第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1)会社の経営の基本方針

 当社グループは「開かれた透明性のある企業」「社会の負託に応えられる企業」「働きがいのある企業」「環境に配慮した企業」を経営理念に掲げ、「地域社会との信頼関係を築き 従業員にはチャンスと達成の喜びを お客様には安心と感動を 地球には優しさと潤いを与え続ける」ことを私たちの社会的役割(CSRビジョン)と位置付け、サステナビリティ経営の強化を進めるとともに、角度センサ・フィルムヒーター・可変抵抗器のプロフェッショナルとして、エレクトロニクス業界において一層の飛躍をめざします。

 

(2)経営環境、優先的に対処すべき事業上及び財政上の課題

 2024年3月開催の取締役会において2024年度を1年目とする3ケ年の第2次中期経営計画を決議しました。

第2次中期経営計画は、第一次構造改革をテーマとした2022年3月期から2024年3月期の第1次中期経営計画に引き続き、第2次構造改革と位置付け、成長・飛躍をテーマとする次期中期経営計画への基盤強化の3年間とし、以下の4つの取り組みを行います。

①技術開発力強化

新技術の創出・獲得

要素技術拡大による新領域の発掘

経営資源の投入(R&D・人財確保・育成)

②収益力強化

製品付加価値向上

生産体制・方式の再構築

DX、AI活用と生産性改善

③財務体質改善

有利子負債削減

資本効率の向上(ROA改善)

④株主還元強化

株主資本配当率(DOE)強化

中長期安定的な株主還元

 

(3)経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標等

 2024年4月発表の中期経営計画(2025年3月期から2027年3月期)における2025年3月期の計画対比とし、その結果は次の通りであります。

 

 

2025年3月期

計画

2025年3月期

実績

増減

増減率

(%)

売上高

(千円)

10,000,000

10,506,474

506,474

5.1

営業利益

(千円)

850,000

1,040,448

190,448

22.4

営業利益率

(%)

8.5

9.9

1.4

経常利益

(千円)

800,000

1,028,439

228,439

28.6

経常利益率

(%)

8.0

9.8

1.8

 

 本連結会計年度においては中国経済の停滞などにより電子部品の生産に影響があるなか、可変抵抗器部門では需要の増加や在庫調整解消による受注の回復が好影響となり、車載用電装部品部門では半導体不足の緩和が好影響となり、売上高は計画を上回る事を達成いたしました。利益面につきましては生産性の向上による固定費削減や、生産子会社の生産活動が堅調に推移したことにより営業利益、営業利益率、経常利益、経常利益率共に達成となりました。

 第2次中期経営計画期間内(2025年3月期から2027年3月期)の経営上の目標達成状況を判断する客観的な指標は、ROAといたします(2027年3月期目標数値9%)。本連結会計年度では8.4%となっております。第2次中期経営計画期間内に設備投資・研究開発費を合計20億円投入する計画であります。投資を積極的に進めてまいりますが、有利子負債の削減などの施策を進めることで資本効率を向上させ、財務体質の改善、ROAの目標達成を図ってまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

1.基本方針

 当社グループは、「地域社会との信頼関係を築き 従業員にはチャンスと達成の喜びを お客様には安心と感動を 地球には優しさと潤いを与え続ける」ことを私たちの社会的役割(CSRビジョン)と位置付け、サステナビリティ経営の強化を進めております。

 このビジョンの下、目まぐるしく変化する事業環境にいち早く適応し、持続可能な企業であり続けるために、本業を通じて社会課題の解決に貢献し、企業価値の向上に取り組んでまいります。

2.ガバナンス

 当社グループでは、サステナビリティ方針の下、取り組むべき社会課題ごとに推進責任部門を決め、経営審議会の中で定期的に議論・審議・進捗確認し、具体策の実行を進めております。

 経営審議会における議論や審議内容、及び新たな課題などは定期的に取締役会に諮る体制とし、具体策の実行が止まることのないよう機能させています。

 「気候変動への対応」と「人的資本多様性」に関するリスクと機会の洗い出しと特定を行いました。経営審議会にて特定したリスクと機会に対する具体策を議論・審議し、実行継続いたします。

