. 従業員エンゲージメント

・従業員エンゲージメント調査の実施

当社従業員が、会社の目指す方向性(パーパス/ビジョン/バリュー)に共感し、従業員個々の目指す方向性(各自多様な自己実現)との一致度合いを把握すること、当社が持続的に成長し続ける土台となる"いい会社"を実現するために職場環境の改善領域を把握することを目的として、2022年10月に、当社単体の正社員・契約社員を対象として、従業員エンゲージメント調査を実施いたしました。

同調査の結果は原則として部門単位でフィードバックし、2021年度に実施したラウンドテーブル(座談会)から集約した従業員の意見・要望等と併せて、社内制度の改善等に活かし、従業員エンゲージメントの継続的向上に努めてまいります。

 

⑤情報セキュリティ

a. 基本方針

株式会社ヨコオグループ (以下、「当社グループ」といいます。)は、社会から信頼され続けるために、お客様やお取引先様からお預かりする情報はもとより、当社グループが取り扱うすべての情報資産の重要性を常に認識して、その不適正な開示、情報の漏洩、目的外の使用を防ぎ適切に保護するため、ここに「情報セキュリティポリシー」を定めます。

・法令遵守

当社グループは、情報セキュリティに関する法令、国など公的機関が定める指針、会社規則を遵守します。

・運用体制

当社グループは、当社グループの情報セキュリティを統括する情報セキュリティ委員会を設置するなど、情報セキュリティの運用体制を構築するとともに、その維持と改善活動を継続的に実施していきます。

・情報資産の管理

当社グループは、情報セキュリティ確保のため、情報資産の重要性に応じた取扱いを機密情報保護規程として定め、適切に管理します。

・教育

当社グループは、全ての役員と従業員及び当社業務関係者の意識向上を図るため、情報セキュリティに関する法令、国など公的機関の定める指針、会社規則等を含め、日常の業務において実施すべき事項と、社会人として守るべき情報マナーについて教育を行います。

・事故の予防と発生時の対応

当社グループは、情報セキュリティ事故の発生予防に努めます。また、万一、事故が発生した場合には、その影響を最小限にとどめるための対応策を実施するとともに、原因を迅速に究明し、適切な対策及び再発防止策を速やかに講じます。

b. 管理体制及び取組み等

当社は、情報セキュリティ管理を経営の最重要課題の1つとして認識し、適切に管理するため、当社及び主要生産拠点においてISO27001の認証を取得し、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の構築・運用、定期及び随時の情報セキュリティ教育など、グループ全体での情報セキュリティ活動を推進しています。

 

なお、情報セキュリティに関する最新の情報は、下記の当社コーポレートサイトをご参照ください。

https://www.yokowo.co.jp/company/csr/security.html

 

⑥公正取引

a. 基本的な考え方

当社は、企業理念体系として定めているパーパス/ビジョン/バリューに基づいて健全な事業活動を推進するとともに、「CSR方針」及び「CSR行動規範」に則って、社会的良識をもって行動します。

公正な取引については、「CSR行動規範」の「公正な取引」において、以下のとおり定めております。

・当社及び社員は、公正、公明かつ自由な競争を通じて、製品及びサービスを調達し販売します。

・当社及び社員は、優先的地位を濫用することにより、取引先に不利益を与える行為を行いません。

・当社及び社員は、平和・安全の維持のため、法令と規程に従い適切な輸出管理を行います。

CSR方針及びCSR行動規範の詳細については、下記の当社コーポレートサイトをご参照ください。

https://www.yokowo.co.jp/company/csr/conduct.html

b. 管理体制及び取組み等

・原材料等の調達や間接購買については購買本部が、安全保障輸出管理についてはサステナビリティ推進部が、それぞれ所管しており、社内規程において法令等に則った手続を定めるとともに、対面研修・e-ラーニング等による社内教育を実施し、公正な運用の徹底に努めております。

 

 

3 【事業等のリスク】

当社グループの経営成績、財務状況及び株価に影響を及ぼす可能性のあるリスクには以下のようなものがあります。なお、文中における将来に関する記載は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであります。

(1) 一般リスク

①国内外活動及び海外進出に潜在するリスク

当社グループの販売及び生産活動は、日本国内のみならず米国・欧州・アジア諸国等世界全域に幅広く行っております。これら関係諸国での事業活動に伴い、以下に掲げるリスクが内在しております。

a.予期しない法律又は規制の変更

b.不利な政治又は経済要因

c.未整備の技術インフラ

d.潜在的に不利な税制

e.テロ、戦争、デモその他の要因による社会的混乱

f.労働力需給逼迫に伴う賃金・人材確保コストの急増

g.拠点における不正行為

生産活動については、その80%以上を中国・マレーシア・ベトナム・米国・フィリピンの生産子会社が行っておりますが、当該国での法環境の変化、経済政策の変更があった場合は、当社の業績見通しに大幅な変動が生じる可能性があります。