 

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3.気候変動への取り組み

 気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の枠組みに沿って、CSR・ESGなどの各種ガイドライン等を参照したうえで策定した気候変動への対応は次頁の表のとおりとなっています。また、表中から初期段階でも取り組みやすく効果が見込まれる5つのスローガンを下記のように掲げ取り組みを開始しております。

 

・生産拠点においては、地下水の循環利用等による再エネ。

・寒冷地の生産拠点では、工場社屋の断熱効率向上に伴う省エネ(CO2削減)。

・調達先の多様化、部品標準化への取り組みにより、近年増え続ける異常気象に伴う自然災害に対するサプライ

 チェーンの分断リスク回避。

・製品・部品輸送を集約し、陸送から海上輸送や鉄道輸送に転換しCO2削減。

・環境に配慮した材料使用率を増加。

 

 技術部会では、上記スローガンの内、CO2の削減の視える化を進めており、グループの環境負荷を検証し、その対応目標を策定しました。2024年度の成果は下記のようになっております。

 

 ①モニタリングシステム(アスエネ)を導入して、国内外拠点のCO2の排出量を見える化をスタートしたこ

 と

 ②その結果、電力によるCO2が98%以上を占めること。また、5つあるグループ拠点の内、特定の3工場

(会津・中津・広州)での使用が大きいこと。

 

これらの状況から、下記のような実現可能で具体的な目標を下記のように策定いたしました。

 

 「2030年にCO2の温室効果ガス50%減、2050年温室効果ガス実質ゼロとする」

 

 さらに、この取り組みとは別に、輸送時のCO2削減に関しては、グループ内物流のトラックの輸送回数を

削減しております。

 今後、モニタリングにより洗い出された具体的な提案は、経営審議会にて議論・審議、取締役会への報告を通じて取り組んでまいります。

 

 

種類

世の中の変化

事業への影響

財務影響

対応案

移行リスク

 

政策・法規制リスク

 

GHG排出に関する規制の強化

 

再エネ、省エネ設備への投資負担増

汎用ラインの導入による生産設備の集約

エネルギー不足

コンプレッサの排熱利用

炭素税、排出権取引の導入

 

炭素税、排出権取引コストの発生

 

屋根、外壁の塗装による冷暖房効率向上(遮熱塗装)

地下水利用、循環水利用

設備の小型化による省エネ

技術リスク

低炭素、脱炭素移行への急進

顧客要求に対応できず売上減少

技術開発力強化のための投資

市場リスク

消費者行動の変化

対応遅れによる売上減少

OEM先のグリーンパートナーの維持とスコア向上

評判リスク

 

ステークホルダーからの懸念の増加

 

対応遅れによる売上減少、対応コストの増大

 

環境に配慮した材料使用の製品を増やす

環境マネジメントシステムによる継続的な改善

物理的リスク

 

急性リスク

異常気象の深刻化、増加

自然災害によるサプライチェーンの分断

調達先の多様化検討、部品標準化による調達性向上

慢性リスク

降雨や気象パターンの変化、平均気温の上昇、海面上昇等

BCP対応推進コスト増加

地下水利用、水のリサイクル

機会

 

サプライチェーン

 

交通、輸送手段の効率化

生産コスト、営業費用の削減

船輸送及び鉄道輸送への転換検討

製造、流通プロセスの効率化

生産コスト、営業費用の削減

汎用ラインの導入による生産設備の集約

製品

環境配慮型製品の増加

電子部品拡大による販売増加

環境に配慮した材料使用製品を増やす

 

 

 

4.人的資本多様性への取り組み

当社グループは、CSRビジョンである「地域社会との信頼関係を築き、従業員にはチャンスと達成の喜びを、お客様には安心と感動を、地球には優しさと潤いを与え続ける」の実現に向け、人的資本経営を持続的成長の基盤と捉えています。

 

当社では、以下の3つの柱を人的資本経営の重点分野と位置づけており、昨年度に引き続き課題の整理と施策の具体化を進めております。

 

① 多様な人材の獲得と登用

② 成長支援(特に管理職育成)

③ 安心・安全な職場環境の構築

 

1)リスクと戦略および施策の進捗

昨年度に特定した上記3領域におけるリスクと機会は、管理部会および経営審議会にて継続的に審議しております。今年度は、特に「管理職育成プログラム」の一部実施を皮切りに、その他の施策についても段階的な準備・計画策定を進めております。

重点分野

現状および今後の施策

指標・KPI

進捗状況

多様な人材の獲得と登用

・女性管理職比率向上を目的とした候補者採用・育成の計画策定中

・柔軟な働き方(フレックス等)制度の見直し検討中

・2030年度までに女性管理職比率15%以上

(2024年度実績0%)

毎年1名以上の管理職もしくは管理職候補の登用に向けた育成や採用チャネルの拡充など具体的な制度設計を今期中に開始予定

成長支援

・管理職育成プログラムの一部実施済

・360度フィードバック制度など人事制度連動の仕組を設計中

・管理職研修受講率100%

・360度評価制度導入率(2025年度20%以上)

管理職対象プログラムを一部実施、他は設計フェーズ

安心・安全な職場環境の構築

・有給取得促進、男性育休促進、健康施策の強化案を整理中

・心理的安全性を高める社内文化施策の検討中

・男性育休取得率

(2025年度50%以上)

強化策等は検討を進めている段階

※指標は今後の制度運用設計と実態に応じて調整・確定予定です。

 

2)今後の方針

人的資本に関する全社方針と施策は、第2次中期経営計画(技術開発力強化・人材確保育成)と連動させ、2025年度中に制度設計完了し、実施できるものから順次開始を目標としています。また、これらの取り組み状況を当社グループ全体として可視化・定量化できるよう、人的資本関連データの整備と社内浸透活動を併せて進めてまいります。

 

 

3【事業等のリスク】

 当社グループの経営成績、株価及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があると認識している主なリスクは、以下のとおりです。

 なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年6月30日)現在において、当社グループが判断したものです。

1)経済環境に関するリスク

①経済状況の変動

 当社グループでは、各国の経済状況・販売状況を定期的に確認し、適切な対応を行っておりますが、世界各地の景気後退による需要の減少により、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

②為替相場の変動

 当社グループでは、海外における生産販売活動では、可能な限り材料等の現地調達をする、輸出入では可能な限り円建取引をする等、為替変動リスクの低減に取り組んでおりますが、急激な為替変動により当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

③株式市況の変動

 当社グループでは、コーポレートガバナンスコードに沿って政策保有株式を縮減することを基本方針としていますが、国内企業の株式を保有しており、株式市況の変動により当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

2)事業活動に関するリスク

④技術革新における競争

 ヒータ分野としては、市場を拡大する目的で、高電圧駆動などの取り組みを開始しています。これらの仕様が求められる市場では、求められる安全性が高いことが想定され、品質面のリスクとなっております。

 ポテンショメータの分野ではPb材料を使用しない製品が求められております。開発が遅延することにより当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 また、環境規制物質の増加の影響により、使用している材料や購入部品を変更(4M)する必要のある製品が急激に増加しています。技術本部、品質本部を設置し対応しておりますが、適正な変更手続きが進まない場合、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

⑤販売価格競争

 当社グループでは、価格に頼らず技術的に進化した高品質で高付加化価値の製品の提供に取り組んでおりますが、競合他社の技術進歩により販売価格競争が激しくなり当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

⑥原材料価格の変動及び調達リスク

 当社グループでは、信頼のおける複数の供給業者から原材料等を仕入れ、一定の在庫を確保することや、商品価値に見合った適正価格で販売する等、供給不安や原材料価格の変動に対応しています。急激な原材料価格の変動や供給停滞等により当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