また、当社では、内部統制システムを整備することはもとより、行動規範において信頼の確立や法令遵守などを従業員に求め、ハンドブックを作成し、周知徹底させています。しかしながら、このような施策を講じても、複雑化する法令や規制への抵触、役員、従業員による不正行為は完全には回避できない可能性があります。このような法令違反や不正行為等が発生した場合、社会的信用が低下し、取引停止、罰金・罰則等により、当社グループの事業展開及び経営成績に影響を与える可能性があります。

当社グループは、本社を含む各拠点において、必要性に応じて規程の制定・改廃、ガイドライン(法令情報のタイムリーな収集などを含む)の制定や教育の強化を行い、継続的な教育実施をすることでリスク低減に取り組んでまいります。また、グループ全社をカバーする内部通報窓口を設置し、不法行為等のリスクが生じた際にはいち早く対処・是正する体制を整えております。さらに、業務の適正化及び効率化の観点から業務プロセスの継続的な改善・標準化についても積極的に推進しております。

②市場ニーズの変動

当社グループは、最終消費製品メーカー等に対し部品を製造販売する事業を営んでおり、主要市場である自動車、半導体検査、携帯端末、先端医療機器の各市場の動向、当社顧客業績やニーズの動向により、当社グループの受注が大きな影響を受けることがあります。主要市場の縮小や顧客業績の不振、市場ニーズの取りこぼし、開発要件不一致は、当社グループの受注減少、売上高の減少となる可能性があります。また、顧客が法的整理等に至った場合は、当社グループの当該顧客に対する債権の全部又は一部が回収不能となる可能性があります。

当社グループでは、顧客ニーズにいち早く答えるために常日頃から変化に対して敏感に察知するよう、市場/顧客の変化・拡大等を見据えた市場マーケティングに努めております。

また、2023年4月に新設したインキュベーションセンターでは、新規事業の育成・確立とともに、ハードウェアからソフトウェアへの転換などビジネスモデル変革を目指しております。

③為替レートの変動に伴うリスク

当社グループの販売高の70%以上及び生産高の80%以上は、海外で発生しております。各地域における売上、原価、保有資産等多くは現地通貨建てであり、連結財務諸表上は円換算しております。為替レートの急激な変動によりこれらの財産・業績等の円換算後の金額が変動し、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を与える可能性があります。

なお、当連結会計年度末における通貨別構成の下では、他の通貨に対する円高は当社グループの損益にマイナスの影響を、円安はプラスの影響を及ぼします。

当社グループは、外貨建債権債務の管理の徹底や、グローバル全拠点を網羅したトータルの通貨バランスを取ることなどにより、為替レート変動による業績変動リスクの軽減に努めております。

④保有株式の株価変動に伴うリスク

当社グループが保有する金融資産には、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準等に則り、期末時点における時価により評価替えを行う有価証券等が含まれております。期末時点における当該有価証券等の時価が著しく下落したときには、回復する見込みがあると認められる場合を除き、当社グループの定める基準に従い評価損を計上することにより、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を与える可能性があります。

有価証券の適正な保有状況を毎年見直していきます。

 

⑤減損会計適用に伴うリスク

当社グループが保有する事業用固定資産は、減損会計適用対象となっております。当該事業用固定資産を活用する事業の収益性が著しく低下した場合、所定の算定基準に従い当該事業用固定資産の帳簿価額を減額することにより、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を与える可能性があります。

当社グループは、各事業の継続的な収益力向上を推進するとともに、監査法人などの専門家との定期的なコミュニケーションなどにより会計基準のアップデートやその考え方の浸透に努めております。

⑥知的財産権に関するリスク

当社グループが設計・製造・販売する製品やサービスに関する知的財産権について、当社グループまたはその顧客等が第三者から特許侵害訴訟等を提起された結果として、当社グループが損害賠償責任を負う可能性、当該製品が一定の国・地域で製造・販売を差し止められる可能性、又は当社グループの顧客等に対して損害賠償責任を負う可能性があります。

当社グループでは、特許等の知的財産権の管理を行う知的財産権部門を強化し、ポートフォリオ戦略による当社グループの開発技術を積極的に権利化するとともに、i)当社の事業に関係する新規特許の定期的な内容確認の実施、ii)製品の開発・販売に際し、第三者の知的財産権との抵触・類似が発生しないように事前調査を行い、抵触等可能性がある場合は事前に回避策をとることを規程化するなど、第三者の知的財産権の侵害を未然に防止する体制の構築に努めております。