⑦製品の欠陥リスク

 当社グループでは、世界的に認められている品質管理基準に従って製品を製造しております。品質本部を設置し欠陥のない製品の提供に努めており、また、万が一の場合に備え、製造物責任賠償については保険を付保しておりますが、製品の欠陥により、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

⑧特定販売先への依存リスク

 当社グループでは、販売顧客の拡大に努めておりますが、連結売上高の四分の一相当が車載電装部品関連の主要顧客である東亜電気工業株式会社向けとなっています。当社グループは、同社と良好な関係を保持しているものと認識しておりますが、同社で取り扱う部品構成の変更や協力会社との取引方針変更等により、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

3)経営基盤に関するリスク

⑨情報セキュリティに関するリスク

 当社グループでは、事業の遂行を通じて取引先等の機密情報に多数接しているほか、当社グループの技術・営業・その他事業に関する機密情報を保有しております。これらの機密情報について、情報セキュリティ、サイバー攻撃に対する方針、リスク管理等の諸規程により対応を図っておりますが、不正アクセス、コンピュータウイルス等により当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります

⑩法的リスク

 当社グループでは、日本国内だけではなく、諸外国の法令に則って事業を推進しておりますが、環境規制等法的規制内容に変更が生じた場合、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

⑪人材確保に関するリスク

 当社グループは、「地域社会との信頼関係を築き 従業員にはチャンスと達成の喜びを お客様には安心と感動を 地球には優しさと潤いを与え続ける」ことを社会的役割(CSRビジョン)と位置付け、サステナビリティ経営を推進しています。新卒採用に加え、通年採用やキャリア採用も強化しておりますが、労働人口の減少や人財獲得競争の激化により、必要な人財を安定的に確保することは年々困難になっています。

 特に専門性の高い人財の採用・定着が進まない場合、事業推進や生産性に影響を及ぼし、当社グループの業績や財務状況に悪影響を与える可能性があります。

 また、当社では職場環境整備や人財育成の強化に取り組んでおりますが、これらの施策が十分に機能しない場合、持続的な成長に支障をきたす可能性があります。

⑫財務制限条項の付された借入契約の返済リスク

 当社では、有利子負債の適切なコントロールを行うことを目的としてシンジケーション方式のコミットメントライン契約を締結しています。この契約には、各年度の決算期の末日における連結財務諸表純資産の部の金額、及び各年度の決算期における連結損益計算書の経常損益等を基準として財務制限条項が付されています。これに抵触した場合、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

4)外部環境に関するリスク

⑬自然災害に関するリスク

 当社グループでは、製品及び部材を生産するにあたり、国内3拠点、中国2拠点にて行うことで一定のリスク分散は図られておりますが、地震等の自然災害により、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

⑭気候変動に関するリスク

 当社グループでは、「地域社会との信頼関係を築き 従業員にはチャンスと達成の喜びを お客様には安心と感動を 地球には優しさと潤いを与え続ける」ことを社会的役割(CSRビジョン)と位置付け、気候変動に対するリスクを特定し、対応を進めています。対応の遅れや想定外の事象等により当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

⑮地政学的リスク

 当社グループの生産及び販売活動の一部は、中国、台湾、米国及び欧州で行っています。これらの海外での活動には、以下のようなリスクが考えられます。

・予期しない法律又は規制の変更

・技術インフラが我が国と異なるため製造活動に悪影響を及ぼす可能性

・テロ、戦争、その他の要因による社会的混乱

・ストライキ等の労働争議

・感染症拡大による社会的混乱

 当社グループの製品には調達の多くを海外に依存している原材料が含まれており、また、中国においては生産の拡大を続けてまいりました。生産及び販売活動を行っている国において政情や法環境の変化など、予期せぬ事象により社会的混乱が起こり、事業の遂行が困難になり、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりです。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(重要な会計方針及び見積り)

 当社グループの連結財務諸表はわが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき、作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、決算日における資産、負債の報告数値及び報告期間における収益、費用の報告数値に影響を与える見積りを行わなければなりません。