⑦自然災害や疾病、突発的事象発生のリスク

地震等の自然災害、インフルエンザなどの感染症や突発的事象に起因する設備の破損、電力・水道の供給困難等による生産の停止は、当社グループの経営成績及び財政状況等に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、定期的な防災訓練の実施及び社員の安否確認システムの構築実施、必要とされる安全対策や事業継続・早期復旧のための対策として、事業継続計画(BCP)の拡充を進めております。地震対策として新棟の建設や老朽建屋の更新、水害対策として本社ビル移転など、様々な施策を講じております。

(2) マテリアリティ・リスク

①コーポレート・ガバナンスに関するリスク

コーポレート・ガバナンスは、取り巻く経営環境が激変する状況下で企業が柔軟かつスピーディにリスクテイクしたり、不祥事を防止したりするために継続的な強化が必要不可欠であり、当社グループにおいてこれらの機能が不十分である場合、業績悪化・低迷、株価下落、評判の低下などを招く可能性があります。
当社は、取締役会における独立社外取締役の比率を40%以上(7名中3名、43%)としているほか、指名・報酬諮問委員会(委員3名中2名が独立社外取締役、そのうちの1名が委員長)において取締役・執行役員の指名及び報酬等の決定プロセスの透明性をより高めることなどにより、当社のコーポレート・ガバナンスの継続的な強化に取り組んでおります。また、グループ統括推進部を中心として国内外のグループ会社のガバナンス強化にも取り組むとともに、内部監査室とも連携し3線ディフェンス体制を構築しております。

②人員不足に伴うリスク

当社グループは最終消費製品メーカー等に対し部品を製造販売する事業を営んでおり、その製品やサービスを提供するために必要な人材の採用の拡大及び継続的な育成に取り組んでおります。しかし、昨今の人材獲得競争の激化から、当社が必要とする技術やノウハウを有する人材を確保することが困難な場合が増えております。この状況が継続した場合、中長期的な事業推進、生産供給能力や製品品質の確保に影響を及ぼす可能性があります。

本リスクを低減する対策として、現在在籍している従業員による固定的な業務遂行環境から、機動的に複数の業務を自主・自立的に遂行できる人材の能力開発、指導、多様性を考慮した働き方を柔軟にすることにより、人材がより幅広く活躍できる職場への変革に取り組んでおります。また、従業員の業務効率・生産性向上を目的として、マイクロソフト社の生成 AI サービス「Microsoft Copilot for Microsoft 365」を導入し、順次利用を拡大しております。

③脱炭素社会に向けた取組みに関するリスク

気候変動問題に対する最大の方策である脱炭素社会の実現は極めて重要な課題です。当社の脱炭素の取組みが著しく不十分で改善がみられないと評価された場合、顧客からの取引縮小ないし停止、当社への出資を引き揚げるダイベストメント、地域社会からの評判低下などにより、業績悪化・株価下落などの可能性があります。

当社グループは、グローバル社会の一員としての責任を果たすべく、2050年のカーボンニュートラル・脱炭素社会の実現に向けて、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への賛同及び2030年度でのGHG削減目標を掲げた環境方針を制定しております。再生可能エネルギー調達の拡大や、GHG排出量のより少ない原材料への切り替えの検討等を通じ、GHG排出量の削減に貢献するとともに、適宜計画の見直し等の改善努力とその進捗状況を積極的に開示してまいります。

④SDGsの取組みに関するリスク

SDGs(持続可能な開発目標)への取組みは、世界的に広がり、深く浸透しつつあります。当社グループのSDGsへの取組みが著しく不十分である、あるいは取組み内容の開示が不十分であると評価された場合、脱炭素の取組みの場合と同様に、顧客からの取引縮小、当社への出資を引き揚げるダイベストメント、地域社会からの評判低下などにより、業績悪化・株価下落などの可能性があります。

当社グループは、脱炭素やSDGs(水資源保護、生物多様性、人的資本)への取組みなどについて、改善・向上を常に行うとともに、それらの内容を、毎年発行する統合レポートや当社コーポレートサイトにおいて積極的かつ継続的に開示してまいります。

⑤製品不良に関するリスク

当社グループが製造・販売する製品は、顧客の製造工程で使用される部品、半完成品、又は検査工程で使用される検査機器です。顧客との仕様・要件確認不一致や当社製品の欠陥による顧客財物等の破損等や顧客製品の市場回収等に伴い発生した費用等について当社が賠償責任を負った場合、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を与える可能性があります。

当社グループでは、仕様・要件の確認強化及び関係部門間の連携をさらに強化しつつ、不良ゼロ化活動などの品質向上活動や工程の重要性に対する社員の認識向上を推進するとともに、万が一の場合に備えてPL(製造物責任)保険に加入しております。