 経営陣は、営業債権、棚卸資産、投資、退職給付債務、繰延税金資産、税金費用及び財務活動等に関する見積り及び判断に対して評価を行っております。また、過去の実績や状況に応じて合理的だと考えられる見積り及び判断を行いますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は異なる場合があります。

 この連結財務諸表の作成に当たり、見積りが必要となる営業債権、棚卸資産、投資、退職給付債務、税金費用及び財務活動等事項の詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。

 

(1)財政状態の状況

(流動資産)

 流動資産は、前連結会計年度末比241百万円減少し7,838百万円となりました。主な要因は、現金及び預金が232百万円減少したことによるものであります。

 

(固定資産)

 固定資産は、前連結会計年度末比159百万円減少し4,176百万円となりました。主な要因は、有形固定資産が179百万円減少したことによるものであります。有形固定資産の減少は減価償却の進捗に比べ新規設備の増加が少なかったことによるものであります。

 

(流動負債)

 流動負債は、前連結会計年度末比337百万円減少し2,559百万円となりました。主な要因は、短期有利子負債が428百万円減少したことによるものであります。

 

(固定負債)

 固定負債は、前連結会計年度末比636百万円減少し1,879百万円となりました。主な要因は、長期借入金が436百万円、リース債務(固定)91百万円が減少したことによるものです。

 

(純資産)

 純資産合計は、前連結会計年度末比572百万円増加し7,575百万円となりました。主な要因は、親会社株主に帰属する当期純利益を計上し、利益剰余金が513百万円増加したことによるものです。

 

(2)経営成績の状況

① 事業全体及びセグメント情報に記載された区分ごとの状況

a.事業全体の状況

 当連結会計年度における世界経済は、ウクライナ情勢の長期化や中東問題などの国際的な地政学リスクの高まり、中国経済における不動産市場の停滞の長期化など、依然として先行きは不透明な状況が続きました。

 日本経済は、堅調な企業収益に伴う設備投資意欲や雇用・所得環境の改善、インバウンド需要の増加など、改善の兆しはあるものの、個人消費については継続的な物価上昇の影響から節約志向は高まり、力強さに欠け、先行き不透明な状況が続いています。

 当社グループの属する電子部品業界においては、半導体不足が緩和したこと等から一部電子部品・デバイスの出荷額の持ち直しがあるものの、物価上昇や中国経済の減速による影響が続きました。

 このような情勢の下、当社は2024年4月2日に開示いたしました、第2次中期経営計画の目標達成に向けて専門性の高い人財への投資、研究開発への投資を通じた成長ドライバーの構築、生産性向上による付加価値の向上等の安定的収益体質の維持等、各種取り組みの推進をしております。

 販売面においては、需要増加や在庫調整の解消による受注の回復が、可変抵抗器事業を下支えしました。車載用電装品事業では国内自動車メーカーの生産が堅調に推移しました。その結果、売上高は10,506百万円(前期比0.7%増)となりました。

 利益面では生産性の向上に努めましたが、原材料費の高騰の影響、また、研究開発への注力を行った結果、営業利益は1,040百万円(前期比17.5%減)となりました。営業外損益は、為替が前年度に比べ円高基調に推移したことにより為替差損を33百万円計上し、経常利益は1,028百万円(前期比26.7%減)となりました。法人税、住民税及び事業税を289百万円、子会社の繰延税金資産の評価性等の見直しなどで法人税等調整額を28百万円それぞれ計上し、親会社株主に帰属する当期純利益は709百万円(前期比26.3%減)となりました。

 

b.セグメント情報に記載された区分ごとの状況

(イ)可変抵抗器

 需要増加や在庫調整の解消による受注回復が可変抵抗器事業を下支えしたことにより、売上高は4,153百万円(前期比1.7%増)となりました。セグメント利益(営業利益)は、1,160百万円(前期比2.4%増)となりました。

 

(ロ)車載用電装部品

 国内自動車メーカーの生産が堅調に推移したことにより、売上高は6,236百万円(前期比1.9%増)となりました。セグメント利益(営業利益)は、965百万円(前期比12.5%増)となりました。