⑥原材料等の調達・デリバリーに関するリスク

当社グループは、生産活動・事業活動に必要な原材料・部品・物品等を国内外から調達しております。戦争・紛争の勃発、世界各国のインフレーション進行、大規模な感染症の拡大、その他不測の事態の発生により、それら原材料等の仕入れコスト及び調達に係る配送コストが著しく上昇し、さらには、各国の政策・法改正により仕入れや配送そのものが不可能となって当社製品出荷が停滞・停止することにより、当社の経営成績及び財務状況等に影響を与える可能性があります。

⑦情報セキュリティに関するリスク

当社が取得し、あるいは顧客等から預かる情報は、経営上重要な資産であり、厳格かつ適正に取り扱う必要があります。当社の情報資産が、内部からの情報漏洩行為や外部からのサイバー攻撃などにより漏洩・破壊・抹消・改ざんされた場合、経営上重大な損害・損失を被る可能性があります。

当社グループは、情報セキュリティの国際標準規格であるISO27001の枠組みに沿って強固な情報セキュリティ体制を構築し、役員・社員への情報セキュリティ教育を継続的かつ定期的に実施するとともに、内部・外部による定期的な監査により、情報資産の保護及び適切な運用の確保・向上を図っております。なお、2020年3月より導入したテレワーク(在宅勤務)制度下においても、通信暗号化ソフトウェアの利用などにより、十分な情報セキュリティを確保しております。

⑧M&Aに関するリスク

当社グループは、事業上のニーズに応じて事業買収などのM&Aを行っておりますが、買収した事業あるいは会社とのシナジーを十分に発揮できるような状況・体制を創出できないことで、M&Aで想定した企業価値の向上を実現できない可能性があります。

当社グループは、事業リスクを全社横断的に把握・検討する「事業リスク管理委員会」がさらに積極的・機動的に意思決定プロセスに関与することで、想定した以上のシナジー発揮・企業価値向上に努めてまいります。

⑨敵対的買収に関するリスク

当社グループが属する自動車/半導体検査/携帯情報端末/先端医療機器の各業界は、技術革新や競合会社間の合従連衡など業界構造が激しく変動し続けており、その中で、当社も敵対的買収を仕掛けられる可能性があります。

当社グループは、既存ビジネスの深耕拡大や新規ビジネスの獲得、M&Aなどにより継続的に企業価値の向上を図ってまいります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

また、当連結会計年度より、下記のとおり報告セグメントの区分及び名称を変更しております。

「VCCS(Vehicle Communication Comfort & Safety)」= 旧「車載通信機器」-「プラットフォーム事業」

「CTC(Circuit Testing Connector)」= 旧「回路検査用コネクタ」

「FC(Fine Connector)・MD(Medical Device)」= 旧「無線通信機器」-「先端デバイス事業」

「インキュベーションセンター」=「プラットフォーム事業」+「先端デバイス事業」

詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等)セグメント情報」の「4 報告セグメントの変更等に関する事項」をご参照ください。

 

(1) 財政状態の状況

① 事業全体及びセグメント情報に記載された区分ごとの状況

a. 事業全体の状況

(資産)

当連結会計年度末における流動資産は、現金及び預金増加1,015百万円、売上債権増加778百万円、棚卸資産増加495百万円などにより、49,169百万円(前期末比2,813百万円の増加)となりました。売上債権の増加は、主にVCCSセグメントにおける受注増に伴う売上増加によるものです。

固定資産につきましては、有形固定資産増加1,677百万円、投資その他の資産増加827百万円などにより、27,238百万円(前期末比2,937百万円の増加)となりました。後掲「b. セグメント情報に記載された区分ごとの状況」に記載のとおり、各事業セグメントにおいて積極的な量産投資・開発投資等を実施したことによります。

以上の結果、当連結会計年度末における資産合計は、76,408百万円(前期末比5,751百万円の増加)となりました。

(負債)

当連結会計年度末における流動負債は、短期借入金増加354百万円、一年内返済予定の長期借入金増加1,600百万円などにより、19,625百万円(前期末比1,735百万円の増加)となりました。

固定負債につきましては、リース債務増加466百万円繰延税金負債増加331百万円などにより、6,398百万円(前期末比856百万円の増加)となりました。リース債務の増加は、主に富岡工場におけるマイクロプロセスR&Dセンター(研究開発新棟。以下「MPセンター」)の稼働開始に伴う備品リース増加によるものです。

以上の結果、当連結会計年度末における負債合計は、26,023百万円(前期末比2,592百万円の増加)となりました。

(純資産)