 

(ハ)その他

 その他部門は、売上高は115百万円(前期比49.5%減)となりました。セグメント利益(営業利益)は52百万円(前期比43.7%減)となりました。

 

② 生産、受注及び販売の状況

a.生産実績

 当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

生産高(千円)

前年同期比(%)

可変抵抗器

2,506,677

16.9

車載用電装部品

4,971,034

△4.3

その他

4,565

△24.3

合計

7,482,277

1.9

 

b.受注状況

 当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高

(千円)

前年同期比

(%)

受注残高

(千円)

前年同期比

(%)

可変抵抗器

4,107,159

16.5

1,283,943

△3.5

車載用電装部品

6,301,399

2.1

391,949

19.8

その他

113,190

△33.7

34,418

△7.1

合計

10,521,750

△7.5

1,710,311

0.9

 

c.販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(千円)

前年同期比(%)

可変抵抗器

4,153,963

1.7

車載用電装部品

6,236,696

1.9

その他

115,814

△49.5

合計

10,506,474

0.7

 

(注) 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

販売高

(千円)

割合

(%)

販売高

(千円)

割合

(%)

東亜電気工業㈱

2,886,627

27.7

2,645,390

25.2

 

(3)キャッシュ・フローの状況

(現金及び現金同等物)

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ、232百万円減少し、3,320百万円となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは1,199百万円の資金の増加(前連結会計年度は1,630百万円の増加)となりました。主な増加要因は、税金等調整前当期純利益1,027百万円、減価償却費450百万円、売上債権の減少101百万円によるものであります。主な減少要因は、法人税等の支払額409百万円の減少によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における投資活動のキャッシュ・フローは216百万円の資金の減少(前連結会計年度は163百万円の減少)となりました。主な減少要因は、有形固定資産の取得による支出223百万円によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における財務活動のキャッシュ・フローは1,152百万円の資金の減少(前連結会計年度は2,143百万円の減少)となりました。主な減少要因は、短期借入金の純増減額300百万円、長期借入金の返済514百万円、配当金の支払額193百万円、リース債務の返済による支出143百万円によるものであります。

 

(資本の財源及び資金の流動性に係る情報)

 当社グループでは、事業運営に必要な手元流動性の確保と安定的な資金源泉の準備を行うことを基本方針とし、より一層の手元流動性の確保と有利子負債の適切なコントロールを目的に、前連結会計年度において契約した総額25億円のシンジケーション方式のコミットメントライン契約を継続しております。

 2024年度から2026年度を期間とする第2次中期経営計画では、資金調達方法の多様化を目的に必要な手元流動性を確保した上で有利子負債の削減を進めています。

 

5【重要な契約等】

(Bourns Japan Holdings LLCとの間の「公開買付けに係る合意書」の締結)

 当社は、2025年6月10日開催の取締役会において、Bourns Japan Holdings LLC(以下、「公開買付者」という。)による当社の普通株式に対する公開買付け(以下、「本公開買付け」という。)に関して、同日時点における当社の意見として、本公開買付けに賛同の意見を表明するとともに、本公開買付けに応募を推奨することを決議し、当社株式を非公開化することを目的とする本公開買付け及びその後に実施する一連の取引等(以下、「本取引」という。)に関し、同日付で公開買付者との間で、本公開買付け開始の前提条件、公開買付者並びに当社の表明保証事項、当社の義務、公開買付者の義務、並びに 契約終了事由を定めた「公開買付けに係る合意書」(以下、「本合意書」という。)を締結いたしました。

 

 合意に至るまでの意思決定過程と主な合意内容は下記のとおりであります。

(1) 取締役会における検討状況その他の当該提出会社における当該合意に係る意思決定に至る過程

 当社は、本公開買付けが当社株式を非公開化することを目的とする本取引の一環として行われること等を踏まえ、本取引に係る当社の意思決定に慎重を期し、また、当社取締役会の意思決定過程における恣意性及び利益相反を排除し、公正性、透明性及び客観性を担保することを目的として、敬和綜合法律事務所の助言を踏まえて、2025年4月21日付で、公開買付者及び当社のいずれからも独立し、当社の社外取締役であり独立役員である小野正典氏(弁護士)、森田貴子氏(税理士)及び山口鐘畿氏並びに社外有識者である森幹晴氏(弁護士)及び藤田和弘氏(公認会計士)の5名から構成される特別委員会(以下、「本特別委員会」という。)を設置しました。

 本特別委員会に対し、①本取引の目的の正当性・合理性(本取引が当社の企業価値向上に資するかを含む。)、②本取引の取引条件(本取引において公開買付が行われる場合には、当該公開買付価格等も含む。)の公正性・妥当性、③本取引に係る交渉過程及び意思決定に至る手続の公正性、④本取引の決定(本取引において公開買付けが行われる場合には、当該公開買付けに賛同の意見を表明すること及び当社の株主に対して当該公開買付けへの応募を推奨すること、その他当社による本取引の手続に係る決定を含む。)が当社の少数株主にとって不利益なものではないと考えられるか、⑤上記①乃至④を踏まえ、当社取締役会が公開買付けに対して賛同する意見を表明することの是非について諮問し、答申書を取得いたしました。

 また、2024年9月6日、公開買付者及び当社から独立したファイナンシャル・アドバイザーとして、トランス

キャピタル株式会社、2025年4月28日、第三者算定機関として株式会社KPMGFAS並びに当社のリーガルアドバイ

ザーである敬和綜合法律事務所からの助言を受けることとし、本特別委員会の独自のアドバイザーを選任してお

りませんが、当社及び公開買付者から独立した独自の第三者機関であるデロイトトーマツファイナンシャルアド

バイザリー合同会社を選任し、株式価値算定書を取得しました。

 以上の特別委員会及びアドバイザーの見解を踏まえつつ、本公開買付けを含む本取引が当社の企業価値の向上

に資するか否か並びに本取引に係る取引条件が妥当なものか否か等について、慎重に検討・協議を行い、公開買

付者との本合意書の締結を決定いたしました。

 

(2)合意の相手先

 ①本合意書を締結した年月日

 2025年6月10日

 

 ②本合意書の相手方の氏名又は名称及び住所

 名称 Bourns Japan Holdings LLC

 本店の所在地 アメリカ合衆国デラウェア州、ニューキャッスル郡、ウィルミントン、リトルフォールズドラ

イブCSC251

 

(3)当該合意の内容

当社は、公開買付者との間で、以下の合意を含む本合意書を締結しております。

 ① 買付け等の期間

  2025年6月30日(月曜日)から2025年8月12日(火曜日)まで(30営業日)(予定)

 

 ② 買付等の額

  普通株式1株につき、金8,075円(予定)

 

 

 ③公開買付予定の株券等の数

買付予定数

買付予定数の下限

買付予定数の上限

1,345,045(株)

894,500(株)

-

 

 ④公開買付公告日

  2025年6月30日(月曜日)(予定)

 なお、2025年6月30日現在、公開買付開始予定は2025年7月上旬から中旬を目途に修正されております。

 

 ⑤ 特記すべき合意条項

 ア.応募推奨義務

 当社は本特別委員会から本公開買付けに賛同し、当社の株主の皆様に対して本公開買付けへの応募を推奨

する旨の答申が得られており、かつ、それが撤回又は変更されていないことを条件に、本賛同決議を行い、

本公開買付けに係る買付期間が終了するまでの間、下記イ.の場合を除き、本賛同決議を変更せず、また、こ

れと抵触する決議を行うことができない。なお、当社は、本特別委員会から本公開買付けに賛同し、当社の

株主の皆様に対して本公開買付けへの応募を推奨する旨の答申が得られない、若しくは、それが撤回又は変

更された場合には、本賛同決議を変更せず、また、これと抵触する決議を行わない義務を負わない。また、

かかる場合に当社が本賛同決議の変更又は撤回を行っても、後記ウ.のブレークアップ・フィーの支払い義務

を負わない。

 