当連結会計年度末における純資産は、為替換算調整勘定増加1,957百万円、親会社株主に帰属する当期純利益1,511百万円の計上、配当金の支払1,095百万円などにより、50,384百万円(前期末比3,159百万円の増加)となりました。

b. セグメント情報に記載された区分ごとの状況

<VCCS>

収益性が低下し将来の回収可能性が見込めなくなった固定資産について減損損失72百万円を計上しましたが、設備投資などに伴う有形固定資産及び無形固定資産の増加2,363百万円などにより、当連結会計年度末におけるセグメント資産は、43,374百万円(前期末比1,107百万円の増加)となりました。

上記の設備投資(当連結会計年度における投資総額1,933百万円)のうち主なものは、ベトナム生産子会社であるYOKOWO VIETNAM CO., LTD.及びフィリピン生産子会社であるYOKOWO MANUFACTURING OF THE PHILIPPINES, INC.における増設など、能力増強投資であります。

<CTC>

市場停滞に伴う業量縮小による売掛債権の減少がありましたが、設備投資などに伴う有形固定資産及び無形固定資産の増加1,574百万円などにより、当連結会計年度末におけるセグメント資産は、19,355百万円(前期末比1,672百万円の増加)となりました。

上記の設備投資(当連結会計年度における投資総額1,459百万円)のうち主なものは、MPセンターの稼働開始に伴うインフラ設備増強など、開発能力増強投資であります。

<FC・MD>

設備投資などに伴う有形固定資産及び無形固定資産の増加723百万円などにより、当連結会計年度末におけるセグメント資産は、10,174百万円(前期末比1,846百万円の増加)となりました。

上記の設備投資(当連結会計年度における投資総額524百万円)のうち主なものは、中国生産子会社である東莞友華汽車配件有限公司におけるFC事業の量産設備等の更新と富岡工場におけるMD事業の能力増強投資であります。

 

<インキュベーションセンター>

設備投資などに伴う有形固定資産及び無形固定資産の増加80百万円などにより、当連結会計年度末におけるセグメント資産は、973百万円(前期末比535百万円の増加)となりました。

上記の設備投資(当連結会計年度における投資総額12百万円)のうち主なものは、プラットフォーム事業における量産に向けた能力増強投資であります。

 

(2) 経営成績の状況

① 事業全体及びセグメント情報に記載された区分ごとの状況

a. 事業全体の状況

当連結会計年度における世界経済は、主要各国の金融引き締めの影響や中国経済の先行き懸念、ウクライナ・中東情勢等の地政学リスクの高まりによる資源・原材料価格の高騰などを受けて、全体としては成長率が鈍化しました。

当社グループの主要市場である自動車市場、半導体検査市場、携帯通信端末市場、先端医療機器市場におきましては、欧米・中国等でのEV(電気自動車)の販売台数急拡大や、生成AIの進化加速など、業界構造や各業界の事業モデルを変えうる先進アプリケーションの領域拡大とともに、製品/技術開発競争が激化しております。

このような状況の中、当社グループは、事業収益力の建て直しによる再成長を期し、経営基本方針に掲げる4つのイノベーション(プロダクト/プロセス/パーソネル/マネジメント)の推進に引き続き取り組みました。VCCSセグメントにおきましては、海上運賃の沈静化・安定推移のもと抜本的な事業構造改革を推進するとともに、原材料価格上昇分などに対する販売価格見直し交渉を継続して進めるなど、収益体制の大幅な改善に努めました。CTCセグメントにおきましては、半導体市場の低迷による影響を受けたものの、AI/5Gを契機として広がる事業成長機会をより確実に捉えるべく、技術/製造体制の最適化に加え、将来の半導体微細化対応と生産効率向上に向けた技術開発を進めました。

これらの結果、当連結会計年度における売上高は、VCCSセグメントが前期比で増収となりましたが、CTC及びFC・MDの両セグメントが減収となった結果、76,895百万円(前期比△1.4%)となりました。営業損益につきましては、VCCSセグメントの損益が大幅に改善したものの、FC・MDセグメントが減益となり、CTCセグメントが営業赤字となったほか、新規事業を中心としたインキュベーションセンターセグメントの営業赤字により、1,617百万円の利益(前期比△65.9%)となりました。経常損益につきましては、円安による為替差益2,099百万円を計上したことなどにより、3,710百万円の利益(前期比△34.6%)となりました。親会社株主に帰属する当期純損益につきましては、経常減益に加え、繰延税金資産取り崩しによる税金負担率の増加などにより、1,511百万円の利益(前期比△52.0%)となりました。

 

b. セグメント情報に記載された区分ごとの状況

セグメント別の業績は次のとおりであります。

<VCCS(主要製品:車載用アンテナ)>

当セグメントの主要市場である自動車市場は、第4四半期において一部顧客における減産があったものの、世界的な半導体不足・部品供給停滞などの影響が緩和され、販売は改善傾向となりました。地域別でも、米国/中国/日本国内市場を中心に販売台数が増加しました。

このような状況の中、主力製品であるシャークフィンアンテナ/GPSアンテナをはじめとする自動車メーカー向けアンテナの販売は、自動車の生産台数増及び円安効果などにより前期比で増加しました。

この結果、当セグメントの売上高55,583百万円(前期比+20.6%)と、前期比で増収となりました。セグメント損益につきましては、現地通貨高及び業量増に伴う中国/ベトナム生産拠点における労務費などの増加があったものの、増収に伴う増益、海上運賃の沈静化による物流費減、コストアップ分の回収進展などにより、3,100百万円の利益(前期は1,701百万円の損失)となりました。

<CTC(主要製品:半導体検査用ソケット及びプローブカード)>

当セグメントの主要市場である半導体検査市場は、生成AI関連が一躍脚光を浴びて活況を呈したものの、最大分野であるPC/スマートフォン向けの大幅減に加え、サーバー向け需要も振るわず、半導体メーカーの在庫調整や設備投資の抑制が相次ぎました。

このような状況の中、当社グループの主力製品である半導体後工程検査用治具の販売は、ロジック半導体検査用ソケットなどの受注減により、前期を大幅に下回りました。半導体前工程検査用治具の販売も、周辺機器を含めてワンストップでソリューションを提供するターンキービジネスや高周波電子部品検査用MEMSプローブカード(YPX)の販売が伸び悩み、前期を下回りました。

この結果、当セグメントの売上高は12,585百万円(前期比△43.7%)と、前期比で大幅な減収となりました。セグメント損益につきましては、労務費などの費用抑制を推進したものの、減収に伴う減益などにより794百万円の損失(前期は6,169百万円の利益)となりました。

 

<FC(主要製品:電子機器用微細コネクタ)・MD(主要製品:医療機器用部品/ユニット)>

当セグメントの主要市場である携帯通信端末市場は、ウェアラブル端末が多様化・高機能化により今後の成長が期待されるものの、世界的な景気悪化の影響などによりスマートフォンの出荷台数は低調となりました。POS端末市場につきましても、物流/製造を始めとする幅広い業界において、情報管理による業務効率化実現の観点から着実な成長を続けていましたが、需要は低調に推移しました。

このような状況の中、微細スプリングコネクタを中核製品とするFC事業におきましては、顧客の生産調整などの影響により、POS端末向けの受注減に加え、ワイヤレスイヤホンなどウェアラブル端末向けの販売が減少したことなどにより、売上高は前期を下回りました

MD事業につきましては、主要顧客である国内大手医療機器メーカー向けのカテーテル用部品の受注増に加えてユニット品の販売が堅調に推移したことなどにより、売上高は前期を上回りました。

この結果、当セグメントの売上高は、8,373百万円(前期比△7.5%)と、前期比で減収となりました。セグメント損益につきましては、FC事業における減収に伴う減益に加え、人民元高などによる中国生産拠点での労務費比率の上昇や事業構成変化などにより117百万円の利益(前期比△85.2%)となりました。

<インキュベーションセンター(主要製品:MaaS/IoT向けアンテナ及びソリューション)>

当社は、MaaS/IoTなどの新規成長市場や、高速大容量通信に向けた光通信市場に対し、新たなビジネス創出・ビジネスモデル革新を目指して、本格的な事業展開に取り組んでまいりました。当連結会計年度の組織変更に伴い、これら新たな事業分野の開拓を既存事業部から切り離し、プラットフォーム事業と先端デバイス事業で構成されるインキュベーションセンターを新たに報告セグメントとして区分しております。当セグメントの主要市場であるMaaS/IoT市場は、カーシェアリングなどモビリティの進展、あらゆるものがインターネットにつながるIoTの普及に伴い、順調に成長するものとみられております。

このような状況の中、プラットフォーム事業におきましては、IoT向けのスマートアンテナ技術を活用したMIMOアンテナや、MaaS/レンタカー向け車載鍵管理ソリューションの拡販を進めました

当セグメントに含めております先端デバイス事業につきましては、光通信市場向けに光電変換デバイス技術を活用した光コネクタの量産化に向けた体制構築を推進いたしました。

この結果、当セグメントの売上高は345百万円(前年同期比△19.7%)と、前期比で減少しました。セグメント損益につきましては、展開初期の新規事業が中心の当セグメントにおける売上高は小規模なものとなっており、投資が先行している段階にあることから、811百万円の損失(前期は534百万円の損失)となりました。

 

(事業セグメント別連結売上高 前期比較)                        (単位:百万円、%)

セグメントの名称

前連結会計年度

(自  2022年4月1日

  至  2023年3月31日)

当連結会計年度

(自  2023年4月1日

  至  2024年3月31日)