 イ.102%基準

 公開買付期間中に第三者による対抗TOBが出された場合、当該対抗TOBの価格が、本TOBにおける買付価格の102%を超えない限り、公開買付者と価格交渉をしたり、本TOBへの当社の賛同・応募推奨の意見を撤回できない。

 

 ウ.ブレークアップ・フィー条項

 対抗TOBがなされ、当社が本TOBへの賛同・応募推奨の意見を撤回する場合は、当社は公開買付者に対し、取引コストや費用相当額であって300万米ドルを超えない額を支払わなくてはならない。

 

 エ.ノーショップ条項

 公開買付者以外の第三者との間で、競合取引について、積極的に勧誘や協議・交渉・情報提供(以下「協議等」という)を行うことを禁止とする。ただし、当社の取締役会が、外部弁護士の意見に基づき、協議などを行わないことが当社の取締役の善管注意義務違反を構成すると合理的に判断する場合には、当社が競合取引について協議等を行うことが例外的に許容されている。

 

 なお、本公開買付けの詳細につきましては、「第5「経理の状況」 1 「連結財務諸表等」「注記事項」(重要な後発事象)」並びに2025年6月10日に公表いたしました「Bourns Japan Holdings LLCによる当社株式に対する公開買付けの開始予定に関する賛同の意見表明及び応募推奨のお知らせ」及び2025年6月30日に公表いたしました「(開示事項の経過)Bourns Japan Holdings LLCによる当社株式に対する公開買付け実施に向けた進捗状況のお知らせ」をご参照ください。

 

 

6【研究開発活動】

 当連結会計年度の研究開発は、既存カテゴリの製品開発とともに、新しいカテゴリへの参入を企図する開発を仕掛けることになりました。既存カテゴリの領域の技術としては、自動運転支援用カメラヒータをはじめとする複数の新規BtoB案件が試作段階にはいっております。さらに、ヒータの市場を広げるために、ヒータ製品のバリエーションを拡大するための開発を行い、より高温で使用可能なヒータや透明なヒータなどのアウトプットを顧客へ提案することができはじめています。

 昨年開始したICに関する開発は順調に進んでおり、秋にはE/S品がリリースされる予定となっております。さらに、ミリ波通信機器へ応用する開発を行い、協業可能性のある関連企業に対してデモをスタートいたしました。

 

 当連結会計年度中に支出した研究開発費の総額は392百万円であります。

 当連結会計年度末現在、所有する産業財産権は、特許権:国内51件・外国91件、意匠権:国内10件・外国20件、商標権:国内8件・外国22件であります。

 セグメントごとの研究開発活動を示すと次のとおりであります。

 

(1)可変抵抗器関連

1.PTCヒータに関しては、高電圧駆動タイプの開発が順調に進み、EV用のバッテリーヒータへの適用提案を開始しております。

2.PTCヒータのバリエーションを拡大する開発の取り組みを開始しております。透明なヒータに関しての開発もスタートしております。

 研究開発費は103百万円であります。

 

(2)車載用電装部品関連

1.独自の角度センサの開発を開始しました。お客様のニーズのヒヤリングを開始いたしました。

2.従来より高温のヒータの開発に成功しております。始動直後のエンジンからの排気ガスのクリーン化ができることに着目したヒータの提案をスタートしております。

 研究開発費は205百万円であります。

 

(3)その他

1.ミリ波の透過・反射特性を自在に操る制御技術開発を進めてきております。28GHz から79GHz の広い帯域での

 対応が可能になりました。この開発成果を活用し、ミリ波レーダの検査装置の提案を7月の展示会で公開する予

 定としています。今後、販路の拡大に努めてまいります。

2.多関節ロボットによる組み立ての自動化に関しての取り組みを開始いたしました。

 研究開発費は9百万円であります。

 

※ また、上記の(1)(2)(3)共通の開発費として73百万円があります。