前 期 比

VCCS

46,089

55,583

+20.6

CTC

22,374

12,585

△43.7

FC・MD

9,051

8,373

△7.5

インキュベーション
センター

430

345

△19.7

その他

16

7

△54.9

合計

77,962

76,895

△1.4

 

 

c. 目標とする経営指標の達成状況等

前記「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」の「(2)目標とする経営指標」に記載のとおり、当社グループは、「ミニマム10(テン)」として、「売上高営業利益率・営業利益成長率・投下資本利益率・自己資本利益率を10%以上確保」の指標を掲げております。

当連結会計年度においては、VCCSセグメントの損益が大幅に改善したものの、CTC及びFC・MDの両セグメントが大幅な減収減益となったことなどにより、各指標は未達となっております。

本有価証券報告書提出日(2024年6月27日)現在、2025年3月期の業績見通しは2024年5月14日に公表した内容のとおりです。中期的には、前記「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」の「(4)会社の対処すべき課題」に記載の重点取組み項目を着実に遂行することにより、新中期経営計画(2025年3月期~2029年3月期)における経営基本目標であるミニマム10の安定的達成と連結売上高1,000億円の達成を目指してまいります。

 

② 生産、受注及び販売の状況

a. 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

生産高(百万円)

前期比(%)

VCCS

56,695

+27.2

CTC

12,573

△44.3

FC・MD

8,418

△6.4

インキュベーションセンター

243

△31.5

その他

7

△54.9

合計

77,938

+1.9

 

(注)  1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

2 金額は販売価格によっております。

b. 受注状況

当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前期比(%)

受注残高(百万円)

前期比(%)

VCCS

42,331

△10.0

4,643

+15.5

CTC

11,646

△45.0

1,002

+2.7

FC・MD

5,652

△34.9

600

+39.1

インキュベーションセンター

312

△31.5

18

△27.7

その他

7

△49.0

合計

59,950

△22.5

6,264

+14.9

 

(注)  1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

2 金額は販売価格によっております。

c. 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前期比(%)

VCCS

55,583

+20.6

CTC

12,585

△43.7

FC・MD

8,373

△7.5

インキュベーションセンター

345

△19.7

その他

7

△54.9

合計

76,895

△1.4

 

(注)  1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

2 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合

 

相手先

前連結会計年度

(自  2022年4月1日

  至  2023年3月31日)

当連結会計年度

(自  2023年4月1日

  至  2024年3月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

Toyota Motor North America, Inc.

10,040

12.9

12,565

16.3

 

 

 

(3) キャッシュ・フローの状況

① 現金及び現金同等物

当連結会計年度における現金及び現金同等物は、18,702百万円(前期比1,014百万円の増加)となりました。

② 営業活動によるキャッシュ・フロー

営業活動によるキャッシュ・フローは、減価償却費4,013百万円、税金等調整前当期純利益3,311百万円などの増加要因がありましたが、CTCセグメントにおける部材等の仕入減少に伴う仕入債務の減少1,780百万円などの減少要因により、4,823百万円の収入(前期比2,489百万円の収入減少)となりました。

③ 投資活動によるキャッシュ・フロー

投資活動によるキャッシュ・フローは、MPセンターの建設など有形固定資産の取得による支出3,917百万円、無形固定資産の取得による支出865百万円などの減少要因により、5,125百万円の支出(前期比732百万円の支出減少)となりました。

④ 財務活動によるキャッシュ・フロー

財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金による収入1,500百万円がありましたが、配当金の支払による支出1,090百万円などの減少要因により、260百万円の支出(前期は1,531百万円の収入)となりました。

⑤ 資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社の運転資金は、主に製品製造に使用する原材料や部品の調達に費やされており、製造費や販売費及び一般管理費に計上される財・サービスに対しても同様に費消されております。また、設備投資資金は、生産設備取得等生産体制の構築・強化、情報システムの整備等に支出されております。これらの必要資金は、利益の計上、減価償却費等により生み出される内部資金により賄うことを基本方針としております。

当連結会計年度の設備投資におきましては、MPセンターの稼働開始に伴う研究開発・製品開発投資や生産子会社における量産設備の更新等を中心に実施いたしました。また、2025年3月期からの5カ年を対象とした「新中期経営計画2024-2028」では、中長期的視点から、既存事業・既存技術の限界を突破し新たな成長力を獲得するため、コア技術のさらなる深化のための基礎研究投資、ADAS新製品における開発投資、MEMSプローブカード生産ライン新設など新規領域進出に向けた設備投資の実施を計画しております。当連結会計年度におきましては、富岡工場におけるMPセンターの稼働開始に伴う設備投資や各事業セグメントにおける量産投資・開発投資等を実施するとともに、今後の設備投資資金及び運転資金需要に対応するべく、長期借入金1,500百万円の追加借入を実施いたしました。その結果、当連結会計年度末における当社グループの現金及び現金同等物の残高は18,702百万円と、前期末比1,014百万円増加いたしました。

 

⑥  重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者による会計上の見積りを行なっております。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積りの不確実性があるため、これらの見積りと異なる結果となる場合があります。
 重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

当社グループの研究開発活動は、本社(コア技術開発本部、技術本部、事業部技術部門)及び現地開発拠点で行っております。

中長期的に、当社主要市場である自動車市場、半導体製造・検査市場、モバイル端末市場、医療機器関連市場は、CASE(Connected/Autonomous/Shared/Electric)と呼ばれる次世代技術への投資集中やCASEの進展に伴い、ハードウェアである車両と複数の交通手段の決済の統合等のソフトウェアサービスを組み合わせたMaaS(Mobility as a Service: サービスとしての移動)と呼ばれるビジネスモデルの拡大、5G及びBeyond 5G(6G)に代表される次世代高速・大容量通信用など新規半導体需要の顕在化、ウェアラブル端末など次世代製品の普及、低侵襲医療の浸透や遺伝子検査技術の高度化により、市場の拡大が予想されます。

当社グループでは、「全社成長戦略」に基づき、当社グループの基盤技術であるアンテナ技術、半導体応用技術、マイクロウェーブ(高周波)技術、表面改質材料技術、微細精密加工技術、フォトリソ(MEMS)技術を核に、研究開発部門、事業部技術部門及び現地開発拠点が一丸となって、技術集積度がより高く付加価値の高い製品への展開に重点をおき、新技術、新製品開発に向けて研究開発活動を展開してまいりました。

当連結会計年度における当社グループが支出した研究開発費の総額(人件費、経費を含む)は4,482百万円であります。なお、研究開発費の総額には特定のセグメントに関連付けられない事業横断的な研究開発に係る費用604百万円が含まれております。

 

セグメントごとの研究開発活動を示すと次のとおりであります。

 

(1) VCCS(主要製品:車載用アンテナ)

当セグメントでは、AM/FM/TV・地上デジタルTV・セルラ・GNSS・衛星DAB等多岐にわたるメディア用アンテナの複合化推進と、小型・低背、高性能アンテナの開発を推進してまいりました。次期戦略製品として、更なる超低背・超小型AM/FM/LTEアンテナの技術開発と、ADAS(先進運転支援システム)/自動運転に不可欠なV2X(車/車間、道路/車間、歩行者/車間)用アンテナシステム、CASE時代に向けた通信システム・機器・デバイスの技術開発を推進しております。当連結会計年度における研究開発費の金額は1,192百万円であります。

 

(2) CTC(主要製品:半導体検査用ソケット及びプローブカード)

当セグメントでは、大電流化に対応したICや高速高周波IC検査用ソケットの開発を推進するとともに、プローブ表面の改質技術など高性能化・高耐久化に関する研究開発を進めております。また、重点成長テーマと位置付けるプローブカード分野においてはフォトリソ技術による半導体挟ピッチ化・多ピン化・高速高周波化のロードマップに歩調を合わせた新規プローブカード、さらにミリ波帯半導体IC検査用プローブカードの開発を進めております。当連結会計年度における研究開発費の金額は1,824百万円であります。

 

(3) FC(主要製品:電子機器用微細コネクタ)・MD(主要製品:医療機器用部品/ユニット)

FC事業では、スマートフォン・ウェアラブル端末市場向けやPOS端末向けコイルコネクタ、スプリングコネクタ、板バネコネクタ、高定格コネクタの商品開発を推進してまいりました。さらに、5Gbps,10Gbpsといった高速光通信に対応する光コネクタの開発も推進しております。MD事業では、当社の微細精密加工技術、高周波技術を応用し、日米の大学・医療機関と新たな低侵襲の医療用具や検査システムの共同開発を推進しております。当セグメントの当連結会計年度における研究開発費の金額は602百万円であります。

 

(4) インキュベーションセンター(主要製品:MaaS/IoT向けアンテナ及びソリューション)

当セグメントでは、新規事業分野の開拓を推進していく事を目的に、当連結会計年度において新設いたしました。自動車以外の分野で使われるアンテナ製品の開発に自動車用アンテナ製品の開発で培ったノウハウを生かしつつ取り組み、新市場への供給を進めております。また、他企業への出資や協業を通じ、交通弱者救済、地域活性化、社会サービスの高度化等の新たな価値の創出を目的としたモビリティサービス(MaaS)の実装を進めております。当連結会計年度における研究開発費の金額は259百万円であります。

 

当社グループは、これらの研究開発活動をさらに深耕・展開し、売上・収益の拡大に努めてまいります。